(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053459
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】固定金具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20230406BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20230406BHJP
F16B 2/10 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
E04C5/18 101
F16B2/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162505
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】星田 義明
【テーマコード(参考)】
2E164
3J022
【Fターム(参考)】
2E164BA22
2E164CA01
2E164CA12
3J022DA12
3J022DA15
3J022DA19
3J022EA32
3J022EB14
3J022EC13
3J022ED23
3J022FB06
3J022FB07
3J022GA12
3J022GB23
3J022GB25
3J022HA05
(57)【要約】
【課題】同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を無溶接で固定することができる固定金具を提供する。
【解決手段】両鉄筋3,3同士を互いに重ね合わせた状態で当該両鉄筋3,3の軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方から挟み込む第1及び第2部材11,12と、第1及び第2部材11,12の一端側に設けられたヒンジ13と、第1及び第2部材11,12の他端側に設けられ、当該第1及び第2部材11,12の間に両鉄筋3,3同士を互いの軸線方向へ相対移動不能となるように強固に締め付けた状態で固定する固定具2とを備える。固定具2に、第1部材11の先端に設けられた螺子部111と、第2部材12の他端側に設けられ、第1及び第2部材11,12の閉時に螺子部111を挿通する切欠孔と、螺子部111の先端に螺合した状態で当該螺子部111が切欠孔に挿通され、切欠孔の周縁の屈曲部分122に締め付けられるナット22とを設ける。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を互いに重ね合わせた状態で固定する固定金具であって、
前記両鉄筋に対しその軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方から同時に接するように挟み込む第1及び第2部材と、
前記両鉄筋の重ね合わせ方向一端側となる前記第1及び第2部材の一端側に設けられ、当該第1及び第2部材を開閉するヒンジと、
前記両鉄筋の重ね合わせ方向他端側となる前記第1及び第2部材の他端側に設けられ、当該第1及び第2部材の間に前記両鉄筋同士を互いの軸線方向へ相対移動不能となるように強固に締め付けた状態で固定する固定具と、
を備えていることを特徴とする固定金具。
【請求項2】
前記固定具は、
前記第1及び第2部材のいずれか一方に設けられた螺子部と、
前記第1及び第2部材のいずれか他方に設けられ、前記ヒンジによる前記第1及び第2部材の閉時に前記螺子部を挿通する切欠孔と、
前記螺子部の先端に螺合した状態で当該螺子部が前記切欠孔に挿通され、前記切欠孔の周縁に締め付けられる螺合部材と、
を備えている請求項1に記載の固定金具。
【請求項3】
前記第1及び第2部材のいずれか一方は、前記2本の鉄筋の周囲にコンクリートを打設する際に用いられる型枠側に位置しており、
前記螺子部及び前記螺合部材は、前記螺子部を前記切欠孔に挿通した状態でその先端の前記螺子部材を前記切欠孔の周縁に締め付けた際に、前記第1及び第2部材のいずれか一方よりも他方側に位置している請求項2に記載の固定金具。
【請求項4】
前記第1及び第2部材のいずれか一方としては、前記第1及び第2部材のいずれか他方の一端側に前記ヒンジを介して基端が連結されかつ前記螺子部を先端部に有するボルト状部材が適用され、前記ボルト状部材の中途部には当該ボルト状部材の先端を前記第1及び第2部材のいずれか他方の他端側向きに湾曲させる湾曲部を備えている一方、
前記第1及び第2部材のいずれか他方の他端側は、前記ボルト状部材の螺子部を前記切欠孔に挿通させた際にその切欠孔の周縁に対し前記螺子部が略直交するように前記ボルト状部材の螺子部側向きに屈曲する屈曲部分を備えている請求項2又は請求項3に記載の固定金具。
【請求項5】
前記2本の鉄筋同士は、当該両鉄筋を互いに重ね合わせた軸線方向複数箇所でそれぞれ固定されている請求項1~請求項4のいずれか1つに記載の固定金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を互いに重ね合わせた状態で固定する固定金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2本の鉄筋同士を交差部位において互いに重ね合わせた状態で溶接により固定することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年、地震などによって倒壊した鉄筋コンクリート建築物の調査の結果、溶接による鉄筋の断面欠損や変質がその強度に重大な影響を与えることが判明し、躯体強度の設計基準を損なうような鉄筋同士の溶接を禁止する通達がなされている。
【0004】
そこで、互いに交差する鉄筋つまり縦筋及び横筋を互いの交差部位においてそれぞれ固定金具を用いて無溶接で固定するようにしたものがある(特許文献2参照)。この固定金具は、縦筋及び横筋のいずれか一方の外形形状に応じて長手方向の中間部を折曲させて前記一方に対し当該一方を前記他方との反交差部位側から包持するように係合する一方側係合部を有する線状鋼材を備えている。この線状鋼材は、一方側係合部より前記他方側に向かって当該他方を横筋の周方向から挟むように互いに平行に延び、その延出端にそれぞれ螺子部を有する延出部を備えている。
【0005】
更に、固定金具は、各延出部の螺子部をそれぞれ挿通する挿通孔が設けられ、かつ前記他方に対し前記一方との反交差部位側から当接する当接部材と、この当接部材の挿通孔に挿通された各延出部の螺子部にそれぞれ螺着される螺着部材と、を備えている。そして、縦筋及び横筋の一方に線状鋼材の一方側係合部を係合させるとともに、他方に対し一方との反交差部位側から当接部材を当接させ、この当接部材の挿通孔に挿通させた線状鋼材の各延出部の螺子部にそれぞれ螺着部材を螺着することで、縦筋及び横筋を互いの交差部位において固定金具により無溶接で固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-154947号公報
【特許文献2】特開2006-46031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を互いに重ね合わせた状態で固定する際にも固定金具により無溶接で固定したいという要求がある。その場合、前述の固定金具は、互いに交差する縦筋及び横筋を交差部位において両鉄筋に跨るように固定するものであるため、同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を固定する際に用いることができず、その対策が切望されていた。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を互いに重ね合わせた状態で無溶接により固定することができる固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明では、同一方向へ延びる2本の鉄筋同士を互いに重ね合わせた状態で固定する固定金具として、前記両鉄筋に対しその軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方から同時に接するように挟み込む第1及び第2部材と、前記両鉄筋の重ね合わせ方向一端側となる前記第1及び第2部材の一端側に設けられ、当該第1及び第2部材を開閉するヒンジと、前記両鉄筋の重ね合わせ方向他端側となる前記第1及び第2部材の他端側に設けられ、当該第1及び第2部材の間に前記両鉄筋同士を互いの軸線方向へ相対移動不能となるように強固に締め付けた状態で固定する固定具と、を備えることを特徴としている。
【0010】
また、前記固定具に、前記第1及び第2部材のいずれか一方に設けられた螺子部と、前記第1及び第2部材のいずれか他方に設けられ、前記ヒンジによる前記第1及び第2部材の閉時に前記螺子部を挿通する切欠孔と、前記螺子部の先端に螺合した状態で当該螺子部が前記切欠孔に挿通され、前記切欠孔の周縁に締め付けられる螺合部材と、を備えていてもよい。
【0011】
また、前記第1及び第2部材のいずれか一方を、前記2本の鉄筋の周囲にコンクリートを打設する際に用いられる型枠側に位置させている。そして、前記螺子部及び前記螺合部材を、前記螺子部を前記切欠孔に挿通した状態でその先端の前記螺子部材を前記切欠孔の周縁に締め付けた際に、前記第1及び第2部材のいずれか一方よりも他方側に位置させることがこのましい。
【0012】
また、前記第1及び第2部材のいずれか一方として、前記第1及び第2部材のいずれか他方の一端側に前記ヒンジを介して基端が連結されかつ前記螺子部を先端部に有するボルト状部材を適用する。そして、前記ボルト状部材の中途部に当該ボルト状部材の先端を前記第1及び第2部材のいずれか他方の他端側向きに湾曲させる湾曲部を設ける。一方、前記第1及び第2部材のいずれか他方の他端側に、前記ボルト状部材の螺子部を前記切欠孔に挿通させた際にその切欠孔の周縁に対し前記螺子部が略直交するように前記ボルト状部材の螺子部側向きに屈曲する屈曲部分を設けていてもよい。
【0013】
更に、前記2本の鉄筋同士を、当該両鉄筋を互いに重ね合わせた軸線方向複数箇所でそれぞれ固定することがこのましい。
【発明の効果】
【0014】
以上、要するに、互いに重ね合わせた2本の鉄筋に対し第1及び第2部材の一端側のヒンジ回りに第1及び第2部材を閉じて両鉄筋の軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方から同時に接するように挟み込んだ状態で、2本の鉄筋同士を互いの軸線方向へ相対移動不能となるように第1及び第2部材の他端側の固定具により強固に締め付けて固定している。これにより、固定具の強固な締め付けにより両鉄筋同士の軸線方向への相対移動を禁止し、両鉄筋を無溶接で固定することができる。
【0015】
また、第1及び第2部材のいずれか一方の螺子部を他方の切欠孔に対し第1及び第2部材の閉時に挿通し、螺子部の先端に螺合した状態の螺合部材を切欠孔の周縁に締め付けることで、螺子部の先端に螺合部材を螺合した状態で切欠孔への挿通が可能となり、螺合部材を切欠孔の周縁に締め付けるだけで固定具による固定を簡単に行うことができる。
【0016】
また、2本の鉄筋の周囲にコンクリートを打設する際に用いられる型枠側に第1及び第2部材のいずれか一方を位置させ、螺子部材を切欠孔の周縁に締め付けた際に螺子部及び螺合部材を前記第1及び第2部材のいずれか一方よりも他方側に位置させることで、第1及び第2部材のいずれか一方つまり型枠側よりも他方側(反型枠側)となる内側寄りに螺子部及び螺合部材が位置付けられることになる。これにより、螺子部及び螺合部材が第1及び第2部材のいずれか一方よりも型枠側に位置することがなくなって、型枠までのコンクリート打設時のかぶり厚を十分に確保することができる。
【0017】
また、第1及び第2部材のいずれか一方に適用したボルト状部材の中途部に他方の他端側向きに湾曲する湾曲部を設ける一方、第1及び第2部材のいずれか他方の他端側に、ボルト状部材の螺子部を切欠孔に挿通させた際にその切欠孔の周縁に対し螺子部が略直交するようにボルト状部材の螺子部側向きに屈曲する屈曲部分を設けている。これにより、ボルト状部材の螺子部に螺合する螺子部材の締付面の全域が屈曲部分に対し密接した状態で締め付けられ、屈曲部分に対する螺子部材の締め付けをより強固に行うことができる。
【0018】
更に、2本の鉄筋同士を互いに重ね合わせた軸線方向複数箇所でそれぞれ固定することで、両鉄筋同士の互いの軸線方向への相対移動を複数箇所の固定金具によってより確実に禁止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る固定金具を正面側から見た正面図である。
【
図2】
図1の固定金具を背面側から見た背面図である。
【
図3】
図1の固定金具を右側方から見た右側面図である。
【
図4】
図1の固定金具を左側方から見た左側面図である。
【
図5】
図1の固定金具を上方から見た平面図である。
【
図6】
図1の固定金具を下方から見た底面図である。
【
図7】
図1の固定金具を斜め正面側から見た斜視図である。
【
図8】
図1の固定金具を2つ用いて鉄筋同士を固定した状態で第1及び第2部材の他端側から見た説明図である。
【
図9】
図8の2つの固定金具を第1及び第2部材の一端側から見た説明図である。
【
図10】
図8の2つの固定金具を軸線方向一側から見た説明図である。
【
図11】
図8の2つの固定金具を軸線方向一側から見た説明図である。
【
図12】
図8の2つの固定金具を両鉄筋に対しその軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方のうちの第2部材側から見た説明図である。
【
図13】
図8の2つの固定金具を両鉄筋に対しその軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方のうちの第1部材側から見た説明図である。
【
図14】
図8の2つの固定金具を斜め第1部材側から見た説明図である。
【
図15】
図8の鉄筋同士を固定する際に第1及び第2部材を開いた状態で鉄筋の軸線方向から見た説明図である。
【
図16】
図15の固定金具を斜め他端部側から見た斜視図である。
【
図17】
図8の鉄筋同士を固定する際に第1及び第2部材を閉じた状態で鉄筋の軸線方向から見た説明図である。
【
図18】
図17の固定金具を斜め他端部側から見た斜視図である。
【
図19】
図8の鉄筋同士を固定する際に第1及び第2部材を閉じて螺合部材を締め付けた状態で鉄筋の軸線方向から見た説明図である。
【
図20】
図19の固定金具を斜め他端部側から見た斜視図である。
【
図21】本発明の第2の実施の形態に係る固定金具を2つ用いて各横筋の両端部を固定した状態を示す鉄筋籠の斜視図である。
【
図23】
図21の鉄筋籠を各固定金具の非配置位置で外側から見た側面図である。
【
図24】
図21の鉄筋籠を各固定金具の配置位置で外側から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係る固定金具を正面側から見た正面図、
図2は
図1の固定金具を背面側から見た背面図、
図3は
図1の固定金具を右側方から見た右側面図、
図4は
図1の固定金具を左側方から見た左側面図をそれぞれ示している。また、
図5は
図1の固定金具を上方から見た平面図、
図6は
図1の固定金具を下方から見た底面図、
図7は
図1の固定金具を斜め正面側から見た斜視図をそれぞれ示している。
【0022】
図1~
図7に示すように、1は同一方向へ略直線状に延びる2本の鉄筋3,3(後述する)同士を互いに重ね合わせた状態で固定する際に用いられる固定金具である。
【0023】
固定金具1は、第1及び第2部材11,12と、この第1及び第2部材11,12の一端(
図1では左端)に設けられ、当該第1及び第2部材11,12を開閉するヒンジ13と、を備えている。第1部材11は、ボルト状部材により形成され、その先端側となる他端(
図1では右端)に螺子部111を有している。
【0024】
第2部材12は、その一端側(
図1では左端側)において第1部材11側に開口する断面略コの字状に形成されたコ字状部分121を備えている一方、他端側(
図1では右端側)において第1部材11側に略への字状に屈曲する屈曲部分122を備えている。
【0025】
ヒンジ13は、第1部材11の基端(
図1では左端)に対し直交する方向へ貫通するピン131を備えている。このピン131は、第2部材12のコ字状部分121において互いに対向する対向面にそれぞれ開口する開口孔(図示せず)に回転自在に挿通されている。そして、ヒンジ13は、第2部材12のコ字状部分121に対し第1部材11の基端(
図1では左端)をピン131回りに回転自在に支持している。
【0026】
更に、固定金具1は、第1及び第2部材11,12の他端側に設けられた固定具2を備えている。この固定具2は、第1及び第2部材11,12の他端同士を強固に締め付けた状態で固定している。
【0027】
固定具2は、第2部材12の屈曲部分122に設けられ、かつヒンジ13による第1及び第2部材11,12の閉時に第1部材11の螺子部111を挿通する切欠孔21と、螺子部111の先端に螺合された螺合部材としてのナット22とを備えている。ナット22は、螺子部111の先端に螺合した状態で当該螺子部111の切欠孔21への挿通が可能とされ、切欠孔21の周縁の屈曲部分122に対し締結される。切欠孔21は、屈曲部分122の第1部材11側端に略コの字状に切り欠かれている。この場合、固定具2は、第1部材11の他端側の螺子部111も構成要件として含んでいる。
【0028】
図8は
図1の固定金具1を2つ用いて鉄筋同士を固定した状態で第1及び第2部材11,12の他端側から見た説明図、
図9は
図8の2つの固定金具1を第1及び第2部材11,12の一端側から見た説明図をそれぞれ示している。また、
図10は
図8の2つの固定金具1を軸線方向一側から見た説明図、
図11は
図8の2つの固定金具1を軸線方向一側から見た説明図をそれぞれ示している。更に、
図12は
図8の2つの固定金具1を両鉄筋に対しその軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方のうちの第2部材12側から見た説明図、
図13は
図8の2つの固定金具1を両鉄筋に対しその軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方のうちの第1部材11側から見た説明図、
図14は
図8の2つの固定金具1を斜め第1部材11側から見た説明図をそれぞれ示している。
【0029】
図8~
図14に示すように、同一方向へ延びる2本の鉄筋3,3同士は、互いに上下に重ね合わせた状態で軸線方向2個所の2つの固定金具1,1により固定されている。このとき、第1及び第2部材11,12の一端側のヒンジ13は、両鉄筋3,3の重ね合わせ方向一端側(
図10及び
図11では下端側)に位置し、第1及び第2部材11,12の他端側の固定具2は、両鉄筋3,3の重ね合わせ方向他端側(
図10及び
図11では上端側)に位置している。
【0030】
また、第1及び第2部材11,12は、両鉄筋3,3に対しその軸線方向(
図12及び
図13では左右方向)及び重ね合わせ方向(
図12及び
図13では上下方向)と直交する両側方(
図12及び
図13では紙面手前奥方向)から同時に接するように挟み込んでいる。そして、固定具2は、第1及び第2部材11,12の間に2本の鉄筋3,3を互いに上下に重ね合わせた状態で強固に締め付けて互いの軸線方向へ相対移動不能となるように固定している。
【0031】
第1部材11(ボルト状部材)の中途部には、当該第1部材11先端の螺子部111を第2部材12の他端側向きに湾曲させる湾曲部112が設けられている。一方、第2部材12の他端側の屈曲部分122は、第1部材11の螺子部111を切欠孔21に挿通させた際にその屈曲部分122に対し螺子部111が略直交するように第1部材11の螺子部111側向きに屈曲している。
【0032】
両鉄筋3,3は、それぞれ長手方向等間隔置きに周方向へ延びる複数のリブ31,31,…を備えている。また、第2部材12のコ字状部分121における対向面の他端側(
図10及び
図11では上端側)には、両鉄筋3,3のうちの一方(
図10及び
図11では下側)の鉄筋3を両鉄筋3,3の重ね合わせ方向から当接させる上で略半円弧状に切り欠いた切欠部15が設けられている。この切欠部15の先端(後述する
図19では下端)は、両鉄筋3,3のうちの一方(
図19では左側)の鉄筋3の左略半分を抱え込んだ状態に保持し、この状態で、ナット22による締め付けによって第1部材11の湾曲部112で挟み込んだ2本の鉄筋3,3を固定している。
【0033】
更に、第2部材12のコ字状部分121と屈曲部分122との間には、両鉄筋3,3側へ突出する突出リブ16が設けられている。この突出リブ16は、第1及び第2部材11,12を閉じた際に両鉄筋3,3のリブ31同士の間に噛み込んで当該両鉄筋3,3の互いの軸線方向への相対移動を規制しつつより強固に固定するようにしている。
【0034】
また、第1及び第2部材11,12のうちの第1部材11は、2本の鉄筋3,3の周囲にコンクリートを打設する際に用いられる型枠側に位置している。そして、
図19に示すように、螺子部111及びナット22は、切欠孔21の周縁の屈曲部分122に対し当該切欠孔21に挿通した螺子部111の先端に螺合されるナット22を締め付けた際に、第2部材12のコ字状部分121を他端側(
図19では右側)へ延ばした延長線m(
図19に二点鎖線で示す)よりも反型枠側となる内側(
図19では下側)に位置している。また、螺子部111及びナット22は、切欠孔21の周縁の屈曲部分122に対しナット22を締め付けた際に、第1部材11先端の螺子部111を第2部材12の他端側へ湾曲させる湾曲部112よりも内側、つまり、第1部材11の湾曲部112を通る,前記コ字状部分121の延長線mと略平行な平行線n(
図19に二点鎖線で示す)に対し、これよりも型枠側となる外側(
図19では上側)に位置している。
【0035】
図15は
図8の鉄筋3,3同士を固定する際に第1及び第2部材11,12を開いた状態で鉄筋3の軸線方向から見た説明図、
図16は
図15の固定金具1を斜め他端部側から見た斜視図をそれぞれ示している。また、
図17は
図8の鉄筋3,3同士を固定する際に第1及び第2部材11,12を閉じた状態で鉄筋3の軸線方向から見た説明図、
図18は
図17の固定金具1を斜め他端部側から見た斜視図をそれぞれ示している。更に、
図19は
図8の鉄筋3,3同士を固定する際に第1及び第2部材11,12を閉じてナット22を締め付けた状態で鉄筋3の軸線方向から見た説明図、
図20は
図19の固定金具1を斜め他端部側から見た斜視図をそれぞれ示している。
【0036】
ここで、2本の鉄筋3,3同士を固定金具1により固定する際の手順を
図15~
図20に基づいて説明する。
【0037】
先ず、
図15及び
図16に示すように、固定金具1の第2部材12のコ字状部分121と屈曲部分122との間に両鉄筋3,3を重ね合わせた状態で入り込ませておく。このとき、螺子部111の先端にナット22を螺合させた状態の第1部材11は、第2部材12に対し開状態となっている。
【0038】
次いで、
図17及び
図18に示すように、第1部材11をヒンジ13のピン131回りに回転させ、螺子部111を屈曲部分122の切欠孔21に挿通させる。このとき、第1部材11は、第2部材12に対し閉状態となっている。
【0039】
その後、
図19及び
図20に示すように、螺子部111の先端のナット22を締め付け、当該ナット22を切欠孔21の周縁の屈曲部分122に締結する。このとき、第1部材11は、第2部材12に対し両鉄筋3,3のリブ31同士の間に突出リブ16を噛み込ませた状態で固定している。
【0040】
したがって、本実施の形態では、互いに重ね合わせた2本の鉄筋3,3に対し第2部材12の一端側のヒンジ13のピン131回りに第1部材11を閉じて両鉄筋3,3の軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する両側方から同時に接するように挟み込んだ状態で、当該第1及び第2部材11,12の間に2本の鉄筋3,3同士を互いの軸線方向へ相対移動不能となるように第1及び第2部材11,12の他端側の固定具2により強固に締め付けて固定している。これにより、固定具2の強固な締め付けにより両鉄筋3,3同士の軸線方向への相対移動を禁止し、両鉄筋3,3を無溶接で固定することができる。
【0041】
また、第1及び第2部材11,12の閉時にその第1部材11の螺子部111を第2部材12の屈曲部分122の切欠孔21に挿通した状態で、螺子部111の先端に螺合したナット22が締め付けられて切欠孔21の周縁の屈曲部分122に締結されているので、螺子部111の先端にナット22を螺合した状態で切欠孔21への挿通が可能となり、ナット22を切欠孔21の周縁に締め付けるだけで固定具2による固定を簡単に行うことができる。
【0042】
また、第1部材11の螺子部111が第2部材12の屈曲部分122の切欠孔21に対し第1及び第2部材11,12の閉時に挿通され、螺子部111の先端に螺合した状態のナット22が切欠孔21の周縁の屈曲部分122に締め付けられているので、螺子部111の先端にナット22を螺合した状態で切欠孔21への挿通が可能となり、ナット22を切欠孔21の周縁の屈曲部分122に締め付けるだけで固定具2による固定を簡単に行うことができる。
【0043】
また、2本の鉄筋3,3の周囲にコンクリートを打設する際に用いられる型枠側に第2部材12を位置させ、ナット22を切欠孔21の周縁の屈曲部分122に締め付けた際に螺子部111及びナット22が第2部材12のコ字状部分121を他端側へ延ばした延長線mよりも反型枠側となる内側に位置している。これにより、螺子部111及びナット22が型枠寄りの第2部材12よりも型枠側に突出することがなくなって、コンクリート打設時に型枠までのかぶり厚を十分に確保することができる。
【0044】
しかも、螺子部111及びナット22が、切欠孔21の周縁の屈曲部分122に対しナット22を締め付けた際に、第1部材11の湾曲部112を通る,コ字状部分121の延長線mと略平行な平行線nに対し、これよりも型枠側となる外側に位置しているので、螺子部111及びナット22が反型枠寄りの第1部材11よりも反型枠側に突出することがなくなって、コンクリート打設時に螺子部111及びナット22を固定金具1の領域内に収めてコンクリートの流動性を高めることができる。
【0045】
また、第1部材11に適用したボルト状部材の中途部に第2部材12の他端側向きに湾曲する湾曲部112が設けられる一方、第2部材12の他端側に、第1部材11の螺子部111を切欠孔21に挿通させた際にその切欠孔21の周縁の屈曲部分122に対し螺子部111が略直交するように第1部材11の螺子部111側向きに屈曲する屈曲部分122が設けられている。これにより、第1部材11の螺子部111に螺合するナット22の締付面の全域が屈曲部分122に対し密接した状態で締め付けられ、屈曲部分122に対するナット22の締め付けをより強固に行うことができる。
【0046】
更に、2本の鉄筋3,3同士が互いに重ね合わせた軸線方向2箇所で固定金具1,1によってそれぞれ固定されているので、両鉄筋3,3同士の軸線方向への相対移動を2箇所の固定金具1,1によってより確実に禁止することができる。
【0047】
次に、本達明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0048】
本実施の形態では、固定金具1を、鉄筋籠の周囲に等間隔置きに配置された縦筋に対しそれらの周囲を鉄筋籠の縦方向に等間隔置きに周回するように配した鉄筋としての横筋の両端部をそれぞれ固定する際に用いている。なお、固定金具1については、前記第1の実施の形態と同じ構成となるので、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
図21は本発明の第2の実施の形態に係る固定金具を2つ用いて各横筋の両端部を固定した状態を示す鉄筋籠の斜視図、
図22は
図21の鉄筋籠を上方から見た平面図をそれぞれ示している。また、
図23は
図21の鉄筋籠を各固定金具の非配置位置で外側から見た側面図、
図24は
図21の鉄筋籠を各固定金具の配置位置で外側から見た側面図をそれぞれ示している。
【0050】
図21~
図24に示すように、鉄筋籠Xは、円環状に周方向(横方向)に等間隔置きに配置された9本の縦筋4,4,…と、これらの縦筋4,4,…に対しそれらの周囲を鉄筋籠Xの縦方向(縦筋4の長手方向)に等間隔置きに一回り周回するように配した鉄筋としての横筋5の両端部50,50とを備えている。この場合、各横筋5は、各縦筋4に対しそれぞれ個々に鉄筋籠Xの半径方向外方から交差するように環状に曲げられている。
【0051】
各横筋5の両端部50,50は、各縦筋4の軸線方向(
図21では上下方向)に重ね合わされている。そして、各横筋5の両端部50,50が、互いに相隣なる縦筋4,4同士の間において、その両端部50,50の軸線方向となる周方向及び重ね合わせ方向となる上下方向と直交する両側方つまり内外両方向から同時に接するように第1及び第2部材11,12により挟み込まれている。このとき、第1部材11は各横筋5の両端部50,50の内側(鉄筋籠Xの半径方向内側)に位置し、第2部材12は各横筋5の両端部50,50の外側(鉄筋籠Xの半径方向外側)に位置している。
【0052】
固定金具1により横筋5の両端部50,50を固定する鉄筋籠Xは、場所打ち杭に使用され、各縦筋4に対しそれぞれ個々に鉄筋籠Xの半径方向外方から環状の横筋5,5,…が交差している。各縦筋4及び各横筋5は、共に円柱形状に形成され、各縦筋4の外径が各横筋5の外径よりも若干大径に形成されている。
【0053】
縦筋4及び横筋5は、硬度が硬い鋼材(例えばSRR30などの鉄筋コンクリート用再生棒鋼)により成形されている。そして、鉄筋籠Xは、各縦筋4及び各横筋5によって円管状に形成されている。また、各縦筋4及び各横筋5は、互いの交差部位において図示しない線材や拘束金具により無溶接で固定されている。
【0054】
したがって、本実施の形態では、互いに重ね合わせた各横筋5の両端部50,50に対し第2部材12の一端側のヒンジ13のピン131回りに第1部材11を閉じて各横筋5の両端部50,50の軸線方向及び重ね合わせ方向と直交する内外両方向から同時に接するように挟み込んだ状態で、当該第1及び第2部材11,12の間に各横筋5の両端部50,50同士を周方向へ相対移動不能となるように第1及び第2部材11,12の他端側の固定具2により強固に締め付けて固定している。これにより、固定具2の強固な締め付けにより横筋5の両端部50,50同士の周方向への相対移動を禁止し、横筋5の両端部50,50を無溶接で固定することができる。
【0055】
しかも、横筋5の周方向で互いに相隣なる縦筋4,4同士の間において横筋5の両端部50,50同士がその周方向2箇所の固定金具1,1により固定されているので、互いに相隣なる縦筋4,4同士の間での2箇所の固定金具1,1により横筋5の周方向への移動範囲を制限することができる上、2つの固定金具1,1による横筋5の両端部50,50の固定を相隣なる縦筋4,4同士の間でより確実に行うことができる。
【0056】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。たとえば、前記各実施の形態では、鉄筋3又は横筋5の軸線方向2箇所の固定金具1,1により鉄筋3,3同士又は横筋5の両端部50,50同士を固定したが、互いに相隣なる縦筋同士の間で1箇所又は3箇所以上の固定金具により鉄筋同士又は横筋の両端部同士が固定されていてもよい。
【0057】
また、前記第1の実施の形態では、同一方向へ略直線状に延びる2本の鉄筋3,3同士を互いに重ね合わせた状態で固定金具1により固定する場合について述べたが、固定金具による固定部位においてほぼ同じ曲率で湾曲する2本の鉄筋同士を固定する場合にも適用できるのはいうまでもない。
【0058】
また、前記第2の実施の形態では、鉄筋籠Xの周方向に配置した9本の縦筋4,4,…に対し横筋5を周回するように配したが、縦筋は9本に限らず複数本であれば何本配置されていてもよい。
【0059】
また、前記各実施の形態では、型枠側に第2部材12を位置させ、ナット22を切欠孔21の周縁の屈曲部分122に締め付けた際に螺子部111及びナット22を第2部材12よりも第1部材11側となる反型枠側に位置させたが、型枠側に第1部材を位置させ、ナットを切欠孔の周縁の屈曲部分に締め付けた際に螺子部及びナットを第1部材よりも第2部材側となる反型枠側に位置させるようにしてもよい。この場合においても、螺子部及びナットが第1及び第2部材のいずれか一方よりも型枠側に位置することがなくなって、型枠までのコンクリート打設時のかぶり厚を十分に確保することが可能となる。
【0060】
更に、前記各実施の形態では、螺子部111及びナット22を、切欠孔21の周縁の屈曲部分122に対しナット22を締め付けた際に、第2部材12のコ字状部分121の延長線mよりも反型枠側となる内側に、第1部材11の湾曲部112を通る平行線nよりも型枠側となる外側にそれぞれ位置させたが、螺子部及びナットが、切欠孔の周縁の屈曲部分に対しナットを締め付けた際に、第1及び第2部材のうちの型枠側に位置する一方の部材よりも反型枠側となる内側に位置していればよい。
【符号の説明】
【0061】
1 固定金具
11 第1部材
111 螺子部
112 湾曲部
12 第2部材
122 屈曲部分
13 ヒンジ
2 固定具
21 切欠孔
22 ナット(螺合部材)
3 鉄筋
5 横筋(鉄筋)
50 端部