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特開2023-53460光ファイバ設置構造体及び光ファイバ材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053460
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】光ファイバ設置構造体及び光ファイバ材
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20230406BHJP
   G02B 6/245 20060101ALI20230406BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20230406BHJP
   G02B 6/255 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B6/46
G02B6/245
G01D5/353 A
G02B6/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162506
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000208695
【氏名又は名称】第一高周波工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591248223
【氏名又は名称】株式会社計測リサーチコンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉佑基
(72)【発明者】
【氏名】萱野帆高
(72)【発明者】
【氏名】梅本秀二
(72)【発明者】
【氏名】古賀将太
(72)【発明者】
【氏名】渡部竜輝
【テーマコード(参考)】
2F103
2H036
2H038
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103EC09
2F103GA14
2F103GA15
2H036MA01
2H036MA11
2H036PA11
2H036PA12
2H036PA13
2H038AA01
2H038CA02
2H038CA33
2H038CA63
2H038CA68
(57)【要約】
【課題】光ファイバセンシングにおいて、安定して高い測定精度で測定することを可能とする光ファイバ材やその製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明の光ファイバ材には、所定の間隔で複数の光ファイバ設置構造体が設けられている。光ファイバ心線20の樹脂被覆21の一部は除去され光ファイバ裸線24が露出した状態となっている。光ファイバ裸線24と、その両端の光ファイバ心線20は、同一の部材(固定ユニット30)により固定されている。固定ユニット30は、基礎平板31と、その略中央部に部分的に設けられた凸平板32が一体化した構造となっており、光ファイバ裸線24は凸平板32により、光ファイバ心線20は基礎平板31により固定されている。凸平板32は、光ファイバ心線20の樹脂被覆21の断面21Aと接触していない。この状態で、被覆除去部周辺の空間Sを、充填材により充填することにより、光ファイバ設置構造体を作製する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に光ファイバを設置するための、光ファイバ設置構造体であって、
該光ファイバ設置構造体が、光ファイバ心線の樹脂被覆が除去され光ファイバ裸線が露出した被覆除去部を有しており、
該被覆除去部の光ファイバ裸線と、該被覆除去部の両端の樹脂被覆が除去されていない2つの被覆残存部の光ファイバ心線とが、それぞれ、固定ユニットにより固定されており、
該固定ユニットが、基礎平板と、該基礎平板上の略中央部に部分的に設けられた凸平板が一体化した構造となっており、
該被覆除去部の光ファイバ裸線が、該凸平板により固定されており、
該被覆除去部の両端の被覆残存部の光ファイバ心線が、該基礎平板の該凸平板を有する方の面により固定されており、
該凸平板が、該光ファイバ心線の樹脂被覆の断面と接触しない状態となっており、
該被覆除去部周辺の空間が、充填材により充填されている
ことを特徴とする光ファイバ設置構造体。
【請求項2】
1つの被覆除去部が2つの固定ユニットによりサンドイッチ状に挟まれた状態となっている請求項1に記載の光ファイバ設置構造体。
【請求項3】
光ファイバ心線に、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバ設置構造体が複数設置されていることを特徴とする光ファイバ材。
【請求項4】
光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に光ファイバを設置するための、光ファイバ設置構造体の製造方法であって、
(1)光ファイバ心線の樹脂被覆を除去することにより、光ファイバ裸線が露出した被覆除去部を、該樹脂被覆が除去されていない2つの被覆残存部の間に形成する工程、
(2)基礎平板と、該基礎平板上の略中央部に部分的に設けられた凸平板とが一体化した構造の固定ユニットの該凸平板を、該被覆除去部の両端の被覆残存部の該光ファイバ心線の樹脂被覆の断面と接触しない状態で該被覆除去部の該光ファイバ裸線に接着させる工程、
(3)該固定ユニットの該基礎平板を、該凸平板を有する方の面において、該被覆除去部の両端の被覆残存部の光ファイバ心線に接着させる工程、及び、
(4)該被覆除去部周辺の空間を、充填材により充填する工程
を有することを特徴とする光ファイバ設置構造体の製造方法。
【請求項5】
1つの被覆除去部に前記工程(2)を2度行うことで、1つの被覆除去部が2つの固定ユニットによりサンドイッチ状に挟まれた状態となるようにする請求項4に記載の光ファイバ設置構造体の製造方法。
【請求項6】
2つの光ファイバ心線の先端部の樹脂被覆を除去し、露出した光ファイバ裸線の先端同士を接合することにより前記工程(1)を行う請求項4又は請求項5に記載の光ファイバ設置構造体の製造方法。
【請求項7】
前記凸平板と前記被覆除去部の光ファイバ裸線とが略接触した状態で、該凸平板を溶解可能な溶剤を該凸平板と該光ファイバ裸線の略接触部に供給することにより前記工程(2)を行う請求項4ないし請求項6の何れかの請求項に記載の光ファイバ設置構造体の製造方法。
【請求項8】
請求項4ないし請求項7の何れかの請求項に記載の光ファイバ設置構造体の製造方法を使用して、光ファイバ心線に該光ファイバ設置構造体が複数設置されている光ファイバ材を製造することを特徴とする光ファイバ材の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の光ファイバ材を有することを特徴とする構造物用部材。
【請求項10】
請求項9に記載の構造物用部材を利用して、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物を作製することを特徴とする光ファイバの設置方法。
【請求項11】
請求項3に記載の光ファイバ材を、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に設置することを特徴とする光ファイバの設置方法。
【請求項12】
前記構造物が、常温における縦弾性係数が1GPa以上10GPa以下の構造物用部材を含む構造物である請求項10又は請求項11に記載の光ファイバの設置方法。
【請求項13】
請求項3に記載の光ファイバ材を有することを特徴とする構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ設置構造体やその製造方法、かかる光ファイバ設置構造体が複数設置されている光ファイバ材やその製造方法、かかる光ファイバ材を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物に光ファイバセンサを取り付けて歪みや変形等を計測する方法(光ファイバセンシング)がある。光ファイバセンシングにおいて、測定精度の向上等の観点から、様々な改良がなされている。
【0003】
特許文献1においては、長手方向に間隔を隔てて位置する複数箇所において、布片により光ファイバセンサを接着固定している。特許文献1においては、布片としては土木構造物用の資材である不織布の一部分を切り取って作製した不織布片を使用しており、その理由は、河川堤防中に埋設した場合に、土砂とのなじみが良好であり、土砂と光ファイバとが一体となって変位するため、とされている。
【0004】
特許文献2には、コア又はクラッドの少なくとも一方に周期的屈折率分布構造が形成された光ファイバグレーティング部が、第1薄板と第2薄板との間にロウ材を介して挟み込まれて融着された構造の光ファイバグレーティング歪センサが開示されている。特許文献2に記載の発明では、光ファイバグレーティング部の任意の横断面を考えた場合、必ず薄板と2点で接しており、このため、薄板に対するセンサの位置が正確に位置決めされる。
【0005】
特許文献3には、光ファイバケーブルを、所望の弾性伸び歪を生じさせる張力をかけた状態で、取り付けるべき構造物の表面に当接ないし近接させ、該光ファイバケーブルの外周の半分以上の領域を、その近傍の構造物表面共々、骨材を配合した反応硬化性樹脂基組成物で覆装して被覆層を形成し、その後、該樹脂基組成物を硬化させることにより、構造物表面を支持面として固定する光ファイバケーブルの固定方法が開示されている。特許文献3に記載の発明では、骨材を配合した樹脂基組成物の被覆層は長期間に亘って接着力を保持すると共にクリープを生じることもなく、従って、光ファイバケーブルを長期間に亘って、均一な弾性伸び歪を付与した状態のままで構造物表面に固定することができる。
【0006】
特許文献4には、被観測地域内に飛び石状に配設し地盤に固定した杭の群に支持させて、索条を地表面に沿って張設し、該張設索条を副木的支持体としてこれに光ファイバを平行に取り付けて張設したことを特徴とする地盤変動観測用光ファイバ張設系が開示されている。特許文献4に記載の地盤変動観測用光ファイバ張設系は、長期間に亘って安定して且つ高精度で地盤変動を検出可能である。
【0007】
このように、光ファイバセンシングにおいては、光ファイバケーブルの取り付け方等に関して、様々な改良がなされているが、測定精度の更なる向上が求められており、かかる要求を解決することのできる技術の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001-249035号公報
【特許文献2】特開2005-121769号公報
【特許文献3】特開2002-131024号公報
【特許文献4】特開2002-317451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、光ファイバセンシングにおいて、安定して高い測定精度で測定することを可能とする光ファイバ材やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、光ファイバケーブルの内部構造に起因して、測定精度が低下する場合があることを発見した。
【0011】
図1に、光ファイバセンシングに使用される光ファイバケーブル(光ファイバ心線20)の構造を示す。光ファイバケーブル(光ファイバ心線20)は、光ファイバ裸線24が、二層の樹脂被覆21(一次被覆22、二次被覆23)により覆われた構造となっている。
光ファイバ裸線24は、コア(芯)とその外側のクラッドからなり、クラッドよりもコアの屈折率が高くなっている。コア及びクラッドは光に対する透過率が非常に高い石英ガラスやプラスチックで構成されている。一次被覆22は、紫外線(UV)硬化樹脂で構成されており、光ファイバ裸線24と一次被覆22を合わせた部分は、光ファイバ素線と呼ばれる。二次被覆23は、熱可塑性樹脂で構成されている。
【0012】
本発明者は、光ファイバケーブル内部において、光ファイバ裸線24と、樹脂被覆21との間の摩擦が小さいため、光ファイバ心線20に張力が付加された際に、光ファイバケーブル内部において、光ファイバ裸線24がスリップし、これにより測定精度が著しく低下すると推定した。
【0013】
本発明者は、光ファイバケーブル(光ファイバ心線20)の一部を除去することで光ファイバ裸線24を露出させ、光ファイバ裸線24とその両端の光ファイバ心線20とを同一の部材で固定することにより、かかるスリップ現象を防止できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に光ファイバを設置するための、光ファイバ設置構造体であって、
該光ファイバ設置構造体が、光ファイバ心線の樹脂被覆が除去され光ファイバ裸線が露出した被覆除去部を有しており、
該被覆除去部の光ファイバ裸線と、該被覆除去部の両端の樹脂被覆が除去されていない2つの被覆残存部の光ファイバ心線とが、それぞれ、固定ユニットにより固定されており、
該固定ユニットが、基礎平板と、該基礎平板上の略中央部に部分的に設けられた凸平板が一体化した構造となっており、
該被覆除去部の光ファイバ裸線が、該凸平板により固定されており、
該被覆除去部の両端の被覆残存部の光ファイバ心線が、該基礎平板の該凸平板を有する方の面により固定されており、
該凸平板が、該光ファイバ心線の樹脂被覆の断面と接触しない状態となっており、
該被覆除去部周辺の空間が、充填材により充填されている
ことを特徴とする光ファイバ設置構造体を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、光ファイバ心線に、前記の光ファイバ設置構造体が複数設置されていることを特徴とする光ファイバ材を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に光ファイバを設置するための、光ファイバ設置構造体の製造方法であって、
(1)光ファイバ心線の樹脂被覆を除去することにより、光ファイバ裸線が露出した被覆除去部を、該樹脂被覆が除去されていない2つの被覆残存部の間に形成する工程、
(2)基礎平板と、該基礎平板上の略中央部に部分的に設けられた凸平板とが一体化した構造の固定ユニットの該凸平板を、該被覆除去部の両端の被覆残存部の該光ファイバ心線の樹脂被覆の断面と接触しない状態で該被覆除去部の該光ファイバ裸線に接着させる工程、
(3)該固定ユニットの該基礎平板を、該凸平板を有する方の面において、該被覆除去部の両端の被覆残存部の光ファイバ心線に接着させる工程、及び、
(4)該被覆除去部周辺の空間を、充填材により充填する工程
を有することを特徴とする光ファイバ設置構造体の製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記の光ファイバ設置構造体の製造方法を使用して、光ファイバ心線に該光ファイバ設置構造体が複数設置されている光ファイバ材を製造することを特徴とする光ファイバ材の製造方法を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、前記の光ファイバ材を有することを特徴とする構造物用部材を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、構造物用部材を利用して、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物を作製することを特徴とする光ファイバの設置方法を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、前記の光ファイバ材を、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に設置することを特徴とする光ファイバの設置方法を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、前記の光ファイバ材を有することを特徴とする構造物を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、光ファイバ裸線24とその両端の光ファイバ心線20とを同一の部材(固定ユニット30)で固定するので、光ファイバ心線20に張力が付加された際に、光ファイバケーブル内部において、光ファイバ裸線24がスリップしにくく、ケーブル内部の摩擦の問題に起因する測定精度の低下の問題が発生しにくい。
【0023】
本発明では、光ファイバ心線20の樹脂被覆21の一部を除去し、光ファイバ裸線24を固定ユニット30で固定しているので、構造物の変形が光ファイバ裸線24に伝わりやすいことから、測定精度が向上しやすい。
【0024】
本発明では、光ファイバ裸線24とその両端の光ファイバ心線20とを固定ユニット30の平面上に固定し、該固定ユニット30を、測定対象となる構造物上に固定する。このため、光ファイバ心線20を金属管中に入れて構造物上に固定する方法等と比較して、構造物と固定ユニット30との接触面積を増加させることができ、光ファイバ裸線24(測定素子)の安定性が向上する。特に、構造物がジオグリッドのような柔らかい物である場合に、このような本発明の長所が発揮されやすい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】光ファイバケーブルの構造を示す図である。
図2】本発明の光ファイバ材の模式図である。
図3】工程(1)において、被覆除去部10を2つの被覆残存部11の間に形成した状態を示す図である。
図4】工程(1)において、光ファイバ裸線24の先端24A同士を接合することで被覆除去部10を形成する方法を示す図である。 (a)樹脂被覆21を除去する前の状態 (b)樹脂被覆21を除去した状態 (c)光ファイバ裸線24の先端24A同士を接合した状態
図5】固定ユニット30の一例を示す図である。 (a)平面図 (b)正面図 (c)右側面図
図6】固定ユニット30の一例を示す図である。 (a)平面図 (b)正面図 (c)右側面図
図7】工程(2)において、固定ユニット30を被覆除去部10の光ファイバ裸線24の付近に位置させた状態を示す図である。
図8】工程(2)において、2つの固定ユニット30を被覆除去部10の光ファイバ裸線24の付近に位置させた状態を示す図である。
図9】工程(4)において、充填材40により充填する「被覆除去部10周辺の空間S」の一例を示す図である。
図10】工程(4)完了後の光ファイバ設置構造体1の一例を示す図である。
図11】光ファイバ材2同士を接合し、長い光ファイバ材2を作製する方法を示す図である。
図12】ジオグリッドG上に、本発明の光ファイバ材2を設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0027】
本発明は、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に光ファイバを設置するための、光ファイバ設置構造体1や、光ファイバ心線20に、該光ファイバ設置構造体1が複数設置されていることを特徴とする光ファイバ材2に関する。
【0028】
図2に、本発明の光ファイバ材2の模式図を示す(光源や受光素子は省略)。本発明の光ファイバ材2は、光ファイバケーブル(光ファイバ心線20)に、光ファイバ設置構造体1が、所定の間隔で複数設けられた部材である。本発明の光ファイバ材2を、測定の対象である構造物に設置することにより、該構造物を光ファイバセンシングに供することができる。
【0029】
[光ファイバ設置構造体及びその製造方法]
本発明の光ファイバ設置構造体1を、その製造方法の一例とともに、以下、説明する。本発明の光ファイバ設置構造体1の製造方法の一例は、下記する工程(1)~工程(4)を有する。
【0030】
<工程(1)>
工程(1)においては、光ファイバ心線20の樹脂被覆21を除去することにより、光ファイバ裸線24が露出した被覆除去部10を、樹脂被覆21が除去されていない2つの被覆残存部11の間に形成する(図3)。樹脂被覆21は、一次被覆22と二次被覆23の二層からなるが、二層とも除去することで被覆除去部10を形成する。
【0031】
被覆除去部10を形成する方法、すなわち、樹脂被覆21を除去する方法に特に制限はなく、例えば、ジャケットストリッパを用いる方法、ナイフで樹脂被覆を切り取る方法、樹脂被覆を焼いて除去する方法等が挙げられる。
【0032】
被覆除去部10の長さは、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることが特に好ましい。また、40mm以下であることが好ましく、35mm以下であることがより好ましく、30mm以下であることが特に好ましい。
被覆除去部10の長さが上記範囲内であると、寸法的に光ファイバ設置構造体1を作製しやすい。
【0033】
工程(1)は、2つの光ファイバ心線20の先端部20Aの樹脂被覆21を除去し、露出した光ファイバ裸線24の先端24A同士を接合することにより行うことができる(図4)。
すなわち、この場合、2つの光ファイバ心線20を用意し(図4(a))、それぞれの光ファイバ心線20の先端部20Aの樹脂被覆21を除去する(図4(b))。次いで、光ファイバ裸線24の先端24A同士を接合して、接合部24Bを形成する(図4(c))。
【0034】
このようにすることで、ジャケットストリッパを使用して工程(1)を行うことができ、作業効率を高めることができる。
「2つの光ファイバ心線20」は、例えば、1つの光ファイバ心線20を切断することによって得ることができる。
【0035】
接合の例としては、融着、メカニカルスプライス等が挙げられる。融着の例としては、プラズマ融着等が挙げられる。
【0036】
接合部24Bの位置について、特に限定はないが、被覆除去部10の中間点付近に接合部24Bが存在するのが望ましい。すなわち、2つの光ファイバ心線20の先端部20Aの樹脂被覆21を除去する際には、同程度の長さを除去するのが望ましい。
【0037】
工程(1)は、ナイフで樹脂被覆を切り取る方法等により行うこともできる。この場合、光ファイバ裸線24の接合部24Bは存在しない。
【0038】
<工程(2)>
工程(2)においては、基礎平板31と、基礎平板31上の略中央部に部分的に設けられた凸平板32とが一体化した構造の固定ユニット30の凸平板32を、被覆除去部10の両端の被覆残存部11の光ファイバ心線20の樹脂被覆21の断面21Aと接触しない状態で被覆除去部10の光ファイバ裸線24に接着させる。
【0039】
固定ユニット30は、露出した光ファイバ裸線24とその両端の光ファイバ心線20を固定するための部材である。
固定ユニット30は、2つの平板(基礎平板31と凸平板32)が一体化した構造となっている。固定ユニット30の形状の一例を、図5及び図6に示す。
【0040】
固定ユニット30において、凸平板32は、基礎平板31上の略中央部に部分的に設けられている。凸平板32の面積は、基礎平板31の面積よりも小さい。
【0041】
工程(2)においては、固定ユニット30の凸平板32を被覆除去部10の光ファイバ裸線24の付近に位置させ、基礎平板31の端部(凸平板32が設けられていない部分)を被覆除去部10の両端の被覆残存部11の光ファイバ心線20の樹脂被覆21の付近に位置させた状態とする(図7)。
【0042】
この際に、凸平板32が、被覆除去部10の両端の被覆残存部11の光ファイバ心線20の樹脂被覆21の断面21Aと接触しないようにする。
仮に、凸平板32が断面21Aと接触していた場合、光ファイバ裸線24が、凸平板32と断面21Aとの接触部周辺で破断する場合がある。
【0043】
次いで、凸平板32と光ファイバ裸線24の略接触部Cにおいて、凸平板32と光ファイバ裸線24を接着させることで、光ファイバ裸線24を凸平板32上に固定する。
【0044】
固定ユニット30を構成する基礎平板31と凸平板32の材質について特に限定はなく、その具体例としては、鉄、銅、ステンレス、チタニウムやこれらの合金等の金属;ポリスチレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、FRP等の樹脂;等が例示できる。
【0045】
また、基礎平板31と凸平板32の材質は同一であってもよいし、異なっていてもよい。同一である場合、基礎平板31と凸平板32を一体に成型して固定ユニット30を作製してもよいし、別々に成型して作製した基礎平板31と凸平板32を接合してもよい。
基礎平板31と凸平板32が異なる材質である場合、又は、同一の材質であるが別々に成型して作製する場合、基礎平板31と凸平板32を接合する方法としては、接着、融着、ネジ止め等が例示できる。
接着の場合、エポキシ樹脂系接着剤を使用することが好ましい。
【0046】
基礎平板31は、光ファイバ設置構造体1が完成し、光ファイバ設置構造体1を複数有する光ファイバ材2を土壌中やトンネル中に設置したり、飛来塩分の多い海岸近くの構造物に設置したりする場合は、基礎平板31には強度や対候性が要求される。このことから、基礎平板31の材質としては、上記したもののうち、ステンレス、チタニウム、チタニウム合金、FRPが好ましい。
【0047】
工程(2)において、凸平板32と光ファイバ裸線24を接着させる方法としては、接着剤を使用してもよいが、凸平板32を、溶剤に溶解可能な材質で形成し、溶解させることによって接着剤を使用せずに接着することもできる。
【0048】
工程(2)において接着剤を使用しない場合(凸平板32を溶剤に溶解させることで接着を行う場合)、凸平板32と被覆除去部10の光ファイバ裸線24とが略接触した状態で、凸平板32を溶解可能な溶剤を凸平板32と光ファイバ裸線24の略接触部Cに供給する。
これにより、略接触部Cの付近の凸平板32が溶解し、溶剤が揮発することにより、凸平板32と光ファイバ裸線24とが接着される。
【0049】
凸平板32を溶剤に溶解させることで接着を行うことにより、接着剤を別途容易する必要がないのみならず、凸平板32の厚さ等において、寸法上の誤差があったとしても、光ファイバ裸線24が歪んだり撓んだりすることなく、安定して凸平板32の上に固定しやすくなる。
【0050】
このような点から、凸平板32の材質は、溶剤に溶解可能な材質であることが望ましく、上記したもののうち、具体的には、ポリスチレンが好ましい。
【0051】
凸平板32を溶解させるための溶剤としては、凸平板32を溶解しやすく、揮発しやすいものが望ましい。かかる溶剤としては、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン等が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
基礎平板31の面積は、650mm以上であることが好ましく、715mm以上であることがより好ましく、780mm以上であることが特に好ましい。また、975mm以下であることが好ましく、910mm以下であることがより好ましく、845mm以下であることが特に好ましい。
【0053】
基礎平板31の厚さは、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることが特に好ましい。また、4.0mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることがより好ましく、3.0mm以下であることが特に好ましい。
基礎平板31の厚さが上記範囲内であると、強度や耐久性と、コストを両立させることができる。
【0054】
凸平板32の面積は、72mm以上であることが好ましく、78mm以上であることがより好ましく、84mm以上であることが特に好ましい。また、120mm以下であることが好ましく、114mm以下であることがより好ましく、108mm以下であることが特に好ましい。
【0055】
凸平板32の厚さは、必然的に、下記式で表されるL[mm]とほぼ等しい値に決定される。
【0056】
L=(光ファイバ心線20の外径-光ファイバ裸線24の外径)/2
【0057】
凸平板32を溶剤に溶解させることで凸平板32と光ファイバ裸線24の接着を行う場合、凸平板32の厚さは、Lと同一であるか、Lよりも若干大きいことが好ましい。
凸平板32の厚さがLよりも若干大きい場合、(L+0.05)mm以上であることが好ましく、(L+0.10)mm以上であることがより好ましく、(L+0.15)mm以上であることが特に好ましい。また、(L+0.30)mm以下であることが好ましく、(L+0.25)mm以下であることがより好ましく、(L+0.20)mm以下であることが特に好ましい。
凸平板32の厚さがLよりも若干大きい場合、凸平板32の厚さの値とLとの差は、後述の工程(3)において形成する被覆残存部11の光ファイバ心線20と基礎平板31の間の接着層の厚さに概ね相当する。
【0058】
接着剤を別途用意して凸平板32と光ファイバ裸線24の接着を行う場合、凸平板32の厚さは、Lと同じくらいであることが望ましい。具体的には、凸平板32の厚さは、(L-0.09)mm以上であることが好ましく、(L-0.06)mm以上であることがより好ましく、(L-0.03)mm以上であることが特に好ましい。また、(L+0.15)mm以下であることが好ましく、(L+0.10)mm以下であることがより好ましく、(L+0.05)mm以下であることが特に好ましい。
【0059】
基礎平板31及び凸平板32の形状に特に限定はなく、長方形、正方形、楕円形等が挙げられるが、製造のしやすさ、設置のしやすさ等の点から、長方形が最適である。なお、「長方形」といった場合、長方形の角が面取りされている形状等の「略長方形」も含まれる。
基礎平板31及び凸平板32が長方形である場合、光ファイバ心線20及び光ファイバ裸線24の方向(図5及び図6における矢印の方向)が長辺であることが望ましい。
以下、このような場合について、基礎平板31及び凸平板32の形状の好ましい範囲について述べる。
【0060】
凸平板32の長辺の長さは、必然的に、被覆除去部10の長さより短い値に決定される。被覆除去部10の長さから凸平板32の長辺の長さを引いた値は、8mm以上であることが好ましく、9mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることが特に好ましい。また、15mm以下であることが好ましく、14mm以下であることがより好ましく、13mm以下であることが特に好ましい。
【0061】
固定ユニット30を設置し、凸平板32を光ファイバ裸線24に接着させる際には、図5及び図6に示すように、凸平板32が被覆除去部10の中央付近に位置するようにするのが望ましい。
【0062】
この場合、光ファイバ心線20の樹脂被覆21の断面21Aと凸平板32との間の距離は、上記した「被覆除去部10の長さから凸平板32の長辺の長さを引いた値」の半分となる。
すなわち、光ファイバ心線20の樹脂被覆21の断面21Aと凸平板32との間の距離は、1.0mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることが特に好ましい。また、6.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることが特に好ましい。
光ファイバ心線20の樹脂被覆21の断面21Aと凸平板32との間の距離が、上記範囲内であると、光ファイバ裸線24が、凸平板32と断面21Aとの接触部周辺で破断することを防止できる。
【0063】
基礎平板31の長辺の長さは、必然的に、被覆除去部10の長さより長い値に決定される。基礎平板31の長辺の長さから被覆除去部10の長さを引いた値は、30mm以上であることが好ましく、35mm以上であることがより好ましく、40mm以上であることが特に好ましい。また、60mm以下であることが好ましく、55mm以下であることがより好ましく、50mm以下であることが特に好ましい。
【0064】
基礎平板31及び凸平板32の長辺の長さと、被覆除去部10の長さの関係、及び、凸平板32の設置位置を上記のようにすることによって、光ファイバ裸線24を安定して凸平板32の上に固定することができ、測定精度が向上しやすい。
【0065】
基礎平板31の短辺の長さは、8mm以上であることが好ましく、9mm以上であることがより好ましく、10mm以上であることが特に好ましい。また、22mm以下であることが好ましく、21mm以下であることがより好ましく、20mm以下であることが特に好ましい。
【0066】
凸平板32の短辺の長さは、基礎平板31の短辺の長さと同一であってもよいし(図6)、異なっていてもよい(図5)。
凸平板32の短辺の長さは、5mm以上であることが好ましく、6mm以上であることがより好ましく、7mm以上であることが特に好ましい。また、10mm以下であることが好ましく、9mm以下であることがより好ましく、8mm以下であることが特に好ましい。
【0067】
工程(2)において、凸平板32と光ファイバ裸線24の接着を行う際には、光ファイバ裸線24が撓まないように、光ファイバ心線20の両端に張力をかけた状態で接着するのが望ましい。
この際の張力は0.3N以上であることが好ましく、0.4N以上であることがより好ましく、0.5N以上であることが特に好ましい。また、0.8N以下であることが好ましく、0.7N以下であることがより好ましく、0.6N以下であることが特に好ましい。
【0068】
本発明においては、1つの被覆除去部10に工程(2)を2度行ってもよい。このようにすることで、1つの被覆除去部10が2つの固定ユニット30によりサンドイッチ状に挟まれた状態となる(図8)。
【0069】
1つの被覆除去部10が2つの固定ユニット30によりサンドイッチ状に挟むことにより、光ファイバ設置構造体1の安定性が向上する等の効果を奏する。
【0070】
<工程(3)>
工程(3)においては、固定ユニット30の基礎平板31を、凸平板32を有する方の面において、被覆除去部10の両端の被覆残存部11の光ファイバ心線20に接着させることによって、光ファイバ心線20を基礎平板31に固定する。
図7及び図8に示すように、基礎平板31は、凸平板32よりも大きく、基礎平板31の周縁部は、光ファイバ心線20に略接触した状態となっているので、工程(3)において、基礎平板31と光ファイバ心線20を接着させる。
【0071】
光ファイバ材2の設置完了後、基礎平板31は、露出した状態となり空気中又は水中にさらされるため、基礎平板31は水や有機溶剤に溶解しない材質であることが求められる。
【0072】
このため、工程(3)における接着には、公知の接着剤を適宜使用して行う。かかる接着剤の例としては、エポキシ樹脂系接着剤等を使用することができる。
公知の接着剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
工程(3)において形成する接着層の厚さは、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることが特に好ましい。また、4.0mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることがより好ましく、3.0mm以下であることが特に好ましい。
接着層の厚さが上記範囲内であると、固定ユニット30に光ファイバ心線20を安定して固定することができ、測定精度が安定する。また、コストを抑制することができる。
【0074】
<工程(4)>
工程(4)においては、被覆除去部10周辺の空間Sを、充填材40により充填する。
【0075】
「被覆除去部10周辺の空間S」とは、少なくとも、光ファイバ裸線24の周囲の空間をいう。光ファイバ裸線24の周囲の空間が充填材40により充填されていることによって、光ファイバ裸線24が安定し、測定精度が向上する。
【0076】
また、充填材40の原料コスト以外の点を抜きにすれば、「被覆除去部10周辺の空間S」、すなわち充填材40により充填される空間の範囲は、広くても差し支えなく、例えば、図9に示す範囲を「被覆除去部10周辺の空間S」とすることができる。
【0077】
充填材40としては、公知の接着剤、ロウ材等を使用することができる。
接着剤としては、前記の工程(3)の項で例示したものと同様のものを使用することができる。
【0078】
充填材40が接着剤である場合、工程(3)と工程(4)は、同時に実施してもよい。むしろ、その方が、作業効率の点から好ましい。
【0079】
1つの被覆除去部10に工程(2)を2度行う場合は、工程(2)を連読して2度行った後に、工程(3)及び工程(4)を行ってもよいし、工程(2)を1度行った後に、工工程(3)及び工程(4)を行ってから、2度目の工程(2)を行い、最後に工程(3)及び工程(4)を行ってもよい。
作業効率の点から、工程(2)を連読して2度行った後に、工程(3)及び工程(4)を行うのが望ましい。
【0080】
工程(4)完了後の光ファイバ設置構造体1の一例(2つの固定ユニット30を使用し、被覆除去部10周辺の空間Sを広めに取った場合)を、図10に示す。
光ファイバ裸線24は、固定ユニット30に固定され、その周囲を充填剤40により覆われ、安定した状態となっている。
【0081】
[光ファイバ材及びその製造方法]
本発明の光ファイバ材2は、光ファイバ心線20に、前記した光ファイバ設置構造体1が、複数設けられたものである(図2)。
【0082】
光ファイバ材2に設けられた光ファイバ設置構造体1は、前記した各工程(工程(1)~工程(4))を行うことにより、製造することができる。
【0083】
光ファイバ材2を製造する際には、前記した各工程を、光ファイバ設置構造体1の設置箇所ごとに実施することで光ファイバ設置構造体1を設けるようにしてもよいし、複数の設置個所で各工程をまとめて行うようにしてもよい。
【0084】
前記のように、工程(1)を行う際には、2つの光ファイバ心線20の先端部20Aの樹脂被覆21を除去し、露出した光ファイバ裸線24の先端24A同士を接合することで、被覆除去部10を形成することができる。この方法で行う場合、光ファイバ設置構造体1が既に設置された光ファイバ材2同士を接合し、接合部に光ファイバ設置構造体1を設けることにより、長い光ファイバ材2を作製することができる(図11)。
【0085】
光ファイバ材2における光ファイバ設置構造体1の設置間隔(光ファイバ設置構造体1と隣接する光ファイバ設置構造体1との距離)は、基礎平板31の長辺方向の長さ以上であればよく、光ファイバ材2と構造物を一体化させるという理由から、できるだけ短い方が好ましい。具体例を挙げれば、10cm以上500cm以下である。
【0086】
[光ファイバの設置方法]
作製された光ファイバ材2を、構造物に設置することにより、該構造物を光ファイバセンシングに供することができる。
【0087】
光ファイバ材2を構造物に設置する際には、まず、構造物の構成要素である構造物用部材に光ファイバ材2を設置し、かかる構造物用部材(光ファイバ材を有する構造物用部材)を利用して構造物を作製するようにすることができる。
また、光ファイバ材2を設置していない構造物用部材を用いて構造物を作製し、かかる構造物に、光ファイバ材2を設置するようにすることもできる。
【0088】
すなわち、本発明は、前記の光ファイバ材を有することを特徴とする構造物用部材や、該構造物用部材を利用して、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物を作製することを特徴とする光ファイバの設置方法に関する。
また、本発明は、前記の光ファイバ材を、光ファイバセンサによる測定の対象である構造物に設置することを特徴とする光ファイバの設置方法に関する。
更に、本発明は、前記の光ファイバ材を有することを特徴とする構造物に関する。
【0089】
本発明において、光ファイバセンサによる測定の対象となる構造物に関して、特に制限はないが、構造物を構成する構造物用部材が柔らかい材料からなる場合、光ファイバ裸線24(測定素子)がしっかりと安定して固定される、という本発明の長所が生かされやすく、本発明の光ファイバ材2の設置対象として適している。
ここで、柔らかい材料からなる構造物用部材とは、例えば、常温における縦弾性係数が1GPa以上10GPa以下の構造物用部材である。かかる構造物用部材の具体的な素材としては、ポリエステル系繊維、アラミド系繊維等の樹脂繊維とその他の樹脂材料との複合材が挙げられる。
【0090】
本発明における構造物の例としては、盛土等の土構造物が挙げられる。また、本発明における構造物用部材(構造物を作製に用いられる部材)の例としては、構造部材や、ジオグリッド等の土木・建築資材が挙げられる。
【0091】
ジオグリッドGは、合成樹脂等で構成された、引張抵抗を有する網目状の土木・建築資材で、主に法面や道路盛土等の補強に使用される。
ジオグリッドGは、前記した縦弾性係数の範囲を満たす場合が多く、本発明の光ファイバ材2の設置対象として適している。
【0092】
図12に示すように、光ファイバ材2を、ジオグリッドG上に設置する際には、光ファイバ設置構造体1の固定ユニット30の基礎平板31の凸平板32が存在しない方の面を、ジオグリッドGに接着等することにより固定する。
光ファイバ設置構造体1(接着等による固定箇所)は、ジオグリッドGの格子の交点上に設けるのが望ましい。ジオグリッドGの格子の交点を目安に光ファイバ設置構造体1を設置することで、設置時の施工効率を向上させることができる。
【0093】
光ファイバ材2を、ジオグリッドG上に設置する際には、光ファイバ設置構造体1(の基礎平板31)以外にも、光ファイバ心線20を接着等により固定した固定箇所3を設けてもよい。
かかる固定箇所3も、ジオグリッドGの格子の交点上に設けるのが望ましい。ジオグリッドGの格子の交点を目安に固定箇所3を設けることで、設置時の施工効率を向上させることができる。
【0094】
ジオグリッドGは、ポリエチレン等で形成されており、一般に接着性が良好ではない。光ファイバ材2を、ジオグリッドG上に接着により固定する際に使用される接着剤としては、ポリエチレン等に対して良好な接着性を示すものを選択する必要がある。かかる接着剤の具体例としては、スチレンブタジエンゴム系接着剤、変成シリコーン系接着剤等が挙げられる。
これらの接着剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0095】
光ファイバ材2を、ジオグリッドG上に接着等により固定する際には、光ファイバ材2に歪みを付与した状態で固定するのが望ましい。
光ファイバ材2に付与する歪みは、500με以上であることが好ましく、1000με以上であることがより好ましく、2000με以上であることが特に好ましい。また、5000με以下であることが好ましく、4000με以下であることがより好ましく、3000με以下であることが特に好ましい。
光ファイバ材2に付与する歪みが上記範囲内であると、光ファイバ裸線24が安定して固定され、測定精度が向上しやすい。
【0096】
本発明により、ジオグリッド等の構造物上に設置された光ファイバ材2は、光ファイバセンシングに供される。
【0097】
本発明により設置した光ファイバで光ファイバセンシングを行う際の測定方式に特に限定はなく、FBG(Fiber Bragg Grating)、BOTDA(Brillouin Optical Time Domain Analysis)、BOTDR(Brillouin Optical Time Domain Reflectometry)、BOCDA(Brillouin Optical Correlation Domain Analysis)、BOCDR(Brillouin Optical Correlation Domain Reflectometry)等が例示できる。
【0098】
本発明により設置した光ファイバは、特に、BOTDRによる光ファイバセンシングを行うのに適している。この理由は、光ファイバ設置構造体1によって、光ファイバ心線20を間欠的に安定して固定することが可能となり、光ファイバセンサの施工効率と測定精度との両方を向上させることができるためである。
【実施例0099】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0100】
実施例1
以下のようにして、光ファイバ設置構造体1を複数有する光ファイバ材2を作製し、ジオグリッドG上に設置した。
【0101】
<1>一対の光ファイバ心線20の先端部20Aの樹脂被覆21を、ジャケットストリッパで、それぞれ10mm程度除去し、光ファイバ裸線24を露出させた。
【0102】
<2>上記<1>で光ファイバ裸線24を露出させた一対の光ファイバ心線20の先端24A同士を突き合わせて融着接合した。
【0103】
<3>SUS304板(長辺50mm、短辺8mm、厚さ1mm)の中央部に、ポリスチレン板(長辺12mm、短辺6mm、厚さ0.3mm)をエポキシ樹脂で接着し、複合板(固定ユニット30)を作製した。
【0104】
<4>上記<2>で融着接合により作製した接合部24Bが、上記<3>で作製した複合板(固定ユニット30)のポリスチレン板(凸平板32)の中央部に位置するようにして、ポリスチレン板と光ファイバ裸線24の接触部にテトラヒドロフランを供給し、ポリスチレン板を溶解させることで、光ファイバ裸線24とポリスチレン板とを接着した。その際、光ファイバ裸線24が撓まないように、光ファイバ心線20の両端に張力をかけた状態で接着した。
【0105】
<5>エポキシ樹脂で、SUS304板上にある光ファイバ心線20及び光ファイバ裸線24の全体を接着(樹脂含浸)することで、光ファイバ心線20をSUS304板(基礎平板31)に接着固定するとともに、被覆除去部10周辺の空間Sを充填した。
【0106】
<6>上記<3>と同様にして作製した複合板を使用して、上記<4>~<5>と同様の操作をすることにより、1つの被覆除去部10が2つの固定ユニット30によりサンドイッチ状に挟まれた光ファイバ設置構造体1を作製した。
【0107】
<7>上記<1>~<6>で光ファイバ設置構造体1を作製するのに使用した一対の光ファイバ心線20のうちの片方の先端部20Aの樹脂被覆21を、ジャケットストリッパで10mm程度除去し、光ファイバ裸線24を露出させた。また、別に用意した光ファイバ心線20の先端部20Aの樹脂被覆21も同様に10mm程度除去して光ファイバ裸線24を露出させた。次いで、光ファイバ心線20の先端24A同士を突き合わせて融着接合した。
【0108】
<8>上記<7>で作製した接合部24Bが、上記<3>と同様にして作製した複合板のポリスチレン板の中央部に位置するようにして、ポリスチレン板と光ファイバ裸線24の接触部にテトラヒドロフランを供給し、ポリスチレン板を溶解させることで、光ファイバ裸線24とポリスチレン板とを接着した。その際、光ファイバ裸線24が撓まないように、光ファイバ心線20の両端に張力をかけた状態で接着した。
【0109】
<9>エポキシ樹脂で、SUS304板上にある光ファイバ心線20及び光ファイバ裸線24の全体を接着(樹脂含浸)することで、光ファイバ心線20をSUS304板(基礎平板31)に接着固定するとともに、被覆除去部10周辺の空間Sを充填した。
【0110】
<10>上記<3>と同様にして作製した複合板を使用して、上記<4>~<5>と同様の操作をすることにより、2つ目の光ファイバ設置構造体1を作製した。
【0111】
<11>上記<7>~<10>と同様の操作をすることにより、3つ目の光ファイバ設置構造体1を作製した。
3つの光ファイバ設置構造体1を有する光ファイバ材2において、光ファイバ設置構造体1の設置間隔は、100cm程度だった。
【0112】
<12>ジオグリッドGに、光ファイバ材2をテープ等で仮止めし、3つの光ファイバ設置構造体1のうち左端のものを、ジオグリッドGにスチレンブタジエンゴム系接着剤で固定した。
【0113】
<13>上記<12>で光ファイバ設置構造体1を接着固定した接着剤が乾燥した後で、引張治具で光ファイバ材2に2000μεの歪みを付与した状態で、残りの光ファイバ設置構造体1をスチレンブタジエンゴム系接着剤でジオグリッドGに固定した。
【0114】
<14>更に、光ファイバ設置構造体1同士の間の光ファイバ心線20を、ジオグリッドGの格子の数点において、スチレンブタジエンゴム系接着剤で固定した。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の光ファイバ設置構造体1及びその製造方法は、光ファイバケーブル内部において、光ファイバ裸線24がスリップしにくいため、ケーブル内部の摩擦の問題に起因する測定精度の低下の問題が発生しにくいので、特に、ジオグリッドのような柔らかい材料からなる構造物用部材を含む構造物の光ファイバセンシングに広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0116】
1 光ファイバ設置構造体
2 光ファイバ材
3 固定箇所
10 被覆除去部
11 被覆残存部
20 光ファイバ心線
20A 光ファイバ心線の先端部
21 樹脂被覆
21A 樹脂被覆の断面
22 樹脂被覆(一次被覆)
23 樹脂被覆(二次被覆)
24 光ファイバ裸線
24A 光ファイバ裸線の先端
24B 光ファイバ裸線の接合部
30 固定ユニット
31 基礎平板
32 凸平板
40 充填材
C 凸平板と光ファイバ裸線の略接触部
G ジオグリッド
S 被覆除去部の周囲の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12