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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053496
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】受粉用の蜂の巣箱及び巣箱カバー
(51)【国際特許分類】
   A01K 47/00 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A01K47/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162563
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】594137557
【氏名又は名称】丸東東海商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】金子 幸義
(57)【要約】
【課題】蜂にとって快適な環境を維持しつつ安全な給餌を可能にする。
【解決手段】ミツバチ用巣箱1は、内部に巣脾枠を収納すると共に前面壁11に開閉可能な巣門13を備えた巣箱本体10と、給餌装置40とを備えたものであって、給餌装置40は、底面開放の本体カップ41と、本体カップ41の開放端に脱着可能であって、流通口45を介して本体カップ41と連通される給餌用突出部42bを備える下皿42と、本体カップ41に脱着可能に外側から嵌合される取付具43とを備え、巣箱本体10を、その前面壁11よりも前方に向かって延びる側壁部を形成する巣箱カバー20で覆い、給餌装置40を、給餌用突出部42bが内側に突出し、下皿42に嵌合させた本体カップ41が側壁部の外側で起立した状態となる様に、取付具43を介して取り付けたられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に巣脾枠を収納すると共に前面壁に開閉可能な巣門を備えた巣箱本体と、前記巣箱本体に収容された蜂に対して給餌を行う給餌装置とを備え、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする受粉用の蜂の巣箱。
(1A)前記給餌装置は、
(1A1)底面開放の本体カップと、
(1A2)前記本体カップの開放端に脱着可能であって、流通口を介して前記本体カップと連通される給餌用突出部を備える下皿と、
(1A3)前記本体カップに脱着可能な取付具と、
を備えていること。
(1B)前記巣箱本体に、前記前面壁よりも前方に向かって延びる側壁部を備えさせたこと。
(1C)前記給餌装置を、前記給餌用突出部が前記側壁部の内側に突出し、前記下皿に嵌合させた前記本体カップが前記側壁部の外側で起立した状態となる様に、前記取付具を介して前記側壁部に対して取り付けたこと。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1に記載の受粉用の蜂の巣箱。
(2A)前記本体カップは、光透過性を有する素材で形成され、下端部には段差部が形成され、前記段差部よりも下側は外径が小さい嵌合部とされていること。
(2B)前記下皿は、上端開放で前記給餌用突出部が連通されたカップ受け部を備え、前記カップ受け部の内径を前記本体カップの前記嵌合部の外径と一致させると共に、前記カップ受け部を前記嵌合部よりも深くすることにより、前記本体カップの下端と前記カップ受け部の底との間に前記流通口が形成された状態となる様に構成されていること。
(2C)前記取付具は、馬蹄状本体部と係止部とからなるプラスチック成形体で構成され、前記馬蹄状本体部の内径が前記本体カップの外径よりも小さくされていて、装着したときに前記本体カップを挟み付けたままで高さ方向に摺動可能な状態に取り付けることができる様に構成されていること。
(2D)前記側壁部には、前記給餌用突出部を内側に突き出す様に前記係止部を係止させる下穴及び上穴を備えていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の受粉用の蜂の巣箱。
(3)前記巣箱本体の外側を覆うと共に前記側壁部を形成する巣箱カバーを備えていること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の受粉用の蜂の巣箱。
(4)前記巣箱本体に、前記側壁部と対面して前記前面壁よりも前方に向かって延びる対面側側壁部を備えさせ、前記給餌装置と同様の構成からなる給水装置を、給水用突出部を内側で突出させ、給水用本体カップを外側で起立させる様に前記対面側側壁部に対して取り付けたこと。
【請求項5】
巣箱本体の外側を取り巻く様に覆う角筒状本体を備えると共に、以下の構成をも備えたことを特徴とする受粉用の蜂の巣箱カバー。
(5A)前記角筒状本体は、前記巣箱本体に装着したときに当該巣箱本体の側面全体を覆うと共に、当該巣箱本体の前面よりもさらに前方へと突出した部分を形成する長さを備えていること。
(5B)底面開放の本体カップと、前記本体カップの開放端に脱着可能であって、流通口を介して前記本体カップと連通される給餌用突出部を備える下皿と、前記本体カップに脱着可能な取付具とを備える給餌装置の前記給餌用突出部を外側から挿入可能な挿入穴が、前記角筒状本体において前記巣箱本体の前面よりさらに前方へ突出した部分の側面下部に備えられていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受粉用の蜂の巣箱及び巣箱カバーに係り、特に、給餌機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、箱体上部に、みつばちの観察と給餌可能な透明天板を設けたみつばち巣箱が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の巣箱によれば、養蜂に不慣れなものであっても巣箱中のみつばちの状態を安全に観察し、また給餌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4627864号(0018,図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の巣箱では砂糖水等を箱体内に供給して給餌を行う結果、箱体内の湿度が上昇する可能性があったり、給餌に際して透明天板を開いたときにみつばちに刺される可能性もあった。
【0006】
そこで、本発明は、蜂にとって快適な環境を維持しつつ安全な給餌を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の受粉用の蜂の巣箱は、内部に巣脾枠を収納すると共に前面壁に開閉可能な巣門を備えた巣箱本体と、前記巣箱本体に収容された蜂に対して給餌を行う給餌装置とを備え、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記給餌装置は、
(1A1)底面開放の本体カップと、
(1A2)前記本体カップの開放端に脱着可能であって、流通口を介して前記本体カップと連通される給餌用突出部を備える下皿と、
(1A3)前記本体カップに脱着可能な取付具と、
を備えていること。
(1B)前記巣箱本体に、前記前面壁よりも前方に向かって延びる側壁部を備えさせたこと。
(1C)前記給餌装置を、前記給餌用突出部が前記側壁部の内側に突出し、前記下皿に嵌合させた前記本体カップが前記側壁部の外側で起立した状態となる様に、前記取付具を介して前記側壁部に対して取り付けたこと。
【0008】
本発明の受粉用の蜂の巣箱によれば、受粉用の蜂に対する液糖などの給餌を、巣門の外で実施することができる。この結果、給餌用の液糖により巣箱内部の湿度を上昇させるといったことがない。また、給餌用突出部は、側壁部の内側に突出しているので、巣門から出た蜂が気付きやすいから、適確な給餌が可能である。ここで、例えば、巣門の外に皿をおくなどして給餌をする方法でも蜂に気付かせ易く巣箱内部の湿度上昇を抑える効果があるが、巣箱を移動させようとすると皿から液糖がこぼれるため、移動に際しては皿を除去して移動し、再び皿を置くといった作業が発生する。これに対し、本発明の巣箱によれば、給餌装置に(1A1)~(1A3)の構成を採用し、巣門を備えた前面壁よりも前方に延びる側壁部を備えさせ(1B)、給餌用突出部が側壁部の内側に突出し、下皿に嵌合させた本体カップが側壁部の外側で起立した状態となる様に、取付具を介して側壁部に対して取り付ける構成(1C)を採用したから、給餌装置を取り外さなくても液糖をこぼさずに巣箱を移動させることができる。また、給餌装置への液糖の補充は、側壁部によって巣門との間を遮られた状態で実施することができるから、上蓋をあけて液糖を補充していた従来の巣箱に比べて安全に作業を行うことができる。よって、本発明によれば、蜂にとって快適な環境を維持しつつ安全な給餌を可能にすることができる。
【0009】
ここで、本発明の受粉用の蜂の巣箱は、さらに、以下の構成をも備えたものとすることができる。
(2A)前記本体カップは、光透過性を有する素材で形成され、下端部には段差部が形成され、前記段差部よりも下側は外径が小さい嵌合部とされていること。
(2B)前記下皿は、上端開放で前記給餌用突出部が連通されたカップ受け部を備え、前記カップ受け部の内径を前記本体カップの前記嵌合部の外径と一致させると共に、前記カップ受け部を前記嵌合部よりも深くすることにより、前記本体カップの下端と前記カップ受け部の底との間に前記流通口が形成された状態となる様に構成されていること。
(2C)前記取付具は、馬蹄状本体部と係止部とからなるプラスチック成形体で構成され、前記馬蹄状本体部の内径が前記本体カップの外径よりも小さくされていて、装着したときに前記本体カップを挟み付けたままで高さ方向に摺動可能な状態に取り付けることができる様に構成されていること。
(2D)前記側壁部には、前記給餌用突出部を内側に突き出す様に前記係止部を係止させる下穴及び上穴を備えていること。
【0010】
かかる構成をも備えた受粉用の蜂の巣箱によれば、側壁部によって巣門との間を遮られた状態で本体カップ内の液糖の残量を容易に確認することができる。この結果、巣箱を開かなくても蜂の活動状況を外から把握することができる。また、側壁部の上穴に対して係止部を係止させる様に取付具を設置しておき、下皿を嵌合させた本体カップを給餌用突出部を側壁部の下穴から巣門に向かって突出させる様に位置合わせしながら馬蹄状本体部に挟み込む様にして取り付けを行い、馬蹄状本体部から抜き出す様に取り外すことができるから、給餌装置の脱着を側壁部の外側からの作業で実施することができる。取付具から取り外した本体カップと下皿の嵌合を解き、本体カップを開放端を上にして液糖を補充してから下皿を嵌合させ、下皿を下に向けて上述の様に取付具に装着することで、巣門に対して側壁部によって遮られた状態で容易に液糖の補充を行うことができる。
【0011】
これら本発明の受粉用の蜂の巣箱は、さらに、以下の構成をも備えたものとすることができる。
(3)前記巣箱本体の外側を覆うと共に前記側壁部を形成する巣箱カバーを備えていること。
【0012】
かかる構成をも備えた受粉用の蜂の巣箱によれば、巣箱本体に対して給餌装置を取り付けるための側壁部を巣箱カバーで構成することができる。ここで、前記巣箱カバーごと前記巣箱本体を持ち上げ得る吊り手をも備えさせれば、吊り手で巣箱カバーごと巣箱本体を持ち上げることにより、巣箱を容易に移動させることができる。この際、巣箱本体は巣箱カバーで覆われているから、吊り手で持ち上げて移動させる際に巣箱本体の損傷を防止することができる。
【0013】
なお、巣箱カバーには、巣箱本体が前後方向に抜け出してしまわない様にストッパ部材を備えさせるとよい。かかる構成をも備えさせることにより、巣箱を移動させる際に巣箱本体が巣箱カバーから不用意に抜け出さない様にすることができる。
【0014】
また、吊り手は、巣箱カバーの底面から側面へと取り回し、巣箱カバーに刺し通す様にして上へ抜け出させた後に再び巣箱カバーに刺し通す様にして下へ抜け出させた後に側面から底面、反対側の側面へと取り回し、反対側でも巣箱カバーに刺し通す様にして上へ抜け出させた後に再び巣箱カバーに刺し通す様にして下へ抜け出させたテープの両端を接合して上部の左右に持ち手を形成する様に取り付けるとよい。かかる構成をも備えさせることにより、巣箱を移動させる際に巣箱本体を十分に保護することができる。
【0015】
これら本発明の受粉用の蜂の巣箱は、さらに、以下の構成をも備えたものとすることができる。
(4)前記巣箱本体に、前記側壁部と対面して前記前面壁よりも前方に向かって延びる対面側側壁部を備えさせ、前記給餌装置と同様の構成からなる給水装置を、給水用突出部を内側で突出させ、給水用本体カップを外側で起立させる様に前記対面側側壁部に対して取り付けたこと。
【0016】
かかる構成をも備えた受粉用の蜂の巣箱によれば、巣箱の内部の温度が上昇した際に、給水装置から水を得た蜂が巣箱内に水をまくことで温度上昇を抑えて良好な環境を保つことができる。このための給水装置を巣箱の外側に設置できる結果、巣箱の内部の湿度上昇を招くことはない。また、給水装置への水の補充作業も安全に実施することができる。
【0017】
上記目的を達成するためになされた本発明の受粉用の蜂の巣箱カバーは、巣箱本体の外側を取り巻く様に覆う角筒状本体を備えると共に、以下の構成をも備えたことを特徴とする。
(5A)前記角筒状本体は、前記巣箱本体に装着したときに当該巣箱本体の側面全体を覆うと共に、当該巣箱本体の前面よりもさらに前方へと突出した側面を形成する長さを備えていること。
(5B)底面開放の本体カップと、前記本体カップの開放端に脱着可能であって、流通口を介して前記本体カップと連通される給餌用突出部を備える下皿と、前記本体カップに脱着可能な取付具とを備える給餌装置の前記給餌用突出部を外側から挿入可能な挿入穴が、前記角筒状本体において前記巣箱本体の前面よりさらに前方へ突出した部分の側面下部に備えられていること。
【0018】
本発明の受粉用の蜂の巣箱カバーによれば、巣箱本体に装着したときに当該巣箱本体の側面全体を覆うと共に当該巣箱本体の前面よりもさらに前方へと突出した部分を形成する。この前方へ突出する部分の側面下部に外側から給餌用突出部を挿入するための挿入穴が備えられているから、前方へ突出する側面部を有しない巣箱を、巣箱の外側で安全に給餌を行うことのできる受粉用の蜂の巣箱へと変身させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蜂にとって快適な環境を維持しつつ安全な給餌を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1のミツバチ用巣箱を示し、(A)は右前側から見た斜視図、(B)は左前側から見た斜視図、(C)は右後ろ側から見た斜視図、(D)は左後ろ側から見た斜視図である。
図2】実施例1のミツバチ用巣箱の分解斜視図である。
図3】実施例1のミツバチ用巣箱を地面に設置した状態を示し、(A)は巣箱本体のみを表した背面図、(B)は右側面図、(C)は巣箱本体のみを表した図であって通気口及び巣門の開閉状態を示す正面図である。
図4】実施例1のミツバチ用巣箱に取り付ける給餌装置を示し、(A)は斜視図、(B)は分解斜視図、(C)は給餌用突出部付近の拡大斜視図である。
図5】実施例1のミツバチ用巣箱に取り付ける転倒防止用ステーを示し、(A)は斜視図、(B)は分解斜視図である。
図6】実施例2のミツバチ用巣箱を示し、(A)は右前側から見た斜視図、(B)は拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
【実施例0022】
実施例1のミツバチ用巣箱1は、図1図3に示す様に、巣箱本体10と、巣箱カバー20と、吊り手30と、給餌装置40と、転倒防止ステー50とを備えている。
【0023】
巣箱本体10は防水性を付与した段ボールを素材として形成され、図1図3に示す様に、前面壁11に、円形の通気口12a,12aと、半円形の通気口12b,12b,…と、長方形の巣門13とが貫通されている。前面壁11は2枚の段ボール壁からなり、その間に開閉板14が摺動可能に挟み込まれている。この開閉板14は、前側の段ボール壁の中央部に備えられた鉤形溝15から前方へ飛び出す様に備えられた摘み16を鉤形溝15に沿って移動させることにより、通気口12a,12b及び巣門13の開閉を行う。
【0024】
通気口12a,12bは、前後の段ボール壁を貫通する様に形成され、後側の段ボール壁の裏面側に金網が取り付けられ、開閉板14を移動させて開口を開いた状態では空気の流通はできても蜂の出入りはできない様になっている。
【0025】
巣門13も、前後の段ボール壁を貫通する様に形成され、開閉板14を移動させて開口を開いた状態で蜂の出入りが可能となる様に、金網等は装着されていない。
【0026】
開閉板14は、摘み16を鉤形溝15の左下水平溝内に移動させた状態で巣門13を開いて通気口12a,12bを閉じ、摘み16を鉤形溝15の右上水平溝内に移動させた状態で巣門13を閉じて通気口12a,12bを開いた状態となる様な寸法形状に構成されている。
【0027】
巣箱本体10の背面壁17は、図1(C),(D)に示す様に、開口のない閉じた壁面となっている。また、巣箱本体10の側壁面18も、図2に示す様に、開口のない閉じた壁面となっている(反対側の側壁面も同じ。)。そして、巣箱本体10の天板部19は、全体として開放状態とすることが可能であると共に、一部開閉用の扉部19aを備えている。
【0028】
なお、巣箱本体10の内部には、左右方向に並ぶ様に数枚の巣脾枠が収納されている(図示略)。これら数枚の巣脾枠は、巣箱本体10の前面壁及び背面壁の幅方向に形成された保持部材に保持されている(図示略)。また、巣脾枠の上部には花粉を給餌するための中蓋が備わっている(図示略)。
【0029】
巣箱カバー20も防水性を付与した段ボールを素材として形成され、図1図3に示す様に、巣箱本体10の側面の大部分及び底面を覆う下側部材21と、巣箱本体10の側面上部及び上面を覆う上側部材22とを複数箇所をステープラで接合した角筒状に形成されている。このとき、上側部材22が下側部材21の側面を覆う様に接合する。なお、巣箱カバー20の上側部材22の前側部分には、巣箱本体10を収納した後に下方に押し込むことによって巣箱本体10の上部が前方へ抜け出さない様にするストッパ部材28,28を形成するための切り込みも備えられている。
【0030】
吊り手30はプラスチック製テープで形成され、下側部材21の底面から側面の外側を経由して上側部材22の裏側を通し、上側部材22に形成したスリット23,23に差し通した後に反対側も同様に取り回し、全体として一つの輪っかになる様にヒートシールすることにより、巣箱カバー20の両側に持ち手31,32を備えた状態となる様に取り付けられている。
【0031】
巣箱カバー20の上側部材22の所定位置には開閉扉24が備えられている。この開閉扉24は、巣箱本体10を巣箱カバー20の内側の定位置に収納した状態において扉部19aと重なる位置に設けられている。
【0032】
図1図3に示す様に、巣箱カバー20の底面後部には転倒防止ステー50が取り付けられている。図1(C),(D)及び図3(B)に示す様に、この転倒防止ステー50は、背面壁17を押し当てた巣箱本体10を巣箱カバー20に対する定位置に収納した状態となる様に取り付けられる。
【0033】
また、巣箱カバー20は、図1図3に示す様に、巣箱本体10の側壁よりも前後方向に十分に長い側壁部及び屋根部を形成する寸法となっていて、定位置に収納した巣箱本体10の前面壁11よりも前方に張り出した部分に上穴25と下穴26が設けられている。
【0034】
給餌装置40は、図4に示す様に、本体カップ41と、下皿42と、取付具43とから構成されている。
【0035】
本体カップ41は下端開放の円筒体で半透明のプラスチックを用いて射出成形されている。本体カップ41の下端部には段差部41aが形成され、この段差部41aよりも下側は外径が小さい嵌合部41bとなっている。
【0036】
下皿42は、上端開放のカップ受け部42aと、このカップ受け部42aと連通する給餌用突出部42bとを備えたプラスチック射出成形体で構成されている。カップ受け部42aの内径は、本体カップ41の嵌合部41bの外径と一致させてある。また、カップ受け部42aは、嵌合部41bよりも深くなっている。この結果、図4(C)に示す様に、本体カップ41の下端41cとカップ受け部42aの底42cとの間に流通口45が形成された状態となる。
【0037】
取付具43は、図4(B)に示す様に、馬蹄状本体部43aと係止部43bとからなるプラスチック射出成形体で構成されている。馬蹄状本体部43aの内径は本体カップ41の外径よりも小さくされていて、装着したときに本体カップ41を挟み付けたままで高さ方向に摺動可能な状態に取り付けられる。
【0038】
給餌装置40は、図1(A)に示す様に、巣箱カバー20の外側から、下穴25から給餌用突出部42bを突き出す様に、上穴26に対して係止部43bを係止させる様にして取り付けられる。
【0039】
転倒防止ステー50はプラスチック製段ボールを素材として形成され、図5に示す様に、開放部を上に向けた断面コ字状のホールド部材51と、このホールド部材51に対して下方から嵌合されるステー部材52とから構成される。
【0040】
ホールド部材51は、図5(B)に示す様に、帯状部材51aの両端を上方に向かって折り曲げて断面コ字状としたものであって、折り曲げ部分51b,51bに長手方向のスリット51c,51cが形成されている。
【0041】
ステー部材52は、図5(B)に示す様に、帯状のステー本体部52aと、このステー本体部52aの両端に上方へ突出する様に形成されたブラケット部52b,52bとを備え、ブラケット部52b,52bから下方へ若干下がった位置でステー本体部52aを前方へ向かって折り曲げた形態のものとなっている。ブラケット部52b,52bには上方から切り込み溝52c,52cが形成されている。この切り込み溝52c,52cは、ホールド部材51及び巣箱カバー20の側壁を同時に嵌まり込ませることのできる溝幅となっている。
【0042】
転倒防止ステー50は、図5(A)に示す様に、スリット51c,51c及び切り込み溝52c,52cを介してホールド部材51とステー部材52とを組み合わせることにより、巣箱カバー20に対して側面及び底面を保持した状態で取り付け得る枠状の組立体となる。なお、ホールド部材51及びステー部材52は、角を丸めた形状に加工されている。
【0043】
巣箱カバー20の背面側所定位置の底面及び側面には、図2に示す様に、スリット27,27が形成されている。このスリット27,27に対してブラケット部52b,52bの切り込み溝52c,52cより内側の部分を刺し通すことにより、図1(C),(D)に示す様に、巣箱カバー20の所定位置に転倒防止ステー50が取り付けられる。
【0044】
より具体的に説明すると、まず、断面コ字状のホールド部材51の折り曲げ部分51b,51bのスリット51c,51cに対してステー部材52のブラケット部52b,52bの切り込み溝52c、52cを下から差し込む様にしてホールド部材52とステー部材51とを合体させて転倒防止ステー50を組み立てる。次に、組み立てたステー50を、巣箱カバー20の底面から側面にかけて形成されたスリット27,27に対して、ブラケット部材52b,52bの切り込み溝52c,52cに巣箱カバー20の側壁部を挟み込む様に、巣箱カバー20の底面側から組み付ける。こうして、転倒防止ステー50を巣箱カバー20に取り付けた状態では、ブラケット部52b,52bの一部が巣箱カバー20の内部に突出した状態となる(図1(C),(D)参照。)。
【0045】
次に、転倒防止ステー50を取り付けた巣箱カバー20の前方開口から巣箱本体10を押し込む様にして収納する(図2図1)。このとき、巣箱本体20は、巣箱カバーの内部に突出しているブラケット部52b,52bに当接する位置まで収納する(図1(C),(D)参照。)。これにより、巣箱本体10の背面壁17の下側でステー本体部52aの前方へ向かって折り曲げた部分の端が接地する状態となる(図3(B)参照。)。
【0046】
転倒防止ステー50はプラスチック製段ボールで形成されているから、地面の湿気を吸うことはない。なお、巣箱カバー20に巣箱本体10を収納した後に組み立てた転倒防止ステー50を組み付ける様にしてもよい。また、転倒防止ステー50は、巣箱カバー20のスリット27,27にブラケット部52b,52bの切り込み溝52c,52cを介して嵌め込むという取り付け方法を採用しているから、必要に応じて取り外すこともできる。
【0047】
本実施例のミツバチ用巣箱1によれば、受粉用の蜂に対する液糖などの給餌を、巣門13の外で実施することができる。この結果、給餌用の液糖により巣箱内部の湿度を上昇させるといったことがない。また、給餌用突出部42bは、巣箱カバー20によって巣門13に対して前方へ突出する様に形成された側壁部の内側に突出しているので、巣門13から出た蜂が気付きやすく、適確な給餌が可能である。さらに、給餌装置40を取り外さなくても液糖をこぼさずにミツバチ用巣箱1を移動させることができる。加えて、給餌装置40への液糖の補充は、巣箱カバー20の前端部分によって形成された側壁部により巣門13との間を遮られた状態で実施することができるから、上蓋をあけて液糖を補充していた従来の巣箱に比べて安全に作業を行うことができる。よって、本実施例によれば、蜂にとって快適な環境を維持しつつ安全な給餌を可能にすることができる。
【0048】
また、本実施例のミツバチ用巣箱1によれば、巣箱カバー20の前端部分によって形成された側壁部によって巣門13との間を遮られた状態で本体カップ41内の液糖の残量を容易に確認することができる。この結果、巣箱を開かなくても蜂の活動状況を外から把握することができる。また、側壁部の上穴26に対して係止部43bを係止させる様に取付具43を設置しておき、下皿42を嵌合させた本体カップ41を給餌用突出部42bを側壁部の下穴25から巣門13に向かって突出させる様に位置合わせしながら馬蹄状本体部43aに挟み込む様にして取り付けを行い、馬蹄状本体部43aから抜き出す様に取り外すことができるから、給餌装置40の脱着を側壁部の外側からの作業で実施することができる。取付具43から取り外した本体カップ41と下皿42の嵌合を解き、本体カップ41を開放端を上にして液糖を補充してから下皿42を嵌合させ、下皿42を下に向けて上述の様に取付具43に装着することで、巣門13に対して側壁部によって遮られた状態で容易に液糖の補充を行うことができる。
【0049】
さらに、本実施例のミツバチ用巣箱1によれば、巣箱本体10に対して給餌装置40を取り付けるための側壁部を巣箱カバー20で構成することができる。また、吊り手30で巣箱カバー20ごと巣箱本体10を持ち上げることにより、巣箱1を容易に移動させることができる。この際、巣箱本体10は巣箱カバー20で覆われているから、吊り手30で持ち上げて移動させる際に巣箱本体10の損傷を防止することができる。
【0050】
また、吊り手30は、巣箱カバー20の底面から側面へと取り回し、巣箱カバー20に刺し通す様にして上へ抜け出させた後に再び巣箱カバー20に刺し通す様にして下へ抜け出させた後に側面から底面、反対側の側面へと取り回し、反対側でも巣箱カバー20に刺し通す様にして上へ抜け出させた後に再び巣箱カバー20に刺し通す様にして下へ抜け出させたテープの両端を接合して上部の左右に持ち手31,32を形成する様に取り付けているから、巣箱1を移動させる際に巣箱本体10を十分に保護することができる。
【0051】
さらに、本実施例のミツバチ用巣箱1によれば、圃場やハウス内で地面に直置きしたとき、転倒防止ステー50が巣箱本体10の背面側を浮き上がらせるから、湿った地面からの湿気や冷気の巣箱内への浸入を防止することができる。また、転倒防止ステー50は左右方向に飛び出す幅を有しているから、横倒れを阻止する作用を発揮する。この結果、本実施例のミツバチ巣箱1は、受粉用の蜂の巣箱で要求される小型化・軽量化をしても転倒し難く、蜂にとって快適な環境の維持も可能である。また、巣箱本体10ではなく、巣箱カバー20に転倒防止ステー50を備えさせることにより、巣箱本体10の構造に影響を与えることがない。また、図3(B)に示す様に、地面と巣箱の底との間に空間SPCを形成するから、地面を這って成長するスイカのツルなどを巣箱で踏みつけることなく設置することができる。さらに、巣箱本体10は前下がりの状態となるから巣箱内へと雨水RANが浸入しにくく、仮に浸入したとしても傾斜によって前方への排水を促す作用が期待できる。
【0052】
加えて、本実施例においては、巣箱カバー20は、巣箱本体10の底面、側面及び上面を覆い背面側に加えて前面側においても巣箱本体10よりも飛び出した状態となる様に取り付けられている。その結果、本実施例のミツバチ巣箱1によれば、巣箱本体10の前面側において、巣箱カバー20の上面が屋根となり、巣箱カバー20の側面が塀となり、雨水RANの浸入をより一層防止することができる。
【0053】
また、本実施例のミツバチ用巣箱1によれば、転倒防止ステー50は、巣箱本体10の背面の収納位置の下方まで達する様に斜め前方に伸びる接地部分を備えているから、巣脾枠の重量を前面及び背面の保持部材で支える一般的な構造の巣箱本体10に対して、背面側の保持部材に加わる重量を転倒防止ステー50で支えることができる。
【0054】
さらに、本実施例のミツバチ用巣箱1においては、プラスチック製段ボールを素材とするホールド部材51と、ホールド部材51に対して下方から嵌合されるステー部材52とを組み立て、巣箱カバー20の底面から側面にかけて形成されたスリット27,27に対して、ブラケット部材52b,52bの切り込み溝52c,52cに巣箱カバー10の側壁部を挟み込む様に底面側から組み付けることによって、転倒防止ステー50を取り付ける構成を採用したから、必要に応じて取り外すことも可能である。また、転倒防止ステー50のブラケット部52b、52bの一部が巣箱カバー20の内部に突出した状態となるから、巣箱カバー20の前方開口から巣箱本体10を押し込む様にして収納する際の位置決め及び後方への抜け出し防止の作用も発揮される。そして、転倒防止ステー50はプラスチック製段ボールで形成されているから、地面の湿気を吸うことがない。。
【0055】
加えて、本実施例のミツバチ用巣箱1によれば、ストッパ部材28,28が巣箱本体10の上部を押さえる作用を発揮し、運搬時における巣箱本体10の脱落を防止する。
【実施例0056】
実施例2のミツバチ用巣箱2は、図6に示す様に、巣箱本体10、巣箱カバー20、吊り手30、給餌装置40、及び転倒防止ステー50は実施例1と同じもので、給餌装置40を取り付けた巣箱カバー側壁部と対面する側の側壁部に、給餌装置40と同様の構成からなる給水装置60を取り付けたものである。その結果、図6(B)に示す様に、巣門13の右側に給餌用突出部42bが、巣門13の左側に給水用突出部62bが備わったものとなる。
【0057】
実施例2のミツバチ用巣箱2によれば、巣箱の内部の温度が上昇した際に、給水装置60から水を得た蜂が巣箱内に水をまくことで温度上昇を抑えて良好な環境を保つことができる。このための給水装置60を巣箱本体10の外側に設置できる結果、巣箱の内部の湿度上昇を招くことはない。また、給水装置60への水の補充作業も安全に実施することができるし、水の補充の要否も巣門13の門番蜂を気にすることなく安全に確認でき、補充作業も安全に実施できる。
【0058】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限らず、その要旨を逸脱しない範囲内での種々なる変形実施が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
蜂による農作物の受粉に利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,2・・・ミツバチ用巣箱、10・・・巣箱本体、11・・・前面壁、12a,12b・・・通気口、13・・・巣門、14・・・開閉板、15・・・鉤形溝、16・・・摘み、17・・・背面壁、18・・・側壁面、19・・・天板部、19a・・・扉部、20・・・巣箱カバー、21・・・下側部材、22・・・上側部材、23・・・スリット、24・・・開閉扉、25・・・上穴、26・・・下穴、27・・・スリット、28・・・ストッパ部材、30・・・吊り手、31,32・・・持ち手、40・・・給餌装置、41・・・本体カップ、41a・・・段差部、41b・・・嵌合部、41c・・・下端、42・・・下皿、42a・・・カップ受け部、42b・・・給餌用突出部、42c・・・底、43・・・取付具、43a・・・馬蹄状本体部、43b・・・係止部、45・・・流通口、50・・・転倒防止ステー、51・・・ホールド部材、51a・・・帯状部材、51b・・・折り曲げ部分、51c・・・スリット、52・・・ステー部材、52a・・・ステー本体部、52b・・・ブラケット部、52c・・・切り込み溝、60・・・給水装置、62b・・・給水用突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6