(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000535
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】曲面ワーク貼合装置及び曲面ワーク貼合方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
B29C65/48
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101423
(22)【出願日】2021-06-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190105
【氏名又は名称】信越エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 義和
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AD08
4F211AD21
4F211AG03
4F211AH42
4F211TA03
4F211TC06
4F211TD11
4F211TJ23
4F211TN26
4F211TN28
4F211TN44
4F211TN45
4F211TQ04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】三次元曲面形状の第一ワークと第二ワークを面全体で均一に貼り合わせる装置および方法を提供する。
【解決手段】第一ワークW1の第一非貼合面W11が着脱自在に保持される第一曲型面1aを有する第一凹凸型1と、第二ワークW2の第二非貼合面W21が着脱自在に保持される第二曲型面2aを有する第二凹凸型2と、第一凹凸型又は第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を第一ワーク及び第二ワークの厚み方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、駆動部を作動制御する制御部と、を備え、第二曲型面は、第一曲型面の複製による転写面であり、制御部は、駆動部の接近移動により、第一凹凸型の第一曲型面と第二凹凸型の第二曲型面との間に、第一ワークと第二ワークが厚み方向に重ね合わされ、第一ワークと第二ワークを厚み方向に加圧して、第一ワークの第一貼合面W12と第二ワークの第二貼合面W22が接合されるように制御する曲面ワーク貼合装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元曲面の薄板状に形成された第一ワークと第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合装置であって、
前記第一ワークの第一非貼合面が着脱自在に保持される第一曲型面を有する第一凹凸型と、
前記第二ワークの第二非貼合面が着脱自在に保持される第二曲型面を有する第二凹凸型と、
前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記第一ワーク及び前記第二ワークの厚み方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、
前記駆動部を作動制御する制御部と、を備え、
前記第二曲型面は、前記第一曲型面の複製による転写面であり、
前記制御部は、前記駆動部の接近移動により、前記第一凹凸型の前記第一曲型面と前記第二凹凸型の前記第二曲型面との間に、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向に重ね合わされ、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に加圧して、前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面が接合されるように制御することを特徴とする曲面ワーク貼合装置。
【請求項2】
前記第二凹凸型は、弾性を有する複製材により前記第一凹凸型を複製元として形成されることを特徴とする請求項1記載の曲面ワーク貼合装置。
【請求項3】
前記第二ワークは、フィルム状の基板からなることを特徴とする請求項1又は2記載の曲面ワーク貼合装置。
【請求項4】
前記第二凹凸型の第二非型面が保持される第二保持面を有する第二保持部材を備え、前記第二保持面が前記厚み方向へ突出して前記第二非型面と当接する凸部を有し、前記駆動部により前記第二保持部材を介して前記第二凹凸型が前記第一凹凸型に向け前記厚み方向(Z方向)へ相対的に接近移動されることを特徴とする請求項2又は3記載の曲面ワーク貼合装置。
【請求項5】
三次元曲面の薄板状に形成された第一ワークと第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合方法であって、
第一曲型面を有する第一凹凸型から第二曲型面を有する第二凹凸型が作成される型取り工程と、
前記第一凹凸型の前記第一曲型面に前記第一ワークの第一非貼合面を着脱自在に保持するとともに、前記第二凹凸型の前記第二曲型面に前記第二ワークの第二非貼合面を、前記第一ワーク及び前記第二ワークが厚み方向へ離隔して挟むように保持するセット工程と、、
前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記厚み方向へ相対的に接近移動して、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向へ接するように重ね合わされ、且つ加圧して前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面を接合する加圧工程と、を含み、
前記型取り工程では、前記第一曲型面の複製による転写面として前記第二曲型面が形成されることを特徴とする曲面ワーク貼合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元の曲面形状に形成された薄板状の第一ワークと第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合装置、及び、曲面ワーク貼合装置を用いた曲面ワーク貼合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の曲面ワーク貼合装置として、ベースの表面に突き当てブロックが突出して設けられた下型と、キャビティを有する吸着プラットフォームが設けられた上型との間に、キャビティ内に吸着して位置決めされる曲面物体,軟性部材,軟性部材の表面に設けられる接着層を配置し、上型及び下型の結合により、軟性部材と曲面物体を貼合させる曲面貼合装置がある(例えば、特許文献1参照)。
キャビティには、曲面物体の曲面部と接合する屈曲弧面が形成され、突き当てブロックの該当箇所には、屈曲面が形成される。
突き当てブロックの屈曲面に沿って軟施位部材に曲面が成形された後、上型及び下型を結合することにより、軟性部材の表面が接着層を介して曲面物体に貼合され、貼合後に下型及び上型を分離することで、一体に結合した曲面物体と軟性部材が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、貼り合わせる薄板が複雑な三次元曲面形状になると、均一で高精度に貼り合わせることが困難になる。
特許文献1では、曲面物体の曲面部と対応するキャビティの屈曲弧面と、突き当てブロックの屈曲面が別々に作成されるため、複雑な三次元曲面形状になると、それぞれの加工精度の僅かな違いなどによって、曲面物体に軟性部材が貼合面全体で均一に貼り合わされず、貼合面に気泡が入り易くて貼り合わせ精度が劣るという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る曲面ワーク貼合装置は、三次元曲面の薄板状に形成された第一ワークと第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合装置であって、前記第一ワークの第一非貼合面が着脱自在に保持される第一曲型面を有する第一凹凸型と、前記第二ワークの第二非貼合面が着脱自在に保持される第二曲型面を有する第二凹凸型と、前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記第一ワーク及び前記第二ワークの厚み方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、前記駆動部を作動制御する制御部と、を備え、前記第二曲型面は、前記第一曲型面の複製による転写面であり、前記制御部は、前記駆動部の接近移動により、前記第一凹凸型の前記第一曲型面と前記第二凹凸型の前記第二曲型面との間に、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向に重ね合わされ、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に加圧して、前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面が接合されるように制御することを特徴とする。
また、このような課題を解決するために本発明に係る曲面ワーク貼合方法は、三次元曲面の薄板状に形成された第一ワークと第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合方法であって、第一曲型面を有する第一凹凸型から第二曲型面を有する第二凹凸型が作成される型取り工程と、前記第一凹凸型の前記第一曲型面に前記第一ワークの第一非貼合面を着脱自在に保持するとともに、前記第二凹凸型の前記第二曲型面に前記第二ワークの第二非貼合面を、前記第一ワーク及び前記第二ワークが厚み方向へ離隔して挟むように保持するセット工程と、前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記厚み方向へ相対的に接近移動して、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向へ接するように重ね合わされ、且つ加圧して前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面を接合する加圧工程と、を含み、前記型取り工程では、前記第一曲型面の複製による転写面として前記第二曲型面が形成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態(第一実施形態)に係る曲面ワーク貼合装置及び曲面ワーク貼合方法の全体構成を示す説明図であり、(a)が型取り工程の縦断正面図、(b)がセット工程の縦断正面図同横断平面図、(c)が加圧工程の縦断正面図である。
【
図2】搬入工程を示す説明図であり、(a)が受け取り前の縦断正面図、(b)が受け取り時の縦断正面図、(c)が受け渡し時の縦断正面図である。
【
図3】本発明の他の実施形態(第二実施形態)に係る曲面ワーク貼合装置及び曲面ワーク貼合方法の全体構成を示す説明図であり、(a)がセット工程の縦断正面図、(b)が加圧工程の縦断正面図、(c)が加圧工程終了後の縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る曲面ワーク貼合装置Aは、
図1~
図3に示すように、例えば液晶ディスプレイ(LCD),有機ELディスプレイ(OLED),プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD),或いはフレキシブルディスプレイ,センサーデバイス,例えばタッチパネル式FPDや3D(3次元)ディスプレイや電子書籍などのような液晶モジュール(LCM),フレキシブルプリント配線板(FPC)などに用いられる薄板状の基板からなる第一ワークW1に対して、タッチパネルやカバーガラスやカバーフィルムやFPDなどのもう一枚の薄板状又はフィルム状の第二ワークW2を貼り合わせる貼合デバイスDの貼り合わせ機である。
第一ワークW1は、液晶パネル,タッチパネルなどを構成するガラス基板,アクリル板,ステンレス板などの回路基板を含む三次元曲面形状に形成された薄板状の基板である。第一ワークW1の裏側には、後述する第一凹凸型1と対向する第一非貼合面W11が形成され、第一ワークW1の表側には、第一貼合面W12が形成される。
第二ワークW2は、薄膜センサ(Film Sensor),タッチパネルなどの回路基板を含む三次元曲面形状に形成された薄板状の基板、又はカバーなどとして用いられる三次元の曲面形状に形成された薄板状の基板である。第二ワークW2となる薄板状の基板には、フィルム状の基板が含まれ、少なくとも厚み方向へ弾性変形可能な薄板やフィルムも含まれる。第二ワークW2の裏側には、後述する第二凹凸型2と対向する第二非貼合面W21が形成され、第二ワークW2の表側には、第二貼合面W22が形成される。
第一ワークW1の第一貼合面W12又は第二ワークW2の第二貼合面W22のいずれか一方若しくは第一貼合面W12及び第二貼合面W22の両方には、接着層W3を設けることが好ましい。接着層W3は、紫外線や熱線(赤外線)などの照射又は加熱などで変性(変質)して適度な接着力を有する変性材料からなり、最終的には第一ワークW1と第二ワークW2が強固な接着状態となるものを用いることが好ましい。
【0008】
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係る曲面ワーク貼合装置Aは、第一ワークW1に対応する第一凹凸型1と、第二ワークW2に対応する第二凹凸型2と、第一凹凸型1又は第二凹凸型2のいずれか一方若しくは両方を厚み方向へ相対的に接近移動又は離隔移動させる駆動部3と、駆動部3などを作動制御する制御部4と、を主要な構成要素として備えている。
さらに、第一凹凸型1を着脱自在に保持するように設けられる第一保持部材31と、第二凹凸型2を着脱自在に保持するように設けられる第二保持部材32と、を備え、駆動部3で第一保持部材31や第二保持部材32を相対的に接近移動させることが好ましい。
本発明の第一実施形態に係る曲面ワーク貼合装置A1を
図1(a)~(c)及び
図2(a)~(c)に示し、本発明の第二実施形態に係る曲面ワーク貼合装置A2を
図3(a)~(c)に示している。
少なくとも第一凹凸型1,第二凹凸型2,駆動部3や第一保持部材31,第二保持部材32は、貼り合わせ空間Sに配備される。第一ワークW1,第二ワークW2は、搬送治具51や搬送ロボットなどからなる搬送手段5によって、外部空間(図示しない)から貼り合わせ空間Sにそれぞれ搬入され、貼り合わせ完了後の貼合デバイスDを搬送手段5で貼り合わせ空間Sから外部空間に搬出する。
なお、第一ワークW1及び第二ワークW2は、通常、上下方向へ対向するように配置され、下側(下位)の第一ワークW1と上側(上位)の第二ワークW2が貼り合わされる方向を以下「Z方向」という。Z方向と交差する第一ワークW1及び第二ワークW2に沿った方向を以下「XY方向」という。
【0009】
第一凹凸型1と第二凹凸型2は、第一凹凸型1又は第二凹凸型2のいずれか一方が鋳造物であり、他方が鋳造物の複製品である。以下、第一凹凸型1がアルミニウムやその他の金属又は硬質合成樹脂若しくはその他の硬質材料からなる鋳造物である場合について説明する。特に、第一凹凸型1が鋳造物であって且つ第一凹凸型1と対応する第一ワークW1のZ方向の凹凸高さが比較的に低い場合には、第一凹凸型1の外表面に電鋳法などによるメッキ層(図示しない)を形成することも可能である。
第一凹凸型1は、第一ワークW1のサイズよりもXY方向に大きく形成され、第一凹凸型1において第一ワークW1の第一非貼合面W11とZ方向に対向する表側には、第一曲型面1aが形成される。
第一曲型面1aは、第一ワークW1の第一非貼合面W11を基準面としてZ方向に嵌め合う三次元曲面形状に凹凸形成され、第一曲型面1aに沿って第一非貼合面W11が隙間なく接合するように構成されている。
第一曲型面1aには、搬送手段5で貼り合わせ空間Sに搬入された第一ワークW1の第一非貼合面W11を着脱自在に仮保持する第一ワーク保持部1bが設けられる。第一ワーク保持部1bで第一曲型面1aの所定位置に対して、第一ワークW1の第一非貼合面W11がXY方向へ位置ズレ不能に仮保持される。第一ワーク保持部1bの具体例としては、真空吸着などの差圧チャックなどを用いている。
さらに、第一曲型面1aに対する第一ワークW1の位置決め方法としては、CCDカメラなどの位置検出器で第一曲型面1aに対する第一ワークW1の搬入位置が検出され、この検出値に基づいて第一ワークW1の搬入位置を微調整する方法や、第一曲型面1a又は第一ワークW1に取り付けたマーク情報に基づいて位置決めして設置する方法や、第一曲型面1aに設置した位置決めピンに合わせて第一ワークW1を設置する方法などがある。
第一凹凸型1の具体例として
図1及び
図3に示される場合には、第一凹凸型1をZ方向の下位に配置される下定盤として使用し、第一曲型面1aの所定位置には、第一ワーク保持部1bとして真空吸着することにより、第一ワークW1となるガラス基板がセットされる。
【0010】
第二凹凸型2は、第一凹凸型1又は第一凹凸型1と同形状に別途作製された型部材(鋳造物)を複製元とした複製品であり、第二ワークW2のサイズよりもXY方向に大きく形成され、第二凹凸型2において第二ワークW2の第二非貼合面W21とZ方向に対向する表側には、第二曲型面2aが形成される。
第二曲型面2aは、第一曲型面1aの複製による転写面である。詳しく説明すると、流動性に優れた液状の複製材2Rを用いて第一凹凸型1から注型することにより、第一曲型面1aが第二凹凸型2の表面に複製(転写)されて第二曲型面2aとなる。複製材2Rとしては、シリコーンゴムやシリコーン樹脂などの適度な弾性を有する軟質合成樹脂などを用いることが好ましい。この場合には、注型時において熱などによる母型(第二凹凸型2)の変形が少ないとともに、第一凹凸型1に向けた加圧により第二凹凸型2が少なくともZ方向に弾性変形して、第一ワークW1の第一曲型面1aと全面的に密着可能になる。
第二曲型面2aには、搬送手段5で貼り合わせ空間Sに搬入された第二ワークW2の第二非貼合面W21を着脱自在に仮保持する第二ワーク保持部2bが設けられる。第二ワーク保持部2bで第二曲型面2aの所定位置に対して、第二ワークW2の第二非貼合面W21がXY方向へ位置ズレ不能に仮保持される。
特に、複製材2Rがシリコーンゴムやシリコーン樹脂などの適度な粘着性を有する軟質合成樹脂などである場合には、第二ワーク保持部2bとして複製材2Rが有する粘着力のみで、第二ワークW2の第二非貼合面W21を位置ズレ不能に密着保持することが可能になる。
また、第二曲型面2aに対する第二ワークW2の位置決め方法としては、第一曲型面1aに対する第一ワークW1の位置決め方法と同様である。
第二凹凸型2の具体例として
図1及び
図3に示される場合には、複製品の第二凹凸型2をZ方向の上位に配置される上定盤として使用し、第二曲型面2aの所定位置には、第二ワークW2としてフィルム基板が複製材2Rの粘着力で落下不能にセットされる。
【0011】
第一保持部材31は、金属などの剛体で歪み(撓み)変形しない厚さの平板状に形成され、第一保持部材31の表側は、第一凹凸型1の第一非型面1cとZ方向へ対向して着脱自在に保持する第一保持面31aを有している。第一保持面31aには、第一凹凸型1の第一非型面1cを着脱自在に保持する第一保持チャック31bが設けられる。
第一保持面31aの具体例として
図1及び
図3に示される場合には、全体的に略平滑な平面状に形成され、第一保持チャック31bとしては、真空吸着などの差圧チャックやメカニカルチャックなどを用いている。
第二保持部材32は、金属などの剛体で歪み(撓み)変形しない厚さの平板状に形成され、第二保持部材32の表側は、第二凹凸型2の第二非型面2cとZ方向へ対向して接触する第二保持面32aを有している。第二保持面32aには、第二凹凸型2の第二非型面2cを着脱自在に保持する第二保持チャック32bが設けられる。
第二保持面32aの一例(第一実施形態)として
図1(a)~(c)に示される場合には、全体的に略平滑な面に形成され、第二保持チャック32bとしては、真空吸着などの差圧チャックなどを用いている。
また、第二保持面32aの他の例(第二実施形態)として
図3(a)~(c)に示される場合には、第二保持部材32の表側一部が第二凹凸型2の第二非型面2cに向けてZ方向へ部分的に突出する凸部32cを有する曲面状に形成され、第二保持チャック32bとしては、真空吸着などの差圧チャックなどを用いている。
【0012】
駆動部3は、第一保持部材31又は第二保持部材32のいずれか一方か若しくは両方をZ方向へ相対的に往復動させるアクチュエーターなどで構成され、後述する制御部4により貼り合わせ空間Sに対して第一ワークW1や第二ワークW2を搬入又は搬出する搬送手段5と連動するように作動制御される。
制御部4による駆動部3の制御例としては、
図1(b)や
図3(a)に示されるように、貼り合わせ空間Sに搬入された第一ワークW1と第二ワークW2を第一凹凸型1と第二凹凸型2にそれぞれ受け渡す前の初期状態で、駆動部3が第一保持部材31又は第二保持部材32のいずれか一方を他方からZ方向へ相対的に離隔移動させるか、若しくは第一保持部材31及び第二保持部材32の両方を互いにZ方向へ相対的に離隔移動させている。その後は、
図1(c)や
図3(b)(c)に示されるように、駆動部3が第一保持部材31又は第二保持部材32のいずれか一方を他方に向けてZ方向へ接近移動させるか、若しくは第一保持部材31及び第二保持部材32の両方を互いにZ方向へ接近移動させている。これにより、第一ワークW1と第二ワークW2がシール材W3を挟んでZ方向へ重ね合わされ、必要がある場合には更に加圧して貼り合わせる。貼り合わせが完了した後は、第一保持部材31や第二保持部材32がZ方向へ相対的に離隔移動して初期状態に戻る。
駆動部3の具体例として図示例の場合には、第二保持部材32のみを駆動部3と連係させて、第二保持部材32を第一保持部材31に向けてZ方向へ相対的に往復動させている。
【0013】
貼り合わせ空間Sは、第一ワークW1及び第二ワークW2の周囲に形成され、それ以外に少なくとも第一凹凸型1,第二凹凸型2,駆動部3や第一保持部材31,第二保持部材32が配備される。
貼り合わせ空間Sにおいて第一保持部材31と第二保持部材32は、表側の第一保持面31aと第二保持面32aがZ方向へ対向するように配設される。この対向状態で、第一保持部材31の第一保持面31aに対しては、第一保持チャック31bで第一凹凸型1の第一非型面1cが着脱自在に保持される。第二保持部材32の第二保持面32aに対しては、第二保持チャック32bで第二凹凸型2の第二非型面2cが着脱自在に保持される。 これにより、第一保持部材31に保持された第一凹凸型1の第一曲型面1aに対して、
搬送手段5で貼り合わせ空間Sに搬入した第一ワークW1の第一非貼合面W11を第一ワーク保持部1bで仮保持することが可能になる。第二保持部材32に保持された第二凹凸型2の第二曲型面2aに対しては、搬送手段5で貼り合わせ空間Sに搬入した第二ワークW2の第二非貼合面W21を第二ワーク保持部2bで仮保持することが可能になる。
また必要に応じて、貼り合わせ空間Sは、大気雰囲気から所定真空度の減圧雰囲気まで変圧調整可能に構成することや、常温雰囲気から所定の高温雰囲気まで加熱調整可能に構成することが好ましい。
貼り合わせ空間Sを真空チャンバーなどからなる真空装置(図示しない)の内部に形成することで、第一ワークW1と第二ワークW2が真空雰囲気で貼り合わせることが可能になる。貼り合わせ空間Sを加熱装置(図示しない)の内部に形成することで、第一ワークW1と第二ワークW2が高温雰囲気で貼り合わせることが可能になる。
さらに、真空雰囲気で第一ワークW1と第二ワークW2を重ね合わせた後に加熱して接着層W3により熱接着する場合には、第一凹凸型1と第二凹凸型2の間に第一ワークW1及び第二ワークW2を挟み込んで一体化された重合体を、第一保持部材31と第二保持部材32から取り外して搬出し、真空装置とは別個に構成された加熱炉(図示しない)の内部に搬入して、錘などで荷重を掛けながら加熱することで可能になる。
【0014】
制御部4は、駆動部3,第一ワークW1や第二ワークW2の搬送手段5とそれぞれ電気的に接続するコントローラーである。
このコントローラーは、それ以外にも真空装置や加熱装置などの駆動源(図示しない)などとも電気的に接続している。
制御部4となるコントローラーは、その制御回路(図示しない)に予め設定されたプログラムに従って、予め設定されたタイミングで順次それぞれ作動制御している。
そして、制御部4の制御回路に設定されたプログラムを、貼合デバイスDの貼合方法として説明する。
本発明の実施形態に係る曲面ワーク貼合装置Aを用いた曲面ワーク貼合方法は、第一凹凸型1から第二凹凸型2を作成する型取り工程と、第一凹凸型1の第一曲型面1aと第二凹凸型2の第二曲型面2aとの間に第一ワークW1と第二ワークW2を仮保持するセット工程と、第一凹凸型1又は第二凹凸型2のいずれか一方若しくは両方をZ方向へ相対的に接近移動して、第一ワークW1と第二ワークW2をZ方向に加圧する加圧工程と、を主要な工程として含んでいる。
さらに、第一ワークW1と第二ワークW2を貼り合わせ空間Sに入れる搬入工程と、貼り合わされた貼合デバイスDを貼り合わせ空間Sから取り出す搬出工程と、を含むことが好ましい。
【0015】
型取り工程では、
図1(a)に示されるように、複製材2Rを用いた注型によって、第一凹凸型1を複製元とした複製品となる第二凹凸型2が作成される。これにより、第二凹凸型2の第二曲型面2aが第一凹凸型1の第一曲型面1aからの転写面となる。
型取り工程の具体例として図示例の場合には、先ず型枠6の内側に複製元となる第一凹凸型1を入れて型枠6の底部6aに固定する。その次に液状の複製材2Rを第一凹凸型1が埋まるまで注入し、脱泡を行ってから固化させる。最後に固化が完了した母型を型枠6から取り出すことにより、複製品の第二凹凸型2が完成する。
セット工程では、
図1(b)や
図3(a)に示されるように、貼り合わせ空間Sに配備した第一保持部材31の第一保持面31aには、第一凹凸型1の第一非型面1cが保持され、第二保持部材32の第二保持面32aには、第二凹凸型2の第二非型面2cが保持される。この保持状態で搬入工程が開始される。
【0016】
搬入工程では、搬送手段5により第一ワークW1と第二ワークW2が外部空間から貼り合わせ空間Sに搬入され、第一ワーク保持部1bや第二ワーク保持部2bの作動により、第一凹凸型1の第一曲型面1aに第一ワークW1を受け渡し、第二凹凸型2の第二曲型面2aに第二ワークW2を受け渡して、第一ワークW1の第一貼合面W12と第二ワークW2の第二貼合面W22がZ方向へ離隔してそれぞれ仮保持される。
特に、第二ワークW2が曲面形状のフィルム又は薄板である場合には、先ず
図2(a)に示されるように、第二凹凸型2の第二曲型面2aと同じ凹凸形状の保持面7aを有するトレー形状の保持台7に対し、保持面7aと嵌合するように第二ワークW2が装着されている。保持面7aの具体例としては、真空吸着などの差圧チャックなどを用いている。
保持面7aに対する第二ワークW2の装着位置は、それ以降も含めて位置決めピンやCCDカメラなどの位置検出器で位置決めされ、一時的に真空吸着などで仮固定することが好ましい。搬送手段5としては、圧縮気体の噴射機能及び吸引機能を有する搬送治具51が用いられ、第二ワークW2と僅かにZ方向へ離れた位置から搬送治具51より圧縮気体を、第二ワークW2の第二貼合面W22に向け噴射して、第二ワークW2のシワを伸ばして保持面7aの凹凸形状に沿わすことが好ましい。
その次に
図2(b)に示されるように、搬送治具51からの吸引で第二ワークW2の第二貼合面W22を全面的に真空吸着して受け取る。
その後の搬入時には
図2(c)に示されるように、搬送治具51が移動して第二ワークW2の第二非貼合面W21を第二凹凸型2の第二曲型面2aに受け渡す。図示例では、第二凹凸型2が第二曲型面2a及び第二ワーク保持部2bを上向きにしており、
図1(b)や
図3(a)に示したセット状態と上限反転しており、その後に第二ワークW2が受け渡された第二凹凸型2を上下反転して、第二保持部材32の第二保持面32aに第二保持チャック32bで保持される。
また、その他の例として図示しないが、搬送治具51を移動及び上下反転させて、セット状態の第二曲型面2a及び第二ワーク保持部2bが下向きの第二凹凸型2に対して、第二ワークW2の第二非貼合面W21を受け渡すことも可能である。
なお、図示例では、搬送治具51から圧縮気体を噴射したが、これに代えて保持台7の保持面7aから圧縮気体を噴射することや、搬送治具51及び保持面7aの両方から圧縮気体を噴射することなどの変更が可能である。
これにより、第二ワークW2が薄いフィルム状であってもシワが無く形状が安定した状態で第二凹凸型2に受け渡すことが可能になるため、その後の貼り合わせ動作が安定し、貼り合わせ完了後の貼合デバイスDに気泡が入ることや、内部応力が残ることなく、品質の高い貼り合わせを実現できる。
【0017】
加圧工程では、
図1(c)や
図3(b)(c)に示されるように、駆動部3による第一保持部材31や第二保持部材32の作動で、第一凹凸型1又は第二凹凸型2のいずれか一方若しくは両方がZ方向へ相対的に接近移動して、第一ワークW1の第一貼合面W12と第二ワークW2の第二貼合面W22が接着層W3を介してZ方向へ接するように重ね合わせる。これに続く相対的な接近移動で第一ワークW1と第二ワークW2をZ方向に加圧する。これにより、第一ワークW1の第一貼合面W12と第二ワークW2の第二貼合面W22が接着層W3を介して面全体で均一に接合される。
さらに、加圧工程における第一ワークW1と第二ワークW2の重ね合わせは、必要に応じて、真空雰囲気や高温雰囲気で行うことも可能である。
最終の搬出工程では、駆動部3による第一保持部材31や第二保持部材32の作動で、第一凹凸型1又は第二凹凸型2のいずれか一方若しくは両方がZ方向へ相対的に離隔移動して、第一ワーク保持部1bや第二ワーク保持部2bの作動解除により、第一凹凸型1の第一曲型面1aと第二凹凸型2の第二曲型面2aから、貼り合わせた貼合デバイスDが貼り合わせ空間Sから外部空間に搬出される。
【0018】
次に、本発明の第二実施形態に係る曲面ワーク貼合装置A2について説明する。
図3(a)~(c)に示される第二実施形態の曲面ワーク貼合装置A2は、第二保持部材32′の第二保持面32a′がZ方向に突出する凸部32cを有する構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
凸部32cは、
図3(a)に一点鎖線で示される第一実施形態の第二保持部材32の第二保持面32aに比べて、部分的に突出しており、その中心からXY方向のいずれか一方又は両方などに向かって徐々に突出量が減少する山型状に形成することが好ましい。
図示例では、凸部32cがY方向のみに向かって徐々に突出量が減少する山型状に形成している。また、その他に図示しないが、凸部32cの形状や個数を図示例以外の形状や個数に変更することが可能である。
このため、
図3(a)に示されるセット状態では、第二保持部材32′の第二保持面32a′及び凸部32cに対し、第二凹凸型2′の第二非型面2c′を当接させて第二保持チャック32bで第二凹凸型2′が保持される。
図3(a)に一点鎖線で示される第一実施形態の第二凹凸型2に比べ、凸部32cで押された箇所がZ方向へ山型状に膨出変形して膨出部2dとなる。
これにより、第二ワークW2が少なくともZ方向に弾性変形可能な薄板状又はフィルム状である場合には、第二曲型面2a′の部分的な膨出部2dに倣って、第二ワークW2の一部が膨出変形し、第二貼合面W22に山型状の膨出変形部位W23が部分的に形成される。
このため、
図3(b)に示される加圧工程の前半では、駆動部3で第二保持部材32′を介して第二凹凸型2′が第一凹凸型1に向け相対的に接近移動にすることにより、先ずは第二ワークW2の第二貼合面W22において山型状の膨出変形部位W23が、第一ワークW1の第一貼合面W12と部分的に接合する。
これに続く
図3(c)に示される加圧工程の後半では、駆動部3による第一凹凸型1に向けた第二凹凸型2′の相対的な接近移動に伴う加圧で、第二貼合面W22の膨出変形部位W23及び第二曲型面2aの部分的な膨出部2dが徐々に潰れ変形して、膨出変形部位W23を中心とした周囲部位が順次圧接する。
これにより、第一貼合面W12に対する第二貼合面W22の接触領域が徐々に広がって、最終的には第一貼合面W12の全体に第二貼合面W22の全体が圧接する。
【0019】
このような本発明の実施形態に係る曲面ワーク貼合装置A(A1,A2)及び曲面ワーク貼合方法によると、駆動部3の接近移動により第一凹凸型1と第二凹凸型2,2′が相対的に接近移動して、第一曲型面1aと第一曲型面1aの転写面である第二曲型面2a,2a′との間に、第一ワークW1と第二ワークW2が厚み方向(Z方向)に(接着層W3を挟んで)重ね合わされる。
これに続く駆動部3による第一凹凸型1と第二凹凸型2,2′の相対的な接近移動に伴い、第一ワークW1と第二ワークW2を厚み方向(Z方向)に加圧して、第一ワークW1の第一貼合面W12と第二ワークW2の第二貼合面W22が接合される。
したがって、三次元曲面形状の第一ワークW1と第二ワークW2を面全体で均一に貼り合わせることができる。
その結果、曲面物体の曲面部と対応するキャビティの屈曲弧面と、突き当てブロックの屈曲面が別々に作成される従来のものに比べ、第二曲型面2aが第一曲型面1aの転写面であるため、加工精度の僅かな違いが発生せず、第一ワークW1及び第二ワークW2が複雑な三次元曲面形状になっても、第一貼合面W12と第二貼合面W22を容易で且つ確実に均一な貼合デバイスDを作成できる。
これにより、貼り合わせ精度の向上が図れる。
【0020】
ところで、第一ワークW1や第二ワークW2は、それらの加工精度の僅かな違いにより、僅かな寸法誤差が生じる。寸法誤差の具体例としては、製品毎に僅かな厚みムラ,凹凸部位の僅かな位置ズレなどが生じることがある。
そこで、第二凹凸型2,2′は、弾性を有する複製材2Rにより第一凹凸型1を複製元として形成されることが好ましい。
この場合には、複製材2Rからなる第二凹凸型2が少なくとも厚み方向(Z方向)に弾性変形可能であるため、第一ワークW1や第二ワークW2の製品毎に僅かな厚みムラが生じても、僅かな厚みムラを第二凹凸型2の弾性変形で吸収可能となる。
さらに、第一ワークW1や第二ワークW2の製品毎において凹凸部位の相対位置に僅かな位置ズレが生じても、凹凸部位の相対位置の僅かな位置ズレを第二凹凸型2の弾性変形で吸収可能となる。
したがって、三次元曲面形状の第一ワークW1と第二ワークW2をそれらの僅かな寸法誤差に影響されることなく面全体で均一に貼り合わせることができる。
その結果、貼り合わせ精度の更なる向上が図れる。
これに加えて、複製材2Rからなる第二凹凸型2は、機械加工によるものに比べ、高精度な複製品を簡単に大量生産できて、コストの低減化も図れる。
また、粘着性が有る複製材2Rからなる第二凹凸型2を、第一凹凸型1よりも厚み方向(Z方向)の上位に配置した場合には、複製材2Rが有する粘着力で第二ワークW2の第二非貼合面W21を落下不能に保持できて、貼り合わせ動作の雰囲気が大気圧中に限らず真空中であっても第二ワークW2(第二貼合面W22)を第一ワークW1(第一貼合面W12)と簡単で且つ確実に貼り合わせることができる。
【0021】
さらに、第二ワークW2は、フィルム状の基板からなることことが好ましい。
この場合には、第二ワークW2の剛性が低くなり、第一ワークW1の凹凸部位に倣って第二ワークW2が変形可能になる。
したがって、三次元曲面形状の第一ワークW1(第一貼合面W12)に第二ワークW2(第二貼合面W22)を面全体で均一に密着させることができる。
その結果、貼り合わせ精度の更なる向上が図れる。
特に、第二凹凸型2が、第一凹凸型1の第一曲型面1aを複製元とした弾性変形可能な複製材2Rからなる場合には、第一ワークW1や第二ワークW2の僅かな寸法誤差に影響されることなく、第一貼合面W12に第二貼合面W22を面全体で均一に密着させることができる。
【0022】
また、
図3(a)~(c)に示される第二実施形態の曲面ワーク貼合装置A2によると、第二保持部材32′の第二保持面32a′及び凸部32cに沿って、第二凹凸型2′の第二非型面2c′を保持することにより、第二凹凸型2′の第二曲型面2a′において凸部32cで押された箇所が厚み方向(Z方向)に膨出変形する。
このため、第二曲型面2a′の部分的な膨出部2dに倣って、第二ワークW2の第二貼合面W22に膨出変形部位W23が部分的に形成される。
この膨出変形状態で第一凹凸型1が第二凹凸型2に向け相対的に接近移動にすることにより、第二ワークW2の第二貼合面W22において膨出変形部位W23が、第一ワークW1の第一貼合面W12と部分的に接合する。
これに続く第一凹凸型1に対する第二凹凸型2′の相対的な接近移動に伴う加圧で、第二貼合面W22の膨出変形部位W23及び第二曲型面2aの部分的な膨出部2dが徐々に潰れ変形して、膨出変形部位W23を中心とした周囲部位が順次圧接する。
これにより、第一貼合面W12に対する第二貼合面W22の接触領域が徐々に広がって、最終的には第一貼合面W12の全体に第二貼合面W22の全体が圧接する。
したがって、三次元曲面形状の第一ワークW1の第一貼合面W12に対する第二ワークW2の第二貼合面W22の接合状態を常時安定させることができる。
その結果、安定的な接合で貼り合わせ精度の更なる向上が図れる。
また、貼り合わせ動作の雰囲気が大気圧中や真空中において、第一貼合面W12と第二貼合面W22の間にガスが存在する場合であっても、第一貼合面W12に対する第二貼合面W22の接触領域が徐々に広がることにより、第一貼合面W12と第二貼合面W22の間から外側にガスが押し出される。このため、貼り合わされた第一貼合面W12と第二貼合面W22の内部にガスが残存せず、無気泡で高品質な貼合デバイスDを作成できる。
その結果、大気中や真空中に関係なくガスが存在する環境であっても、安定的な接合で貼り合わせ精度の更なる向上が図れる。
【0023】
なお、前示の実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)では、Z方向の下位に第一ワークW1と第一凹凸型1を配置し、上位に第二ワークW2と第二凹凸型2を配置したが、これに限定されず、上位に第一ワークW1と第一凹凸型1を配置し、下位に第二ワークW2と第二凹凸型2を配置してもよい。
これに加えて、第一凹凸型1が鋳造物であって第二凹凸型2が複製品である場合を説明したが、これに限定されず、第二凹凸型2が鋳造物であり、第一凹凸型1が第二凹凸型2又は第二凹凸型2と同形状に別途作製した型部材(鋳造物)の複製品であってもよい。特に、第二凹凸型2が鋳造物であって且つ第二凹凸型2と対応する第二ワークW2のZ方向の凹凸高さが比較的に低い場合には、第二ワークW2の外表面に電鋳法などによるメッキ層(図示しない)を形成することも可能である。
さらに、第一ワーク保持部1b,第一保持チャック31b,第二保持チャック32bとして真空吸着などの差圧チャックを用い、第二ワーク保持部2bとして複製材2Rの粘着力のみで密着保持したが、これに限定されず、差圧チャックや複製材2Rの粘着力に代えて粘着部材などの粘着チャック,静電吸着などの静電チャック,磁石による固定保持,メカニカルチャックなどを用いてもよい。特に、真空雰囲気で貼り合わせを行う場合には、磁石による固定保持やメカニカルチャックによる固定保持方法などが有効である。
また、保持台7の保持面7aとして真空吸着などの差圧チャックを用いたが、これに限定されず、差圧チャックに代えて粘着部材などの粘着チャック,静電吸着などの静電チャックなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0024】
A,A1,A2 曲面ワーク貼合装置 1 第一凹凸型
1a 第一曲型面 2(2′) 第二凹凸型
2a(2a′) 第二曲型面 2c(2c′) 第二非型面
2R 複製材 3 駆動部
32′ 第二保持部材 32a′ 第二保持面
32c 凸部 4 制御部
W1 第一ワーク W11 第一非貼合面
W12 第一貼合面 W2 第二ワーク
W21 第二非貼合面 W22 第二貼合面
【手続補正書】
【提出日】2021-07-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2022-05-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元曲面の薄板状に形成された回路基板を含む第一ワークと、薄板状の第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合装置であって、
前記第一ワークの第一非貼合面が着脱自在に保持される第一曲型面を有する第一凹凸型と、
前記第二ワークの第二非貼合面が着脱自在に保持される第二曲型面を有する第二凹凸型と、
前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記第一ワーク及び前記第二ワークの厚み方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、
前記駆動部を作動制御する制御部と、を備え、
前記第二曲型面は、前記第一曲型面の複製による転写面であり、
前記制御部は、前記駆動部の接近移動により、前記第一凹凸型の前記第一曲型面と前記第二凹凸型の前記第二曲型面との間に、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向に挟み込まれて重ね合わされ、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に加圧して、前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面が面全体で接合されるように制御することを特徴とする曲面ワーク貼合装置。
【請求項2】
前記第二凹凸型は、弾性を有する複製材により前記第一凹凸型を複製元として形成されることを特徴とする請求項1記載の曲面ワーク貼合装置。
【請求項3】
前記第二ワークは、フィルム状の基板からなることを特徴とする請求項1又は2記載の曲面ワーク貼合装置。
【請求項4】
前記第二凹凸型の第二非型面が保持される第二保持面を有する第二保持部材を備え、前記第二保持面が前記厚み方向へ部分的に突出して前記第二非型面と当接する凸部を有し、
前記第二凹凸型の前記第二曲型面は、前記凸部で押されて膨出変形する膨出部を有し、
前記制御部は、前記駆動部による前記第二凹凸型の前記第一凹凸型に向けた相対的な接近移動に伴う加圧で、前記膨出部が潰れ変形されるように制御することを特徴とする請求項2又は3記載の曲面ワーク貼合装置。
【請求項5】
三次元曲面の薄板状に形成された回路基板を含む第一ワークと、薄板状の第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合方法であって、
第一曲型面を有する第一凹凸型から第二曲型面を有する第二凹凸型が作成される型取り工程と、
前記第一凹凸型の前記第一曲型面に前記第一ワークの第一非貼合面を着脱自在に保持するとともに、前記第二凹凸型の前記第二曲型面に前記第二ワークの第二非貼合面を、前記第一ワーク及び前記第二ワークが厚み方向へ離隔して挟むように保持するセット工程と、
前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記厚み方向へ相対的に接近移動して、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向に加圧する加圧工程と、を含み、
前記型取り工程では、前記第一曲型面の複製による転写面として前記第二曲型面が形成され、
前記加圧工程では、前記第一凹凸型の前記第一曲型面と前記第二凹凸型の前記第二曲型面との間に、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に挟み込んで重ね合わせ、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に加圧して、前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面が面全体で接合されることを特徴とする曲面ワーク貼合方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
このような課題を解決するために本発明に係る曲面ワーク貼合装置は、三次元曲面の薄板状に形成された回路基板を含む第一ワークと、薄板状の第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合装置であって、前記第一ワークの第一非貼合面が着脱自在に保持される第一曲型面を有する第一凹凸型と、前記第二ワークの第二非貼合面が着脱自在に保持される第二曲型面を有する第二凹凸型と、前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記第一ワーク及び前記第二ワークの厚み方向へ相対的に接近移動させる駆動部と、前記駆動部を作動制御する制御部と、を備え、前記第二曲型面は、前記第一曲型面の複製による転写面であり、前記制御部は、前記駆動部の接近移動により、前記第一凹凸型の前記第一曲型面と前記第二凹凸型の前記第二曲型面との間に、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向に挟み込まれて重ね合わされ、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に加圧して、前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面が面全体で接合されるように制御することを特徴とする。
また、このような課題を解決するために本発明に係る曲面ワーク貼合方法は、三次元曲面の薄板状に形成された回路基板を含む第一ワークと、薄板状の第二ワークを貼り合わせる曲面ワーク貼合方法であって、第一曲型面を有する第一凹凸型から第二曲型面を有する第二凹凸型が作成される型取り工程と、前記第一凹凸型の前記第一曲型面に前記第一ワークの第一非貼合面を着脱自在に保持するとともに、前記第二凹凸型の前記第二曲型面に前記第二ワークの第二非貼合面を、前記第一ワーク及び前記第二ワークが厚み方向へ離隔して挟むように保持するセット工程と、前記第一凹凸型又は前記第二凹凸型のいずれか一方若しくは両方を前記厚み方向へ相対的に接近移動して、前記第一ワークと前記第二ワークが前記厚み方向に加圧する加圧工程と、を含み、前記型取り工程では、前記第一曲型面の複製による転写面として前記第二曲型面が形成され、前記加圧工程では、前記第一凹凸型の前記第一曲型面と前記第二凹凸型の前記第二曲型面との間に、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に挟み込んで重ね合わせ、前記第一ワークと前記第二ワークを前記厚み方向に加圧して、前記第一ワークの第一貼合面と前記第二ワークの第二貼合面が面全体で接合されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
次に、本発明の第二実施形態に係る曲面ワーク貼合装置A2について説明する。
図3(a)~(c)に示される第二実施形態の曲面ワーク貼合装置A2は、第二保持部材32′の第二保持面32a′がZ方向に突出する凸部32cを有する構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
凸部32cは、
図3(a)に一点鎖線で示される第一実施形態の第二保持部材32の第二保持面32aに比べて、部分的に突出しており、その中心からXY方向のいずれか一方又は両方などに向かって徐々に突出量が減少する山型状に形成することが好ましい。
図示例では、凸部32cがY方向のみに向かって徐々に突出量が減少する山型状に形成している。また、その他に図示しないが、凸部32cの形状や個数を図示例以外の形状や個数に変更することが可能である。
このため、
図3(a)に示されるセット状態では、第二保持部材32′の第二保持面32a′及び凸部32cに対し、第二凹凸型2′の第二非型面2c′を当接させて第二保持チャック32bで第二凹凸型2′が保持される。
図3(a)に一点鎖線で示される第一実施形態の第二凹凸型2に比べ、凸部32cで押された箇所がZ方向へ山型状に膨出変形して膨出部2dとなる。
これにより、第二ワークW2が少なくともZ方向に弾性変形可能な薄板状又はフィルム状である場合には、第二曲型面2a′の部分的な膨出部2dに倣って、第二ワークW2の一部が膨出変形し、第二貼合面W22に山型状の膨出変形部位W23が部分的に形成される。
このため、
図3(b)に示される加圧工程の前半では、駆動部3で第二保持部材32′を介して第二凹凸型2′が第一凹凸型1に向け相対的に接近移動にすることにより、先ずは第二ワークW2の第二貼合面W22において山型状の膨出変形部位W23が、第一ワークW1の第一貼合面W12と部分的に接合する。
これに続く
図3(c)に示される加圧工程の後半では、駆動部3による第一凹凸型1に向けた第二凹凸型2′の相対的な接近移動に伴う加圧で、第二貼合面W22の膨出変形部位W23及び第二曲型面2a
′の部分的な膨出部2dが徐々に潰れ変形して、膨出変形部位W23を中心とした周囲部位が順次圧接する。
これにより、第一貼合面W12に対する第二貼合面W22の接触領域が徐々に広がって、最終的には第一貼合面W12の全体に第二貼合面W22の全体が圧接する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、
図3(a)~(c)に示される第二実施形態の曲面ワーク貼合装置A2によると、第二保持部材32′の第二保持面32a′及び凸部32cに沿って、第二凹凸型2′の第二非型面2c′を保持することにより、第二凹凸型2′の第二曲型面2a′において凸部32cで押された箇所が厚み方向(Z方向)に膨出変形する。
このため、第二曲型面2a′の部分的な膨出部2dに倣って、第二ワークW2の第二貼合面W22に膨出変形部位W23が部分的に形成される。
この膨出変形状態で第一凹凸型1が第二凹凸型2に向け相対的に接近移動にすることにより、第二ワークW2の第二貼合面W22において膨出変形部位W23が、第一ワークW1の第一貼合面W12と部分的に接合する。
これに続く第一凹凸型1に対する第二凹凸型2′の相対的な接近移動に伴う加圧で、第二貼合面W22の膨出変形部位W23及び第二曲型面2a
′の部分的な膨出部2dが徐々に潰れ変形して、膨出変形部位W23を中心とした周囲部位が順次圧接する。
これにより、第一貼合面W12に対する第二貼合面W22の接触領域が徐々に広がって、最終的には第一貼合面W12の全体に第二貼合面W22の全体が圧接する。
したがって、三次元曲面形状の第一ワークW1の第一貼合面W12に対する第二ワークW2の第二貼合面W22の接合状態を常時安定させることができる。
その結果、安定的な接合で貼り合わせ精度の更なる向上が図れる。
また、貼り合わせ動作の雰囲気が大気圧中や真空中において、第一貼合面W12と第二貼合面W22の間にガスが存在する場合であっても、第一貼合面W12に対する第二貼合面W22の接触領域が徐々に広がることにより、第一貼合面W12と第二貼合面W22の間から外側にガスが押し出される。このため、貼り合わされた第一貼合面W12と第二貼合面W22の内部にガスが残存せず、無気泡で高品質な貼合デバイスDを作成できる。
その結果、大気中や真空中に関係なくガスが存在する環境であっても、安定的な接合で貼り合わせ精度の更なる向上が図れる。