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  • 特開-積層体、および、積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053514
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】積層体、および、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/118 20150101AFI20230406BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20230406BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B1/118
B32B37/02
G02B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162589
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 光樹
(72)【発明者】
【氏名】榎 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 岳人
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009AA01
2K009AA12
2K009BB24
2K009CC09
2K009CC24
2K009DD02
2K009DD05
2K009EE02
4F100AA01B
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA18B
4F100DD07B
4F100DE01B
4F100EJ65
4F100JA07B
4F100JB04
4F100JB14B
4F100JJ03
4F100JN06
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】反射防止性および防曇性を有する積層体およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】基材2と、基材2の少なくとも一方面に配置される樹脂層3とを備える積層体1において、樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、光硬化性樹脂組成物は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界活性剤とを含有し、樹脂層3の表面は、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方面に配置される樹脂層とを備え、
前記樹脂層は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、
前記光硬化性樹脂組成物は、
2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、
無機粒子と、
ノニオン性界面活性剤と
を含有し、
前記樹脂層の表面は、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有している、積層体。
【請求項2】
前記ノニオン性界面活性剤の分子量が、900以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記光硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
基材を準備する工程と、
前記基材の少なくとも一方面に光硬化性樹脂組成物を含む塗布層を形成する工程と、
前記塗布層の表面に、複数の凹凸からなるモスアイ構造を有し、水接触角が55度以上の成形シートを積層する工程と、
前記塗布層を光硬化させ、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層から前記成形シートを剥離する工程と
を備え、
前記光硬化性樹脂組成物は、
2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、
無機粒子と、
ノニオン性界面活性剤と
を含有し、
前記樹脂層の表面は、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有している、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、および、積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面に、樹脂からなるコート層を積層した積層体が知られている。コート層は、基材に対して所望の物性を付与できる。基材としては、例えば、金属、プラスチックおよびガラスが挙げられる。コート層としては、例えば、ウレタン樹脂層およびアクリル樹脂層が挙げられる。
【0003】
積層体としては、例えば、以下の多層構造体が知られている。この多層構造体は、透明基材と、透明基材の一方側の最外層としての親水性層と、透明基材の反対側の最外層としての複数の凹凸からなるモスアイ構造を有する反射防止層とを有する。反射防止層は、所定のラフネス(凹凸の平均高低差)およびピッチ(互いに隣接する凸部の頂点間の平均距離)を有する。また、反射防止層は、アクリレート化合物を含むUV硬化性材料の硬化により得られる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-217735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、積層体としては、反射防止性に加えて、防曇性が要求される場合がある。
【0006】
本発明は、反射防止性および防曇性を有する積層体、および、積層体の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、基材と、前記基材の少なくとも一方面に配置される樹脂層とを備え、前記樹脂層は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含み、前記光硬化性樹脂組成物は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤とを含有し、前記樹脂層の表面は、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有している、積層体を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記ノニオン性界面活性剤の分子量が、900以上である、上記[1]に記載の積層体を、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記光硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有する、上記[1]または[2]に記載の積層体を、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、基材を準備する工程と、前記基材の少なくとも一方面に光硬化性樹脂組成物を含む塗布層を形成する工程と、前記塗布層の表面に、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有し、水接触角が55度以上の成形シートを積層する工程と、前記塗布層を光硬化させ、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層から前記成形シートを剥離する工程とを備え、前記光硬化性樹脂組成物は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤とを含有し、前記樹脂層の表面は、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有している、積層体の製造方法を、含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体およびその製造方法では、光硬化性樹脂組成物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤とを含有する。そのため、本発明の積層体およびその製造方法では、樹脂層が、優れた防曇性を有する。また、本発明の積層体およびその製造方法では、樹脂層の表面が、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有する。そのため、本発明の積層体およびその製造方法では、樹脂層が、優れた反射防止性を有する。
【0012】
そのため、本発明の積層体は、優れた防曇性および反射防止性を有する。また、本発明の積層体の製造方法によれば、優れた防曇性および反射防止性を有する積層体が、得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す概略図である。
図2図2は、図1に示す積層体を製造する方法を示す概略図であって、図2Aは、基材を準備する工程を示し、図2Bは、基材に光硬化性樹脂組成物を塗布および乾燥させ、塗布層を形成する工程を示し、図2Cは、塗布層の表面に、モスアイ構造を有する成形シートを積層する工程を示し、図2Dは、塗布層を光硬化させ、樹脂層を形成する工程を示し、図2Eは、樹脂層から成形シートを剥離する工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、積層体1は、基材2と、基材2の少なくとも一方面に配置される樹脂層3とを備える。基材2は、特に制限されない。基材2としては、例えば、有機基材および無機基材が挙げられる。
【0015】
有機基材は、有機材料からなる基材である。有機材料としては、例えば、プラスチック、紙およびパルプが挙げられ、好ましくは、プラスチックが挙げられる。プラスチックとしては、例えば、ポリメチル(メタ)メタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリルカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセチルセルロース、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、および、シリコーンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0016】
無機基材は、無機材料からなる基材である。無機材料としては、例えば、ガラス、シリカ、金属および金属酸化物が挙げられ、好ましくは、金属および金属酸化物が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタン、コバルト、インジウムおよびクロムが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、上記金属の酸化物が挙げられる。金属酸化物として、具体的には、例えば、酸化アルミニウムおよび酸化チタンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0017】
また、基材2としては、有機無機複合基材も挙げられる。有機無機複合基材は、有機材料および無機材料を含む基材である。有機無機複合基材としては、例えば、プラスチックからなる有機基材の表面に金属層が蒸着された基材が挙げられる。また、有機無機複合基材としては、例えば、無機材料からなる充填剤を含有するプラスチックからなる基材が挙げられる。
【0018】
基材2は、単独使用または2種類以上併用できる。基材2として、好ましくは、光透過性を有する基材が挙げられる。そのような基材としては、例えば、プラスチックからなる基材が挙げられる。光透過性を有する基材を使用することにより、基材2の他方側から光硬化性樹脂組成物に対して光を照射できる。
【0019】
基材2の形状は、特に制限されない。基材の形状としては、例えば、板状、フィルム状、シート状、レンズ状、ボトル状およびカップ状が挙げられる。基材の形状として、好ましくは、板状、フィルム状およびシート状が挙げられる。
【0020】
また、基材2は、公知の方法で表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、火炎処理、化学酸化処理、アンカーコート処理およびプライマー処理(下塗り処理)が挙げられる。
【0021】
基材2は、好ましくは、プライマー処理されている。プライマー処理では、公知のプライマー剤が使用される。プライマー剤としては、例えば、ウレタンプライマー、エステルプライマーおよびアクリルプライマーが挙げられ、好ましくは、ウレタンプライマーが挙げられる。なお、基材2がプライマー処理される場合、基材2は、プライマー層(図示せず)を含む。
【0022】
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上である。また、基材2の厚みは、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0023】
基材2の全光線透過率は、例えば、90%以上、好ましくは、95%以上であり、通常、100%以下である。なお、全光線透過率は、JIS K 7361-1(1997)に準拠して、ヘイズメーターにより測定される。
【0024】
樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。好ましくは、樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。光硬化性樹脂組成物は、詳しくは後述するように、光の照射により架橋構造を形成し、硬化する樹脂組成物である。
【0025】
光硬化性樹脂組成物は、必須成分として、(A)2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、(B)無機粒子と、(C)ノニオン性界面活性剤とを含有する。また、詳しくは後述するように、光硬化性樹脂組成物は、任意成分として、(D)ウレタン(メタ)アクリレートを含有できる。
【0026】
なお、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を示す。また、(メタ)アクリルは、アクリルおよび/またはメタクリルを示す。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを示す。
【0027】
以下、(A)2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーを、多官能(メタ)アクリルモノマーと称する。多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、および、ヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジオールジ(メタ)アクリレート、および、2,2-ビス-[4-((メタ)アクリロキシ-ポリエトキシ)フェニル]-プロパン(エチレンオキサイド付加ビスフェノール)が挙げられる。トリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。テトラ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。ヘキサ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0028】
多官能(メタ)アクリルモノマーとして、防曇性の観点から、好ましくは、ジ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートにおいて、オキシエチレン単位(EO単位)の繰り返し数は、防曇性の観点から、例えば、1以上、好ましくは、2以上、より好ましくは、5以上、さらに好ましくは、10以上である。また、オキシエチレン単位の繰り返し数は、防曇性の観点から、例えば、50以下、好ましくは、30以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、15以下である。
【0029】
多官能(メタ)アクリルモノマーの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、35質量%以上である。また、多官能(メタ)アクリルモノマーの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下、より好ましくは、50質量%以下である。
【0030】
なお、固形分総量とは、光硬化性樹脂組成物の乾燥質量であり、後述する溶媒を除く光硬化性樹脂組成物の総量である。より具体的には、固形分総量は、(A)多官能(メタ)アクリルモノマーと、(B)無機粒子と、(C)ノニオン性界面活性剤と、(D)ウレタン(メタ)アクリレートと、さらに、必要により配合される(E)光重合開始剤および(G)その他の成分との総量である。
【0031】
(B)無機粒子としては、例えば、金属酸化物の粒子が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズおよび酸化アンチモンが挙げられる。また、無機粒子としては、ダイヤモンド粒子も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。樹脂層3における分散性、樹脂層3の硬度、および、樹脂層3の耐候性の観点から、好ましくは、金属酸化物が挙げられ、より好ましくは、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムが挙げられる。
【0032】
無機粒子は、必要に応じて、表面修飾されていてもよい。そのような無機粒子としては、例えば、(メタ)アクリロイルを含む官能基により表面修飾された無機粒子が挙げられる。無機粒子を表面修飾する(メタ)アクリロイルを含む官能基は、多官能(メタ)アクリルモノマー中の(メタ)アクリロイル基と反応することにより、樹脂層3の耐擦傷性および防曇性を向上させることができる。
【0033】
(メタ)アクリロイルを含む官能基により表面修飾された無機粒子は、市販品として入手可能である。市販品としては、例えば、PGM-AC-2140Y(オルガノシリカゾル、日産化学工業製)が挙げられる。
【0034】
無機粒子の平均粒子径は、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上である。また、無機粒子の平均粒子径は、例えば、50nm以下、好ましくは、30nm以下である。無機粒子の平均粒子径が、上記下限を上回っていれば、樹脂層3における分散性、および、樹脂層3の硬度が向上する。また、無機粒子の平均粒子径が、上記上限を下回っていれば、樹脂層3の透明性が向上する。なお、無機粒子の平均粒子径は、レーザー光による動的散乱法によって測定される。
【0035】
無機粒子の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、40質量%以上である。また、無機粒子の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0036】
また、無機粒子の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、60質量部以上、好ましくは、80質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、無機粒子の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、200質量部以下、好ましくは、160質量部以下、より好ましくは、140質量部以下である。
【0037】
(C)ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンを有する化合物が挙げられる。すなわち、ノニオン性界面活性剤は、例えば、分子中に2つ以上のオキシアルキレンを含有する。オキシアルキレンとしては、例えば、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシトリメチレンおよびオキシテトラメチレンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。オキシアルキレンとして、好ましくは、オキシエチレンおよびオキシプロピレンが挙げられる。
【0038】
また、ノニオン性界面活性剤は、防曇性の観点から、好ましくは、ポリ(メタ)アクリルおよびエチレン性不飽和結合を有しない。
【0039】
ノニオン性界面活性剤として、より具体的には、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレンアルキルエステルが挙げられ、好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、および、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0040】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとして、より具体的には、例えば、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンドデシルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、および、ポリオキシアルキレンオレイルセチルエーテルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0041】
ノニオン性界面活性剤において、オキシアルキレン単位の繰り返し数は、特に制限されないが、例えば、1以上、好ましくは、2以上である。また、オキシエチレン単位の繰り返し数は、例えば、30以下、好ましくは、20以下である。
【0042】
ノニオン性界面活性剤の分子量(ポリスチレン換算による重量平均分子量(g/mol))は、例えば、500以上、好ましくは、900以上、より好ましくは、1000以上であり、例えば、3000以下、好ましくは、2000以下、より好ましくは、1500以下である。ノニオン性界面活性剤の分子量が、上記下限を上回っていれば、防曇持続性が向上する。また、ノニオン性界面活性剤の分子量が、上記上限を下回っていれば、防曇特性が向上する。
【0043】
ノニオン性界面活性剤は、必要により、アニオン性親水基を、適宜の割合で含むことができる。アニオン性親水基としては、例えば、スルホ基、カルボキシ基、リン酸基、O-硫酸基(-O-SO-)、N-硫酸基(-NH-SO-)、および、これらの塩が挙げられる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0044】
アニオン性親水基を有するノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、および、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0045】
ノニオン性界面活性剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、2.0質量%以上、より好ましくは、3.0質量%以上である。また、ノニオン性界面活性剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、8.0質量%以下、より好ましくは、7.0質量%以下である。
【0046】
また、ノニオン性界面活性剤の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上である。また、ノニオン性界面活性剤の含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、15質量部以下である。
【0047】
光硬化性樹脂組成物は、好ましくは、任意成分として、(D)ウレタン(メタ)アクリレートを含有する。
【0048】
(D)ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン基および(メタ)アクリロイル基を併有する化合物である。(D)ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとを、ウレタン化反応させて得られる反応生成物である。光硬化性樹脂組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含有していれば、耐熱性および防曇性に優れる樹脂層3が得られる。
【0049】
ポリイソシアネートとしては、例えば、工業的に汎用されるポリイソシアネートが挙げられ、好ましくは、ジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートとして、より具体的には、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)、および、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)およびジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ポリイソシアネートとして、好ましくは、鎖状脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
【0050】
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、水酸基含有モノ(メタ)アクリレート、水酸基含有ジ(メタ)アクリレート、および、水酸基含有トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシープロピル(メタ)アクリレート、3-クロロー2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(6-ヒドロヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、および、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有トリ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとして、好ましくは、水酸基含有トリ(メタ)アクリレートが挙げられ、より好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルは、公知の方法で、ウレタン化反応する。これにより、ウレタン(メタ)アクリレートを得ることができる。
ポリイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの配合割合、反応温度および反応時間は、必要に応じて、適宜設定される。また、ウレタン化反応では、必要に応じて、公知のウレタン化触媒および有機溶媒を使用できる。
【0052】
ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、30質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下である。
【0053】
また、ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上である。また、ウレタン(メタ)アクリレートの含有割合は、多官能(メタ)アクリルモノマー100質量部に対して、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0054】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、任意成分として、(E)光重合開始剤を含有できる。光重合開始剤としては、例えば、公知の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0055】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、α-アシロキシムエステル系化合物、フェニルグリオキシレート系化合物、ベンジル系化合物、アゾ系化合物、ジフェニルスルフィド系化合物、有機色素系化合物、鉄-フタロシアニン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、および、アントラキノン系化合物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。光ラジカル重合開始剤として、反応性の観点から、好ましくは、アルキルフェノン系化合物およびアシルフォスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。
【0056】
なお、光重合開始剤として、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、Omnirad127、Omnirad184、Omnirad1173、Omnirad500、Omnirad819、および、OmniradTPO(以上、IGM resinsB.V.社製)が挙げられる。また、市販品としては、エサキュアONE、エサキュアKIP100F、エサキュアKT37、および、エサキュアKTO46(以上、ランベルティー社製)も挙げられる。
【0057】
光重合開始剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、0.4質量%以上、好ましくは、0.6質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上である。また、光重合開始剤の含有割合は、光硬化性樹脂組成物の固形分総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、6.0質量%以下、より好ましくは、4.0質量%以下である。
【0058】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、任意成分として、(F)溶媒を含有できる。溶媒としては、例えば、水および公知の有機溶剤が挙げられる。
【0059】
溶媒の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、光硬化性樹脂組成物が溶媒を含む場合、光硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上である。また、光硬化性樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、65質量%以下である。
【0060】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、(G)その他の成分を含有できる。その他の成分とは、上記(A)~(F)を除く成分である。その他の成分としては、例えば、添加剤が挙げられる。添加剤としては、例えば、光重合促進剤、熱重合開始剤、増粘剤、消泡剤、発泡剤、アクリル系ポリマー、酸化防止剤、耐光安定剤、耐熱安定剤および難燃剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0061】
光硬化性樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法で混合することによって得られる。このような光硬化性樹脂組成物は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤とを含有する。そのため、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた防曇性を有する。また、光硬化性樹脂組成物が、ウレタン(メタ)アクリレートを含有していれば、光硬化性樹脂組成物の硬化物は、優れた耐熱性を有する。
【0062】
樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含んでいる。好ましくは、樹脂層3は、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。樹脂層3の表面は、複数の微細な凹凸からなる微細凹凸構造を有している。微細凹凸構造によって、樹脂層3は、反射防止性を有する。
【0063】
このような積層体1は、例えば、以下の方法で製造される。すなわち、この方法では、まず、図2Aが参照されるように、基材2を準備する(準備工程)。基材2としては、上記した基材が挙げられる。基材2は、公知の方法で表面処理されていてもよい。表面処理として、好ましくは、プライマー処理が挙げられる。
【0064】
次いで、この方法では、図2Bが参照されるように、基材2の少なくとも一方面に、光硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて、乾燥させる(塗布工程)。これにより、光硬化性樹脂組成物を含む塗布層5を形成する。
【0065】
塗布方法としては、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。塗布方法としては、例えば、バーコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、流し塗り法、刷毛塗り法、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、および、キスコート法が挙げられる。
【0066】
乾燥方法としては、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、乾燥温度が、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、乾燥温度が、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、30秒以上、好ましくは、1分以上である。また、乾燥時間が、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。
【0067】
塗布層の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上である。また、塗布層の厚みは、例えば、100μm以下、好ましくは、80μm以下である。
【0068】
次いで、この方法では、図2Cが参照されるように、塗布層5の表面に、複数の凹凸からなるモスアイ構造を有する成形シート10を積層および押圧する(積層工程)。
【0069】
成形シート10は、例えば、樹脂層3の表面の微細凹凸構造(図1参照)に対して、逆パターンのモスアイ構造を有するシートである。換言すると、樹脂層3の微細凹凸構造は、例えば、成形シート10のモスアイ構造を反転した構造(反転モスアイ構造)を有する。
【0070】
成形シート10としては、例えば、樹脂シートおよび金属シートが挙げられる。樹脂シートは、例えば、樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ナイロン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、合成ゴムおよび天然ゴムが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。金属シートは、例えば、金属材料から形成されている。金属材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウムおよび銅が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0071】
成形シート10の水接触角は、樹脂層3の成形安定性の観点から、例えば、55度以上、さらに好ましくは、70度以上、とりわけ好ましくは、80度以上である。また、成形シート10の水接触角は、例えば、170度以下、さらに好ましくは、160度以下、とりわけ好ましくは、155度以下である。成形シート10の水接触角が上記下限を下回っていれば、成形シート10の脱型性が十分ではなく、樹脂層3に微細凹凸構造を形成できない。一方、成形シート10の水接触角が上記下限を上回っていれば、成形シート10の脱型性に優れ、樹脂層3に微細凹凸構造を形成できる。
【0072】
なお、成形シート10の水接触角は、成形シート10の凹凸部分において測定される。また、水接触角は、JIS R 3257(1999年)に準拠して測定される(以下同様)。
【0073】
成形シート10は、樹脂層3の成形安定性の観点から、とりわけ好ましくは、撥水性材料から形成されている。なお、撥水性とは、その材料のシートの平面部分における水接触角が、90度以上であることを示す。すなわち、成形シート10の水接触角は、とりわけ好ましくは、90度以上である。
【0074】
撥水性材料としては、例えば、上記した樹脂材料のうち、撥水性を有する樹脂材料が挙げられる。撥水性の樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、および、ポリテトラフルオロエチレン樹脂が挙げられる。
【0075】
成形シート10は、公知の方法で製造される。例えば、表面にモスアイ構造を形成可能な金型を使用して樹脂材料を成形することにより、成形シート10を得ることができる。また、例えば、まず、表面にモスアイ構造を有しない樹脂シートを成形し、その後、樹脂シートの表面を、公知の方法で凹凸加工することにより、成形シート10を得ることができる。また、成形シート10として、市販のモスアイ型反射防止フィルムを使用することもできる。モスアイ型反射防止フィルムは、表面に微細な複数の凹凸からなるモスアイ構造(微細凹凸構造)を有している。
【0076】
そして、モスアイ構造を有する成形シート10を、塗布層5に積層および押圧することによって、成形シート10のモスアイ構造とは逆パターンの微細凹凸構造が、塗布層5の表面に形成される。すなわち、成形シート10のモスアイ構造が、逆パターンとして転写される。これにより、微細凹凸構造を有する塗布層5が得られる。
【0077】
次いで、この方法では、図2Dが参照されるように、塗布層5を光硬化させ、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層3を形成する(光硬化工程)。
【0078】
すなわち、この工程では、塗布層5に微細凹凸構造が形成された状態において、塗布層5に光を照射する。
【0079】
光は、基材2側から照射されていてもよく、また、成形シート10側から照射されていてもよい。塗布層5の硬化性、および、成形シート10の剥離性の観点から、好ましくは、光は、基材2側から照射される。
【0080】
光としては、活性エネルギー線が挙げられ、より具体的には、例えば、α線、β線、γ線、X線、電子線、紫外線および可視光線が挙げられる。光の波長は、特に制限されないが、例えば、0.0001nm~800nmである。光として、好ましくは、紫外線が挙げられる。紫外線のピーク波長は、例えば、200nm以上、好ましくは、230nm以上、より好ましくは、240nm以上、さらに好ましくは、250nm以上である。また、紫外線のピーク波長は、例えば、450nm以下、好ましくは、445nm以下、より好ましくは、430nm以下、さらに好ましくは、400nm以下である。
【0081】
なお、光を照射する時間は、光硬化性樹脂組成物を硬化できる範囲において、適宜設定される。光の照射エネルギーは、例えば、5mJ/cm以上、好ましくは、10mJ/cm以上、より好ましくは、50mJ/cm以上である。また、光の照射エネルギーは、例えば、1000mJ/cm以下、好ましくは、500mJ/cm以下である。
【0082】
これにより、塗布層において、多官能(メタ)アクリルモノマーが架橋構造を形成し、光硬化性樹脂組成物が硬化する。
【0083】
より具体的には、光硬化性樹脂組成物の硬化では、例えば、多官能(メタ)アクリルモノマーが架橋し、ネットワーク構造を形成する。また、そのネットワーク構造中に、無機粒子およびノニオン界面活性剤が分散される。このような光重合性樹脂組成物において、無機粒子が(メタ)アクリロイル基を有する場合、無機粒子がネットワーク構造の形成に寄与する。さらに、光硬化性樹脂組成物がウレタン(メタ)アクリレートを含む場合、ウレタン(メタ)アクリレートがネットワーク構造の形成に寄与する。これにより、光硬化性樹脂組成物の硬化物が得られる。その結果、光硬化性樹脂組成物の硬化物を含む樹脂層3が得られる。
【0084】
その後、この方法では、図2Eが参照されるように、樹脂層3から成形シート10を剥離する(脱型工程)。これにより、基材2および樹脂層3を備える積層体1が得られる。
【0085】
積層体1において、樹脂層3の微細凹凸構造の平均高低差(ラフネス、図1のα)、および、互いに隣接する凸部の中心間の距離(ピッチ、図1のβ)は、樹脂層3が反射防止性を有する範囲において、適宜調整される。換言すると、後述する実施例の反射防止性の評価において、「○」を得られるラフネスおよびピッチの構造が、微細凹凸構造である。
【0086】
より具体的には、樹脂層3の表面において、微細凹凸構造の平均高低差(ラフネス、図1のα)は、例えば、60nm以上、好ましくは、100nm以上である。また、微細凹凸構造の平均高低差(ラフネス、図1のα)は、例えば、800nm以下、好ましくは、600nm以下である。
【0087】
また、樹脂層3の表面において、隣接する凸部の中心間の距離(ピッチ、図1のβ)は、例えば、60nm以上、好ましくは、100nm以上である。また、隣接する凸部の中心間の距離(ピッチ、図1のβ)は、例えば、800nm以下、好ましくは、600nm以下である。
【0088】
樹脂層3の表面において、微細凹凸構造の平均高低差が上記範囲であり、かつ、隣接する凸部の頂点間の距離が上記範囲であれば、樹脂層3は、優れた反射防止性を有する。
【0089】
そして、樹脂層3は、基材2の少なくとも一方面において、最外層として配置される。これにより、積層体1は、樹脂層3によって、防曇性および反射防止性を有する。
【0090】
なお、樹脂層3は、基材2の一方面のみに形成および配置されていてもよい。また、樹脂層3は、基材2の一方面および他方面の両面に形成および配置されていてもよい。
【0091】
そして、上記の積層体1およびその製造方法では、光硬化性樹脂組成物が、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーと、無機粒子と、ノニオン性界面活性剤とを含有する。そのため、上記の積層体1およびその製造方法では、樹脂層3が、優れた防曇性を有する。また、上記の積層体1およびその製造方法では、樹脂層3の表面が、複数の凹凸からなる微細凹凸構造を有する。そのため、上記の積層体1およびその製造方法では、樹脂層3が、優れた反射防止性を有する。
【0092】
つまり、上記の積層体1は、優れた防曇性および反射防止性を有する。また、上記の積層体1の製造方法によれば、優れた防曇性および反射防止性を有する積層体1が、得られる。
【0093】
積層体1は、例えば、防曇材料、防汚材料、速乾燥性材料、結露防止材料および帯電防止材料として、好適に使用できる。積層体の用途として、より具体的には、例えば、光学フィルム、光ディスク、光学レンズ、眼鏡レンズ、メガネ、サングラス、ゴーグル、ヘルメットシールド、ヘッドランプ、テールランプ、窓ガラス、光学物品および光学部品の材料が挙げられる。また、積層体1は、例えば、車載カメラによる画像認識システムにおいて、好適に使用される。
【実施例0094】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0095】
製造例1~4(光硬化性組成物)
表1に記載の処方で、光硬化性樹脂組成物を調製した。すなわち、まず、常温常圧環境下において、界面活性剤と無機粒子とをガラス製遮光スクリュー管瓶に入れた。次いで、界面活性剤と無機粒子とを混合および撹拌した。撹拌後、界面活性剤と無機粒子との混合物に、多官能モノマーおよびウレタン(メタ)アクリレートを添加し、相溶させた。その後、これらの混合物に、光重合開始剤を添加し、完全に溶解させた。これにより、液状の光硬化性樹脂組成物を得た。
【0096】
なお、製造例1では、ウレタン(メタ)アクリレートを添加し、かつ、LP-100(ノニオン性界面活性剤、重量平均分子量1154(g/mol)、第一工業製薬製)を添加した。
【0097】
また、製造例2では、ウレタン(メタ)アクリレートを添加し、かつ、LP-70(ノニオン性界面活性剤、重量平均分子量984(g/mol)、第一工業製薬製)を添加した。
【0098】
また、製造例3では、ウレタン(メタ)アクリレートを添加せず、かつ、LP-100(ノニオン性界面活性剤、重量平均分子量1154(g/mol)、第一工業製薬製)を添加した。
【0099】
また、製造例4では、界面活性剤を添加せず、かつ、ウレタン(メタ)アクリレートを添加した。
【0100】
実施例1~3および比較例1~4(積層体)
(1)基材
PETフィルム(ルミラー U483:東レ社製、厚さ100μm)の表面に、プライマー(タケラック(登録商標) WS-5100)をバーコーター#5によって塗布し、120℃の送風乾燥機で乾燥させた。これにより、基材表面をプライマー処理した。なお、プライマーの乾燥厚みは3~6μmであった。
【0101】
(2)樹脂層
光硬化性樹脂組成物を、基材のプライマー処理面に、バーコーター#16によって塗布し、空気雰囲気下、80℃の送風乾燥機で5分間乾燥させた。これにより、塗布層を得た。次いで、塗布層の表面に、表1に記載の成形シートを積層および押圧した。これにより、各実施例では、成形シートのモスアイ構造を、塗布層に、逆パターンとして転写した。なお、比較例1では、成形シートを積層しなかった。
【0102】
その後、基材および塗布層を、窒素置換した容器に入れ、塗布層に基材面側から紫外線を照射した。紫外線は、紫外線硬化用メタルハライドランプ(UB012-5BM アイグラフィック社製)により照射された。照射光量は、210mJ/cm-2であった。これにより、塗布層を硬化させ、基材におけるプライマー処理面の上に、光硬化性樹脂組成物の硬化物からなる樹脂層を形成した。
【0103】
これにより、基材と樹脂層とを備える積層体(PETフィルム/プライマー層/樹脂層)を得た。
【0104】
<評価>
(1)脱型性
光硬化後の積層体の脱型性を、以下の方法で評価した。すなわち、塗布層硬化後のサンプル片を25mm×100mmの短冊形状へ切り出したのち、モスアイ構造を保持する基材フィルムと光硬化樹脂組成物を塗布した積層体について、両基材を手で摘まみながらで剥離を行った。なお、評価の基準を下記する。
【0105】
○:光硬化した樹脂層が、剥離することなく目的とする積層体を得た。
×:光硬化した樹脂層が、積層体表面から剥離した、あるいは基材同士が密着し剥離できなかった。
【0106】
(2)防曇性
ビーカー内に純水を入れ、加温した。純水の温度が50℃に達した後、ビーカー上部に積層体を載せた。なお、樹脂層が水蒸気に接触するように、積層体を配置した。その後、樹脂層の曇りの有無を、目視により観測した。なお、評価の基準を下記する。
【0107】
○:測定開始後、60分の時点で曇りが観測された面積が全体の10%未満。
△:測定開始後、60分の時点で曇りが観測された面積が全体の10%以上50%未満
×:測定開始後、60分の時点で全面に曇りが観測された面積が全体の50%以上。
【0108】
(3)反射防止性
樹脂層の反射防止性を、以下の方法で評価した。すなわち、株式会社島津製作所の分光光度計「SolidSpec-3700(商品名)」及び反射ユニット「絶対反射率測定装置」を使用し、上記分光光度計の説明書に従い、5度正反射(積分球前に反射ユニットを設置する。)の条件で、積層フィルムの上記低屈折層側の面とは反対側の面の上に明度が4以下の黒色シートを貼合したものを試験片として測定した可視光線(波長380~780nm)の反射率のスペクトルを、多項式近似法によりスムージング処理して得たスペクトルから、最も低い反射率を読み取って得た。なお、評価の基準を下記する。
【0109】
○:380~780nmにおける積層体表面からの最小反射率が1.0%以下であった。
△:380~780nmにおける積層体表面からの最小反射率が1.0を超過し3.0未満であった。
×:380~780nmにおける積層体表面からの最小反射率が3.0%以上であった。
【0110】
(4)耐熱性
積層体を2mm厚さのガラス基板に貼り付けた試験サンプルを準備した。送風乾燥機を80℃に加熱し、送風乾燥機の底面に試験サンプルを敷いた。なお、基板全体が接触するように、試験サンプルを配置した。その後、所定時間毎に、試験サンプルの外観を目視で観測した。そして、試験サンプルの外観に白化やクラックが観測されるまでの時間を測定した。
【0111】
(5)重量平均分子量(Mw)
ノニオン性界面活性剤の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)は、以下の条件で測定した。
条件
装置; Alliance(WATERS社製)
カラム;Plgel 5μm Mixed-C(測定分子量範囲;100-1000000、Polymerlab社製)
検出器;示差屈折率検出器
遊離液;テトラヒドロフラン
流量;1.0mL/min
カラム温度;40℃
検出器温度;40℃
【0112】
(6)水接触角
成形シートの水接触角は、JIS R 3257(1999年)に準拠して、以下の方法で測定した。すなわち、固体表面(モスアイ表面)上に液滴を静置して,接触角を求める方法(静滴法)を採用した。
【0113】
(7)表面凹凸構造
樹脂層の断面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、樹脂層の表面凹凸構造を確認した。また、凸部の中心点と、その凸部に隣接する凸部(4つ)の中心間の距離の平均距離を測定した。そして、20箇所の凸部における平均距離の平均値を、ピッチとした。また、10箇所の凸部の高さの平均値を、ラフネスとした。
【0114】
なお、比較例1~3では、表面のピッチおよび/またはラフネスが60nm未満であり、表面凹凸構造が観察されなかった。
【0115】
【表1】
【0116】
なお、表中の略語の詳細を下記する。
NKエステルA-600:多官能(メタ)アクリルモノマー、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO単位数14、新中村化学工業製
PGM-AC-2140Y:アクリル基で表面修飾されたナノシリカ、オルガノシリカゾル、分散媒プロピレングリコールモノメチルエーテル、粒子径10~15nm、日産化学製
UA-306H:ウレタンアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとのウレタン化反応生成物、共栄社化学製
LP-100:ノニオン性界面活性剤、第一工業製薬製
LP-70:ノニオン性界面活性剤、第一工業製薬製
Omnirad127:光重合開始剤、IGM resinsB.V.社製
g.moth:成形シート、モスアイ構造フィルム、ジオマテック社製
SVME:成形シート、モスアイ構造フィルム、デクセリアルズ社製
モスマイト:成形シート、モスアイ構造フィルム、三菱ケミカル社製
【符号の説明】
【0117】
1 積層体
2 基材
3 樹脂層
図1
図2