(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053561
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ロータリージョイント及びそれを用いた光学測定装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/26 20060101AFI20230406BHJP
G02B 6/04 20060101ALI20230406BHJP
G02B 6/40 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B6/26
G02B6/04 B
G02B6/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162667
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峰岸 政義
(72)【発明者】
【氏名】川口 史朗
【テーマコード(参考)】
2H036
2H137
2H250
【Fターム(参考)】
2H036JA04
2H036QA18
2H036QA19
2H036QA22
2H036QA58
2H137AA14
2H137AB01
2H137BA08
2H137BA16
2H137BC52
2H137BC71
2H137CA12A
2H137CA35
2H137CD50
2H250CA32
2H250CA42
2H250CA48
2H250CA68
2H250CB08
2H250CD09
2H250CZ11
(57)【要約】
【課題】投光チャンネルと受光チャンネルとの間の光学的なクロストークを抑制し、且つ回転動作時の光の脈動を抑制する。
【解決手段】
第1円形領域に受光ファイバの各一端面が配置され、その外側の第1円環領域に投光ファイバの各一端面が配置される本体側ファイバ保持部25と、第2円形領域に受光ファイバの各一端面が配置され、その外側の第2円環領域に投光ファイバが配置されるプローブ側ファイバ保持部33と、本体側ファイバ保持部25及びプローブ側ファイバ保持部33を相対的に回転可能に支持する回転支持部41と、本体側ファイバ保持部25とプローブ側ファイバ保持部33との間に設けられる光分離筒42と、を含むロータリージョイント40が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1円形領域に第1光ケーブルに含まれる第1内側光ファイバの一端面が配置され、前記第1円形領域と同心であり前記第1円形領域の径より大きな内径を有する第1円環領域に前記第1光ケーブルに含まれる第1外側光ファイバ群の各一端面が配置されるようにして、前記1光ケーブルに含まれる複数の光ファイバを保持する第1ファイバ保持部と、
第2円形領域に第2光ケーブルに含まれる第2内側光ファイバの一端面が配置され、前記第2円形領域と同心であり前記第2円形領域の径より大きな内径を有する第2円環領域に前記第2光ケーブルに含まれる第2外側光ファイバ群の各一端面が配置されるよう、前記第2光ケーブルに含まれる複数の光ファイバを保持する第2ファイバ保持部と、
前記第1円形領域及び前記第2円形領域が離間し且つ対向し、前記第1円環領域及び前記第2円環領域が離間し且つ対向するよう、前記第1ファイバ保持部及び前記第2ファイバ保持部を相対的に回転可能に支持する回転支持部と、
前記第1ファイバ保持部と前記第2ファイバ保持部との間に設けられ、前記第1円形領域及び前記第2円形領域により挟まれる円柱状空間、及び前記第1円環領域及び前記第2円環領域により挟まれる円筒状空間の間の光の通過を抑制する光分離部と、
を含むことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項2】
請求項1に記載のロータリージョイントにおいて、
前記第1円形領域と前記第2円形領域、前記第1円環領域と前記第2円環領域はそれぞれ同軸に配置される、
ことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のロータリージョイントにおいて、
前記光分離部は、前記円柱状空間及び前記円筒状空間の間に配置される第1の筒状体を含む、
ことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項4】
請求項3に記載のロータリージョイントにおいて、
前記第1の筒状体の内側面は鏡面に形成される、
ことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のロータリージョイントにおいて、
前記第1の筒状体の外側面は鏡面に形成される、
ことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のロータリージョイントにおいて、
前記光分離部は、前記円筒状空間を囲い、その内側面が鏡面に形成される第2の筒状体を含む、
ことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のロータリージョイントにおいて、
前記光分離部は、前記円柱状空間に配置される透光性の円柱部材、及び前記円筒状空間に配置されるとともに前記該円柱部材が挿入される透光性の円筒部材を含む、
ことを特徴とするロータリージョイント。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のロータリージョイントを備える光学測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリージョイント及びそれを用いた光学測定装置に関し、特にマルチチャンネル構成の光ケーブルを接続するロータリージョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
光ケーブルによりプローブと本体とが接続された光学測定装置では、ケーブルの途中にロータリージョイントと呼ばれる回転機構が備えられる場合がある。ロータリージョイントは、本体側の光ケーブルの先端部を保持しつつ、プローブ側の光ケーブルの基端部を、それらが互いに対向し、且つ同軸で回転可能となるように保持する。
【0003】
投光用の光チャンネル及び受光用の光チャンネルとして同じ光ファイバを使用する場合、光ファイバの途中にロータリージョイントを設けると、ロータリージョイントにおける内部反射により、本体の投光部から出射された光が試料に届くことなく本体の受光装置に戻る、光学的なクロストークが発生しうる。こうしたクロストークは、光学測定の精度低下に繋がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたクロストークを防止するため、投光用の光チャンネルと受光用の光チャンネルとで別々の光ファイババンドルを用いるマルチチャンネル構成が考えられる。例えば、投光用の光ファイバ群と受光用の光ファイバ群を同軸に、且つ径方向に離間して配置して光ケーブルを構成し、その途中にロータリージョイントを設ける構成が考えられる。しかしながら、このような構成を採用すると、ロータリージョイントによりファイババンドル同士を軸周りに相対的に回転させるのに伴って、いわゆる脈動現象が発生しうる。これは、ロータリージョイントの一方側に設けられた各ファイバの端面のうち、他方側に設けられた各ファイバの端面と重なる領域の面積が、ロータリージョイントの回転に伴って変化することに起因している。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、投光チャンネルと受光チャンネルとの間の光学的なクロストークを抑制し、且つ回転動作時の光の脈動を抑制することができる光ファイバ用ロータリージョイント及びそれを用いた光学測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るロータリージョイントは、第1円形領域に第1光ケーブルに含まれる第1内側光ファイバの一端面が配置され、前記第1円形領域と同心であり前記第1円形領域の径より大きな内径を有する第1円環領域に前記第1光ケーブルに含まれる第1外側光ファイバ群の各一端面が配置されるようにして、前記1光ケーブルに含まれる複数の光ファイバを保持する第1ファイバ保持部と、第2円形領域に第2光ケーブルに含まれる第2内側光ファイバの一端面が配置され、前記第2円形領域と同心であり前記第2円形領域の径より大きな内径を有する第2円環領域に前記第2光ケーブルに含まれる第2外側光ファイバ群の各一端面が配置されるよう、前記第2光ケーブルに含まれる複数の光ファイバを保持する第2ファイバ保持部と、前記第1円形領域及び前記第2円形領域が離間し且つ対向し、前記第1円環領域及び前記第2円環領域が離間し且つ対向するよう、前記第1ファイバ保持部及び前記第2ファイバ保持部を相対的に回転可能に支持する回転支持部と、前記第1ファイバ保持部と前記第2ファイバ保持部との間に設けられ、前記第1円形領域及び前記第2円形領域により挟まれる円柱状空間、及び前記第1円環領域及び前記第2円環領域により挟まれる円筒状空間の間の光の通過を抑制する光分離部と、を含むことを特徴とする。
【0007】
ここで、前記第1円形領域と前記第2円形領域、前記第1円環領域と前記第2円環領域はそれぞれ同軸に配置されてよい。
【0008】
また、前記光分離部は、前記円柱状空間及び前記円筒状空間の間に配置される第1の筒状体を含んでよい。
【0009】
また、前記第1の筒状体の内側面は鏡面に形成されてよい。また、前記第1の筒状体の外側面は鏡面に形成されてよい。
【0010】
また、前記光分離部は、前記円筒状空間を囲い、その内側面が鏡面に形成される第2の筒状体を含んでよい。
或いは、前記光分離部は、前記円柱状空間に配置される透光性の円柱部材、及び前記円筒状空間に配置されるとともに前記該円柱部材が挿入される透光性の円筒部材を含んでよい。
【0011】
また、本発明に係る光学測定装置は、上記ロータリージョイントを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る光学測定装置の構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る本体側ファイバ保持部を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプローブ側ファイバ保持部を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るプローブを示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る光分離筒を示す斜視図である。
【
図6】本体側並びにプローブ側ファイバ保持部、及び光分離筒の配置を説明する図である。
【
図7】ロータリージョイントを回転させた場合の試料からの反射光の光強度変化を示す図である。
【
図9】本体側並びにプローブ側ファイバ保持部、及び変形例に係る光分離筒の配置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る光学測定装置の構成図である。同図に示す光学測定装置10では、光源50から放射される光をプローブ32から試料70に照射し、その反射光をプローブ32で受光して測定器60に導光する。これにより測定器60にて試料70の各種情報を演算する。例えば、光学測定装置10は光源50から放射される白色光を試料70に照射し、その反射光のスペクトルから試料70表面の膜厚を測定するものであってよい。この場合、測定器60は、反射光のスペクトルデータを取得する分光器及びスペクトルデータから膜厚を演算するコンピュータを含む。
【0015】
光学測定装置10は投受光ケーブル31を備えるプローブ側光ケーブル30を含む。投受光ケーブル31は、投光用及び受光用の2チャンネルの光ファイババンドルであり、その先端には光を試料70に照射し、反射光を受けるプローブ32が設けられている。また投受光ケーブル31の基端にはロータリージョイント40を構成するプローブ側ファイバ保持部33が設けられている。
【0016】
光学測定装置10は、また2分岐ファイババンドルである本体側光ケーブル20を含む。すなわち、本体側光ケーブル20は投光用の光ファイババンドルである投光ケーブル21、及び受光用の光ファイババンドルである受光ケーブル22を備える。投光ケーブル21の基端にはコネクタ23が設けられており、このコネクタ23が光源50に接続されている。受光ケーブル22の基端にはコネクタ24が設けられており、このコネクタ24が測定器60に接続されている。投光ケーブル21及び受光ケーブル22の各先端はロータリージョイント40を構成する本体側ファイバ保持部25により一体的に保持されている。
【0017】
ロータリージョイント40は、本体側ファイバ保持部25、プローブ側ファイバ保持部33、光分離部(光学部材)である光分離筒42及び回転支持部41を備える。回転支持部41は概略円筒形状の部材であり、その本体側開口に概略円筒形状の本体側ファイバ保持部25の先端部が挿入されている。本体側ファイバ保持部25の先端部は図示しないボルト等で回転支持部41に固定されており、回転支持部31は本体側ファイバ保持部25の先端部を回転止めした状態で支持している。一方、回転支持部41のプローブ側開口には概略円筒形状のプローブ側ファイバ保持部33の基端部が挿入されている。プローブ側ファイバ保持部33の基端部は、図示しない軸受けを介して回転支持部41により回転可能に支持されている。
【0018】
回転支持部41の内部において、プローブ側ファイバ保持部33と本体側ファイバ保持部25とは同軸に配置されており、プローブ側ファイバ保持部33の基端面と本体側ファイバ保持部25の先端面とは離間し且つ対向している。プローブ側ファイバ保持部33の基端面と本体側ファイバ保持部25の先端面との間には概略円筒状の光分離筒42が配置されている。光分離筒42の詳細は後に説明するが、プローブ側ファイバ保持部33と本体側ファイバ保持部25との間の光の通過を許容しつつ、反射光と投射光との間でクロストークを防止する機能を有する。光分離筒42は回転支持部41に固定されてもよいし、回転可能に支持されてもよい。また、光分離筒42の端面での反射それによるクロストークを防止すべく、光分離筒42の本体側端面は本体側ファイバ保持部25の先端面に当接することが望ましい。また、光分離筒42のプローブ側端面は、プローブ側ファイバ保持部33の回転を阻害しない限り、その基端面に近接することが望ましい。
【0019】
図2は、本体側ファイバ保持部25を示す斜視図である。本体側ファイバ保持部25は、概略円筒の外筒を有しており、内部に多数の投光ファイバ27、及び多数の受光ファイバ28、分離帯25cが収容されている。具体的には、本体側ファイバ保持部25の内部には遮光性且つ円筒形状の分離帯25cが同軸に配置されており、分離帯25cの内部に受光ファイバ28が配置されている。また、分離帯25cの外側面と本体側ファイバ保持部25の内側面との間には投光ファイバ27が配置されている。すなわち、本体側ファイバ保持部25を正面から見たとき、分離帯25cの開口である円形領域25dに多数の受光ファイバ28の各端面が配置されている。なお、受光ファイバ28の端面は円形領域25d内でランダムに配置されてよい。また、分離帯25cの端面と、筒状である本体側ファイバ保持部25の本体端面25aとの間は円環領域25bとなっており、該円環領域25bに多数の投光ファイバ27の各端面が配置されている。なお、投光ファイバ27の端面も円環領域25b内でランダムに配置されてよい。円環領域25bは、円形領域25dと同心であり該円形領域25dの径より大きな内径を有する。また、円環領域25bは本体側ファイバ保持部25の内径よりも小さな外径を有する。投光ファイバ27の端面、受光ファイバ28の端面、分離帯25cの端面、及び本体端面25aとは面一に配置されている。円形領域25dに端面が配置された受光ファイバ28は受光ケーブル22として束ねられる。また、円環領域25bに端面が配置された投光ファイバ27は投光ケーブル21として束ねられる。
【0020】
図3は、プローブ側ファイバ保持部33を示す斜視図である。プローブ側ファイバ保持部33も、概略円筒の外筒を有しており、内部に多数の投光ファイバ34、及び多数の受光ファイバ35、分離帯33cが収容されている。具体的には、プローブ側ファイバ保持部33の内部には遮光性且つ円筒形状の分離帯33cが同軸に配置されており、分離帯33cの内部に受光ファイバ35が配置されている。また、分離帯33cの外側面と本体側ファイバ保持部33の内側面との間には投光ファイバ34が配置されている。すなわち、プローブ側ファイバ保持部33を正面から見たとき、分離帯33cの開口である円形領域33dに多数の受光ファイバ34の各端面が配置されている。また、分離帯33cの端面と、筒状であるプローブ側ファイバ保持部33の本体端面33aとの間は円環領域33bとなっており、該円環領域33bに多数の投光ファイバ34の各端面が配置されている。円環領域33bは、円形領域33dと同心であり該円形領域33dの径より大きな内径を有する。また、円環領域33bはプローブ側ファイバ保持部33の内径よりも小さな外径を有する。投光ファイバ34の端面、受光ファイバ35の端面、分離帯33cの端面、及び本体端面33aとは面一に配置されている。円形領域33dに端面が配置された受光ファイバ35、及び円環領域33bに端面が配置された投光ファイバ34は投受光ケーブル31として束ねられる。
【0021】
図4は、プローブ32を示す斜視図である。プローブ32は概略円筒の外筒を有しており、内部に投光ファイバ34及び受光ファイバ35の端部が収容されている。すなわち、プローブ32を正面から見たとき、中心に位置する円形領域32bには受光ファイバ35の端面が配置されており、その外側の円環領域32aには投光ファイバ34の端面が配置されている。受光ファイバ35は円形領域32b内でランダムに配置されてよい。また、投光ファイバ34も円環領域32a内でランダムに配置されてよい。
【0022】
図5は、光分離筒42を示す斜視図である。光分離筒42は例えば金属製や樹脂製であり円筒形状の外筒43、及び同じく例えば金属製や樹脂製であり外筒の内径よりも小さな外径を有する円筒形状の内筒44を備える。外筒43の内部に内筒44が同軸に配置される。外筒43及び内筒44は、本体側ファイバ保持部25又はプローブ側ファイバ保持部33に固定され、同軸に配置された状態を維持している。例えば、外筒43は本体側ファイバ保持部25の本体端面25aに固定されてよい。或いは、外筒43は本体側ファイバ保持部25の外筒と一体的に形成されてよい。また、内筒44は本体側ファイバ保持部25の分離体25cに固定されてよい。或いは、内筒44は分離帯25cと一体的に形成されてよい。これにより、外筒43の内側面と内筒44の外側面との間の空間42bを投射光が伝搬し、内筒44の内部空間42dを反射光が伝搬する。
【0023】
外筒43が金属製である場合、その内側面は鏡面に仕上げられてよい。そうすれば光分離筒42における光損失を抑制できる。外筒43が樹脂製である場合、その内面を鏡面とすべくめっきを施してもよい。同様に、内筒44が金属製である場合、その内側面又は外側面の一方又は双方は鏡面に仕上げられてよい。また、内筒44が樹脂製である場合、その内側面又は外側面の一方又は双方にめっきを施し、鏡面としてよい。
【0024】
なお、外筒43の内側面と内筒44の外側面との間の空間42bにガラスや樹脂により形成された透光性を有する、好ましくは透明の円筒部材(透光性円筒部材)を配置してよい。さらに、内筒44の内部にもガラスや樹脂により形成された透光性を有する、好ましくは透明の円柱部材(透光性円柱部材)を配置してよい。この場合、内筒44及び外筒43は外筒43や内筒44よりも低屈折率の材料により形成する。こうすることにより、上記透光性円筒部材及び上記透光性円柱部材はそれぞれ光ファイバの如く機能する。すなわち、投光ファイバ27から出射される光は透光性円筒部材の内部で全反射を繰り返して伝搬するので、好適に投光ファイバ34まで導光することができる。また、受光ファイバ35から出射される光は透光性円柱部材の内部で全反射を繰り返して伝搬するので、好適に受光ファイバ28まで導光することができる。そして、投射光と反射光との間でクロストークを生じさせることがない。
【0025】
光分離筒42を正面から見たとき、中心には内筒44の開口である円柱状空間の端面42dが位置し、その外側に内筒44の端面42cが位置する。また、端面42cの外側にガラス等が充填されている円筒状空間の端面42bが位置する。端面42bの外側には外筒43の端面42aが位置している。端面42a~42dは面一に配置されている。ここでは光分離筒42の一方の端部のみ説明したが、他方の端部も同一構成・同一配置である。
【0026】
ここで、本体側ファイバ保持部25、プローブ側ファイバ保持部33、及び光分離筒42の配置について説明する。
図6に示すように、本体側ファイバ保持部25の円形領域25d、プローブ側ファイバ保持部33の円形領域33d、及び内筒44の開口である円柱状空間の端面42dは同じ径R1であり、内筒44の一方側の端面42dに隣接して本体側ファイバ保持部25の円形領域25dが配置される。また他方側の端面42dに隣接してプローブ側ファイバ保持部33の円形領域33dが配置される。なお、端面42dの径は、円形領域25d及び33dの径よりも若干大きくても、或いは若干小さくてもよい。
【0027】
また、本体側ファイバ保持部25の円環領域25b、プローブ側ファイバ保持部33の円環領域33b、及び内筒44と外筒43との間の円筒状空間の端面42bは同じ内径R2及び同じ外径R3を有する。そして、内筒44の一方側の端面42bに隣接して本体側ファイバ保持部25の円環領域25bが配置される。また他方側の端面42bに隣接してプローブ側ファイバ保持部33の円環領域33bが配置される。なお、端面42bの内径は、円環領域25b及び33bの内径よりも若干大きくても、或いは若干小さくてもよい。また、端面42bの外径は、円環領域25b及び33bの外径よりも若干大きくても、或いは若干小さくてもよい。
【0028】
本実施形態によれば、本体側ファイバ保持部25の端面の円形領域25d、及びプローブ側ファイバ保持部33の端面の円形領域33dにより挟まれる円柱状の空間には、光分離筒42の内筒44の内部空間が位置し、該円柱状の空間は内筒44により覆われる。このため、投光ファイバ27及び34の間の光が受光ファイバ28及び35の間の光と混じることがない。このため、投光チャンネルと受光チャンネルとの間のクロストークを防止することができる。また、内筒44の内側面は鏡面となっていることから、受光チャンネルにおいて、光分離筒42での光損失を防止できる。
【0029】
また、本体側ファイバ保持部25の端面の円環領域25b、及びプローブ側ファイバ保持部33の端面の円環領域33bにより挟まれる円筒状の空間には、光分離筒42の内筒44及び外筒43の間の空間が位置し、該円筒状の空間の内側は内筒44により遮蔽され、外側の空間は外筒43により遮蔽される。このとき、内筒44の外側面及び外筒43の内側面は鏡面となっていることから、投光チャンネルにおいて、光分離筒42での光損失を防止できる。
【0030】
さらに、本実施形態によれば、本体側ファイバ保持部25の端面の円形領域25d、及びプローブ側ファイバ保持部33の端面の円形領域33dが離間しているので、受光ファイバ35の出射端及び受光ファイバ28の入射端が離間している。さらに、本体側ファイバ保持部25の端面の円環領域25b、及びプローブ側ファイバ保持部33の端面の円環領域33bが離間しているので、投光ファイバ27の出射端及び投光ファイバ34の入射端が離間している。このため、本体側ファイバ保持部25に対してプローブ側ファイバ保持部33を回転させても反射光において脈動現象が生じにくい。
図7は、ロータリージョイントを回転させた場合の試料70(ミラー)からの反射光の光強度変化を示す図である。同図において、横軸はプローブ側ファイバ保持部33の回転中の経過時間を示す。縦軸は測定器60における光強度を示す。また、実線は、光分離筒42がなく、本体側ファイバ保持部25とプローブ側ファイバ保持部33とを隣接配置した場合の光強度の変化を示す。破線は、長さ10mmの光分離筒42を用いた場合の光強度の変化を示す。一点鎖線は、長さ20mmの光分離筒42を用いた場合の光強度の変化を示す。同図に示すように、10mm又は20mmの光分離筒42を用いると好適に光強度の脈動現象を抑制することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変形実施が可能である。
【0032】
図8は変形例に係る光分離筒47を示す斜視図である。同図に示す光分離筒47は、
図5に示す光分離筒42の代わりにロータリージョイント40に設けられるもので、本発明に係る光分離部の他の例である。光分離筒47は透光性を有する、好ましくは透明のガラス又は樹脂材料により形成された円柱部材47Aを備える。また、円柱部材47Aの内部には円筒部材47Bが挿入されている。円柱部材47Bも透光性を有する、好ましくは透明のガラス又は樹脂材料により形成されている。
【0033】
図9は、本体側ファイバ保持部25、プローブ側ファイバ保持部33、及び光分離筒47の配置を説明する図である。円筒部材47Bの内径は、本体側ファイバ保持部25の円形領域25d及びプローブ側ファイバ保持部33の円形領域33dの径R1と同じか、それよりも大きい。円柱部材47Bの一方の端面に隣接して本体側ファイバ保持部25の円形領域25dが配置され、他方側の端面に隣接してプローブ側ファイバ保持部33の円形領域33dが配置される。これにより、円形領域25d及び33dにより挟まれる円柱状空間に円柱部材47Bが配置されることになる。
【0034】
また、円筒部材47Aの内径は、本体側ファイバ保持部25の円環領域25b及びプローブ側ファイバ保持部33の円環領域33bの内径R2と同じか、それより小さい。さらに、円筒部材47Bの外径は、本体側ファイバ保持部25の円環領域25b及びプローブ側ファイバ保持部33の円環領域33bの外径R3と同じか、それより大きい。円筒部材47Aの一方の端面に隣接して本体側ファイバ保持部25の円環領域25bが配置され、他方側の端面に隣接してプローブ側ファイバ保持部33の円環領域33bが配置される。これにより、円環領域25b及び33bにより挟まれる円筒状空間に円筒部材47Aが配置されることになる。
【0035】
円筒部材47Aの内径は円柱部材47Bの径と略等しいが、両者は別部材であるから不可避的にそれらの間に間隙、すなわち相対的に低屈折の空気層が介在する。このため光分離筒47でも、投光ファイバ27から出射される光は円筒部材47Aの内側面や外側面で全反射を繰り返して伝搬し、好適に投光ファイバ34まで導光することができる。また、受光ファイバ35から出射される光は円柱部材47Bの外側面で全反射を繰り返して伝搬し、好適に受光ファイバ28まで導光することができる。すなわち、円形領域25d及び33dにより挟まれる円柱状空間、及び円環領域25b及び35bにより挟まれる円筒状空間との間の光の通過を光分離筒47により抑制することができる。
【0036】
さらに、例えば、上記実施形態では本体側ファイバ保持部25に多数の受光ファイバ28を配置し、プローブ側ファイバ保持部33にも多数の受光ファイバ35を配置したが、それぞれ1本の受光ファイバを配置してよい。また、上記実施形態ではロータリージョイント40の内側に受光チャンネルを設け、外側に投光チャンネルを設けたが、逆の構成としてもよい。また、光分離筒42は本体側ファイバ保持部25又はプローブ側ファイバ保持部33と一体的に設けてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 光学測定装置、20 本体側光ケーブル、21 投光ケーブル、22 受光ケーブル、23,24 コネクタ、25 本体側ファイバ保持部、25c,33c 分離帯、25d,33d 円形領域、25b,33b 円環領域、27,34 投光ファイバ、28,35 受光ファイバ、30 プローブ側光ケーブル、31 投受光ケーブル、32 プローブ、40 ロータリージョイント、41 回転支持部、42,47 光分離筒(光分離部)、43 外筒、44 内筒、47A 円筒部材、47B 円柱部材、50 光源、60 測定器、70 試料。