(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053578
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】ホットランナー装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20230406BHJP
B29C 45/28 20060101ALI20230406BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230406BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/28
B29C45/26
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162701
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591224504
【氏名又は名称】株式会社TMW
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 耀司郎
(72)【発明者】
【氏名】水野 謙一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 豊和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩文
(72)【発明者】
【氏名】向出 英二郎
(72)【発明者】
【氏名】池山 直人
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AJ02
4F202AR20
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
4F202CK07
4F202CK42
4F206AJ02
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL03
4F206JQ81
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】ホットランナーブロックの樹脂流路を切り替える流路切替部の構造を簡素化できるホットランナー装置を提供する。
【解決手段】ホットランナー装置100は、ホットランナーブロック10と、遮断用部材31と開通用部材34を有する流路切替部30と、を備え、流路切替部30は、遮断用部材31が第3ブロック部13に取り付けられ開通用部材34が第2ブロック部12に取り付けられることにより、第1射出ユニット1の溶融樹脂が第1成形金型M1に射出され第2射出ユニット2の溶融樹脂が第2成形金型M2に射出される第1の流路パターンを形成する一方で、遮断用部材31が第2ブロック部12に取り付けられ開通用部材34が第3ブロック部13に取り付けられることにより、第1射出ユニット1の溶融樹脂が第1成形金型M1と第2成形金型M2の両方に射出される第2の流路パターンを形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1射出ユニットと第2射出ユニットのそれぞれに繋がる樹脂流路を有するホットランナーブロックと、
上記ホットランナーブロックの上記樹脂流路の流路パターンを切り替え可能な流路切替部と、
を備え、
上記流路切替部は、上記ホットランナーブロックに取り外し可能に取り付けられて上記樹脂流路を遮断する遮断用部材と、上記ホットランナーブロックに取り外し可能に取り付けられて上記樹脂流路を開通する開通用部材と、を有し、
上記ホットランナーブロックは、上記樹脂流路のうち上記第1射出ユニット側から第1成形金型まで延びる第1流路を形成する第1ブロック部と、上記樹脂流路のうち上記第2射出ユニット側から第2成形金型まで延びる第2流路を形成する第2ブロック部と、上記樹脂流路のうち上記第1流路と上記第2流路を接続する第3流路を形成する第3ブロック部と、を有し、
上記流路切替部は、上記遮断用部材が上記第3ブロック部に取り付けられ上記開通用部材が上記第2ブロック部に取り付けられることにより、上記第1射出ユニットの溶融樹脂が上記第1流路を通じて上記第1成形金型に射出され上記第2射出ユニットの溶融樹脂が上記第2流路を通じて上記第2成形金型に射出される第1の流路パターンを形成する一方で、上記遮断用部材が上記第2ブロック部に取り付けられ上記開通用部材が上記第3ブロック部に取り付けられることにより、上記第1射出ユニットの溶融樹脂が上記第1流路を通じて上記第1成形金型に射出され且つ上記第1流路から上記第3流路及び上記第2流路を通じて上記第2成形金型に射出される第2の流路パターンを形成するように構成されている、ホットランナー装置。
【請求項2】
上記遮断用部材は、上記ホットランナーブロックに取り付けられたときに上記樹脂流路に配置されて溶融樹脂の通過を阻止する樹脂通過阻止部を有し、上記開通用部材は、上記樹脂通過阻止部と外形が同一であって上記ホットランナーブロックに取り付けられたときに上記樹脂流路に配置される樹脂回収部を有し、上記樹脂回収部には、溶融樹脂の流通を許容するとともに溶融樹脂が滞留可能な滞留空間が設けられている、請求項1に記載の、ホットランナー装置。
【請求項3】
上記開通用部材の上記滞留空間は、上記樹脂回収部を溶融樹脂の流れ方向に貫通する貫通穴によって、或いは上記樹脂回収部に溶融樹脂の流れ方向に沿って延びるように設けられた開口溝によって構成されている、請求項2に記載の、ホットランナー装置。
【請求項4】
上記遮断用部材の上記樹脂通過阻止部は、上記樹脂流路に配置されたときに溶融樹脂の流れに対向する対向面を有し、上記対向面が溶融樹脂の流れ方向を法線方向とする平面とされている、請求項2または3に記載の、ホットランナー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットランナー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、樹脂部品を成形する射出成形装置が開示されている。この射出成形装置は、2つの射出ユニットに繋がる樹脂流路を有するホットランナーブロックを備えている。この射出成形装置は、「ホットランナー装置」とも称される。ホットランナーブロックには、上下のブロックを貫通する2つのスリーブと、各スリーブに挿入された切替弁と、切替弁を駆動する専用の駆動手段と、を有する流路切替部が設けられている。この流路切替部によれば、2つの切替弁のそれぞれを専用の駆動手段で駆動することにより、ホットランナーブロックの樹脂流路の流路パターンに切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記流路切替部は、各切替弁を駆動手段によって駆動するための複雑な機構を要する。これにより、部品点数が多くなり装置コストが高くなるという問題が生じ得る。また、この流路切替部を採用した場合、切替弁の駆動方向である上下方向に部分的に突出するような複雑な表面形状になり易い。これにより、流路切替部の上下方向の寸法が増えて装置が大型になるという問題が生じ得る。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、ホットランナーブロックの樹脂流路を切り替える流路切替部の構造を簡素化できるホットランナー装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
第1射出ユニットと第2射出ユニットのそれぞれに繋がる樹脂流路を有するホットランナーブロックと、
上記ホットランナーブロックの上記樹脂流路の流路パターンを切り替え可能な流路切替部と、
を備え、
上記流路切替部は、上記ホットランナーブロックに取り外し可能に取り付けられて上記樹脂流路を遮断する遮断用部材と、上記ホットランナーブロックに取り外し可能に取り付けられて上記樹脂流路を開通する開通用部材と、を有し、
上記ホットランナーブロックは、上記樹脂流路のうち上記第1射出ユニット側から第1成形金型まで延びる第1流路を形成する第1ブロック部と、上記樹脂流路のうち上記第2射出ユニット側から第2成形金型まで延びる第2流路を形成する第2ブロック部と、上記樹脂流路のうち上記第1流路と上記第2流路を接続する第3流路を形成する第3ブロック部と、を有し、
上記流路切替部は、上記遮断用部材が上記第3ブロック部に取り付けられ上記開通用部材が上記第2ブロック部に取り付けられることにより、上記第1射出ユニットの溶融樹脂が上記第1流路を通じて上記第1成形金型に射出され上記第2射出ユニットの溶融樹脂が上記第2流路を通じて上記第2成形金型に射出される第1の流路パターンを形成する一方で、上記遮断用部材が上記第2ブロック部に取り付けられ上記開通用部材が上記第3ブロック部に取り付けられることにより、上記第1射出ユニットの溶融樹脂が上記第1流路を通じて上記第1成形金型に射出され且つ上記第1流路から上記第3流路及び上記第2流路を通じて上記第2成形金型に射出される第2の流路パターンを形成するように構成されている、ホットランナー装置、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様のホットランナー装置において、ホットランナーブロックは、第1射出ユニットと第2射出ユニットのそれぞれに繋がる樹脂流路を有する。このため、第1射出ユニットから供給された溶融樹脂をホットランナーブロックの樹脂流路に流すことができ、また、第2射出ユニットから供給された溶融樹脂をホットランナーブロックの樹脂流路に流すことができる。
【0008】
流路切替部の遮断用部材と開通用部材を入れ替えて使用することで、ホットランナーブロックの樹脂流路の流路パターンを第1の流路パターンと第2の流路パターンのいずれかに切り替えることができる。このように、流路切替部は、遮断用部材と開通用部材を入れ替えてホットランナーブロックに取り付ける構造であるため、例えば、2つの切替弁のそれぞれを専用の駆動手段で駆動するような複雑な機構に比べて構造が簡単になる。
【0009】
第1の流路パターンでは、遮断用部材がホットランナーブロックの第3ブロック部に取り付けられ、開通用部材がホットランナーブロックの第2ブロック部に取り付けられる。このとき、遮断用部材が第3流路をその取り付け位置において遮断し、開通用部材が第2流路をその取り付け位置において開通する。したがって、第1射出ユニットの溶融樹脂が第1流路を通じて第1成形金型に射出され、第2射出ユニットの溶融樹脂が第2流路を通じて第2成形金型に射出される。
【0010】
第2の流路パターンでは、遮断用部材がホットランナーブロックの第2ブロック部に取り付けられ、開通用部材がホットランナーブロックの第3ブロック部に取り付けられる。このとき、遮断用部材が第2流路をその取り付け位置において遮断し、開通用部材が第3流路をその取り付け位置において開通する。したがって、第1射出ユニットの溶融樹脂が第1流路を通じて第1成形金型に射出され且つ第1流路から第3流路及び第2流路を通じて第2成形金型に射出される。
【0011】
以上のごとく、上述の態様によれば、ホットランナーブロックの樹脂流路を切り替える流路切替部の構造を簡素化できるホットランナー装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1中の第3ブロック部に遮断用部材が取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図3】
図2において第3ブロック部から遮断用部材が取り外された状態を示す斜視図。
【
図5】
図1中の第2ブロック部に開通用部材が取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図6】
図5において第2ブロック部から開通用部材が取り外された状態を示す斜視図。
【
図8】
図1のホットランナー装置について流路切替部によって形成された第1の流路パターンを示す模式図。
【
図9】
図1のホットランナー装置について流路切替部によって形成された第2の流路パターンを示す模式図。
【
図10】
図7においてホットランナーブロックを第1の流路パターンで使用した後で第2ブロック部の第2流路に溶融樹脂が滞留した状態を示す断面図。
【
図11】
図10において開通用部材を第2ブロック部から取り外すときの様子を示す断面図。
【
図12】
図11において遮断用部材を開通用部材と入れ替えて第2ブロック部に取り付けるときの様子を示す断面図。
【
図13】実施形態2に流路切替部の構造について
図5に対応した斜視図。
【
図14】実施形態3の流路切替部の構造について
図5に対応した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0014】
上記態様のホットランナー装置において、上記遮断用部材は、上記ホットランナーブロックに取り付けられたときに上記樹脂流路に配置されて溶融樹脂の通過を阻止する樹脂通過阻止部を有し、上記開通用部材は、上記樹脂通過阻止部と外形が同一であって上記ホットランナーブロックに取り付けられたときに上記樹脂流路に配置される樹脂回収部を有し、上記樹脂回収部には、溶融樹脂の流通を許容するとともに溶融樹脂が滞留可能な滞留空間が設けられているのが好ましい。
【0015】
このホットランナー装置によれば、開通用部材がホットランナーブロックに取り付けられた状態で樹脂回収部の滞留空間に滞留した溶融樹脂を、この開通用部材をホットランナーブロックから取り出すことによって樹脂流路から回収することができる。この開通用部材を遮断用部材に入れ替えるときに、遮断用部材の樹脂通過阻止部の外形が開通用部材の樹脂回収部の外形と同一であるため、開通用部材の取り出し後に樹脂流路に残っている溶融樹脂に遮断用部材の樹脂通過阻止部が干渉して溶融樹脂が樹脂通過阻止部によって樹脂流路の外部に押し出されるのを防ぐことができる。
【0016】
上記態様のホットランナー装置において、上記開通用部材の上記滞留空間は、上記樹脂回収部を溶融樹脂の流れ方向に貫通する貫通穴によって、或いは上記樹脂回収部に溶融樹脂の流れ方向に沿って延びるように設けられた開口溝によって構成されているのが好ましい。
【0017】
このホットランナー装置によれば、開通用部材の樹脂回収部に貫通穴或いは開口溝を設ける簡単な構造によって溶融樹脂を回収するための滞留空間を形成することができる。
【0018】
上記態様のホットランナー装置において、上記遮断用部材の上記樹脂通過阻止部は、上記樹脂流路に配置されたときに溶融樹脂の流れに対向する対向面を有し、上記対向面が溶融樹脂の流れ方向を法線方向とする平面とされているのが好ましい。
【0019】
このホットランナー装置によれば、遮断用部材の樹脂通過阻止部の外表面のうち溶融樹脂の流れに対向する対向面を溶融樹脂の流れ方向を法線方向とする平面とすることによって、遮断用部材をホットランナーブロックに取り付けた状態で、溶融樹脂を塞ぎ止める対向面の面積を増やすことができる。
【0020】
以下、ホットランナー装置の具体的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
この実施形態の説明のための図面において、特に断わらない限り、ホットランナーブロックの各ブロック部が延びる第1方向を矢印Xで示し、各ブロック部の幅方向であって第1方向と直交する第2方向を矢印Yで示し、各ブロック部の厚み方向であって第1方向及び第2方向の両方と直交する第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0022】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のホットランナー装置100は、ホットランナーブロック10と、流路切替部30と、を備えている。本実施形態では、このホットランナー装置100を使用して、車両の樹脂部品であるインストルメントパネルを成形する場合について例示している。
【0023】
(ホットランナーブロック10の構造)
図1に示されるように、ホットランナーブロック10は、第1射出ユニット1と第2射出ユニット2のそれぞれに繋がる樹脂流路20を有する。これにより、ホットランナーブロック10は、第1射出ユニット1から供給された溶融樹脂R1を樹脂流路20に流すことができ、また、第2射出ユニット2から供給された溶融樹脂R2を樹脂流路20に流すことができるようになっている。
【0024】
なお、本実施形態では、第1射出ユニット1は、第2射出ユニット2の溶融樹脂R2によりも高品質の溶融樹脂R1を供給するメイン射出ユニットとして使用される。これに対して、第2射出ユニット2は、第1射出ユニット1の溶融樹脂R1よりも安価な溶融樹脂R2を供給するサブ射出ユニットとして使用される。
【0025】
ホットランナーブロック10は、第1ブロック部11と、第2ブロック部12と、第3ブロック部13と、を有する。第1ブロック部11は、樹脂流路20のうち第1射出ユニット1側から第1成形金型M1まで延びる第1流路21を形成している。第2ブロック部12は、樹脂流路20のうち第2射出ユニット2側から第2成形金型M2まで延びる第2流路22を形成している。第3ブロック部13は、樹脂流路20のうち第1流路21と第2流路22を接続する第3流路23を形成している。
【0026】
第1成形金型M1は、インストルメントパネルのアッパー部の樹脂成形に使用される金型である。アッパー部は意匠部分が多いことから、第1成形金型M1に射出される溶融樹脂は、第1射出ユニット1から供給される高品質の溶融樹脂R1であるのが好ましい。
【0027】
これに対して、第2成形金型M2は、インストルメントパネルのロア部の樹脂成形に使用される金型である。ロア部はアッパー部に比べては意匠部分が少ないことから、第2成形金型M2に射出される溶融樹脂は、第2射出ユニット2から供給される安価な溶融樹脂R2であるのが好ましい。
【0028】
(流路切替部30の構造)
図1に示されるように、流路切替部30は、ホットランナーブロック10の樹脂流路20の流路パターンを切り替え可能な構造を有する。この流路切替部30は、流路パターンを切り替えるための手段として、遮断用部材31と開通用部材34を有する。
【0029】
遮断用部材31は、ホットランナーブロック10に取り外し可能に取り付けられて樹脂流路20を遮断する機能を果たす。これに対して、開通用部材34は、ホットランナーブロック10に取り外し可能に取り付けられて樹脂流路20を開通する機能を果たす。遮断用部材31と開通用部材34のそれぞれの取り付け及び取り外しは、作業者による手作業で行われる。
【0030】
なお、
図1では、遮断用部材31がホットランナーブロック10の第3ブロック部13に取り付けられ、開通用部材34がホットランナーブロック10の第2ブロック部12(特に、第2ブロック部12のうち第3ブロック部13との接続箇所14よりも上流の位置)に取り付けられた場合を例示している。
【0031】
図2に示されるように、遮断用部材31は、頭部32と、頭部32から延出した樹脂通過阻止部33と、を有する。頭部32は、ボルト部材41を使用して第3ブロック部13に取り付けられている。樹脂通過阻止部33は、遮断用部材31が第3ブロック部13に取り付けられたときに樹脂流路20の第3流路23に配置されて溶融樹脂の通過を阻止するように構成されている。
【0032】
本実施形態では、樹脂通過阻止部33は、断面形状が四角形である四角柱として構成されている。必要に応じて、この樹脂通過阻止部33の形状を、四角柱から円柱などの別形状に変更してもよい。また、本実施形態では、第3流路23を断面形状が四角形である角穴(
図2を参照)としているが、この第3流路23は角穴に限定されるものではなく、第3流路23を、必要に応じて、例えば、断面形状が円形である丸穴に変更してもよい。
【0033】
図3に示されるように、遮断用部材31の取り付けにおいては、先ず、樹脂通過阻止部33を第3ブロック部13の挿入開口13aに挿入する。このとき、挿入開口13aは、樹脂通過阻止部33を挿入可能であり、且つ頭部32によって塞がれるような開口形状を有している。その後、ボルト部材41の軸部を頭部32の貫通孔32aに通した後、第3ブロック部13のネジ孔13bに螺合させて第3ブロック部13に締結固定する。これにより、遮断用部材31が第3ブロック部13に取り付けられる。
【0034】
一方で、遮断用部材31の取り外しにおいては、先ず、第3ブロック部13のネジ孔13bに対するボルト部材41の螺合を解除する。その後、遮断用部材31の樹脂通過阻止部33を第3ブロック部13の挿入開口13aから抜き出す。これにより、遮断用部材31が第3ブロック部13から取り外される。
【0035】
なお、詳細については後述するが、開通用部材34は、遮断用部材31の樹脂通過阻止部33と外形が同一である樹脂回収部36を有している。このため、遮断用部材31を第3ブロック部13から取り外した状態で、この遮断用部材31に代えて開通用部材34を第3ブロック部13に取り付けることが可能である。
【0036】
図4に示されるように、遮断用部材31が第3ブロック部13に取り付けられた状態では、第3流路23における溶融樹脂の通過が遮断用部材31の樹脂通過阻止部33によって阻止される。このとき、樹脂通過阻止部33は、外表面に溶融樹脂の流れに対向する対向面33aを有し、この対向面33aが溶融樹脂の流れ方向Aを法線方向とする平面となるように構成されている。これにより、遮断用部材31をホットランナーブロック10に取り付けた状態で、溶融樹脂を塞ぎ止める対向面33aの面積を増やすことができる。
【0037】
図5に示されるように、開通用部材34は、頭部35と、頭部35から延出した樹脂回収部36と、を有する。頭部35は、遮断用部材31の頭部32と同一形状であり、ボルト部材41を使用して第2ブロック部12に取り付けられている。樹脂回収部36は、開通用部材34が第2ブロック部12に取り付けられたときに樹脂流路20の第2流路22に配置されるように構成されている。
【0038】
なお、本実施形態では、第2流路22を、第3流路23と同様に断面形状が四角形である角穴(
図5を参照)としているが、この第2流路22は角穴に限定されるものではなく、必要に応じて、第2流路22を、例えば、断面形状が円形である丸穴に変更してもよい。
【0039】
図6及び
図7に示されるように、樹脂回収部36には、溶融樹脂の流通を許容するとともに溶融樹脂が滞留可能な滞留空間37が設けられている。この滞留空間37は、樹脂回収部36を溶融樹脂の流れ方向A(
図7を参照)に貫通する貫通穴38によって構成されている。すなわち、滞留空間37は、貫通穴38に内周面によって囲まれた空間である。
なお、貫通穴38の形状が円形である場合について図示しているが、この貫通穴38の形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形、多角形などの別形状であってもよい。
【0040】
本実施形態では、樹脂回収部36は、この樹脂回収部36を第3方向Zから見たときの外形が樹脂通過阻止部33を同方向から見たときの外形と同一形状をなすように構成されている。樹脂通過阻止部33を第3方向Zから見たときの外面形状と樹脂回収部36を第3方向Zから見たときの外面形状はいずれも同じ大きさの四角形である。樹脂回収部36に貫通穴38がないと仮定した場合、この樹脂回収部36は、その形状が樹脂通過阻止部33の形状と一致する。
【0041】
図6に示されるように、開通用部材34の取り付けにおいては、先ず、樹脂回収部36を第2ブロック部12の挿入開口12aに挿入する。このとき、挿入開口12aは、樹脂回収部36を挿入可能であり、且つ頭部35によって塞がれるような開口形状を有している。その後、ボルト部材41の軸部を頭部35の貫通孔35aに通した後、第2ブロック部12のネジ孔12bに螺合させて第2ブロック部12に締結固定する。これにより、開通用部材34が第2ブロック部12に取り付けられる。
【0042】
一方で、開通用部材34の取り外しにおいては、先ず、第2ブロック部12のネジ孔12bに対するボルト部材41の螺合を解除する。その後、開通用部材34の樹脂回収部36を第2ブロック部12の挿入開口12aから抜き出す。これにより、開通用部材34が第2ブロック部12から取り外される。
【0043】
なお、遮断用部材31の場合と同様に、開通用部材34を第2ブロック部12から取り外した状態で、この開通用部材34に代えて遮断用部材31を第2ブロック部12に取り付けることが可能である。
【0044】
ここで、
図2、
図4、
図5、
図7~
図9を参照しながら、ホットランナーブロック10の樹脂流路20の流路パターンについて説明する。
【0045】
(第1の流路パターン)
図8に示されるように、第1の流路パターンは、インストルメントパネルのアッパー部を第1射出ユニット1から供給される高品質の溶融樹脂R1を使用して成形し、インストルメントパネルのロア部を第2射出ユニット2から供給される安価な溶融樹脂R2を使用して成形するときの流路パターンである。即ち、第1の流路パターンは、所謂「2材成形」の時の流路パターンである。この第1の流路パターンは、ホットランナー装置100の通常使用に用いられる。
【0046】
第1の流路パターンを使用すれば、インストルメントパネルのアッパー部とロア部のそれぞれに適した樹脂材料での成形が可能であり、アッパー部とロア部の両方を高価な樹脂材料で成形する場合に比べて材料コストを低減することができる。
【0047】
ホットランナーブロック10を第1の流路パターンで使用するときには、遮断用部材31を
図2及び
図4に示されるように第3ブロック部13に取り付ける。これにより、第3ブロック部13の第3流路23を遮断用部材31の取り付け位置において遮断する。また、開通用部材34を
図5及び
図7に示されるように第2ブロック部12に取り付ける。これにより、第2ブロック部12の第2流路22を開通用部材34の取り付け位置において開通する。このとき、第2流路22の溶融樹脂は開通用部材34の樹脂回収部36の貫通穴38を通じて流れる。
【0048】
第1の流路パターンによれば、
図8に示されるように、第1射出ユニット1の溶融樹脂R1は、第1流路21を通じて第1成形金型M1に射出される。また、第2射出ユニット2の溶融樹脂R2は、第2流路22を通じて第2成形金型M2に射出される。このとき、第1射出ユニット1の溶融樹脂R1を第1成形金型M1に射出する処理と、第2射出ユニット2の溶融樹脂R2を第2成形金型M2に射出する処理を同時並行で行うことができる。
【0049】
(第2の流路パターン)
図9に示されるように、第2の流路パターンは、インストルメントパネルのアッパー部とロア部をともに第1射出ユニット1から供給される高品質の溶融樹脂R1を使用して成形するときの流路パターンである。即ち、第2の流路パターンは、所謂「1材成形」の時の流路パターンである。この第2の流路パターンは、第1射出ユニット1のみ使用し第2射出ユニット2を使用しないため、ホットランナー装置100の非定常時のバックアップ使用に用いられる。
【0050】
ホットランナーブロック10を第2の流路パターンで使用するときには、遮断用部材31を開通用部材34と入れ替えて第2ブロック部12に取り付ける。これにより、第2ブロック部12の第2流路22を遮断用部材31の取り付け位置において遮断する。また、開通用部材34を遮断用部材31と入れ替えて第3ブロック部13に取り付ける。これにより、第3ブロック部13の第3流路23を開通用部材34の取り付け位置において開通する。このとき、第3流路23の溶融樹脂は開通用部材34の樹脂回収部36の貫通穴38を通じて流れる。
【0051】
第2の流路パターンによれば、
図9に示されるように、第1射出ユニット1の溶融樹脂R1は、第1流路21を通じて第1成形金型M1に射出され、且つ、第1流路21から第3流路23及び第2流路22を通じて第2成形金型M2に射出される。すなわち、第1射出ユニット1の溶融樹脂R1は第1成形金型M1と第2成形金型M2の両方に射出される。
【0052】
ところで、遮断用部材31と開通用部材34のような流路切替部材を入れ替えて流路パターンを切り替える構造の場合、例えば、開通用部材34を取り外した後で樹脂流路20に溶融樹脂が残っていると、この溶融樹脂の一部が遮断用部材31に入れ替えるときにこの遮断用部材31によって押し出されて遮断用部材31の頭部32とホットランナーブロック10との間に挟み込まれたままの状態になるという問題がある。このことが、遮断用部材31の頭部32とホットランナーブロック10との間から樹脂漏れが発生する原因に成り得る。したがって、2つの流路切替部材を入れ替えて流路パターンを切り替えるこの種の構造の設計においては、上記の問題を解消することで樹脂漏れの発生を抑えることが課題として挙げられる。
【0053】
そこで、本実施形態では、上記課題を解決するために、開通用部材34の樹脂回収部36の外形を遮断用部材31の樹脂通過阻止部33と同一にするとともに、樹脂回収部36に貫通穴38によって構成された滞留空間37を設けるようにしている。これにより、開通用部材34を取り外した後で樹脂流路20に溶融樹脂が残るのを防ぐことができ、上記の問題を解消できるという作用効果が得られる。このときの具体例について、
図10~
図12を参照しながら説明する。
【0054】
図10に示されるように、第1の流路パターンでの使用後に第2ブロック部12の第2流路22に溶融樹脂R2が滞留する。このとき、第2流路22の溶融樹脂R2は、開通用部材34の樹脂回収部36の滞留空間37にも同様に滞留する。
【0055】
図11に示されるように、開通用部材34を第2ブロック部12から取り外す。ただし、第2流路22の溶融樹脂R2が完全に固化しないタイミングで第2ブロック部12から開通用部材34を速やかに取り外すのが好ましい。このとき、樹脂回収部36の滞留空間37に滞留している溶融樹脂R2は、樹脂回収部36が第2流路22から抜き出されることによって回収される。一方で、第2流路22には、開通用部材34の取り出しに伴って樹脂回収部36の形状に相当する空間Sが形成される。この空間Sには溶融樹脂R2が滞留していない。
【0056】
図12に示されるように、遮断用部材31を開通用部材34と入れ替えて第2ブロック部12に取り付ける。このとき、遮断用部材31の樹脂通過阻止部33が空間Sに挿入されるが、樹脂通過阻止部33の形状が空間Sの形状に一致しているため、樹脂通過阻止部33が第2流路22に残っている溶融樹脂R2に干渉して溶融樹脂R2が樹脂通過阻止部33によって第2流路22の外部に押し出されるのを防ぐことができる。その結果、遮断用部材31の取り付け時に頭部32と第2ブロック部12との間に溶融樹脂R2が挟み込まれたままの状態になるのを防ぐことができ、このことが原因で遮断用部材31の取り付け後に樹脂漏れが発生するのを回避できる。
【0057】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0058】
実施形態1のホットランナー装置100において、ホットランナーブロック10は、第1射出ユニット1と第2射出ユニット2のそれぞれに繋がる樹脂流路20を有する。このため、第1射出ユニット1から供給された溶融樹脂R1をホットランナーブロック10の樹脂流路20に流すことができ、また、第2射出ユニット2から供給された溶融樹脂R2をホットランナーブロック10の樹脂流路20に流すことができる。
【0059】
流路切替部30の遮断用部材31と開通用部材34を入れ替えて使用することで、ホットランナーブロック10の樹脂流路20の流路パターンを第1の流路パターンと第2の流路パターンのいずれかに切り替えることができる。このように、流路切替部30は、遮断用部材31と開通用部材34を入れ替えてホットランナーブロック10に取り付ける構造であるため、例えば、2つの切替弁のそれぞれを専用の駆動手段で駆動するような複雑な機構に比べて構造が簡単になる。これにより、部品点数を少なくして装置コストを安価に抑えることが可能になる。
【0060】
また、遮断用部材31と開通用部材34をホットランナーブロック10に取り付けて使用する構造の場合、流路切替部30の第3方向Zの寸法(
図2及び
図5を参照)を極力抑えることができる。これにより、流路切替部30の第3方向Zの寸法を抑えることにより装置が大型になるのを防ぐことが可能になる。
【0061】
上述のことから、実施形態1によれば、ホットランナーブロック10の樹脂流路20を切り替える流路切替部30の構造を簡素化できるホットランナー装置100を提供することができる。
【0062】
実施形態1のホットランナー装置100によれば、開通用部材34がホットランナーブロック10に取り付けられた状態で樹脂回収部36の滞留空間37に滞留した溶融樹脂は、この開通用部材34をホットランナーブロック10から取り出すことによって樹脂流路20から回収される。その後、この開通用部材34に代えて遮断用部材31を取り付けるときに、この遮断用部材31の樹脂通過阻止部33の外形が開通用部材34の樹脂回収部36の外形と同一であるため、開通用部材34の取り出し後に樹脂流路20に残っている溶融樹脂が遮断用部材31の樹脂通過阻止部33によってホットランナーブロック10の樹脂流路20から外部へ押し出されるのを回避できる。
【0063】
実施形態1のホットランナー装置100によれば、開通用部材34の樹脂回収部36に貫通穴38を設ける簡単な構造によって溶融樹脂を回収するための滞留空間37を形成することができる。
【0064】
以下、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0065】
(実施形態2)
図13に示されるように、実施形態2の流路切替部30Aは、開通用部材34Aの構造が、実施形態1の開通用部材34のものと相違している。この流路切替部30Aでは、ホットランナーブロック10における流路パターンを切り替えるときに、遮断用部材31と開通用部材34Aを入れ替えて使用する。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0066】
開通用部材34Aの樹脂回収部36Aには、溶融樹脂の流れ方向A(
図7を参照)に沿って延びる開口溝39が設けられている。この開口溝39は、実施形態1の貫通穴38と同様に、溶融樹脂の流通を許容するとともに溶融樹脂が滞留可能な滞留空間37を有する。すなわち、滞留空間37は、開口溝39の内壁面によって囲まれた空間である。
なお、開口溝39の断面形状が矩形である場合について図示しているが、この開口溝39の断面形状は矩形に限定されるものではなく、矩形以外の別形状であってもよい。
【0067】
実施形態2によれば、開通用部材34Aの樹脂回収部36Aに開口溝39を設ける簡単な構造によって溶融樹脂を回収するための滞留空間37を形成することができる。
その他、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0068】
(実施形態3)
図14に示されるように、実施形態3の流路切替部30Bは、開通用部材34Bの構造が、実施形態1の開通用部材34のものと相違している。この流路切替部30Bでは、ホットランナーブロック10における流路パターンを切り替えるときに、遮断用部材31と開通用部材34Bを入れ替えて使用する。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0069】
開通用部材34Bは、実施形態1の開通用部材34の樹脂回収部36に相当する部位を有していない。すなわち、開通用部材34Bには第2流路22に配置される部位が設けられておらず、第2流路22から溶融樹脂を回収する機能が省略されている。
【0070】
実施形態3によれば、開通用部材34Bによって第2流路22から溶融樹脂を回収する効果は得られないものの、実施形態1の場合と同様に、流路切替部30Aの構造を簡素化するのに有効である。
その他、実施形態1の場合と同様の作用効果を奏する。
【0071】
本開示は、上述の実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0072】
上述の実施形態では、車両の樹脂部品であるインストルメントパネルを成形するホットランナー装置100について例示したが、このホットランナー装置100の構造を、インストルメントパネル以外の種々の樹脂部品を成形する各種のホットランナー装置の構造に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
1 第1射出ユニット
2 第2射出ユニット
10 ホットランナーブロック
11 第1ブロック部
12 第2ブロック部
13 第3ブロック部
20 樹脂流路
21 第1流路
22 第2流路
23 第3流路
30,30A,30B 流路切替部
31 遮断用部材
33 樹脂通過阻止部
33a 対向面
34,34A,34B 開通用部材
36,36A 樹脂回収部
37 滞留空間
38 貫通穴
39 開口溝
100 ホットランナー装置
A 溶融樹脂の流れ方向
M1 第1成形金型
M2 第2成形金型
R1 第1成形金型の溶融樹脂(溶融樹脂)
R2 第2成形金型の溶融樹脂(溶融樹脂)