(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053595
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】眼鏡のマーキング補助具
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
G02C13/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162724
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】591068584
【氏名又は名称】株式会社サンニシムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】上阪 優子
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BA05
2H006DA01
(57)【要約】
【課題】ブリッジが仮レンズよりも前方に突出する形態のフレームをフィッティング対象としたときにも、載置されたフレームや仮レンズを適正姿勢に安定して保持することができ、しかも仮レンズの位置調整作業やデータムラインのマーキング作業が容易であり、より正確に仮レンズにデータムラインをマーキングすることが可能な眼鏡のマーキング補助具を提供する。
【解決手段】本発明の眼鏡のマーキング補助具は、上面に仮レンズ102を支持したフレーム101が載置される補助具本体1と、補助具本体1の上面に設けられ、仮レンズ102にデータムラインDLをマーキングする際の指標となるライン指標17を含むデータムチャート2とを備える。補助具本体1には、フレーム101のブリッジ105を受け入れる逃げ部9が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に仮レンズ(102)を支持したフレーム(101)が載置される補助具本体(1)と、
補助具本体(1)の上面に設けられ、仮レンズ(102)にデータムライン(DL)をマーキングする際の指標となるライン指標(17)を含むデータムチャート(2)と、
を備え、
補助具本体(1)に、フレーム(101)のブリッジ(105)を受け入れる逃げ部(9)が形成されていることを特徴とする眼鏡のマーキング補助具。
【請求項2】
補助具本体(1)が、データムチャート(2)が形成されるシート状のチャートシート(5)と、チャートシート(5)の下面に一体的に固定され、チャートシート(5)を支持するチャート台(6)とを含んで構成されている請求項1に記載の眼鏡のマーキング補助具。
【請求項3】
チャート台(6)が、板状体で形成されている請求項2に記載の眼鏡のマーキング補助具。
【請求項4】
補助具本体(1)の上面が、透光性を有し弾力性に富む素材で形成される保護シート(7)で覆われている請求項1から3のいずれかひとつに記載の眼鏡のマーキング補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡の作成時において、仮レンズにデータムラインをマーキングするために用いるマーキング補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡を作成する際に、着用者の瞳孔と眼鏡レンズの光学中心との位置関係を適正化するため、フレームに支持された仮レンズにデータムラインをマーキングし、同ラインに対する着用者の瞳孔位置を測定した結果に基づいて眼鏡レンズが加工されることがある。ここでデータムラインとは、眼鏡を着用した状態において、仮レンズ(眼鏡レンズ)における上下方向の最大幅の中央を通って左右方向に伸びる線(水平線)である。当該データムラインを仮レンズにマーキングする際に用いられる器具としては、例えば特許文献1の眼鏡レンズ加工用位置決めチャートが提案されている。特許文献1の位置決めチャートは、紙プラスチックからなる薄板と、薄板の上面に印刷される左右瞳孔中心位置決定用目盛(データムチャート)などで構成される。当該目盛は、データムラインの指標となるライン指標(水平基準線)と、ライン指標に対する仮レンズの位置を決定するための上下のガイド水平ラインとを含む。上下のガイド水平ラインは、ライン指標からそれぞれ等距離に設けられた同基準線と平行な複数の線からなる。
【0003】
特許文献1の位置決めチャートを用いて仮レンズにデータムラインをマーキングするには、まず机上に設置された位置決めチャートの上面に、前レンズ面(顔面とは反対側のレンズ面)が同チャートと正対する状態で、仮レンズを支持したフレームを載置する。次いで、フレームに支持された仮レンズの上下方向の最大幅の中央がライン指標上に配されるように、ガイド水平ラインを用いて左右の仮レンズの位置を調整し、位置調整されたフレームを一方の手で保持する。この状態で、仮レンズ越しにライン指標をなぞるように水性ペンなどで線を引くことにより、仮レンズの後レンズ面(顔面側のレンズ面)にデータムラインをマーキングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実願昭58-135738号(実開昭60-44026号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レンズが装着される左右一対のリムは、両リム間に設けられるブリッジで連結されている。また、かかるブリッジが前レンズ面よりも前方に突出しているフレームも多数存在する。このようなブリッジが前レンズ面よりも前方に突出しているフレームに対して、特許文献1の位置決めチャートを用いてデータムラインを仮レンズにマーキングを試みると、仮レンズに先立ってブリッジが位置決めチャートの上面に接当するため、フレームはその接当部分を中心にして回転しやすい。このため、フレームや仮レンズを安定姿勢に保持することは難しく、ライン指標をなぞる際に仮レンズがずれ動きやすい。また、位置決めチャートの上面にブリッジが接当すると、位置決めチャートの上面から仮レンズが浮き離れ、ガイド水平ラインと仮レンズの上下の縁部との距離が大きくなるため、ガイド水平ラインを用いて仮レンズの位置調整を適正に行うことは困難となる。さらに、ライン指標と後レンズ面との距離も大きくなるため、ライン指標とペン先との距離が離れる分、ライン指標をなぞりづらい。
【0006】
本発明は、ブリッジが仮レンズよりも前方に突出する形態のフレームをフィッティング対象としたときにも、載置されたフレームや仮レンズを適正姿勢に安定して保持することができ、しかも仮レンズの位置調整作業やデータムラインのマーキング作業が容易であり、より正確に仮レンズにデータムラインをマーキングすることが可能な眼鏡のマーキング補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の眼鏡のマーキング補助具は、上面に仮レンズ102を支持したフレーム101が載置される補助具本体1と、補助具本体1の上面に設けられ、仮レンズ102にデータムラインDLをマーキングする際の指標となるライン指標17を含むデータムチャート2とを備える。そして、補助具本体1に、フレーム101のブリッジ105を受け入れる逃げ部9が形成されていることを特徴とする。
【0008】
補助具本体1が、データムチャート2が形成されるシート状のチャートシート5と、チャートシート5の下面に一体的に固定され、チャートシート5を支持するチャート台6とを含んで構成されている。
【0009】
チャート台6が、板状体で形成されている形態を採ることができる。
【0010】
補助具本体1の上面が、透光性を有し弾力性に富む素材で形成される保護シート7で覆われていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の眼鏡のマーキング補助具のように、仮レンズ102を支持したフレーム101が載置される補助具本体1に、フレーム101のブリッジ105を受け入れる逃げ部9が形成されていると、フィッティング対象が、ブリッジ105の前端部が仮レンズ102の前レンズ面の前端部よりも前方に位置している形態のフレーム101であっても、当該フレーム101を補助具本体1の上面に載置した際に、仮レンズ102の補助具本体1への接当に先立って、当該補助具本体1にブリッジ105が接当すること(先当たりすること)を防ぐことができる。このように、ブリッジ105が補助具本体1に先当たりすることを防ぐことができると、当該ブリッジ105の接当箇所を中心としてフレーム101が補助具本体1上で不用意に回転することを防ぐことができるので、補助具本体1上でフレーム101や仮レンズ102を安定姿勢に保持することができる。また、左右の仮レンズ102・102を補助具本体1に接当させることができるので、これによっても補助具本体1上でフレーム101や仮レンズ102を安定姿勢に保持することができる。以上より、本発明のマーキング補助具を用いれば、ブリッジ105が仮レンズ102よりも前方に突出している形態のフレーム101をフィッティング対象とする場合であっても、フレーム101や仮レンズ102を補助具本体1上で安定姿勢に保持して、これらフレーム101や仮レンズ102が不用意にずれ動くことを防ぐことができるので、ライン指標17をなぞる作業をより容易に進めることが可能となり、より正確に仮レンズ102上にデータムラインDLをマーキングすることができる。
【0012】
加えて、本発明によれば、逃げ部9にブリッジ105が受け入れられて、逃げ部9内にブリッジ105が侵入する分だけ、フレーム101を下方に配することができるので、補助具本体1の上面に対して仮レンズ102を近付けることができる。換言すれば、補助具本体1の上面から仮レンズ102が浮き離れて、ライン指標17と仮レンズ102との距離が大きくなることを防ぐことができる。このように補助具本体1の上面に対して仮レンズ102を近付けることができると、ライン指標17を用いた仮レンズ102の位置調整をより適正に行うことができる。また、ライン指標17とペン先との距離を近付けることができるので、より容易にライン指標17をなぞることができる。以上より、本発明のマーキング補助具を用いれば、仮レンズ102の位置調整作業やライン指標17をなぞる作業が容易となるので、これによっても、より正確に仮レンズ102にデータムラインDLをマーキングすることができる。
【0013】
補助具本体1が、データムチャート2が形成されるシート状のチャートシート5と、チャートシート5の下面に一体的に固定され、チャートシート5を支持するチャート台6とを含んで構成されていると、チャート台6の厚みあるいは高さの分だけ、逃げ部9の深さ寸法を大きくとることができるので、逃げ部9に受け入れられたブリッジ105が、逃げ部9の底部(机の天板など)に接当することを防ぐことができる。また、チャートシート5を共通として、例えば板状体のチャート台6や脚付台状のチャート台6などを用意することで、全体の形態が異なる種々のマーキング補助具を容易かつ低コストに提供することができる。
【0014】
チャート台6が、板状体で形成されていると、マーキング補助具の保管時あるいは使用時に嵩張ることを解消できる。構成を簡素化して全体コストを抑えることもできる。
【0015】
補助具本体1の上面が、透光性を有し弾力性に富む素材で形成される保護シート7で覆われていると、補助具本体1の上面に接当するフレーム101や仮レンズ102に傷などがつくことを効果的に防ぐことができる。また、フレーム101や仮レンズ102が、直接データムチャート2に接触することを防ぐことができるので、摩耗によりデータムチャート2が消失することを防ぐこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る眼鏡のマーキング補助具の縦断正面図である。
【
図4】眼鏡の背面図であり、仮レンズにデータムラインがマーキングされた状態を示している。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る眼鏡のマーキング補助具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態) 本発明に係る眼鏡のマーキング補助具の第1実施形態を
図1から
図4に示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1および
図2に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。但し、眼鏡については、
図4に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。
図1および
図2に示すように、眼鏡のマーキング補助具(以下、単に「マーキング補助具」と記す。)は、平面視で左右に長い長方形状に形成された板状の補助具本体1を基体として構成されており、補助具本体1の上面側には、前後方向および左右方向に伸びる種々の線で構成されるデータムチャート2が設けられている。マーキング補助具は、例えば机の天板100上に設置して使用される。
【0018】
図4に示すように眼鏡は、フレーム101と、フレーム101で支持される一対の仮レンズ102・102と、フレーム101の左右端から後ろ向きに伸び、内向きに折畳み可能な左右一対のテンプル103・103とを有する。フレーム101は、左右一対のリム104・104と、一対のリム104・104間に設けられるブリッジ105と、一対の鼻あて用のパッド106・106とを備えている。各リム104はリング状に形成され、仮レンズ102はリム104の内側にはめ込み装着された状態でフレーム101に支持される。眼鏡を装着した状態において、仮レンズ102の顔面とは反対側のレンズ面が前レンズ面107であり、仮レンズ102の顔面側のレンズ面が後レンズ面108である。なお、リムレスフレームの眼鏡においては、仮レンズがリムを兼ねる。
【0019】
図3に示すように補助具本体1は、シート材で形成され、上面にデータムチャート2が形成されるチャートシート5と、チャートシート5の下面に一体的に固定され、チャートシート5を支持する板状体からなるチャート台6と、チャートシート5の上面(補助具本体1の上面)を覆う保護シート7とを備える。
【0020】
チャートシート5は樹脂シートからなり、このチャートシート5とチャート台6とは接着剤により貼着されている。データムチャート2は印刷により形成されるため、チャートシート5は、印刷性が良好な樹脂シートで構成されている。
【0021】
チャート台6は、マーキング補助具が設置される天板100の上面から補助具本体1の上面までの距離を嵩上げするために設置される。チャート台6は、厚さが3mmの硬質塩化ビニルの板からなる。
【0022】
保護シート7は、透明なシリコーンゴムのシート体(透光性を有し柔軟性に富む素材)で形成されており、チャートシート5の上面の全体を覆っている。チャートシート5と保護シート7とは透明な接着剤により貼着されている。チャートシート5のデータムチャート2は保護シート7を介して目視可能であり、保護シート7の上面は、仮レンズ102を支持したフレーム101の載置面8とされている。
【0023】
図1から
図3に示すように、補助具本体1の左右方向の中央には、フレーム101を載置したとき、ブリッジ105を受け入れるための逃げ部9が設けられている。逃げ部9は、補助具本体1を上下に貫通する貫通孔10で構成されており、平面視における貫通孔10の開口形状は、前後方向に長い長方形状に形成されている。フレーム101を載置面8に載置したとき、ブリッジ105は貫通孔10の内部に侵入させることができる。貫通孔10の深さ寸法、すなわち載置面8から天板100までの高さ寸法は、補助具本体1のチャート台6の厚み寸法を変更することで調整できる。
【0024】
図2においてデータムチャート2は、貫通孔10の前後に設けられ、前後方向に伸びる中央基準線12と、同基準線12の左側に設けられる左側の仮レンズ102用の左チャート13と、同基準線12の右側に設けられる右側の仮レンズ102用の右チャート14とを備える。中央基準線12は、その延長線上に貫通孔10の開口中心が位置するように形成されており、貫通孔10より後側の中央基準線12には、目盛と後述するライン指標17からの後方向の距離を示す目盛数字が設けられている。左チャート13と右チャート14とは、同一の構成からなる左右勝手違いの構成であるため、以下では左チャート13について説明をすることとし、右チャート14については説明を省略する。
【0025】
図2に示すように左チャート13は、左右方向に伸びる線からなるライン指標17と、ライン指標17の前後に設けられる前側基準ゲージ18および後側基準ゲージ19と、前後側の基準ゲージ18・19の間において外側(左側)に設けられる左右基準ゲージ20とを備える。ライン指標17は、データムラインDLをマーキングする際の指標(目印)となるものであり、前後側の基準ゲージ18・19は、仮レンズ102の上下方向の最大幅の中央がライン指標17上に位置するようにフレーム101を位置決めする際に用いられるものである。また、左チャート13の左右基準ゲージ20の右側(内側寄り)には、瞳孔位置ゲージ21が設けられている。この瞳孔位置ゲージ21は、仮レンズ102にマーキングされた着用者の瞳孔の位置を計測する際に用いられる。
【0026】
前側基準ゲージ18は、ライン指標17よりも前側に設けられた平行な線の一群からなり、当該線の一群は、ライン指標17の位置を0とし16mmから26mmの距離の間に2mm間隔で設けられた6本の線からなる。同様に、後側基準ゲージ19は、ライン指標17よりも後側に設けられる平行な線の一群からなり、当該線の一群は、ライン指標17の位置を0とし16mmから26mmの距離の間に2mm間隔で設けられた6本の線からなる。
【0027】
前側基準ゲージ18および後側基準ゲージ19を構成する各線は、それぞれ異なる色に着色されており、ライン指標17から等距離にある前側基準ゲージ18の線と後側基準ゲージ19の線とは同色に着色される。また、各線の左端にはライン指標17からの距離を示す目盛数字が設けられており、当該目盛数字は対応する線と同色に着色される。例えばライン指標17からの距離が16mmの線は黒、18mmの線は紫、20mmの線は青、22mmの線は緑、24mmの線は橙、26mmの線は赤に着色することができる。
【0028】
左右基準ゲージ20は、中央基準線12と平行な線の一群からなり、フレーム101の左右中央が中央基準線12上に位置するようにフレーム101を位置決めする際に用いられるものである。線の一群の後側には、中央基準線12からの距離を示す目盛数字が設けられている。瞳孔位置ゲージ21は、格子状に設けられた中央基準線12と平行な線とライン指標17と平行な線の一群からなる。格子状の線の一群の後側には中央基準線12からの距離を示す目盛数字が設けられ、右側にはライン指標17からの距離を示す目盛数字が設けられている。
【0029】
図2においてデータムチャート2の前後には、補助具本体1の縁部に沿って測長目盛22がそれぞれ設けられている。前側の測長目盛22は、左端を0として右方に向かって数字が増加する目盛数字からなり、後測の測長目盛22は、中央を0として左方および右方に向かって数字が増加する目盛数字からなる。これら測長目盛22により、マーキング補助具は定規として利用することもできる。
図2において、符号23は補助具本体1の左右(L・R)を示すマークである。
【0030】
ここで、本実施形態のマーキング補助具を用いて仮レンズ102にデータムラインDLをマーキングする手順を説明する。ここでのマーキングの対象、すなわちフィッティング対象は、ブリッジ105の前端部が仮レンズ102の前レンズ面107の前端部よりも前方に位置しているフレーム101を備えた眼鏡である(
図4参照)。まず、補助具本体1を水平な天板100上に設置し、次に補助具本体1の載置面8上にフレーム101を載置する。より具体的には、フレーム101を、仮レンズ102の前レンズ面107が補助具本体1と正対する姿勢としたうえで、載置面8上にフレーム101を載置する。このとき、ブリッジ105と貫通孔10(逃げ部9)とを位置合わせしたうえで載置することにより、貫通孔10にブリッジ105を侵入させることができる。また、この載置状態において、左右の仮レンズ102・102の2ヶ所を載置面8に接当させることができる。次いで、前側基準ゲージ18および後側基準ゲージ19を用いて、両仮レンズ102の上下幅の中央がライン指標17上に位置するようにフレーム101の位置を調整する。
【0031】
具体的には、左右のチャート13・14において、前側基準ゲージ18で計測される仮レンズ102の最下部の距離と、後側基準ゲージ19で計測される仮レンズ102の最上部の距離とが一致する位置にフレーム101の位置を調整する。さらに、左右のチャート13・14において、左右基準ゲージ20で計測される左右のリム104・104の外側端部の距離が一致する位置にフレーム101の位置を調整する。これらの調整が完了したのちフレーム101を一方の手で保持する。保持されたフレーム101は、左右の仮レンズ102・102の2箇所が載置面8に接当している(
図3参照)。最後に、フレーム101を一方の手で保持しながら、鉛直方向から見て仮レンズ102越しに見えるライン指標17を他方の手に持った水性ペンにより、各仮レンズ102・102毎になぞることにより、それぞれの仮レンズ102の後レンズ面108にデータムラインDLをマーキングすることができる。
【0032】
次に着用者の瞳孔位置の確認作業を行う。具体的には、データムラインDLがマーキングされた眼鏡を着用した状態で、水性ペンを用いて前レンズ面107に瞳孔の位置をマーキングしたのち、上記と同様の方法で、フレーム101を再度補助具本体1の載置面8上に保持し、瞳孔のマーキングの位置を瞳孔位置ゲージ21で読み取る。これにより、仮レンズ102内における着用者の瞳孔位置を確認するとともに、データムラインDLから着用者の瞳孔までの距離を特定することができる。最後に、先の特定された距離を基に眼鏡レンズを加工することにより、着用者の瞳孔と眼鏡レンズの光学中心との位置関係を適正化することができる。
【0033】
以上のように、本実施形態の眼鏡のマーキング補助具においては、仮レンズ102を支持したフレーム101が載置される補助具本体1に、フレーム101が備えるブリッジ105を受け入れる貫通孔10(逃げ部9)を形成したので、ブリッジ105が前方に突出する形態のフレーム101を補助具本体1の上面に載置した場合でも、補助具本体1にブリッジ105が接当すること(先当たりすること)を防ぐことができる。このように、ブリッジ105が補助具本体1に先当たりすることを防ぐことができると、当該ブリッジ105の接当箇所を中心としてフレーム101が補助具本体1上で不用意に回転することを防ぐことができるので、補助具本体1上でフレーム101や仮レンズ102を安定姿勢に保持することができる。また、左右の仮レンズ102・102を補助具本体1に接当させることができるので、これによっても補助具本体1上でフレーム101や仮レンズ102を安定姿勢に保持することができる。以上より、本実施形態のマーキング補助具を用いれば、ブリッジ105が仮レンズ102よりも前方に突出している形態のフレーム101をフィッティング対象とする場合であっても、フレーム101や仮レンズ102を補助具本体1上で安定姿勢に保持して、これらフレーム101や仮レンズ102が不用意にずれ動くことを防ぐことができるので、ライン指標17をなぞる作業をより容易に進めることが可能となり、より正確に仮レンズ102上にデータムラインDLをマーキングすることができる。
【0034】
また、本実施形態のマーキング補助具によれば、逃げ部9にブリッジ105が受け入れられて、逃げ部9内にブリッジ105が侵入する分だけ、フレーム101を下方に配することができるので、補助具本体1の上面に対して仮レンズ102を近付けることができる。換言すれば、補助具本体1の上面から仮レンズ102が浮き離れて、ライン指標17と仮レンズ102との距離が大きくなることを防ぐことができる。このように補助具本体1の上面に対して仮レンズ102を近付けることができると、ライン指標17を用いた仮レンズ102の位置調整をより適正に行うことができる。また、ライン指標17とペン先との距離を近付けることができるので、より容易にライン指標17をなぞることができる。以上より、本実施形態のマーキング補助具を用いれば、仮レンズ102の位置調整作業やライン指標17をなぞる作業が容易となるので、これによっても、より正確に仮レンズ102にデータムラインDLをマーキングすることができる。
【0035】
補助具本体1を、データムチャート2が形成されるシート状のチャートシート5と、チャートシート5の下面に一体的に固定され、チャートシート5を支持するチャート台6とを含んで構成したので、チャート台6の厚みあるいは高さの分だけ、貫通孔10の孔深さ寸法を大きくとることができ、貫通孔10に受け入れられたブリッジ105が、天板100に接当することを防ぐことができる。また、チャートシート5を共通として、例えば板状体のチャート台6や脚付台状のチャート台6などを用意することで、全体の形態が異なる種々のマーキング補助具を容易かつ低コストで提供することができる。
【0036】
チャート台6を板状体で形成したので、マーキング補助具の保管時あるいは使用時に嵩張ることを解消できる。構成を簡素化して全体コストを抑えることもできる。
【0037】
補助具本体1の上面を、透光性を有し弾力性に富む素材で形成される保護シート7で覆ったので、補助具本体1の上面に接当するフレーム101や仮レンズ102に傷などがつくことを防ぐことができる。また、フレーム101や仮レンズ102が直接データムチャート2に接触することを防ぐことができるので、摩耗によりデータムチャート2が消失することを防ぐこともできる。
【0038】
(第2実施形態)
図5に本発明に係る眼鏡のマーキング補助具の第2実施形態を示す。なお、第1実施形態と同じ構造や部材には同じ符号を付してその説明を省略する。第2実施形態のマーキング補助具では、補助具本体1が平面視で前後に長い長方形状に形成され、その前側寄りにデータムチャート2が設けられている。補助具本体1の中央にレンズゲージ26が設けられ、レンズゲージ26の後側にクリングスチャート27が設けられ、レンズゲージ26およびクリングスチャート27を囲むようにフレームゲージ28が設けられている。レンズゲージ26は加工前の眼鏡レンズの直径やレンズの累進帯長を確認する際に使用される。クリングスチャート27は、パッド106を支持するクリングスの幅調整に用いられる。フレームゲージ28は、フレーム101の左右長さおよびテンプル103の開き幅の確認、フレーム101のカーブの度合、左右のテンプル103・103間の距離などの計測に用いられる。このように、マーキング補助具には、データムチャート2のほか、眼鏡のフィッティングに用いる各種のゲージやチャートなどを設けることができる。
【0039】
上記以外に、逃げ部9を構成する貫通孔10の開口形状は長方形状に限らず真円、楕円、多角形などであってもよく、要はブリッジ105を受け入れることができる形状であればよい。また、逃げ部9は、補助具本体1の上面において開口する凹みであってもよい。チャート台6の厚みは、3mm以外であってもよく、また、所望の厚みになるように、複数枚の板材を重ね合わせて構成してもよく、要は逃げ部9に受け入れたブリッジ105がマーキング補助具を設置した机の天板100の表面に接触しないほどの厚みを、チャート台6が備えていればよい。チャート台6は発泡スチレンボードなどの発泡樹脂で構成することができ、また、板状体に限らず、例えば脚付台状に形成することができる。チャートシート5は、紙シートあるいは樹脂と紙が混合されたシートなどで構成することができる。保護シート7はチャートシート5の全体を覆う必要はなく、少なくともフレーム101あるいは仮レンズ102が接当する部分に保護シート7を設ければよい。また、保護シート7は省略することができ、この場合には、チャートシート5を弾力性に富む素材で形成することで眼鏡を保護することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 補助具本体
2 データムチャート
5 チャートシート
6 チャート台
7 保護シート
9 逃げ部
17 ライン指標
101 フレーム
102 仮レンズ
105 ブリッジ
DL データムライン