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特開2023-5360ヘッドユニットおよびインクジェットプリンタ
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  • 特開-ヘッドユニットおよびインクジェットプリンタ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005360
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ヘッドユニットおよびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230111BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 303
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107212
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊広
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 真行
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056HA07
2C056HA10
2C056HA37
(57)【要約】
【課題】インクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、複数のインクジェットヘッドが取り付けられるベース部材の汎用性を高めることが可能で、かつ、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えを容易に行うことが可能なヘッドユニットを提供する。
【解決手段】ヘッドユニット15では、ベース部材14に、インクジェットヘッド3のノズル面を露出させるための開口14aと、インクジェットヘッド4のノズル面を露出させるための開口14bとが形成されており、副走査方向における開口14aの幅は、副走査方向においてインクジェットヘッド3とインクジェットヘッド4とが同じ位置に配置される第1位置3Aと、副走査方向においてインクジェットヘッド3とインクジェットヘッド4とがずれた位置に配置される第2位置とにインクジェットヘッド3が配置可能となる幅に設定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルが形成されるノズル面を有する複数のインクジェットヘッドと、複数の前記インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、前記キャリッジに固定されるとともに複数の前記インクジェットヘッドが取り付けられるベース部材とを備え、
前記ベース部材には、複数の前記インクジェットヘッドの前記ノズル面側の部分が取り付けられるとともに、複数の前記インクジェットヘッドのそれぞれの前記ノズル面を露出させるための複数の開口が形成され、
複数の前記インクジェットヘッドのうちの所定の前記インクジェットヘッドを第1インクジェットヘッドとし、複数の前記インクジェットヘッドのうちの前記第1インクジェットヘッドを除いた前記インクジェットヘッドを第2インクジェットヘッドとし、前記第1インクジェットヘッドの前記ノズル面を露出させるための前記開口を第1開口とすると、
前記キャリッジの移動方向となる主走査方向と上下方向とに直交する副走査方向における前記第1開口の幅は、副走査方向において前記第1インクジェットヘッドと前記第2インクジェットヘッドとが同じ位置に配置される第1位置と、副走査方向において前記第1インクジェットヘッドと前記第2インクジェットヘッドとがずれた位置に配置される第2位置とに前記第1インクジェットヘッドが配置可能となる幅に設定されていることを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記第1開口の、前記第1インクジェットヘッドが配置されていない部分を塞ぐための閉塞部材を備えることを特徴とする請求項1記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記ベース部材には、前記第1インクジェットヘッドと前記第2インクジェットヘッドとの2個の前記インクジェットヘッドが取り付けられるとともに、2個の前記開口が形成され、
2個の前記開口のうちの、一方の前記開口である前記第1開口の副走査方向の幅は、他方の前記開口の副走査方向の幅よりも広くなっていることを特徴とする請求項1または2記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記ベース部材に対して、複数の前記インクジェットヘッドのうちの少なくとも1個の前記インクジェットヘッドの副走査方向における位置を微調整するための第1調整部材を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記ベース部材に対して、複数の前記インクジェットヘッドのうちの少なくとも1個の前記インクジェットヘッドの、上下方向を回動の軸方向とする回動方向における位置を微調整するための第2調整部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のヘッドユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のヘッドユニットと、前記キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構とを備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記第1インクジェットヘッドが前記第1位置または前記第2位置に配置されている状態で印刷媒体に印刷を行い、前記第1インクジェットヘッドが前記第1位置に配置されている状態で三次元造形物を製造することを特徴とする請求項6記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のインクジェットヘッドを備えるヘッドユニットに関する。また、本発明は、かかるヘッドユニットを備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、2個のインクジェットヘッドと、2個のインクジェットヘッドを保持するヘッド保持機構と、2個のインクジェットヘッドおよびヘッド保持機構が搭載されるキャリッジとを備えている。2個のインクジェットヘッドは、主走査方向において互いにずれた位置に配置されている。インクジェットヘッドは、下側に向かってインクを吐出する。インクジェットヘッドの下面は、インクを吐出する複数のノズルが形成されるノズル面となっている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、ヘッド保持機構は、キャリッジに固定されるベース部材を備えている。ベース部材には、インクジェットヘッドのノズル面を露出させるための開口(貫通穴)が形成されている。特許文献1の図4等では、2個のインクジェットヘッドは、副走査方向において同じ位置に配置される。すなわち、特許文献1の図4等では、2個のインクジェットヘッドはインライン配置される。また、特許文献1の図10等では、2個のインクジェットヘッドは、副走査方向において互いにずれた位置に配置される。すなわち、特許文献1の図10等では、2個のインクジェットヘッドはスタガ配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-188759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、2個のインクジェットヘッドがインライン配置される場合とスタガ配置される場合とで、ベース部材に形成される開口の位置が変わる。そのため、このインクジェットプリンタでインクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合には、インライン配置されるインクジェットヘッドに応じた位置に形成される開口を有するインライン配置用のベース部材と、スタガ配置されるインクジェットヘッドに応じた位置に形成される開口を有するスタガ配置用のベース部材とが必要になる。したがって、ベース部材の汎用性が低下する。
【0006】
また、特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドをインライン配置する場合には、インライン配置用のベース部材をキャリッジに固定する必要があり、インクジェットヘッドをスタガ配置する場合には、スタガ配置用のベース部材をキャリッジに固定する必要がある。そのため、このインクジェットプリンタでは、インライン配置からスタガ配置へのインクジェットヘッドの配置の切替えを行うときや、スタガ配置からインライン配置へのインクジェットヘッドの配置の切替えを行うときに、ベース部材を取り換えなければならず、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えが煩雑になる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、複数のインクジェットヘッドと、複数のインクジェットヘッドが取り付けられるベース部材とを備えるヘッドユニットにおいて、インクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、ベース部材の汎用性を高めることが可能で、かつ、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えを容易に行うことが可能なヘッドユニットを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるヘッドユニットを備えるインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のヘッドユニットは、インクを吐出する複数のノズルが形成されるノズル面を有する複数のインクジェットヘッドと、複数のインクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、キャリッジに固定されるとともに複数のインクジェットヘッドが取り付けられるベース部材とを備え、ベース部材には、複数のインクジェットヘッドのノズル面側の部分が取り付けられるとともに、複数のインクジェットヘッドのそれぞれのノズル面を露出させるための複数の開口が形成され、複数のインクジェットヘッドのうちの所定のインクジェットヘッドを第1インクジェットヘッドとし、複数のインクジェットヘッドのうちの第1インクジェットヘッドを除いたインクジェットヘッドを第2インクジェットヘッドとし、第1インクジェットヘッドのノズル面を露出させるための開口を第1開口とすると、キャリッジの移動方向となる主走査方向と上下方向とに直交する副走査方向における第1開口の幅は、副走査方向において第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとが同じ位置に配置される第1位置と、副走査方向において第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとがずれた位置に配置される第2位置とに第1インクジェットヘッドが配置可能となる幅に設定されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のヘッドユニットでは、ベース部材に、第1インクジェットヘッドのノズル面を露出させるための第1開口が形成されており、副走査方向における第1開口の幅は、副走査方向において第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとが同じ位置に配置される第1位置と、副走査方向において第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとがずれた位置に配置される第2位置とに第1インクジェットヘッドが配置可能となる幅に設定されている。
【0010】
そのため、本発明では、共通のベース部材を用いて、第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとを副走査方向で同じ位置に配置すること、および、第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとを副走査方向でずれた位置に配置することが可能になる。すなわち、本発明では、共通のベース部材を用いて、第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとをインライン配置すること、および、スタガ配置することが可能になる。したがって、本発明では、インクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、ベース部材の汎用性を高めることが可能になる。
【0011】
また、本発明では、共通のベース部材を用いて、第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとをインライン配置すること、および、スタガ配置することが可能になるため、インライン配置からスタガ配置へのインクジェットヘッドの配置の切替えを行うとき、および、スタガ配置からインライン配置へのインクジェットヘッドの配置の切替えを行うときに、ベース部材を取り換える必要がない。したがって、本発明では、インクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えを容易に行うことが可能になる。
【0012】
本発明において、ヘッドユニットは、第1開口の、第1インクジェットヘッドが配置されていない部分を塞ぐための閉塞部材を備えることが好ましい。このように構成すると、第1インクジェットヘッドおよび第2インクジェットヘッドのインライン配置およびスタガ配置を可能にするために、副走査方向における第1開口の幅が広くなっていても、第1開口からキャリッジの内部への塵埃やインクミストの侵入を防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、ベース部材には、第1インクジェットヘッドと第2インクジェットヘッドとの2個のインクジェットヘッドが取り付けられるとともに、2個の開口が形成され、2個の開口のうちの、一方の開口である第1開口の副走査方向の幅は、他方の開口の副走査方向の幅よりも広くなっている。
【0014】
本発明において、ヘッドユニットは、ベース部材に対して、複数のインクジェットヘッドのうちの少なくとも1個のインクジェットヘッドの副走査方向における位置を微調整するための第1調整部材を備えることが好ましい。また、本発明において、ヘッドユニットは、ベース部材に対して、複数のインクジェットヘッドのうちの少なくとも1個のインクジェットヘッドの、上下方向を回動の軸方向とする回動方向における位置を微調整するための第2調整部材を備えることが好ましい。このように構成すると、ベース部材に対するインクジェットヘッドの位置ずれや、複数のインクジェットヘッドの間の位置ずれを抑制することが可能になる。したがって、インクジェットプリンタの印刷品質を高めることが可能になる。
【0015】
本発明のヘッドユニットは、キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構を備えるインクジェットプリンタに用いることができる。このインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、ベース部材の汎用性を高めることが可能になるとともに、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えを容易に行うことが可能になる。
【0016】
本発明において、インクジェットプリンタは、たとえば、第1インクジェットヘッドが第1位置または第2位置に配置されている状態で印刷媒体に印刷を行い(すなわち、二次元印刷を行い)、第1インクジェットヘッドが第1位置に配置されている状態で三次元造形物を製造する。この場合には、たとえば、第1インクジェットヘッドが第1位置に配置されている状態でインクジェットプリンタが印刷媒体に印刷を行うことで、CMYKといった一次色に加えて、ライト色やオレンジ等の特色のインクを用いて印刷媒体の印刷を行うことが容易になる。また、第1インクジェットヘッドが第2位置に配置されている状態でインクジェットプリンタが印刷媒体に印刷を行うことで、スタガ配置によるメリットを享受することができる。さらに、インクジェットプリンタが三次元造形を製造する際には、カラーインクに加えて、モデル材やサポート材といった二次元印刷よりも多くの種類のインクを用いる必要があるが、第1インクジェットヘッドが第1位置に配置されている状態で三次元造形物を製造することで、多くの種類のインクをインラインで吐出することが可能になる。すなわち、この場合には、印刷媒体への印刷と三次元造形の製造との両方を行うインクジェットプリンタとして好適な構成となり得る。なお、三次元造形を製造する際に、カラーインクを吐出するインクジェットヘッドと、サポート材を吐出するインクジェットヘッドとがスタガ配置されているのではサポート材の意味が失われる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、インクジェットヘッドのインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、複数のインクジェットヘッドが取り付けられるベース部材の汎用性を高めることが可能になるとともに、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えを容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの斜視図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図3図2に示すヘッドユニットの構成を説明するための平面図である。
図4図2に示すヘッドユニットの構成を説明するための平面図である。
図5図3に示すベース部材の平面図である。
図6】本発明の他の実施の形態にかかるヘッドユニットの構成を説明するための平面図である。
図7】本発明の他の実施の形態にかかるヘッドユニットの構成を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(インクジェットプリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の斜視図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
【0021】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、印刷媒体2に印刷を行う。すなわち、プリンタ1は、二次元印刷を行う。印刷媒体2は、たとえば、印刷用紙、布帛または樹脂製のフィルム等である。プリンタ1は、印刷媒体2に向かってインクを吐出する複数のインクジェットヘッド3、4を備えている。本形態のプリンタ1は、第1インクジェットヘッドとしてのインクジェットヘッド3と、第2インクジェットヘッドとしてのインクジェットヘッド4との2個のインクジェットヘッド3、4を備えている。以下の説明では、インクジェットヘッド3を「ヘッド3」とし、インクジェットヘッド4を「ヘッド4」とする。
【0022】
また、プリンタ1は、2個のヘッド3、4が搭載されるキャリッジ5と、キャリッジ5を主走査方向(図1等のY方向)に移動させるキャリッジ駆動機構6と、キャリッジ5を主走査方向に案内するガイドレール7と、印刷時の印刷媒体2が載置されるプラテン8と、上下方向(図1等のZ方向)と主走査方向とに直交する副走査方向(図1等のX方向)に印刷媒体2を送る媒体送り機構9と、ヘッド3、4に供給されるインクが収容される複数のインクタンク10とを備えている。
【0023】
キャリッジ駆動機構6は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ5に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。媒体送り機構9は、たとえば、印刷媒体2の一方の面に接触する駆動ローラと、駆動ローラに対向配置されるとともに印刷媒体2の他方の面に接触する従動ローラと、駆動ローラを回転させるモータ等を備えている。
【0024】
キャリッジ5に搭載されるヘッド3とヘッド4とは、主走査方向において互いにずれた位置に配置されている。ヘッド3とヘッド4とは同形状に形成されている。キャリッジ5に搭載されるヘッド3、4は、プラテン8に載置される印刷媒体2の上面に向かってインクを吐出する。すなわち、ヘッド3、4は、下側に向かってインクを吐出する。ヘッド3の下面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。ヘッド3の下面は、複数のノズルが形成されるノズル面3aとなっている。同様に、ヘッド4の下面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されており、ヘッド4の下面は、複数のノズルが形成されるノズル面4aとなっている。
【0025】
ノズル面3a、4aは、たとえば、長方形状に形成されている。また、たとえば、長方形状に形成されるノズル面3a、4aの長辺方向は、副走査方向と一致し、ノズル面3a、4aの短辺方向は、主走査方向と一致している。ノズル面3a、4aには、副走査方向に配列される複数のノズルによって構成されるノズル列が形成されている。たとえば、ノズル面3a、4aには、主走査方向に配列される4個のノズル列が形成されている。
【0026】
また、プリンタ1は、キャリッジ5に固定されるとともに2個のヘッド3、4が取り付けられるベース部材14を備えている。本形態では、ヘッド3、4、キャリッジ5およびベース部材14等によってヘッドユニット15が構成されている。以下、ヘッドユニット15の構成を説明する。
【0027】
(ヘッドユニットの構成)
図3図4は、図2に示すヘッドユニット15の構成を説明するための平面図である。図5は、図3に示すベース部材14の平面図である。以下の説明では、主走査方向(Y方向)を「左右方向」とし、副走査方向(X方向)を「前後方向」とする。また、前後方向の一方側である図3等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である図3等のX2方向側を「後ろ」側とする。
【0028】
ヘッドユニット15は、上述のように、ベース部材14を備えている。ベース部材14は、キャリッジ5の下端部に固定されており、ヘッドユニット15の下端部を構成している。また、ヘッドユニット15は、ヘッド3の下端部が固定されるヘッド保持部材16と、ヘッド4の下端部が固定されるヘッド保持部材17と、ベース部材14に対してヘッド4の前後方向(副走査方向)の位置を微調整するための偏心カム18と、ベース部材14に対してヘッド3の、上下方向を回動の軸方向とする回動方向における位置(回動角度)を微調整するための偏心カム19とを備えている。本形態の偏心カム18は第1調整部材であり、偏心カム19は第2調整部材である。
【0029】
ヘッド保持部材16、17は、たとえば、長方形の平板状に形成されている。ヘッド保持部材16とヘッド保持部材17とは、たとえば、同形状に形成されている。上下方向から見たときのヘッド保持部材16、17の外形は、ヘッド3、4の外形よりも大きくなっている。ヘッド保持部材16、17は、図示を省略するネジによってベース部材14の上面側に固定されている。たとえば、ヘッド保持部材16、17は、2本または3本あるいは4本のネジによってベース部材14に固定されている。
【0030】
本形態では、ヘッド保持部材16をベース部材14に固定するためのネジを緩めると(あるいはネジを外すと)、ヘッド保持部材16は、ベース部材14に対して上下方向を回動の軸方向として回動可能になる。また、ヘッド保持部材17をベース部材14に固定するためのネジを緩めると(あるいはネジを外すと)、ヘッド保持部材17は、ベース部材14に対して前後方向に移動可能となる。
【0031】
上述のように、ヘッド保持部材16には、ヘッド3の下端部が固定されており、ベース部材14には、ヘッド保持部材16を介してヘッド3の下端部が取り付けられている。同様に、ヘッド保持部材17には、ヘッド4の下端部が固定されており、ベース部材14には、ヘッド保持部材17を介してヘッド4の下端部が取り付けられている。すなわち、ベース部材14には、ヘッド保持部材16を介してヘッド3のノズル面3a側の部分が取り付けられるとともに、ヘッド保持部材17を介してヘッド4のノズル面4a側の部分が取り付けられている。
【0032】
ヘッド保持部材16には、ヘッドユニット15の下面側でヘッド3のノズル面3aを露出させるための開口(図示省略)が形成されている。ヘッド保持部材17には、ヘッドユニット15の下面側でヘッド4のノズル面4aを露出させるための開口(図示省略)が形成されている。ヘッド保持部材16、17の開口は、上下方向でヘッド保持部材16、17を貫通している。ヘッド保持部材16、17の開口は、たとえば、長方形状に形成されている。ヘッド保持部材16、17の開口の前後方向の幅は、ノズル面3a、4aの前後方向の幅よりも若干広くなっており、ヘッド保持部材16、17の開口の左右方向の幅は、ノズル面3a、4aの左右方向の幅よりも若干広くなっている。
【0033】
ベース部材14には、ヘッドユニット15の下面側でヘッド3のノズル面3aを露出させるための開口14aと、ヘッドユニット15の下面側でヘッド4のノズル面4aを露出させるための開口14bとが形成されている。すなわち、ベース部材14には、2個のヘッド3、4のそれぞれのノズル面3a、4aを露出させるための2個の開口14a、14bが形成されている。本形態の開口14aは、第1インクジェットヘッドであるヘッド3のノズル面3aを露出させるための第1開口となっている。
【0034】
開口14a、14bは、上下方向でベース部材14を貫通している。開口14a、14bは、長方形状に形成されている。開口14aと開口14bとは、左右方向で隣り合うように形成されている。開口14aの左右方向の幅と開口14bの左右方向の幅とは等しくなっている。開口14a、14bの左右方向の幅は、ノズル面3a、4aの左右方向の幅よりも若干広くなっている。開口14bの前後方向の幅は、ノズル面4aの前後方向の幅よりも若干広くなっている。
【0035】
開口14aの前後方向の幅は、前後方向においてヘッド3とヘッド4とが同じ位置に配置される(すなわち、ヘッド3、4がインライン配置される)第1位置3A(図3参照)と、前後方向においてヘッド3とヘッド4とがずれた位置に配置される(すなわち、ヘッド3、4がスタガ配置される)第2位置3B(図4参照)とにヘッド3が配置可能となる幅に設定されている。すなわち、開口14aの前後方向の幅は、開口14bの前後方向の幅よりも広くなっている。たとえば、開口14aの前後方向の幅は、開口14bの前後方向の幅の1.5倍程度となっている。プリンタ1は、ヘッド3が第1位置3Aに配置されている状態またはヘッド3が第2位置3Bに配置されている状態で印刷媒体2に印刷を行う。
【0036】
本形態では、開口14aの後端と開口14bの後端とは、前後方向において同じ位置に配置されている。すなわち、開口14aの前端は、開口14bの前端よりも前側に配置されている。そのため、第2位置3Bに配置されるヘッド3は、ヘッド4に対して前側にずれている。
【0037】
開口14aの、ヘッド3が配置されていない部分は、閉塞部材21によって覆われている。すなわち、ヘッドユニット15は、開口14aの、ヘッド3が配置されていない部分を塞ぐための閉塞部材21を備えている。閉塞部材21は、たとえば、長方形の平板状に形成されている。閉塞部材21は、図示を省略するネジによってベース部材14の上面側に固定されている。閉塞部材21は、ヘッド3が第1位置3Aに配置されているときに開口14aの前側部分を塞ぎ(図3参照)、ヘッド3が第2位置3Bに配置されているときに開口14aの後ろ側部分を塞ぐ(図4参照)。
【0038】
偏心カム18は、ベース部材14に取り付けられている。偏心カム18は、上下方向を回動の軸方向としてベース部材14に対して回動可能となっている。偏心カム18は、ヘッド保持部材17の前側に配置されている。偏心カム18は、図示を省略するバネ部材によって、ベース部材14に対する偏心カム18の回動方向においてヘッド保持部材17に向かって付勢されており、偏心カム18の外周面は、ヘッド保持部材17の前端面に所定の接触圧で接触している。なお、図4では、偏心カム18の図示を省略している。
【0039】
ヘッド保持部材17は、図示を省略するバネ部材によって、前側に向かって付勢されている。ヘッド保持部材17をベース部材14に固定するためのネジを緩めた状態で(あるいはネジを外した状態で)、偏心カム18を回動させると、ヘッド保持部材17がベース部材14に対して前後方向に移動する。すなわち、ヘッド保持部材17をベース部材14に固定するためのネジを緩めた状態で(あるいはネジを外した状態で)、偏心カム18を回動させると、ヘッド保持部材17と一緒にヘッド4がベース部材14に対して前後方向に移動する。
【0040】
偏心カム19は、ベース部材14に取り付けられている。偏心カム19は、上下方向を回動の軸方向としてベース部材14に対して回動可能となっている。偏心カム19は、たとえば、ヘッド保持部材16の左右方向の一方側に配置されている。偏心カム19は、図示を省略するバネ部材によって、ベース部材14に対する偏心カム19の回動方向においてヘッド保持部材16に向かって付勢されており、偏心カム19の外周面は、ヘッド保持部材16の左右方向の一方の端面に所定の接触圧で接触している。
【0041】
ヘッド保持部材16は、図示を省略するバネ部材によって、ベース部材14に対するヘッド保持部材16の回動方向において偏心カム19に向かって付勢されている。ヘッド保持部材16をベース部材14に固定するためのネジを緩めた状態で(あるいはネジを外した状態で)、偏心カム19を回動させると、ヘッド保持部材16がベース部材14に対して上下方向を回動の軸方向として回動する。すなわち、ヘッド保持部材16をベース部材14に固定するためのネジを緩めた状態で(あるいはネジを外した状態で)、偏心カム19を回動させると、ヘッド保持部材16と一緒にヘッド3がベース部材14に対して上下方向を回動の軸方向として回動する。たとえば、ヘッド3が第1位置3Aに配置されているときに偏心カム19を回動させると、ヘッド保持部材16の後端部を回動可能に支持する支点軸22を回動中心にして、ヘッド保持部材16およびヘッド3がベース部材14に対して回動する。
【0042】
なお、図4では、偏心カム19および支点軸22の図示を省略している。また、ヘッドユニット15は、ヘッド3が第2位置3Bに配置されているときに、ヘッド保持部材16と一緒にヘッド3を回動させる偏心カム19も備えている(図3図4では図示省略)。すなわち、ヘッドユニット15は、ヘッド3が第1位置3Aに配置されているときにヘッド保持部材16を回動させる偏心カム19と、ヘッド3が第2位置3Bに配置されているときにヘッド保持部材16を回動させる偏心カム19との2個の偏心カム19を備えている。2個の偏心カム19は、前後方向において互いにずれた位置に配置されている。
【0043】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ベース部材14に形成される開口14aの前後方向の幅は、前後方向においてヘッド3とヘッド4とが同じ位置に配置される(すなわち、ヘッド3、4がインライン配置される)第1位置3Aと、前後方向においてヘッド3とヘッド4とがずれた位置に配置される(すなわち、ヘッド3、4がスタガ配置される)第2位置3Bとにヘッド3が配置可能となる幅に設定されている。そのため、本形態では、共通のベース部材14を用いて、ヘッド3、4をインライン配置すること、および、スタガ配置することが可能になる。したがって、本形態では、ヘッド3、4のインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、ベース部材14の汎用性を高めることが可能になる。
【0044】
また、本形態では、共通のベース部材14を用いて、ヘッド3、4をインライン配置すること、および、スタガ配置することが可能になるため、インライン配置からスタガ配置へのヘッド3、4の配置の切替えを行うとき、および、スタガ配置からインライン配置へのヘッド3、4の配置の切替えを行うときに、ベース部材14を取り換える必要がない。したがって、本形態では、ヘッド3、4のインライン配置とスタガ配置とを行う場合であっても、インライン配置からスタガ配置への切替えおよびスタガ配置からインライン配置への切替えを容易に行うことが可能になる。
【0045】
なお、本形態では、ヘッド3が第1位置3Aに配置されている状態でプリンタ1が印刷媒体2に印刷を行うことで、CMYKといった一次色に加えて、ライト色やオレンジ等の特色のインクを用いて印刷媒体2の印刷を行うことが容易になる。また、ヘッド3が第2位置3Bに配置されている状態でプリンタ1が印刷媒体2に印刷を行うことで、スタガ配置によるメリットを享受することができる。
【0046】
本形態では、開口14aの、ヘッド3が配置されていない部分は、閉塞部材21によって塞がれている。したがって、本形態では、ヘッド3、4のインライン配置およびスタガ配置を可能にするために、開口14aの前後方向の幅が広くなっていても、開口14aからキャリッジ5の内部への塵埃やインクミストの侵入を防止することが可能になる。
【0047】
本形態では、ヘッドユニット15は、ベース部材14に対してヘッド4の前後方向の位置を微調整するための偏心カム18と、ベース部材14に対してヘッド3の回動角度を微調整するための偏心カム19とを備えている。そのため、本形態では、ベース部材14に対するヘッド3、4の位置ずれや、ヘッド3とヘッド4との間の位置ずれを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、プリンタ1の印刷品質を高めることが可能になる。
【0048】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0049】
上述した形態において、たとえば、図6に示すように、開口14aの前後方向の幅がより広くなっていても良い。この場合には、図6(A)に示すように、第2位置3Bに配置されるヘッド3の後端をヘッド4の前端よりも後ろ側に配置することが可能になるとともに、図6(B)に示すように、第2位置3Bに配置されるヘッド3の後端をヘッド4の前端よりも前側に配置することが可能になる。すなわち、図6に示す例では、ヘッド3のより柔軟な配置が可能になる。
【0050】
また、開口14aの前後方向の幅がより広くなっている場合には、図6(A)に示すように、開口14aの、ヘッド3が配置されていない部分が2個の閉塞部材21によって覆われていても良い。すなわち、ヘッドユニット15は、開口14aの、ヘッド保持部材16よりも前側の部分を塞ぐための閉塞部材21と、開口14aの、ヘッド保持部材16よりも後ろ側の部分を塞ぐための閉塞部材21とを備えていても良い。
【0051】
上述した形態において、開口14aの前端と開口14bの前端とが前後方向において同じ位置に配置され、開口14aの後端が開口14bの後端より後ろ側に配置されていても良い。この場合には、第2位置3Bに配置されるヘッド3は、ヘッド4に対して後ろ側にずれている。また、上述した形態において、開口14bの前後方向の幅が開口14aの前後方向の幅と同程度の幅となっていても良い。この場合には、第2位置3Bに配置されるヘッド3は、ヘッド4に対して前側にずれていることもあれば、後ろ側にずれていることもある。
【0052】
上述した形態において、キャリッジ5に搭載されるインクジェットヘッドの数は、3個以上であっても良い。この場合には、3個以上の複数のインクジェットヘッドがベース部材14に取り付けられており、ベース部材14には、ヘッドユニット15の下面側で複数のインクジェットヘッドのそれぞれのノズル面を露出させるための複数の開口が形成されている。たとえば、ベース部材14に4個のインクジェットヘッドが取り付けられており、図7に示すように、ベース部材14には、4個のインクジェットヘッドのそれぞれのノズルを露出させるための2個の開口14a、14b、14c、14dが形成されている。
【0053】
図7に示す例では、開口14b、開口14a、開口14dおよび開口14cが左右方向の一方側から他方側に向かってこの順番で形成されている。また、たとえば、開口14cは、開口14aと同形状に形成され、開口14dは、開口14bと同形状に形成されている。開口14a、14cの前後方向の幅は、開口14b、14dの前後方向の幅よりも広くなっている。この場合、開口14a、14cは第1開口となっており、開口14a、14cでノズル面が露出するインクジェットヘッドは第1インクジェットヘッドとなっている。また、開口14b、14dでノズル面が露出するインクジェットヘッドは第2インクジェットヘッドとなっている。なお、図7に示す例において、開口14b、開口14a、開口14cおよび開口14dが左右方向の一方側から他方側に向かってこの順番で形成されていても良い。
【0054】
上述した形態において、ヘッドユニット15は、ベース部材14に対するヘッド3、4の高さを調整するための調整部材を備えていても良いし、ベース部材14に対するヘッド3、4の、水平方向を回動の軸方向とする回動方向における位置を調整するための調整部材を備えていても良い。これらの場合の調整部材は、たとえば、ベース部材14に係合するネジである。また、上述した形態において、ヘッドユニット15は、偏心カム18を備えていなくても良いし、偏心カム19を備えていなくても良い。
【0055】
上述した形態において、開口14aの、ヘッド3が配置されていない部分が閉塞部材21に覆われていなくても良い。すなわち、ヘッドユニット15は、閉塞部材21を備えていなくても良い。また、上述した形態において、ヘッド3、4の下端部は、ベース部材14に直接、取り付けられていても良い。また、上述した形態において、プリンタ1は、プラテン8および媒体送り機構9に代えて、印刷媒体2が載置されるテーブルと、前後方向および上下方向の少なくともいずれか一方にテーブルを移動させるテーブル駆動機構とを備えていても良い。
【0056】
上述した形態において、プリンタ1は、三次元造形物を製造する3Dプリンタであっても良い。この場合には、プリンタ1は、三次元造形物が載置されるテーブルを備えている。また、プリンタ1が3Dプリンタである場合には、プリンタ1は、ヘッド3が第1位置3Aに配置されている状態で三次元造形物を製造する。プリンタ1が三次元造形を製造する際には、カラーインクに加えて、モデル材やサポート材といった二次元印刷よりも多くの種類のインクを用いる必要があるが、ヘッド3が第1位置3Aに配置されている状態で三次元造形物を製造することで、多くの種類のインクをインラインで吐出することが可能になる。このように、ヘッドユニット15が有するプリンタ1の場合、印刷媒体2への印刷と三次元造形の製造との両方を行うプリンタとして好適な構成となり得る。
【符号の説明】
【0057】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド、第1インクジェットヘッド)
3A 第1位置
3B 第2位置
3a ノズル面
4 ヘッド(インクジェットヘッド、第2インクジェットヘッド)
4a ノズル面
5 キャリッジ
6 キャリッジ駆動機構
14 ベース部材
14a、14c 開口(第1開口)
14b、14d 開口
15 ヘッドユニット
18 偏心カム(第1調整部材)
19 偏心カム(第2調整部材)
21 閉塞部材
X 副走査方向
Y 主走査方向
Z 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7