(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005362
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】摺動部材
(51)【国際特許分類】
F16C 33/10 20060101AFI20230111BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16C33/10 A
F16C33/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107214
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 絢子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良文
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA10
3J011AA20
3J011JA01
3J011LA01
3J011MA02
3J011QA11
3J011SB01
3J011SC01
3J011SC04
(57)【要約】
【課題】摺動面の耐摩耗性を損なうことなく、且つフリクションをさらに低減することができ、耐焼付性を向上することができる摺動部材を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、多孔質金属基材と、多孔質金属基材に含浸させた樹脂材料とを含む摺動部材であって、摺動部材は、露出した摺動面を有し、摺動面は、樹脂材料からなる頂部表面と、多孔質金属基材からなる底部表面とを有し、底部表面から頂部表面までの高さが10~30μmであり、また樹脂材料はフッ素樹脂を含む、摺動部材が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質金属基材と、前記多孔質金属基材に含浸させた樹脂材料とを含む摺動部材であって、
前記摺動部材は、露出した摺動面を有し、前記摺動面は、前記樹脂材料からなる頂部表面と、前記多孔質金属基材からなる底部表面とを有し、前記底部表面から前記頂部表面までの高さが10~30μmであり、また前記樹脂材料はフッ素樹脂を含む、摺動部材。
【請求項2】
前記摺動面に占める前記底部表面の総面積の割合が5~60%である、請求項1に記載の摺動部材。
【請求項3】
裏金をさらに有し、前記多孔質金属基材および前記樹脂材料は前記裏金の一方の表面上に配置される、請求項1または2に記載の摺動部材。
【請求項4】
前記多孔質金属基材は、球状または異形状の金属または合金から形成されたものである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のすべり軸受において、潤滑油を介して相手部材を支持する摺動面に樹脂材料を用いることが知られている。そのようなすべり軸受において、焼付や摩耗の防止、およびフリクション低減のためにいくつかの提案がなされてきた。
【0003】
特許文献1には、軸部材を支持する円筒状の基材の内周面に複数の凹部を設け、さらにこの内周面を樹脂層で覆ったすべり軸受が記載されている。各凹部は、内周面に対して略90度の角度の第1面と、内周面と90度未満の角度で交わる第2面とを有し、それにより、潤滑油が内周面と接触する領域に空気層を介在させ、油膜のフリクションを低減することを提案している。このすべり軸受はしかし、複数の凹部を設けるために加工工程が明らかに複雑となる。
【0004】
特許文献2には、代替冷媒により腐食しやすいアルミニウムに代えて青銅系合金を用いた冷凍機用圧縮機の軸受が記載されている。この軸受は、焼付耐力の向上および摩耗量の低減のため、裏金上に設けた多孔質青銅系合金の孔内に樹脂材料を含浸させ、摺動面に青銅系合金と樹脂材料とが露出するように形成される。樹脂材料は、PTFE(四フッ化エチレン)を含む合成樹脂と鉛を含まない潤滑剤とからなる複合物質であり(請求項3)、また青銅系合金の露出面積の割合は、5%以上60%以下であることが記載されている。
【0005】
特許文献3には、熱可塑性樹脂を主成分とする摺動部材において、表面にフッ素樹脂などの低摩擦性被膜を形成することに代えて、表面に微細凹部を設けることで比較的安価に摩擦を低減して摺動性を向上することが記載されている。微細凹部の開口の平均最大径は50μm~150μmであり、また微細凹部の単位面積当たりの配設密度は3個/mm2以上30個/mm2以下である(段落0006)。
【0006】
特許文献4には、自動車のドア等のヒンジ機構に使用される無給油軸受ブッシュが記載されている。この軸受ブッシュは、裏金の表面に一体に形成された多孔質青銅焼結層と、加圧ローラによって多孔質青銅焼結層の孔隙および表面に充填被覆された合成樹脂組成物のすべり層とを有し、多孔質青銅焼結層はすべり層の表面に点在して露出している。軸受ブッシュの製造時、加圧ローラによる加圧後の応力緩和に起因してすべり層が膨張して深さ1~2.5μmの凹みが形成される(
図7)。特許文献4では、この凹みにより、静電塗装に必要な軸受ブッシュの電気的導電性が低下するという問題に鑑みて、金属メッキ層を凹みに設けること(
図4)を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-105334号公報
【特許文献2】特開2006-132540号公報
【特許文献3】特開2017-057862号公報
【特許文献4】特開2008-164007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、省資源の観点から潤滑油の低粘度化が進み、摺動部材の摺動面は境界潤滑状態になり易くなっている。したがって摺動部材には、低粘度潤滑油使用下において摺動面のフリクションを低減することが求められている。一方で、耐焼付性および耐摩耗性を向上させるためには、摺動部材の摺動面に多孔質金属基材を露出させて放熱性を高めることが効果的であるので、多孔質金属基材を露出させつつ、上記のような低粘度潤滑油使用下においてフリクションを低減させる必要がある。
【0009】
特許文献1に記載されるすべり軸受は、製造が複雑であることに加え、内周面全体を樹脂層で覆うと放熱性が低下して焼付が生じ易い。また特許文献3に記載される摺動部材は熱可塑性樹脂を主成分としているため、放熱性および耐摩耗性の両方を向上させることは容易ではない。さらに、特許文献2および4に記載される摺動部材では、樹脂材料と金属材料とが摺動面上に一様に配置されているので、耐摩耗性を向上することができるが、フリクションをより低減することは困難である。
【0010】
したがって、本発明の目的は、潤滑油を介して相手部材を支持する摺動部材であって、多孔質金属基材と、多孔質金属基材に含浸させた樹脂材料とを含む摺動部材において、摺動面の耐摩耗性を損なうことなくフリクションをより低減させ、よって耐焼付性を向上させることである。本発明の他の目的は、製造し易く、経済的な摺動部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、多孔質金属基材と、多孔質金属基材に含浸させた樹脂材料とを含む摺動部材であって、摺動部材は、露出した摺動面を有し、摺動面は、樹脂材料からなる頂部表面と、多孔質金属基材からなる底部表面とを有するように形成され、底部表面から頂部表面までの高さが10~30μmであり、また樹脂材料はフッ素樹脂を含む、摺動部材が提供される。
【0012】
摺動面における底部表面の総面積の割合は、好ましくは5~60%である。
【0013】
摺動部材は裏金をさらに有していてもよく、多孔質金属基材および樹脂材料は裏金の一方の表面上に配置される。
【0014】
また多孔質金属基材は、好ましくは球状または異形状の金属または合金である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、摺動部材の摺動面が、頂部表面および底部表面を(すなわち凹凸形状を)有するので、軸部材などの被支持部材は樹脂材料からなる頂部表面上で摺動し、底部表面を構成する多孔質金属基材との接触が避けられる。これによりフリクションを低減すること、ひいては発熱量を抑えることができる。また摺動面には、頂部表面および底部表面によって深さ10~30μmの凹部が形成されるので、油保持性を向上することができる。
【0016】
また本発明によれば、摺動面に、多孔質金属基材からなる底部表面が露出しているので、放熱性が高くなる。これは、樹脂材料の軟化を抑制して、耐摩耗性を向上することに寄与する。
【0017】
本発明によれば、上記効果を奏するために、摺動面に垂直に測定した底部表面から頂部表面までの距離すなわち高さは10~30μmである。この高さが10μm以下であると、馴染み運転により頂部表面は約5μm程度摩耗してしまうので、運転初期における被支持部材への樹脂材料の移着効果が不十分となり、また運転時の多孔質金属基材上への樹脂材料の供給が不足する。これは、フリクションを増大し、よって焼付を生じさせ得る。一方、底部表面から頂部表面までの高さが30μm以上であると、初期状態において多孔質金属基材の露出による摺動部材の放熱効果が十分に得られず、樹脂材料が軟化し、摩耗してしまう。そのため油膜が切れ易くなり、これはフリクションを増大し、やはり焼付を生じ易くする。
【0018】
また本発明によれば、摺動面における底部表面の総面積の割合(すなわち露出率)は、5~60%である。この割合が5%以下であると、多孔質金属基材が露出することによる耐摩耗性の上記効果が得られず、一方、この割合が60%以上であると耐焼付性が低下し、摺動部材としての役割を果たすことができなくなる。
【0019】
本発明およびその利点について、添付の図面を参照して以下により詳細に説明する。図面は、非限定的な実施例を例示の目的でのみ示していることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による摺動部材の、摺動面に垂直な断面模式図である。
【
図2】
図1の摺動部材の摺動面を切削加工する前の断面模式図である。
【
図3】本発明による他の摺動部材の、摺動面に垂直な断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態による摺動部材1について、その構造および製造方法を以下に詳細に説明する。
【0022】
(摺動部材の構造)
図1は摺動部材1の断面模式図である。摺動部材1は、裏金40と、裏金40の一方の表面41上に形成された多孔質金属基材20と、多孔質金属基材20の空隙内に含浸させた樹脂材料30とを有し、板状に形成されている。
【0023】
摺動部材1はまた、裏金40の他方の表面(すなわち背面)42と反対の側に形成された摺動面10を有し、この摺動面10には、多孔質金属基材20と樹脂材料30とが混在して露出している。具体的には、摺動面10は、樹脂材料30からなる平坦な頂部表面31と、多孔質金属基材20からなる平坦な底部表面21とを有する。底部表面21は、裏金40の一方の表面41から垂直に測定した距離すなわち高さHpを有し、頂部表面31は、この高さHpよりも高くなるように形成されている。尚、
図3に示されるように、頂部表面31は、平坦な形状に限定されなくてもよい。
【0024】
本実施例において、多孔質金属基材20の高さHpは、例えば0.3mmとすることができる。また本発明によれば、摺動面10に(または裏金40の一方の表面41に)垂直に測定した底部表面21から頂部表面31までの距離すなわち高さhは10~30μmである。尚、
図3に示されるように頂部表面31が平坦ではない場合、高さhは、摺動面10に(または裏金40の一方の表面41に)垂直に測定した底部表面21から頂部表面31の一番高い点までの距離として定義される。
【0025】
図1に示されるように、摺動面10は、これら頂部表面31および底部表面21の段差に起因して形成される凹部11を有し、この凹部の深さは10~30μmであることが理解されよう。
【0026】
尚、本発明によれば、摺動面10における底部表面21の総面積の割合(すなわち多孔質金属基材20の露出率)は、耐摩耗性の下限値および耐焼付性の上限値を考慮して、好ましくは5~60%である。
【0027】
(摺動部材の材質)
多孔質金属基材20には、銅、銅合金、青銅系合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鋼などを使用することができる。また多孔質金属基材20には、球状の粉末または異形状の粉末を使用することができるが、特に異形状の粉末を使用することが好ましい。
【0028】
多孔質金属基材に含浸する樹脂材料は、フッ素樹脂としてPTFE、その他樹脂として溶融フッ素樹脂、および固体潤滑剤として黒鉛や二硫化モリブデンを含む。樹脂材料は、その他に硫酸バリウムなどの無機材料や、アルミナなどの硬質粒子を含んでいてもよい。
【0029】
(摺動部材の製造方法)
摺動部材10は、以下の工程により製造される。
(1)フッ素樹脂と各種充填剤とを混合した後、得られた混合物に成形助剤を加えて攪拌混合することにより樹脂原材料を得る。
(2)鋼板からなる裏金上に設けた多孔質金属基材上に上記工程(1)で得られた樹脂原材料を散布供給する。これをローラで圧延して、焼結により設けられた多孔質金属基材の空隙中へ樹脂原材料を含浸するとともに、樹脂原材料からなる被覆層を多孔質金属基材の表面に一様に形成する。
(3)100~200℃に加熱された乾燥炉内に上記工程(2)で得られた部材を保持して、成形助剤を除去する。
(4)成形助剤を除去した部材を加熱炉内に導入し、380~420℃の温度範囲で加熱して焼成を行った後、冷却し、ローラで所定の寸法に圧延して、所定の厚さの部材1’を形成する(
図2)。
(5)上記工程(1)~(4)を経て得られた部材1’の被覆層32側を、樹脂材料および多孔質金属基材が所望の高さ(厚さ)Hpとなるように切削して(
図2の破線参照)、所望の厚さの摺動部材を形成する。尚、この切削工程は、部材1’を所定の寸法に切断した平板に対して実施してもよく、または部材1’を円筒状の巻きブッシュに形成した後に実施してもよい。円筒状の摺動部材を提供する場合、寸法精度が良くなるので巻きブッシュに形成した後に切削工程を実施することが好ましい。
【0030】
上記工程(5)によって摺動面は一旦、一様に(すなわち平坦に)形成されるが、一定時間の経過後、樹脂材料30からなる頂部表面31が、多孔質金属基材20からなる底部表面21よりも高く(すなわち裏金から垂直に測定した距離が大きく)なる。その原理は、上記工程(4)で多孔質金属基材の空隙内に含浸され、押し込められていた樹脂材料が、上記工程(5)の切削によって多孔質金属基材による拘束から少なくとも部分的に解放されて(内部圧力の緩和)膨張する、というものである。
【0031】
本発明者らは、上記内部圧力は、樹脂材料に混合する成形助剤の量、多孔質金属の多孔度、多孔質金属の高さHp、および上記工程(4)における圧延量のバランスによって決まることを見出した。本発明の一実施形態では、特に上記工程(4)における圧延量を特定の範囲内とすることで、多孔質金属基材の空隙内の樹脂材料の内部圧力を高め、且つ上記工程(5)の切削によりこの内部圧力を緩和させることにより、多孔質金属基材からなる底部表面と、樹脂材料からなる頂部表面との間に所定量の高低差を形成した。
【0032】
具体的には、基準圧延量LR(mm)を以下の式:
LR = X/100×Hp×V/100
LR:基準圧延量(mm)
X:フッ素樹脂と充填剤を混合した樹脂材料に対する成形助剤の重量部(%)
V:多孔質金属基材の多孔度(%)
Hp:多孔質金属基材の高さ(mm)
で求めることができ、本実施形態を得るために圧延量L(mm)は、基準圧延量LR(mm)に対して100~200%の範囲内、すなわち式:
100 ≦ L/LR×100 ≦ 200
を満たしている必要がある。
【0033】
ここで、L/LR×100が100%未満であると、樹脂材料の内部圧力が足りず、多孔質金属基材からなる底部表面から、樹脂材料からなる頂部表面までの高さが10μm未満となり、一方、L/LR×100が200%超であると、樹脂材料の内部圧力が高くなり過ぎて、底部表面から頂部表面までの高さが30μm超であった。また圧延量が大き過ぎると、多孔質金属基材が潰れて、切削後の摺動面に対する底部表面(すなわち多孔質金属基材)の面積の割合(露出率)がばらつくという問題がある。
【0034】
底部表面21と頂部表面31との間に高低差を形成するために、樹脂材料は、フッ素樹脂を65%以上含むことが好ましい。この含有量が65%未満であると、内部圧力の緩和によって樹脂材料が膨張し難くなるからである。さらに、樹脂材料は、PTFEおよび固体潤滑剤を含むことがより好ましい。樹脂材料の膨張性を利用するためには、よりシンプルな組成の方が適しており、一方、フリクションの低減には固体潤滑剤が適しているからである。また、多孔質金属基材は異形状の紛末であることが好ましい。異形状の紛末であると、内部応力の緩和により膨張した樹脂材料が元の位置に戻り難いからである。
【実施例0035】
(性能評価試験)
本発明による摺動部材の摩耗量、摩擦係数および焼付時間を評価するために、実施例1~7および比較例1~2について性能評価試験を行った。
【0036】
(試験条件)
試験機: スラスト摺動試験機
荷重:(a:初期)3MPa→(b:その後)6MPa
速度:1.5m/s
時間:(a)10分→(b)焼付まで
潤滑状態:(a)オイルバス→(b)オイル抜き
相手軸:S55C焼入
【0037】
(試験片)
上述した工程(1)~(5)を含む製造方法により得られた摺動部材を切断して一辺が30mmの試料を準備した。この試料をさらに、研削砥石にて水溶性の切削液を使用しながら任意の厚さになるよう切削し、試験片を得た。
【0038】
(試験結果)
本実施例1~7の試験結果を下記の表1に、また比較例1~2の試験結果を下記の表2に示す。表中の「PTFE」はAGC製のCD097であり、「その他樹脂」は、溶融フッ素樹脂などのPTFEではない樹脂であり、「多孔質金属基材」は、Cu-10%Snの青銅系合金(異形状)またはCu-3%Sn-8%Bi合金(球状)である。また、「成形助剤の量X」は、PTFEと充填剤を混合した樹脂材料に対する成形助剤の重量部(%)を意味し、「頂部表面高さ」は、底部表面から頂部表面までの高さ(μm)を意味する。
【0039】
成形助剤Xは樹脂材料に対して15~30重量部混合し、多孔質金属基材は多孔度として40%~70%の範囲内のものを使用し、高さが0.2~0.4mmとなり多孔質金属基材を採用し、圧延量Lを0.02~0.08mmと調整した樹脂材料を用いる。
また表中の各項目は以下の方法で決定した。
頂部表面高さ:試験片をレーザー顕微鏡にて観察し、高低差を計測した
多孔質合金基材の露出率:光学顕微鏡により多孔質金属の輝度を検出して二値化処理を行い、多孔質金属の割合を露出率とした
摩耗量:試験前後の試験片の肉厚差を測定した
摩擦係数:オイル抜き直後の摩擦係数を測定した
焼付時間:オイルを抜いてから試験停止(190℃で停止)までの時間を計測した
【0040】
表1に示されるように、基準圧延量に対する圧延量の割合を107~163%とすることにより、本発明の頂部表面高さ15~30μmを得ることができ、またこの場合において、摩耗量はいずれも10μm以下であり、摩擦係数は0.04以下であり、且つ焼付時間は12分以上であった。これに対して、表2の比較例1に示されるように頂部表面高さが33μmであると摩耗量が18μmと大きくなり過ぎ、且つ摩擦係数が0.08と増大する。また比較例2に示されるように頂部表面高さが7μmと小さいと、摩耗量としては5μmと小さいが、摩擦係数が0.12と増大し、焼付時間も2分と大きく悪化する。
【0041】
以上、図面を参照して、また性能評価試験に関連して、本発明の実施形態および実施例を詳述してきたが、具体的な構成はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない程度の変更は本発明に含まれる。
【0042】
【0043】