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特開2023-53651膜、デバイスの製造方法、デバイス、および、スパッタリングターゲット
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  • 特開-膜、デバイスの製造方法、デバイス、および、スパッタリングターゲット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053651
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】膜、デバイスの製造方法、デバイス、および、スパッタリングターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/08 20060101AFI20230406BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20230406BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20230406BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230406BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20230406BHJP
   H10B 41/27 20230101ALI20230406BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C23C14/08 K
C23C14/34 A
H01L21/90 C
H01L21/302 105A
H01L27/11582
H01L27/11556
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162821
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】梅本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】林 雄二郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎司
【テーマコード(参考)】
4K029
5F004
5F033
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
4K029BA43
4K029BA50
4K029BD01
4K029DC05
4K029DC09
5F004AA03
5F004BA20
5F004DA01
5F004DA23
5F004DA26
5F004DB03
5F004EA04
5F004EA10
5F004EA23
5F004EB05
5F033GG02
5F033GG03
5F033HH07
5F033HH19
5F033HH20
5F033QQ08
5F033QQ09
5F033QQ10
5F033QQ11
5F033QQ25
5F033QQ28
5F033RR01
5F033RR03
5F033RR04
5F033RR06
5F033RR20
5F033SS08
5F033TT02
5F033VV16
5F033WW04
5F083EP01
5F083EP22
5F083EP42
5F083EP47
5F083EP48
5F083EP76
5F083ER22
5F083GA10
5F083JA38
5F083JA39
5F083MA06
5F083MA16
5F083PR03
5F083PR05
5F083PR06
5F083PR21
5F083PR22
5F083ZA28
5F101BA01
5F101BA45
5F101BB02
5F101BC02
5F101BD16
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH02
5F101BH14
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】積層体に対して高いエッチング選択比を有するとともに、比較的容易に成膜、除去することが可能な膜、この膜を用いたデバイスの製造方法、デバイス、および、この膜を成膜するのに適したスパッタリングターゲットを提供する。
【解決手段】複数の層が積層された積層体に対して、積層方向に延在する連通路をエッチングによって形成する際に、ハードマスクあるいはエッチストップ層として使用される膜であって、イットリウム酸化物を含み、空孔面積率が15%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層された積層体に対して、積層方向に延在する連通路をエッチングによって形成する際に、ハードマスクあるいはエッチストップ層として使用される膜であって、
イットリウム酸化物を含み、空孔面積率が15%以下であることを特徴とする膜。
【請求項2】
さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有することを特徴とする請求項1に記載の膜。
【請求項3】
フッ素の含有量が30mass%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の膜。
【請求項4】
金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
空孔の平均直径が25μm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の膜。
【請求項7】
膜応力の絶対値が2000GPa以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の膜。
【請求項8】
表面粗さ(算術平均粗さRa)が15nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
ウエットエッチング速度が0.3nm/sec以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の膜。
【請求項10】
基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、を備えたデバイスの製造方法であって、
前記積層体の前記基板と反対側の表面に、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の膜を成膜し、成膜した膜に所定のパターン状に貫通孔を形成してハードマスクとするハードマスク形成工程と、
前記ハードマスクを形成した状態でドライエッチング処理を行い、前記積層体に対して積層方向に延在する前記連通路を形成するドライエッチング工程と、
前記連通路を形成した後に前記ハードマスクを除去するハードマスク除去工程と、
を備えていることを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項11】
前記積層体と前記基板との間あるいは前記積層体の内部に、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の膜をエッチストップ層として形成するエッチストップ層形成工程を有し、
前記ドライエッチング工程では、前記連通路を前記エッチストップ層まで形成することを特徴とする請求項10に記載のデバイスの製造方法。
【請求項12】
基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、を備えたデバイスの製造方法であって、
前記積層体と前記基板との間あるいは前記積層体の内部に、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の膜をエッチストップ層として形成するエッチストップ層形成工程と、
前記積層体の前記基板と反対側の表面に、ハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、
前記ハードマスクを形成した状態でドライエッチング処理を行い、前記積層体に対して積層方向に延在する前記連通路を形成するドライエッチング工程と、
前記連通路を形成した後に前記ハードマスクを除去するハードマスク除去工程と、
を備えており、
前記ドライエッチング工程では、前記連通路を前記エッチストップ層まで形成することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項13】
前記デバイスが、3D-NANDメモリであることを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか一項に記載のデバイスの製造方法。
【請求項14】
基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、この連通路の一端に形成されたエッチストップ層と、を有し、
前記エッチストップ層が請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の膜で構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
3D-NANDメモリであることを特徴とする請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
イットリウム酸化物を含み、表面における水分吸収量が1wt%以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項17】
さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有することを特徴とする請求項16に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項18】
フッ素の含有量が30mass%以下であることを特徴とする請求項16または請求項17に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項19】
金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であることを特徴とする請求項16から請求項18のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項20】
Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下であることを特徴とする請求項16から請求項19のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項21】
密度比が90%以上であることを特徴とする請求項16から請求項20のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の層が積層された積層体に対して積層方向に延在する連通路をエッチングによって形成する際にハードマスクやエッチストップ層として使用される膜、この膜を用いたデバイスの製造方法、デバイス、この膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、3D-NAND等のメモリデバイスにおいては、例えば特許文献1に示すように、基板の上に、SiO層又はSiN層等のケイ素含有層が複数積層されており、この積層体の積層方向に延在する連通路が形成された構造とされている。
この連通路は、反応性イオンエッチング等のドライエッチングによって形成されており、連通路を所定のパターンで形成するために、積層体の基板とは反対側の表面にはハードマスクが配設される。また、所定の深さの連通路とするために、積層体の内部や積層体と基板との間には、エッチストップ層が形成される。
【0003】
すなわち、積層体の表面のうち連通路を形成しない箇所に、積層体(ケイ素含有層)よりもドライエッチングされにくい材料(以下、難エッチング材と称す)からなるハードマスクを形成し、ドライエッチングにより連通を形成する。その後、ウエットエッチングにより、ハードマスクを除去する。
また、複数の連通路を形成する場合に、各連通路においてエッチング深さが異なることを抑制するために、連通路の終端(下端)となる部分に、難エッチング材からなるエッチストップ層を形成する。
【0004】
ここで、上述のハードマスクやエッチストップ層として、例えば特許文献2にはアモルファスカーボンからなる膜が提案されており、特許文献3にはCo,Ru等の金属からなる膜が提案されており、特許文献4,5にはWC等の金属カーバイドからなる膜が提案されており、特許文献6にはAl等からなる膜が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0366386号明細書
【特許文献2】特許第6749764号公報
【特許文献3】特許第6832057号公報
【特許文献4】特表2020-523785号公報
【特許文献5】特表2021-503551号公報
【特許文献6】特許第5978417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、3D-NAND等のメモリデバイスにおいては、容量増加を図るために、さらなる多層化が求められている。これにより、連通路の深さがさらに深くなる傾向にあり、連通路の効率良く形成することが求められている。また、連通路を形成する場合には、連通路の積層面に対する直交性、かつ、連通路の真直性が求められる。
最近では、さらなる多層化に対応するために、積層体を形成して連通路を形成した後に、さらに上方に積層体を形成して連通路を形成する多段方式でデバイスを製造することがある。この場合、連通路をさらに精度良く形成する必要がある。
【0007】
これらの要求に対応するため、ハードマスクやエッチストップ層においては、積層体とのエッチング速度の差が大きいこと(エッチング選択比が高いこと)、ハードマスクおよびエッチストップ層を効率的に形成できること、ドライエッチング後に、ウエットエッチングによりハードマスクを容易に除去できること、が求められている。
【0008】
ここで、例えば特許文献2に記載されたアモルファスカーボンにおいては、エッチング選択比が低く、深い連通路を形成するためには、ハードマスクを厚く形成する必要があった。このため、ハードマスクの膜応力が増加し、連通路を精度良く形成することができないおそれがあった。
また、例えば特許文献3に記載されたCo,Ru等の金属においては、積層体との密着性が不十分であり、中間層を形成する必要があった。このため、ハードマスク等を効率良く形成することができないおそれがあった。
【0009】
また、例えば特許文献4,5に記載されたWC等の金属カーバイドにおいては、積層体との密着性が不十分であり、中間層を形成する必要があった。このため、ハードマスク等を効率良く形成することができないおそれがあった。また、除去する際に特殊な工程が必要となり、エッチング後にハードマスクを容易に除去できないおそれがあった。
また、例えば特許文献6に記載されたAlにおいては、エッチング選択比が低く、連通路を精度良く形成することができないおそれがあった。
【0010】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、積層体に対して高いエッチング選択比を有するとともに、比較的容易に成膜、除去することが可能な膜、この膜を用いたデバイスの製造方法、デバイス、および、この膜を成膜するのに適したスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の膜は、複数の層が積層された積層体に対して、積層方向に延在する連通路をエッチングによって形成する際に、ハードマスクあるいはエッチストップ層として使用される難エッチング材の膜であって、イットリウム酸化物を含み、空孔面積率が15%以下であることを特徴としている。
【0012】
この構成の膜によれば、イットリウム酸化物を含んでおり、アモルファスカーボン、金属、金属カーバイド、Alに比べて、高いエッチング選択比を有している。また、積層体との密着性に優れており、中間層を形成することなく、効率良く成膜することができる。さらに、ウエットエッチ性に優れており、効率良く除去することができる。
そして、空孔面積率が15%以下とされているので、エッチングが進行した際の熱によって、空孔に内包されているガスが膨張・破裂して、基板を汚染することを抑制することができる。
よって、この膜をハードマスクあるいはエッチストップ層として使用した場合に、複数の層が積層された積層体に対して、積層方向に延在する連通路を精度良く、かつ、効率的に形成することができる。
また、この膜をハードマスクとして使用した場合に、ハードマスクを薄く形成することができ、ハードマスクにおける膜内応力が低減し、直交性および真直性に優れた連通路を形成することができる。
【0013】
ここで、本発明の膜においては、さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有することが好ましい。
この場合、上述の酸化物を含有しているので、エッチング選択比をさらに高くすることが可能となる。
【0014】
また、本発明の膜においては、フッ素の含有量が30mass%以下であることが好ましい。
この場合、フッ素を含有することにより、エッチング選択比をさらに高くすることができる。また、フッ素の含有量が30mass%以下に制限されているので、ウエットエッチング時にフッ酸が生じることを抑制できる。
【0015】
さらに、本発明の膜においては、金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であることが好ましい。
この場合、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上とされ、イットリウム酸化物の含有量が確保されており、エッチング選択比を確実に高くすることが可能となる。
【0016】
また、本発明の膜においては、空孔の平均直径が25μm以下であることが好ましい。
この場合、ドライエッチングが進行して空孔が表面に露呈しても表面に大きな凹凸が生じることを抑制でき、凸部がパーティクルとなることを抑制でき、基板の汚染を抑制することができる。
【0017】
さらに、本発明の膜においては、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下であることが好ましい。
この場合、膜中の不純物成分が十分に抑制されているので、これらの不純物による積層体や基板の汚染を抑制することができる。
【0018】
さらに、本発明の膜においては、膜応力の絶対値が2000GPa以下であることが好ましい。
この場合、ハードマスクおよびエッチストップ層となる膜と積層体や基板との応力差を小さくなり、ドライエッチング時における剥離を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の膜においては、表面粗さ(算術平均粗さRa)が15nm以下であることが好ましい。
この場合、表面粗さが小さく抑えられているので、凸部がパーティクルとなることを抑制でき、基板の汚染を抑制することができる。
【0020】
さらに、本発明の膜においては、ウエットエッチング速度が0.3nm/sec以上であることが好ましい。
この場合、ウエットエッチング速度が上述のように規定されているので、ウエットエッチングによって膜を効率的に除去することができる。
【0021】
本発明のデバイスの製造方法は、基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、を備えたデバイスの製造方法であって、前記積層体の前記基板と反対側の表面に、上述の膜を成膜し、成膜した膜に所定のパターン状に貫通孔を形成してハードマスクとするハードマスク形成工程と、前記ハードマスクを形成した状態でドライエッチング処理を行い、前記積層体に対して積層方向に延在する前記連通路を形成するドライエッチング工程と、前記連通路を形成した後に前記ハードマスクを除去するハードマスク除去工程と、を備えていることを特徴としている。
【0022】
この構成のデバイスの製造方法によれば、積層体の前記基板と反対側の表面に、上述の膜を成膜し、成膜した膜に所定のパターン状に貫通孔を形成してハードマスクとするハードマスク形成工程を備えているので、エッチング選択比の高いハードマスクを形成することができ、ドライエッチング工程によって、連通路を、効率良く、かつ、精度良く形成することが可能となる。
また、ハードマスクを薄く形成することができ、ハードマスクにおける膜内応力が低減し、直交性および真直性に優れた連通路を形成することができる。
【0023】
ここで、本発明のデバイスの製造方法においては、前記積層体と前記基板との間あるいは前記積層体の内部に、上述の膜をエッチストップ層として形成するエッチストップ層形成工程を有し、前記ドライエッチング工程では、前記連通路を前記エッチストップ層まで形成すること構成としてもよい。
この場合、前記積層体と前記基板との間あるいは前記積層体の内部に、上述の膜をエッチストップ層として形成するエッチストップ層形成工程を有しているので、ドライエッチング工程によって連通路をエッチストップ層にまで形成することができ、連通路の深さを均一化することができる。
【0024】
本発明のデバイスの製造方法は、基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、を備えたデバイスの製造方法であって、前記積層体と前記基板との間あるいは前記積層体の内部に、上述の膜をエッチストップ層として形成するエッチストップ層形成工程と、前記積層体の前記基板と反対側の表面に、ハードマスクを形成するハードマスク形成工程と、前記ハードマスクを形成した状態でドライエッチング処理を行い、前記積層体に対して積層方向に延在する前記連通路を形成するドライエッチング工程と、前記連通路を形成した後に前記ハードマスクを除去するハードマスク除去工程と、を備えており、前記ドライエッチング工程では、前記連通路を前記エッチストップ層まで形成することを特徴としている。
【0025】
この構成のデバイスの製造方法によれば、前記積層体と前記基板との間あるいは前記積層体の内部に、上述の膜をエッチストップ層として形成するエッチストップ層形成工程を有しているので、ドライエッチング工程によって連通路をエッチストップ層にまで形成することができ、連通路の深さを均一化することができる。
【0026】
本発明のデバイスの製造方法においては、前記デバイスが、3D-NANDメモリであることが好ましい。
この場合、超多層構造で超高密度の3D-NANDメモリを、効率良く製造することが可能となる。
【0027】
本発明のデバイスは、基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、この連通路の一端に形成されたエッチストップ層と、有し、前記エッチストップ層が上述の膜で構成されていることを特徴としている。
【0028】
この構成のデバイスによれば、上述の膜からなるエッチストップ層が形成されているので、複数の連通路の深さが均一となり、高品質なデバイスを提供することが可能となる。
【0029】
ここで、本発明のデバイスにおいては、3D-NANDメモリであることが好ましい。
この場合、複数の連通路の深さが均一となり、高品質な3D-NANDメモリを提供することができる。
【0030】
本発明のスパッタリングターゲットは、イットリウム酸化物を含み、表面における水分吸収量が1wt%以下であることを特徴としている。
【0031】
この構成のスパッタリングターゲットによれば、イットリウム酸化物を含み、エッチング選択比の高い膜を効率良く成膜することができる。
そして、スパッタリングターゲットの表面における水分吸収量が1wt%以下とされているので、成膜した膜の内部に空孔が生じることを抑制できる。
【0032】
ここで、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有することが好ましい。
この場合、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有し、さらにエッチング選択比の高い膜を成膜することができる。
【0033】
また、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、フッ素の含有量が30mass%以下であることが好ましい。
この場合、フッ素の含有量が30mass%以下とされ、さらにエッチング選択比の高い膜を成膜することができる。
【0034】
さらに、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であることが好ましい。
この場合、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であり、確実にエッチング選択比の高い膜を成膜することができる。
【0035】
また、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下であることが好ましい。
この場合、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下に制限された膜を成膜することができ、膜からの汚染を抑制することができる。
【0036】
さらに、本発明のスパッタリングターゲットにおいては、密度比が90%以上であることが好ましい。
この場合、表面における水分吸収量を十分に低く抑えることができる。また、成膜時の異常放電の発生を抑制でき、安定して上述の膜を成膜することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、積層体に対して高いエッチング選択比を有するとともに、比較的容易に成膜、除去することが可能な膜、この膜を用いたデバイスの製造方法、デバイス、および、この膜を成膜するのに適したスパッタリングターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係るデバイス(3D-NANDメモリ)において連通路を形成した状態を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るデバイス(3D-NANDメモリ)の製造方法において連通路を形成する工程のフロー図である。
図3】実施例における膜の断面観察写真である。(a)が本発明例1であり、(b)が比較例6である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明の実施形態である膜、デバイスの製造方法、デバイス、スパッタリングターゲットについて、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態である膜は、基板と、基板の上に複数の層が積層された積層体と、前記積層体に形成された積層方向に延在する連通路と、を備えたデバイスを製造する際に、ハードマスクあるいはエッチストップ層として使用されるものである。
【0040】
まず、本実施形態であるデバイスについて説明する。なお、本実施形態であるデバイスは、3D-NANDメモリとされている。
このデバイスは、基板11と、基板11上に複数の層が積層された積層体20と、積層体20に形成された積層方向に延在する連通路30と、を備えている。なお、連通路30には、チャネル15が形成され、チャネル15は3D-NANDの柱でもよい。あるいは誘電体材料あるいは他の材料で満たされ電荷蓄積セルをつくることができる。
そして、連通路30の基板11側の端部(下端部)には、エッチストップ層32が形成されている。
【0041】
基板11は、例えば、Si,SiO,サファイア,Ge,GaAs,SiGe,InP等で構成されている。
また、基板11には、必要に応じて、上部層の動作に必要な回路が形成されていてもよい。
【0042】
積層体20は、SiO層又はSiN層等のケイ素含有層が複数積層された構造とされている。
基板11の表面には、誘電体層21が形成されており、その上に、ポリシリコン層または犠牲層22と、誘電体層23とが、交互に積層されている。
ここで、誘電体層21,23は、SiO,SiC等の誘電率の低い材料で構成されている。
また、犠牲層22は、その後、金属配線に置換される。金属配線は、例えばW,Mo,Ru等で構成されている。
【0043】
エッチストップ層32は、図1に示すように誘電体層21の内部に形成されていてもよいし、誘電体層21の上に形成されていてもよい。
また、連通路30をドライエッチングによって形成する際には、積層体20の基板11とは反対側の表面にハードマスク35が形成されている。ハードマスク35の上部(基板11と反対側)にハードマスク35の加工のためのフォトレジスト層が形成されていてもよい。またフォトレジスト層とハードマスク35の間に反射防止膜(BARC:Bottom Anti Reflection Coating)を形成していてもよい。あるいは、ハードマスク35とフォトレジスト層との間に別のハードマスク層を形成してもよい。この場合においてもフォトレジスト層とハードマスクの間に反射防止膜(BARC)を形成していてもよい。
【0044】
そして、エッチストップ層32およびハードマスク35は、本実施形態である膜で構成されている。
【0045】
本実施形態である膜は、イットリウム酸化物を含み、空孔面積率が15%以下とされている。なお、本実施形態である膜は、金属成分の合計を100mass%として、主成分として金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であることが好ましい。
【0046】
本実施形態である膜においては、さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有していてもよい。
また、本実施形態である膜においては、フッ素の含有量が30mass%以下であることが好ましい。
【0047】
さらに、本実施形態である膜においては、空孔の平均直径が25μm以下であることが好ましい。
また、本実施形態である膜においては、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下であることが好ましい。
【0048】
さらに、本実施形態である膜においては、膜応力の絶対値が2000GPa以下であることが好ましい。
また、本実施形態である膜においては、表面粗さ(算術平均粗さRa)が15nm以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態である膜においては、ウエットエッチング速度が0.3nm/sec以上であることが好ましい。
【0049】
以下に、本実施形態あるデバイスの製造方法における連通路の形成工程について、図2のフロー図を用いて説明する。
【0050】
本実施形態であるデバイスの製造方法は、図2に示すように、基板11の表面に誘電体層21を形成する誘電体層形成工程S01と、誘電体層21の内部にエッチストップ層32を形成するエッチストップ層形成工程S02と、誘電体層21の上にSiO層又はSiN層等のケイ素含有層が複数積層して積層体20を形成する積層体形成工程S03と、積層体20の基板11と反対側の表面にハードマスク35を形成するハードマスク形成工程S04と、ハードマスク35を形成した状態でドライエッチング処理を行い、積層体20に対して積層方向に延在する連通路30を形成するドライエッチング工程S05と、連通路30を形成した後にハードマスク35を除去するハードマスク除去工程S06と、を備えている。
【0051】
本実施形態においては、図1に示すように、誘電体層21の内部にエッチストップ層32を形成しているので、エッチストップ層形成工程S02において、誘電体層21に対してリソグラフィー・エッチングを行って凹部を形成し、この凹部にエッチストップ層32を成膜する。なお、エッチストップ層32の成膜方法に特に制限はないが、本実施形態では、スパッタ法によって、上述の本実施形態の膜からなるエッチストップ層32を成膜する。
【0052】
ハードマスク形成工程S04においては、積層体20の基板11と反対側の表面に、上述の本実施形態である膜を成膜する。なお、ハードマスク35の成膜方法に特に制限はないが、本実施形態では、スパッタ法によって、上述の本実施形態の膜からなるハードマスク35を成膜する。
そして、成膜した膜に所定のパターン状に貫通孔を形成してハードマスク35とする。なお、貫通孔は、ウエットエッチングによって膜を局所的に除去することによって形成される。
【0053】
ドライエッチング工程S05では、ハードマスク35を形成した状態で、エッチングガスを用いてドライエッチングすることで、積層方向に延在する連通路30が形成される。ここで、ドライエッチング工程S05においては、連通路30をエッチストップ層32にまで達するように形成される。
【0054】
そして、連通路30を形成した後に、ハードマスク35をウエットエッチングによって除去する。
以上の工程により、積層体20に、積層方向に延在する連通路30を形成することが可能となる。
【0055】
次に、本実施形態の膜からなるエッチストップ層32およびハードマスク35を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットについて説明する。
本実施形態であるスパッタリングターゲットは、主成分としてイットリウム酸化物を含んでおり、表面における水分吸収量が1wt%以下とされている。なお、上述の水分吸収量は、加熱装置によって200℃で10時間保持する熱処理を実施し、熱処理の前後の重量から算出されるものである。
【0056】
本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有していてもよい。
また、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、フッ素の含有量が30mass%以下であることが好ましい。
【0057】
さらに、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上であることが好ましい。
また、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下であることが好ましい。
さらに、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいては、密度比が90%以上であることが好ましい。
【0058】
ここで、本実施形態であるスパッタリングターゲットは、次のようにして製造することができる。
酸化物イットリウム粉末、および、その他の酸化物粉末を、秤量して混合して混合粉を得る。ここで、混合方法は、例えばヘンシェルミキサー、ジェットミル、V型混合機、ビーズミル、アトライタ、バスケットミル等を用いてもよいが、原料粉に吸湿性があるため、乾式で行うことが好ましい。
【0059】
得られた混合粉を、加圧および加熱することによって焼結する。なお、焼結は、ホットプレス法で実施してもよいし、CIPや加圧プレスによって作製した圧粉体をHIPや酸素雰囲気下での常圧焼成によって行ってもよい。
得られた焼結体を、所定のサイズに機械加工することにより、本実施形態であるスパッタリングターゲットが製造される。
【0060】
上述の構成とされた本実施形態であるスパッタリングターゲットを用いて、本実施形態の膜を成膜することにより、エッチストップ層32およびハードマスク35が形成されることになる。
【0061】
以上のような構成とされた本実施形態である膜によれば、イットリウム酸化物を含んでおり、高いエッチング選択比を有している。また、積層体との密着性に優れており、中間層を形成することなく、効率良く成膜することができる。さらに、ウエットエッチ性に優れており、効率良く除去することができる。
そして、膜の空孔面積率が15%以下とされているので、エッチングが進行した際の熱によって、空孔に内包されているガスが膨張・破裂して、基板を汚染することを抑制することができる。
なお、本実施形態の膜においては、主成分としてイットリウム酸化物を含んでおり、空孔面積率が15%以下とされていることが好ましい。
また、本実施形態の膜においては、膜の空孔面積率は、10%以下とすることが好ましく、5%以下とすることがより好ましい。
【0062】
よって、本実施形態である膜をハードマスク35あるいはエッチストップ層32と使用することにより、積層体20に対して積層方向に延在する連通路30を精度良く、かつ、効率的に形成することができる。
また、本実施形態である膜をハードマスク35として使用することにより、ハードマスク35を薄く形成することができ、ハードマスク35における膜内応力が低減し、直交性および真直性に優れた連通路30を形成することができる。
【0063】
本実施形態の膜において、さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有する場合には、膜のエッチング選択比をさらに高くすることが可能となる。よって、ハードマスク35およびエッチストップ層32をさらに薄く形成することができ、膜応力を低減することができる。
【0064】
また、本実施形態の膜において、フッ素の含有量が30mass%以下である場合には、膜のエッチング選択比をさらに高くすることができる。また、フッ素の含有量が30mass%以下に制限されているので、膜をウエットエッチングにて除去する際に、フッ酸が生じることを抑制できる。よって、フッ酸による基板11や積層体20の溶解を抑制することができる。
なお、フッ素の含有量の上限は25mass%以下とすることがより好ましく、20mass%以下とすることさらに好ましい。また、フッ素の含有量の下限に特に制限はないが、5mass%以上とすることが好ましく、10mass%以上とすることがより好ましい。
【0065】
さらに、本実施形態の膜において、金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上である場合には、イットリウム酸化物の含有量が確保されており、膜のエッチング選択比を確実に高くすることが可能となる。よって、ハードマスク35およびエッチストップ層32として特に適している。
なお、金属成分中のイットリウムの含有量が40mass%以上であることがより好ましく、50mass%以上であることがさらに好ましい。また、金属成分中のイットリウムの含有量の上限に特に制限はないが、90mass%以下であることが好ましく、80mass%以下であることがより好ましい。
【0066】
また、本実施形態の膜において、空孔の平均直径が25μm以下である場合には、ドライエッチング工程S05が進行して空孔が膜の表面に露呈しても、膜の表面に大きな凹凸が生じることを抑制でき、凸部がパーティクルとなることを抑制でき、基板11の汚染を抑制することができる。
なお、空孔の平均直径は20nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0067】
さらに、本実施形態の膜において、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下である場合には、膜中の不純物成分が十分に抑制されており、これらの不純物による積層体20や基板11の汚染を抑制することができる。
なお、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量は500massppm以下であることがより好ましく、100massppm以下であることがさらに好ましい。
【0068】
また、本実施形態の膜において、膜応力の絶対値が2000GPa以下である場合には、ハードマスク35およびエッチストップ層32となる膜と積層体20や基板11との応力差を小さくなり、ドライエッチング工程S05における膜の剥離を抑制することができる。
なお、膜応力の絶対値は1500GPa以下であることがより好ましく、1000GPa以下であることがさらに好ましい。
【0069】
さらに、本実施形態の膜において、表面粗さ(算術平均粗さRa)が15nm以下である場合には、表面に大きな凹凸がなく、凸部がパーティクルとなることを抑制でき、基板11や積層体20の汚染を抑制することができる。
なお、膜の表面粗さ(算術平均粗さRa)は10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0070】
また、本実施形態の膜において、ウエットエッチング速度が0.3nm/sec以上である場合には、ウエットエッチング速度が比較的高く、膜をウエットエッチングによって除去する際に、膜以外の積層体20や基板11がエッチングされることを抑制することができる。さらに、ウエットエッチングによって、この膜からなるハードマスク35を効率良く除去することができる。
なお、ウエットエッチング速度は0.5nm/sec以上であることがより好ましく、1.0nm/sec以上であることがさらに好ましい。
【0071】
本実施形態であるデバイスの製造方法によれば、積層体20の基板11と反対側の表面に、上述の膜を成膜し、成膜した膜に所定のパターン状に貫通孔を形成してハードマスク35とするハードマスク形成工程S04を備えているので、エッチング選択比の高いハードマスク35を形成することができ、ドライエッチング工程S05によって、連通路30を、効率良く、かつ、精度良く形成することが可能となる。
また、ハードマスク35を薄く形成することができ、ハードマスク35における膜内応力が低減し、直交性および真直性に優れた連通路30を形成することができる。
さらに、ハードマスク除去工程S06において、連通路30を形成した後にハードマスク35を効率良く除去することができる。
【0072】
本実施形態であるデバイスの製造方法において、積層体20と基板11との間あるいは積層体20の内部に、上述の膜をエッチストップ層32として形成するエッチストップ層形成工程S02を有し、ドライエッチング工程S05では、連通路30をエッチストップ層32まで形成する構成とした場合には、複数の連通路30を均一に、かつ、精度良く形成することができる。
【0073】
本実施形態であるデバイスは、基板11と、基板11の上に複数の層が積層された積層体20と、積層体20に形成された積層方向に延在する連通路30と、この連通路30の一端に形成されたエッチストップ層32と、を有し、エッチストップ層32が上述の膜で構成されているので、複数の連通路30の深さが均一となり、高品質なデバイスを提供することが可能となる。
【0074】
本実施形態においては、デバイスが3D-NANDメモリとされているので、高品質な3D-NANDメモリを提供することができる。
【0075】
本実施形態のスパッタリングターゲットによれば、イットリウム酸化物を含んでいるので、イットリウム酸化物を含み、かつエッチング選択比の高い膜を効率良く成膜することができる。
そして、表面における水分吸収量が1wt%以下とされているので、成膜した膜の内部に空孔が生じることを抑制できる。
なお、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいては、主成分としてイットリウム酸化物を含んでおり、空孔面積率が15%以下とされていることが好ましい。
また、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいては、表面における水分吸収量は0.5wt%以下であることがより好ましく、0.1wt%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、さらに、セリウム、ランタン、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウムから選択される一種または二種以上の元素の酸化物を含有する場合には、さらにエッチング選択比の高い膜を成膜することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、フッ素の含有量が30mass%以下である場合には、さらにエッチング選択比が高い膜を成膜することができる。また、膜に含まれるフッ素量を低減でき、膜をウエットエッチングにて除去する際に、フッ酸が生じることを抑制できる。
なお、フッ素の含有量の上限は25mass%以下とすることがより好ましく、20mass%以下とすることさらに好ましい。また、フッ素の含有量の下限に特に制限はないが、5mass%以上とすることが好ましく、10mass%以上とすることがより好ましい。
【0078】
さらに、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、金属成分の合計を100mass%として、金属成分中のイットリウムの含有量が30mass%以上である場合には、確実にエッチング選択比の高い膜を成膜することができる。
なお、金属成分中のイットリウムの含有量が40mass%以上であることがより好ましく、40mass%以上であることがさらに好ましい。
【0079】
また、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量が1000massppm以下である場合には、不純物量が低減された膜を成膜することができ、膜からの汚染を抑制することができる。
なお、Fe,Ni,Cr,Cu,Na,Kの合計含有量は500massppm以下であることがより好ましく、100massppm以下であることがさらに好ましい。
【0080】
さらに、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、密度比が90%以上である場合には、表面における水分吸収量を十分に低く抑えることができる。また、成膜時の異常放電の発生を抑制でき、安定して上述の膜を成膜することができる。
なお、密度比は95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましい。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態においては、エッチストップ層およびハードマスクを本実施形態である膜で形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、エッチストップ層およびハードマスクのいずれか一方が本実施形態である膜で形成されていればよい。
また、本実施形態では、スパッタリングターゲットを用いて、エッチストップ層およびハードマスクとなる膜を成膜するものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の方法によって膜を成膜してもよい。
【実施例0082】
以下に、本発明の作用効果について評価した評価試験の結果を説明する。
【0083】
(本発明例1-15および比較例6のスパッタリングターゲット)
まず、酸化物イットリウム粉末、酸化セリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化アルミニウム粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化ジルコニウム粉末、酸化ハフニウム粉末、酸化カルシウム粉末、および、各種フッ化物を準備し、表1に示す重量比になるように秤量した。秤量した粉を乾式ボールミルで混合し、篩でボールを除去した後、混合粉を得た。
得られた混合粉を直径135mmの内径を持ったカーボン製のモールドに充填し、ホットプレス装置によって実施例表に記載の温度と圧力で4時間加圧焼結を行った。
得られた焼結体を直径125mm、厚さ5mmtのサイズに機械加工した。その後、本発明例1-15においては、水分除去工程として、ホットプレート上で200℃、10時間加熱処理した。比較例6においては、水分除去工程を実施しなかった。
以上の工程により、表に示すスパッタリングターゲットを製造した。
【0084】
得られたスパッタリングターゲットについて、組成、表面の水分吸収量、密度比について、以下のように評価した。評価結果を表に示す。
【0085】
(ターゲット組成)
得られたスパッタリングターゲットから測定試料を採取し、適宜酸又はアルカリで完全溶解する。得られた溶解液を希釈し、ICP-AES装置あるいはICP-MS装置によって金属元素の組成分析並びに金属不純物(Fe,Ni,Cr,Cu,Na,K)分析を行った。
仕込みに用いた金属元素(Y,Ce,La,Al,Mg,Zr,Hf,Ca)については、得られた金属元素の合計値を100mass%として、その比率(mass%)を算出した。
金属不純物(Fe,Ni,Cr,Cu,Na,K)については、測定された含有量(massppm)の合計値を表に記載した。
また、フッ素を含む組成の場合は、さらに軽元素が測定可能なXRF装置によって、あらかじめ標準試料を用いて検量線を引いた上でフッ素の定量を行った。
【0086】
(表面の水分吸収量)
得られた直径125mm、厚さ5mmのスパッタリングターゲットの重量を少数点第2位まであらかじめ測定しておき、ホットプレート上で200℃、10時間加熱処理した後、再度同様に重量測定を行い、重量減少分を加熱前の重量で割った値を水分吸収量(wt%)として表に記載した。
【0087】
(密度比)
得られた直径125mm、厚さ5mmのスパッタリングターゲットの重量を測定し、直径と厚さから計算した体積で割ることで密度を計算した。得られた密度を仕込み組成の重量の割合から計算した理想的な密度で割り、100をかけることで密度比(%)を計算して、表に記載した。
【0088】
(本発明例1-15および比較例6の膜)
上述のスパッタリングターゲットをInはんだでCu製のバッキングプレートに接合した。これをスパッタ装置に装着し真空排気後、Si基板に対してRF電源405W、Ar:30sccm、O:30sccm、0.67Paの条件で成膜を行った。得られた膜に対して以下に示す評価・分析を実施した。
【0089】
(イットリウム酸化物)
得られた膜をXPSによって、イットリウムのd軌道の化学状態を分析した。イットリウム酸化物に由来する3d3/2の158eVのピークが検出された場合、酸化イットリウムを含むとして表に記載した。
また、上記の方法で同定した酸化物由来のイットリウムピークと、他の化合物に由来するピークから膜中における酸化イットリウム量の半定量値を得た。
【0090】
(膜の組成)
得られた膜を適宜酸又はアルカリで完全溶解する。得られた溶解液を希釈し、ICP-AES装置あるいはICP-MS装置によって金属元素の組成分析並びに不純物(Fe,Ni,Cr,Cu,Na,K)分析を行った。
仕込みに用いた金属元素(Y,Ce,La,Al,Mg,Zr,Hf,Ca)については、得られた金属元素の合計値を100mass%として、その比率(mass%)を算出した。
金属不純物(Fe,Ni,Cr,Cu,Na,K)については、測定された含有量(massppm)の合計値を表に記載した。
また、フッ素を含む組成の場合は、さらに軽元素が測定可能なXRF装置によって、あらかじめ標準試料を用いて検量線を引いた上でフッ素の定量を行った。
【0091】
(膜の空孔)
得られた膜の断面をCP加工した観察面に対して、5万倍の倍率で断面SEM観察を行った。得られた画像から、画像処理ソフトを用いて当該膜の領域をEditのClear outside機能を用いてトリミングし、ImageのAdjustのthreshold color機能を用いて二値化を行った。この二値化処理によってSEM像で黒く識別される空孔とそれ以外の膜領域を区別した。二値化後の画像に対してAnalyzeのAnalyze particles機能を用いて、空孔の面積率、平均面積を計算した。空孔を真円と仮定し、得られた平均面積から空孔の平均直径を算出した。これらの処理によって得られた空孔の面積率と平均直径を表に記載した。
なお、本発明例1の膜の断面の観察写真を図3(a)に、比較例1の膜の断面の観察写真を図3(b)に示す。比較例6の膜では、膜の内部に空孔が存在していることが確認される。
【0092】
(膜応力)
直径4インチのSi基板に対して100nmの膜厚分だけ成膜を行い、成膜後に成膜面に対して白色干渉顕微鏡Contour SP-K(Bruker社製)を用いて3次元の反り測定を実施し、中心部φ75mmにおける球面半径rを計測した。得られた球面半径rから直径Rを計算し、次のストーニーの式から膜応力を計算した。
膜応力 = E /{(1-v)6tR}
ここで、Eは基板のヤング率、tは基板の厚み、vは基板のポアソン比、tは膜厚(100nm)、Rは計算した直径である。なお、今回は、Si基板を用いたため、Eを185GPa、tを525μm、vを0.28として計算を行った。このとき基板を白色干渉顕微鏡の盤上に成膜面を上に置いたとき、凸側の反りに対する曲率半径をマイナスの値とし圧縮応力として示した。
【0093】
(表面粗さ)
得られた膜に対して、AFM装置SPI3800N/SPA400(SIIテクノロジー社製)を用いて、1000nm×1000nm角の視野範囲測定し、算術平均粗さRaを計測した。得られたRaを表面粗さとして表に記載した。
【0094】
(比較例1-5の膜)
比較例1のDLC(Diamnod Like Carbon)の膜は、CVD法によって成膜した。
比較例2のAl膜は、市販の4N-Alターゲットを用いて酸素リアクティブスパッタによって成膜した。
比較例3のWC膜は、市販のWC粉をホットプレスによって焼結し、機械加工して得られたスパッタリングターゲットを用いて、DCスパッタによって成膜した。
比較例4のSiC膜は、市販のSiC粉をホットプレスによって焼結し、機械加工して得られたスパッタリングターゲットを用いて、DCスパッタによって成膜した。
比較例5のTiN膜は、市販の4N-Tiターゲットを用いて窒素リアクティブスパッタによって成膜した。
【0095】
(ドライエッチングレート測定)
上述の本発明例および比較例の膜をICPエッチング装置RIE-101iPH(サムコ社製)を用いて、CFガス:40sccm、Arガス:160sccm、Oガス:8sccm、圧力5Pa、ICP 500W、Bias 125Wの条件でドライエッチングを行った。
ドライエッチング前後の膜厚を、サンプルの断面SEM観察から求め、ドライエッチングによって削れた膜厚をエッチング時間で割ることでエッチングレート(nm/sec)を計算した。SiO膜に対して同様に行った結果である7.9nm/secを得られたエッチングレートで割ることでエッチング選択比を計算した。計算したエッチングレートとエッチング選択比を表に記載した。
【0096】
(ウエットエッチングレート測定)
得られた膜に対して、市販のリン硝酢酸溶液を用いて、40℃の温度条件で浸漬し、膜が溶け切る時間を計測した。膜厚を溶け切った時間で割ることでエッチングレート(nm/sec)を計算した。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
【0101】
比較例1においては、DLC膜とされており、ドライエッチングレートが3.6nm/secと高くなり、エッチング選択比が2.2となった。また、ウエットエッチングで除去することができなかった。
比較例2においては、Al膜とされており、ドライエッチングレートが1.2nm/secと高くなり、エッチング選択比が6.6となった。
【0102】
比較例3においては、WC膜とされており、ドライエッチングレートが2.8nm/secと高くなり、エッチング選択比が2.8となった。また、ウエットエッチングで除去することができなかった。
比較例4においては、SiC膜とされており、ドライエッチングレートが4.6nm/secと高くなり、エッチング選択比が1.7となった。また、ウエットエッチングで除去することができなかった。
【0103】
比較例5においては、TiN膜とされており、ドライエッチングレートが5.7nm/secと高くなり、エッチング選択比が1.4となった。また、ウエットエッチングで除去することができなかった。
比較例6においては、表面の水分吸収量が1.3wt%であるスパッタリングターゲットを用いて成膜され、空孔面積率が15.1%とされたY膜であり、ドライエッチングが進行した際に基板の荒れが斑点状に目視にて認められた。
【0104】
本発明例1-15においては、表面の水分吸収量が1wt%以下であるスパッタリングターゲットを用いて成膜されたY含有膜であって、ドライエッチングレートが0.07~0.91nm/secであり、エッチング選択比が8.7~112.9となった。また、ウエットエッチングレートが0.4~4.7nm/secであり、ウエットエッチングによって除去可能であった。
【0105】
以上のことから、本発明例によれば、積層体に対して高いエッチング選択比を有するとともに、比較的容易に成膜、除去することが可能な膜、この膜を用いたデバイスの製造方法、デバイス、および、この膜を成膜するのに適したスパッタリングターゲットを提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0106】
11 基板
20 積層体
30 連通路
32 エッチストップ層
35 ハードマスク
図1
図2
図3