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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005367
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】殺菌機
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230111BHJP
   H04R 1/12 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A61L2/10
H04R1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107220
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】左近 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】上松 正和
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA25
4C058AA26
4C058BB06
4C058DD05
4C058DD07
4C058DD16
4C058EE03
4C058EE16
4C058KK02
4C058KK12
4C058KK22
4C058KK28
4C058KK42
4C058KK43
(57)【要約】
【課題】設置場所を問わず、安全に且つ容易にマイクヘッドやボトル口部を殺菌可能な殺菌機を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の殺菌機1は、壁面12と底面14を備えて前記底面12と対向する面には開口16を備えたケース10と、前記ケース10内面の壁面12と底面14の少なくともいずれかには180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LED18と、前記ケース10内面の壁面12と底面14の少なくともいずれかの面にはアルミニウム層20と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面と底面を備え、前記底面と対向する面には開口を備えたケースと、
前記ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかには180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LEDと、
前記ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかの面にはアルミニウム層と、
を備えることを特徴とする、殺菌機。
【請求項2】
前記アルミニウム層は、
予め定められた表面積の領域に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が前記領域の表面積に対して0.05%以下であり、
前記領域内に存在する晶出物の総表面積が前記領域の表面積に対して2%以下であり、
前記晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、
前記領域の表面粗さRaが20nm未満である、
紫外線反射材用アルミニウム箔であることを特徴とする、
請求項1記載の殺菌機。
【請求項3】
前記ケースは、高さ50mm以上200mm以下、幅50mm以上100mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2記載の殺菌機。
【請求項4】
前記ケースは、開口を正面から見た平面視において、円形、多角形、角がテーパー状又はR状に形成された多角形、不定形状等の任意の形状のいずかであることを特徴とする、請求項1~3いずれか記載の殺菌機。
【請求項5】
前記深紫外線波長の出力強度は、合計で1mW以上30mW以下であることを特徴とする、請求項1~4いずれか記載の殺菌機。
【請求項6】
前記壁面に、複数の凸部をさらに備えることを特徴とする、請求項1~5いずれか記載の殺菌機。
【請求項7】
前記ケース底面にタクトスイッチと、
前記ケース内には前記タクトスイッチが押されたことをトリガーに前記紫外線LEDを点灯し、前記タクトスイッチが押されていない状態になると前記紫外線LEDを消灯する様に制御するマイコンと、
をさらに備える、請求項1~6いずれか記載の殺菌機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌機に関し、特にマイクやボトルを殺菌するための殺菌機に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ店や宴会場、イベント等で使用されるマイクは、不特定多数の人の手に触れられ、特にマイクヘッドには、マイクの使用者が歌ったり話したりした際に飛散した唾等が付着する。通常、マイクの持ち手部は単純な構造であり、表面を除菌シート等で拭けば容易に殺菌ができるが、マイクヘッドは一般的に金属の網目構造を有しており、この網目の隙間を除菌シート等で拭くのは困難である。また、飲食店等で提供される酒等の飲料においては、店員が注文の度にボトルの栓を開けてグラスに所定量を注ぎ、再びボトルの栓を閉めて保管しておくことが多々ある。店員が接客や料理の調理中にボトルを開ける事も多く、また一般にはボトル口が汚れていると中の飲料も汚染されてしまう可能性が高いものと言われており、ボトルの栓を開封する度にボトル内に残った飲料が汚染されてしまうリスクがある。
【0003】
近年、菌やウイルスの蔓延に対して消費者は警戒感を感じており、他者が使用したマイクや開封されたボトルの口まわり(栓をふくみ、以下「ボトル口部」という)の衛生面に不安を感じる者もいる。そこで、紫外線(UV)によりマイク等を消毒する殺菌機が開発されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登3231686
【特許文献2】実登3157617
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献記載の殺菌機では、大型であり設置場所が固定されてしまうために、使用者がいちいち殺菌機の設置場所までマイクやボトルを持ち運ぶ必要がある。
カラオケボックス等においてマイクを使用する者が複数いる場合、使用者が次の使用者に渡す前に離席して殺菌機までマイクを持ち運び、殺菌後にまた離席してマイクを取りに行くのは非常に煩雑であり、また何度も行き来しては場を盛り下げてしまうという心情によって、次第に殺菌機を使用しなくなってしまうおそれがある。同様に、飲食店等でボトル口部を殺菌するにしても、ボトルを立てて収容できる様な大きな殺菌機を設置する場所が確保できるとは限らず、一方でボトルを横に寝かせて収容すると、ボトルの栓が緩むなどしていた場合に内容物がこぼれてしまうおそれがあるため、店員がいちいちボトルを殺菌するのを面倒に感じて結局殺菌機を使用しなくなってしまうおそれがある。また、手で保持した状態で使用するハンディ型の紫外線殺菌機の使用も考えられるが、紫外線が視認できてしまうために、安全性の問題から一般の使用者の健康を害するおそれがあり、普及に障壁があるという問題があった。
そこで本発明は、設置場所を問わず、安全に且つ容易にマイクヘッドやボトル口部を殺菌可能な殺菌機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の殺菌機は、壁面と底面を備え、前記底面と対向する面には開口を備えたケースと、前記ケース内の壁面と底面の少なくともいずれかには180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LEDと、前記ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかの面にはアルミニウム層と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の殺菌機が上記構成であることで、ケースに設けられた開口にマイクヘッドやボトル口部を挿入し、ケース内で深紫外線波長の光をマイクヘッドやボトル口部に照射してこれらの表面に付着した菌を殺菌することができる。また、ケース内の壁面と底面の少なくともいずれかの面にアルミニウム層が備えられていることで、このアルミニウム層に照射された深紫外線波長の光が反射してマイクヘッドやボトル口部に再照射される。すなわち、ケース内が狭い空間であっても、ケース内の紫外線密度が高まり、効率的にマイクヘッドやボトル口部に対して四方から深紫外線波長の光が照射される。これによりマイクヘッドやボトル口部がケース内に収容されさえすればケースのサイズは過剰に大きくする必要がなく、マイクヘッドやボトル口部を覆う様に被せておくだけで容易に殺菌を行うことができると共に、その設置場所も問わない。また開口以外は、ケースは壁面と底面で閉鎖された状態となるため、開口にマイクヘッドやボトル口部を挿入した状態ではケース内面は四方が塞がれた状態となり、深紫外線波長の光が直接人の目や肌に当たらないので安全に使用することができる。
【0008】
深紫外線波長を発光する紫外線LEDは、180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光し、当該波長は非常に強力な殺菌能力を有するため、様々な菌の殺菌やウイルスの不活化効果が得られる。さらに紫外線LEDは、光管型の紫外線灯に比べて小型であるためにケース全体のサイズを大きくする必要もなく、大掛かりな電源も不要であるため、設置の場所は問わない。
従って、本発明の殺菌機は、設置場所を問わず、安全に且つ容易にマイクヘッドやボトル口部を殺菌可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る殺菌機の一例を示す模式的な図である。
図2】実施形態に係る殺菌機の使用例を示す模式的な図である。
図3】実施形態に係る殺菌機の外観の例を示す模式的な図である。
図4】実施形態に係る殺菌機の断面の例を示す模式的な図である。
図5】実施形態に係る殺菌機の内部の凸部形状の例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0011】
本発明の殺菌機は、壁面と底面を備え、底面と対向する面には開口を備えたケースと、ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかには180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LEDと、ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかの面にはアルミニウム層と、を備える。
【0012】
前記アルミニウム層は、予め定められた表面積の領域に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が前記領域の表面積に対して0.05%以下であり、前記領域内に存在する晶出物の総表面積が前記領域の表面積に対して2%以下であり、前記晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、前記領域の表面粗さRaが20nm未満である、紫外線反射材用アルミニウム箔であることが好ましい。
【0013】
前記ケースは、高さ50mm以上200mm以下、幅50mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0014】
前記ケースは、開口を正面から見た平面視において、円形、多角形、角がテーパー状又はR状に形成された多角形、不定形状等の任意の形状のいずかであることが好ましい。
【0015】
前記深紫外線波長の出力強度は、合計で1mW以上30mW以下であることが好ましい。
【0016】
前記壁面に、複数の凸部をさらに備えてもよい。
【0017】
前記ケース底面にタクトスイッチと、前記ケース内には前記タクトスイッチが押されたことをトリガーに紫外線LEDを点灯し、前記タクトスイッチが押されていない状態になると紫外線LEDを消灯する様に制御するマイコンをさらに備えてもよい。
(実施形態1)
以下、各構成について適宜図1及び図2を参照して詳述する。
<殺菌機>
【0018】
図1(a)は、円柱状の殺菌機1を、開口16を上にした状態で置いたときの斜視図であり、図1(b)は図1(a)の開口16側からみた平面視図である。図1(a)と図1(b)に示す様に、本発明の殺菌機1は、壁面12と底面14を備え、底面14と対向する面には開口16を備えたケース10である。ケース10内面の壁面12と底面14の少なくともいずれかには180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LED18を備える。ケース10内面の壁面12と底面14の少なくともいずれかの面にはアルミニウム層20を備える。
【0019】
図2は、殺菌機1の開口16にマイクヘッド3(図2(a))やボトル口部5(図2(b))を挿入した状態を示す図である。図2に示す様に、殺菌機1の開口16には、マイクヘッド3やボトル口部5が挿入可能となっており、殺菌機1の開口にマイクヘッド3やボトル口部5を挿入した状態で、ケース10内面に設けられた180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LED18が点灯すると、マイクヘッド3やボトル口部5の表面に深紫外線波長の光が照射される。さらに殺菌機1の壁面12と底面14の少なくともいずれかに備えられたアルミニウム層20に深紫外線波長の光が照射されると、この光がアルミニウム層20によって反射されて再びマイクヘッド3やボトル口部5の表面に深紫外線波長の光が照射される。すなわち、閉ざされた空間で深紫外線波長の光が高密度化してマイクヘッド3やボトル口部5に照射され、アルミニウム層を備えない場合に比して、短時間で満遍なく効率よくマイクヘッド3やボトル口部5を殺菌することができる。
さらに、殺菌機1は、開口16にマイクヘッド3やボトル口部5を挿入するだけでよく、殺菌機1には必ずしもドアや固定治具も必要ないため殺菌機の使用が容易であり、且つ使用者が殺菌されたマイクやボトルを再使用することも容易である。すなわち、使用者が殺菌機の使用を面倒に感じることを防ぐという効果もある。また、殺菌機1の開口16にマイクヘッド3やボトル口部5が挿入された状態では、開口16の大部分が塞がれた状態となるため、深紫外線波長の光がケース外に漏れにくくなり、安全に殺菌機1を使用することができる。
<ケース>
【0020】
本発明においてケースとは、壁面と底面を備え、底面と対向する面には開口を備えるものである。マイクヘッド部やボトル口部を挿入可能なサイズの開口が形成されていれば開口やケースの形状は特に限定されないが、底面を正面から見た平面視において、円形、多角形、角がテーパー状又はR状に形成された多角形、不定形状等の任意の形状を採用することができる。より好ましくは、円形、角がR状に形成された三角形、四角形及び六角形のいずれかであると、様々なマイクヘッドやボトルのキャップの形状にも適合しやすいため好ましい。開口は、底面と対向する面の全てが開口となっていてもよいが、底面と対向する面の一部に開口を備えていてもよい。また壁面を正面から見た平面視において、多角形、角がR状に形成された多角形、円形の一部を切り欠いた略円形、不定形状の任意の形状、及びこれらを組み合わせた形状を採用することができる。好ましくは、開口を正面から見た平面視において円形で且つ壁面を正面から見た平面視において四角形である円柱形状(図3(a))、開口を正面から見た平面視において四角形で且つ壁面を正面から見た平面視において四角形である四角柱形状(図3(b))、開口を正面から見た平面視において三角形で且つ壁面を正面から見た平面視において四角形である三角柱形状(図3(c))、開口を正面から見た平面視において六角形で且つ壁面を正面から見た平面視において四角形である六角柱形状(図3(d))、のいずれかであることが、ケースの持ちやすさや深紫外線波長の光の反射効率の良さの観点で好ましい。より好ましくは、開口を正面から見た平面視において六角形で且つ壁面を正面から見た平面視において四角形である六角柱形状(図3(d))であると、ケースを倒しても転がりにくいため、テーブル等の高い場所から転がって床に落下して損傷することを防ぐことができると共に、ケース内における不要な空間(デッドスペース)を少なくすることができる。
【0021】
また開口の形状も、マイクヘッドやボトル口部を挿入可能な形状であればよく、例えば、円形、多角形、角がテーパー状又はR状に形成された多角形、不定形状等の任意の形状、及びこれらを組み合わせた形状を採用することができる。より好ましくは、円形、角がR状に形成された三角形、四角形及び六角形のいずれかであると、様々なマイクヘッドやボトルのキャップの形状にも適合しやすいため好ましい。
【0022】
また、開口を正面から見た平面視において、ケースの輪郭と開口とは同一の形状であってもよいが、異なる形状であってもよい。例えば、ケースの形状が三角柱であって開口は円状(図3(e))であっても、ケースの形状が四角柱で開口は円状(図3(f))であっても、ケースの形状が六角柱で開口は円状(図3(g))であってもよい。
【0023】
ケースの大きさは特に限定されないが、マイクヘッドを殺菌する目的であれば、一般的なハンドマイクのマイクヘッドが収容可能な大きさであることが好ましく、例えば開口を下に向けた状態として、高さ50mm以上200mm以下、幅50mm以上100mm以下であることが好ましい。また、ピンマイクやインカムマイク等の小型のマイクに特化した殺菌機とする場合には、例えば開口を下に向けた状態として、高さ20mm以上50mm以下、幅20mm以上50mm以下であってもよい。
【0024】
またボトル口部を殺菌する目的であれば、例えば開口を下に向けた状態として、高さ30mm以上100mm以下、幅30mm以上100mm以下であることが好ましい。
【0025】
さらに、開口の大きさは特に限定されないが、マイクヘッドを殺菌する目的であれば開口の中で最も狭い部分の直径が50mm以上80mm以下であることで、一般的なハンドマイクが挿入可能であるため好ましい。また、ピンマイクやインカムマイク等の小型のマイクに特化した殺菌機とする場合には、開口の中で最も狭い部分の直径が20mm以上50mm以下であってもよい。
【0026】
さらに、ボトル口部を殺菌する目的であれば、開口の中で最も狭い部分の直径が30mm以上70mm以下であることで、例えば樹脂キャップが取り付けられたペットボトルから、装飾が施された特異な形状のガラス栓が取り付けられたガラス瓶まで、様々な大きさや形状のボトル口部でも挿入可能であるため好ましい。
【0027】
マイクヘッドが収容されればケースの開口からケース内部の奥行き方向の大きさ(深さ)は特に限定されないが、マイクの殺菌用途においてマイクヘッドのみを殺菌するためであれば50mm以上70mm以下が好ましく、マイクヘッドからマイクの持ち手の一部又は全部を収容するのであれば70mm以上200mm以下であることが好ましい。
【0028】
ケースの材質は特に限定されず、樹脂、金属、ゴム、紙、等の任意の材料を使用することができる。好ましくは、ケースは樹脂により構成されていると、所望の形状に形成することが容易であり、且つマイクヘッドやボトルのキャップをケースの開口に挿入しても形状を安定的に保持することができる。
より好ましくは、ケースの材質は、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、ポリカーボネートとABSのアロイのいずれかであると、成形性がよく、使用時に落下しても大きな損傷を起こさない程度の十分な強度も得られる。
<紫外線LED>
【0029】
本発明の殺菌機は、ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかに180nm以上285nm以下の深紫外線波長を発光する1又は2以上の紫外線LEDを備える。180nm以上285nm以下の深紫外線波長の光は、UVC光とも呼ばれ、近年では菌の殺菌やウイルスの不活化に効果があると報告されている。すなわち、マイクヘッドやボトル口部に付着した菌やウイルスに対して、殺菌及びウイルスの不活化効果を有する。なお、ウイルス不活性化という用語は菌の殺菌とは意味が異なるが、以降は簡便のために菌の殺菌とウイルス不活性化とを併せて殺菌と呼ぶものとする。また、本発明において殺菌とは、菌の塊(コロニー)を構成するうちの一部であっても全部であっても、生きた菌数を減らす(活性を有するウイルス数を減らす)ことを意味しており、菌やウイルスの生存確率を厳密に定義したものではない。すなわち、本発明において定義される殺菌とは、殺菌、除菌、滅菌及び消毒のいずれの意味も含まれる。本発明の殺菌機の殺菌対象の菌としては、大腸菌やブドウ球菌をはじめとして、RSウイルス、インフルエンザウイルスやコロナウイルスの他、アルコールに対しても高い抵抗を示すノロウイルスやロタウイルス等が挙げられる。いずれの菌やウイルスも、180nm以上285nm以下の深紫外線波長の光により殺菌されることが報告されている。
【0030】
紫外線LEDによる深紫外線波長の出力強度は、所望とする殺菌能力にもよるが、合計で1mW以上30mW以下であることが好ましい。なお、本発明において深紫外線波長の出力強度とは、紫外線LEDの消費電力ではなく、180nm~285nm波長域の紫外線の出力強度であり、市販の紫外線測定器による紫外線密度の測定値から算出することが出来る値である。例えば、1灯の紫外線LEDから2.0cm離した距離において紫外線測定器の測定プローブを紫外線LEDと垂直に対向させて測定した紫外線密度の値が所定の値(mW/cm)である場合、この紫外線密度の値に37.7を乗じた値が紫外線LEDの出力強度(mW)として求められる。これは、紫外線LEDは120度の照射角を有しており、頂点に紫外線LED、ここから2.0cm離れた位置に紫外線LEDから照射された深紫外線光の照射面積を持つ円と見立てると、高さを2.0cmとした頂角120度の円錐の形状とみなされるためである。従って、紫外線LEDから2.0cm離れた場所では深紫外線波長の光は37.7cmの範囲で照射されており、紫外線LEDの出力強度は紫外線LEDから0cm距離における紫外線密度であるから、紫外線LEDから2.0cm離れた場所での紫外線密度の値に37.7を乗じることで、1灯あたりの紫外線LEDの出力強度が求められる。
【0031】
紫外線LEDによる深紫外線波長の出力強度が1mW未満であると、ケース内に存在する空気により減衰して、マイクヘッドやボトル口部の表面まで深紫外線波長の光が届かないおそれがある。また深紫外線波長の出力強度が30mWを超えると、それだけの出力強度を有する紫外線LEDは消費電力が極めて高いためにAC電源が必要となって設置場所を固定する必要が生じたり、ケースの破損によって深紫外線波長の光が視認可能となった場合に使用者に危険性が生じたり、出力強度が高くなるほど紫外線LEDの発熱が強くなるために使用者に危険が生じたりするおそれがある。
【0032】
紫外線LEDの灯数は、所望とする殺菌力と紫外線LEDの点灯の許容時間にもよるが、1灯以上3灯以下の範囲であると、電池(乾電池、充電池を含む)によって稼働可能であるため好ましい。紫外線LEDは定格電圧(順電圧)として1灯あたり3Vから7V程度が必要である。2灯以上の紫外線LEDを用いる場合、電源に対してこれらの紫外線LEDを並列に接続すると、紫外線LEDの僅かな品質ムラによる内部抵抗の違いに起因して、紫外線LEDの出力強度にムラが生じてしまうため、複数の紫外線LEDは電源に対して直列に接続することが好ましい。この場合、紫外線LEDの個数を1灯以上3灯以下とすることで、電源は紫外線LED1灯のときに定格電圧最大7V、紫外線LED3灯のときに定格電圧最大21Vが必要となる。充電池の中でも特に電圧の低いものは1個で1.2Vであり、充電池2個を直列接続にしても2.4Vであるから、この充電池2本を使用して最大でも10倍昇圧して24Vまでなら安全に紫外線LEDを点灯するのに必要な定格電圧を得ることができる。また一般的な乾電池は1個1.5Vであるから、この乾電池を2本使用した場合には、1.2Vの充電池を2本使用するよりも更に安定して21Vまでの定格電圧を得ることができるし、紫外線LEDを2灯とすれば、紫外線LED3灯のときよりもより安定して定格電圧を得ることができる。なお、使用する電池の10倍を超える昇圧を行うと、電池にかかる負荷も高く昇圧効率も低くなるため、安定して定格電圧を得られないおそれがあり、紫外線LEDを4灯以上とする場合は、電池の数を少なくとも4個以上にする必要があり、殺菌機が大型化してしまうおそれがある。さらに紫外線LEDの灯数を増やすほど、後述する、アルミニウム層を設置可能な面積も減ってしまい、反射効率の向上に制限がでてしまう。また、紫外線LEDを直列に接続する場合には1灯でも紫外線LEDの不良があると他の紫外線LEDも点灯しなくなるために灯数が増える分だけ、殺菌機として使えなくなるリスクが上がる。すなわち、紫外線LEDは1灯でも2灯以上でもよいが、製品としての故障や欠陥が生じるリスクを鑑みれば殺菌に必要最低限の灯数の紫外線LEDだけ備えればよく、2灯又は3灯であることが好ましい。
【0033】
さらに、マイクヘッドやボトル口部に対して、その周囲全体に深紫外線波長の光が照射されることが好ましいため、紫外線LEDは2灯又は3灯であれば、マイクヘッドやボトル口部の周囲への深紫外線波長の光の照射ムラが抑制されるため好ましい。紫外線LEDは通常、発光照射角が120~121度のものが一般に流通している。よって、マイクヘッドやボトル口部の周囲に対して、180度間隔で計2灯の紫外線LEDを設置(図4(a))して照射距離を十分に取るか、120度間隔で計3灯の紫外線LEDを設置(図4(b))することで、マイクヘッドやボトル口部に対して、その周囲全体に深紫外線波長の光を照射することができる。
なお図4は、中空の六角柱形状の殺菌機1において、マイクヘッド3を挿入した状態での開口16側からみた図である。図4(a)では、六角形のうち対向する一対の角にそれぞれ紫外線LED18を備えており、図4(b)では、六角形の3つの角に等間隔に紫外線LED18を備えている。それぞれの殺菌機1の壁面12にはアルミニウム層20を備えている。紫外線LED18は照射角が120度程度であるので、紫外線LED18が点灯すると、紫外線LED18を備える角と両側に接する壁面12までの全幅に亘る範囲で深紫外線波長の光22が照射される。すなわち、紫外線LED18から出力される深紫外線波長の光22がマイクヘッド3に照射され、マイクヘッド3から反射される深紫外線波長の光22や、マイクヘッド3に照射されなかった深紫外線波長の光22は、アルミニウム層20に照射されて再反射される。この再反射した深紫外線波長の光22は、マイクヘッド3に再び照射され、マイクヘッド3の全周にわたって深紫外線波長の光22が照射される。
すなわち、紫外線LEDは2灯又は3灯であると、効率よくマイクヘッドやボトル口部の周囲全体に深紫外線波長の光を照射することができる。
【0034】
紫外線LEDが2灯以上である場合には、深紫外線波長の出力強度は、合計で1mW以上30mW以下であることが好ましい。より好ましくは、紫外線LEDが2灯のときに深紫外線波長の出力強度は2灯合計で2mW以上20mW以下、紫外線LEDが3灯のときに深紫外線波長の出力強度は3灯合計で3mW以上30mW以下、であることが好ましい。
【0035】
紫外線LEDは、ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかに備わっていればよく、壁面と底面の両方に備わっていてもよいが、使用者が紫外線LEDの発光を直接的に視認できない様に、紫外線LEDは壁面にのみ備わっていることが好ましい。より好ましくは、ケース内面の壁面のうち、底面の近傍に紫外線LEDを備えることで、マイクヘッドやボトル口部を開口から挿入した際に、紫外線LEDの発光が開口から漏れ出ることをより抑制することができるため好ましい。
<アルミニウム層>
【0036】
本発明においてアルミニウム層は、ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかの面に備えられる層である。アルミニウム層は、アルミニウムを主成分としていればよく、アルミニウム箔、アルミニウム板、アルミニウム蒸着等のいずれも含まれる。
【0037】
アルミニウムは紫外線の反射性が高いため、マイクヘッドやボトル口部に照射されて底面や壁面に反射した深紫外線波長の光を効率的に再びマイクヘッドやボトル口部に照射することができる。すなわち、殺菌光源となる紫外線LEDの見かけ上の出力を向上することができると共に、ケース内の広い領域に深紫外線波長の光を当てることができる。
【0038】
特にアルミニウム層としては、予め定められた表面積の領域に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が前記領域の表面積に対して0.05%以下であり、領域内に存在する晶出物の総表面積が領域の表面積に対して2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、領域の表面粗さRaが20nm未満である、紫外線反射材用アルミニウム箔を用いることが好ましい。さらに、この紫外線反射材用アルミニウム箔は、圧延方向と垂直な方向の表面粗さRzJISが100nm以下であることが好ましい。
【0039】
上記の紫外線反射材用アルミニウム箔において、予め定められた表面積の領域とは、アルミニウム箔の表面全体であってもよく、また一部であってもよい。アルミニウム箔の表面とは、アルミニウム箔の外観において目視、顕微鏡等によって確認され得る表面をいう。よって、予め定められた表面積の領域とは、例えば顕微鏡などで観察したときの観察視野における領域である。つまり、アルミニウム粒子、晶出物に関する上記パラメータ、及び表面粗さRa,RzJISは、アルミニウム箔の表面を顕微鏡などで観察したときに、それぞれ予め定められた表面積の観察視野内で測定される。アルミニウム粒子の総表面積は、例えば走査型電子顕微鏡の予め定められた観察視野内で観察、測定される。晶出物の総表面積及び平均表面積は、例えば500倍の倍率において光学顕微鏡の予め定められた観察視野内で観察、測定される。表面粗さRa,RzJISは、例えば原子間力顕微鏡の予め定められた観察視野内で測定される。予め定められた表面積の領域は、アルミニウム粒子の総表面積を測定する際の観察視野、晶出物の総表面積及び平均表面積を測定する際の観察視野、及び表面粗さRa,RzJISを測定する際の観察視野のそれぞれを含む領域である。
【0040】
上記アルミニウム粒子は、主にアルミニウム(Al)からなる粒子である。アルミニウム粒子の外径は、例えば数百nm~数μmである。アルミニウム粒子は、アルミニウム箔の表面に圧入されているか、又は表面に付着している。アルミニウム粒子は、アルミニウム板からアルミニウム箔を製造するに際して、冷間圧延工程にて生成される。アルミニウム粒子の総表面積とは、観察領域の面に対して成す角度が90°±2°の方向(略垂直な方向)から観察領域を見たときに観察されるアルミニウム粒子の当該方向に垂直な平面への投影面積の総和である。
【0041】
上記晶出物とは、例えば、Al‐鉄(Fe)系、Al‐Fe‐マンガン(Mn)系、Al‐Mg‐珪素(Si)系、Al‐Mn系等の種々の金属間化合物をいう。晶出物の総表面積とは、観察領域を有する面に対して成す角度が90°±2°の方向(略垂直な方向)から観察領域を見たときに確認される晶出物の当該方向に垂直な平面への投影面積の総和である。上記晶出物の1個当たりの平均表面積とは、晶出物の上記総表面積を、観察領域内に存在する晶出物の個数で除したものである。
【0042】
上記紫外線反射材用アルミニウム箔の表面粗さRaはJIS B0601(2001年版)及びISO4287(1997年版)で定義されている算術平均粗さRaを、面に対して適用できるように三次元に拡張して算出された値である。
【0043】
上記紫外線反射材用アルミニウム箔は、その製造工程において冷間圧延されているため、このアルミニウム箔の表面には、圧延方向に沿って延びる圧延ロールの転写筋が形成されている。一般に、アルミニウム箔の表面には、転写筋に起因した凹凸が形成されている。一定以上の大きさの転写筋からなるアルミニウム箔の表面の凹凸は、紫外線の反射角度に異方性をもたらし、反射光の乱反射を引き起こす。そのため、一般的にアルミニウム箔において一定以上の大きさの転写筋が形成されている部分は、紫外線に対する反射率が低い。このような圧延ロールの転写筋に起因する凹凸は、圧延方向に対して垂直な方向、すなわちTD方向の表面粗さRzJISの値として評価することができる。
【0044】
上記紫外線反射材用アルミニウム箔は、上記観察領域において、圧延方向と垂直な方向の表面粗さRzJISが100nm以下であるのが好ましい。より好ましくは、上記観察領域のRzJISは80nm以下である。なお、垂直な方向の表面粗さRzJISは、垂直な方向に沿った断面における2次元でのRzJIS値をJIS B0601(2001年版)及びISO4287(1997年版)に基づいた評価方法で測定される値である。なお、上記の表面粗さRaとRzJISを得る方法としては、物理的な研磨、電解研磨、化学研磨等の研磨加工、あるいは、表面が鏡面状態である圧延ロールを用いた冷間圧延、等がある。表面が鏡面状態である圧延ロールを用いた冷間圧延については後述する。
【0045】
紫外線反射材用アルミニウム箔の厚みは4μm以上300μm以下であることが好ましい。紫外線反射材用アルミニウム箔の厚みが4μm未満であると、アルミニウム箔として機械的強度を維持することができず、製造時のハンドリング等によってアルミニウム箔の表面にシワが生じる。アルミニウム箔の厚みが300μmを超えると、アルミニウム箔の重量が増大するだけでなく、成形等の加工に制限が加えられるので好ましくない。さらに好ましくは、アルミニウム箔1の厚みは6μm以上250μm以下である。アルミニウム箔の厚みを上記範囲にするためには、一般的なアルミニウム箔の製造方法に従って鋳造と圧延を行えばよい。
【0046】
上記紫外線反射材用アルミニウム箔の組成は特に限定されないが、Feの含有量は0.001%質量以上0.5質量%以下であることが好ましい。Feはアルミニウムへの固溶度が小さいため、アルミニウムの鋳造時にFeAl等の金属間化合物が晶出しやすくなる。これらの晶出物は、アルミニウム素地よりも紫外線の反射率が低く、アルミニウム箔としての紫外線反射率を低下させる原因になる。Feの含有量が0.5質量%以上になると、添加しているFeが全て晶出した場合、Al‐Fe系金属間化合物としてのFeAlの晶出量が1.2質量%を超えて存在することになり、紫外線全反射率が低くなる傾向がある。このため、Feの含有量を0.5質量%以下にするのが望ましい。また、Feの含有量が0.001質量%未満であると、アルミニウム箔の強度が低下する傾向がある。
【0047】
また、上記紫外線反射材用アルミニウム箔においてMnの含有量は0.5質量%以下であることが好ましい。Feと同様にMnもアルミニウムへの固溶度が小さいため、アルミニウムの鋳造時にAl‐Fe‐Mn系の化合物等が晶出しやすくなる。Al‐Fe‐Mn系の晶出物は、Al‐Fe系の晶出物よりも微細であるが、これらの晶出物は、アルミニウム素地よりも紫外線の反射率が低く、アルミニウム箔としての紫外線反射率を低下させる原因になる。マンガンの含有量が0.5質量%以上になると、添加しているMnが全て晶出した場合、Al‐Fe‐Mn系金属間化合物が1.5質量%を超えて存在することになり、紫外線の反射率が低くなる傾向がある。このため、Mnの含有量を0.5質量%以下にするのが望ましい。
【0048】
さらに、上記紫外線反射材用アルミニウム箔においてSiの含有量は0.001質量%以上0.3質量%以下であることが好ましい。Siはアルミニウムへの固溶度が大きく晶出物を形成し難いため、アルミニウム箔において晶出物を生成させない程度の含有量であれば紫外線の反射率を低下させることがない。また、Siを含むと固溶強化によってアルミニウム箔の機械的強度を向上させることができるので、厚みが薄い箔の圧延を容易にすることができる。Siの含有量が0.001質量%未満では、上述の効果を十分に得られない傾向にある。Siの含有量が0.3質量%を超えると、粗大な晶出物が発生しやすくなり、反射特性が低下するだけでなく、結晶粒の微細化効果も損なわれるため、強度と加工性も低下する傾向にある。
【0049】
上記紫外線反射材用アルミニウム箔においてMgの含有量は3質量%以下であることが好ましい。Mgはアルミニウムへの固溶度が最大で18質量%と大きく、晶出物の発生が極めて少ないため、アルミニウム箔の反射特性に大きな影響をおよぼすことなく、アルミニウム箔の機械的強度を改善することができる。しかし、Mgの含有量が3質量%を超えると、アルミニウム箔の機械的強度が高くなりすぎるので、アルミニウム箔の圧延性が低下する傾向がある。アルミニウム箔の好ましい反射特性と機械的強度とを兼ね備えるためには、Mgの含有量を2質量%以下にすることがさらに好ましい。
【0050】
なお、上記紫外線反射材用アルミニウム箔は、上記の特性と効果に影響を与えない程度の含有量で、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、ビスマス(Bi)等の元素を含んでいてもよい。
【0051】
上記紫外線反射材用アルミニウム箔は、紫外線反射率が特に高いため、より効率的にマイクヘッドやボトル口部に深紫外線波長の光の反射光を照射することができるため、ケース内の深紫外線波長の光の密度を高めて殺菌効率を高めることができる。また、マイクヘッドやボトル口部において、紫外線LEDから出力される深紫外線波長の光が直接照射されない領域であっても、上記紫外線反射材用アルミニウム箔によって反射された深紫外線波長の光を照射することができる。すなわち、上記紫外線反射材用アルミニウム箔により、マイクヘッドやボトル口部の全周に亘って満遍なく深紫外線波長の光を照射することができる。
【0052】
更に、上記紫外線反射材用アルミニウム箔の表面には、ガラスコート、シリコーン組成物及びフッ素樹脂の少なくともいずれかを含む、保護層を表面に備えていることが好ましい。これにより、高い紫外線反射率のみならず、強度や耐水性や耐傷性を備えることができる。
アルミニウム層は、ケース内面の壁面と底面の少なくともいずれかの面に備えられていれば、アルミニウム層を全く備えない殺菌機よりも、効率よく殺菌効果を得ることができるが、好ましくは、ケース内面の壁面と底面のうち、紫外線LEDの発光部以外の全ての面にアルミニウム層を備えることが好ましい。これにより、より高い殺菌効果を期待することができる。
<タイマー>
【0053】
本発明の殺菌機には、さらにタイマーを備えていてもよい。タイマーは、紫外線LEDの点灯時間を制御可能となっていればよく、所定の時間が経過したときに紫外線LEDを消灯する様に構成されていることが好ましい。タイマーによる紫外線LEDの消灯時間は、所望とする殺菌能力にもよるが、30秒以上10分以下の範囲であることが好ましい。30秒未満であると、紫外線LEDの灯数や出力強度によらず、十分にマイクヘッドやボトル口部全体を殺菌できないおそれがある。また10分を超えると、紫外線LEDが発熱して発光効率が落ちてしまったり、殺菌途中でマイクを使用したりボトルを開封するために殺菌を中断する必要がある場合に使用者が全く殺菌できていないという不安に陥るおそれがある。より好ましくは、タイマーは1分以上3分以下であることで、十分な殺菌を実現すると共に、殺菌したマイクやボトルを速やかに再使用することができる。タイマーが1分以上3分以下に設定されていると、例えばマイクヘッド殺菌用途において、カラオケにおいて2本のマイクを複数人で使いまわす場合に、凡そ1曲が終了する前に殺菌が完了することができる。同様に、ボトル口部の殺菌用途において、酒等の飲料の注文があってから次の注文が来るまでの間に殺菌を完了することができる。
【0054】
なお、タイマーの設定時間は、深紫外線波長の出力強度と紫外線LEDの灯数、殺菌対象のマイクやボトルの材質によって任意の設定時間にすることができる。
例えば、1mW出力の紫外線LEDを1灯使用し、樹脂製のマイクやボトルを殺菌する場合は10分、同条件で1mW出力の紫外線LEDを2灯使用する場合は5分、1mW出力の紫外線LEDを2灯使用して金属製のマイクやガラス製のボトルを殺菌する場合は3分、3mW出力の紫外線LEDを3灯使用して金属製のマイクやガラス製のボトルを殺菌する場合は30秒、等の任意の時間に設定することができる。
タイマーはタイマーICであっても、30秒以上10分以下の電圧出力が出来る様にプログラミングされたマイコンであってもよい。
【0055】
タイマーのトリガーはスイッチであっても、電池の挿入や外部電源の接続であっても、いずれでもよいが、好ましくはスイッチをトリガーにタイマーが起動して30秒以上10分以下の任意の時間でオフとなる様に構成されていることが好ましい。
【0056】
タイマーのトリガーとなるスイッチの種類は特に限定されず、タクトスイッチ、オルタネイトスイッチ、リードスイッチ、照度センサーによるスイッチ、振動センサーによるスイッチ、静電容量式スイッチ等の公知のスイッチを用いることができる。
スイッチは、ケースの外側に設けても、内側に設けてもよい。
こうしたスイッチをトリガーにしてタイマーが起動して紫外線LEDを点灯し、タイマーに設定された所定の時間が経過すると紫外線LEDを消灯する様に構成されていることで、過剰な紫外線LEDの点灯を抑え、電池の消耗を防ぐことができる。
【0057】
<安全機構>
また、一般の客の前での殺菌機の使用に際して、安全機構を更に備えることが好ましい。
180~285nmの波長域は人体に対して、視力低下ややけど、シミ等の懸念があることが知られている。上述したタイマーが作動している間は紫外線LEDも点灯しているが、紫外線LEDは点灯しているかどうか視認では判断しにくいため、意図せずに紫外線LEDが発する光を肉眼で見たり、肌に当ててしまったりするおそれがある。そこで、紫外線LEDが点灯していることを示すために、可視光波長のLEDをケース内の紫外線LEDを備える面側、又はケースの外側に更に備えることで、使用者が紫外線照射中であることを認識可能に構成されていることが好ましい。
【0058】
安全機構としては、ケース内の底面にタクトスイッチを設けることが好ましい。例えば、ケースにマイクヘッドやボトル口部を挿入したときに、マイクヘッドやボトル口部の先端がケースの底面に備えられたタクトスイッチを押下する様に構成することで、タクトスイッチが押されている間だけ紫外線LEDを発光可能に構成することが挙げられる。すなわち、マイクヘッドやボトル口部をケースから抜くと紫外線LEDはオフになり、直接紫外線LEDの発光が肉眼に照射されるおそれがなくなる。
さらに、このタクトスイッチが押されたことをトリガーにして、紫外線LEDを点灯し、タクトスイッチが押されていない状態のときに紫外線LEDを消灯する様に構成してもよい。すなわち、別途のスイッチを設けずとも、マイクヘッドやボトル口部を開口から挿入することで、底面に設けられたタクトスイッチが押下されてタイマーを起動することができる。使用者はただ殺菌機にマイクヘッドやボトル口部を挿入するだけで殺菌を開始することができ、スイッチの押し忘れ等、人為的ミスを防ぐことができる。また、所定時間経過後にタイマーによって紫外線LEDがオフになると共に、殺菌途中でマイクヘッドやボトル口部を抜き取る場合にも、タクトスイッチが押されていない状態となって紫外線LEDがオフになるため、使用者はなんらのスイッチの操作を必要とせずに、殺菌機を使用することができる。
こうしたスイッチと紫外線LEDとタイマーの連動はマイコンにより制御することができる。
【0059】
また、上述したタイマーへのトリガーにリードスイッチを用いる方法として、マイクヘッドやボトル口部の一部に磁石やマグネットを取り付けておき、ケース内にリードスイッチを設けておくことで、マイクヘッドやボトル口部をケースに挿入したときにリードスイッチがオンとなって紫外線LEDもオンになり、マイクヘッドやボトル口部をケースから抜いたときにリードスイッチがオフになって紫外線LEDもオフになる方法を採用することができる。
【0060】
また、照度センサーを用いる方法として、上述の可視光LEDと共に、可視光LEDの照射光を読み取る照度センサーをケース内に設置し、マイクヘッドやボトル口部が挿入されたときには、マイクヘッドやボトル口部による可視光LEDの光の遮断を検知、もしくはマイクヘッドやボトル口部に照射されて反射された可視光を検知することで、マイクヘッドやボトル口部が挿入されていることを検知可能に構成されていてもよい。また、可視光LEDを定期的に消灯と点灯を繰り返させて、その変化を照度センサーで読み取る方法も有効である。すなわち、照度センサーをマイコンによってリアルタイムに監視しておき、このマイコンは、可視光LEDを定期的に消灯と点灯しているにもかかわらず、照度が一定以上のままほとんど変化しないならば明るい環境下でマイクヘッド又はボトル口部が挿入されていないと判定する。一方で照度センサーをマイコンによってリアルタイムに監視し、このマイコンが、可視光LEDを定期的に消灯と点灯しているにもかかわらず、照度が一定以下のまま、ほとんど変化しないならば暗い環境下でマイクヘッド又はボトル口部が挿入されていないと判定する。マイクヘッド又はボトル口部が挿入されていないとマイコンが判断すれば、その時点で紫外線LEDをオフにする。
すなわち、視認用の可視光LEDを利用して、ケースからマイクヘッドやボトル口部が抜かれたかどうかをマイコンによって判断することができる。
【0061】
この可視光LEDを用いた安全機構において、可視光LEDの消灯と点灯のタイミングは任意に設定できるが、より安全のために可視光LEDの消灯と点灯の切り替えを1回あたり10ミリ秒以上500ミリ秒以下の範囲で、且つ1秒間に1回から、1分間に1回の範囲の頻度で行うことが好ましい
<その他の構成>
【0062】
また、上述した構成の他に、ケース内面にはマイクヘッドやボトル口部と、ケース内面との距離を保つための凸部を設けることが好ましい。凸部はケース内面の壁面又は底面、もしくはその両方に設けられていてもよいが、ケース内の壁面からケース内の中心部へ向かって凸形状に形成されていることが好ましい。図5にケース内壁に形成された凸部(24)の一例を示す。図5(a)は殺菌機1を開口16から見た平面視図であり、図5(b)は殺菌機1の斜視図である。この様にケース内の壁面に凸部を有することで、ケース内にマイクヘッドやボトル口部が挿入されると、凸部の先端がマイクヘッドやボトル口部の表面に当接して、マイクヘッドやボトル口部が壁面と接触することを防ぐことできる。すなわち、マイクヘッドやボトル口部によってケース内のアルミニウム層や紫外線LED等に傷が付くことを抑制することができる。また、ケース内面とマイクヘッドやボトル口部の表面との間に距離を保つことができるため、マイクヘッドやボトル口部の表面に対して深紫外線波長の光を広く照射することができると共に、アルミニウム層によって反射が繰り返される深紫外線波長の光の光路とすることができる。従って、マイクヘッドやボトル口部の全周に深紫外線波長の光を照射しやすくすることができる。凸部の個数に制限はないが、好ましくは、凸部は3個以上6個以下であると、マイクヘッドやボトル口部を壁面から離間した状態で安定して保持することができる。より好ましくは、図5に示す様に凸部(24)は3個であることが、最も安定した保持と、深紫外線波長の光の妨げの抑制の観点から好ましい。また、凸部はケース内の壁面から底面の中心方向にまで延びていることが、アルミニウム層や紫外線LEDの保護の観点から好ましい。
【0063】
また、ケース内には、紫外線LEDを点灯するための電源を内蔵していることが好ましい。電源としては、乾電池、充電池、リチウムイオンポリマー電池、太陽電池、キャパシタが挙げられる。一方で、ケース内に電源を備えない場合には、外部のモバイルバッテリーをはじめとする外部電源と接続可能に、ケースに電源端子を備える構成としてもよい。
【実施例0064】
実施例1
樹脂掘削により、直径70mm×高さ90mmの中空円筒状のABS樹脂製ケース(厚さ2mm)を作成した。円筒の天面と底面のうち天面は開口として、底面は高さ2cmの空洞を有する二重底となる様に2枚の円板の仕切り板を用意した。この円筒内の内壁と底面には、予め定められた表面積の領域に圧入もしくは付着しているアルミニウム粒子の総表面積が前記領域の表面積に対して0.05%以下であり、領域内に存在する晶出物の総表面積が領域の表面積に対して2%以下であり、晶出物の1個当たりの平均表面積が2μm以下であり、領域の表面粗さRaが20nm未満である、厚さ200μmの紫外線反射材用アルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製 商品名「ラクサル」)を両面テープにより全面に貼り付けた。このケースの壁面の紫外線反射材用アルミニウム箔上に、ピーク波長275nm波長の出力強度2mWの紫外線LED(定格5.6V、20mA)3灯を、それぞれ均等に120度ずつ離間して内面に向く様に接着剤により配置した。それぞれの紫外線LEDは、底面の縁から1cm離間して配置した。壁面にはさらに、3灯の紫外線LEDのそれぞれの間にABS樹脂製の仕切り板(幅6mm高さ30mm厚さ2mm)を接着剤により貼り付けることで、3個の凸部を設けた。また、青色の可視光LEDをケース内の底面に設け、この可視光LEDと隣接する位置にタクトスイッチを配置した。
【0065】
それぞれの紫外線LEDと可視光LEDを市販のマイコンと、全LEDの点灯に必要な定格電圧を出力する様に設計された昇圧回路に繋げ、マイコンには電源として単3乾電池2本と上述のタクトスイッチを繋げた。マイコンと電源と昇圧回路はケース底面の二重底の中に収容し、仕切り板をネジで固定した。マイコンはタイマー時間を30秒とし、このタイマー時間を経過すると紫外線LEDを消灯する様に設定した。なお、タイマー開始のトリガーは上述の底面に設けたタクトスイッチとした。これにより殺菌機を得た。なお全体の重さは250グラムであった。
【0066】
実施例2
タイマーを3分とした以外は実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0067】
実施例3
タイマーを10分とした以外は実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0068】
実施例4
ケースを円筒状から中空の六角柱形状に変更し、紫外線LEDを2灯として対向して配置し、タイマーを3分とした以外は実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0069】
実施例5
壁面のアルミニウム箔を剥がし、底面のみにアルミニウム箔を設けた以外は実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0070】
実施例6
底面と壁面のアルミニウム箔を、一般の1N30アルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製、厚さ20μm)とし、タイマーを3分とした以外は実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0071】
比較例1
ケースの壁面にも底面にもアルミニウム箔を設けなかった以外は、実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0072】
比較例2
ケースの壁面にも底面にもアルミニウム箔を設けずにタイマーを10分とした以外は、実施例1と同様にして殺菌機を得た。
【0073】
比較例3
市販のマイク殺菌機(SOUND PURE社製 SPC-555)を用意した。なお、本製品の仕様は、ACアダプター(12V1A)稼働であり、重さ900グラム、サイズは77m×195mm×185mmで、光管式4WのUVCランプを備えた壁掛け式の殺菌機であった。タイマーは10分に設定した。
【0074】
(試験例1)
金属筐体製のワイヤレスマイク(パナソニック社製、全長213mm、ヘッド径53mm、ヘッド高さ53mm)を用意し、マイク本体からマイクヘッドを取り外してマイクヘッドの金属網内面側に、2μlの大腸菌液を染み込ませたガーゼをヘッド内天井部とヘッド内側部とで2か所に貼り付け、再びマイク本体にマイクヘッドを取り付けた。
【0075】
その後、それぞれの殺菌機にマイクヘッドを挿入してスイッチを入れて紫外線LEDを点灯させた後、紫外線LED消灯後にガーゼをピンセットで取り、200μlの純水に浸して攪拌し、これを白金耳で取り、大腸菌用の寒天培地に塗り広げた。寒天培地は39℃で7時間培養し、目視によりコロニーの数を計測した。なお、簡便のために1の桁を四捨五入とした。
【0076】
また、殺菌機のスイッチを入れずにそのまま純水で攪拌して培養したものは、1ガーゼあたり190コロニーであった。これから、除菌率を(190×2-(ヘッド天井部ガーゼのコロニー数+ヘッド側部ガーゼのコロニー数))/(190×2)×100により、除菌率を算出した。それぞれのコロニー数と除菌率を表1に示す。
【0077】
(試験例2)
安全性を評価するため、紫外線LED(比較例3の殺菌機の場合は光管)が点灯している間、携帯型のUVC測定器(サトテック紫外線強度計 UVC-254SD ST)のプローブを、マイクヘッドの根元部に当てて紫外線強度を測定した。それぞれの紫外線強度を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示される様に、本発明の殺菌機は最低でも66%以上の除菌率を有し、最高100%の除菌率となった。いずれの実施例も、紫外線LEDを実装したどの比較例の殺菌機よりも高い除菌率が得られることが確認された。特に、紫外線反射材用のアルミニウム箔を用いると、わずか30秒でも71%以上の除菌率が得られた。すなわち、本発明の殺菌機は、設置場所を問わない構造でありながら、マイクヘッドやボトルの口部を殺菌可能であることが示された。またケースの外に深紫外線波長の光が計測器で検知可能なレベルに漏れていることも確認されなかった。さらに、本発明の殺菌機は壁や台などに固定して設置する必要が無く、しかも電源を内蔵していながらも軽量であるために可搬性に優れていた。
また、本発明の殺菌機はマイクヘッドやボトル口部に被せるだけで容易に使用することができた一方、比較例3の殺菌機ではマイクやボトルを設置場所まで持ち歩く必要があり使用が面倒であった。
以上の結果に示される様に、本発明の殺菌機は、設置場所を問わず、安全に且つ容易にマイクヘッドやボトルの口部を殺菌可能である。
(その他の実施形態)
【0080】
上述の実施形態は本発明の例示であって、本発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 殺菌機
3 マイクヘッド
5 ボトル口部
10 ケース
12 壁面
14 底面
16 開口
18 紫外線LED
20 アルミニウム層
22 深紫外線波長の光
24 凸部
図1
図2
図3
図4
図5