(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053723
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】地盤調査支援装置及び地盤調査支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 1/02 20060101AFI20230406BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20230406BHJP
【FI】
E02D1/02
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021162929
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 祐人
(72)【発明者】
【氏名】林 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 沢馬
【テーマコード(参考)】
2D043
5L049
【Fターム(参考)】
2D043AA01
2D043AC01
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】追加で地盤調査を行う地点を、より簡易に得ることができる地盤調査支援装置、及び地盤調査支援プログラムを得る。
【解決手段】地盤調査支援装置10は、調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する取得部11Aと、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する導出部11Bと、導出した3次元位置情報が示す支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定する決定部11Cと、決定した地盤調査の地点を提示する提示部11Dと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する取得部と、
取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する導出部と、
導出した前記3次元位置情報が示す前記支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定する決定部と、
決定した地盤調査の地点を提示する提示部と、
を備えた地盤調査支援装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記3次元位置情報により示される前記支持層の上面の凹凸の度合いが高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定する、
請求項1に記載の地盤調査支援装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記3次元位置情報により示される前記支持層の上面の傾斜度が高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定する、
請求項1又は請求項2に記載の地盤調査支援装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記3次元位置情報と、当該3次元位置情報を導出するために用いた前記2次元位置情報と、が入力情報とされ、結果的に前記3次元位置情報の導出精度を高くすることができた、対応する前記地盤調査の地点が出力情報とされて機械学習された学習済みモデルを用いて、前記地盤調査の地点を決定する、
請求項1に記載の地盤調査支援装置。
【請求項5】
調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、
取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、
導出した前記3次元位置情報が示す前記支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定し、
決定した地盤調査の地点を提示する、
処理をコンピュータに実行させるための地盤調査支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤調査支援装置及び地盤調査支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、追加で地盤調査を実施する地点を合理的に決定するために適用することのできる技術として次の技術があった。
【0003】
特許文献1には、誤差を定量的に評価できるとともに、追加調査の位置や数を合理的に決定することができるようにすることを目的とした地盤調査位置の決定方法が開示されている。この地盤調査位置の決定方法は、地盤調査により取得された離散的な地盤データに基づいて所定エリアの地盤特性の空間分布を推定する場合に、追加の地盤調査の位置を決定する方法とされている。また、この地盤調査位置の決定方法は、事前調査で取得された地盤データを使用して、クリギング手法により所定エリアの地盤特性の空間分布を推定するとともに、その推定誤差の空間分布を算定するステップを備えている。また、この地盤調査位置の決定方法は、交差検証により、推定に使用した地盤データの取得位置の地盤特性を推定して、クリギング手法により推定された地盤特性との誤差の空間分布を算定するステップを備えている。また、この地盤調査位置の決定方法は、クリギング手法により算定された推定誤差と、交差検証により算定された誤差とに基づいて、誤差指標の空間分布を算定するステップを備えている。そして、この地盤調査位置の決定方法は、算定した誤差指標の空間分布に基づいて、追加の地盤調査の位置を決定するステップを備えている。
【0004】
また、特許文献2には、基礎地盤面レベルを精度良く推定することを目的とした調査ボーリングの最適配置法が開示されている。この調査ボーリングの最適配置法は、基礎地盤面レベルと地形面レベルの相関性がある場合に適用される基礎地盤面レベル推定のための調査ボーリングの最適配置法であって、対象領域の真の地形面レベルを取得する手段を備えている。また、この調査ボーリングの最適配置法は、対象領域内での複数の調査ボーリングの位置を設定する手段と、該調査ボーリングの位置からクリッギング推定法により地形面レベルを推定する手段と、を備えている。更に、この調査ボーリングの最適配置法は、推定された地形面レベルと真の地形面レベルの推定誤差を表す目的関数を決定する手段と、前記目的関数を最小にする値の調査ボーリングの位置を最適配置と決定する手段と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-100011号公報
【特許文献2】特開平11-148127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術は、何れも、推定誤差を用いて地盤調査の地点を決定するものとされている。このため、これらの技術では、必ずしも簡易に、追加する地盤調査の地点を決定することができるとは限らない、という問題点があった。
【0007】
本開示は、以上の事情を鑑みて成されたものであり、追加で地盤調査を行う地点を、より簡易に得ることができる地盤調査支援装置、及び地盤調査支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る地盤調査支援装置は、調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する取得部と、取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する導出部と、導出した前記3次元位置情報が示す前記支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定する決定部と、決定した地盤調査の地点を提示する提示部と、を備えている。
【0009】
請求項1に記載の本発明に係る地盤調査支援装置によれば、調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した3次元位置情報が示す支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定し、決定した地盤調査の地点を提示することで、追加で地盤調査を行う地点を、より簡易に得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の本発明に係る地盤調査支援装置は、請求項1に記載の地盤調査支援装置であって、前記決定部が、前記3次元位置情報により示される前記支持層の上面の凹凸の度合いが高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定するものである。
【0011】
請求項2に記載の本発明に係る地盤調査支援装置によれば、3次元位置情報により示される支持層の上面の凹凸の度合いが高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定することで、当該凹凸の度合いは簡易な演算により得ることができる結果、より簡易に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の本発明に係る地盤調査支援装置は、請求項1又は請求項2に記載の地盤調査支援装置であって、前記決定部が、前記3次元位置情報により示される前記支持層の上面の傾斜度が高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定するものである。
【0013】
請求項3に記載の本発明に係る地盤調査支援装置によれば、3次元位置情報により示される支持層の上面の傾斜度が高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定することで、当該傾斜度は簡易な演算により得ることができる結果、より簡易に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0014】
請求項4に記載の本発明に係る地盤調査支援装置は、請求項1に記載の地盤調査支援装置であって、前記決定部が、前記3次元位置情報と、当該3次元位置情報を導出するために用いた前記2次元位置情報と、が入力情報とされ、結果的に前記3次元位置情報の導出精度を高くすることができた、対応する前記地盤調査の地点が出力情報とされて機械学習された学習済みモデルを用いて、前記地盤調査の地点を決定するものである。
【0015】
請求項4に記載の本発明に係る地盤調査支援装置によれば、3次元位置情報と、当該3次元位置情報を導出するために用いた2次元位置情報と、が入力情報とされ、結果的に3次元位置情報の導出精度を高くすることができた、対応する地盤調査の地点が出力情報とされて機械学習された学習済みモデルを用いて、地盤調査の地点を決定することで、過去の実績に基づき、より高精度に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の本発明に係る地盤調査支援プログラムは、調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した前記複数の地点に対応する前記深さ情報及び前記2次元位置情報を用いて、前記対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した前記3次元位置情報が示す前記支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定し、決定した地盤調査の地点を提示する、処理をコンピュータに実行させる。
【0017】
請求項5に記載の本発明に係る地盤調査支援プログラムによれば、調査対象とする領域である対象領域、及び当該対象領域の周辺領域の少なくとも一方の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した3次元位置情報が示す支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定し、決定した地盤調査の地点を提示することで、追加で地盤調査を行う地点を、より簡易に得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、追加で地盤調査を行う地点を、より簡易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態に係る地盤調査支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に係る地盤調査支援装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る地盤調査支援装置で適用されるANAGO(登録商標)の説明に供する時系列順の断面図である。
【
図4】実施形態に係る追加ボーリング地点の決定方法の説明に供する平面図である。
【
図5】実施形態に係るボーリング情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図6】実施形態に係る3次元位置情報データベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態に係る地盤調査支援処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係るボーリング地点提示画面の一例を示す正面図である。
【
図9】実施形態に係る地盤調査支援処理の変形例の説明に供する平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る地盤調査支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】第2実施形態に係る地盤調査支援処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。なお、本実施形態では、本発明の地盤調査としてボーリング調査を適用した場合について説明するが、これに限るものではない。例えば、液状化調査、土質調査、現況敷地調査等の他の地盤調査を本発明の地盤調査として適用する形態としてもよい。
【0021】
[第1実施形態]
まず、
図1、
図2を参照して、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る地盤調査支援装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、
図2は、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。なお、地盤調査支援装置10の例としては、パーソナルコンピュータ及びサーバコンピュータ等の情報処理装置が挙げられる。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る地盤調査支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、キーボードとマウス等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、及び通信インタフェース(I/F)部18を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、及び通信I/F部18はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0023】
記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、地盤調査支援プログラム13Aが記憶されている。地盤調査支援プログラム13Aは、当該プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの当該プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶(インストール)される。CPU11は、地盤調査支援プログラム13Aを記憶部13から適宜読み出してメモリ12に展開し、地盤調査支援プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0024】
また、記憶部13には、ボーリング情報データベース13B及び3次元位置情報データベース13Cが記憶される。ボーリング情報データベース13B及び3次元位置情報データベース13Cについては、詳細を後述する。
【0025】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の機能的な構成について説明する。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る地盤調査支援装置10は、取得部11A、導出部11B、決定部11C、及び提示部11Dを含む。地盤調査支援装置10のCPU11が地盤調査支援プログラム13Aを実行することで、取得部11A、導出部11B、決定部11C、及び提示部11Dとして機能する。
【0027】
本実施形態に係る取得部11Aは、調査対象とする領域である対象領域(以下、単に「対象領域」という。)の複数の地点における地盤調査(本実施形態ではボーリング調査であるが、以下、「地盤調査」ともいう。)によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得する。なお、本実施形態では、これらの深さ情報及び2次元位置情報を、記憶部13に予め記憶されたボーリング情報データベース13Bから読み出すことによって取得しているが、これに限るものではない。例えば、入力部14を介して入力されたか、又は通信I/F部18を介して受信された深さ情報及び2次元位置情報を取得することで、当該深さ情報及び2次元位置情報を取得する形態としてもよい。以下では、取得部11Aによって取得された深さ情報及び2次元位置情報を得る際に行ったボーリング調査を「初期ボーリング調査」ともいう。
【0028】
また、本実施形態に係る導出部11Bは、取得部11Aによって取得された複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出する。なお、本実施形態に係る地盤調査支援装置10では、この3次元位置情報の導出を、株式会社竹中工務店によって開発されたシステムであるANAGO(登録商標)(ANAlysis for Geologic Optimum)を利用して行っている。ANAGO(登録商標)は、直接見ることができない地中の支持層を3次元モデル化することで、必要な杭の長さを可視化する設計・施工管理システムである。
図3には、本実施形態に係る地盤調査支援装置10で適用されるANAGO(登録商標)の説明に供する時系列順の断面図が示されている。
【0029】
図3に示すように、ANAGO(登録商標)は、ボーリングデータと杭の施工結果から判明した支持層の深さや傾斜を日々追加される最新データを基に補正し、3次元で可視化するとともに、今後打設する杭の支持層までの長さを自動的に判定するシステムである。なお、
図3における上段の左端の図及び上段の中央の図が設計段階の状況を示す図であり、残りの図が施工段階の状況を示す図である。ANAGO(登録商標)は従来既知の技術であるため、これ以上の説明は省略する。
【0030】
本実施形態に係る導出部11Bは、ANAGO(登録商標)による処理の過程で得られる支持層の3次元モデルを用いて、当該支持層の上面の3次元位置を導出する。このように、本実施形態に係る地盤調査支援装置10では、本出願人によるANAGO(登録商標)を用いて3次元位置情報を導出しているが、これに限るものではない。例えば、従来既知のBIM(Building Information Modeling)モデルや、3次元CAD(Computer Aided Design)システムを用いて3次元位置情報を導出する形態としてもよい。
【0031】
一方、本実施形態に係る決定部11Cは、導出部11Bによって導出された3次元位置情報が示す支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査(以下、「追加ボーリング調査」という。)の地点(以下、「追加ボーリング地点」という。)を決定する。
【0032】
特に、本実施形態に係る決定部11Cでは、3次元位置情報により示される支持層の上面の凹凸の度合い(以下、「凹凸度」という。)が高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定する。本実施形態では、凹凸度として、取得した2次元位置情報が示す、互いに隣接する地点間を対象として、支持層の上面に凹凸がない状態、即ち平らな状態を0(零)とし、当該上面の凹凸として想定される最大の量を100とした百分率(%)で表すものとしている。但し、この形態に限るものではなく、例えば、取得した2次元位置情報が示す、互いに隣接する地点間を対象として、支持層の上面に凹凸がない状態を0(零)とし、当該上面の凹凸として想定される最大の量を1とした0~1の範囲内の値を、凹凸度として適用する形態としてもよい。
【0033】
また、本実施形態に係る決定部11Cでは、3次元位置情報により示される支持層の上面の傾斜度が高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定する。本実施形態では、傾斜度として、取得した2次元位置情報が示す、互いに隣接する地点間を対象として、支持層の上面が傾斜していない状態、即ち平らな状態を0(零)とし、当該上面が90度傾斜している状態、即ち、当該上面が垂直となっている状態を100とした百分率(%)で表すものとしている。但し、この形態に限るものではなく、例えば、取得した2次元位置情報が示す、互いに隣接する地点間を対象として、支持層の上面が傾斜していない状態を0(零)とし、当該上面が90度傾斜している状態を1とした0~1の範囲内の値を、傾斜度として適用する形態としてもよい。
【0034】
なお、これらの凹凸度及び傾斜度に応じて決定した数の地点の位置としては、対応する上記互いに隣接する地点間を結ぶ直線上を等間隔、即ち線形に分割する位置や、対応する上記互いに隣接する地点間を結ぶ直線上をスプライン関数等により非線形に分割する位置等を適用することができる。
【0035】
そして、本実施形態に係る提示部11Dは、決定部11Cによって決定された地盤調査の地点、即ち追加ボーリング地点を提示する。なお、本実施形態に係る提示部11Dでは、地盤調査の地点の提示として、表示部15を用いた表示による提示を適用しているが、これに限るものではない。例えば、マイクロフォン等の音声再生装置を用いた音声による提示や、プリンタ等の画像形成装置を用いた印刷による提示を、地盤調査の地点の提示として適用する形態としてもよい。
【0036】
即ち、本実施形態では、一例として
図4に示すように、対象領域50の内部の複数の初期ボーリング地点52において初期ボーリング調査を実施する。そして、本実施形態に係る地盤調査支援装置10では、初期ボーリング調査によって得られた深さ情報及び2次元位置情報を取得部11Aにより取得し、取得した情報を用いて、導出部11B及び決定部11Cにより追加ボーリング地点54を決定し、決定した追加ボーリング地点54を提示部11Dによって提示する。なお、
図4は、本実施形態に係る追加ボーリング地点の決定方法の説明に供する平面図である。
【0037】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係るボーリング情報データベース13Bについて説明する。
図5は、本実施形態に係るボーリング情報データベース13Bの構成の一例を示す模式図である。
【0038】
図5に示すように、本実施形態に係るボーリング情報データベース13Bは、対象領域ID(Identification)、初期情報、及び追加情報の各情報が関連付けられて記憶されるものである。
【0039】
上記対象領域IDは、対象領域を個別に識別するために、対象領域毎に異なるものとして予め付与された情報である。
【0040】
また、上記初期情報は、上述した初期ボーリング調査に関する情報であり、ボーリング位置及び深さの各情報が含まれている。ここで、上記ボーリング位置は、初期ボーリング調査を行った地点の2次元位置を示す情報であり、上述した2次元位置情報に相当する。なお、本実施形態では、ボーリング位置を示す情報として、緯度及び経度の各情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、対象領域毎に予め定めた基準位置を原点とした2次元座標位置を、ボーリング位置を示す情報として適用する形態としてもよい。また、上記深さは、対応する初期ボーリング調査で得られた支持層の上面の位置を示す情報であり、上述した深さ情報に相当する。なお、本実施形態では、深さを示す情報として、地表面からの深さを示す情報を適用しているが、これに限るものではない。例えば、支持層の上面の海抜を示す情報を、深さを示す情報として適用する形態としてもよい。
【0041】
更に、上記追加情報は、上述した追加ボーリング調査に関する情報であり、ボーリング位置及び深さの各情報が含まれている。ここで、上記ボーリング位置は、追加ボーリング調査を行った地点の2次元位置を示す情報であり、上述した初期情報のボーリング位置と同様の情報である。また、上記深さは、対応する追加ボーリング調査で得られた支持層の上面の位置を示す情報であり、上述した初期情報の深さを示す情報と同様の情報である。
【0042】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る3次元位置情報データベース13Cについて説明する。
図6は、本実施形態に係る3次元位置情報データベース13Cの構成の一例を示す模式図である。
【0043】
図6に示すように、本実施形態に係る3次元位置情報データベース13Cは、対象領域ID及3次元位置情報の各情報が関連付けられて記憶されるものである。
【0044】
上記対象領域IDは、ボーリング情報データベース13Bの対象領域IDと同一の情報であり、3次元位置情報は、対応する初期情報を用いて導出された、上述した3次元位置情報である。
【0045】
次に、
図7~
図8を参照して、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の作用を説明する。ユーザによって地盤調査支援処理の実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に、地盤調査支援装置10のCPU11が地盤調査支援プログラム13Aを実行することにより、
図7に示す地盤調査支援処理が実行される。
図7は、本実施形態に係る地盤調査支援処理の一例を示すフローチャートである。なお、錯綜を回避するために、ここでは、ボーリング情報データベース13Bの対象領域ID及び初期情報が予め登録されている場合について説明する。更に、錯綜を回避するために、ここでは、処理対象とする対象領域が予め指定されている場合について説明する。
【0046】
図7のステップ100で、CPU11は、予め指定されている対象領域に対応する初期情報をボーリング情報データベース13Bから読み出す。ステップ102で、CPU11は、読み出した初期情報を用いて、対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を上述したように導出する。そして、CPU11は、導出した3次元位置情報を、対応する対象領域に対応する対象領域IDと共に3次元位置情報データベース13Cに記憶する。
【0047】
ステップ104で、CPU11は、導出した3次元位置情報が示す支持層の上面の状態を用いて、追加ボーリング地点を上述したように決定する。
【0048】
ステップ106で、CPU11は、決定した追加ボーリング地点を用いて、予め定められた構成とされたボーリング地点提示画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ108で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0049】
図8には、本実施形態に係るボーリング地点提示画面の一例が示されている。
図8に示すように、本実施形態に係るボーリング地点提示画面では、表示されている追加ボーリング地点でボーリング調査を実施する旨、及び当該ボーリング調査によって得られた支持層の上面の位置(深さ情報)の入力を促す旨を示すメッセージが表示される。また、本実施形態に係るボーリング地点提示画面では、初期ボーリング地点及び追加ボーリング地点の位置を示す平面図が表示される。更に、本実施形態に係るボーリング地点提示画面では、追加ボーリング地点に対するボーリング調査によって得られた支持層の上面の位置を示す深さ情報を入力するための入力領域15Aが表示される。
【0050】
一例として
図8に示すボーリング地点提示画面が表示部15に表示されると、地盤調査支援装置10のユーザは、何れかの追加ボーリング地点に対するボーリング調査を実施し、入力部14を介して、当該調査によって得られた深さ情報を対応する入力領域15Aに入力する。これに応じて、ステップ108が肯定判定となってステップ110に移行する。
【0051】
ステップ110で、CPU11は、ボーリング地点提示画面を介して入力された深さ情報と、対応する追加ボーリング地点の位置を示す2次元位置情報と、を関連付けて、追加情報としてボーリング情報データベース13Bの対応する対象領域の記憶領域に記憶する。
【0052】
ステップ112で、CPU11は、ステップ106~ステップ110の処理が、追加ボーリング地点の全てについて終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ106に戻る一方、肯定判定となった場合は本地盤調査支援処理を終了する。本実施形態では、ユーザが、全ての追加ボーリング地点についてのボーリング調査が終了して、各調査によって得られた深さ情報の入力が終了すると、ボーリング地点提示画面における終了ボタン15Bを指定する。従って、CPU11は、終了ボタン15Bが指定されたか否かを判定することで、ステップ106~ステップ110の処理が、追加ボーリング地点の全てについて終了したか否かを判定することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、調査対象とする領域である対象領域の複数の地点における地盤調査によって得られた支持層の深さを示す深さ情報、及び対応する地点の水平位置を示す2次元位置情報を取得し、取得した複数の地点に対応する深さ情報及び2次元位置情報を用いて、対象領域における支持層の上面の3次元位置を示す3次元位置情報を導出し、導出した3次元位置情報が示す支持層の上面の状態を用いて、追加して適用することで当該3次元位置情報の導出精度を高くすることができる地盤調査の地点を決定し、決定した地盤調査の地点を提示している。従って、推定誤差を用いて地盤調査の地点を決定する場合に比較して、追加で地盤調査を行う地点を、より簡易に得ることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、3次元位置情報により示される支持層の上面の凹凸の度合いが高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定している。従って、当該凹凸の度合いは簡易な演算により得ることができる結果、より簡易に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、3次元位置情報により示される支持層の上面の傾斜度が高い領域ほど、多くの地点を地盤調査の地点として決定している。従って、当該傾斜度は簡易な演算により得ることができる結果、より簡易に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、初期ボーリング地点を対象領域内の地点のみとした場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、一例として
図9に示すように、対象領域の周辺領域における複数の地点を初期ボーリング地点として適用する形態としてもよい。
図9は、実施形態に係る地盤調査支援処理の変形例の説明に供する平面図である。
【0057】
この場合、既にボーリング調査済みの地点における情報を適用することができる結果、本実施形態に係る地盤調査支援装置10に比較して、より低コストに、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0058】
更に、この形態の変形例として、対象領域の内部及び周辺領域の双方の地点を初期ボーリング地点として適用する形態としてもよい。
【0059】
[第2実施形態]
本実施形態では、学習済みモデルを用いて追加ボーリング地点を決定する場合の形態例について説明する。
【0060】
まず、
図10を参照して、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の構成を説明する。
図10は、本実施形態に係る地盤調査支援装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。なお、
図10における
図1に示した第1実施形態に係る地盤調査支援装置10と同一の構成要素については
図1と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、本実施形態に係る地盤調査支援装置10は、第1実施形態に係る地盤調査支援装置10に対して、記憶部13に学習済みモデル13Dが記憶されている点のみが相違している。
【0062】
本実施形態に係る学習済みモデル13Dは、上述した3次元位置情報と、当該3次元位置情報を導出するために用いた、上述した2次元位置情報と、が入力情報とされ、結果的に3次元位置情報の導出精度を高くすることができた、対応する地盤調査の地点が出力情報とされて機械学習されたものである。
【0063】
本実施形態では、過去にボーリング情報データベース13Bに登録された情報で、地盤に関する条件が処理対象とする領域に類似する対象領域に対応する情報であり、結果的に3次元位置情報の導出精度を高くすることができた初期情報及び追加情報と、対応する3次元位置情報とを用いて、学習済みモデル13Dの学習を行う。
【0064】
本実施形態に係る学習済みモデル13Dは、学習済みのCNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)を用いたAI(Artificial Intelligence、人工知能)によるモデルとされているが、これに限るものではない。例えば、CNN以外のAI等の他の機械学習モデルを学習済みモデル13Dとして適用する形態としてもよい。
【0065】
また、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の機能的な構成は、決定部11Cの機能を除いて第1実施形態と同様である。
【0066】
即ち、本実施形態に係る決定部11Cは、学習済みモデル13Dを用いて、上記地盤調査の地点(追加ボーリング地点)を決定する。
【0067】
次に、
図11を参照して、本実施形態に係る地盤調査支援装置10の作用を説明する。
図11は、本実施形態に係る地盤調査支援処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図11における
図7に示した第1実施形態に係る地盤調査支援処理と同一の処理を行うステップについては
図7と同一のステップ番号を付して、その説明を省略する。また、錯綜を回避するために、ここでは、機械学習済みの学習済みモデル13Dが既に構築されている場合について説明する。
【0068】
図11に示すように、本実施形態に係る地盤調査支援処理は、第1実施形態に係る地盤調査支援処理に対して、ステップ104の処理に代えてステップ105の処理が適用さてれている点のみが相違している。
【0069】
即ち、ステップ105で、CPU11は、上述したように、学習済みモデル13Dを用いて、地盤調査の地点(追加ボーリング地点)を決定する。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、3次元位置情報と、当該3次元位置情報を導出するために用いた2次元位置情報と、が入力情報とされ、結果的に3次元位置情報の導出精度を高くすることができた、対応する地盤調査の地点が出力情報とされて機械学習された学習済みモデル13Dを用いて、地盤調査の地点を決定している。従って、過去の実績に基づき、より高精度に、追加で地盤調査を行う地点を得ることができる。
【0071】
なお、上記各実施形態で適用した各種データベースの構成は一例であり、例示したものに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0072】
また、上記各実施形態で適用した地盤調査支援処理の流れは一例であり、不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることも言うまでもない。
【0073】
また、上記各実施形態において、例えば、取得部11A、導出部11B、決定部11C、及び提示部11Dの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0074】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0075】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0076】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
10 地盤調査支援装置
11 CPU
11A 取得部
11B 導出部
11C 決定部
11D 提示部
12 メモリ
13 記憶部
13A 地盤調査支援プログラム
13B ボーリング情報データベース
13C 3次元位置情報データベース
13D 学習済みモデル
14 入力部
15 表示部
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
50 対象領域
52 初期ボーリング地点
54 追加ボーリング地点