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2023-53783バックグラインド工程用フィルム及び粘着層付バックグラインド工程用フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053783
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】バックグラインド工程用フィルム及び粘着層付バックグラインド工程用フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230406BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230406BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230406BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230406BHJP
   B24B 7/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
B32B27/00 B
B32B27/00 M
H01L21/68 N
C09J7/38
B24B7/00 Z
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163024
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
3C043
4F100
4J004
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C043BA09
3C043BA16
3C043DD05
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK12A
4F100AK62A
4F100AK66A
4F100AL09A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB05C
4F100EH20
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JK07
4F100JL13C
4F100YY00A
4F100YY00B
4J004AB01
4J004FA05
4J004FA08
5F057CA14
5F057DA11
5F057EC16
5F131AA02
5F131BA33
5F131CA09
5F131CA23
5F131EA07
5F131EC32
5F131EC34
5F131EC53
5F131EC54
5F131EC55
5F131EC62
5F131EC72
(57)【要約】
【解決課題】
半導体ウェハもしくは回路の形成された半導体ウェハの回路を有する面にフィルムを貼り合わせる時の加工性に優れ、且つそれらからバックグラインド工程用フィルムを剥離する工程においても良好な剥離性を有し、バックグラインド工程に好適に用いることの可能なバックグラインド工程用フィルムを提供すること。
【解決手段】
半導体ウェハの研磨工程に用いられる、少なくとも2層からなるバックグラインド工程用フィルムであって、
半導体ウェハの研磨を行う面とは反対側の面と接触する面側に層(A)を有し、当該層(A)を構成する樹脂組成物中に、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(i)を含有し、且つ、当該層(A)とは反対側のフィルム面の最外層に層(B)を有し、当該層(B)を構成する樹脂組成物中に、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(ii)を含有する、該バックグラインド工程用フィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハの研磨工程に用いられる、少なくとも2層からなるバックグラインド工程用フィルムであって、
半導体ウェハの研磨を行う面とは反対側の面と接触する面側に層(A)を有し、当該層(A)を構成する樹脂組成物中に、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(i)を含有し、且つ、
前記層(A)とは反対側のフィルム面の最外層に層(B)を有し、当該層(B)を構成する樹脂組成物中に、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(ii)を含有する、
該バックグラインド工程用フィルム。
【請求項2】
前記層(A)が、回路を備えた半導体ウェハの回路を有する面に接触する請求項1に記載のバックグラインド工程用フィルム。
【請求項3】
前記層(A)に含まれる熱可塑性樹脂(i)が、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上である請求項1又は2に記載のバックグラインド工程用フィルム。
【請求項4】
前記層(A)の厚みが、1~20μmであり、且つ全層の厚みが30~300μmである請求項1~3のいずれかに記載のバックグラインド工程用フィルム。
【請求項5】
前記層(B)の厚みが、1~20μmである請求項4に記載のバックグラインド工程用フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載されるバッググラインド工程用フィルムの一方の面に粘着層を積層してなる、粘着層付バックグラインド工程用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ加工工程で好適に用いられるフィルムに関する。また、半導体ウェハ加工工程の中でも、ウェハの研磨を行うバックグラインド工程および回路の形成されたウェハの回路を有する面とは反対側の面の研磨を行うバックグラインド工程に用いられるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されている。
【0003】
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るように、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0004】
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウェハやパッケージ等を切断する際に半導体ウェハ加工用の粘着フィルムが用いられており、上記のような問題からポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している。
このような半導体製造工程用のフィルムとして、PVC系、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが開発されている(例えば特許文献1)。
【0005】
さらに、近年、半導体素子の小型化・薄型化が進み、半導体ウェハも薄く研磨されることが一般的に行われている。半導体ウェハの研磨において、半導体ウェハの保護、または回路が形成されている場合はその回路面の保護を目的として、前述したような粘着フィルムを、上記の研磨の工程(以下、「バックグラインド工程」とも言う)の際に、半導体ウェハに圧着して用いている(例えば特許文献2)。
また、研磨後の粘着フィルムを剥離する工程において、ウェハや回路側への粘着剤の転写、粘着力が強いことによる剥離不良やフィルムの破断といった不具合が発生することがある。さらに、粘着フィルムとする場合は、粘着剤を積層する工程が必要となり、経済性への影響も大きくなる。
【0006】
それらの課題の解決のため、ウェハ又は回路の形成されたウェハの回路を有する面にフィルムを貼り合わせる時の加工性に優れ、且つそれらからフィルムを剥離する工程においても良好な剥離性を有するバックグラインド工程用フィルムの要望があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-8111号公報
【特許文献2】特開2012-253373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる問題に鑑みて、ウェハ又は回路の形成されたウェハの回路を有する面にフィルムを貼り合わせる時の加工性に優れ、且つそれらからフィルムを剥離する工程においても良好な剥離性を有するバックグラインド工程用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するためのフィルムを鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
半導体ウェハの研磨工程に用いられる、少なくとも2層からなるバックグラインド工程用フィルムであって、
半導体ウェハの研磨を行う面とは反対側の面と接触する面側に層(A)を有し、当該層(A)を構成する樹脂組成物中に、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(i)を含有し、且つ、
前記フィルムの層(A)とは反対側のフィルム面の最外層に層(B)を有し、当該層(B)を構成する樹脂組成物中に、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(ii)を含有する、
該バックグラインド工程用フィルム。
[2]
前記層(A)が、回路を備えた半導体ウェハの回路を有する面に接触する、[1]に記載のバックグラインド工程用フィルム。
[3]
前記層(A)に含まれる熱可塑性樹脂(i)が、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上である、[1]又は[2]に記載のバックグラインド工程用フィルム。
[4]
前記層(A)の厚みが、1~20μmであり、且つ全層の厚みが30~300μmである、[1]~[3]のいずれかに記載のバックグラインド工程用フィルム。
[5]
前記層(B)の厚みが、1~20μmである、[4]に記載のバックグラインド工程用フィルム。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載されるバッググラインド工程用フィルムの一方の面に粘着層を積層してなる、粘着層付バックグラインド工程用フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ウェハ又は回路の形成されたウェハの回路を有する面にフィルムを貼り合わせる時の加工性に優れ、且つそれらからフィルムを剥離する工程においても良好な剥離性を有するバックグラインド工程用フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0013】
本発明の1つの実施態様は、半導体ウェハの研磨工程に用いられる、少なくとも2層からなるバックグラインド工程用フィルムであって、
半導体ウェハの研磨を行う面とは反対側の面と接触する面側に層(A)を有し、当該層(A)を構成する樹脂組成物中に、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(i)を含有し、且つ、
前記フィルムの層(A)とは反対側のフィルム面の最外層に層(B)を有し、当該層(B)を構成する樹脂組成物中に、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(ii)を含有する、バックグラインド工程用フィルムである。(以下「本発明のバックグラインド工程用フィルム」とも言う。)
【0014】
<熱可塑性樹脂>
本発明のバックグラインド工程用フィルムの、半導体ウェハの研磨を行う面とは反対側の面と接触する面側の層(A)を構成する樹脂組成物中には、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(i)が必須成分として含まれる。
層(A)に用いることができる熱可塑性樹脂(i)としては、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であれば、特に材質は問わず、入手可能ないずれの熱可塑性樹脂を用いてもよいが、ポリオレフィン系樹脂及びスチレン系エラストマーからなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。 本発明のバックグラインド工程用フィルムの1つの態様において、熱可塑性樹脂(i)は、ポリオレフィン系樹脂である。
また、本発明のバックグラインド工程用フィルムの1つの態様において、熱可塑性樹脂(i)は、スチレン系エラストマーである。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂は、入手のし易さ、耐熱性や柔軟性の調整が比較的容易であること、また、半導体加工工程の一つであるバックグラインド工程に用いられる際の、ウェハに貼り合わせる工程における加工性やウェハからの剥離性が良好であることから、好適に用いられる。
ポリオレフィン系樹脂の種類としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーから選択される1種以上の樹脂が、入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性等の観点から、好適に用いられる。
【0016】
また、上記熱可塑性樹脂(i)の結晶融解ピークが60~120℃の範囲内にあることで、加熱により後述する層(A)を有するバックグラインド工程用フィルムの層(A)の側の面を半導体ウェハに貼り合わせる工程において、十分にウェハと密着させることが可能となる。さらに、回路の形成された半導体ウェハの回路を有する面と貼り合わせる際にも、加熱時の温度で回路の凹凸に十分に追従させることが可能となる。結晶融解ピークのより好ましい範囲としては65~115℃、さらに好ましい範囲としては70~110℃である。
【0017】
熱可塑性樹脂(i)を含んだ層(A)を有するバックグラインド工程用フィルムと半導体ウェハとを貼り合わせる等の加工温度については、樹脂の結晶融解ピークの観点と同様に60~120℃の範囲内であることが好ましい。60~120℃の範囲内であれば、バックグラインド工程用フィルムの層(A)を十分に溶融させ、回路を備えた半導体ウェハおよび回路の形成された半導体ウェハの回路を有する面に追従させることが可能となる。60℃以上であれば、樹脂が十分に溶融し、半導体ウェハに対して追従することができ、密着性を付与することができる。120℃以下であれば、加熱しても柔らかくなりすぎず、フィルムの取り扱い性が低下することはない。加工温度のより好ましい範囲としては65~115℃、さらに好ましい範囲としては70~110℃である。
【0018】
また、フィルムの層(A)とは反対側のフィルム面の最外層に位置する層(B)を構成する樹脂組成物中に、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂(ii)を含有することが必要である。120℃以上の結晶融解ピークを有することで、前述した半導体ウェハと貼り合わせる等の加工を行う際の温度においても、フィルムが溶融しきることがなく、フィルム形状を保持することができ、取扱い性にも優れるフィルムとなる。
層(B)に用いることができる熱可塑性樹脂(ii)としては、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であれば、特に材質は問わず、入手可能ないずれの熱可塑性樹脂を用いてもよいが、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂は、入手のし易さ、耐熱性や柔軟性の調整が比較的容易であることから、好適に用いられる。
ポリオレフィン系樹脂の種類としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマーから選択される1種以上の樹脂が、入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性等の観点から、好適に用いられる。
【0019】
熱可塑性樹脂(i)及び熱可塑性樹脂(ii)の結晶融解ピークの測定方法としては、例えば、示差走査熱量測定装置を用い、試料を所定量秤量しこれを、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温した際に測定されたチャートから算出することができる。
ここで、試料としては、熱可塑性樹脂自体を用いる以外に、当該熱可塑性樹脂を含有するフィルムを用いて、結晶融解ピークの測定を行うこともできる。
【0020】
本発明のバックグラインド工程用フィルムに用いることができるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン)、これらの混合物等が例示できる。
プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0021】
本発明のバックグラインド工程用フィルムに用いることができるポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の調整が容易であるとの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0022】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
本発明のバックグラインド工程用フィルムに用いることができるオレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
好ましくは、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマーを挙げることができる。
【0023】
上記のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーの中で、層(A)に用いられる熱可塑性樹脂(i)として60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有するものとしては、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーを用いることが、結晶融解ピークの調整の観点から好ましい。
層(A)に用いられるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有するポリエチレン系樹脂の具体例としては、例えば、「ノバテックLD」、「ノバテックEVA」、「レクスパールET」、「レクスパールEMA」、「レクスパールEEA」、「メタロセンプラストマー カーネル」(以上、日本ポリエチレン社製)、「エバフレックス」、「ハイミラン」、「ニュクレル」(以上、三井・ダウポリケミカル社製)、「スミカセン」、「スミテート」、「アクリフト」、「エクセレン」(以上、住友化学社製)、「サンテックLD」、「サンテックEVA」(以上、旭化成社製)等が挙げられる。
【0024】
層(A)に用いられるオレフィン系エラストマーとしては、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有するオレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば「ミラストマー」、「タフマー」(以上、三井化学社製)、「ENGAGE」、「INFUSE」、「AFFINITY」(以上、DOW社製)、等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーは、それらを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。結晶融解ピークの調整やフィルムを得る際の加工性の観点から、複数を組み合わせることが好ましい。複数を組み合わせる際には、オレフィン系エラストマーを1種以上用いることがより好ましい。
【0025】
上記のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーの中で、層(B)に用いられる熱可塑性樹脂(ii)として120℃以上の結晶融解ピークを有するものとしては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーを用いることが、結晶融解ピークの調整の観点から好ましい。
層(B)に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン)、これらの混合物等が挙げられる。
層(B)に用いられるポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
層(B)に用いられるオレフィン系エラストマーとしては、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0026】
120℃以上の結晶融解ピークを有するポリプロピレン系樹脂の具体例としては、例えば、「ノバテックPP」(日本ポリプロ社製)、「住友ノーブレン」(住友化学社製)、「PC412A」、「PC630A」等(以上、サンアロマー社製)、「プライムポリプロ」(プライムポリマー社製)等が挙げられる。
120℃以上の結晶融解ピークを有するポリエチレン系樹脂の具体例としては、例えば、「ノバテックHD」、「ノバテックLL」(以上、日本ポリエチレン社製)、「サンテックHD」(旭化成社製)、「ハイゼックス」(プライムポリマー社製)等が挙げられる。
120℃以上の結晶融解ピークを有するオレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、「WELNEX」(日本ポリプロ社製)、「ゼラス」、「テファブロック」(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
【0027】
層(A)及び層(B)を構成する樹脂組成物の各々において、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーは、それらを単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。融点の調整やフィルムを得る際の加工性の観点から、複数を組み合わせることが好ましい。複数を組み合わせる際には、結晶融解ピークの調整の観点からポリプロピレン系樹脂もしくはポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、結晶融解ピークの調整、入手のし易さや加工の容易さの観点から、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレンを用いることが好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、結晶融解ピークの調整、入手のし易さや加工の容易さの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)を用いることが好ましい。
【0028】
前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びオレフィン系エラストマー等の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは80~1900MPaの範囲内、さらに好ましくは100~1800MPaの範囲内である。
上記ポリオレフィン系樹脂は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。得られる複層フィルムの柔軟性や耐熱性、製膜性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0030】
層(A)に用いられる熱可塑性樹脂(i)としては、スチレン系エラストマーも好適に用いることができる。
スチレン系エラストマーを用いることにより、得られるバックグラインド工程用フィルムに柔軟性を付与することが可能となる。
【0031】
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロック(以下、スチレン成分)で、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれる少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0032】
熱可塑性樹脂(i)としてのスチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
【0033】
スチレン系エラストマー中のスチレン成分の含有量およびそれ以外の成分の含有量は、H-NMRや13C-NMRを用いることにより測定することができる。ここで、「スチレン成分の含有量」とは、スチレン系エラストマーの質量を基準としてスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックの含有割合(質量%)をいう。
【0034】
スチレン系エラストマーのメルトフローレイト(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~10g/10分であることが好ましく、0.15~9g/10分であることがより好ましく、0.2~8g/10分であることが特に好ましい。
スチレン系エラストマーのメルトフローレイトが0.1g/10分未満および、10g/10分を越えるとポリオレフィン系樹脂との相溶性の低下や製膜性の悪化により、十分な柔軟性やエキスパンド性が発現しない場合がある。
【0035】
熱可塑性樹脂(i)として用いることができるスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、「ダイナロンDR4600P」(JSR社製)、等が挙げられる。
【0036】
上記スチレン系エラストマーは、1種類のエラストマーを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。複層フィルムを得る際の製膜性や、得られる複層フィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
また、層(A)に用いる熱可塑性樹脂(i)として、上記スチレン系エラストマーと、前述のポリオレフィン系樹脂を併用することもできる。
【0037】
<その他樹脂>
本発明のバックグラインド工程用フィルムの層(A)、層(B)のいずれか又は両方には、前述した樹脂以外の樹脂として、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、熱可塑性樹脂(i)に記載した以外のスチレン系エラストマー等を添加することもできる。
【0038】
スチレン系エラストマーとしては熱可塑性樹脂(i)の項で説明したものの他に、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有さないものを添加してもよい。スチレン系エラストマーの添加することにより、得られるバックグラインド工程用フィルムに柔軟性を調整することが可能となる。
【0039】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さや取扱い性の観点から、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0040】
<その他成分>
本発明のバックグラインド工程用フィルムの各層には、得られるフィルムに耐熱性や耐候性、帯電防止性能等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
また、バックグラインド工程用フィルムの各層のそれぞれに異なった性能を付与する必要がある場合は、各層毎に各種添加剤を付与することも可能である。
【0041】
帯電防止剤としては、公知のものを使用することができるが、得られるバックグラインド工程用フィルムとの相溶性や、長期的な帯電防止性能の付与、経時での帯電防止剤のブリードアウトの抑制といった観点から、高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。
【0042】
高分子型帯電防止剤としては公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。
【0043】
疎水性ブロックには、例えば、ポリオレフィンブロックを挙げることができ、ポリオレフィンブロックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなるブロック等を挙げることができる。
【0044】
ポリオレフィンブロック等の疎水性ブロックは、その両末端にカルボニル基、水酸基、及び、アミノ基等の極性基を有している。疎水性ブロックが両末端に有している極性基を、親水性ブロックの両末端に存在するカルボニル基、水酸基、及び、アミノ基等に重合させるか、或いは、ジイソシアネートやジグリシジルエーテル等によって架橋させることにより、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を得ることができる。
【0045】
親水性ブロックには、例えば、ポリエーテルブロック、ポリエーテル含有親水性ポリマーブロック、カチオン性ポリマーブロック及びアニオン性ポリマーブロックを挙げることができる。
なお、高分子型帯電防止剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、更に帯電防止性を向上させるために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤及びイオン性液体等が配合されていてもよい。
【0046】
高分子型帯電防止剤の一つであるポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体の市販品としては、例えば、ペレスタット300、ペレスタット230、ペレクトロンUC、ペレクトロンPVL、ぺレクトロンPVH(以上、三洋化成工業社製)等を挙げることができる。
【0047】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0048】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0049】
滑剤やアンチブロッキング剤としては、有機系粒子や無機系粒子、アマイド系化合物といった公知のものを使用することができる。また、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0050】
<バックグラインド工程用フィルム>
本発明のバックグラインド工程用フィルムは、前述した層(A)および層(B)を有する少なくとも2層からなるバックグラインド工程用フィルムである。
【0051】
層(A)は、半導体ウェハの研磨を行う面とは反対側の面と接触する面側に配置されるが、層(B)は層(A)が設けられる面とは反対側のフィルム面の最外層に位置する層であることが必要である。
本発明のバックグラインド工程用フィルムは、層(A)と層(B)の2層からなるフィルムであってもよいし、層(A)と層(B)の中間に位置する層を設けた3層以上のフィルムであってもよい。
【0052】
ここで、バックグラインド工程用フィルムの中間に位置する層(以下「フィルムの中間に位置する層」とも言う)は、フィルムが例えば3層からなる場合は、所謂中間層を意味するが、フィルムが4層以上からなる場合は、真中の層だけではなく、その前後の層も「フィルムの中間に位置する層」に含まれる。例えば、複層フィルムが4層からなる場合は、「フィルムの中間に位置する層」には表層から数えて2番目及び3番目の層も含まれ、フィルムが5層からなる場合は、表層から数えて3番目の層に加えて、表層から2番目及び4番目の層も「フィルムの中間に位置する層」に含まれる。
【0053】
バックグラインド工程用フィルムの具体的な構成としては、例えば、層(A)を半導体ウェハと接触する面側である表層とし層(B)を裏層とした2種2層の構成、層(A)を表層、層(B)を裏層としそれ以外の層を中間層とした3種3層の構成、その他それ以上の複層構造を有するフィルムといったものが挙げられる。製膜のし易さや設備の取り扱い性の観点から、2種2層、3種3層の構成であることが好ましい。
【0054】
層(A)および層(B)以外の層を設ける場合は、上記の層(A)および/もしくは層(B)を構成する樹脂組成物と同じ樹脂組成物であってもよいし、異なっていてもよい。フィルムの加工性や、得られるフィルムの取扱い性等の観点から、用いる樹脂を変更し、好ましい樹脂組成物の配合とすることができる。
【0055】
本発明のバックグラインド工程用フィルムの1つの好ましい態様において、層(A)および層(B)以外の層を、層(A)および/もしくは層(B)を構成する樹脂組成物と異なる樹脂組成物とする場合には、以下の構成にすることができる。
層(A)と接する層には、層(A)に用いられている熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有させることにより、層間の密着性を向上させることが可能となる。層(A)と接する層に用いられている熱可塑性樹脂100質量%中に、層(A)に用いられている熱可塑性樹脂を5質量%以上含有させることが、層間の樹脂の密着性向上の観点から好ましい。より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
層(B)と接する層には、層(B)に用いられている熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有させることにより、層間の密着性を向上させることが可能となる。層(B)と接する層に用いられている熱可塑性樹脂100質量%中に、層(B)に用いられている熱可塑性樹脂を5質量%以上含有させることが、層間の樹脂の密着性向上の観点から好ましい。より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。
層(A)及び層(B)と接する層には、層(A)及び層(B)に用いられている熱可塑性樹脂と同じ樹脂を含有させることにより、層間の密着性を向上させることが可能となる。層(A)及び層(B)と接する層に用いられている熱可塑性樹脂100質量%中に、層(A)及び層(B)に用いられている熱可塑性樹脂を各5質量%以上含有させることが、層間の樹脂の密着性向上の観点から好ましい。より好ましくは各10質量%以上、さらに好ましくは各15質量%以上である。
また、ウェハの凹凸が大きく、中間に位置する層にまで凹凸への追従が求められる場合は、上記の層間の密着性を確保するために必要な添加量よりも多く、層(A)に含まれる樹脂を含有させることが好ましい。中間に位置する層に、半導体ウェハと貼り合わせる等の加工時のフィルム形状の保持が重要視される場合は、上記の密着性を確保するための添加量よりも多く、層(B)に含まれる樹脂を含有させることが好ましい。凹凸への追従性とフィルム形状の保持性を両立させることが必要であれば、それぞれの添加量を必要な性能に応じて適宜決定することができる。上記のいずれの場合も、層(A)および層(B)以外の層に、層(A)、層(B)に用いられていない熱可塑性樹脂を含有させることもできる。
【0056】
また、本発明のバックグラインド工程用フィルムの総厚みは、30~350μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好となり、350μm以下であれば経済性の観点やフィルムを用いた粘着加工等の工程通過性を良好に保つことが可能となる。
また、経済性の観点や得られるバックグラインド工程用フィルムの取扱い性の観点から40~325μmの範囲内であることがより好ましく、50~300μmの範囲内であることがさらに好ましい。
回路の形成された半導体ウェハの回路を有する面と貼り合わせる際に、回路の凹凸高さに応じて、フィルム厚みを適宜選択することができ、ウェハの凹凸よりフィルムが厚い方が好ましい。ウェハの凹凸よりフィルムを厚くすることにより、該ウェハに追従させた際の局所的なフィルムの薄膜化が顕著とならず、ウェハからバックグラインド工程用フィルムの剥離する際においても薄膜化した部分からのフィルムの破断を抑制することが可能となり好ましい。
【0057】
層(A)の厚みは、1~20μmの範囲内であることが好ましい。1μm以上の層(A)を有することで、ウェハにバックグラインド工程用フィルムを半導体ウェハの回路を有する面と貼り合わせ、ウェハの加工後にバックグラインド工程用フィルムを剥離する際において、ウェハからの良好な剥離性を付与することが可能となる。20μm以下とすることで得られるバックグラインド工程用フィルムの弾性率や取扱い性を調整することが可能となる。層(A)の厚みは得られる複層フィルムの弾性率や取扱い性、前述の総厚みを考慮し適宜決定することができる。
【0058】
層(B)の厚みは、1~20μmの範囲内であることが好ましい。1μm以上の層(B)を有することで、バックグラインド工程用フィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となり、貼り合わせの工程等の加熱時においてもフィルムが溶融しきることがなく、フィルム形状を保つことが容易となる。20μm以下とすることで得られるバックグラインド工程用フィルムの弾性率や取扱い性を調整することが可能となる。層(B)の厚みは得られる複層フィルムの耐熱性、弾性率や取扱い性、前述の総厚みを考慮し適宜決定することができる。
層(A)と層(B)の中間に位置する層を設けた3層以上のフィルムの場合は、その中間層に位置する層の厚みは、層(A)、層(B)およびフィルムの総厚みに応じて適宜決定される。
【0059】
本発明のバックグラインド工程用フィルムの引張弾性率は、50~1000MPaの範囲内であることが好ましい。50MPa以上であれば、得られるフィルムの取扱い性が容易となるため好ましい。1000MPa以下であればフィルムに十分な柔軟性が付与されており、且つ取扱い性が良好であることから、バックグラインド工程に好適に用いることが可能となる。より好ましくは70~900MPaの範囲内、さらに好ましくは90~800MPaの範囲内である。
引張弾性率が50~1000MPaの範囲内であるバックグラインド工程用フィルムは、前述した熱可塑性樹脂等の組み合わせやそれらの添加量、複層フィルムの各層の厚みの割合等を調整することにより得ることが可能となる。
本発明のバックグラインド工程用フィルムの破断伸度は、500%以上であることが好ましい。500%以上の破断伸度を有することにより、ウェハの加工後にフィルムを剥離する工程において、フィルムを破断させることなくウェハから剥離させることが容易となる。より好ましくは550%以上、さらに好ましくは600%以上である。
【0060】
<バックグラインド工程用フィルムの成形方法>
本発明のバックグラインド工程用フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0061】
バックグラインド工程用フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となる。
【0062】
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂組成物を合流させる装置を用い、複数の樹脂組成物を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0063】
バックグラインド工程用フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0064】
<粘着層>
本発明のバックグラインド工程用フィルムは、ウェハに貼り合わせる際に粘着剤を有さず、バックグラインド工程用フィルムを直接ウェハと貼り合わせることが可能であるが、ウェハとの密着性をより高める、もしくは密着性の調整を行うことを目的として、少なくとも片方の面に粘着層を積層することもできる。
【0065】
粘着層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0066】
本発明のバックグラインド工程用フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0067】
本発明のバックグラインド工程用フィルム、及び、少なくとも片方の面に粘着層を積層させたバックグラインド工程用フィルムは、任意のウェハ、例えば、シリコンウェハ、シリコンカーバイトウェハ、サファイアウェハ、化合物半導体ウェハに使用することができる。
【0068】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0069】
[使用材料]
<熱可塑性樹脂(i)>
オレフィン系エラストマー(i-1):
三井化学製、「タフマーXM7070」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.0g/10分、結晶融解ピーク:83℃、1-ブテン-プロピレン共重合体)
オレフィン系エラストマー(i-2):
三井化学製、「タフマーXM7080」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.0g/10分、結晶融解ピーク:75℃、1-ブテン-プロピレン共重合体)
スチレン系エラストマー(i-3):
JSR社製、「ダイナロンDR4600P」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:5.5g/10分、結晶融解ピーク:96℃、スチレン成分含有量:20質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体)
低密度ポリエチレン(i-4):
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLC500」(190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.0g/10分、結晶融解ピーク:106℃、単独フィルムの引張弾性率:140MPa)
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(i-5):
宇部丸善ポリエチレン社製、「ユメリット0540F」(190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.0g/10分、結晶融解ピーク:91、111℃、単独フィルムの引張弾性率:80MPa)
【0070】
<熱可塑性樹脂(ii)>
ランダムポリプロピレン(ii-1):
サンアロマー社製、「PC630A」(ランダムポリプロピレン、230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.5g/10分、結晶融解ピーク:135℃、単独フィルムの引張弾性率:600MPa)
オレフィン系エラストマー(ii-2):
日本ポリプロ製、「ウェルネクスRFX4V」(オレフィン系エラストマー、230℃、2.16kgでのメルトフローレイト:6.0g/10分、結晶融解ピーク:129℃、単独フィルムの引張弾性率:250MPa)
高密度ポリエチレン(ii-3):
日本ポリエチレン社製、「ノバテックHF560」(高密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.0g/10分、結晶融解ピーク:135℃、単独フィルムの引張弾性率:950MPa)
【0071】
<その他成分>
酸化防止剤:
日本ポリエチレン社製、「ノバテックLL LXAO」(酸化防止剤を5質量%含有するフィルム用マスターバッチ)
【0072】
<樹脂組成物の調製>
上記の熱可塑性樹脂(i)、熱可塑性樹脂(ii)のいずれか一方あるいは、両方の合計で100質量部となるよう配合し、必要に応じて酸化防止剤を添加した。2種以上混合する場合には、ドライブレンドにより混合して用いた。
目視にて均一に混合できていることを確認し、表層(層(A))、中間層、裏層(層(B))の各層毎にフィルム成形用の樹脂組成物を調製した。
【0073】
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、各押出機の押出機温度を180~230℃に設定し、フィードブロック部にて、表層(層(A))/中間層/裏層(層(B))の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定230℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
【0074】
押出された溶融樹脂は、マット状の金属製冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化後、所定の厚みを有する1種3層、もしくは3種3層となるバックグラインド工程用フィルムを得た。
また、実施例及び比較例では、得られたフィルムのマット状の金属製冷却ロール側の面を表層(層(A))と表現している。
【0075】
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。
【0076】
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
【0077】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0078】
[引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作製されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0079】
[結晶融解ピーク]
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、実施例、比較例に用いた各原料単独の約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温した際に測定されたチャートから結晶融解ピークを算出した。
【0080】
[ホットプレートによる加工性評価(層(A))]
得られたフィルムの層(A)を110℃に加熱したホットプレートに5秒間静置し、ホットプレートへのフィルムの密着の有無を以下の判断基準により評価した。
〇:フィルムが溶融し、ホットプレートへの密着有り
△:フィルムが変形し、ホットプレートへの密着が僅かに有り
×:フィルムが僅かに変形、もしくは変形せずホットプレートに密着せず
【0081】
[実施例1]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(i)、熱可塑性樹脂(ii)、酸化防止剤を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は270MPa、引張破断伸度は730%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。破断伸度が500%以上を示したことから、熱可塑性樹脂にフィルムを貼り合わせ、バックグラインド工程等の加工後にフィルムを剥離する際にも破断することなく、フィルムを剥離することが可能であると考えられる。
また、層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(i-1)の結晶融解ピークは83℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融し、密着性を示し、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、良好な加工性を有することが示唆された。
さらに層(B)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-1)の結晶融解ピークは135℃であり、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、層(B)側は溶融することなく、フィルム形状を保持できることが示唆された。
よって、層(A)側をウェハに貼り合わせることが可能であり、且つ加工温度領域においてもフィルム形状を維持することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを得ることができた。
【0082】
[実施例2]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(i)、熱可塑性樹脂(ii)、酸化防止剤を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は230MPa、引張破断伸度は720%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。破断伸度が500%以上を示したことから、熱可塑性樹脂にフィルムを貼り合わせ、バックグラインド工程等の加工後にフィルムを剥離する際にも破断することなく、フィルムを剥離することが可能であると考えられる。
層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(i-2)の結晶融解ピークは75℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融し、密着性を示し、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、良好な加工性を有することが示唆された。
さらに層(B)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-1)の結晶融解ピークは135℃であり、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、層(B)側は溶融することなく、フィルム形状を保持できることが示唆された。
よって、層(A)側をウェハに貼り合わせることが可能であり、且つ加工温度領域においてもフィルム形状を維持することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを得ることができた。
【0083】
[実施例3]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(i)、熱可塑性樹脂(ii)、酸化防止剤を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は230MPa、引張破断伸度は630%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。破断伸度が500%以上を示したことから、熱可塑性樹脂にフィルムを貼り合わせ、バックグラインド工程等の加工後にフィルムを剥離する際にも破断することなく、フィルムを剥離することが可能であると考えられる。
層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(i-3)の結晶融解ピークは96℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融し、密着性を示し、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、良好な加工性を有することが示唆された。
さらに層(B)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-1)の結晶融解ピークは135℃であり、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、層(B)側は溶融することなく、フィルム形状を保持できることが示唆された。
よって、層(A)側をウェハに貼り合わせることが可能であり、且つ加工温度領域においてもフィルム形状を維持することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを得ることができた。
【0084】
[実施例4]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(i)、熱可塑性樹脂(ii)、酸化防止剤を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は240MPa、引張破断伸度は750%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。破断伸度が500%以上を示したことから、熱可塑性樹脂にフィルムを貼り合わせ、バックグラインド工程等の加工後にフィルムを剥離する際にも破断することなく、フィルムを剥離することが可能であると考えられる。
層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(i-1)の結晶融解ピークは83℃、熱可塑性樹脂(i-4)は106℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融し、密着性を示し、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、良好な加工性を有することが示唆された。
さらに層(B)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-1)の結晶融解ピークは135℃であり、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、層(B)側は溶融することなく、フィルム形状を保持できることが示唆された。
よって、層(A)側をウェハに貼り合わせることが可能であり、且つ加工温度領域においてもフィルム形状を維持することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを得ることができた。
【0085】
[実施例5]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(i)、熱可塑性樹脂(ii)、酸化防止剤を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は240MPa、引張破断伸度は800%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。破断伸度が500%以上を示したことから、熱可塑性樹脂にフィルムを貼り合わせ、バックグラインド工程等の加工後にフィルムを剥離する際にも破断することなく、フィルムを剥離することが可能であると考えられる。
層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(i-4)の結晶融解ピークは106℃、熱可塑性樹脂(i-5)は91℃および111℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融し、密着性を示し、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、良好な加工性を有することが示唆された。
さらに層(B)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-3)の結晶融解ピークは135℃であり、120℃以上の結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂であることから、ウェハに貼り合わせる際の加工温度においても、層(B)側は溶融することなく、フィルム形状を保持できることが示唆された。
よって、層(A)側をウェハに貼り合わせることが可能であり、且つ加工温度領域においてもフィルム形状を維持することが可能な熱可塑性樹脂フィルムを得ることができた。
【0086】
[比較例1]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(ii-1)を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて1種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は500MPa、引張破断伸度は750%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。
ただし、層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-1)の結晶融解ピークは135℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂ではなかったことから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融せず、ホットプレートに密着性を示さなかった。
よって、層(A)側の結晶融解ピークが高く、ウェハにフィルムを貼り合わせる際の適度な温度領域での加工が困難であることが確認された。
【0087】
[比較例2]
表層(層(A))用、中間層用、裏層(層(B))用の樹脂として、熱可塑性樹脂(ii-2)を表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて1種3層からなる厚さ150μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層(層(A))が15μm、中間層が120μm、裏層(層(B))が15μmとなるよう製膜時の条件の調整を行った。
得られたフィルムの引張弾性率は250MPa、引張破断伸度は680%を示し、引張弾性率および破断伸度のいずれもフィルムを取り扱うにあたり、十分なものであることが確認できた。
ただし、層(A)に用いられている熱可塑性樹脂(ii-1)の結晶融解ピークは129℃であり、60~120℃の範囲内に結晶融解ピークを有する熱可塑性樹脂ではなかったことから、ホットプレートでの加工性評価においてもフィルム表面が溶融せず、ホットプレートに密着性を示さなかった。
よって、層(A)側の結晶融解ピークが高く、ウェハにフィルムを貼り合わせる際の適度な温度領域での加工が困難であることが確認された。
【0088】
【表1】
【0089】
[産業上の利用可能性]
本発明により、半導体ウェハもしくは回路の形成されたウェハの回路を有する面にフィルムを貼り合わせる時の加工性に優れ、且つそれらからバックグラインド工程用フィルムを剥離する工程においても良好な剥離性を有し、バックグラインド工程に好適に用いることの可能なバックグラインド工程用フィルムを提供することが可能となる。