(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053788
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163041
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】榎 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】那須 浩太郎
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB07
5H050CB11
5H050GA03
5H050GA29
5H050GA30
5H050HA12
(57)【要約】
【課題】基材フィルム上へのマスクの供給及び回収を簡易な構成で実現すること。
【解決手段】電池用電極製造装置は、中空状のマスクを複数連結させて輪状に構成した回転マスクと、電極組成物を内部に保持するホッパの開口から、基材フィルム上かつ前記マスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する供給部と、を備え、前記回転マスクは、前記基材フィルムに当接する面の移動方向と当該基材フィルムの搬送方向とが一致する方向に回転することで、複数の前記マスクが前記基材フィルムに対して順次当接するように構成され、前記供給部は、前記回転マスクに含まれる複数の前記マスクのうち、前記基材フィルムに対して当接しているマスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状のマスクを複数連結させて輪状に構成した回転マスクと、
電極組成物を内部に保持するホッパの開口から、基材フィルム上かつ前記マスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する供給部と、を備え、
前記回転マスクは、前記基材フィルムに当接する面の移動方向と当該基材フィルムの搬送方向とが一致する方向に回転することで、複数の前記マスクが前記基材フィルムに対して順次当接するように構成され、
前記供給部は、前記回転マスクに含まれる複数の前記マスクのうち、前記基材フィルムに対して当接しているマスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する、電池用電極製造装置。
【請求項2】
前記回転マスク及び前記ホッパを覆うカバーと、
前記カバーの内部を排気する排気部と、
を更に備える、請求項1に記載の電池用電極製造装置。
【請求項3】
前記回転マスクは、前記基材フィルム上に供給された前記電極組成物を圧縮する圧縮部を更に備える、請求項1又は2に記載の電池用電極製造装置。
【請求項4】
前記供給部は、前記ホッパの開口を、前記回転マスクにおける前記マスク同士の連結部により開閉することで、前記電極組成物を供給する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池用電極製造装置。
【請求項5】
電極組成物を内部に保持するホッパの開口から、基材フィルム上かつ中空状のマスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給することを含む電池用電極製造方法であって、
前記マスクを複数連結させて輪状に構成した回転マスクを、前記基材フィルムに当接する面の移動方向と当該基材フィルムの搬送方向とが一致する方向に回転させることで、複数の前記マスクを前記基材フィルムに対して順次当接させ、
前記回転マスクに含まれる複数の前記マスクのうち、前記基材フィルムに対して当接しているマスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する、電池用電極製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は高容量の二次電池であり、近年様々な用途で使用されている。リチウムイオン電池の電極は、活物質層、集電体層、セパレータ、及び、活物質層を封入する枠体等によって構成される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
活物質層は、基材フィルム上に電極組成物を供給し、ロールプレス等によって圧縮することで、形成することができる。ここで、基材フィルム上への電極組成物の供給は、所望の位置に対して所望の形状で、精度良く行われることが好ましい。
【0004】
基材フィルム上への電極組成物の供給を精度良く行なうため、マスクを用いることが考えられる。即ち、基材フィルム上に中空状のマスクを配置し、当該マスクの内部空間に電極組成物を供給することにより、基材フィルム上への電極組成物の供給を精度良く行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6633866号公報
【特許文献2】特開2021-27043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電極組成物の供給時にマスクを用いる場合、基材フィルム上へのマスクの供給及び回収を行なう必要がある。ここで、マスクの供給及び回収を枚葉に行なうには時間がかかり、電池用電極の製造効率にも影響するおそれがある。これに対して、例えば特許文献2に記載のように、無端状の連続したマスクを用いて、基材フィルム上へのマスクの供給及び回収を連続的に行なうことも考えられる。しかしながら、特許文献2の手法は、構成が大掛かりであり、製造及び運用にはコストがかかる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、基材フィルム上へのマスクの供給及び回収を簡易な構成で実現する電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る電池用電極製造装置は、中空状のマスクを複数連結させて輪状に構成した回転マスクと、電極組成物を内部に保持するホッパの開口から、基材フィルム上かつ前記マスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する供給部と、を備え、前記回転マスクは、前記基材フィルムに当接する面の移動方向と当該基材フィルムの搬送方向とが一致する方向に回転することで、複数の前記マスクが前記基材フィルムに対して順次当接するように構成され、前記供給部は、前記回転マスクに含まれる複数の前記マスクのうち、前記基材フィルムに対して当接しているマスクの内部空間の位置に対して前記電極組成物を供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法によれば、基材フィルム上へのマスクの供給及び回収を簡易な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、実施形態の電池用電極製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態の電池用電極製造装置を用いて製造される電池の単セルの断面模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電池用電極製造装置の概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態の回転マスクを示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の電極組成物の供給について説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態の回転マスク及び電極組成物供給装置を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態の回転マスク及び電極組成物供給装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴部分を強調する目的で、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、同様の目的で、一部を省略して図示している場合がある。
【0012】
<組電池(二次電池)>
実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法は、例えば、リチウムイオン電池の製造に適用される。リチウムイオン電池は、複数のリチウムイオン単電池(単セル又は電池セルとも記載する)を組み合わせてモジュール化した組電池、或いは、このような組電池を複数組み合わせて電圧及び容量を調整した電池パックの形態で使用される。
【0013】
<単セル(電池セル)>
図1A及び
図1Bは、単セル10の断面模式図である。単セル10を複数組み合わせることで上記の組電池を作製することが可能である。例えば、単セル10は、2つの電極(電池用電極)としての正極20a及び負極20bと、セパレータ30とを有する。
【0014】
実施形態の単セル10は、
図1Aに示されるように、枠体35よりも電極活物質層22が厚くなるように構成される。また、
図1Bに示されるように、単セル10の両端を閉じることで、電極活物質層22を内部に封入し、上記の組電池の作製に用いることが可能となる。
【0015】
セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間に配置される。組電池において、複数の単セル10は、正極20aと負極20bとを同方向に向けて積層される。
【0016】
セパレータ30には、電解質が保持される。これにより、セパレータ30は、電解質層として機能する。セパレータ30は、正極20a及び負極20bの電極活物質層22の間に配置され、これらが互いに接触することを抑制する。これにより、セパレータ30は、正極20aと負極20bとの間の隔壁として機能する。
【0017】
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液またはゲルポリマー電解質等が挙げられる。これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータの形態としては、例えば、上記電解質を吸収保持するポリマーや繊維からなる多孔性シートのセパレータや不織布セパレータなどを挙げることができる。
【0018】
正極20a及び負極20bは、それぞれ、集電体21と、電極活物質層22と、枠体35とを有する。電極活物質層22と集電体21とは、セパレータ30側からこの順に並ぶ。枠体35は、額縁状(環状)である。枠体35は、電極活物質層22の周囲を囲む。正極20aの枠体35と負極20bの枠体35とは、互いに溶着され一体化されている。以下の説明において、正極20a及び負極20bの電極活物質層22を互いに区別する場合、これらをそれぞれ正極活物質層22a、負極活物質層22bと呼ぶ。
【0019】
<正極集電体の具体例>
正極集電体層21aを構成する正極集電体としては、公知のリチウムイオン単電池に用いられる集電体を用いることができ、例えば、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開第2015/005116号等に記載の樹脂集電体等)を用いることができる。正極集電体層21aを構成する正極集電体は、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。
【0020】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は、薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0021】
樹脂集電体としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)等が挙げられるが、特に限定されない。また、導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択されれば特に限定されない。導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であってもよい。
【0022】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーのほかに、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいてもよい。また、複数の樹脂集電体を積層して用いてもよく、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0023】
正極集電体層21aの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体層21aとして用いる場合には、積層後の全体の厚さが5~150μmであることが好ましい。正極集電体層21aは、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0024】
<正極活物質の具体例>
正極活物質層22aは、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。正極活物質層22aが非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22aに応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22aの破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22aは、正極活物質層22aを、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22aにする等の方法で得ることができる。なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は、溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0025】
正極活物質としては、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属元素が2種である複合酸化物、金属元素が3種類以上である複合酸化物等が挙げられるが、特に限定されない。
【0026】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であってもよい。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0027】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015/005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0028】
被覆材には、導電剤が含まれていてもよい。導電剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0029】
正極活物質層22aには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調節したもの、及び、特開平10-255805号公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。したがって、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極バインダー)と粘着性樹脂とは、異なる材料である。
【0030】
正極活物質層22aには、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていてもよい。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用できる。非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの(例えば、リン酸エステル、ニトリル化合物等及びこれらの混合物等)等が使用できる。例えば、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液を用いることができる。
【0031】
正極活物質層22aには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極集電体層21aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0032】
正極活物質層22aの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0033】
実施形態において、正極活物質層22aを形成するために供給される正極組成物は、正極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体である。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0034】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、正極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~15重量%とすることが望ましい。
【0035】
<負極集電体の具体例>
負極集電体層21bを構成する負極集電体としては、正極集電体で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体層21bは、電池特性等の観点から、樹脂集電体であることが好ましい。負極集電体層21bの厚さは、特に限定されないが、5~150μmであることが好ましい。
【0036】
<負極活物質の具体例>
負極活物質層22bは、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層22bを得る方法等は、正極活物質層22aが非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22aを得る方法と同様である。
【0037】
負極活物質としては、例えば、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物等を用いることができるが、特に限定されない。
【0038】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であってもよい。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0039】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0040】
負極活物質層22bは、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。電解液の組成は、正極活物質層22aに含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0041】
負極活物質層22bには、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、正極活物質層22aに含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0042】
負極活物質層22bには、粘着性樹脂が含まれていてもよい。粘着性樹脂としては、正極活物質層22aの任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0043】
負極活物質層22bの厚さは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0044】
実施形態において、負極活物質層22bを形成するために供給される負極組成物は、負極活物質と非水電解液を含んでなる湿潤粉体である。また、湿潤粉体はペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。
【0045】
湿潤粉体における非水電解液の割合は、特に限定されないが、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態とするためには、負極の場合には非水電解液の割合を湿潤粉体全体の0.5~25重量%とすることが望ましい。
【0046】
<セパレータの具体例>
セパレータ30に保持される電解質としては、例えば、電解液又はゲルポリマー電解質等が挙げられる。セパレータ30は、これらの電解質を用いることで、高いリチウムイオン伝導性が確保される。セパレータ30の形態としては、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム等が挙げられるが、特に限定されない。
【0047】
<枠体の具体例>
枠体35としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、例えば、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。枠体35を構成する材料としては、絶縁性、シール性(液密性)、電池動作温度下での耐熱性等を有するものであればよく、樹脂材料が好適に採用される。より具体的には、枠体35としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0048】
<製造装置及び電池用電極の製造方法>
次に、本実施形態の電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法(以下、製造方法と略して呼ぶ)について説明する。例えば、電池用電極製造装置及び電池用電極製造方法では、まず正極20a及び負極20bが製造される。正極20aの製造方法と負極20bの製造方法とは、主に電極活物質層22に含まれる電極活物質が異なる。ここでは、電極20の製造方法として、正極20a及び負極20bの製造方法をまとめて説明する。
【0049】
図2は、電池用電極製造装置1000の概略図である。例えば、電池用電極製造装置1000は、チャンバ100、回転マスク200、電極組成物供給装置300、圧縮装置400及び枠体供給装置500を含む。回転マスク200は、回転マスクの一例である。電極組成物供給装置300は、供給部の一例である。以下では一例として、帯状の基材フィルムが帯状の集電体21Bである場合について説明する。
【0050】
チャンバ100は、内部を大気圧よりも減圧された状態に保持できる部屋である。チャンバ100の内部は、図示しない減圧ポンプにより大気圧よりも減圧される。なお、標準大気圧は、約1013hPa(約105Pa)である。
【0051】
例えば、チャンバ100の外部に集電体ロール21Rが配置され、集電体ロール21Rから引き出された帯状の集電体21Bが、スリットを通してチャンバ100の内部に搬送される。以下、帯状の集電体21Bを集電体21Bと記載する場合がある。なお、集電体21Bは、上述した集電体21が所定の形状に切り出される前のものである。集電体21Bは、搬送方向Dに沿って所定の速度で搬送される。以下では、集電体21Bが搬送される方向を下流側D1、その反対方向を上流側D2として説明する。なお、集電体ロール21Rが配置されるチャンバ100の外部空間は、常圧であってもよいし、チャンバ100と異なるチャンバによって減圧されていてもよい。
【0052】
回転マスク200は、中空状のマスクを複数連結させて輪状に構成される。例えば、回転マスク200は、
図3に示すように、マスク201aと、マスク201bと、マスク201cとを連結して構成される。以下の説明においてマスク201a~201cを区別しない場合、単にマスク201とも記載する。
【0053】
電極組成物供給装置300は、チャンバ100内において、集電体21B上への電極組成物22cの供給を行なう。上述したように、実施形態において、電極活物質層22(正極活物質層22a、負極活物質層22b)を形成するために、電極組成物供給装置300から供給される電極組成物22c(正極組成物、負極組成物)は、電極活物質(正極活物質、負極活物質)と電解液(非水電解液)を含んでなる湿潤粉体である。また、実施形態において、電極組成物22cとしての湿潤粉体は、ペンデュラー状態又はファニキュラー状態であることがより好ましい。また、電極活物質は、高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆電極活物質である。このため、供給工程においては、電極組成物22cを柔らかい状態にしておくことが必要となる。
【0054】
具体的には、電極組成物供給装置300は、電極組成物22cを内部に保持するホッパ301を備える。電極組成物供給装置300は、ホッパ301の開口から、集電体21B上、且つ、マスク201の内部空間の位置に対して、電極組成物22cを供給する。
【0055】
電極組成物22cの供給について、
図4を用いて説明する。
図4の矢印に示すように、回転マスク200は、集電体21Bに当接する面の移動方向と集電体21Bの搬送方向(下流側D1)とが一致する方向に回転する。即ち、
図4においては、回転マスク200は、反時計回りに回転する。これにより、マスク201a~201cが、集電体21Bに対して順次当接する。
【0056】
電極組成物供給装置300が備えるホッパ301は、輪状の回転マスク200の内側に配置され、マスク201a~201cのうち、集電体21Bに対して当接しているマスク201の内部空間の位置に対して、電極組成物22cを供給する。なお、内部空間への電極組成物22cの供給が完了したマスク201は、回転マスク200の回転により集電体21Bから剥離される。即ち、回転マスク200の回転により、集電体21Bへのマスク201の供給及び回収が連続的に行なわれる。
【0057】
例えば、ホッパ301の開口の位置に図示しないシャッタが設けられ、当該シャッタがホッパ301の開口を開閉することによって電極組成物22cの供給及び停止を制御し、マスク201の内部空間の位置に対して電極組成物22cを供給することができる。
【0058】
或いは、電極組成物供給装置300は、ホッパ301の開口を、マスク201同士の連結部により開閉することで、電極組成物22cを供給してもよい。即ち、回転マスク200が回転している間、マスク201の内部空間と、マスク201同士の連結部とが交互に、ホッパ301の開口の位置を通過することとなる。ここで、ホッパ301の開口にマスク201の内部空間が位置している時には、ホッパ301の開口が開いた状態となり、電極組成物22cの供給が行なわれる。一方で、ホッパ301の開口にマスク201同士の連結部が位置している時には、ホッパ301の開口が閉じた状態となり、電極組成物22cの供給が停止される。
【0059】
回転マスク200は、
図4に示すように、ローラ202を更に備えてもよい。ローラ202は、集電体21B上に供給された電極組成物22cを圧縮する。例えば、ローラ202は、圧縮装置400による圧縮に先立って電極組成物22cを軽く圧縮することで、電極組成物22cの表面を整えるとともに、電極組成物22cの飛散を抑制する。
【0060】
図5に、回転マスク200及び電極組成物供給装置300の斜視図を示す。
図5に示すように、回転マスク200は、輪状の回転マスク200に対して内側から当接するガイド203によって、回転可能に保持される。
【0061】
ガイド203は、回転マスク200を回転させる駆動機構として動作してもよい。即ち、例えばモータ等によってガイド203が回転することにより、回転マスク200に動力を伝えて回転させることができる。或いは、
図5に図示しない駆動機構が更に設けられ、当該駆動機構が回転マスク200を回転させてもよい。例えば、輪状の回転マスク200に対して外側又は側面から当接する輪状部材を設け、モータ等によって当該輪状部材が回転することにより、回転マスク200を駆動することとしてもよい。
【0062】
図5に示すように、電極組成物供給装置300は、スクリューコンベア302を更に備えてもよい。スクリューコンベア302は、電極組成物22cを搬送して、ホッパ301の内部に供給する。
【0063】
図6に示すように、回転マスク200及びホッパ301を覆うカバー204と、カバー204の内部を排気する排気管205とを更に設けることとしてもよい。
図6は、
図5と同じ角度から回転マスク200及び電極組成物供給装置300を示した斜視図である。カバー204を設けることにより、ホッパ301からの電極組成物22cの供給時や、ローラ202による電極組成物22cの圧縮時において、電極組成物22cの飛散を抑制することができる。
【0064】
図2に戻って説明を続ける。圧縮装置400は、集電体21B上に供給された電極組成物22cを圧縮することで、
図1A及び
図1Bに示した電極活物質層22を形成する。具体的には、圧縮装置400は、集電体21B及び電極組成物22cを挟み込んで圧縮する。
【0065】
図2では圧縮装置400として一対のローラのみを示したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、電池用電極製造装置1000は、圧縮装置400として一対のローラを複数備え、電極組成物22cを段階的に圧縮する構成としても構わない。また、ローラと電極組成物22cとの間に離型フィルムを挟んだ状態で、電極組成物22cの圧縮を行なうこととしてもよい。これにより、電極組成物22cの一部がローラに付着することを回避し、電極組成物22cの表面をより平滑にすることができる。或いは、ローラと電極組成物22cとの間にセパレータ30を挟んだ状態で、電極組成物22cの圧縮を行なうこととしてもよい。これにより、電極組成物22cの表面をより平滑にすることができるとともに、正極20a又は負極20bに対してセパレータ30を供給する工程を省略することができる。
【0066】
枠体供給装置500は、搬送される集電体21Bに対して枠体35を供給する。例えば、枠体供給装置500は、ロボットアームを有し、事前に製造された枠体35を、搬送される集電体21B上の所定の位置に配置する。或いは、枠体35は、集電体21Bの上で製造されてもよい。一例を挙げると、集電体21Bを基材とし、ディスペンサーやコーター等によって集電体21B上に所定の材料を所定の形状に吐出又は塗布することで、集電体21B上に枠体35を形成することができる。
【0067】
枠体供給装置500が枠体35の供給を行なった後に、圧縮装置400による電極組成物22cの圧縮が行なわれてもよい。また、
図4及び
図5に示したローラ202が、圧縮装置400として機能する場合であってもよい。即ち、ローラ202は、集電体21B及び電極組成物22cを挟み込んで圧縮し、
図1A及び
図1Bに示した電極活物質層22を形成することとしてもよい。
【0068】
上述したように、回転マスク200は、中空状のマスク201を複数連結させて輪状に構成される。電極組成物供給装置300は、電極組成物22cを内部に保持するホッパ301の開口から、集電体21B上かつマスク201の内部空間の位置に対して電極組成物22cを供給する。回転マスク200は、集電体21Bに当接する面の移動方向と集電体21Bの搬送方向とが一致する方向に回転することで、複数のマスク201が集電体21Bに対して順次当接するように構成される。電極組成物供給装置300は、回転マスク200に含まれる複数のマスク201のうち、集電体21Bに対して当接しているマスク201の内部空間の位置に対して、電極組成物22cを供給する。これにより、実施形態の電池用電極製造装置1000は、集電体21B上への電極組成物22cの供給を精度良く行なうことができる。更に、
図3~
図6に示した通り、回転マスク200はコンパクトであり、集電体21B上へのマスクの供給及び回収を簡易な構成で実現することができる。回転マスク200の製造や、メンテナンス等を行なうことも容易であり、製造コストの削減が図られる。
【0069】
また、実施形態では、電極組成物供給装置300による電極組成物22cの供給や、圧縮装置400による電極組成物22cの圧縮といった各工程を、内部が大気圧よりも減圧されたチャンバ100内で実行する。これにより、電極組成物22cの内部に空気が残留することが防止でき、電極活物質層22の均一性を向上することができる。
【0070】
ここで、回転マスク200は簡易な構成となっており、サイズもコンパクトである。従って、回転マスク200を内部に格納するためにチャンバ100を大型化する必要はなく、この点でも製造コストが抑制される。
【0071】
上述した実施形態では、電極組成物22cが載置される帯状の基材フィルムが帯状の集電体21Bであるものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図2に示した帯状の集電体21Bに代えて、帯状のセパレータシートや、帯状の離形フィルムを基材フィルムとしてもよい。なお、帯状のセパレータシートは、後にトリミングすることで、
図1A及び
図1Bに示したセパレータ30を形成することができる。
【0072】
例えば、セパレータシートを基材フィルムとする場合、セパレータシート上に電極組成物22cを供給し、電極組成物22cにおけるセパレータシートと反対側の面に集電体21Bを供給し、更に、セパレータシート及び集電体21Bを所定の形状にトリミングすることで、正極20a又は負極20bを作製することができる。
【0073】
また、離形フィルムを基材フィルムとする場合、離形フィルム上に電極組成物22cを供給し、電極組成物22cにおける離形フィルムと反対側の面に集電体21Bを供給し、離形フィルムを回収した後、集電体21Bと反対側の面にセパレータシートを供給し、更に、集電体21B及びセパレータシートを所定の形状にトリミングすることで、正極20a又は負極20bを作製することができる。なお、セパレータシートを供給して後にトリミングすることに代え、電極組成物22cに対してセパレータ30を供給することとしても構わない。
【0074】
或いは、離形フィルム上に電極組成物22cを供給し、電極組成物22cにおける離形フィルムと反対側の面にセパレータシートを供給し、離形フィルムを回収した後、セパレータシートと反対側の面に集電体21Bを供給し、更に、セパレータシート及び集電体21Bを所定の形状にトリミングすることで、正極20a又は負極20bを作製することができる。なお、集電体21Bを供給して後にトリミングすることに代え、所定の形状にトリミングされた集電体21を電極組成物22cに対して供給することとしても構わない。
【0075】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。更に、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10:単セル
20:電極
20a:正極
20b:負極
21:集電体
21a:正極集電体層
21b:負極集電体層
21B:帯状の集電体
21R:集電体ロール
22:電極活物質層
22a:正極活物質層
22b:負極活物質層
22c:電極組成物
30:セパレータ
35:枠体
100:チャンバ
200:回転マスク
201a:マスク
201b:マスク
201c:マスク
202:ローラ
203:ガイド
204:カバー
205:排気管
300:電極組成物供給装置
301:ホッパ
302:スクリューコンベア
400:圧縮装置
500:枠体供給装置
1000:電池用電極製造装置
D:搬送方向
D1:下流側
D2:上流側