(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005379
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法、環状オレフィン系共重合体組成物、成形体、成形体の製造方法および光学レンズ
(51)【国際特許分類】
C08F 210/00 20060101AFI20230111BHJP
C08F 232/08 20060101ALI20230111BHJP
C08F 6/06 20060101ALI20230111BHJP
C07C 7/12 20060101ALN20230111BHJP
C07C 13/547 20060101ALN20230111BHJP
【FI】
C08F210/00
C08F232/08
C08F6/06
C07C7/12
C07C13/547
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107240
(22)【出願日】2021-06-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
(72)【発明者】
【氏名】春谷 昌克
(72)【発明者】
【氏名】和佐 英樹
(72)【発明者】
【氏名】木越 宣正
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 春佳
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AD17
4H006BA09
4H006BA30
4J100AA02P
4J100AR09Q
4J100AR09R
4J100AR11Q
4J100AR11R
4J100AR21Q
4J100AR21R
4J100CA05
4J100DA09
4J100DA25
4J100DA61
4J100DA62
4J100DA63
4J100FA09
4J100FA10
4J100FA19
4J100GA06
4J100GC07
4J100JA33
(57)【要約】
【課題】重合活性の低下が抑制されており、さらにヘイズおよび光線透過率等の光学特性の低下が抑制された成形体および光学レンズを得ることができる環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法は、芳香環を有する環状オレフィン(d)と、芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)とを含む組成物を精製して、前記酸化体(B)の量を低減する工程aと、工程aの後、炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)と、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(b)および/またはノルボルネン(c)と、前記組成物に含まれる前記芳香環を含有する環状オレフィン(d)とを共重合して環状オレフィン系共重合体(A)を製造する工程bと、を含み、環状オレフィン系共重合体(A)に対して、前記酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環を有する環状オレフィン(d)と、芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)とを含む組成物を精製して、前記酸化体(B)の量を低減する工程aと、
工程aの後、炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)と、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(b)および/またはノルボルネン(c)と、前記組成物に含まれる前記芳香環を含有する環状オレフィン(d)とを共重合して環状オレフィン系共重合体(A)を製造する工程bと、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、前記酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む、環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項2】
前記芳香環を有する環状オレフィン(d)は、ノルボルネン構造を有する、請求項1に記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項3】
前記酸化体(B)は、エポキシノルボルネン構造を含む、請求項2に記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項4】
前記工程aで、前記芳香環を含有する環状オレフィン(d)と前記酸化体(B)とを含む組成物中の前記酸化体(B)の量を、当該組成物に対して150ppm以下に低減する、請求項1~3のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項5】
構成単位(a1)、構成単位(bc1)、および構成単位(d1)の合計100モル%における、構成単位(a1)の含有量が40~80モル%の範囲にある、請求項1~4のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項6】
構成単位(bc1)および構成単位(d1)の合計100モル%における、構成単位(d1)の含有量が5~95モル%の範囲にある、請求項1~5のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項7】
構成単位(bc1)は、構成単位(b1)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項8】
芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、下記式(D-1)で示される化合物、下記式(D-2)で示される化合物、および下記式(D-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、請求項1~7のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【化1】
(上記式(D-1)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R
1~R
17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R
10~R
17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR
10とR
11、R
11とR
17、R
17とR
17、R
17とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
16、R
16とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化2】
(上記式(D-2)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R
18~R
31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
28とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化3】
(上記式(D-3)中、qは1、2または3であり、R
32~R
39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
36とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【請求項9】
酸化体(B)が、下記式(B-1)で示される化合物、下記式(B-2)で示される化合物、および下記式(B-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、請求項8に記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【化4】
(上記式(B-1)中、n、q、R
1~R
17は一般式(D-1)と同義である。)
【化5】
(上記式(B-2)中、n、m、q、R
18~R
31は一般式(D-2)と同義である。)
【化6】
(上記式(B-3)中、q、R
32~R
39は一般式(D-3)と同義である。)
【請求項10】
芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレンまたは1,4,4a,9a-テトラヒドロ-1,4-メタノフルオレンである、請求項1~9のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【請求項11】
下記の構成単位(a1)と、構成単位(b1)および構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む構成単位(bc1)と、構成単位(d1)と、を含む環状オレフィン系共重合体(A)と、
下記の芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)と、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む、環状オレフィン系共重合体組成物。
構成単位(a1):炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)由来の構成単位
構成単位(b1):テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(b)由来の構成単位
構成単位(c1):ノルボルネン(c)由来の構成単位
構成単位(d1):芳香環を含有する環状オレフィン(d)由来の構成単位
【請求項12】
前記芳香環を有する環状オレフィン(d)は、ノルボルネン構造を有する、請求項11に記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項13】
酸化体(B)は、エポキシノルボルネン構造を含む、請求項12に記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項14】
構成単位(a1)、構成単位(bc1)、および構成単位(d1)の合計100モル%における、構成単位(a1)の含有量が40~80モル%の範囲にある、請求項11~13のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項15】
芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、下記式(D-1)で示される化合物、下記式(D-2)で示される化合物、および下記式(D-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、請求項11~14のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【化7】
(上記式(D-1)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R
1~R
17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R
10~R
17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR
10とR
11、R
11とR
17、R
17とR
17、R
17とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
16、R
16とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化8】
(上記式(D-2)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R
18~R
31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
28とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化9】
(上記式(D-3)中、qは1、2または3であり、R
32~R
39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
36とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【請求項16】
酸化体(B)が、下記式(B-1)で示される化合物、下記式(B-2)で示される化合物、および下記式(B-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、請求項15に記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【化10】
(上記式(B-1)中、n、q、R
1~R
17は一般式(D-1)と同義である。)
【化11】
(上記式(B-2)中、n、m、q、R
18~R
31は一般式(D-2)と同義である。)
【化12】
(上記式(B-3)中、q、R
32~R
39は一般式(D-3)と同義である。)
【請求項17】
前記環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートのアッベ数νが35~55の範囲にある、請求項11~16のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項18】
前記環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートの複屈折が40nm未満である、請求項11~17のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項19】
前記環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートの波長450nmの平行光線透過率が85%以上である、請求項11~18のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項20】
芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレンまたは1,4,4a,9a-テトラヒドロ-1,4-メタノフルオレンである、請求項11~19のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【請求項21】
請求項11~20のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物を含んでなる成形体。
【請求項22】
下記の構成単位(a1)と、構成単位(b1)および構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む構成単位(bc1)と、構成単位(d1)と、を含む環状オレフィン系共重合体(A)と、
下記の芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)と、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む環状オレフィン系共重合体組成物を、金型内で成形する工程を含む、成形体の製造方法。
構成単位(a1):炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)由来の構成単位
構成単位(b1):テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(b)由来の構成単位
構成単位(c1):ノルボルネン(c)由来の構成単位
構成単位(d1):芳香環を含有する環状オレフィン(d)由来の構成単位
【請求項23】
請求項21に記載の成形体からなる光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法、環状オレフィン系共重合体組成物、成形体、成形体の製造方法および光学レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ等の光学レンズには環状オレフィン系重合体が用いられている。このような光学レンズ等の成形体に用いられる環状オレフィン系重合体には、ヘイズが低く、光線透過率が高いこと等の特性が要求される。
このような光学レンズに用いられる環状オレフィン系重合体に関する技術としては、例えば、特許文献1~3が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、環状オレフィンを、アルカリと接触させることにより得られた精製された環状オレフィンと、酸化防止剤とからなる環状オレフィン組成物が開示されている。当該文献には、精製された環状オレフィンに対し、さらに軽沸分および/または高沸分を除去することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、記エポキシド不純物を含む粗製ノルボルネン系化合物を所定の吸着剤と接触させることにより、精製ノルボルネン系化合物を得る工程と、前記精製ノルボルネン系化合物を含有する前記単量体を、遷移金属錯体触媒の存在下に重合させる工程と、を含む製造方法が開示されている。
特許文献3には、所定の多環芳香族ビニル化合物を含む単量体組成物から硫黄を除去する硫黄除去工程を含む、単量体組成物の精製方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-145855号公報
【特許文献2】国際公開第2020-071494号
【特許文献3】特開2020-050743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3に記載の環状オレフィン系重合体は、ヘイズおよび光線透過率に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、芳香環を有する環状オレフィンを用いて重合体を調製する場合、芳香環を有する環状オレフィンに当該化合物が酸化した酸化体が含まれており、この酸化体が光学特性を低下させたり、さらに触媒毒(触媒と反応して触媒作用を阻害する物質)になり触媒活性を低下させることを見出した。
【0008】
芳香環を有する環状オレフィンを合成する際に前記酸化体が生成しないようにするのは生産面で困難であり、さらに生成した前記酸化体を完全に除去するのは非常に困難であった。そのような事情に鑑み、本発明者らは、環状オレフィン系共重合体とともに含まれる前記酸化体の量が所定値以下であれば、重合活性の低下やヘイズおよび光線透過率等の光学特性の低下を抑制することができることを見出して本発明を完成させた。すなわち、本発明は、環状オレフィン系共重合体の生産性や製造コストの面から不純物である酸化体の許容値を見出した点に特徴がある。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0009】
[1] 芳香環を有する環状オレフィン(d)と、芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)とを含む組成物を精製して、前記酸化体(B)の量を低減する工程aと、
工程aの後、炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)と、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセン(b)および/またはノルボルネン(c)と、前記組成物に含まれる前記芳香環を含有する環状オレフィン(d)とを共重合して環状オレフィン系共重合体(A)を製造する工程bと、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、前記酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む、環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[2] 前記芳香環を有する環状オレフィン(d)は、ノルボルネン構造を有する、[1]に記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[3] 前記酸化体(B)は、エポキシノルボルネン構造を含む、[2]に記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[4] 前記工程aで、前記芳香環を含有する環状オレフィン(d)と前記酸化体(B)とを含む組成物中の前記酸化体(B)の量を、当該組成物に対して150ppm以下に低減する、[1]~[3]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[5] 構成単位(a1)、構成単位(bc1)、および構成単位(d1)の合計100モル%における、構成単位(a1)の含有量が40~80モル%の範囲にある、[1]~[4]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[6] 構成単位(bc1)および構成単位(d1)の合計100モル%における、構成単位(d1)の含有量が5~95モル%の範囲にある、[1]~[5]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[7] 構成単位(bc1)は、構成単位(b1)を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[8] 芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、下記式(D-1)で示される化合物、下記式(D-2)で示される化合物、および下記式(D-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、[1]~[7]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【化1】
(上記式(D-1)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R
1~R
17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R
10~R
17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR
10とR
11、R
11とR
17、R
17とR
17、R
17とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
16、R
16とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化2】
(上記式(D-2)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R
18~R
31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
28とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化3】
(上記式(D-3)中、qは1、2または3であり、R
32~R
39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
36とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
[9] 酸化体(B)が、下記式(B-1)で示される化合物、下記式(B-2)で示される化合物、および下記式(B-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、[8]に記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
【化4】
(上記式(B-1)中、n、q、R
1~R
17は一般式(D-1)と同義である。)
【化5】
(上記式(B-2)中、n、m、q、R
18~R
31は一般式(D-2)と同義である。)
【化6】
(上記式(B-3)中、q、R
32~R
39は一般式(D-3)と同義である。)
[10] 芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレンまたは1,4,4a,9a-テトラヒドロ-1,4-メタノフルオレンである、[1]~[9]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法。
[11] 下記の構成単位(a1)と、構成単位(b1)および構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む構成単位(bc1)と、構成単位(d1)と、を含む環状オレフィン系共重合体(A)と、
下記の芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)と、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む、環状オレフィン系共重合体組成物。
構成単位(a1):炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)由来の構成単位
構成単位(b1):テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセン(b)由来の構成単位
構成単位(c1):ノルボルネン(c)由来の構成単位
構成単位(d1):芳香環を含有する環状オレフィン(d)由来の構成単位
[12] 前記芳香環を有する環状オレフィン(d)は、ノルボルネン構造を有する、[11]に記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[13] 酸化体(B)は、エポキシノルボルネン構造を含む、[12]に記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[14] 構成単位(a1)、構成単位(bc1)、および構成単位(d1)の合計100モル%における、構成単位(a1)の含有量が40~80モル%の範囲にある、[11]~[13]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[15] 芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、下記式(D-1)で示される化合物、下記式(D-2)で示される化合物、および下記式(D-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、[11]~[14]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【化7】
(上記式(D-1)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2であり、R
1~R
17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R
10~R
17のうち一つは結合手であり、またq=0のときR
10とR
11、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR
10とR
11、R
11とR
17、R
17とR
17、R
17とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
16、R
16とR
10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化8】
(上記式(D-2)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3であり、R
18~R
31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
28とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
30とR
31、R
31とR
31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
【化9】
(上記式(D-3)中、qは1、2または3であり、R
32~R
39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、またq=1のときR
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR
36とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
38とR
39、R
39とR
39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。)
[16] 酸化体(B)が、下記式(B-1)で示される化合物、下記式(B-2)で示される化合物、および下記式(B-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含む、[15]に記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
【化10】
(上記式(B-1)中、n、q、R
1~R
17は一般式(D-1)と同義である。)
【化11】
(上記式(B-2)中、n、m、q、R
18~R
31は一般式(D-2)と同義である。)
【化12】
(上記式(B-3)中、q、R
32~R
39は一般式(D-3)と同義である。)
[17] 前記環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートのアッベ数νが35~55の範囲にある、[11]~[16]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[18] 前記環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートの複屈折が40nm未満である、[11]~[17]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[19] 前記環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、当該射出成形シートの波長450nmの平行光線透過率が85%以上である、[11]~[18]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[20] 芳香環を含有する環状オレフィン(d)が、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレンまたは1,4,4a,9a-テトラヒドロ-1,4-メタノフルオレンである、[11]~[19]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物。
[21] [11]~[20]のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体組成物を含んでなる成形体。
[22] 下記の構成単位(a1)と、構成単位(b1)および構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む構成単位(bc1)と、構成単位(d1)と、を含む環状オレフィン系共重合体(A)と、
下記の芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)と、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む環状オレフィン系共重合体組成物を、金型内で成形する工程を含む、成形体の製造方法。
構成単位(a1):炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)由来の構成単位
構成単位(b1):テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセン(b)由来の構成単位
構成単位(c1):ノルボルネン(c)由来の構成単位
構成単位(d1):芳香環を含有する環状オレフィン(d)由来の構成単位
[23] [21]に記載の成形体からなる光学レンズ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、重合活性の低下が抑制された環状オレフィン系共重合体組成物が得られる環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法を提供することができ、さらに当該組成物により、ヘイズおよび光線透過率等の光学特性の低下が抑制された成形体および光学レンズ、成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。また、「~」は特に断りがなければ「以上」から「以下」を表す。
【0012】
本実施形態の環状オレフィン系共重合体組成物は、
下記の構成単位(a1)と、構成単位(b1)および構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む構成単位(bc1)と、構成単位(d1)と、を含む環状オレフィン系共重合体(A)と、
下記の芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)と、を含み、
環状オレフィン系共重合体(A)に対して、酸化体(B)を0.01ppm~2.2ppm含む。
構成単位(a1):炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)由来の構成単位
構成単位(b1):テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(b)由来の構成単位
構成単位(c1):ノルボルネン(c)由来の構成単位
構成単位(d1):芳香環を含有する環状オレフィン(d)由来の構成単位
【0013】
本実施形態によれば、重合活性の低下が抑制された環状オレフィン系共重合体組成物を提供することができ、さらに当該組成物により、ヘイズおよび光線透過率等の光学特性の低下が抑制された成形体および光学レンズを提供することができる。すなわち、本発明は、環状オレフィン系共重合体の生産性や製造コストの面から不純物である酸化体の許容値を見出した点に特徴がある。
【0014】
[環状オレフィン系共重合体(A)]
本実施形態の環状オレフィン系共重合体(A)は、構成単位(a1)と、構成単位(b1)および構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む構成単位(bc1)と、構成単位(d1)と、を含む。
【0015】
(構成単位(a1))
本実施形態に係る構成単位(a1)は炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)由来の構成単位である。
【0016】
炭素原子数が2~20のα-オレフィン(a)としては、直鎖状でも分岐状でもよく、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が2~20の直鎖状α-オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン等の炭素原子数が4~20の分岐状α-オレフィン等が挙げられる。これらの中では、炭素原子数が2~4の直鎖状α-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。このような直鎖状または分岐状のα-オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の構成単位(a1)、構成単位(bc1)および構成単位(d1)の合計含有量を100モル%としたとき、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(a1)の含有量は、好ましくは40モル%以上80モル%以下、より好ましくは45モル%以上75モル%以下、さらに好ましくは50モル%以上70モル%以下である。
【0018】
上記構成単位(a1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる成形体の耐熱性や寸法安定性を向上させることができる。また、上記構成単位(a1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる成形体の透明性等を向上させることができる。
【0019】
すなわち、構成単位(a1)の含有量が上記数値範囲であることにより、耐熱性、寸法安定性および透明性にバランスよく優れる。
本実施形態において、構成単位(a1)の含有量は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
【0020】
(構成単位(bc1))
本実施形態に係る構成単位(bc1)は、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(b)由来の構成単位(b1)およびノルボルネン(ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン)(c)由来の構成単位(c1)から選択される少なくとも1種を含む。本実施形態において、構成単位(bc1)は構成単位(b1)を含むことが好ましい。
【0021】
本発明の効果の観点から、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の構成単位(a1)、構成単位(bc1)および構成単位(d1)の合計含有量を100モル%としたとき、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(bc1)の含有量は、好ましくは5モル%以上50モル%以下、より好ましくは10モル%以上40モル%以下、さらに好ましくは15モル%以上30モル%以下である。
【0022】
本実施形態において、構成単位(bc1)の含有量は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
【0023】
(構成単位(d1))
本実施形態に係る構成単位(d1)は、芳香環を含有する環状オレフィン(d)由来の構成単位である。
芳香環を含有する環状オレフィン(d)としては、本発明の効果を奏する範囲で従来公知の化合物から選択して用いることができる。
【0024】
本実施形態においては、芳香環を有する環状オレフィン(d)としては、ノルボルネン構造を有するものが好ましい。例えば、下記式(D-1)で示される化合物、下記式(D-2)で示される化合物、下記式(D-3)で示される化合物がより好ましい。これらの芳香環を有する環状オレフィンは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
【0026】
上記式(D-1)中、nおよびqはそれぞれ独立に0、1または2である。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0027】
R1~R17はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10~R17のうち一つは結合手であり、R15が結合手であることが好ましい。
R1~R17はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0028】
またq=0のときR10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=1または2のときR10とR11、R11とR17、R17とR17、R17とR12、R12とR13、R13とR14、R14とR15、R15とR16、R16とR16、R16とR10は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、また上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
上記式(D-1)の中でも、下記式(D-1A)で示される化合物が好ましい。
【0029】
【0030】
【0031】
上記式(D-2)中、nおよびmはそれぞれ独立に0、1または2であり、qは1、2または3である。mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。qは1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0032】
R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
R18~R31はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0033】
またq=1のときR28とR29、R29とR30、R30とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR28とR28、R28とR29、R29とR30、R30とR31、R31とR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0034】
【化16】
上記式(D-3)中、qは1、2または3であり、1または2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0035】
R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基である。
R32~R39はそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0036】
またq=1のときR36とR37、R37とR38、R38とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、またq=2または3のときR36とR36、R36とR37、R37とR38、R38とR39、R39とR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、また上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
【0037】
また、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0038】
これらの中でも、本実施形態に係る芳香環を有する環状オレフィン(d)としては、芳香環を1つ有しているものが好ましく、例えば、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレン(以下、ベンゾノルボルナジエンまたはBNBDとも記載される。)および1,4,4a,9a-テトラヒドロ-1,4-メタノフルオレン(以下、インデンノルボルネンとも記載される。)およびメチルフェニルノルボルネンから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0039】
また、本実施形態に係る芳香環を有する環状オレフィン(d)としては、例えば、下記式(D-1’)で示される化合物、下記式(D-2’)で示される化合物、下記式(D-3’)で示される化合物等も挙げられる。これらの芳香環を有する環状オレフィン(d)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
上記式(D-1’)、式(D-2’)および式(D-3’)において、mおよびnは0、1または2であり、R1~R36はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、R10とR11、R11とR12、R12とR13、R13とR14、R25とR26、R26とR27、R27とR28、R33とR34、R34とR35、R35とR36は互いに結合して単環を形成していてもよく、該単環が二重結合を有していてもよい。
【0044】
また、上記式(D-1’)、式(D-2’)および式(D-3’)において、mは0または1であることが好ましく、1であることがより好ましい。nは0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。R1~R36は水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0045】
また、炭素原子数1~20の炭化水素基としては、それぞれ独立に、例えば炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、および芳香族炭化水素基等が挙げられる。より具体的には、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基等が挙げられ、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基等が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基およびフェニルエチル基等のアリール基またはアラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基はフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0046】
これらの中でも、本実施形態に係る芳香環を有する環状オレフィン(d)としては、芳香環を1つ有しているものが好ましく、例えば、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレンおよび1,4,4a,9a-テトラヒドロ-1,4-メタノフルオレンから選択される少なくとも一種が好ましい。
【0047】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(bc1)および上記構成単位(d1)の合計含有量を100モル%としたとき、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(d1)の含有量は好ましくは5モル%以上95モル%以下、より好ましくは10モル%以上90モル%以下、さらに好ましくは20モル%以上80モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以上80モル%以下、さらにより好ましくは40モル%以上78モル%以下である。
【0048】
上記構成単位(d1)の含有量が上記下限値以上であることにより、得られる成形体において、高い屈折率としつつ、アッベ数をさらに低くすることができる。また、上記構成単位(d1)の含有量が上記上限値以下であることにより、得られる成形体の屈折率およびアッベ数のバランスをより良好にすることができる。
【0049】
本発明の効果の観点から、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の構成単位(a1)、構成単位(bc1)および構成単位(d1)の合計含有量を100モル%としたとき、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(d1)の含有量は、好ましくは5モル%以上45モル%以下、より好ましくは8モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以上25モル%以下である。
【0050】
本実施形態において、構成単位(d1)の含有量は、例えば、1H-NMRまたは13C-NMRによって測定することができる。
【0051】
[酸化体(B)]
酸化体(B)は、芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化により副生するものであり、当該環状オレフィン(d)を合成する際、当該環状オレフィン(d)を保管する際などにおいて生成される。
【0052】
芳香環を有する環状オレフィン(d)を合成する際、当該環状オレフィン(d)を保管する際などにおいて、酸化体(B)を生成しないようにするのは生産面から困難であり、さらに生成した酸化体(B)を完全に除去するのは非常に困難であることから、芳香環を含有する環状オレフィン(d)に含まれ、さらに当該環状オレフィン(d)を用いて合成される環状オレフィン系共重合体とともに含まれる。
【0053】
酸化体(B)は、芳香環を含有する環状オレフィン(d)中のノルボルネン構造の炭素炭素二重結合が酸化された構造を有する。炭素炭素二重結合が酸化された構造としては、エポキシ環(エポキシノルボルネン構造)、ケトン、水酸基等を挙げることができる。本実施形態において、酸化体(B)はエポキシノルボルネン構造を含むことができる。
【0054】
本実施形態の酸化体(B)は、下記式(B-1)で示される化合物、下記式(B-2)で示される化合物、および下記式(B-3)で示される化合物からなる群から選択される一種または二種以上含むことができる。
【0055】
【0056】
上記式(B-1)中、n、q、R1~R17は一般式(D-1)と同義である。
【0057】
【0058】
上記式(B-2)中、n、m、q、R18~R31は一般式(D-2)と同義である。
【0059】
【0060】
上記式(B-3)中、q、R32~R39は一般式(D-3)と同義である。
【0061】
酸化体(B)は、芳香環を含有する環状オレフィン(d)の二量体の酸化体を含むことができる。
例えば、芳香環を有する環状オレフィン(d)として、1,4-ジヒドロ-1,4-メタノナフタレン(BNBD)を用いた場合、二量体の酸化体には次の式で表わされる化合物が含まれる。
【0062】
【0063】
本発明の効果の観点から、酸化体(B)は、環状オレフィン系共重合体(A)に対して質量で0.01ppm~2.2ppm、好ましくは0.05ppm~2.2ppm、さらに好ましくは0.1ppm~2.2ppm含むことができる。
酸化体(B)の含有量はGC-MSの面積比(内部標準法)から求めることができる。
【0064】
環状オレフィン系共重合体組成物中の酸化体(B)の含有量は、原料である、酸化体(B)を含む芳香環を含有する環状オレフィン(d)組成物を精製することにより酸化体(B)の量を低減することができる。
精製方法は、従来公知の方法で実施できる。例えば、アルミナに浸漬して乾燥する方法が挙げられる。
精製工程において、芳香環を含有する環状オレフィン(d)組成物に対して、酸化体(B)が質量で150ppm以下に低減することが好ましい。より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは80ppm以下になるように精製する。
構成単位(d1)を多く含む環状オレフィン系共重合体を重合する場合、例えば環状オレフィン系共重合体中の構成単位(a1)、構成単位(bc1)および構成単位(d1)の合計含有量を100モル%としたとき、環状オレフィン系共重合体中の上記構成単位(d1)の含有量が、20モル%以上25モル%以下の場合、構造単位(d1)を、精製工程において、芳香環を含有する環状オレフィン(d)組成物に対して、酸化体(B)が質量で100ppm以下に低減することが好ましい。製造工程において、芳香環を有する環状オレフィン(d)の仕込み量と、得られる環状オレフィン系共重合体組成物中の酸化体(B)の含有量は、必ずしも比例関係にはない。しかしながら、酸化体(B)は重合工程での重合活性に影響するため、芳香環を有する環状オレフィン(d)の仕込み量が多い場合は、精製工程において、酸化体(B)の含有量をより低減することが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物に含まれる環状オレフィン系共重合体(A)は、例えば、特開昭60-168708号公報、特開昭61-120816号公報、特開昭61-115912号公報、特開昭61-115916号公報、特開昭61-271308号公報、特開昭61-272216号公報、特開昭62-252406号公報、特開昭62-252407号公報、特開2007-314806号公報、特開2010-241932号公報等の方法に従い適宜条件を選択し、上記の方法で酸化体(B)が低減された芳香環を含有する環状オレフィン(d)組成物を用いることにより合成され、環状オレフィン系共重合体(A)とともに芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)も含まれる。すなわち、当該合成方法により、環状オレフィン系共重合体(A)と酸化体(B)とを含む環状オレフィン系共重合体組成物が得られる。
【0066】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法は、具体的に、
芳香環を含有する環状オレフィン(d)と芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)とを含む組成物を精製して、酸化体(B)の量を低減する工程aと、
工程aの後、前記化合物(a)と、化合物(b)および/または化合物(c)と、前記組成物に含まれる化合物(d)とを共重合して環状オレフィン系共重合体(A)を製造する工程bと、
を含む。
【0067】
工程aの後、芳香環を含有する環状オレフィン(d)と芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)とを含む組成物中に含まれる前記酸化体(B)の量はガスクロマトグラフ等の方法で確認できる。芳香環を含有する環状オレフィン(d)と芳香環を含有する環状オレフィン(d)の酸化体(B)とを含む組成物中に含まれる前記酸化体(B)の量が、芳香環を含有する環状オレフィン(d)組成物に対して、質量で好ましくは150ppm以下に低減されていない場合は、工程aを繰り返し行うことができる。
【0068】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物は、環状オレフィン系共重合体(A)と酸化体(B)とを含み、必要に応じて、さらにその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、親水性安定剤等が挙げられる。親水性安定剤を含むと、高温高湿条件下における光学性能の劣化が抑制でき、より好ましい。
【0069】
親水性安定剤は、脂肪酸と多価アルコールとの脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸とエーテル基を1つ以上有する多価アルコールとの脂肪酸エステルがより好ましい。
【0070】
脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等を挙げることができる。
【0071】
脂肪酸とエーテル基を1つ以上有する多価アルコールとの脂肪酸エステルは、脂肪酸と、エーテル基を1つ以上有する多価アルコールとのエステルである。なお、多価アルコールのエーテル基は、エステル基中のエーテル基を含まない。
【0072】
エーテル基を1つ以上有する多価アルコールとしては、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ソルビタン等を挙げることができる。
【0073】
本実施形態において、脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、トリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。ジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンに含まれる4つのヒドロキシ基の少なくとも1つが脂肪酸とエステル化したものである。
【0074】
脂肪酸としては、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸;クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸等のモノ不飽和脂肪酸;リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等のジ不飽和脂肪酸;リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、エイコサトリエン酸等のトリ不飽和脂肪酸;ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸等のテトラ不飽和脂肪酸;などを挙げることができる。
【0075】
ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノカプリレート、ジグリセリンジカプリレート、ジグリセリンモノカプレート、ジグリセリンジカプレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート、ジグリセリンモノミリステート、ジグリセリンジミリステート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノベヘネート、ジグリセリンジベヘネート等のジグリセリン飽和脂肪酸エステル;ジグリセリンモノオレート、ジグリセリンジオレート、等のジグリセリン不飽和脂肪酸エステル;等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
本実施形態において、ジグリセリン脂肪酸エステルは、ジグリセリンと、上記から選択される炭素数12~18の飽和または不飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
【0077】
なお、本実施形態の効果の観点から、ジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを主成分として含むことが好ましく、そのうちでもジグリセリンモノオレートを主成分として含むことがより好ましい。ジグリセリン骨格が親水性を有し、脂肪酸が樹脂との相溶性を改善するため、透明性が維持されるとともに、耐湿熱性に優れる。
【0078】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物は、少なくとも1種のジグリセリン脂肪酸エステルを含むことができる。少なくとも1種のジグリセリン脂肪酸エステルの好ましい態様としては、モノエステル単独、またはモノエステルとジエステルとの組合せを挙げることができる。
トリグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸と、トリグリセリンとのエステルである。
本実施形態に係るトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンに含まれる5つのヒドロキシ基の少なくとも1つが脂肪酸とエステル化したものである。
【0079】
トリグリセリン脂肪酸エステルとしては、トリグリセリンモノカプリレート、トリグリセリンジカプリレート、トリグリセリントリカプリレート、トリグリセリンモノカプレート、トリグリセリンジカプレート、トリグリセリントリカプレート、トリグリセリンモノラウレート、トリグリセリンジラウレート、トリグリセリントリラウレート、トリグリセリンモノミリステート、トリグリセリンジミリステート、トリグリセリントリミリステート、トリグリセリンモノパルミテート、トリグリセリンジパルミテート、トリグリセリントリパルミレート、トリグリセリンモノステアレート、トリグリセリンジステアレート、トリグリセリントリステアレート、トリグリセリンモノベヘネート、トリグリセリンジベヘネート、トリグリセリントリベヘネート等のトリグリセリン飽和脂肪酸エステル;トリグリセリンモノオレート、トリグリセリンジオレート、トリグリセリントリオレート等のトリグリセリン不飽和脂肪酸エステル;等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
本実施形態に係るトリグリセリン脂肪酸エステルは、トリグリセリンと炭素数8以上24以下の飽和または不飽和脂肪酸とのエステルを含むことが好ましく、トリグリセリンと炭素数12以上18以下の飽和または不飽和脂肪酸とのエステルを含むことがより好ましい。
【0081】
本実施形態に係るトリグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノエステル単独、モノエステルとジエステルとの混合物またはモノエステルとジエステルとトリエステルとの混合物等を挙げることができる。
【0082】
このようなトリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、特開2006-232714号公報、特開2002-275308号公報、特開平10-165152号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0083】
本実施形態に係る親水性安定剤の市販品としては、例えば、リケマールDO-100(理研ビタミン社製)、エキセパールPE-MS(花王社製)などが挙げられる。
【0084】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物において、親水性安定剤の含有量の下限は、環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.4質量部以上であることがより好ましい。親水性安定剤の含有量の上限は環状オレフィン系共重合体(A)100質量部に対して、3.0質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、1.2質量部以下であることがさらに好ましい。
【0085】
<環状オレフィン系共重合体組成物>
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物において、環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、ASTM D542に準じて測定される上記射出成形シートの波長589nmにおける屈折率(nd)は好ましくは1.545以上、好ましくは1.550以上、より好ましくは1.555以上である。上記屈折率(nd)の上限は特に限定されないが、例えば、1.580以下である。
【0086】
屈折率が上記範囲内であると、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物を用いて得られる成形体の光学特性を良好に保ちつつ、厚みをより薄くすることができる。
【0087】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物において、得られる成形体の透明性をより向上させる観点から、環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、JIS K7136に準拠して測定される上記射出成形シートのヘイズが好ましくは5%未満である。
【0088】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物において、得られる成形体のアッベ数(ν)をより適した範囲に調整する観点から、環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、上記射出成形シートのアッベ数(ν)は、好ましくは35以上55以下、より好ましくは40以上50以下、さらに好ましくは43以上47以下である。
【0089】
上記射出成形シートのアッベ数(ν)は、当該射出成形シートの23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率から、下記式を用いて算出することができる。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0090】
また、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物において、得られる成形体の複屈折をより適した範囲に調整する観点から、環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、上記射出成形シートの複屈折は、好ましくは40nm未満である。
【0091】
本実施形態において、上記射出成形シートの複屈折は、王子計測機器社製のKOBRA CCDを用いて、測定波長650nmで測定される、ゲート方向から20~35mmの位相差の平均値である。
【0092】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物において、得られる成形体の平行光線透過率をより適した範囲に調整する観点から、環状オレフィン系共重合体組成物からなる厚さ1.0mmの射出成形シートを作製したとき、上記射出成形シートの波長450nmでの平行光線透過率が85%以上であることが好ましい。本実施形態においては、光線透過率の低下が抑制されており、平行光線透過率を上記範囲に維持することができる。
【0093】
示差走査熱量計(DSC)で測定される、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物のガラス転移温度(Tg)は、得られる成形体の透明性、ヘイズ、アッベ数、複屈折および屈折率等を良好に保ちつつ、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは120℃以上180℃以下であり、より好ましくは130℃以上170℃以下、さらに好ましくは140℃以上160℃以下である。
【0094】
本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物の極限粘度[η](135℃デカリン中)は、例えば0.05~5.0dl/gであり、好ましくは0.2~4.0dl/gであり、さらに好ましくは0.3~2.0dl/g、特に好ましくは0.4~1.0dl/gである。
【0095】
[成形体]
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体組成物からなる成形体である。
【0096】
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)を含むため、耐熱性、透明性、ヘイズ、複屈折、耐薬品性および低吸湿性等のバランスに優れるとともに、さらに高い屈折率を有しつつ、従来の樹脂材料よりも低いアッベ数を示す。そのため、光学レンズの用途に好適である。
【0097】
本実施形態に係る成形体は光学特性に優れるため、例えば、眼鏡レンズ、fθレンズ、ピックアップレンズ、撮像用レンズ、センサーレンズ、プリズム、導光板、車載カメラレンズ等の光学レンズとして好適に用いることができ、高い屈折率を有しつつ、従来の樹脂材料よりも低いアッベ数を示すため、撮像用レンズとして特に好適に用いることができる。
【0098】
撮像用レンズのユニットは、アッベ数及び屈折率の異なる複数のレンズで構成されており、一般的に、アッベ数が大きいレンズと、アッベ数が小さいレンズを複数枚組み合わせている。本実施形態に係る成形体は、高アッベ数と低アッベ数の中間領域に該当するレンズとして好適に用いることができ、レンズユニットの設計の自由度を向上しうる。
【0099】
また、本実施形態に係る成形体中の環状オレフィン系共重合体(A)の含有量は、透明性、ヘイズ、複屈折、アッベ数および屈折率の性能バランスをより向上させる観点から、当該成形体の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以上100質量%以下であり、特に好ましくは90質量%以上100質量%以下である。
【0100】
本実施形態に係る成形体は、環状オレフィン系共重合体(A)を含む樹脂組成物を金型内で所定の形状に成形することにより得ることができる。環状オレフィン系共重合体(A)を含む樹脂組成物を成形して成形体を得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。その用途および形状にもよるが、例えば、押出成形、射出成形、圧縮成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が適用可能である。これらの中でも、成形性、生産性の観点から射出成形法が好ましい。また、成形条件は使用目的、または成形方法により適宜選択されるが、例えば射出成形における樹脂温度は、通常150℃~400℃、好ましくは200℃~350℃、より好ましくは230℃~330℃の範囲で適宜選択される。
【0101】
本実施形態に係る成形体は、レンズ形状、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状等の種々の形態で使用することができる。
【0102】
本実施形態に係る成形体または環状オレフィン系共重合体組成物には、必要に応じて、本実施形態に係る成形体の良好な物性を損なわない範囲内で任意成分として公知の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、フェノール系安定剤、高級脂肪酸金属塩、酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、塩酸吸収剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、スリップ剤、核剤、可塑剤、難燃剤、リン系安定剤等を本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。
【0103】
本実施形態に係る光学レンズは、上記光学レンズとは異なる光学レンズと組み合わせて光学レンズ系としてもよい。
すなわち、本実施形態に係る光学レンズ系は、本実施形態に係る環状オレフィン系共重合体(A)を含む成形体により構成された第1の光学レンズと、上記第1の光学レンズとは異なる第2の光学レンズと、備える。
【0104】
上記第2の光学レンズとしては特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂により構成された光学レンズを用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成を採用することができる。
【実施例0105】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各製造例、実施例および比較例において、各種物性は下記の方法によって測定または評価した。
【0106】
[ベンゾノルボルナジエン(BNBD)中の酸化体含有量の測定方法]
BNBD中の酸化化合物含有量は、GC2014 SHIMADZU GASCHROMATOGRAPHを用い、下記条件で測定することにより行った。
注入量:2μL
注入モード:スプリット
スピリット比:30
気化室温度:280℃
キャリアガス:He
制御モード:線速度
全流量:119mL/min
カラム流量:3.75mL/min
線速度:28.9cm/sec
圧力:21.2kPa
カラム名称:DB1
カラムサイズ:長さ30.0m、内径0.53mmID
検出器温度:320℃
測定限界:1.0ppm
内部標準法(クメン)により定量を行った。
【0107】
[ポリマー中のBNBD由来の酸化体含有量の測定方法]
ソックスレー抽出(アセトン/ヘキサン=1/1(v/v))で7時間行い定容したものを上記BNBD中の酸化化合物含有量の測定方法と同様の方法にて分析した。
【0108】
[環状オレフィン系共重合体を構成する各構成単位の含有量の測定方法]
エチレン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンおよび芳香環を有する環状オレフィンの含有量は、日本電子社製「ECA500型」核磁気共鳴装置を用い、下記条件で測定することにより行った。
溶媒:重テトラクロロエタン
サンプル濃度:50~100g/l-solvent
パルス繰り返し時間:5.5秒
積算回数:6000~16000回
測定温度:120℃
上記のような条件で測定した13C-NMRスペクトルにより、エチレン、テトラシクロドデセンおよび芳香環を有する環状オレフィンの組成をそれぞれ定量した。
【0109】
[ガラス転移温度Tg(℃)]
島津サイエンス社製、DSC-6220を用いてN2(窒素)雰囲気下で環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度Tgを測定した。環状オレフィン系共重合体を常温から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に5分間保持し、次いで10℃/分の降温速度で-20℃まで降温した後に5分間保持した。そして10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する際の吸熱曲線から環状オレフィン系共重合体のガラス転移点(Tg)を求めた。
【0110】
[極限粘度[η]]
移動粘度計(離合社製、タイプVNR053U型)を用い、環状オレフィン系共重合体の0.25~0.30gを25mlのデカリンに溶解させたものを試料とした。ASTM J1601に準じ135℃にて環状オレフィン系共重合体の比粘度を測定し、これと濃度との比を濃度0に外挿して環状オレフィン系共重合体の極限粘度[η]を求めた。
【0111】
[マイクロコンパウンダー成形]
環状オレフィン系共重合体組成物を、Xplore Instruments社製の小型混練機を用いて、混練温度=280℃、50rpmで5分間混練後、Xplore Instruments社製の射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、射出圧力=12~15bar、金型温度135℃の条件にて射出成形し、厚み1.0mmの射出成形シートをそれぞれ作製した。
【0112】
[内部ヘイズ]
マイクロコンパウンダーで成形した30mm×30mm×厚み1.0mmの射出成形シートを用いて、ベンジルアルコールを使用し、JIS K7136に基づいて測定した。次いで、以下の基準で内部ヘイズをそれぞれ評価した。
○:5%未満
×:5%以上
【0113】
[複屈折]
マイクロコンパウンダーで成形した30mm×30mm×厚み1.0mmの射出成形シートについて、王子計測機器社製のKOBRA-CCDを用いて、測定波長650nmで、ゲート方向から20~35mmの位相差の平均値を求めた。
次いで、以下の基準で複屈折をそれぞれ評価した。
◎:位相差の平均値が30nm未満
○:位相差の平均値が30nm以上40nm未満
×:位相差の平均値が40nm以上
【0114】
[屈折率]
屈折率計(島津サイエンス社製、KPR200)を用いて、ASTM D542に準じて、マイクロコンパウンダーで成形した30mm×30mm×厚み1.0mmの射出成形シートの波長589nmにおける屈折率(nd)をそれぞれ測定した。
【0115】
[アッベ数(ν)]
マイクロコンパウンダーで成形した30mm×30mm×厚み1.0mmの射出成形シートについて、アッベ屈折計を用い、23℃下での波長486nm、589nmおよび656nmの屈折率を測定し、さらに下記式を用いてアッベ数(ν)を算出した。
ν=(nD-1)/(nF-nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0116】
[平行光線透過率測定]
マイクロコンパウンダーで成形した30mm×30mm×厚み1.0mmの射出成形シートを用いて、紫外可視近赤外分光光度計(日立ハイテクサイエンス製UH4150)を用いて、波長450nmの平行光線透過率を測定した。
【0117】
<芳香環を含有する環状オレフィン(d)の調製>
[製造例1]
アルミナ(住友活性アルミナ NKHD-24)を150℃、24時間で乾燥させた。60質量%のベンゾノルボルナジエン(以下、BNBDとも呼ぶ。)に40質量%の上記乾燥アルミナを窒素雰囲気室温にて24時間浸漬させた。BNBDの酸化化合物量はGC2014 SHIMADZU GASCHROMATOGRAPHにて測定した。結果を表1に示す。
【0118】
[製造例2]
アルミナ(住友活性アルミナ NKHD-24)を150℃、24時間で乾燥させた。80質量%のBNBDに20質量%の上記乾燥アルミナを窒素雰囲気室温にて24時間浸漬させた。結果を表1に示す。
【0119】
[製造例3]
アルミナ(住友活性アルミナ NKHD-24)を150℃、24時間で乾燥させた。90質量%のBNBDに10質量%の上記乾燥アルミナを窒素雰囲気室温にて24時間浸漬させた。結果を表1に示す。
【0120】
[製造例4]
アルミナ(住友活性アルミナ NKHD-24)を150℃、24時間で乾燥させた。95質量%のBNBDに5質量%の上記乾燥アルミナを窒素雰囲気室温にて24時間浸漬させた。結果を表1に示す。
【0121】
[製造例5]
アルミナ(住友活性アルミナ NKHD-24)を150℃、24時間で乾燥させた。98質量%のBNBDに2質量%の上記乾燥アルミナを窒素雰囲気室温にて24時間浸漬させた。結果を表1に示す。
【0122】
[製造例6]
BNBD100mLに空気を100mL/minで168時間間吹き込んだ。結果を表1に示す。
生成したBNBD酸化化合物を1H-NMR(日本電子製ECX-400P)にて分析したところ、BNBDの2重結合部分がエポキシ基になった1a,2,7,7a-tetrahydro-2,7-methanonaphtho[2,3-b]oxireneであった。
【0123】
【0124】
[実施例1]
攪拌装置を備えた容積500mlのガラス製反応容器に不活性ガスとして窒素を100NL/hrの流量で30分間流通させた後、シクロヘキサン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(40mmol、以下、テトラシクロドデセンとも呼ぶ。)、および製造例1で調製したBNBD(88mmol)を加えた。次いで回転数600rpmで重合溶媒を攪拌しながら溶媒温度を50℃に昇温した。溶媒温度が所定の温度に達した後、流通ガスを窒素からエチレンに切り替え、エチレンを50NL/hr、水素を2.0NL/hrの供給速度で反応容器に流通させ、10分経過した後に、ポリメチルアルミノキサン(PMAO)(1.8mmol)、特開2010-241932号公報の実施例1記載の錯体化合物(A1)(0.0030mmol)をガラス製反応容器に添加し、重合を開始させた。
10分間経過した後、イソブチルアルコールを5ml添加して重合を停止させ、エチレン、テトラシクロドデセンおよびBNBDの共重合体とBNBD酸化体を含む重合溶液を得た。その後、重合溶液を1L分液ロートに移液し、さらに0.1mol/L塩酸を油層/水層=1/1vol%になるように加え、振盪し脱灰操作を行った。さらに純水で2回洗浄した。油層をテフロンバットに移液し窒素雰囲気下室温にて溶媒を揮発させた後、130℃で10時間減圧乾燥を行った。BNBD酸化化合物を含む白色パウダー状のエチレン・テトラシクロドデセン・BNBD共重合体組成物5.01gが得られた。触媒中のTi原子1mmol当たりの重合活性は1.67kg/mmol-Tiであった。
以上により、環状オレフィン系共重合体組成物(P-1)を得た。結果を表2に示す。
活性比は実施例1の重合活性を基準とし、実施例1の重合活性との比を算出した。
【0125】
[実施例2]
BNBDとして製造例2で調製したBNBDを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作を行い、環状オレフィン系共重合体組成物(P-2)を得た。結果を表2に示す。
【0126】
[実施例3]
BNBDとして製造例3で調製したBNBDを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作を行い、環状オレフィン系共重合体組成物(P-3)を得た。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例1]
BNBDとして製造例4で調製したBNBDを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作を行い、環状オレフィン系共重合体組成物(P-4)を得た。結果を表2に示す。
【0128】
[比較例2]
BNBDとして製造例5で調製したBNBDを用いたこと以外は、実施例1と同様に操作を行い、環状オレフィン系共重合体組成物(P-5)を得た。結果を表2に示す。
【0129】
[比較例3]
窒素雰囲気下、実施例1で得られた環状オレフィン系共重合体組成物(P-1)4.5gをシクロヘキサン900mLに溶解させた。製造例6で調製したBNBD0.16gをシクロヘキサン100mLに溶解させたものをこのポリマー溶液に添加した。30分間攪拌した後、テフロンバットに移液し窒素雰囲気下室温にて溶媒を揮発させた。130℃で10時間減圧乾燥を行った。BNBD酸化体を含む白色パウダー状のエチレン・テトラシクロドデセン・BNBD共重合体組成物4.38gが得られた。 以上により、環状オレフィン系共重合体組成物(P-6)を得た。結果を表2に示す。尚、比較例3は、実施例1で得られた組成物(P-1)に製造例6で調製したBNBDを混合したものであり、製造例6で調整したBNBDは共重合に関与していないため、活性比は記載しなかった。
【0130】
[比較例4]
BNBDとして製造例6で得られたBNBDとBNBD酸化化合物の混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作を行ったが、環状オレフィン系共重合体は重合できなかった。
【0131】
【0132】
<実施例と比較例の対比>
実施例1~3により、BNBDの酸化体の含有量が0.01ppm~2.2ppmの範囲内であれば良好な透過率を示し、光学レンズに求められる諸特性を満たしつつ、高い屈折率および低いアッベ数を示した。一方、比較例1~3により、BNBD酸化化合物の含有量が2.3ppm以上であると透過率が悪化し、光学特性に劣っていた。