(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053793
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】駆除忌避剤及び駆除忌避方法
(51)【国際特許分類】
A01N 25/18 20060101AFI20230406BHJP
A01N 43/90 20060101ALI20230406BHJP
A01N 65/22 20090101ALI20230406BHJP
A01N 35/06 20060101ALI20230406BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20230406BHJP
A01N 37/02 20060101ALI20230406BHJP
A01N 43/36 20060101ALI20230406BHJP
A01N 43/40 20060101ALI20230406BHJP
A01N 35/04 20060101ALI20230406BHJP
A01N 43/60 20060101ALI20230406BHJP
A01N 43/78 20060101ALI20230406BHJP
A01N 37/40 20060101ALI20230406BHJP
A01N 65/06 20090101ALI20230406BHJP
A01N 27/00 20060101ALI20230406BHJP
A01N 31/06 20060101ALI20230406BHJP
A01N 35/02 20060101ALI20230406BHJP
A01N 65/08 20090101ALI20230406BHJP
A01N 37/44 20060101ALI20230406BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20230406BHJP
A01P 7/00 20060101ALI20230406BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20230406BHJP
A01M 29/34 20110101ALI20230406BHJP
【FI】
A01N25/18 102D
A01N43/90 101
A01N65/22
A01N35/06
A01N31/02
A01N37/02
A01N43/36 B
A01N43/40 101A
A01N35/04
A01N43/60
A01N43/36 Z
A01N43/78 C
A01N37/40
A01N65/06
A01N27/00
A01N31/06
A01N35/02
A01N65/08
A01N37/44
A01N37/10
A01P7/00
A01P17/00
A01M29/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163051
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 正明
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA16
2B121CA02
2B121CC21
2B121CC27
2B121EA01
2B121FA13
4H011AE01
4H011AE02
4H011BB01
4H011BB03
4H011BB05
4H011BB06
4H011BB08
4H011BB09
4H011BB10
4H011BB22
4H011DA21
4H011DD05
(57)【要約】
【課題】ムカデ類に対して駆除及び忌避の双方の効果を奏し、空間内へ設置可能な、駆除忌避剤及び駆除忌避方法を提供する。
【解決手段】ムカデ類を駆除及び忌避する駆除忌避剤であって、ローズマリーオイル、1,8-シネオール、ツジョン、3-メチル-2-ブタノール、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、3-メチル-2-ブテン-1-オール、tert-ブチル酢酸エチル、ピロリジン、2,6-ルチジン、2-ペンタノール、酢酸シクロヘキシル、5-エチル-2-メチルピリジン、アセトフェノン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、ピロール、3-メチル-1-ブタノール、2-エトキシチアゾール、及びサリチル酸メチル等からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有し、かつ前記有効成分を空間内に揮散させて用いられることを特徴とする駆除忌避剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムカデ類を駆除及び忌避する駆除忌避剤であって、
ローズマリーオイル、1,8-シネオール、ツジョン、3-メチル-2-ブタノール、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、3-メチル-2-ブテン-1-オール、tert-ブチル酢酸エチル、ピロリジン、2,6-ルチジン、2-ペンタノール、酢酸シクロヘキシル、5-エチル-2-メチルピリジン、アセトフェノン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、ピロール、3-メチル-1-ブタノール、2-エトキシチアゾール、サリチル酸メチル、メントン、ヒノキオイル、リモネン、テルピネン-4-オール、1-オクテン-3-オール、プレゴン、ヘキサナール、p-メンタン、オイルマスタード、3-オクタノール、ブチルスルフィド、N-メチルアントラニル酸メチル、プロピオン酸エチル、1-ペンタノール、酪酸イソアミル、2,3-ジエチルピラジン、安息香酸エチル、酢酸(-)-メンチル、α-ピネン、p-シメン、プロピオン酸ベンジル、及び酢酸リナリルからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有し、かつ
前記有効成分を空間内に揮散させて用いられることを特徴とする駆除忌避剤。
【請求項2】
ムカデ類を駆除及び忌避する駆除忌避方法であって、
請求項1に記載の駆除忌避剤を空間内に設置し、前記駆除忌避剤における前記有効成分を前記空間内に揮散させることでムカデ類を駆除及び忌避することを特徴とする駆除忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆除忌避剤及び駆除忌避方法に関し、詳しくはムカデ類を駆除及び忌避するための駆除忌避剤及び駆除忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ムカデ類は、見た目の不快感や、毒を有するため咬まれた際に腫れるなど人体に害を及ぼすため、防除の対象とされている。そのため、これらの駆除剤や忌避剤として各種精油の適用等が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ハッカ油を殺虫成分とし、メントングリセリンアセタールを有効成分とする保留剤を含有し、それらを特定量含むムカデ用殺虫剤が提案されている。また、特許文献2では、植物の抽出成分、精油を有効成分とするムカデ用忌避剤が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-069322号公報
【特許文献2】特開平4-069308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、忌避剤は屋外からの侵入を防ぐ点で有効であるが、完全に侵入を防ぐことができるわけではない。そのため、侵入したムカデ類による被害を防ぐことが難しい。
一方で、ムカデ類に直接噴射することで駆除する駆除剤は、ムカデ類を見つけたときに直接駆除できるものの、侵入を未然に防ぐことはできない。
【0006】
また、害虫の駆除剤や忌避剤の態様として、噴霧型、散布型、粉剤、設置型等、様々な態様があるが、特に設置型の場合、人体への影響が少ない安全な成分によりそれら剤が構成されることが求められる。
【0007】
これに対し、ひとつの製剤でムカデ類に対して駆除効果と忌避効果を奏せば、忌避効果によりムカデ類の侵入を防ぎつつ、仮に侵入した場合でも、駆除効果によりムカデ類を駆除できる。
すなわち、本発明は、ムカデ類に対して駆除及び忌避の双方の効果を奏し、空間内へ設置可能な、駆除忌避剤及び駆除忌避方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特定の成分がムカデ類に対して駆除及び忌避の双方の効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は下記[1]、[2]により達成される。
[1] ムカデ類を駆除及び忌避する駆除忌避剤であって、ローズマリーオイル、1,8-シネオール、ツジョン、3-メチル-2-ブタノール、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、3-メチル-2-ブテン-1-オール、tert-ブチル酢酸エチル、ピロリジン、2,6-ルチジン、2-ペンタノール、酢酸シクロヘキシル、5-エチル-2-メチルピリジン、アセトフェノン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、ピロール、3-メチル-1-ブタノール、2-エトキシチアゾール、サリチル酸メチル、メントン、ヒノキオイル、リモネン、テルピネン-4-オール、1-オクテン-3-オール、プレゴン、ヘキサナール、p-メンタン、オイルマスタード、3-オクタノール、ブチルスルフィド、N-メチルアントラニル酸メチル、プロピオン酸エチル、1-ペンタノール、酪酸イソアミル、2,3-ジエチルピラジン、安息香酸エチル、酢酸(-)-メンチル、α-ピネン、p-シメン、プロピオン酸ベンジル、及び酢酸リナリルからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有し、かつ前記有効成分を空間内に揮散させて用いられることを特徴とする駆除忌避剤。
[2] ムカデ類を駆除及び忌避する駆除忌避方法であって、前記[1]に記載の駆除忌避剤を空間内に設置し、前記有効成分を前記空間内に揮散させることでムカデ類を駆除及び忌避することを特徴とする駆除忌避方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る駆除忌避剤によれば、ムカデ類に対して駆除効果と忌避効果の双方が得られる。また、上記駆除忌避剤は人体への影響が少ない安全な成分を有効成分とするため、空間内へ設置可能である。
本発明に係る駆除忌避方法についても同様に、空間内へ駆除忌避剤を設置させて有効成分を空間内に揮散させることで、ムカデ類に対して駆除効果及び忌避効果の双方を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<駆除忌避剤>
本実施形態に係る駆除忌避剤の対象害虫はムカデ類である。
上記駆除忌避剤は、ローズマリーオイル、1,8-シネオール、ツジョン、3-メチル-2-ブタノール、イソ酪酸エチル、酪酸エチル、3-メチル-2-ブテン-1-オール、tert-ブチル酢酸エチル、ピロリジン、2,6-ルチジン、2-ペンタノール、酢酸シクロヘキシル、5-エチル-2-メチルピリジン、アセトフェノン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、ピロール、3-メチル-1-ブタノール、2-エトキシチアゾール、サリチル酸メチル、メントン、ヒノキオイル、リモネン、テルピネン-4-オール、1-オクテン-3-オール、プレゴン、ヘキサナール、p-メンタン、オイルマスタード、3-オクタノール、ブチルスルフィド、N-メチルアントラニル酸メチル、プロピオン酸エチル、1-ペンタノール、酪酸イソアミル、2,3-ジエチルピラジン、安息香酸エチル、酢酸(-)-メンチル、α-ピネン、p-シメン、プロピオン酸ベンジル、及び酢酸リナリルからなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有し、上記有効成分を空間内に揮散させて用いられることを特徴とする。
【0011】
上記有効成分はいずれも、人体への影響が少ない安全な成分である。有効成分は室温(常温)で自然揮散するため、本実施形態に係る駆除忌避剤を空間内に単に設置するのみでも、有効成分が空間内に揮散され、ムカデ類に対する駆除効果と忌避効果の双方が発現する。また、駆除忌避剤に対して熱や風等の外部エネルギーを与えることにより、有効成分を空間内に揮散させてもよい。熱や風を用いて有効成分を揮散させる場合には、揮散速度を制御しやすい。
上記有効成分はいずれも室温で液体状態であり、液体担体や溶剤等、駆除及び忌避についての有効成分以外の役目を兼ねてもよい。
【0012】
有効成分のうち、ローズマリーオイルとは、地中海沿岸の諸国に広く分布するシソ科の常緑低木であるローズマリー(学名:Rosmarinus officinalis)の葉や花を蒸留して採取される精油であり、淡緑色の液体である。本実施形態におけるローズマリーオイルとしては、例えば、ローズマリー・シネオール、ローズマリー・ベルベノン、ローズマリー・カンファー等が挙げられる。
【0013】
1,8-シネオールとは、無色から淡黄色澄明の液体の化合物であり、ユーカリ・ポリブラクテア(E. polybractea)等のユーカリ属(Eucalyptus)の植物の精油に含まれる成分の一種でもある。また、ローリエ、ヨモギ、バジリコ、ニガヨモギ、ローズマリー、セージなどの葉からも抽出できる。
【0014】
ツジョンとは、無色透明の液体の化合物であり、ニガヨモギ、ヨモギ、セージ等の精油に含まれる成分の一種でもある。メチル基の無機が異なるαとβの異性体があるが、本明細書におけるツジョンとは、それらのいずれであってもよく、また、それらの混合物でもよい。
【0015】
3-メチル-2-ブタノールとは、無色透明の液体の化合物であり、カラバッシュナツメグ、ぶどう等の果物、ムール貝、チーズ、ココア、豆類等の食品に天然に含まれる成分の一種でもある。
【0016】
イソ酪酸エチルとは、無色透明の液体の化合物であり、白ワイン製造に用いられるブドウ品種のショイレーベに含まれる成分でもある。
【0017】
酪酸エチルとは、無色透明の液体の化合物であり、バナナやパイナップル、リンゴなど様々な果物に含まれる成分でもある。
【0018】
3-メチル-2-ブテン-1-オールとは、無色からほとんど無色透明の液体の化合物であり、天然に精製するアルコールである。柑橘類、クランベリー、コケモモ、スグリ、ブドウ、ラズベリー、ブラックベリー、トマト、精白パン、ホップ油、コーヒー、キイチゴ、クラウドベリー、パッションフルーツ等に含まれる成分の一種でもある。
【0019】
tert-ブチル酢酸エチルとは、無色からほとんど無色透明の液体の化合物である。
【0020】
ピロリジンとは、無色の液体の化合物であり、タバコやニンジンの葉等に含まれる成分の一種でもある。
【0021】
2,6-ルチジンとは、無色の液体の化合物であり、コールタールや骨炭に含まれる成分の一種でもある。
【0022】
2-ペンタノールとは、無色からほとんど無色透明の液体の化合物であり、果実、チーズ等の食品中に存在する成分の一種でもある。
【0023】
酢酸シクロヘキシルとは、無色から淡黄色の液体の化合物であり、ドイツのキャベツの漬物であるザワークラウトから発見された成分でもある。
【0024】
5-エチル-2-メチルピリジンとは、無色から薄い黄赤色から黄色透明の液体の化合物であり、ウイスキーやチーズ等の食品中に存在する成分の一種でもある。
【0025】
アセトフェノンとは、無色の液体又化合物であり、ラブダナム油やウミダヌキ香等に含まれる成分の一種でもある。
【0026】
2,3-ジエチル-5-メチルピラジンとは、白色から黄色から緑色透明の液体の化合物であり、ライ麦パン、ポップコーン等の食品中に存在する成分の一種である。また、コーヒーや落花生の焙煎、豚肉や子めん羊肉等の加熱調理により生成する成分の一種でもある。
【0027】
ピロールとは、無色又は薄黄色透明の液体の化合物であり、コールタールや骨油中に含まれる成分の一種でもある。
【0028】
3-メチル-1-ブタノールとは、無色の液体の化合物であり、果実、野菜、乳製品、酒類等の食品中に含まれる成分の一種でもある。
【0029】
2-エトキシチアゾールとは、無色から淡黄色の液体の化合物である。
【0030】
サリチル酸メチルとは、無色の油状液体の化合物であり、カバノキ科のカバノキ属、ツツジ科のシラタマノキ、イチヤクソウ科等の植物にも含まれる成分でもある。
【0031】
メントンとは、(2S,5R)-trans-2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサン-1-オンの化合物であり、無色からわずかに薄い黄色、澄明の液体である。ペニーロイヤルやペパーミント、フウロソウ属の植物(ゼラニウム)等の精油に含まれる成分の一種でもある。
【0032】
ヒノキオイルとは、日本と台湾に生息するヒノキ科のヒノキ属から得られる芳香性のある無色から淡黄色の精油である。本実施形態におけるヒノキオイルとしては、ヒノキ属から得られる精油が挙げられる。
【0033】
リモネンとは、柑橘類の果皮に含まれる代表的な単環式のモノテルペンであり、無色透明の液体の化合物である。d体、l体、ラセミ体が存在するが、本明細書におけるリモネンとはそれらのいずれであってもよく、また、それらの混合物でもよい。
【0034】
テルピネン-4-オールとは、テルピネオールの異性体であり、ティーツリーオイルの主成分である。
【0035】
1-オクテン-3-オールとは、無色の液体の化合物であり、マツタケ、シイタケ、ツクリタケ等のキノコ類、ラベンダー、ペニーロイヤル等のミント類等の精油等に含まれる成分の一種でもある。
【0036】
プレゴンとは、無色の油状液体の化合物であり、ペニーロイヤルオイルに含まれる成分の一種でもある。
【0037】
ヘキサナールとは、無色の液体の化合物であり、大豆等に含まれる成分でもある。
【0038】
p-メンタンとは、無色の液体の化合物であり、グロブルスユーカリ(Eucalyptus globulus)の果実等の精油に含まれる成分の一種でもある。シス体とトランス体の異性体が存在するが、本明細書におけるp-メンタンとは、それらのいずれであってもよく、また、それらの混合物でもよい。
【0039】
オイルマスタードとは、マスタードシードに由来する油であり、α-リノレン酸とエルカ酸の両方を高濃度で含む黄色から橙色の油である。マスタードシードを絞って得られる植物油や、マスタードシードを挽いて水と混ぜ、蒸気を蒸留して得られる精油が存在するが、本明細書におけるオイルマスタードとはそれらのいずれであってもよく、また、それらの混合物でもよい。
【0040】
3-オクタノールとは、無色の液体の化合物であり、ラベンダーやユーカリ等の精油や、果実等に含まれる成分の一種でもある。
【0041】
ブチルスルフィドとは、無色の液体の化合物であり、種々の天然物に微量に存在する成分の一種である。例えば、キャベツや、調理した牛肉やマッシュルーム等に含まれる成分の一種である。
【0042】
N-メチルアントラニル酸メチルとは、薄い黄色から黄赤色透明の液体の化合物であり、様々な果実及び植物中に自然に見いだされる成分である。
【0043】
プロピオン酸エチルとは、無色から淡黄色の液体の化合物であり、白ブドウ、ワイン、キウイフルーツ、イチゴ等に存在する成分の一種である。
【0044】
1-ペンタノールとは、無色の液体の化合物であり、蒸留酒などを製造する際に出るフーゼル油からとれる成分である。
【0045】
酪酸イソアミルとは、無色の液体の化合物であり、バナナなどに含まれる成分である。
【0046】
2,3-ジエチルピラジンとは、無色から淡黄色透明の液体の化合物であり、ジャガイモ、ココア、ひき割りオート麦、おきあみ、しょう油等の食品中に加熱調理や発酵・殺菌処理等により生成される成分の一種である。
【0047】
安息香酸エチルとは、無色の液体の化合物であり、しょう油等の食品中に含まれる成分である。
【0048】
酢酸(-)-メンチルとは、無色から淡黄色の液体の化合物であり、はっか油等に含まれる成分の一種である。
【0049】
α-ピネンとは、無色の液体の化合物であり、松脂や松精油等に含まれる成分の一種でもある。
【0050】
p-シメンとは、無色の液体の化合物であり、クミンやタイム等の精油等に含まれる成分の一種でもある。
【0051】
プロピオン酸ベンジルとは、無色の液体の化合物であり、イチゴやメロン等に含まれる成分の一種である。
【0052】
酢酸リナリルとは、無色の液体の化合物であり、ラベンダー等に含まれる成分の一種である。
【0053】
本実施形態における有効成分は、上記のうち1種でも2種以上でもよい。
ムカデ類に対する駆除効果に加え、忌避効果の高さの観点から、有効成分は、ローズマリーオイル、1,8-シネオール、ツジョン、3-メチル-2-ブテン-1-オール、tert-ブチル酢酸エチル、ピロリジン、2,6-ルチジン、2-ペンタノール、酢酸シクロヘキシル、5-エチル-2-メチルピリジン、アセトフェノン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、ピロール、3-メチル-1-ブタノール、2-エトキシチアゾール、及びサリチル酸メチルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ローズマリーオイル、1,8-シネオール、ツジョン、3-メチル-2-ブテン-1-オール、tert-ブチル酢酸エチル、ピロリジン、及び2,6-ルチジンからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0054】
本実施形態に係る駆除忌避剤における上記有効成分の含有量は、駆除忌避剤そのもののスケールや、駆除忌避剤を設置する空間の広さによって異なる。そのため、駆除忌避剤を設置し、有効成分を揮散させる空間1m3に対する有効成分の合計の含有量は、ムカデ類への駆除効果及び忌避効果を効果的に得る観点から、40mg以上が好ましく、100mg以上がより好ましく、500mg以上がさらに好ましい。また、人間が駆除忌避剤の香りを刺激臭と感じるのを防ぐ観点から、上記有効成分の合計の含有量は、200g以下が好ましく、50g以下がより好ましく、2g以下がさらに好ましい。
なお、厳密には、用いる有効成分の種類によって最適な含有量は異なるが、上記範囲内であれば、有効成分の種類を問わず、好ましい。
【0055】
本実施形態に係る駆除忌避剤は各種製剤として用いることができ、空間内に設置できれば形態は問わないが、例えば、液剤、ゲル剤、ゾル剤、粒剤、顆粒剤、粉剤、錠剤、シート剤等が挙げられる。中でも、屋内で使用する観点から液剤、ゲル剤、シート剤がより好ましい。
【0056】
本実施形態に係る駆除忌避剤は、有効成分のみからなってもよく、製剤化にあたって、本発明の効果を損なわない範囲において、上記有効成分以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分として担体等を用いて製剤化する場合には、有効成分を固体担体や液体担体と混合する方法、有効成分を固体担体に含浸する方法、有効成分を固体担体に混合した後に成形加工する方法等が挙げられる。
【0057】
固体担体としては、例えば、タルク、蝋石、カオリン、炭酸カルシウム、ベントナイト、珪石、長石、含水二酸化珪素、酸性白土、珪藻土粉末、軽石粉末等の鉱物質粉末;木粉、トウモロコシ澱粉、シルク粉末等の動物質粉末;ブドウ糖、ショ糖、乳糖等の糖類;炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩類等が挙げられる。
中でも、飛散しにくく、水分等で溶解しない等の観点からは、鉱物質粉末が好ましく、タルク、クレー、珪石、長石、カオリンがより好ましい。これらの固体担体は1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
液体担体としては、例えば、水、アルコール、炭化水素等を用いることができ、さらに、増粘性高分子化合物を含むジェル状液体、界面活性剤を含む乳剤としてもよい。中でも、揮散量をコントロールし、忌避効果を持続させやすい観点から、増粘性高分子化合物を含むジェル状液体が好ましい。ただし、液体担体に本実施形態における有効成分が含まれる場合には、液体担体に含まれる有効成分も、本実施形態における有効成分の合計の含有量に含まれる。
これらの液体担体は1種又は2種以上を用いることができる。また、本実施形態における有効成分を液体担体と混合させた後に、ゲル化剤を用いて固化させたり、吸水性ポリマーに含浸させてもよい。
【0059】
担体以外の上記他の成分としては、例えば、溶剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、着色剤、撥水剤、防腐剤、pH調整剤、オイル類、増粘剤、展着剤等が挙げられる。
【0060】
溶剤としては、例えば、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、芳香族類等が挙げられる。ただし、溶剤に本実施形態における有効成分が含まれる場合には、溶剤に含まれる有効成分も、本実施形態における有効成分の合計の含有量に含まれる。溶剤が駆除忌避剤における有効成分ではない場合、溶剤は有効成分の揮散量を抑制し、持続期間を伸ばす観点で、ミリスチン酸イソプロピル、セバシン酸ジオクチル、プロピレングリコールなどがより好ましい。
【0061】
界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類のポリオキシエチレン化物、ポリエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類等が挙げられる。
【0062】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)エンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系が挙げられる。
【0063】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、γ-オリザノール、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0064】
香料としては、例えば、バラ油、ラベンダー油、ベルガモット油、シナモン油、シトロネラ油、レモン油、ハッカ油等の精油類、ピネン、リナロール、メントール、シトラール、シトロネラール、バニリン、ボルネオール等の芳香物質類、これらの配糖体、天然香料、合成香料、調合香料等が挙げられる。ただし、香料に本実施形態における有効成分が含まれる場合には、香料に含まれる有効成分も、本実施形態における有効成分の合計の含有量に含まれる。
【0065】
着色剤としては、例えば、青色1号、緑色202号、紫色201号等の法定色素、リボフラビン、クロロフィル等の天然色素等が挙げられる。
【0066】
撥水剤としては、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0067】
防腐剤としては、例えば、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、パラベン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0068】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、コハク酸等が挙げられる。
【0069】
オイル類としては、例えば、シリコーンオイル類、植物油、動物油、合成油、石油類等が挙げられる。ただし、オイル類に本実施形態における有効成分が含まれる場合には、オイル類に含まれる有効成分も、本実施形態における有効成分の合計の含有量に含まれる。
【0070】
増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子化合物、ベントナイト等の粘土鉱物が挙げられる。
【0071】
展着剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0072】
駆除忌避剤の設置場所は、揮散した有効成分が効果を発現する濃度以上の気中濃度となるように、屋外のような開放空間ではなく、家屋内であることが好ましい。具体的には、玄関や窓際等の外部からの侵入経路となり得る場所や、物置き等のムカデ類が好むものに近い場所、寝室、居室、浴室、洗面所、トイレ等の居住空間等が挙げられる。また、ムカデ類が潜みやすい場所、靴箱、台所のシンク下、クローゼット、押入れ、家具の下等の空間等が挙げられる。本実施形態に係る駆除忌避剤を、このような場所に設置することで、有効成分が空間内に揮散し、ムカデ類に対して駆除効果及び忌避効果の双方を発揮する。
【0073】
本実施形態に係る駆除忌避剤の対象はムカデ類であるが、ムカデ類としては、トビズムカデ、アオズムカデ、ジムカデ、イッスンムカデ等が挙げられる。
【0074】
<駆除忌避方法>
本実施形態に係る駆除忌避方法の対象害虫はムカデ類であり、有効成分を含む駆除忌避剤を空間内に設置し、上記有効成分をかかる空間内に揮散させることを特徴とする。
駆除忌避剤は、上記<駆除忌避剤>に記載のものと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0075】
本実施形態に係る駆除忌避方法において、駆除忌避剤を空間内に設置し、有効成分を空間内に揮散させた際の、有効成分の合計の気中濃度は、ムカデ類への駆除効果及び忌避効果を効果的に得る観点から、40mg/m3以上が好ましく、100mg/m3以上がより好ましく、500mg/m3以上がさらに好ましい。また、人間が駆除忌避剤の香りを刺激臭と感じるのを防ぐ観点から、上記気中濃度は、200g/m3以下が好ましく、50g/m3以下がより好ましく、2g/m3以下がさらに好ましい。
【0076】
有効成分の合計の気中濃度は、駆除忌避剤を設置する空間の気密性や、室温、湿度等の影響を受ける。目安として、駆除忌避剤において、揮散させる空間1m3に対する有効成分の合計の含有量が40mg程度であれば、有効成分の合計の気中濃度は40mg/m3程度となる。また、上記含有量が50g程度であれば、上記気中濃度は50g/m3程度となる。
【0077】
気中濃度を測定する際の方法は特に限定されないが、例えば、駆除忌避剤の設置された空間の気体を採取し、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー等を用いて分析できる。気体を採取する際は、設置された駆除忌避剤から1cm程度離れた位置の気体またはムカデ類の侵入経路もしくは侵入されたくない場所の気体を採取する。
気中濃度の測定は「一般用医薬品及び医薬部外品としての殺虫剤の室内空気中濃度測定方法 ガイドライン」に記載の方法を用いてもよい。
【実施例0078】
以下、実施例より本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
【0079】
<実施例1~41及び比較例1~17>
表1又は表2に記載の有効成分のみからなる液剤である駆除忌避剤を準備し、忌避試験及び空間致死試験を行った。
【0080】
(忌避試験)
1cm×5cmのろ紙に駆除忌避剤を5μL含浸させて試験検体とした。試験検体を供試虫であるトビズムカデの触覚から1cm程度離れた場所に近づけ、供試虫の反応を最大30秒間観察した。これは、揮散させる空間1m3に対する有効成分の含有量が約150mgに相当する。
評価基準は下記のとおりである。
5 試験検体を近づけて供試虫がUターンした。
4 試験検体を近づけると、供試虫は触角で反応し、その場で立ち止まった。
3 試験検体を近づけると、供試虫の触角が5秒以上有効成分に反応して小刻みに揺れた。
2 試験検体を近づけると、供試虫の触角が5秒未満有効成分に反応して小刻みに揺れた。
1 試験検体を近づけても、供試虫は反応しなかった。
結果を表1、表2の「忌避効果」に示すが、2以上であれば忌避効果が奏されたとして好ましく、数値が高いほど好ましい。
【0081】
(空間致死試験)
容積が650mLである容器の蓋に直径5.5cmの円形のろ紙を貼り付け、このろ紙に駆除忌避剤を100μL含浸させた。容器内に供試虫であるトビズムカデを放ち、容器の蓋を閉じて一晩静置した。翌日、トビズムカデの様子を観察した。
評価基準は下記のとおりである。
○ トビズムカデは死に至った。
△ トビズムカデは弱っているものの、死には至らなかった。
× トビズムカデは弱ることなく生きていた。
結果を表1、表2の「致死効果」に示すが、○であれば駆除効果が奏されたとして好ましい。
【0082】
【0083】
【0084】
表1の結果より、本実施形態における有効成分を含む駆除忌避剤とすると、ムカデ類に対して駆除効果及び忌避効果を示すことが分かった。一方、比較例3、4、6は、ムカデ類に対して駆除効果は示すものの、忌避効果は見られなかった。また、比較例13~17は、ムカデ類に対して忌避効果は示すものの、駆除効果は見られなかった。特に、比較例16や17は忌避効果として高い効果を示すにも関わらず、駆除効果はまったく示さなかった。
また実施例1、20、27、37の構造からp-メンタン骨格を有する成分に忌避効果と致死効果が確認でき、この骨格が両効果に寄与する構造の一種である可能性が示唆された。
【0085】
駆除効果について、15m3の空間に有効成分として1,8-シネオールを気中濃度300mg/m3で揮散させ、かかる空間にトビズムカデを2週間放ったところ、トビズムカデの致死を確認できた。このことから、有効成分の気中濃度が上記(空間致死試験)と比べて低い場合でも、ムカデ類の駆除効果を発揮することが分かった。
【0086】
なお、比較例3、4、6の有効成分に関して、ムカデ類の忌避効果は低いものの、駆除効果がある成分であるとの知見を得た。そのため、ムカデ類の忌避効果を得ることがなく駆除効果を得たい場合は、これらの成分を用いることも好ましい。
また、比較例13~17のような忌避効果を示す成分と、比較例3、4、6のような致死効果を示す成分とを組み合わせることで、忌避効果と駆除効果とを併せ持つ駆除忌避剤を得られる可能性も示唆された。