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特開2023-538暑熱リスク警報装置、暑熱リスク警報方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000538
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】暑熱リスク警報装置、暑熱リスク警報方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20221222BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20221222BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20221222BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20221222BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/01
A61B5/0245 200
G08B21/02
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101427
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優生
(72)【発明者】
【氏名】高河原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 啓
(72)【発明者】
【氏名】松永 賢一
(72)【発明者】
【氏名】石原 隆子
(72)【発明者】
【氏名】都甲 浩芳
(72)【発明者】
【氏名】川原 貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 英登
(72)【発明者】
【氏名】平田 晃正
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 太機
【テーマコード(参考)】
4C017
4C117
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA09
4C017AA19
4C017AB02
4C017AB08
4C017BC11
4C017CC01
4C117XA05
4C117XB01
4C117XB02
4C117XB04
4C117XC11
4C117XD09
4C117XD21
4C117XE06
4C117XE13
4C117XE17
4C117XE18
4C117XE23
4C117XE26
4C117XJ48
4C117XP03
4C117XP12
5C086AA06
5C086AA22
5C086CB01
5C087AA02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】測定対象者の体調変化の見逃しを低減し、測定対象者の体調管理を高精度に行う。
【解決手段】暑熱リスク警報装置は、測定対象者の心拍数を測定する心拍数測定部1と、測定対象者の深部体温を推定または測定する深部体温測定部2と、温熱環境および運動強度に関する測定対象者の自覚症状の情報を取得する主観情報取得部3と、測定対象者の心拍数、深部体温、自覚症状に基づいて測定対象者の暑熱リスクレベルを決定する決定部4と、決定部4によって決定された暑熱リスクレベルに応じた暑熱リスク通知情報を作業管理者または測定対象者に通知する通知部5とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象者の心拍数を測定するように構成された心拍数測定部と、
前記測定対象者の深部体温を推定または測定するように構成された深部体温測定部と、
温熱環境および運動強度に関する前記測定対象者の自覚症状の情報を取得するように構成された主観情報取得部と、
前記測定対象者の心拍数、深部体温、自覚症状に基づいて前記測定対象者の暑熱リスクレベルを決定するように構成された決定部と、
前記決定部によって決定された暑熱リスクレベルに応じた暑熱リスク通知情報を作業管理者または前記測定対象者に通知するように構成された通知部とを備えることを特徴とする暑熱リスク警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の暑熱リスク警報装置において、
前記主観情報取得部は、前記測定対象者の自覚症状の情報として、温冷感の情報、自覚的運動強度の情報、温熱的快適性の情報を取得することを特徴とする暑熱リスク警報装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の暑熱リスク警報装置において、
前記決定部は、前記心拍数、前記深部体温、前記自覚症状のそれぞれについて前記測定対象者の暑熱リスクレベルを決定することを特徴とする暑熱リスク警報装置。
【請求項4】
請求項3記載の暑熱リスク警報装置において、
前記決定部は、前記心拍数、前記深部体温、前記自覚症状を数値化した値のそれぞれが対応する閾値を上回るかどうかによって、前記心拍数、前記深部体温、前記自覚症状のそれぞれに関する暑熱リスクレベルを決定することを特徴とする暑熱リスク警報装置。
【請求項5】
請求項4記載の暑熱リスク警報装置において、
前記決定部は、前記心拍数が対応する閾値を上回る継続時間が所定の心拍数観察時間を超えるかどうかによって前記心拍数に関する暑熱リスクレベルを決定し、前記深部体温が対応する閾値を上回る継続時間が所定の深部体温観察時間を超えるかどうかによって、前記深部体温に関する暑熱リスクレベルを決定することを特徴とする暑熱リスク警報装置。
【請求項6】
測定対象者の心拍数を測定する第1のステップと、
前記測定対象者の深部体温を推定または測定する第2のステップと、
温熱環境および運動強度に関する前記測定対象者の自覚症状の情報を取得する第3のステップと、
前記測定対象者の心拍数、深部体温、自覚症状に基づいて前記測定対象者の暑熱リスクレベルを決定する第4のステップと、
前記第4のステップで決定した暑熱リスクレベルに応じた暑熱リスク通知情報を作業管理者または前記測定対象者に通知する第5のステップとを含むことを特徴とする暑熱リスク警報方法。
【請求項7】
請求項6に記載の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象者の熱中症の予防に有用な情報を提供する暑熱リスク警報装置、暑熱リスク警報方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2019年の職場における熱中症による死傷者数は790人であり、過去10年間(2010年~2019年)の発生状況と比較して、2018年の死傷者数1178人に次いで多い。業種別でみると、建設業が147人、製造業が172人であり、直射日光あるいは高温多湿な環境にさらされ易い業種での熱中症の発生件数が多いことが分かる(非特許文献1参照)。
【0003】
こうした作業現場では、作業者の自己管理、作業管理者による作業者の時間管理、および作業管理者の声掛けによる自覚症状の収集による作業者の体調管理等を行うケースがある。しかしながら、自己申告のような主観的情報のみに頼った作業管理では、作業者が暑熱環境から受ける負荷等に起因する体調の変化を見逃す虞れがある。
【0004】
また、主観的な情報に頼らない体調管理手法として、暑さ指数WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球乾球温度)の数値を基に、作業管理者が水分・塩分の補給の声掛け、休憩の励行の声掛け等を行うといった手法がとられるケースもある。ただし、WBGTは、あくまで特定の地域における屋外の観測点を基に算出した数値であり、作業者個人の行動に即した環境変化が反映されていない参考値である。したがって、WBGTに基づく体調管理手法では、上記の主観的情報と同様に作業者の体調変化を見逃す虞れがあるといえる。
【0005】
一方で、個人の生体情報に着目した体調管理手法として、作業者の深部体温と心拍数の変化をモニタリングする手法が挙げられる。例えば、AGCIH(American Conference of Governmental Industrial Hygienists:アメリカ合衆国産業衛生専門官会議)では、熱中症発症リスクをモニタリングする上での指標として、深部体温が暑熱順応者で38.5℃以上、暑熱非順応者で38℃以上で、1分間の心拍数が数分間継続して(180-年齢)を超えるときを暑熱作業中止基準としている(非特許文献2参照)。
【0006】
上記の生体情報のうち、深部体温は作業者の活動中に直接計測することが難しいため、非侵襲な手法により計測するのが一般的であるが、±0.2℃程度のばらつきが生じる。このため、生体情報を用いた体調管理の場合にも、主観情報、WBGTと同様に、作業者の体調変化を見逃してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“2019年職場における熱中症による死傷災害の発生状況”,厚生労働省,[2020年10月30日検索],<https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000612135.pdf>
【非特許文献2】澤田晋一,“職場の熱中症対策徒然考(その2)”,安衛研ニュース,独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所,2013年,[2020年10月30日検索],<https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2013/61-column.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、測定対象者の体調変化の見逃しを低減し、測定対象者の体調管理を高精度に行うことができる暑熱リスク警報装置、暑熱リスク警報方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の暑熱リスク警報装置は、測定対象者の心拍数を測定するように構成された心拍数測定部と、前記測定対象者の深部体温を推定または測定するように構成された深部体温測定部と、温熱環境および運動強度に関する前記測定対象者の自覚症状の情報を取得するように構成された主観情報取得部と、前記測定対象者の心拍数、深部体温、自覚症状に基づいて前記測定対象者の暑熱リスクレベルを決定するように構成された決定部と、前記決定部によって決定された暑熱リスクレベルに応じた暑熱リスク通知情報を作業管理者または前記測定対象者に通知するように構成された通知部とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明の暑熱リスク警報装置の1構成例において、前記主観情報取得部は、前記測定対象者の自覚症状の情報として、温冷感の情報、自覚的運動強度の情報、温熱的快適性の情報を取得することを特徴とするものである。
また、本発明の暑熱リスク警報装置の1構成例において、前記決定部は、前記心拍数、前記深部体温、前記自覚症状のそれぞれについて前記測定対象者の暑熱リスクレベルを決定することを特徴とするものである。
また、本発明の暑熱リスク警報装置の1構成例において、前記決定部は、前記心拍数、前記深部体温、前記自覚症状を数値化した値のそれぞれが対応する閾値を上回るかどうかによって、前記心拍数、前記深部体温、前記自覚症状のそれぞれに関する暑熱リスクレベルを決定することを特徴とするものである。
また、本発明の暑熱リスク警報装置の1構成例において、前記決定部は、前記心拍数が対応する閾値を上回る継続時間が所定の心拍数観察時間を超えるかどうかによって前記心拍数に関する暑熱リスクレベルを決定し、前記深部体温が対応する閾値を上回る継続時間が所定の深部体温観察時間を超えるかどうかによって、前記深部体温に関する暑熱リスクレベルを決定することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の暑熱リスク警報方法は、測定対象者の心拍数を測定する第1のステップと、前記測定対象者の深部体温を推定または測定する第2のステップと、温熱環境および運動強度に関する前記測定対象者の自覚症状の情報を取得する第3のステップと、前記測定対象者の心拍数、深部体温、自覚症状に基づいて前記測定対象者の暑熱リスクレベルを決定する第4のステップと、前記第4のステップで決定した暑熱リスクレベルに応じた暑熱リスク通知情報を作業管理者または前記測定対象者に通知する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
また、本発明のプログラムは、前記の各ステップをコンピュータに実行させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測定対象の主観情報と、心拍数、深部体温といった客観情報の双方を収集することで、測定対象者の暑熱リスクを総合的に判定することができるので、測定対象者の体調変化の見逃しを低減することができ、測定対象者の体調管理を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1の実施例に係る暑熱リスク警報装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る暑熱リスク警報装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、温冷感の1例を示す図である。
図4図4は、自覚的運動強度の1例を示す図である。
図5図5は、温熱的快適性の1例を示す図である。
図6図6は、本発明の第1の実施例に係る通知部による測定対象者の暑熱リスク状態の分類動作を説明するフローチャートである。
図7図7は、本発明の第1の実施例に係る暑熱リスク通知情報の登録テーブルの例を示す図である。
図8図8は、本発明の第2の実施例に係る深部体温測定部の構成を示すブロック図である。
図9図9は、本発明の第2の実施例に係る深部体温測定部の動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、本発明の第3の実施例に係る深部体温測定部の構成を示すブロック図である。
図11図11は、測定対象者の身体の2部位2層モデルと、測定対象者の各部位・各層に流入出する熱量を示す図である。
図12図12は、本発明の第3の実施例に係る深部体温測定部の動作を説明するフローチャートである。
図13図13は、本発明の第1~第3の実施例に係る暑熱リスク警報装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る暑熱リスク警報装置の構成を示すブロック図である。暑熱リスク警報装置は、心拍数測定部1と、深部体温測定部2と、主観情報取得部3と、決定部4と、通知部5とを備えている。
【0014】
図2は本実施例の暑熱リスク警報装置の動作を説明するフローチャートである。心拍数測定部1は、測定対象者の心拍数を測定する(図2ステップS1)。心拍数測定部1は、例えば、測定対象者の心電位を計測するウエア型あるいはベルト型の心電計と、心電計が計測した心電位から心拍数を算出する算出部とから構成される。
本発明では、測定対象者の脈拍数を心拍数として測定してもよい。この場合、心拍数測定部1は、測定対象者の脈波を計測するリストバンド型あるいはイヤホン型の脈波計と、脈波計が計測した脈波から心拍数(脈拍数)を算出する算出部とから構成される。
【0015】
深部体温測定部2は、測定対象者の深部体温を推定または測定する(図2ステップS2)。深部体温測定部2は、測定対象者の心拍数や測定対象者の近傍温度、近傍湿度等のデータから測定対象者の深部体温を推定する(例えば特開2020-65823号公報参照)。なお、これらのデータを用いて深部体温を推定する別の例については後述の実施例で説明する。
【0016】
また、深部体温測定部2は、熱流補償法、双熱流法といった方法で測定対象者の深部体温を推定するようにしてもよい。これらの方法については、例えば文献「時澤健,“ウェアラブル深部体温計の実用化に向けて”,安衛研ニュース,独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所,2018年,<https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2018/119-column-1.html>」に開示されている。
【0017】
また、深部体温測定部2は、例えば飲み込み式の体温計によって測定対象者の深部体温を直接的に測定するようにしてもよい。飲み込み式の体温計については、例えば文献「“CorTemp Sensor”,HQ Inc.,<https://hqinc.net/home/cortemp/cortemp-products/cortemp-sensor/>」に開示されている。
また、深部体温測定部2は、深部体温の代わりに、測定対象者の鼓膜温や外耳道温を測定してもよい。
【0018】
次に、主観情報取得部3は、温熱環境および運動強度に関する測定対象者の自覚症状の情報を取得する(図2ステップS3)。取得する自覚症状の情報の例としては、温冷感の情報、自覚的運動強度の情報、温熱的快適性の情報などがある。
【0019】
図3に温冷感の1例を示す。図3の例では、温冷感を、非常に寒い、寒い、涼しい、やや涼しい、どちらともいえない、やや暖かい、暖かい、暑い、非常に暑い、という9段階で評価している(文献「榎本ヒカル他,“節電要請期のオフィス内温熱環境と勤務者の快適性評価に関する調査”,人間と生活環境,Vol.23,No.2,pp.39-47,2016年」参照)。
【0020】
図4に自覚的運動強度の1例を示す。図4の例では、自覚的運動強度(ボルグスケール)を10段階で評価している(文献「公益財団法人日本スポーツ協会,指導者育成専門委員会アスレティックトレーナー部会監修,“B アスレティックトレーナーに必要な検査測定の方法”,検査・測定と評価,文光堂,2011年,<https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/ikusei/doc/AT/text%20kaitei/2017AT5_p68.pdf>」参照)。
【0021】
図5に温熱的快適性の1例を示す。図5の例では、温熱的快適性を、不快、やや不快、やや快適、快適、という4段階で評価している(文献「田中英登他,“高齢者における夏季の冷房使用状況と冷房使用時の生理的反応と温熱的快適性に及ぼす気流の影響”,日本生気象学会雑誌,Vol.51,No.4,pp.141-150,2015年」参照)。
【0022】
主観情報取得部3は、例えば測定対象者が所持するスマートフォンによって構成される。スマートフォンは、実装されたアプリケーションプログラムに従って処理を実行し、主観情報取得部3として機能する。主観情報取得部3は、測定対象者が入力した自覚症状の情報(温冷感、自覚的運動強度、温熱的快適性をそれぞれ数値化した値)を取得する。
【0023】
なお、心拍数測定部1と深部体温測定部2と主観情報取得部3とは、一体型の装置でもよいし、個別の装置でもよい。
【0024】
次に、決定部4は、心拍数測定部1と深部体温測定部2と主観情報取得部3とによって得られた情報に基づいて、測定対象者の暑熱リスクレベルを決定する(図2ステップS4)。決定部4は、以下のように測定対象者が過剰な温熱負荷の状況にあるかどうかと、過剰な温熱負荷から回復した状況にあるかどうかという2つの観点から、心拍数、深部体温、自覚症状のそれぞれについて暑熱リスクレベルを決定する。
【0025】
[心拍数に関する暑熱リスクレベル]
決定部4は、心拍数測定部1によって得られた測定対象者の心拍数から、1分間の平均心拍数を逐次算出する。決定部4は、算出した1分間の平均心拍数が所定の心拍数閾値を超えない場合、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていないと判定し、心拍数に関する暑熱リスクレベルを0とする。本実施例では、心拍数閾値を、測定対象者の年齢から算出される(180-年齢)bpmとする。測定対象者の年齢は、既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。
【0026】
決定部4は、算出した1分間の平均心拍数が(180-年齢)bpmを超えている場合、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていると判定し、心拍数に関する暑熱リスクレベルを1とする。
【0027】
決定部4は、心拍数に関する暑熱リスクレベルを1とした時点から所定の心拍数観察時間が経過した時点でも測定対象者の1分間の平均心拍数が(180-年齢)bpm以下とならない場合、測定対象者が過剰な温熱負荷から回復傾向にないと判定し、心拍数に関する暑熱リスクレベルを更に1上げて、2とする。
【0028】
一方で、決定部4は、心拍数に関する暑熱リスクレベルを1とした時点から心拍数観察時間以内に測定対象者の1分間の平均心拍数が(180-年齢)bpm以下となった場合、測定対象者が過剰な温熱負荷から回復した状況にあると判定し、心拍数に関する暑熱リスクレベルを0に戻す。
【0029】
上記の心拍数観察時間に関しては、正常時の測定対象者が作業等の運動負荷によって起こる高い心拍数の継続状態から、安静状態に推移した際に心拍数が安静時の状態に推移するまでの時間を実験的に計測する等の方法で予め決定しておくことができる。
【0030】
[深部体温に関する暑熱リスクレベル]
決定部4は、深部体温測定部2によって得られた測定対象者の深部体温が所定の深部体温閾値以下の場合、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていないと判定し、深部体温に関する暑熱リスクレベルを0とする。決定部4には、暑熱未順化者の深部体温閾値と暑熱順化者の深部体温閾値の2種類が設定されている。暑熱未順化者の深部体温閾値は38℃、暑熱順化者の深部体温閾値は38.5℃である。測定対象者の暑熱順化の有無の情報は、既知の情報であり、実際に即して予め設定しておけばよい。決定部4は、測定対象者の暑熱順化の有無に応じて対応する深部体温閾値を採用すればよい。
【0031】
決定部4は、測定対象者の深部体温が深部体温閾値を超えている場合、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていると判定し、深部体温に関する暑熱リスクレベルを1とする。
【0032】
決定部4は、深部体温に関する暑熱リスクレベルを1とした時点から所定の深部体温観察時間が経過した時点でも測定対象者の深部体温が深部体温閾値以下とならない場合、測定対象者が過剰な温熱負荷から回復傾向にないと判定し、深部体温に関する暑熱リスクレベルを更に1上げて、2とする。
【0033】
一方で、決定部4は、深部体温に関する暑熱リスクレベルを1とした時点から深部体温観察時間以内に測定対象者の深部体温が深部体温閾値以下となった場合、測定対象者が過剰な温熱負荷から回復した状況にあると判定し、深部体温に関する暑熱リスクレベルを0に戻す。
【0034】
上記の深部体温観察時間に関しては、心拍数観察時間と同様に、正常時の測定対象者が作業等の運動負荷によって起こる高い深部体温の継続状態から、安静状態に推移した際に深部体温が安静時の状態に推移するまでの時間を実験的に計測する方法や、測定対象者が高体温状態から飲水行動をとり安静状態に推移した際に深部体温が安静時の状態に推移するまでの時間を実験的に計測する等の方法で予め決定しておくことができる。
【0035】
[自覚症状に関する暑熱リスクレベル]
決定部4は、自覚症状に関する暑熱リスクレベルのデフォルト値を0とする。決定部4は、温冷感、自覚的運動強度、温熱的快適性が、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされたと判定する条件を満たす場合に、自覚症状に関する暑熱リスクレベルを1とする。
【0036】
具体的には、温冷感については3(暑い)を温冷感閾値とし、温冷感が3以上であることを、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされたと判定する条件とする。自覚的運動強度については7(かなりきつい)を運動強度閾値とし、自覚的運動強度が7以上であることを、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされたと判定する条件とする。温熱的快適性については1(不快)を快適性閾値とし、温熱的快適性が1以下であることを、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされたと判定する条件とする。
【0037】
決定部4は、自覚的運動強度が7以上、温熱的快適性が1以下、温冷感が3以上の少なくとも1つを満たす場合、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていると判定し、自覚症状に関する暑熱リスクレベルを1とする。
【0038】
また、決定部4は、自覚症状に関する暑熱リスクレベルを1にした後に、温冷感、自覚的運動強度、温熱的快適性の全てが、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされたと判定する条件を満たさなくなった場合に、測定対象者が過剰な温熱負荷から回復した状況にあると判定し、自覚症状に関する暑熱リスクレベルを0に戻す。具体的には、決定部4は、自覚症状に関する暑熱リスクレベルを1にした後に、自覚的運動強度が7未満、温熱的快適性が2以上、温冷感が3未満になった場合、自覚症状に関する暑熱リスクレベルを0に戻す。
【0039】
次に、通知部5は、決定部4によって得られた暑熱リスクレベルに応じて測定対象者の状態を分類したうえで、その分類に応じた暑熱リスク通知情報を作業管理者または測定対象者に通知する(図2ステップS5)。例えば、通知部5は、心拍数と深部体温と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルに応じて測定対象者の暑熱リスク状態を通常、注意、警戒、厳重警戒、危険の5つのいずれかに分類し、作業管理者または測定対象者に通知する暑熱リスク通知情報の文言を設定する。
【0040】
図6は通知部5による測定対象者の暑熱リスク状態の分類動作を説明するフローチャート、図7は通知部5に設定されている登録テーブルの例を示す図である。図7に示すように、暑熱リスク通知情報の登録テーブルは、測定対象者の深部体温と心拍数と自覚症状とに関する暑熱リスクレベル毎に暑熱リスク通知情報の文言を予め登録したものである。
【0041】
通知部5は、心拍数と深部体温と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが全て0の場合(図6ステップS100,S101においてYES)、生体情報と自覚症状の双方の観点から、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていないと判定し、測定対象者の暑熱リスク状態を通常の状態と分類する(図6ステップS102)。通知部5は、心拍数と深部体温と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが全て0の場合の暑熱リスク通知情報の文言「通常:推定体内体温と心拍数は通常です。」を図7に示す登録テーブルから取得して、作業管理者が所持するスマートフォンや測定対象者が所持するスマートフォン等の端末へ暑熱リスク通知情報を送信する。
【0042】
また、通知部5は、心拍数と深部体温とに関する暑熱リスクレベルが共に0で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが1の場合(図6ステップS101においてNO)、生体情報の観点からは測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていないと判定できるものの、自覚症状の観点から測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていると判定し、測定対象者の暑熱リスク状態を通常よりも警戒レベルの高い、注意の状態と分類する(図6ステップS103)。通知部5は、心拍数と深部体温とに関する暑熱リスクレベルが0で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが1の場合の暑熱リスク通知情報の文言「注意:今後の作業ではつらかったら休憩を取りましょう。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0043】
また、通知部5は、心拍数と深部体温とに関する暑熱リスクレベルが共に0でなく、かつ少なくとも一方が1以下で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0または1の場合(図6ステップS104においてYES)、心拍数と深部体温の少なくとも一方の観点から測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていると判定し、測定対象者の暑熱リスク状態を注意よりも警戒レベルの高い、警戒の状態と分類する(図6ステップS105)。
【0044】
通知部5は、心拍数と深部体温と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが全て1の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「警戒:推定体内温度と心拍数が高くなっています。今後の作業ではつらかったら休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。通知部5は、心拍数と深部体温とに関する暑熱リスクレベルが共に1で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「警戒:推定体内温度と心拍数が高くなっています。自覚症状に注意し、つらかったら休憩を取りましょう。」を登録テーブルから取得して送信する。通知部5は、深部体温と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが共に1で、心拍数に関する暑熱リスクレベルが0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「警戒:推定体内温度が高くなっています。今後の作業ではつらかったら休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0045】
通知部5は、心拍数と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが共に1で、深部体温に関する暑熱リスクレベルが0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「警戒:心拍数が高くなっています。今後の作業ではつらかったら休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。通知部5は、深部体温に関する暑熱リスクレベルが1で、心拍数と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが共に0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「警戒:推定体内体温が高くなっています。自覚症状に注意し、つらくなったら休憩を取りましょう。」を登録テーブルから取得して送信する。通知部5は、心拍数に関する暑熱リスクレベルが1で、深部体温と自覚症状とに関する暑熱リスクレベルが共に0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「警戒:心拍数が高くなっています。自覚症状に注意し、つらくなったら休憩を取りましょう。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0046】
また、通知部5は、心拍数に関する暑熱リスクレベルと深部体温に関する暑熱リスクレベルのうちいずれか一方が2で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0または1の場合(図6ステップS106においてYES)、心拍数と深部体温のうちいずれか一方の観点から、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされてから回復傾向にないと判定し、測定対象者の暑熱リスク状態を警戒よりも警戒レベルの高い、厳重警戒の状態と分類する(図6ステップS108)。
【0047】
通知部5は、深部体温に関する暑熱リスクレベルが2で、心拍数に関する暑熱リスクレベルが0または1で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「厳重警戒:推定体内温度が高い状態か続いています。自覚症状に注意し、休憩を取ることを検討してください。」を登録テーブルから取得して送信する。通知部5は、深部体温に関する暑熱リスクレベルが2で、心拍数に関する暑熱リスクレベルが0または1で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが1の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「厳重警戒:推定体内温度が高い状態か続いています。休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0048】
通知部5は、心拍数に関する暑熱リスクレベルが2で、深部体温に関する暑熱リスクレベルが0または1で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「厳重警戒:心拍数が高い状態か続いています。自覚症状に注意し、休憩を取ることを検討してください。」を登録テーブルから取得して送信する。通知部5は、心拍数に関する暑熱リスクレベルが2で、深部体温に関する暑熱リスクレベルが0または1で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが1の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「厳重警戒:心拍数が高い状態か続いています。休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0049】
また、通知部5は、深部体温と心拍数とに関する暑熱リスクレベルが共に2で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0の場合(図6ステップS107においてYES)、心拍数と深部体温の双方の観点から、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされてから回復傾向にはないが、自覚症状の観点からは測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていないと判定し、測定対象者の暑熱リスク状態を厳重警戒の状態と分類する(図6ステップS108)。
【0050】
通知部5は、深部体温と心拍数とに関する暑熱リスクレベルが共に2で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが0の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「厳重警戒:推定体内温度と心拍数が高い状態か続いています。自覚症状に注意し、休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0051】
また、通知部5は、深部体温と心拍数とに関する暑熱リスクレベルが共に2で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが1の場合(図6ステップS107においてNO)、心拍数と深部体温の双方の観点から、測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされてから回復傾向になく、かつ自覚症状の観点からも測定対象者が過剰な温熱負荷にさらされていると判定し、測定対象者の暑熱リスク状態を厳重警戒よりも警戒レベルの高い、危険な状態と分類する(図6ステップS109)。
【0052】
通知部5は、深部体温と心拍数とに関する暑熱リスクレベルが共に2で、自覚症状に関する暑熱リスクレベルが1の場合、対応する暑熱リスク通知情報の文言「危険:推定体内温度と心拍数が高い状態か続いています。休憩を取ることをお勧めします。」を登録テーブルから取得して送信する。
【0053】
また、以上のような文言に加えて、作業の中止、屋内退避、涼しい場所への退避、水分補給、休憩等といった暑熱リスクの回避や体温上昇、心拍数の低下、脱水症状の回避を促す文言を適宜追加してもよい。
【0054】
以上のように、本実施例では、測定対象者本人の自覚症状等の主観情報と、深部体温、心拍数といった客観情報の双方を収集することで、測定対象者の暑熱リスクを総合的に判定することができるので、測定対象者の体調変化の見逃しを低減することができ、測定対象者の体調管理を高精度に行うことができる。
【0055】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。本実施例は、第1の実施例の深部体温測定部2の別の例を説明するものである。図8は本実施例の深部体温測定部2の構成を示すブロック図である。本実施例の深部体温測定部2は、測定部20と、測定部21と、演算部22と、演算部23とから構成される。
【0056】
測定部20は、測定対象者の近傍の温度を測定する。測定部20は、例えば温度計から構成することができる。測定部21は、測定対象者の近傍の湿度を測定する。測定部21は、例えば、湿度計から構成することができる。また、測定部20,21は、心拍数測定部1と一体化した温度計、湿度計から構成することもできる。
【0057】
演算部22は、心拍数測定部1が測定した心拍数より、測定対象者の運動により発生する熱量を求める。
【0058】
演算部23は、時刻tにおいて演算部22が求めた熱量、測定部20が測定した温度と測定部21が測定した湿度とから求められる測定対象者の雰囲気と測定対象者の皮膚との間の第1熱交換量、測定対象者の皮膚と深部との間の第2熱交換量、および測定対象者の発汗量より求める汗の蒸発量から、測定対象者の深部体温の変化を推定する。
【0059】
演算部22,23は、例えば、携帯端末装置などの、プログラムにより動作する、マイクロプロセッサを備えた小型のコンピュータ機器から構成することができる。
【0060】
次に、本実施例に係る深部体温測定部2の動作について、図9を参照して説明する。まず、ステップS200で、心拍数測定部1が測定した測定対象者の心拍数を取得する。次に、ステップS201で、測定部20は、測定対象者の近傍の温度を測定する。次に、ステップS202で、測定部21は、測定対象者の近傍の湿度を測定する。次に、ステップS203で、演算部22は、ステップS200で心拍数測定部1が測定した心拍数より、測定対象者の運動により発生する熱量を求める。
【0061】
次に、ステップS204で、演算部23は、熱量、測定対象者の雰囲気と測定対象者の皮膚との間の第1熱交換量、測定対象者の皮膚と深部との間の第2熱交換量、および測定対象者の汗の蒸発量から、測定対象者の深部体温の変化を推定する。熱量は、時刻tにおいてステップS203で演算部22が求める。第1熱交換量は、ステップS201で測定部20が測定した温度と、ステップS202で測定部21が測定した湿度と、から求められる。
【0062】
以下、より詳細に説明する。
【0063】
人体を表皮層(皮膚)と非表皮層(深部)とに簡易化して考え,深部体温は非表皮層と同じであると仮定すると、式(1)、式(2)に示すように、時刻tにおける皮膚層と深部層の熱の流入出に関する方程式はそれぞれ式(1)、式(2)のように記述できる。
【0064】
式(1)の左辺は、時刻t-Δtからtに推移した際の、皮膚の温度上昇により生じる熱量を示している。式(1)の右辺の各項は、時刻t-Δtからtに推移した際の、皮膚、深部の温度上昇に起因する、深部より皮膚へ流入する熱量、皮膚の代謝で生じる熱量、皮膚より大気へ流出する熱量、皮膚表面での発汗により生じる蒸発熱を示している。
【0065】
式(2)の左辺は、時刻t-Δtからtに推移した際の、深部の温度上昇により生じる熱量を示している。式(2)の右辺の各項は、時刻t-Δtからtに推移した際の、皮膚、深部の温度上昇に起因する、皮膚より深部へ流入する熱量、深部の代謝で生じる熱量、測定対象者の運動により生じる熱量を示している。
【0066】
【数1】
【0067】
skin,t[℃]は時刻tにおける測定対象者の皮膚の温度、Tbody,t[℃]は時刻tにおける測定対象者の深部の温度である。Tskin,t,Tbody,tは、各部の温度および、時刻がΔtに推移した際の各部の熱量を、上述の2つの式より算出する際に使用する。熱量については、後述する。
【0068】
skin[kg]は測定対象者の皮膚の質量、Wbody[kg]は測定対象者の深部の質量である。Cskin[J/(kg・℃)]は測定対象者の皮膚の比熱、Cbody[J/(kg・℃)]は測定対象者の深部の比熱である。Mskin[W]は測定対象者の皮膚の代謝量、Mbody[W]は測定対象者の深部の代謝量である。測定対象者の各部位の質量と比熱は、情報通信研究機構(NICT)が開発した「TARO」や「HANAKO」のような、解剖学的人体モデルや文献値を使用することができる。各部位の代謝量に関しては、後述する。
【0069】
hx[W/℃]は、皮膚と深部との間の熱交換係数であり、時刻tにおけるhxは、hx=hx0+hx1×2Aより算出する。なお、A=2(Tbody,t-Δt-Tbody,0)/1.2+{EX(t)-1)/1.5である。hx0およびhx1は、実験により決定する。例えば、hx0=17.0[W/℃]、hx1=23.5[W/℃]を使用することができる。
【0070】
EX(t)[W]は、時刻t-Δtからtに推移した際の、測定対象者の運動により生じる熱量を示しており、演算部22が求めた心拍数より算出するが、詳細は後述する。
【0071】
SW(t)[W]は、時刻t-Δtからtに推移した際の、発汗により生じる蒸発熱である。SW(t)は、測定部21が測定した湿度humidity(t)および、各部の温度より算出するが詳細は後述する。
【0072】
air[℃]は、周辺温度を示しており、測定部20が測定した温度を使用する。式(1)の右辺第3項に示すように,測定対象者の皮膚と雰囲気との間の熱伝達率H[W/(m2・℃)](詳細は後述)を用いて、H・(Tskin,t-Tair)を全皮膚面積で積分することにより求めることができる。また、皮膚面積Sは、例えば,Duboiの式「S=身長[cm]0.725×体重[kg]0.425×7.184×10(-3)」などの推定式を用いて求めることができる。
【0073】
上記式を変形すると、以下に示す、式(3)、式(4)のようになるので、上述した各定数、時刻t-Δtにおける測定対象者の深部体温Tbody,t-Δt[℃]、測定対象者の皮膚温の初期値Tskin,t-Δt[℃]、各測定部から算出した心拍数、温度、湿度を用いて、時刻tにおける、皮膚温度および深部温度を推定することができる。
【0074】
hx×(Tbody,m-1-Tskin,m-1),hx×(Tskin,m-1-Tbody,m-1)は、皮膚と深部との間の熱交換(第2熱交換量)を示している。また、∫SH×(Tskin,m-1-Tair)は、皮膚と雰囲気との熱交換(第1熱交換量)を示している。雰囲気との第1熱交換量、汗の蒸発により失われる熱量は、皮膚温度の計算に用いる。運動により発生する熱量と、代謝によって発生する熱量は、深部体温の計算に用いる。また、皮膚と深部とでの第2熱交換量を、皮膚温度と深部温度のそれぞれの計算に用いる。なお、外気温と熱交換量を計算する項の積分(演算部23の演算)において、皮膚が外気に露出している部分と露出していない部分とに分けて行い、それぞれの熱伝達率(第1熱交換量、汗の蒸発量)を変化させることもできる。
【0075】
また、各定数は上記や後述の値に限定したものではなく、実際に即した値を用いることができ、計算実施において適宜設定することができる。各部の温度の初期値は、実測しておくことができる。また、各部の温度の初期値は、上記同様、実際に即した値を用いることができ、計算実施において適宜設定することができる。
【0076】
【数2】
【0077】
次に、演算部23の計算で用いられる各パラメータについて説明する。
【0078】
発汗の蒸発で奪われる熱量SW(t)は、不感蒸散と有感蒸散の和E[W]から算出できる。E=Q×(IP+swrate(t))となる。ここで、IP[g/s]は不感蒸散、Q[J/g]は水の蒸発熱、swrate(t)は、定数α10、α11、α20、α21、β10、β11、β20、β21を用い、swrate(t)=[α11tanh{β11(Tskin,t-Δt-Tskin,0)-β10}+α10]×(Tskin,t-Δt-Tskin,0)/minute+[α21tanh{β21(Tbody,t-Δt-Tbody,0)-β20}+α20]×(Tbody,t-Δt-Tbody,0)/minuteとなる。mituteは分である。
【0079】
例えば,次に示す値を設定することができる。α10=0.95,α11=0.55,α20=3.80,α21=3.20,β10=0.09,β11=0.59,β20=1.80,β21=2.70。
【0080】
ただし、SW(t)は、湿潤率wetが1を超える場合には最大蒸発熱Emax[W]を超えることができない。Wet=E/Emaxで計算できる。Emaxの計算は空気の動きVair[m/s]に依存する対流による熱移動Hc[W×m2/k]、皮膚の飽和水蒸気圧Ps[kPa]、空気の飽和水蒸気圧Pair[kPa]から計算できる。式は下記の通りである。
【0081】
c=3.0×√(10×Vair) ・・・(5)
【0082】
s=7.5×(10D) ・・・(6)
なお、D=7.23-((1750.3/(273+Tskin,t-Δt-38.1)))である。
【0083】
air=7.5×(10G) ・・・(7)
なお、G=7.23-((1750.3/(273+Tair-38.1)))である。
【0084】
max=Emax_coef×Hc×(Ps-humidity(t-Δt)×Pa)×{coverage+(1-coverage)/fpcl} ・・・(8)
【0085】
なお、Emax_coefは係数、coverageは測定対象者の衣服の被覆率、fpclは透湿性の係数である。
【0086】
運動により発生する熱量Exは、METsにより計算できる。例えば、METs=(測定された心拍数[bpm]-測定対象者の安静時心拍数[bpm])÷(測定対象者の最大心拍数[bpm]-安静時心拍数[bpm])×最大酸素摂取量[ml]÷3.5[ml]により、METs数を求める。求めたMETs数を用い、EX熱量[W]=METs数×1.05×体重[kg]×4184÷3600により、熱量を求める。最大酸素摂取量は、実測した値を用いることができる。また、推定式(VO2max=15HRmax/HRrest)より、最大酸素摂取量を推定することもできる。なお、HRrestは、実測した安静時心拍数である。また、HRmaxは、実測、あるいは年齢を用いた推定式「最大心拍数=(208-0.7×年齢)bpm」による最大心拍数である。
【0087】
熱伝達率Hは、対流による熱伝達Hcと、放射による熱伝達Hrとにより計算できる。
H=(Hc+Hr)×fcl。fclは、被服係数である。
【0088】
基礎代謝は、測定対象者の皮膚代謝Mskin[W]、測定対象者の深部代謝Mbody[W]と分けて、時刻tにおけるMskinおよびMbodyは、Mskin=Mskin,0×1.1K、Mbody=Mbody、0×1.1Lより計算する。なお、K=(Tskin,t-Δt-Tskin,0)、L=(Tbody,t-Δt-Tbody,0)である。
【0089】
ここで、Mbody,0=(0.1238+0.0481×体重×0.92+0.0234×height-0.0138×age-0.5473×sex_coef)×1000000/24/3600×activity_levelとなる。sex_coefは性別ごとの係数であり、男性が1、女性が2となる。activity_levelは身体活動レベルである。また、Mskin,0=M_skin/ROU_skin×W_skinで計算する。ROU_skinは、測定対象者の皮膚の密度[kg/m3]、M_skinは、皮膚の代謝[W/m3]、W_skinは、体重×0.08で計算する。Mbody,0は、上述した測定対象者の性別、身体活動レベル、体重の他に、身長、年齢などに応じて設定することができる。
【0090】
演算部22は、受信した心拍数のデータから熱量を求める。次に、演算部23は、受信した温度、湿度のデータより、測定対象者の雰囲気と測定対象者の皮膚との間の第1熱交換量を求める。また、演算部23は、測定対象者の皮膚と深部との間の第2の熱交換量を求める。また、演算部23は、測定対象者の発汗量より求められる汗の蒸発量を求める。これらの各量を用い、演算部23は、測定対象者の深部体温の変化を計算(推定)する。
【0091】
[第3の実施例]
次に、本発明の第3の実施例について説明する。本実施例は、第1の実施例の深部体温測定部2の更に別の例を説明するものである。図10は本実施例の深部体温測定部2の構成を示すブロック図である。本実施例の深部体温測定部2は、測定部24と、測定部25と、発熱量算出部26と、代謝量算出部27と、熱伝達・熱放射量算出部28(第1熱交換量算出部)と、皮膚蒸散量算出部29と、呼気蒸散量設定部30(第4熱交換量設定部)と、熱交換量算出部31(第2熱交換量算出部)と、熱交換量算出部32(第3熱交換量算出部)と、温度算出部33とから構成される。
【0092】
発熱量算出部26と代謝量算出部27と熱伝達・熱放射量算出部28と皮膚蒸散量算出部29と呼気蒸散量設定部30と熱交換量算出部31と熱交換量算出部32とは、熱量算出部34を構成している。
【0093】
測定部24は、測定対象者近傍の温度(測定対象者の雰囲気の気温)を測定する。測定部24は、例えば、温度計から構成される。あるいは、測定部24は、外部の気象システムから測定対象者の近傍の気象データを取得するようにしてもよい。
【0094】
測定部25は、測定対象者近傍の湿度(測定対象者の雰囲気の湿度)を測定する。測定部25は、例えば、湿度計から構成される。あるいは、測定部25は、測定部24と同様に、外部の気象システムから測定対象者の近傍の気象データを取得するようにしてもよい。
【0095】
心拍数測定部1と測定部24と測定部25とは、一体型の測定器でもよいし、個別の測定器でもよい。
【0096】
熱量算出部34は、測定対象者の心拍数と測定対象者近傍の温度と測定対象者近傍の湿度とに基づいて、測定対象者の体幹部(第1部位)と四肢部(第2部位)の深部と皮膚とに流入出する熱量を算出する。
温度算出部33は、熱量算出部34によって算出された熱量に基づいて、測定対象者の皮膚温度および深部温度を算出する。
【0097】
[深部体温推定方法:時間ステップごとの深部体温変化の計算方法]
本実施例では、図11に示すように、測定対象者の身体が体幹部Uと四肢部Lの2部位で構成され、体幹部Uと四肢部Lの2部位がそれぞれ深部層Cと皮膚層Sの2層を有するものとみなす。すなわち、測定対象者の身体は、体幹部深部層UCと、体幹部皮膚層USと、四肢部深部層LCと、四肢部皮膚層LSとからなる。本実施例では、取得する温湿度と心拍数情報とを基に、測定対象者の各部・各層に流入出する、時々刻々と変化する熱量を算出し、熱量の変化から、測定対象者の各部位・各層の温度変化を推定する。
【0098】
本実施例では、センサデータを取得する時間ステップごとの深部体温変化の計算方法を説明する。本実施例では、上述のとおり、測定対象者の身体を体幹部と四肢部の2部位で構成されるものとみなした場合の計算例を記載しているが、体幹部を上半身に置き替え、四肢部を下半身に置き替えてもよい。つまり、測定対象者の身体を第1部位と第2部位の任意の2部位で構成されるものとしてよい。
【0099】
式(9)~式(12)に、それぞれ測定対象者の体幹部皮膚層USの温度変化、体幹部深部層UCの温度変化、四肢部皮膚層LSの温度変化、四肢部深部層LCの温度変化を推定する式の例を示す。TUS[t]は時刻tにおける体幹部皮膚層USの温度[℃]、TUC[t]は時刻tにおける体幹部深部層UCの温度[℃]、TLS[t]は時刻tにおける四肢部皮膚層LSの温度[℃]、TLC[t]は時刻tにおける四肢部深部層LCの温度[℃]である。
【0100】
【数3】
【0101】
【数4】
【0102】
【数5】
【0103】
【数6】
【0104】
1,Uは測定対象者の運動による体幹部Uの発熱量[W]、Q1,Lは運動による四肢部Lの発熱量[W]である。Q2,USは測定対象者の体幹部皮膚層USの代謝量[W]、Q2,UCは体幹部深部層UCの代謝量[W]、Q2,LSは四肢部皮膚層LSの代謝量[W]、Q2,LCは四肢部深部層LCの代謝量[W]である。Q3,U(第1熱交換量)は測定対象者の体幹部Uにおける皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量[W]、Q3,L(第1熱交換量)は四肢部Lにおける皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量[W]である。
【0105】
4,Uは測定対象者の体幹部Uにおける皮膚蒸散量、Q4,Lは四肢部Lにおける皮膚蒸散量である。Q5(第4熱交換量)は測定対象者の呼気蒸散量[W]である。Q6,U(第2熱交換量)は測定対象者の体幹部Uにおける深部と皮膚間の熱交換量[W]、Q6,L(第2熱交換量)は四肢部Lにおける深部と皮膚間の熱交換量[W]である。Q7(第3熱交換量)は測定対象者の深部における体幹と四肢間の熱交換量[W]である。
【0106】
WCUSは測定対象者の体幹部皮膚層USの熱容量[J/℃]、WCUCは体幹部深部層UCの熱容量[J/℃]、WCLSは四肢部皮膚層LSの熱容量[J/℃]、WCLCは四肢部深部層LCの熱容量[J/℃]である。Δtは計算ステップ時間であり、例えば1[s]以下とする。
また、時刻t+Δtにおける平均皮膚温Tsk[t+Δt]、深部体温T[t+Δt]は式(13)、式(14)のようになる。
【0107】
【数7】
【0108】
【数8】
【0109】
sf_conf_USは測定対象者の体表面全体に対する体幹部Uの表面積の割合[%]、sf_conf_LSは体表面全体に対する四肢部Lの表面積の割合[%]である。熱容量WCUS,WCUC,WCLS,WCLC、割合sf_conf_US,sf_conf_LSは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。
【0110】
図12は本実施例の深部体温測定部2の動作を説明するフローチャートである。測定部24は、測定対象者近傍の温度(測定対象者の雰囲気の気温)を測定する(図12ステップS301)。測定部25は、測定対象者近傍の湿度(測定対象者の雰囲気の湿度)を測定する(図12ステップS302)。
【0111】
[運動による発熱量Q1の算出]
次に、発熱量算出部26は、心拍数測定部1によって測定された心拍数に基づいて、測定対象者の運動による体幹部Uの深部層における発熱量Q1,U[W]、運動による四肢部Lの深部層における発熱量Q1,L[W]をそれぞれ式(15)、式(16)のように算出する(図12ステップS303)。
【0112】
【数9】
【0113】
【数10】
【0114】
式(15)、式(16)は、文献「“健康づくりのための運動指針2006 ~生活習慣病予防のために~”,厚生労働省,2006年,<https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0719-3c.pdf>」に開示されている。weightは測定対象者の重量[kg]、ex_conf_Uは測定対象者の全身に対する体幹部Uの筋肉量の割合[%]、ex_conf_Lは全身に対する四肢部Lの筋肉量の割合[%]である。重量weight、割合ex_conf_U,ex_conf_Lは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。
【0115】
また、METs[t]はメッツ数を表している。発熱量算出部26は、心拍数測定部1が取得した時刻tにおける心拍数HR[t][bpm]、安静時心拍数HRrest、最大心拍数HRmaxを用いて、式(17)または式(18)のいずれか一方の式によりMETs[t]を算出すればよい。
【0116】
【数11】
【0117】
【数12】
【0118】
式(18)は、文献「J.R.Wicks,et al.,“HR Index-A Simple Method for the Prediction of Oxygen Uptake”,Medicine and Science in Sports and Exercise,2011」に開示されている。
安静時心拍数HRrest、最大心拍数HRmaxは、それぞれ過去の測定で得られた既知の値として、実際に即した値を予め設定しておけばよい。また、式(15)、式(16)で用いるMETs[t]に関しては、瞬時値だけでなく、時間平均値(例えば、6分間の平均値)を用いてもよい。
【0119】
[代謝量Q2の算出]
次に、代謝量算出部27は、温度算出部33がΔt前に算出した、時刻tにおける測定対象者の平均皮膚温の推定値Tsk[t][℃]と深部体温の推定値T[t][℃]とに基づいて、測定対象者の体幹部皮膚層USの代謝量Q2,US[W]、体幹部深部層UCの代謝量Q2,UC[W]、四肢部皮膚層LSの代謝量Q2,LS[W]、四肢部深部層LCの代謝量Q2,LC[W]をそれぞれ式(19)~式(22)のように算出する(図12ステップS304)。
【0120】
【数13】
【0121】
【数14】
【0122】
【数15】
【0123】
【数16】
【0124】
式(19)~式(22)は、文献「Ronald J Spiegel,“A Review of Numerical Models for Predicting the Energy Deposition and Resultant Thermal Response of Humans Exposed to Electromagnetic Fields”,IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques,Volume32,Issue8,1984」に開示されている。Askinは代謝に関する定数、volume_USは測定対象者の体幹部皮膚層USの体積[m3]、volume_LSは四肢部皮膚層LSの体積[m3]、weight_Uは測定対象者の体幹部Uの重量[kg]、weight_Lは四肢部Lの重量[kg]である。定数Askin、体積volume_US,volume_LS、重量weight_U,weight_Lは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。
【0125】
sk[0]は平均皮膚温Tsk[t]の演算時の初期値、T[0]は深部体温T[t]の演算時の初期値である。本実施例では、体幹部皮膚層USの温度の初期値TUS[0]、体幹部深部層UCの温度の初期値TUC[0]、四肢部皮膚層LSの温度の初期値TLS[0]、四肢部深部層LCの温度の初期値TLC[0]として、別の温度測定装置によって測定した実測値または一般的な安静時の既知の値などの実際に即した値を用いる。したがって、時刻t=0の初回の代謝量Q2の算出では、Tsk[t]=Tsk[0]である。
【0126】
同様に、深部体温T[t]の初期値T[0]としては、別の温度測定装置によって測定した実測値または一般的な安静時の既知の値などの実際に即した値を用いる。したがって、時刻t=0の初回の代謝量Q2の算出では、T[t]=T[0]である。
また、代謝量算出部27は、式(20)、式(22)のMを式(23)のように算出する。
【0127】
【数17】
【0128】
式(23)は、文献「AA Ganpule,et al.,“Interindividual variability in sleeping metabolic rate in Japanese subjects”,European Journal of Clinical Nutrition,volume 61,2007」に開示されている。weight_Cは測定対象者の深部の重量[kg]、heightは測定対象者の身長[cm]、ageは測定対象者の年齢である。sexcoefは測定対象者が男性の場合に0.5473、測定対象者が女性の場合に0.5473×2となる定数である。activity_levelは身体活動レベル、Acoefは代謝調整用のパラメータである。重量weight_C、身長height、年齢age、定数sexcoef、activity_level、パラメータAcoefは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。
【0129】
activity_levelの設定例としては、測定対象者の生活の大部分が座位で、静的な活動が中心の場合は1.5程度とすればよい。測定対象者が座位中心の仕事をしているが、職場内での移動や立位での作業、接客等を含む場合、あるいは通勤、買物、家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合は、activity_levelを1.75程度とすればよい。測定対象者が移動や立位の多い仕事への従事者である場合、あるいはスポーツなど余暇における活発な運動習慣を持っている場合は、activity_levelを2.0程度とすればよい。このように、測定対象者の運動状況に応じてactivity_levelを適宜設定しておけばよい。
【0130】
[皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量Q3の算出]
次に、熱伝達・熱放射量算出部28は、測定部24によって測定された測定対象者近傍の温度Ta[t][℃]と、温度算出部33がΔt前に算出した、時刻tにおける時刻tにおける測定対象者の平均皮膚温の推定値Tsk[t][℃]と体幹部皮膚層USの温度の推定値TUS[t][℃]と四肢部皮膚層LSの温度の推定値TLS[t][℃]とに基づいて、測定対象者の体幹部Uにおける皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量Q3,U[W]、四肢部Lにおける皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量Q3,L[W]を算出する(図12ステップS305)。測定部24が測定対象者の衣服外の気温Ta[t][℃]を測定する場合、熱伝達・熱放射量Q3,U,Q3,Lは式(24)、式(25)のようになる。
【0131】
【数18】
【0132】
【数19】
【0133】
割合sf_conf_US,sf_conf_LSについては上記のとおりである。fcl_USは体幹部Uの衣服による伝熱効率を表す定数、fcl_LSは四肢部Lの衣服による伝熱効率を表す定数、coverageは四肢部Lを衣服が覆う割合[%]である。割合sf_conf_US,sf_conf_LS、定数fcl_US,fcl_LS、割合coverageは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。定数fcl_US,fcl_LS、割合coverageについては、測定対象者の服装に応じて適宜設定しておけばよい。
【0134】
HSは測定対象者の空気との熱交換係数[W/℃]である。熱伝達・熱放射量算出部28は、熱交換係数HS[W/℃]を式(26)により算出する。
【0135】
【数20】
【0136】
sfは測定対象者の体表面積[m2]である。熱伝達・熱放射量算出部28は、体表面積sf[m2]を測定対象者の重量weight[kg]と身長height[m]とから算出することができる。体表面積sf[m2]の算出式としては、DuBoisの式や藤本の式等の推定式がある。
【0137】
cmは対流熱伝達係数[W/℃/m2]、Hrは放射熱伝達係数[W/℃/m2]である。熱伝達・熱放射量算出部28は、対流熱伝達係数Hcm[W/℃/m2]、放射熱伝達係数Hr[W/℃/m2]を、それぞれ式(27)、式(28)により算出する。
【0138】
【数21】
【0139】
【数22】
【0140】
式(27)、式(28)は、文献「D.Fiala,et al.,“A computer model of human thermoregulation for a wide range of environmental conditions:the passive system”,Journal of Applied Physiology,1985」に開示されている。Vairは風速[m/s]である。熱伝達・熱放射量算出部28は、風速Vair[m/s]として、風速計等で測定された実測値を用いてもよいし、文献等で開示されている衣服内の風速の既知の値を用いてもよい。
【0141】
熱伝達・熱放射量算出部28は、測定部24が測定対象者の衣服内の温度Ta[t][℃]を測定する場合、熱伝達・熱放射量Q3,U,Q3,Lを式(29)、式(30)により算出する。
【0142】
【数23】
【0143】
【数24】
【0144】
[皮膚蒸散量Q4の算出]
次に、皮膚蒸散量算出部29は、測定部24によって測定された測定対象者近傍の温度Ta[t][℃]と、測定部25によって測定された測定対象者近傍の相対湿度humidity[t]と、温度算出部33がΔt前に算出した、時刻tにおける平均皮膚温の推定値Tsk[t][℃]と深部体温の推定値T[t][℃]とに基づいて、測定対象者の体幹部Uにおける皮膚蒸散量Q4,U[W]、四肢部Lにおける皮膚蒸散量Q4,L[W]をそれぞれ式(31)、式(32)により算出する(図12ステップS306)。
【0145】
【数25】
【0146】
【数26】
【0147】
sw_conf_USは測定対象者の体表面全体に対する体幹部Uの発汗量の割合[%]、sw_conf_LSは体表面全体に対する四肢部Lの発汗量の割合[%]である。割合sw_conf_US,sw_conf_LSは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。swは全身の皮膚蒸散量[W]である。皮膚蒸散量算出部29は、皮膚蒸散量sw[W]を式(33)により算出することができる。
【0148】
【数27】
【0149】
min(E,Emax)はEとEmaxのうちいずれか小さい方を採用することを意味する。Eは、測定対象者の皮膚における不感蒸散と有感蒸散の和[W]である。皮膚蒸散量算出部29は、不感蒸散と有感蒸散の和E[W]を式(34)により算出することができる。
【0150】
【数28】
【0151】
PIは測定対象者の皮膚における不感蒸散[W]、Qevは水の蒸発熱[J/g]である。不感蒸散PI[W]、蒸発熱Qev[J/g]は、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。swrateは有感蒸散[g/min]である。皮膚蒸散量算出部29は、有感蒸散swrate[g/min]を式(35)により算出することができる。
【0152】
【数29】
【0153】
式(35)は、文献「D.Fiala,et al.,“Computer prediction of human thermoregulatory and temperature responses to a wide range of environmental conditions”,International Journal of Biometeorology,volume 45,2001」に開示されている。aij,bij(i=1,2,j=0,1)は、発汗係数である。発汗係数aij,bijは、それぞれ既知の値であり、測定対象者の汗のかき易さに応じて実際に即した値を予め設定しておけばよい。具体的には、low(汗をかき難い)、normal(普通)、high(汗をかき易い)の3水準に応じて、式(36)に示すように発汗係数aij,bijを設定すればよい。
【0154】
【数30】
【0155】
一方、Emaxは最大蒸発熱[W]である。皮膚蒸散量算出部29は、測定部24が測定対象者の衣服外の気温Ta[t][℃]を測定し、測定部25が測定対象者の衣服外の相対湿度humidity[t]を測定する場合、最大蒸発熱Emax[W]を式(37)により算出することができる。
【0156】
【数31】
【0157】
また、皮膚蒸散量算出部29は、測定部24が測定対象者の衣服内の温度Ta[t][℃]を測定し、測定部25が測定対象者の衣服内の相対湿度humidity[t]を測定する場合、最大蒸発熱Emax[W]を式(38)により算出することができる。
【0158】
【数32】
【0159】
割合sw_conf_US,sw_conf_LS,coverageについては上記のとおりである。fpcl_USは測定対象者の体幹部Uにおける衣服による伝熱効率を表す定数、fpcl_LSは四肢部Lにおける衣服による伝熱効率を表す定数、Emax_coefは最大蒸発熱に関する定数である。定数fpcl_US,fpcl_LS,Emax_coefは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を予め設定しておけばよい。
【0160】
cは空気の風速に依存した対流による熱移動[W・m2/℃]である。皮膚蒸散量算出部29は、熱移動Hc[W・m2/℃]を式(39)により算出することができる。
【0161】
【数33】
【0162】
式(37)~式(39)は、文献「I.Laakso,et al.,“Dominant factors affecting temperature rise in simulations of human thermoregulation during RF exposure”,Physics in Medicine and Biology,Volume 56,2011」に開示されている。Psは測定対象者の皮膚層での飽和水蒸気圧[kPa]である。皮膚蒸散量算出部29は、飽和水蒸気圧Ps[kPa]を式(40)により算出することができる。
【0163】
【数34】
【0164】
aは湿度を計測している雰囲気中での飽和水蒸気圧[kPa]である。皮膚蒸散量算出部29は、飽和水蒸気圧Pa[kPa]を式(41)により算出することができる。
【0165】
【数35】
【0166】
[呼気蒸散量Q5の決定]
次に、呼気蒸散量設定部30は、測定対象者の呼気による蒸散量Q5[W]を式(42)のように設定する(図12ステップS307)。呼気蒸散量Q5[W]は、外気と測定対象者の深部間の熱交換量に相当する。
【0167】
【数36】
【0168】
[深部と皮膚間の熱交換量Q6の算出]
次に、熱交換量算出部31は、心拍数測定部1によって測定された心拍数HR[t][bpm]と、温度算出部33がΔt前に算出した、時刻tにおける体幹部皮膚層USの温度の推定値TUS[t][℃]と体幹部深部層UCの温度の推定値TUC[t][℃]と四肢部皮膚層LSの温度の推定値TLS[t][℃]と四肢部深部層LCの温度の推定値TLC[t][℃]と平均皮膚温の推定値Tsk[t][℃]と深部体温の推定値T[t][℃]とに基づいて、測定対象者の体幹部Uにおける深部と皮膚間の熱交換量Q6,U[W]、四肢部Lにおける深部と皮膚間の熱交換量Q6,L[W]をそれぞれ式(43)、式(44)により算出する(図12ステップS308)。
【0169】
【数37】
【0170】
【数38】
【0171】
割合sf_conf_US,sf_conf_LSについては上記のとおりである。hxは測定対象者の皮膚と深部間の熱交換係数である。熱交換量算出部31は、熱交換係数hxを式(45)により算出することができる。
【0172】
【数39】
【0173】
METs[t]については上記のとおりである。a,b,e,hx0,hx1,hx_maxは熱交換係数に関わるパラメータである。パラメータa,b,e,hx0,hx1,hx_maxは、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を用いればよく、実験を通じて適宜設定すればよい。
【0174】
[体幹部と四肢部間の熱交換量Q7の算出]
次に、熱交換量算出部32は、温度算出部33がΔt前に算出した、時刻tにおける体幹部深部層UCの温度の推定値TUC[t][℃]と四肢部深部層LCの温度TLC[t][℃]と平均皮膚温の推定値Tsk[t][℃]と深部体温の推定値T[t][℃]とに基づいて、測定対象者の深部における体幹部Uと四肢部L間の熱交換量Q7[W]を式(46)により算出する(図12ステップS309)。
【0175】
【数40】
【0176】
hccは測定対象者の深部における体幹部Uと四肢部Lの熱交換係数である。熱交換量算出部32は、熱交換係数hccを式(47)により算出することができる。
【0177】
【数41】
【0178】
f,hcc0は熱交換係数に関わるパラメータである。パラメータf,hcc0は、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を用いればよく、実験を通じて適宜設定すればよい。hcc_Tは熱交換係数hccの温度寄与分、hcc_Mは熱交換係数hccのMETs寄与分である。熱交換量算出部32は、熱交換係数hccの温度寄与分hcc_Tを式(48)により算出することができる。
【0179】
【数42】
【0180】
hcc_Tmaxはhcc_Tの規定の上限値である。また、熱交換量算出部32は、熱交換係数hccのMETs寄与分hcc_Mを式(49)により算出することができる。
【0181】
【数43】
【0182】
hcc_Mmaxはhcc_Mの規定の上限値である。hcc1は熱交換係数に関わるパラメータである。上限値hcc_Tmax,hcc_Mmax、パラメータhcc1は、それぞれ既知の値であり、実際に即した値を用いればよく、実験を通じて適宜設定すればよい。aveMETs[t]は、メッツ数の時間平均値(例えば、6分間の平均値)である。パラメータa,bについては上記のとおりである。
【0183】
こうして、発熱量算出部26と代謝量算出部27と熱伝達・熱放射量算出部28と皮膚蒸散量算出部29と呼気蒸散量設定部30と熱交換量算出部31と熱交換量算出部32とにより、各熱量Q1,U,Q1,L,Q2,US,Q2,UC,Q2,LS,Q2,LC,Q3,U,Q3,L,Q4,U,Q4,L,Q5,Q6,U,Q6,L,Q7を算出することができる。
【0184】
温度算出部33は、時刻tにおける測定対象者の体幹部皮膚層USの温度の推定値TUS[t][℃]と、体幹部皮膚層USの代謝量Q2,US[W]と、体幹部Uにおける皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量Q3,U[W]と、体幹部Uにおける皮膚蒸散量Q4,U[W]と、体幹部Uにおける深部と皮膚間の熱交換量Q6,U[W]とに基づいて、Δt後の体幹部皮膚層USの温度の推定値TUS[t+Δt][℃]を式(9)により算出する(図12ステップS310)。
【0185】
温度算出部33は、時刻tにおける測定対象者の体幹部深部層UCの温度の推定値TUC[t][℃]と、体幹部Uの深部層における発熱量Q1,U[W]と、体幹部深部層UCの代謝量Q2,UC[W]と、呼気蒸散量Q5[W]と、体幹部Uにおける深部と皮膚間の熱交換量Q6,U[W]と、深部における体幹部Uと四肢部L間の熱交換量Q7[W]とに基づいて、Δt後の体幹部深部層UCの温度の推定値TUC[t+Δt][℃]を式(10)により算出する(図12ステップS311)。
【0186】
温度算出部33は、時刻tにおける測定対象者の四肢部皮膚層LSの温度の推定値TLS[t][℃]と、四肢部皮膚層LSの代謝量Q2,LS[W]と、四肢部Lにおける皮膚と外気間の熱伝達・熱放射量Q3,L[W]と、四肢部Lにおける皮膚蒸散量Q4,L[W]と、四肢部Lにおける深部と皮膚間の熱交換量Q6,L[W]とに基づいて、Δt後の四肢部皮膚層LSの温度の推定値TLS[t+Δt][℃]を式(11)により算出する(図12ステップS312)。
【0187】
温度算出部33は、時刻tにおける測定対象者の四肢部深部層LCの温度の推定値TLC[t][℃]と、四肢部Lの深部層における発熱量Q1,L[W]と、四肢部深部層LCの代謝量Q2,LC[W]と、四肢部Lにおける深部と皮膚間の熱交換量Q6,L[W]と、深部における体幹部Uと四肢部L間の熱交換量Q7[W]とに基づいて、Δt後の四肢部深部層LCの温度の推定値TLC[t+Δt][℃]を式(12)により算出する(図12ステップS313)。
【0188】
こうして、温度の推定値TUS[t+Δt],TUC[t+Δt],TLS[t+Δt],TLC[t+Δt]をそれぞれ逐次計算することができる。
そして、温度算出部33は、Δt後の平均皮膚温の推定値Tsk[t+Δt][℃]を式(13)により算出する(図12ステップS314)。また、温度算出部33は、Δt後の深部体温の推定値T[t+Δt][℃]を式(14)により算出する(図12ステップS315)。
【0189】
深部体温測定部2は、以上のステップS300~S315の処理を周期Δt毎に行う。Δt後の次の計算では、直前の回で算出したTUS[t+Δt],TUC[t+Δt],TLS[t+Δt],TLC[t+Δt],Tsk[t+Δt],T[t+Δt]を、それぞれTUS[t],TUC[t],TLS[t],TLC[t],Tsk[t],T[t]として、ステップS300~S315の処理を行うようにすればよい。
【0190】
なお、本実施例では、測定対象者の心拍数を用いる場合について説明しているが、心拍数の代わりに脈拍数を用いてもよい。
【0191】
第1~第3の実施例の決定部4と通知部5とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図13に示す。
【0192】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インタフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、心拍数測定部1と、測定部20,21,24,25と、通知部5の回路部のハードウェアなどが接続される。このようなコンピュータにおいて、第1~第3の実施例の暑熱リスク警報方法を実現させるための暑熱リスク警報プログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1~第3の実施例で説明した処理を実行する。
【0193】
また、暑熱リスク警報装置の構成を複数のコンピュータ機器に分散させるようにしてもよい。例えば、暑熱リスク警報装置を、心拍数測定部1と深部体温測定部2とが一体化したウェアラブルセンサ等の第1の装置と、主観情報取得部3と決定部4と通知部5とが一体化したスマートフォン等の第2の装置で構成してもよい。この場合、測定対象者の身体に第1の装置が装着され、測定対象者が第2の装置を所持しており、第1の装置で取得したデータをネットワークを介して第2の装置に送信し、第2の装置において暑熱リスクレベルを決定して通知を実行する。
【0194】
また、暑熱リスク警報装置を、心拍数測定部1と深部体温測定部2とが一体化したウェアラブルセンサ等の第1の装置と、主観情報取得部3を構成するスマートフォン等の第2の装置と、決定部4と通知部5とが一体化したデータサーバ等の第3の装置で構成してもよい。この場合、測定対象者の身体に第1の装置が装着され、測定対象者が第2の装置を所持しており、第1の装置、第2の装置で取得したデータをネットワークを介して第3の装置に送信し、第3の装置において暑熱リスクレベルを決定して通知を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明は、熱中症を予防する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0196】
1…心拍数測定部、2…深部体温測定部、3…主観情報取得部、4…決定部、5…通知部、20,21,24,25…測定部、22,23…演算部、26…発熱量算出部、27…代謝量算出部、28…熱伝達・熱放射量算出部、29…皮膚蒸散量算出部、30…呼気蒸散量設定部、31,32…熱交換量算出部、33…温度算出部、34…熱量算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13