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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053836
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】電波発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/27 20160101AFI20230406BHJP
   H01Q 7/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H02J50/27
H01Q7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163132
(22)【出願日】2021-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庄司 英一
(57)【要約】
【課題】本発明は、広範囲の周波数の電波に対応可能で安定して効率よく発電を行うことができる電波発電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】電波発電装置1は、始端10a及び終端10bを有する導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された発電用コイル体10と、発電用コイル体10を内蔵して導電性線材と絶縁して設けられた導電性管体20と、発電用コイル体10の始端10a及び終端10bに接続された接続回路11とを備え、導電性管体20により発電用コイル体10の共振周波数を変化させ、伝搬する電波により発電用コイル体10に発生する起電力を接続回路11に供給するようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
始端及び終端を有する導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された発電用コイル体と、前記発電用コイル体の始端及び終端に接続された接続回路とを備え、伝搬する電波により所定の共振周波数で前記発電用コイル体に発生する起電力に基づいて前記接続回路から出力する電波発電装置において、前記発電用コイル体のループ形状に沿うように近接配置されて前記共振周波数を変化させる導電体が前記導電性線材と絶縁されて設けられている電波発電装置。
【請求項2】
前記導電体は、前記発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の導電性管体からなり、前記導電性管体は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間している請求項1に記載の電波発電装置。
【請求項3】
前記発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の絶縁性管体を備えており、前記導電体は、前記絶縁性管体の周囲を被覆する環状の導電層からなり、前記導電層は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間している請求項1に記載の電波発電装置。
【請求項4】
前記発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の絶縁性管体を備えており、前記導電体は、前記絶縁性管体に内蔵される導電性環状体からなり、前記導電性環状体は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間している請求項1に記載の電波発電装置。
【請求項5】
前記導電体には、欠除して形成された前記端部の間にスイッチ回路、可変抵抗回路又はコンデンサ回路が接続されている請求項2から4のいずれかに記載の電波発電装置。
【請求項6】
前記導電性管体又は前記絶縁性管体に導電性板状体が近接配置して設けられている請求項2から5のいずれかに記載の電波発電装置。
【請求項7】
導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された伝送用コイル体を前記発電用コイル体に近接配置している請求項1から6のいずれかに記載の電波発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波(RF)等の環境中に伝搬する電波から電力を得る電波発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中には、通信用及び放送用の様々な周波数の電波が常時伝搬しており、こうした電波を利用して発電を行う電波発電装置が提案されている。例えば、特許文献1では、磁界型アンテナを用いてAMラジオ放送用の電波から発電する電磁波回収技術が記載されており、可撓性の線材をN回巻回させたフレキシブルコイルをループに結束し、ループから取り出された線材の始端及び終端に接続回路を接続して発電を行う点が記載されている。また、特許文献2では、通信デバイスや放送電波等の電磁波からエネルギーハーベスティングを行うための回路として、アンテナと、アンテナと所望の周波数で共振する共振回路と、共振回路の出力電圧が大きくなるように、共振回路の共振周波数を制御する制御回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020/138022号明細書
【特許文献2】特許第6789524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、フレキシブルコイルを用いているため、電磁波の回収という観点からみると、コイルの共振周波数が変化しやすく安定して効率よく電磁波から発電することが課題となっている。特許文献2では、共振回路の共振周波数を制御して共振回路の出力電圧が大きくなるように回路構成されているが、制御回路により調整可能な共振周波数の範囲は限定的であり、広範囲の周波数に対応することは難しいといった課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、広範囲の周波数の電波に対応可能で安定して効率よく発電を行うことができる電波発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電波発電装置は、始端及び終端を有する導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された発電用コイル体と、前記発電用コイル体の始端及び終端に接続された接続回路とを備え、伝搬する電波により所定の共振周波数で前記発電用コイル体に発生する起電力に基づいて前記接続回路から出力する電波発電装置において、前記発電用コイル体のループ形状に沿うように近接配置されて前記共振周波数を変化させる導電体が前記導電性線材と絶縁されて設けられている。さらに、前記導電体は、前記発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の導電性管体からなり、前記導電性管体は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間している。さらに、前記発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の絶縁性管体を備えており、前記導電体は、前記絶縁性管体の周囲を被覆する環状の導電層からなり、前記導電層は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間している。さらに、前記発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の絶縁性管体を備えており、前記導電体は、前記絶縁性管体に内蔵される導電性環状体からなり、前記導電性環状体は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間している。さらに、前記導電体には、欠除して形成された前記端部の間にスイッチ回路、可変抵抗回路又はコンデンサ回路が接続されている。さらに、前記導電性管体又は前記絶縁性管体に導電性板状体が近接配置して設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記のような構成を備えることで、導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された発電用コイル体のループ形状に沿うように導電体を近接配置して発電用コイル体の共振周波数を変化させるようにしているので、広範囲の周波数の電波に対して発電を行うことが可能となり、発電効率を高めることができる。
【0008】
そして、発電用コイル体を導電性管体又は絶縁性管体に内蔵させることで、発電用コイル体のループ形状を保持し、導電体を発電用コイル体に近接配置した状態を保持することができ、安定した発電を行うことが可能となる。
【0009】
また、導電体として、絶縁性管体に内蔵される導電性環状体を備えることで、発電用コイル体の共振周波数を広範囲に変化させることが可能となり、安定した発電を効率よく行うことができる。
【0010】
また、導電性管体又は絶縁性管体に導電性板状体を近接配置して設けることで、共振周波数を変化させて発電可能な共振周波数の範囲を拡げることができる。
【0011】
また、導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された伝送用コイル体を発電用コイル体に近接配置することで、コイル体同士の相互誘導作用により、共振周波数を変化させて発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る電波発電装置の実施形態に関する模式図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】導電体の導通状態となる長さを変化させることができる電波発電装置に関する模式図である。
図4】絶縁性管体の内部に導電性環状体が配置された例を示す模式図である。
図5】導電体として導電性板状体を用いた場合の模式図である。
図6図5に示す例の変形例に関する模式図である。
図7図5に示す例の別の変形例に関する模式図である。
図8】伝送用コイル体を備えた電波発電装置に関する模式図である。
図9】伝送用コイル体を備えた別の電波発電装置に関する模式図である。
図10】発電用コイル体を内蔵する導電性管体又は絶縁性管体の設置場所を例示する模式図である。
図11】導通回路を切断状態とした場合及び導通状態とした場合のそれぞれの周波数特性を示すグラフである。
図12】電極体間の周方向の長さを変化させた測定結果を示すグラフである。
図13】伝送用コイル体を備えた電波発電装置の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。図1は、本発明に係る電波発電装置の実施形態に関する模式図である。電波発電装置1は、始端10a及び終端10bを有する導電性線材を複数回巻回してループ形状に形成された発電用コイル体10と、発電用コイル体10の始端10a及び終端10bに接続された接続回路11とを備えており、伝搬する電波により所定の共振周波数で発電用コイル体10に発生する起電力に基づいて接続回路11から出力するようになっている。
【0014】
発電用コイル体10に用いる導電性線材としては、柔軟性を有する導電性素材からなるものが好ましく、例えば、リッツ線、金属線、導電性繊維、炭素繊維といった導電性素材を1種類又は複数種類撚り合わせて線材としたものが挙げられる。導電性線材は、塩化ビニール、絹糸といった絶縁性材料により被覆されているものを用いるとよい。
【0015】
発電用コイル体10は、導電性線材を複数回巻回したループコイル状に形成されているので、環境中を伝搬する電波の磁界成分との相互作用による電磁誘導が生じて起電力が発生するようになる。発電用コイル体10に発生する起電力は、ループコイル形状の大きさや巻き数を適宜調整して共振周波数を電波の周波数に合わせることで大きくすることができる。
【0016】
発電用コイル体10で発生する起電力は、始端10a及び終端10bの間に電圧を生じさせて、始端10a及び終端10bの間に接続された接続回路11に供給される。
【0017】
接続回路11は、発電用コイル体10に対して並列に接続されている。接続回路11としては、例えば、抵抗回路、整流回路、同調コンデンサ回路、マッチング回路、蓄電回路といった回路を適宜接続することで、発電用コイル体に生じる電圧を利用して、ラジオ受信機等の通信機器、LED照明装置、観測データを取得するセンサ等の検出装置といった様々な情報機器に対して、電波発電装置1を電源として機能させることができる。
【0018】
発電用コイル体10は、ループ形状に沿うように導電体を近接配置することで、後述するように共振周波数が変化するようになる。導電体は、導電性線材と絶縁されて設けられており、導電体と発電用コイル体10との間の相互作用によりこうした現象が生じるものと考えられる。特に、導電体による電磁波の磁界強度への影響が大きいLF帯、MF帯及びHF帯といった通信帯では、共振周波数の変化が生じやすいと考えられる。
【0019】
この例では、導電体として金属製パイプからなる環状の導電性管体20が用いられており、発電用コイル体10は、導電性管体20の内部に導電性線材を複数回挿通させることで複数回巻回したループコイル状に形成されている。導電性管体20の形状は、円環状に形成しているが、環状であればこれ以外の形状にすることも可能で、特に限定されない。例えば、楕円状、多角形状といった形状にすることもでき、電波発電装置の性能、設置場所等に応じて適宜設定すればよい。
【0020】
導電性管体20に用いる金属製パイプは、高剛性で変形しにくい素材で成形されていればよく、使用する素材は特に限定されないが、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅といった公知の素材やこれらの素材を主成分とする合金材を用いた金属製パイプが挙げられる。後述する実施例2に示すように、使用する金属材料のうち、常磁性体及び反磁性体の方が強磁性体よりも共振周波数への遮蔽の影響が小さくなることから、常磁性体又は反磁性体となる金属材料を使用することが好ましい。また、軟磁性体及び硬磁性体についても使用することができる。
【0021】
図2は、図1のA-A断面図である。導電性管体20は、導電性を有する金属材料によりパイプ状に成形されており、略円形の断面形状で高剛性を備えているため変形しにくく、内蔵された発電用コイル体10をループコイル形状に安定した状態で保持するようになる。そのため、発電用コイル体10の共振周波数を安定化させて接続回路11からの出力を安定させることができる。
【0022】
導電性管体20は、環状に形成された金属製パイプの一部を欠除しており、欠除されて形成された一対の端部は、電気的に接続されないように離間した状態に設定されている。一部が欠除された管体は、例えば、直線状に成形された金属製パイプを環状に曲げて両端部が対向配置するように変形させたり、予め環状に成形された金属製パイプの一部を切断して一対の端部を形成するようにすればよい。
【0023】
そして、一方の端部からは導電性線材の始端10aが引き出されており、他方の端部からは導電性線材の終端10bが引き出されている。引き出された始端10a及び終端10bには接続回路11が発電用コイル体10に対して並列で接続されている。この例では、導電性線材を導電性管体20内に2回挿通させており、発電用コイル体10は2回巻回したマルチループコイルに成形されているが、コイルの巻き数は導電性管体20のループ直径に応じて適宜設定することが可能で、所望の共振周波数に合わせて設定すればよい。そして、発電用コイル体10のループ形状に沿うように導電体である導電性管体20が近接配置されるようになる。
【0024】
導電性管体20の離間した一対の端部には、それぞれ電極21a及び21bが接続されており、電極21a及び21bには、導通回路22が接続されている。導通回路22は、電極21a及び21bを直流的又は交流的に導通させる機能を備えており、切断・導通を切り換えるスイッチ回路、切断状態から抵抗値を連続的に変化させて導通する可変抵抗回路、又は、インピーダンスを連続的に変化させて交流的に導通するコンデンサ回路といった回路を備えている。
【0025】
後述する実施例1に示すように、導通回路22を電極21a及び21bの間が切断状態となるように設定した場合には、発電用コイル体10から所定の共振周波数で出力が得られ、導電性管体20による電波遮蔽の影響をほとんど受けることはない。電極21a及び21bが導通状態となるように設定した場合には、共振周波数が上昇した出力状態となり、導電性管体20の影響を受けるようになる。そして、導通回路22の抵抗値を変化させることで共振周波数がその変化の程度に応じて上昇した出力状態となり、電波の周波数に合わせて共振周波数を変化させることが可能となる。
【0026】
上述した例では、導電体として導電性管体を用いているが、発電用コイル体を内蔵して所定のループ形状に保持する環状の絶縁性管体の周囲に環状の導電層を形成して導電体とすることができ、導電層は、一部を欠除して形成された端部同士が電気的に短絡しないように離間した状態に設定することで、上述した導電性管体と同様の機能を実現することが可能となる。
【0027】
絶縁性管体としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)といった合成高分子材料、半合成高分子材料、天然高分子材料、又は、カーボン、ガラス、ファイバー等の無機材料からなるパイプを環状に形成して成形することができる。また、繊維強化プラスチック(FRP;繊維強化高分子複合材料)又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP;炭素繊維強化高分子複合材料)といった有機・無機複合材料を用いてもよい。そして、パイプ形状のサイズ及び厚さは、変形しにくい高剛性を備えるように成形すればよい。
【0028】
導電層としては、絶縁性管体の周囲全体に薄層で形成して導通状態が確保できればよく、例えば、金属箔等の導電性シート又は導電性テープを絶縁性管体の周囲に接着することで形成したり、導電性塗料を絶縁性管体の周囲に塗布して形成することができる。また、こうした導電層は、絶縁性管体の内周面に形成してもよい。
【0029】
導電層を絶縁性管体の周囲に形成する場合、導電層の周方向の長さを変化させることで、共振周波数を変化させることができる。絶縁性管体の周囲を被覆する導電層の周方向の長さが長くなるほど共振周波数が大きく上昇するように変化する。
【0030】
図3は、導電体の導通状態となる長さを変化させることができる電波発電装置に関する模式図である。発電用コイル体10を内蔵する導電性管体又は導電層が形成された絶縁性管体に対して離間した一対の端部に電極21a’及び21b’を摺動可能に取り付けている。そして、一方の電極21b’を管体の周方向に移動させることで、導通状態となる周方向の長さを変化させることができる。また、他方の電極21a’を周方向に移動させても同様に周方向の長さを変化させることができる。電極21a’を端部に配置した場合にも、実施例3に示すように、導通状態の周方向の長さの変化により共振周波数が変化するようになっており、電波発電装置の共振周波数を変化させて出力を高めることが可能となる。
【0031】
上述した例では、絶縁性管体の外側に導電体を設けるようにしているが、絶縁性管体の内部に導電体を配置して同様の機能を実現することができる。例えば、図4では、絶縁性管体の内部に導電性環状体が配置された例を示している。この例では、絶縁性管体30は、パイプ形状に形成されているとともに円環状に成形されており、絶縁性管体30内には発電用コイル体10がループコイル形状で収容されている。そして、発電用コイル体10に沿うように線状体からなる導電性環状体40が内蔵されている。導電性環状体40としては、発電用コイル体10と同様の導電性線材を用いることができるが、導電性線材の周囲が絶縁性材料により被覆されて発電用コイル体10と電気的に接続しないようになっている。導電性環状体40は、発電用コイル体10と同様に線材を絶縁性管体30の一方の端部開口から挿入して他方の端部開口から引き出すようにして配置することができる。線材を複数回巻回して絶縁性管体30内に配置してもよい。
【0032】
絶縁性管体30は、一部が欠除して形成された一対の端部が離間した状態に設定されている。一方の端部の開口から発電用コイル体10の始端10aが引き出されるとともに導電性環状体40の一方の端部41aが引き出されており、他方の端部の開口から発電用コイル体10の終端10bが引き出されるとともに導電性環状体40の他方の端部41bが引き出されている。
【0033】
発電用コイル体10の始端10a及び終端10bの間には接続回路11が接続されており、導電性環状体40の両端部41a及び41bの間には導通回路42が接続されている。導通回路42を両端部41a及び41bの間が切断状態となるように設定した場合には、発電用コイル体10から所定の共振周波数で出力が得られ、導電性環状体40による影響をほとんど受けることはない。両端部41a及び41bが導通状態となるように設定した場合には、共振周波数が上昇した出力状態となり、導電性環状体40の影響を受けるようになり、導電性管体20の場合と同様の機能を実現することができる。
【0034】
導電性環状体40は、導電性管体20を用いて発電用コイル体10とともに内蔵することもでき、巻き数を増加させることも可能である。こうした構成にすることで共振周波数の上昇する量を大きくすることができ、電波のより高い周波数に対応することが可能となる。
【0035】
また、導電性管体及び絶縁性管体の内部に、導電性、誘電性もしくは磁性を有する固体、半固体(ゲル)、粉粒体又は液体を封入することで共振周波数が上昇するように変化させることもできる。例えば、砂鉄、金属粉体、導電性物質、誘電性物質、磁性体(例えば、軟磁性体粉末、硬磁性体粉末)、高分子電解質、電解液、磁気粘性流体、イオン性液体といったものが挙げられる。こうした物質を封入することで発電用コイル体を管体の内部に固定することができ、振動等によるインダクタンスへの影響を抑止することが可能となる。管体に導電性物質を封入した状態で、離間した一対の端部に導電性物質と電気的に接続された電極をそれぞれ取り付けて電極の間に導通回路を接続することで、上述した例と同様に、導通回路の切断・導通により共振周波数を変化させることができる。
【0036】
上述した例では、発電用コイル体を内蔵する管体自身を導電体とするか又は管体に導電体を配置するようにしているが、管体とは別体の導電体を近接配置して共振周波数を変化させる機能を有する電波発電装置を構成することもできる。
【0037】
図5は、導電体として導電性板状体を用いた場合の模式図である。導電性板状体としては、金属板材等の導電性板材、板紙、樹脂シート等の非導電性材料の表面に導電層を形成して板材が挙げられる。導電層は、アルミ箔等の金属箔を貼着したり、導電性塗料を塗布又はスプレーすることで形成することができる。
【0038】
図5に示す例では、発電用コイル体10を内蔵する導電性管体20又は絶縁性管体30の内側に円板状の導電性板状体50を取り付けている。絶縁性管体30の内側に導電性板状体50を取り付けた場合には、実施例5に示すように、共振周波数が上昇する。また、導電性管体20の内側に導電性板状体50を取り付けて導電性管体20と電気的に接続した場合には、共振周波数がさらに大きく上昇するようになる。
【0039】
導電性板状体50は、導電性管体20又は絶縁性管体30の内側からずれた位置に配置してもよく、導電性板状体50をずらすことで発電用コイル体10に近接配置された部分の長さや面積が変化するようになり、共振周波数を所望の周波数に調整することができる。例えば、図5に示す内側に配置した導電性板状体50をその面方向に沿って移動させてずらすことで、共振周波数を調整することができる。また、図5に示す内側に配置された導電性板状体50をその中心を通る半径方向に沿って設定された回転軸を中心に回転させることで、共振周波数を調整することもできる。
【0040】
図6は、図5に示す例の変形例である。この例では、導電性板状体50’が中心Oでの角度θで扇状に形成されており、扇子のように角度θが可変となって導電性管体20又は絶縁性管体30の内側を覆う面積が変化するようになっている。そのため、発電用コイル体10に沿う周方向の長さが変化し、共振周波数を変化させることができる。導電性管体20を用いた場合には、導電性板状体50’との間にスイッチ回路51を設けておくことで、スイッチ回路51を接続して共振周波数の上昇幅を大きくすることができる。スイッチ回路の代わりにコンデンサ回路を接続することも可能である。
【0041】
図7は、図5に示す例の別の変形例である。この例では、導電性板状体50の形状を変更して共振周波数を変化させている。図7(a)では、導電性板状体50は、導電性管体20又は絶縁性管体30の内側全体を覆う円形に形成されているが、図7(b)では、導電性板状体50”は、中心部分が削除された環状に形成されている。また、図7(c)では、導電性管体20又は絶縁性管体30の外形よりも大きい直径の円形に導電性板状体50”が形成されている。共振周波数の上昇幅が最も大きくなるのは、図7(c)の場合であり、図7(b)の場合には図7(a)の場合よりも共振周波数の上昇幅が小さくなる。したがって、導電性板状体の形状を変更することで共振周波数を調整することができる。こうした導電性板状体としては、壁面や建物に設けられた導電性部材を用いるようにしてもよい。
【0042】
図8は、伝送用コイル体を備えた電波発電装置に関する模式図である。この例では、発電用コイル体を内蔵する電波発電装置1に対して、伝送用コイル体101及び102を配置している。伝送用コイル体101及び102は、発電用コイル体と同様に絶縁性管体又は導電性管体に導電性線材を複数回巻回したループコイル形状で内蔵されており、伝送用コイル体101は発電用コイル体よりも大径となるように設定され、伝送用コイル体102は伝送用コイル体101よりも大径となるように設定されている。そして、発電用コイル体と同心円状となる位置に伝送用コイル体101及び102が配置されている。
【0043】
電波発電装置1の発電用コイル体と伝送用コイル体101及び102との間には、相互誘導が作用して共振伝送が生じるようになる。この例では、最も外側の伝送用コイル体102で生じた共振エネルギーが伝送用コイル体101に伝送(誘起)されて発電用コイル体に伝送(誘起)されるようになり、発電用コイル体単独の場合よりも大きな出力を得ることができる。
【0044】
図8では、同心円状に伝送用コイル体を配置しているが、図9に示すように、所定の間隔を空けて伝送用コイル体を配置することで電波を引き込んで電波発電装置に導入させることもできる。図9に示す例では、伝送用コイル体101と同様に構成された伝送用コイル体103~106を配置しており、各伝送用コイル体から電波発電装置1に直接伝送して電波を引き込んだり、伝送用コイル体106から伝送用コイル体103及び104を経由して伝送することで電波発電装置1に電波を引き込むことができる。
【0045】
例えば、鉄骨構造や鉄筋コンクリート造の建物やトンネルの内部に伝送用コイル体を配置しておくことで、電波発電装置に電波を引き込むことが可能となる。また、伝送用コイル体のサイズは、伝送する電波及び環境条件に応じて適宜変更することで、電波発電装置の出力を安定させて効率よく発電を行うことができる。
【0046】
伝送用コイル体101及び102で引き込まれた電波により、ラジオ放送を高感度で受信することもできる。つまり、伝送用コイル体101及び102は、磁界共振による電波誘導、再放射装置としても機能するようになる。
【0047】
発電用コイル体は、気体以外の媒体中でも電波が伝搬可能な環境下であれば発電可能である。そして、発電用コイル体を内蔵する導電性管体又は絶縁性管体は、補強体及び保護カバーとして機能するため、海中や水中に設置したり、地中に埋設したり、建物の外壁等に埋め込んで設置することができる。そのため、海中や水中、地中に伝搬している電波により発電することも可能である。また、管体の高強度化といった特性を活かすことで、大径化といったサイズの変更も容易に行うことができ、設置場所の様々な環境条件に対応して最適化を図ることで発電効率を高めることが可能となる。
【0048】
図10は、発電用コイル体を内蔵する導電性管体又は絶縁性管体(図中、Kで示す)の設置場所を例示する模式図である。図10(a)では、管体Kを空気中に設置しており、土地、埋設物、淡水、海水等媒体Mとは離れた場所に設置される。図10(b)では、媒体Mの内部に管体Kの下半分が埋め込まれた状態で設置されており、図10(c)では、管体Kの全部が埋め込まれた状態で設置される。また、図10(d)では、媒体M上に構築された人工物H内に管体Kが埋め込まれた状態で設置される。人工物Hとしては、木材、コンクリート、モルタル等の建築構造物、油槽、水槽等の構造物といったものが挙げられる。図10(e)では、媒体M及び人工物Hの境界部分に管体Kが埋め込まれた状態で設置される。こうした設置例以外の場所に設置することも可能で、特に限定されない。
【0049】
いずれの設置場所においても発電可能であり、それぞれの設置場所に応じて共振周波数の最適化を図ることで発電効率を高めることができる。
【0050】
上述したように、コイル体及び導電体の相互作用により共振周波数を変化させることができるため、チューナー等の周波数同調方法として用いることができる。具体的には以下のような態様が挙げられる。
【0051】
受信用コイル体の共振周波数を電波の周波数に同調させる周波数同調方法であって、前記受信用コイル体に導電体を近接配置させて前記共振周波数を変化させることで電波の周波数に同調させる周波数同調方法。
【0052】
上記の周波数同調方法において、前記導電体を前記受信用コイル体に対して相対移動させて前記共振周波数を変化させることで同調させる周波数同調方法。
【0053】
上記の周波数同調方法において、前記導電体の形状を変化させて前記共振周波数を変化させることで同調させる周波数同調方法。
【0054】
上記の周波数同調方法において、前記受信用コイル体に沿って周方向に配置された前記導電体の周方向の導通する長さを変化させて前記共振周波数を変化させることで同調させる周波数同調方法。
【0055】
上記の周波数同調方法において、電波の周波数に対する前記共振周波数の同調により前記受信コイル体に生じる起電力でLED素子を点灯する周波数同調方法。
【0056】
以上のような態様の周波数同調方法を用いることで、同調回路を単純化して構成することができる。
【実施例0057】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
アルミニウム合金(A5052)からなる市販のパイプ素材(管外径20mm、肉厚1mm)をループ外径600mmの環状に形成して導電性管体を準備した。導電性管体は、一部を2mmだけ欠除して一対の端部を形成した。
【0059】
導電性管体内に端部から市販のリッツ撚線からなる導電性線材を挿入して7回巻回し、ループコイル形状の発電用コイル体をセットした。発電用コイル体の始端及び終端を導電性管体の端部から引き出して接続回路として可変コンデンサを並列接続し、導電性管体の一対の端部には、それぞれ電極として導線を接続して導線の間に導通回路として市販のトグルスイッチを接続して図1に示す電波発電装置を製作した。インピーダンスアナライザ(IM3570;日置電機株式会社製)及びベクトルネットワークアナライザ(NanoVNA-H4)を接続して出力波形の周波数特性を測定した。
【0060】
製作された電波発電装置は、NHK福井ラジオ第一放送下馬送信所(JOFG927KHz、5kw)から約5km離れた福井大学文京キャンパス内の地点に設置した。測定結果を図11に示す。図11において、A及びBに示すグラフは、トグルスイッチがオフ状態(導電性管体の両端を短絡していない状態)での下限共振周波数及び上限共振周波数を示すインピーダンススペクトルを示しており、C及びDに示すグラフは、トグルスイッチがオン状態(導電性管体の両端を短絡した状態)での下限共振周波数及び上限共振周波数を示すインピーダンススペクトルを示している。
【0061】
トグルスイッチのオフ状態では、共振周波数の範囲は660kHz~1827kHzであったが、トグルスイッチのオン状態では、共振周波数の範囲は1159kHz~3224kHzに上昇したことが確認された。
【0062】
また、導通回路の抵抗値を変化させた場合、ピークとなる周波数は切断状態の周波数から次第に上昇することが確認された。
【0063】
また、接続回路として整流回路を接続し、整流回路の出力にLED回路を接続したところLEDは安定して点灯することが確認された。こうした現象は、発電用コイル体の始端及び終端の間に生じる電圧がLEDに印加されることで、点灯すると考えられる。
【0064】
[実施例2]
市販のステンレス(SUS304)、鉄(SS400)及び銅をそれぞれ用いて実施例1と同様のパイプ形状に成形した4種類の導電性管体を準備し、実施例1と同様に電波発電装置を製作した。製作された電波発電装置を用いて実施例1と同様に発電試験を行ったところ、いずれもアルミニウム合金製の導電性管体と同様の共振周波数の上昇が確認された。また、インピーダンスは、ステンレス製導電性管体及び銅製導電性管体ではアルミニウム合金製導電性管体とほぼ同じ値で測定されたが、鉄製導電性管体の場合にはインピーダンスが約20%程度低下した。こうしたインピーダンスの低下は、発電用コイル体の始端及び終端に生じる電圧を低下させることになり、発電効率に影響を与えることになると考えられる。
【0065】
[実施例3]
実施例1で製作した電波発電装置を用い、一対の電極として市販のブラシ電極体を導電性管体の周囲に周方向に沿って摺動可能に取り付けた。導電性管体の中心位置と各電極体との間を結ぶ直線の中心位置における角度θを変化させて電極体間の周方向の長さを変化させ、出力波形の周波数特性を測定した。測定結果を図12に示す。
【0066】
図12では、電極間の角度が拡がって周方向の長さが長くなるに従い共振周波数が上昇することがわかる。
【0067】
[実施例4]
市販のポリエチレン製パイプ(管外径18mm、肉厚1mm)をループ内径620mmの環状に形成した絶縁性管体を準備し、実施例1と同様に発電用コイル体を内部に導入してループコイル形状にセットした。導電体として、外径620mmの円板状に形成した厚紙にアルミ箔を貼着した導電性板状体を準備し、図5に示すように、絶縁性管体の内側に取り付けて電波発電装置を製作した。
【0068】
製作した電波発電装置に可変コンデンサを取り付けて、可変容量範囲における共振周波数の範囲を実施例1で使用したインピーダンスアナライザにより測定した。導電性板状体を取り付けていない状態では、共振周波数の範囲は581kHz~1495kHzであったが、導電性板状体を内側に取り付けた状態では、758kHz~2026kHzに範囲が上昇するようになった。
【0069】
絶縁性管体の代わりに実施例1と同様の導電性管体を使用し、そのループ外径よりも大きい外径800mmの円板状の導電性板状体を取り付けて導電性管体と電気的に接続した電波発電装置を製作し、同様の共振周波数の測定を行った。共振周波数の範囲は、導電性板状体を取り付けていない状態では、640kHz~1613kHzとなり、導電性板状体を取り付けた状態では、1634kHz~4059kHzの範囲に大きく上昇した。
【0070】
[実施例5]
実施例1で製作した電波発電装置を2台準備し、一方を伝送用コイル体として他方の電波発電装置に近接配置した。伝送用コイル体及び電波発電装置は、導電性管体の中心を通り半径方向に直交する中心軸が同軸となるように配置し、両者の間の間隔を変化可能に設置した。
【0071】
実施例1と同様に電波発電装置の出力波形の周波数特性を測定した。伝送用コイル体及び電波発電装置の間隔が10cmの場合の測定結果を図13に示す。図13(a)では、伝送用コイル体がない場合に電波発電装置で測定されたインピーダンススペクトルを示しており、図13(b)では、伝送用コイル体が配置された場合に電波発電装置で測定されたインピーダンススペクトルを示している。
【0072】
伝送用コイル体の配置により2つのピークが表れており、伝送用コイル体からの共振エネルギーが電波発電装置に伝送されていることが確認された。2つのピークの間の差は、伝送用コイル体及び電波発電装置の間隔が拡がると大きくなり、間隔が狭くなると小さくなって1つのピークが表れるようになった。その際に現れるピークは単独の電波発電装置よりも大きな出力となった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る電波発電装置は、ラジオ受信機、LED照明装置の電源として用いることが可能で、停電時の電源としても有効利用することができる。また、気象データ等の観測データを取得するセンサ等の検出装置の電源として用いることもでき、無給電でセンサを常時動作させることが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・電波発電装置、10・・・発電用コイル体、10a・・・始端、10b・・・終端、11・・・接続回路、20・・・導電性管体、21a、21b・・・電極、22・・・導通回路、30・・・絶縁性管体、40・・・導電性環状体、41a、41b・・・端部、42・・・導通回路、50、50’、50”・・・導電性板状体、51・・・スイッチ回路、101~106・・・伝送用コイル体
図1
図2
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