(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053871
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】点滴灌漑用動物忌避複合体及びその製造方法、点滴灌漑用動物忌避構造体、並びに動物の忌避方法
(51)【国際特許分類】
A01N 43/78 20060101AFI20230406BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20230406BHJP
A01N 25/28 20060101ALI20230406BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20230406BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20230406BHJP
【FI】
A01N43/78 F
A01P17/00
A01N25/28
A01N25/10
A01M29/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022028994
(22)【出願日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021162669
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 友和
(72)【発明者】
【氏名】宮川 登志夫
(72)【発明者】
【氏名】栗山 智
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA03
2B121CA02
2B121CA52
2B121CC22
2B121CC27
2B121EA26
2B121FA13
4H011AE02
4H011BA01
4H011BB10
4H011BC06
4H011BC19
4H011DA06
4H011DH02
4H011DH08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】げっ歯類に噛まれることがない高い忌避効果を実現できる点滴灌漑用動物忌避複合体及びその製造方法、点滴灌漑用動物忌避構造体、並びに動物の忌避方法の提供。
【解決手段】支持体と、前記支持体の表面に、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、2,4-ジメチルチアゾール、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、2,2-ジメチルチアゾリジン、チオモルホリン、2,5-ジメチル-2-チアゾリン、5-メチル-2-チアゾリン等から選択される少なくとも1種の動物忌避剤、熱可塑性樹脂、及び可塑剤を含有する動物忌避組成物と、を有する点滴灌漑用動物忌避複合体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、前記支持体の表面に、下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤、熱可塑性樹脂、及び可塑剤を含有する動物忌避組成物と、を有することを特徴とする点滴灌漑用動物忌避複合体。
【化1】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
【請求項2】
前記一般式(I)で示される化合物が、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、及び2,4-ジメチルチアゾールから選択されるいずれかの化合物であり、
前記一般式(II)又は(III)で示される化合物が、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、及び2,2-ジメチルチアゾリジンから選択されるいずれかの化合物であり、
前記一般式(IV)で示される化合物が、チオモルホリンであり、
前記一般式(V)で示される化合物が、2,5-ジメチル-2-チアゾリン及び5-メチル-2-チアゾリンから選択されるいずれかの化合物である、請求項1に記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項3】
前記支持体がチューブ状及びパイプ状の少なくともいずれかである、請求項1から2のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項4】
前記支持体が木材、金属、及び樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から3のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項5】
前記樹脂がオレフィン樹脂又は生分解性樹脂のいずれかを含む、請求項4に記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項6】
前記動物忌避剤がマイクロカプセル化動物忌避剤である、請求項1から5のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂、生分解性樹脂、及びこれらの共重合体から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から6のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項8】
前記可塑剤が、アジピン酸エステル系可塑剤及びフタル酸エステル系可塑剤の少なくともいずれかである、請求項1から7のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体。
【請求項9】
支持体上に、下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤と、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含有する動物忌避組成物を付与することを特徴とする点滴灌漑用動物忌避複合体の製造方法。
【化2】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
【請求項10】
前記支持体上に付与した動物忌避組成物を、前記動物忌避剤の沸点より30℃低い温度以下で加熱する、請求項9に記載の点滴灌漑用動物忌避複合体の製造方法。
【請求項11】
下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤を含むマイクロカプセル化動物忌避剤を含有することを特徴とする点滴灌漑用動物忌避構造体。
【化3】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
【請求項12】
チューブ状及びパイプ状の少なくともいずれかである、請求項11に記載の点滴灌漑用動物忌避構造体。
【請求項13】
請求項1から8のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体及び請求項11から12のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避構造体の少なくともいずれかを、動物を忌避させる空間に配置する工程を含むことを特徴とする動物の忌避方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴灌漑用動物忌避複合体及びその製造方法、点滴灌漑用動物忌避構造体、並びに動物の忌避方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、大規模農地等に敷設する低い環境負荷で多くの食糧生産を可能にする植物の栽培方法の一つとして点滴灌漑法が知られている。この点滴灌漑法は、植物が植えられている土壌に点滴灌漑用チューブを配置し、点滴灌漑用チューブから土壌へ水等の灌漑用液体を滴下する方法である。近年、点滴灌漑法は、灌漑用液体の消費量を最小限にすることが可能であるため、特に注目されており、また、水に液体肥料又は薬を混ぜて散布することも可能であることから、乾燥地のみならず、ハウス栽培などでも植物の効率的な栽培方法として幅広く利用されている。
【0003】
このような点滴灌漑法における点滴灌漑用チューブとしては、例えば、オレフィン樹脂製チューブが用いられているが、点滴灌漑用チューブがネズミ等のげっ歯類に噛まれ欠損して使用できなくなり、作物の収穫量の減少や作物の生育に甚大な被害が発生し、市場展開が阻まれている作物が生じており、点滴灌漑システム全体にも大きな損害を与えている。このことは、「げっ歯類との戦争」と言われ、点滴灌漑法における30年来の解決課題である。
そこで、上記課題を解決するため、例えば、ポリエチレン樹脂に動物忌避剤としてのマイクロカプセル化カプサイシン粒子を練り込んだ組成物で成形した点滴灌漑用チューブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、動物忌避剤であるカプサイシンが点滴灌漑用チューブ自体に練り込まれており、げっ歯類が点滴灌漑用チューブを噛まないと忌避行動につながらないため、点滴灌漑用チューブをげっ歯類に噛まれることなく忌避効果を発揮することができないという課題がある。更に、上記先行技術文献では、点滴灌漑用チューブ自体に動物忌避剤が練り込まれているため、灌漑用液体に動物忌避剤が混入するおそれがあり、安全性の面からも問題がある。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、げっ歯類に噛まれることがない高い忌避効果を実現できる点滴灌漑用動物忌避複合体及びその製造方法、点滴灌漑用動物忌避構造体、並びに動物の忌避方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体と、前記支持体の表面に、下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤、熱可塑性樹脂、及び可塑剤を含有する動物忌避組成物と、を有することを特徴とする点滴灌漑用動物忌避複合体である。
【化1】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
<2> 前記一般式(I)で示される化合物が、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、及び2,4-ジメチルチアゾールから選択されるいずれかの化合物であり、
前記一般式(II)又は(III)で示される化合物が、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリン、及び2,2-ジメチルチアゾリジンから選択されるいずれかの化合物であり、
前記一般式(IV)で示される化合物が、チオモルホリンであり、
前記一般式(V)で示される化合物が、2,5-ジメチル-2-チアゾリン及び5-メチル-2-チアゾリンから選択されるいずれかの化合物である、前記<1>に記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<3> 前記支持体がチューブ状及びパイプ状の少なくともいずれかである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<4> 前記支持体が木材、金属、及び樹脂から選択される少なくとも1種を含む、前記<1>から<3>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<5> 前記樹脂がオレフィン樹脂又は生分解性樹脂のいずれかを含む、前記<4>に記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<6> 前記動物忌避剤がマイクロカプセル化動物忌避剤である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<7> 前記熱可塑性樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂、生分解性樹脂、及びこれらの共重合体から選択される少なくとも1種を含む、前記<1>から<6>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<8> 前記可塑剤が、アジピン酸エステル系可塑剤及びフタル酸エステル系可塑剤の少なくともいずれかである、前記<1>から<7>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体である。
<9> 支持体上に、下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤と、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含有する動物忌避組成物を付与することを特徴とする点滴灌漑用動物忌避複合体の製造方法である。
【化2】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
<10> 前記支持体上に付与した動物忌避組成物を、前記動物忌避剤の沸点より30℃低い温度以下で加熱する、前記<9>に記載の点滴灌漑用動物忌避複合体の製造方法である。
<11> 下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤を含むマイクロカプセル化動物忌避剤を含有することを特徴とする点滴灌漑用動物忌避構造体である。
【化3】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
<12> チューブ状及びパイプ状の少なくともいずれかである、前記<11>に記載の点滴灌漑用動物忌避構造体である。
<13> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避複合体及び前記<11>から<12>のいずれかに記載の点滴灌漑用動物忌避構造体の少なくともいずれかを、動物を忌避させる空間に配置する工程を含むことを特徴とする動物の忌避方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、げっ歯類に噛まれることがない高い忌避効果を実現できる点滴灌漑用動物忌避複合体及びその製造方法、点滴灌漑用動物忌避構造体、並びに動物の忌避方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、点滴灌漑用動物忌避複合体としての点滴灌漑用チューブの一例を示す短軸方向における断面図である。
【
図2A】
図2Aは、比較例1における飼育前のポリエチレンチューブの状態を示す写真である。
【
図2B】
図2Bは、比較例1における2日間飼育後のポリエチレンチューブの状態を示す写真である。
【
図3A】
図3Aは、実施例1における飼育前のポリエチレンチューブの状態を示す写真である。
【
図3B】
図3Bは、実施例1における2日間飼育後のポリエチレンチューブの状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(点滴灌漑用動物忌避複合体)
本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体は、支持体と、前記支持体の表面に、下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤、熱可塑性樹脂、及び可塑剤を含有する動物忌避組成物と、を有する。
【0011】
【化4】
ただし、前記一般式(I)から(VI)中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
【0012】
<支持体>
前記支持体は、その形状、大きさ、構造、材質などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の形状としては、例えば、チューブ状、パイプ状、シート状、板状、不定形などが挙げられる。これらの中でも、点滴灌漑用動物忌避複合体である点から、チューブ状、パイプ状が好ましい。
前記支持体の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
前記支持体の大きさとしては、点滴灌漑用動物忌避複合体の大きさに応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材質としては、例えば、無機材料、有機材料、などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO2、金属(例えば、ステンレス鋼、鉄、銅等)などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、木材、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体;合成紙、布、不織布;ポリオレフィン樹脂、生分解性樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂又はこれらの共重合体などが挙げられる。
これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリオレフィン樹脂、生分解性樹脂が好ましい。
前記オレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリプロピレン樹脂などが挙げられる。なお、オレフィン樹脂からなる支持体は、動物忌避組成物からなる塗膜の密着性の点からコーティングが難しい素材であることが知られているが、本発明においては、問題なく使用することができる。
前記生分解性樹脂としては、特に制限されず、生物由来の材料であってもよく、石油由来の材料であってもよい。このような生分解性樹脂として、例えば、ポリ乳酸(ポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、L-乳酸とD-乳酸の共重合体、ポリL-乳酸とポリD-乳酸のステレオコンプレックスを含む)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ3-ヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、修飾澱粉、酢酸セルロース、キチン、キトサンなどが挙げられる。
【0013】
<動物忌避組成物>
動物忌避組成物は、上記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤、熱可塑性樹脂、及び可塑剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0014】
<<動物忌避剤>>
本明細書において、「動物忌避剤」が適用可能である「動物」の種類については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、農作物、森林、家畜又は人家に被害をもたらす有害動物全般が挙げられる。前記動物としては、例えば、ネズミ、モグラ、ウサギ、イタチ、シカ、イノシシ、サル、ネコ、クマなどが挙げられる。
【0015】
本明細書において「ネズミ」は、ネズミ目(げっ歯目)に属する動物であれば特に限定されない。前記ネズミ目には、ヤマアラシ亜目、ネズミ亜目、リス亜目などが含まれる。前記「ネズミ」としては、例えば、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ、アカネズミ、ハタネズミ、スナネズミ、ホリネズミ、タケネズミ、リス、ヤマアラシ、デグー、ヌートリアなどが挙げられる。
本明細書において「シカ」は、シカ科に属する動物である。前記「シカ」としては、例えば、エゾシカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ヤクジカ等のニホンジカ、キョンなどが挙げられる。
【0016】
前記動物忌避剤は、下記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
前記一般式(I)から(VI)で示される化合物は、例えば、揮発性を有し、動物の嗅覚によって知覚され得る化合物、更にその結果、動物に対して忌避行動を誘発し得る化合物が好ましい。前記一般式(I)から(VI)で示される化合物は、小動物や草食動物にとっての捕食者の尿に含まれる物質等を模した効果を有し、それ故、例えば、ネズミ、モグラ、ウサギ、シカ等の小動物又は草食動物に対して強力な忌避効果を示す。
【0017】
【0018】
前記一般式(I)から(VI)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数1~5のアルキルチオ基を示す。
【0019】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0020】
前記炭素数1~6のアルキル基は1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキル基を意味し、炭素数1~4のアルキル基がより好ましい。
前記炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基又は1-エチル-2-メチルプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基が更に好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0021】
前記炭素数1~6のアルキル基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、ハロゲノ基などが挙げられる。前記ハロゲノ基としては、例えば、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基などが挙げられる。前記ハロゲノ基置換アルキル基としては、炭素数1~6のハロアルキル基が好適である。
前記炭素数1~6のハロアルキル基は、1~5個のハロゲノ基で置換された炭素数1~6のアルキル基を意味し、ハロゲノ基が2個以上である場合の各ハロゲノ基の種類は、同一又は異なっていてもよい。
前記炭素数1~6のハロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロジフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、2,2-ジフルオロプロピル基、3-フルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4-フルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、5-フルオロペンチル基、5,5,5-トリフルオロペンチル基、6-フルオロヘキシル基、6,6,6-トリフルオロヘキシル基などが挙げられる。
【0022】
前記炭素数1~5のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などが挙げられる。
【0023】
上記一般式(I)又は(II)において、式中R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)を示し、R1及びR2のいずれかが水素原子である場合は他方は水素原子ではない化合物又はその塩が挙げられる。
【0024】
上記一般式(III)において、式中R1、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基)を示す化合物若しくはその塩が挙げられる。
【0025】
上記一般式(I)~(III)において、式中R1が水素原子、ハロゲン原子(例えば、臭素原子)、炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)又は炭素数1~5のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基)を示し、式中R2が水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基)を示し、式中R3が水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基)を示す化合物若しくはその塩がより好ましい。
上記一般式(I)~(III)において、式中R1、R2及びR3がそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)を示す化合物若しくはその塩が更に好ましい。
【0026】
上記一般式(IV)において、式中R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基)を示す化合物若しくはその塩が挙げられる。
【0027】
上記一般式(V)において、式中R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基)を示す化合物若しくはその塩が挙げられる。
上記一般式(V)において、式中R1及びR2のいずれかが水素原子である場合は他方は水素原子ではない化合物又はその塩が更に好ましい。
【0028】
上記一般式(VI)において、式中R1及びR2はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基(例えば、メチル基)を示す化合物若しくはその塩が挙げられる。
【0029】
上記一般式(I)で示される化合物としては、例えば、2-メチルチアゾール、2-エチルチアゾール、2-ブロモチアゾール、4-メチルチアゾール、2,4-ジメチルチアゾールなどが好適に挙げられる。
【0030】
上記一般式(II)で示される化合物としては、例えば、2-メチル-2-チアゾリン、2-メチルチオ-2-チアゾリン、4-メチル-2-チアゾリン、2,4-ジメチル-2-チアゾリンなどが好適に挙げられる。
【0031】
上記一般式(III)で示される化合物としては、例えば、チアゾリジン、2-メチルチアゾリジン、2,2-ジメチルチアゾリジン、4-メチルチアゾリジン、2,4-ジメチルチアゾリジンなどが好適に挙げられる。
【0032】
上記一般式(IV)で示される化合物としては、例えば、チオモルホリンなどが好適に挙げられる。
【0033】
上記一般式(V)で示される化合物としては、例えば、2,5-ジメチル-2-チアゾリン、5-メチル-2-チアゾリンなどが好適に挙げられる。
【0034】
上記一般式(VI)で示される化合物としては、例えば、5-メチルチアゾリジンなどが好適に挙げられる。
【0035】
上記一般式(I)から(VI)で示される化合物はその塩も含まれる。前記化合物の塩としては、製薬学的又は農業上、若しくは産業上許容されるものであればあらゆるものが含まれるが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩;塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩などが挙げられる。
また、上記動物忌避剤としては、食品添加物香料の中から選択されるチアゾリン系化合物を含むこともできる。
前記動物忌避剤には、上記に加えて忌避活性を有する更なる化合物を付加的に含んでもよい。そのような付加的に含まれてもよい化合物には、限定しないが、例えば、ネズミ忌避剤として従来から使用されている薄荷(はっか)、樟脳(しょうのう)などが挙げられる。
【0036】
前記動物忌避剤の含有量は、動物忌避組成物の全量に対して、1×10-6質量%以上、1×10-5質量%以上、1×10-4質量%以上、1×10-3質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、若しくは50質量%以上、及び/又は50質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、1×10-3質量%以下、1×10-4質量%以下、1×10-5質量%以下、若しくは1×10-6質量%以下であってもよい。
【0037】
<動物忌避剤のマイクロカプセル化>
動物忌避剤のマイクロカプセルは、シェルと、該シェルの内部に動物忌避剤を含むコアとを有する。動物忌避剤をマイクロカプセル化することにより、動物忌避剤を単独で用いた場合よりも忌避効果の持続性を高めることができる。
マイクロカプセルのシェルの構成成分は、安定的に動物忌避剤を内包できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メラミン樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、生分解性樹脂、シリカ、ゼラチン、アラビアゴム、寒天、セルロース、セルロース誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、生分解性樹脂が好適に使用される。
【0038】
動物忌避剤のマイクロカプセルを調製するためのマイクロカプセル化技術については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カプセル化される側の動物忌避剤を含む芯物質(コア)に膜材(シェル)を溶解してこれを不溶の分散媒中に分散させ、撹拌しながら分散媒に可溶の反応材を添加して分散粒子の表面で両者を反応させて芯物質を内包した高分子のカプセル膜を形成する界面重合法;分散粒子及び分散媒のどちらか一方のみから膜材が供給され分散粒子の表面でカプセル膜が形成されるIn situ重合法;1種のみの高分子で壁材を構成する単純コアセルベーション法、2種以上の高分子で壁材を構成する複合コアセルベーション法等のコアセルベーション法;液中硬化被覆法(オリフィス法)、液中乾燥法、噴霧・造粒法などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、界面重合法が好ましい。
前記界面重合法におけるマイクロカプセル中の芯物質と膜材の質量比は、1:0.01~1:10が好ましく、1:0.01~1:2がより好ましい。
【0039】
前記マイクロカプセル化動物忌避剤は乾燥させることにより粉末状となる。前記乾燥方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレードライヤー、多段式温風乾燥機、真空乾燥機などが挙げられる。
前記マイクロカプセルの体積平均粒径は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
前記マイクロカプセル化動物忌避剤における動物忌避剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、上記動物忌避組成物に含まれる動物忌避剤の含有量と同様である。
【0040】
<熱可塑性樹脂>
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、オレフィン樹脂、生分解性樹脂、又はこれらの共重合体であることが好ましい。
【0041】
<<塩化ビニル樹脂>>
塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニルに由来する構造単位を含む(共)重合体が用いられる。即ち、塩化ビニルの単独重合体、又は、塩化ビニルと、他の単量体との共重合体を用いることができる。
前記塩化ビニル樹脂が、他の単量体に由来する構造単位を含む共重合体である場合、前記他の単量体に由来する構造単位の含有割合の下限は、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。
【0042】
前記他の単量体としては、例えば、ビニルエステル、ビニルエーテル、α,β-不飽和カルボン酸又はその塩、α,β-不飽和カルボン酸エステル、不飽和アミド、不飽和ニトリル、ヒドロキシル基含有ビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、スルホン酸基含有ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、塩化ビニリデン化合物などが挙げられる。
前記他の単量体としては、ビニルエステルが好ましく、シートの密着性の観点から、酢酸ビニル、即ち、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
前記塩化ビニル樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、株式会社カネカ製カネビニールペースト(登録商標)PSL-675、PSL-684、PCH-12、PCH-72、PCM-178、東ソー株式会社製リューロンペースト(登録商標)250、200、241、T80A、725、733、860、810、960、C38、750、751、850、新第一塩ビ株式会社製ZEST(登録商標)P-21、PQB-83、PQ-83、PQB-93などが挙げられる。
【0043】
上記塩化ビニル樹脂の平均重合度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000~3,300が好ましく、1,200~2,500がより好ましく、1,500~2,200が更に好ましい。
【0044】
前記動物忌避組成物において、塩化ビニル樹脂は、粒状等の形態で分散していてよいし、有機溶剤が含まれる場合には、これに溶解されていてもよい。前者の場合、塩化ビニル樹脂の形状及び大きさは、特に限定されないが、平均粒子径は、好ましくは0.1μm~1.5μmである。また、この場合、粒状体は、塩化ビニル樹脂のみからなるものであってよいし、塩化ビニル樹脂と、可塑剤又は他の成分とからなるものであってもよい。
【0045】
<<酢酸ビニル樹脂>>
酢酸ビニル樹脂としては、酢酸ビニルに由来する構造単位を含む(共)重合体が用いられる。即ち、酢酸ビニルの単独重合体、又は、酢酸ビニルと、他の単量体との共重合体を用いることができる。
前記酢酸ビニル樹脂が、他の単量体に由来する構造単位を含む共重合体である場合、前記他の単量体に由来する構造単位の含有割合の上限は、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
前記他の単量体としては、例えば、ビニルエステル、ビニルエーテル、α,β-不飽和カルボン酸又はその塩、α,β-不飽和カルボン酸エステル、不飽和アミド、不飽和ニトリル、ヒドロキシル基含有ビニル化合物、アミノ基含有ビニル化合物、スルホン酸基含有ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、塩化ビニリデン化合物などが挙げられる。
前記他の単量体としては、ビニルエステルが好ましく、密着性の観点から、塩化ビニル、エチレンが好ましい。
前記酢酸ビニル樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル樹脂(住化ケムテックス株式会社製、スミカフレックス951HQ)、酢酸ビニル-アクリル樹脂(日信化学工業株式会社製、ビニブラン1225)などが挙げられる。
【0046】
<<オレフィン樹脂>>
オレフィン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリペンテン樹脂、ポリシクロペンテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイソプレン樹脂、又はこれらの共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、柔軟性、耐久性、及び価格等の点から、ポリエチレン樹脂が特に好ましい。
前記ポリエチレン樹脂としては、点滴灌漑用チューブの成形性及び強度のバランスの点から、低密度ポリエチレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0047】
前記低密度ポリエチレン樹脂の密度が低いと、チューブ本体が柔らかくなり過ぎて点滴灌漑用チューブの強度が低下することがあり、密度が高いと、チューブ本体の可撓性が低下して、点滴灌漑用チューブに亀裂やピンホールが生じ易くなるので、0.90~0.93g/cm3が好ましい。また、低密度ポリエチレン樹脂のメルトフローレイトが高いと、点滴灌漑用チューブの成形性及び強度が低下することがあるので、1.5g/10分以下が好ましく、1.5~0.3g/10分がより好ましい。なお、前記メルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して測定されたものをいう。
前記直鎖状低密度ポリエチレン樹脂としては、特に限定されず、例えば、エチレンと、エチレン以外のα-オレフィンとの共重合体などの一般的な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の他に、メタロセンセン触媒を用いて製造されたポリエチレン樹脂が挙げられる。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、単独で用いられても2種以上が併用されてもよい。直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の密度が高いと、点滴灌漑用チューブの強度が低下することがあるので、0.93g/cm3以下が好ましく、0.915~0.925g/cm3がより好ましい。
【0048】
前記オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、ARTON(アートン)(登録商標)シリーズ(JSR株式会社製)、サーフレン(登録商標)シリーズ(三菱化学株式会社製)、ZEONOR(登録商標)シリーズ、ZEONEX(登録商標)(いずれも日本ゼオン株式会社製)、低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリケム株式会社製、商品名「LF122」、密度:0.923g/cm3、メルトフローレイト:0.3g/10分)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(ダウケミカル社製、商品名「2645G」、密度:0.919g/cm3、メルトフローレイト:0.9g/10分)などが挙げられる。
【0049】
<<生分解性樹脂>>
生分解性樹脂としては、特に制限されず、生物由来の材料であってもよく、石油由来の材料であってもよい。このような生分解性樹脂として、例えば、脂肪族ポリエステル又はその誘導体、微生物産生ポリエステル、芳香族-脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族ポリエステルエーテル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、デンプン;セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、キチン、キトサン、マンナン等の多糖類などが挙げられる。
【0050】
上記脂肪族ポリエステル又はその誘導体としては、例えば、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート系樹脂、モノマー単位として3-ヒドロキシアルカン酸を含有するポリエステルなどが挙げられる。
【0051】
上記ポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシなどの植物を発酵して得られる乳酸を原料として製造され、そして微生物によって水と二酸化炭素に分解され、再び植物の育成を助けるという連鎖性を有することから、バイオリサイクル型として好ましく用いられる。
上記ポリブチレンサクシネート系樹脂の具体例としては、例えば、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネート・アジペート(PBSA)、ポリブチレンサクシネート・ラクタイドなどが挙げられる。
上記ポリブチレンサクシネート系樹脂として使用可能な製品(市販品)としては、例えば、三菱化学株式会社製ポリブチレンサクシネート系樹脂「BioPBS」(登録商標)(ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート等)、昭和電工株式会社製ポリブチレンサクシネート樹脂「ビオノーレ」(登録商標)、Shandong Fuwin New Material社製ポリブチレンサクシネート樹脂、BASF社製ポリブチレンアジペートテレフタレート系樹脂「エコフレックス」(登録商標)などが挙げられる。上記ポリブチレンサクシネート系樹脂は、生物由来の材料であってもよく、石油由来の材料であってもよい。
【0052】
上記モノマー単位として3-ヒドロキシアルカン酸を含有するポリエステルの具体例としては、例えば、PHB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、又はポリ3-ヒドロキシ酪酸〕、PHBH〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシヘキサン酸)〕、PHBV〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-3-ヒドロキシ吉草酸)〕、P3HB4HB〔ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシ酪酸-co-4-ヒドロキシ酪酸)〕、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)などが挙げられる。
【0053】
上記脂肪族ポリエステル又はその誘導体の市販品としては、例えば、グリコール(ジオール)と多価カルボン酸との重縮合反応で得られる脂肪族ポリエステルに1,4-ブタンジオールとコハク酸から得られるPBS(例えば、ビオノーレ1000シリーズ(登録商標:昭和電工株式会社製)、BiOPBS FZシリーズ(登録商標:三菱化学株式会社製))、PBSにアジピン酸を共重合したPBSA(例えば、ビオノーレ3000シリーズ(登録商標:昭和電工株式会社製))、BiOPBS FDシリーズ(登録商標:三菱化学株式会社製))、エチレングリコールとコハク酸とから得られるポリエチレンサクシネート(PES)、ヒドロキシアルカン酸と多価カルボン酸とから得られる脂肪族ポリエステル共重合体のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)(例えば、アオニレックス(登録商標:株式会社カネカ製))、脂肪族ポリエステルとテレフタル酸エステルの共重合体として1,4-ブタンジオールとアジピン酸とテレフタル酸との共重合体であるPBAT(例えば、エコフレックス(登録商標:ビー・エー・エス・エフ社製))、1,4-ブタンジオールとコハク酸とテレフタル酸の共重合体であるポリブチレンテレフタレートサクシネート(PBTS)(例えば、バイオマックス(登録商標:デュポン社製))、PLA(例えば、REVODE(登録商標:海正生物材料株式会社製)、Ingeo(登録商標:ネイチャーワークス社製))、ポリカプロラクトン(PCL)(例えば、CAPA6800(登録商標:パーストープ社製))などが挙げられる。
【0054】
前記熱可塑性樹脂の含有量は、動物忌避組成物の全量に対して、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、若しくは50質量%以上、及び/又は50質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下であってもよい。
【0055】
<可塑剤>
可塑剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、トリメリテート系可塑剤、直鎖状二塩基酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、スルホン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ビス-2-エチルヘキシルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、オクチルベンジルフタレート、ノニルベンジルフタレート、ジメチルシクロヘキシルフタレートなどが挙げられる。
【0057】
前記アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)などが挙げられる。
【0058】
前記トリメリテート系可塑剤としては、例えば、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリ-(2-エチルヘキシル)トリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ-n-オクチル-n-デシルトリメリレートなどが挙げられる。
【0059】
前記直鎖状二塩基酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジ-n-オクチルアジペート、ジ-n-デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジ-n-オクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジ-n-オクチルセバケートなどが挙げられる。
【0060】
前記クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリ-n-ブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、アセチルトリ-(2-エチルヘキシル)シトレート、プロペニルトリブチルシトレートなどが挙げられる。
【0061】
前記ポリエステル系可塑剤としては、例えば、ポリ(プロピレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(1,6-ヘキサンジオール、ブタンジオール、アジピン酸)エステル、ポリ(ブタンジオール、エチレングリコール、アジピン酸)エステル、ポリ(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、アジピン酸)エステルなどが挙げられる。
【0062】
前記グリコールエステル系可塑剤としては、例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエートなどが挙げられる。
【0063】
前記リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリブチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、ブチルジキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェートなどが挙げられる。
【0064】
前記スルホン酸エステル系可塑剤としては、例えば、デカンスルホン酸フェニルエステル、ウンデカンスルホン酸フェニルエステル、ドデカンスルホン酸フェニルエステル、トリデカンスルホン酸フェニルエステル、テトラデカンスルホン酸フェニルエステル、ペンタデカンスルホン酸フェニルエステル、ペンタデカンスルホン酸クレジルエステル、ヘキサデカンスルホン酸フェニルエステル、ヘプタデカンスルホン酸フェニルエステル、オクタデカンスルホン酸フェニルエステル、ノナデカンスルホン酸フェニルエステル、イコサンデシルスルホン酸フェニルエステルなどが挙げられる。
【0065】
前記エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、液状エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0066】
上記可塑剤の中でも、熱可塑性樹脂との相溶性、及びコーティング性の観点から、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤がより好ましい。
【0067】
前記可塑剤の含有量は、動物忌避組成物の全量に対して、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、若しくは50質量%以上、及び/又は50質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下であってもよい。
【0068】
<その他の成分>
前記動物忌避組成物は、その他の成分として、例えば、防虫剤、殺虫剤、殺菌剤、防カビ剤、香料、着色剤、及び/又は、製薬、農薬若しくは食品などの分野において製剤化に通常用いられる添加剤などを含有してもよい。
前記添加剤としては、例えば、担体、界面活性剤、有機溶剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0069】
前記担体としては、例えば、シリカゲル、ケイ酸、カオリン、活性炭、ベントナイト、珪藻土、タルク、クレー、炭酸カルシウム、カーボンブラック等の無機物担体;シクロデキストリン、クラウン化合物、シクロファン、アザシクロファン、カリックスアレーン、ポルフィリン、フタロシアニン、サレン、又はこれらの誘導体、木粉、大豆粉、小麦粉、でんぷん等の有機物担体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
前記界面活性剤としては、例えば、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
前記陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、モノアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられる。これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン塩などが挙げられる。
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、ノニルフェニルエーテル又は高級アルコールの酸化エチレン付加物に代表される、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、カルボベタイン、ヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型;イミダゾリン型の両性界面活性剤などが挙げられる。
前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール;エチレングリコール、プロピレングリコール、又はこれらの重合体であるポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ジエチレングリコール、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、プロピルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、グリセリン又はその誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明で用いられる動物忌避組成物の製造方法としては、特に限定されず、例えば、前記動物忌避剤、前記熱可塑性樹脂、前記可塑剤、及び必要に応じて前記その他の成分を、ロール、ニーダ―、押出し機、万能撹拌機等により混合し、製造することができる。
得られた動物忌避組成物は、後述するように、支持体上に付与し、加熱することにより、本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体が得られる。
【0073】
(点滴灌漑用動物忌避複合体の製造方法)
本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体の製造方法は、支持体上に、上記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤と、熱可塑性樹脂と、可塑剤とを含有する動物忌避組成物を付与する。
前記支持体上に付与した動物忌避組成物を、前記動物忌避剤の沸点より30℃低い温度以下で加熱することが好ましい。具体的には、支持体上に付与した動物忌避組成物を80℃~130℃で1分間~10分間加熱することが好ましい。この加熱により、動物忌避剤が揮発することなく、熱可塑性樹脂と動物忌避剤と可塑剤との相溶性に優れた動物忌避組成物のゾルが支持体表面でゲル(塗膜)となり支持体と複合化することによって、塗膜の支持体との密着性が向上する。
【0074】
前記動物忌避組成物を支持体に付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、刷毛塗り法、ブレードコート法、グラビアコート法、ロールコート法、カーテンフローコート法、バーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スリットダイコート法、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法などが挙げられる。
【0075】
塗膜の形状、厚さや面積等の塗膜のサイズは、所望する忌避効果が得られる限り特に限定されない。塗膜は、連続した単一の領域として支持体に形成されてもよく、不連続な複数の領域として支持体に形成してもよい。
塗膜の平均厚さは、例えば、1μm以上5mm以下が好ましく、5μm以上3mm以下がより好ましく、10μm以上1mm以下が更に好ましく、50μm以上0.5mm以下が更により好ましく、100μm以上0.3mm以下が特に好ましい。塗膜が薄すぎると、所望する保持効果を得にくい場合があり、塗膜が厚すぎると、塗膜の柔軟性の乏しさに起因して、塗膜に割れや欠けが生じやすかったりする場合がある。
【0076】
ここで、
図1A~
図1Cは、点滴灌漑用動物忌避複合体としての点滴灌漑用チューブの断面図である。
図1Aは、点滴灌漑用チューブの短軸方向における断面図であり、
図1Bは、
図1Aに示されるA-A線の断面図であり、
図1Cは、
図1Aに示されるB-B線の断面図である。
【0077】
図1A~
図1Cに示されるように、点滴灌漑用チューブ10は、チューブ20と、エミッタ30とを有する。点滴灌漑用チューブ10の表面には動物忌避組成物が複合化されている。なお、エミッタ30の部分には動物忌避組成物は複合化されていない。
【0078】
チューブ20は、灌漑用液体を流通させるための管である。チューブ20の材料は、特に限定されない。本実施形態では、チューブ20の材料は、ポリエチレンである。チューブ20は、第1流路21及び第2流路22を有する。なお、点滴灌漑用チューブの材料としてポリ塩化ビニールからなる製品もある。
【0079】
第1流路21は、灌漑用液体をチューブ20における一端側から他端側に向かって流通させる。具体的には、第1流路21は、灌漑用液体を送液ポンプに接続された基端側から先端側に向かって流通させる。また、第2流路22は、灌漑用液体をチューブ20における他端側から一端側に向かって流通させる。具体的には、第2流路22は、灌漑用液体を先端側から回収ポンプに接続された基端側に向かって流通させる。また、本実施形態では、チューブ20の他端は、閉塞されている。
【0080】
第1流路21及び第2流路22の形状は、上記の機能を発揮できれば、特に限定されない。本実施形態では、チューブ20の内部空間をチューブ20の軸方向に沿って二分する管壁がチューブ20内に配置されており、二分されたチューブ20の内部空間の一方は第1流路21であり、他方は第2流路22である。より具体的には、本実施形態では、チューブ20(第1流路21及び第2流路22)は、1枚のポリエチレン樹脂製の基材シートから構成されている。具体的には、一部が重なるように基材シートを約1周半巻くことで、第1流路21及び第2流路22は形成される。そして、一方の内部空間が第1流路21となり、他方の内部空間が第2流路22となる。このように、本実施の形態では、第1流路21及び第2流路22は、1つの管壁を隔てて隣接している。
【0081】
第1流路21及び第2流路22の間には、第1流路21を流通する灌漑用液体を第1流路21から第2流路22に送るための複数の第1貫通孔31が所定の間隔で形成されている。また、外部に面した第2流路22の管壁には、灌漑用液体を第2流路22からチューブ20の外部に吐出するための複数の第2貫通孔32が所定の間隔で形成されている。複数の第1貫通孔31の間隔と、複数の第2貫通孔32の間隔とは、同じ間隔である。また、複数の第1貫通孔31の間隔と、複数の第2貫通孔32の間隔とは、例えば、200mm~500mmの範囲内である。第1貫通孔31の開口部の形状及び大きさは、第1流路21から、第2流路22に配置されたエミッタ30の取水部に、灌漑用液体をエミッタ30外に漏らすことなく送ることができれば特に限定されない。本実施形態では、第1貫通孔31の開口部の形状は、後述の取水用凹部42の開口部の形状と同じである。第2貫通孔32の開口部の形状及び大きさは、エミッタ30の吐出部からチューブ20の外部に、灌漑用液体を第2流路22内に漏らすことなく吐出することができれば特に限定されない。本実施形態では、第2貫通孔32の開口部の形状は円形であり、第2貫通孔32の開口部の直径は、1.5mmである。第2流路22内の第1貫通孔31及び第2貫通孔32に対応する位置には、エミッタ30が配置される。
【0082】
点滴灌漑用チューブ10は、第1流路21及び第2流路22が形成されるように、基材シートを成形しつつ、第2流路22の管壁にエミッタ30を接合することによって作製される。例えば、まず、基材シートの幅方向の一方の端部と、基材シートの一部を接合して、第1流路21を形成する。次いで、第1流路21の外側の面の第1貫通孔31に対応する位置、及び基材シートの第1流路21外の領域の第2貫通孔32に対応する位置にエミッタ30をそれぞれ接合する。最後に、基材シートの幅方向の他方の端部と、第1流路21の外側の面を接合して、第2流路22を形成する。
【0083】
また、第1貫通孔31を形成する時期は、エミッタ30を第1貫通孔31に対応する位置に接合する前であればよい。具体的には、第1貫通孔31は、第1流路21を形成するための基材シートの接合前に形成してもよく、第1流路21を形成するための基材シートの接合後であって、エミッタ30を基材シートに接合する前に形成してもよい。一方、第2貫通孔32を形成する時期は、特に限定されず、第2流路22を形成するための基材シートの接合後でもよいし、任意の時期でよい。チューブ10と、エミッタ30とを接合する方法の例には、エミッタ30又はチューブ10を構成する樹脂材料の溶着や、接着剤による接着などが含まれる。
【0084】
エミッタ30は、第2流路22側から第1貫通孔31を覆うとともに、第2流路22内から第2貫通孔32を覆うようにチューブ10の管壁に接合されている。エミッタ30の形状は、第2流路22の管壁に密着して、第1貫通孔31及び第2貫通孔32を覆うことができれば特に限定されない。本実施形態では、チューブ10の軸方向に垂直なエミッタ30の断面における、表面(第1流路21側に向かう面)の形状は平面であり、裏面(チューブ10の外側に向かう面)の形状は外側に向かって凸の略円弧形状である。また、エミッタ30の平面視形状は、特に限定されず、本実施形態では四隅がR面取りされた略矩形である。エミッタ30の大きさは、第2流路22を完全に塞ぐことなく第2流路22内に配置することが可能であれば特に限定されない。本実施形態では、エミッタ30の長辺方向の長さは25mmであり、短辺方向の長さは8mmであり、高さは2.5mmである。
本実施形態の点滴灌漑用チューブ10の表面には動物忌避組成物が複合化した塗膜が形成されているので、チューブがげっ歯類に噛まれることなく高い忌避効果を実現することができる。
【0085】
(点滴灌漑用動物忌避構造体)
本発明の点滴灌漑用動物忌避構造体は、上記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤を含むマイクロカプセル化動物忌避剤を含有し、熱可塑性樹脂及び可塑剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0086】
上記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤を含むマイクロカプセル化動物忌避剤の含有量は、点滴灌漑用動物忌避構造体の全量に対して、1×10-6質量%以上、1×10-5質量%以上、1×10-4質量%以上、1×10-3質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、若しくは50質量%以上、及び/又は50質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下、1×10-3質量%以下、1×10-4質量%以下、1×10-5質量%以下、若しくは1×10-6質量%以下であってもよい。
【0087】
前記熱可塑性樹脂、前記可塑剤、及び前記その他の成分としては、上記点滴灌漑用動物忌避複合体と同様なものを用いることができる。
【0088】
前記点滴灌漑用動物忌避構造体は、上記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤を含むマイクロカプセル化動物忌避剤、熱可塑性樹脂、可塑剤、及び必要に応じてその他の成分を混合して製造した組成物を用い、点滴灌漑用動物忌避構造体に成形することができる。また、前記組成物を用いてマスターバッチを作製し、このマスターバッチを用いて点滴灌漑用動物忌避構造体を成形することができる。これらの中でも、樹脂中の分散性及びマイクロカプセル化動物忌避剤の安定性等の点から、マスターバッチにした後に、樹脂材料等で希釈、配合する方法が好ましい。
前記マスターバッチを製造する方法としては、例えば、フェンシェルミキサー、リボンミキサー、ナウタミキサー等が適用でき、マイクロカプセル化動物忌避剤を添加し、混練するには、バンバリーミキサー、加熱ニーダー、2本ロール機等が適用できるが、熱可塑性樹脂と可塑剤との混合物を予め通常100℃~250℃に加熱し、混合物が熱により軟化した状態でマイクロカプセル化動物忌避剤を添加し、混練して成形することで、マスターバッチを製造することができる。
【0089】
前記点滴灌漑用動物忌避構造体は、チューブ状及びパイプ状の少なくともいずれかであることが好ましい。
前記点滴灌漑用動物忌避構造体は、上記一般式(I)から(VI)で示される化合物から選択される少なくとも1種の動物忌避剤を含むマイクロカプセル化動物忌避剤が点滴灌漑用動物忌避構造体中に含有されているので、動物忌避剤の忌避効果の持続性が大幅に向上する。
【0090】
(動物の忌避方法)
本発明の動物の忌避方法は、本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体及び本発明の点滴灌漑用動物忌避構造体の少なくともいずれかを、動物を忌避させる空間に配置する工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
前記動物の忌避方法によると、動物を忌避させる空間に点滴灌漑用動物忌避複合体及び本発明の点滴灌漑用動物忌避構造体の少なくともいずれかに含まれる動物忌避剤が徐放し、長期間に亘って動物を忌避させ、げっ歯類に点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体が噛まれることを防止することができる。具体的には、本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体である点滴灌漑用チューブを植物が植えられている土壌に配置すると、げっ歯類に噛まれることを防止できる。
【0091】
前記点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体によると、前記動物忌避剤を不活性化せずに長期徐放することができる。
本明細書において「徐放」とは、物質が空間中に徐々に放出されることをいう。本明細書では、特に匂い物質が空気中に徐々に放散されることをいう。具体的には、通常の条件下において匂い物質が放散される速度よりも遅い速度で、匂い物質が空気中に自然放散されることをいう。例えば、希釈されていない原液の匂い物質又は通常用いられる溶媒で希釈された匂い物質よりも遅い速度で、空気中に放散されることをいう。忌避性の匂い物質が徐放される場合、周囲の空間では長期間に亘って匂い分子が存在することから動物はその空間を忌避し得る。
【0092】
本明細書において「長期徐放」における「長期」とは、通常の条件下で匂い物質が放散され続ける期間よりも長いことを意味する。具体的には、希釈されていない原液の匂い物質又は通常用いられる溶媒中に希釈された匂い物質が同一条件下で放散され続ける期間よりも長いことを意味する。具体的な期間は匂い物質の種類によって異なるが、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、半日間以上、1日間以上、2日間以上、3日間以上、1週間以上、2週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上、5年以上、又は10年以上の期間が該当する。
【0093】
本明細書において、「動物を忌避させる空間」とは、忌避させる動物の生息空間又は侵入する恐れのある空間を意味し、対象物が存在する空間、動物が生息する空間、動物の縄張りなどが該当する。
【0094】
前記「動物を忌避させる空間」としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、田畑、果樹園、ビニールハウス、森林、家畜の飼育場、道路、高速道路、線路、空港、ゴルフ場、グラウンド、塵埃集積場、公園、庭、庭園、花壇、駐車場、建築物、家屋、工場、倉庫、店舗、商業施設、レストラン、厨房、洗面所、ベランダ、物置、床下、屋根裏、仕切り板、ネット、金網、フェンス、電柱、電線、通信ケーブル、掲示板などが挙げられる。
【0095】
本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体の少なくともいずれかを、動物を忌避させる空間に配置する態様としては、点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体の少なくともいずれかを、土壌の表面に配置してもよく、土壌中に埋設してもよく、一部を土壌中に埋設し、一部が土壌の表面に露出していてもよい。
【0096】
本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体は、特に限定しないが、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、半日間以上、1日間以上、2日間以上、3日間以上、1週間以上、2週間以上、1か月以上、2か月以上、3か月以上、4か月以上、5か月以上、6か月以上、1年以上、2年以上、3年以上、5年以上、若しくは10年以上、及び/又は10年以下、5年以下、3年以下、2年以下、1年以下、6か月以下、5か月以下、4か月以下、3か月以下、2か月以下、1か月以下、2週間以下、1週間以下、3日間以下、2日間以下、1日間以下、半日間以下、6時間以下、3時間以下、2時間以下、若しくは1時間以下の期間、使用することができる。
【0097】
本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体によって忌避の対象となる動物は、特に限定しない。例えば、点滴灌漑用チューブを噛むことで被害をもたらす有害動物が対象となる。前記有害動物としては、ネズミ、リス、ヤマアラシ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ハダカデバネズミ、クマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミ、アカネズミ、ハタネズミ、スナネズミ、ホリネズミ、タケネズミ、デグー、ヌートリア等のげっ歯類などが挙げられる。
【0098】
本発明の点滴灌漑用動物忌避複合体及び点滴灌漑用動物忌避構造体は、動物忌避剤が有効な濃度で放散されるように使用することができる。本明細書において「有効な濃度」とは、動物忌避剤が対象とする動物を忌避させることが可能となる、匂い分子の空気中の濃度である。前記有効な濃度は、使用する忌避剤の種類及び忌避させる対象となる動物の組合せによって異なるが、例えば、0.01ppm以上、0.1ppm以上、0.2ppm以上、0.3ppm以上、0.4ppm以上、0.5ppm以上、1ppm以上、5ppm以上、若しくは10ppm以上、及び/又は10ppm以下、5ppm以下、1ppm以下、0.5ppm以下、0.4ppm以下、0.3ppm以下、0.2ppm以下、0.1ppm以下、若しくは0.01ppm以下であり得る。例えば、5ppm以上10ppm以下である。匂い分子の空気中の濃度は、使用条件下で直接測定することもできるが、測定が困難な屋外等の場合には密閉空間中で測定された値を参照値として使用することもできる。
【実施例0099】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0100】
(製造例1)
<マイクロカプセル化動物忌避剤(2MT2T-MC)の作製>
フタル酸ジオクチル30質量部に2-メチルチオ-2チアゾリン(2MT2T、東京化成工業株式会社製)50質量部を溶解し、これを、スチレン無水マレイン酸樹脂を少量の水酸化ナトリウムと共に溶解して調製したpHが4.5の3%水溶液200質量部中に加え、分散し、O/W型エマルジョンを調製した。
一方、メラミンホルマリンプレポリマー水溶液(商品名:「スミレズレジン613」、住友化学株式会社製)の50%水溶液35質量部を、上記O/W型エマルジョンに回転速度250rpmで撹拌しながら滴下し、70℃で3時間撹拌を続け、メラミン樹脂膜の水中懸濁状マイクロカプセルを調製した。このマイクロカプセルの平均粒径は25μmであった。これをスプレードライヤーで乾燥し、2-メチルチオ-2チアゾリン(2MT2T)を50%含有したマイクロカプセル化動物忌避剤(2MT2T-MC)を調製した。
【0101】
(実施例1~3及び比較例1)
<動物忌避組成物の調製>
表1に示す組成及び含有量に基づき、常法により、実施例1~3及び比較例1の動物忌避組成物を調製した。
【0102】
<点滴灌漑用動物忌避複合体の作製>
次に、得られた各動物忌避組成物を、支持体1としての点滴灌漑用ポリエチレン製チューブ(厚さ0.15mm、外径16.5mm)の表面全面に、ヘラで均一にコーティングした。
各動物忌避組成物をコーティング後の各ポリエチレンチューブを120℃で4分間オーブンにて加熱した後、オーブンから取り出し、室温(25℃)で冷却し、実施例1~3及び比較例1の点滴灌漑用動物忌避複合体としてのポリエチレンチューブを作製した。
なお、ポリエチレンチューブは従来からコーティングが難しい素材であることが知られている。
【0103】
(実施例4)
ポリ塩化ビニル樹脂(株式会社カネカ製、グレード「S1003」)100質量部、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOP)75質量部、及び安定剤としてAC-322(株式会社アデカ製)2質量部をフェンシェルミキサーにて混合した。次に、混合物をバンバリーミキサーにより150℃で溶融した後、上記マイクロカプセル化動物忌避剤(2MT2T-MC)35質量部を加えて5分間混練した。次に、ロール加工機上で150℃、3分間混練し、ペレタイザーでペレット化されたマスターバッチを作製した。
得られたマスターバッチを用いて、実施例4の点滴灌漑用チューブ(厚さ0.5mm、外径16.5mm)を作製した。
【0104】
(実施例5)
低密度ポリエチレン樹脂(日本ポリケム株式会社製、商品名「LF122」)50質量部、及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(ダウケミカル社製、商品名「2645G」)50質量部をフェンシェルミキサーにて混合した。次に、混合物をバンバリーミキサーにより200℃で溶融した後、上記マイクロカプセル化動物忌避剤(2MT2T-MC)35質量部を加えて5分間混練した。次に、ロール加工機上で200℃、3分間混練し、ペレタイザーでペレット化されたマスターバッチを作製した。
得られたマスターバッチを用いて、実施例5の点滴灌漑用チューブ(厚さ0.5mm、外径16.5mm)を作製した。
【0105】
次に、以下のようにして、「破断強度及び伸び率」、「忌避効果」及び「忌避効果の持続性」を評価した。結果を表1に示した。
【0106】
<破断強度及び伸び率>
JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に基づき、実施例1~3及び比較例1の動物忌避組成物並びに実施例4及び5のマスターバッチを用いて3号ダンベルを作製し、破断強度及び伸び率を測定した。
【0107】
<忌避効果>
マウス2頭を飼育している金網ゲージで通常飼育環境(室温)下、餌及び水有りにおいて、実施例1~5及び比較例1の点滴灌漑用チューブを5cmの長さに切断したものを夕方16時~朝8時まで入れ、延べ2日間飼育し、飼育前後の点滴灌漑用チューブの状態を確認し、下記の基準で忌避効果を評価した。なお、
図2Aは、比較例1における飼育前の点滴灌漑用チューブの状態を示す写真である。
図2Bは、比較例1における2日間飼育後の点滴灌漑用チューブの状態を示す写真である。
図3Aは、実施例1における飼育前の点滴灌漑用チューブの状態を示す写真である。
図3Bは、実施例1における2日間飼育後の点滴灌漑用チューブの状態を示す写真である。
[評価基準]
〇:点滴灌漑用チューブが齧られておらず忌避効果あり
△:点滴灌漑用チューブが齧られており忌避効果弱い
×:点滴灌漑用チューブが激しく齧られており忌避効果なし
【0108】
<忌避効果の持続性>
上記忌避効果の評価において、各点滴灌漑用チューブを夕方16時~朝8時まで入れ、延べ30日間飼育した以外は、上記忌避効果の評価方法と同様にして、飼育前後の点滴灌漑用チューブの状態を確認し、下記の基準で忌避効果の持続性を評価した。
[評価基準]
〇:点滴灌漑用チューブが齧られておらず忌避効果の持続性あり
△:点滴灌漑用チューブが齧られており忌避効果の持続性弱い
×:点滴灌漑用チューブが激しく齧られており忌避効果の持続性なし
【0109】
【0110】
表1の結果から、実施例1~3の動物忌避組成物でコーティングした点滴灌漑用チューブは、30日間経過後も点滴灌漑用チューブが齧られておらず、動物忌避剤を含まない比較例1に比べて十分な忌避効果を有していた。特に、2MT2Tをマイクロカプセル化したマイクロカプセル化動物忌避剤を含有する動物忌避組成物をコーティングする方が、2MT2Tが徐々に放出される効果が付与され、忌避効果の持続性も高いことが明らかとなった(実施例1及び2)。また、動物忌避組成物をコーティングした点滴灌漑用チューブは、破断強度及び伸び率ともに適正であり、点滴灌漑用チューブとして問題なく使用できることがわかった。
また、実施例4及び5の2MT2Tをマイクロカプセル化したマイクロカプセル化動物忌避剤を含有する点滴灌漑用チューブは忌避効果の持続性が高く、破断強度及び伸び率ともに適正であり、点滴灌漑用チューブとして問題なく使用できることがわかった。
【0111】
表1中の各成分の詳細については、以下のとおりである。
*2MT2T:2-メチルチオ-2-チアゾリン、東京化成工業株式会社製
*PCH-72:カネビニールペーストPCH-72、株式会社カネカ製
・一般名:塩化ビニル・酢酸ビニル共重合物
・化学式:(CH2-CHCl)n(CH2-CHOAc)m
・成分及び含有量:(CH2-CHCl)n(CH2-CHOAc)m=99%以上
・酢酸ビニル=8%(残存モノマー成分)
【0112】
*S1003:ポリ塩化ビニル樹脂、株式会社カネカ製、グレード「S1003」
*LF122:低密度ポリエチレン樹脂、日本ポリケム株式会社製、商品名「LF122」
*2645G:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ダウケミカル社製、商品名「2645G」
【0113】
*DOP:フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
塩化ビニル樹脂用可塑剤として、最も広範囲に使用されている代表的な汎用可塑剤
分子式:C24H38O4、分子量:391
【0114】
*AC-322:株式会社アデカ製、Ba-Zn系塩ビ用安定剤
【0115】
*BYK-307:BYK社製
シリコーン系表面調整剤