(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053884
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】食品包装用バリアフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20230406BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20230406BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C23C14/06 P
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079575
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】110136637
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳 超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊 哲
(72)【発明者】
【氏名】陳 政 宏
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4K029
【Fターム(参考)】
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4K029GA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、食品包装用バリアフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
前記製造方法は、基材フィルムを提供することと、前記基材フィルムの表面にお互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備えた無機積層フィルムを蒸着することと、前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで、バリア塗布層を形成することと、を含む。なかでも、前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、異なる無機金属酸化物で形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムを提供することと、
お互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備えた無機積層フィルムを前記基材フィルムの表面に蒸着することと、
前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで、バリア塗布層を形成することと、を含み、
前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、異なる無機金属酸化物で形成される、ことを特徴とする食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、前記第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高く、前記食品包装用バリアフィルムを曲げると、前記第2の無機材料蒸着層は、前記第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝する、請求項1に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記基材フィルムはポリエステルフィルムであり、前記基材フィルムの厚さは5μm~300μmであり、前記第1の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmであり、前記第2の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmである、請求項1に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記無機金属酸化物は透明性を有し、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化コバルト(CoOx)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウムスズ(ITO)及び五酸化タンタル(Ta2O5)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlOx)及び酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の無機材料蒸着層は、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、
前記第2の無機材料蒸着層は、酸化ケイ素(SiOx)蒸着層である、請求項4に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記基材フィルムの前記表面に前記無機積層フィルムを蒸着することには、前記基材フィルムを真空蒸着装置のボートに置い、異なる2種の無機材料のそれぞれを、前記真空蒸着装置の2つのタングステンボートに置くことと、真空ポンプで前記真空蒸着装置の蒸発室を真空引くことで、真空環境を生成することと、前記真空蒸着装置の熱抵抗式加熱源である第1の加熱源及び電子ビーム加熱源である第2の加熱源を用いて、回転に切り替えで同一の前記真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、前記基材フィルムの前記表面に前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層を順番に形成することと、を含む、請求項1に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記バリア塗布液は、樹脂材料、架橋剤、表面改質処理剤で処理された充填粒子、添加剤及び水溶媒を含み、
前記バリア塗布液の総重量を100wt%として、前記樹脂材料の含有量は2wt%~20wt%であり、前記架橋剤の含有量は1wt%~10wt%であり、前記表面改質処理剤で処理された充填粒子は0.05wt%~40wt%であり、前記添加剤の含有量は0.05%~10wt%であり、前記水溶媒の含有量は25wt%~85wt%である、請求項1に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂材料は、ポリエーテルアミン、エチレン-アクリル酸エチル、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記架橋剤は、マレイン酸、酒石酸、トリメシルクロリド、コハク酸、スベリン酸、リンゴ酸、グリオキサール、グルタルアルデヒド及びトルエンジアルデヒド(toluene dialdehyde)からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記表面改質処理剤は、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、メタクリロイルオキシシランカップリング剤、アクリロイルオキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、イソシアヌレートシランカップリング剤、ウレイドシランカップリング剤及びイソシアナートシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記充填粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、粘土、タルク粉末、雲母粉末、カオリナイト、モンモリロナイト、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記添加剤は、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、紫外線吸収剤、防腐剤及び帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項7に記載の食品包装用バリアフィルムの製造方法。
【請求項9】
基材フィルムと、前記基材フィルムの表面に形成された無機積層フィルムと、前記無機積層フィルムに形成されたバリア塗布層とを、備える食品包装用バリアフィルムであって、
前記無機積層フィルムは、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備え、
前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、異なる無機金属酸化物で形成され、
前記バリア塗布層は、前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで形成される、ことを特徴とする食品包装用バリアフィルム。
【請求項10】
前記第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、前記第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高く、前記食品包装用バリアフィルムを曲げると、前記第2の無機材料蒸着層は、前記第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝する、請求項9に記載の食品包装用バリアフィルム。
【請求項11】
前記食品包装用バリアフィルムは、1cc/m2・day・atm以下の酸素透過率、1g/m2・day・atm以下の水気透過率、90%以上の可視光透過率、3%以下のヘイズ値を有する、請求項9に記載の食品包装用バリアフィルム。
【請求項12】
前記基材フィルムはポリエステルフィルムであり、前記基材フィルムの厚さは5μm~300μmであり、前記第1の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmであり、前記第2の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmである、請求項9に記載の食品包装用バリアフィルム。
【請求項13】
前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlOx)及び酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記第1の無機材料蒸着層は、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、前記第2の無機材料蒸着層は、酸化ケイ素(SiOx)蒸着層である、請求項9に記載の食品包装用バリアフィルム。
【請求項14】
前記バリア塗布液は、樹脂材料、架橋剤、表面改質処理剤で処理された充填粒子、添加剤及び水溶媒を含み、
前記バリア塗布液の総重量を100wt%として、前記樹脂材料の含有量は2wt%~20wt%であり、前記架橋剤の含有量は1wt%~10wt%であり、前記表面改質処理剤で処理された充填粒子の含有量は0.05wt%~40wt%であり、前記添加剤の含有量は0.05%~10wt%であり、前記水溶媒の含有量は25wt%~85wt%である、請求項9に記載の食品包装用バリアフィルム。
【請求項15】
基材フィルムと、前記基材フィルムの表面に形成された無機積層フィルムと、前記無機積層フィルムに形成されたバリア塗布層とを、備える食品包装用バリアフィルムであって、
前記無機積層フィルムは、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備え、
前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、異なる無機金属酸化物で形成され、
前記第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、前記第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高く、
前記バリア塗布層は、前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで形成され、
前記食品包装用バリアフィルムを曲げると、前記第2の無機材料蒸着層は、前記第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝する、食品包装用バリアフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアフィルムに関し、特に、食品包装用バリアフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の食品包装用バリアフィルムの技術分野において、バリアフィルムの水・酸素バリア性を向上するために、金属材料及び/又はアルミ箔材料が使用されること、及び蒸着層の厚さ及び塗布層の積層数を増加することが多い。
【0003】
しかしながら、従来の技術において、さまざまの問題及び制限が存在する。例えば、従来のバリアフィルムで使用された金属材料及び/又はアルミ箔材料はほぼ、透明性を有しない。それによって、バリアフィルムの表面に高い透明度を有しないため、バリアフィルムの応用が制限される。
【0004】
なお、従来のバリアフィルムでは、単一の蒸着層及び/又は単一の塗布層を使用するが、バリアフィルムの酸素透過率及び水気透過率が高すぎるため、高い水・酸素バリア性を達成することができない。
【0005】
更に説明すると、単一の蒸着層の厚さ及び/又は塗布層の積層数を増加することによって、バリアフィルムに高い水・酸素バリア性を与えるが、塗布工程のコスト及び生産コストの増加に繋がる。
【0006】
そこで、本発明者は、上述した問題が改善可能であることに鑑みて、鋭意研究を行い学理を併せて運用した結果、設計が合理的で且つ前記問題を効果的に改善することができる方法として本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、食品包装用バリアフィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、食品包装用バリアフィルムの製造方法を提供する。食品包装用バリアフィルムの製造方法は、基材フィルムを提供することと、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備えた無機積層フィルムを前記基材フィルムの表面に蒸着することと、前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで、バリア塗布層を形成することと、を含む。なかでも、前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層は、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、異なる無機金属酸化物で形成される。
【0009】
好ましくは、前記第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、前記第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高く、前記食品包装用バリアフィルムを曲げると、前記第2の無機材料蒸着層は、前記第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝する。
【0010】
好ましくは、前記基材フィルムはポリエステルフィルムであり、前記基材フィルムの厚さは5μm~300μmであり、前記第1の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmであり、前記第2の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmである。
【0011】
好ましくは、前記無機金属酸化物は透明性を有し、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化コバルト(CoOx)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウムスズ(ITO)及び五酸化タンタル(Ta2O5)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0012】
好ましくは、前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlOx)及び酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される少なくとも1つであり、なかでも、前記第1の無機材料蒸着層は、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、前記第2の無機材料蒸着層は、酸化ケイ素(SiOx)蒸着層である。
【0013】
好ましくは、前記基材フィルムの前記表面に前記無機積層フィルムを蒸着することには、前記基材フィルムを真空蒸着装置のボートに置い、異なる2種の無機材料のそれぞれを、前記真空蒸着装置の2つのタングステンボートに置くことと、真空ポンプで前記真空蒸着装置の蒸発室を真空引くことで、真空環境を生成することと、前記真空蒸着装置の熱抵抗式加熱源である第1の加熱源及び電子ビーム加熱源である第2の加熱源を用いて、回転に切り替えで同一の前記真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、前記基材フィルムに前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層を順番に形成することと、を含む。
【0014】
好ましくは、前記バリア塗布液は、樹脂材料、架橋剤、表面改質処理剤で処理された充填粒子、添加剤及び水溶媒を含み、前記バリア塗布液の総重量を100wt%として、前記樹脂材料の含有量は2wt%~20wt%であり、前記架橋剤の含有量は1wt%~10wt%であり、前記表面改質処理剤で処理された充填粒子は0.05wt%~40wt%であり、前記添加剤の含有量は0.05%~10wt%であり、前記水溶媒の含有量は25wt%~85wt%である。
【0015】
好ましくは、前記樹脂材料は、ポリエーテルアミン、エチレン-アクリル酸エチル、エチレン-ビニルアルコール共重合体及びポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記架橋剤は、マレイン酸、酒石酸、トリメシルクロリド、コハク酸、スベリン酸、リンゴ酸、グリオキサール、グルタルアルデヒド及びトルエンジアルデヒド(toluene dialdehyde)からなる群から選択される少なくとも1つである。なかでも、前記表面改質処理剤は、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、メタクリロイルオキシシランカップリング剤、アクリロイルオキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、イソシアヌレートシランカップリング剤、ウレイドシランカップリング剤及びイソシアナートシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1つであり、なかでも、前記充填粒子は、グラフェン、カーボンナノチューブ、粘土、タルク粉末、雲母粉末、カオリナイト、モンモリロナイト、酸化ケイ素、酸化アルミニウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、なかでも、前記添加剤は、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、紫外線吸収剤、防腐剤及び帯電防止剤からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0016】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、食品包装用バリアフィルムを提供する。食品包装用バリアフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムの表面に形成された無機積層フィルムと、前記無機積層フィルムに形成されたバリア塗布層とを、備える。なかでも、前記無機積層フィルムは、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備える。前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、異なる無機金属酸化物で形成される。前記バリア塗布層は、前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで形成される。
【0017】
好ましくは、前記第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、前記第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高く、前記食品包装用バリアフィルムを曲げると、前記第2の無機材料蒸着層は、前記第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝する。
【0018】
好ましくは、前記食品包装用バリアフィルムは、1cc/m2・day.atm以下の酸素透過率、1g/m2・day・atm以下の水気透過率、90%以上の可視光透過率、3%以下のヘイズ値を有する。
【0019】
好ましくは、前記基材フィルムはポリエステルフィルムであり、前記基材フィルムの厚さは5μm~300μmであり、前記第1の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmであり、前記第2の無機材料蒸着層の厚さは1nm~100nmである。
【0020】
好ましくは、前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlOx)及び酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される少なくとも1つであり、なかでも、前記第1の無機材料蒸着層は、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、前記第2の無機材料蒸着層は、酸化ケイ素(SiOx)蒸着層である。
【0021】
好ましくは、前記バリア塗布液は、樹脂材料、架橋剤、表面改質処理剤で処理された充填粒子、添加剤及び水溶媒を含み、前記バリア塗布液の総重量を100wt%として、前記樹脂材料の含有量は2wt%~20wt%であり、前記架橋剤の含有量は1wt%~10wt%であり、前記表面改質処理剤で処理された充填粒子の含有量は0.05wt%~40wt%であり、前記添加剤の含有量は0.05%~10wt%であり、前記水溶媒の含有量は25wt%~85wt%である。
【0022】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、食品包装用バリアフィルムを提供する。食品包装用バリアフィルムは、基材フィルムと、前記基材フィルムに形成された無機積層フィルムと、前記無機積層フィルムに形成されたバリア塗布層とを、備える。なかでも、前記無機積層フィルムは、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層とを少なくとも備える。前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、異なる無機金属酸化物で形成され、前記第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、前記第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高い。前記バリア塗布層は、前記無機積層フィルムにバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで形成される。なかでも、前記食品包装用バリアフィルムを曲げると、前記第2の無機材料蒸着層は、前記第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有利な効果として、本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法は、低い損失及び低い塗布工程のコストを有する。本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムは、高い透明性、低いヘイズ値及び優れた水・酸素バリア性を有することによって、バリアフィルムの応用性を向上することができる。例えば、消費者が食品包装の内容物を見える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法のフローチャートである。
【
図2A】
図2A~
図2Cのそれぞれは、本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法の工程S110~S130の模式図である。
【
図2B】
図2A~
図2Cのそれぞれは、本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法の工程S110~S130の模式図である。
【
図2C】
図2A~
図2Cのそれぞれは、本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法の工程S110~S130の模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る真空蒸着装置の内部構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0026】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明に係る実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行又は適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。
【0027】
理解すべきことは、本明細書では、「第1」、「第2」、「第3」といった用語を用いて各種の素子又は信号を叙述することがあるが、これらの素子又は信号は、これらの用語によって制限されるものではない。これらの用語は主に、1つの素子ともう1つの素子、又は1つの信号ともう1つの信号を区別するためのものである。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含むことがある。
【0028】
[食品包装用バリアフィルムの製造方法]
図1、
図2A~
図2Cに示すように、本発明の実施形態は、食品包装用バリアフィルムの製造方法を提供する。前記食品包装用バリアフィルムの製造方法は、工程S110、工程S120及び工程S130を含む。
【0029】
なかでも、
図1は、本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法のフローチャートである。
図2A~
図2Cのそれぞれは、本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法の工程S110~S130の模式図である。
【0030】
説明すべきことは、本実施形態における各工程の順番や操作方式はニーズに応じて調整することは可能であり、これに制限されるものではない。
【0031】
図1及び
図2Aに示すように、前記工程S110は、基材フィルム1(base film)を提供することを含む。
【0032】
本実施形態において、前記基材フィルム1の厚さは、5μm~300μmである。前記基材フィルム1の組成は、ポリエステル樹脂(例えば、PET resin)を含み、前記ポリエステル樹脂の基材フィルム1での含有量は、50wt%~95wt%である。即ち、前記基材フィルム1は、ポリエステルフィルム(polyester film)である。
【0033】
前記基材フィルム1の組成は、無機充填粒子をさらに含む。前記無機充填粒子の粒子径は、0.1μm~10μmである。前記無機充填粒子として、例えば、二酸化ケイ素(silicon dioxide)、リン酸カルシウム(calcium phosphate)又はカオリン(kaolin)であってもよい。前記無機充填粒子の基材フィルム1での含有量は、5wt%~50wt%である。
【0034】
前記無機充填粒子の添加によって、基材フィルム1に粘着防止効果を与えて、基材フィルム1の加工性を向上させることができる。
【0035】
なお、前記基材フィルム1は、90%以上の可視光透過率を有するため、透明性を有する食品包装用バリアフィルムの製造にとって好適である。
【0036】
図1及び
図2Bに示すように、前記工程S120は、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、前記基材フィルム1の表面に無機積層フィルム2を形成する。なかでも、前記無機積層フィルム2は、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層21及び第2の無機材料蒸着層22を備える。
【0037】
即ち、前記第1の無機材料蒸着層21は、基材フィルム1の表面に形成される。また、前記第2の無機材料蒸着層22は、第1の無機材料蒸着層21の表面に形成される。
【0038】
換言すると、前記第1の無機材料蒸着層21及び前記第2の無機材料蒸着層22は、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま形成される。尚、前記第1の無機材料蒸着層21及び第2の無機材料蒸着層22のそれぞれは、同一の真空蒸着プロセスを介して、異なる無機金属酸化物で形成される。
【0039】
前記第1の無機材料蒸着層21の厚さは、1nm~100nmであり、10nm~100nmであることが好ましく、10nm~50nmであることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。類似に、前記第2の無機材料蒸着層22の厚さは、1nm~100nmであり、10nm~100nmであることが好ましく、10nm~50nmであることが特に好ましいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0040】
本発明の一つの実施形態において、前記無機金属酸化物は透明性を有し、また、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化コバルト(CoOx)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウムスズ(ITO)及び五酸化タンタル(Ta2O5)からなる群から選択される少なくとも1つである。なかでも、xは、1~2である。好ましくは、前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlOx)及び酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0041】
例えば、前記第1の無機材料蒸着層21は、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、前記第2の無機材料蒸着層22は、酸化ケイ素(SiOx)蒸着層であるが、本発明はこれに制限されるものではない。本発明のもう一つの実施形態において、前記第1の無機材料蒸着層21は、酸化ケイ素(SiOx)蒸着層であり、前記第2の無機材料蒸着層22は、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であってもよい。
【0042】
図面に示されていない本発明の実施形態において、前記無機積層フィルムは例えば、第1の無機材料蒸着層(例えば、酸化アルミニウム蒸着層)と、第2の無機材料蒸着層(例えば、酸化ケイ素蒸着層)と、第3の無機材料蒸着層(例えば、酸化アルミニウム蒸着層)とをこの順に備える。即ち、前記無機積層フィルムは、3層の無機材料蒸着層を有する積層構造であってもよく、また、隣接する2つの無機材料蒸着層のそれぞれは、同一の真空蒸着プロセスを介して、異なる無機金属酸化物で形成される。
【0043】
より具体的に説明すると、
図3に示すように、前記工程S120は、前記基材フィルム1を真空蒸着装置100のボートSに置い、異なる2種の無機材料(例えば、AlOx、SiOx)のそれぞれを、前記真空蒸着装置100の2つのタングステンボート(第1のタングステンボートC1及び第2のタングステンボートC2を含む)に置くことと、真空ポンプVで前記真空蒸着装置100の蒸発室ERを真空引くことで、真空環境を生成することと、次に、前記真空蒸着装置100の第1の加熱源H1及び第2の加熱源H2を用いて、ロータリースイッチングRの回転切り替えで同一の前記真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、前記基材フィルム1の表面に前記第1の無機材料蒸着層21(例えば、酸化アルミニウム蒸着層)及び第2の無機材料蒸着層22(例えば、酸化ケイ素蒸着層)を順番に形成することと、を含む。
【0044】
なかでも、前記加熱源H1は熱抵抗式加熱源(thermal resistance heating source)であると共に、前記加熱源H2は、電子ビーム加熱源である(electron beam heating source)。
【0045】
特筆すべきことは、本発明の実施形態で採用された真空蒸着装置100は、第1の加熱源H1及び第2の加熱源H2を有するデュアル熱源を介して、「同一の前記真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま、前記基材フィルム1の表面に2種の無機材料蒸着層を蒸着する」との目的を果たせる。
【0046】
なかでも、前記第1の加熱源H1(熱抵抗式加熱源)は、熱伝導で前記無機材料を加熱する。尚、前記第2の加熱源H2(電子ビーム加熱源)は、電子ビームの運動エネルギーから無機材料を溶化するための熱エネルギーに転換する。このような加熱方法の熱転換の効率が高く、蒸着速度が精密に制御されることができる。
【0047】
本発明の一つの実施形態において、酸化アルミニウム(AlOx)無機材料は、比較的に低い蒸着温度を有するため、酸化アルミニウム(AlOx)無機材料を第1の加熱源H1(熱抵抗式加熱源)の上方に隣接する第1のタングステンボートC1に置く。尚、酸化ケイ素(SiOx)無機材料は、比較的に高い蒸着温度を有するため、酸化ケイ素(SiOx)を第2の加熱源H2(電子ビーム加熱源)の上方に隣接する第2のタングステンボートC2に置く。なかでも、熱抵抗式加熱源である前記第1の加熱源H1及び電子ビーム加熱源である前記第1の加熱源H2はいずれも、真空蒸着装置100の蒸発室ERに設置され、蒸着を切り替える要求に応じて、ロータリースイッチングRで回転に切り替えることができるため、真空が維持されたまま2層以上の無機材料蒸着層を蒸着することができる。切り替える方法として、第1の加熱源H1(熱抵抗式加熱源)はまず、第2の加熱源H2(電子ビーム加熱源)の上方にあり、酸化アルミニウム(AlOx)無機材料の蒸着が完了した後に、第1の加熱源H1(熱抵抗式加熱源)が後方へ移動され、第2の加熱源H2(電子ビーム加熱源)は酸化ケイ素(SiOx)無機材料を蒸着することができる。なお、第1の加熱源H1又は第2の加熱源H2が加熱する過程において、シャッターP(shutter)でバリアされ、温度が設定値を達成した後に、シャッターPが外される。
【0048】
特筆すべきことは、真空蒸着装置で単一の加熱源(例えば、熱抵抗式加熱源)を採用すると、無機材料の損失が大きすぎ、且つ蒸着層の純度が不足であることがある。また、一般的に、単一の加熱源(例えば、熱抵抗式加熱源)が同一の真空蒸着プロセスで、単一の無機材料蒸着層のみを蒸着するため、多層の無機材料蒸着層を蒸着する場合、真空蒸着装置での真空を破って、無機材料を変更して、真空引きを行うことによって、この後の工程を行う。
【0049】
前記工程S120は、前記無機積層フィルム2を形成した後に、前記真空蒸着装置での真空を破って、前記無機積層フィルム2の基材フィルム1を前記前記真空蒸着装置から取り出すことを更に含む。
【0050】
上述した技術方案によれば、本発明の実施形態の製造方法は、前記基材フィルム1の表面に2層以上の無機材料蒸着層を蒸着することができるため、単層の蒸着層が厚すぎると、蒸着層が割れやすい問題を回避できる。
【0051】
なお、2層以上の無機材料蒸着層は、高い水・酸素バリア性、高い透明度、低いヘイズ値及び低い製造コストを同時に成り立たせる。尚、隣接する2層の無機材料蒸着層のそれぞれは、異なる無機金属酸化物で形成されることで、水・酸素バリア性を向上させることができる。
【0052】
図1及び
図2Cに示すように、前記工程S130は、バリア塗布液(barrier coating solution)を無機積層フィルム2に塗布することと、前記バリア塗布液を硬化することで、バリア塗布層3(barrier coating layer)を形成する。
【0053】
より具体的に説明すると、前記工程S130は、前記無機積層フィルム2の前記基材フィルム1から離れた表面にバリア塗布液を塗布することと、前記バリア塗布液を硬化すること(例えば、液体成分を除去する)で、前記バリア塗布液をバリア塗布層3として形成することと、を含む。
【0054】
なかでも、前記バリア塗布層3は単層の塗布層である。前記バリア塗布層3は、無機積層フィルム2を保護すると共に、水蒸気及び酸素をバリアする作用を果たせる。
【0055】
本実施形態において、前記バリア塗布層3の厚さは、0.5μm~2μmである。
【0056】
前記バリア塗布層3を形成するためのバリア塗布液は、樹脂材料(resin material)、架橋剤(crosslinking agent)、表面改質処理剤で処理された充填粒子、添加剤(additive)及び水溶媒(water solvent)を含む。
【0057】
前記バリア塗布液の総重量を100wt%として、前記樹脂材料の含有量は2wt%~20wt%であり、前記架橋剤の含有量は1wt%~10wt%であり、前記表面改質処理剤で処理された充填粒子の含有量は0.05wt%~40wt%であり、前記添加剤の含有量は0.05%~10wt%であり、前記水溶媒の含有量は25wt%~85wt%である。
【0058】
前記樹脂材料は、ポリエーテルアミン(polyetheramine,PEA)、エチレン-アクリル酸エチル(ethylene-ethyl acrylate,EEA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(ethylene vinyl alcohol copolymer,EVOH)及びポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol,PVA)からなる群から選択される少なくとも1つである。前記樹脂材料は、水・酸素バリア性を有する。
【0059】
前記架橋剤は、マレイン酸(maleic acid,MA)、酒石酸(tartaric acid,TAC)、トリメシルクロリド(tri-mesoly chloride,TMC)、コハク酸(succinic acid)、スベリン酸(suberic acid)、リンゴ酸(malic acid,2-ヒドロキシブタン二酸とも称す)、グリオキサール(glyoxal)、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde)及びトルエンジアルデヒド(toluene dialdehyde)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0060】
前記表面改質処理剤は、ビニルシランカップリング剤、エポキシシランカップリング剤、スチリルシランカップリング剤、メタクリロイルオキシシランカップリング剤、アクリロイルオキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、イソシアヌレートシランカップリング剤、ウレイドシランカップリング剤及びイソシアナートシランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0061】
前記充填粒子は、グラフェン(graphene)、カーボンナノチューブ(carbon nanotube)、粘土(clay)、タルク粉末(talcum powder)、雲母粉末(mica powder)、カオリナイト(kaolinite)、モンモリロナイト(montmorillonite)、酸化ケイ素(silica)、酸化アルミニウム(alumina)及び炭酸カルシウム(calcium carbonate)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0062】
前記添加剤は、レベリング剤(leveling agent)、湿潤剤(wetting agent)、消泡剤(de-foamer)、紫外線吸収剤(UV absorber)、防腐剤(preservative)及び帯電防止剤(antistatic agent)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0063】
前記水溶媒は、主成分として純水(pure water)を含むと共に、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、イソプロパノール(iopropanol)及び/又はエチレングリコール(ethylene glycol)などを選択的に含んでもよい。
【0064】
前記工程S110~工程S130で形成された基材フィルム1、無機積層フィルム2及びバリア塗布層3は共に、食品包装用バリアフィルムを構成する。
【0065】
前記食品包装用バリアフィルムは、同一の真空蒸着プロセスで形成された無機積層フィルム2(異なる無機材料蒸着層21、22を含む)を備える。無機積層フィルム2は、高い水・酸素バリア性を達成する。特筆すべきことは、異なる2層の無機材料蒸着層21、22を含むことによって、お互いの材料特性の不足を補足することができるため、異なる2層の無機材料蒸着層を採用することは、同様の2つの無機材料蒸着層を採用することより、高い水・酸素バリア性を有する。
【0066】
例えば、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層と酸化ケイ素(SiOx)蒸着層との組み合わせは、2層の酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層より高い水・酸素バリア性を有すると共に、2層の酸化ケイ素(SiOx)蒸着層より高い水・酸素バリア性を有する。
【0067】
前記食品包装用バリアフィルムは、1cc/m2・day・atm以下の酸素透過率(oxygen transmission rate,OTR)、及び1g/m2・day・atm以下の水気透過率(water vapor transmission rate,WVTR)を有する。尚、前記食品包装用バリアフィルムは、90%以上の可視光透過率(visible light transmittance)及び3%以下のヘイズ値(haze value)を有する。
【0068】
前記食品包装用バリアフィルムは、前記無機材料蒸着層21、22を保護するための、無機材料蒸着層に形成された単層バリア塗布層3を備える。また、前記バリア塗布層3も、ある程度の水・酸素バリア性を有する。
【0069】
本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法は、低い塗布工程のコスト、及び高い水・酸素バリア性…などの利点を有する。本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムは、高い透明性、低いヘイズ値及び優れた水・酸素バリア性を有することによって、バリアフィルムの応用性を向上することができる。例えば、消費者が食品包装の内容物を見える。
【0070】
[食品包装用バリアフィルム]
ここまで本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法を説明したが、以下にて本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムを説明する。
【0071】
図2Cに示すように、前記食品包装用バリアフィルムは、基材フィルム1と、無機積層フィルム2と、バリア塗布層3とを備える。
【0072】
前記無機積層フィルム2は、前記基材フィルム1の表面に形成されると共に、お互いに積層した第1の無機材料蒸着層21と第2の無機材料蒸着層22とを少なくとも備える。前記第1の無機材料蒸着層21及び第2の無機材料蒸着層22は、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま形成される。また、前記第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層のそれぞれは、異なる無機金属酸化物で形成される。前記バリア塗布層3は、前記無機積層フィルム2にバリア塗布液を塗布し、前記バリア塗布液を硬化することで形成される。
【0073】
前記食品包装用バリアフィルムは、1cc/m2・day・atm以下の酸素透過率(oxygen transmission rate,OTR)、及び1g/m2・day・atm以下の水気透過率(water vapor transmission rate,WVTR)を有する。尚、前記食品包装用バリアフィルムは、90%以上の可視光透過率(visible light transmittance)及び3%以下のヘイズ値(haze value)を有する。
【0074】
特筆すべきことは、前記食品包装用バリアフィルムは、無延伸のポリプロピレンフィルム(non-stretched polypropylene film,CPPフィルム)に貼り合わせて、食品包装材を形成することとして好適である。
【0075】
より具体的に説明すると、前記食品包装用バリアフィルムの基材フィルム1(例えば、PETフィルム)は、外部環境と向き合う。無延伸のポリプロピレンフィルムに貼り合わせるための前記食品包装用バリアフィルムのバリア塗布層3は、包装材の内側に面するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0076】
更に説明すると、前記基材フィルム1はポリエステルフィルムであり、また、前記基材フィルムの厚さは5μm~300μmであり、前記第1の無機材料蒸着層21の厚さは1nm~100nmであり、前記第2の無機材料蒸着層22の厚さは1nm~100nmである。前記バリア塗布層3の厚さは、0.5μm~2μmである。
【0077】
本発明の一つの実施形態において、前記無機金属酸化物は透明性を有し、また、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化ケイ素(SiOx)、酸化コバルト(CoOx)、窒化ケイ素(SiNx)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化インジウムスズ(ITO)及び五酸化タンタル(Ta2O5)からなる群から選択される少なくとも1つである。好ましくは、前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム(AlOx)及び酸化ケイ素(SiOx)からなる群から選択される少なくとも1つであり、前記第1の無機材料蒸着層は酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、前記第2の無機材料蒸着層は酸化ケイ素(SiOx)蒸着層である。
【0078】
本発明の一つの実施形態において、前記バリア塗布液は、樹脂材料、架橋剤、表面改質処理剤で処理された充填粒子、添加剤及び水溶媒を含み、前記バリア塗布液の総重量を100wt%として、前記樹脂材料の含有量は2wt%~20wt%であり、前記架橋剤の含有量は1wt%~10wt%であり、前記表面改質処理剤で処理された充填粒子は0.05wt%~40wt%であり、前記添加剤の含有量は0.05%~10wt%であり、前記水溶媒の含有量は25wt%~85wt%である。
【0079】
[実験データの測定]
以下、実施例1~5及び比較例1~4により、本発明の内容を詳しく説明するが、それらの実施例は、本発明を理解するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0080】
実施例1:食品包装用バリアフィルムは、上述した実施形態の製造方法で製造された。その中、基材フィルムは、PETフィルムを使用し、その厚さは、下表1に示すとおりである。無機積層フィルムは、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層である第1の無機材料蒸着層及び酸化ケイ素(SiOx)蒸着層である第2の無機材料蒸着層を含み、酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層の厚さ及び酸化ケイ素(SiOx)蒸着層の厚さについて、下表1に示すとおりである。バリア塗布層を形成するためのバリア塗布液は、水溶媒、充填粒子(タルク粉末及び雲母粉末)、樹脂材料(EVOH及びPVA)、架橋剤(マレイン酸及びグルタルアルデヒド)、及び添加剤(湿潤剤、消泡剤、紫外線吸収剤及び防腐剤)を含む。バリア塗布液での各成分の含有量(wt%)について、下表1に示すとおりである。実施例1に係るバリアフィルムの物性測定結果について、下表1に示すとおりである。なかでも、バリアフィルムの可視光透過率は92%であり、バリアフィルムのヘイズ値は2.2%であり、バリアフィルムの水気透過率(WVTR)は0.087g/m2・day・atmであり、バリアフィルムの酸素透過率(OTR)は0.075cc/m2・day・atmである。実施例2~5で使用した材料は、前記実施例1と同様である。それらの相違点は、AlOx蒸着層の厚さ、SiOx蒸着層の厚さ,及びバリア塗布液の配合であった。
【0081】
実施例1~5に係る食品包装用バリアフィルムはいずれも、1cc/m2・day.atm以下の酸素透過率(OTR)、1g/m2・day・atm以下の水気透過率(WVTR)、90%以上の可視光透過率、3%以下のヘイズ値を有した。
【0082】
比較例1~4と前記実施例1~5との相違点について、比較例1~4は、第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層を同時に含む積層構造を有しないか、若しくは、バリア塗布層を有しなかった。比較例1~4の酸素透過率(OTR)及び水気透過率(WVTR)はいずれも、実施例1~5より高いため、理想な水・酸素バリア性を有しなかった。
【0083】
【0084】
[実施形態による有利な効果]
本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムの製造方法は、低い損失及び低い塗布工程のコストを有する。本発明の実施形態に係る食品包装用バリアフィルムは、高い透明性、低いヘイズ値及び優れた水・酸素バリア性を有することによって、バリアフィルムの応用性を向上することができる。例えば、消費者が食品包装の内容物を見える。
【0085】
更に説明すると、無機積層フィルムの第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層は、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま形成されるため、第1の無機材料蒸着層と第2の無機材料蒸着層との接合面はより緻密となり、より優れた接着力を有することによって、無機積層フィルムの水・酸素バリア性を向上させることができる。逆に説明すると、第1の無機材料蒸着層を形成した後に真空を破ると、第1の無機材料蒸着層の表面は、空気と接触することで変質することがあるため、第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層との接着力が悪化して、無機積層フィルムの水・酸素バリア性が低下となる。
【0086】
更に説明すると、無機積層フィルムの第1の無機材料蒸着層及び第2の無機材料蒸着層は、同一の真空蒸着プロセスで、真空が維持されたまま形成されるため、バリアフィルムの製造コストを効果的に低減させることができる。
【0087】
更に説明すると、無機積層フィルムは、異なる2種の無機材料蒸着層で構成され、異なる2種の無機材料蒸着層の特性がお互いに補足するため、より優れた水・酸素バリア性を果たせる。
【0088】
更に説明すると、第1の無機材料蒸着層は酸化アルミニウム(AlOx)蒸着層であり、第2の無機材料蒸着層は酸化ケイ素(SiOx)蒸着層であり、第1の無機材料蒸着層の材料硬さは、第2の無機材料蒸着層の材料硬さより高い。即ち、第2の無機材料蒸着層は、第1の無機材料蒸着層より柔らかい。よって、食品包装用バリアフィルムを曲げると、第2の無機材料蒸着層は、第1の無機材料蒸着層の応力を緩衝して、破ることを回避することができる。
【0089】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1…基材フィルム
2…無機積層フィルム
21…第1の無機材料蒸着層
22…第2の無機材料蒸着層
3…バリア塗布層
100…真空蒸着装置
H1…第1の熱源
H2…第2の熱源
C1…第1のタングステンボート
C2…第2のタングステンボート
S…ボート
P…シャッター
ER…蒸発室
V…真空ポンプ
R…ロータリースイッチング