(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005390
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】モータ制御装置および電動ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
H02P 29/024 20160101AFI20230111BHJP
H02P 29/40 20160101ALI20230111BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P29/40
F04B49/06 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107256
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】白井 康弘
【テーマコード(参考)】
3H145
5H501
【Fターム(参考)】
3H145AA12
3H145AA42
3H145BA28
3H145BA42
3H145CA21
3H145CA29
3H145DA05
3H145EA34
5H501AA05
5H501AA20
5H501CC04
5H501DD04
5H501DD08
5H501GG03
5H501HA08
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501KK06
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL51
5H501MM09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電動ポンプに異質流体吸入異常が生じたことを検知可能なモータ制御装置及び電動ポンプ装置を提供する。
【解決手段】電動ポンプ40のモータ20を制御するモータ制御装置10であって、前記モータに駆動電流を供給する駆動部11と、回転数指令値に基づいて前記駆動部を制御することにより前記モータの回転数を制御する制御部13と、前記モータに供給される前記駆動電流を検出し、前記駆動電流の検出結果を示す電流検出値を前記制御部に供給する電流検出部12と、を備え、前記制御部は、前記回転数指令値が第1指令値から第2指令値に変化した第1タイミングで取得した第1電流検出値と、前記第1タイミング後に取得した第2電流検出値とに基づいて、前記電動ポンプに異質流体吸入異常が生じたか否かを判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動ポンプのモータを制御するモータ制御装置であって、
前記モータに駆動電流を供給する駆動部と、
回転数指令値に基づいて前記駆動部を制御することにより前記モータの回転数を制御する制御部と、
前記モータに供給される前記駆動電流を検出し、前記駆動電流の検出結果を示す電流検出値を前記制御部に供給する電流検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記回転数指令値が第1指令値から第2指令値に変化した第1タイミングで取得した第1電流検出値と、前記第1タイミング後に取得した第2電流検出値とに基づいて、前記電動ポンプに異質流体吸入異常が生じたか否かを判断する、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1電流検出値及び前記第2電流検出値に基づいて、前記電流検出値の変化を表すパラメータを算出し、算出した前記パラメータが所定の基準範囲から外れた場合に前記電動ポンプに前記異質流体吸入異常が生じたと判断する、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電動ポンプに前記異質流体吸入異常が生じたと判断した場合に、前記駆動部を制御することにより前記モータを停止させる、
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記電動ポンプに前記異質流体吸入異常が生じたと判断し且つ前記第1電流検出値に対して前記第2電流検出値が減少した場合に、前記駆動部を制御することにより前記第1指令値に対応する回転数で前記モータを回転させる、
請求項1または2に記載のモータ制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1指令値に対応する回転数で前記モータを回転させた状態で前記電流検出値が時間経過に伴って減少する場合に前記モータを停止させる、
請求項4に記載のモータ制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1電流検出値と、前記第1タイミング後に前記モータの実回転数が所定値以上になった第2タイミングで取得した前記第2電流検出値とに基づいて、前記パラメータを算出する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1電流検出値及び前記第2電流検出値に基づいて、前記電流検出値の単位時間当たりの変化量を前記パラメータとして算出する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【請求項8】
電動ポンプと、
前記電動ポンプのモータを制御する、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
を備える、電動ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置および電動ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動機の各相の電流値を積分し、その積分値が基準値以上となった相の電流検出系統に異常が生じたと判断する電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の技術では、各相の電流値の変化が、回転数の上昇に伴って電流値が上昇するという正常時における電流値の変化から逸脱する場合に迅速に異常を検知することができず、電動ポンプの故障を招く可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のモータ制御装置における一つの態様は、電動ポンプのモータを制御するモータ制御装置であって、前記モータに駆動電流を供給する駆動部と、回転数指令値に基づいて前記駆動部を制御することにより前記モータの回転数を制御する制御部と、前記モータに供給される前記駆動電流を検出し、前記駆動電流の検出結果を示す電流検出値を前記制御部に供給する電流検出部と、を備え、前記制御部は、前記回転数指令値が第1指令値から第2指令値に変化した第1タイミングで取得した第1電流検出値と、前記第1タイミング後に取得した第2電流検出値とに基づいて、前記電動ポンプに異質流体吸入異常が生じたか否かを判断する。
【0006】
本発明の電動ポンプ装置における一つの態様は、電動ポンプと、前記電動ポンプのモータを制御する上記態様のモータ制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、電動ポンプに異質流体吸入異常が生じたことを検知可能なモータ制御装置及び電動ポンプ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態におけるモータ制御装置を備える電動ポンプ装置を模式的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は、モータが定常回転状態にあるときに制御部が実行する第1のポンプ異常診断処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、回転数指令値、実回転数及び電流検出値の時間変化の第1の例を示す図である。
【
図4】
図4は、モータが定常回転状態にあるときに制御部が実行する第2のポンプ異常診断処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、回転数指令値、実回転数及び電流検出値の時間変化の第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるモータ制御装置10を備える電動ポンプ装置100を模式的に示すブロック図である。
図1に示すように、電動ポンプ装置100は、モータ制御装置10と、電動ポンプ40と、を備える。電動ポンプ40は、モータ20と、ポンプ30と、を備える。電動ポンプ装置100は、例えばハイブリッド車両に搭載される駆動用モータに冷却オイルFを供給する装置である。
【0010】
電動ポンプ40のモータ20は、例えばインナーロータ型の三相ブラシレスDCモータである。モータ20は、シャフト21と、U相端子22uと、V相端子22vと、W相端子22wと、U相コイル23uと、V相コイル23vと、W相コイル23wと、回転角度センサ24と、を有する。
【0011】
また、
図1では図示を省略するが、モータ20は、モータハウジングと、モータハウジングに収容されたロータ及びステータとを有する。ロータは、モータハウジングの内部において、軸受け部品によって回転可能に支持される回転体である。ステータは、モータハウジングの内部において、ロータの外周面を囲った状態で固定され、ロータを回転させるのに必要な電磁力を発生させる。
【0012】
シャフト21は、ロータの径方向内側を軸方向に貫通した状態でロータと同軸接合される軸状体である。U相端子22u、V相端子22v及びW相端子22wは、それぞれモータハウジングの表面から露出する金属端子である。詳細は後述するが、U相端子22u、V相端子22v及びW相端子22wは、それぞれ、モータ制御装置10のモータ駆動回路11と電気的に接続される。U相コイル23u、V相コイル23v及びW相コイル23wは、それぞれステータに設けられた励磁コイルである。U相コイル23u、V相コイル23v及びW相コイル23wは、モータ20の内部でスター結線される。
【0013】
U相コイル23uは、U相端子22uと中性点Nとの間に電気的に接続される。V相コイル23vは、V相端子22vと中性点Nとの間に電気的に接続される。W相コイル23wは、W相端子22wと中性点Nとの間に電気的に接続される。U相コイル23u、V相コイル23v及びW相コイル23wの通電状態がモータ制御装置10によって制御されることにより、ロータを回転させるのに必要な電磁力が発生する。ロータが回転することにより、シャフト21もロータに同期して回転する。
【0014】
回転角度センサ24は、シャフト21の回転角度を検出し、その検出結果を示す回転角度信号PSをモータ制御装置10に出力する。回転角度センサ24として、例えば、ホールセンサ、インクリメンタル型エンコーダ、或いはアブソリュート型エンコーダなどを使用できる。
【0015】
ポンプ30は、モータ20のシャフト21の軸方向一方側に位置し、モータ20によってシャフト21を介して駆動されて冷却オイルFを吐出する。ポンプ30は、オイル吸入口31及びオイル吐出口32を有する。冷却オイルFは、オイル吸入口31からポンプ30の内部に吸入された後、オイル吐出口32からポンプ30の外部に吐出される。このように、ポンプ30とモータ20とがシャフト21の軸方向に隣り合って接続されることにより、電動ポンプ40が構成される。
【0016】
モータ制御装置10は、不図示の上位制御装置から出力される回転数指令信号CSと、回転角度センサ24から出力される回転角度信号PSとに基づいて、電動ポンプ40のモータ20を制御する装置である。一例として、上位制御装置は、ハイブリッド車両に搭載される車載ECU(Electronic Control Unit)である。モータ制御装置10は、モータ駆動回路11(駆動部)と、シャント抵抗器12(電流検出部)と、制御部13と、記憶部14と、を備える。
【0017】
モータ駆動回路11は、モータ20に駆動電流を供給する回路である。具体的には、モータ駆動回路11は、直流電源200から供給される直流電源電圧を三相交流電圧に変換してモータ20に出力する。これにより、モータ駆動回路11からモータ20に三相交流電流が駆動電流として供給される。一例として、直流電源200は、ハイブリッド車両に搭載されるバッテリである。
【0018】
モータ駆動回路11は、U相上側アームスイッチQUHと、V相上側アームスイッチQVHと、W相上側アームスイッチQWHと、U相下側アームスイッチQULと、V相下側アームスイッチQVLと、W相下側アームスイッチQWLと、を有する。本実施形態において各アームスイッチは、例えばNチャネル型MOS-FETである。
【0019】
U相上側アームスイッチQUHのドレイン端子、V相上側アームスイッチQVHのドレイン端子、及びW相上側アームスイッチQWHのドレイン端子は、それぞれ直流電源200の正極端子と電気的に接続される。U相下側アームスイッチQULのソース端子、V相下側アームスイッチQVLのソース端子、及びW相下側アームスイッチQWLのソース端子は、それぞれ、シャント抵抗器12を介して直流電源200の負極端子と電気的に接続される。なお、直流電源200の負極端子は車内グランドと電気的に接続される。
【0020】
U相上側アームスイッチQUHのソース端子は、モータ20のU相端子22uと、U相下側アームスイッチQULのドレイン端子とのそれぞれに電気的に接続される。V相上側アームスイッチQVHのソース端子は、モータ20のV相端子22vと、V相下側アームスイッチQVLのドレイン端子とのそれぞれに電気的に接続される。W相上側アームスイッチQWHのソース端子は、モータ20のW相端子22wと、W相下側アームスイッチQWLのドレイン端子とのそれぞれに電気的に接続される。
【0021】
U相上側アームスイッチQUHのゲート端子、V相上側アームスイッチQVHのゲート端子、及びW相上側アームスイッチQWHのゲート端子は、それぞれ制御部13と電気的に接続される。また、U相下側アームスイッチQULのゲート端子、V相下側アームスイッチQVLのゲート端子、及びW相下側アームスイッチQWLのゲート端子も、それぞれ制御部13と電気的に接続される。
【0022】
上記のように、モータ駆動回路11は、3つの上側アームスイッチと3つの下側アームスイッチとを有する3相フルブリッジ回路によって構成されたインバータである。このように構成されたモータ駆動回路11は、制御部13によって各アームスイッチがスイッチング制御されることにより、直流電源200から供給される直流電源電圧を三相交流電圧に変換してモータ20に出力する。これにより、モータ駆動回路11からモータ20に三相交流電流が駆動電流として供給される。
【0023】
シャント抵抗器12は、モータ20に供給される駆動電流を検出し、駆動電流の検出結果を示す電流検出値Idを制御部13に供給する。シャント抵抗器12の一端は、U相下側アームスイッチQUL、V相下側アームスイッチQVL、及びW相下側アームスイッチQWLのソース端子のそれぞれと電気的に接続される。シャント抵抗器12の他端は、直流電源200の負極端子と電気的に接続される。さらに、シャント抵抗器12の一端は、制御部13と電気的に接続される。モータ20に供給される駆動電流は、シャント抵抗器12を介して車内グランドに流れ込む。従って、シャント抵抗器12の端子間には、駆動電流に比例する電圧が現れる。このようなシャント抵抗器12の端子間電圧が、駆動電流の検出結果を示す電流検出値Idとして制御部13に供給される。なお、必要に応じて、シャント抵抗器12の一端と制御部13との間に抵抗分圧回路を設けてもよい。
【0024】
制御部13は、例えばMCU(Microcontroller Unit)などのマイクロプロセッサである。制御部13には、不図示の上位制御装置から出力される回転数指令信号CSと、回転角度センサ24から出力される回転角度信号PSとが入力される。制御部13は、不図示の通信バスを介して記憶部14と通信可能に接続される。制御部13は、記憶部14に予め記憶されるプログラムに従って、少なくとも以下で説明するモータ制御処理とポンプ異常診断処理とを実行する。
【0025】
モータ制御処理において、制御部13は、回転角度信号PSからモータ20の実回転数Rmを算出し、回転数指令信号CSによって指示される回転数指令値Rcと実回転数Rmとに基づいてモータ駆動回路11を制御することにより、モータ20の回転数を制御する。具体的には、制御部13は、モータ20の実回転数Rmを回転数指令値Rcに一致させるために必要な各アームスイッチのスイッチングデューティ比を決定し、決定したスイッチングデューティ比で各アームスイッチのスイッチング制御を行う。その結果、モータ20の実回転数Rmを回転数指令値Rcに一致させる三相交流電圧がモータ駆動回路11からモータ20に供給される。
【0026】
ポンプ異常診断処理において、制御部13は、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化した第1タイミングで取得した第1電流検出値と、第1タイミング後に取得した第2電流検出値とに基づいて、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたか否かを判断する。異質流体吸入異常とは、冷却オイルFと異なる性質を有する流体(異質流体)がポンプ30に吸入されることである。異質流体は、例えば空気、水、或いはガスなどの流体である。
【0027】
記憶部14は、制御部13に各種処理を実行させるのに必要なプログラムおよび各種設定データなどを記憶する不揮発性メモリと、制御部13が各種処理を実行する際にデータの一時保存先として使用される揮発性メモリとを含む。不揮発性メモリは、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)又はフラッシュメモリなどである。揮発性メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)などである。
図1に示すように、記憶部14は、制御部13の外部に設けられてもよいし、或いは制御部13に内蔵されていてもよい。
【0028】
以下、制御部13が実行するポンプ異常診断処理について詳細に説明する。
初めに、
図2及び
図3を参照しながら、ポンプ異常診断処理の第1の例である第1のポンプ異常診断処理について説明する。
図2は、制御部13が実行する第1のポンプ異常診断処理を示すフローチャートである。制御部13は、モータ20が定常回転状態にあるときに第1のポンプ異常診断処理を実行する。定常回転状態とは、モータ20が回転数指令値Rcと同じ回転数で回転し続ける状態である。言い換えれば、定常回転状態とは、モータ20の実回転数Rmが回転数指令値Rcと一致する状態である。
【0029】
例えば
図3において、時刻t0から時刻t1までの期間が、モータ20が定常回転状態にある期間である。以下の説明において、時刻t0から時刻t1までの期間を定常回転期間と呼称する場合がある。定常回転期間において、モータ20の実回転数Rmが第1指令値Rc1と一致する。第1指令値Rc1とは、モータ20が定常回転状態にあるときの回転数指令値Rcである。
図3に示す例では、第1指令値Rc1は1000rpmであり、定常回転期間におけるモータ20の実回転数Rmも1000rpmである。
図3に示すように、定常回転期間において、シャント抵抗器12から制御部13に供給される電流検出値Idは一定となる。
【0030】
制御部13は、第1のポンプ異常診断処理と並行して、電流検出値Idの移動平均演算を実行する。移動平均演算において、制御部13は、シャント抵抗器12から供給される電流検出値Id、すなわちシャント抵抗器12の端子間電圧を第1の時間間隔でサンプリングすることにより、電流検出値Idの時系列データを取得する。制御部13は、電流検出値Idの時系列データに基づいて電流検出値Idの移動平均値を算出し、算出された移動平均値のうち第2の時間間隔で算出された移動平均値を注目電流検出値として取得する。第2の時間間隔は、第1の時間間隔よりも長い。一例として、第1の時間間隔は50μsであり、第2の時間間隔は300msである。制御部13は、上記のような電流検出値Idの移動平均演算によって第2の時間間隔で得られる注目電流検出値を記憶部14に逐次的に保存する。
【0031】
図2に示すように、制御部13は、モータ20が定常回転状態にあるときに第1のポンプ異常診断処理を開始すると、まず、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化したか否かを判定する(ステップS1)。第2指令値Rc2は、第1指令値Rc1よりも所定値以上大きい値である。一例として、第2指令値Rc2は、第1指令値Rc1よりも100rpm以上大きい値である。すなわち、ステップS1において、制御部13は、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に上昇したか否かを判定する。
【0032】
ステップS1において「No」の場合、すなわち回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化しない場合、制御部13は、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化するまで、ステップS1の処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0033】
一方、ステップS1において「Yes」の場合、すなわち回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化した場合、制御部13は、回転数指令値Rcが変化した第1タイミングで記憶部14から最新の注目電流検出値を第1電流検出値として取得する(ステップS2)。
【0034】
図3に示す例では、時刻t1に回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化(上昇)したと仮定する。一例として、第2指令値Rc2は2000rpmである。この場合、制御部13は、時刻t1(第1タイミング)において記憶部14から最新の注目電流検出値を第1電流検出値I1として取得する。
【0035】
続いて、制御部13は、第1タイミング後にモータ20の実回転数Rmが所定値以上になった第2タイミングで記憶部14から最新の注目電流検出値を第2電流検出値として取得する(ステップS3)。
図3に示す例では、時刻t2にモータ20の実回転数Rmが所定値Rm1以上になったと仮定する。一例として、所定値Rm1は第1指令値Rc1と第2指令値Rc2との間の中心値(1500rpm)である。この場合、制御部13は、時刻t2(第2タイミング)において記憶部14から最新の注目電流検出値を第2電流検出値I2として取得する。
【0036】
図3に示すように、時刻t1に回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化すると、制御部13が第1のポンプ異常診断処理と並行してモータ制御処理を実行することにより、モータ20の実回転数Rmが第2指令値Rc2に向かって上昇し始める。電動ポンプ40が正常である場合、モータ20の実回転数Rmが第2指令値Rc2に向かって上昇するのに伴って、電流検出値Idも第1タイミングである時刻t1を起点として上昇する。
図3において、I2aは、電動ポンプ40が正常である場合に時刻t2(第2タイミング)に得られる第2電流検出値である。第2電流検出値I2aは、基準範囲NR内に位置する。基準範囲NRは、電動ポンプ40が正常である場合に、第1タイミングを起点として上昇する電流検出値Idの軌跡が通る領域である。
【0037】
図3において、I2b、I2c、及びI2dは、それぞれ、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じた場合に時刻t2(第2タイミング)に得られる第2電流検出値である。例えば、モータ20の負荷を上昇させる異質流体が電動ポンプ40に吸入された場合、正常時と同様に、電流検出値Idは第1タイミングである時刻t1を起点として上昇するが、正常時よりも負荷が大きくなるため、電流検出値Idの上昇軌跡は基準範囲NRから上側に外れた領域を通る。I2bは、モータ20の負荷を上昇させる異質流体が電動ポンプ40に吸入された場合に、時刻t2(第2タイミング)に得られる第2電流検出値である。
【0038】
例えば、モータ20の負荷を低下させる比較的少量の異質流体が電動ポンプ40に吸入された場合、正常時と同様に、電流検出値Idは第1タイミングである時刻t1を起点として上昇するが、正常時よりも負荷が小さくなるため、電流検出値Idの上昇軌跡は基準範囲NRから下側に外れた領域を通る。I2cは、モータ20の負荷を低下させる比較的少量の異質流体が電動ポンプ40に吸入された場合に、時刻t2(第2タイミング)に得られる第2電流検出値である。
【0039】
例えば、モータ20の負荷を低下させる比較的多量の異質流体(とくに空気など)が電動ポンプ40に吸入された場合、電動ポンプ40への冷却オイルFの供給不足が生じることに起因して正常時よりも負荷が非常に小さくなるため、実回転数Rmの上昇に反比例して、電流検出値Idは第1タイミングである時刻t1を起点として下降する。この場合の電流検出値Idの下降軌跡は基準範囲NRから下側に外れた領域を通る。I2dは、モータ20の負荷を低下させる比較的多量の異質流体が電動ポンプ40に吸入された場合に、時刻t2(第2タイミング)に得られる第2電流検出値である。
【0040】
図3に示されるように、第1タイミングで得られる第1電流検出値I1と、第2タイミングで得られる第2電流検出値I2とに基づいて、電流検出値Idの変化を表すパラメータを算出し、算出したパラメータが所定の基準範囲NRから外れたか否かを判定することにより、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたか否かを判定することができる。本実施形態では、制御部13は、電流検出値Idの変化を表すパラメータとして、電流検出値Idの単位時間当たりの変化量ΔIdを算出し、変化量ΔIdが基準範囲NRから外れたか否かを判定することにより、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたか否かを判定する。以下、
図2に戻って説明を続ける。
【0041】
制御部13は、ステップS2で取得した第1電流検出値I1と、ステップS3で取得した第2電流検出値I2とに基づいて、第1タイミング以降における電流検出値Idの単位時間当たりの変化量ΔIdを算出し、算出した変化量ΔIdが基準範囲NRから外れたか否かを判定する(ステップS4)。第1タイミングである時刻t1以降における電流検出値Idの単位時間当たりの変化量ΔIdは、下式(1)で表される。以下の説明において、下式(1)で表される変化量ΔIdを電流変化量と呼称する場合がある。なお、下式(1)において、時刻t2は、モータ20の実回転数Rmが所定値Rm1以上になった第2タイミングである。
ΔId=(I2-I1)/(t2-t1) …(1)
【0042】
基準範囲NRは、電動ポンプ40が正常である場合に電流変化量ΔIdが取り得る最小値及び最大値によって定義される。電動ポンプ40が正常である場合における電流変化量ΔIdの最小値及び最大値は、事前に実験或いはシミュレーション等によって決定され、予め記憶部14に記憶される。すなわち、ステップS4において、制御部13は、記憶部14から電流変化量ΔIdの最小値及び最大値を読み出し、算出した電流変化量ΔIdが最小値から最大値までの範囲内に含まれていない場合に、電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れたと判断する。
【0043】
ステップS4において「No」の場合、すなわち電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れなかった場合、電動ポンプ40は正常であると推定される。この場合、制御部13は第1のポンプ異常診断処理を終了する。
【0044】
一方、ステップS4において「Yes」の場合、すなわち電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れた場合、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと推定される。この場合、制御部13は、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判断し、上位制御装置に対して、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたことを知らせるための異質流体吸入エラー通知を送信するとともに、電動ポンプ40を停止させることを知らせるための電動ポンプ停止通知を送信する(ステップS5)。
【0045】
そして、制御部13は、上位制御装置に異質流体吸入エラー通知及び電動ポンプ停止通知を送信した後、モータ駆動回路11を制御することにより、電動ポンプ40のモータ20を停止させる(ステップS6)。
【0046】
上記のように、モータ20が定常回転状態にあるときに、制御部13が第1のポンプ異常診断処理を実行することにより、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたことを検知できる。また、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じた場合に、電動ポンプ40のモータ20を停止させることにより、電動ポンプ40における発熱、摩耗及び焼き付き等を未然に防止できる。
【0047】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、ポンプ異常診断処理の第2の例である第2のポンプ異常診断処理について説明する。
図4は、制御部13が実行する第2のポンプ異常診断処理を示すフローチャートである。制御部13は、モータ20が定常回転状態にあるときに第2のポンプ異常診断処理を実行する。
【0048】
例えば
図5において、時刻t10から時刻t11までの期間が、モータ20が定常回転状態にある定常回転期間である。定常回転期間において、モータ20の実回転数Rmが第1指令値Rc1と一致する。
図5に示す例では、第1指令値Rc1は1000rpmであり、定常回転期間におけるモータ20の実回転数Rmも1000rpmである。
図5に示すように、定常回転期間において、シャント抵抗器12から制御部13に供給される電流検出値Idは一定となる。制御部13は、第2のポンプ異常診断処理と並行して、電流検出値Idの移動平均演算を実行する。
【0049】
図4に示すように、制御部13は、モータ20が定常回転状態にあるときに第2のポンプ異常診断処理を開始すると、まず、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化したか否かを判定する(ステップS11)。第2指令値Rc2は、第1指令値Rc1よりも所定値以上大きい値である。すなわち、ステップS11において、制御部13は、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に上昇したか否かを判定する。
【0050】
ステップS11において「No」の場合、すなわち回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化しない場合、制御部13は、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化するまで、ステップS11の処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0051】
一方、ステップS11において「Yes」の場合、すなわち回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化した場合、制御部13は、回転数指令値Rcが変化した第1タイミングで記憶部14から最新の注目電流検出値を第1電流検出値I1として取得する(ステップS12)。
【0052】
図5に示す例では、時刻t11に回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化(上昇)したと仮定する。一例として、第2指令値Rc2は2000rpmである。この場合、制御部13は、時刻t11(第1タイミング)において記憶部14から最新の注目電流検出値を第1電流検出値I1として取得する。
【0053】
続いて、制御部13は、第1タイミング後にモータ20の実回転数Rmが所定値以上になった第2タイミングで記憶部14から最新の注目電流検出値を第2電流検出値I2として取得する(ステップS13)。
【0054】
続いて、制御部13は、ステップS12で取得した第1電流検出値I1と、ステップS13で取得した第2電流検出値I2とに基づいて、第1タイミング以降における電流検出値Idの単位時間当たりの電流変化量ΔIdを算出し、算出した電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れ、且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少したか否かを判定する(ステップS14)。
【0055】
ステップS14において「No」の場合、すなわち電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れず、且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少しなかった場合、電動ポンプ40は正常であると推定される。この場合、制御部13は第2のポンプ異常診断処理を終了する。なお、制御部13は、電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れ、且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少しなかった場合には、第1のポンプ異常診断処理のステップS5及びS6と同じ処理を実行した後、第2のポンプ異常診断処理を終了する。
【0056】
一方、ステップS14において「Yes」の場合、すなわち電流変化量ΔIdが基準範囲NRから外れ、且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少した場合、モータ20の負荷を低下させる比較的多量の異質流体(とくに空気など)が電動ポンプ40に吸入されたと推定される。この場合、制御部13は、電動ポンプ40に異質流体吸入異常に起因するオイル供給不足が生じたと判断し、上位制御装置に対して、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたことを知らせるための異質流体吸入エラー通知を送信するとともに、モータ20の低回転制御を開始することを知らせるための低回転制御開始通知を送信する(ステップS15)。
【0057】
制御部13は、上位制御装置に異質流体吸入エラー通知及び低回転制御開始通知を送信した後、モータ駆動回路11を制御することにより、第1指令値Rc1に対応する回転数でモータ20を回転させる低回転制御を開始する(ステップS16)。
図5に示す例において、制御部13は、時刻t12から低回転制御を開始したと仮定する。以下では、制御部13が低回転制御を開始したタイミングを、低回転制御開始タイミングと呼称する場合がある。このように、制御部13は、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判断し且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少した場合に、モータ駆動回路11を制御することにより第1指令値Rc1に対応する回転数でモータ20を回転させる。
【0058】
図5に示すように、時刻t12から制御部13が低回転制御を開始すると、モータ20の実回転数Rmは、時刻t12を起点として第1指令値Rc1に向かって下降し始める。電動ポンプ40の異常の原因が異質流体の吸入のみである場合、モータ20の回転数を低下させることにより、ポンプ30への冷却オイルFの供給が改善され、ポンプ30への冷却オイルFの供給不足が解消され始める。その結果、時刻t12を起点としてモータ20の負荷が上昇するため、電流検出値Idも低回転制御開始タイミングである時刻t12を起点として上昇する。そして、モータ20の実回転数Rmが第1指令値Rc1に一致する時刻t14において、ポンプ30への冷却オイルFの供給不足が完全に解消されると、電流検出値Idは、指令変化タイミングである時刻t11以前の値に戻る。
【0059】
一方、
図5に示すように、電動ポンプ40の異常の原因にオイル漏れが含まれている場合、上記と同様に、電流検出値Idは低回転制御開始タイミングである時刻t12を起点として上昇するが、指令変化タイミングである時刻t11以前の値まで戻らず、モータ20の実回転数Rmが第1指令値Rc1に一致する時刻t14よりも前の時刻t13を起点として電流検出値Idは時間経過に伴って減少する。従って、低回転制御開始タイミング後の電流検出値Idの変化に基づいて、電流検出値Idが指令変化タイミング以前の値に戻らないまま時間経過に伴って減少したか否かを判定することにより、電動ポンプ40を含む冷却オイルFの配送経路にオイル漏れが生じたか否かを判定することができる。
【0060】
制御部13は、低回転制御開始タイミング後に得られた注目電流検出値のうち最新値を監視電流検出値として記憶部14から読み出す(ステップS17)。なお、ステップS17の実行時に、監視電流検出値として読み出されるべき注目電流検出値が記憶部14に保存されていない場合、制御部13は、監視電流検出値として読み出されるべき注目電流検出値が記憶部14に保存されるまで、ステップS17の処理を実行することを保留してもよい。
【0061】
続いて、制御部13は、監視電流検出値の変化に基づいて、電流検出値Idが指令変化タイミング以前の値に戻らないまま時間経過に伴って減少したか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18において「No」の場合、制御部13はステップS17の処理に戻る。制御部13は、ステップS17に戻って監視電流検出値を最新の値に更新した後、再び、ステップS18に移行して監視電流検出値の変化に基づいて、電流検出値Idが指令変化タイミング以前の値に戻らないまま時間経過に伴って減少したか否かを判定する。これにより、低回転制御開始タイミング後における電流検出値Idの変化が制御部13によって監視される。
【0062】
一方、ステップS18において「Yes」の場合、すなわち電流検出値Idが指令変化タイミング以前の値に戻らないまま時間経過に伴って減少した場合、電動ポンプ40を含む冷却オイルFの配送経路にオイル漏れが生じたと推定される。この場合、制御部13は、オイル漏れが生じたと判断し、上位制御装置に対して、オイル漏れが生じたことを知らせるためのオイル漏れエラー通知を送信するとともに、電動ポンプ40を停止させることを知らせるための電動ポンプ停止通知を送信する(ステップS19)。
【0063】
そして、制御部13は、上位制御装置にオイル漏れエラー通知及び電動ポンプ停止通知を送信した後、モータ駆動回路11を制御することにより、電動ポンプ40のモータ20を停止させる(ステップS20)。
【0064】
上記のように、モータ20が定常回転状態にあるときに、制御部13が第2のポンプ異常診断処理を実行することにより、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたことを検知できる。また、第2のポンプ異常診断処理では、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じ且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少した場合に、モータ20を停止させずに、第1指令値Rc1に対応する回転数でモータ20を低回転制御する。これにより、電動ポンプ40の異常の原因がとくに空気などの異質流体の吸入のみである場合、ポンプ30への冷却オイルFの供給が改善され、ポンプ30への冷却オイルFの供給不足が解消される。その結果、電動ポンプ40を停止させることなく継続的に作動させることができる。ただし、低回転制御開始タイミング以降、電流検出値Idが指令変化タイミング以前の値に戻らないまま時間経過に伴って減少した場合、すなわち電動ポンプ40を含む冷却オイルFの配送経路にオイル漏れが生じたと推定される場合には、モータ20を停止させることにより、電動ポンプ40における発熱、摩耗及び焼き付き等を未然に防止できる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態において制御部13は、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化した第1タイミングで取得した第1電流検出値I1と、第1タイミング後に取得した第2電流検出値I2とに基づいて、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたか否かを判断する。
このような本実施形態によれば、回転数が変化したときに生じる電流検出値の変化に基づいて、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたことを検知することが可能である。
【0066】
本実施形態において制御部13は、第1電流検出値I1及び第2電流検出値I2に基づいて、電流検出値Idの変化を表すパラメータを算出し、算出したパラメータが所定の基準範囲NRから外れた場合に電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判断する。
電動ポンプ40が正常な場合、回転数指令値Rcが第1指令値Rc1から第2指令値Rc2に変化した第1タイミングを起点として電流検出値Idは所定の基準範囲NRを通って上昇するはずであるが、電動ポンプ40に異質流体が吸入された場合には、第1タイミングを起点とする電流検出値Idの軌跡は基準範囲NRから外れた領域を通る。従って、電流検出値Idの変化を表すパラメータが所定の基準範囲NRから外れれば、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判断できる。
【0067】
本実施形態において制御部13は、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判断した場合に、モータ駆動回路11を制御することによりモータ20を停止させる。
このように、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じた場合には、電動ポンプ40のモータ20を停止させることにより、電動ポンプ40における発熱、摩耗及び焼き付き等を未然に防止できる。
【0068】
本実施形態において制御部13は、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判断し且つ第1電流検出値I1に対して第2電流検出値I2が減少した場合に、モータ駆動回路11を制御することにより第1指令値Rc1に対応する回転数でモータ20を回転させる。
これにより、電動ポンプ40の異常の原因がとくに空気などの異質流体の吸入のみである場合には、ポンプ30への冷却オイルFの供給が改善され、ポンプ30への冷却オイルFの供給不足が解消される。その結果、電動ポンプ40を停止させることなく継続的に作動させることができる。
【0069】
本実施形態において制御部13は、第1指令値Rc1に対応する回転数でモータ20を回転させた状態で電流検出値が時間経過に伴って減少する場合モータ20を停止させる。
このように、低回転制御開始タイミング以降、電流検出値が指令変化タイミング以前の値に戻らないまま時間経過に伴って減少した場合、すなわちオイル漏れが生じたと推定される場合にはモータ20を停止させることにより、電動ポンプ40における発熱、摩耗及び焼き付き等を未然に防止できる。
【0070】
本実施形態において制御部13は、第1電流検出値I1と、第1タイミング後にモータ20の実回転数Rmが所定値以上になった第2タイミングで取得した第2電流検出値I2とに基づいて上記のパラメータを算出する。
これにより、回転数指令値Rcの変化に対してモータ20の実回転数Rmが正しく追従していることが明らかになる第2タイミングで第2電流検出値I2が取得されるので、電流検出値Idの変化を表すパラメータをより正確に算出できる。
【0071】
本実施形態において制御部13は、第1電流検出値I1及び第2電流検出値I2に基づいて、電流検出値Idの単位時間当たりの変化量ΔIdを上記のパラメータとして算出する。
これにより、電流検出値Idの単位時間当たりの変化量ΔIdが基準範囲NRから外れた場合に、電動ポンプ40に異質流体吸入異常が生じたと判定できる。
【0072】
〔変形例〕
本発明は上記実施形態に限定されず、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
上記実施形態では、第1電流検出値I1及び第2電流検出値I2に基づいて、電流検出値Idの単位時間当たりの変化量ΔIdをパラメータとして算出する形態を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1電流検出値I1と第2電流検出値I2との偏差(=I2-I1)を、電流検出値Idの変化を表すパラメータとして算出してもよい。
上記実施形態では、回転角度センサから得られる回転位置情報を基にモータを制御する形態を例示したが、例えばモータの逆起電圧などから得られる回転位置情報を基にモータを制御するセンサレス制御方式を採用してもよい。
上記実施形態では、本発明の電動ポンプ装置として、ハイブリッド車両に搭載される駆動用モータに冷却オイルFを供給する電動ポンプ装置100を例示したが、本発明の電動ポンプ装置はこれに限定されず、例えばトランスミッションにオイルを供給する電動ポンプ装置などにも本発明を適用するこができる。また、電動ポンプから吐出される流体は冷却オイル等のオイルに限定されない。
【符号の説明】
【0073】
10…モータ制御装置、11…モータ駆動回路(駆動部)、12…シャント抵抗器(電流検出部)、13…制御部、14…記憶部、20…モータ、30…ポンプ、40…電動ポンプ、100…電動ポンプ装置、200…直流電源、F…冷却オイル