(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053903
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】組織処置用装置および電極位置決め方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022146155
(22)【出願日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】21200514
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ケラー
(72)【発明者】
【氏名】カトリン・ハーン
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・ザイツ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK13
4C160KK38
4C160KK63
4C160KL03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】処置対象の組織内に器具を位置決めする間、処置者を支援する電気外科装置を提供する。
【解決手段】器具14は、肺腫瘍および他の組織の処置に適しており、それぞれの機器15は、2つのパラメータ、特にそれらの経時変化を観察することによって、適切な標的組織11内における器具およびその2つの電極の正確な位置決めを検出する。2つのパラメータの変化が、それぞれ規定された閾値を超えた場合、器具と、処置対象の組織との接触、ひいては所望の位置への器具の位置決めも、変化から導き出すことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織(11)を電熱処置する電気外科装置(10)であって、
第1電極(19)と、前記第1電極(19)に対して近位方向の距離をとって配置された少なくとも1つの第2電極(20)とを有する本体(18)を含み、生体組織に刺入することができ、前記第1電極(19)および前記少なくとも1つの第2電極(20)には、高周波テスト電圧(UT)および高周波処置電圧(UHF)を供給することができる器具(14)と、
前記器具(14)の前記電極(19、20)に前記テスト電圧(UT)を供給し、それによって生じる電流(i)を検出する電気外科ジェネレータ(23)を含む機器(15)と、
前記テスト電圧(UT)および前記電流(i)から、前記電極(19、20)間の有効インピーダンス(Imp)に依存する第1パラメータ(G1)と、前記テスト電圧(UT)と前記電流(i)との位相角(phi)に依存する第2パラメータ(G2)とを決定する制御装置(24)とを備え、
前記制御装置(24)は、さらに、
a)前記第1パラメータ(G1)の第1変化(V1)が第1閾値(S1)を超えているか、および
b)前記第2パラメータ(G2)の第2変化(V2)が第2閾値(S2)を超えているか
を決定する
電気外科装置。
【請求項2】
前記第1変化(V1)および前記第2変化(V2)は、それぞれ異なる時点で測定された前記パラメータ(G1、G2)の変化である
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1パラメータ(G1)が、時間間隔(Δt)によって互いに対して規定された異なる時点(t1、t2)において決定されることから、前記第1変化(V1)を決定し、前記第1変化(V1)は、前記異なる時点(t1、t2)において決定された前記第1パラメータ(G1)の差から決定される
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記パラメータ(G1、G2)を、それぞれ複数の後続測定値からの平均として決定する
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記制御装置(24)は、前記時間間隔(Δt)を調整することができる入力手段(31)に接続される
請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御装置は、両方の変化(V1、V2)がそれぞれの第1方向において、規定された前記閾値(S1、S2)を超えた場合、前記第1パラメータ(G1)および前記第2パラメータ(G2)の値を基準パラメータ(G1B、G2B)として規定する
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置(24)は、前記第1パラメータ(G1)および前記第2パラメータ(G2)が、それぞれの前記第1方向と反対の、前記基準パラメータ(G1B、G2B)から始まるそれぞれの第2方向に変化する場合、信号を出力する
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記器具に変位測定装置(27)が割り当てられ、前記制御装置(24)は、変位に依存して前記変化(V1、V2)を検出し、前記制御装置(24)は、異なる器具位置で決定されたパラメータ(G1、G2)の差によって前記変化(V1、V2)を決定する
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記異なる器具位置とは、刺入中における前記器具(14)の異なる位置である
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1パラメータ(G1)は、インピーダンス(Imp)であり、前記第2パラメータ(G2)は、力率(LF)である
請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1変化(V1)は、およそ所定の第1値である、前記インピーダンス(Imp)の低下である
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記所定の第1値は、60%である
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記第2変化(V2)は、およそ所定の第2値である、前記力率(LF)の増加である
請求項10または11に記載の装置。
【請求項14】
前記所定の第2値は、20%である
請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1~14に記載の器具を用いて、健康な組織内において腫瘍位置を特定する、特に、肺組織内において腫瘍の位置を特定する方法であって、前記方法において、
前記器具は、生体組織(11)に刺入され、それによって、前記電極(19、20)に高周波テスト電圧(UT)が供給され、生じる電流(i)が検出され、
それによって、前記テスト電圧(UT)および前記電流(i)から、前記電極(19、20)間の有効インピーダンス(Imp)に依存する第1パラメータ(G1)と、前記テスト電圧(UT)と前記電流(i)との位相角(phi)に依存する第2パラメータ(G2)とが決定され、
a)前記第1パラメータ(G1)の第1変化(V1)が前記第1閾値(S1)を超えているか、および
b)前記第2パラメータ(G2)の第2変化(V2)が前記第2閾値(S2)を超えているか
が決定される
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を電熱処置する電気外科装置に関する。さらに、本発明は、装置の一部である器具を生体組織内に位置決めする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電気測定によって処置電極と生体組織との接触を検出および監視することが知られている。この目的のために、特許文献1および特許文献2には、切除システムと、病変形成のフィードバックをリアルタイムで行う方法とが開示されている。これについて、切除電極と生体組織との電気的な結合の程度が決定される。これに基づいて、生成された病変の体積を推定することができる。接触の程度を決定するために、印加電圧と、生じる電流との位相比を用いることができる。この目的のため、位相測定回路が設けられる。
【0003】
また、特許文献3には、器具の処置電極における電圧と電流との位相位置を検出することが提案されている。この目的には、接触前、接触中、および処置後の位相関係がそれぞれ特徴的に互いに異なるという認識が利用されている。
【0004】
特許文献4には、器具と接触している組織のタイプを決定することが開示されている。この目的のために、様々な周波数を有する交流電圧が器具に供給され、組織に導入されて、生じる電流が監視される。この方法は、インピーダンス分光法とも称される。
【0005】
生きている人間または動物の患者における組織体積の特異的凝固中、それぞれの器具、特にその電極を、良好な処置結果が得られるように処置対象、特に凝固対象の組織内に位置決めすることがしばしば重要である。そのため、処置対象の組織に対する外科医の視界は、通常制限される。これは、特に、処置対象の組織が露出しておらず、処置中に注意して処置しなければならない他の組織に取り囲まれ、埋まっている場合に当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/065140号
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0312009号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2612612号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102019209333号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このことから、処置対象の組織内に器具を位置決めする間、処置者を支援する電気外科装置を提供する本発明の目的が導かれる。さらに、本発明の目的は、それぞれの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの目的は、請求項1に記載の電気外科装置と、請求項15に記載の健康な組織内において腫瘍位置を特定する方法とを用いて達成される。
【0009】
好ましくは長尺の針状またはピン状の基本形状を有する、生体組織に刺入できる器具が、本発明による電気外科装置の一部である。器具は、互いに軸方向距離をとって器具に配置された2以上の電極を含むことが好ましい。例えば、器具は、例えば内視鏡を通して、体に挿入することができるホース状の器具であり、コイル電極や円筒電極などとして実現される電極が配置された遠位端部分を有する。器具は、電極の加熱を阻止または制限するために内部から冷却することができる。好ましくは互いに軸方向距離をとって配置された電極は、処置電極として働くことが好ましく、この目的のために、処置電圧UHFが供給され得る。それらの電極は、この目的のために、そのような処置電圧UHFを出力する電気外科ジェネレータに接続される。処置電圧UHFは、通常100kHzよりも高い周波数を有する高周波交流電圧である。さらに、ジェネレータは、処置電圧UHF(例えば10~20倍)よりも著しく低く、そのため、生理的影響を及ぼさないか、またはごく僅かしか及ぼさないテスト電圧UTを同じ電極に出力する。テスト電圧UTは、生体組織内、例えば腫瘍などの標的組織内における器具の位置決めを確認および表示するのに役立ち、その標的組織は、器具の正確な位置決めの後、処置電圧UHFを受け、それによって次に熱破壊される。
【0010】
本発明は、腫瘍組織には血液が非常によく供給されるため、隣接する健康な組織と電気的に区別されるという特性を利用する。腫瘍のこの特性に基づいて、装置の一部である器具を確実に腫瘍組織内に位置決めすることができる。配置ミスが回避される。
【0011】
ジェネレータは、器具の2つの電極間のテスト電圧UTによって生成された電流iを検出する制御装置を含む。さらに、制御装置は、テスト電圧UTおよび電流iから2つの特性パラメータを決定する。2つのパラメータの一方は、電極間で有効なインピーダンスに依存する。2つのパラメータの他方は、テスト電圧と電流との位相角に依存する。例えば、第1パラメータは、インピーダンス量にすることができ、第2パラメータは、力率、または電流と電圧との位相角phiに依存する別のパラメータである。力率とは、皮相電力に対する、組織内における電極間で有効な変換された有効電力の商を意味する。
【0012】
制御装置は、生体組織への器具の刺入中、2つのパラメータの変化を監視し、2つの変化がそれぞれ所定の閾値を超えているかどうかを確認する。2つのパラメータの変化は、経時変化として理解することができる。そして、それぞれのパラメータの変化は、規定された時間間隔における後続の2つの時点間に生じるパラメータの差として測定される。
【0013】
制御装置は、様々な方法で構成することができる。
【0014】
第1変形例において、制御装置は、2つのパラメータの変化がそれらの2つの閾値を超えた場合、常に信号を出力することができる。
【0015】
別の変形例において、制御装置は、当該変化が第1方向においてそれらの2つの閾値を超えた場合、第1信号を出力し、続いて、それらの変化の方向が変わった場合、第2信号を出力することができる。
【0016】
別の変形例において、制御装置は、両方の変化がそれぞれ所定の閾値を超えた場合、2つのパラメータを基準パラメータとして設定することができる。2つの基準パラメータの定義は、標的組織に達したことを外科医に示す選択肢として、第1信号の出力と関連付けることができる。さらに、制御装置は、2つのパラメータと基準パラメータとの間に所定量を超える差が生じた場合、第2信号を出力することができる。あるいは、制御装置は、基準パラメータを設定した後、それらの変化の方向が変わった場合、第2信号を出力することができる。第1信号および第2信号は、等しくても異なってもよい。さらに、2つのパラメータが(規定されたまたは規定可能な許容範囲内の)2つの基準パラメータから外れない限り、信号を生成することも可能である。
【0017】
出力される信号は、例えば、音響信号、光信号または両方の組合せにすることができ、光信号は、電気外科ジェネレータを備える電気外科システムの表示部に視覚的に表示することができる。
【0018】
本発明の概念によれば、処置者は、通常の速度で器具を組織に刺入する。通常の刺入速度は、およそ0.5cm/sである。肺腫瘍の処置の例について、インピーダンスImpが300オームを超え、力率がLF=cos(phi)<0.75の場合、健康な肺組織であるという結果になる。電極のうちの1つ、特に器具の遠位電極が腫瘍組織と接触するとすぐに、両方のパラメータ、すなわち、例えばインピーダンスと力率が変化する。ここで器具がさらに標的組織に刺入され、近位電極の遠位端が標的組織と接触すると、通常の刺入速度および通常の器具サイズの場合、ある期間、例えば2秒以内に、前に測定されたインピーダンスに対しておよそ少なくとも60%インピーダンスが低下し、一方、力率は、規定された期間(例えば2秒)の前の力率に対して例えば約20%増加する。これは、特に、軸方向の電極長さが8mm~9mmで、軸方向電極距離が3mm~4mmの通常の器具に当てはまる。2つのパラメータの変化は、制御装置によって検出される。制御装置は、それに応じて信号を出力することができ、その信号から、処置者は、両方の電極が腫瘍組織と接触していると結論付けることができる。上述された制御装置の代替実施形態によれば、制御装置は、直接的な信号出力の代わりに、またはこれに加えて、パラメータの値を基準パラメータとして記憶することもできるが、これは、パラメータが、記憶された基準パラメータに対して変化する場合のことである。例えば、標的組織内部における器具の電極位置は、機器15に設けられた表示部にユーザに対して示すことができる。
【0019】
2つのパラメータ、すなわち、例えばインピーダンスおよび力率の測定中に、複数の後続の値がそれぞれ測定され、それらから浮動平均が決定されることが好ましい。例えば、第1パラメータは、インピーダンスの浮動平均にすることができ、一方、第2パラメータは、力率の浮動平均である。本発明による装置は、異なる時点の浮動平均を互いに比較および設定することができ、それらの時点は、規定された時間間隔で互いに関連している。その際、処置者は、個々の刺入速度の調整を行うことができる。処置者は、電極をかなりゆっくり挿入する場合には、より大きい時間間隔を選択するべきであり、器具をかなり速く挿入しがちである場合には、より短い時間間隔を選択する傾向にあるべきである。
【0020】
さらに、既知の、例えば一定速度で、かつ/または変位制御された方法で器具を遠位方向に動かす駆動装置が設けられていることから、刺入工程を自動的に行うことが可能である。これにより、駆動装置は、器具のその長手方向に対するそれぞれの位置を特徴付ける位置データを生成することができる。この場合、変化は、経時変化、あるいは位置依存変化として決定することができる。後者は、器具が適切な変位測定装置に接続される場合、器具の手動刺入中にも可能である。そのような変位測定装置は、例えば、器具が遠位軸方向にどれくらい遠くに移動したかを示すデータを提供することができる。最も単純な場合、そのような変位測定装置は、内視鏡または気管支鏡に設けることができ、変位測定装置において、例えば、その近位端に測定車輪が設けられ、測定車輪は、プローブが軸方向に進む場合、(プローブの)器具本体と接触し、回転する。
【0021】
本発明のさらなる有利な詳細は、従属請求項の主題ならびに明細書および割り当てられた図面である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、生体組織の処置中における本発明による装置の概略図である。
【
図2】
図2は、処置する必要のある組織への刺入中における
図1による装置の一部である器具の図である。
【
図4】
図4は、刺入中および処置中における器具の電圧および電流の図である。
【
図5】
図5は、電圧および電流から決定された異なるパラメータの経時推移図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、例えば、健康な肺組織12と、そこに埋まっている腫瘍13とからなる肺組織などの生体組織11の処置に役立つ装置10が示される。装置10は、少なくとも、器具14と、必要な動作媒体、例えば冷却媒体および電流を器具14に供給する機器15とを備える。器具14は、例えば気管支鏡17を通って、標的組織11に案内され得る可撓性を有するプローブ16にすることができる。
【0024】
他の組織の処置中、他の器具、例えば内視鏡、腹腔鏡用器具またはさらに開腹外科器具を使用することもできる。本発明は、気管支鏡に限定されない。
【0025】
器具14は、さらに、
図2および
図3に示される。器具14は、例えばホースとして構成された、長尺本体18を含み、その長尺本体18に、遠位電極19と、近位方向に距離をとって第2電極20とが配置される。電極19、20は、通常、7mm~10mmの軸方向の長さを有し、互いに対して電気的に絶縁されている。この目的のために、電極19、20は、例えば、軸方向に3mm~5mmの距離をとって配置される。電極19、20は、例えば円筒状のスリーブ、コイルなどとして実現され、例えば2mm~3mmの直径を有する。
【0026】
電極19、20には、好ましくはプローブ16を貫通して延在し、機器15に接続された電気ラインを介して、電圧および電流を供給することができる。
図1において、機器15は、この目的のため、テスト電圧U
Tまたは処置電圧U
HFを電極19、20に供給するように制御装置24によって制御されるRFジェネレータ23を含む。
【0027】
器具14は、管腔25を取り囲むことができ、管腔25には、管腔25内部に配置された毛細管26を介して冷却媒体が供給される。この冷却媒体は、処置中に電極19、20と接触する組織の乾燥を避けるために、電極19、20を冷却する働きをし得る。
【0028】
図1に示されたように、選択肢として、気管支鏡17に変位測定装置27を設けることができ、それによって、気管支鏡17への挿入中、および生体組織11への刺入中におけるプローブ16の現在位置を決定することができる。例えば、プローブ16と摩擦接触している車輪28と、レゾルバ29とを、変位測定装置の一部にすることができる。あるいは、変位測定装置27によって読み取ることができる変位マーキングを、プローブ16のコーティングに貼り付けることができる。さらに、プローブ16を組織11に自動的に刺入させることも可能である。この目的のために、車輪28に駆動的に結合されたモータ30を設けることができる。次いで、レゾルバ29または他の変位測定装置27と、設けられる場合にはモータ30とが、制御装置24に接続される。
【0029】
制御装置24は、それ自体の動作に作用を及ぼすために、キーボード、タッチスクリーンなどの入力手段31を含むことができる。入力手段は、所定値、例えば、ある期間の電圧、電流、電力、閾値などを入力し、それらを制御装置に送信することができる。
【0030】
ジェネレータ23は、
図4に示された処置電圧U
HFあるいはテスト電圧U
Tを出力し、図において、テスト電圧U
Tは、数ボルト、例えば10ボルトの量しか有することができない。テスト電圧U
Tは、交流電圧、特に100kHzを超える周波数を有する高周波交流電圧であることが好ましい。テスト電圧U
Tは、ライン21、22を介して電極19、20に送られる。
【0031】
組織11への刺入中、電極19、20間に電流iが流れる。ジェネレータ23は、電流iについて、その大きさだけでなく、テスト電圧UTに対する位相位置に関しても検出するために、それぞれの測定手段を含む。測定手段は、例として、テスト電圧UTと、生じる電流iとの位相角phi、または、位相角phiに依存するパラメータ(例えば力率)を検出することができる。
【0032】
ジェネレータ23は、さらに、例えば100ボルトまたは数百ボルト(しかしながら、好ましくは<200Vp)の量を有し得る処置電圧UHFを出力する。さらに、それによってジェネレータ23は、生じる電流を検出することができる。しかしながら、これは必須ではない。
【0033】
制御装置24は、組織11への器具14の刺入中、ジェネレータ23を介して電極19、20にテスト電圧を供給する。これにより、制御装置24は、さらに、電圧UTおよび電流iから、電極19、20間で有効なインピーダンスImpに依存する第1パラメータG1を決定する。このパラメータG1は、例えば、複素インピーダンスImp、その実数部R=Re{Imp}、その量|Imp|、または、それから導き出された別のパラメータ、例えばコンダクタンスImp-1にすることができる。第1パラメータG1は、また、インピーダンスImpから導き出された他のパラメータによって表すこともできる。
【0034】
さらに、制御装置24は、例えば電流iとテスト電圧UTとの位相角phiに依存する、第2パラメータG2を決定する。第2パラメータG2は、例えば、力率LF=cos(phi)にすることができる。力率LFは、また、組織11に送られた有効電力Pと皮相電力Sの商、LF=P/Sから得ることもできる。
【0035】
さらに、制御装置24は、第1パラメータG1の変化V1と、第2パラメータG2の変化V2とを決定する。例として、これらの変化は、経時変化にすることができる。この目的のために、第1パラメータG1から浮動平均を生成することができ、2つの時点間のこの平均の差を決定することができる。2つの時点t1、t2は、不変の規定された時間間隔Δtの距離を有することができる。時間間隔Δtは、例えば、入力装置31によって入力できる時間間隔にすることができる。その時間間隔Δtは、例えば0.1秒~5秒にすることができ、例えば2秒に調整することができる。その際、第1変化V1は、互いにおよそ時間間隔Δtの距離をとった時点t1と時点t2における第1パラメータG1の差である。
【0036】
これらの状況は、
図5に示される。また、第2変化V2は、異なる2つの時点t1、t2間における第2パラメータG2の差として理解することができる。次いで、この差は、第2パラメータG2の平均値間で決定されることが好ましい。例えば、第2パラメータG2は、力率の浮動平均である。この例において、差は、時点t2の力率LFの浮動平均と、時点t1の力率LFの浮動平均から決定される。
【0037】
制御装置24は、組織11への器具14の刺入中に2つの変化V1およびV2を決定する。これは、
図5に示される。まず、
図5の一番左において、2つの電極19、20は、肺組織12内に位置している。インピーダンスまたはその量、ひいてはパラメータG1は、300オームを上回る比較的高い値である。力率LFは、コサインphi<0.75の範囲にある。
【0038】
時点t0において、電極19は、腫瘍13と接触する。器具14が引き続き腫瘍13に刺入されている間、インピーダンスは、徐々に減少し始める。同時に、力率LFは、徐々に増加する。第2電極20も腫瘍13に刺入されるとすぐに(時点t1)、インピーダンスImpはより速く減少し始め、力率LFは、より速く増加し始める。これは、
図5のA部分において、時間窓ΔtにおけるG1の曲線のより急峻な減少およびG2の曲線のより急峻な増加から明らかである(
図5におけるパラメータG1およびG2の推移は、それぞれ浮動平均に基づいて図示されていることが示される、すなわち、例えば1秒の経過間隔内の、一連の測定値が処理され、それぞれパラメータG1およびパラメータG2を決定するための平均値が得られる)。
【0039】
間隔AにおけるG1の浮動平均の差の量、すなわち変化V1が60%を超え、変化V2(すなわち、間隔AにおけるG2の浮動平均の差の量)が20%を超えた場合、制御装置24は、構成に応じて異なる動作を行うことができる。第1の選択肢は、両方の電極19、20が腫瘍13内部に十分位置していることをオペレータに示す信号を直ちに出力することである。その際、腫瘍の処置がリリースされる。第2の選択肢は、不変または調整可能な待機期間後に信号を出力することである。これは、ほとんどの場合、近位電極が腫瘍内に完全に刺入される前に変化V1およびV2が既に上記要件を満たしている状況を考慮したものである。待機期間、例えば1秒の間に、ユーザは、プローブを腫瘍内へ多少より深く動かすことになる。処置者は、ここで、ジェネレータをテストモードから処置モードに切り替えることができるため、電極19、20に処置電圧を印加することができる。これは、手動で、また変形形態の制御装置24によって自動的に行うことができる。
【0040】
別の変形例において、制御装置24は、また、位相Aの終わりにおけるパラメータG1およびG2を基準パラメータG1B、G2Bとして記憶することができ、
図5のB部分に示されたように両方のパラメータG1、G2が反対方向に変化する場合のみ、信号を出力することができる。
【0041】
ここまで説明された装置10は、以下のように動作する。
【0042】
器具14は、機器15に接続された後、気管支鏡17を通って、処置対象の組織11に案内される。その後、器具14は、気管支鏡17から出て遠位方向に動かされ、組織11に刺入される。器具14の電極19、20がユーザに見えなくなるとすぐに、処置者は、器具14の電極19、20にテスト電圧UTを出力するようにジェネレータ23をテストモードで起動する。これにより、ジェネレータ23は、例えば電力制限1ワットの350kHzの周波数を有する、例えば10Vp(ボルトピーク)未満の低い正弦波交流電圧を器具14に印加する。テスト電圧UTと、生じる電流iとは、電力が低いため組織11に対して熱的影響を及ぼさない。
【0043】
テストモードにおいて、器具14は、さらに組織11の内部に送られ、それによって、インピーダンスImpおよび位相角phi、または、それらから導き出された、力率LFなどのパラメータG1、G2が決定され、規定された時間間隔で(例えば0.1ミリ秒の間隔で)記憶される。器具14が肺組織12内に位置する限り、インピーダンスImpは、300オームよりも高い範囲にあり、力率LFは、通常0.75未満である。
【0044】
器具14の遠位電極19が腫瘍組織13と接触するとすぐに、インピーダンスImpおよび力率LFは、特徴的に変化し始める。これにより、切除器具14は、腫瘍組織13にさらに刺入される。
【0045】
規定された時間間隔(例えばΔt=2秒)の前のインピーダンスImpに対するインピーダンスImpの現在値の変化V1が、閾値S1(例えば60%)を超え、同時に、2秒前の力率LFに対する現在の力率LFの変化V2が、閾値S2(例えば20%)を超えた場合、インピーダンスImpおよび力率LFのこれらの瞬間値は、腫瘍値として定義される。制御装置は、現在値G1およびG2を基準値G1BおよびG2Bとして記憶することができる。
【0046】
処置者に応じて、2秒という時間間隔Δtではなく、他の時間間隔を調整して用いることもできる。この時間間隔Δtの変更は、入力装置31によって行うことができる。
【0047】
ユーザは、ここで、器具14を腫瘍13を通してさらに動かす。制御装置24は、インピーダンス値の算出された浮動平均における現在算出された平均の増加と、力率の浮動平均の減少とを検出するとすぐに(
図5、B部分)、器具が今肺組織に再び接触していることを示す信号をユーザに示す。これは、電極19、20を有する器具14が腫瘍13内部に非対称に位置しているか、または完全に腫瘍13を貫通していることを意味する。ユーザは、例えば、機器15に配置された表示部に表示された信号に基づいてこの状況を認識し、切除器具を引っ込めることができる。このようにして、ユーザは、処置に適した位置を見つける。変化V1、V2がそれぞれの閾値を超えた場合、B部分で信号出力を行うことができる。閾値は、閾値S1およびS2と同一でもよく、またはそれらと異なってもよい。
【0048】
変更形態において、制御装置は、ユーザが、A部分とB部分との間で器具14の正確な位置を見つけるように、A部分(
図5)で第1信号を、B部分で第2信号を出力する。
【0049】
器具14は、肺腫瘍および他の組織の処置に適しており、それぞれの機器15は、2つのパラメータG1、G2、特にそれらの経時変化を観察することによって、適切な標的組織内における器具14およびその2つの電極19、20の正確な位置決めを検出する。2つのパラメータG1、G2の変化V1、V2が、それぞれ規定された閾値S1、S2を超えた場合、器具と、処置対象の組織との接触、ひいては所望の位置への器具の位置決めも、変化V1、V2から導き出すことができる。したがって、本発明は、処置安全性の向上に著しく貢献する。
【符号の説明】
【0050】
10 装置
11 生体組織
12 健康な肺組織
13 腫瘍
14 器具
15 機器
16 プローブ
17 気管支鏡
18 基体
19 第1電極
20 第2電極
21、22 ライン
23 ジェネレータ
24 制御装置
25 管腔
26 毛細管
27 変位測定装置
28 車輪
29 レゾルバ
30 モータ
31 入力手段
【外国語明細書】