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特開2023-53917新規なジアミン、それにより製造された重合体およびフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053917
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】新規なジアミン、それにより製造された重合体およびフィルム
(51)【国際特許分類】
   C07C 237/40 20060101AFI20230406BHJP
   C07C 237/44 20060101ALI20230406BHJP
   C07C 237/42 20060101ALI20230406BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20230406BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230406BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20230406BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
C07C237/40 CSP
C07C237/44
C07C237/42
C07C231/12
C08G73/10
C08L79/08 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155353
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130533
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138409
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒュン キュ
(72)【発明者】
【氏名】パク ジン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】クァク ヒョ シン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン チャン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュ ヒュン
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB46
4H006AC52
4H006BA19
4H006BA34
4H006BA37
4H006BE01
4H006BE14
4H006BE21
4H006BJ50
4H006BM10
4H006BM71
4H006BN30
4H006BP30
4H006BV74
4H039CA71
4H039CB30
4J002CM041
4J002GP00
4J002GQ00
4J043PA04
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA15
4J043SA47
4J043SA54
4J043SB01
4J043SB02
4J043TA22
4J043TA48
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA122
4J043UA141
4J043UA151
4J043UB062
4J043UB221
4J043VA021
4J043VA022
4J043XA16
4J043YA08
4J043ZA32
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた光学的物性および機械的物性を同時に実現することができるポリイミド系フィルムを提供するための単量体である新規なジアミンおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】化学式1で表されるジアミン。

(R及びRは、夫々独立に、(C2-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル等;Rは、(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル等;Rは、H、(C1-C20)アルキル、又は(C6-C20)アリール;a及びbは、夫々独立に、1~4の整数;cは、0~4の整数;pは、1~3の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるジアミン。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、(C2-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
は、(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
は、水素、(C1-C20)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
前記a、b、およびcが2以上の整数である場合、各R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、
pは、1~3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式2または化学式3で表される、請求項1に記載のジアミン。
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
前記化学式2および3中、
およびRは、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、トリ(C1-C7)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、トリ(C1-C7)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
前記a、b、c、およびdが2以上の整数である場合、各R、R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項3】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式4または化学式5で表される、請求項1に記載のジアミン。
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
前記化学式4および5中、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、またはハロゲンであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、またはハロゲンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して、1~5の整数であり、
x、y、c、およびdは、それぞれ独立して、0~2の整数であり、
前記x、y、c、およびdが2である場合、各R11、R12、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項4】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式6または化学式7で表される、請求項1に記載のジアミン。
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
前記化学式6および7中、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C5)アルキル、(C1-C5)アルコキシ、ハロ(C1-C5)アルキル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、またはハロゲンであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C5)アルキル、ハロ(C1-C5)アルキル、またはハロゲンであり、
x、y、およびdは、それぞれ独立して、0または1であり、
cは、0~2の整数であり、前記cが2である場合、各Rは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【請求項5】
前記ジアミンは、下記から選択される、請求項4に記載のジアミン。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【請求項6】
下記化学式Aで表される化合物を還元触媒下で還元させ、下記化学式1で表されるジアミンを製造するステップを含む、ジアミンの製造方法。
[化学式1]
【化16】
[化学式A]
【化17】
前記化学式1およびA中、
は、ニトロまたはアミノであり、
~R、R、a、b、c、およびpの定義は、請求項1に記載の化学式1における定義と同様である。
【請求項7】
前記還元触媒は、Zn、Cu、Ag、Au、Cd、Hg、Fe、K[Fe(CN)]、NaBH、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載のジアミンの製造方法。
【請求項8】
前記還元触媒は、NHCl、HCO、HPO、HCl、CHCOOH、またはこれらの組み合わせから選択される助触媒をさらに含む、請求項7に記載のジアミンの製造方法。
【請求項9】
化学式Aで表される化合物は、下記化学式A-1で表される化合物のYと下記化学式A-2で表される化合物のXを反応させて製造される、請求項6に記載のジアミンの製造方法。
[化学式A]
【化18】
[化学式A-1]
【化19】
[化学式A-2]
【化20】
前記化学式A、A-1、およびA-2中、
Xは、ハロゲンであり、
は、ニトロまたはアミノであり、
は、
【化21】
または
【化22】
であり、
~R、R、a、b、c、およびpの定義は、請求項1に記載の化学式1における定義と同様である。
【請求項10】
請求項1から5の何れか一項に記載のジアミンから誘導された構造単位、および
二無水物から誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含む、重合体。
【請求項11】
前記二無水物は、芳香族二無水物、脂環族二無水物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の重合体。
【請求項12】
前記二無水物は、フッ素系芳香族二無水物および脂環族二無水物を含む、請求項10に記載の重合体。
【請求項13】
前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド、イソフタロイルジクロライド、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロライド)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の重合体。
【請求項14】
請求項10に記載の重合体を含む、フィルム形成用組成物。
【請求項15】
請求項14に記載のフィルム形成用組成物から製造される、フィルム。
【請求項16】
ポリイミド、ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含む、請求項15に記載のフィルム。
【請求項17】
厚さが1~500umである、請求項16に記載のフィルム。
【請求項18】
ASTM E313に準じたYIが10以下であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下であり、ASTM D1003に準じた全光線透過率が80%以上である、請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
ASTM D882に準じたモジュラスが5GPa以上である、請求項17に記載のフィルム。
【請求項20】
請求項15に記載のフィルムを含む、多層構造体。
【請求項21】
請求項15に記載のフィルムを含む、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリイミド系フィルムの製造に有用に用いられる単量体である新規なジアミン、それにより製造された重合体およびフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置の軽量化、スリム化、およびフレキシブル化が重要視されるにつれ、既存のディスプレイ装置に広く用いられてきたガラス基板、カバーガラスなどをポリイミドに代替するための研究が活発に行われている。次世代ディスプレイ装置に適用するためには、優れた光学的物性の確保はいうまでもなく、機械的物性の向上が伴わなければならないため、ディスプレイ装置用ポリイミド系重合体の要求性能は益々高度化している。
【0003】
このために、透明ポリイミド(Colorless polyimide、CPI)系樹脂に直線性とリジッド性の強い単量体を組み合わせるかまたはアミド基を導入して機械的物性を向上させるための研究が行われている。しかし、ポリイミド系フィルムの光学的物性と機械的物性はトレードオフ(trade-off)関係にあり、このような試みは、ポリイミド系フィルムの機械的物性が向上しても光学的物性が劣化する限界がある。また、ポリイミド系樹脂の溶液の取り扱い性を低下させる問題があるため、工程の難易度が上昇するかまたは樹脂を得ることが不可能な限界がある。
【0004】
そこで、無色透明な性能が低下せず、かつ、向上した機械的物性、特に優れたモジュラスを実現することで、適用範囲をさらに広げることができるポリイミド系フィルムの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、優れた光学的物性および機械的物性を同時に実現することができるポリイミド系フィルムを提供するための単量体である、新規なジアミンおよびその製造方法を提供する。
【0006】
また、一実施形態は、前記新規なジアミンから製造された重合体およびこれを用いた高強度の無色透明なポリイミド系フィルムを提供する。
【0007】
また、一実施形態は、前記ポリイミド系フィルムを含む多層構造体およびこれを含むディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るジアミンは、下記化学式1で表されてもよい。
【0009】
[化学式1]
【化1】
【0010】
(前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、(C2-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
は、(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
は、水素、(C1-C20)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
前記a、b、およびcが2以上の整数である場合、各R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、
pは、1~3の整数である。)
【0011】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式2または化学式3で表されてもよい。
【0012】
[化学式2]
【化2】
【0013】
[化学式3]
【化3】
【0014】
(前記化学式2および3中、
およびRは、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、トリ(C1-C7)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、トリ(C1-C7)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
前記a、b、c、およびdが2以上の整数である場合、各R、R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0015】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式4または化学式5で表されてもよい。
【0016】
[化学式4]
【化4】
【0017】
[化学式5]
【化5】
【0018】
(前記化学式4および5中、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、またはハロゲンであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、またはハロゲンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して、1~5の整数であり、
x、y、c、およびdは、それぞれ独立して、0~2の整数であり、
前記x、y、c、およびdが2である場合、各R11、R12、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0019】
一実施形態に係る前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式6または化学式7で表されてもよい。
【0020】
[化学式6]
【化6】
【0021】
[化学式7]
【化7】
【0022】
(前記化学式6および7中、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C5)アルキル、(C1-C5)アルコキシ、ハロ(C1-C5)アルキル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、またはハロゲンであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C5)アルキル、ハロ(C1-C5)アルキル、またはハロゲンであり、
x、y、およびdは、それぞれ独立して、0または1であり、
cは、0~2の整数である。)
【0023】
一実施形態に係る前記ジアミンは、下記から選択されてもよい。
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0024】
また、本発明の一実施形態に係るジアミンの製造方法は、下記化学式Aで表される化合物を還元触媒下で還元させ、下記化学式1で表されるジアミンを製造するステップを含んでもよい。
【0025】
[化学式1]
【化16】
【0026】
[化学式A]
【化17】
【0027】
(前記化学式1およびA中、
は、ニトロまたはアミノであり、
~R、R、a、b、c、およびpの定義は、上述した化学式1における定義と同様である。)
【0028】
一実施形態に係る前記還元触媒は、Zn、Cu、Ag、Au、Cd、Hg、Fe、K[Fe(CN)]、NaBH、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0029】
一実施形態に係る前記還元触媒は、NHCl、HCO、HPO、HCl、CHCOOH、またはこれらの組み合わせから選択される助触媒をさらに含んでもよい。
【0030】
一実施形態に係る前記化学式Aで表される化合物は、下記化学式A-1で表される化合物のYと下記化学式A-2で表される化合物のXを反応させて製造されてもよい。
【0031】
[化学式A]
【化18】
【0032】
[化学式A-1]
【化19】
【0033】
[化学式A-2]
【化20】
【0034】
(前記化学式A、A-1、およびA-2中、
Xは、ハロゲンであり、
は、ニトロまたはアミノであり、
は、
【化21】
または
【化22】
であり、
~R、R、a、b、c、およびpの定義は、上述した化学式1における定義と同様である。)
【0035】
また、一実施形態は、前記ジアミンから誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含む重合体を提供する。
【0036】
一実施形態に係る前記二無水物は、フッ素系芳香族二無水物および脂環族二無水物を含んでもよい。
一実施形態に係る前記芳香族二酸二塩化物は、テレフタロイルジクロライド、イソフタロイルジクロライド、1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロライド)、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0037】
また、一実施形態は、前記重合体を含むフィルム形成用組成物を提供する。
また、一実施形態は、前記フィルム形成用組成物から製造されたフィルムを提供する。
【0038】
一実施形態に係る前記フィルムは、ポリイミド、ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
一実施形態に係る前記フィルムは、厚さが1~500umであってもよい。
【0039】
一実施形態に係る前記フィルムは、ASTM E313に準じたYIが10以下であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下であり、ASTM D1003に準じた全光線透過率が80%以上であってもよい。
一実施形態に係る前記フィルムは、ASTM D882に準じたモジュラスが5GPa以上であってもよい。
【0040】
また、一実施形態は、前記フィルムを含む多層構造体を提供する。
また、一実施形態は、前記フィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0041】
一実施形態に係る新規なジアミンを用いて製造されたポリイミド系フィルムは、優れた光学および機械的特性を同時に実現することができる。
具体的に、一実施形態に係る新規なジアミンは、機械的物性を向上できる単位と、電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)効果を減少できる単位を同時に有する構造であり、ポリイミド系フィルムの黄色度および透明度が低下することなく機械的物性をさらに効果的に向上させることができる。
【0042】
また、一実施形態に係るジアミンおよびそれにより製造された重合体は、溶液の取り扱い性に優れ、製造工程性を改善することができ、十分な厚さのフィルムを製造することができる。
【0043】
すなわち、一実施形態に係るジアミンは、無色透明でありながらも、モジュラスが高く、機械的強度に優れたポリイミド系フィルムを提供できるだけでなく、製造工程性にも優れ、ディスプレイ装置を含む多様な産業分野に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は、他に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
本明細書で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
【0045】
また、本明細書において、特に言及なしに用いられた単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、他に定義しない限り、全体組成物のうちいずれか1つの成分が組成物中に占める重量%を意味する。
【0046】
また、本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、二重限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0047】
本明細書の用語、「含む」とは、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
本明細書の用語、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0048】
本明細書の用語、「重合体」は、オリゴマーを含み、同種重合体および共重合体を含む。前記共重合体は、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体、分岐共重合体、架橋共重合体、またはこれらを全て含んでもよい。
【0049】
本明細書の用語、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリアミド」は、アミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリアミドイミド」は、イミドモイエティおよびアミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0050】
本明細書の用語、「ポリイミド前駆体溶液」は、「ポリアミック酸溶液」と等価の意味を有するものであってもよく、ポリイミドおよび/またはポリアミック酸を含む溶液を意味し得る。また、前記「ポリイミド」は、ポリイミド、またはポリアミドイミドを含む意味として用いられてもよく、「ポリアミック酸」は、ポリアミック酸、またはポリアミック酸アミドを含む意味として用いられてもよい。
本明細書の用語、「ポリイミド系フィルム」は、ポリイミドフィルム、またはポリアミドイミドフィルムを含む意味として用いられてもよい。
【0051】
本明細書の用語、「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)原子を意味し得る。
本明細書の用語、「アルキル」は、1つの水素除去により脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖状または分岐鎖状のいずれを含んでもよい。前記アルキルは、1~20個の炭素原子、具体的に1~15個の炭素原子、具体的に1~10個の炭素原子、具体的に1~7個の炭素原子、具体的に1~5個の炭素原子を有してもよい。前記アルキルは、一例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルヘキシルなどを含むが、これに限定されない。
【0052】
本明細書の用語、「アルコキシ」は、*-O-アルキルで表され、ここで、アルキルは、上述した定義と同様である。前記アルコキシは、一例として、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシなどを含むが、これに限定されない。
本明細書の用語、「ハロアルキル」は、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの水素がハロゲンで置換されたものを意味し得る。
【0053】
本明細書の用語、「アルキルカルボニル」は、*-C(=O)アルキルラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上述した定義と同様である。一例として、アルキルカルボニルラジカルの例としては、メチルカルボニル、エチルカルボニル、イソプロピルカルボニル、プロピルカルボニル、ブチルカルボニル、イソブチルカルボニル、t-ブチルカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
【0054】
本明細書の用語、「アルコキシカルボニル」は、*-C(=O)アルコキシラジカルを意味し、ここで、アルコキシは、上述した定義と同様である。一例として、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、n-プロポキシカルボニル、n-ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
【0055】
本明細書の用語、「トリアルキルシリル」は、*-Si(アルキル)(アルキル)(アルキル)ラジカルを意味し、ここで、アルキルは、上述した定義と同様である。
【0056】
本明細書の用語、「アリール」は、1つの水素除去により芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に適切に4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単環または縮合環系を含み、複数のアリールが単結合で連結されている形態まで含んでもよい。一例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルなどを含むが、これに限定されない。
【0057】
本明細書の用語、「アリールカルボニル」は、*-C(=O)アリールラジカルを意味し、ここで、アリールは、上述した定義と同様である。一例として、フェニルカルボニル、ナフチルカルボニル、アントリルカルボニルなどを含むが、これに限定されない。
【0058】
本明細書の用語、「シアノ」は-CNを意味し、「ニトロ」は-NOを意味し、「ヒドロキシ」は-OHを意味し、「アミノ」は-NHを意味し、「カルボキシル」は-COOHを意味し得る。
【0059】
ポリイミドフィルムをディスプレイ装置に応用するためには、ポリイミドフィルム固有の黄色度特性を改善し、無色透明な性能を確保するとともに、機械的物性の向上が伴わなければならない。しかし、機械的物性を改善するためにリジッド(rigid)な構造の化合物を用いるかまたはアミド構造を導入した重合体をフィルムに製造する場合、機械的物性は向上しても、黄色度、ヘイズ、および透過率などの光学的物性が劣化する限界がある。そこで、透明ポリイミドフィルムの優れた光学的物性を維持しながらも、機械的物性を顕著に向上させることができる新規なジアミン化合物が必要である。
【0060】
一実施形態に係る新規なジアミンは、複数の芳香族環を含んでフィルムの機械的強度を向上できるとともに、非対称構造を有することで、結晶化度および電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)効果を減少させることができる。すなわち、一実施形態に係る新規なジアミンは、光学的物性が低下することなく機械的物性が顕著に向上したフィルム、具体的に、ポリイミド、ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含むフィルムを提供することができる。
【0061】
前記芳香族環は、単環;2個以上の芳香族環が単結合、置換もしくは非置換のC1~C5アルキレン基、O、またはC(=O)により連結された非縮合環;またはこれらの組み合わせを含んでもよい。具体的に、前記芳香族環は、ベンゼン、ビフェニル、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0062】
一例として、前記新規なジアミンにおいて、前記芳香族環は、少なくとも1つのベンゼンおよび少なくとも1つのビフェニルを含んでもよく、前記芳香族環は、互いにアミド基により連結されていてもよく、具体的に、前記新規なジアミンは、下記化学式1で表されてもよい。
【0063】
[化学式1]
【化23】
【0064】
(前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して、(C2-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
は、(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、ハロ(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキルカルボニル、(C1-C20)アルコキシカルボニル、(C6-C20)アリールカルボニル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
は、水素、(C1-C20)アルキル、または(C6-C20)アリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、
cは、0~4の整数であり、
前記a、b、およびcが2以上の整数である場合、各R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよく、
pは、1~3の整数である。)
【0065】
一例として、前記化学式1中、pが2以上の整数である場合、各R、R、およびcは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0066】
一実施形態に係る前記ジアミンは、上述した構造的特徴、例えば、ビフェニル基構造、非対称構造、およびアミド結合を有することで、それを単量体として用いて、優れた黄色度、ヘイズ、透過率などの光学的物性を維持しながらも、機械的物性が顕著に向上したフィルムを製造することができる。
【0067】
一実施形態に係る前記pは、例えば、1または2の整数であってもよく、より具体的に、前記ジアミンは、下記化学式2または化学式3で表されてもよい。
【0068】
[化学式2]
【化24】
【0069】
[化学式3]
【化25】
【0070】
(前記化学式2および3中、
およびRは、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、トリ(C1-C7)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルキルカルボニル、(C1-C7)アルコキシカルボニル、(C6-C12)アリールカルボニル、トリ(C1-C7)アルキルシリル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、シアノ、またはハロゲンであり、
およびRは、それぞれ独立して、水素、(C1-C7)アルキル、または(C6-C12)アリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、1~3の整数であり、
cおよびdは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、
前記a、b、c、およびdが2以上の整数である場合、各R、R、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0071】
一例として、前記化学式1~3中、前記R~Rのうち少なくとも1つは、フルオロが置換されたアルキル基を含んでもよく、例えば、前記RおよびRのうち少なくとも1つは、フルオロが置換されたアルキル基を含んでもよく、例えば、前記Rのうち少なくとも1つは、フルオロが置換されたアルキル基を含み、前記Rのうち少なくとも1つは、フルオロが置換されたアルキル基を含んでもよい。これにより、フィルムの光学的特性が低下する現象をさらに効果的に改善することができる。ここで、アルキル基は、上述したとおりであり、前記フルオロが置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であってもよく、より具体的に、-CF、-C、-C、-C、C11であってもよいが、これに限定されない。
【0072】
一例として、前記化学式1~3中、前記R~Rは、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、RおよびRとRは、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、RおよびRとRは、互いに異なっていてもよく、例えば、RおよびRは、互いに同一であってもよく、例えば、RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0073】
一例として、前記化学式1~3中、aおよびbは、それぞれ独立して、1または2であってもよく、例えば、1であってもよい。
一例として、前記化学式1~3中、cおよびdは、それぞれ独立して、0~2の整数であってもよい。例えば、cは、0~2の整数であってもよく、dは、0または1であってもよく、例えば、cおよびdは、それぞれ独立して、0または1であってもよい。
【0074】
一例として、前記化学式1~3中、aおよびbは、1または2であり、cは、0~2の整数であり、dは、0または1であってもよいが、これに限定されない。
一実施形態に係る前記RおよびRは、それぞれ独立して、水素または(C1-C7)アルキルであってもよく、例えば、水素であってもよい。
【0075】
前記ビフェニル基に電荷移動錯体(Charge Transfer Complex、CTC)効果を減少できるフルオロが置換されたアルキル基を導入することで、フィルムの光学的特性が低下する現象をさらに効果的に改善することができる。ここで、前記フルオロが置換されたアルキル基は、前述したとおりである。より具体的に、前記ジアミンは、下記化学式4または化学式5で表されてもよい。
【0076】
[化学式4]
【化26】
【0077】
[化学式5]
【化27】
【0078】
(前記化学式4および5中、
cおよびdは、それぞれ前述したとおりであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシ、ハロ(C1-C7)アルキル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、またはハロゲンであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキル、ハロ(C1-C7)アルキル、またはハロゲンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して、1~5の整数であり、
x、y、c、およびdは、それぞれ独立して、0~2の整数であり、
前記x、y、c、およびdが2である場合、各R11、R12、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0079】
前記化学式5中、前記RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
前記化学式4および5中、前記R11およびR12は、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、前記R11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C7)アルキルであってもよい。
【0080】
前記nおよびmは、それぞれ独立して、1~3の整数であってもよく、例えば、1または2の整数であってもよく、例えば、1であってもよい。
また、前記xおよびyは、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、前記xおよびyは、それぞれ独立して、0または1であってもよく、例えば、前記xおよびyは、0であってもよいが、これに限定されない。
【0081】
より具体的に、前記フルオロが置換されたアルキル基は、前記ビフェニル基のオルト位に置換されていてもよい。特定の理論に拘るものではないが、フルオロが置換されたアルキル基がビフェニル基のオルト位に置換されることで、ビフェニル中の2つのアリール基の捩れた構造を誘導することができ、立体障害効果によりポリイミド構造内または鎖間のパッキング密度およびCTC効果を減少させることができる。これにより、ポリイミド系フィルムの光学的物性、例えば、さらに優れた黄色度およびヘイズを示すことができる。
【0082】
具体的に、前記ジアミンは、下記化学式6または化学式7で表されてもよい。
【0083】
[化学式6]
【化28】
【0084】
[化学式7]
【化29】
【0085】
(前記化学式6および7中、
x、y、c、およびdは、それぞれ前述したとおりであり、
およびRは、それぞれ独立して、(C1-C5)アルキル、(C1-C5)アルコキシ、ハロ(C1-C5)アルキル、カルボキシル、ヒドロキシ、アミノ、またはハロゲンであり、
11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C5)アルキル、ハロ(C1-C5)アルキル、またはハロゲンであり、前記x、y、c、およびdが2である場合、各R11、R12、R、およびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0086】
前記化学式7中、前記RおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
また、前記化学式6および7中、前記xおよびyは、0または1であってもよく、前記R11およびR12は、互いに同一でも異なっていてもよく、例えば、前記R11およびR12は、それぞれ独立して、(C2-C5)アルキルであってもよい。
【0087】
一実施形態に係る前記ジアミンは、例えば、下記から選択されてもよいが、これに限定されない。
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【0088】
また、一実施形態は、前記ジアミンの製造方法を提供する。
一実施形態に係る前記ジアミンの製造方法は、下記化学式Aで表される化合物を還元触媒下で還元させ、下記化学式1で表されるジアミンを製造するステップを含んでもよい。
【0089】
[化学式1]
【化38】
【0090】
[化学式A]
【化39】
【0091】
(前記化学式1およびA中、
は、ニトロまたはアミノであり、
~R、R、a、b、c、およびpの定義は、上述した化学式1における定義と同様である。)
【0092】
一実施形態に係る前記還元触媒は、Zn、Cu、Ag、Au、Cd、Hg、Fe、K[Fe(CN)]、NaBH、またはこれらの組み合わせから選択されてもよい。また、前記還元触媒は、NHCl、HCO、HPO、HCl、CHCOOH、またはこれらの組み合わせから選択される助触媒をさらに含んでもよく、具体的には、FeおよびNHClを共に用いて行われてもよい。
【0093】
また、前記還元反応は、40~80℃で1~30時間、具体的には50~70℃で10~30時間行われてもよい。
一実施形態に係る前記化学式Aで表される化合物は、下記化学式A-1で表される化合物のYと下記化学式A-2で表される化合物のXを反応させて製造されてもよい。
【0094】
[化学式A]
【化40】
【0095】
[化学式A-1]
【化41】
【0096】
[化学式A-2]
【化42】
【0097】
(前記化学式A、A-1、およびA-2中、
Xは、ハロゲンであり、
は、ニトロまたはアミノであり、
は、
【化43】
または
【化44】
であり、
~R、R、a、b、c、およびpの定義は、上述した化学式1における定義と同様である。)
【0098】
一実施形態に係る前記反応は、20~40℃で1~10時間、具体的には20~30℃で1~5時間行われてもよい。
また、一実施形態は、前記新規なジアミンを単量体として用いて製造された重合体を提供する。
【0099】
具体的に、一実施形態に係る前記重合体は、上述した新規ジアミンから誘導された構造単位、および二無水物から誘導された構造単位、芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0100】
前記重合体は、例えば、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位と前記二無水物から誘導された構造単位を互いに隣接して含むことで、アミック酸モイエティおよび/またはイミドモイエティを含むポリアミック酸系重合体および/またはポリイミド系重合体であってもよく、例えば、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位と前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位を互いに隣接して含むことで、アミドモイエティを含むポリアミド系重合体であってもよく、例えば、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位と前記二無水物から誘導された構造単位を互いに隣接して含み、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位と前記芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位を互いに隣接して含むことで、ポリアミック酸アミド系重合体および/またはポリアミドイミド系重合体であってもよい。
【0101】
一実施形態に係る重合体は、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位の他に、公知のジアミンから誘導された構造単位をさらに含んでもよい。
【0102】
前記公知のジアミンは、特に制限されるものではないが、例えば、p-PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3’-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、および5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールから選択される1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに制限されない。具体的に、前記ジアミンは、フッ素置換基が導入されたフッ素系芳香族ジアミンであってもよく、例えば、TFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、またはこれらの組み合わせから選択されてもよく、より具体的に、TFMB(2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン)を用いてもよい。
【0103】
上記のようなフッ素系芳香族ジアミン化合物をさらに用いることにより、フッ素置換基により電荷移動効果(Charge Transfer effect)が抑制されることで、フィルムにさらに優れた光学的物性を付与することができる。また、さらに優れたフィルムの機械的強度を示すことができる。
【0104】
具体的に、前記化学式1のジアミンと前記公知のジアミンを共に用いる場合、前記化学式1のジアミンと前記公知のジアミンは1:1~1:100のモル比で用いられてもよく、具体的には1:1~80のモル比、より具体的には1:1~1:50のモル比で用いられてもよいが、これに限定されない。上述した範囲を満たすことで、さらに優れたフィルムの機械的物性を示すことができる。
【0105】
一実施形態に係る前記二無水物は、酸二無水物官能基を有する化合物であればいずれも可能であるが、例えば、芳香族二無水物、脂環族二無水物、またはこれらの組み合わせであってもよい。前記芳香族二無水物は、例えば、BPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)、BPDA(ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、ODPA(オキシジフタル酸二無水物)、SODPA(スルホニルジフタル酸無水物)、6HDBA(イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物))、TDA(4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物)、PMDA(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)、およびBTDA(ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物)から選択される1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに限定されない。具体的に、前記芳香族二無水物は、BPAF(9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)、またはこれらの組み合わせであってもよい。より具体的に、フッ素系芳香族二無水物化合物を用いてもよく、例えば、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)を用いてもよい。上記のような芳香族二無水物を用いることで、フィルムの光学物性の向上だけでなく、機械的強度、特にモジュラスをさらに効果的に改善させることができる。
【0106】
前記脂環族二無水物は、例えば、CBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)、DOCDA(5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物)、BTA(ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物)、BODA(ビシクロオクテン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物)、CPDA(1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物)、CHDA(1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)、TMDA(1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物)、TCDA(1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物)、およびこれらの誘導体からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよいが、これに限定されない。具体的に、前記脂環族二無水物は、CBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)であってもよい。
【0107】
より具体的に、一実施形態に係る前記二無水物は、芳香族二無水物と脂環族二無水物の組み合わせを用いてもよく、例えば、フッ素系芳香族二無水物と脂環族二無水物の組み合わせを用いてもよく、例えば、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物)とCBDA(1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)の組み合わせを用いてもよい。
【0108】
また、一実施形態に係る重合体を製造する際に、ジアミン;および二無水物、芳香族二酸二塩化物、またはこれらの組み合わせの当量比は、特に制限されないが、1:0.9~1.1であってもよく、具体的には1:0.9~1:1であってもよい。前記範囲を満たすことで、製膜特性を含むフィルムの物性がさらに向上することができる。
【0109】
前記芳香族二酸二塩化物は、上述したジアミンと反応して高分子鎖中にアミド構造を形成することで、フィルムの光学的特性を低下させない範囲で、さらに優れたモジュラスを含む機械的物性を示すことができる。
【0110】
前記芳香族二酸二塩化物は、例えば、IPC(イソフタロイルジクロライド)、TPC(テレフタロイルジクロライド)、BPC(1,1’-ビフェニル-4,4’-ジカルボニルジクロライド)、NPC(1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド)、NTC(2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(2,6-naphthalene dicarboxylic dichloride)、NEC(1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド(1,5-naphthalene dicarboxylic dichloride)、およびこれらの誘導体からなる群から選択される1つまたは2つ以上を用いてもよく、例えば、TPCを用いてもよいが、これに限定されない。
【0111】
一実施形態において、前記重合体が芳香族二酸二塩化物から誘導された構造単位を含む場合、前記芳香族二酸二塩化物の含量は、特に制限されないが、例えば、ジアミン100モルに対して50モル以下で含まれてもよく、50モル以上で含まれてもよい。前記芳香族二酸二塩化物が前記ジアミン100モルに対して50モル以上で含まれても、前記化学式1のジアミンと組み合わせられることで、優れた光学的物性を維持しながらも、機械的物性をさらに向上させることができる。
【0112】
また、一実施形態は、上述した重合体を含む組成物を提供する。
具体的に、一実施形態に係る組成物は、上述した重合体と、有機溶媒と、を含むフィルム形成用組成物であってもよい。
【0113】
一実施形態に係る前記組成物は、上述した重合体を含むことで、顕著に向上した光学的および機械的物性を有するフィルム、具体的に、ポリイミド、ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含むポリイミド系フィルムを提供することができる。ここで、ポリイミドとポリアミドの組み合わせは、ポリアミドイミド、またはポリイミドとポリアミドの混合物を意味し得る。特に、一実施形態に係る前記組成物は、高い透明性および低い黄色度値を有し、モジュラス値が顕著に向上したフィルムを提供することができる。
【0114】
一実施形態に係る前記組成物に含まれる有機溶媒は、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトールなどのアルコール類;N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミドなどのアミド類;などから選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0115】
具体的に、前記有機溶媒は、上述したアミド類から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。一例として、前記有機溶媒は、沸点が300℃以下のアミド類であってもよく、具体的に、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0116】
一実施形態に係るフィルム形成用組成物は、組成物の総重量を基準として、固形分含量が5~20重量%、10~20重量%、または10~15重量%であってもよい。
【0117】
以下、一実施形態に係るフィルム形成用組成物の製造方法について具体的に説明する。
一実施形態に係るフィルム形成用組成物の製造方法は、(A)有機溶媒にジアミン化合物を溶解させた後に二無水物を反応させてポリイミド前駆体溶液を製造するステップと、(B)固形分含量を調節してフィルム形成用組成物を製造するステップと、を含んでもよい。
【0118】
具体的に、前記ステップ(A)は、ジアミンと二無水物を1:0.9~1:1.1の当量比で混合してポリイミド前駆体を重合するものであり、この際、重合条件は、特に制限されないが、不活性気体雰囲気下で重合反応を行ってもよく、一例として、窒素またはアルゴンガスを反応器内に還流させつつ行ってもよい。また、反応温度は20℃~70℃、または30℃~70℃で行ってもよく、反応時間は5時間~30時間、または5時間~20時間行ってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0119】
また、前記ステップ(A)は、芳香族二酸二塩化物を投入するステップをさらに含んでもよい。この場合、ジアミン、二無水物、および芳香族二酸二塩化物を共に投入して重合してもよく、またはジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させてアミン末端を有するオリゴマーを製造した後、前記オリゴマーと追加のジアミンおよび二無水物を反応させて製造してもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。アミン末端を有するオリゴマーを製造した後、追加のジアミンおよび二無水物を反応させる場合には、ブロック型ポリアミドイミドが製造されることができ、フィルムの機械的物性がさらに向上することができる。
【0120】
具体的に、アミン末端を有するオリゴマーを製造する場合、前記(A)ステップは、(i)ジアミンと芳香族二酸二塩化物を反応させるステップと、(ii)得られたオリゴマーを精製して乾燥するステップと、(iii)精製されたオリゴマー、ジアミン、および二無水物を反応させてポリイミド前駆体溶液を製造するステップと、を含んでもよい。この場合、ジアミンを芳香族二酸二塩化物に対して1.01~2のモル比で投入し、アミン末端ポリアミドオリゴマーを製造することができる。前記オリゴマーの分子量は、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が1,000~3,000g/molであってもよい。
【0121】
また、前記ステップ(A)において、ポリイミド前駆体溶液を製造した後、前記ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド系樹脂を得るステップをさらに含んでもよい。この際、化学的イミド化により行われてもよく、イミド化触媒および脱水剤の中から選択されたいずれか1つまたは2つ以上をさらに含んでイミド化してもよい。前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)、およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよい。また、脱水剤としては、酢酸無水物(acetic anhydride)、フタル酸無水物(phthalic anhydride)、およびマレイン酸無水物(maleic anhydride)などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上を用いてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。この際、ポリイミド前駆体のイミド化を行った後、溶媒に沈殿し精製して固形分(ポリイミドパウダー)を得、それを有機溶媒に溶解させて固形分含量を調節し、ポリイミドフィルム形成用組成物を得ることができる。
【0122】
一実施形態において、上述したような化学的イミド化を行わない場合、一実施形態に係るフィルム形成用組成物は、ポリイミドおよび/またはポリアミック酸および有機溶媒を含むものを意味し得る。
【0123】
また、本発明の一実施形態は、前記フィルム形成用組成物を用いて製造されたフィルムを提供する。具体的に、前記フィルムは、ポリイミド、ポリアミド、またはこれらの組み合わせを含むポリイミド系フィルムであってもよい。
【0124】
一実施形態に係るフィルムは、黄色度が低く、透明性に優れるとともに、モジュラスが高く、機械的強度に優れることができる。
一実施形態に係るポリイミドフィルムは、厚さが1~500um、20~500um、例えば、30~300um、例えば、40~100umであってもよい。
【0125】
一実施形態に係るフィルムは、ASTM E313に準じたYIが20以下、15以下、10以下、7以下、または5以下であってもよい。
一実施形態に係るフィルムは、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下、1.5以下、または1.0以下であってもよい。
【0126】
一実施形態に係るフィルムは、ASTM D1003に準じた全光線透過率が80%以上、85%以上、または87%以上であってもよい。
一実施形態に係るフィルムは、ASTM D882に準じたモジュラスが5GPa以上、5.5GPa以上、6GPa以上、7GPa以上、7.3GPa以上、または7.5GPa以上であってもよい。
【0127】
一実施形態に係るフィルムは、ASTM E313に準じたYIが10以下であり、ASTM D1003に準じたヘイズが2.0%以下であり、ASTM D1003に準じた全光線透過率が80%以上であり、ASTM D882に準じたモジュラスが5GPa以上であってもよい。具体的に、YIが15以下であり、ヘイズが1.5以下であり、全光線透過率が85%以上であり、モジュラスが6GPa以上であってもよい。より具体的に、YIが10以下であり、ヘイズが1.0以下であり、全光線透過率が87%以上であり、モジュラスが7GPa以上であってもよい。
【0128】
一実施形態に係るフィルムは、特定の骨格および特定の位置に特定の官能基であるトリフルオロメチル基が導入されたジアミン化合物から製造されることで、上記のような優れた光学的物性および機械的物性を実現することができる。具体的に、一実施形態は、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位を含むことで、光学性、機械的強度、および柔軟性のいずれにも優れたフィルムを提供することができる。したがって、一実施形態に係るフィルムは、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、粘着フィルム、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に適用することができる。
【0129】
以下、本発明の一実施形態に係るフィルムの製造方法について具体的に説明する。
一実施形態に係るフィルムは、前記一実施形態に係る重合体および溶媒を含む組成物を基材上に塗布した後、乾燥および/または延伸して製造されてもよい。
【0130】
具体的に、一実施形態に係るフィルムは、化学的硬化または熱硬化により製造されてもよい。
前記化学的硬化は、一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液をイミド化してポリイミド系樹脂を製造するステップと、前記ポリイミド系樹脂を有機溶媒に溶解させた樹脂組成物(フィルム形成用組成物)を塗布して製膜するステップと、を含んで製造されてもよい。
前記イミド化は、上述したとおりであるので省略する。
【0131】
前記製膜ステップは、フィルム形成用組成物を基材に塗布した後、熱処理を介した乾燥によりフィルムを成形するステップである。基材は、例えば、ガラス、ステンレス、またはフィルムなどを用いてもよく、塗布は、ダイコータ、エアナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティングなどにより行われてもよい。
【0132】
前記熱処理は、例えば、段階的に行ってもよい。例えば、70℃~160℃で1分~2時間一次乾燥し、150℃~350℃で1分~2時間二次乾燥して段階的な熱処理をして行われてもよい。しかし、必ずしも前記温度および時間条件に制限されるものではなく、例えば、前記一次乾燥は、80℃~150℃、70℃~110℃、130℃~150℃、90℃、120℃、または140℃で、10分~90分、10分~60分、20分~50分、または30分間行ってもよく、前記二次乾燥は、200℃~300℃、220℃~300℃、または250℃~300℃で、10分~90分、30分~90分、または40分~80分間行ってもよい。この際、段階的な熱処理は、各段階に移動時、好ましくは、1~20℃/minの範囲で昇温させてもよい。また、熱処理は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよく、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0133】
また、一実施形態に係る前記熱硬化は、100~450℃、120~450℃、または150~450℃で行われてもよい。より具体的に、前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、100超過~200℃で1分~20時間、または200超過~450℃で1分~2時間行われてもよく、この中から選択される2以上の温度条件下で段階的な熱硬化が行われてもよい。また、熱硬化は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。また、前記熱硬化ステップ以前に、必要に応じて、乾燥ステップをさらに行ってもよい。前記乾燥ステップは、50℃~150℃、50℃~130℃、60℃~100℃、または約80℃の温度で行われてもよいが、必ずしも前記範囲に制限されるものではない。
【0134】
また、前記ポリイミド前駆体溶液に難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などから選択される1つまたは2つ以上の添加剤をさらに混合してもよい。
【0135】
また、一実施形態に係る前記フィルムは、2以上の層として有する形態である多層構造体として提供されてもよい。
具体的に、前記多層構造体は、必要に応じて、フィルムまたは基板の少なくとも1つの他面に機能性コーティング層をさらに含んでもよい。前記機能性コーティング層の非限定的な一例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層などが挙げられ、少なくとも1つまたは2つ以上の機能性コーティング層を備えてもよい。
【0136】
また、一実施形態は、前記フィルムを用いて多様な形態の成形品を製造することができる。前記成形品の一例としては、フィルム、保護膜、または絶縁膜を含むプリント配線板、フレキシブル回路基板などに適用可能であり、これに制限されない。具体的には、カバーガラスを代替できる保護フィルムに適用することができ、ディスプレイ装置を含めて多様な産業分野にその応用の幅が広いという長所がある。
【0137】
より具体的に、フレキシブルディスプレイ装置などのウィンドウカバーフィルムとして用いられることができる。
一実施形態に係るフィルムは、前記化学式1で表されるジアミンから誘導された構造単位を含むことで、高い透明度および低い黄色度のような優れた光学的物性および優れたモジュラスを実現することができる。これにより、一実施形態に係るフィルムは、フレキシブルディスプレイパネルなどのウィンドウカバーフィルムとして用いることができる。一実施形態に係るフィルムを含むウィンドウカバーは、さらに優れた光学的物性を有し、視認性に優れるだけでなく、モジュラスが高く、機械的強度に優れるため、強化ガラスの代替素材として用いられることができる。
【0138】
以下、本発明の具体的な説明のために一実施形態を挙げて説明するが、本発明が下記の実施形態に限定されるものではない。
下記実験において、物性は次のように測定した。
【0139】
<黄色度(YI)>
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定し、測定結果を下記基準で評価した。
O:黄色度5未満、X:黄色度5以上
【0140】
<全光線透過率>
ポリイミドフィルムを、ASTM D1003の規格に準じて、光透過率測定器(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて、400nm~700nmの波長領域の全体で全光線透過率(%)を測定した。
【0141】
<ヘイズ>
ポリイミドフィルムの透明性を測定するために、ASTM D1003の規格に準じて、分光光度計(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いてヘイズ(%)値を測定した。
【0142】
<モジュラス>
長さ50mmおよび幅10mmのポリイミドフィルムを25℃で50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて、ASTM D882の規格に準じてモジュラス(GPa)を測定した。
【0143】
<重量平均分子量>
0.05MのLiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCはWaters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを用い、ColumnはOlexis、Polypore、およびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用いた。この際、35℃、1mL/minのフローレート(flow rate)で分析した。
【0144】
[実施例1]ジアミン1の製造
【化45】
【0145】
化合物1-Aの製造
窒素環境で、2,2’-ビストリフルオロメチルベンジジン(TFMB)15.0gと、テトラヒドロフラン(THF)50.0ml、トリエチルアミン(TEA)9.79mlを投入した後、0℃に冷却した。4-ニトロベンゾイルクロライド(4-Nitrobenzoyl chloride)8.69gを他のTHF 50.0mlに溶かした溶液を準備し、窒素環境で、前記TFMB溶液に2時間にわたって滴加した。滴加完了後、常温(25℃)で2時間さらに撹拌した後、NaCO溶液100mlを投入した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いた洗浄後、減圧蒸留により溶媒を除去し、黄色固体として化合物1-A(20.6g)を得た。
【0146】
ジアミン1の製造
上記で製造された化合物1-A 20.6gに塩化アンモニウム(NHCl)15.0gおよびFeパウダー15.7gを投入し、テトラヒドロフラン(THF)160ml、メタノール(MeOH)80ml、蒸留水80mlを投入した。混合物を強く撹拌しつつ60℃で20時間反応した後、セライトパッド濾過により残留Feパウダーを除去した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いて抽出した後、減圧精製により溶媒を除去した後、カラム精製によりジアミン化合物1(10.8g、53%)を得た。
【0147】
H-NMR (DMSO-d、 500MHz, ppm): 10.19 (s, 1H), 8.26 (d, 1H, J=2.0 Hz), 7.99 (dd, 1H, J=8.5, 2.0 Hz), 7.74 (d, 2H, J=8.5 Hz), 7.22 (d, 1H, J=8.0 Hz), 6.94 (m, 2H), 6.78 (dd, 2H, J=8.5, 2.0 Hz), 6.62 (d, 1H, J=8.5 Hz), 5.81 (s, NH), 5.65 (s, NH).
【0148】
[実施例2]ジアミン2の製造
【化46】
【0149】
化合物2-Aの製造
窒素環境で、4-[(4-ニトロベンジル)アミノ]安息香酸(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]benzoic acid)13gをテトラヒドロフラン(THF)260mlに溶かした後、0℃に冷却した。前記溶液にオキサリルクロライド(Oxalyl chloride)8.7gを徐々に投入した後、ジメチルホルムアミド(DMF)0.1mlを投入し、常温(25℃)で6時間撹拌した。その後、減圧蒸留により溶媒を除去し、化合物2-Aである4-[(4-ニトロベンジル)アミノ]安息香酸クロライド(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]benzoic chloride)13gを得た。
【0150】
化合物2-Bの製造
窒素環境で、4’-ニトロ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)[1,1’-ビフェニル]-4-アミン・HCl 11.8g、アセトン(Acetone)60ml、およびピリジン(pyridine)8.4gを投入した。上記で製造された化合物2-A 11.1gをまた他のアセトン150mlに溶かし、前記溶液に1時間にわたって滴加した。滴加完了後、常温(25℃)で2時間さらに撹拌し、蒸留水200mlを投入した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いた洗浄後、減圧蒸留により溶媒を除去し、白色固体として化合物2-B(18.3g)を得た。
【0151】
ジアミン2の製造
上記で製造された化合物2-B 18.9gに塩化アンモニウム(NHCl)15.8gおよびFeパウダー16.5gを投入し、テトラヒドロフラン(THF)180ml、メタノール(MeOH)90ml、蒸留水90mlを投入した。混合物を強く撹拌しつつ60℃で20時間反応した後、セライトパッド濾過により残留Feパウダーを除去した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いて抽出した後、減圧精製により溶媒を除去した後、カラム精製によりジアミン2(11.2g、68%)を得た。
【0152】
H-NMR (DMSO-d, 500MHz, ppm): 10.44 (s, 1H), 10.05 (s, 1H), 8.29 (s, 1H), 8.04 (d, 1H, J=8.0 Hz), 8.00-7.94 (m, 4H), 7.76 (d, 2H, J=8.5 Hz), 7.28 (d, 1H, J=8.5 Hz), 6.96-6.95 (m, 2H), 6.79 (d, 1H, J=8.0 Hz), 6.63 (d, 2H, J=8.5 Hz), 5.82 (s, NH), 5.66 (s, NH).
【0153】
[実施例3]ジアミン3の製造
【化47】
【0154】
化合物3-Aの製造
窒素環境で、4-ニトロ-2-フルオロ安息香酸(4-nitro-2-fluorobenzoic acid)10.0gをジクロロメタン(DCM)100mlに溶かした後、0℃に冷却した。前記溶液にオキサリルクロライド(Oxalyl chloride)12.3gを徐々に投入した後、ジメチルホルムアミド(DMF)0.1mlを投入し、常温(25℃)で6時間撹拌した。その後、減圧蒸留により溶媒を除去し、化合物3-Aである4-ニトロ-2-フルオロベンゾイルクロライド(4-nitro-2-fluorobenzoylchloride)11.2gを得た。
【0155】
化合物3-Bの製造
窒素環境で、4’-ニトロ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)[1,1’-ビフェニル]-4-アミン・HCL 22.7g、テトラヒドロフラン(THF)120ml、およびピリジン(pyridine)16.2gを投入した。前記化合物3-A(4-ニトロ-2-フルオロベンゾイルクロライド(4-nitro-2-fluorobenzoylchloride))11.2gをまた他のテトラヒドロフラン(THF)100mlに溶かし、前記溶液に1時間にわたって滴加した。滴加完了後、常温(25℃)で2時間さらに撹拌し、蒸留水200mlを投入した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いた洗浄後、減圧蒸留により溶媒を除去し、白色固体として化合物3-B(28.8g)を得た。
【0156】
ジアミン3の製造
上記で製造された化合物3-B 10.0gに塩化アンモニウム(NHCl)8.3gおよびFeパウダー8.6gを投入し、テトラヒドロフラン(THF)100ml、メタノール(MeOH)50ml、蒸留水50mlを投入した。混合物を強く撹拌しつつ60℃で20時間反応した後、セライトパッド濾過により残留Feパウダーを除去した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いて抽出した後、減圧精製により溶媒を除去した後、カラム精製によりジアミン3(7.5g、85%)を得た。
MS: m/z: M calculated for C2115, 458.11, found 458.18
【0157】
[実施例4]ジアミン4の製造
【化48】
【0158】
前記実施例3において、4-ニトロ-2-フルオロ安息香酸(4-nitro-2-fluorobenzoic acid)の代わりに4-ニトロ-2,6-ジフルオロ安息香酸(4-nitro-2,6-difluorobenzoic acid)を用いたことを除いては同様に行い、ジアミン4(6.8g、77%)を得た。
MS: m/z: M calculated for C2114, 476.10, found 476.19
【0159】
[実施例5]ジアミン5の製造
【化49】
【0160】
前記実施例3において、4-ニトロ-2-フルオロ安息香酸(4-nitro-2-fluorobenzoic acid)の代わりに4-ニトロ-2-トリフルオロメチル安息香酸(4-nitro-2-trifluoromethylbenzoic acid)を用いたことを除いては同様に行い、ジアミン5(7.9g、88%)を得た。
【0161】
H-NMR (DMSO-d, 500MHz, ppm): 10.55 (s, 1H), 8.15 (s, 1H), 7.81 (d, 1H, J=8.5 Hz), 7.38 (d, 1H, J=8.5 Hz), 7.19 (d, 1H, J=8.5 Hz), 6.90 (m, 3H), 6.77 (d, 1H, J=8.5 Hz), 6.72 (d, 1H, J=8.5 Hz), 5.95 (s, NH), 5.62 (s, NH).
【0162】
[実施例6]ジアミン6の製造
【化50】
【0163】
前記実施例3において、4-ニトロ-2-フルオロ安息香酸(4-nitro-2-fluorobenzoic acid)の代わりに4-ニトロ-2-メチル安息香酸(4-nitro-2-methylbenzoic acid)を用いたことを除いては同様に行い、ジアミン6(8.1g、92%)を得た。
【0164】
H-NMR (DMSO-d, 500MHz, ppm): 10.09 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 8.01 (d, 1H, J=8.5 Hz), 7.64 (m, 2H), 7.23 (d, 1H, J=8.5 Hz), 6.94 (m, 2H), 6.66 (d, 1H, J=8.0 Hz), 5.66 (s, NH), 5.60 (s, NH), 3.35 (s, CH).
【0165】
[実施例7]ジアミン7の製造
【化51】
【0166】
前記実施例3において、4-ニトロ-2-フルオロ安息香酸(4-nitro-2-fluorobenzoic acid)の代わりに4-ニトロ-2-メトキシ安息香酸(4-nitro-2-methoxybenzoic acid)を用いたことを除いては同様に行い、ジアミン7(7.2g、81%)を得た。
MS: m/z: M calculated for C2218 , 470.13, found 470.19
【0167】
[実施例8]ジアミン8の製造
【化52】
【0168】
化合物8-Aの製造
窒素環境で、4-[(4-ニトロベンゾイル)アミノ]-2-メチル-安息香酸(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]-2-methyl-benzoic acid)10.0gをテトラヒドロフラン(THF)50ml、ジクロロメタン(DCM)50mlに溶かした後、0℃に冷却した。前記溶液にオキサリルクロライド(Oxalyl chloride)6.34gを徐々に投入した後、ジメチルホルムアミド(DMF)0.1mlを投入し、常温(25℃)で8時間撹拌した。その後、減圧蒸留により溶媒を除去し、化合物8-Aである(4-[(4-ニトロベンゾイル)アミノ]-2-メチル-ベンゾイルクロライド(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]-2-methyl-benzoyl chloride)10.6gを得た。
【0169】
化合物8-Bの製造
窒素環境で、4’-ニトロ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)[1,1’-ビフェニル]-4-アミン・HCL 11.7g、テトラヒドロフラン(THF)60ml、およびピリジン(pyridine)8.4gを投入した。(4-[(4-ニトロベンゾイル)アミノ]-2-メチル-ベンゾイルクロライド(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]-2-methyl-benzoyl chloride)10.6gをまた他のテトラヒドロフラン(THF)50mlに溶かし、前記溶液に1時間にわたって滴加した。滴加完了後、常温(25℃)で2時間さらに撹拌し、蒸留水200mlを投入した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いた洗浄後、減圧蒸留により溶媒を除去し、白色固体として化合物8-B(18.2g)を得た。
【0170】
ジアミン8の製造
上記で製造された化合物8-B 10.0gに塩化アンモニウム(NHCl)6.8gおよびFeパウダー7.1gを投入し、テトラヒドロフラン(THF)100ml、メタノール(MeOH)50ml、蒸留水50mlを投入した。混合物を強く撹拌しつつ60℃で24時間反応した後、セライトパッド濾過により残留Feパウダーを除去した。その後、エチルアセテート(Ethyl acetate)と蒸留水を用いて抽出した後、減圧精製により溶媒を除去した後、カラム精製によりジアミン化合物8(8.6g、95%)を得た。
MS: m/z: M calculated for C2923 , 573.17, found 573.21
【0171】
[実施例9]ジアミン9の製造
【化53】
【0172】
前記実施例8において、4-[(4-ニトロベンゾイル)アミノ]-2-メチル-安息香酸(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]-2-methyl-benzoic acid)の代わりに(4-[(4-ニトロベンゾイル)アミノ]-2-トリフルオロメチル-安息香酸(4-[(4-nitrobenzoyl)amino]-2-trifluoromethyl-benzoic acid)を用いたことを除いては同様に行い、ジアミン9(8.4g、92%)を製造した。
MS: m/z: M calculated for C2920 , 627.14, found 627.20
【0173】
重合体およびフィルムの製造
[実施例10]
窒素雰囲気下で、反応器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、および前記実施例1で製造されたジアミン1を入れて十分に溶解させた。前記TFMB/ジアミン1の溶液に1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を入れて十分に溶解させた後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物(6FDA)およびテレフタロイルジクロライド(TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させ、ポリイミド前駆体溶液を製造した。この際、各単量体の量は、下記表1の組成比のように、TFMB:ジアミン1:TPC:6FDA:CBDAのモル比をジアミン原料100とその他の原料割合100を基準として50:50と35:15:50とし、固形分含量が13重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。次いで、前記ポリイミド前駆体溶液にピリジン(pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)を総二無水物の2.5倍モル投入し、60℃で12時間撹拌した。その後、溶液を過量のメタノールに沈殿後に濾過して得られた固形分を50℃で12時間以上真空乾燥し、パウダーを得た。上記で得られたパウダー10.45gをN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)89.55gに溶かし、固形分10.45重量%のフィルム形成用組成物を製造した。製造された組成物の粘度は64,000cpsであった。
【0174】
前記フィルム形成用組成物をガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングを行った。その後、対流オーブンを用いて90℃の温度で30分間一次乾燥した後、窒素気流条件下で、280℃の温度で1時間追加熱処理した後に常温に冷却させ、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離し、厚さ51μmのフィルムを得た。その物性は、下記表2および3に記載した。
【0175】
[実施例11]
窒素雰囲気下で、反応器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-ベンジジン(TFMB)を入れて十分に撹拌した後、テレフタロイルジクロライド(TPC)を入れ、6時間撹拌して溶解および反応させる。その後、過量の水を用いて沈殿および濾過させた得られた反応生成物を90℃で6時間以上真空乾燥し、ポリアミドオリゴマーを得た。
【0176】
再び窒素雰囲気下で、反応器にDMAc、前記ポリアミドオリゴマーと、追加のTFMBおよび前記実施例1で得られたジアミン1を入れ、ジアミンの総使用量は、TFMB:ジアミン1=50:50のモル比となるようにした。その後、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)および4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)-ジフタル酸無水物(6FDA)を順次投入し、12時間撹拌して溶解および反応させ、ポリイミド前駆体溶液を製造した。この際、各単量体の量は、下記表1の組成比にように、TFMB:ジアミン1:TPC:6FDA:CBDAのモル比をジアミン原料100とその他の原料割合100を基準として50:50と35:20:45とし、固形分含量が13重量%となるように調節し、反応器の温度は40℃に維持した。次いで、前記ポリイミド前駆体溶液にピリジン(pyridine)と酢酸無水物(Acetic Anhydride)を総二無水物の2.5倍モル投入し、60℃で12時間撹拌し、フィルム形成用組成物を製造した。製造された組成物の粘度は48,000cpsであった。
【0177】
前記フィルム形成用組成物をガラス基板上にアプリケータ(applicator)を用いて溶液キャスティングを行った。その後、対流オーブンを用いて90℃の温度で30分間一次乾燥した後、窒素気流条件下で、280℃の温度で1時間追加熱処理した後に常温に冷却させ、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離し、厚さ50μmのフィルムを得た。その物性は、下記表2および3に記載した。
【0178】
[実施例12~25]
単量体の種類および添加量を下記表1のように異にしたことを除いては、前記実施例10と同様に行ってフィルムを得た。製造された試料の物性を測定し、下記表2および3に記載した。
【0179】
[比較例1~7]
単量体の種類および添加量を下記表1のように異にしたことを除いては、前記実施例10と同様に行ってフィルムを得た。製造された試料の物性を測定し、下記表2および3に記載した。
【0180】
[比較例8および13]
【化54】
【0181】
ジアミン1の代わりに前記C1のジアミンを用い、単量体の添加量を下記表1のように異にしたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってフィルムを得た。製造された試料の物性を測定し、下記表2および3に記載した。
【0182】
[比較例9および10]
【化55】
【0183】
ジアミン1の代わりに前記C2のジアミンを用い、単量体の添加量を下記表1のように異にしたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってフィルムを得た。製造された試料の物性を測定し、下記表2および3に記載した。
【0184】
[比較例11および12]
【化56】
【0185】
ジアミン1の代わりに前記C3のジアミンを用い、単量体の添加量を下記表1のように異にしたことを除いては、前記実施例1と同様に行ってフィルムを得た。製造された試料の物性を測定し、下記表2および3に記載した。
【0186】
【表1】
【0187】
評価1.膜形成性の評価
前記実施例および比較例の重合体から製造されたフィルムの厚さを薄膜厚さ測定器(TESA社のμ-hite)でそれぞれ3回ずつ測定し、その平均値を前記表1に記載した。
【0188】
実施例の重合体から製造されたフィルムは、フレキシブルウィンドウカバーフィルムとして用いるのに十分な厚さを有する膜を形成可能であることを確認することができる。
【0189】
評価2.黄色度
実施例および比較例の重合体から製造されたフィルムの黄色度を測定し、下記表2に記載した。
【0190】
【表2】
【0191】
前記表2のように、一実施形態に係る新規なジアミンから誘導された構造単位を含む実施例のフィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウ、基板素材などに適用可能な優れた黄色度を実現可能であることを確認することができる。これに対し、ビフェニル基および/または非対称構造を含まないジアミン(C1~C3)から製造された比較例8~13のフィルムは、単量体のモル比および熱処理温度が同一の実施例のフィルムに比べて、黄色度が大幅に劣化することを確認することができる。そこで、比較例8~13フィルムは、ディスプレイ装置のカバーウィンドウ、基板素材などに適用するのに適していないことを確認することができた。
黄色度に優れた実施例と比較例のフィルムの光学的物性および機械的物性を測定し、表3に記載した。
【0192】
評価3.光学的特性および機械的特性
【表3】
【0193】
前記表3を参照すると、実施例のフィルムは、一実施形態に係るジアミンから誘導された構造単位を含むことで、黄色度が低いだけでなく、比較例1~7と同等または優れた透過率およびヘイズを有するとともに、顕著に増加したモジュラスを有することを確認することができる。
【0194】
要するに、一実施形態に係る新規なジアミンは、ビフェニル基構造、非対称構造、およびアミド結合を有することで、それを単量体として用いて、優れた光学的物性を維持しながらも、機械的物性が顕著に向上したポリイミド系フィルムを製造することができる。
【0195】
以上、特定された事項と限定された実施例により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0196】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。