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特開2023-53940分包薬剤の鑑査装置、鑑査装置の制御プログラム、及び鑑査方法
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  • 特開-分包薬剤の鑑査装置、鑑査装置の制御プログラム、及び鑑査方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023053940
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】分包薬剤の鑑査装置、鑑査装置の制御プログラム、及び鑑査方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158809
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2021162987
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100132506
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 哲文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 泰行
(72)【発明者】
【氏名】河野 翼
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047KK03
4C047KK12
4C047KK25
4C047KK31
4C047KK32
(57)【要約】
【課題】分包薬剤の鑑査装置において、簡単な構成で、分包袋群のスリップを検出する。
【解決手段】分包薬剤の鑑査装置1は、薬剤を内包する分包袋群Pを搬送する搬送装置2と、搬送される分包袋群Pを撮影する撮影装置18と、撮影された分包袋群Pの画像を用いて、分包袋群Pのそれぞれに内包される薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部11と、搬送される分包袋群Pの表面の動きを検出する動き検出センサ5と、搬送装置2の搬送動作中において動き検出センサ5により検出される分包袋群Pの表面の動きに基づき、分包袋群Pが搬送装置2に対してスリップしているか否かを判断するスリップ判断部12と、スリップ判断部12の判断結果を出力する出力部14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する動き検出センサと、
前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断するスリップ判断部と、
前記スリップ判断部の判断結果を出力する出力部とを備える、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記動き検出センサは、前記分包袋群のシール部の表面の動きを検出する、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記搬送装置は、第1の方向に連なった前記分包袋群を前記第1の方向に搬送するように構成され、
前記動き検出センサは、前記分包袋群において前記第1の方向に延びるシール部の動きを検出する、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記動き検出センサは、前記分包袋群に光を照射し、前記分包袋群を透過又は反射した光を検出する光センサである、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記スリップ判断部は、前記搬送装置が、前記分包袋群を、前記分包袋の1包分搬送する度に、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断する、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記スリップ判断部は、前記搬送装置による搬送量に対する、前記動き検出センサで検出される前記分包袋群の表面の動きの量に基づいて、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断する、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記動き検出センサの検出位置が、前記搬送装置の搬送方向において、前記撮影装置の撮影位置より上流側又は下流側の少なくとも一方に設けられる、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
前記スリップ判断部の判断結果に基づいて、前記搬送装置、前記撮影装置、及び前記鑑査部を制御するスリップ時制御部をさらに備える、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の分包薬剤の鑑査装置であって、
分包機から排出される前記分包袋群を取り込み重ねて保持する保持装置から、前記分包袋群を引き出し、前記搬送装置により搬送する、分包薬剤の鑑査装置。
【請求項10】
搬送装置に、薬剤を内包する複数の分包袋群を搬送させる処理と、
撮影装置に、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影させる処理と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する処理と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する動き検出センサから検出結果を取得する処理と、
前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断する処理と、
前記判断の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させる、分包薬剤の鑑査装置の制御プログラム。
【請求項11】
搬送装置が、薬剤を内包する複数の分包袋群を搬送する工程と、
撮影装置が、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する工程と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かをコンピュータにより鑑査する工程と、
動き検出センサが、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する工程と、
コンピュータが、前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断する工程と、
コンピュータが、前記判断の結果を出力する工程と、を有する、分包薬剤の鑑査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分包薬剤の鑑査装置、鑑査装置の制御プログラム、及び鑑査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第WO2012/147907号には、薬剤鑑査装置が開示されている。薬剤鑑査装置は、分包紙に一服用分ずつ分包された状態で供給された鑑査対象の薬剤の数量及び種類を、一包ずつ鑑査する。薬剤鑑査装置には、一服用分の薬剤を包装した分包袋が複数、連続するように形成された分包袋連続体が供給される。薬剤鑑査装置は、分包袋連続体を取り込み、搬送する搬送手段を備える。搬送手段の搬送経路に配置された一包分の薬剤が、撮影手段により撮影される。撮影手段によって得られた画像から、薬剤の種類及び数量が特定される。照合手段は、薬剤の種類及び数量と、処方データとを照合し、分包袋内に収容されている薬剤の種類及び数量が処方情報通りであるか否かを確認する。搬送手段は、分包袋連続体を、1包分の分包袋に相当する分ずつ順次下流側に移送させるよう制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第WO2012/147907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
分包薬剤の鑑査装置では、連続した複数の分包袋群が搬送され、搬送経路上の分包袋が1包ずつ順次撮影される。仮に、搬送において、分包袋群が搬送装置に対してスリップして1包分の搬送ができない事態が生じた場合、同じ分包袋が2回撮影されることが想定される。この場合、スリップ発生以降に撮影される各分包袋の画像が、本来の鑑査対象からずれることになる。
【0005】
発明者らは、このような事態を避けるため、スリップを検出する機能を鑑査装置に追加することを検討した。分包袋の分包紙は透明である場合が多い。透明な分包紙の移動量を、簡単な構成で検出することは、難しいことがわかった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で、分包袋群のスリップを検出できる分包薬剤の鑑査装置、鑑査装置の制御プログラム、及び、鑑査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における分包薬剤の鑑査装置は、薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する動き検出センサと、前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断するスリップ判断部と、前記スリップ判断部の判断結果を出力する出力部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、分包薬剤の鑑査装置において、簡単な構成で、分包袋群のスリップを検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図2】分包袋群の一例を示す図である。
図3図1に示す鑑査装置の搬送装置付近の構成例を示す斜視図である。
図4】動き検出センサの構成例を示す図である。
図5】動き検出センサの変形例を示す図である。
図6】動き検出センサの他の変形例を示す図である。
図7】動き検出センサから出力される信号の例を示す図である。
図8図1に示す鑑査装置の動作例を示すフローチャートである。
図9図8におけるS4の1包送り搬送の詳細な処理例を示すフローチャートである。
図10】エラーメッセージの例を示す図である。
図11】薬剤分包システムの構成例を示す図である。
図12】本実施形態における鑑査装置の構成例を示す図である。
図13図12に示す鑑査装置で撮影された画像を表示する画面の例を示す図である。
図14図12に示す鑑査装置で撮影された画像を検索する画面の例を示す図である。
図15】本実施形態における鑑査装置の他の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明者らは、分包薬剤の鑑査装置において、搬送される分包袋群の移動量を簡単な構成で検出することを検討した。検討において、発明者らは、搬送中の分包袋群の表面の凹凸が微妙に変化している点に着目した。鋭意検討の結果、発明者らは、この表面の動きを検出することで分包袋群のスリップを検出する構成に想到した。
【0011】
(構成1)
本発明の実施形態における分包薬剤の鑑査装置は、薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する動き検出センサと、前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断するスリップ判断部と、前記スリップ判断部の判断結果を出力する出力部とを備える。
【0012】
上記構成1の鑑査装置では、搬送装置により搬送される分包袋群を撮影して得られる画像を用いて、各分包袋の薬剤が処方通りか否かが鑑査される。この構成において、搬送装置により搬送される分包袋群の表面の動きを検出する動き検出センサが設けられる。分包袋群が搬送方向に移動する場合、その表面が微妙に変化する。そのため、スリップ判断部は、搬送装置が搬送動作している時に検出される分包袋群の表面の動きにより、搬送動作に応じて分包袋群が移動しているか否か判断することが可能になる。スリップ判断部の判断結果は出力部により出力される。このようにして、動き検出センサ、スリップ判断部、及び出力部という簡単な構成で、分包袋群のスリップ検出が可能になる。
【0013】
(構成2)
上記構成1において、前記動き検出センサは、前記分包袋群のシール部の表面の動きを検出するよう構成されてもよい。シール部の表面に細かい凹凸が形成される。動き検出センサがシール部の動きを検出することで、細かい凹凸の動きを検出できる。そのため、動き検出センサが、分包袋群の移動をより精度よく検出できる。その結果、より精度の高いスリップ判断が可能になる。
【0014】
動き検出センサは、例えば、搬送装置で搬送される分包袋群のシール部の表面が通る位置を検出するよう配置されてもよい。動き検出センサが、分包袋群の幅方向の一部の表面を検出する位置に配置されてもよい。この場合、分包袋群の幅方向においてシール部が配置される部分の表面を検出する位置に動きセンサが配置されることが好ましい。
【0015】
分包袋は、分包紙を折り、重なった部分のうち一部を熱溶着して袋状とすることで形成される。分包袋の熱溶着された部分がシール部となる。分包袋のシール部の表面は、凹凸形状のシール痕を多数有する。シール部の表面の凹凸は、例えば、1つの分包袋において、搬送方向において、周期的に繰り返される形状であってもよい。シール部は、分包袋群において分包袋群の連なる方向(第1の方向)に延びて形成されてもよい。
【0016】
(構成3)
上記構成1又は2において、前記搬送装置は、第1の方向に連なった前記分包袋群を前記第1の方向に搬送するように構成されてもよい。前記動き検出センサは、前記分包袋群において前記第1の方向に延びるシール部の動きを検出するよう構成されてもよい。これにより、搬送方向に複数の分包袋にわたって延びるシール部の表面の動きを動き検出センサで検出する構成となる。そのため、より正確なスリップ検出が可能になる。
搬送装置は、分包袋群に接して、分包袋群に対して搬送方向へ進める力を作用させる作用部と、作用部を動作させる動力源を有してもよい。搬送装置の作用部は、例えば、駆動輪及び従動輪に巻き付けられたベルト又はチェーン等の無端軌道機構であってもよいし、ローラ等の回転体であってもよい。搬送装置の動力源は、例えば、モータであってもよい。
【0017】
(構成4)
上記構成1~3のいずれかにおいて、前記動き検出センサは、前記分包袋群に光を照射し、前記分包袋群を透過又は反射した光を検出する光センサであってもよい。これにより、簡単な構成で、動き検出センサを実現できる。
【0018】
動き検出センサに用いられる光センサは、例えば、分包袋群に対して投光する投光素子と、分包袋群を透過又は反射した光を受光する受光素子とを有してよい。光センサは、受光素子が受けた光の光量、角度、時間、又は、画像の少なくとも1つに基づき、分包袋群の表面の動きを検出することができる。光センサは、一例として、分包袋群に照射した光と、分包袋群から検出した光の差に基づいて、前記分包袋群の表面の位置が変化しているか否かを出力するよう構成されてもよい。
【0019】
動き検出センサは、搬送装置で搬送される分包袋群の表面の動きを、非接触で、検出する非接触センサであってもよい。この場合、動き検出センサが、分包袋群の搬送に影響を与えない。なお、動き検出センサは、搬送装置により搬送される分包袋群の撮影装置側の表面の動きを検出してもよいし、分包袋群の撮影装置とは反対側の表面の動きを検出してもよい。なお、分包袋群の表面は、分包袋群の最外面である。
【0020】
動き検出センサは、搬送装置で搬送される分包袋群の表面の法線方向の変化を検出するよう構成されてもよい。スリップ判断部は、例えば、動き検出センサが分包袋群の表面の法線方向の変化を検出している場合に、前記分包袋群がスリップせずに搬送されていると判断することができる。
【0021】
(構成5)
上記構成1~4のいずれかにおいて、前記スリップ判断部は、前記搬送装置が、前記分包袋群を、前記分包袋の1包分搬送する度に、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断してもよい。これにより、分包袋群のそれぞれの分包袋の1つずつに対してスリップの検出が可能になる。なお、この場合、スリップ検出部が、ある1包分の搬送においてスリップしていると判断した場合、次の1包分を搬送する前に、出力部が、スリップしていることを示す情報を出力してもよい。これにより、次の1包分の搬送前にスリップに対する鑑査装置による対応動作が可能になり得る。
【0022】
(構成6)
上記構成1~5のいずれかにおいて、前記スリップ判断部は、前記搬送装置による搬送量に対する、動き検出センサで検出される分包袋群の表面の動きの量に基づいて、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断してもよい。これにより、搬送装置の搬送動作に対する分包袋群が追随して動く度合いによって、スリップの判断ができる。
【0023】
例えば、スリップ判断部は、搬送装置が単位搬送量だけ分包袋群を搬送する動作をする期間に動き検出センサで検出された分包袋群の表面の動きの量に基づき、スリップを判断してもよい。この場合、単位搬送量は、例えば、鑑査対象の分包袋の1包(1袋)分としてもよい。これにより、分包袋1包分の搬送においてスリップが発生したか否かを判断できる。搬送する動作は、例えば、搬送の動力源(例えば、モータ)の駆動であってもよい。分包袋群の表面の動きの量は、例えば、動いている時間、動いた距離、その他の動きの量を示す物理量であってもよい。
【0024】
スリップ判断部は、分包袋群のスリップ量を決定してもよい。例えば、スリップ判断部は、搬送装置の搬送動作中において動き検出センサにより検出される分包袋群の表面の動きの量に基づき、スリップ量を決定してもよい。例えば、搬送装置の搬送動作期間において、分包袋群の表面の動きが検出されなかった時間、すなわち、分包袋群がスリップしていた時間が、スリップ量として決定されてもよい。
【0025】
例えば、前記搬送装置は、1包分の搬送量を設定可能であってもよい。前記スリップ判断部は、前記搬送装置が前記分包袋群の1包分を搬送する間に前記動き検出センサで検出される前記分包袋群の表面の動きを示す値と、閾値との比較により、前記スリップを判断してもよい。前記閾値は、前記1包分の搬送量に応じて決定されてもよい。これにより、分包袋1包の搬送方向の長さに応じた適切な閾値が決定される。その結果、分包袋群の1包分の搬送に対してより精度よくスリップの検出ができる。
【0026】
(構成7)
上記構成1~6のいずれかにおいて、前記動き検出センサの検出位置が、前記搬送装置の搬送方向において、前記撮影装置の撮影位置より上流側又は下流側の少なくとも一方に設けられてもよい。すなわち、搬送装置の搬送路において、撮像装置の撮影範囲より上流の位置又は下流の位置の少なくとも一方において動き検出センサの検出位置が設けられてもよい。これにより、撮影装置で撮影される分包袋群のスリップをより精度よく判断できる。例えば、撮影範囲より上流の位置又は下流の位置のうち、搬送装置の動力原から作用部に動力を伝達する部材が配置される方に、動き検出センサの検出位置が設けられてもよい。
【0027】
(構成8)
上記構成1~7のいずれかにおいて、前記分包薬剤の鑑査装置は、前記スリップ判断部の判断結果に基づいて、前記搬送装置、前記撮影装置、及び前記鑑査部を制御するスリップ時制御部をさらに備えてもよい。これにより、スリップが検出された場合に、スリップに対応する動作を鑑査装置が行うことができる。
【0028】
前記スリップ時制御部は、前記スリップ判断部が、前記分包袋群がスリップしていると判断した場合に、前記搬送装置の搬送、前記撮影装置の撮影、及び前記鑑査部の鑑査を停止させてもよい。これにより、スリップによって鑑査対象の画像がずれるのを防ぎ、且つ、スリップに対応する時間が供給される。スリップ時制御部は、上記の停止制御をした場合、スリップ時制御部は、操作者からのスリップに対応するための操作を受け付けることができる。例えば、スリップ時制御部は、出力部に、操作者にスリップに対応するための鑑査装置の操作を促す情報を出力させてもよい。この場合、スリップ時制御部は、操作者の操作がなされた後に、搬送、撮影及び鑑査を再開させてもよい。
【0029】
前記スリップ時制御部は、前記スリップ判断部が、前記分包袋群がスリップしていると判断した場合に、前記搬送装置の搬送、前記撮影装置の撮影、及び前記鑑査部の鑑査を停止させ、前記分包袋群を1包分搬送した後に、上記動作を再開させてもよい。これにより、スリップにより分包袋群が進めなかった場合に、分包袋群を進めた上で、鑑査装置の動作を再開できる。搬送装置の分包袋群を1包分搬送する動作は、操作者の操作に応じて実行されてもよい。
【0030】
前記出力部は、前記スリップ判断部が、前記分包袋群がスリップしていると判断した場合に、前記搬送装置に前記分包袋群を1包分搬送させる操作を操作者に促す情報を出力してもよい。
【0031】
前記スリップ時制御部は、前記スリップ判断部が、前記分包袋群がスリップしていると判断した場合に、前記スリップ判断部が決定したスリップ量に応じた搬送量に基づき、前記搬送装置を制御してもよい。例えば、スリップ時制御部は、スリップ量に応じた搬送量だけ、前記分包袋群を搬送させてもよい。一例として、スリップが検出された時間に応じた時間だけ、搬送装置による搬送動作が追加されてもよい。
【0032】
前記撮影装置は、搬送される前記分包袋群の各分包袋を順次、撮影してもよい。例えば、撮影装置は、搬送装置の搬送路において分包袋1包を含む領域を撮影範囲としてもよい。搬送装置が、分包袋群を1包分搬送して1包の分包袋を撮影範囲に配置する動作と、撮影範囲に配置された分包袋を撮影する動作とを含む1サイクル動作が複数回繰り返されるよう、搬送装置と撮影装置が制御されてもよい。この場合、1サイクル動作に、さらに、鑑査部が前記1包の分包袋の撮影画像を用いて鑑査する動作が含まれてもよい。スリップ時制御部は、この1サイクル動作において、分包袋群がスリップしていると判断された場合、そのサイクルにおける搬送装置による搬送、撮影装置による撮影、及び鑑査部による鑑査を一時停止(保留)させ、出力部に、スリップ情報を出力させてもよい。これにより、1サイクル内でスリップへの対応する機会を作ることができる。結果として、各サイクル動作において、1包分の分包袋の搬送を確実にできる。
【0033】
或いは、前記撮影装置は、搬送される前記分包袋群の動画を撮影してもよい。この場合、スリップ時制御部は、分包袋群がスリップしていると判断された場合に、撮影装置による撮影及び鑑査部による鑑査を停止させてもよい。又は、スリップ時制御部は、撮影及び鑑査の動作を停止せず、出力部にスリップ情報の出力をさせてもよい。
【0034】
(構成9)
上記構成1~8のいずれかにおいて、前記鑑査装置は、分包機から排出される前記分包袋群を取り込み重ねて保持する保持装置から、前記分包袋群を引き出し、前記搬送装置により搬送するよう構成されてもよい。保持装置から引き出された分包袋群が、鑑査装置の搬送装置で搬送される。これにより、分包機から排出された分包袋群を効率よく鑑査することができる。
【0035】
分包機は、薬剤を包装して分包袋群を形成する。分包機は、例えば、処方データに基づいて、分包袋群のそれぞれの分包袋に薬剤を封入する。分包機は、分包紙の折り重なった部分の一部をシールすることで、分包袋を形成する。分包機は、薬剤が内包された連続する複数の分包袋である分包袋群を排出する。分包機は、例えば、錠剤分包機であってもよい。
【0036】
保持装置は、例えば、分包袋群を巻き取った状態で保持する巻き取り装置であってよい。なお、保持装置は、分包袋群を巻き取る構成に限られない。例えば、保持装置は、分包袋群を折り重ねた状態で保持する構成であってもよいし、ダンサーローラー機構によって保持する構成であってもよい。
【0037】
分包機、保持装置及び鑑査装置を含む薬剤分包システムも、本発明の実施形態に含まれる。また、鑑査装置は、保持装置を含んでもよい。或いは、分包機から排出された分包帯が、保持装置等を介さずに、そのまま鑑査装置に搬送されるよう構成されてもよい。分包機及び鑑査装置を含む薬剤分包装置も、本発明の実施形態に含まれる。例えば、分包機と鑑査装置が1つの筐体で構成されてもよい。この筐体には、薬剤を包装して分包袋群を形成する包装ユニットと、包装ユニットで形成された分包袋群を受け入れて分包薬剤の鑑査を実行する上記鑑査装置が収容されてもよい。
【0038】
鑑査部は、例えば、撮影装置で撮影された分包袋群の画像を用いて、各分包袋に内包される薬剤の数又は種類の少なくとも1つを決定する薬剤決定部と、薬剤決定部が決定した前記薬剤の数又は種類と、処方データとを照合することにより、各分包袋に処方通りに薬剤が分包されているか否かを判断する処方判断部とを有してもよい。
【0039】
本発明の実施形態における分包薬剤の鑑査装置の制御プログラムは、搬送装置に、薬剤を内包する複数の分包袋群を搬送させる処理と、撮影装置に、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影させる処理と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する処理と、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する動き検出センサから検出結果を取得する処理と、前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断する処理と、前記判断の結果を出力する処理と、をコンピュータに実行させる。
【0040】
本発明の実施形態における分包薬剤の鑑査方法は、搬送装置が、薬剤を内包する複数の分包袋群を搬送する工程と、撮影装置が、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する工程と、前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かをコンピュータにより鑑査する工程と、動き検出センサが、前記搬送装置により搬送される前記分包袋群の表面の動きを検出する工程と、コンピュータが、前記搬送装置の搬送動作中において前記動き検出センサにより検出される前記分包袋群の表面の動きに基づき、前記分包袋群が前記搬送装置に対してスリップしているか否かを判断する工程と、コンピュータが、前記判断の結果を出力する工程と、を有する。
【0041】
本発明の他の実施形態における分包薬剤の鑑査装置は、
薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、
前記分包袋群のうち少なくとも1つの分包袋を撮影するために、前記撮影装置とは別に設けられた追加撮影装置と、を備える。前記追加撮影装置で撮影された分包袋の画像は、撮影日時と対応付けて記録されてもよい。なお、この鑑査装置を、上記構成1~9のいずれかと組み合わせてもよい。
【0042】
追加撮影装置により、鑑査がされた分包袋を再度撮影し、その撮影の日時とともに記録することができる。例えば、鑑査部による監査の結果NG(処方通りでない)と判断された分包袋に、処方通りの薬剤を入れて再包装した場合に、再包装した分包袋(修正した分包袋)を、追加撮影装置により撮影することができる。これにより、処方通りの薬剤を包装したことを示すエビデンス画像を日時情報とともに記録できる。
【0043】
追加で撮影された分包袋の画像は、前記鑑査部の鑑査結果と対応付けて記録されてもよい。例えば、追加で撮影された分包袋の画像が、前記鑑査部で内包される薬剤が処方通りでないと判断された分包袋の再撮影画像として、記録されてもよい。また、追加撮影装置で撮影された分包袋の画像の表示に伴い、その画像の撮影日時が、画像と対応付けられて表示されてもよい。
【0044】
前記鑑査装置は、前記撮影装置で撮影された分包袋群の画像及び、前記追加撮影装置で撮影された前記分包袋の画像の中から、操作者の指示に応じて、前記追加撮影装置で撮影された分包袋の画像を検索して出力してもよい。これにより、操作者は、追加撮影装置で撮影された分包袋の画像に素早くアクセスすることができる。
【0045】
前記追加撮影装置は、前記搬送装置及び前記撮影装置を有する筐体とは別の筐体に設けられてもよい。これにより、前記搬送装置及び前記撮影装置とは、離れた遠隔地において、再撮影が可能になる。なお、前記追加撮影装置は、前記鑑査部の鑑査結果を記録する記憶装置にアクセス可能であってもよい。これにより、鑑査部による分包袋の鑑査結果と、追加撮影装置により前記分包袋を再撮影した画像とを対応付けて記録することができる。
【0046】
なお、前記追加撮影装置で撮影された分包袋の画像は、動画像であってもよい。追加撮影装置で、分包袋の動画像を撮影することで、分包袋の修正した箇所や静止画では確認しにくい場所が確認しやすくなる。そのため、分包袋を修正したことのエビデンスとしての撮影画像の効力を向上させることができる。
【0047】
本発明の他の実施形態における分包薬剤の鑑査装置は、
薬剤を内包する複数の分包袋である分包袋群を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送される前記分包袋群を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置により撮影された前記分包袋群の画像を用いて、前記分包袋群のそれぞれに内包される前記薬剤が、処方通りに分包されているか否かを鑑査する鑑査部と、を備える。
前記鑑査装置は、前記鑑査部で鑑査済みの分包袋群のうち、修正した分包袋の指定を操作者から受け付け、前記鑑査済みの分包袋群を前記搬送装置で再度搬送させて、前記指定された分包袋を前記撮影装置で再撮影する再撮影部を、さらに有してもよい。
これにより、修正した分包袋のみを撮影装置により再撮影することができる。なお、この鑑査装置を、上記構成1~9のいずれかと組み合わせてもよい。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0049】
(鑑査装置の構成例)
図1は、鑑査装置1の構成例を示す図である。鑑査装置1は、分包袋群の各分包袋に一服用分ずつ分包された状態で供給された薬剤を、一包ずつ鑑査する装置である。図1に示す例では、鑑査装置1は、分包袋群Pを搬送する搬送装置2、分包袋群Pを撮影する撮影装置18、分包袋群Pに光を照射する照明装置20a、20b、分包袋群Pの薬剤を均す均し機構26、分包袋群Pの供給を検知する供給検知部24a、分包袋群Pの排出を検知する排出検知部24b、分包袋群Pの表面の動きを検出する動き検出センサ5、及び制御装置10を備える。制御装置10は、鑑査部11、スリップ判断部12、スリップ時制御部13、及び、出力部14を有する。制御装置10は、ディスプレイ22a、及び入力装置22bに接続される。入力装置22bは、ディスプレイ22aに内蔵されるタッチパネル又は、キーボード、マウス等の外付けの入力デバイスであってもよいし、鑑査装置1に設けられたボタン、スイッチ、レバー等の入力装置であってもよい。
【0050】
図2は、分包袋群Pの一例を示す図である。分包袋群Pは、一服用分の薬剤を包装した分包袋pが複数、第1の方向に連続するように形成された分包袋連続体である。図2の例では、分包袋群Pの先頭部分には、情報媒体Iが付されている。このように、先頭又は後端その他の所定位置に存在する分包袋pを、薬剤を包装していない空の分包袋peとして、情報媒体Iを付すことができる。情報媒体Iは、バーコード等のコードの他、文字、記号その他印刷であってもよいし、ICチップ等のデータの記録媒体であってもよい。情報媒体Iは、例えば、分包袋群Pに包装される薬剤の処方に関する情報を有する。例えば、患者名、薬品名、服用方法、処方日等の情報や、又は、これらの情報にアクセスするための情報が情報媒体Iにより示されてもよい。
【0051】
分包袋群Pは、帯状の分包紙を幅方向略中央部において折り曲げてシール部Sを形成することにより形成されたものである。シール部Sの表面は凹凸を有する。シール部Sの凹凸は、例えば、圧着装置(図示せず)のローレット痕等の点状のシール痕を多数有する凹凸形状である。シール部Sは、分包袋群Pの連なる方向(すなわち第1の方向L)に延び、複数の分包袋pにわたって連続して形成される部分と、隣り合う2つの分包袋の間に、分包袋群Pの幅方向Wに延びて形成される部分を有する。
【0052】
図1を参照し、搬送装置2は、モータ2aと、モータ2aにより駆動される駆動輪2cと、駆動輪2c、従動輪2dと、駆動輪2c及び従動輪2dに架け渡されたベルト2bを含む。ベルト2bは、分包袋群Pに接し、分包袋群Pに対して搬送方向への進める力を作用させる作用部の一例である。図1の例では、搬送装置2は、無端軌道を有するベルトコンベアである。搬送装置2の構成は、これに限られず、例えば、ローラコンベアその他のコンベアであってもよい。搬送装置2は、作用部(ベルト2b)に対して、分包袋群Pを押し付けるニップローラ3a~3hを有する。分包袋群Pは、ベルト2bとニップローラ3a~3hの間において、ベルト2bとニップローラ3a~3hから力を受けながら搬送される。複数のニップローラ3a~3hが、搬送方向に並んで配置される。最も上流のニップローラ3aは、他のニップローラ3b~3hより直径が大きい。ニップローラ3a~3hにより、分包袋群Pが搬送装置2の作用部(ベルト2b)に対するグリップ力を確保できる。そのため、分包袋群Pが搬送装置2に対してスリップしにくくなる。
【0053】
図3は、図1に示す鑑査装置1の搬送装置2付近の構成例を示す斜視図である。図3に示す例では、ニップローラ3a~3hは、ベルト2bに対して押し付けられるように付勢された状態で配置される。ニップローラ3a~3hのそれぞれは、アーム31を介して、鑑査装置1へ取り付けられる。アーム31の一方端部には、ニップローラが回転可能に取り付けられ、アーム31の他方端部は、鑑査装置1に回転可能に取り付けられる。
【0054】
図3に示す例では、ベルト2b及びニップローラ3a~3hは、分包袋群Pの幅方向の一部のシール部Sが搬送方向に延びる部分に相当する領域に設けられる。これにより、搬送される分包袋群Pのシール部Sが、ベルト2bとニップローラ3a~3hの間に位置する。分包袋群Pの薬剤は、ベルト2bとニップローラ3a~3hに挟まれない。ベルト2bの横には、ガイド27とステージ25が搬送方向に並んで設けられる。ガイド27とステージ25の表面に分包袋群Pが載せられた状態で搬送される。図3の例では、ベルト2b、ガイド27及びステージ25によって分包袋群Pの搬送路が構成される。
【0055】
ステージ25は、撮影装置18の撮影範囲に設けられる。ステージ25の下方、すなわち、分包袋群Pの載置面と反対側には、背面照明装置であるバックライト20bが設けられる。ステージ25は、バックライト20bの光を透過する材料で形成される。搬送装置2は、分包袋群Pを搬送して、1包の分包袋の全体がステージ25に配置することができる。
【0056】
図1に示すように、照明装置20aは、撮影装置18の撮影範囲にある分包袋群Pを照射する。照明装置20aは、分包袋群Pの搬送路に対して、撮影装置18と同じ側にある。すなわち、照明装置20aは、撮影装置18と同様に、ステージ25の上方に配置される。照明装置20aは、複数の発光部20a1を含む。複数の発光部20a1は、例えば、環状に並んで、配置されてもよい。発光部20a1は、例えば、発光ダイオードを光源としてもよい。
【0057】
図3の例では、撮影装置18の撮影範囲よりも上流の搬送経路において、分包袋群に収容された薬剤を均す均し機構26が設けられる。均し機構26は、分包袋群Pを受けるガイド27の搬送面に対して、交差する方向に移動可能なピン部材と、ピン部材を動かすアクチュエータ(例えば、モータ)を含む。アクチュエータは、ピン部材を搬送面と交差する方向に振動させてもよい。
【0058】
図3の例では、ステージ25より上流の搬送路において、分包袋群Pの面に垂直方向の動きを規制する第1規制部材23aが設けられる。ステージ25より下流の搬送路において、分包袋群Pの面に垂直方向の動きを規制する第2規制部材23bが設けられる。第1規制部材23a及び第2規制部材23bは、搬送される分包袋群Pの幅方向に延びる軸を中心に、分包袋群Pに接触する範囲で揺動可能な接触部材を含む。第1規制部材23a及び第2規制部材23bは、分包袋群Pの薬剤が封入される部分、すなわち、シール部S以外の部分を押さえる位置に配置される。
【0059】
図1を参照し、制御装置10は、搬送装置2、照明装置20a、20b、撮影装置18、及び、均し機構26を制御する。制御装置10は、供給検知部24a、排出検知部24b、及び動き検出センサ5から検出結果を取得する。制御装置10は、これらの検出結果に基づいて、搬送装置2、照明装置20a、20b、撮影装置18、及び、均し機構26を制御する。制御装置10の鑑査部11は、搬送装置2、照明装置20a、20b、撮影装置18の動作と協調して、分包袋群Pの各分包袋の薬剤の鑑査を実行する。鑑査部11は、鑑査処理において、分包袋群Pに内包される薬剤の処方情報を含む処方データを用いる。鑑査部11は、処方データが記録された記録装置にアクセス可能に構成される。例えば、鑑査部11は、分包袋群Pに付された情報媒体Iの情報を用いて処方データにアクセスしてもよい。なお、情報媒体Iの情報は、撮影装置18が撮影した情報媒体Iの画像から鑑査部11が取得してもよいし、鑑査装置1に設けられた情報媒体Iの情報を読み取るための読み取り機(バーコードリーダ、又はICタグのリーダ等)が取得してもよい。
【0060】
動き検出センサ5は、搬送装置2により搬送される分包袋群Pの表面の動きを検出する。スリップ判断部12は、搬送装置2の動作と動き検出センサ5の検出結果に基づいて、分包袋群Pがスリップしていないか判断する。スリップ時制御部13は、スリップ判断部12がスリップしていると判断した場合に、鑑査部11は、搬送装置2及び撮影装置18に対して予め決められたスリップ時の制御を実行する。出力部14は、スリップ判断部12がスリップしていると判断した場合に、スリップに関する情報を、ディスプレイ22aに出力する。
【0061】
図1に示す例では、搬送装置2において、分包袋群Pを作用部であるベルト2bに押し付けるニップローラ3a~3hを設けて、スリップしにくい構成としている。発明者らは、分包袋群Pをベルト2bに押し付ける力を弱くすることで、分包袋群Pがスタックしにくくできることを見出した。分包袋群Pをベルト2bに押し付ける力を弱くすると、分包袋群Pは、スリップしやすくなる。分包袋群がスリップした場合、鑑査装置は、同じ分包袋を複数回鑑査してしまう。その結果、スリップ発生以降に鑑査する分包袋がずれる事態が生じ得る。この場合、その分包袋群の鑑査をやり直す必要がある。そこで、発明者らは、分包袋群のスリップを検出する機能を追加することを検討した。しかし、スリップ検出機能を追加すると、鑑査装置が複雑化し、製造コストが上昇することが想定された。そこで、発明者らは、簡単な構成で、鑑査装置における分包袋群のスリップ検出を可能にすることを検討した。発明者らは、スリップせずに搬送中される分包袋群は、表面の凹凸が微妙に変化している点に着目した。鋭意検討の結果、搬送装置で搬送される分包袋群の表面の動きを検出し、検出結果に基づいてスリップを判断する構成に想到した。これにより、簡単な構成で、鑑査装置における分包袋群のスリップを検出することが可能になることがわかった。
【0062】
制御装置10は、1又は複数のコンピュータにより構成される。例えば、搬送装置2及び撮影装置18の制御、並びに、鑑査部11、スリップ判断部12、スリップ時制御部13、及び出力部14の処理は、コンピュータが備えるプロセッサが、メモリのプログラムを実行することで実現することができる。このようなプログラム及びそれを記録した非一時的な(non-transitory)記録媒体も本発明の実施形態に含まれる。また、これらの処理の少なくとも一部を、専用回路が実行してもよい。コンピュータは、搬送装置2が収納される筐体に内蔵されてもよいし、この筐体の外部で、鑑査装置1の各部と通知可能なコンピュータであってもよい。例えば、PC等の汎用コンピュータで、制御装置10の少なくとも一部の機能を実現することができる。
【0063】
(動き検出センサの例)
図1及び図3に示す例では、分包袋群Pの表面の動きを検出する動き検出センサ5は、撮影装置18の撮影範囲より下流で分包袋群Pを検出するよう配置される。これにより、搬送路の下流で分包袋群Pがスタックしているが、上流では依然として搬送装置2の動きに合わせて移動しているといった状態であっても、スリップを検出できる。また、動き検出センサ5を下流に設けることで、撮影範囲より上流において、分包袋群Pに振動を与えたり、面方向の変位を規制したりするための部材の配置自由度を高くすることができる。なお、動き検出センサ5を、撮影範囲より上流で分包袋群Pを検出するよう配置してもよい。この場合、例えば、上流で分包袋群Pがスタックしているが、下流では搬送装置2の動きに合わせて移動している状態において、スリップを検出できる。また、撮影範囲の上流及び下流の両方で、分包袋群Pを検出するよう動き検出センサ5が配置されてもよい。図3の例では、撮影範囲の上流及び下流のうち、駆動輪2cが配置される方に、動き検出センサ5が配置される。駆動輪2cは、モータ2aから作用部に動力を伝達する部材の一例である。
【0064】
図3に示す例では、動き検出センサ5は、分包袋群Pのシール部Sの動きを検出する位置に配置される。例えば、図2に示す線SLの位置で分包袋群Pの表面の動きを検出するよう動き検出センサ5が配置される。この場合、動き検出センサ5は、分包袋群Pの搬送方向すなわち第1の方向Lに連続して延びるシール部Sの表面の動きを検出する。これにより、分包袋群Pの搬送方向の動きをより精度よく検出することができる。なお、動き検出センサ5の配置は、この例に限られない。例えば、動き検出センサ5は、分包袋群Pのシール部S以外の表面の動きを検出してもよい。
【0065】
図3に示す例では、動き検出センサ5は、搬送路の分包袋群Pを受ける搬送面に垂直な方向から見て、ベルト2b(作用部)と重なる位置で、分包袋群Pを検出するように、設けられる。これにより、分包袋群Pの搬送方向の動きを検出しやすくなる。図3の例では、動き検出センサ5の検出位置は、最も下流のニップローラ3hと下流から2番目のニップローラ3fの間の分包袋群P2である。このように、動き検出センサ5の検出位置は、ニップローラ3hの間であってもよいし、複数のニップローラ3a~3hの下流又は上流であってもよい。
【0066】
図4は、動き検出センサ5の構成例を示す図である。図4の例では、動き検出センサ5は、センサ筐体50と、センサ筐体50に設けられた検出回路51、投光素子52、受光素子53、ファイバ54、及び、ファイバ先端のヘッド55を含む。ファイバ54は、投光素子52及び受光素子53に接続される。ファイバ54は、光ファイバである。投光素子52の光が、ファイバ54を通りヘッド55から検出対象位置へ向けて出射される。ヘッド55は、検出対象である分包袋群Pが通る位置へ向けてファイバの光を出射するよう配置される。また、ヘッド55は、分包袋群Pからの反射光を受光する。ヘッド55で受光した光は、ファイバ54を通って受光素子53へ導かれる。検出回路51は、受光素子53が受光した光に応じて、検出結果を示す信号を出力する。例えば、検出回路51は、分包袋群Pが動いているか否かを示す信号を出力してもよい。検出回路51は、制御装置10と接続される。検出回路51の信号は、制御装置10で処理される。図4の例は、検出物体に光を照射し、検出物体からの反射光を検出する反射型の光電センサの例である。ファイバは、例えば、平行型、同軸型又は分割型のものを用いることができる。
【0067】
図5は、動き検出センサ5の変形例を示す図である。図5は、透過型の光電センサの例である。図5に示す例では、投光素子52に接続されるファイバ54aの先端のヘッド55aから出射した光を、受光素子53に接続されるファイバ54bの先端のヘッド55bで受光する。投光用ヘッド55aと、受光用ヘッド55bの間を分包袋群Pが通るように、これらのヘッドが配置される。すなわち、投光用ヘッド55aと、受光用ヘッド55bの間の光軸を、搬送される分包袋群Pが遮る。
【0068】
図4及び図5は、いずれも、投光素子52及び受光素子53にファイバを接続し、ファイバ先端を、搬送される分包袋群Pを検出する位置に配置して構成されるファイバセンサの例である。動き検出センサ5として、ファイバセンサを用いることで、より簡単な構成で、スリップを検出することが可能になる。また、動き検出センサ5の取り付け位置の自由度が高くなる。
【0069】
図6は、動き検出センサ5の他の変形例を示す図である。図6に示すように、投光素子52及び受光素子53に、ファイバを接続せず、直接、分包袋群Pに対して投光、及び分包袋群Pから受光する構成であってもよい。この場合、投光素子52及び受光素子53により分包袋群Pを検出できる位置にセンサ筐体50が配置される。
【0070】
上記図4図6に示した例では、投光素子52、受光素子53、及び検出回路51が、1つの筐体に収納されているが、これらの少なくとも1つは、異なる筐体に収納されてもよい。また、投光素子52は、例えば、可視光線又は赤外線等の光を発射するものであってもよい。投光素子52は、レーザ光を発射する構成であってもよい。
【0071】
検出回路51は、受光素子53が検出した光の受光量に応じた信号を出力することができる。検出回路51は、例えば、受光素子53が検出した光を電気信号に変換する回路を含んでもよい。また、検出回路51は、アンプ(増幅器)の機能を有してもよい。投光素子52が光を投光する分包袋群Pが移動した場合、分包袋群Pの反射光又は透過光の量が変化する。すなわち、受光素子53で検出される光が変化する。特に、分包袋群Pの表面に凹凸がある場合、反射光又は透過光の量の変化の周期が短くなる傾向にある。検出回路51は、受光素子53で検出される光の変化を反映した信号を出力することができる。検出回路51は、受光量の変化を示す波形の信号又はこれを処理した信号を出力してもよい。これにより、制御装置10では、検出回路51の出力信号によって、分包袋群Pの表面の動きがあるか否かを判断することができる。
【0072】
一例として、検出回路51は、受光量の変化がある時と、変化がない時と異なるレベルの信号を出力してもよい。例えば、分包袋群Pのシール部Sの凹凸が細かいために、受光量の変化の周期が短くなり受光量の変化を示す信号の増減切り替わりの幅が小さくなる場合がある。このような場合、受光量の変化を示す信号に遅延フィルタ処理を施すことができる。これにより、検出回路51は、受光量の変化がある期間にほぼ一定のレベルの信号を出力することができる。
【0073】
なお、受光素子53の検出に基づくセンシングの態様は、上記の受光量に基づくものに限られない。動き検出センサ5は、例えば、受光した光の角度を検出してもよい。分包袋群Pの表面と受光素子53との距離が変化すると、受光素子53が受光するレーザの角度も変化する。受光の角度の変化により、分包袋群Pの表面と受光素子53との距離の変化が検出でき、結果として、表面の動きが検出できる。この場合、例えば、投光素子52はレーザを投光するよう構成し、受光素子53はCMOSセンサで受光したレーザの角度を検出するよう構成されてもよい。
【0074】
又は、動き検出センサ5は、投光素子52が投光したレーザ光が、分包袋群Pの表面で反射して受光素子53に到達までの時間の変化によって、分包袋群Pの表面までの距離の変化を検出してもよい。また、他の例として、動き検出センサ5は、受光素子53で検出される光の画像の変化に基づいて、分包袋群Pの表面の動きを検出する構成であってもよい。
【0075】
なお、動き検出センサ5は、上記のような光電センサを含む光センサに限られない。例えば、超音波センサ等の非接触センサ、若しくは、接触センサであってもよい。
【0076】
図7は、動き検出センサ5から出力される信号の例を示す図である。図7において、縦軸は信号のレベル、横軸は時間tを示す。線Sは、動き検出センサ5の出力波形を示す。図7の例では、動き検出センサ5は、分包袋群Pの表面の動きが検出されていない時は、Soffレベルの信号を出力し、動きを検出している時は、Sonレベルの信号を出力する。線Mは、搬送装置2のモータ2aの動作を示す信号の波形を示す。モータ2aが駆動している時、すなわち、搬送動作を行っている時は、モータの動作波形信号はMonレベルとなり、モータ2aが駆動していない時は、モータの動作波形信号はMoffレベルとなる。
【0077】
(スリップ判断部の例)
制御装置10は、モータの動作を示す信号と、動き検出センサ5からの信号を受け取る。スリップ判断部12は、これらの信号に基づいて、搬送装置2に対して分包袋群Pがスリップしているか否かを判断することができる。スリップ判断部12は、例えば、モータ2aが駆動している期間における動き検出センサ5で検出される分包袋群Pの移動量に基づいて、スリップの有無を判断する。一例として、図7に示す信号波形の場合、モータ2aの信号がMonの期間T1における分包袋群Pの動きが検出される時間T2が、閾値以上の場合に、スリップ判断部12はスリップなしと判断し、閾値を下回る場合は、スリップありと判断することができる。
【0078】
図7に示すモータ2aの駆動期間T1は、例えば、分包袋群Pを1包分進める時間(すなわち1包分の搬送量)とすることができる。駆動期間T1は、分包袋群Pの1包の搬送方向の長さに応じて設定されてもよい。この設定は、例えば、入力装置22bに対する操作者の入力に基づき、制御装置10が行ってもよい。これにより、1包分の搬送量が、鑑査対象の分包袋1包の長さに応じて適切に設定される。
【0079】
スリップ判断部12は、モータ2aの駆動期間T1において、動き検出センサ5の信号を所定の周期でサンプリングする。サンプリング周期は、駆動期間T1に対して十分短くすることが好ましい。例えば、図7の矢印smpで示されるタイミングでサンプリングをすることができる。スリップ判断部12は、例えば、駆動期間T1でサンプリングした複数の値のうちレベルがSonの値の数と、閾値とを比較することにより、スリップの有無が判断してもよい。又は、スリップ判断部12は、サンプリングした複数の値のうち、レベルがSon以上のもの割合が閾値以上か否かにより、スリップの有無を判断してもよい。ここで、閾値は、1包分の搬送量に応じて可変であってもよい。スリップ判断部12は、設定された1包分の搬送量に応じた閾値を用いて、スリップ判断を実行することができる。
【0080】
なお、スリップ判断部12の処理は、上記例に限られない。例えば、スリップ判断部12は、モータ2aの駆動期間T1において、動き検出センサ5の信号がVonの期間T2の長さをタイマーで計測してもよい。この場合、両期間の割合T2/T1が予め決められた条件を満たす否かによって、スリップが判断されてもよい。一例として、スリップ判断部12は、T2/T1>スリップ判断基準値K1の場合にスリップなしと判断してもよい。
【0081】
また、スリップ判断部12は、動き検出センサ5の検出結果を基にスリップ量を決定してもよい。例えば、搬送装置2の搬送量に対するスリップ量として、搬送動作時間における表面が動いてない時間の割合(T1-T2)/T1が算出されてもよい。
【0082】
(鑑査装置の動作例)
図8は、図1に示す鑑査装置1の動作例を示すフローチャートである。図8の例では、搬送路の上流において、供給検知部24aにより、分包袋群Pが供給されたことが検知された場合に(S1でYES)、搬送路の上流において、供給検知部24aの検知対象領域付近に設けられた読み取り機(リーダ)が、分包袋群Pの先端部分に付された情報媒体I(例えば、バーコード又は2次元コード)から情報を読み取る(S2)。制御装置10は、読み取った情報を基に、分包袋群Pに包装されている薬剤の処方データを取得する(S3)。情報媒体Iの情報は、例えば、外部の記録装置に記録された処方データにアクセスするための情報であってもよい。
【0083】
制御装置10は、搬送装置2を制御して、分包袋群Pを1包分下流に向かって移動させ、1包の分包袋pを撮影範囲に配置する(S4)。ここで、制御装置10は、撮影装置18の画像に基づいて搬送装置2を制御し、1包の分包袋pの全体が撮影範囲に入るよう位置決めをしてもよい。また、制御装置10は、初回のみ位置決め処理を実行し、以降は、撮影及び鑑査動作が完了する度に、1包分の分包袋pに相当する分ずつ順次、下流側に移送させるよう搬送装置2を制御してもよい。
【0084】
制御装置10は、1包の分包袋pが撮影範囲、例えば、ステージ25の上に到達すると、撮影装置18に分包袋pを撮影させる(S5)。これにより、撮影装置18は、分包袋p及びこれに収容されている薬剤を撮影してそれらの画像を、鑑査装置1に保存する。
【0085】
制御装置10は、撮影装置18による撮影に際して照明装置20a、20bを制御し、分包袋pに光を照射することができる。例えば、制御装置10は、照明装置20aをオン状態として、撮影装置18に撮影させることにより、分包袋p内の薬剤の画像(正面照明画像)を取得することができる。また、制御装置10は、照明装置20aをオフ状態とし、バックライト20bをオン状態として撮影装置18に撮影させることにより、ステージ25の分包袋p内にある薬剤のシルエットが写った画像(バックライト画像)を取得することができる。
【0086】
鑑査部11は、撮影装置18により撮影された画像に基づき、薬剤の種類の特定、又は計数の少なくともいずれかを実行する(S6)。ステージ25に分包袋pが搬送された時点で撮影装置18によって撮影された画像が、鑑査部11による薬剤の種類の特定及び計数に用いられる。
【0087】
鑑査部11は、撮影装置18によって得られた画像から、種々の方法により薬剤の種類を特定することができる。例えば、撮影装置18により得られた画像中に含まれる薬剤の外縁形状を特定することにより、薬剤の大きさや形状を割り出すことができる。また、撮影画像中における薬剤に相当する領域の色彩情報に基づき、薬剤の色を特定することができる。鑑査部11は、予め準備されている薬剤の種類、形状、大きさ、色彩等の薬剤の特徴を記録したデータベースに基づき、鑑査対象である薬剤の種類を特定することができる。或いは、ディープラーニング等の機械学習により得られた学習済みモデルデータを用いて、画像から薬剤の種類を特定することもできる。また、鑑査部11は、薬剤の表面に刻印や印刷により付されている情報に基づき、薬剤の種類等を特定することも可能である。
【0088】
鑑査部11は、撮影装置18によって得られた画像から、種々の方法により薬剤の数量を特定することができる。例えば、撮影装置8により得られた画像中に含まれる薬剤の外縁を特定し、外縁によって囲まれた領域の数を計数することにより薬剤の数量を把握することができる。また、大きさ及び形状が同程度のものが撮影画像中にいくつ含まれているかを確認すること等により、薬剤の種類毎に数量を計数することも可能である。或いは、ディープラーニング等の機械学習により得られた学習済みモデルデータを用いて、画像から薬剤の数量を特定することもできる。
【0089】
鑑査部11は、S6で特定された薬剤の種類又は数量に関する情報と、S3で取得された処方データとを照合し、分包袋p内に収容されている薬剤の種類又は数量が処方通りであるか否かを判断する(S7)。これにより、分包袋pの薬剤が処方通りに分包されているか否かが鑑査される。
【0090】
出力部14は、鑑査部11の鑑査結果を示す情報を、ディスプレイ22a等の出力デバイスに出力する(S8)。例えば、鑑査対象の分包袋pの画像と、鑑査結果が同時に表示されてもよい。さらに、処方データに基づく情報として、患者の氏名、ID番号等の患者特定情報、包数、処方された薬剤の服用日数、服用回数等の情報が表示されてもよい。また、制御装置10は、鑑査結果の表示とともに、鑑査結果の修正の入力を、入力装置22bを介して受け付けてもよい。
【0091】
以上のS4~S8の動作は、搬送路の下流端に設けられた排出検知部24bにより、分包袋群Pの末端が排出されたことが検知されるまで(S9でYES)、繰り返し実行される。これにより、分包袋群Pの各分包袋pに対して、1包分送り、撮影、及び鑑査が実行される。S9でYESの場合、制御装置10は、搬送装置2、撮影装置18、照明装置20a、20b、及び鑑査部11の処理を終了する。
【0092】
(スリップ判断を含む1包分送り動作例)
図9は、図8におけるS4の1包送り搬送の詳細な処理例を示すフローチャートである。図9に示す例では、制御装置10が、搬送装置2に、分包袋群Pを1包分下流へ移動させる(S21)。S21において、搬送装置2は、1包分の搬送量に相当する時間、モータ2aを連続して駆動させる。
【0093】
スリップ判断部12は、S21における搬送動作において、搬送量に応じた分包袋群Pの移動が検出されたか否かを判断する(S22)。具体的には、スリップ判断部12は、モータ2aの駆動期間中の動き検出センサ5の信号を取得する。スリップ判断部12は、取得した信号に基づき、搬送装置2の1包分の搬送動作期間における、分包袋群Pの表面の動きの程度を特定する。この動きの程度に基づき、搬送量に応じた分包袋群Pの移動が検出された否かが判断される。
【0094】
S22でYESの場合、スリップ判断部12は、分包袋群Pのスリップはないと判断する。1包送り動作は終了する。S22でNOの場合、スリップ判断部12は、分包袋群Pのスリップがあると判断する。この場合、出力部14は、分包袋群Pがスリップしたことを示すエラーメッセージを、ディスプレイ22aに出力する(S23)。エラーメッセージは、操作者に対してスリップに対応する操作の入力を促す情報を含んでもよい。
【0095】
図10は、エラーメッセージの例を示す図である。図10の例では、鑑査結果を表示する画面に重ねて、エラーメッセージが表示されている。この例では、送りキー操作により、分包袋を1包分送り出す操作を操作者に指示するメッセージが表示される。送りキーは、例えば、搬送装置2による分包袋Pの搬送動作を制御するレバー又はボタン等の入力装置22b(図1参照)であってもよい。操作者は、搬送路における分包袋群Pを目視しながら、入力装置22bを操作することにより、搬送装置2に分包袋群Pを1包分送り出す動作をさせることができる。
【0096】
図9のS24において、エラーメッセージに対する応答として、操作者から、分包袋群Pを1包分送るための操作が入力される。その操作がなされると、図8のS4の1包送り処理は終了する。
【0097】
なお、S24で、所定の操作が入力されるまで、スリップ時制御部13は、処理を進めずに待機する。待機中は、鑑査装置1の動作は、一時停止(保留)状態となる。そのため、図9に示す動作例では、分包袋群Pのスリップが検出された場合、スリップに対応する操作が、操作者から入力されるまで、搬送装置2による搬送、撮影装置189による撮影、及び鑑査部11による鑑査(図8のS5~S7)のいずれの動作も実行されない。これにより、鑑査装置1は、スリップ発生時には、搬送、撮影及び鑑査を一旦停止し、スリップへの対応動作が実行された後、これらを再開することができる。そのため、スリップへの対応動作のための時間が確保される。
【0098】
また、図9に示す処理が実行されることで、例えば、図8の例においては、S4の1包分の分包袋群Pの搬送を、より確実に実行してから、撮影(S5)及び鑑査(S6、S7)の処理を実行することができる。また、S4で図9の処理が実行されることで、図8の例では、分包袋群Pが1包分送り搬送される度に、スリップ判断部12が、分包袋群Pがスリップしているか否かを判断する。
【0099】
なお、スリップ検出時のスリップ時制御部13の処理は、図9のS23(エラーの出力)及びS24(操作入力があるまで撮影及び鑑査処理の一次停止)に限られない。スリップ時制御部13は、例えば、操作者からの操作入力を受け付けずに、搬送装置2に分包袋群Pを1包分送り搬送させてもよいし、操作入力が一定時間ない場合に、搬送装置2に分包袋群Pを1包分送り搬送させてもよい。又は、スリップ判断部12においてスリップが検出された場合に、撮影及び鑑査の処理を続行させつつ、出力部14に、スリップを報知する情報を出力させてもよい。
【0100】
(システム構成例)
図11は、分包機、保持装置、及び鑑査装置を含む薬剤分包システムの構成例を示す図である。分包機100は、薬剤を分包して分包袋群Pを排出する。保持装置150は、分包機100から排出される分包袋群Pを取り込み、重ねて保持する。鑑査装置1は、保持装置150から引き出された分包袋群Pを取り込み、分包袋群Pの薬剤を鑑査する。分包機100、保持装置150、及び鑑査装置1は、並んで配置されてもよい。保持装置150は、車輪を有してもよい。この場合、保持装置150は、人が押して移動可能である。そのため、分包機100と鑑査装置1が、離れた場所に配置されてもよい。
【0101】
分包機100は、予め収納された複数種類の薬剤(本例では、固形薬剤、すなわち錠剤)から、処方データに基づいて、1回服用分ずつ薬剤を取出し、各分包袋に包装する。分包機100は、薬剤を収納及び供給する複数のフィーダ46と、ホッパ40、42、62と、薬剤を1包分ずつ溜めておく薬剤準備部60、及び、包装部80を備える。また、分包機100は、手撒き薬剤を受ける手撒きトレイ38、及び手撒きトレイ38の薬剤を薬剤準備部60へ導くホッパ44を、さらに有する。
【0102】
フィーダ46は、薬剤を収納するカセットと、カセットから制御された数の薬剤を排出するシュータを有する。複数種類の薬剤が、複数のフィーダ46にそれぞれ収納される。処方データに基づいて、フィーダ46から1包分の薬剤が、ホッパ40に供給される。ホッパ40は、1包分の薬剤を溜める。ホッパ42を介して、薬剤が、1包分ずつ薬剤準備部60へ供給される。手撒きトレイ38には、薬剤を一包分ずつ撒き入れるための枡状の凹部が複数設けられる。手撒きトレイ38から、ホッパ44を介して、1包分ずつ薬剤が、薬剤準備部60へ供給される。薬剤準備部60に保持された1包分ずつの薬剤は、ホッパ62を介して、1包分ずつ包装部80へ供給される。
【0103】
包装部80は、帯状の分包紙を折り曲げ、重なる部分の一部をシールすることにより各分包袋を形成すると共に、薬剤準備部60から供給されてきた薬剤を一服用分ずつ分包袋に包装する。
【0104】
包装部80は、ロール状の分包紙をセットするロールセット部81と、二つ折りにされた分包紙をシールするシール部82と、分包紙に印刷する印刷部83を含む。包装部80は、ロールセット部81から引き出され、二つ折りにされた分包紙の谷状の部分に、ホッパ62から供給される1包部の薬剤を配置する。薬剤が配置された分包紙の一部を、シール部82がシールすることで、薬剤を分包した分包袋が形成される。シール部82は、折り重なった分包紙の一部を加熱して溶着する。シール部82は、例えば、分包紙を一対のヒートローラの間に通して溶着するヒートローラ式、又は、ヒート型を分包紙に押し付けて溶着するパック式とすることができる。薬剤が内包された分包袋が多数連続した帯状の分包袋群Pが、分包機100の外へ送り出される。
【0105】
保持装置150は、分包機100から排出された分包袋群Pを巻き取って保持する。また、保持装置150は、保持している分包袋群Pを繰り出すことができる。保持装置150は、巻取繰出装置である。保持装置150は、支持部152と、支持部152に回転可能に取り付けられたホルダ154を有する。ホルダ154は、支持部152に支持された回転軸152aに取り付けられる筒部154bと、筒部154bの軸方向の両端部から径方向に延びる一対の板状のフランジ154cを有する。分包袋群Pは、筒部154bに巻き付けられた状態で、一対のフランジ154cの間に保持される。ホルダ164は、回転軸154aに着脱可能であってもよい。
【0106】
保持装置150は、ホルダ154を回転させるアクチュエータ(図示せず)を備えてもよい。アクチュエータが、ホルダ154を回転させることで、分包袋群Pの巻き取り及び繰り出しが制御される。保持装置150は、ホルダ154の径方向に並ぶ第1センサ160及び第2センサ158を備える。分包袋群Pは、第1センサ160及び第2センサ158の間を通る。第1センサ160は、ホルダ154に巻き取られた分包袋群Pとの距離を測る。ホルダ154に巻き取られた分包袋群Pが増えると分包袋群Pの径方向の積層量が増え、第1センサ160と分包袋群Pとの距離が近くなる。第2センサ158は、分包機100からホルダ154に導入される分包袋群Pの経路の下方において、垂れ下がった分包袋群Pとの距離を測る。例えば、ホルダ154の巻き取り速度に比べて分包機100の分包速度が速すぎると、分包機100からホルダ154へ導入される分包袋群Pが下方に撓む。第2センサ158で測定される距離に応じて、分包袋群Pの撓み(垂れ下がり)の有無を判定できる。これらのセンサで測定された距離に基づいてアクチュエータによるホルダ154の回転が制御される。例えば、第1センサ160で測定された距離が所定値以下になった場合に、分包袋群Pの巻き取り量がホルダ154の最大容量に達したと判断して、ホルダ154の巻き取り動作を終了することができる。又は、第2センサ158で測定された距離に基づき、分包袋群Pの撓みがあると判断される場合に、ホルダ154の巻き取り速度を早くするか、又は、エラーを出力することができる。これにより、適切な張力が分包袋群Pに作用した状態で、分包袋群Pの巻き取り及び繰り出し動作を実施することができる。
【0107】
鑑査装置1は、上記の図1に示す鑑査装置1と同様に構成することができる。鑑査装置1の搬送装置2は、保持装置150から引き出された分包袋群Pを搬送する。保持装置150は、鑑査装置1と連携して動作することができる。
【0108】
制御装置10は、搬送装置2の搬送が、保持装置150のホルダ154の回転と協調するよう制御することができる。例えば、搬送装置2が分包袋群Pの搬送動作をしている時に、保持装置150のホルダ154が、分包袋群Pを繰り出す方向に回転するように、制御されてもよい。制御装置10は、ホルダ154を回転させるアクチュエータを制御するように構成されてもよい。
【0109】
また、鑑査装置1のスリップ時制御部13が、スリップ判断部12の判断結果に応じて、保持装置150を制御してもよい。これにより、保持装置150において、スリップに対して適切な分包袋群Pの繰り出し動作が可能になる。例えば、スリップ判断部12が、分包袋群Pがスリップしていると判断した場合、スリップ時制御部13は、保持装置150に、分包袋群Pを繰り出し動作を停止させてもよい。スリップ時制御部13は、繰り出し動作の停止後、鑑査装置1でスリップに対応する動作がなされた場合に、保持装置150に繰り出し動作を再開させてもよい。又は、スリップ時制御部13は、スリップ判断部12の判断結果に基づいて、保持装置150の繰り出し速度を制御してもよい。
【0110】
保持装置150は、分包機100と連携して動作してもよい。例えば、分包機100の包装部80が、分包袋群Pを排出する時に、分包機100からの制御により、保持装置150が巻き取り動作を行うことができる。
【0111】
図11の例では、鑑査装置1、保持装置150、及び分包機100が、それぞれ独立した筐体で構成されている。これらのうち少なくとも2つを組み合わせて1つの装置としてもよい。例えば、保持装置150は、鑑査装置1に取り付けられてもよいし、分包機100に取り付けられてもよい。
【0112】
(鑑査装置の変形例)
図12は、鑑査装置の変形例を示す図である。図12(a)及び(b)に示す鑑査装置1は、搬送装置2、撮影装置18、追加撮影装置19、及び制御装置10を備える。搬送装置2、撮影装置18、及び制御装置10は、上記図1に示す鑑査装置1の搬送装置2、撮影装置18及び制御装置10と同様に構成されてもよい。制御装置10は、鑑査部を有する。鑑査部は、図1の鑑査部11と同様に構成されてもよい。追加撮影装置19は、追加撮影台191に配置された分包袋群のうち少なくとも1つの分包袋を撮影する。追加撮影台191は、搬送装置2の搬送路から離れた位置で、且つ、追加撮影装置19の範囲内において、分包袋群Pを支持するように構成される。追加撮影台191は、少なくとも1包の分包袋を配置可能である。これにより、操作者は、分包袋群Pを搬送装置2の搬送路を通さずに、速やかに分包袋群Pのうち任意の分包袋を追加撮影台191に配置し、追加撮影装置19で撮影可能とすることができる。図12の例では、追加撮影台191及び追加撮影装置19は、搬送装置2及び撮影装置18を収納する筐体の外側に設けられる。このように、追加撮影装置19は、外付けカメラであってもよい。
【0113】
図12(a)は、搬送装置2の搬送路で分包袋群Pが搬送される例を示し、図12(b)は、追加撮影台191に分包袋群Pが配置される例を示す。操作者は、分包袋群Pのうち再撮影をしたい分包袋(例えば、鑑査結果NGがマークされた分包袋又は修正された分包袋)が追加撮影装置19の撮影範囲に入るように、分包袋群Pを、追加撮影台191に配置することができる。
【0114】
追加撮影装置19は、例えば、鑑査装置1によって鑑査された鑑査済みの分包袋群Pの少なくとも1つを撮影するために設けられる。鑑査済みの分包袋群Pには、鑑査部によりNG(内包された薬剤が処方通りでない)と判断された分包袋が含まれる場合がある。鑑査装置1は、NGの分包袋を示す情報を出力する。この情報に基づき、薬剤師が、NGと判断された分包袋に、処方通りの薬剤を入れ直す。すなわち、薬剤師は、分包袋に処方通りの正しい薬剤を入れる、又は、処方にはない間違った薬剤を分包袋から抜き取る作業の少なくとも一方の作業により、分包袋を修正する。これにより、分包袋の薬剤は修正される。薬剤師(操作者)は、この修正された分包袋が、追加撮影装置19の撮影範囲に入るよう、鑑査済みの分包袋群Pを追加撮影台191に配置する。追加撮影装置19は、操作者の指示入力に応じて、修正された分包袋を撮影する。これにより、修正された分包袋の画像を修正結果のエビデンスとして記録することができる。
【0115】
例えば、鑑査装置1が、NGの判断結果と、NGと判断された分包袋の処方情報を表示した状態で、操作者が、修正した分包袋を追加撮影台191に配置し、再撮影の指示を鑑査装置1に入力すると、追加撮影装置19により修正した分包袋が撮影される。修正した分包袋の画像は、例えば、NGの鑑査結果データに対応付けて記録される。これにより、NGと判断された分包袋を修正したことを示すエビデンスとして、修正した分包袋の画像が記録できる。すなわち、追加撮影装置19で撮影された分包袋の画像は、分包袋の薬剤の処方情報及び鑑査結果と対応付けて記録されてもよい。
【0116】
追加撮影装置19で撮影された分包袋の画像は、撮影日時と対応付けて記録されてもよい。分包袋の画像に撮影日時データが含まれてもよいし、画像に撮影日時データが紐付けられて記録されてもよい。分包袋の画像は、例えば、鑑査装置1のコンピュータがアクセス可能な記憶装置に記録することができる。
【0117】
図13は、追加撮影装置19で撮影された分包袋の画像が表示される画面の例を示す図である。図13の例では、鑑査装置1の鑑査部で鑑査された分包袋の処方に関する情報H1、H2、鑑査結果H3、及び、分包袋の撮影画像J1が表示される。その他、画面G1には、表示する分包袋を制御するためのボタンB1、サブメニューボタンB2、目視結果を入力するためのボタンB3が選択可能に表示される。図13の画面G1は、一例として、鑑査部でNGと判断された分包袋の情報を表示する。分包袋の撮影画像J1として、当初は、撮影装置18によって撮影された画像、すなわち鑑査部による鑑査の基となった画像が表示される。その後、NGと判断された分包袋に処方通りの薬剤が入るよう、分包袋を修正され、修正した分包袋が、追加撮影装置19で再撮影される。この場合、撮影画像J1として、追加撮影装置19で再撮影された修正後の分包袋の画像が表示される。再撮影された分包袋の画像とともに、再撮影の撮影日時が表示される。撮影日時は、分包袋の画像の表示の妨げにならない位置に表示される。図13の例では、撮影画像J1を拡大表示した場合に、拡大画面G2において、拡大表示された撮影画像J1とともに撮影日時が表示される。このように、追加撮影装置19で再撮影された画像を、処方情報、監査結果、及び撮影日時とともに表示することで、鑑査部でNGと判断された分包袋が修正されたことが示される。
【0118】
図13の例のように、分包袋の拡大表示時に撮影日時を表示することで、分包袋の画像の表示の邪魔にならない態様で、撮影日時を表示することができる。分包袋の画像は、例えば、操作者の指示入力があった場合に拡大表示される。
【0119】
図14は、鑑査部により鑑査された分包袋群のうち、指定した条件を満たす分包袋を検索する画面の例を示す図である。図14の画面G3では、検索条件として、期間H4、患者H5、薬品H6等の処方情報に加えて、照合結果H7すなわち鑑査結果の指定が受け付けられる。鑑査結果として条件指定可能な項目に、再撮影包が含まれる。これは、追加撮影装置19で再撮影された分包袋を示す。これにより、鑑査部で鑑査された分包袋群Pのうち、再撮影した分包袋を検索することができる。画面G3には、検索処理の実行を指示するための検索ボタンB4、検索結果の表示を制御するためのボタンB5、B6、及びその他のボタンB7が選択可能に表示される。検索結果は、例えば、画面G3の表示欄に一覧表示される。
【0120】
例えば、NGの鑑査結果が出て修正され再撮影(エビデンス撮影)がなされた分包袋は、その後、最終鑑査者にまわされる。その最終鑑査段階でもNGと判定された場合に、再撮影した分包袋の画像を検索する必要が生じることがある。検索の条件として、再撮影包の項目を指定可能とすることで、操作者は、再撮影された分包袋の画像に迅速にアクセスすることが可能になる。
【0121】
図12の例では、追加撮影装置19は、搬送装置2及び撮影装置18を収容する筐体に設けられる。変形例として、この筐体から離れた場所で、追加撮影装置19が設定されてもよい。例えば、搬送装置2及び撮影装置18を収容する筐体から離れた場所で、撮影装置19で撮影された鑑査画像を表示し、最終鑑査等の鑑査(遠隔鑑査)が実施される場合がある。
このような遠隔鑑査を実施する場合、遠隔鑑査を実施する場所に、追加撮影装置19及び追加撮影台191を設定することができる。これにより、遠隔鑑査において、エビデンス撮影が可能になる。例えば、遠隔鑑査用端末に、追加撮影装置19及び追加撮影台191が設けられてもよい。遠隔鑑査用端末は、例えば、撮影装置18で撮影された分包袋群Pの画像に基づく鑑査結果を表示可能であってもよい。
【0122】
図15は、鑑査がされた分包袋群Pのうち一部の分包袋を撮影装置19で再撮影する鑑査装置の動作例を示す図である。図15(a)~(d)に示す鑑査装置1は、搬送装置2、撮影装置18、及び制御装置10を備える。搬送装置2、撮影装置18及び制御装置10は、上記図1に示す鑑査装置1と同様に構成されてもよい。制御装置10は、さらに再撮影部15を有する。再撮影部15は、操作者から、鑑査部で鑑査済みの分包袋群Pのうち、再撮影する分包袋の指定を受け付ける。再撮影部15は、搬送装置2及び撮影装置19を制御して、分包袋群Pを搬送し、分包袋群Pのうち指定された分包袋を撮影する。
【0123】
図15(a)では、鑑査装置1は、分包袋群Pを搬送装置2で搬送し、各分包袋を撮影装置18で撮影する。鑑査部は、撮影装置18で撮影された各分包袋の画像に基づき鑑査処理を実行する。鑑査処理の結果、例えば、1つの分包袋p1でNG(処方通りでない)と判断されたとする。この場合、薬剤師は、分包袋p1を修正する。ここで、分包袋p1を修正したことのエビデンスとなる画像を撮影する必要が生じる。そこで、薬剤師は、操作者として、修正した分包袋p1を鑑査装置1に対して指定入力し、図15(b)に示すように、分包袋群Pを再度、鑑査装置1に挿入し、搬送装置2に搬送させる。
【0124】
鑑査装置1の再撮影部は、搬送装置2を制御し、指定された分包袋p1を撮影装置18の撮影範囲に配置するよう分包袋群Pを搬送する。撮影装置18は、分包袋p1を撮影する(図15(c))。これにより、分包袋p1が再撮影され、分包袋p1を修正したことを示すエビデンス画像が得られる。分包袋p1が撮影されると、分包袋群Pは、搬送装置2によって排出される(図15(d))。
【0125】
鑑査装置1による上記再撮影の動作では、搬送装置2は、分包袋群Pを、1包ずつ搬送する。撮影装置18は、指定された分包袋p1以外の分包袋が撮影範囲にある場合は、撮影を行わずスキップし、指定された分包袋p1が撮影範囲に来た場合に撮影する。撮影された画像を基に、鑑査部が鑑査処理を実行する。1包ずつの搬送では、鑑査装置1は、例えば、分包袋群Pにおける分包袋間の境目(例えば、ミシン目)を検出し、1包ずつ、撮影範囲に配置されるように分包袋群Pを搬送してもよい。なお、図15の例においても、鑑査装置1は、図1と同様に、動き検出センサ5、スリップ判断部12、及びスリップ時制御部13を備えてもよい。これにより、再撮影のための分包袋群Pの搬送においても、スリップ検出が可能になる。
【0126】
再撮影部により、修正した分包袋群のみを再撮影することができる。そのため、例えば、エビデンス画像を得るために、修正した分包袋p1を含む分包袋群Pの全てを撮影装置18で再撮影しなくてすむ。また、追加で再撮影のための撮影装置を設けなくてもよい。また、再撮影した分包袋p1の画像を用いて、鑑査部による再度の鑑査結果をエビデンス画像とともに残すことができる。
【0127】
上記実施形態において、鑑査装置1の構成は、図1及び図3に示す例に限られない。例えば、鑑査装置1において、ニップローラ、照明装置、供給検知部、排出検知部、均し機構、第1及び第2規制部材の少なくとも1つを省略してもよい。一例として、搬送装置は、ベルトコンベア又はローラコンベア等のように搬送路上に分包袋群Pを載せて搬送する構成とし、分包袋群Pを上から動画で撮影する撮影装置を配置してもよい。制御装置は、撮影装置で撮影される動画から検出される分包袋群Pの位置及び動きに基づいて、搬送装置を制御して、分包袋群Pの位置決めや搬送を実現できる。スリップが検出された場合、スリップに関する情報を出力や、搬送の速度制御等が行われてもよい。
【0128】
なお、上記の実施形態は、本発明の例であって、本発明は、この例に限られない。また、上記の実施形態で説明する構成及び処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0129】
1:鑑査装置、2:搬送装置、10:制御装置、11:鑑査部、12:スリップ判断部、13:スリップ時制御部、14:出力部、18:撮影装置、P:分包袋群
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