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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005396
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】保持器及び円筒ころ軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/46 20060101AFI20230111BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107263
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏見 元紀
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA12
3J701AA13
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA21
3J701BA34
3J701BA44
3J701FA02
3J701FA31
(57)【要約】
【課題】スキューの際、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗することを防止できる保持器を提供する。
【解決手段】本開示の保持器の柱部は、ポケットを向く側面であり、円筒ころの転動面と対向する第1対向面を有する。環状部は、ポケットを向く側面であり、円筒ころの側面と対向する第2対向面を有する。逃げ部は、仮想点を中心に円弧状に加工されたR面と、R面に対する接線上を延在し、R面から第1対向面に向かって延びる第1傾斜面と、R面に対する接線上を延在し、R面から第2対向面に向かって延びる第2傾斜面と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒ころを収容するポケットを周方向に複数を備えた環状の保持器であって、
前記円筒ころの自転軸と平行な方向に延びる複数の柱部と、
前記柱部の両端部を接続する2つの環状部と、
前記柱部と前記環状部とに囲まれ、四隅に逃げ部が設けられた複数の前記ポケットと、
を備え、
前記柱部は、前記ポケットを向く側面であり、前記円筒ころの転動面と対向する第1対向面を有し、
前記第1対向面は、前記ポケットの軸方向中央部に設けられて軸方向に延び、
前記逃げ部は、前記第1対向面から前記ポケットの軸方向外側に移動するにつれ、前記円筒ころの転動面との間隔が漸増する第1傾斜面を有する
保持器。
【請求項2】
前記環状部は、前記ポケットを向く側面であり、前記円筒ころの側面と対向する第2対向面を有し、
前記逃げ部は、仮想点を中心に円弧状に加工されたR面と、前記R面に対する接線上を延在し、前記R面から前記第1対向面に向かって延びる第1傾斜面と、前記R面に対する接線上を延在し、前記R面から前記第2対向面に向かって延びる第2傾斜面とを有する請求項1に記載の保持器。
【請求項3】
前記第1対向面と前記第1傾斜面との間には、R形状の第1曲面が設けられ、
前記第2対向面と前記第2傾斜面との間には、R形状の第2曲面が設けられている
請求項2に記載の保持器。
【請求項4】
前記仮想点は、前記第1対向面に沿って延びる第1仮想線と前記第2対向面に沿って延びる第2仮想線とが交わる第1交点と、前記ポケットの中心部と、を結ぶ第3仮想線の延長線上に位置し、
前記第1傾斜面と前記第1仮想線とが成す第1角度と、前記第2傾斜面と前記第2仮想線とが成す第2角度と、は同じ角度となっている
請求項2又は請求項3に記載の保持器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の保持器と、複数の円筒ころと、内輪と、外輪と、を備える
円筒ころ軸受。
【請求項6】
請求項4に記載の保持器と、複数の円筒ころと、内輪と、外輪と、を備え、
前記円筒ころが前記保持器の前記柱部に接触する様に、前記円筒ころを周方向に傾けたとき、前記円筒ころの自転軸が傾いていないときに対して前記円筒ころの自転軸が周方向に傾いた角度は、前記保持器の前記第1角度と同じ角度か、より小さい角度である
円筒ころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保持器及び円筒ころ軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受装置は、転動体を一定間隔で配置するため、保持器を備えている。保持器は、従来から様々な形状のものが開発されている。一般的な保持器の一つとして、各転動体の間に配置される複数の柱部と、各柱部の両端部に接続する2つの環状部と、を備え、ポケットが2つの柱部と2つの環状部により囲まれた保持器が挙げられる。このような保持器は、転動体が円筒ころの場合、ポケットの断面形状が四角形状を成し、ポケットの四隅に隅部が設けられている。
【0003】
ところで、円筒ころの転動面と側面とが交わる角部は、面取りされ、R形状となっている。以下、面取りされた円筒ころの角部を面取り部と称する。同様に、ポケットの隅部もR形状に加工されている。しかしながら、ポケットの隅部は、エンドミルで加工され、円筒ころの面取り部よりも曲率半径が大きい。よって、隅部は、面取り部と干渉し易い形状となっている。また、特許文献1の保持器は、隅部をフライス加工で切削し、環状部及び柱部よりも窪んだ逃げ部を設け、面取り部と隅部との干渉を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-12477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の保持器は、逃げ部と環状部との接続部分と、逃げ部と柱部との接続部分とに、ポケットに向かって尖る角部が設けられている。よって、スキュー(円筒ころの自転軸が傾くこと)により、円筒ころの転動面及び側面が角部と接触すると、保持器と円筒ころとの接触部分が集中して摩耗する。
【0006】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、スキューの際、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗することを防止できる保持器及び円筒ころ軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る保持器は、円筒ころを収容するポケットを周方向に複数を備えた環状の保持器であって、前記円筒ころの自転軸と平行な方向に延びる複数の柱部と、前記柱部の両端部を接続する2つの環状部と、前記柱部と前記環状部とに囲まれ、四隅に逃げ部が設けられた複数の前記ポケットと、を備える。前記柱部は、前記ポケットを向く側面であり、前記円筒ころの転動面と対向する第1対向面を有する。前記第1対向面は、前記ポケットの軸方向中央部に設けられて軸方向に延びる。前記逃げ部は、前記第1対向面から前記ポケットの軸方向外側に移動するにつれ、前記円筒ころの転動面との間隔が漸増する第1傾斜面を有する。
【0008】
このような形状であることにより、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗する、ということが抑制される。
【0009】
また、本開示の一態様に係る保持器の好ましい態様として、前記環状部は、前記ポケットを向く側面であり、前記円筒ころの側面と対向する第2対向面を有する。前記逃げ部は、仮想点を中心に円弧状に加工されたR面と、前記R面に対する接線上を延在し、前記R面から前記第1対向面に向かって延びる第1傾斜面と、前記R面に対する接線上を延在し、前記R面から前記第2対向面に向かって延びる第2傾斜面と、を有する。
【0010】
前記構成によれば、第1傾斜面及び第2傾斜面は、R面の接線を成している。よって、R面と第1傾斜面との接続部分と、R面と第2傾斜面との接続部分に、角部が設けられていない。よって、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗する、ということが抑制される。
【0011】
また、本開示の一態様に係る保持器の好ましい態様として、前記第1対向面と前記第1傾斜面との間には、R形状の第1曲面が設けられている。前記第2対向面と前記第2傾斜面との間には、R形状の第2曲面が設けられている。
【0012】
第1対向面と第1傾斜面とが直接接続すると、その接続部分に角部が形成される。しかしながら、上記構成によれば、第1対向面と第1傾斜面との間に第1曲面が介在し、角部が形成されない。よって、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗する、ということがより確実に抑制される。
【0013】
また、本開示の一態様に係る保持器は、前記仮想点は、前記第1対向面に沿って延びる第1仮想線と前記第2対向面に沿って延びる第2仮想線とが交わる第1交点と、前記ポケットの中心部と、を結ぶ第3仮想線の延長線上に位置し、前記第1傾斜面と前記第1仮想線とが成す第1角度と、前記第2傾斜面と前記第2仮想線とが成す第2角度と、は同じ角度となっている。
【0014】
また、本開示の一態様に係る円筒ころ軸受は、上記のいずれか1つの保持器と、前記円筒ころと、内輪と、外輪と、を備える。
【0015】
前記円筒ころ軸受によれば、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗する、ということが抑制される。
【0016】
また、本開示の一態様に係る円筒ころ軸受は、保持器と、複数の円筒ころと、内輪と、外輪と、を備える。前記円筒ころが前記保持器の前記柱部に接触する様に、前記円筒ころを周方向に傾けたとき、前記円筒ころの自転軸が傾いていないときに対して前記円筒ころの自転軸が周方向に傾いた角度は、前記保持器の前記第1角度と同じ角度か、より小さい角度である。
【0017】
前記円筒ころ軸受によれば、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗する、ということが抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本開示の保持器及び円筒ころ軸受によれば、スキューの際、円筒ころの転動面及び側面と対向する保持器の一部が集中して摩耗することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、実施形態1に係る保持器の斜視図である。
図2図2は、外輪に対し内輪が回転していない場合であって、実施形態1に係る保持器の一部を外周側から展開して視た拡大図である。
図3図3は、図2に図示される隅部を拡大した拡大図である。
図4図4は、外輪に対し内輪が回転し、円筒ころがスキューしている場合の実施形態1に係る保持器の一部を外周側から展開して視た拡大図である。
図5図5は、変形例1に係る保持器の隅部を拡大した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明で記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0021】
図1は、実施形態1に係る保持器の斜視図である。図2は、外輪に対し内輪が回転していない場合であって、実施形態1に係る保持器の一部を外周側から展開して視た拡大図である。図3は、図2に図示される隅部を拡大した拡大図である。図4は、外輪に対し内輪が回転し、円筒ころがスキューしている場合の実施形態1に係る保持器の一部を外周側から展開して視た拡大図である。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1の円筒ころ軸受は、保持器(図1を参照)と、複数の円筒ころ(図2参照)と、内輪(不図示)と、外輪不図示)と、を備える。図1に示すように、実施形態1の保持器100は、四角形状のポケット4を周方向(図1の矢印A方向)に複数備える環状部品である。なお、保持器100の材質は、特に限定されず、金属、樹脂のいずれであってもよい。保持器100は、図示しない例えば円筒ころ軸受等の軸受装置において、内輪と外輪との間に配置される。そして、各ポケット4には、転動体である円筒ころ50(図2参照)が収容される。
【0023】
保持器100は、周方向に等間隔で配置される複数の柱部1と、各柱部1の両端部に接続する環状部2、3と、を備えている。つまり、各ポケット4の外枠は、2つの柱部1と環状部2、3によって構成される。また、ポケット4の方を向く側面として、柱部1は、第1対向面10、11を有している。環状部2、3は、第2対向面20、30を有している。以下、柱部1が延在している方向を軸方向と称して説明する。
【0024】
図2に示すように、第1対向面10、11は、ポケット4に収容された円筒ころ50の転動面51と対向している。また、第2対向面20、30は、円筒ころ50の自転軸Xと直交しており、ポケット4に収容された円筒ころ50の側面52、52と対向している。また、ポケット4の四隅には、円筒ころ50の面取り部53との接触を回避するため、逃げ部40が設けられている。
【0025】
図3に示すように、逃げ部40は、円弧状(R形状)のR面41と、R面41から第1対向面10に向かって延びる第1傾斜面42と、R面41から第2対向面20に向かって延びる第2傾斜面43と、を備える。なお、図3においては、ポケット4を囲む各面の境界を見易くするため、境界点E1~E4を設けている。境界点E1は、第1対向面10と第1傾斜面42の境界を示す。境界点E2は、第1傾斜面42とR面41の境界を示す。境界点E3は、R面41と第2傾斜面43の境界を示す。境界点E4は、第2傾斜面43と第2対向面20の境界を示す。以下、第1対向面10、11と第2対向面20、30と逃げ部40との詳細について説明する。
【0026】
第1対向面10は、軸方向に延在しており、ポケット4の軸方向の中央部に位置している。第1対向面10は、円筒ころ50よりも軸方向の長さが短い。なお、第1対向面11は、第1対向面10と同じ構成であるため、説明を省略する。また、図3に示すL1は、第1対向面10に沿って延在する仮想線である。
【0027】
第2対向面20は、周方向に延在しており、ポケット4の周方向の中央部に位置している。第2対向面20は、円筒ころ50の周方向の長さよりも短い。なお、第2対向面30は、第2対向面20と同じ構成であるため、説明を省略する。また、図3に示すL2は、第2対向面20に沿って延在する仮想線である。
【0028】
R面41は、例えばエンドミルによって加工された円弧状の面である。R面41は、仮想点H2を中心とする仮想円C1に沿って延在している。仮想点H2は、第1仮想線L1と第2仮想線L2との第1交点H1と、ポケット4の中心部Oと、を結ぶ第3仮想線L3をさらに延長させた延長線上に位置している。つまり、R面41の中心(仮想点H2)は、第1対向面10や第2対向面20よりも奥まった位置にあり、R面41が円筒ころ50の面取り部53(図2参照)と接触しないようになっている。なお、ポケット4の中心部Oとは、特に図示しないが、第1対向面10、11の軸方向の中心同士を結ぶ線と、第2対向面20、30の周方向の中心同士を結ぶ線と、が交わるところである。
【0029】
第1傾斜面42及び第2傾斜面43は、例えばヘールによって加工された面である。第1傾斜面42及び第2傾斜面43を外周側から視ると、R面41の接線となっている。よって、第1傾斜面42とR面41とが交わる部分(境界点E2参照)と、第2傾斜面43とR面41とが交わる部分(境界点E3参照)と、には、ポケット4内に尖る角部が設けられていない。
【0030】
第1傾斜面42は、第1仮想線L1との第1角度がθ1となっている。言い換えると、第1傾斜面42は、第1対向面10から軸方向の外側に移動するにつれて、円筒ころ50の転動面51から離隔するように(円筒ころ50の転動面51との間隔が漸増するように)傾斜している。これによれば、図4に示すように、円筒ころ50の自転軸Xが傾いた場合、円筒ころ50の転動面51のうち軸方向の端寄りの部分(面取り部53の付近)が逃げ部40の内部に入り込む。そして、円筒ころ50の転動面51の軸方向の端寄りの部分が第1傾斜面42と接触する。つまり、第1傾斜面42は、傾斜した転動面51と同じ方向に傾斜しており、転動面51と面接触し易い形状となっている。
【0031】
図3に示すように、第2傾斜面43は、第2仮想線L2との第2角度がθ2となっている。言い換えると、第2傾斜面43は、第2対向面20から離れる方向に周方向に移動するにつれて、円筒ころ50の側面52から離隔するように傾斜している。これによれば、図4に示すように、円筒ころ50の自転軸Xが傾いた場合、円筒ころ50の側面52のうち柱部1寄りに位置している部分が逃げ部40の内部に入り込む。そして、円筒ころ50の側面52の径方向外側部分が第2傾斜面43と接触する。つまり、第2傾斜面43は、側面52と同じ方向に傾斜しており、側面25と面接触し易い形状となっている。
【0032】
また、第1角度θ1と第2角度θ2は同じであることが好ましい。ここで、円筒ころ50の自転軸Xが傾いた場合、転動面51と側面52の傾斜角度も同じである。つまり、第1傾斜面42と第2傾斜面43は、転動面51と側面52のうちいずれか一方でなく、転動面51と側面52の両方と面接触し易いようになっている。
【0033】
また、実施形態1の逃げ部40は、ポケット4の隅部の切削量が少なく、柱部1の強度低下を回避できる。よって、実施形態1の保持器100は、柱部1の周方向の太さが比較的細く、多くの円筒ころ50が配置されて負荷容量が向上している。また、図4のように、円筒ころ50が保持器100の柱部1に接触する様に、円筒ころ50を周方向に傾けたとき、円筒ころ50の自転軸Xが傾いていないときに対して、円筒ころ50の自転軸Xが周方向に傾いた角度θ3が、保持器100の第1角度θ1と同じ角度か、より小さい角度の場合、円筒ころ50の転動面51が第1傾斜面42に面接触し易くなる。よって、保持器100の一部が集中して摩耗し難くなる。
【0034】
以上、実施形態1の円筒ころ軸受は、保持器100と、複数の円筒ころ50と、内輪(不図示)と、外輪(不図示)と、を備える。また、実施形態1の保持器100は、円筒ころ50を収容するポケット4を周方向に複数を備えた環状の保持器100である。円筒ころ50の自転軸Xと平行な方向に延びる複数の柱部1と、柱部1の両端部を接続する2つの環状部2、3と、柱部1と環状部2、3とに囲まれ、四隅に逃げ部40が設けられた複数のポケット4と、を備える。柱部1は、ポケット4を向く側面であり、円筒ころ50の転動面51と対向する第1対向面10を有している。逃げ部40は、第1対向面10からポケット4の軸方向外側に移動するにつれ、円筒ころ50の転動面51との間隔が漸増する第1傾斜面42を有する。
【0035】
第1傾斜面42は、傾斜した転動面51と同じ方向に傾斜し、転動面51と面接触し易い。よって、保持器100及び円筒ころ50の一部が集中して摩耗する、ということが回避される。
【0036】
また、実施形態1において、環状部2、3は、ポケット4を向く側面であり、円筒ころ50の側面52と対向する第2対向面20、30を有している。逃げ部40は、仮想点H2を中心に円弧状に加工されたR面41と、R面41に対する接線上を延在し、R面41から第1対向面10に向かって延びる第1傾斜面42と、R面41に対する接線上を延在し、第2対向面20、30に向かって延びる第2傾斜面43と、を有している。
【0037】
実施形態1の保持器100によれば、第1傾斜面42とR面41とが接続する部分(境界点E2参照)と、第2傾斜面43とR面41とが接続する部分(境界点E3参照)と、に、ポケット4内に尖る角部が設けられていない。このため、スキューが発生しても、円筒ころ50の転動面51及び側面52と対向する保持器のうち一部が集中して摩耗する、ということが回避され易くなる。
【0038】
また、実施形態1において、仮想点H2は、第1対向面10に沿って延びる第1仮想線L1と第2対向面20、30に沿って延びる第2仮想線L2とが交わる第1交点H1と、ポケット4の中心部Oと、を結ぶ第3仮想線Lの延長線上に位置していることが好ましい。第1傾斜面42と第1仮想線L1とが成す第1角度θ1と、第2傾斜面43と第2仮想線L2とが成す第2角度θ2と、は同じ角度となっていることが好ましい。また、円筒ころ50が保持器100の柱部1に接触する様に、円筒ころ50を周方向に傾けたとき、円筒ころ50の自転軸Xが傾いていないときに対して、円筒ころ50の自転軸Xが周方向に傾いた角度θ3が、保持器100の第1角度θ1と同じ角度か、より小さい角度であることが好ましい。
【0039】
図5は、変形例1に係る保持器の隅部を拡大した拡大図である。次に変形例1に係る保持器100Aを説明する。変形例1の保持器100Aは、逃げ部40に代えて逃げ部40Aを備えている点で、実施形態1の保持器100と相違する。以下、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略し、相違点に絞って説明する。
【0040】
図5に示すように、逃げ部40Aは、R面41と、第1傾斜面42と、第2傾斜面43と、第1曲面44と、第2曲面45と、を備えている。なお、図5においては、各面の境界を見易くするため、境界点F1~F6を設けている。詳細には、境界点F1は、第1対向面10と第1曲面44との境界を示す。境界点F2は、第1曲面44と第1傾斜面42との境界を示す。境界点F3は、第1傾斜面42とR面41の境界を示す。境界点F4は、R面41と第2傾斜面43との境界を示す。境界点F5は、第2傾斜面43と第2曲面45との境界を示す。境界点F6は、第2曲面45と第2対向面20との境界を示す。
【0041】
変形例1において、R面41の仮想線Cの中心である仮想点H3は、実施形態1の仮想点H2よりも、第1交点H1よりも離隔した位置に設けられている。よって、逃げ部40Aは、実施形態1の逃げ部40よりも、ポケット4の隅部の切削量(凹み量)が多い。
【0042】
第1曲面44と第2曲面45は、R形状を成している。つまり、第1対向面10と第1曲面44とが交わる部分(境界点F1参照)と、第1曲面44と第1傾斜面42とが交わる部分(境界点F2参照)と、第2傾斜面43と第2曲面45とが交わる部分(境界点F5参照)と、第2曲面45と第2対向面20とが交わる部分(境界点F6参照)とに、ポケット4内に尖る角部が設けられていない。これによれば、円筒ころ50の転動面51及び側面52と対向する保持器のうち一部が集中して摩耗する、ということが確実に回避され易くなる。
【0043】
以上、実施形態1及び変形例1について説明したが、本開示の保持器は、これらに限定されない。例えば、第1対向面10に円筒ころ50がポケット4から脱落することを防止する爪部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0044】
100 保持器
1 柱部
2、3 環状部
4 ポケット
10、11 第1対向面
20、30 第2対向面
40 逃げ部
41 R面
42 第1傾斜面
43 第2傾斜面
44 第1曲面
45 第2曲面
50 円筒ころ
51 転動面
52 側面
53 面取り部
C1 仮想円
L1 第1仮想線
L2 第2仮想線
L3 第3仮想線
H1 第1交点
H2 仮想点
θ1 第1角度
θ2 第2角度
図1
図2
図3
図4
図5