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特開2023-5406エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005406
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20230111BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20230111BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/32
C08J5/04 CFC
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107279
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 江利子
(72)【発明者】
【氏名】大▲崎▼ 康平
(72)【発明者】
【氏名】金子 徹
【テーマコード(参考)】
4F072
4J036
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB10
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB29
4F072AD02
4F072AD27
4F072AD30
4F072AD31
4F072AE01
4F072AF14
4F072AF15
4F072AF28
4F072AH02
4F072AH31
4F072AL01
4J036AA05
4J036AB17
4J036AC01
4J036AH01
4J036AH07
4J036AH19
4J036AJ02
4J036AJ03
4J036AJ17
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC10
4J036DC26
4J036DC38
4J036DC39
4J036FB05
4J036HA12
4J036JA11
(57)【要約】
【課題】エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、繊維強化複合材料及びこれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】主剤液と硬化剤液とからなる2液型エポキシ樹脂組成物であって、前記主剤液が、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂[A]とグリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成される芳香族エポキシ樹脂[B]とを含み、前記硬化剤液が硬化剤[C]を含み、硬化剤[C]が(C-A)液状芳香族ポリアミン及び(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを含み、(C-B)が、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含むか又は含まず、含まない場合、硬化剤[C]が、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含み、前記主剤液と前記硬化剤液の少なくとも一方が樹脂粒子成分[D]を含むことを特徴とする2液型エポキシ樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤液と硬化剤液とからなる2液型エポキシ樹脂組成物であって、
前記主剤液が、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂[A]と、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成される芳香族エポキシ樹脂[B]とを含み、
前記硬化剤液が、硬化剤[C]を含み、硬化剤[C]が、(C-A)液状芳香族ポリアミン及び(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを含み、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含むか又は含まず、含まない場合、硬化剤[C]が、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含み、
前記主剤液と前記硬化剤液の少なくとも一方が、樹脂粒子成分[D]を含む
ことを特徴とする、2液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂[A]の構成モノマーが、下記化学式(1)
【化1】
(ただし、化学式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群から選択される1つを表し、Xは-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、-NHCO-、-CONH-、-SO2-から選択される1つを表す。)
で示される化合物を含んで成る、請求項1に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂[A]の構成モノマーが、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルもしくはテトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルメタンから選択される1種類または2種以上の組み合わせである、請求項1または2に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記主剤液が、前記エポキシ樹脂[A]を50~90質量%含んで成る、請求項1~3のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂[B]の構成モノマーが、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンおよびトリグリシジルイソシアヌレートから選択される1種類または2種以上の組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂粒子成分[D]の平均粒子径が1.0μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物の前記主剤液と前記硬化剤液とを配合して成る、1液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
誘電硬化度測定によって評価される、180℃40分加熱後の硬化度が70%以上である、請求項7に記載の1液型エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化して成る樹脂硬化物。
【請求項10】
変形モードI臨界応力拡大係数KIcが0.8以上である、請求項9に記載の樹脂硬化物。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の樹脂硬化物と、繊維強化基材と、を含んで構成される繊維強化複合材料。
【請求項12】
前記繊維強化基材が炭素繊維強化基材である、請求項11に記載の繊維強化複合材料。
【請求項13】
繊維強化基材と、請求項7又は8に記載の1液型エポキシ樹脂組成物と、を複合化して硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法。
【請求項14】
請求項7又は8に記載の1液型エポキシ樹脂組成物を、型内に配置した繊維強化基材へ含浸させた後、加熱硬化する工程を含む、繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物、繊維強化複合材料、及びこれらの製造方法に関する。更に詳述すれば、優れた耐熱性や圧縮特性、耐衝撃性を有する繊維強化複合材料を高い生産性で製造することができ、かつ低粘度で可使時間の長いエポキシ樹脂組成物、該エポキシ樹脂組成物を用いて作製する樹脂硬化物、該エポキシ樹脂組成物を用いて作製する繊維強化複合材料、及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料(以下、「FRP」ということもある。)は、軽量かつ高強度、高剛性であるため、釣り竿やゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用途、自動車や航空機等の産業用途等の幅広い分野で用いられている。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の成形方法としては、型内に配置した繊維強化基材に液状の樹脂組成物を含浸、硬化して繊維強化複合材料を得るレジン・トランスファー・モールディング(RTM)法や、予め樹脂を繊維強化基材に含浸させてシート状に形成したプリプレグ(中間基材)を成形する方法、等が知られている。
近年では、その中でも特に、繊維強化複合材料を製造するための工程が少なく、オートクレーブのような高価な設備を必要としない、低コストで生産性の優れた製造方法であるRTM成形法が注目されている。RTM成形法に用いるマトリックス樹脂の組成としては、主としてエポキシ樹脂と硬化剤とを含み、場合により他の添加剤を含む。高い力学物性を有する硬化物や繊維強化複合材料を得るために、硬化剤に芳香族ポリアミンを利用することが一般的である。
RTM成形法に利用するエポキシ樹脂組成物においては、強化繊維基材へのエポキシ樹脂組成物含浸時に硬化剤が濾別されることを防ぐため、硬化剤や添加剤は主剤となるエポキシ樹脂へ溶解した状態で保管、使用することが多い。この様に、主剤のエポキシ樹脂へ硬化剤や添加剤を溶解混合したエポキシ樹脂組成物を、1液型のエポキシ樹脂組成物という。この時、エポキシ樹脂へ硬化剤が溶解した状態で存在するため、エポキシ樹脂と硬化剤の反応が比較的起こり易く、エポキシ樹脂組成物のシェルフライフが短くなるという問題点があった。そのため、1液型のエポキシ樹脂組成物は冷凍保管する必要があった。
この課題を解決するため、エポキシ樹脂と硬化剤を使用する直前に混合する、2液型エポキシ樹脂組成物が検討されている。2液型エポキシ樹脂組成物とは、エポキシ樹脂を主成分として含む主剤液と、硬化剤を主成分として含む硬化剤液(硬化剤組成物)とから構成され、使用直前にこれらの2液を混合するエポキシ樹脂組成物のことである。
【0003】
2液型エポキシ樹脂組成物においては、主剤液と硬化剤液を使用直前に混合するため、その混合の容易さが重要となる。1液型エポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤を2液型エポキシ樹脂組成物の硬化剤とすることも可能ではあるが、特許文献1に記載されるように、1液型エポキシ樹脂組成物に使用される芳香族ポリアミン硬化剤は通常固体であり、主剤液との混合不良が起きやすい。そのため、硬化剤組成物は液状であることが望ましい。
液状の芳香族ポリアミンを硬化剤としたエポキシ樹脂組成物としては、特許文献2および3に記載のものが例示される。しかしながら、特許文献2や3に記載のエポキシ樹脂組成物から得られる樹脂硬化物は、自動車や航空機等の産業用途に求められる弾性率や破壊靭性などの力学特性は備えておらず、その向上が要求される。
また、RTM法において、繊維強化複合材料を高効率で生産するために、樹脂硬化時間の短縮を実現する、速硬化性が要求される。特許文献4には、フェノール性水酸基を有する芳香族環を2個以上有する化合物を用いた、速硬化性の2液型エポキシ樹脂組成物が提案されている。しかしながら、フェノール性水酸基を有する化合物をエポキシ樹脂組成物へ添加した場合、その反応性の高さにより樹脂組成物の粘度上昇が速く、RTM成形における可使時間が極端に短くなってしまい、強化繊維基材内部に、十分な量の樹脂を含浸させることが困難となる。そのため、この様なエポキシ樹脂組成物を用いて作製される繊維強化複合材料は、ボイド等の多くの欠陥を内在する。その結果、繊維強化複合材料構造体の圧縮性能及び損傷許容性などが低下するという問題があった。
このように、繊維強化複合材料の高い生産性を実現するための十分な速硬化性を有し、かつ自動車や航空機等の産業用途で要求される耐熱性や力学特性を高レベルで兼ね備えた樹脂硬化物を得ることのできる2液型エポキシ樹脂組成物はこれまで存在しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-148572号
【特許文献2】特開2015-193713号
【特許文献3】国際公開第2009/119467号
【特許文献4】特許第6617559号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、優れた特性の樹脂硬化物を製造することができ、且つ繊維強化基材への含浸性が高く、取扱性および繊維強化複合材料の生産性に優れるエポキシ樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の更なる目的は、このエポキシ樹脂組成物を使用して作製する繊維強化複合材料(以下、「FRP」と略記する場合があり、特に繊維強化基材が炭素繊維である場合は「CFRP」と略記する場合がある)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、所定のエポキシ樹脂を含む主剤液と、所定の硬化剤を含む硬化剤液と、樹脂粒子成分との組み合わせから成る2液型エポキシ樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を含み得るものである。
〔1〕
主剤液と硬化剤液とからなる2液型エポキシ樹脂組成物であって、
前記主剤液が、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂[A]と、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成される芳香族エポキシ樹脂[B]とを含み、
前記硬化剤液が、硬化剤[C]を含み、硬化剤[C]が、(C-A)液状芳香族ポリアミン及び(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを含み、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含むか又は含まず、含まない場合、硬化剤[C]が、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含み、
前記主剤液と前記硬化剤液の少なくとも一方が、樹脂粒子成分[D]を含む
ことを特徴とする、2液型エポキシ樹脂組成物。
〔2〕
前記エポキシ樹脂[A]の構成モノマーが、下記化学式(1)
(ただし、化学式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及びハロゲン原子からなる群から選択される1つを表し、Xは-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、-NHCO-、-CONH-、-SO2-から選択される1つを表す。)
で示される化合物を含んで成る、前記〔1〕に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
〔3〕
前記エポキシ樹脂[A]の構成モノマーが、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルもしくはテトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルメタンから選択される1種類または2種以上の組み合わせである、前記〔1〕または〔2〕に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
〔4〕
前記主剤液が、前記エポキシ樹脂[A]を50~90質量%含んで成る、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
〔5〕
前記エポキシ樹脂[B]の構成モノマーが、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンおよびトリグリシジルイソシアヌレートから選択される1種類または2種以上の組み合わせである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
〔6〕前記樹脂粒子成分[D]の平均粒子径が1.0μm以下である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物。
〔7〕
前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の2液型エポキシ樹脂組成物の前記主剤液と前記硬化剤液とを配合して成る、1液型エポキシ樹脂組成物。
〔8〕
誘電硬化度測定によって評価される、180℃40分加熱後の硬化度が70%以上である、前記〔7〕に記載の1液型エポキシ樹脂組成物。
〔9〕
前記〔7〕又は〔8〕に記載の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化して成る樹脂硬化物。
〔10〕
変形モードI臨界応力拡大係数KIcが0.8以上である、前記〔9〕に記載の樹脂硬化物。
〔11〕
前記〔9〕又は〔10〕に記載の樹脂硬化物と、繊維強化基材と、を含んで構成される繊維強化複合材料。
〔12〕
前記繊維強化基材が炭素繊維強化基材である、前記〔11〕に記載の繊維強化複合材料。
〔13〕
繊維強化基材と、前記〔7〕又は〔8〕に記載の1液型エポキシ樹脂組成物と、を複合化して硬化させる、繊維強化複合材料の製造方法。
〔14〕
前記〔7〕又は〔8〕に記載の1液型エポキシ樹脂組成物を、型内に配置した繊維強化基材へ含浸させた後、加熱硬化する工程を含む、繊維強化複合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の2液型エポキシ樹脂組成物は、優れた特性を有する樹脂硬化物を製造することができる。また、本発明の2液型エポキシ樹脂組成物の主剤液と硬化剤液とを混合して成る1液型エポキシ樹脂は低粘度であり、かつ可使時間が長く取扱性が高く、かつ硬化時間が短いため、優れた特性を有するFRPを高い生産性で作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料、及びそれらの製造方法の詳細について説明する。本明細書において、特に断らないかぎり、「エポキシ樹脂組成物」は、1液型エポキシ樹脂組成物及び2液型エポキシ樹脂組成物の両方を含む。
1. エポキシ樹脂組成物
本発明の2液型エポキシ樹脂組成物は、主剤液と硬化剤液とからなり、前記主剤液が、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂[A]と、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成される芳香族エポキシ樹脂[B]とを含み、前記硬化剤液が、硬化剤[C]を含み、硬化剤[C]が、(C-A)液状芳香族ポリアミン及び(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを含み、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含むか又は含まず、含まない場合、硬化剤[C]が、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含み、前記主剤液と前記硬化剤液の少なくとも一方が、樹脂粒子成分[D]を含む。本発明の2液型エポキシ樹脂組成物において、これらの他に、主剤液がエポキシ樹脂[A]及び[B]以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含んでもよく、硬化剤液が硬化剤[C]以外の硬化剤を含んでもよく、主剤液および硬化剤液が樹脂粒子成分[D]以外の熱可塑性樹脂、その他の添加剤を含んでいても良い。
【0009】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、本発明の2液型エポキシ樹脂組成物の主剤液と硬化剤液とを配合して成り、エポキシ樹脂[A]及び[B]、硬化剤[C]並びに樹脂粒子成分[D]を含む。
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、100℃における初期粘度が、300mPa・s以下であることが好ましく、0.1~150mPa・sであることがより好ましく、0.5~70mPa・sであることが更に好ましく、1.0~50mPa・sであることが更により好ましい。100℃における初期粘度が、300mPa・s以下である場合、1液型エポキシ樹脂組成物の強化繊維基材への含浸が容易である。その結果、得られる繊維強化複合材料において物性の低下を引き起こすボイド等の形成を防ぐことができる。なお、粘度と含浸性の関係は強化繊維基材構成にも左右されるものであり、上記の粘度範囲外でも、強化繊維基材への含浸が良好になる場合もある。
また、1液型エポキシ樹脂組成物の可使時間は、複合材料の成形条件によって異なるが、例えば、大型の複合材料を、レジントランスファー成形法(RTM法)を用いて、比較的低い含侵圧力で繊維基材に含侵させる場合、可使時間として、100℃で保持した際の粘度が50mPa・sに到達するまでの時間が30分以上であることが好ましく、60分以上であることがより好ましく、90分以上であることが更に好ましい。
また、誘電硬化度測定によって評価される1液型エポキシ樹脂組成物の180℃40分加熱後の硬化度は、繊維強化複合材料の生産性の観点から70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0010】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物は、SACMA 18R-94法で測定する試験片が乾燥状態のガラス転移温度(dry-Tg)が140℃以上であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。また、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物は、SACMA 18R-94法で測定する試験片が飽和吸水時におけるガラス転移温度(wet-Tg)が120℃以上であることが好ましく、130~200℃であることがより好ましく、150~180℃であることがより好ましい。
また、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物は、JIS K7171法で測定する室温乾燥曲げ弾性率が2.8GPa以上であることが好ましく、3.0~15.0GPaであることがより好ましく、3.2~10.0GPaであることが更に好ましく、3.5~7.5GPaであることが更に好ましい。2.8GPa以上である場合、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を使用して得られる繊維強化複合材料は優れた特性を有する。また、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物は、JIS K7171法で測定する82℃吸水後曲げ弾性率(HTW-FM)が2.0GPa以上であることが好ましく、2.1~9.0GPaであることがより好ましく、2.2~8.0GPaであることが更に好ましい。
また、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物は、ASTM D5045で測定する変形モードI臨界応力拡大係数KIcが0.8MPa・m^1/2以上であることが好ましく、0.81~5.0MPa・m^1/2であることがより好ましい。
【0011】
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物と炭素繊維を組み合わせて得られる炭素繊維強化複合材料は、ASTM D7136で測定する衝撃後圧縮強度CAI(衝撃エネルギー30.5J)が250MPa以上であることが好ましく、260~400MPaであることがより好ましく、280~380MPaであることが更に好ましい。
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物と炭素繊維を組み合わせて得られる炭素繊維強化複合材料は、SACMA SRM3で測定する室温乾燥有孔圧縮強度(RTD-OHC)が260MPa以上であることが好ましく、280~450MPaであることがより好ましく、300~400MPaであることが更に好ましい。また、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物と炭素繊維を組み合わせて得られる炭素繊維強化複合材料は、SACMA SRM3で測定する82℃吸水後有孔圧縮強度(HTW-OHC)が200MPa以上であることが好ましく、220~400MPaであることがより好ましく、240~350MPaであることが更に好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤[C]の総量は、エポキシ樹脂組成物中に配合されている全てのエポキシ樹脂を硬化させるのに適した量であり、用いるエポキシ樹脂や硬化剤の種類に応じて適宜調節される。具体的にはエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、アミン硬化剤に含まれる活性水素の数の比率を、0.7~1.3、より好ましくは0.8~1.2、更に好ましくは0.9~1.1となるように混合する。エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、アミン硬化剤に含まれる活性水素の数の比率が0.7~1.3であれば、適切なエポキシ基と活性水素のモルバランスを有するため、得られる樹脂硬化物は十分な架橋密度を有し、所望の耐熱性や、弾性率や破壊靭性などの力学特性が得られる。
【0012】
1-1.エポキシ樹脂[A]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂[A]を含む。エポキシ樹脂[A]は、1種類のモノマーから構成されるホモポリマーであってもよく、2種類以上のモノマーから構成されるコポリマーであってもよく、ホモポリマー及び/又はコポリマーの混合物であってもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物は、構成モノマーが下記化学式(1)で示されるエポキシ樹脂[A]を含むことが好ましい。
【化1】
(ただし、化(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる1つを表し、Xは-CH2-、-O-、-S-、-CO-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、-NHCO-、-CONH-、-SO2-から選ばれる1つを表す。)
1~R4が、脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基である場合、その炭素数は1~4であることが好ましい。
【0013】
エポキシ樹脂[A]の構成モノマーとしては、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルもしくはテトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルメタンから選択される1種類または2種以上の組み合わせであることが特に好ましい。すなわち、エポキシ樹脂[A]は、これらのモノマーから構成されるホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物であることが好ましい。R1~R4が水素原子である場合、樹脂硬化物の特殊な立体構造形成が阻害され難いため好ましい。また、当該化合物の合成が容易になるため、Xが-O-であることが好ましい。
エポキシ樹脂[A]の構成モノマーは、どのような方法で合成しても良いが、例えば、原料である芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンとを、好ましくは酸触媒の存在下、反応させてテトラハロヒドリン体を得た後、次いでアルカリ性化合物を用いて環化反応することにより得られる。より具体的には、後述の実施例の方法で合成することができる。
芳香族ジアミンとしては、例えば4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性の観点からアミノ基を有する2つの芳香環がエーテル結合により連結している芳香族ジアミンが好ましく、エーテル結合に対して一方のアミノ基がパラ位、もう一方のアミノ基がオルト位に位置している芳香族ジアミンであることがより好ましい。このような芳香族ジアミンとしては、例えば、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピフルオロヒドリンなどが挙げられる。これらの中でも、反応性や取扱性の観点から、エピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンが特に好ましい。
原料である芳香族ジアミンとエピハロヒドリンとの質量比は1:1~1:20が好ましく、1:3~1:10がより好ましい。反応時に用いる溶媒としては、エタノールやn-ブタノールなどのアルコール系溶媒、メチルイソブチルケトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリルやN,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が例示される。特に、エタノールやn-ブタノールなどのアルコール系溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。溶媒の使用量は芳香族ジアミンに対して1~10質量倍であることが好ましい。酸触媒としてはブレンステッド酸とルイス酸のいずれも好適に用いることができる。ブレンステッド酸としてはエタノールや水、酢酸が好ましく、ルイス酸としては四塩化チタンや硝酸ランタン六水和物、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。
【0014】
反応時間は、0.1~180時間であることが好ましく、0.5~24時間がより好ましい。反応温度は、20~100℃であることが好ましく、40~80℃がより好ましい。
環化反応時に用いるアルカリ性化合物としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが例示される。アルカリ性化合物は固体として添加しても水溶液として添加してもよい。
環化反応時には相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩、臭化トリブチルヘキサデシルホスホニウム、臭化トリブチルドデシルホスホニウムなどのホスホニウム化合物、18-クラウン-6-エーテルなどのクラウンエーテル類が例示される。
本発明において用いるエポキシ樹脂[A]は、50℃における粘度が50Pa・s未満であることが好ましく、30Pa・s未満であることがより好ましく、20Pa・s未満であることが更に好ましく、10Pa・s未満であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂[A]の分子量は、300g/mol以上600g/mol未満であることが好ましい。分子量が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができ、RTM成形に有利である。
本発明の2液型エポキシ樹脂組成物の主剤液における、エポキシ樹脂[A]が占める割合は、主剤液中のエポキシ樹脂の総質量に対して、10質量%以上100質量%未満であることが好ましく、50~90質量%であることがより好ましく、60~80質量%であることが更に好ましい。エポキシ樹脂[A]の割合が10質量%以上であれば、得られる樹脂硬化物の耐熱性及び弾性率をより向上させることができる。その結果、得られる繊維強化複合材料の各種物性も向上する。
【0015】
1-2. エポキシ樹脂[B]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成される芳香族エポキシ樹脂[B]を含む。エポキシ樹脂[B]は、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させて、強化繊維基材への樹脂含浸性を向上させる。
エポキシ樹脂[B]の構成モノマーとしては、グリシジル基を2つまたは3つ有する芳香族化合物であれば特に限定されないが、グリシジル基を2つ有する芳香族化合物としては、ジグリシジルアニリンやその誘導体であるジグリシジル-o-トルイジン、ジグリシジル-m-トルイジン、ジグリシジル-p-トルイジン、ジグリシジル-キシリジン、ジグリシジル-メシジン、ジグリシジル-アニシジン、ジグリシジル-フェノキシアニリン、あるいはジグリシジル-ナフチルアミンおよびその誘導体を用いることが好ましい。
特にジグリシジル-アニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、ジグリシジル-m-トルイジン、ジグリシジル-p-トルイジン、ジグリシジル-フェノキシアニリンを用いることがより好ましく、ジグリシジル-アニリンまたはジグリシジル-o-トルイジンを用いることが更に好ましい。これらの化合物を構成モノマーとするエポキシ樹脂をエポキシ樹脂[B]として用いると1液型エポキシ樹脂組成物の可使時間を長くすることができ、RTM成形法に使用する金型の設計自由度を高めることができる。
また、エポキシ樹脂[B]の構成モノマーとしては、グリシジル基を2つまたは3つ有する芳香族エポキシ樹脂として、多環芳香族炭化水素骨格を有する化合物を含んでいることも好ましい。多環芳香族環化水素骨格としては、例えば、ナフタレン骨格やアントラセン骨格が挙げられ、樹脂硬化物の物性の観点から、ナフタレン骨格であることがより好ましい。多環芳香族炭化水素基は、グリシジル基の他に置換基を有していてもよい。ナフタレン骨格を有する化合物としては、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、1,5-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,7-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレンなどのビス(グリシジルオキシ)ナフタレンや、2,2′-ビス(グリシジルオキシ)-1,1′-ビナフタレン、2,7-ビス(グリシジルオキシ)-1-[2-(グリシジルオキシ)-1-ナフチルメチル]ナフタレンなどのビナフタレン構造を有するエポキシ樹脂などが挙げられる、流動性の観点からビス(グリシジルオキシ)ナフタレンが特に好ましい。これらの化合物を構成モノマーとするエポキシ樹脂[B]は、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させ、かつ樹脂硬化物の耐熱性を向上させることができる。
【0016】
エポキシ樹脂[B]は、通常、硬化物の耐熱性向上に使用される4官能エポキシ樹脂と異なり、硬化物の架橋密度が過剰に上昇することがない。そのため、樹脂硬化物の靭性低下を防ぐことができる。
また、エポキシ樹脂[B]の構成モノマーとしては、グリシジル基を3つ有する芳香族化合物として、トリグリシジルアミノフェノール誘導体を含んでいることも好ましい。トリグリシジルアミノフェノール誘導体としては、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジル-p-アミノフェノールが挙げられる。これらは1液型エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させ、また樹脂硬化物の耐熱性を向上させる。そのため、エポキシ樹脂[A]と組み合わせて用いることにより、1液型エポキシ樹脂組成物の強化繊維基材への樹脂含浸性を向上させるとともに、耐熱性及び高弾性率を維持した樹脂硬化物および繊維強化複合材料を与える。
また、エポキシ樹脂[B]の構成モノマーとしては、グリシジル基を3つ有するヘテロ芳香族化合物エポキシ樹脂として、トリグリシジルイソシアヌレート誘導体エポキシ樹脂を含んでいることも好ましい。トリグリシジルイソシアヌレート誘導体エポキシ樹脂としては、1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート、1,3,5-トリ(エチルグリシジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリ(ペンチルグリシジル)イソシアヌレートが挙げられる。これらはエポキシ樹脂硬化物の耐熱性と弾性率を向上させる。そのため、エポキシ樹脂[A]と組み合わせて用いることにより、耐熱性及び高弾性率を維持した樹脂硬化物および繊維強化複合材料を与える。
本発明においてはエポキシ樹脂[B]の構成モノマーとして、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノールまたはトリグリシジルイソシアヌレートから選択される1種類または2種以上の組み合わせを含んでいることが特に好ましい。すなわち、エポキシ樹脂[B]は、これらのモノマーから構成されるホモポリマー、コポリマー、又はそれらの混合物であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂[B]のその他の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂[B]のB型粘度計において測定される120℃における粘度は、100mPa・s未満であることが好ましく、50mPa・s未満であることが特に好ましく、20mPa・s未満であることが更に好ましい。粘度が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることができ、RTM成形に有利である。
本発明の2液型エポキシ樹脂組成物の主剤液における、エポキシ樹脂[B]の含有率は、主剤液中のエポキシ樹脂の総質量に対して、3~50質量%であることが好ましく、3~40質量%であることがより好ましく、5~40質量%であることが特に好ましい。主剤液中のエポキシ樹脂[B]の含有率をこの範囲とすることにより、RTM成形法に適した粘度や可使時間を有し、かつ耐熱性の高い樹脂硬化物や繊維強化複合材料をもたらす1液型エポキシ樹脂組成物を作製できる。
【0017】
1-3. 硬化剤[C]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤[C]を含み、硬化剤[C]が、(C-A)液状芳香族ポリアミン及び(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを含み、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含むか又は含まず、含まない場合、硬化剤[C]が、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含む。
【0018】
(C-A)液状芳香族ポリアミン
本発明における「液状」芳香族ポリアミンとは、融点が室温(25℃)よりも低い、すなわち、室温(25℃)において液体状態である芳香族ポリアミンをいう。
【0019】
液状芳香族ポリアミンは、2つ以上のアミノ基を有する、芳香族化合物である。本明細書において、特に断らない限り、「アミノ基」は、「一級アミノ基」、「二級アミノ基」及び「三級アミノ基」を含む。三級アミノ基はエポキシ樹脂の自己重合を促進し、得られる硬化物の耐熱性を低くする傾向があるため、高耐熱性の硬化物を得る観点から、液状芳香族ポリアミンは、2つ以上の一級アミノ基を含むか、2つ以上の二級アミノ基を含むか、あるいは、1つ以上の一級アミノ基と1つ以上の二級アミノ基とを含むことが好ましい。
【0020】
液状芳香族ポリアミンは、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度を低くする観点から、粘度が80℃以上の加熱条件下で100cP以下であることが好ましく、より好ましくは0.001~60cP、更に好ましくは0.01~20cPの粘度を有する。液状芳香族ポリアミンの粘度は、市販の粘度測定装置、例えば、HAAKE社製RheoStress6000を用いて測定することができる。
【0021】
液状芳香族ポリアミンは、沸点が140℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃~500℃、更に好ましくは160℃~400℃、更により好ましくは180~350℃の沸点を有する。沸点が140℃以上であれば、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料の製造過程において、1液型エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる際の温度よりも十分に高いため、液状芳香族ポリアミン成分の揮発を抑制することができ、その結果、繊維強化複合材料の構造欠陥及び強度低下を抑制することができる。
【0022】
好ましい液状芳香族ポリアミンとしては、例えば、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス[N-(1-メチルプロピル)アニリン]等が挙げられる。
【0023】
液状芳香族ポリアミンの市販品の例としては、ジメチルチオトルエンジアミン(アルベマール社製「エタキュア300」、クミアイ化学工業社製「ハートキュア30」)、ジエチルトルエンジアミン(アルベマール社製「エタキュア100プラス」、クミアイ化学工業社製「ハートキュア10」)等が挙げられる。
【0024】
液状芳香族ポリアミンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。二種以上の液状芳香族ポリアミンを組み合わせて用いる場合には、硬化物の強度及び耐熱性を高める観点から、液状芳香族アミンの総質量に対して、2つ以上の一級アミノ基を含む液状芳香族ポリアミンが50~90質量%の割合で含まれることが好ましく、60~80質量%の割合で含まれることがより好ましい。
【0025】
硬化剤[C]を100質量%とした場合、液状芳香族ポリアミンは、低粘度の1液型エポキシ樹脂組成物を得る観点から、好ましくは40~97質量%、より好ましくは50~95質量%、更に好ましくは55~93質量%の量で、硬化剤[C]に含まれる。
【0026】
(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミン
本発明における「固形」芳香族アミンとは、融点が室温(25℃)よりも高い、すなわち、室温(25℃)において固体状態である芳香族アミンをいう。
【0027】
本発明の固形芳香族アミンは、二級アミノ基を含む。固形芳香族アミンが二級アミノ基を含むことにより、硬化物の衝撃強度を高くすることができる。
【0028】
二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、融点が160℃以下であることが好ましく、例えば、155℃以下、又は150℃以下であることが好ましい。また、二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、融点が、例えば、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、又は70℃以上であることが好ましい。融点が160℃以下であれば、液状芳香族ポリアミンに短時間で容易に溶解させることができる。
【0029】
融点が160℃以下の二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとしては、例えば、N-フェニル-1-ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N-(p-トリル)-1-ナフチルアミン、N-フェニル-3-ビフェニルアミン、ビス(3-ビフェニリル)アミン、2-(3-ビフェニリル)アミノ-9,9-ジメチルフルオレン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミン、4-tert-ブチルフェニルフェニルアミン、ビス-α-メチルベンジルフェノチアジン、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応物、ジフェニルアミン、N-フェニルベンジルアミン、3-メチルジフェニルアミン、3,4-ジメチルジフェニルアミン、4,4’-ジメチルジフェニルアミン、3-メトキシジフェニルアミン、10-メトキシ-2,2’-イミノスチルベン、N-ベンジル-2-ナフチルアミン、1,2’-ジナフチルアミン、1,1’-ジナフチルアミン、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、2,6-ビス[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]トルエン、4-(2-オクチルアミノ)ジフェニルアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、1,3-ジフェニルグアニジン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、ビス(2-ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニルエチレンジアミン、5-(アセトアセトアミド)-2-ベンゾイミダゾリノン、1-(o-トリル)ビグアニド、フェニルビグアニド、末端アミノ基を含む高分子ビグアニド化合物、4-フェニルセミカルバジド、4-フェニル-3-チオセミカルバジド、1,2,3-トリフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0030】
二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、沸点が140℃以上であることが好ましく、より好ましくは145℃~550℃、更に好ましくは150℃~500℃、更により好ましくは160℃~450℃、特に好ましくは170~400℃の沸点を有する。沸点が140℃以上であれば、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料の製造過程において、1液型エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させる際の温度よりも十分に高いため、二級アミノ基を含む固形芳香族アミン成分の揮発を抑制することができ、その結果、繊維強化複合材料の構造欠陥及び強度低下を抑制することができる。
【0031】
沸点が140℃以上の二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとしては、例えば、N-フェニル-1-ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N-(p-トリル)-1-ナフチルアミン、N-フェニル-3-ビフェニルアミン、ビス(3-ビフェニリル)アミン、2-(3-ビフェニリル)アミノ-9,9-ジメチルフルオレン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミン、4-tert-ブチルフェニルフェニルアミン、ビス-α-メチルベンジルフェノチアジン、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応物、ジフェニルアミン、N-フェニルベンジルアミン、3-メチルジフェニルアミン、3,4-ジメチルジフェニルアミン、4,4’-ジメチルジフェニルアミン、3-メトキシジフェニルアミン、10-メトキシ-2,2’-イミノスチルベン、N-ベンジル-2-ナフチルアミン、1,2’-ジナフチルアミン、1,1’-ジナフチルアミン、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、2,6-ビス[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]トルエン、4-(2-オクチルアミノ)ジフェニルアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、1,3-ジフェニルグアニジン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、ビス(2-ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド、N,N’-ジフェニルエチレンジアミン、5-(アセトアセトアミド)-2-ベンゾイミダゾリノン、1-(o-トリル)ビグアニド、1-フェニルグアニジン、フェニルビグアニド、末端アミノ基を含む高分子ビグアニド化合物、4-フェニルセミカルバジド、4-フェニル-3-チオセミカルバジド、1,2,3-トリフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0032】
二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとしては、1つの二級アミノ基を有するモノアミンを含んでもよく、2つ以上のアミノ基を有し、そのうちの少なくとも1つが二級アミノ基であるポリアミンを含んでもよい。1液型エポキシ樹脂組成物の硬化速度や硬化物の機械的性質を向上させる観点から、二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含むことが好ましい。(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンとしては、(C-B1’)アミノ基として二級アミノ基のみを含む固形芳香族アミン(二級アミノ基の数が1つ、2つ又は3つ以上、一級アミノ基と三級アミノ基との合計数が0)を含むことが好ましい。
【0033】
(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンとしては、例えば、アミノ基として1つの二級アミノ基のみを有する固形芳香族モノアミン(C-B1’に相当)、アミノ基として2つ以上の二級アミノ基のみを有する固形芳香族ポリアミン(C-B1’に相当)、1つの一級アミノ基と2つの二級アミノ基を有する固形芳香族ポリアミン、2つの二級アミノ基と1つの三級アミノ基を有する固形芳香族ポリアミン、1つの一級アミノ基と3つ以上の二級アミノ基を有する固形芳香族ポリアミン、3つ以上の二級アミノ基と1つの三級アミノ基を有する固形芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0034】
アミノ基として1つの二級アミノ基のみを有する固形芳香族モノアミン(C-B1’に相当)の好ましい例としては、N-フェニル-1-ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N-(p-トリル)-1-ナフチルアミン、N-フェニル-3-ビフェニルアミン、ビス(3-ビフェニリル)アミン、2-(3-ビフェニリル)アミノ-9,9-ジメチルフルオレン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミン、4-tert-ブチルフェニルフェニルアミン、ビス-α-メチルベンジルフェノチアジン、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンとの反応物、ジフェニルアミン、N-フェニルベンジルアミン、3-メチルジフェニルアミン、3,4-ジメチルジフェニルアミン、4,4’-ジメチルジフェニルアミン、3-メトキシジフェニルアミン、10-メトキシ-2,2’-イミノスチルベン、N-ベンジル-2-ナフチルアミン、1,2’-ジナフチルアミン、1,1’-ジナフチルアミン等が挙げられる。
【0035】
アミノ基として2つ以上の二級アミノ基のみを有する固形芳香族ポリアミン(C-B1’に相当)の好ましい例としては、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン、2,6-ビス[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]トルエン、4-(2-オクチルアミノ)ジフェニルアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-1,4-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体、1,3-ジフェニルグアニジン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N-フェニル-N’-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-p-フェニレンジアミン、ビス(2-ベンズアミドフェニル)ジスルフィド、N,N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,5-ジフェニルカルボノヒドラジド、N,N’-ジフェニルエチレンジアミン、5-(アセトアセトアミド)-2-ベンゾイミダゾリノン等が挙げられる。
【0036】
(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンのその他の例としては、1-(o-トリル)ビグアニド、1-フェニルグアニジン、フェニルビグアニド、末端アミノ基を含む高分子ビグアニド化合物、4-フェニルセミカルバジド、4-フェニル-3-チオセミカルバジド、1,2,3-トリフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0037】
二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンを含んでもよい。例えば、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含まず、(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンを含んでもよい。この場合、硬化剤[C]は、後述する(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含む。あるいは、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとして、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンと、(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンとを併用してもよい。この場合、硬化剤[C]は、後述する(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含んでもよく、含まなくてもよい。
【0038】
(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンとしては、一級アミノ基と二級アミノ基とを含む固形芳香族ポリアミン(例えば、1つの一級アミノ基と1つの二級アミノ基とを有する固形芳香族ポリアミン、2つの一級アミノ基と1つの二級アミノ基とを有する固形芳香族ポリアミン等)、二級アミノ基と三級アミノ基とを含む固形芳香族ポリアミン(例えば、1つの二級アミノ基と1つの三級アミノ基とを含む固形芳香族ポリアミン等)、一級アミノ基と二級アミノ基と三級アミノ基とを含む固形芳香族ポリアミンが挙げられる。
【0039】
(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンの好ましい例としては、4-アミノジフェニルアミン、2,4-ジアミノジフェニルアミン、2-アミノジフェニルアミン、4-アミノ-4’-メトキシジフェニルアミン、1-フェニルビグアニド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6-ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’-ビスベンゼンジヒドラジド、1,4-ナフトエ酸ジヒドラジド、ナフタレン-2,6-ジカルボヒドラジド、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0040】
(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンと、(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンとを併用してもよい。あるいは、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとして、2種以上の(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを組み合わせて使用してもよく、2種以上の(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンを組み合わせて使用してもよい。
【0041】
(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンは、芳香環にハロゲン等の置換基を有していてもよい。芳香環にハロゲン置換基を有する(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを使用することにより、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度安定性を改善することが可能である。
【0042】
二級アミノ基を含む固形芳香族ポリアミンの市販品の例としては、1-(o-トリル)ビグアニド(大内新興化学工業社製「ノクセラーBG」、HUNTSMAN社製「Aradur2844」、Thomas Swan社製「Casamine OTB」)、4-イソプロピルアミノジフェニルアミン(大内新興化学工業社製「ノクラック810-NA」、川口化学工業社製「アンテージ3C」)、4-アミノジフェニルアミン(精工化学社製「4-アミノジフェニルアミン」、LANXESS社製「4-ADPA」)、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(大内新興化学工業社製「ノクラック224(224-S)」、精工化学社製「ノンフレックスRD」、「ノンフレックスQS」)、N-フェニル-1-ナフチルアミン(大内新興化学工業社製「ノクラックPA」)、1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製「ノクセラーD」、三新化学工業社制「サンセラーD,D-G」)、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学工業社製「ノクラックCD」、精工化学社製「ノンフレックスDCD」)等が挙げられる。
【0043】
硬化剤[C]を100質量%とした場合、二級アミノ基を含む固形芳香族ポリアミンは、硬化物の衝撃強度を高める観点から、好ましくは1~45質量%、より好ましくは2~40質量%、更に好ましくは3~35質量%の量で、硬化剤[C]に含まれる。
【0044】
硬化剤[C]は、硬化物の伸びや曲げ強度等の機械的性質を向上させる観点から、任意に、融点160℃以下の、二級アミノ基を含まないが一級アミノ基を含む固形芳香族アミンを含んでもよい。融点160℃以下の二級アミノ基を含まないが一級アミノ基を含む固形芳香族アミンの好ましい例としては、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、2,2’-ジイソプロピルー6,6’-ジメチルー4,4’-メチレンジアニリン、2,2’,6,6’-テトライソプロピルー4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、1,3-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、3-アミノビフェニル、3-アミノ-4-メトキシビフェニル、2-アミノフルオレン、2-アミノ-9-フルオレノン、2,7-ジアミノフルオレン、3-アミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0045】
(C-C)脂肪族環状ポリアミン
硬化剤[C]は、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含まない場合(すなわち、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとして、(C-B2)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数以下である固形芳香族ポリアミンのみを含む場合)、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含む。また、硬化剤[C]は、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとして(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含む場合に、(C-C)脂肪族環状ポリアミンをさらに含んでもよく、含まなくてもよい。
【0046】
硬化剤[C]における(C-C)脂肪族環状ポリアミンは、(C-A)液状芳香族ポリアミンと(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンによるエポキシ樹脂の硬化を促進する作用を有する。すなわち、硬化剤[C]は、脂肪族環状ポリアミンを含むことにより、1液型エポキシ樹脂組成物の硬化を促進し、硬化速度を速めることができる。脂肪族環状ポリアミンは、環構造上に(すなわち、環に結合している)置換基として2つ以上のアミノ基を有する脂肪族炭化水素であってもよく、環構造中に(すなわち、環を構成している)2つ以上のアミノ基を有する複素環式アミンであってもよい。また環構造上に置換基として1つ以上のアミノ基を有し、かつ環構造中に1つ以上のアミノ基を有する複素環式アミンであってもよい。環構造上の置換基としてのアミノ基としては、一級アミノ基又は二級アミノ基が挙げられ、一級アミノ基が好ましい。複素環式アミンの環構造中のアミノ基としては、二級アミノ基が好ましい。
【0047】
本発明における脂肪族環状ポリアミンにおいては、好ましくは、窒素原子やアミノ基が錯体又は塩構造を形成していないものが選択される。錯体又は塩構造を形成していないフリーのアミノ基を有する脂肪族環状ポリアミンの場合、窒素原子やアミノ基が錯体又は塩構造を形成して安定化されている脂肪族環状ポリアミンに比べ、1液型エポキシ樹脂組成物の硬化速度をより速めることができる。
【0048】
本発明における脂肪族環状ポリアミンの環構造において、好ましくは、環構造中のアミノ基(好ましくは二級アミノ基)に隣接する元素(炭素原子等)及び/又は環構造上のアミノ基が結合している元素(炭素原子等)に隣接する元素(炭素原子等)の置換基が全て水素原子であるものが選択される。上記置換基が全て水素原子である場合、水素原子以外の置換基(例えば、アルキル基等)が結合している場合に比べ、アミノ基がエポキシ樹脂と反応するうえでの立体障害がないため、1液型エポキシ樹脂組成物の硬化速度をより速めることができる。環構造中にアミノ基が2つ以上ある場合には、少なくとも、環構造中の1つのアミノ基に隣接する2つの元素の置換基が全て水素原子であればよいが、環構造中の全てのアミノ基に隣接する元素の置換基が全て水素原子であることが好ましい。環構造上に置換基としてのアミノ基が2つ以上結合している場合には、少なくとも、アミノ基が結合している1つの元素に隣接する2つの元素の置換基が全て水素原子であればよいが、アミノ基が結合している全ての元素に隣接する元素の置換基が全て水素原子であることが好ましい。より好ましくは、環構造中のアミノ基(好ましくは二級アミノ基)以外の元素(炭素原子等)及び/又は環構造上のアミノ基が結合している元素(炭素原子等)以外の元素(炭素原子等)の置換基が全て水素原子であるものが選択される。
【0049】
脂肪族環状ポリアミンは、沸点が140℃以上であることが好ましく、145℃~250℃であることがより好ましい。沸点が140℃以上であれば、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料の製造過程において、強化繊維を1液型エポキシ樹脂組成物に含浸させる際の温度よりも十分に高いため、脂肪族環状ポリアミン成分の揮発を抑制することができ、その結果、繊維強化複合材料の構造欠陥及び強度低下を抑制することができる。
【0050】
脂肪族環状ポリアミンは、融点が160℃以下であることが好ましく、例えば、150℃以下、140℃以下、130℃以下、又は120℃以下であることが好ましい。融点が160℃以下であれば、液状芳香族ポリアミンに短時間で容易に溶解させることができる。
【0051】
脂肪族環状ポリアミンは、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度を低くする観点から、1個、2個又は3個の環構造を持つ化合物であることが好ましい。
【0052】
脂肪族環状ポリアミンは、硬化物の耐熱性を高める観点から、一級アミノ基又は二級アミノ基を含むことが好ましい。反応性の観点から、環構造中のアミノ基としては二級アミノ基を含むことがより好ましく、二級アミノ基のみを含むことが更により好ましく、置換基としてのアミノ基としては一級アミノ基を含むことがより好ましい。一級アミノ基又は二級アミノ基が含まれていれば、硬化物の耐熱性等の物性に悪影響を与えない範囲で三級アミノ基が含まれていてもよい。
【0053】
二級アミノ基を含む脂肪族環状ポリアミンとしては、ピペラジン骨格を有するものが好ましく、例えば、ピペラジン、2-メチルピペラジン、ホモピペラジン、trans-2,5-ジメチルピペラジン、cis-2,6-ジメチルピペラジン、(S)-(+)-2-メチルピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、1-ブチルピペラジン、1-メチルピペラジン、2-ピペラジノン等が挙げられる。なかでも、反応性が高く、硬化時間を短縮できることから、脂肪族環状ポリアミンはピペラジンであることがより好ましい。
【0054】
二級アミノ基を含む脂肪族環状ポリアミンの別の好ましい例としては、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、デキスラゾキサン、3-アミノピロリジン、3-(メチルアミノ)ピロリジン、3-(エチルアミノ)ピロリジン、(1S,6S)-2,8-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン、3-アセトアミドピロリジン、4-アミノピペリジン、3-アミノ-2-ピペリドン、3-(アミノメチル)ピペリジン、2-ピペリジンカルボキサミド、3-アセトアミドピペリジン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4,4’-ビピペリジン、DL-α-アミノ-ε-カプロラクタム、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸ジイミド、trans-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン、(1S,2S)-(+)-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン、(1R,2R)-(-)-N,N’-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン、N-(3-アミノプロピル)シクロヘキシルアミン、N-(1-アダマンチル)エチレンジアミン、trans-N,N’-ジアセチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン、1-アダマンチルチオ尿素、(1S,2R)-N1-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-シクロヘキサンジアミン、(1R,2S)-N1-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-シクロヘキサンジアミン、(1S,2S)-N1-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-シクロヘキサンジアミン、(1R,2R)-N1-(tert-ブトキシカルボニル)-1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-ジシクロヘキシル尿素、1,3-ジシクロヘキシルチオ尿素、1-シクロヘキシルグアニジン、1-シクロヘキシルビグアニド等が挙げられる。
【0055】
硬化剤[C]を100質量%とした場合、脂肪族環状ポリアミンは、存在する場合には、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは0.8~12質量%、更に好ましくは1~10質量%の量で、硬化剤[C]に含まれる。脂肪族環状ポリアミンが1質量%以上であれば、1液型エポキシ樹脂組成物の硬化速度を速めることができ、15質量%以下であれば、硬化物の耐熱性を損なうことがない。
【0056】
硬化剤[C]は、本発明の効果を損なわない範囲内で、ボレート化合物、チタネート化合物、ジルコネート化合物、シラン化合物、カルボン酸化合物、フェノール化合物、ハロゲン化合物等の追加成分を任意に含んでもよい。これらの追加成分は、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンとの塩形態で含まれていてもよい。
【0057】
硬化剤[C]は、液状芳香族ポリアミンに、二級アミノ基を含む固形芳香族アミンと、存在する場合には脂肪族環状ポリアミンとを溶解させてなる液状の形態であってもよく、液状芳香族ポリアミン中に、二級アミノ基を含む固形芳香族アミンと、存在する場合には脂肪族環状ポリアミンとが、固体として存在している懸濁物の形態であってもよい。硬化剤[C]は、好ましくは液状の形態である。液状芳香族ポリアミンに他の成分を溶解させて硬化剤[C]を液体状態にすることにより、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする繊維強化複合材料の製造過程において、1液型エポキシ樹脂組成物を繊維に速やかに含浸させることができる。
【0058】
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤[C]の総量は、エポキシ樹脂組成物中に配合されている全てのエポキシ樹脂を硬化させるのに適した量であり、用いるエポキシ樹脂や硬化剤の種類に応じて適宜調節される。具体的にはエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、硬化剤[C]に含まれる活性水素の数の比率を、0.7~1.3、より好ましくは0.8~1.2、更に好ましくは0.9~1.1となるように混合する。エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、硬化剤[C]に含まれる活性水素の数の比率が0.7~1.3であれば、適切なエポキシ基と活性水素のモルバランスを有するため、得られる樹脂硬化物は十分な架橋密度を有し、所望の耐熱性や、弾性率や破壊靭性などの力学特性が得られる。
【0059】
1-4. 樹脂粒子成分[D]
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂粒子成分[D]を含む。本発明において、粒子状とは、エポキシ樹脂組成物に溶解せずに分散していることを意味し、且つ当該エポキシ樹脂組成物が硬化した後の樹脂硬化物においても、分散して島成分を構成する。
樹脂粒子成分[D]は、樹脂硬化物や繊維強化複合材料の破壊靭性や耐衝撃性を向上させる。
樹脂粒子成分[D]としては、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子、ゴム粒子などを用いることができる。特にゴム粒子を用いることが好ましい。ゴム粒子としては、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレンゴムが挙げられる。
樹脂粒子成分[D]として用いるゴム粒子の市販品としては、MX-153(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、33質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-257(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、37質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-154(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、40質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-960(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、25質量%のシリコーンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-136(ビスフェノールF型エポキシ樹脂に、25質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-965(ビスフェノールF型エポキシ樹脂に、25質量%のシリコーンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-217(フェノールノボラック型エポキシ樹脂に、25質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-227M75(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂に、25質量%のスチレンブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-334M75(臭素化エポキシ樹脂に、25質量%のスチレンブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-416(4官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂に、25質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-451(3官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂に、25質量%のスチレンブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)、MX-150(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、40質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ社製)が挙げられる。
【0060】
樹脂粒子成分[D]の平均粒子径は、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.3μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径の下限は特に限定されないが、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.08μm以上であることが更に好ましい。平均粒子径が1μm以下の場合、強化繊維基材への1液型エポキシ樹脂組成物含浸工程において、樹脂粒子成分[D]が強化繊維基材表面で濾されることがなく、強化繊維束内部への含浸が容易になる。これにより、樹脂の含浸不良を防ぐことができ、優れた物性を有する繊維強化複合材料が得られる。ここでいう平均粒子径は、例えば、以下の[評価方法](3)のように、粒子断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により観察し、少なくとも50個以上の粒子の直径を測定して樹脂粒子の粒子径として、それを平均することにより平均粒子径を求めることが出来る。前記観察において、粒子が真円状でない場合、即ち粒子が楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子の粒子径とする。
本発明のエポキシ樹脂組成物における樹脂粒子成分[D]の含有量は、エポキシ樹脂組成物全量のうち0.1~50質量%であることが好ましく、0.5~20質量%であることがより好ましく、1~15質量%であることが更に好ましい。0.1質量%以上の場合、樹脂硬化物や繊維複合材料の破壊靭性や耐衝撃性が十分に向上する。
樹脂粒子成分[D]は、エポキシ樹脂へ高濃度で分散したマスターバッチとして用いることもできる。この場合、樹脂粒子成分をエポキシ樹脂組成物へ高度に分散させることが容易になる。
【0061】
1-5. その他の任意成分
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のエポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、硬化剤[C]及び樹脂粒子成分[D]を必須とするが、エポキシ樹脂[A]及び[B]以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、樹脂粒子成分[D]以外の熱可塑性樹脂、硬化剤[C]以外の硬化剤、その他の添加剤を含んでいても良い。2液型エポキシ樹脂組成物の場合には、主剤液がエポキシ樹脂[A]及び[B]以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含んでもよく、硬化剤液が硬化剤[C]以外の硬化剤を含んでもよく、主剤液および硬化剤液が樹脂粒子成分[D]以外の熱可塑性樹脂、その他の添加剤を含んでいても良い。
エポキシ樹脂[A]及び[B]以外のエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、1官能のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも芳香族基を含有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン構造、グリシジルエーテル構造のいずれかを含有するエポキシ樹脂が好ましい。また、脂環族エポキシ樹脂も好適に用いることができる。また、これらのエポキシ樹脂は、必要に応じて、芳香族環構造などに、非反応性置換基を有していても良い。非反応性置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基などのアルキル基、フェニル基などの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのハロゲン基が例示される。
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、例えばビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド‐トリアジン樹脂等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤[C]以外の硬化剤を含んでいても良い。
硬化剤[C]以外の硬化剤としては、脂肪族ポリアミン類、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体、アミノ安息香酸エステル類、酸無水物類が挙げられる(ただし、上記の硬化剤[C]の成分を除く)。
【0062】
脂肪族ポリアミン類としては4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、m-キシリレンジアミン等が例示される。
芳香族ポリアミンは耐熱性や各種力学特性に優れるため好ましい。芳香族ポリアミン類としてはジアミノジフェニルスルホン類、ジアミノジフェニルメタン類、ジアミノジフェニルエーテル類、トルエンジアミン類が例示される。4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン化合物及びこれらの非反応性置換基を有する誘導体は、耐熱性が高い硬化物を得ることができるため、特に好ましい。さらに、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンは、得られる樹脂硬化物の耐熱性や弾性率が高いため更に好ましい。非反応性置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基などのアルキル基、フェニル基などの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのようなハロゲン基が例示される。
【0063】
アミノ安息香酸エステル類としては、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ-p-アミノベンゾエートが好ましく用いられる。これら硬化剤を用いて硬化させた複合材料は、引張伸度が高い。
酸無水物類としては、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
これら硬化剤を用いた場合、未硬化樹脂組成物の可使時間が長く、電気的特性、化学的特性、機械的特性などに比較的バランスがとれた硬化物が得られる。そのため、複合材料の用途に応じて硬化剤は適宜選択される。
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の総量は、エポキシ樹脂組成物中に配合されている全てのエポキシ樹脂を硬化させるのに適した量であり、用いるエポキシ樹脂や硬化剤の種類に応じて適宜調節される。具体的には、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、アミン硬化剤に含まれる活性水素の数の比率を、0.7~1.3、より好ましくは0.8~1.2、更に好ましくは0.9~1.1となるように混合する。エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、アミン硬化剤に含まれる活性水素の数の比率が0.7~1.3であれば、適切なエポキシ基と活性水素のモルバランスを有するため、得られる樹脂硬化物は十分な架橋密度を有し、所望の耐熱性や、弾性率や破壊靭性などの力学特性が得られる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂粒子成分[D]以外に、エポキシ樹脂組成物中に溶解させる成分として、熱可塑性樹脂を含んでいても良い。熱可塑性樹脂は、得られる繊維強化複合材料の破壊靭性や耐衝撃性を向上させる。かかる熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂組成物の硬化過程で1液型エポキシ樹脂組成物中に溶解させてもよい。
熱可塑性樹脂の具体的例としては、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。エポキシ樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が8000~100000の範囲のポリエーテルスルホン、ポリスルホンが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が8000以上であれば、得られるFRPの耐衝撃性が十分となり、また100000以下であれば、粘度が著しく高くなることなく良好な取扱性を示す1液型エポキシ樹脂組成物が得られる。エポキシ樹脂可溶性熱可塑性樹脂の分子量分布は均一であることが好ましい。特に、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)が1~10の範囲であることが好ましく、1.1~5の範囲であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂と反応性を有する反応基又は水素結合を形成する官能基を有していることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂の硬化過程中における溶解安定性を向上させることができる。また、硬化後に得られる繊維強化複合材料に破壊靭性、耐薬品性、耐熱性及び耐湿熱性を付与することができる。
【0064】
エポキシ樹脂との反応性を有する反応基としては、水酸基、カルボン酸基、イミノ基、アミノ基などが好ましい。水酸基末端のポリエーテルスルホンを用いると、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性、破壊靭性及び耐溶剤性が特に優れるためより好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、粘度に応じて適宜調整される。繊維強化基材への含浸の観点から、エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。0.1質量部以上の場合は、得られる繊維強化複合材料は十分な破壊靭性や耐衝撃性を示す。熱可塑性樹脂の含有量が10質量部以下であれば、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度が著しく高くなることなく、繊維強化基材への含浸が容易となり、得られる繊維強化複合材料の特性が向上する。
熱可塑性樹脂には、アミン末端基を有する反応性芳香族オリゴマー(以下、単に「芳香族オリゴマー」ともいう)を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂組成物は、加熱硬化時にエポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応により高分子量化する。高分子量化により二相域が拡大することによって、エポキシ樹脂組成物に溶解していた芳香族オリゴマーは、反応誘起型の相分離を引き起こす。この相分離により、硬化後のエポキシ樹脂と、芳香族オリゴマーと、が共連続となる樹脂の二相構造をマトリックス樹脂内に形成する。また、芳香族オリゴマーはアミン末端基を有していることから、エポキシ樹脂との反応も生じる。この共連続の二相構造における各相は互いに強固に結合しているため、耐溶剤性も向上している。
【0065】
この共連続の構造は、繊維強化複合材料に対する外部からの衝撃を吸収してクラック伝播を抑制する。その結果、アミン末端基を有する反応性芳香族オリゴマーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて作製される繊維強化複合材料は、高い耐衝撃性及び破壊靭性を有する。
この芳香族オリゴマーとしては、公知のアミン末端基を有するポリスルホン、アミン末端基を有するポリエーテルスルホンを用いることができる。アミン末端基は第一級アミン(-NH2)末端基であることが好ましい。
エポキシ樹脂組成物に配合される芳香族オリゴマーは、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が8000~40000であることが好ましい。重量平均分子量が8000以上である場合、マトリクス樹脂の靱性向上効果が高い。また、重量平均分子量が40000以下である場合、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎることなく、強化繊維基材へ樹脂組成物が含浸しやすくなる等の加工上の利点が得られる。
芳香族オリゴマーとしては、「Virantage DAMS VW-30500 RP(登録商標)」(Solvay Specialty Polymers社製)のような市販品を好ましく用いることができる。
エポキシ樹脂組成物に配合する前の熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましい。粒子状の熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に均一に配合、溶解することができる。
【0066】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、導電性粒子や難燃剤、無機系充填剤、内部離型剤が配合されてもよい。
導電性粒子としては、ポリアセチレン粒子、ポリアニリン粒子、ポリピロール粒子、ポリチオフェン粒子、ポリイソチアナフテン粒子及びポリエチレンジオキシチオフェン粒子等の導電性ポリマー粒子;カーボン粒子;炭素繊維粒子;金属粒子;無機材料又は有機材料から成るコア材を導電性物質で被覆した粒子が例示される。
難燃剤としては、リン系難燃剤が例示される。リン系難燃剤としては、分子中にリン原子を含むものであれば特に限定されず、例えば、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物、ポリリン酸塩などの有機リン化合物や赤リンが挙げられる。
無機系充填剤としては、例えば、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸塩鉱物が挙げられる。特に、ケイ酸塩鉱物を用いることが好ましい。ケイ酸塩鉱物の市販品としては、THIXOTROPIC AGENT DT 5039(ハンツマン・ジャパン株式会社 製)が挙げられる。
内部離型剤としては、例えば、金属石鹸類、ポリエチレンワックスやカルバナワックス等の植物ワックス、脂肪酸エステル系離型剤、シリコンオイル、動物ワックス、フッ素系非イオン界面活性剤を挙げることができる。これら内部離型剤の配合量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~2質量部であることがさらに好ましい。この範囲内においては、金型からの離型効果が好適に発揮される。
内部離型剤の市販品としては、“MOLD WIZ(登録商標)” INT1846(AXEL PLASTICS RESEARCH LABORATORIES INC.製)、Licowax S、Licowax P、Licowax OP、Licowax PE190、Licowax PED(クラリアントジャパン社製)、ステアリルステアレート(SL-900A;理研ビタミン(株)製が挙げられる。
【0067】
1-6. エポキシ樹脂組成物の製造方法
1-6-1. 主剤液の製造方法
本発明の2液型エポキシ樹脂組成物における主剤液は、エポキシ樹脂[A]と、エポキシ樹脂[B]とを混合することにより製造できる。必要に応じて、更に、樹脂粒子成分[D]及び/又はその他の任意成分、例えば、エポキシ樹脂[A]及び[B]以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、樹脂粒子成分[D]以外の熱可塑性樹脂等を混合してもよい。これらの混合の順序及び混合手段は問わない。
また、主剤液の状態としては、各成分が均一に混和した一液の状態でもよく、一部の成分が固体として分散したスラリーの状態でもよい。
主剤液の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。混合温度としては、40~200℃の範囲が例示できる。200℃を超える場合、部分的にエポキシ樹脂の自己重合反応が進行して強化繊維基材への含浸性が低下したり、得られる主剤液を用いて製造される硬化物の物性が低下したりする場合がある。40℃未満である場合、主剤液の粘度が高く、実質的に混合が困難となる場合がある。好ましくは50~100℃であり、さらに好ましくは50~90℃の範囲である。
混合機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を備えた混合容器、横型混合槽などが挙げられる。各成分の混合は、大気中又は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混合が行われる場合は、温度、湿度が管理された雰囲気が好ましい。特に限定されるものではないが、例えば、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混合することが好ましい。
【0068】
1-6-2. 硬化剤液の製造方法
硬化剤液の必須成分である硬化剤[C]の製造方法は、例えば、液状の形態の硬化剤の場合、(C-A)液状芳香族ポリアミンに、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを溶解させて、硬化剤[C]を得る工程を含み、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含まない場合、(C-C)脂肪族環状ポリアミンを溶解させる工程をさらに含む。液状の形態の硬化剤[C]の製造方法は、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンが、(C-B1)二級アミノ基の数が一級アミノ基と三級アミノ基との合計数より多い固形芳香族アミンを含む場合に、(C-A)液状芳香族ポリアミンに(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンを溶解させる工程に加え、(C-C)脂肪族環状ポリアミンを溶解させる工程をさらに含んでもよい。溶解手段には特に制限は無く、例えば、各原料を混合した後、オーブンや加熱式タンク等の加熱装置を使用して加熱溶解してもよい。オーブンを使用する際の条件として、例えば、80~120℃、90~110℃、又は95~105℃の温度で、例えば、20~90分、30~60分、又は40~50分の時間、加熱してもよい。加熱温度及び加熱時間は、使用する加熱装置や原料のスケールに応じて適宜調節できる。
硬化剤液の製造方法は、必要に応じて、硬化剤[C]と、樹脂粒子成分[D]及び/又はその他の任意成分、例えば、樹脂粒子成分[D]以外の熱可塑性樹脂や他の硬化剤等、とを混合する工程をさらに含んでもよい。混合の手段及び条件に特に制限はなく、他の硬化剤の種類に応じて適宜調節できる。
【0069】
1-6-3. 1液型エポキシ樹脂組成物の製造方法
本発明の1液型エポキシ樹脂組成物は、主剤液と、硬化剤液とを混合することにより製造できる。主剤液及び硬化剤液の少なくとも一方は、樹脂粒子成分[D]を含む。樹脂粒子成分[D]は、主剤液もしくは硬化剤液のどちらに含まれていても、1液型エポキシ樹脂組成物及びその硬化物の特性に影響はない。必要に応じてエポキシ樹脂[A]及び[B]以外のエポキシ樹脂、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂、樹脂粒子成分[D]以外の熱可塑性樹脂、硬化剤[C]以外の硬化剤、その他の成分と、をさらに混合してもよい。また、これらの混合の順序は問わない。
得られる1液型エポキシ樹脂組成物は、樹脂粒子成分[D]を含む一部の成分が固体として分散したスラリーの状態である。
主剤液と硬化剤液との混合方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。混合温度としては、40~120℃の範囲が例示できる。120℃以下の場合、部分的に硬化反応が進行して強化繊維基材への含浸性が低下するのを防ぐことができ、得られる1液型エポキシ樹脂組成物は保存安定性にも優れる。40℃以上である場合、1液型エポキシ樹脂組成物は適切な粘度を有し、各成分の混合が容易となる。好ましくは50~100℃であり、さらに好ましくは50~90℃の範囲である。
混合機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を備えた混合容器、横型混合槽などが挙げられる。各成分の混合は、大気中又は不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混合が行われる場合は、温度、湿度が管理された雰囲気が好ましい。
【0070】
2. 繊維強化複合材料
繊維強化基材と、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物とを複合化して硬化させることにより、繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明で用いる強化繊維基材としては、特に制限はなく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維及びスラッグ繊維などが挙げられる。
これらの強化繊維の中でも、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましい。比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られる点で、炭素繊維がより好ましい。引張強度に優れる点でポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
強化繊維にPAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は、100~600GPaであることが好ましく、200~500GPaであることがより好ましく、230~450GPaであることが特に好ましい。また、引張強度は、2000~10000MPaであることが好ましく、3000~8000MPaであることがより好ましい。炭素繊維の直径は、4~20μmが好ましく、5~10μmがより好ましい。このような炭素繊維を用いることにより、得られる繊維強化複合材料の機械的性質を向上できる。また、本発明において、強化繊維はサイジング剤で処理されているのが好ましく、この場合、サイジング剤が付着した強化繊維の質量に対して、サイジング剤が0.01~10質量%付着した強化繊維束であることが好ましく、0.05~3.0質量%の付着量であることがより好ましく、0.1~2.0質量%の付着量であることが特に好ましい。サイジング剤の付着量が多い方が、強化繊維とマトリクス樹脂の接着性が強くなる傾向がある。一方、付着量が少ない方が、得られる複合材料の層間靱性が優れる傾向にある。
【0071】
強化繊維はシート状に形成して用いることが好ましい。強化繊維シートとしては、例えば、多数本の強化繊維を一方向に引き揃えたシートや、平織や綾織などの二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組紐、強化繊維を抄紙した紙を挙げることができる。これらの中でも、強化繊維を連続繊維としてシート状に形成した一方向引揃えシートや二方向織物、多軸織物基材を用いると、より機械物性に優れた繊維強化複合材料が得られるため好ましい。二方向織物や多軸織物基材としては、複数の一方向引揃えシートを積層してステッチしたものであってもよい。この場合、繊維強化複合材料の衝撃後圧縮強度CAIを向上させるために、一方向引揃えシートの片面に熱可塑性樹脂の不織布層を配置した後に積層して織物としてもよい。熱可塑性樹脂の不織布層としては、例えば、ポリアミド樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、ポリエーテルスルホン樹脂繊維、ポリスルホン樹脂繊維、ポリエーテルイミド樹脂繊維、ポリカーボネート樹脂繊維、およびこれらの樹脂混合物からなるものが挙げられる。一方向引揃えシートの目付や積層数は、繊維強化複合材料の用途に応じて適宜設定できる。例えば、一方向引揃えシートの目付としては、100~300g/m2であってもよく、150~250g/m2であるのが好ましい。シート状の強化繊維基材の1層あたりの厚さは、0.01~3mmが好ましく、0.1~1.5mmがより好ましい。
繊維強化基材と1液型エポキシ樹脂組成物とを複合化する方法としては、特に制限はなく、繊維強化基材と1液型エポキシ樹脂組成物を予め複合化してから成形してもよく、例えば、レジントランスファー成形法(RTM法)、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法などのように成形時に複合化してもよい。
繊維強化基材と、本発明の1液型エポキシ樹脂組成物とを複合化した後、特定の条件で加熱して硬化させることにより、繊維強化複合材料を得ることができる。本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて繊維強化複合材料を製造する方法としては、RTM法やオートクレーブ成形法、プレス成形法等の公知の成形法が挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物は、特にRTM法に適している。
【0072】
複雑形状の繊維強化複合材料を効率よく得られるという観点から、RTM法は好ましい成形方法である。ここで、RTM法とは型内に配置した繊維強化基材へ液状のエポキシ樹脂組成物を含浸、硬化して繊維強化複合材料を得る方法を意味する。
本発明において、RTM法に用いる型は、剛性材料からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛性材料のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いることも可能である。後者の場合、繊維強化基材は、剛性材料のオープンモールドと可撓性フィルムの間に設置することができる。剛性材料としては、スチールやアルミニウムなどの金属、繊維強化プラスチック(FRP)、木材、石膏など既存の各種のものが用いられる。可撓性のフィルムの材料には、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂などが用いられる。
RTM法において、剛性材料のクローズドモールドを用いる場合は、加圧して型締めし、1液型エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引することも可能である。吸引を行い、特別な加圧手段を用いることなく大気圧のみでエポキシ樹脂組成物を注入することも可能である。この方法は、複数の吸引口を設けることにより大型の部材を製造することができるため、好適に用いることができる。
RTM法において、剛性材料のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合は、吸引を行い、特別な加圧手段を用いることなく大気圧のみで1液型エポキシ樹脂組成物を注入してもよい。大気圧のみでの注入で良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。さらに、繊維強化基材の設置に先立って、剛性材料の表面にゲルコートを塗布することが好ましく行われる。
RTM法において、繊維強化基材に1液型エポキシ樹脂組成物を含浸した後、加熱硬化が行われる。加熱硬化時の型温は、通常、1液型エポキシ樹脂組成物の注入時における型温より高い温度が選ばれる。加熱硬化時の型温は80~200℃であることが好ましい。加熱硬化の時間は1分~20時間が好ましい。加熱硬化が完了した後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。その後、得られた繊維強化複合材料をより高い温度で加熱して後硬化を行ってもよい。後硬化の温度は150~200℃が好ましく、時間は1分~4時間が好ましい。
【0073】
エポキシ樹脂組成物をRTM法で繊維強化基材に含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、適宜決定する。
具体的な含浸圧力は、0.001~10(MPa)であり、0.01~1(MPa)であることが好ましい。RTM法を用いて繊維強化複合材料を得る場合、1液型エポキシ樹脂組成物の粘度は、100℃における粘度が、1~200mPa・sであることが特に好ましい。
【実施例0074】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本実施例、比較例において使用する成分や試験方法を以下に記載する。
〔成分〕
(エポキシ樹脂)(構成モノマーにより特定)
エポキシ樹脂[A]
・テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(ハンツマン社製 Araldite MY721(製品名)、以下「4,4’-TGDDM」と略記する)エポキシ当量:112g/eq、粘度(50℃):4.1Pa・s
・テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(合成例1の方法で合成、以下「3,4’-TGDDE」と略記する)エポキシ当量:112g/eq、粘度(50℃):7.0Pa・s
エポキシ樹脂[B]
・N,N-ジグリシジル-o-トルイジン(日本化薬社製 GOT(製品名)、以下「GOT」と略記する)エポキシ当量:135g/eq
・N,N-ジグリシジルアニリン(日本化薬社製 GAN(製品名)、以下「GAN」と略記する)エポキシ当量:125g/eq
・1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン(DIC社製 HP-4032SS(製品名)、以下「1,6-DON」と略記する)エポキシ当量:142g/eq
・トリグリシジル-p-アミノフェノール(ハンツマン社製 Araldite MY0510(製品名)、以下「TG-pAP」と略記する)エポキシ当量:96g/eq
・トリグリシジル-m-アミノフェノール(ハンツマン社製 Araldite MY0600(製品名)、以下「TG-mAP」と略記する)エポキシ等量:98g/eq
・1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学社製 TEPIC-S(製品名)、以下「TEPIC」と略記する)エポキシ当量:100g/eq
【0075】
(硬化剤)
硬化剤[C]
・HR-436:ジエチルトルエンジアミン(アルベマール社製 エタキュア100プラス(製品名))34.6質量%、ジメチルチオトルエンジアミン41.6質量%、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)(クミアイ化学工業株式会社製 キュアハードMED-J(製品名))19.8質量%の混合液に1-(o-トリル)ビグアニド(大内新興化学工業社製 ノクセラーBG(製品名))を4.0%溶解させた硬化剤
・HR-499:ジエチルトルエンジアミン(アルベマール社製 エタキュア100プラス(製品名))60.0質量%に4,4’-メチレンビス(2-エチルー6-メチルアニリン)(クミアイ化学工業株式会社製 キュアハードMED-J(製品名))33.5質量%、4-アミノジフェニルアミン(精工化学社製)5.3質量%、無水ピペラジン(東ソー株式会社製)1.1質量%となる様に溶解させた硬化剤
・HR-571:ジエチルトルエンジアミン(アルベマール社製 エタキュア100プラス(製品名))85.7質量%に2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(精工化学社製 ノンフレックスRD(製品名))14.3質量%となる様に溶解させた硬化剤
・HR-659:ジエチルトルエンジアミン83.1質量%に2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(精工化学社製 ノンフレックスRD(製品名))14.0質量%、N-フェニル-1-ナフチルアミン(大内新興化学工業社製 ノクラックPA(製品名))2.9質量%となる様に溶解させた硬化剤
【0076】
(その他の硬化剤)
・4,4’-ジアミノ-3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン(ロンザ社製 Lonzacure M-MIPA(製品名)、以下「M-MIPA」と略記する)活性水素当量:78g/eq
・2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(精工化学社製 ノンフレックスRD(製品名))
・無水ピペラジン(東ソー株式会社製)
・ジエチルトルエンジアミン(アルベマール社製 エタキュア100プラス(製品名))
(樹脂粒子成分)
・MX-416(株式会社カネカ製 MX-416(製品名)、グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂へ粒子状ブタジエンゴム成分を25質量%の濃度となる様に分散させたマスターバッチ)(製品中のグリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂は本発明のエポキシ樹脂[A]に相当)樹脂粒子の平均粒子径:0.11μm
・MX-150(株式会社カネカ製 MX-150(製品名)、ビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂へ粒子状ブタジエンゴム成分を40質量%の濃度となる様に分散させたマスターバッチ)(製品中のビスフェノールA型2官能エポキシ樹脂は本発明のエポキシ樹脂[B]に相当)樹脂粒子の平均粒子径:0.11μm
【0077】
(炭素繊維ストランド)
・炭素繊維1:“テナックス(登録商標)”IMS65 E23 830tex(ポリアクリロニトリル系炭素繊維ストランド、引張強度 5.8GPa、引張弾性率 290GPa、サイジング剤付着量 1.2質量%、単糸径 5.0μm、帝人(株)製)
(熱可塑性樹脂不織布)
・不織布1:ポリアミド12樹脂を使用し、スパンボンド法で作製した繊維目付が5g/m2の不織布
(炭素繊維多層織物)
・炭素繊維多軸織物1:一方向に引き揃えた炭素繊維1を1層あたり190g/m2のシート状にして、不織布1を片面に配置し、(+45/V/90/V/-45/V/0/V)の角度で4枚積層しステッチしたもの(織物基材の炭素繊維総目付760g/m2、真空圧縮時の単層あたり厚さ 0.19mm)。
・炭素繊維多軸織物2:一方向に引き揃えた炭素繊維1を1層あたり190g/m2のシート状にして、不織布1を片面に配置し、(-45/V/90/V/+45/V/0/V)の角度で4枚積層しステッチしたもの(織物基材の炭素繊維総目付760g/m2、真空圧縮時の単層あたり厚さ 0.19mm)。
ここでは、Vは不織布1を示す。
【0078】
(エポキシ樹脂[A]の合成例)
〔合成例1〕 3,4’-TGDDEの合成
温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、エピクロロヒドリン1110.2g(12.0mol)を仕込み、窒素パージを行いながら温度を70℃まで上げて、これにエタノール1000gに溶解させた3,4’-ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0mol)を4時間かけて滴下した。さらに6時間撹拌し、付加反応を完結させ、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル)-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルを得た。続いて、フラスコ内温度を25℃に下げてから、これに48%NaOH水溶液500.0g(6.0mol)を2時間で滴下してさらに1時間撹拌した。環化反応が終わってからエタノールを留去して、400gのトルエンで抽出を行い5%食塩水で2回洗浄を行った。有機層からトルエンとエピクロロヒドリンを減圧下で除くと、褐色の粘性液体が361.7g(収率85.2%)得られた。主生成物である3,4’-TGDDEの純度は、84%(HPLC面積%)であった。
【0079】
[評価方法]
(1) 樹脂組成物の特性
(1-1) エポキシ樹脂組成物の調製
表1に記載する割合でエポキシ樹脂[A]、エポキシ樹脂[B]、及び樹脂粒子成分「D」を計量し、撹拌機を用いて80℃で60分間混合し、液状のエポキシ樹脂混合物中に樹脂粒子成分「D」が分散している主剤液を調製した。硬化剤[C]の各成分を所定の重量比で計量し、110℃で60分間混合し、液状の硬化剤液(硬化剤[C])を調製した。表1に記載する割合で主剤液と硬化剤液とを撹拌機を用いて80℃で30分間混合し、硬化剤をエポキシ樹脂へ溶解させて、1液型エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表1に記載の組成においては、エポキシ樹脂のグリシジル基と硬化剤のアミノ基の有する活性水素基の数が当量となるように主剤液と硬化剤液の混合比率を選択した。
(1-2) 初期粘度および可使時間
粘度測定は、東機産業株式会社製B型粘度計TVB-15Mを用い、100℃の条件にて行った。測定開始直後の最小測定値を初期粘度とし、粘度が50mPa・sに到達した時間を可使時間とした。
(1-3) 速硬化特性
硬化特性は、NETZSCH社製誘電分析装置DEA288 Ionicを用い、未硬化樹脂の180℃40分加熱後の樹脂のDEA硬化度αを下記式で評価した。この硬化度が70%以上の場合に速硬化特性を有する樹脂組成物とした。
α(t=40)=(logε”0-logε”t=40)/(logε”0-logε”)×100
(ただし、ε”0は測定開始時の誘電損失の最大値であり、ε”t=40は測定時間が40分の時の誘電損失値であり、ε”は測定時間が180分の時の誘電損失値である。)
【0080】
[測定条件]
測定温度 :180±2℃等温
測定周波数 :1Hz
測定センサー :NETZSCH社製IDEX 115/35
(2) 樹脂硬化物の特性
(2-1) 樹脂硬化物の作成
(1-1)で調製した1液型エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、4mm厚のシリコン樹脂製スペーサーにより厚み4mmになるように設定したステンレス製モールド中に注入した。180℃の温度で2時間硬化させ、厚さ4mmの樹脂硬化物を得た。
(2-2) 飽和吸水時ガラス転移温度(wet-Tg)
SACMA 18R-94法に準じて、飽和吸水時ガラス転移温度を測定した。
樹脂試験片の寸法は50mm×6mm×2mmで準備した。プレッシャークッカー(エスペック社製、HASTEST PC-422R8)を用い、121℃、24時間の条件にて準備した樹脂硬化物試験片の吸水処理を行った。UBM社製動的粘弾性測定装置Rheogel-E400を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.0167%の条件で、チャック間の距離を30mmとし、50℃からゴム弾性領域まで貯蔵弾性率E’を測定した。logE’を温度に対してプロットし、logE’の平坦領域の近似直線と、E’が転移する領域の近似直線との交点から求められる温度を飽和吸水時ガラス転移温度(wet-Tg)として記録した。
【0081】
(2-3) 室温乾燥曲げ弾性率(RTD-FM)
JIS K7171法に準じて、試験を実施した。その際の、樹脂硬化物試験片の寸法は80mm×10mm×h4mmで準備した。支点間距離Lは、16×h(厚み)、試験速度2m/minで曲げ試験を行い、室温乾燥曲げ弾性率(RTD-FM)を測定した。
(2-4)樹脂硬化物靱性(変形モードI臨界応力拡大係数KIc)
(2-1)で得た樹脂硬化物を幅8mm(厚みの2倍)×長さ35.2mm(幅の4.4倍)のサイズにカットし、試験片を得た。試験片への初期亀裂導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀を試験片にあて、ハンマーで剃刀に衝撃を加えることで予亀裂を加えた。予亀裂の長さは幅の0.45~0.55倍とした。ASTM D5045に従い、万能試験機(島津製作所製オートグラフ)を用いて靱性(KIc)を測定した。
(3)樹脂粒子成分[D]の平均粒子径
樹脂硬化物の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により2万5000倍で観察し、50個の粒子の直径を実測して樹脂粒子の粒子径として、それを平均することにより平均粒子径を求めた。前記観察において、粒子が真円状でない場合、即ち粒子が楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子の粒子径とした。
【0082】
(4) CFRPの特性
(4-1) CFRPの作成
炭素繊維多軸織物1および炭素繊維多軸織物2を300×300mmにカットし、500×500mmの離型処理したアルミ板の上に、炭素繊維多軸織物1を3枚、炭素繊維多軸織物2を3枚、合計6枚重ねて積層体とした。
更に積層体の上に、離型性機能を付与した基材であるピールクロスのRelease Ply C(AIRTECH社製)と樹脂拡散基材のResin Flow 90HT(AIRTECH社製)を積層した。 その後、樹脂注入口と樹脂排出口形成のためのホースを配置し、全体をナイロンバッグフィルムで覆い、シーラントテープで密閉し、内部を真空にした。続いてアルミ板を120℃に加温し、バック内を5torr以下に減圧した後、(1-1)で調整した1液型エポキシ樹脂組成物を100℃に加熱し、樹脂注入口を通して真空系内へ注入した。
注入した1液型エポキシ樹脂組成物がバック内に充満し、積層体に含浸した状態で180℃に昇温し、180℃で40分保持して、炭素繊維複合材料を得た。
(4-2) 衝撃後圧縮強度(CAI)
(4-1)で得られたCFRPを、幅101.6mm × 長さ152.4mmの寸法に切断し、衝撃後圧縮強度(CAI)試験の試験片を得た。試験はASTM D7136に従い実施した。供試体(サンプル)は各試験片の寸法測定後、衝撃試験は落錘型衝撃試験機(インストロン社製 Dynatup)を用いて、30.5Jの衝撃エネルギーを与えた。衝撃後、供試体の損傷面積は、超音波探傷試験機(クラウトクレーマー社製 SDS3600、HIS3/HF)にて測定した。衝撃後、供試体の強度試験は、供試体の上から25.4mmでサイドから25.4mmの位置に、歪みゲージを左右各1本ずつ貼付し、同様に表裏に合計4本/体の歪みゲージを貼付けた後、試験機(島津製作所製オートグラフ)のクロスヘッド速度を1.27mm/minとし、供試体の破断まで荷重を負荷した。
【0083】
(評価結果)
〔実施例1~19、比較例1~6〕
1液型エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物及びCFRPの特性を表1に示した。実施例1~19の1液型エポキシ樹脂組成物は、100℃において70mPa・s以下の低い初期粘度と、30分以上の長い可使時間を示した。また、180℃40分加熱後のDEA硬化度αが70%以上(表1における「〇」)であり、速硬化特性を示した。実施例1~19の樹脂硬化物は、KIcが0.8MPa・m^1/2以上の高い靭性を示し、130℃以上の高いwet-Tgと、2.8GPa以上の高いRTD-FMを示した。実施例1~19で得られたCFRPは、250MPa以上の高いCAIを示した。
樹脂粒子成分[D]を用いなかった比較例1は得られた樹脂硬化物のKIcが0.62MPa・m^1/2と低くなった。そのため、比較例1で得られたCFRPのCAIは、235MPaと低いものであった。
比較例2はエポキシ樹脂[B]を用いなかったため、樹脂組成物の初期粘度が350mPa・sと高くなった。
比較例3は(C-A)液状芳香族ポリアミンを用いなかったため、樹脂組成物の初期粘度が300mPa・s以上となり高くなった。
比較例4は(C-A)液状芳香族ポリアミンを用いず、(C-C)脂肪族環状ポリアミンのみを用いたため、樹脂組成物の初期粘度が300mPa・s以上となり高くなり、かつ可使時間が5分以下と短くなった。
比較例5は(C-A)液状芳香族ポリアミンのみを用い、(C-B)二級アミノ基を含む固形芳香族アミンおよび(C-C)脂肪族環状ポリアミンを用いなかったため、速硬化特性を示さなかった。
比較例6は硬化剤[C]を用いずM-MIPAを用いたが、速硬化特性を示さなかった。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】