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特開2023-54069薄い耐久性の反射防止構造を有する無機酸化物物品
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  • 特開-薄い耐久性の反射防止構造を有する無機酸化物物品 図1
  • 特開-薄い耐久性の反射防止構造を有する無機酸化物物品 図2A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054069
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】薄い耐久性の反射防止構造を有する無機酸化物物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/113 20150101AFI20230406BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20230406BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02B1/113
G02B1/14
C03C17/34 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019084
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2021507941の分割
【原出願日】2019-08-14
(31)【優先権主張番号】62/765,081
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】シャンドン ディー ハート
(72)【発明者】
【氏名】カール ウィリアム コッホ ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】リン リン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ジョセフ プライス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ミシェル マヨレット
(72)【発明者】
【氏名】カルロ アンソニー コシク ウィリアムズ
(57)【要約】
【課題】 物品について、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、この硬度および最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、さらに、1%未満の片面明所視平均反射率を示すこと。
【解決手段】 互いに反対の主面を有する無機酸化物基板;およびその基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有する光学フイルム構造を備えた物品。
【選択図】 図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該無機酸化物基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各低屈折率層は、ケイ素含有酸化物を含み、各高屈折率層は、ケイ素含有窒化物またはケイ素含有オキシ窒化物を含み、
前記物品は、100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度、または100nmから300nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定される、物品。
【請求項2】
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該無機酸化物基板の第1の主面上に第1の低率層がある複数の交互の高率層と低率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、
前記低率層の屈折率は、前記無機酸化物基板の屈折率の範囲内であって1.8未満であり、前記高率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記高率層の各々の全体積は、前記光学フイルム構造の体積の30%以上50%未満である、物品。
【請求項3】
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、200nmから450nm未満の物理的厚さを有し、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記光学フイルム構造は、キャッピング層および前記基板の第1の主面に第1の低率層を含み6層以下の複数の交互の高率層と低率層とを有し、さらに前記キャッピング層および各低率層はケイ素含有オキシ窒化物であり、各高率層はケイ素含有窒化物またはケイ素含有酸化物であり、
前記キャッピング層の物理的厚さが80nm以上であり、
前記高率層の組み合わされた物理的厚さが前記光学フイルム構造の物理的厚さの30%から45%である、物品。
【請求項4】
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面に直接接触した光学フイルム構造であって、200nmから450nm未満の物理的厚さを有し、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記光学フイルム構造は、キャッピング層および前記基板の第1の主面に第1の低率層を含み4層以下の複数の交互の高率層と低率層とを有し、さらに前記キャッピング層および各低率層はケイ素含有オキシ窒化物であり、各高率層はケイ素含有窒化物またはケイ素含有酸化物であり、
前記キャッピング層の物理的厚さが75nmから125nmであり、
前記高率層の組み合わされた物理的厚さが前記光学フイルム構造の物理的厚さの35%以上である、物品。
【請求項5】
前記第1の低屈折率層が、前記基板の第1の主面に直接接触している、請求項1から4いずれか1項記載の物品。
【請求項6】
前記無機酸化物基板が、ガラスセラミック、またはソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスを含む、請求項1から5いずれか1項記載の物品。
【請求項7】
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、請求項1から6いずれか1項記載の物品。
【請求項8】
前記物品は、2%未満の片面明所視平均反射率を示す、請求項1から7いずれか1項記載の物品。
【請求項9】
前記物品が、反射で-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、請求項1から8いずれか1項記載の物品。
【請求項10】
前面、背面、および側面を有する筐体、
前記筐体の少なくとも部分的に内部にあり、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板、
を備えた家庭用電子機器であって、
前記筐体の一部の少なくとも一方または前記カバー基板が、請求項1から9いずれか1項記載の物品を含む、家庭用電子機器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2018年8月17日に出願された米国仮特許出願第62/765081号の米国法典第35編第119(e)条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【0002】
また、本願は、2019年8月14日に出願された特願2021-507941号の分割出願である。
【技術分野】
【0003】
本開示は、薄い耐久性の反射防止構造を有する無機酸化物物品およびその製造方法に関し、より詳しくは、薄い多層反射防止コーティングを有する物品に関する。
【背景技術】
【0004】
電気製品内の装置を保護するために、入力のためのユーザ・インターフェースおよび/またはディスプレイを提供するために、および/または多くの他の機能を提供するために、カバー物品がしばしば使用される。そのような製品としては、携帯型機器、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、mp3プレーヤー、およびタブレット型コンピュータが挙げられる。カバー物品は、建築物品、輸送物品(例えば、自動車用途、列車、航空機、船舶などに使用される内部と外部のディスプレイおよび非ディスプレイ物品)、電気器具物品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐摩耗性、またはその組合せから恩恵を受けるであろう任意の物品も含む。これらの用途は、しばしば、耐引掻性、並びに最大の光透過率および最小の反射率に関する強力な光学性能特徴を要求する。さらに、いくつかのカバー用途について、反射および/または透過における、示されるまたは知覚される色が、視角が変えられたときに感知できるほどは変わらないことが有益である。ディスプレイ用途において、これは、反射色または透過色が視角により、認識できる程度に変化する場合、その製品の使用者は、ディスプレイの色または輝度の変化を知覚し、これにより、ディスプレイの知覚品質が低下し得るからである。他の用途において、色の変化は、その装置の美的外観または他の機能面にマイナスの影響を及ぼすことがある。
【0005】
これらのディスプレイおよび非ディスプレイ物品は、多くの場合、実装に制約がある用途(例えば、携帯型機器)に使用される。特に、これらの用途の多くは、数パーセントの減少でさえも、全体の厚さの減少から著しく恩恵を受けることができる。それに加え、そのようなディスプレイおよび非ディスプレイ物品を用いる用途の多くは、例えば、原材料費の最小化、工程の複雑さの最小化、および収率の改善により、低い製造費の恩恵を受ける。既存のディスプレイおよび非ディスプレイ物品に匹敵する光学的および機械的性質の性能属性を有するより小さいパッケージングも、減少した製造費(例えば、より少ない原材料費、反射防止構造における層の数の減少などにより)の要望をかなえることができる。
【0006】
カバー物品の光学性能は、様々な反射防止コーティングを使用することにより改善することができる;しかしながら、公知の反射防止コーティングは、損耗や摩耗を受けやすい。そのような摩耗により、反射防止コーティングにより達成されるどのような光学性能の改善も損なわれ得る。例えば、光学フィルタは、多くの場合、異なる屈折率を有する多層コーティングから製造され、光学的に透明な誘電材料(例えば、酸化物、窒化物、およびフッ化物)から製造される。そのような光学フィルタに使用される典型的な酸化物のほとんどは、バンドギャップの大きい材料であり、これは、携帯型機器、建築物品、輸送物品または電化製品に使用するために要求される機械的性質、例えば、硬度を持たない。ほとんどの窒化物およびダイヤモンド状コーティングは、高い硬度値を示さないであろうし、この高い硬度値は、改善された耐摩耗性と関連付けられるが、そのような材料は、そのような用途にとって望ましい透過率を示さない。
【0007】
摩耗損傷は、対向物体(例えば、指)の往復滑り接触を含み得る。それに加え、摩耗損傷は熱を生じ得、その熱は、膜材料中の化学結合を分解し、剥離およびカバーガラスに対する別のタイプの損傷を生じ得る。摩耗損傷は、大抵、引っ掻き傷を生じる単事象よりも長期間に亘り経験されるので、摩耗損傷を経験する配置された被覆材料は、酸化もすることがあり、これによって、コーティングの耐久性がさらに低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、耐摩耗性であり、許容されるまたは改善された光学的性能およびより薄い光学構造を有する、新たなカバー物品、およびその製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、互いに反対の主面を有する無機酸化物基板;およびその無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有する光学フイルム構造を備えた物品が提供される。その物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、この硬度および最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定される。さらに、この物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す。
【0010】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、互いに反対の主面を有する無機酸化物基板;およびその無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、その第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造を備えた物品が提供される。各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む。その低屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような無機酸化物基板の屈折率の範囲内にあり、高屈折率層は、1.8超の屈折率を有する。この高屈折率層は、無機酸化物基板上に約2マイクロメートル(ミクロンまたはμm)の物理的厚さを有する高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して18GPa以上の最大硬度を示す。さらに、その物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す。
【0011】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、互いに反対の主面を有する無機酸化物基板;およびその無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、その第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造を備えた物品が提供される。各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む。その低屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような無機酸化物基板の屈折率の範囲内にあり、高屈折率層は、1.8超の屈折率を有する。その光学フイルム構造はさらに、体積で30%以上の高屈折率層を含む。さらに、その物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す。
【0012】
本開示のいくつかの実施の形態によれば、互いに反対の主面を有する無機酸化物基板;およびその無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、その基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造を備えた物品が提供される。その低屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような無機酸化物基板の屈折率の範囲内にあり、高屈折率層は、1.8超の屈折率を有する。その物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、この硬度および最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定される。その光学フイルム構造はさらに、体積で35%以上の高屈折率層を含む。その物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す。この高屈折率層は、無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して18GPa以上の最大硬度を示す。さらに、その物品は、反射で約-10から+2のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、このa値およびb値の各々は、垂直入射照明角度で光学フイルム構造に測定される。
【0013】
追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載されたような実施の形態を実施することによって認識されるであろう。
【0014】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示に過ぎず、請求項の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。
【0015】
添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、説明と共に、例として、本開示の原理および作動を説明する働きをする。本明細書および図面に開示された本開示の様々な特徴は、任意と全ての組合せで使用できることを理解すべきである。非限定例により、本開示の様々な特徴は、以下の実施の形態にしたがって、互いに組み合わされることがある。
【0016】
本開示のこれらと他の特徴、態様および利点は、添付図面を参照して本開示の以下の詳細な説明を読んだときに、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】1つ以上の実施の形態による物品の側面図
図2A】1つ以上の実施の形態による物品の側面図
図2B】1つ以上の実施の形態による物品の側面図
図3】1つ以上の実施の形態による物品の側面図
図4A】ここに開示された物品のいずれかを組み込んだ例示の電子機器の正面図
図4B図4Aの例示の電子機器の斜視図
図5】ここに開示された物品のいずれかを組み込める乗物内装システムの乗物内装の斜視図
図6】ここに開示された物品に関する硬度対圧入深さのプロット
図7】ここに記載された物品のほぼ垂直入射で測定した、または計算した第一面の反射色座標のプロット
図8】Alumina SCE試験が施された本開示の物品から得られる、およびニオビアとシリカからなる比較の反射防止コーティングから得られる、正反射光除去(SEC)値のプロット
図9】本開示の反射防止コーティングおよび物品に使用するのに適した、ある実施の形態による、高屈折率層材料の硬度試験積層体に関する硬度対圧入深さのプロット
図10】5層と7層の反射防止コーティングを含む、本開示による物品の透過率(片面)対波長のプロット
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の詳細な説明において、限定ではなく説明目的のために、特定の詳細を開示する例示の実施の形態が、本開示の様々な原理の完全な理解を与えるために述べられている。しかしながら、本開示の恩恵を受けた当業者には、本開示は、ここに開示された特定の詳細から逸脱する他の実施の形態においても実施されることがあることが明白であろう。さらに、よく知られた装置、方法および材料の記載は、本開示の様々な原理の説明を分かりにくくしないように省かれることがある。最後に、適用できるところはどこでも、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0019】
範囲は、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までと、ここに表すことができる。ここに用いられているように、「約」という用語は、量、サイズ、配合物、パラメータ、および他の数量と特徴が、正確ではなく、正確である必要はないが、許容誤差、変換係数、丸め、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、必要に応じて、近似および/または大きいまたは小さいことがあることを意味する。値または範囲の端点を記載する上で、「約」という用語が使用されている場合、本開示は、称されている特定の値または端点を含むと理解すべきである。本明細書における数値または範囲の端点に「約」が付いていようとなかろうと、その数値または範囲の端点は、「約」で修飾されたもの、および「約」で修飾されていないものの2つの実施の形態を含むことが意図されている。それらの範囲の各々の端点は、他方の端点に関してと、他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0020】
ここに用いられている「実質的」、「実質的に」という用語、およびその変形は、記載された特徴が、ある値または記載と等しいまたはほぼ等しいことを指摘する意図がある。例えば、「実質的に平らな」表面は、平らまたはほぼ平らである表面を示す意図がある。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいまたはほぼ等しいことを示す意図がある。いくつかの実施の形態において、「実質的に」は、互いの約10%以内、例えば、互いの約5%以内、または互いの約2%以内の値を示すことがある。
【0021】
ここに用いられている方向を示す用語-例えば、上、下、右、左、前、後、上部、底部-は、描かれた図面に関してのみで使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0022】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とすると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、またはその工程が特定の順序に限定されるべきであることが特許請求の範囲または説明に他に具体的に述べられていない場合、どの点に関しても、順序が暗示されることは決して意図されていない。このことは、工程または操作の流れの配置に関する論理の問題;文法構成または句読点に由来する明らかな意味;明細書に記載された実施の形態の数またはタイプを含む、解釈のどの可能な不明確な基準にも適用される。
【0023】
ここに用いられているように、名詞は、そうではないと明白に示されていない限り、複数の対象を含む。それゆえ、例えば、「成分」への言及は、そうではないと明白に示されていない限り、そのような成分を2つ以上有する実施の形態を含む。
【0024】
本開示の実施の形態は、薄い耐久性の反射防止構造を有する無機酸化物物品およびその製造方法に関し、より詳しくは、耐摩耗性、低い反射率、および無色透過率および/または反射率を示す薄い多層反射防止コーティングを有する物品に関する。これらの物品の実施の形態は、500nm未満の全物理的厚さを有しつつ、これらの物品に意図される用途(例えば、表示装置、内装および外装自動車構成部材などのカバー、筐体および基板としての)に関連する硬度、耐摩耗性および光学的性質を維持する反射防止光学構造を有する。
【0025】
図1を参照すると、1つ以上の実施の形態による物品100は、基板110およびその基板上に配置された反射防止コーティング120(ここでは「光学フイルム構造」とも称される)を備えることがある。基板110は、互いに反対の主面112、114および互いに反対の副面116、118を備える。反射防止コーティング120は、図1に、第1の主面112上に配置されていると示されている;しかしながら、反射防止コーティング120は、第1の主面112上に配置されることに加え、またはその代わりに、第2の主面114および/または互いに反対の副面の一方または両方に配置されてもよい。反射防止コーティング120は、反射防止表面122を形成する。
【0026】
反射防止コーティング120は、少なくとも1種類の材料の少なくとも1つの層を含む。「層」という用語は、単層を含んでも、1つ以上の副層を含んでもよい。そのような副層は、互いに直接接触していてよい。その副層は、同じ材料または2種類以上の異なる材料から形成されてもよい。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのような副層は、それらの間に配置された異なる材料の介在層を有することがある。1つ以上の実施の形態において、層は、1つ以上の接触した連続層および/または1つ以上の不連続の断続層(すなわち、互いに隣接して形成された異なる材料を有する層)を含むことがある。層または副層は、個別堆積過程または連続堆積過程により形成されてもよい。1つ以上の実施の形態において、その層は、連続堆積過程のみ、または、あるいは、個別堆積過程のみを使用して形成されてもよい。
【0027】
ここに用いられているように、「配置する」という用語は、表面上に材料を被覆する過程、堆積する過程、および/または形成する過程を含む。配置された材料は、ここに定義されるような、層を構成することができる。「上に配置された」という句は、材料が表面と直接接触しているように表面上に材料を形成する例を含み、材料が表面上に、その材料と表面との間に1種類以上の介在材料が配置されて形成される例も含む。その介在材料は、ここに定義されるような、層を構成することができる。
【0028】
1つ以上の実施の形態によれば、物品100の反射防止コーティング120(例えば、図1に関して示され記載されたような)は、Alumina SCE試験にしたがって耐摩耗性により特徴付けることができる。ここに用いられているように、「Alumina SCE試験」は、Taber Industries 5750リニア研磨機によって駆動される約1インチ(約2.54cm)のストローク長さを使用して、50回の研磨サイクルについて0.7kgの総質量で市販の800グリットのアルミナ研磨紙(10mm×10mm)に試料を施すことによって行われる。次に、Alumina SCE試験にしたがって、本開示の分野における当業者により理解される原理にしたがって、研磨試料からの反射した正反射光除去(SEC)値を測定することによって、耐摩耗性が特徴付けられる。より詳しくは、SECは、直径6mmの開口を有するKonica-Minolta CM700Dを使用して測定される、反射防止コーティング120の表面からの乱反射の尺度である。いくつかの実施によれば、物品100の反射防止コーティング120は、Alumina SCE試験から得られた、0.4%未満、0.2%未満、0.18%未満、0.16%未満、またさらには0.08%未満のSEC値を示すことができる。対照的に、市販の反射防止コーティング(6層のNb/SiO多層コーティングなど)は、0.6%超の研磨紙研磨後のSEC値を有する。研磨誘起損傷は表面粗さを増加させ、乱反射(すなわち、SEC値)の増加をもたらす。より低いSEC値は、それほどひどくない損傷を示し、改善された耐摩耗性を示す。
【0029】
反射防止コーティング120および物品100は、バーコビッチ圧子硬度試験により測定された硬度に関して記載されることがある。さらに、当業者には、反射防止コーティング120および物品100耐摩耗性は、これらの要素の硬度に関連付けられることが理解されよう。ここに用いられているように、「バーコビッチ圧子硬度試験」は、ダイヤモンド製バーコビッチ圧子で表面に窪みを付けることによって、表面上の材料の硬度を測定することを含む。このバーコビッチ圧子硬度試験は、ダイヤモンド製バーコビッチ圧子で物品100の反射防止表面122または反射防止コーティング120の表面(またはその反射防止コーティング内の層のいずれか1つ以上の表面)に窪みを付けて、約50nmから約1000nmの範囲(もしくは反射防止コーティングまたは層の全厚さ、いずれか小さい方)の圧入深さまで窪みを形成する工程、および一般に、Oliver,W.C.およびPharr,G.M.の「An improved technique for determining hardness and elastic modulus using load and displacement sensing indentation experiments」、J.Mater.Res.,Vol.7,No.6,1992,1564-1583;およびOliver,W.C.およびPharr,G.M.の「Measurement of Hardness and Elastic Modulus by Instrument Indentation: Advances in Understanding and Refinements to Methodology」、J.Mater.Res.,Vol.19,No.1,2004,3-20に述べられた方法を使用して、全圧入深さ範囲に沿った、この圧入深さの特定の区分(例えば、約100nmから約500nmの深さ範囲の)に沿った、様々な地点で、または特定の圧入深さで(例えば、100nmの深さで、500nmの深さでなど)、この圧入から硬度を測定する工程を含む。さらに、硬度が圧入深さ範囲(例えば、約100nmから約500nmの深さ範囲)に亘り測定される場合、その結果は、規定の範囲内の最大硬度として報告することができ、ここで、最大値は、その範囲内の各深さで行われた測定値から選択される。ここに用いられているように、「硬度」および「最大硬度」の両方は、硬度値の平均ではなく、測定されたままの硬度値を称する。同様に、硬度がある圧入深さで測定される場合、バーコビッチ圧子硬度試験から得られた硬度の値は、その特定の圧入深さについて与えられる。
【0030】
典型的に、下にある基板より硬いコーティングのナノインデンテーション測定方法(バーコビッチ圧子を使用することなど)において、測定された硬度は、浅い圧入深さでの塑性領域の発生のために、最初に増加するようであり、次いで、より深い圧入深さで最大値または平坦域に到達する。その後、硬度は、下にある基板の効果のために、さらにより深い圧入深さで減少し始める。コーティングと比べて増加した硬度を有する基板が使用される場合、同じ効果が見られる;しかしながら、硬度は、下にある基板の効果のためにより深い圧入深さで増加する。
【0031】
圧入深さ範囲および特定の圧入深さ範囲での硬度値は、下にある基板の効果のない、ここに記載された光学フイルム構造およびその層の特定の硬度応答を特定するように選択することができる。バーコビッチ圧子で光学フイルム構造(基板上に配置された場合)の硬度を測定するときに、材料の永久歪みの領域(塑性領域)は、材料の硬度に関連する。圧入中、弾性応力場が、永久歪みの領域をはるかに越えて延在する。圧入深さが増加するにつれて、見掛け硬度および弾性率は、下にある基板との応力場相互作用により影響を受ける。硬度に対する基板の影響は、より深い圧入深さ(すなわち、典型的に、光学フイルム構造または層の厚さの約10%より深い深さ)で生じる。さらに、硬度応答は、圧入過程中に全塑性を生じるために特定の最小荷重を使用することが、さらにやっかいな問題である。その特定の最小荷重の前に、硬度は、概して増加する傾向を示す。
【0032】
小さい圧入深さ(小さい荷重として特徴付けられることもある)(例えば、約50nmまで)では、材料の見掛け硬度は、圧入深さに対して劇的に増加するようである。この小さい圧入深さ領域は、硬度の真の指標を表さない;その代わりに、上述した塑性領域の発生を反映し、これは、圧子の有限曲率半径に関連する。中間の圧入深さでは、見掛け硬度は、最大レベルに近づく。より深い圧入深さでは、基板の影響は、圧入深さが増加するにつれて、より著しくなる。圧入深さが光学フイルム構造の厚さまたは層の厚さの約30%を一旦超えると、硬度は劇的に低下し始めるであろう。
【0033】
上述したように、当業者は、バーコビッチ圧子硬度試験から得られたコーティング120および物品100の硬度および最大硬度の値が、例えば、基板110により過度に影響を受けるよりも、これらの要素を表すことを確実にする上で様々な試験関連の検討事項を検討することができる。さらに、当業者は、本開示の実施の形態が、意外なことに、反射防止コーティング120の比較的小さい厚さ(すなわち、500nm未満)にもかかわらず、そのコーティング120に関連する高い硬度値を示すことも認識することができる。実際に、後の欄において下記に記載された実施例により証拠付けられるように、反射防止コーティング内の高屈折率(RI)層130B(例えば、図2Aおよび2Bを参照のこと)の硬度は、これらの層に関連する比較的低い厚さ値にもかかわらず、反射防止コーティング120および物品100の全体の硬度および最大硬度に著しく影響を与え得る。このことは、上述した試験関連の検討事項のために意外である。この検討事項は、測定された硬度が、コーティング、例えば、反射防止コーティング120の厚さによりどのように直接的に影響を受けるかを詳しく述べている。一般に、コーティング(より厚い基板の上の)の厚さが減少するにつれて、かつコーティング内のより硬い材料(例えば、硬度がより低いコーティング内の他の層と比べて)の体積が減少するにつれて、そのコーティングの測定硬度は、下にある基板の硬度に向かう傾向にあることが予測されるであろう。それにもかかわらず、反射防止コーティング120を含むような(そして、下記により詳しく概説された実施例により例示されるような)本開示の物品100は、意外なことに、下にある基板と比べて著しく高い硬度値を示し、それゆえ、コーティングの厚さ(500nm未満)、より高い硬度の材料の体積比および光学的性質の独特な組合せを示す。
【0034】
いくつかの実施の形態において、物品100の反射防止コーティング120は、約100nmの圧入深さでバーコビッチ圧子硬度試験により反射防止表面122について測定して、約8GPa超の硬度を示すことがある。反射防止コーティング120は、約100nmの圧入深さでバーコビッチ圧子硬度試験により測定して、約8GPa以上、約9GPa以上、約10GPa以上、約11GPa以上、約12GPa以上、約13GPa以上、約14GPa以上、または約15GPa以上の硬度を示すことがある。ここに記載されたような、反射防止コーティング120および任意の追加のコーティングを含む、物品100は、約100nmの圧入深さでバーコビッチ圧子硬度試験により反射防止表面122について測定して、約8GPa以上、約10GPa以上、または約12GPa以上の硬度を示すことがある。そのような測定硬度値は、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nmから約300nm、約100nmから約400nm、約100nmから約500nm、約100nmから約600nm、約200nmから約300nm、約200nmから約400nm、約200nmから約500nm、または約200nmから約600nm)の圧入深さに亘り反射防止コーティング120および/または物品100により示されることがある。同様に、バーコビッチ圧子硬度試験により測定して、約8GPa以上、約9GPa以上、約10GPa以上、約11GPa以上、約12GPa以上、約13GPa以上、約14GPa以上、または約15GPa以上の最大硬度値が、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nmから約300nm、約100nmから約400nm、約100nmから約500nm、約100nmから約600nm、約200nmから約300nm、約200nmから約400nm、約200nmから約500nm、または約200nmから約600nm)の圧入深さに亘りその反射防止コーティングおよび/またはその物品により示されることがある。
【0035】
反射防止コーティング120は、約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して、約18GPa以上、約19GPa以上、約20GPa以上、約21GPa以上、約22GPa以上、約23GPa以上、約24GPa以上、約25GPa以上、およびそれらの間の全ての硬度値の最大硬度(そのような層の表面、例えば、図2Aの第2の高RI層130Bの表面で測定して)を有する材料自体から製造された少なくとも1つの層を有することがある。これらの測定は、先に記載された厚さに関連する硬度測定効果を最小にするために、基板110上に配置された、約2マイクロメートルの物理的厚さでの反射防止コーティング120の指定された層を含む硬度試験積層体について行われる。そのような層の最大硬度は、約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して、約18GPaから約26GPaの範囲にあることがある。そのような最大硬度値は、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nmから約300nm、約100nmから約400nm、約100nmから約500nm、約100nmから約600nm、約200nmから約300nm、約200nmから約400nm、約200nmから約500nm、または約200nmから約600nm)の圧入深さに亘り少なくとも1つの層(例えば、図2Aに示されるような、高RI層130B)の材料により示されることがある。1つ以上の実施の形態において、物品100は、基板の硬度(反射防止表面と反対の表面で測定することができる)より大きい硬度を示す。同様に、硬度値は、約50nm以上または約100nm以上(例えば、約100nmから約300nm、約100nmから約400nm、約100nmから約500nm、約100nmから約600nm、約200nmから約300nm、約200nmから約400nm、約200nmから約500nm、または約200nmから約600nm)の圧入深さに亘り少なくとも1つの層(例えば、図2Aに示されるような、高RI層130B)の材料により示されることがある。それに加え、少なくとも1つの層(例えば、高RI層130B)に関連するこれらの硬度および/または最大硬度値は、測定された圧入深さ範囲に亘り特定の圧入深さ(例えば、100nm、200nmなど)で観察することもできる。
【0036】
反射防止コーティング120と空気との間の界面からの反射波と、反射防止コーティング120と基板との間の界面からの反射波との間の光学干渉が、物品100における見掛けの色を作るスペクトル反射率および/または透過率振動をもたらし得る。ここに用いられているように、「透過率」という用語は、材料(例えば、物品、基板、もしくはその光学フイルムまたは部分)を透過する所定の波長範囲内の入射光パワーの百分率と定義される。「反射率」という用語は、同様に、材料(例えば、物品、基板、もしくはその光学フイルムまたは部分)から反射する所定の波長範囲内の入射光パワーの百分率と定義される。1つ以上の実施の形態において、透過率および反射率の特徴付けのスペクトル分解能は、5nmまたは0.02eV未満である。その色は、反射においてより明白であろう。角度による色(angular color)は、入射照明角度によるスペクトル反射率振動におけるシフトにより、視角により反射でずれる。視角による透過率における角度による色ずれも、入射照明角度によるスペクトル透過率振動における同じシフトのためである。入射照明角度による観察された色および角度による色ずれは、多くの場合、特に鋭いスペクトル特性を有する照明下で、例えば、蛍光照明およびいくつかのLED照明下で、機器の使用者にとって気が散るか、または不愉快である。透過における角度による色ずれも、反射における角度による色ずれの要因となることがあり、その逆も同様である。透過および/または反射での角度による色ずれにおける要因は、特定の光源または試験システムにより定義される材料吸収(いくぶん角度とは関係ない)により生じるかもしれないある白色点から離れる色ずれまたは視角に起因する角度による色ずれも含むことがある。
【0037】
振動は、振幅に関して記載されることがある。ここに用いられているように、「振幅」という用語は、反射率または透過率における最大値から最小値までの変化を含む。「平均振幅」という句は、光学波長領域内で平均された反射率または透過率の最大値から最小値までの変化を含む。ここに用いられているように、「光学波長領域」は、約400nmから約800nm(およびさらに具体的に言うと、約450nmから約650nm)の波長範囲を含む。いくつかの実施の形態によれば、光学波長範囲は、800nmから1000nmの赤外スペクトルをさらに含む。
【0038】
本開示の実施の形態は、異なる光源下で垂直入射から様々な入射照明角度で見たときの無色および/またはより小さい角度による色ずれに関して、改善された光学性能を提供するための反射防止コーティング(例えば、反射防止コーティング120または光学フイルム構造120)を含む。
【0039】
本開示の1つの態様は、光源下で異なる入射照明角度で見たときでさえ、反射および/または透過における無色を示す物品に関する。1つ以上の実施の形態において、その物品は、ここに与えられた範囲における、基準照明角度と任意の入射照明角度との間で、約5以下、または約2以下の反射および/または透過における角度による色ずれを示す。ここに用いられているように、「色ずれ」(角または基準点)という句は、反射および/または透過において、国際照明委員会(CIE)のL、a、b測色系の下でのaおよびbの両方の変化を称する。特に明記のない限り、ここに記載された物品のL座標は、任意の角度または基準点で同じであり、色ずれに影響しないことを理解すべきである。例えば、角度による色ずれは、以下の式(1):
【0040】
【数1】
【0041】
を使用して決定することができ、式中、a 、およびb は、基準照明角度(垂直入射を含むことがある)で見たときの物品のaおよびbの座標を表し、a 、およびb は、入射照明角度が、基準照明角度と異なり、ある場合には、約1度以上、約2度以上、約5度以上、約10度以上、約15度以上、または約20度以上、基準照明角度とは異なることを前提として、入射照明角度で見たときの物品のaおよびbの座標を表す。ある場合には、約10以下(例えば、5以下、4以下、3以下、または2以下)の反射および/または透過における角度による色ずれが、光源下で基準照明角度から様々な入射照明角度で見たときに、その物品により示される。ある場合には、反射および/または透過における角度による色ずれは、約1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または0.1以下である。いくつかの実施の形態において、角度による色ずれは約0であることがある。光源としては、A光源(タングステン・フィラメント照明を表す)、B光源(昼光シミュレーション光源)、C光源(昼光シミュレーション光源)、D類光源(自然照明を表す)、およびF類光源(様々な種類の蛍光照明を表す)を含む、CIEにより決定されたような標準光源が挙げられる。具体例において、その物品は、CIE F2、F10、F11、F12またはD65光源下、またはより詳しくはCIE F2光源下で基準照明角度から入射照明角度で見たときに、約2以下の反射および/または透過における角度による色ずれを示す。
【0042】
基準照明角度は、入射照明角度と基準照明角度との間の差が、約1度以上、2度以上、約5度以上、約10度以上、約15度以上、または約20度以上であるという前提で、垂直入射(すなわち、0度)、もしくは垂直入射から5度、垂直入射から10度、垂直入射から15度、垂直入射から20度、垂直入射から25度、垂直入射から30度、垂直入射から35度、垂直入射から40度、垂直入射から50度、垂直入射から55度、または垂直入射から60度を含むことがある。入射照明角度は、基準照明角度に対して、垂直入射から離れて、約5度から約80度、約5度から約75度、約5度から約70度、約5度から約65度、約5度から約60度、約5度から約55度、約5度から約50度、約5度から約45度、約5度から約40度、約5度から約35度、約5度から約30度、約5度から約25度、約5度から約20度、約5度から約15度の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲にあることがある。その物品は、基準照明角度が垂直入射である場合、約2度から約80度、または約5度から約80度、または約10度から約80度、または約15度から約80度、または約20度から約80度の範囲にある全ての入射照明角度でと、それに沿ってここに記載された反射および/または透過における角度による色ずれを示すことがある。いくつかの実施の形態において、その物品は、入射照明角度と基準照明角度との間の差が、約1度以上、2度以上、約5度以上、約10度以上、約15度以上、または約20度以上である場合、約2度から約80度、または約5度から約80度、または約10度から約80度、または約15度から約80度、または約20度から約80度の範囲にある全ての入射照明角度でと、それに沿ってここに記載された反射および/または透過における角度による色ずれを示すことがある。一例において、その物品は、垂直入射と等しい基準照明角度から離れて、約2度から約60度、約5度から約60度、または約10度から約60度の範囲の任意の入射照明角度で、2以下の反射および/または透過における角度による色ずれを示すことがある。他の例において、その物品は、基準照明角度が10度であり、入射照明角度が、その基準照明角度から離れて、約12度から約60度、約15度から約60度、または約20度から約60度の範囲の任意の角度である場合、2以下の反射および/または透過における角度による色ずれを示すことがある。
【0043】
いくつかの実施の形態において、角度による色ずれは、約20度から約80度の範囲にある基準照明角度(例えば、垂直入射)と入射照明角度との間の全ての角度で測定されることがある。言い換えれば、角度による色ずれは、約0度から約20度、約0度から約30度、約0度から約40度、約0度から約50度、約0度から約60度、または約0度から約80度の範囲の全ての角度で測定されることがあり、約5未満、または約2未満であることがある。
【0044】
1つ以上の実施の形態において、物品100は、基準点からの透過色または反射座標の間の距離または基準点色ずれが、光源(A光源(タングステン・フィラメント照明を表す)、B光源(昼光シミュレーション光源)、C光源(昼光シミュレーション光源)、D類光源(自然照明を表す)、およびF類光源(様々な種類の蛍光照明を表す)を含み得る)下で、約5未満、または約2未満であるように、反射および/または透過におけるCIE L、a、b測色系における色を示す。具体例において、その物品は、CIE F2、F10、F11、F12またはD65光源下、またはより詳しくはCIE F2光源下で、基準照明角度から入射照明角度で見たときに、約2以下の反射および/または透過における色ずれを示す。言い換えると、その物品は、ここに定義されるような、基準点から約2未満の基準点色ずれを有する反射防止表面122で測定される透過色(または透過色座標)および/または反射色(または反射色座標)を示す。特に明記のない限り、透過色または透過色座標は、その物品の反射防止表面122および反対の裸の表面(すなわち、114)でを含む、物品の2つの表面で測定される。特に明記のない限り、反射色または反射色座標は、物品の反射防止表面122のみで測定される。
【0045】
1つ以上の実施の形態において、基準点は、CIE L、a、b測色系における起点(0、0)(または色座標a=0、b=0)、色座標(a=-2、b=-2)もしくは基板の透過率または反射色座標であることがある。特に明記のない限り、ここに記載された物品のL座標は、基準点と同じであり、色ずれに影響しないことを理解すべきである。物品の基準点色ずれが基板に関して定義されている場合、物品の透過色座標は基板の透過色座標と比べられ、物品の反射色座標は基板の反射色座標と比べられる。
【0046】
1つ以上の具体的な実施の形態において、透過色および/または反射色の基準点色ずれは、1未満またさらには0.5未満であることがある。1つ以上の具体的な実施の形態において、透過色および/または反射色の基準点色ずれは、1.8、1.6、1.4、1.2、0.8、0.6、0.4、0.2、0およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲にあることがある。基準点が色座標a=0、b=0である場合、基準点色ずれは、式(2):
【0047】
【数2】
【0048】
により計算される。基準点が色座標a=-2、b=-2である場合、基準点色ずれは、式(3):
【0049】
【数3】
【0050】
により計算される。基準点が基板の色座標である場合、基準点色ずれは、式(4):
【0051】
【数4】
【0052】
により計算される。
【0053】
いくつかの実施の形態において、物品100は、基準点が、基板の色座標、色座標a=0、b=0、および色座標a=-2、b=-2のいずれか1つであるときに、基準点色ずれが2未満であるように、透過色(または透過色座標)および反射色(または反射色座標)を示すことがある。
【0054】
いくつかの実施の形態において、物品100は、ほぼ垂直入射角(すなわち、約0度、または垂直の10度以内)で、CIE L、a、b測色系において、約-10から約+2、約-7から約0、約-6から約-1、約-6から約0、または約-4から約0の範囲にある反射におけるb値(反射防止表面122のみで測定される)を示すことがある。他の実施において、物品100は、約0から約60度(または約0度から約40度、または約0度から約30度)の範囲の全ての入射照明角度で、CIE L、a、b測色系において、約-10から約+10、約-8から約+8、または約-5から約+5の範囲にある反射におけるb値(反射防止表面122のみで測定される)を示すことがある。
【0055】
いくつかの実施の形態において、物品100は、ほぼ垂直入射角(すなわち、約0度、または垂直の10度以内)で、CIE L、a、b測色系において、約-2から約2、約-1から約2、約-0.5から約2、約0から約2、約0から約1、約-2から約0.5、約-2から約1、約-1から約1、または約0から約0.5の範囲にある透過におけるb値(物品の反射防止表面および反対の裸の表面で測定される)を示すことがある。他の実施において、その物品は、約0から約60度(または約0度から約40度、または約0度から約30度)の範囲の全ての入射照明角度について、CIE L、a、b測色系において、約-2から約2、約-1から約2、約-0.5から約2、約0から約2、約0から約1、約-2から約0.5、約-2から約1、約-1から約1、または約0から約0.5の範囲にある透過におけるb値を示すことがある。
【0056】
いくつかの実施の形態において、物品100は、ほぼ垂直入射角(すなわち、約0度、または垂直の10度以内)で、CIE L、a、b測色系において、約-2から約2、約-1から約2、約-0.5から約2、約0から約2、約0から約1、約-2から約0.5、約-2から約1、約-1から約1、または約0から約0.5の範囲にある透過におけるa値(物品の反射防止表面および反対の裸の表面で測定される)を示すことがある。他の実施において、その物品は、約0から約60度(または約0度から約40度、または約0度から約30度)の範囲の全ての入射照明角度について、CIE L、a、b測色系において、約-2から約2、約-1から約2、約-0.5から約2、約0から約2、約0から約1、約-2から約0.5、約-2から約1、約-1から約1、または約0から約0.5の範囲にある透過におけるa値を示すことがある。
【0057】
いくつかの実施の形態において、物品100は、光源D65、A、およびF2下で、約0度から約60度の範囲の入射照明角度で、約-1.5から約1.5(例えば、-1.5から-1.2、-1.5から-1、-1.2から1.2、-1から1、-1から0.5、または-1から0)の範囲にある透過におけるaおよび/またはb値(反射防止表面および反対の裸の表面での)を示す。
【0058】
いくつかの実施の形態において、物品100は、CIE L、a、b測色系において、ほぼ垂直入射角(すなわち、約0度、または垂直の10度以内)で、約-10から約+5、-5から約+5(例えば、-4.5から+4.5、-4.5から+1.5、-3から0、-2.5から-0.25)、または約-4から+4の範囲にある反射におけるa値(反射防止表面のみで)を示す。他の実施の形態において、物品100は、CIE L、a、b測色系において、約0度から約60度の範囲の入射照明角度で、約-5から約+15(例えば、-4.5から+14)または約-3から+13の範囲にある反射におけるa値(反射防止表面のみで)を示す。
【0059】
1つ以上の実施の形態の物品100、または1つ以上の物品の反射防止表面122は、約400nmから約800nmの範囲の光学波長領域に亘り約94%以上(例えば、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約96.5%以上、約97%以上、約97.5%以上、約98%以上、約98.5%以上、または約99%以上)の明所視平均光透過率を示すことがある。いくつかの実施の形態において、物品100、または1つ以上の物品の反射防止表面122は、約400nmから約800nmの範囲の光学波長領域に亘り約2%以下(例えば、約1.5%以下、約1%以下、約0.75%以下、約0.5%以下、または約0.25%以下)の平均光反射率を示すことがある。これらの光透過率および光反射率値は、全光学波長領域またはその光学波長領域の選択された範囲(例えば、光学波長領域内の100nm波長範囲、150nm波長範囲、200nm波長範囲、250nm波長範囲、280nm波長範囲、または300nm波長範囲)に亘り観察されることがある。いくつかの実施の形態において、これらの光反射率および透過率値は、全反射率または全透過率であることがある(反射防止表面122および反対の主面114の両方での反射率または透過率を考慮して)。特に明記のない限り、平均反射率または透過率は、0度の入射照明角度で測定される(しかしながら、そのような測定は、45度または60度の入射照明角度で行われてもよい)。
【0060】
1つ以上の実施の形態の物品100、または1つ以上の物品の反射防止表面122は、約800nmから約1000nm、約900nmから1000nm、または930nmから950nmの赤外スペクトルの光学波長領域に亘り約87%以上(例えば、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、または約95%以上)の平均光透過率を示すことがある。これらの実施の形態において、物品100、または1つ以上の物品の反射防止表面122は、約400nmから約800nmの範囲の光学波長領域に亘り約2%以下、約1%以下、または約0.5%以下(例えば、約1.5%以下、約1%以下、約0.75%以下、約0.5%以下、または約0.25%以下)の平均光反射率を示すことがある。これらの光透過率および光反射率値は、全光学波長領域またはその光学波長領域の選択された範囲(例えば、光学波長領域内の100nm波長範囲、150nm波長範囲、200nm波長範囲、250nm波長範囲、280nm波長範囲、または300nm波長範囲)に亘り観察されることがある。これらの実施の形態のいくつかにおいて、光反射率および透過率値は、全反射率または全透過率であることがある(反射防止表面122および反対の主面114の両方での反射率または透過率を考慮して)。特に明記のない限り、これらの実施の形態の平均反射率または透過率は、0度の入射照明角度で測定される(しかしながら、そのような測定は、45度または60度の入射照明角度で行われてもよい)。
【0061】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の実施の形態の物品100、または1つ以上の物品の反射防止表面122は、光学波長領域に亘り、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、または約0.2%以下の可視明所視平均反射率を示すことがある。これらの明所視平均反射率値は、約0°から約20°、約0°から約40°、または約0°から約60°の範囲にある入射照明角度で示されることがある。ここに用いられているように、「明所視平均反射率」は、ヒトの目の感度にしたがって反射率対波長スペクトルを重み付けることによって、ヒトの目の反応を模倣する。明所視平均反射率は、公知の慣例、例えば、CIE色空間の慣例にしたがって、反射光の輝度、または三刺激Y値として定義されることもある。この明所視平均反射率は、光源スペクトルのI(λ)、および目のスペクトル感度に関連するCIEの色合わせ関数の
【0062】
で乗じられたスペクトル反射率R(λ)として式(5)に定義される:
【0063】
【数5】
【0064】
いくつかの実施の形態において、1つ以上の物品の反射防止表面122(すなわち、片面測定のみによって反射防止表面122を測定した場合)は、約2%以下、約1.8%以下、約1.5%以下、約1.2%以下、約1%以下、約0.9%以下、約0.7%以下、約0.5%以下、約0.45%以下、約0.4%以下、約0.35%以下、約0.3%以下、約0.25%以下、または約0.2%以下の可視明所視平均反射率を示すことがある。本開示に記載されたような「片面」測定において、第2の主面(例えば、図1に示された面114)からの反射率は、この面を屈折率整合吸収体に結合させることによって、除去される。ある場合には、約5.0未満、約4.0未満、約3.0未満、約2.0未満、約1.5未満、または約1.25未満の、D65光源を使用した、約5度から約60度の全入射照明角度範囲(基準照明角度が垂直入射である)に亘る、最大反射色ずれを同時に示しつつ、可視明所視平均反射率範囲が示される。これらの最大反射色ずれ値は、同じ範囲において任意の角度で測定された最高の色点値(color point value)から差し引かれた、垂直入射から約5度から約60度の任意の角度で測定された最低の色点値を表す。それらの値は、a値における最大変化(a 最高-a 最低)、b値における最大変化(b 最高-b 最低)、bおよびa値の両方における最大変化、または数量√((a 最高-a 最低+(b 最高-b 最低)における最大変化を表すことがある。
【0065】
基板
基板110は、無機酸化物材料を含むことがあり、非晶質基板、結晶質基板またはその組合せを含むことがある。1つ以上の実施の形態において、その基板は、約1.45から約1.55の範囲にある屈折率、例えば、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、およびそれらの間の全ての屈折率を示す。
【0066】
適切な基板110は、約30GPaから約120GPaの範囲にある弾性率(またはヤング率)を示すことがある。ある場合には、その基板の弾性率は、約30GPaから約110GPa、約30GPaから約100GPa、約30GPaから約90GPa、約30GPaから約80GPa、約30GPaから約70GPa、約40GPaから約120GPa、約50GPaから約120GPa、約60GPaから約120GPa、約70GPaから約120GPa、および先の値の間の全ての範囲と部分的範囲にあることがある。本開示に挙げられたような基板自体のヤング率は、「Standard Guide for Resonant Ultrasound Spectroscopy for Defect Detection in Both Metallic and Non-metallic Parts」と題するASTM E2001-13に述べられた一般型の共鳴超音波分光技術によって測定された値を称する。
【0067】
1つ以上の実施の形態において、その非晶質基板はガラスを含むことがあり、そのガラスは、強化されていても、されていなくてもよい。適切なガラスの例としては、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスが挙げられる。いくつかの変種において、そのガラスはチリアを含まないことがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、基板110は、結晶質基板、例えば、ガラスセラミックまたはセラミック基板(強化されていても、されていなくてもよい)を含むことがある、または単結晶構造、例えば、サファイアを含むことがある。1つ以上の特別な実施の形態において、基板110は、非晶質ベース(例えば、ガラス)および結晶質クラッド(例えば、サファイア層、多結晶アルミナ層および/またはスピネル(MgAl)層)を含む。
【0068】
基板110は、実質的に平面またはシート状であることがあるが、他の実施の形態は、湾曲したまたは他のやり方で成形されたまたは彫刻された基板を利用してもよい。基板110は、実質的に光学的に透明で、透き通っており、光散乱がないことがある。そのような実施の形態において、その基板は、約85%以上、約86%以上、約87%以上、約88%以上、約89%以上、約90%以上、約91%以上、または約92%以上の光学波長領域に亘る平均光透過率を示すことがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、基板110は、不透明であることがある、または約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0%未満の光学波長領域に亘る平均光透過率を示すことがある。いくつかの実施の形態において、これらの光反射率および透過率値は、全反射率または全透過率(基板の両主面での反射率または透過率を考慮する)であることがある、または基板の片面で観察されることがある(すなわち、反対の面を考慮せずに、反射防止表面122のみについて)。特に明記のない限り、平均反射率または透過率は、0度の入射照明角度で測定される(しかしながら、そのような測定は、45度または60度の入射照明角度で行われてもよい)。基板110は、色、例えば、白、黒、赤、青、緑、黄、オレンジなどを必要に応じて示してよい。
【0069】
それに加え、またはそれに代えて、基板110の物理的厚さは、審美的および/または機能的理由のために、その寸法の1つ以上に沿って変動してもよい。例えば、基板110のエッジが、基板110のより中央の領域と比べて、より厚くてもよい。基板110の長さ、幅および物理的厚さも、物品の用途または使途にしたがって変動してもよい。
【0070】
基板110は、様々な異なる過程を使用して提供してもよい。例えば、基板110が、非晶質基板、例えば、ガラスを含む場合、様々な成形方法としては、フロートガラス法、圧延法、アップドロー法、並びにダウンドロー法、例えば、フュージョンドロー法およびスロットドロー法が挙げられる。
【0071】
基板110は、一旦形成されたら、強化基板を形成するために強化されてもよい。ここに用いられているように、「強化基板」という用語は、例えば、基板の表面内にあるより小さいイオンのより大きいイオンによるイオン交換によって、化学強化された基板を称することがある。しかしながら、当該技術分野で公知の他の強化方法、例えば、熱強化、または圧縮応力領域と中央張力領域を作り出すための基板の複数の部分の間の熱膨張係数の不一致を使用して、強化基板を形成してもよい。
【0072】
その基板がイオン交換過程により化学強化される場合、基板の表面層内のイオンは、同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンにより置換-すなわち、交換-される。イオン交換過程は、典型的に、基板内のより小さいイオンと交換されるべきより大きいイオンを含有する溶融塩浴中に、基板を浸漬することによって行われる。以下に限られないが、浴の組成と温度、浸漬時間、1つの塩浴(または複数の塩浴)中の基板の浸漬回数、多数の塩浴の使用、および任意の追加の工程(例えば、徐冷、洗浄など)を含む、イオン交換過程のパラメータは、一般に、基板の組成、所望の圧縮応力(CS)、および強化操作により生じる基板の圧縮応力(CS)層の所望の深さ(または層の深さ)により決定されることが当業者に認識されるであろう。一例として、アルカリ金属を含有するガラス基板のイオン交換は、塩、例えば、以下に限られないが、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物を含有する少なくとも1つの溶融浴中の浸漬により行うことができる。溶融塩浴の温度は、典型的に、約380℃から約450℃までの範囲にある一方で、浸漬時間は、約15分から約40時間までに及ぶ。しかしながら、先に記載したものと異なる温度および浸漬時間も使用してよい。
【0073】
それに加え、複数の浸漬の間に洗浄工程および/または徐冷工程が行われる、多数のイオン交換浴中にガラス基板が浸漬されるイオン交換過程の非限定例が、異なる濃度の複数の塩浴中の浸漬を含む多数の連続したイオン交換処理によって、ガラス基板が強化される、2008年7月11日に出願された米国仮特許出願第61/079995号からの優先権を主張する、「Glass with Compressive Surface for Consumer Applications」と題する、Douglas C. Allan等により2009年7月10日に出願された米国特許出願第12/500650号明細書、およびガラス基板が、流出イオンにより希釈された第1の浴中のイオン交換と、その後の、第1の浴より小さい濃度の流出イオンを有する第2の浴中の浸漬とにより強化される、2008年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/084398号からの優先権を主張する、「Dual Stage Ion Exchange for Chemical Strengthening of Glass」と題する、2012年11月20日に発行された、Christopher M. Lee等による米国特許第8312739号明細書に記載されている。米国特許出願第12/500650号明細書、および米国特許第8312739号明細書が、ここに全て引用される。
【0074】
イオン交換により達成される化学強化の程度は、中央張力(CT)、ピークCS、圧縮深さ(DOC、圧縮が張力に変化する、厚さに沿った地点である)、および層の深さ(DOL)のパラメータに基づいて、定量化することができる。ピークCSは、最大の観察圧縮応力であり、これは基板110の表面近く、または様々な深さで強化ガラス内に測定されることがある。ピークCS値は、強化基板の表面での測定CS(CS)を含むことがある。他の実施の形態において、ピークCSは、強化基板の表面より下で測定される。圧縮応力(表面CSを含む)は、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000などの市販の計器を使用して、表面応力計(FSM)により測定される。表面応力測定は、ガラスの複屈折に関連する、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存する。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題する、ASTM基準C770-16に記載されている、手順C(ガラスディスク法)にしたがって測定される。ここに用いられているように、DOCは、ここに記載された化学強化されたアルカリアルミノケイ酸塩ガラス中の応力が圧縮から引張に変化する深さを意味する。DOCは、イオン交換処理に応じて、FSMにより、または散乱光偏光器(SCALP)により測定することができる。ガラス物品中の応力が、ガラス物品中へのカリウムイオンの交換により生じている場合、DOCを測定するために、FSMが使用される。応力が、ガラス物品中へのナトリウムイオンの交換により生じている場合、DOCを測定するために、SCALPが使用される。ガラス物品中の応力が、ガラス中にカリウムイオンとナトリウムイオンの両方を交換することによって生じる場合、DOCはSCALPにより測定される。何故ならば、ナトリウムイオンの交換深さはDOCを表し、カリウムイオンの交換深さは、圧縮応力の大きさの変化(圧縮から引張への応力の変化ではない)を表すと考えられるからである;そのようなガラス物品におけるカリウムイオンの交換深さは、FSMにより測定される。最大CT値は、当該技術分野で公知の散乱光偏光器(SCALP)を使用して測定される。完全な応力プロファイルを測定する(グラフに描く、視覚的に示す、または他のやり方で精密に示す)ために、屈折近視野(RNF)法またはSCALPが使用されることがある。応力プロファイルを測定するために、RNF法が使用される場合、SCALPにより与えられる最大CT値がRNF法に利用される。詳しくは、RNF法により測定された応力プロファイルは、SCALP測定により与えられる最大CT値に対して力平衡され、較正される。このRNF法は、ここに全てが引用される、「Systems and methods for measuring a profile characteristic of a glass sample」と題する米国特許第8854623号明細書に記載されている。詳しくは、RNF法は、基準ブロックに隣接してガラス物品を配置する工程、1Hzから50Hzまでの速度で直交偏光の間で切り換えられる偏光切替光線を生成する工程、その偏光切替光線の出力量を測定する工程、および偏光切替基準信号を生成する工程を含み、直交偏光の各々の出力の測定量は互いの50%以内にある。この方法は、偏光切替光線を、ガラス試料中の異なる深さについて、ガラス試料および基準ブロックに透過させ、次いで、リレー光学系を使用して、透過した偏光切替光線を信号光検出器に中継する工程をさらに含み、その信号光検出器は偏光切替検出器信号を生成する。この方法は、検出器信号を基準信号で割って、正規化検出器信号を形成する工程、およびその正規化検出器信号からガラス試料の特徴を示すプロファイルを決定する工程も含む。
【0075】
いくつかの実施の形態において、強化基板110は、250MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、または800MPa以上のピークCSを有し得る。その強化基板は、10μm以上、15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm以上)のDOC、および/または10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPa以上(例えば、42MPa、45MPa、または50MPa以上)であるが、100MPa未満(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55MPa以下)のCTを有することがある。1つ以上の特別な実施の形態において、その強化基板は、以下の1つ以上を有する:500MPa超のピークCS、15μm超のDOC、および18MPa超のCT。
【0076】
その基板に使用できる例示のガラスとしては、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物またはアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス組成物が挙げられるが、他のガラス組成物も考えられる。そのようなガラス組成物は、イオン交換過程によって化学強化することができる。1つの例示のガラス組成物は、SiO、BおよびNaOを含み、ここで、(SiO+B)≧66モル%およびNaO≧9モル%。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約6質量%以上の酸化アルミニウムを含む。いくつかの実施の形態において、この基板は、アルカリ土類酸化物の含有量が約5質量%以上であるように、1種類以上のアルカリ土類酸化物を有するガラス組成物を含む。いくつかの実施の形態において、適切なガラス組成物は、KO、MgO、またはCaOの少なくとも1つをさらに含む。いくつかの実施の形態において、その基板に使用されるガラス組成物は、61~75モル%のSiO、7~15モル%のAl、0~12モル%のB、9~21モル%のNaO、0~4モル%のKO、0~7モル%のMgO、および0~3モル%のCaOを含み得る。
【0077】
前記基板に適したさらなる例示のガラス組成物は、60~70モル%のSiO、6~14モル%のAl、0~15モル%のB、0~15モル%のLiO、0~20モル%のNaO、0~10モル%のKO、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO、0~1モル%のSnO、0~1モル%のCeO、50ppm未満のAs、および50ppm未満のSbを含み、ここで、12モル%≦(LiO+NaO+KO)≦20モル%、および0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0078】
前記基板に適したさらに別の例示のガラス組成物は、63.5~66.5モル%のSiO、8~12モル%のAl、0~3モル%のB、0~5モル%のLiO、8~18モル%のNaO、0~5モル%のKO、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO、0.05~0.25モル%のSnO、0.05~0.5モル%のCeO、50ppm未満のAs、および50ppm未満のSbを含み、ここで、14モル%≦(LiO+NaO+KO)≦18モル%、および2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0079】
いくつかの実施の形態において、基板110に適したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物は、アルミナ、少なくとも1種類のアルカリ金属、およびいくつかの実施の形態において、50モル%超のSiO、他の実施の形態において、58モル%以上のSiO、およびさらに他の実施の形態において、60モル%以上のSiOを含み、ここで、比(Al+B)/Σ改質剤(すなわち、改質剤の合計)は1より大きく、ここで、これらの成分の比はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。特別な実施の形態において、このガラス組成物は、58~72モル%のSiO、9~17モル%のAl、2~12モル%のB、8~16モル%のNaO、および0~4モル%のKOを含み、ここで、比(Al+B)/Σ改質剤(すなわち、改質剤の合計)は1より大きい。
【0080】
いくつかの実施の形態において、基板110は、64~68モル%のSiO、12~16モル%のNaO、8~12モル%のAl、0~3モル%のB、2~5モル%のKO、4~6モル%のMgO、および0~5モル%のCaOを含み、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(NaO+B)-Al≦2モル%、2モル%≦NaO-Al≦6モル%、および4モル%≦(NaO+KO)-Al≦10モル%である、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を含むことがある。
【0081】
いくつかの実施の形態において、基板110は、2モル%以上のAlおよび/またはZrO、または4モル%以上のAlおよび/またはZrOを含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラス組成物を含むことがある。
【0082】
基板110が結晶質基板を含む場合、その基板は単結晶を含むことがあり、その単結晶はAlを含むことがある。そのような単結晶基板は、サファイアと呼ばれる。結晶質基板のための他の適切な材料としては、多結晶アルミナ層および/またはスピネル(MgAl)が挙げられる。
【0083】
必要に応じて、結晶質基板110は、ガラスセラミック基板を含むことがあり、この基板は、強化されていてもされていなくてもよい。適切なガラスセラミックの例としては、LiO・Al・SiO系(すなわち、LAS系)ガラスセラミック、MgO・Al・SiO系(すなわち、MAS系)ガラスセラミック、および/またはβ-石英固溶体、β-スポジュメン固溶体、コージエライト、および二ケイ酸リチウムを含む主結晶相を有するガラスセラミックが挙げられる。そのガラスセラミック基板は、ここに開示された化学強化過程を使用して強化されることがある。1つ以上の実施の形態において、MAS系のガラスセラミック基板は、LiSO溶融塩中で強化することができ、それによって、2LiのMg2+との交換が起こり得る。
【0084】
1つ以上の実施の形態による基板110は、約50μmから約5mmに及ぶ物理的厚さを有し得る。例示の基板110の物理的厚さは、約50μmから約500μm(例えば、50、100、200、300、400または500μm)に及ぶ。さらに、例示の基板110の物理的厚さは、約500μmから約1000μm(例えば、500、600、700、800、900または1000μm)に及ぶ。基板110は、約1mm超(例えば、約2、3、4、または5mm)の物理的厚さを有することがある。1つ以上の具体的な実施の形態において、基板110は、2mm以下または1mm未満の物理的厚さを有することがある。基板110は、表面傷の影響をなくすまたは低下させるために、酸磨きまたは他の方法で処理することができる。
【0085】
反射防止コーティング
図1に示されるように、物品100の反射防止コーティング120は、複数の層120A、120B、120Cを備えることがある。いくつかの実施の形態において、1つ以上の層が、基板110の反射防止コーティング120と反対側(すなわち、主面114上)に配置されている(図示せず)。物品100のいくつかの実施の形態において、図1に示されるような層120Cは、キャッピング層(例えば、図2Aおよび2Bに示され、下記の欄に記載されるようなキャッピング層131)の機能を果たすことができる。
【0086】
反射防止コーティング120の物理的厚さは、約50nmから約500nm未満までの範囲にあることがある。ある場合には、反射防止コーティング120の物理的厚さは、約10nmから約500nm未満、約50nmから約500nm未満、約75nmから約500nm未満、約100nmから約500nm未満、約125nmから約500nm未満、約150nmから約500nm未満、約175nmから約500nm未満、約200nmから約500nm未満、約225nmから約500nm未満、約250nmから約500nm未満、約300nmから約500nm未満、約350nmから約500nm未満、約400nmから約500nm未満、約450nmから約500nm未満、約200nmから約450nmの範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲内にあることがある。例えば、反射防止コーティング120の物理的厚さは、10nmから490nm、または10nmから480nm、または10nmから475nm、または10nmから460nm、または10nmから450nm、または10nmから430nm、または10nmから425nm、または10nmから420nm、または10nmから410nm、または10nmから400nm、または10nmから350nm、または10nmから300nm、または10nmから250nm、または10nmから225nm、または10nmから200nm、または15nmから490nm、または20nmから490nm、または25nmから490nm、または30nmから490nm、または35nmから490nm、または40nmから490nm、または45nmから490nm、または50nmから490nm、または55nmから490nm、または60nmから490nm、または65nmから490nm、または70nmから490nm、または75nmから490nm、または80nmから490nm、または85nmから490nm、または90nmから490nm、または95nmから490nm、または100nmから490nm、または10nmから485nm、または15nmから480nm、または20nmから475nm、または25nmから460nm、または30nmから450nm、または35nmから440nm、または40nmから430nm、または50nmから425nm、または55nmから430nm、または60nmから410nm、または70nmから400nm、または75nmから400nm、または80nmから390nm、または90nmから380nm、または100nmから375nm、または110nmから370nm、または120nmから360nm、または125nmから350nm、または130nmから325nm、または140nmから320nm、または150nmから310nm、または160nmから300nm、または170nmから300nm、または175nmから300nm、または180nmから290nm、または190nmから280nm、または200nmから275nmであることがある。
【0087】
図2Aおよび2Bに示されるような、1つ以上の実施の形態において、物品100の反射防止コーティング120は、2つ以上の層を含む周期130を含むことがある。1つ以上の実施の形態において、その2つ以上の層は、互いに異なる屈折率を有するとして特徴付けられることがある。いくつかの実施の形態において、周期130は、第1の低RI層130Aおよび第2の高RI層130Bを含む。第1の低RI層130Aおよび第2の高RI層130Bの屈折率の差は、約0.01以上、0.05以上、0.1以上、またさらには0.2以上であることがある。いくつかの実施において、第1の低RI層130Aの屈折率は、第1の低RI層130Aの屈折率が約1.8未満であるように基板110の屈折率内であり、高RI層130Bは、1.8より大きい屈折率を有する。
【0088】
図2Aに示されるように、反射防止コーティング120は、複数の周期(130)を含むことがある。1つの周期は、第1の低RI層130Aおよび第2の高RI層130Bを含み、よって、複数の周期が設けられる場合、第1の低RI層130A(「L」と説明のために示されている)および第2の高RI層130B(「H」と説明のために示されている)は以下の層の順序で交互になり:L/H/L/HまたはH/L/H/L、よって第1の低RI層および第2の高RI層が反射防止コーティング120の物理的厚さに沿って交互に見える。図2Aに示された例において、反射防止コーティング120は、それぞれ、低RIおよび高RIの層130Aおよび130Bが三対あるように、3つの周期を含む。図2Bの例において、反射防止コーティング120は、それぞれ、低RIおよび高RIの層130Aおよび130Bが二対あるように、2つの周期を含む。いくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120は25までの周期を含むことがある。例えば、反射防止コーティング120は、約2から約20周期、約2から約15周期、約2から約10周期、約2から約12周期、約3から約8周期、約3から約6周期を含むことがある。
【0089】
図2Aおよび2Bに示された物品100の実施の形態において、反射防止コーティング120は、追加のキャッピング層131を備えることがあり、これは、第2の高RI層130Bよりも低い屈折率の材料を含むことがある。いくつかの実施において、キャッピング層131の屈折率は、低RI層130Aの屈折率と同じまたは実質的に同じである。
【0090】
ここに用いられているように、「低RI」および「高RI」という用語は、反射防止コーティング120内の別の層のRIに対する各層のRIの相対値を称する(例えば、低RI<高RI)。1つ以上の実施の形態において、「低RI」という用語は、第1の低RI層130Aまたはキャッピング層131に使用される場合、約1.3から約1.7の範囲を含む。1つ以上の実施の形態において、「高RI」という用語は、高RI層130Bに使用される場合、約1.6から約2.5の範囲を含む。ある場合には、低RIおよび高RIの範囲は重複することがある;しかしながら、ほとんどの場合、反射防止コーティング120の層は、低RI<高RIのRIに関する一般的関係を有する。
【0091】
反射防止コーティング120に使用するのに適した例示の材料としては、SiO、Al、GeO、SiO、AlO、AlN、酸素ドープSiN、SiN、SiO、SiAl、TiO、ZrO、TiN、MgO、HfO、Y、ZrO、ダイヤモンド状炭素、およびMgAlが挙げられる。
【0092】
低RI層130Aに使用するための適切な材料のいくつかの例としては、SiO、Al、GeO、SiO、AlO、SiO、SiAl、MgO、およびMgAlが挙げられる。第1の低RI層130A(すなわち、基板110と接触する層130A)に使用するための材料(例えば、材料、例えば、AlおよびMgAl中)の窒素含有量は最小にされることがある。いくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120中の低RI層130Aおよび存在する場合には、キャッピング層131は、ケイ素含有酸化物(例えば、二酸化ケイ素)、ケイ素含有窒化物(例えば、酸化物ドープ窒化ケイ素、窒化ケイ素など)、およびケイ素含有オキシ窒化物(例えば、酸窒化ケイ素)の内の1つ以上を含み得る。物品100のいくつかの実施の形態において、低RI層130Aおよびキャッピング層131は、ケイ素含有酸化物、例えば、SiOを含む。
【0093】
高RI層130Bに使用するのに適した材料のいくつかの例としては、SiAl、AlN、酸素ドープSiN、SiN、Si、AlO、SiO、HfO、TiO、ZrO、Y、ZrO、Al、およびダイヤモンド状炭素が挙げられる。高RI層130Bの材料、特に、SiNまたはAlN材料中の酸素含有量が最小にされることがある。先の材料は、約30質量%まで水素化されることがある。いくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120中の高RI層130Bは、ケイ素含有酸化物(例えば、二酸化ケイ素)、ケイ素含有窒化物(例えば、酸化物ドープ窒化ケイ素、窒化ケイ素など)、およびケイ素含有オキシ窒化物(例えば、酸窒化ケイ素)の内の1つ以上を含み得る。物品100のいくつかの実施の形態において、高RI層130Bは、ケイ素含有窒化物、例えば、Siを含む。高RI層と低RI層との間に、中間の屈折率を有する材料が望ましい場合、いくつかの実施の形態は、AlNおよび/またはSiOを利用することがある。高RI層の硬度は具体的に特徴付けられることがある。いくつかの実施の形態において、約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定されるような、高RI層130Bの最大硬度(すなわち、基板110上に配置された層130Bの2マイクロメートル厚の材料層を有する硬度試験積層体上の)は、約18GPa以上、約20GPa以上、約22GPa以上、約24GPa以上、約26GPa以上、およびそれらの間の全て値であることがある。
【0094】
1つ以上の実施の形態において、物品100の反射防止コーティング120の層の内の少なくとも1つは、特定の光学的厚さ範囲を有することがある。ここに用いられているように、「光学的厚さ」は、(nd)により決定され、式中、「n」は副層のRIを称し、「d」はその層の物理的厚さを称する。1つ以上の実施の形態において、反射防止コーティング120の層の内の少なくとも1つは、約2nmから約200nm、約10nmから約100nm、または約15nmから約100nmの範囲内の光学的厚さを有することがある。いくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120中の層の全ての各々は、約2nmから約200nm、約10nmから約100nm、または約15nmから約100nmの範囲にある光学的厚さを有することがある。ある場合には、反射防止コーティング120の少なくとも1つの層は、約50nm以上の光学的厚さを有する。ある場合には、低RI層130Aの各々は、約2nmから約200nm、約10nmから約100nm、または約15nmから約100nmの範囲にある光学的厚さを有する。他の場合には、高RI層130Bの各々は、約2nmから約200nm、約10nmから約100nm、または約15nmから約100nmの範囲にある光学的厚さを有する。いくつかの実施の形態において、高RI層130Bの各々は、約2nmから約500nm、または約10nmから約490nm、または約15nmから約480nm、または約25nmから約475nm、または約25nmから約470nm、または約30nmから約465nm、または約35nmから約460nm、または約40nmから約455nm、または約45nmから約450nmの範囲、およびそれらの間の任意と全ての部分的範囲にある光学的厚さを有する。いくつかの実施の形態において、キャッピング層131(図2A、2Bおよび3を参照のこと)、またはキャッピング層131がない構成については、最も外側の低RI層130Aは、約100nm未満、約90nm未満、約85nm未満、または約80nm未満の物理的厚さを有する。
【0095】
先に述べたように、物品100の実施の形態は、反射防止コーティング120の層の内の1つ以上の物理的厚さが最小となるように作られる。1つ以上の実施の形態において、高RI層130Bおよび/または低RI層130Aの物理的厚さは、それらが合計で500nm未満であるように最小にされる。1つ以上の実施の形態において、高RI層130B、低RI層130Aおよび任意のキャッピング層131の合計の物理的厚さは、500nm未満、490nm未満、480nm未満、475nm未満、470nm未満、460nm未満、450nm未満、440nm未満、430nm未満、425nm未満、420nm未満、410nm未満、400nm未満、350nm未満、300nm未満、250nm未満、または200nm未満、および500nm未満かつ10nm超の全ての全厚値である。例えば、高RI層130B、低RI層130Aおよび任意のキャッピング層131の合計の物理的厚さは、10nmから490nm、または10nmから480nm、または10nmから475nm、または10nmから460nm、または10nmから450nm、または10nmから450nm、または10nmから430nm、または10nmから425nm、または10nmから420nm、または10nmから410nm、または10nmから400nm、または10nmから350nm、または10nmから300nm、または10nmから250nm、または10nmから225nm、または10nmから200nm、または15nmから490nm、または20nmから490nm、または25nmから490nm、または30nmから490nm、または35nmから490nm、または40nmから490nm、または45nmから490nm、または50nmから490nm、または55nmから490nm、または60nmから490nm、または65nmから490nm、または70nmから490nm、または75nmから490nm、または80nmから490nm、または85nmから490nm、または90nmから490nm、または95nmから490nm、または100nmから490nm、または10nmから485nm、または15nmから480nm、または20nmから475nm、または25nmから460nm、または30nmから450nm、または35nmから440nm、または40nmから430nm、または50nmから425nm、または55nmから430nm、または60nmから410nm、または70nmから400nm、または75nmから400nm、または80nmから390nm、または90nmから380nm、または100nmから375nm、または110nmから370nm、または120nmから360nm、または125nmから350nm、または130nmから325nm、または140nmから320nm、または150nmから310nm、または160nmから300nm、または170nmから300nm、または175nmから300nm、または180nmから290nm、または190nmから280nm、または200nmから275nmであることがある。
【0096】
1つ以上の実施の形態において、高RI層130Bの合計の物理的厚さが特徴付けられることがある。例えば、いくつかの実施の形態において、高RI層130Bの合計の物理的厚さは、約90nm以上、約100nm以上、約150nm以上、約200nm以上、約250nm以上、または約300nm以上であるが、500nm未満であることがある。この合計の物理的厚さは、介在する低RI層130Aまたは他の層がある場合でさえ、反射防止コーティング120中の個々の高RI層130Bの物理的厚さの計算された合計である。いくつかの実施の形態において、高硬度材料(例えば、窒化物またはオキシ窒化物)も含むことがある、高RI層130Bの合計の物理的厚さは、反射防止コーティングの全物理的厚さ(もしくは、体積の文脈で称される)の30%超であることがある。例えば、高RI層130Bの合計の物理的厚さ(または体積)は、反射防止コーティング120の全物理的厚さ(または体積)の約30%以上、約35%以上、約40%以上、約45%以上、約50%以上、約55%以上、またさらには約60%以上であることがある。
【0097】
いくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120は、反射防止表面122で測定された場合(例えば、吸収体に結合された背面上の屈折率整合油、または他の公知の方法を使用することにより、物品100の未被覆の背面(例えば、図1の114)からの反射を除去した場合)、光学波長領域に亘り、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下、0.25%以下、または0.2%以下の明所視平均光反射率を示す。ある場合には、反射防止コーティング120は、例えば、約450nmから約650nm、約420nmから約680nm、約420nmから約700nm、約420nmから約740nm、約420nmから約850nm、または約420nmから約950nmの他の波長範囲に亘り、そのような平均光反射率を示すことがある。いくつかの実施の形態において、反射防止表面122は、その光学波長領域に亘り、約90%以上、92%以上、94%以上、96%以上、または98%以上の明所視平均光透過率を示す。いくつかの実施の形態において、反射防止表面122は、800nmから1000nm、900nmから1000nm、または930nmから950nmの赤外スペクトルの光学波長領域に亘り、約87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、または95%以上の明所視平均光透過率を示す。特に明記のない限り、平均反射率または透過率は、0度の入射照明角度で測定される(しかしながら、そのような測定は、45度または60度の入射照明角度で行われてもよい)。
【0098】
物品100は、図3に示されるように、反射防止コーティング上に配置された1つ以上の追加のコーティング140を備えることがある。1つ以上の実施の形態において、その追加のコーティングは、洗浄し易い(easy-to-clean)コーティングを含むことがある。適切な洗浄し易いコーティングの一例が、ここに全て引用される、2012年11月30日に出願された、「PROCESS FOR MAKING OF GLASS ARTICLES WITH OPTICAL AND EASY-TO-CLEAN COATINGS」と題する、米国特許出願第13/690904号明細書に記載されている。この洗浄し易いコーティングは、約5nmから約50nmの範囲の物理的厚さを有することがあり、公知の材料、例えば、フッ素化シランを含むことがある。いくつかの実施の形態において、その洗浄し易いコーティングは、約1nmから約40nm、約1nmから約30nm、約1nmから約25nm、約1nmから約20nm、約1nmから約15nm、約1nmから約10nm、約5nmから約50nm、約10nmから約50nm、約15nmから約50nm、約7nmから約20nm、約7nmから約15nm、約7nmから約12nm、または約7nmから約10nmの範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の物理的厚さを有することがある。
【0099】
追加のコーティング140は、耐引掻性コーティングを含むことがある。この耐引掻性コーティングに使用される例示の材料としては、無機炭化物、窒化物、酸化物、ダイヤモンド状材料、またはこれらの組合せが挙げられるであろう。この耐引掻性コーティングの適切な材料の例に、金属酸化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物、金属炭化物、金属オキシ炭化物、および/またはその組合せが挙げられる。例示の金属としては、B、Al、Si、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Sn、Hf、TaおよびWが挙げられる。耐引掻性コーティングに利用されることのある材料の具体例に、Al、AlN、AlO、Si、SiO、SiAl、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素、Si、Si、ZrO、TiO、およびその組合せが挙げられるであろう。
【0100】
いくつかの実施の形態において、追加のコーティング140は、洗浄し易い材料および耐引掻性材料の組合せを含むことがある。一例において、その組合せは、洗浄し易い材料およびダイヤモンド状炭素を含む。そのような追加のコーティング140は、約5nmから約20nmの範囲の物理的厚さを有することがある。追加のコーティング140の成分は、別々の層に与えられることがある。例えば、ダイヤモンド状炭素材料は第1の層として配置されることがあり、洗浄し易い材料は、ダイヤモンド状炭素の第1の層の上に第2の層として配置することができる。第1の層と第2の層の物理的厚さは、追加のコーティングについて先に与えられた範囲内にあることがある。例えば、ダイヤモンド状炭素の第1の層は、約1nmから約20nmまたは約4nmから約15nm(またはより具体的に約10nm)の物理的厚さを有することがあり、洗浄し易い材料の第2の層は、約1nmから約10nm(またはより具体的に約6nm)の物理的厚さを有することがある。このダイヤモンド状コーティングは、四面体非晶質炭素(Ta-C)、Ta-C:H、および/またはTa-C-Hを含むことがある。
【0101】
本開示のさらなる態様は、ここに記載された物品100(例えば、図1~3に示されるような)を形成する方法に関する。いくつかの実施の形態において、この方法は、被覆チャンバ内に主面を有する基板を提供する工程、その被覆チャンバに真空を生じる工程、その主面上に約500nm以下の物理的厚さを有する耐久性の反射防止コーティングを形成する工程、その反射防止コーティング上に位置するものとして、洗浄し易いコーティングおよび耐引掻性コーティングの少なくとも一方を含む追加のコーティングを必要に応じて形成する工程、および被覆チャンバから基板を取り出す工程を有してなる。1つ以上の実施の形態において、反射防止コーティングおよび追加のコーティングは、同じ被覆チャンバ内で、または別々の被覆チャンバ内で真空を破らずに、のいずれかで、形成される。
【0102】
1つ以上の実施の形態において、前記方法は、基板が動かされるときに真空が維持されるようなロードロック条件下で、次に基板を異なる被覆チャンバに出入りするように動かすために使用される担体上に基板を装填する工程を含むことがある。
【0103】
反射防止コーティング120(例えば、層130A、130Bおよび131を含む)および/または追加のコーティング140は、様々な堆積方法、例えば、真空蒸着技術、化学気相堆積法(例えば、プラズマ支援化学気相堆積法(PECVD)、低圧化学気相堆積法、大気圧化学気相堆積法およびプラズマ支援大気圧化学気相堆積法)、物理気相堆積法(例えば、反応性または非反応性スパッタリングまたはレーザアブレーション)、熱または電子線蒸発および/または原子層堆積を使用して形成されることがある。液体に基づく方法、例えば、吹付けまたはスロットコーティングを使用してもよい。真空堆積が利用される場合、1つの堆積運転において反射防止コーティング120および/または追加のコーティング140を形成するために、インラインプロセスが使用されることがある。ある場合には、真空堆積は、線PECVD源により行うことができる。この方法のいくつかの実施、およびその方法により製造された物品100において、反射防止コーティング120は、スパッタリング法(例えば、反応性スパッタリング法)、化学気相堆積(CVD)法、プラズマ支援化学気相堆積法、またはこれらの過程のいくつかの組合せを使用して調製することができる。1つの実施において、低RI層130Aおよび高RI層130Bを含む反射防止コーティング120は、反応性スパッタリング法にしたがって調製することができる。いくつかの実施の形態によれば、物品100の反射防止コーティング120(低RI層130A、高RI層130Bおよびキャッピング層131を含む)は、回転式ドラム塗工機内で金属モードの反応性スパッタリング法を使用して製造される。この反応性スパッタリング法の条件は、硬度、屈折率、光透過性、薄い色および制御された膜応力の所望の組合せを達成するために、注意深い実験によって規定した。
【0104】
いくつかの実施の形態において、前記方法は、反射防止コーティング120(例えば、その層130A、130Bおよび131を含む)および/または追加のコーティング140の物理的厚さを、反射防止表面122の面積の約80%以上に沿って、または基板の面積に沿った任意の地点での各層の目標物理的厚さから、約4%を超えて変動しないように制御する工程を含むことがある。いくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120および/または追加のコーティング140の物理的厚さは、反射防止表面122の面積の約95%以上に沿って約4%を超えて変動しないように制御される。
【0105】
図1~3に示された物品100のいくつかの実施の形態において、反射防止コーティング120は、約+50MPa(引張)未満から約-1000MPa(圧縮)の残留応力により特徴付けられる。物品100のいくつかの実施において、反射防止コーティング120は、約-50MPaから約-1000MPa(圧縮)、または約-75MPaから約-800MPa(圧縮)の残留応力により特徴付けられる。特に明記のない限り、反射防止コーティング120における残留応力は、反射防止コーティング120の堆積の前後で基板110の曲率を測定し、次いで、本開示の分野における当業者により知られており、理解されている原理にしたがって、ストーニーの式により残留膜応力を計算することによって得られる。
【0106】
ここに開示された物品100(例えば、図1~3に示されるような)は、デバイス物品、例えば、ディスプレイを有するデバイス物品(または表示装置物品)(例えば、携帯電話、タブレット、コンピュータ、ナビゲーションシステム、ウェアラブルデバイス(例えば、腕時計)などを含む家庭用電子機器)、拡張現実ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ、眼鏡系ディスプレイ、建築デバイス物品、輸送デバイス物品(例えば、自動車、列車、航空機、船舶など)、電化製品デバイス物品、またはある程度の透明性、耐引掻性、耐摩耗性またはその組合せの恩恵を受ける任意のデバイス物品に組み込まれることがある。ここに開示された物品のいずれか(例えば、図1~3に示された物品100にしたがう)を組み込んだ例示のデバイス物品が、図4Aおよび4Bに示されている。詳しくは、図4Aおよび4Bは、前面404、背面406、および側面408を有する筐体402;その筐体の少なくとも部分的に内部にあり、または完全に中にあり、少なくとも制御装置、メモリ、およびその筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイ410を含む電気部品(図示せず);およびディスプレイ上にあるように、筐体の前面にまたはその上にあるカバー基板412を備えた家庭用電子機器400を示す。いくつかの実施の形態において、カバー基板412は、ここに開示された物品のいずれかを含むことがある。いくつかの実施の形態において、その筐体の一部またはカバーガラスの少なくとも一方が、ここに開示された物品から作られている。
【0107】
いくつかの実施の形態によれば、物品100(例えば、図1~3に示されるような)は、図5に示されるような、乗物内装システムを有する乗物内装内に組み込まれることがある。より詳しくは、物品100は、様々な乗物内装システムに関連して使用されることがある。乗物内装システム544、548、552の3つの異なる例を含む乗物内装540が示されている。乗物内装システム544は、ディスプレイ564を含む表面560を有するセンターコンソールベース556を備える。乗物内装システム548は、ディスプレイ576を含む表面572を有するダッシュボードベース568を備える。ダッシュボードベース568は、典型的に、ディスプレイも含むことがある計器盤580を備える。乗物内装システム552は、表面588およびディスプレイ592を有するハンドルベース584を備える。1つ以上の例において、乗物内装システムは、アームレスト、ピラー、シートバック、床板、ヘッドレスト、ドアパネル、または表面を含む乗物の内装の任意の部分であるベースを備えることがある。ここに記載された物品100は、乗物内装システム544、548および552の各々に交換可能に使用できることが理解されよう。
【0108】
いくつかの実施の形態によれば、物品100(例えば、図1~3に示されるような)は、電子ディスプレイまたは電気的に活性のデバイスと統合されることがあるまたはない、パッシブ光学素子、例えば、レンズ、窓、照明カバー、眼鏡、またはサングラスに使用されることがある。
【0109】
再び図5を参照すると、ディスプレイ564、576および592の各々は、前面、背面、および側面を有する筐体を備えることがある。少なくとも1つの電気部品がその筐体の少なくとも部分的に内部にある。ディスプレイ要素は、筐体の前面にまたはそれに隣接している。物品100(図1~3参照)は、ディスプレイ要素の上に配置されている。物品100は、先に説明したように、アームレスト、ピラー、シートバック、床板、ヘッドレスト、ドアパネル、または表面を含む乗物の内装の任意の部分の上に、またはそれに関連して、使用されることもあることが理解されよう。様々な例によれば、ディスプレイ564、576および592は、乗物画像表示システムまたは乗物インフォテインメントシステムであってもよい。物品100は、自律車両の様々なディスプレイおよび構造成分に組み込まれてもよいこと、および従来の車両に関連してここに与えられた記載は限定するものではないことが理解されよう。
【実施例0110】
以下の実施例によって、様々な実施の形態がさらに明白になるであろう。
【0111】
実施例1
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Bおよび下記の表1に示されるように、そのガラス基板上に5層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例1の製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0112】
実施例1のモデル化試料(「実施例1-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表1に示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。全ての実施例について報告された光学的性質は、特に明記のない限り、ほぼ垂直入射で測定した。
【0113】
【表1】
【0114】
実施例2
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Bおよび下記の表2に示されるように、そのガラス基板上に5層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例2の製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0115】
実施例2のモデル化試料(「実施例2-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表2に示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。
【0116】
【表2】
【0117】
実施例3
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Bおよび下記の表3に示されるように、そのガラス基板上に5層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例3の製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0118】
実施例3のモデル化試料(「実施例3-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表3に示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。
【0119】
【表3】
【0120】
実施例3A
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Bおよび下記の表3Aに示されるように、そのガラス基板上に5層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例3Aの製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0121】
実施例3Aのモデル化試料(「実施例3-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表3Aに示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。
【0122】
【表3A】
【0123】
実施例4
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Aおよび下記の表4に示されるように、そのガラス基板上に7層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例4の製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0124】
実施例4のモデル化試料(「実施例4-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表4に示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。
【0125】
【表4】
【0126】
実施例5
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Bおよび下記の表5Aに示されるように、そのガラス基板上に5層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例5の製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0127】
実施例5のモデル化試料(「実施例5-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表5Aに示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。
【0128】
【表5A】
【0129】
実施例5A
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Bおよび下記の表5Bに示されるように、そのガラス基板上に5層を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例5Aの製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。
【0130】
実施例5Aのモデル化試料(「実施例5-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。さらに、このモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表5Bに示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。
【0131】
【表5B】
【0132】
ここで図6を参照すると、実施例1、2、3、4、5および5Aの製造したままの物品に関する硬度対圧入深さのプロットが与えられている。図6に示されたデータは、実施例1~5Aの試料についてのバーコビッチ圧子硬度試験を用いて生成した。図6から明らかなように、硬度値は、150から250nmの圧入深さでピークに達する。さらに、実施例4、5および5Aの製造したままの試料は、100nmと500nmの圧入深さで最高の硬度値、および100nmから500nmの圧入深さ内で最高の最大硬度値を示した。
【0133】
ここで図7を参照すると、実施例1~5Aにおいて先に概説した試料のほぼ垂直入射で測定した、またはそれに関して予測された第一面の反射色座標のプロットが与えられている。図7から明らかなように、実施例の各々からの製造したままの試料とモデル化試料により示された色座標間にかなり良好な相関関係がある。さらに、図7に示された試料によって示された色座標は、本開示の反射防止コーティングに関連する限定された色ずれを表す。
【0134】
実施例6
実施例6は二組のモデル化試料に関する。詳しくは、実施例6のモデル化試料(「実施例3-M」および「実施例6-M」)は、この実施例の製造したままの試料に用いたガラス基板と同じ組成を有するガラス基板を使用すると仮定した。実施例6における実施例3-Mのモデル化試料は、実施例3に用いたような反射防止コーティングと同じ構成、すなわち、実施例3-Mを使用していることに留意のこと。しかしながら、実施例6-Mの試料は、類似しているが、より厚い低RI層が基板と接触している、反射防止コーティングの構成を有する。より詳しくは、そのモデル化試料の各々の反射防止コーティングは、下記の表6に示されたような層材料および物理的厚さを有すると仮定した。表6に示されたデータから明らかなように、実施例6-Mの試料は、モデル化試料の実施例3-Mと比べて、さらに低い明所視平均反射率(すなわち、Y値)を示す。
【0135】
【表6】
【0136】
ここで図8を参照すると、Alumina SCE Testが行われた試料から得られたような、先の実施例、詳しくは、実施例1~5の試料に関する、正反射光除去(SCE)値のプロットが与えられている。さらに、SCE値は、比較物品(「比較例1」)からも報告されており、この物品は、実施例1~5に用いたのと同じ基板を備え、ニオビアおよびシリカを含む従来の反射防止コーティングを有する。特に、本開示の実施例1~5からの試料(すなわち、実施例1~5)は、比較試料(比較例1)に報告されたSCE値よりも3倍(以上)低い、約0.2%以下のSCE値を示した。先に述べたように、より低いSCE値は、それほど酷くない摩耗関連の損傷を示す。
【0137】
ここで図9を参照すると、本開示による、高RI層130Bと一致するSiNから作られた高屈折率層材料(すなわち、図2Aおよび2Bに示されたような高RI層130Bに適した材料)の硬度試験積層体についての硬度(GPa)対圧入深さ(nm)のプロットが与えられている。特に、図9のプロットは、本開示において先に記載された基板および他の試験関連の物品の影響を最小にするために、実施例1~5Aにおけるものと一致する基板、および約2マイクロメートルの厚さを有するSiNから作られた高RI層とを含む試験積層体についてのバーコビッチ圧子硬度試験を用いて得た。その結果、2マイクロメートル厚の試料について図9に観察された硬度値は、本開示の反射防止コーティング120に用いたずっと薄い高RI層の実際の固有の材料硬度を示す。
【0138】
実施例7
69モル%のSiO、10モル%のAl、15モル%のNaO、および5モル%のMgOの公称組成を有するガラス基板を提供し、図2Aと2Bおよび下記の表7に示されるように、そのガラス基板上に5層(実施例7、7Aおよび7B)および7層(実施例7C)を有する反射防止コーティングを配置することによって、実施例7(「実施例7、7A、7Bおよび7C」)の製造したままの試料を形成した。この実施例における製造したままの試料の各々の反射防止コーティング(例えば、本開示に概説された反射防止コーティング120と一致するような)は、反応性スパッタリング法を使用して堆積させた。この実施例における試料の選択された光学的性質と機械的性質も、表7において下記に与えられている。
【0139】
【表7】
【0140】
ここで図10を参照すると、実施例7(実施例7、7A、7Bおよび7C)において先に概説された試料のほぼ垂直入射で測定した、またはそれについて予測された第一面の反射透過率(%)対波長(すなわち、350nmから950nm)のプロットが与えられている。図10から明らかなように、この実施例における試料の各々は、450nmから650nmの可視スペクトルにおける96%超の平均透過率、および800nmから950nm、800nmから950nm、および930nmから950nmの赤外スペクトルにおける87%以上の平均透過率を示す。
【0141】
ここに用いられているように、本開示における「AlO」、「SiO」および「SiAl」材料は、下付文字「u」、「x」、「y」および「z」に関する特定の数値および範囲にしたがって記載された、本開示の分野の当業者により理解されるような、様々な酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素およびサイアロン(silicon aluminum oxynitride)材料を含む。すなわち、「整数式」の記述、例えば、Alで固体を記載することが、一般的である。同意義の「原子分率式」の記述、例えば、Alと等しい、Al0.40.6を用いて固体を記載することも一般的である。原子分率式において、その式中の全ての原子の合計は、0.4+0.6=1であり、式中のAlおよびOの原子分率は、それぞれ、0.4および0.6である。原子分率の記述は、多くの一般的な教科書に記載されており、原子分率の記述は、合金を記載するためにしばしば使用される。例えば、(i)Charles Kittel, Introduction to Solid State Physics, seventh edition, John Wiley & Sons, Inc., NY, 1996, pp. 661-627;(ii)Smart and Moore, Solid State Chemistry, An introduction, Chapman & Hall University and Professional Division, London, 1992, pp. 136-151;および(iii)James F. Shackelford, Introduction to Materials Science for Engineers, Sixth Edition, Pearson Prentice Hall, New Jersey, 2005, pp. 404-418を参照のこと。
【0142】
再び、本開示における「AlO」、「SiO」および「SiAl」材料を参照すると、これらの下付文字により、当業者が、特定の下付文字の値を明記せずに、材料の種類としてこれらの材料に言及することができる。特定の下付文字の値を明記せずに、一般に合金、例えば、酸化アルミニウムについて言えば、Alについて語ることができる。記述Alは、AlまたはAl0.40.6のいずれも表すことができる。v+xが合計で1となるように選択された(すなわち、v+x=1)場合、ひいては、その式は、原子分率の記述であろう。同様に、より複雑な混合物、例えば、SiAlを記載することができ、ここでも、合計u+v+x+yが1と等しければ、原子分率の記述の場合となるであろう。
【0143】
もう一度、本開示における「AlO」、「SiO」および「SiAl」材料を参照すると、これらの表記法により、当業者は、これらの材料と他のものを容易に比較することができる。すなわち、原子分率式は、ときどき、比較に使用するのにより容易である。例えば、(Al0.3(AlN)0.7からなる例示の合金は、式の記述Al0.4480.310.241およびAl367254198とも密接に等しい。(Al0.4(AlN)0.6からなる別の例示の合金は、式の記述Al0.4380.3750.188およびAl373216とも密接に等しい。原子分率式Al0.4480.310.241およびAl0.4380.3750.188は、互いに比較するのが比較的容易である。例えば、Alは0.01だけ原子分率が減少し、Oは0.065だけ原子分率が増加し、Nは0.053だけ原子分率が減少した。整数式の記述Al367254198およびAl373216を比較するためには、より詳しく計算および検討する必要がある。したがって、固体の原子分率式の記述を使用することが好ましいことがある。それにもかかわらず、Al、OおよびNの原子を含有するどの合金も含むので、Alの使用が一般的である。
【0144】
光学膜80のための先の材料のいずれか(例えば、AlN)に関する本開示の分野における当業者に理解されるように、下付文字「u」、「x」、「y」および「z」の各々は、0から1まで様々であり得、それらの下付文字の合計は1以下となり、組成の残りは、材料中の第一元素(例えば、SiまたはAl)である。それに加え、当業者は、「SiAl」は、「u」がゼロと等しくなるように作ることができ、その材料を「AlO」と記載できることを認識できる。さらにまた、光学膜80の先の組成は、純粋な元素形態(例えば、純粋なケイ素、純粋なアルミニウム金属、酸素ガスなど)をもたらすであろう下付文字の組合せは除く。最後に、当業者には、先の組成は、明白に示されていない他の元素(例えば、水素)を含むことがあり、これにより非化学量論的組成となり得る(例えば、SiN対Si)ことも認識されるであろう。したがって、その光学膜のための先の材料は、先の組成の表現における下付文字の値に応じて、SiO-Al-SiN-AlNまたはSiO-Al-Si-AlN相図内の利用可能空間を表すことができる。
【0145】
本開示の精神および様々な原理から実質的に逸脱せずに、本開示の上述した実施の形態に、多くの変更および改変を行うことができる。そのような改変および変更の全ては、本開示の範囲内に含まれ、以下の特許請求の範囲により保護されることが意図されている。例えば、本開示の様々な特徴は、以下の実施形態にしたがって、組み合わされることがある。
【0146】
実施の形態1
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0147】
実施の形態2
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して10GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して11GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、前記光学フイルム構造の物理的厚さは約200nmから約450nmであり、さらに該物品は、0.6%未満の片面明所視平均反射率を示す、実施の形態1の物品。
【0148】
実施の形態3
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施の形態1または実施の形態2の物品。
【0149】
実施の形態4
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施の形態1または実施の形態2の物品。
【0150】
実施の形態5
前記物品が、約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘りバーコビッチ圧子硬度試験によって測定して約12GPa以上の最大硬度を示す、実施の形態1から4のいずれか1つの物品。
【0151】
実施の形態6
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施の形態1から5のいずれか1つの物品。
【0152】
実施の形態7
前記光学フイルム構造が、ケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施の形態1から6のいずれか1つの物品。
【0153】
実施の形態8
前記無機酸化物基板が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスから作られている、実施の形態1から7のいずれか1つの物品。
【0154】
実施の形態9
前記ガラスが、化学強化されており、250MPa以上のピークCSを持つ圧縮応力(CS)層を有し、該CS層は、前記第1の主面から約10マイクロメートル以上の圧縮深さ(DOC)まで該化学強化されたガラス内に延在する、実施の形態8の物品。
【0155】
実施の形態10
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施の形態1から9のいずれか1つの物品。
【0156】
実施の形態11
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施の形態1から10のいずれか1つの物品。
【0157】
実施の形態12
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記高屈折率層は、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して18GPa以上の最大硬度を示し、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0158】
実施の形態13
前記高屈折率層が示す最大硬度が、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる前記硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して22GPa以上であり、前記光学フイルム構造の物理的厚さが約200nmから約450nmであり、さらに前記物品が、0.6%未満の片面明所視平均反射率を示す、実施の形態12の物品。
【0159】
実施の形態14
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施の形態12または実施の形態13の物品。
【0160】
実施の形態15
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施の形態12または実施の形態13の物品。
【0161】
実施の形態16
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施の形態12から15のいずれか1つの物品。
【0162】
実施の形態17
前記無機酸化物基板が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスから作られている、実施の形態12から16のいずれか1つの物品。
【0163】
実施の形態18
前記ガラスが、化学強化されており、250MPa以上のピークCSを持つ圧縮応力(CS)層を有し、該CS層は、前記第1の主面から約10マイクロメートル以上の圧縮深さ(DOC)まで該化学強化されたガラス内に延在する、実施の形態17の物品。
【0164】
実施の形態19
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施の形態12から18のいずれか1つの物品。
【0165】
実施の形態20
前記複数の交互の高屈折率層と低屈折率層が少なくとも4層であり、各層がケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物の1つ以上を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施の形態12から19のいずれか1つの物品。
【0166】
実施の形態21
前記キャッピング低屈折率層に隣接する前記高屈折率層の物理的厚さが約70nm以上であり、該キャッピング低屈折率層の物理的厚さが約80nm以上である、実施の形態12から20のいずれか1つの物品。
【0167】
実施の形態22
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施の形態12から21のいずれか1つの物品。
【0168】
実施の形態23
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記無機酸化物基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記光学フイルム構造はさらに、体積で30%以上の前記高屈折率層を含み、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0169】
実施の形態24
前記光学フイルム構造はさらに、体積で50%以上の前記高屈折率層を含む、実施の形態23の物品。
【0170】
実施の形態25
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施の形態23または実施の形態24の物品。
【0171】
実施の形態26
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施の形態23または実施の形態24の物品。
【0172】
実施の形態27
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施の形態23から26のいずれか1つの物品。
【0173】
実施の形態28
前記無機酸化物基板が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスから作られている、実施の形態23から27のいずれか1つの物品。
【0174】
実施の形態29
前記ガラスが、化学強化されており、250MPa以上のピークCSを持つ圧縮応力(CS)層を有し、該CS層は、前記第1の主面から約10マイクロメートル以上の圧縮深さ(DOC)まで該化学強化されたガラス内に延在する、実施の形態28の物品。
【0175】
実施の形態30
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施の形態23から29のいずれか1つの物品。
【0176】
実施の形態31
前記複数の交互の高屈折率層と低屈折率層が少なくとも4層であり、各層がケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物の1つ以上を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施の形態23から30のいずれか1つの物品。
【0177】
実施の形態32
前記キャッピング低屈折率層に隣接する前記高屈折率層が約70nm以上の物理的厚さを有し、該キャッピング低屈折率層が約80nm以上の物理的厚さを有する、実施の形態23から31のいずれか1つの物品。
【0178】
実施の形態33
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施の形態23から32のいずれか1つの物品。
【0179】
実施の形態34
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、該基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、
前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示し、
前記光学フイルム構造はさらに、体積で35%以上の前記高屈折率層を含み、
前記高屈折率層は、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して18GPa以上の最大硬度を示し、
さらに前記物品は、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、このa値およびb値の各々は、垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、物品。
【0180】
実施の形態35
前記高屈折率層が、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して21GPa以上の最大硬度を示す、実施の形態34の物品。
【0181】
実施の形態36
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施の形態34または実施の形態35の物品。
【0182】
実施の形態37
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施の形態1から11のいずれか1つの物品。
【0183】
実施の形態38
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施の形態12から22のいずれか1つの物品。
【0184】
実施の形態39
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施の形態23から33のいずれか1つの物品。
【0185】
実施の形態40
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施の形態34から36のいずれか1つの物品。
【0186】
実施の形態41
前面、背面、および側面を有する筐体、
前記筐体の少なくとも部分的に内部にあり、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板、
を備えた家庭用電子機器であって、
前記筐体の一部または前記カバー基板の少なくとも一方が、実施の形態1から40のいずれか1つの物品から作られている、家庭用電子機器。
【0187】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0188】
実施形態1
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0189】
実施形態2
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して10GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して11GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、前記光学フイルム構造の物理的厚さは約200nmから約450nmであり、さらに該物品は、0.6%未満の片面明所視平均反射率を示す、実施形態1に記載の物品。
【0190】
実施形態3
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態1または2に記載の物品。
【0191】
実施形態4
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態1または2に記載の物品。
【0192】
実施形態5
前記物品が、約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘りバーコビッチ圧子硬度試験によって測定して約12GPa以上の最大硬度を示す、実施形態1から4のいずれか1つに記載の物品。
【0193】
実施形態6
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施形態1から5のいずれか1つに記載の物品。
【0194】
実施形態7
前記光学フイルム構造が、ケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施形態1から6のいずれか1つに記載の物品。
【0195】
実施形態8
前記無機酸化物基板が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスから作られている、実施形態1から7のいずれか1つに記載の物品。
【0196】
実施形態9
前記ガラスが、化学強化されており、250MPa以上のピークCSを持つ圧縮応力(CS)層を有し、該CS層は、前記第1の主面から約10マイクロメートル以上の圧縮深さ(DOC)まで該化学強化されたガラス内に延在する、実施形態8に記載の物品。
【0197】
実施形態10
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施形態1から9のいずれか1つに記載の物品。
【0198】
実施形態11
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施形態1から10のいずれか1つに記載の物品。
【0199】
実施形態12
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記高屈折率層は、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して18GPa以上の最大硬度を示し、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0200】
実施形態13
前記高屈折率層が示す最大硬度が、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる前記硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して22GPa以上であり、前記光学フイルム構造の物理的厚さが約200nmから約450nmであり、さらに前記物品が、0.6%未満の片面明所視平均反射率を示す、実施形態12に記載の物品。
【0201】
実施形態14
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態12または13に記載の物品。
【0202】
実施形態15
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態12または13に記載の物品。
【0203】
実施形態16
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施形態12から15のいずれか1つに記載の物品。
【0204】
実施形態17
前記無機酸化物基板が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスから作られている、実施形態12から16のいずれか1つに記載の物品。
【0205】
実施形態18
前記ガラスが、化学強化されており、250MPa以上のピークCSを持つ圧縮応力(CS)層を有し、該CS層は、前記第1の主面から約10マイクロメートル以上の圧縮深さ(DOC)まで該化学強化されたガラス内に延在する、実施形態17に記載の物品。
【0206】
実施形態19
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施形態12から18のいずれか1つに記載の物品。
【0207】
実施形態20
前記複数の交互の高屈折率層と低屈折率層が少なくとも4層であり、各層がケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物の1つ以上を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施形態12から19のいずれか1つに記載の物品。
【0208】
実施形態21
前記キャッピング低屈折率層に隣接する前記高屈折率層の物理的厚さが約70nm以上であり、該キャッピング低屈折率層の物理的厚さが約80nm以上である、実施形態12から20のいずれか1つに記載の物品。
【0209】
実施形態22
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施形態12から21のいずれか1つに記載の物品。
【0210】
実施形態23
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記無機酸化物基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記光学フイルム構造はさらに、体積で30%以上の前記高屈折率層を含み、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0211】
実施形態24
前記光学フイルム構造はさらに、体積で50%以上の前記高屈折率層を含む、実施形態23に記載の物品。
【0212】
実施形態25
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態23または24に記載の物品。
【0213】
実施形態26
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態23または24に記載の物品。
【0214】
実施形態27
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施形態23から26のいずれか1つに記載の物品。
【0215】
実施形態28
前記無機酸化物基板が、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラスからなる群より選択されるガラスから作られている、実施形態23から27のいずれか1つに記載の物品。
【0216】
実施形態29
前記ガラスが、化学強化されており、250MPa以上のピークCSを持つ圧縮応力(CS)層を有し、該CS層は、前記第1の主面から約10マイクロメートル以上の圧縮深さ(DOC)まで該化学強化されたガラス内に延在する、実施形態28に記載の物品。
【0217】
実施形態30
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施形態23から29のいずれか1つに記載の物品。
【0218】
実施形態31
前記複数の交互の高屈折率層と低屈折率層が少なくとも4層であり、各層がケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物の1つ以上を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施形態23から30のいずれか1つに記載の物品。
【0219】
実施形態32
前記キャッピング低屈折率層に隣接する前記高屈折率層が約70nm以上の物理的厚さを有し、該キャッピング低屈折率層が約80nm以上の物理的厚さを有する、実施形態23から31のいずれか1つに記載の物品。
【0220】
実施形態33
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施形態23から32のいずれか1つに記載の物品。
【0221】
実施形態34
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、該基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、
前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示し、
前記光学フイルム構造はさらに、体積で35%以上の前記高屈折率層を含み、
前記高屈折率層は、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して18GPa以上の最大硬度を示し、
さらに前記物品は、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、このa値およびb値の各々は、垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、物品。
【0222】
実施形態35
前記高屈折率層が、前記無機酸化物基板上に約2マイクロメートルの物理的厚さを有する該高屈折率層が配置されてなる硬度試験積層体上で約100nmから約500nmの圧入深さに亘りバーコビッチ圧子硬度試験により測定して21GPa以上の最大硬度を示す、実施形態34に記載の物品。
【0223】
実施形態36
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施形態34または35に記載の物品。
【0224】
実施形態37
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施形態1から11のいずれか1つに記載の物品。
【0225】
実施形態38
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施形態12から22のいずれか1つに記載の物品。
【0226】
実施形態39
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施形態23から33のいずれか1つに記載の物品。
【0227】
実施形態40
前記物品が、900nmから1000nmの赤外スペクトルにおいて87%以上の片面平均透過率を示す、実施形態34から36のいずれか1つに記載の物品。
【0228】
実施形態41
前面、背面、および側面を有する筐体、
前記筐体の少なくとも部分的に内部にあり、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板、
を備えた家庭用電子機器であって、
前記筐体の一部または前記カバー基板の少なくとも一方が、実施形態1から40のいずれか1つに記載の物品から作られている、家庭用電子機器。
【0229】
実施形態42
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含む光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
前記物品は、約100nmの圧入深さで測定して8GPa以上の硬度または約100nmから約500nmの圧入深さ範囲に亘り測定して9GPa以上の最大硬度を示し、該硬度および該最大硬度は、バーコビッチ圧子硬度試験によって測定され、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【0230】
実施形態43
前記物品が、反射で約-10から+5のa値、および反射で-10から+2のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態42に記載の物品。
【0231】
実施形態44
前記物品が、反射で約-4から+4のa値、および反射で-6から-1のb値を示し、該a値および該b値の各々は、ほぼ垂直入射照明角度で前記光学フイルム構造に測定される、実施形態42に記載の物品。
【0232】
実施形態45
前記光学フイルム構造が、約-1000MPa(圧縮)から約+50MPa(引張)の範囲の残留応力を有する、実施形態42から44のいずれか1つに記載の物品。
【0233】
実施形態46
前記光学フイルム構造が、ケイ素含有酸化物およびケイ素含有窒化物を含み、該ケイ素含有酸化物が酸化ケイ素であり、該ケイ素含有窒化物が窒化ケイ素である、実施形態42から45のいずれか1つに記載の物品。
【0234】
実施形態47
前記光学フイルム構造上に配置された、洗浄し易いコーティング、ダイヤモンド状コーティング、および耐引掻性コーティングのいずれか1つ以上をさらに備える、実施形態42から46のいずれか1つに記載の物品。
【0235】
実施形態48
前記物品が、Alumina SCE試験にしたがって測定して、0.2%以下の正反射光除去(SEC)値を示す、実施形態42から47のいずれか1つに記載の物品。
【0236】
実施形態49
前記無機酸化物基板がガラスセラミック基板である、実施形態42から48のいずれか1つに記載の物品。
【0237】
実施形態50
前面、背面、および側面を有する筐体、
前記筐体の少なくとも部分的に内部にあり、制御装置、メモリ、および該筐体の前面にまたはそれに隣接したディスプレイを含む電気部品、および
前記ディスプレイ上に配置されたカバー基板、
を備えた家庭用電子機器であって、
前記筐体の一部または前記カバー基板の少なくとも一方が、実施形態42から49いずれか1つに記載の物品から作られている、家庭用電子機器。
【0238】
実施形態51
互いに反対の主面を有する無機酸化物基板、および
前記無機酸化物基板の第1の主面上に配置された光学フイルム構造であって、約50nmから500nm未満の物理的厚さを有し、該基板の第1の主面上に第1の低屈折率層がある複数の交互の高屈折率層と低屈折率層およびキャッピング低屈折率層を有する光学フイルム構造、
を備えた物品であって、
各層は、ケイ素含有酸化物、ケイ素含有窒化物およびケイ素含有オキシ窒化物の1つ以上を含み、
前記低屈折率層の屈折率は、該低屈折率層の屈折率が約1.8未満であるような前記無機酸化物基板の屈折率の範囲内にあり、前記高屈折率層は、1.8超の屈折率を有し、
前記光学フイルム構造はさらに、体積で30%以上の前記高屈折率層を含み、
さらに前記物品は、1%未満の片面明所視平均反射率を示す、物品。
【符号の説明】
【0239】
100 物品
110 基板
112、114 主面
116、118 覆面
120 反射防止コーティング
120A、120B、120C 複数の層
122 反射防止表面
130 複数の周期
130A 低RI層
130B 高RI層
131 キャッピング層
140 追加のコーティング
400 家庭用電子機器
402 筐体
404 前面
406 背面
408 側面
410、564、576、592 ディスプレイ
412 カバー基板
540 乗物内装
544、548、552 乗物内装システム
556 センターコンソールベース
560、572、588 表面
568 ダッシュボードベース
580 計器盤
586 ハンドルベース
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10