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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054116
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】脂肪結合性組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20230406BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230406BHJP
   A23L 2/39 20060101ALI20230406BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230406BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A23L33/125
A23L2/00 F
A23L2/00 Q
A23L2/00 R
A23L2/52
A23L5/00 D
A23L2/00 T
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023023500
(22)【出願日】2023-02-17
(62)【分割の表示】P 2021017313の分割
【原出願日】2011-03-13
(31)【優先権主張番号】61/313,734
(32)【優先日】2010-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512237257
【氏名又は名称】イーストポンド・ラボラトリーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラヨシュ・センテ
(57)【要約】
【課題】シクロデキストリンおよび/またはアミロースなど、脂肪分子と結合することができる1種または複数のホスト分子を含む摂取可能な飲料または他の食品は、ホスト分子が、動物の胃腸管に送達された後に脂肪分子と包接複合体を形成することを可能にし、したがってホストは、その後に動物の胃腸管において中性脂肪分子と密接に結合することができる。
【解決手段】脂肪結合性組成物は、ホスト分子とゲスト分子の包接複合体を含有する。ゲスト分子としては、1種または複数のアミノ酸、ビタミン、香味剤または関連化合物、ルチン、ベタニン、それらの誘導体、およびそれらの混合物が挙げられる。脂肪結合性組成物は、例えば錠剤または粉末の形をとることができ、食品または飲料製品に組み込むことができる。粉末または錠剤の形の場合、組成物は、カーボネーション発生成分を場合によっては含有してもよく、炭酸水または非炭酸水に溶解させることができる。脂肪結合性組成物は、動物によって摂取された脂肪と結合する方法で使用することもでき、その方法は、組成物またはそれを含む食品もしくは飲料製品を動物に摂取させるステップを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する食品組成物。
【請求項2】
組成物が、飲料である食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項4】
組成物が、デンプンを含む食品である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項5】
組成物が、穀物粒またはデンプン質の根から調製された食品である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む、飲料を調製するための組成物であって、
生理的条件下でゲスト分子が脂肪分子で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合する組成物。
【請求項7】
組成物が乾燥固体であり、水を組成物に添加すると、飲料が得られる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、錠剤、ペレット、顆粒、または粉末の形をとる、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、水を添加すると発泡性飲料になる粉末である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と、栄養補助食品、香味改良剤または香気改良剤であるゲスト分子であって、生理的条件下で脂肪分子で置換されて次に脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品組成物を調製する方法であって、
a)ホスト分子とゲスト分子を、ゲスト-ホスト包接複合体を形成するのに適した条件下で合わせるステップと、
b)ゲスト-ホスト包接複合体を精製および単離するステップと、
c)精製されたゲスト-ホスト包接複合体と1種または複数の追加の成分を合わせて、食品組成物を得るステップと
を含む方法。
【請求項11】
ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、複合体形成していないゲスト分子を除去することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、溶液、懸濁液、またはスラリーを調製することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、ドライブレンドプロセスを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ホスト分子とゲスト分子を合わせるステップが、飽和溶液の調製を含み、ゲスト-ホスト包接複合体を精製するステップが、包接複合体の結晶化および濾過を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
動物の消化管で吸収される脂肪を低減する方法であって、
a)α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味剤、香味改良剤、芳香性物質または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品を調製するステップであって、ホスト分子およびゲスト分子が、動物の消化管内でゲスト分子がホスト分子から実質的に遊離されかつホスト分子が消化管に存在する脂肪分子と第2のゲスト-ホスト包接複合体を形成するように選択されるステップと、
b)その後の摂取のために、調製された食品を動物に供給するステップであって、食品の摂取により、脂肪分子がホスト分子に実質的に不可逆的に結合し、それによって消化管から除去されるステップと
を含む方法。
【請求項16】
食品を調製するステップが、飲料であるかまたは水と混合すると飲料になる乾燥固体である食品組成物を調製することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脂肪分子とホスト分子との実質的に不可逆的な結合によって、水不溶性のゲスト-ホスト包接複合体が生成する、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
包接複合体は、2種以上の化合物間で形成された化学複合体であり、第1化合物(ホストと呼ぶこともある)が、空間を画定する構造を有し、第2化合物(ゲストと呼ぶこともある)の分子がその空間に入り込み、第1化合物と非共有結合で結合する。得られるゲスト-ホスト複合体は、包接化合物、アダクト、またはホスト分子と呼ばれることがありうる。ホスト分子とゲスト分子は可逆的または不可逆的に結合することができる。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンはホスト分子であって、異なる種々のゲスト化合物と包接複合体を形成することができる。シクロデキストリンは、バチルス・マセランス(Bacillus macerans)または近縁のバチルス(Bacillus)菌株などのいくつかの有機体から得られる酵素であるシクロデキストリン-グリコシルトランスフェラーゼの作用によって、加水分解デンプンから調製することができる炭水化物である。シクロデキストリンは、6個以上のα-1,4-結合グルコースユニットを含む環状マルトオリゴ糖構造を有する。最もよく見られるシクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ-シクロデキストリンであり、それぞれ6個、7個、および8個のグルコースユニットが結合しているものである。水性条件下で、シクロデキストリンは、(以下に、γ-シクロデキストリンについて概略的に示すように)トロイドといわれる形態をとることがあり、小さい方の開口部にある第2級ヒドロキシル基と大きい方の開口部にある第1級ヒドロキシル基が、周囲の溶媒に曝露されている。この形態のため、トロイドの内部は疎水性ではないものの、周囲の水性の環境よりかなり親水性ではなく、したがって脂肪や脂肪酸などの疎水性分子を取り込む(すなわち、結合)することができる。一方、外部は、シクロデキストリン(およびその包接複合体)が実質的に水溶性になるのに十分なほど親水性である。
【0003】
【化1】
【0004】
アミロースも同様に、ゲスト化合物と包接複合体を形成することができるホスト分子である。アミロースはデンプンの2成分のうちの一方であり(他方はアミロペクチンである)、数百から何千ものグルコースサブユニットを含み得る。アミロース分子は、グルコースサブユニット6個で完全ならせん状サブユニット1個を構成して、らせんを形成する傾向がある。シクロデキストリンと同様に、アミロースは脂肪酸と結合して、包接複合体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,890,549号
【特許文献2】米国特許第7,105,195号
【特許文献3】米国特許第7,166,575号
【特許文献4】米国特許第7,423,027号
【特許文献5】米国特許第7,547,459号
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0161526号
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0116837号
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0299166号
【特許文献9】米国特許出願公開第2009/0023682号
【特許文献10】特開昭60-094912
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】SuzukiおよびSato、「Nutritional significance of cyclodextrins:indigestibility and hypolipemic effect of α-cyclodextrin」、J. Nutr. Sci. Vitaminol.、(Tokyo 1985年;31:209~223頁)
【非特許文献2】Szejtliら、Staerke/Starch、27(11)、1975年、368~376頁
【非特許文献3】Hinrichs, W.ら、「An Amylose Antiparallel Double Helix at Atomic Resolution」、Science、(1987年)、238(4824):205~208頁
【非特許文献4】Atamna, H.ら、J. Biol. Chem.、275巻、10号、6741~6748頁、2000年
【非特許文献5】Carneyら、(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、88、3633~3636頁
【非特許文献6】Yanagitaら、「Taurine reduces the secretion of apolipoprotein B100 and lipids in HepG2 cells」、Lipids in Health and Disease、2008年10月17日;7:38
【非特許文献7】Zhangら、「Beneficial effects of taurine on serum lipids in overweight or obese non-diabetic subjects」、Amino Acids、2004年6月;26(3):267~71頁
【非特許文献8】Choiら、「The effect of dietary taurine supplementation on plasma and liver lipid concentrations and free amino acid concentrations in rats fed a high-cholesterol diet」、Advances in Experimental Medicine and Biology、2006年;583:235~42頁
【非特許文献9】Raeら、2003年、「Oral creatine monohydrate supplementation improves cognitive performance;a placebo-controlled, double-blind cross-over trial」、Proceedings of the Royal Society of London-Biological Sciences、(2003年)、270(1529):2147~50頁
【非特許文献10】McMorrisら、「Creatine supplementation and cognitive performance in elderly individuals」、Aging, Neuropsychology, and Cognition、(2007年)、14:517~528頁
【非特許文献11】K.A. Connorsら、J. Pharm. Sci., 65(3)、379~83頁、1976年
【非特許文献12】Suzuki, M.ら、Chem. Pharm. Bull.、36.、720頁、1988年
【非特許文献12】樫野ら、「シクロデキストリンと油性物質との相互作用」、日本家政学会誌、56(8)、533~539頁(日本語)、2005年
【非特許文献13】L. Szente、「Preparation of Cyclodextrin Complexes」 in 「Comprehensive Supramolecular Chemistry」、3巻、Cyclodextrins、J SzejtliおよびT Osa編、Elsevier Science、Pergamon Press、1996年、243~251頁
【非特許文献14】Szejtli, J.、Cyclodextrin Technology、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht, The Netherlands、1988年、80~104頁
【非特許文献15】Szejtli, J.、Cyclodextrins and Their Inclusion complexes、Akademiai Kiado、Budapest、1982年、95~110頁
【非特許文献16】Szejtli, Jら、Acta Chim. Acad. Sci. Hung.、1979年、99(4)、447~52頁
【非特許文献17】Higuchiら、Advances in Analytical Chemistry and Instrumentation、C.N. Reilly編、Wiley, New York、1965年、4巻、117~212頁
【非特許文献18】Lewisら、「Thermodynamics of binding of guest molecules to alpha-and beta-cyclodextrins」、J. Chem. Soc. Perkin. Trans. 2、(15)、2081~2085頁、1973年
【非特許文献19】Reinecciusら、「Encapsulation of flavors using cyclodextrins:comparison of flavor retention in alpha, beta, and gamma types」、Journal of Food Science、67(9)、3271~3279頁(2002年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シクロデキストリンおよび/またはアミロースなど、脂肪分子と結合することができる1種または複数のホスト分子を含む摂取可能な飲料または他の食品は、ホスト分子が、動物の胃腸管に送達された後に脂肪分子と包接複合体を形成することを可能にし、したがってホストは、その後に動物の胃腸管において中性脂肪分子と密接に結合することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前もって形成された、弱く会合したゲスト分子が包接されるゲスト-ホスト複合体を利用し、したがってゲスト分子を脂肪分子で置換および/または入れ換えることができれば望ましいことになる。特に、弱く会合したゲスト分子が栄養面または健康面での利益を有する場合あるいは得られる食品の香味および/または香気を向上させることができる場合、食品は、ゲスト分子の送達機構として機能できることはもちろんのこと、脂肪分子と結合するホストを供給するものであり、それによって多数の有利な特性がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非炭酸水および炭酸水に溶解するα-シクロデキストリンの凝集の程度を示す図である。
図2】本発明の選択された実施形態による食品組成物を調製する方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の選択された実施形態によって、動物の消化管による脂肪の吸収を低減する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、ゲスト分子とホスト分子成分とで形成された包接複合体を含有する脂肪結合性組成物の例を提供する。
【0011】
脂肪結合性組成物は食品組成物の形をとることができ、食品には、α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味改良剤(flavor enhancer)、または香気改良剤(aroma enhancer)であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体が含まれる。食品の摂取後に、ゲスト分子と脂肪分子が生理的条件下で置換され、次いで脂肪分子がホスト分子に実質的に不可逆的に結合する。ただし、ゲスト分子がホスト分子と弱くかつ可逆的に会合していることを条件とする。
【0012】
食品組成物としては、飲料調製用の混合物を挙げることができる。このような飲料組成物には、α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味改良剤、または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体が含まれ得る。また、ゲストおよびホストの性質は、ゲスト分子が、ホスト分子と弱くかつ可逆的に会合し、かつ摂取された後に、ゲスト分子と脂肪分子が生理的条件下で置換され、次いで脂肪分子が実質的に不可逆的に結合するように選択される。
【0013】
上述されたものなどの食品組成物は、図2のフローチャート10に示されているものなどの方法に従って調製することができる。この例示的な方法は、a)12において、ホスト分子とゲスト分子を、ゲスト-ホスト包接複合体を形成するのに適した条件下で混合するステップと、b)14において、ゲスト-ホスト包接複合体を精製および単離するステップと、c)16において、精製されたゲスト-ホスト包接複合体と1種または複数の追加の成分を混合して、食品組成物を得るステップとを含む。
【0014】
本開示の食品組成物は、摂取者の消化管による食物脂肪の吸収を防止するのに実質的に有用であり、脂肪の吸収を低減する方法の役に立つ。食物脂肪の吸収を防止する例示的な方法を図3のフローチャート18に示す。この例示的な方法は、a)20において、α-またはβ-シクロデキストリンであるホスト分子と栄養補助食品、香味改良剤、または香気改良剤であるゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含む食品を調製するステップであって、ホスト分子およびゲスト分子が、動物の消化管内で、ゲスト分子がホスト分子から実質的に遊離されかつホスト分子が消化管に存在する脂肪分子と第2のゲスト-ホスト包接複合体を形成するように選択されるステップと、b)22において、その後の摂取のために、調製された食品を動物に供給するステップであって、食品の摂取により、脂肪分子がホスト分子に実質的に不可逆的に結合し、それによって消化管から除去されるステップとを含む。
【0015】
ホスト分子がα-またはβ-シクロデキストリンであり、ゲスト分子が栄養補助食品、香味剤、香味改良剤、芳香性物質または香気改良剤である、ホスト分子とゲスト分子とのゲスト-ホスト包接複合体を含有する本明細書に開示される食品組成物および飲料ミックスは、特に有用である。特に、これらの複合体は、ゲスト-ホスト包接複合体の結合定数が約10~100M-1となり、かつ同じホスト分子と脂肪酸との複合体の結合定数が約500~5,000M-1となるように調製することができる。
【0016】
本明細書で論じられたように、ホスト分子は、生理的条件下で脂肪分子と密接に結合する化合物である。好適なホスト分子の例としては、シクロデキストリンおよび/またはアミロース分子が挙げられる。包接複合体のホスト分子は、ホスト分子と少なくともある程度ホスト分子の内部で結合するゲスト分子のホストとして作用する。ゲスト分子は、包接複合体が生理的条件下などの水性環境で存在するとき、ホスト分子から解離することができる。
【0017】
脂肪分子と密接に結合するホスト分子を含む製品およびそれを使用する方法の例については、米国特許第6,890,549号、第7,105,195号、第7,166,575号、第7,423,027号、および第7,547,459号;米国特許出願公開第2004/0161526号、第2007/0116837号、第2008/0299166号、および第2009/0023682号;特開昭60-094912号;SuzukiおよびSato、「Nutritional significance of cyclodextrins:indigestibility and hypolipemic effect of α-cyclodextrin」、J. Nutr. Sci. Vitaminol.(Tokyo 1985年;31:209~223頁);およびSzejtliら、Staerke/Starch、27(11)、1975年、368~376頁に記載されており、各々の開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする。
【0018】
ゲスト分子は、典型的にはホスト分子と弱く会合しているだけであり、弱い複合体形成剤と呼ばれることもある。動物によって摂取されると、ゲスト分子は、ホスト分子から解離することができ、それによって遊離の(すなわち、複合体を形成していない)ホスト分子が残され、このホスト分子は、動物の胃腸管においてゲスト分子以外の脂肪分子および関連した化学単位に結合することができる。
【0019】
本明細書に開示される脂肪結合性組成物は、1種または複数の香味成分、カーボネーション発生成分(carbonation forming component)(飲料製品を製造する際に使用するため)、および/または追加の栄養もしくは香味改良成分などの他の成分を場合によっては含有してもよく、脂肪または脂肪由来成分を含んでも含まなくてもよい。ホスト分子としては、アミロース(例えば、アセチル化アミロース)、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、シクロデキストリン誘導体、またはアミロース、シクロデキストリンもしくはシクロデキストリン誘導体の所望の任意の混合物を含めて、適切な任意のホスト分子を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
ゲスト分子としては、アミノ酸、ビタミン、香味剤、一部のグリコシド、N-アルキル-ヒドロキシルアミン、香味および香気改良剤、またはホスト分子と弱い複合体を形成する他の任意の好適な化合物を挙げることができる。得られた弱い複合体は、所望通りに食品の摂取前、摂取時または摂取後に、ホスト分子がその複合体から解離し、選択的に脂肪または脂肪由来化学物質と複合体形成することを可能にする。本開示は、これらの包接複合体を含む飲料および食品を作製する方法も提供する。
【0021】
本明細書に開示される脂肪結合性組成物は、様々な形のいずれでも提供することができる。脂肪結合性組成物のなかには、固形粉末、錠剤、カプセル、カプレット、顆粒、ペレット、ウェーハ、粉末、インスタント粉末飲料、発泡性粉末、もしくは発泡錠の形のもの、またはそれらに組み込まれたものもあり得る。脂肪結合性組成物のなかには、水性飲料もしくは他の食品の形のもの、またはそれらに組み込まれたものもあり得る。これらの脂肪結合性組成物は、貯蔵時にかなり安定なままである包接複合体を組み込むことができ、したがって、動物によって摂取される前に、ホスト分子はゲスト分子から解離せず、脂肪または脂肪酸などの疎水性化合物とより強い複合体を形成する。ホスト分子が、摂取より前に疎水性化合物と複合体を形成することになれば、ホスト分子が胃腸管内で脂肪と結合する能力が損なわれ、それによってその有利な特性が低減される恐れがある。例えば、脂肪または脂肪酸などの疎水性化合物のなかには、脂肪結合性組成物から選択的および特異的に排除されるものもある。
【0022】
あるいは、脂肪結合性組成物は、このような疎水性化合物を少量含有してもよく、またはこのような疎水性化合物から物理的に分離されるか、もしくは脂肪結合性組成物中に存在するこのような疎水性化合物のいずれにも結合しないように選択される包接複合体を含有してもよい。
【0023】
脂肪結合性組成物は限定されるものではないが、例えば、穀物粒またはデンプン質の根に由来するデンプンを含む食品であるデンプン質の食品などが挙げられる。デンプン質の食品としては、栄養バー、スナックバー、朝食用シリアル、パンケーキ、ワッフル、マフィン、フルーツ入りパストリー、トルティーヤ、トウモロコシチップ、トルティーヤチップ、スナッククラッカー、パン、ケーキ、クッキー、パイなどを挙げることができる。非デンプン質の食品の形をした脂肪結合性組成物は限定されるものではないが、例えば、フライドポテト、天ぷら、野菜ハンバーグ、リフライドビーンズ、ホムス、タヒニ、ポテトチップ、乳製品(例えば、ミルク、クリーム、プディング、バター、アイスクリーム、チーズ、プロセスチーズ製品、ヨーグルト、ヨーグルト製品など)、卵製品、および肉製品など(例えば、調理された牛肉、仔羊肉、豚肉、家禽肉、シーフード製品、フランクフルトソーセージ、デリスライス(deli slice)、ソーセージ、フィッシュスティック、チキンフィンガーなど)を挙げることができる。脂肪結合性組成物は、チューインガム、チョコレート、および棒付きキャンデー、口臭消しのミントキャンデーまたは食後のミントキャンデーなどのハードキャンデーを含むがこれらに限定されない菓子製品の形とすることもできる。脂肪結合性組成物は、グレイビー、ソース、サラダドレッシング、マヨネーズなどを含むがこれらに限定されない調味料の形とすることもできる。食品の上記の例はすべて、選択的に脂肪を含むことができ、あるいは選択的に低脂肪または無脂肪とすることができる。
【0024】
本開示は、ヒトなどの動物によって摂取された脂肪と結合する方法も提供する。例えば、一部の方法は、(a)ゲスト分子がホスト分子と複合体形成することによって生成した包接複合体を溶解することで、飲料を調製するステップであって、ホスト分子が生理的条件下でゲスト分子から解離し、脂肪分子など近くの疎水性分子と包接複合体を形成することができるステップと、(b)動物にその飲料を経口摂取させるステップであって、その後、脂肪または脂肪誘導体が動物の胃腸管で吸収される前に、ホスト分子はゲスト分子から解離し、脂肪または脂肪誘導体など近くの疎水性分子に密接に結合するステップとを含みうる。ゲスト分子としては、本開示に記載されるゲスト分子として有用であるための必要な結合親和性を示すことを条件として、1種または複数のアミノ酸、ビタミン、香味剤、グリコシド、またはN-アルキル-ヒドロキシルアミンを挙げることができる。
【0025】
I.ホスト分子
ホスト分子としては、(a)ゲスト分子と結合して、第1の包接複合体を形成し、(b)生理的条件下でゲスト分子から容易に解離し、(c)疎水性分子と密接に結合して、生理的条件下で近くの疎水性分子と第2の包接複合体を形成することができる適切な任意の分子を挙げることができる。ホスト分子の非包括的な例としては、アミロース、アミロース誘導体、シクロデキストリン(α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ-シクロデキストリンを含むがこれらに限定されない)、シクロデキストリン誘導体、またはアミロース、シクロデキストリンもしくはシクロデキストリン誘導体の任意所望の混合物を挙げることができる。α-シクロデキストリンおよびβ-シクロデキストリンが、本開示によるホスト分子として特に有用であると確認された。
【0026】
ホスト分子がアミロース成分の形をとる場合、アミロース成分は、重合度(DP)として表されるグルコースユニットをDP=10~900、より好ましくはDP=20~200、最も好ましくはDP=30~80の範囲で含むことができる。アミロース誘導体としては、アセチル化アミロースを挙げることができるが、これに限定されるものではない。好ましくは、アミロース成分は、脂肪分子などの疎水性分子と結合するための中央の空洞を画定するらせん状配列の、α-1,4-グリコシド結合によって結合されたD-グルコピラノースを含む構造を有することができる。例えば、V-アミロースのA型およびB型デンプンらせんとしては、中央の空洞を画定する平行な左巻き二重らせんを挙げることができる。アミロース包接複合体のらせんは、ホスト-ゲスト相互作用により生み出される疎水力、隣接するアミロース中のグルコース間の分子間水素結合、およびらせんの隣接するターンにより形成される分子内水素結合によって安定化されうる。Hinrichs, W.ら、「An Amylose Antiparallel Double Helix at Atomic Resolution」、Science、(1987年)、238(4824):205~208頁を参照のこと。その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする。アミロースホスト分子を使用して、所望のゲスト分子が低分子量であり、一般的により疎水性である脂肪結合性組成物を製造することができる。例えば、アミロースホスト分子を使用して、香味剤、着色剤、ビタミン、アミノ酸および/またはアミンの非限定的な例など、低分子量ではあるが、より親水性であるゲスト分子と包接複合体を形成することができる。
【0027】
アミロースホスト分子を含有する脂肪結合性組成物は、脂肪結合性組成物の形に応じて様々な濃度のアミロース成分を含有することができる。アミロースホスト分子を含有する脂肪結合性組成物が固体の形をとる場合、アミロース成分は、好ましくは約10~90%(w/w)または約15~70%(w/w)または約15~60%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、アミロース成分は約10~50%(w/w)または約15~40%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。最も好ましくは、アミロース成分は、約20~25%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。アミロースホスト分子を含有する脂肪結合性組成物が水性飲料の形をとる場合、好ましくは、アミロース成分は約0.1~75%(w/v)または約1~50%(w/v)または約1~25%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、シクロデキストリン成分は約1~10%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。最も好ましくは、シクロデキストリン成分は5~8%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。
【0028】
ホスト分子がシクロデキストリン成分の形をとる場合、シクロデキストリンを、選択されたゲスト分子および標的の疎水性分子との所望の結合特性に基づいて選択することができる。許容できるシクロデキストリンは限定されるものではないが、例えば、政府規制当局によって認可された形の市販α-、β-およびγ-シクロデキストリンなどを挙げることができ、これらは、空洞を有するトロイド状構造にα-(1,4)-グリコシド結合で連結された6個、7個、または8個のグルコースユニットから構成される。グルコースユニットの数によって、空洞の内法およびその容積が決まる。典型的には、シクロデキストリン化合物は、疎水性分子またはその一部分がシクロデキストリン空洞内に包含されるように様々な疎水性分子と複合体を形成することができ、それによって複合体を形成したゲスト分子の物理-化学的特性に影響を及ぼす。シクロデキストリン成分は、選択されたゲスト分子と第1の包接複合体を形成し、(水性環境などで)その物質と解離した後、脂肪または脂肪由来分子など他の標的疎水性分子と第2の包接複合体を形成するように選択されうる。シクロデキストリン成分の所望の他の特性としては、脂肪の固定を実現するために、生理的条件下で強く凝集した形の水不溶性包接複合体を脂肪酸および他の脂質と形成することを挙げることができる。
【0029】
一般に、α-シクロデキストリンやβ-シクロデキストリンなどの狭い空洞のシクロデキストリンは、直鎖脂肪酸およびグリセリドと複合体を形成し、直鎖脂肪酸およびグリセリドを固定するのに最も有効なシクロデキストリンである。γ-シクロデキストリンは、飽和脂肪酸との複合体形成および飽和脂肪酸の固定には有効でないことがありうるが、不飽和脂肪酸(すなわち、脂肪酸分子中に2個、3個またはそれ以上の二重結合を有する脂肪酸)とはうまく複合体を形成する。本明細書では、複合体形成は、シクロデキストリンとゲスト分子との間の可逆的な非共有結合性相互作用、すなわちシクロデキストリン空洞とゲスト分子との間の寸法の適合状態(dimensional fit)を指す。シクロデキストリン分子の親油性空洞は、幾何学的に適合する疎水性有機分子に微小環境を提供し、本明細書で包接複合体と呼ばれる安定した保護超分子系を形成する。包接複合体の形成時に、共有結合の開裂も形成も行われない。
【0030】
複合体形成の主な駆動力は、シクロデキストリン空洞からの水分子の排除に伴うエンタルピーの放出であると考えられる。水分子は、溶液として存在している疎水性のより高いゲスト分子によって排除されて、無極性-無極性結合およびシクロデキストリン環歪みの減少が達成され、この分子の複合体形成によって、より低いエネルギー状態のより安定した化合物が得られる。複合体形成には、ゲスト分子をシクロデキストリン空洞に引き込む好ましい正味エネルギー駆動力がなければならない。ホスト分子内でのゲスト分子の複合体形成は、溶液状態での動的方法である。結合定数は、ホスト-ゲスト複合体がいかによく適合するか、および水素結合、疎水的相互作用などの特異的な局所的分子相互作用の程度を決定する際に重要なパラメーターである。
【0031】
いくつかの実施形態において、選択されたシクロデキストリン成分は、α-シクロデキストリンまたはα-シクロデキストリン誘導体が直鎖脂肪酸ならびにモノグリセリドおよびジグリセリドと安定した包接複合体を形成するのに幾何学的に適していることを考えると、α-シクロデキストリンまたはα-シクロデキストリン誘導体を主成分とすることができる。α-シクロデキストリンが、一般に脂肪酸およびグリセリドと不溶性の複合体を形成することが有利である。
【0032】
脂肪結合性組成物が固体の形をとる場合、シクロデキストリン成分は、約10~90%(w/w)または約15~70%(w/w)または約15~60%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、シクロデキストリン成分は約10~50%(w/w)または約15~40%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、シクロデキストリン成分は約20~25%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。
【0033】
脂肪結合性組成物が水性飲料の形をとる場合、シクロデキストリン成分は、約0.1~75%(w/v)または約1~50%(w/v)または約1~25%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、シクロデキストリン成分は約1~10%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、シクロデキストリン成分は、5~8%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。
【0034】
シクロデキストリン誘導体としては、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、アルコキシアルキル化、アセチル化、第四級アンモニウム塩、カルボキシアルキル化、マルトシル化、およびグルコシル化誘導体を挙げることができる。シクロデキストリン誘導体のアルキル基は、直鎖または分枝状とすることができ、炭素1個から3個の主鎖長を有することができ、合計1個から6個、好ましくは1個から3個の炭素原子を有することができる。シクロデキストリン誘導体は限定されるものではないが、一部の例としては、メチル化β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、水溶性β-シクロデキストリンポリマー、部分アセチル化α-、β-および/またはγ-シクロデキストリン、エチル化α-、β-および/またはγ-シクロデキストリン、カルボキシアルキル化β-シクロデキストリン、α-、β-および/またはγ-シクロデキストリンの第四級アンモニウム塩、分枝状(グルコシル化、マルトシル化)α-、β-およびγ-シクロデキストリン、ならびにこれら誘導体の任意の組合せの混合物を1種または複数のシクロデキストリンと一緒にまたは組み合わせて挙げることができる。シクロデキストリンの混合物の例としては、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンの重量比範囲がそれぞれ約1:1:1から2:2:1の組合せを挙げることができる。シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、およびそれらの混合物の水和物および/または非晶形を含むがこれらに限定されない水和物結晶質形および/または非晶形とすることができる。
【0035】
上述されたように、ホスト分子を、一つには動物の胃腸管などの標的環境に位置している疎水性分子などの標的分子に対する親和性に基づいて選択することができ、これは、標的分子が固体廃棄物として動物の身体から排出されるように標的分子の結合および固定には望ましいであろう。好ましくは、このような目的で選択されたホスト分子は、標的化合物に対する極小結合定数が約500~5,000M-1の範囲、さらに具体的には約600~1,000M-1の範囲、好ましくはこれらの範囲内で約800M-1以上でありうる。
【0036】
II.ゲスト分子
ゲスト分子は、選択されたホスト分子と包接複合体を形成するように選択されうるが、包接複合体の結合定数は比較的低い。ゲスト分子は、ゲスト分子としてホスト分子の空洞でホスト分子に結合することができ、かつ/または選択されたゲスト分子がホスト分子空洞の外縁部もしくはその周りの場所でホスト分子に結合するいわゆる外圏複合体を形成することができる。例えば、選択されたゲスト分子を、シクロデキストリン円環体の外縁部の第一級および/または第二級のヒドロキシル基またはその周りでシクロデキストリン分子に結合させることができる。ゲスト分子は、結合定数が約10から800M-1、好ましくは30からl50M-1、より好ましくは40から100M-1の範囲の選択されたホスト分子に結合するように選択されうる。それによって、ゲスト分子はホスト分子の空洞でプレースホルダーとして作用することができ、また要望通り摂取前、摂取時および/もしくは摂取後にシクロデキストリンが脂肪および脂肪由来成分と結合することを可能にするために、特に水性環境でホスト分子から解離する能力を有することができる。さらに、選択されたシクロデキストリンと外圏複合体を形成するゲスト分子のなかには、水中において隣接する2つのシクロデキストリン分子間に形成される分子間水素結合を破壊することによって、溶解し水和しているシクロデキストリン分子の自己凝集を低減または防止することができるものもある。
【0037】
本発明の特定の実施形態において、ゲスト-ホスト包接複合体の結合定数は約10~100M-1であり、同じホスト分子と脂肪酸との複合体の結合定数は約500~5,000M-1である。
【0038】
ゲスト分子としては、アミノ酸、各種ビタミン、各種香味剤および関連化合物、各種着色剤および関連化合物、一部のグリコシド、N-アルキル-ヒドロキシルアミン、ならびにこれら物質の組合せまたは混合物を挙げることができる。これらの物質は、要望通り摂取前、摂取時および/または摂取後に、ホスト分子が脂肪または脂肪由来成分と複合体形成することを可能にするために、ホスト分子から解離できるようにホスト分子と弱い複合体を形成することができる。好ましいゲスト分子としては、香味剤、香味剤関連化合物、ならびにアスコルビン酸、ナイアシンおよびナイアシンアミドを含むがこれらに限定されない水溶性ビタミンを挙げることができる。
【0039】
アミノ酸は限定されるものではないが、例えば、アスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、プロリン、トレオニン、テアニン、システイン、シスチン、アラニン、バリン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、セリン、リシン、ヒスチジン、オルニチン、メチオニン、カルニチン、アミノ酪酸(α-、β-およびγ-異性体)、グルタミン、ヒドロキシプロリン、タウリン、ノルバリン、サルコシン、それらの塩、およびそれらの混合物などを挙げることができる。また、これらのアミノ酸のN-アルキルC1~C3およびN-アシル化C1~C3誘導体、ならびにアミノ酸またはその誘導体の任意の混合物も挙げられる。
【0040】
ビタミンは限定されるものではないが、例えば、ニコチンアミド(ビタミンB3)およびピリドキサール塩酸塩(ビタミンB6)、アスコルビン酸、食用アスコルビルエステル、リボフラビン、ナイアシンアミド、ナイアシン、ピリドキシン、チアミン、ビタミンB9、葉酸、ホラート、プテロイル-L-グルタミン酸、プテロイル-L-グルタマート、それらの塩、ならびにそれらの混合物などを挙げることができる。
【0041】
香味剤は限定されるものではないが、例えば、リンゴ、アンズ、バナナ、ブドウ、クロフサスグリ、ラズベリー、モモ、セイヨウナシ、パイナップル、セイヨウスモモ、オレンジ、およびバニラ香味剤などを挙げることができる。香味剤関連化合物の例としては、酢酸ブチル、イソ吉草酸ブチル、酪酸アリル、吉草酸アミル、酢酸エチル、吉草酸エチル、酢酸アミル、マルトール、酢酸イソアミル、エチルマルトール、イソマルトール、ジアセチル、プロピオン酸エチル、アントラニル酸メチル、酪酸メチル、酪酸ペンチル、およびペンタン酸ペンチルが挙げられる。
【0042】
香味および食味改良剤は限定されるものではないが、例えば、マルトール、エチル化マルトール、ジナトリウム-イノシナート-5'-モノホスファート、5'-グアニル酸ナトリウムおよび/またはカリウム、グルタミン酸ナトリウムおよび/またはカリウム、L-ロイシンなどを挙げることができる。
【0043】
適切な香味剤および関連化合物に関して、下記の実施例9には、いくつかの被検化合物についてみかけの結合定数を測定した結果が記載されていることに留意すべきである。これらの結合定数は、選択されたシクロデキストリンと弱い複合体を形成することを示唆するのに大体適しているようである。したがって、これらの被検化合物は、他の化合物が香味成分の目的とゲスト分子の目的の両方に役立つこともあるが、これらの目的の両方に役立つことが可能である。この点で、香味剤は、結合定数が約10から800M-1、好ましくは30から150M-1、より好ましくは40から100M-1の範囲の選択されたシクロデキストリン成分に弱く結合するように選択されうる。
【0044】
着色剤は限定されるものではないが、例えば、より水溶性で、より低親油性であることが知られているものなどを挙げることができる。そのような特性を有する着色剤の例は、ブルガキサンチン、ミラキサンチン、ポルチュラキサンチン(portulaxanthin)およびインジカキサンチンを含めて、ベタシアニンやベタキサンチンなどのベタレイン;オーランチニジン、シアニジン、デルフィニジン、エウロピニジン、ルテオリニジン、ペラルゴニジン、マルビジン、ペオニジン、ペツニジン、ロシニジンなどのアントシアニジン、およびこれらアントシアニジンの対応するすべてのアントシアニン(またはグルコシド);ならびにクルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミンなどのフェノール性クルクミノイドを含めたウコン型着色剤である。親油性着色剤は、シクロデキストリンと複合体を形成することによって、所望の脂肪結合を妨害する傾向になるので避けるべきである。
【0045】
グリコシドは限定されるものではないが、例えば、ルチンおよびベタニンを挙げることができる。ベタニンに関して、これはビートから得ることができるグリコシド性赤色食用色素であることに留意すべきである。ベタニンは、潜在的な抗老化特性を示し、かつフリーラジカルから防護することが報告されている。
【0046】
N-アルキル-ヒドロキシルアミンとしては、アルキル基が1個から4個の炭素原子を有する(以下のアルキル基:メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、n-ブチル、およびt-ブチルである)化合物を挙げることができる。好ましいN-アルキル-ヒドロキシルアミンとしては、N-t-ブチル-ヒドロキシルアミンおよびN-メチル-ヒドロキシルアミンが挙げられる。N-アルキル-ヒドロキシルアミンは、有利な酸化防止剤活性、ならびにインビトロヒト細胞系の老化を遅延させる能力によって明らかなように潜在的な抗老化効果を示すことが報告されている。Atamna, H.ら、J. Biol. Chem.、275巻、10号、6741~6748頁、2000年;Carneyら、(1991年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.、88、3633~3636頁(それらの開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)。下記の実施例10には、先に論じられた好ましい範囲内の結合定数を有するN-アルキル-ヒドロキシルアミン/シクロデキストリン複合体の製造が記載されている。
【0047】
ゲスト分子は限定されるものではないが、一部の例としては、以下の1種または複数を挙げることができる:ナイアシンおよびナイアシン誘導体(例えば、ナイアシンアミド)、ビタミンB6(例えば、ピリドキサミン、ピリドキサールまたはピリドキシンの形)、グルタミン酸およびその塩(例えば、L-グルタミン酸Na塩およびL-グルタミン酸)、アスパラギン酸(例えば、L-アスパラギン酸)、リシンおよびリシン誘導体(例えば、L-リシンおよびN-メチル-L-リシン)、アルギニン(例えば、L-アルギニンおよびN-グアニジノメチル-L-アルギニン)、プロリン(例えば、L-プロリン)、アスコルビン酸、リボフラビン、アラニン(例えば、L-アラニン)、クレアチン、カルニチン(例えば、L-カルニチン)、タウリン、ビタミンB9、葉酸、ホラート、ベタニン、ルチン、リンゴ香味剤、アンズ香味剤、バナナ香味剤、酢酸ブチル、イソ吉草酸ブチル、酪酸アリル、吉草酸アミル、吉草酸エチル、酢酸アミル、およびマルトール。ゲスト分子としては、上記アミノ酸のN-アルキルC1~C3およびN-アシル化C1~C3誘導体も挙げることができる。アミノ酸、ビタミン、香味剤および関連化合物、グリコシド、ならびにN-アルキル-ヒドロキシルアミンの上記の例もすべて、適切な塩または水和物の形とすることができる。
【0048】
タウリンに関しては、α-、β-およびγ-シクロデキストリンのゲスト分子であることに加えて、隣接するシクロデキストリン間における分子間水素結合の形成を妨害する、シクロデキストリンとの複合体を形成することによって、これらのシクロデキストリンの自己凝集を抑制する。タウリンはまた、アミロースホスト分子に結合する程度がより低くなることもあり、それによってアミロースと形成した複合体は、タウリンとα-、β-またはγ-シクロデキストリンとの複合体より低い結合定数を有することがありうる。タウリンは、他のホスト分子の場合にも同様に有効なゲスト分子でありうる。
【0049】
栄養学的に、タウリンは、運動に起因する酸化ストレスを予防することがわかった。2008年の研究では、タウリンは、HepG2細胞においてアポリポタンパク質B100および脂質の分泌を低減することがわかった。Yanagitaら、「Taurine reduces the secretion of apolipoprotein B100 and lipids in HepG2 cells」、Lipids in Health and Disease、2008年10月17日;7:38(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)。高濃度の血清脂質およびアポリポタンパク質B100(VLDLおよびLDLリポタンパク質の本質的な構造部品)は、アテローム性動脈硬化および冠動脈心疾患に伴う主要危険因子である。したがって、タウリン補給がこれら疾患の予防に有利である可能性がある。2003年の研究では、過体重若年成人において、食物タウリンがコレステロール低下(血中コレステロール低下)効果を示すことが実証された。Zhangら、「Beneficial effects of taurine on serum lipids in overweight or obese non-diabetic subjects」、Amino Acids、2004年6月;26(3):267~71頁(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)。さらに、Zhangらは、タウリン補給群では、体重も大幅に減少したことも報告した。タウリンは、心筋収縮の力および有効性を増大させることによってうっ血性心不全者の助けとなることもわかった。さらに、ラットにおいて肝脂肪沈着物を除去し、被検動物における肝疾患を予防し、肝硬変を縮小するのに有効であることもわかった。タウリンが、成人血圧と、おそらく他の心血管の病気の軽減に有利であるという証拠もある。例えば、本態性高血圧症患者において、タウリン補給は、測定可能な血圧低下をもたらした。Choiら、「The effect of dietary taurine supplementation on plasma and liver lipid concentrations and free amino acid concentrations in rats fed a high-cholesterol diet」、Advances in Experimental Medicine and Biology、2006年;583:235~42頁(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)。
【0050】
クレアチンに関して、機能的にこの化合物は、α-、β-およびγ-シクロデキストリンならびにアミロースの許容できるゲスト分子であるようであるが、クレアチンは、同様に他のホスト分子のゲスト分子として使用することもできる。タウリンと同様に、クレアチンは、隣接するシクロデキストリン分子間における分子間水素結合の形成を抑制することによって、水に溶解しているシクロデキストリンの自己凝集を抑制する。栄養学的に、研究者らは、食事によるクレアチンの補給によって、知能がプラセボと比べて有意に増加したと結論を下した。その後の研究から、クレアチンの補給によって、高齢者の認知能力が改善されたことが明らかになった。Raeら、2003年、「Oral creatine monohydrate supplementation improves cognitive performance;a placebo-controlled, double-blind cross-over trial」、Proceedings of the Royal Society of London-Biological Sciences、(2003年)、270(1529):2147~50頁;McMorrisら、「Creatine supplementation and cognitive performance in elderly individuals」、Aging, Neuropsychology, and Cognition、(2007年)、14:517~528頁(それらの開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)。
【0051】
脂肪結合性組成物が固体の形をとる場合、ゲスト分子は、約1~50%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、ゲスト分子は約1~40%(w/w)または約1~25%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、ゲスト分子は約5~15%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。
【0052】
脂肪結合性組成物が水性飲料の形をとる場合、ゲスト分子は、約0.1~25%(w/v)または約1~20%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、ゲスト分子は、約1~15%(w/v)または約1~10%(w/v)または約3~8%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、ゲスト分子は約5~8%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。
【0053】
III.包接複合体
上記に指摘したように、包接複合体は、ゲスト分子と複合体形成するホスト分子を含むことができる。固体粉末または錠剤などの固体製品の形で、包接複合体は、包接複合体の予備形成を行わない点以外は本質的に同じ成分を含有する固体組成物に比べて、いくつかの独特な特性を示すことができる。包接複合体は本質的には、ホスト分子とゲスト分子の間に非共有結合性水素結合が形成される化学単位である。包接複合体は固体の形をとると、水性飲料への溶解または摂取などによって、包接複合体が水性環境に導入されたとき、脂肪結合のためのホスト分子と栄養または香味など他の有利な特性のためのゲスト分子とに解離する潜在能力を有する。
【0054】
固体製品の形をとるとき、ホスト分子と1つまたは複数のタイプのゲスト分子は、上述された包接複合体の形を実質的にとることができる。好ましくは、約25%を超えるホスト分子が1つまたは複数のタイプのゲスト分子と包接複合体の形で複合体形成する。35%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、および95%を超えるホスト分子を複合体形成することが次第に好ましくなる。包接複合体を水性飲料または動物の胃腸管内の環境などの水性環境で溶解する場合、ゲスト分子はホスト分子から部分解離または完全解離することができる。解離した後、遊離の(すなわち、複合体形成していない)ホスト分子は、それから脂肪分子または他の関連化学単位などの隣接する疎水性分子に結合することができる。以下に論じるように、特定の包接複合体用の特異的なホスト分子とゲスト分子は、その所望の用途に基づいて選択することができ、ホスト分子とゲスト分子の間の結合親和性によって決まることがありうる。さらに、ゲスト分子は栄養面での利益および/または香味をもたらすように選択されうるが、溶解しているホスト分子の自己凝集を有利なことに低減または防止するその能力に基づいて選択されうるものであり、ホスト分子の脂肪結合特性を維持するのに役立たせることができる。
【0055】
特定の包接複合体用に選択されるホスト分子とゲスト分子は、1つには水性および/または生理的条件など選択された条件下でのホスト分子とゲスト分子の間の結合親和性によって決まることがありうる。ホスト分子とゲスト分子の間の結合親和性は、実験で決定することができる。これらの結合親和性を決定する一方式は、ゲスト分子の観察可能な特性についてホスト分子の存在下と非存在下での差異を測定することである。例えば、ゲスト分子は、ゲスト分子の環境によって決まり、かつ非共有結合性包接複合体の形成により溶解しているホスト分子の存在下または非存在下で測定可能な程度に異なる酸解離定数またはpKaを有することができる。ゲスト分子の酸pKaの測定可能な差異によって、ゲスト-ホスト包接複合体が示す結合定数を原位置で決定することが可能になりうる。この結合定数を決定する方法は、最初にConnorsらによって有機芳香族酸とシクロデキストリンの結合定数を示すのに取り入れられた。K.A. Connorsら、J. Pharm. Sci., 65(3)、379~83頁、1976年(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)を参照のこと。
【0056】
選択されたホスト分子と選択されたゲスト分子の間の結合親和性を評価する別法は、凝固点降下特性の分析を必要とする。具体的には、ホスト分子とゲスト化合物であるゲスト分子との間の親和性は、ホスト分子の希釈水溶液単独、ゲスト分子の希釈水溶液単独、およびホスト分子とゲスト分子の両方を含有する溶液について浸透圧を別々に決定することによって測定されうる。溶解している組合せの浸透圧測定値が、別々に溶解している各成分の浸透圧測定値の合計より低い場合、実験データによって、ホスト分子とゲスト分子の間で形成された包接複合体のなかには、溶液として存在するものもあるという結論が支持される。この(シクロデキストリンとアルコールの間の)相互作用は、Suzuki, M.ら、Chem. Pharm. Bull.、36. 720頁、1988年(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)で検討されている。
【0057】
選択されたゲスト分子に対するホスト分子の結合親和性が、生理的条件など選択された条件について決定されると、その既知の結合親和性を利用して、特定の用途に最適のホスト分子およびゲスト分子の選択を補助することができる。
【0058】
特定の包接複合体用に選択されるホスト分子およびゲスト分子はまた、ゲスト分子によってもたらされる栄養面での利益および/または香味面での利益によって決まることもあり、選択されたホスト分子の自己凝集を有利なことに低減または防止するゲスト分子の能力に基づくこともある。様々なゲスト分子に関連した栄養面および/または香味面での利益は、先に論じられている。選択されたゲスト分子が選択されたホスト分子の自己凝集を抑制する能力は、実験的に測定可能であり、それを利用して、特定の用途に最適のホスト分子およびゲスト分子の選択を補助することができる。
【0059】
IV.ゲスト分子として許容できない疎水性化合物
本明細書に開示される脂肪結合性組成物中のゲスト分子の有用性のある効果は、ホスト分子とゲスト分子で複合体が生成すると、ゲスト分子はホスト分子の空洞で「プレースホルダー」として作用することができ、したがって水性環境などの適切な環境でホスト分子から解離すると、次いでシクロデキストリン分子が選択的に脂肪分子や関連化学単位などの疎水性分子と結合することができるということである。さらに、ゲスト分子が水性環境で存在すると、有利なことにシクロデキストリン分子の自己凝集を低減または防止することができ、それによって疎水性分子と結合するのに利用できるホスト分子の数の減少が抑制される。したがって、許容できるゲスト分子としては、水性環境でホスト分子から容易には解離せず、かつ/またはホスト分子の自己凝集を低減もしくは防止しない可能性がある疎水性分子など、ホスト分子に対して高結合親和性である分子を特異的に除外することができる。
【0060】
ホスト分子に対して高結合親和性でありうるもので、したがってゲスト分子として許容できないことがありうる疎水性化合物としては、脂肪、ワックス、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、脂肪酸、脂溶性ビタミン、精油、テルペン、およびカロテノイドなどの脂溶性着色剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。脂肪酸は限定されるものではないが、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、およびα-ω多価不飽和脂肪酸などの多価不飽和脂肪酸、ならびにそれらの塩およびエステルを挙げることができる。ゲスト分子として許容できないことがありうる追加の疎水性化合物としては、脂肪酸;ラードやバターのような動物脂などの食物脂肪に由来する脂肪酸のエステル;ヤシ油、パーム油、麦芽油、綿実油、ダイズ油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、大麻油、およびカノーラ油などの植物脂などを挙げることができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、ホスト分子とゲスト分子を有する包接複合体を含む固体の形で、脂肪結合性組成物を製造することができ、それから引き続いてこの製品を、栄養バーまたは他の食品などの食品に組み込むことができ、食品には、上記の許容できない疎水性化合物も1種または複数含まれる。許容できない疎水性化合物を含むこれらの食品はそれにもかかわらず、ホスト分子とゲスト分子との包接複合体の相当な割合が、摂取前にゲスト分子が許容できない疎水性化合物で置換されることなく、食品の中で安定な形をとったままである限り、脂肪結合性組成物として機能することができる。
【0062】
V.香味成分
香味成分としては、糖、非糖甘味料、および/または他の食味改良成分を挙げることができる。糖は限定されるものではないが、例えば、蜂蜜、スクロース、フルクトース、グルコース、ガラクトース、リボース、加水分解デンプン、およびコーンシロップ、特にDE 42およびDE 35のデキストロース当量のものを挙げることができる。
【0063】
非糖甘味料は限定されるものではないが、例えば、スクラロース、カリウムアセスルファム、アスパルテーム、アリターム、サッカリン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、シクラマート、ネオテーム、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチルブチル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、N-[N-[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニン1-メチルエステル、それらの塩などの合成強力甘味料;ならびにレバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ズルコシドB、ルブソシド、ステビア、ステビオシド、モグロシドIV、モグロシドV、羅漢果(Luo Han Guo)甘味料、シアメノシド、モナチンおよびその塩(モナチンSS、RR、RS、SR)、クルクリン、グリチルリチン酸およびその塩、タウマチン、モネリン、マビンリン(mabinlin)、ブラゼイン(brazzein)、ヘルナンズルシン、フィロズルチン、グリシフィリン、フロリジン、トリロバチン、バイユノシド、オスラジン、ポリポドシドA、プテロカリオシドA、プテロカリオシドB、ムクロジオシド、フロミソシドI、ペリアンドリン(periandrin)I、アブルソシドA、およびシクロカリオシド(cyclocarioside )Iなどの天然強力甘味料などを挙げることができる。
【0064】
香味改良剤または香味を改良する作用物質として機能することができるゲスト分子は、限定されるものではないが、例えば、エリトリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イノシトール、イソマルト、プロピレングリコール、グリセロール(グリセリン)、トレイトール、ガラクチトール、パラチノース、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元マルトースシロップ、および還元グルコースシロップなどのポリオール添加剤などが挙げられる。
【0065】
香味成分は限定されるものではないが、さらに別の例としては、有用なゲスト分子として記載されている上記の香味剤および関連化合物のうちの1種または複数を挙げることができる。これらの香味剤および関連化合物は、ゲスト分子の提供と香味の提供の2重の機能を果たすことができる。また、これらの香味剤および関連化合物を、先に論じられた香味成分のいずれかと場合によっては組み合わせてもよい。
【0066】
いくつかの好ましい香味成分としては、キシリトール、フルクトース、ソルビトール、高フルクトースシロップ、および低デキストロース当量(DE)コーンシロップの形をしたコーンシロップを挙げることができる。
【0067】
脂肪結合性組成物が固体の形をとる場合、香味成分は、約1~40%(w/w)または約1~25%(w/w)の一般的な濃度範囲で存在することができる。好ましくは、香味成分は、約2~10%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、香味成分は、約3~5%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。さらに、香味成分が相当量の強力甘味料を含む場合、脂肪結合性組成物中に存在するこのタイプの甘味料の量は1%(w/w)より低いことがあり、許容できる甘味特性が示される場合は、約0.1%(w/w)以下の量で存在してもよいことに留意すべきである。
【0068】
脂肪結合性組成物が水性飲料の形をとる場合、香味成分は、約1~25%(w/v)または約1~15%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、香味成分は、約1~10%(w/v)または約1~5%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。さらに、強力甘味料を使用する場合、濃度は1%(w/v)未満とすることができ、許容できる甘味特性が示される場合、約0.01~0.1%(w/v)以下の量の範囲で存在してもよい。
【0069】
VI.カーボネーション発生成分
脂肪結合性組成物のなかには、脂肪結合性組成物を水性環境に溶かし込むとカーボネーションまたは泡立ちをもたらすカーボネーション発生成分を含有することができるものもある。以下に論じるように、カーボネーション発生成分は、溶解しているホスト分子の自己凝集を有利なことに抑制することができ、それによって疎水性分子と結合するのに利用できるホスト分子の数が増加する。
【0070】
α-シクロデキストリンは非炭酸水中より炭酸水中で凝集が少ないことが実験でわかった。普通の水道水および炭酸水(発泡性模倣物)に溶解したα-シクロデキストリン水溶液(2%(w/v))を同一の条件下で調製した。次いで、これらの溶液にレーザー光散乱を施して、各溶液中の粒径分布を決定した。図1は、非炭酸水(白丸で示す)および炭酸水(黒菱形で示す)中に溶解したα-シクロデキストリンの粒度分布の比較を示す。図1からわかるように、非炭酸水道水中のシクロデキストリン粒子の大部分は約1ミクロンのサイズである(1,000nm、最も右側のピークで示す)が、炭酸水中のシクロデキストリン粒子は概して0.5ミクロン未満の大幅に小さいサイズである(500nm、最も左側のピークで示す)。この実験から、シクロデキストリン分子の凝集が、非炭酸水に比べて炭酸水で大幅に低減していることがわかる。凝集のより少ない形をしたシクロデキストリン分子には、複合体形成に利用可能な結合部位がおそらくより多く含まれる。したがって、この実験から、カーボネーションによって、より多くのシクロデキストリン結合部位を利用して、脂肪と複合体を形成することが可能になるという結論と一致している証拠が得られる。さらに、カーボネーション発生化合物を含有する脂肪結合性組成物は、カーボネーションの凝集抑制効果のため、脂肪と結合するのにより有効でありうる。
【0071】
上記の組成物による脂肪の結合に関連して、動物による標的疎水性分子(脂肪分子)の摂取を防止する有効性を高める要因が2つある。第1に、ホストと脂肪分子の間の密接した強い結合を示す所望の比較的高い結合定数である。第2に、ホスト分子の1個または複数による脂肪分子の所望のカプセル化である。シクロデキストリンホスト分子の場合は、2個または3個のホスト分子を脂肪分子に結合させて、脂肪分子をより完全にカプセル化することが望ましい。脂肪分子はシクロデキストリンに比べて、典型的には相対的に長いものとなり、そういうわけで2個または3個のシクロデキストリンをただ1個の脂肪分子に結合させるのが望ましい。脂肪分子のカプセル化を増加させることによって、脂肪分子が動物の胃腸管に吸い込まれることにならず、したがって動物の固体廃棄物中の微結晶または非結晶固体として動物の身体から排出されることになる可能性が大きくなる。
【0072】
カーボネーション発生成分は限定されるものではないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムおよび炭酸水素カリウムなどを挙げることができる。好ましいカーボネーション発生成分としては、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムを挙げることができる。
【0073】
脂肪結合性組成物が固体の形をとる場合、カーボネーション発生成分は、約1~60%(w/w)または約5~60%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、カーボネーション発生成分は、約5~45%(w/w)または10~45%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、カーボネーション発生成分は、約10~15%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。
【0074】
脂肪結合性組成物が水性飲料の形をとる場合、カーボネーション発生成分は、約1~30%(w/v)または約1~25%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、カーボネーション発生成分は、約2~15%(w/v)または2~10%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、カーボネーション発生成分は、約2~5%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。
【0075】
VII.他の成分
脂肪結合性組成物のなかには、組成物の食味および/または栄養価に影響を及ぼすさらに他の成分を含有することができるものもある。これらの追加の成分としては、以下の1種または複数を挙げることができるが、これらに限定されるものではない:香味添加剤、栄養材料、および/または製剤中でホスト分子凝集防止添加剤として作用する様々なヒドロキシル酸。このような他の成分は限定されるものではないが、例えば、クエン酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、クエン酸カリウム、塩化ユウロピウム(EuCl3)、塩化ガドリニウム(GdCl3)、塩化テルビウム(TbCl3)、硫酸マグネシウム、ミョウバン、塩化マグネシウム、マルトデキストリン、一塩基性、二塩基性、三塩基性リン酸ナトリウムまたはカリウム塩(例えば、無機リン酸塩)、塩酸の塩(例えば、無機塩化物)、硫酸水素ナトリウムなどを挙げることができる。シクロデキストリン凝集を防止するヒドロキシル酸は限定されるものではないが、例えば、イソクエン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、トレオン酸、それらの塩、およびそれらの混合物などを挙げることができる。これらのヒドロキシル酸も、何らかの栄養面での利益を示すことができる。食味添加剤など、使用することができる追加のオプション成分は限定されるものではないが、他の例としては、塩化コリン、アルギン酸ナトリウム塩(アルギン酸ナトリウム)、グルコヘプトン酸ナトリウム塩、グルコン酸ナトリウム塩(グルコン酸ナトリウム)、グルコン酸カリウム塩(グルコン酸カリウム)、グアニジンHCl、グルコサミンHCl、アミロライドHCl、グルタミン酸モノナトリウム(MSG)、アデノシン一リン酸塩、グルコン酸マグネシウム、酒石酸カリウム(1水和物)、および酒石酸ナトリウム(2水和物)などの好適な有機塩が挙げられる。
【0076】
いくつかの脂肪結合性組成物に含めることができる別の成分はリパーゼである。動物リパーゼが消化医薬品で慣習的に使用されている。リパーゼは限定されるものではないが、例えば、膵リパーゼ、リソソームリパーゼ、肝性リパーゼ、およびリポタンパク質リパーゼなどを挙げることができる。リパーゼは、トリグリセリドをグリセロールと遊離脂肪酸に切断するように機能し、遊離脂肪酸には、いくつかのホスト分子がより容易に結合する。シクロデキストリンは切断された遊離脂肪酸と主に結合し、未切断のグリセロールエステル型脂肪酸とはあまり結合しない傾向があるので、例えば、シクロデキストリンを含有する脂肪結合性組成物にこの脂肪分解活性を含めて、脂肪結合性組成物の有効性を改善することができる。樫野ら、「シクロデキストリンと油性物質との相互作用」、日本家政学会誌、56(8)、533~539頁(日本語)、2005年(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)を参照のこと。樫野らは、コレステロールおよびトリオレイン、ならびにラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、およびオレイン酸とα-シクロデキストリンとのシクロデキストリン結合を検討した。α-シクロデキストリンはコレステロールまたはトリオレインと顕著に結合することはなかったが、オレイン酸とは結合したことが明らかになった。β-シクロデキストリンはコレステロールと顕著に結合したが、関与しているβ-シクロデキストリンの量は、水に対する溶解度が低いため少なかった。γ-シクロデキストリンは、オレイン酸、コレステロール、およびトリオレインと顕著に結合したことが明らかになった。
【0077】
好ましい他の成分としては、例えばクエン酸、アスコルビン酸、およびマルトデキストリンを挙げることができる。
【0078】
脂肪結合性組成物が固体の形をとる場合、1つまたは複数の他の成分はそれぞれ、約1~30%(w/w)または約1~25%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、1つまたは複数の他の成分はそれぞれ、約1~20%(w/w)または1~15%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、1つまたは複数の他の成分はそれぞれ、約2~5%(w/w)の濃度範囲で存在することができる。
【0079】
脂肪結合性組成物が水性飲料の形をとる場合、1つまたは複数の他の成分は、約1~20%(w/v)または約1~15%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。好ましくは、1つまたは複数の他の成分は、約1~10%(w/v)または1-5%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。より好ましくは、1つまたは複数の他の成分は、約1~3%(w/v)の濃度範囲で存在することができる。
【0080】
VIII.成分比
本明細書に開示される脂肪結合性組成物中で使用することができる様々な成分のタイプおよび量に関する上記の説明に加えて、さらにこれらの成分の相対量も同様に説明できることに留意すべきである。ホスト分子とゲスト分子の重量比は、好ましくは約5:1から1:10の範囲とすることができ、より好ましくは約2:1から1:5の範囲とすることができ、さらにより好ましくは約2:1から1:2の範囲とすることができ、さらにより好ましくは約1:1から1:2の範囲とすることができる。
【0081】
香味成分、カーボネーション発生成分、および上述された他の成分などの利用可能な他の成分に関して、ホスト分子と他の各成分の重量比は、別々に約25:1から1:25、または約10:1から1:10、または約5:1から1:5、または場合によっては約2:1から1:2の範囲、ならびに1:1とすることができる。
【0082】
IX.包接複合体を形成する方法
ホスト分子とゲスト分子の包接複合体は、様々な方法を使用することによって形成することができる。
【0083】
包接複合体を形成する例示的方法のなかには、ホスト分子とゲスト分子を飽和溶液中で混合するステップと、溶液を約50~60℃の範囲の温度に加熱するステップとを含むものもある。場合によっては、溶液は、水に加えて、短鎖アルコールなどの共溶媒も含有することができる。共溶媒は限定されるものではないが、例えば、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチルなどを挙げることができる。包接複合体を形成するための反応時間は、数時間、時には約4時間から8時間を要することもある。次いで、飽和溶液を冷却すると、包接複合体の結晶化を引き起こすことができる。結晶性生成物は濾過および遠心で単離することができる。濾過は、以下に述べるように、真空下での膜層濾過、加圧下でのカートリッジ濾過、または焼結ガラスフィルターに通す濾過などによって実施することができ、続いて洗浄ステップが行われる。次いで、結晶性生成物を乾燥して恒量にすることができる。風乾する場合、生成物は、例えば約250~750ミクロンの範囲の比較的大きい粒径を有することができる。あるいは、結晶性生成物を、P2O5もしくはKOHなどの適切な乾燥剤で脱水することができ、またはマイクロ波乾燥機中、室温で乾燥して、約200ミクロン未満の平均粒径を有することができる細粉を形成することができる。別法として、結晶性生成物を真空オーブン中、約60~70℃の範囲などの高温で乾燥して、細粉を製造することができる。
【0084】
これらの例示的方法の利点は、濾過後の洗浄ステップのため、吸着された結合されていないゲスト分子の量が少ないことである。所望の生成物は、ホスト分子に吸着された結合されていないゲスト分子をほとんどまたは全く含まない適切なゲスト-ホスト包接複合体を実質的に構成する固体粉末である。濾過後の湿った包接複合体を冷(例えば、4℃)ジオキサンまたはn-ヘキサンまたはジエチルエーテルで洗浄して、いずれの表面結合ゲストも除去することができる。この方法の生成物は、所望の結晶特性、および有利なことに低水分収着特性も示すことができ、したがって製造された固体包接複合体の平衡水分含有量が、わずか約4~8重量パーセントの間で異なることがありうる。場合によっては、ゲスト分子をシクロデキストリン空洞に維持する際に溶媒分子が役割を担う三元複合体を得ることができる。これらの方法は約24~48時間を要することがあり、相当な量の溶媒および/またはエネルギーの使用を必要とすることがありうる。また、これらの方法は、使用する反応温度で分解の影響を受けない、ゲスト分子を含む包接複合体を形成する方法に限定されうる。これらのタイプの方法は、ゲスト分子とメチル化β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、および水溶性β-シクロデキストリンポリマーなどの高可溶性シクロデキストリン誘導体との複合体形成には好ましくないかもしれない。
【0085】
ホスト分子とゲスト分子の包接複合体を形成する方法の他の例は、以下に記載するような捏和もしくは押出技法、または固相技法を用いて、懸濁液中で複合体形成方法を実施するステップを含むことができる。
【0086】
包接複合体を形成する例示的な懸濁方法のなかには、反応容器に等モル量のホスト分子およびゲスト分子を添加するステップを含むことができるものもある。次いで、溶媒として、水、または低エタノール含有量の水-エタノール混合物(例えば、約1から30%のエタノール)を添加することができる。溶媒の量は、シクロデキストリン成分の特性に応じて変わることがありうるが、一般に量は、ホスト分子の重量とゲスト分子の重量の両方を合計した重量の約3~10倍とすることができる。例えば、ホスト分子10グラムおよびゲスト分子1グラムを、水または水-エタノール混合物30~100グラム中で反応させることができる。好ましくは、反応混合物を高速撹拌機(例えば、IKA製「ULTRA-TURRAX」撹拌機)または超音波混合装置の使用により、選択されたゲスト分子に応じて約4~14時間、室温で撹拌することができる。これらの反応は、反応が終点に到達したときを決定する好適な終点指示法でモニターすることができる。反応が終点に到達した後、撹拌をやめることができる。次いで、反応混合物を、以下の代替回収技法のうちの1つにかけることができる:(1)約-60℃に冷却し、凍結乾燥で水を除去する;あるいは(2)反応混合物を標準撹拌、次いで噴霧乾燥(例えば、NiroまたはBuchi製装置を使用)または次いで例えばWurster型流動床法などの流動床乾燥システムの使用による蒸発にかける。得られた固体生成物を、好ましくは分子分散され分子カプセル化された、「ホスト」分子として役立つホスト分子と「ゲスト」分子として役立つゲスト分子の包接複合体である。
【0087】
懸濁液中で包接複合体を形成する他の方法は、好ましくは、ホスト分子約1部と水約2部をほぼ室温または約20~25℃の範囲で混合することによって、ホスト分子を水に(溶解ではなく)懸濁するステップを含むことができる。ホスト分子懸濁液の撹拌は、好ましくは激しくするべきであり、重要な要因でありうる。典型的な激しい撹拌、例えば1分当たり少なくとも約600回転の組合せが有効でありうる。次いで、ゲスト分子またはゲストを(その現在の形で、またはエタノールもしくはイソプロパノールなどの溶媒に予め溶解して)、ホスト分子懸濁液に添加することができる。反応時間は、使用するホスト分子およびゲスト分子のタイプに応じて約4~24時間要することがありうる。次いで、生成物の包接複合体を、上述されたものなどの濾過、やはり上述されたものなどの噴霧乾燥、または他の何らかの好適な方法で溶液から回収することができる。懸濁液中で包接複合体を形成するこれらの方法は、エネルギーおよび溶媒の消費量が比較的少なくてよく、比較的少ししかない準備作業で(すなわち、「母液」の生成が少ししかない)、生成物を比較的高い収率で製造することができるので有利でありうる。これらの方法はまた、同様の方法が米国、ハンガリー、ドイツなどの国で工業的に使用されていることによって明らかなように、スケールアップも比較的容易でありうる。一方、これらの懸濁方法は、12~24時間という非常に長い撹拌時間を必要とすることがあり、ゲスト分子の吸着と複合体形成の比は、所望より低いことがありうる。
【0088】
捏和または押出技法を用いた包接化合物を形成する方法は、ホスト分子を「活性化する」ために、ホスト分子と水を捏和するステップを含むことができ、ホスト分子と水の近似比は約1:1から2:1の範囲内である。反応温度は、約22~25℃の範囲のほぼ室温とすることができる。ゲスト化合物は活性化されたホスト分子に導入されるとき、典型的には溶液ではない。反応時間は、ゲスト化合物のタイプに応じて60分未満とすることができる。このような捏和または押出技法を使用する利点としては、水以外の溶媒を使用する必要がなく、したがって最終生成物も溶媒フリーでありうることを挙げることができる。反応時間は非常に速く、約1から2時間とすることができる。包接複合体は、「活性化」のために用いられた捏和によって、製造されたシクロデキストリン水和物分子の結晶格子が損なわれる恐れがあるため、結晶特性が比較的弱いことがありうる。X線およびDSC熱分析によって、ゲスト分子の複合体形成は高速で、母液の生成はなく、得られた生成物は非晶質であることが明らかになった。この方法は、すべてのタイプのシクロデキストリンおよびそれらの誘導体にとって有用でありうる。また、これらの方法は、環境の観点から全般的に許容可能である。日本では、同様の方法が工業規模で使用されている。これらの方法は、例えば二軸押出機などの適切な捏和機を必要とすることがあり、方法の終わりにおいて、湿った生成物を捏和機から取り出すことはいくぶん困難でありうる。
【0089】
固相技法を用いた複合体形成方法を実施するには、ホスト分子とゲスト化合物の両方が固体の形をとる必要がありうる。これらの成分は、高エネルギーミル処理、激しい共粉砕(intense co-grinding)、または他の何らかの好適な方法にかけることができる。クリティカルな要因はとしては、力学的エネルギーの強度およびシクロデキストリンの水分含有量を挙げることができる。例えば、約2~3%未満の含水量では、シクロデキストリンの複合体形成が抑制または妨害される。固相技法を使用する利点としては、水以外の溶媒を必要とすることがなく、有利なことに短い反応時間で、どのタイプのホスト分子でも使用できる柔軟性を挙げることができる。また、スケールアップは容易に行うことができ、「母液」が生成しないので、環境上の利点がありうる。さらに、複合体形成した薬物の溶解速度は、一般的に他の方法の溶解速度より高くなりうる。欠点としては、準安定固相(複合体)の形成を挙げることができ、平衡状態に到達して、貯蔵時に再結晶する恐れがある。
【0090】
シクロデキストリン誘導体などのホスト分子を含む包接複合体を調製する方法では、成分が水または水/共溶媒混合物に溶解している均一系反応を用いることができ、反応は室温にて進行する。生成物は、蒸発、噴霧乾燥または凍結乾燥技法で得ることができる。
【0091】
包接複合体を形成するのに使用することができる方法および方法のパラメーターの追加の例は、L. Szente、「Preparation of Cyclodextrin Complexes」 in 「Comprehensive Supramolecular Chemistry」、3巻、Cyclodextrins、J SzejtliおよびT Osa編、Elsevier Science、Pergamon Press、1996年、243~251頁;(2)Szejtli, J.、Cyclodextrin Technology、Kluwer Academic Publishers、Dordrecht, The Netherlands、1988年、80~104頁;および(3)Szejtli, J.、Cyclodextrins and Their Inclusion complexes、Akademiai Kiado、Budapest、1982年、95~110頁に開示されるものに対応することができる。それらはすべて、それらの開示内容全部が、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする。
【0092】
アミロースを含む包接複合体を形成する方法は、まずアミロースを含有するアルカリ性水溶液(例えば、pH約12)を調製するステップと、ゲスト分子を含有するアルコール溶液を調製するステップと、アルコール溶液を、室温で激しく撹拌しながらアルカリ性溶液に添加して、反応混合物を形成するステップとを含むことができる。次いで、反応混合物を撹拌しながら、塩酸などの酸を添加することによって中和することができる。中和された反応混合物は沈殿物を含むことがあり、これを約5時間撹拌すると、包接複合体を形成することができる。包接複合体は不溶性となりうるが、全般的に上述されたように反応混合物から濾過することができる。湿った固体複合体を冷ジオキサンまたは他の好適な洗浄溶媒で洗浄することができ、次いでやはり上述されたように、包接複合体生成物が恒量に達するまで(真空中または約100℃などで)乾燥することができる。Szejtli, Jら、Acta Chim. Acad. Sci. Hung.、1979年、99(4)、447~52頁(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に全体として組み込まれたものとする)を参照のこと。
【0093】
X.選択された例示的実施形態
本明細書に開示される脂肪結合性組成物の選択された実施形態としては、上述された脂肪結合性組成物の液体、溶液、または即時可溶性固体の形を挙げることができる。例えば、上記の包接複合体を含む水和性および/または急速溶解性粉末、ならびにこのような粉末から調製されたまたは他の方法で前記包接複合体を含有する炭酸水製品が好ましい実施形態である。これらの実施形態は、カーボネーションの効果のため存在しているいずれのシクロデキストリン成分についても自己凝集を抑制できることが有利である。脂肪結合性組成物の他の好ましい実施形態は、シクロデキストリンとの包接複合体を含有することができ、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸などのヒドロキシル酸などの凝集防止化合物も含有することができる。これら脂肪結合性組成物のシクロデキストリン成分では、その場で自己凝集を起こすのを抑制できることが有利である。
【0094】
以下の実施例は例示として記載するものであって、決して本開示の範囲を限定するものではない。
【0095】
(実施例)
(実施例1)-水性環境でのシクロデキストリンによる脂肪結合の実施例
α-、β-およびγ-シクロデキストリンの混合物(9.7グラムのα-シクロデキストリン、11.3グラムのβ-シクロデキストリン、および12.7グラムのγ-シクロデキストリンから構成される)を、濃度0.01Mで1リットルの脱イオン水に溶解することによって、シクロデキストリン水溶液を調製した。パルミチン酸(2.5グラム)のジエチルエーテル(5mL)溶液をシクロデキストリン水溶液に滴加すると、濃度レベル0.01Mに達した。この反応混合物を周囲温度で4時間撹拌した。反応混合物から、白色懸濁液が生じた。沈殿物を遠心により除去した。沈殿物は、パルミチン酸がシクロデキストリンと複合体形成した結晶性包接複合体である。得られた複合体は、約78%のα-シクロデキストリン/パルミチン酸複合体、約20%のβ-シクロデキストリン/パルミチン酸複合体、および検出不能な量のγ-シクロデキストリン/パルミチン酸複合体を含む。この実施例から、α-、β-およびγ-シクロデキストリンのうち、パルミタートのような直鎖状飽和脂肪酸を固定および捕捉するのに最も好適なタイプは、α-シクロデキストリン、続いてβ-シクロデキストリンであることがわかる。この特定の実施例におけるγ-シクロデキストリンの結果は、無視できるものである。
【0096】
(実施例2)-β-シクロデキストリンを使用する包接複合体方法説明の実施例
シクロデキストリン包接複合体は、ゲスト分子の水溶解性に応じて使用してもよい共溶媒または添加剤を用いてまたは用いずに、水性懸濁液中、室温で製造することができる。包接複合体形成反応は、好適な撹拌装置を装備したガラス製またはステンレス鋼製反応器中で実施することができる。100グラムのゲスト分子(例えば、分子質量約160ダルトンのカルニチン)を、室温で300ミリリットルの水またはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコールなどの好適な水混和性溶媒に溶解することによって、溶液を調製した。別に、反応器中で、2.5リットルの精製水に、室温で激しく撹拌しながら1.50kgのβ-シクロデキストリンを懸濁した。撹拌を約600rpm(1分当たりの回転数)を超えるレベルで継続しながら、ゲスト分子の溶液をβ-シクロデキストリン水性懸濁液に滴加した。室温で、反応混合物を600rpmで約3時間連続して撹拌した。引き続いて、懸濁液の水分を噴霧乾燥により除去して、固体粉末を得た。噴霧乾燥は、スピニングヘッド噴霧乾燥機(製造業者:Niro)を使用して以下の操作条件下で行った:
・入口温度:約180~200℃
・出口温度:90~95℃
・回転速度:20,000-22,000/分
・噴霧乾燥時間:約40分
【0097】
この方法により、約1.5kgの固体粉末の形の包接複合体が得られ、残留水分は約6~8重量%であった。
【0098】
(実施例3)-脂肪結合性組成物の例
以下を含む1キログラムのバルク固体粉末を形成した:
・427.5グラムの無水クエン酸
・121.0グラムの粉砕炭酸ナトリウム
・46.0グラムの炭酸水素ナトリウム
・4.6グラムのアスコルビン酸
・5.4グラムのキシリトール(トウモロコシ繊維から作製)
・350グラムの噴霧乾燥α-シクロデキストリン/L-アルギニン包接複合体
・10.0グラムのブドウまたはレモンまたはオレンジ噴霧乾燥香味/マルトデキストリン
・0.5グラムの着色剤
【0099】
上記の組成物は、非炭酸水に溶解すると、顕著な泡立ちをもたらし、透明な溶液であり、心地良い上品な酸味があった(pH約5.3)。
【0100】
(実施例4)-脂肪結合性組成物の例
以下を含む1キログラムのバルク固体粉末を形成した:
・435gの無水クエン酸
・183gの無水炭酸ナトリウム
・23gの炭酸水素ナトリウム
・21.7gのアスコルビン酸
・7gのキシリトール
・210gのニコチンアミド/α-シクロデキストリン複合体、噴霧乾燥済み(ニコチンアミド含有量8重量%)
・120gのオレンジ香味/α-シクロデキストリン複合体(オレンジ香味添加12重量%)
・0.3gの着色剤
【0101】
(実施例5)-発泡性脂肪結合性組成物の例
以下の例は、栄養面での利益をもたらし、水中でのシクロデキストリン凝集を防止するように作用するゲスト分子としてタウリンおよびクレアチンを含む発泡性製剤である。
【0102】
【表1】
【0103】
(実施例6)-実施例3および4の組成物に関する安定性の検討
2つのポリエチレンプラスチック層間にアルミニウム箔層を設けた三層の気密袋に、上記の実施例3および4の組成物を製造された直後に詰めた。袋を室温で30日間維持した。顕著な分解も二酸化炭素ガスの放出も認められなかった。この明らかになった安定性は重要である。というのは、被検バルク固体組成物は、密封した袋内で二酸化炭素ガスの望ましくない発生を招く化学反応を開始させるようにいずれかの利用可能な水分と反応する余地がないことがわかったからである。
【0104】
(実施例7)-ベタニンを含む包接複合体の分析
α-シクロデキストリンおよびゲスト分子としてベタニンを含む包接複合体を、以下の通り調製した:
【0105】
反応容器中で、550グラムのベタニンを、連続撹拌下、2リットルの脱イオン水に室温で溶解した。次いで、撹拌した反応混合物に、1000グラムの結晶性α-シクロデキストリン水和物を100グラムずつ10回添加した。α-シクロデキストリンを反応混合物に添加した後、得られた濃い懸濁液を室温でさらに4時間撹拌した。反応混合物を、標準条件下で恒量になるまで風乾させ、次いでボールミルを用いて、細粉になるまで粉砕した。
【0106】
得られたモル比1:1のベタニン/α-シクロデキストリン包接複合体は、可視分光光度法で決定して32重量%のベタニンを含む赤色の易流動性粉末であった。Higuchiら、Advances in Analytical Chemistry and Instrumentation、C.N. Reilly編、Wiley, New York、1965年、4巻、117~212頁(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)に従って、相溶解度研究で決定して、ベタニン/α-シクロデキストリン複合体は、水中で比較的弱い包接複合体であることが明らかになった。複合体の結合定数はKass=85~105M-1
【0107】
包接複合体の外側および内側での着色剤の熱分析的挙動(thermo-analytical behavior)を比較することによって、固体状態の遊離および捕捉(または複合体形成)ベタニンのキャラクタリゼーションを行った。着色剤(グリコピラノシルジヒドロインドリル-ピリジンカルボン酸、ビートから抽出)は特徴として、アルゴン雰囲気中加熱すると低温相転移を示す。この熱的事象はベタニンの特徴であり、示差走査熱量測定(DSC)分析によれば、典型的には85~120℃で起こる。しかし、この熱的事象は、ベタニンがα-シクロデキストリンと複合体を形成すると、170~200℃のはるかに高い温度範囲に大幅にシフトした。これは、着色剤が高秩序のほぼ結晶格子ではなく、分子分散されるように、かつシクロデキストリン炭水化物マトリックスと一緒に融解するように包接複合体に包接されている場合、相転移(すなわち、固体から液体への転移または融解またはガラス転移)がより高い温度で起こることを示唆する。
【0108】
(実施例8)-包接複合体を用いた場合と用いない場合のホスト分子の脂肪結合特性の比較
2つのタイプの固体α-シクロデキストリン製剤を、以下の通り調製した。
製剤1
以下の通り一般的な錠剤化添加剤を使用して、結晶性α-シクロデキストリン水和物を錠剤に製剤化した:
・α-シクロデキストリン水和物 97重量部
・ステアリン酸マグネシウム 2.5重量部
・軽質無水ケイ酸 0.5重量部
【0109】
上記の成分を含有するバルクブレンドは、イソプロピルアルコールと水の混合物で乾燥ブレンドを湿潤することによって、Frewitt造粒機で造粒し、続いてトレー中、45℃で乾燥した。次いで、顆粒をプレスして、1グラムの錠剤にした。
製剤2
【0110】
上記の製剤1で使用されたのと同じ量のα-シクロデキストリン水和物を水で湿潤し、ステアリン酸マグネシウムを全く添加することなく、弱い複合体形成遊離塩基の形のL-アルギニンおよび結晶性クエン酸と共に乳鉢で30分間強力に共粉砕した。この共粉砕された湿式アルギニン-クエン酸-シクロデキストリンの三元包接複合体を恒量になるまで風乾した。乾燥包接複合体を再び湿潤させ、通常の造粒装置で造粒し、45℃で恒量になるまで風乾した。顆粒は以下の組成であった:
・α-シクロデキストリン水和物 97重量部
・L-アルギニン 2.5重量部
・クエン酸 0.5重量部
【0111】
顆粒をサシェに充填した。各サシェには、1gの製剤2が入っている。
【0112】
次いで、製剤1と2の比較を行った。製剤1および2のそれぞれ1グラムの量を、(1)0.01N塩酸、pH 2;および(2)pH 7.2の緩衝水溶液のそれぞれ500mLずつに導入した。温度を37℃に設定した。1分当たり90回転で2時間撹拌した後、得られた溶液を、溶解したα-シクロデキストリンの濃度についてHPLC法を用いて試験した。錠剤にしたα-シクロデキストリンを含む生成物である製剤1を2時間撹拌した後、不透明(opaque)で非透明(non-transparent)溶液が生じた。これは、α-シクロデキストリンが著しくは溶解しなかったことを示唆した。クエン酸、L-アルギニン、およびα-シクロデキストリン水和物を含む顆粒である製剤2は、直ちに溶解して、清澄で透明な溶液が生じた。
【0113】
製剤1および2を上述した条件にかけた後、これらの製剤由来のα-シクロデキストリンが溶解した量の測定値を、下記のTable 1(表2)に示す。この結果から明らかなように、製剤2は、酸性と塩基性の両方の水性環境で製剤1より大幅に多いα-シクロデキストリンをもたらした。シクロデキストリンの溶解した量は、脂肪結合に利用できるシクロデキストリン分子に対応する。
【0114】
【表2】
【0115】
製剤1の上記データは、脂肪酸のステアリン酸マグネシウムなどの脂肪関連添加剤が少量でさえ存在すると、シクロデキストリンを水性環境で溶解するのに利用できる可能性が大幅に低減する恐れがあり、したがって脂肪および脂肪関連化合物を結合するのに利用できるシクロデキストリンの量が低減する恐れがあることを示唆する。一方、製剤2のデータは、シクロデキストリンとゲスト分子との包接複合体を使用することによって、相当な量、例えば最高100%のシクロデキストリンを効率的にもたらすことができ、酸性および塩基性の両方の水性環境で脂肪結合に利用することができることを示唆する。
【0116】
(実施例9)-様々な香味剤の結合定数
様々な香味剤および関連化合物が適切に弱い複合体形成特性を示すかどうかを分析するために、いくつかの例とα-およびβ-シクロデキストリンで複合体形成し、示されたその結合定数を測定した。被検化合物には、水に概して可溶性または混和性であるものが含まれた。具体的に以下に記載されるアンズ香味剤とバナナ香味剤を含む2つの例に対応する方法で、シクロデキストリンとの複合体を形成した。
【0117】
A.噴霧乾燥によるアンズ香味剤/α-シクロデキストリン複合体の調製
激しく撹拌することによって、972グラムのα-シクロデキストリン水和物を500mLの水に室温で分散した。スラリーをさらに500mLの水で希釈した。撹拌したα-シクロデキストリンと水の混合物に、激しい撹拌中に12グラムのアンズ香味剤を滴加した。香味剤を反応混合物に完全に添加したら、混合物を室温でさらに4時間撹拌した。反応混合物をBuch Laboratory噴霧乾燥機に供給して、水を除去した。噴霧乾燥条件は以下の通りであった:
・入口温度:約170~190℃
・出口温度 :85~90℃
・回転速度:20,000~22,000/分
【0118】
得られた955グラムの易流動性白色粉末には、ガスクロマトグラフィーで決定して、約9.4%(w/w)のアンズ香味剤が含まれていた。
【0119】
B.捏和によるバナナ香味剤/β-シクロデキストリン複合体の調製
1135グラム(1モル)のβ-シクロデキストリンを、二軸捏和機において連続サイクリングにより、室温で250グラムの水で湿潤させた。機械的に活性化させた湿式β-シクロデキストリンに、120グラムのバナナ香味剤濃縮物を供給用漏斗で15分間添加し、同時に混合物を連続捏和した。捏和を45分間維持し、次いで得られた湿式バナナ香味剤β-シクロデキストリン複合体を取り出し、ステンレス鋼トレー中、45℃で恒量になるまで乾燥した。得られた生成物を細粉になるまで粉砕した。985グラムの細粉が得られた。バナナ香味剤含有量は、ガスクロマトグラフィーで決定して約8.8重量%であった。
【0120】
上記の香味剤および他の例の結合定数の測定結果を、下記のTable 2(表3)に示す。
【0121】
【表3】
【0122】
2つのタイプの方法を使用して、以上に記載された見かけの結合定数を決定した。Lewisら、「Thermodynamics of binding of guest molecules to alpha-and beta-cyclodextrins」、J. Chem. Soc. Perkin. Trans. 2、(15)、2081~2085頁、1973年(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)に記載されている「微小熱量測定」方法を使用した。また、包接複合体および対応する機械的混合物(シクロデキストリンの代わりに直鎖デキストリンを使用する点以外は同一組成)における香味剤保持を、Reinecciusら、「Encapsulation of flavors using cyclodextrins:comparison of flavor retention in alpha, beta, and gamma types」、Journal of Food Science、67(9)、3271~3279頁(2002年)(その開示内容全部は、すべての目的で参照により本明細書に組み込まれたものとする)によって説明された方法に従って、ガスクロマトグラフィーで測定することによって。
【0123】
(実施例10)-N-tert-ブチルヒドロキシルアミンとのα-シクロデキストリン包接複合体の調製
975グラムのα-シクロデキストリン水和物を、激しく撹拌しながら1リットルの脱イオン水に25℃で溶解した。得られた清澄な溶液に、98グラムのN-tert-ブチル-ヒドロキシルアミンを添加し、同時に反応混合物を連続的かつ強力に撹拌した。2時間撹拌した後、反応混合物を-55℃に冷却し、水を凍結乾燥で除去した。1,050グラムの凍結乾燥した固体複合体が得られた。ヒドロキシルアミンのα-シクロデキストリンマトリックスへの取り込みは、HPLCで決定して9.0重量%であった。凍結乾燥した生成物中の残留水分は、Karl-Fisher滴定法で決定して3.4%であった。
【0124】
また、α-シクロデキストリンN-tert-ブチル-ヒドロキシルアミン複合体の見かけの結合定数は、クロマトグラフィーで決定した。上記のα-シクロデキストリン/ヒドロキシルアミン包接複合体の結合定数は、25℃の水中で80~105M-1であることがわかった。これらの結果から、このような複合体を、安定した固体の形で製造し、水に溶解し、N-アルキル-ヒドロキシルアミン化合物を放出して、その有利な酸化防止および抗老化効果を発揮し、かつシクロデキストリン化合物を放出して、その有利な脂肪結合効果を発揮できることが明らかである。
【0125】
(実施例11)-着色剤とのホスト分子包接複合体の調製
A.着色剤とのアミロース包接複合体の調製:
100グラムのアミロース(DP=250、製造業者AVEBE Netherlands)を、室温で450mLのアルカリ性水溶液中、pH 12.2で撹拌した。激しい撹拌下、10mLの96%エタノールに溶解した青色ブドウから抽出された12グラムの天然着色剤混合物を、撹拌したアミロース溶液に添加する。反応混合物のpHは、撹拌下に2N塩酸を液滴供給することによって中性に設定する。中和した反応混合物は、濃い懸濁液になった。この懸濁液をさらに4時間撹拌して、着色剤複合体形成を完了した。形成された複合体を遠心により単離した。湿式固体生成物を恒量になるまで風乾し、細粉になるまで粉砕した。108グラムの収量で紫色非結晶固体複合体が得られた。複合体の着色剤含有量は、HPLC/UV-VIS検出で決定して9.6重量%であった。
【0126】
B.着色剤とのβ-シクロデキストリン複合体の調製
1135グラムの結晶性β-シクロデキストリンを250mLの水中で30分間捏和すると、湿式粉砕活性化シクロデキストリンが生じた。150グラムの天然ビート根エキス(ベタレイン含有量90%)を水溶液中の活性化シクロデキストリンに添加した。反応混合物を、二軸捏和機において周囲室温でさらに2時間捏和した。得られた湿式半固体を恒量になるまで風乾し、1100グラムの収量で赤色粉末が得られた。着色剤含有量は、分光測定法で決定して9.6重量%であった。
【0127】
(実施例12)-香味剤とのアミロース包接複合体の調製
55グラムのアミロース(DP=250、製造業者AVEBE)を、pH 12のアルカリ性溶液中、ゆっくり撹拌しながら、室温で前もって3時間膨潤させた。アルカリ性溶液を、連続撹拌下60℃に加熱し、5分間撹拌しながら2N塩酸で中和した。中和したアミロース溶液を、40℃でさらに連続撹拌し、同時に5グラムのイチゴ香味濃縮物をアミロース溶液に滴加した。撹拌中、反応混合物を室温に冷却し、生成した沈殿物を濾取した。湿式固体アミロース/イチゴ香味複合体を恒量になるまで風乾した。収量は、わずかなイチゴ香気を伴う52グラムの白色または灰白色固体であった。複合体の香味含有量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーで決定し、8.8重量%であることがわかった。
【0128】
(実施例13)-選択されたシクロデキストリン複合体の会合定数または結合定数の決定
包接複合体形成の平衡定数は、所与の条件(温度、媒体、圧力など)下で、分離種に比べた複合体の安定性の基礎的な尺度である。会合定数または結合定数または安定性定数または形成定数という用語は同義である。
【0129】
会合定数の数値は、第一に複合体を形成していない部分に対するゲスト物質の包接された部分(空洞に存在)の比を指す。ホストシクロデキストリンによるゲスト物質の包接の程度は、所与の条件下で会合定数と正相関にあるであろう。安定性定数が高くなれば、総ゲスト分子のより大きい割合がシクロデキストリン空洞に結合されることになる。
【0130】
いくつかの選択された弱い複合体形成ゲスト分子のα-、β-およびγ-シクロデキストリンとの会合定数または結合定数は、実験で決定された。キャピラリー電気泳動を利用して、選択された栄養補助食品であるチアミン、ナイアシンおよびL-アルギニンの水系中での複合体結合定数を決定した。以下の値を決定した:
【0131】
【表4】
【0132】
同様に、キャピラリー電気泳動を利用して、選択された香味剤である酢酸エチル、酢酸イソアミル、ジアセチル、およびΝ,Ν-ジメチルホルムアミドのα-、β-およびγ-シクロデキストリンとの複合体結合定数を決定する。以下の値を決定した:
【0133】
【表5】
【0134】
例示された香味物質のうち、酢酸イソアミルは、選択されたシクロデキストリンと理論モル比1:1に近いモル化学量論で包接複合体を形成する。
【0135】
以下の特許請求の範囲は、本明細書に開示される脂肪結合性組成物の選択された例示的な態様を包含する。これらの特許請求の範囲は、独立した有用性を備えた複数の明瞭な発明を包含することができ、本発明の範囲を限定するものではない。
【0136】
【表6】
【0137】
選択されたゲスト-シクロデキストリン包接複合体の、実験によって決定された比較的低いこれらの結合定数から、対応する脂肪酸-シクロデキストリン包接複合体が500~5000 1/Mの範囲の結合定数を示すので、比較的弱く会合したゲスト分子は脂肪酸の存在下で脂肪酸分子で置換されるはずであることが確信される。
【0138】
本発明は、前述の操作原理および好ましい実施形態を引用しながら、明らかにされ、説明されてきたが、形態および詳細の様々な変更を、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができるものであると、当業者には明らかとなるであろう。本明細書に記載および/または例示された要素、特徴、機能、および特性の新規および非自明の組合せおよび副組合せ(subcombination)はすべて、本開示の範囲内に包含されると認識されるべきである。本出願人は、本開示に関連したいずれの出願においても発明の1つまたは複数を特許請求する権利を留保する。本発明は、添付の特許請求の範囲に包含される代替形態、修正形態、および変形形態をすべて包含するものである。
図1
図2
図3
【外国語明細書】