(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054154
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】神経伝導ブロックのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
A61N1/36
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023024356
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2020544271の分割
【原出願日】2019-02-20
(31)【優先権主張番号】62/632,485
(32)【優先日】2018-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/640,579
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520299832
【氏名又は名称】プレシディオ・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・マイケル・アッカーマン
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ハーディンガー
(57)【要約】
【課題】本明細書で開示されているのは、比較的大量の電荷を安全に組織に送達することを伴い得る神経伝導ブロックのためのシステムおよび方法である。
【解決手段】そのようなシステムおよび方法は、電流電極システムを安全に監視するための制御システムを備えることができ、これは、電極リードを介して患者の標的組織に直流を送達することと、電極にかかる駆動電圧を測定することと、電極にかかる駆動電圧を所定の閾値範囲の値と比較することと、身体インピーダンスを測定することと、身体インピーダンスの測定からリード間の電圧降下を決定することと、リード間の電圧降下を所定の電圧範囲内に維持するように駆動電圧を調整することとを含む。
【選択図】
図22
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電極システムを安全に監視するための方法であって、
電極のリードを介して患者の標的組織に直流を送達することと、
電極にかかる駆動電圧を測定することと、
前記電極にかかる駆動電圧を所定の閾値範囲の値と比較することと、
身体のインピーダンスを測定することと、
前記身体のインピーダンスの測定からリード間の電圧降下を決定することと、
前記リード間の電圧降下を所定の電圧範囲内に維持するように前記駆動電圧を調整することと、を含む方法。
【請求項2】
前記身体のインピーダンスを測定することが、前記電極のリード間に短絡電流入力を送達するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記短絡電流入力が約100マイクロアンペア以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記短絡電流入力が約200マイクロ秒未満の間にわたって送達される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記所定の電圧範囲が水の電気分解電位より低い、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記駆動電圧を調整することが、送達される直流の振幅を調整するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記直流が、陽極直流と循環する陰極電流を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記直流が約1Hz未満の周波数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
直流神経ブロックのためのシステムであって、
直流発生器と、
作用電極および対電極と、
第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を循環的に印加し、第2の持続時間にわたって前記第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加し、前記第1の持続時間にわたる前記第1の極性のピーク電圧の測定値と前記第2の持続時間にわたる前記第2の極性のピーク電圧の測定値とを受信し、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間にわたって前記ピーク電圧を分析することによって前記直流を調整し、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間にわたって測定された前記ピーク電圧が絶対閾値限度未満である場合に電流の大きさを電流限度まで所定の量だけ増加させ、前記第1の持続時間または前記第2の持続時間にわたって測定された前記ピーク電圧が絶対閾値限度より高い場合に前記電流の大きさを或る量で減少させるように構成されているコントローラと、を備えるシステム。
【請求項10】
前記直流が約1Hz未満の周波数を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記絶対閾値限度が水の電気分解電位より低い、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記作用電極が塩化銀を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記電流限度が、所定の電流限度であり、前記電流の大きさを減少させることが所定の量だけ減少させることである、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラが、前記第1の極性のピーク電圧の変動が設定値より低くなった後、前記電流の大きさを固定するように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
作用電極の直流調整を安全に監視するための方法であって、
第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を印加することと、
第2の持続時間にわたって前記第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加することと、
前記第1の持続時間にわたる前記第1の極性のピーク電圧の測定値と、前記第2の持続時間にわたる前記第2の極性のピーク電圧の測定値とを受信することと、
前記第1の持続時間および前記第2の持続時間にわたる前記ピーク電圧を分析することによって前記直流を調整し、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間にわたって測定されたピーク電圧が絶対閾値限度より低い場合に電流の大きさを或る量で所定の電流限度まで増加させることと、含む方法。
【請求項16】
前記電流の大きさを増加させることが、所定の量だけ増加させることである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の極性が陽極性であり、前記第2の極性が陰極性である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記電流限度が約5mAである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ピーク電圧の絶対閾値限度が約1.5Vである、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の持続時間または前記第2の持続時間にわたって測定されたピーク電圧が絶対閾値限度値より高い場合に前記電流の大きさを所定の量だけ減少させるステップをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項21】
第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を印加するステップと第2の持続時間にわたって前記第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加するステップが、1サイクルの直流送達を含み、前記方法が少なくとも約10サイクルの直流送達を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記作用電極が塩化銀を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
交流電極システムの有効性を高めるための方法であって、
DC(直流)オフセット波形を利用して電極および電極リードを介して交流を患者の標的組織に送達することを含み、
前記電極または前記電極リードが、高密度電荷材料と、SINE(分離界面神経電極)と、銀‐塩化銀材料とのうちの1つ以上を含み、
前記方法は、標的ニューロンの興奮性を高めることによって閾値を減少させ、前記標的組織の刺激の治療範囲を広げる、方法。
【請求項24】
前記標的組織が脊髄を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記交流の周波数が少なくとも約10kHzである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記患者の痛みを治療または予防するための請求項23に記載の方法。
【請求項27】
交流電極システムの有効性を高めるためのシステムであって、
パルス発生器と、
DC(直流)オフセット波形を利用して電極および電極リードを介して交流を患者の標的組織に送達するようにとの信号を前記パルス発生器に送るように構成されているコントローラとを備え、
前記電極または前記電極リードが、高密度電荷材料と、SINE(分離界面神経電極)と、銀‐塩化銀材料とのうちの1つ以上を含み、
前記システムが、標的ニューロンの興奮性を高めることによって閾値を減少させ、前記標的組織の刺激の治療範囲を広げるように構成されている、システム。
【請求項28】
前記標的組織が脊髄を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記交流の周波数が少なくとも約10kHzである、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記患者の痛みを治療または予防するための請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
非標的組織の興奮性を下げるように構成されている請求項27に記載のシステム。
【請求項32】
副作用を軽減するように構成されている請求項27に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先出願の参照による組み込み
本出願は、参照により全体が本明細書に組み込まれている2018年2月20日に出願した米国仮出願第62/632485号および2018年3月9日に出願した米国仮出願第62/640579号の非仮出願として米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する。外国または国内優先権の主張が本出願とともに提出された出願データシートに明記されているいかなる出願もすべて、規則37CFR§1.57の下で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、各々が参照により全体が本明細書に組み込まれている2017年4月3日に出願した米国仮出願第62/481092号および2017年4月14日に出願した米国仮出願第62/485882号の非仮出願として米国特許法第119条(e)項に基づく利益を主張する、2018年4月2日に出願した米国出願第15/943601号を参照により組み込む。
【0003】
本出願は、いくつかの実施形態において、神経組織を通じた生体信号のブロック(block,遮断)を円滑にすることに関する。
【背景技術】
【0004】
痛みのゲートコントロール理論は、1960年代に発展し、脊髄内の非侵害受容性線維(非痛覚伝達線維)を選択的に刺激して脳への疼痛刺激の伝達を抑制することによって脳に到達する痛みの入力を低減する刺激ベースの疼痛管理療法の出現につながった(非特許文献1)。このゲートコントロール理論に基づいて間接的に痛みを軽減する、脊髄刺激(SCS)のための現在の刺激システムは、典型的には、100Hz未満の周波数範囲、最近ではkHzの周波数範囲の刺激信号に依拠している。同じメカニズムを通じて分節性疼痛を軽減するために、後根神経節DRGの類似の周波数範囲内の刺激も採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第9008800号明細書
【特許文献2】米国特許第9498621号明細書
【特許文献3】米国特許第10071241号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0280691号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2012/0016226号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Mendell、「Constructing and Deconstructing the Gate Theory of Pain」、Pain、2014年2月、155(2):210~216頁
【非特許文献2】Nahin、「Estimates of Pain Prevalence and Severity in Adults: United States, 2012」、The Journal of Pain、2015年8月、16(8):769~780頁
【非特許文献3】Borsook、「A Future Without Chronic Pain: Neuroscience and Clinical Research」、Cerebrum、2012年6月
【非特許文献4】Tjepkema‐Cloostermansら、「Effect of Burst Evaluated in Patients Familiar With Spinal Cord Stimulation」、Neuromodulation、2016年7月、19(5):492~497頁
【非特許文献5】BhadraおよびKilgore、「Direct Current Electrical Conduction Block of Peripheral Nerve」、IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering、2004年9月、12(3):313~324頁
【非特許文献6】Merrill、「Electrical Stimulation of Excitable Tissue: Design of Efficacious and Safe Protocols」、Journal of Neuroscience Methods、2005年、141:171~198頁
【非特許文献7】Ackermannら、「Separated Interface Nerve Electrode Prevents Direct Current Induced Nerve Damage」、J Neurosci Methods、2011年9月、201(1):173~176頁
【非特許文献8】FridmanおよびSantina、「Safe Direct Current Stimulation to Expand Capabilities of Neural Prostheses」、IEEE Transaction of Neural Systems and Rehabilitation Engineering、2013年3月、21(2):319~328頁
【非特許文献9】FridmanおよびSantina、「Safe Direct Current Stimulator 2: Concept and Design」、Conf Proc IEEE Eng Med Bio Soc、2013年: 3126~3129頁
【非特許文献10】Nakajimaら、「Cervical angina: a seemingly still neglected symptom of cervical spine disorder?」、Spinal Cord、2006年、44:509~513頁
【非特許文献11】Busselら、「Successful Treatment of Intractable Complex Regional Pain Syndrome Type I of the Knee With Dorsal Root Ganglion Stimulation: A Case Report」、Neuromodulation、2015年1月、18(1):58~61頁
【非特許文献12】Krumら、「Catheter‐based renal sympathetic denervation for resistant hypertension: a multicentre safety and proof‐of‐principle cohort study」、The Lancet、2009年、373(9671):1275~1281頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この前提に基づく技術は、痛覚伝達抑制が完全ではなく、知覚異常などの副作用が患者に不快感を与える可能性があるので、完璧ではない。したがって、非侵害受容性線維のゲート理論活性化を通じて疼痛信号を間接的に減少させるのではなく、むしろ疼痛信号を伝達しないよう疼痛線維を直接ブロックする疼痛を治療するシステムおよび方法があることが望ましい。さらに、神経組織または神経活動のブロックは、痛みに影響を及ぼすことだけでなく、運動障害、精神疾患、心臓血管の健康の管理、さらには糖尿病などの病状の管理にも関わっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示されている方法および装置またはデバイスは、各々、その望ましい属性にどの1つも単独では関わらないいくつかの態様を有する。次に、本開示の範囲を制限することなく、たとえば、この後の請求項によって表されるように、そのより顕著な特徴が簡潔に説明される。
【0009】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、直流電極システムをより安全に監視するための方法である。方法は、電極リードを介して患者の標的組織に直流電流を送達することを含むことができる。方法は、電極間の駆動電圧を測定することを含むことができる。方法は、電極間にかかる駆動電圧を所定の閾値範囲の値と比較することを含むことができる。方法は、身体インピーダンスを測定することを含むことができる。方法は、身体インピーダンス測定からリード間の電圧降下を決定することを含むことができる。方法は、リード間の電圧降下を所定の電圧範囲内に維持するように駆動電圧を調整することを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、身体インピーダンスを測定することは、電極リード間に短絡電流入力を送達することを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、入力短絡電流は、約100マイクロアンペア以下であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、短絡電流入力は、約200マイクロ秒未満の間、送達される。
【0013】
いくつかの実施形態において、所定の電圧範囲は、水の電気分解電位より低い。
【0014】
いくつかの実施形態において、駆動電圧を調整することは、送達される直流の振幅を調整することを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、直流は、陽極直流と循環する陰極直流を含むことができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、直流は、約1Hz未満の周波数を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態において、直流神経ブロックのためのシステムは、直流発生器を備えることができる。システムは、作用電極および対電極を備えることができる。システムは、第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を循環的に印加することができ、第2の持続時間にわたって第1の極性とは反対の第2の極性の直流を循環的に印加することができるコントローラを備えることができる。コントローラは、第1の持続時間にわたる第1の極性のピーク電圧の測定値と、第2の持続時間にわたる第2の極性のピーク電圧の測定値とを受信することができる。コントローラは、第1の継続時間および第2の継続時間にわたるピーク電圧を分析することにより、直流を調整することができる。コントローラは、第1の持続時間および第2の持続時間にわたる測定されたピーク電圧が絶対閾値限度値より低い場合、電流の大きさを電流限度値まで所定の量だけ増加させることができる。コントローラは、第1の持続時間または第2の持続時間にわたって測定されたピーク電圧が絶対閾値限度値より高い場合、電流の大きさを一定の量だけ減少させることができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、直流は、約1Hz未満の周波数を含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、絶対閾値限度値は、水の電気分解電位より低い。
【0020】
いくつかの実施形態において、作用電極は、塩化銀を含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、電流限度値は、所定の電流限度値であってよく、電流の大きさは、所定の量だけ減じられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、コントローラは、第1の極性のピーク電圧の変動が設定値より低くなると電流の大きさを固定するように構成される。
【0023】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、作用電極の直流調整をより安全に監視するための方法である。方法は、第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を印加することを含むことができる。方法は、第2の持続時間にわたって第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加することを含むことができる。この方法は、第1の持続時間にわたる第1の極性のピーク電圧の測定値と、第2の持続時間にわたる第2の極性のピーク電圧の測定値とを受信することを含むことができる。方法は、第1の継続時間および第2の継続時間にわたるピーク電圧を分析することにより、直流を調整することを含むことができる。方法は、第1の持続時間および第2の持続時間にわたる測定されたピーク電圧が絶対閾値限度値より低い場合、電流の大きさを所定の電流限度値まで一定の量だけ増加させることを含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、方法は、電流の大きさを所定の量だけ増加させることを含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1の極性は陽極性であり、第2の極性は陰極性である。
【0026】
いくつかの実施形態において、電流限度値は約5mAである。
【0027】
いくつかの実施形態において、ピーク電圧絶対閾値限度値は約1.5Vである。
【0028】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の持続時間または第2の持続時間にわたる測定された絶対ピーク電圧が絶対閾値限度値より高い場合に、電流の大きさを所定の量だけ減少させることを含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、方法は、第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を印加することを含むことができ、第2の持続時間にわたって第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加することは、1サイクルの直流送達を含むことができる。方法は、少なくとも約10サイクルの直流送達を含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、作用電極は、塩化銀、窒化チタン、および/または本明細書の別のところで開示されているものを含む他の材料を含むことができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、交流電極システムの有効性を高めるための方法である。方法は、DCオフセット波形を利用して電極および電極リードを介して交流を患者の標的組織に送達することを含むことができる。電極または電極リードは、高密度電荷材料、SINE電極、および/または銀‐塩化銀材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。方法は、標的ニューロンの興奮性を高め、それによって閾値を減少させ、標的組織刺激の治療範囲(therapeutic window)を広げることを含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、標的組織は脊髄を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、交流の周波数は少なくとも約10kHzである。
【0034】
いくつかの実施形態において、方法は、患者の痛みを治療または予防するための方法である。
【0035】
本明細書に開示されているシステムは、交流電極システムの有効性を高めるように構成することができる。システムは、パルス発生器を備えることができる。システムは、DCオフセット波形を利用して電極および電極リードを介して交流を患者の標的組織に送達するために信号をパルス発生器に送ることができるコントローラを備えることができる。電極または電極リードは、高密度電荷材料、SINE電極、および/または銀‐塩化銀材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。システムは、標的ニューロンの興奮性を高め、それによって閾値を減少させ、標的組織刺激の治療範囲を広げることができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、標的組織は脊髄を含むことができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、交流の周波数は少なくとも約10kHzである。
【0038】
いくつかの実施形態において、システムは、患者の痛みを治療または予防するためのものである。
【0039】
いくつかの実施形態において、システムは、非標的組織の興奮性を減少させることができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、システムは、副作用を軽減することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、神経体に沿った活動電位伝達を変調するためのシステムは、電気化学プロセスが生じて電流をイオンの形態で発生し神経の周囲の電位を変化させて神経膜電位を変調する電極を備える電子‐イオン電流変換セル(electron to ion current conversion cell)(EICCC)を具備する。
【0042】
いくつかの実施形態において、神経体に沿った活動電位伝達を変調するためのシステムは、容量性充電プロセスが生じて電流をイオンの形態で発生し神経の周囲の電荷密度を変化させて神経膜電位を変調する電極を備える電子‐イオン電流変換セルを具備する。
【0043】
いくつかの実施形態において、神経体に沿った刺激伝達を変調するためのシステムは、電気化学プロセスが生じて電流をイオンの形態で発生し神経の周囲の電荷密度を変化させて神経膜電位を変調する電極を備える電子‐イオン電流変換セルを具備する。
【0044】
いくつかの実施形態において、神経体に沿った刺激伝達を変調するためのシステムは、電気化学プロセスおよび容量性充電プロセスが生じて電流をイオンの形態で発生し神経の周囲の電荷密度を変化させて神経膜電位を変調する電極を備える電子‐イオン電流変換セルを具備する。
【0045】
いくつかの実施形態において、システムは、神経組織をブロック状態にするように神経の近くの電位を変調する。
【0046】
いくつかの実施形態において、システムは、標的神経を急性神経ブロックの状態にする。
【0047】
いくつかの実施形態において、システムは、標的神経を慢性神経ブロックの状態にする。
【0048】
いくつかの実施形態において、システムは、神経組織を抑制状態にするように電位を変調する。
【0049】
いくつかの実施形態において、システムは、標的神経を急性神経抑制の状態にする。
【0050】
いくつかの実施形態において、システムは、標的神経を神経抑制過度の状態にする。
【0051】
いくつかの実施形態において、電極は、銀、塩化銀(Ag/AgCl)の電極材料を含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、電極は、銀(Ag)の電極材料を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、電極は、塩化銀(AgCl)の電極材料を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、電極構成材料の質量は、指定された範囲内に維持される。
【0055】
いくつかの実施形態において、電極のところで生じる電気化学プロセスは可逆である。
【0056】
いくつかの実施形態において、電極は犠牲電極であり、復活させることができない。
【0057】
いくつかの実施形態において、システムは、電解質中に浸漬され、神経組織と電気的に接触するイオン伝導体に流体的および電子的に結合されている電極を備える。
【0058】
いくつかの実施形態において、イオン伝導体は、ヒドロゲル材料を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、システムは、1つまたは複数の電極にリードを介して接続される1つまたは複数の電流源を備える。
【0060】
いくつかの実施形態において、イオン伝導体は、電気化学プロセスの副生成物を電解質体積に選択的に隔離するための近位層、たとえば、スクリーンまたはフィルタ要素を備える。
【0061】
いくつかの実施形態において、イオン伝導体は、電気化学プロセスの副生成物を神経組織から選択的に隔離するための遠位スクリーンまたはフィルタ要素を備える。
【0062】
いくつかの実施形態において、イオン伝導体は、電気化学プロセスの副生成物を神経組織から選択的に隔離するための複数のスクリーンまたはフィルタ要素を備える。
【0063】
いくつかの実施形態において、システムは、生体適合性を有する組織と接触する材料を含む。
【0064】
いくつかの実施形態において、神経体に沿った刺激伝達を変調するための2つまたはそれ以上のシステムは、神経の周囲の電位を変化させ、神経膜電位を変調するための電子‐イオン電流変換セルを備える。
【0065】
いくつかの実施形態において、イオンの形態で直流を送達することによって一定の神経ブロックを維持するために2つまたはそれ以上のシステムを使用する方法は、一方のシステムを一方の極性の電流を用いるブロックモードで動作させ、他方の1つまたは複数のシステムを反対極性の電流を用いるモードで動作させることを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、長期にわたるブロックを神経組織に施す方法は、最初にイオンの形態で電流を神経組織の近位に送達して、神経組織を電流が停止した後もブロックが継続する抑制状態にすることを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、長期にわたるブロックを神経組織に施す方法は、最初に、イオンの形態で電流を神経組織の近位に送達して神経組織を電流が停止した後もブロックが継続する抑制状態にし、その後、電流を送達し神経を抑制状態に維持することを含む。
【0068】
いくつかの実施形態において、長期にわたるブロックを神経組織に施す方法は、最初に、イオンの形態で電流を神経組織の近位に送達して神経組織を電流が停止した後もブロックが継続する抑制状態にし、その後、電流を送達し神経を抑制状態に維持し、それによって電流送達のフェーズとフェーズとの間の反対極性の電流が神経抑制状態に影響を及ぼさない、ことを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、DRGの神経信号伝達特性にアクセスして変調するためのシステムは、任意選択で放射線不透過性マーカーと探り針とを備える導入器針と、針の内径に嵌合するように構成されている電極とを具備する。電極は電流源との電気的連通をもたらすバーブおよびリードなどの応力緩和および固定特徴を備える。
【0070】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスして変調するためのシステムは、任意選択で放射線不透過性マーカーと探り針とを備える導入器針と、針の内径に嵌合するように構成されている電極とを具備する。電極は電流源との電気的連通をもたらすバーブおよびリードなどの応力緩和および固定特徴を備える。
【0071】
いくつかの実施形態において、DRGの神経信号伝達特性にアクセスして変調するための方法は、体腔内に導入器針を挿入して神経部位に送ることと、探り針を取り出すことと、電極を挿入することと、電極を所望の組織部位に固定することと、針を取り出すことと、EICCC電極リードを電流源に接続し、電流を送達して神経を抑制状態にすることとを含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスして変調するための方法は、体腔内に導入器針を挿入して神経部位に送ることと、探り針を取り出すことと、電極を挿入することと、電極を所望の組織部位に固定することと、針を取り出すことと、EICCC電極リードを電流源に接続し、電流を送達して神経を抑制状態にすることとを含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、システムは外部電流源を備える。
【0074】
いくつかの実施形態において、システムは埋め込み可能電流源を備える。
【0075】
いくつかの実施形態において、システムはプログラム可能電流源を備える。
【0076】
いくつかの実施形態において、システムは、神経組織膜電位を監視し、電流源に対するフィードバック測定を提供するために、神経組織の近位にセンサを備える。
【0077】
いくつかの実施形態において、システムは、電極電位を監視するために、EICCC内の作用電極の参照電極として働く電極であるセンサを備える。
【0078】
いくつかの実施形態において、神経をブロック状態に維持するための方法が開示され、この方法では、神経膜電位は、監視されて、電流源および電流源コントローラにフィードバックを提供するための信号として使用され、電極への電流源出力の変調を可能にする。
【0079】
いくつかの実施形態において、神経組織へのイオン電流の送達のためのシステムは、電流送達源と、電源と、イオン伝導電極が接続され得るコネクタ要素によるEICCCへの電気的接続部とを備え、システムは気密封止される。
【0080】
いくつかの実施形態において、DRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、神経痛による痛みを軽減するために使用される。
【0081】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、狭心症による痛みを軽減するために使用される。
【0082】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、虚血性疼痛による痛みを軽減するために使用される。
【0083】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、複合性局所疼痛症候群(CRPS)による痛みを軽減するために使用される。
【0084】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、身体の特定の領域の痛みを軽減するために使用される。
【0085】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、身体の特定の手足の痛みを軽減するために使用される。
【0086】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、身体の手足の特定の領域の痛みを軽減するために使用される。
【0087】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のDRGの神経信号伝送特性にアクセスして変調するためのシステムは、改善された疼痛軽減回復について異なる電流信号を異なるDRGに送達することができる。
【0088】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスして変調するためのシステムは、複数の電極リードを備える。
【0089】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、組織に接触し、組織に電流を送達する1つまたは複数の領域を含む複数の電極リードを備える。
【0090】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、組織に接触し、組織に電流を送達する1つまたは複数の領域を含む脊髄に沿った異なるレベルの複数の電極リードを備える。
【0091】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するためのシステムは、組織に接触し、組織に電流を送達する1つまたは複数の領域を含み、組織に所望の電流および電場を送達するように個別に調整できる、複数の電極リードを備える。
【0092】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、周術期疼痛ブロックの一部として疼痛緩和を引き起こすことを含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、脊髄の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、短時間のうちに逆転可能である周術期疼痛ブロックの一部として疼痛緩和を引き起こすことを含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、疼痛緩和を引き起こすために末梢神経の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、病巣の痛みを軽減するために末梢神経組織にEICCCを用いて直流を送達することを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、疼痛緩和を引き起こすために末梢神経の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、幻肢痛を軽減するために末梢神経組織にEICCCを用いて直流を送達することを含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、疼痛緩和を引き起こすために末梢神経の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、神経腫の痛みを軽減するために末梢神経組織にEICCCを用いて直流を送達することを含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、疼痛緩和を引き起こすために末梢神経の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、神経痛の痛みを軽減するために末梢神経組織にEICCCを用いて直流を送達することを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、腎神経の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、高血圧症を軽減するために交感神経系の活動を低下させることを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、交感神経節の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、心不全の進行を緩和するために頸部交感神経節の活動を低下させることを含む。
【0100】
いくつかの実施形態において、交感神経節の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、頻脈を緩和するか、または防止するために頸部交感神経節の活動を低下させることを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、迷走神経の神経信号伝達特性にアクセスし、調節するための方法は、心拍数を増加させるために迷走神経の活動を低下させることを含む。
【0102】
いくつかの実施形態において、胃を神経支配する迷走神経の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、満腹感および飽満感を高めるために迷走神経の活動を低下させることを含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、肝神経の神経信号伝達特性にアクセスし、調節するための方法は、インスリン産生を増加させるために交感神経系の活動を低下させることを含む。
【0104】
いくつかの実施形態において、肝神経の神経信号伝達特性にアクセスし、調節するための方法は、インスリン抵抗性を低下させるために交感神経系の活動を低下させることを含む。
【0105】
いくつかの実施形態において、脳組織の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、脳の所望の領域にアクセスし、神経組織の活動を低下させて運動障害を治療することを含む。
【0106】
いくつかの実施形態において、脳組織の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、脳の所望の領域にアクセスし、神経組織の活動を低下させて精神疾患を治療することを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、脳組織の神経信号伝達特性にアクセスし、変調するための方法は、脳の所望の領域にアクセスし、神経組織の活動を低下させて慢性疼痛を治療することを含む。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されているのは、再生可能電極を利用した患者の神経ブロックのためのシステムである。システムは、直流発生器、および/または塩化銀を含む少なくとも1つの電極を備えることができる。システムは、神経内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性を有する第1の直流を電極を通じて送達するようにとの信号を直流発生器に送り、および/または電極内の塩化銀の量を減少させ、それによって銀無垢および塩化物イオンを形成するように構成されているコントローラも備えることができる。コントローラは、塩化銀の量を増大させるのに十分な第2の極性を有する第2の直流を電極を通じて送達するようにとの信号を直流発生器に送り、それによって電極を再生するように構成することもできる。システムは、選択性障壁によって電極から離間された神経界面を備えることもできる。選択性障壁は、神経をブロックするために塩化物イオンが障壁を通り神経界面に向かって進むことを可能にするように構成することもできる。システムは、主に銀/塩化銀反応などの反応が発生しているかどうかを決定するように構成されているセンサも備えることができる。コントローラは、センサからデータを受信し、水が電気分解されているときに第1の直流信号または第2の直流信号のうちの少なくとも一方を接続切断または変調するようにさらに構成することができる。選択性障壁は、銀イオンが障壁を通過して神経界面に向かうのを防ぐようにさらに構成することができる。電極は、絶縁されたエンクロージャ内に収納することができる。選択性障壁は、イオン交換膜、および/またはヒドロゲルを含むことができる。システムは、いくつかの場合において、機械的可動部品を有していなくてもよい。コントローラは、減少した塩化銀の量が、第1の直流の送達前の電極の表面積よりも大きくなるように第1の直流を送達するように構成することができる。コントローラは、減少した塩化銀の量が、第1の直流の送達前の電極の機能的表面積全体などの表面積を均等に覆うことができる量より、約1.25倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、もしくはそれ以上の倍数だけ多いか、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲となるような第1の直流を送達するように構成することもできる。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書にさらに開示されているのは、再生可能電極を利用した患者の神経ブロックのためのシステムである。システムは、直流発生器、固体成分と、イオン成分と、イオン成分に直接隣接する神経界面とを備える少なくとも1つの電極、直流発生器に対して、神経内の伝導をブロックし、固体成分の量を減少させるのに十分な第1の極性を有する第1の直流を電極を通して送達し、および/または固体成分の量を増加させるのに十分な第2の極性を有する第2の直流を電極を通して送達し、それによって電極を再生するようにとの信号を送るように構成されているコントローラのうちの1つまたは複数を備えることができる。システムは、主に固体成分/イオン成分反応が発生しているかどうかを決定するように構成されている1つまたは複数のセンサを備えることもできる。コントローラは、センサからデータを受信し、水が電気分解されているときに第1の直流信号または第2の直流信号のうちの少なくとも一方を接続切断または変調するようにさらに構成することができる。電極、または複数の電極は、同じもしくは異なるエンクロージャなどの、絶縁されたエンクロージャ内に収納することができる。電極は、イオン成分と神経との間に間隔をあけて配置される選択性障壁などの層を備えることもできる。層は、イオン成分のマイナスに帯電したイオンが層を通過して神経の方へ移動するのを許し、イオン成分のプラスに帯電したイオンが層を通過して神経の方へ移動するのを妨げることを選択的に行うように構成することができる。システムは、機械的可動部品を有していなくてもよい。神経界面は、ゲル、ヒドロゲル、およびイオン伝導性ポリマーのうちの1つまたは複数によって電極から離間され得る。電極は、電解質溶液、たとえば、等張食塩水などの溶液によって部分的にまたは完全に囲まれ得る。固体成分は、銀を含むことができ、および/またはイオン成分は、塩化銀を含むことができる。コントローラは、減少した固体成分の量が固体成分の表面積よりも大きくなるように第1の直流を送達するように構成することができる。コントローラは、第1の直流の送達の停止後、少なくとも約10分またはそれ以上の間、神経の伝導を少なくとも部分的に妨げる過剰抑制状態に神経を維持するように構成することもできる。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書にさらに開示されているのは、再生可能電極を利用した患者の神経ブロックのための方法である。この方法は、神経内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性の第1の直流を、神経の近くにある第1の成分を含む電極を通して送達すること、および第1の極性とは反対の第2の極性の第2の直流を、電極を通して送達することのうちの1つまたは複数を含むことができる。第1の直流は、電極の第1の成分の量を減少させ、それによって第2の成分とは異なる第2の成分を生成することができる。第2の直流は、電極の第1の成分の量を増加させ、および/または第2の成分の量を減少させて、電極を再生することができる。方法は、第1の直流を送達している間、電極内の第1の成分または第2の成分の量を動的に感知し、第1の成分の量が所定の閾値に達したと感知され、および/または水が電気分解されたときに第1の直流の送達を停止することもできる。
【0111】
また、本明細書において開示されているのは、複数の再生可能電極を利用する長時間神経ブロックのための方法である。この方法は、神経内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性を有する第1の直流を、神経の近くにある、固体成分およびイオン成分を含む第1の電極を通して送達すること、神経が過剰抑制状態にある間に第1の電極から軸方向に離間し、神経の近くにある、第2の電極を通して第1の極性と反対の第2の極性を有する第2の直流を送達すること、および/または第1の直流および第2の直流の極性を反転させ、極性を反転させることで神経を過剰抑制状態に維持することを行うことができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、さらに本明細書に開示されるのは、少なくとも1つの再生可能電極を利用する長時間神経ブロックのための方法である。方法は、神経内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性を有する第1の直流を、神経の近くにある電極に送達することを含むことができる。第1の直流を送達することで、神経を過剰抑制状態にし、第1の直流の送達を停止した後の神経の伝導を少なくとも部分的に妨げることができる。この方法は、神経が過剰抑制状態のままである間に、第1の極性とは反対の第2の極性を有する第2の直流を、電極を通して全体的に送達することも含むことができる。電極は、たとえば、電気化学的または容量性電極であってよい。容量性電極は、たとえば、タンタルまたはチタンを含むことができる。電極は、いくつかの場合において、銀および/または塩化銀を含むことができる。第1の直流を送達することで、電極を第1の構成から第2の構成に変えることができ、第2の直流を送達することで、電極を第2の構成から第1の構成に戻すか、または第1の構成に少なくとも近い構成に変えることができる。第2の構成は、第1の構成に比べて少ない量の材料および/または材料よりも低い電荷を含むことができる。
【0113】
また、本明細書において開示されているのは、少なくとも1つの再生可能電極を利用する神経組織ブロックのための方法である。方法は、神経組織内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性を有する第1の直流を、神経組織の近くにある電極に送達することを含むことができる。第1の直流を送達することで、神経組織を過剰抑制状態にし、第1の直流の送達を停止した後の神経組織の伝導を少なくとも部分的に妨げることができる。方法は、少なくとも約1分、10分、1時間、24時間、またはそれ以上の時間の間、神経組織を過剰抑制状態に維持することも含むことができる。方法は、神経組織の伝導能力を感知すること、および/または神経組織の伝導能力を感知した後に電極を通して第3の直流を神経組織に送達することによって神経組織を過剰抑制状態に維持することも含むことができ、第3の直流は第1の直流と同じ極性を有する。神経組織の伝導能力を感知することは、神経組織に刺激パルスを送達し、複合活動電位信号を測定すること、および/または参照電極を介して電位差を測定することを含み得る。神経組織は、脊髄神経、頭神経、もしくは末梢神経などの神経、または脳組織、後根神経節、脊髄視床路の組織、自律神経組織、交感神経組織、または副交感神経組織のうちの1つもしくは複数を含むことも可能である。直流は、急性もしくは慢性疼痛および/または虚血性疼痛などの痛みを治療するうえで治療効果があり得る。直流は、また、うつ病、不安、強迫性障害、PTSD、躁病、もしくは統合失調症などの精神疾患、トゥレット症候群、パーキンソン病、痙縮、もしくは本態性振戦などの運動障害、および/または高血圧症、鬱血性心不全、虚血性心筋症、狭心症、または不整脈などの心肺疾患を治療するうえで治療効果があり得る。
【0114】
また、本明細書において開示されているのは、可逆電極を利用する長時間神経ブロックのためのシステムである。システムは、直流発生器、固体成分と、イオン成分と、イオン成分に隣接する神経界面とを備える少なくとも1つの電極、ならびに直流発生器に、神経内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性を有する第1の直流を電極を通して送達し、神経を過剰抑制状態に維持して第1の直流の送達を停止した後の神経の伝導を少なくとも部分的に妨げ、および/または神経が過剰抑制状態のままである間、第2の極性を有する第2の直流を電極を通して全体的に送達するようにとの信号を送るように構成されているコントローラのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0115】
また、本明細書において開示されているのは、再生可能電極を利用する長時間神経ブロックを施すための方法である。この方法は、神経内の伝導をブロックするのに十分な第1の極性の第1の直流を、神経の近くにある、第1の成分および第2の成分を備える電極を通して送達すること、神経を過剰抑制して第1の直流電流の停止後の神経の伝導を少なくとも部分的に妨げること、および/または神経が過剰抑制状態にある間に、第1の極性とは反対の第2の極性の第2の直流を、電極を通して送達することを含むことができる。第1の直流は、第1の成分の量を減少させ、第2の成分の量を増加させることができる。第2の直流は、第1の成分の量を増加させ、第2の成分の量を減少させて、電極を再生することができる。いくつかの実施形態において、この方法は、第1の成分を完全に枯渇させることはしない。方法は、第1の成分および第2の成分の少なくとも一方の量を感知することと、第1の成分の量が所定の最小閾値に達したときに第1の直流の送達を停止することとを含むこともできる。第1の直流および第2の直流を送達した後の神経に送達される正味電荷は、ゼロであり得る。第1の直流は、陽極または陰極電流であってよく、第2の直流は、陰極または陽極電流であってよい。方法は、神経の伝導能力を感知すること、および/または神経の伝導能力を感知した後に第3の直流を、電極を通して神経に送達することによって神経を過剰抑制状態に維持することを含むことができ、第3の直流は第1の直流と同じ極性を有する。神経の伝導能力を感知することは、神経に刺激パルスを送達し、複合活動電位信号を測定すること、および/または参照電極を介して電位差を測定することを含むことができる。いくつかの実施形態において、第1の極性の第1の直流を送達することと、第2の極性の第2の直流を送達することとの間に、電流が流れない時間的ギャップが存在し得る。
【0116】
方法は、少なくとも1サイクル分、2サイクル分、またはそれ以上の追加のサイクル分の直流を送達することも含むことができる。1つのサイクルは、電極を通して、第1の極性の第1の直流を送達することと、第1の極性とは反対の第2の極性の第2の直流を送達することとを含むことができる。方法は、電極を神経の近くに埋め込むこと、電極を神経の近くに経皮的に通して位置決めすること、および/または電極を神経の近くに経皮的に横断させて位置決めすることを含むことができる。神経は、ゲル、ヒドロゲル、イオン伝導性ポリマー、および/または層によって電極から離間され得る。電極は、等張食塩水などの電解質溶液によって部分的にまたは完全に囲まれ得る。
【0117】
いくつかの実施形態において、直流送達システムは、本明細書に開示されているような任意の数の特徴または特徴の組合せを含むことも可能である。
【0118】
以下の詳細な説明では、詳細な説明の一部をなす、添付図面が参照される。図面中の類似の記号は、典型的には、文脈上別のものを示していない限り類似の構成要素を明示する。したがって、いくつかの実施形態において、部品番号は、複数の図中、類似の構成要素に使用され得るか、または部品番号は、図毎に異なっていてもよい。詳細な説明、図面、および請求項で説明されている例示的な実施形態は、制限することを意図されていない。他の実施形態も利用することができ、また本明細書に提示されている発明対象の精神または範囲から逸脱することなく、他の変更を加えることができる。本明細書で一般的に説明され、また図に例示されているような本開示の態様は、様々な異なる構成による配置、置換、組合せ、設計が可能であり、すべて明示的に考察され、本開示の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【
図1A】神経組織Nまたは神経組織Nの近位の領域と電気的に接触するイオン伝導性材料とのイオン伝導性材料‐電解質溶液界面と接触する電解質溶液中に電極が浸漬されているEICCC電極の一実施形態を示す図である。
【
図1B】電流源から一定の電流をプッシュすることによってAgCl電極の質量が陰極電流(還元反応)において減少し、次いで酸化反応において陽極電流とともに増加することができることを例示するグラフである。
【
図1C】本発明のいくつかの実施形態により、電極セル(EICCC)(上)に送達される電流が、長い充電フェーズでゼロの正味電荷移動を可能にしながら神経ブロック(下)を行うために電極セル‐神経界面(中)に送達される電荷にどのように関連付けられ得るかを示す図である。
【
図1D】本発明のいくつかの実施形態により、神経ブロックを促進するために電極セルに送達される波形パターンが示され、神経組織に送達される電流に関係なく神経ブロックが生じる過剰抑制領域を含む対応する神経ブロック期間とともに電極セルに送達される電流が示されている、図である。
【
図1E】電気的に絶縁されたリードを介して電流源に接続されている電子‐イオン電流変換セル(EICCC)の一実施形態を示す図である。
【
図1F】電子電流が正の軸によって指定されているように一方の極性を有するときに神経ブロックが活性状態であることを示し、電流の極性が負の軸によって指定されるように反転されたときに神経ブロックが非活性状態であることを示す構成を示す図である。
【
図1G】
図1Eに似ているが、従来の電極をイオン伝導体から、またイオン伝導体を神経それ自体から、それぞれ隔てる隔離スクリーンを備える構成を示す図である。
【
図1H】
図1Fに類似する電流対時間および神経ブロックステータス対時間を示すチャートである。
【
図1I】
図1Hに類似する構成を示すが、神経組織および/または神経Nの近位の領域の状態を監視するフィードバックセンサも含む図である。
【
図1J】
図1Iに類似する電流対時間および神経ブロックステータス対時間を示すチャートである。
【
図2A】いくつかの実施形態により、2つのEICCCが神経と界面を形成する二重電極システムを示す図である。
【
図2B】一方の電極が活性ブロッキング段階にあるときに他方の電極は電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非活性非ブロッキング段階にあるように2つの電極が反対極性の電流により駆動される時間の関数としてのグラフを示す図である。
【
図3A】二重の従来の電極は、神経と界面を形成しているが、一方の電極がブロッキング段階にあるときに他方の電極が電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非ブロッキング段階にあるように反対極性の電流で電気的に絶縁されたリードを介して電流源から駆動される一実施形態を示す図である。
【
図3B】二重の従来の電極は、神経と界面を形成しているが、一方の電極がブロッキング段階にあるときに他方の電極が電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非ブロッキング段階にあるように反対極性の電流で電気的に絶縁されたリードを介して電流源から駆動される一実施形態を示す図である。
【
図3C】二重のEICCCは、神経Nと界面を形成するが、一方の電極がブロッキング段階にあるときに他方の電極が電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非ブロッキング段階にあるように反対極性の電流で駆動される一実施形態を示す図である。
【
図3D】二重のEICCCは、神経Nと界面を形成するが、一方の電極がブロッキング段階にあるときに他方の電極が電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非ブロッキング段階にあるように反対極性の電流で駆動される一実施形態を示す図である。
【
図4A】神経組織または神経組織の近位の領域と電気的に接触するヒドロゲル、ゲル、または他のポリマーなどのイオン伝導性材料と流体的に接触する電解質溶液中に電極が浸漬されているEICCC電極の一実施形態を示す図である。
【
図4B】EICCCの監視を目的として、作用電極間の電圧降下を監視するために電極(作用電極)に近接する参照電極を追加した
図4Aに示されていたものに類似するシステムを示す図である。
【
図4C】EICCCの監視を目的として神経組織へのEICCC間の電圧降下を監視するために神経組織界面に近接する参照電極を追加した
図4Aに示されていたものに類似するシステムを示す図である。
【
図4D】従来のIPG(植え込み型パルス発生器)の形態をとり得る電流源(図示せず、端部付近)に差し込み、そこから延在するように構成されている電極リードの一実施形態を示す図である。
【
図4E】従来のIPG(植え込み型パルス発生器)の形態をとり得る電流源(図示せず、端部付近)に差し込み、そこから延在するように構成されている電極リードの一実施形態を示す図である。
【
図4F】従来のIPG(植え込み型パルス発生器)の形態をとり得る電流源(図示せず、端部付近)に差し込み、そこから延在するように構成されている電極リードの一実施形態を示す図である。
【
図4G】電流源、電池、または電源、およびEICCCを駆動するためのコントローラを収容する気密封止されたエンクロージャ内に一体化されたEICCCの一実施形態の概略を示す図である。
【
図5A】2つの電極接点が同じ電気的に絶縁されたエンクロージャ内に収納される電極構成の一実施形態を示す図である。
【
図5B】2つの電極接点が同じ電気的に絶縁されたエンクロージャ内に収納される電極構成の一実施形態を示す図である。
【
図6A】疼痛信号が通過する後根、および/または後根神経節(DRG)を示す図である。
【
図6B】リードおよび電流源とともに神経ブロックを円滑にするためにDRGに沿って位置決めされたブロッキング電極の一実施形態を示す図である。
【
図6C】DRGには針でアクセスすることができ、針は図示されているように硬膜を貫通するために使用することができることを例示する図である。
【
図6D】電極‐神経組織界面の接点は、次いで、DRGに接触して、または近位に、位置決めされ、導入針は、電極リードおよび神経組織界面を所望の位置に残すようにして後退させることができることを示す図である。
【
図6E】電極‐神経組織界面の接点は、次いで、DRGに接触して、または近位に、位置決めされ、導入針は、電極リードおよび神経組織界面を所望の位置に残すようにして後退させることができることを示す図である。
【
図7】各椎骨レベルからの関連付けられている後根神経節が、体内の特定の真皮節に対応し、DRGレベルで疼痛信号をブロックすることで、その特定のDRGに対して神経支配された真皮節における痛覚を低下させることができることを示す図である。
【
図8A】EICCCを利用して所望のレベル(および/または疼痛信号が上方向に移動するのでEICCCの遠位の(頭部から離れる方向の)脊髄レベル)で神経ブロックを発生し、電極の片側(左または右)または両側配置に応じて選択的疼痛ブロックを施すことができる外側脊髄視床路(LT路)に近接する刺激電極の留置を示す図である。
【
図8B】ツーイ針または類似の針を使用して電極リードを硬膜上腔内に導入することなど蛍光透視法によるガイドを用いる場合または用いない場合の経皮的留置術を示す図である。
【
図8C】リードが脊髄神経出口領域の間に置かれ、組織界面が外側脊髄視床路に近接するように、リードが硬膜上腔内の脊柱に沿って向き付けられ得ることを例示する図である。
【
図8D】リードが脊髄神経出口領域の間に置かれ、組織界面が外側脊髄視床路に近接するように、リードが硬膜上腔内の脊柱に沿って向き付けられ得ることを例示する図である。
【
図8E】リードが脊髄神経出口領域の間に置かれ、組織界面が外側脊髄視床路に近接するように、リードが硬膜上腔内の脊柱に沿って向き付けられ得ることを例示する図である。
【
図9A】視床内の脳深部ブロック(DBB)標的と界面を形成するように構成されている電子イオン電流変換セル(EICCC)電極を示す図である。
【
図9B】一体化された感知電極を備えるブロッキング/抑制電極の一実施形態を示す図である。
【
図10A】複数の組織界面が電極上に存在し、個別に取り扱い可能であるEICCC電極の一実施形態を示す図である。
【
図10B】複数の組織界面が電極上に存在し、個別に取り扱い可能であるEICCC電極の一実施形態を示す図であり、
図10Aの10B‐10Bの拡大図である。
【
図10C】複数の組織界面が電極上に存在し、個別に取り扱い可能であるEICCC電極の一実施形態を示す図であり、
図10Aの10C‐10Cの拡大図である。
【
図11】ブロッキング電極のリードがブロックまたは抑制を円滑にするように腎神経に接触することを示し、またEICCCが電流源(図示せず)に開放接続されていることを体系的に示している図である。
【
図12】頸および星状(頸胸)神経節を含む関連する交感神経節が心臓内の神経支配標的とともに示されている図である。
【
図13】選択された交感神経系関連解剖学的構造を例示する図である。
【
図14】電極リードが右胸部に示されている埋め込み可能な電流源の方へ下降している状態で頸部および/または胸部の右側内の右(および/または左)迷走神経の周り、またはその近くに留置されているEICCC電極の一実施形態を例示する図である。
【
図15】イオン電流がEICCCから組織部位のところに溜まるカフ形式組織界面に各迷走神経が包まれている二重EICCCシステムの一実施形態を例示する図である。
【
図16】イオン電流がEICCCから組織部位のところに溜まるカフ形式組織界面に各迷走神経が包まれている二重EICCCシステムの一実施形態を例示する図である。
【
図17】交感神経の抑制またはブロックが肝機能を調節し、グルコースおよびインスリン産生に影響を及ぼすためにも使用され得る非限定的な解剖学的構造の概略を例示する図である。
【
図18】本発明のいくつかの実施形態により、肝臓動脈および動脈の周りの神経がカフ形式組織界面によって囲まれているEICCCシステムを例示する図である。
【
図19】ある期間にわたる駆動電圧波形ならびに正および負の閾値を例示する図である。
【
図20】ある期間にわたる駆動電圧波形ならびに正および負の閾値を例示する図である。
【
図21】設定閾値に関する駆動電圧値に基づき電流振幅が設定目標値に向かって高くなる電極状態調整プロセスを例示する電圧および電流対時間のグラフを概略として示す図である。
【
図22】液体を保持するように構成されているカテーテルに動作可能に接続されている神経組織界面を備えることができるシステムを例示する図である。
【
図23A】反応材料を入れた反応チャンバを備えるシステムを例示する図である。
【
図23B】反応/作用電極の電気化学的状態を検出するための一体化されたセンサを備えることができる分離された界面神経電極を例示する図である。
【
図24】システムおよび方法が、鉛酸蓄電池、ニッケル‐カドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、亜鉛炭素電池、バイオ電池、または他のタイプの電池の化学反応などの電池型の化学反応を利用してDC電流を組織に送達することができることを例示する図である。
【
図25】カテーテルの長さを短縮しインピーダンスを低減するために患者の部位への装着を可能にするように修正されたSINE型電極の概略を示す図である。
【
図26A】リード/カテーテルの一部が所望の解剖学的部位に埋め込まれた状態の、DC発生器、電線、および反応チャンバを備えるウェアラブルシステムを例示する図である。
【
図26B】治療(たとえば、神経ブロック)の部位に対して局部的である包帯状システムを例示する図である。
【
図26C】2つの異なるリード出口構成を有するそのようなウェアラブルデバイスの概略的な実施形態を示す図である。
【
図27A】互いに離間する複数の配置でDCブロックを循環させることによって痛みまたは他の病状を治療する方法を開示する図である。
【
図27B】互いに離間する複数の配置でDCブロックを循環させることによって痛みまたは他の病状を治療する方法を開示する図である。
【
図27C】互いに離間する複数の配置でDCブロックを循環させることによって痛みまたは他の病状を治療する方法を開示する図である。
【
図27D】互いに離間する複数の配置でDCブロックを循環させることによって痛みまたは他の病状を治療する方法を開示する図である。
【
図28A】電圧監視のための任意選択の参照電極を備えるDC電流システムの概略を例示する図である。
【
図28B】DC電流の送達が続くとともに電極電圧が増大する単純な例を示す図である。
【
図29】電圧は上側および下側閾値バンドを有する所望の範囲内に保たれ、これにより電極部位に生じる電気化学的反応を制限することを例示する図である。
【
図30A】単一故障安全DCシステムおよび方法の実施形態を例示する図である。
【
図30B】単一故障安全DCシステムおよび方法の実施形態を例示する図である。
【
図30C】単一故障安全DCシステムおよび方法の実施形態を例示する図である。
【
図31】銀‐塩化銀電極の概略を例示する図である。
【
図32】対電極および作用電極が電解質槽内に浸漬され、2つの電極間の電位を駆動する電源に接続されていることを例示する図である。
【
図33】作用電極上の駆動電圧を例示する図である。
【
図34】固定電流振幅および固定持続時間において銀/塩化銀反応を循環させることでサイクル数の増加とともにピーク駆動電圧が低下することが実証されていることを示す図である。
【
図35】電流レベルが比較的低い値から始まり、駆動電圧の上限閾値を超えないときにサイクル毎に高くなる形成ステップにおいて作用電極および対電極形成が処理されることを例示する図である。
【
図36】裸銀電極上にAgCl層を形成した後、およびAgClコーティング電極を状態調整する形成および安定化/調整ステップを実行した後、起こり得る微細構造の変化を示す図である。
【
図37】時間が経過して駆動電圧が駆動電圧下限閾値を超え始めたことを示す図である。
【
図38】電極および身体が並列に接続した抵抗(R
lead)とキャパシタ(C
lead)および電極と直列に接続した身体インピーダンス(R
body)としてモデル化され得ることを例示する図である。
【
図39】低い駆動周波数において電極と身体が上記の式を反映するようにモデル化され得ることを示す図である。
【
図40】高い駆動周波数では、システムが、キャパシタが短絡のように振る舞い、インピーダンスを有しないようにモデル化され得ることを示す図である。
【
図41】閾値に達した場合の波形の一部を示し、電流が閾値以下に留まるように減らされていることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0120】
特定の実施形態および例が以下で説明されているが、本開示は、具体的に開示されている実施形態および/または用途および明白な修正形態およびその等価物を超えて拡大適用される。したがって、本開示の範囲は、以下で説明されているどの特定の実施形態によっても制限されるべきではないことが意図されている。
【0121】
本出願は、いくつかの態様において、神経過剰抑制を含む神経ブロック、または直流印加を取り除くか、もしくは停止した後の急速な可逆性もしくは回復を伴わない神経ブロックを円滑にするように直流(DC)の安全な印加を介した慢性および急性の疼痛状態の管理を行うための方法およびシステムを説明している。イオン伝導成分を有しない従来の電極の代わりにイオン伝導経路を介して神経と界面を形成することによって、神経細胞への損傷のリスクを減らしながら、間欠的または連続的な短期および長期の神経ブロックが発生させられ得る。いくつかの実施形態において開示されているのは、高荷電化学作用を通じて循環する陰極および陽極電流を送達することによってブロッキング直流(DC)を神経組織に安全に送達するためのシステムおよび電極である。組織の安全性は、金属界面をイオン伝導性要素により神経組織から隔てることによって、および、たとえばOH-、H+、もしくは酸素フリーラジカルなどの有害な反応性種を生成する、水の電気分解、または水(H2O)の酸化および還元などの、望ましくない反応に対して反応電位以下で電極を動作させることによって維持され得る。
【0122】
理論によって制限されるべきでないが、電気的興奮性組織、たとえば、神経組織内の活動電位の伝播は、ナトリウムチャネルに対するミリ秒オーダーの、典型的には、約1msから約20msの間、または絶対不応期と相対不応期の組合せでは約2msから約5msの間の不応期をもたらし、したがって、この不応期より有意に大きい(たとえば、約1msより大きい、1.5ms、2ms、2.5ms、3ms、またはそれ以上の)半周期を有する超低周波のAC波形は、また、組織ブロックを形成するために使用することができ、電気的興奮性組織によって直流刺激として感知されることになる。そのようなものとして、本明細書で定義されているような直流は、活動電位が変調されている組織の観点から、直流として感知される低周波数AC波形を含み、機能的に直流である。周波数は、たとえば、電流の流れの方向が標的組織の少なくとも全不応期間にわたって一定である限り、約1Hz、0.5Hz、0.1Hz、0.05Hz、0.01Hz、0.005Hz、0.0001Hz未満、または前記の値のうちの任意の2つを含む範囲であり得るか、または不応を引き起こす膜チャネル時定数(たとえば、高速ナトリウムチャネル不活性化ゲート時定数)の少なくとも2倍であり得る。
【0123】
慢性疼痛は、個人および社会全体に大きな負担をかけている。米国だけでも、5,000万人近くの成人が重大な慢性疼痛または重度の疼痛を抱えていると推定されている(非特許文献2を参照)。世界的に見ても、慢性疼痛は15億人を超える人々に影響を及ぼしていると推定される(非特許文献3)。ときには外科技術が特定の痛みの原因、典型的には神経のインピンジメントによる痛み、を取り除くために用いられることもあるが、多くの場合に、痛みの正確な原因が明確ではなく、外科的手技によって確実に対処することができない。疼痛管理は、疼痛入力の登録を妨げる刺激信号で中枢神経系を圧倒することによって代替的に対処することができる(痛みのゲートコントロール理論)。典型的には、脊髄刺激(SCS)の場合のこの刺激は、金属電極および交流(AC)刺激を用いて実行され、これらの追加の刺激信号を発生させて痛覚を妨げる。しかし、1つの大きな欠点は、刺激された神経の下流側の神経支配領域内のチクチクする感覚である知覚異常が存在することである。患者が不快感を感じ得る知覚異常を除去するための方法は、高周波刺激(約10kHz)およびバースト刺激(たとえば、500Hzの5つのパルスを1秒間に40回送達)を含む従来のトニックSCS(約30~120Hz)刺激とは異なる刺激手段に至った(非特許文献4)。
【0124】
中枢神経系への疼痛信号伝達を管理する代替的手段は、従来のSCSおよびゲート理論のように代替的神経入力を発生して疼痛信号の伝達を押しのけ阻止することによって疼痛信号をマスキングするのとは対照的に疼痛信号を直接ブロックすることによって末梢信号源からの疼痛信号の伝導を妨げることである。これを行う一手段は、神経に直流(DC)を印加して活動電位(AP)の発生および伝達を妨げることによる手段である。これは従来の刺激のように神経を刺激しないので、麻酔を回避することができる。APブロックに至るメカニズムは、電極部位の下の活動電位事象に必要なナトリウムチャネルを不活性化する脱分極ブロックに起因している。(非特許文献5を参照)。
【0125】
Bhadraらは、神経組織へのDCの印加後に、活動電位伝導をブロックできることを示した(非特許文献5を参照)。著者らは、同じ神経組織からDC送達を取り除くと、その結果、神経伝導が瞬時に回復することを示した。しかしながら、直流は、電極‐神経界面のところに有毒種を生成するので、神経組織にとって危険であることが以前から知られている(非特許文献6)。AckermanらおよびFridmanらは、電極界面のところで生成された有毒種を神経組織から分離することによってDCを神経組織に安全に送達するシステムおよび方法を開発した(各々全体が参照によって本明細書に組み込まれている、特許文献1および特許文献2、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。彼らは、神経ブロックの急速な可逆性が望ましいこと、およびDC送達の停止を通して達成可能であることも教示している。Ackermannらは、神経活動の望ましくないが、可逆的である抑制が、長期の直流送達によって起こることを教示している(神経組織は、DC送達の停止後に短期間、非伝導性であることが示された)(各々全体が参照により本明細書に組み込まれている、特許文献1および特許文献2、非特許文献7)。それらの著者らは、DC送達の停止後(たとえば、数秒以内に)急速な神経の回復を可能にするようにDC送達の持続時間を制限することによって神経活動のこの抑制を低減する方法を具体的に教示している(特許文献1および特許文献2、非特許文献7)。いくつかの実施形態において発明され、本明細書において説明されているのは、Ackermannらによって教示されていることとは反対のことを行うためのシステムおよび方法である、すなわち、周期的DCパルスを使用してDC送達の停止後の急速な可逆性を伴わずに(数秒または1分未満とは反対に、数分から数時間の間に起こる可逆性)神経組織を意図的に過剰抑制状態にすることによって神経活動を意図的にブロックすることである。さらに、いくつかの実施形態において本明細書で発明され、説明されているのは、特に脊髄内の前側柱組織の選択的ブロックを通じて、前述のシステムおよび方法によって疼痛を治療するシステムおよび方法である。さらに、本明細書で発明され、説明されているのは、特に後根組織および/または後根神経節の選択的ブロックを通じて、前述のシステムおよび方法によって疼痛を治療するシステムおよび方法である。さらに、本明細書で発明され、説明されているのは、特に1つまたは複数の末梢神経のブロックを通じて前述のシステムおよび方法によって疼痛を治療するシステムおよび方法である。
【0126】
標的神経ブロックにより、特定の真皮節からの疼痛および局部的身体部位内の疼痛が管理され得る。疼痛信号伝導を緩和することに関わる多くの限局的な標的が対処され得る。たとえば、疼痛に関して考慮すべきことはほかにもあるがとりわけ、腰痛、坐骨神経痛、および複合性局所疼痛症候群(CRPS)を管理するために、脊髄視床路および後根神経節などのより中央に配置される両方の神経組織を標的とすることができる。
【0127】
イオンの形態の電流が少なくとも1つの標的神経の近位に生じる電極は、液体(たとえば、食塩水もしくは他の電解質溶液)、ゲル、ヒドロゲル、親水コロイド、ポリマー、またはフィルムなどのイオン伝導性材料を含み得る。代替的一実施形態において、イオン伝導性材料は、スクリーンまたは他のフィルタもしくは膜材料によって神経組織から分離され得る。この分離する界面は、微小孔性スクリーン、不織布スクリーン、イオン交換膜(IEM)、担持された液体膜またはイオノゲル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF‐HFP)などのポリマー電解質、固体イオン伝導体、ならびに陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を含むイオン選択性フィルムなどでイオンが神経に入るのを選択的に許し神経損傷を軽減するように構成され得る。
【0128】
電極の神経界面要素は、電極に沿って選択的に露出されるようにさらに構成されてよく、他の何らかの形でイオン不浸透性層によって神経から絶縁され得る。不浸透性層は、電流に対して電気的絶縁性を有するように構成され得る。
【0129】
イオン伝導性材料は、異なるタイプのイオン伝導性材料を含み得る複数の領域に分離されてもよい。異なる領域間の界面は、選択的なまたは一般的なイオンの流れを許すが、電子電流からイオン電流への変換から生じる生成物による損傷の通過を制限する半透膜またはスクリーンによって画定され得る。この分離する要素は、微小孔性スクリーン、不織布スクリーン、イオン交換膜(IEM)、担持された液体膜またはイオノゲル、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF‐HFP)などのポリマー電解質、固体イオン伝導体、ならびに陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を含むイオン選択性フィルムなどでイオンが神経に入るのを選択的に許し神経損傷を軽減するように構成され得る。異なるイオン伝導性材料は、異なる形態もとり得る。一例として、神経は、その後従来の電流電極材料と接触する電解質溶液などの液体と接触するヒドロゲルと接触していてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態において、従来の電極は、白金、白金イリジウム、炭素、窒化チタン、銅、タンタル、銀、塩化銀、もしくは他の金属および材料、またはこれらの組合せなどの材料から作製され得る。いくつかの実施形態において、従来の電極は、炭素、黒鉛、ガラス状炭素、樹枝状炭素、または他の伝導性材料から作られ得る。高荷電化学作用を使用することによって、直流(DC)ブロックの振幅および持続時間が増大され得る。候補化学作用は、注目する神経組織とイオン性接触している食塩水などの電解質槽(または他の好適なイオン伝導性材料)内でAg/AgCl電極の組合せを使用することを含む。いくつかの実施形態において、電極は可逆的であり、初期状態に戻すことができる。いくつかの実施形態において、電極は犠牲的であり、電極のところに発生する電気化学反応は、電極を初期状態に戻すように逆転させることができない。
【0131】
電極は、様々な材料で作製することができる。いくつかの実施形態において、電極は、銀(Ag)および/または塩化銀(AgCl)で作製することができる。いくつかの実施形態において、電極は、窒化チタン(TiN)で作製することができる。いくつかの実施形態において、電極は、炭素(C)で作製することができる。いくつかの実施形態において、電極は、イオン選択性コーティングまたは膜を有する。いくつかの実施形態において、電極は、イオン選択性コーティングまたは膜を有しない。
【0132】
いくつかの実施形態において、電極は、高電荷容量材料を含む接点を備えることができる。電極接点は、いくつかの場合において、約1mm2から約10mm2の間、または約1mm2、2mm2、3mm2、4mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、20mm2、50mm2、100mm2、または前記の値のうちのいずれか2つを含む範囲の幾何学的表面積を有することができる。電極接点それ自体は、たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているBhadraらの米国特許第10071241号明細書(特許文献3)において説明されているような高電荷容量材料から加工することができる。代替的に、電極接点は、少なくとも部分的に、または全体的に高電荷容量材料でコーティングされた基部を備えることができる。いくつかの実施形態において、高電荷容量材料は、少なくとも約25、50、100、200、300、400、500、1000、2500、5000、10000、50000、1000000、500000、もしくはそれ以上のμCのQ値、または前記の値のうちのいずれか2つを含む範囲のQ値を有することができる。電極接点のQ値は、電極接点が酸素もしくは水素放出、または電極材料の溶解などの、不可逆的な化学反応を有し始める前に電極接点を通して送達され得る電荷の総量を指すものとしてよい。高電荷容量材料の非限定的な例は、白金黒、酸化イリジウム、窒化チタン、タンタル、塩化銀、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)、およびそれらの好適な組合せである。電極は、いくつかの実施形態では、フラクタルコーティングされた電極であり得る。電気化学反応が生じるためのより多くの表面積を生み出すために、従来の電極は、粗面化された表面、織られた表面、パターン化された表面、網目状発泡体構造、多孔質焼結ビーズ構造、ナノまたはマイクロパターン化された構造などの表面積対体積の比率の高い構造から作製され、それによりさらなる材料表面積を露出させ得る。いくつかの実施形態において、電極は、たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれているAckermannらの米国特許第9008800号明細書(特許文献1)およびAckermannらの米国特許出願公開第2018/0280691号明細書(特許文献4)において説明されているように、心臓組織または心臓組織の近位の領域と電気的に接触するイオン伝導性材料とともにイオン伝導性材料‐電解質溶液界面と接触する電解質溶液中に電極が浸漬されるSINE(分離界面神経電極,separated‐interface nerve electrode)またはEICCC(電子‐イオン電流変換セル,electron to ion current conversion cell)電極であってよい。
【0133】
従来の電子輸送電極材料およびイオン伝導性材料と変換メカニズムとの組合せは、電子‐イオン電流変換セル(EICCC)としてまとめて特徴付けることができる。そのような例の1つは、食塩水、たとえば食塩水含有ヒドロゲルと流体的に接触しているNaClを0.9%含む等張食塩水溶液中に浸漬された銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極であってよい。従来の電極に電流を流した後、固体AgClの還元により、固体AgおよびClイオン形成への変換が推進され、イオンの流れまたはイオン電流を生成する。このイオン電流の流れは、神経膜電位を変調し、たとえば、神経伝導のブロックを形成するために使用することができる。膜電位は、神経組織が脱分極されるときに活動電位の発生が回避されるように電位を十分にゆっくりと高められるような仕方で変調され得る。電流を反転させた後、Ag/AgCl電極中の以前に形成されているAgまたは他のAgが酸化されて電極上にAgClを析出し、イオン電流を逆方向に駆動する。食塩水中のAgおよびAgClの溶解度が非常に低いため、電極は順方向と逆方向の電流送達において機械的に無傷のままである。組み合わせることで、還元‐酸化反応は完全に可逆的なEICCCを形成する。AgとAgCl(または他の電極材料)との間の好ましい還元酸化反応を維持するために、電極上のAgClの量、たとえば、質量、体積、密度、または別のパラメータは、他の有害な反応を電極のところに引き起こし得るAgClの枯渇または飽和を決して生じないことを確実にするように電極上の元の開始質量の5%~95%、10%~90%、20%~80%、25%~75%、30%~70%の範囲内に維持され得る。いくつかの実施形態において、電極の量は、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、もしくはそれ以下、または前記の値のうちのいずれか2つの値の間の範囲内に維持され得る。言い換えると、電極は可逆的であり、元の状態または実質的に元の状態に近い状態に復元できる。電気化学反応が生じるためのより多くの表面積を生み出すために、従来の電極は、粗面化された表面、織られた表面、パターン化された表面、網目状発泡体構造、多孔質焼結ビーズ構造、ナノまたはマイクロパターン化された構造などの表面積対体積の比率の高い構造から作製され、それによりさらなる材料表面積を露出させ得る。高荷電化学電極は、生体適合性を有するか、またはそうでなければ生体から適切に隔離され得る。EICCC中の高表面積電極材料(たとえば、Ag/AgCl)は、特に電極電位降下を減少させるために、または長時間の電流送達で起こり得る電極電位降下の増大を低下させるために利用され得る。いくつかの実施形態において、EICCC駆動電流は、約0mAと約1mAとの間、約1mAと約2mAの間、約2mAと約4mAの間、約4mAと約8mAの間、約8mAより高い、約0.5mA、1mA、2mA、3mA、4mA、5mA、6mA、7mA、8mA、9mA、10mA、または前記の値のうちのいずれか2つの値を組み込んだ範囲内であり得る。いくつかの実施形態において、この駆動電流は、次いで、特定の電気化学反応に応じて、類似の大きさの対応するイオン電流を発生するために使用される。
【0134】
EICCCの別の実施形態は、電気化学反応が生じる界面の代わりに従来の容量性電極界面を形成するためにタンタルまたは窒化チタンなどの材料を含み得る。フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニッケル二酸化チタン(Ni/TiO2)、および他の二酸化チタン(TiO2)構造物などの透明伝導性酸化物(TCO)も、高い電荷輸送容量を有する候補材料である。この構成において、従来の電極表面における電荷生成は、従来の電極界面における電荷が不動態化されるまで、イオン伝導性材料からイオン種を引き付けることになる。一方の極性の電流で容量性材料を充電すると、イオンの形態で電流の流れを発生させることができる。容量性材料への電流の流れの極性を逆にすることで、後続の充電のためにシステムを効果的にリセットし、さらなるイオン電流の流れを生成することができる。イオン電流の流れの容量の増大を引き起こすためのより多くの表面積を生み出すために、従来の電極は、粗面化された表面、網状発泡体構造、多孔質焼結ビーズ構造、ナノまたはマイクロパターン化された構造などの表面積対体積の比率の高い構造から作製され、それによりさらなる材料表面積を露出させ得る。一実施形態において、この容量性構造体は、標的神経組織と接触して組織にイオン電流を流すことを可能にするために電解質飽和ヒドロゲルと接触する電解質溶液と流体的に接触する。
【0135】
EICCCのさらなる実施形態において、電子の形態の電流をイオンの形態の電流に変換するために電気化学的メカニズムおよび容量性メカニズムの両方の組合せが使用され得る。
【0136】
神経にイオン電流を送達してブロックを円滑にするために、従来の電極は、導電性リードを介して1つまたは複数の電流源に接続され得る。単一の神経電極界面は、一方の極性の電流がEICCCに印加されるときに神経ブロックを施すことができる(ブロッキングフェーズ)。電流の極性を逆にして電極を元の状態(非ブロッキングフェーズであり得るか、またはブロッキングフェーズであってもよい)に戻すときに、神経は、疼痛刺激が神経に伝わるのをブロックし続ける場合もブロックし続けない場合もある。神経が過剰抑制状態にされている場合、神経は、電極の相状態に関係なくAP伝播を妨げ、疼痛をブロックし続ける。FridmanおよびSantinaは、電流の流れの方向を決める一連の弁を使用して交流(AC)によって駆動されるように電流の極性が反転されたときに連続的なブロックを可能にするための手段を説明している(非特許文献8、非特許文献9)。しかしながら、いくつかの場合において、故障点を増やし、埋め込み可能システムを大きくするような弁の使用を必要としないより単純なシステムが望ましい。より単純で、より堅牢なシステムは、神経組織それ自体の一定の刺激を提供するために複数のEICCCを使用することによって、弁およびそのような可動部分を用いないで構成され得る。一実施形態において、連続的なブロックを施すために、2つの神経電極界面が存在しており、1つまたは複数の電流源に接続されている。第1の神経電極界面EICCCは、ブロックを駆動するために一方の極性の電流で稼動し、第2の神経電極界面EICCCは、反対の極性で稼動する。一定時間期間後に、第1および第2のEICCCの電流極性は反転され、第2の神経電極界面はブロックを施し、第1の神経電極界面EICCCの状態は前の状態に反転される。二重EICCC電極電流を循環させることによって、標的神経のところで連続的なブロックを維持することができる。理解できるように、同じ連続的なブロックを円滑に進めるために、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上など、2つより多いEICCCも使用され得る。電極は、また、単極または双極のいずれかの構成で動作し得る。いくつかの実施形態において、EICCCシステムは、弁またはヒンジなどの機械的可動部品を有しないように構成される。
【0137】
代替的に、神経活動が抑制され得るが、これは、ブロッキング電流の除去または中断後も神経活動がブロックされたままであることを意味する。神経は、DC送達の停止後に急速な可逆性なく神経がブロックされたままである過剰抑制状態にさらに置かれ得る。ランプ速度、電流振幅、総電荷送達、および波形形状を含む神経組織に送達される初期電流の変調は、神経を抑制状態にするために使用できる。抑制状態の間、EICCCは、初期ブロックおよび抑制状態を生成するために使用される電流極性を反転することによって初期状態に戻され得る。逆方向の電流の流れの期間中、神経は、過剰抑制状態のままであり得る。別の構成では、EICCCは、電流送達のない期間、またはブロッキング電流投入の間の反転電流の送達の期間に、抑制持続時間を延長するその後のブロッキング電流入力を送達し得る。神経組織は、ブロッキング電流が入力されない期間の間、過剰抑制状態のままであってもよい。別の構成では、EICCCは、スケジュールに基づきその後の電流入力を送達するように構成され得る。いくつかの実施形態において、DCブロック波形は、0~250マイクロアンペア、250~500マイクロアンペア、500~1000マイクロアンペア、1000~1500マイクロアンペア、または2000マイクロアンペア、またはそれ以上、または約50、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000マイクロアンペア、または少なくとも約50、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000マイクロアンペア、または約50、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000マイクロアンペア以下、もしくはそれ以上、または前述の値のうちの任意の2つの値を組み込んだ他の範囲の振幅を有するものとしてよい。神経を過抑制状態にすることは、いくつかの実施形態において、10~50ミリクーロン、50~100ミリクーロン、100~500ミリクーロン、500~1000ミリクーロン、または1000ミリクーロン以上、または約10、25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ミリクーロン、または少なくともまたは約10、25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ミリクーロン、または約10、25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000ミリクーロン以下、またはそれ以上、または前述の値のうちの任意の2つの値を組み込んだ他の範囲の電荷を送達することによって、神経のサイズおよび所望の過剰抑制持続時間に応じて、円滑にされ得る。DCブロック振幅および電流持続時間は、たとえば、初期DCブロックの持続時間の0~0.5倍、初期DCブロックの持続時間の0.5~1倍、初期DCブロックの持続時間の1~1.5倍、初期DCブロックの持続時間の1.5~2倍、および初期DCブロックの持続時間の2倍より長い、または初期DCブロックの持続時間に関して約0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、または少なくとも約0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、または約0.1倍、0.2倍、0.3倍、0.4倍、0.5倍、0.6倍、0.7倍、0.8倍、0.9倍、1倍、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍以下、またはそれ以上の範囲内、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲内の過剰抑制を可能にするようにチューニングされ得る。
【0138】
神経組織の局所状態および神経組織の近位の局所状態を感知することも、神経抑制を延長するために電流入力を施すこと、さらには活動電位を伝達できないように神経電位を変調することによって初期の神経ブロックを生成するための初期電流送達に対するフィードバックループを形成することをいつ行うかを決定するための有用な尺度をもたらすことができる。一実施形態において、活動電位を伝導する神経の能力は、直流が神経組織に送達されるときに、たとえば神経ブロックが維持されることを確実にするために直流送達が維持できるように監視される。神経の伝導能力は、刺激パルスを送達し、複合活動電位信号を測定することなどの任意の好適な手段によって監視され得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、感知は、参照電極の形態で、活性電流を通している2つの電極に関して電位差を測定することである。いくつかの実施形態において、活性電流は、参照電極に関する測定された1つまたは複数の電極電位に応答して変調される。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の活性電極のところで望ましくない電気化学反応が起こり得ることを測定された電極電位が示すときに活性電流は変調される。たとえば、水の電気分解が生じているか、またはその可能性があることを示す活性電極電位の測定後に、活性電流は低減されるか、または停止され得る。EICCCは、直流入力で、または作用電極と補助電極または対電極との間に電位差を印加することによって動作し得る。いくつかの実施形態において、参照電極は、EICCC内に、または神経組織の近位のEICCCの遠位端に配置され得る。
【0140】
図1Aは、神経組織Nまたは神経組織Nの近位の領域と電気的に接触する流体、ヒドロゲル、ゲル、または他のポリマーなどのイオン伝導性材料106とのイオン伝導性材料‐電解質溶液界面107と接触する電解質溶液102中に電極104が浸漬されているEICCC電極100の一実施形態を示している。EICCC電極100は、従来の電極104と、電解質102と、神経Nまたは神経組織Nの近位の領域との電気的接触を可能にする開口(110の近く)を有する生体適合性イオン伝導材料106とを収納する電気的に絶縁された生体適合性を有するエンクロージャ108も備える。システムは、電流源114と電極104との間に電流送達リード112をさらに備える。電流源114は、用途の必要性に応じて身体の外部または内部に配置されてよい。EICCC100の例示的な非限定的な実施形態は、電解質飽和ヒドロゲル(0.9%食塩水による寒天製品)と流体的に接触する0.9%食塩水中の銀、塩化銀(Ag/AgCl)電極を備える。
【0141】
食塩水(NaCl)中の電極上のAgClの還元を介して電流を発生させるために使用されるAg/AgCl電極を用いて、持続可能で可逆的な電気化学反応を引き起こし電子の形態の電流をイオンの形態の電流に変換することができる。
図1Bの領域1を見るとわかるように、電流源から一定の電流をプッシュすることによって、AgCl電極の質量は、カソード電流(還元反応)において質量m2から質量m1に減少し、次いで、領域2を見るとわかるように、酸化反応中に陽極電流により増加し質量m1から質量m2に戻る。さらに、未反応のAgの質量がゼロより大きくなるようにAgClの最大質量をm2に制限することによって、Ag/AgCl反応が電気化学反応に利用可能なAgを枯渇させるのを防ぎ、m1をゼロより高く維持することに類似する過剰な電流送達の場合の予備安全係数を提供することを助けることが理解され得る。領域3では、電流の極性は、領域1と一致するように再び反転される。AgClの質量をゼロになるまで枯渇させないことによって、塩素イオンの発生を伴う固体Agへの固体AgClの変換およびその逆の変換との間の好ましい反応
AgCl(s)+e
-⇔Ag(s)+Cl
-
が得られる。水の電気分解または加水分解は、AgClよりも高い還元電位で起こるので、AgClの溶解は、EICCCにおいて望ましくない反応およびOH
-、H
+または酸素フリーラジカルの生成を好ましくは防ぐ。さらに注目すべきは、電流振幅とx軸(時間)との間の面積の絶対値が、電極から送達された(または取り除かれた)総電荷を定義するために使用され、電極のAgCl質量の決定もしくは予測および/または制御を可能にすることができることである。異なる領域における電流波形の形状は、完全方形波である必要はないが、ゼロ振幅からそれらの最終的な最大振幅まで増大する、さらにはそれらの最大波形振幅からゼロ電流に戻る有限の傾斜を含み得ることが理解されるであろう。波形は、パターンが非線形であってもよく、領域間で異なり得る。好ましい一実施形態において、領域1で送達される総電荷は、領域2で取り除かれる総電荷と等価である。言い換えると、領域1内の電流波形の下の領域の大きさは、領域2のそれと同じである。異なる領域は、電流が送達されていない間、AgCl電極の質量が保存されるゼロ電流の期間(図示せず)によって時間的間隔をあけられるものとしてよい。理論によって制限されるべきいではないが、銀‐塩化銀システムは、他の電気化学反応に勝るいくつかの潜在的な利点をもたらす。たとえば、銀‐塩化銀反応の標準的な電位は約0.22Vであり、これは有利には電気分解が生じる電圧より十分に低い。電気分解は、反応を駆動するために使用される電位または電圧の大きさが、標準水素電極を基準とする約1.23ボルトを超えるときに生じ得る。水の電気分解は、1つまたは複数のセンサを介して検出することができ、いくつかの場合において電気分解が検出された場合には電流送達および/または駆動電圧を停止もしくは変調(増加もしくは減少)することができる。センサは、いくつかの場合において、銀‐塩化銀反応が、たとえば、電気分解、加水分解、または水酸化還元反応ではなく、むしろ、排他的に、実質的に排他的に、またはもっぱら、生じているかどうかを検出することもできる。さらに、そのようなシステムによって送達され得る電荷の量は、反応に利用可能な白金が尽きて反応が駆動され続ける場合に他の潜在的に有害な生成物を形成することを引き起こす前に電極表面上に白金水素化物の単層を形成する白金電極の場合などに表面領域反応によって制限されない。対照的に、水性環境では、塩化銀が還元されるときに、銀無垢を形成し、塩化物イオンを溶液中に放出するが、その逆も生じる。各方向の反応は、利用可能な反応物質の量によってのみ制限されるので、表面領域に制限されることと比較して利用可能な反応物質の総量によって事実上制限される。このように、反応は、電極の初期の総未反応表面領域の約または少なくとも約110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、500%、1000%、5000%、10000%、25000%、50000%、100000%、500000%、1000000%、2500000%、5000000%、10000000%、25000000%、50000000%、100000000%、250000000%、500000000%、1000000000%、もしくはそれ以上の量、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲の量などの、電極の初期の未反応表面領域より大きい量の反応物質を利用することができ、これは利用される銀の量に依存する。したがって、実質的により多くの、いくつかの場合において、数桁以上多い電荷が、有利には、電気分解閾値より低く維持しながら体組織に送達され得る。たとえば、白金または白金イリジウム電極は、5mAのパルスで1ミリ秒の間、1パルス当たり5マイクロクーロンを送達し得る。本明細書において開示されるような実施形態により、10秒の持続時間の5mAのパルスの形態のDC送達を使用して、この電荷の約または少なくとも約1000倍、5000倍、10000倍、50000倍、100000倍、またはそれより何倍も多い電荷を達成することが可能であり得る。これは、たとえば、既存の白金電極に匹敵する長さ3.5mm(または長さ約1mmから約10mm、長さ約1mmから約5mm、もしくは長さ約3mmと約4mm)および直径1.4mm(または直径約0.5mmから約5mm、直径約0.5mmから約3mm、もしくは直径約1mmから約2mm)の公称幾何学的形状の電極上にAgClの厚さ1マイクロメートルのコーティングを作製することによって達成され得る。当業者であれば、利用可能な塩化銀の構成および貯蔵槽にもよるが、送達される電荷量は、従来の白金電極を使用した場合に達成可能な量と比較して、10000倍、100000倍、1000000倍、10000000倍、100000000倍、もしくはそれ以上、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲内に増加し得ることを理解するであろう。したがって、銀‐塩化銀錯体は、反応化学作用が体組織内およびその周辺の最も容易に利用可能なイオンの1つである塩化物イオンを伴うので、体内環境での使用に合わせて独自の配置に置かれ得る。
【0142】
図1Cは、電極セル(EICCC)(上)に送達される電流が、長い充電フェーズでゼロの正味電荷移動を可能にしながら神経ブロック(下)を行うために電極セル‐神経界面(中)に送達される電荷にどのように関連付けられ得るかを示している。フェーズ1では、電荷は、所与の極性および一定または可変ランプ速度(R1)で電極セルに送達され、次いで、一定または可変電流(C1)を供給することができ、その後の一定または可変ランプ(R2)はゼロ電流に戻る。フェーズ1は、たとえば、最大1秒、1分、1時間、1日、1ヶ月、もしくは1年の期間、またはそれ以上の期間であってもよい。いくつかの実施形態において、フェーズ1の平均電流は非ゼロであるが、瞬間電流はときにはゼロであり得る。いくつかの実施形態において、フェーズ1は、陰極フェーズまたは陽極フェーズのいずれかであるが、両方ではない。初期フェーズである、フェーズ1の後に、ゼロ秒以上の陰極フェーズと陽極フェーズとの間のフェーズ間間隔(間隔1)が続き得る。この間隔の後に、最大1秒、1分、1時間、1日、1ヶ月、もしくは1年の期間、またはそれ以上の期間であり得る第2の電流送達フェーズ(フェーズ2)が適用され得る。この第2のフェーズは、フェーズ1とは反対の極性であり、平均電流が非ゼロであるが、瞬間電流はときにはゼロであり得る。フェーズ2では、電荷は、所与の極性および一定または可変ランプ速度(R3)で電極セルに送達され、次いで、一定または可変電流(C2)を供給することができ、その後の一定または可変ランプ(R4)はゼロ電流に戻る。このフェーズ2の後に、ゼロ秒以上の別のフェーズ間間隔(間隔2)が続き得る。
図1Cにおける波形は、前の波形と同一または異なる振幅および持続時間パラメータを用いて繰り返されてよく、それによって、波形は、臨床医および/または患者および/または介護者および/または制御システムによってプログラムされるか、または調整され得る。調整は、電流が増加および/または減少するようにフェーズ1およびフェーズ2の電流を調整し、さらにはそれぞれ、フェーズt1~t0およびt3~t2の持続時間を調整することを含み得る。フェーズ間間隔は、それらの持続時間t2~t1およびt4~t3が長くまたは短くなるように調整することもできる。どのような送達またはフェーズ間期間も、たとえば、少なくとも約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、もしくは55秒、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、30、60、120分、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、18、もしくは24時間、2、3、4、5、6、7、14、21、28、30、45、60、75、90日、もしくはより多くの日数、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24ヶ月、もしくはそれより多くの月数、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、もしくは55秒、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、30、60、120分、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、18、もしくは24時間、2、3、4、5、6、7、14、21、28、30、45、60、75、90日、もしくはより多くの日数、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24ヶ月、もしくはそれより多くの月数、または約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、もしくは55秒、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、30、60、120分、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、18、もしくは24時間、2、3、4、5、6、7、14、21、28、30、45、60、75、90日、もしくはより多くの日数、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24ヶ月、もしくはそれより多くの月数以下、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲とすることが可能である。
【0143】
神経界面において、電極セルに送達される電流は、図示されているように神経界面に送達される電荷(正または負)の増大を引き起こすことができ、図示されているように線形であるか、または一般的にフェーズ1において線形もしくは非線形的な仕方で増大しているものとしてよい。送達された正味電荷は、ギャップフェーズまたは間隔1の間おおよそ一定のままであり、次いで、フェーズ2の間にゼロに戻る。最初に、神経ブロックの期間(
図1C下)は、フェーズ1の開始時のどこかで開始され、電荷が神経界面に送達されている間、神経ブロックは活性状態のままである(実線)。しかしながら、電極セルへの電流送達が取り除かれた後に神経ブロックが続くことによって定められる神経抑制は、神経への電流送達が停止された後も継続し、間隔1の期間まで持続し(ii)、送達される反対極性の電流とは無関係にフェーズ2まで延長する(iii)か、または間隔2の期間まで延長する(iv)か、またはそれを超えて延長し得る(図示せず)。これらのパラメータをチューニングすると、
図1Cの(ii)、(iii)、(iv)に見られるように、神経は過剰抑制状態にされ、神経抑制は、DC送達を取り除いた後1分を超える持続時間の間に生じ得る。
【0144】
図1Dには、神経ブロックを促進するために電極セルに送達される波形パターンが示され、神経組織に送達される電流に関係なく神経ブロックが生じる過剰抑制領域を含む対応する神経ブロック期間とともに電極セルに送達される電流が示されている。電極セルシステムは、陰極および/または陽極フェーズが電流送達後1分を超える期間(過剰抑制)の間に電流を停止した後に神経組織を伝導的でない(または部分的に伝導的である)状態にすることを目的とするように設計されている。
図1D(i)において、電子電流が電極細胞に送達されて神経組織のところにイオン電流を発生させ神経ブロックを円滑にしている。この最初の電流送達の後、神経組織は、次いで、過剰抑制状態に入り、それによって神経組織にさらなる電流送達がない場合に神経は信号を伝導できないか、または完全に伝導していない。神経組織の抑制状態は、
図1D(ii)に示されているように延長されてもよく、最初の電流が送達された後の期間に二次電流が神経組織に送達され、延長電流の送達は、最初の電流が送達された後1分までの間に、または1分を超える期間の後に生じ得る(過剰抑制)。抑制延長のこのパターンは、電流送達フェーズの間に一定または可変長の間隔で、定められている時間期間の間、または永久に繰り返され得る。繰り返し使用されている間、電極セルを電荷中性状態に維持するために、最初の神経ブロック電流が印加され、神経を過剰抑制状態にした後に反対極性の電流が印加され得る(
図1D(iii))。その後、元の極性の電流が印加され、図示されているように追加の過剰抑制延長を誘発することができる。このようにして、神経組織は、陽極および/または陰極安全DC電流を繰り返し「投与」され、神経組織を過剰抑制の状態に維持することができる。過剰抑制の持続時間は、陰極および/または陽極送達フェーズよりも長い持続時間であり、これにより、過剰抑制が生じている間の完全な正味電荷の反転を可能にする。これらの例では、陰極および/または陽極フェーズの持続時間および/または振幅は、電流送達が停止した後の神経ブロックの持続時間および完全性に影響を及ぼすようにプログラムされ得る。
【0145】
図1Eは、電気的に絶縁されたリード112を介して電流源114に接続されている電子-イオン電流変換セル(EICCC)100の一実施形態を示している。EICCC100は、イオン伝導性材料(イオン伝導体106)に接続された従来の電極(電極)104材料(たとえば、金属、炭素など)を備え、これは次いで神経組織N、または神経組織に近接する組織との界面をなす。いくつかの実施形態において、この界面は、神経組織に対して約3cm、2.5cm、2cm、1.5cm、1cm、5mm、2mm、1mm、0.5mm、0.1mm、またはそれ以下の範囲内で近接するものとしてよい。当業者であれば、従来の電極104およびイオン伝導性材料106は、図示されている当接または連動または同様の方式などの多数の方法で取り付けられ得ることを理解するであろう。電極104は、イオン伝導体106内に挿入されるか、その逆であってもよい。
図1Fに示されているように、一構成において、電子電流が正の軸によって指定されているように一方の極性を有するときに神経ブロックが活性状態であることを示し、電流の極性が負の軸によって指定されるように反転されたときに神経ブロックが非活性状態であることが示されている。初期ブロッキング電流が過剰抑制状態を誘発するような仕方で神経Nに印加される場合、電流反転期間中に神経Nがブロックされたままであり得ることは理解されるべきである。電流反転期間中に、EICCC100は、イオン電流を生成するために使用される反応が反転され、EICCC100の構成要素を、その後のブロッキング電流生成のために元の状態の方へ戻すリセットフェーズにある。
【0146】
図1Gは、
図1Eに似ているが、従来の電極104をイオン伝導体106から、またイオン伝導体106を神経Nそれ自体、もしくは神経隣接組織から、それぞれ隔てる隔離スクリーン118、120を備える構成を示している。当業者であれば、1つのスクリーン、2つのスクリーン、またはそれ以上のスクリーンが使用され得るか、もしくは全く使用され得ないか、またはこれらの任意の組合せであってもよいことを理解するであろう。スクリーン118、120は、たとえば、Cl
-などの反応種を電極の近くに維持するために、移動が望ましくない他のイオンの移動を制限する一方でいくつかのイオンがそれぞれの材料の間で移動することを選択的に許容するように構成される。スクリーン118、120は、陰イオンが通過することのみを許す陰イオン交換膜などのイオン選択性膜から構成され得る。
図1Hは、
図1Fに類似する電流対時間および神経ブロックステータス対時間を示すチャートである。
【0147】
図1Iは、
図1Gに類似する構成を示すが、神経組織Nおよび/または神経Nの近位の領域の状態を監視するフィードバックセンサ122も含む図である。いくつかの実施形態において、センサ122は電極‐神経界面の近位または遠位に配置されてよく、それにより、局所複合活動電位を測定し電流源114およびEICCC210にフィードバックを提供することを可能にし、電極電流および神経界面電極電位を変調して過剰抑制を維持することを可能にする。いくつかの実施形態において、センサ122は、神経組織電圧信号を測定し、その情報をフィードバックとして使用して、神経界面のところに生じる電流および電位を変調し得る。いくつかの実施形態において、電位は、活動電位が神経細胞に沿って伝播することができない脱分極状態に神経細胞が維持されるように変調される。いくつかの実施形態において、センサ122は参照電極を備え、それによって1つまたは複数の作用電極104と参照電極との間の電位差が監視され、電流源114へのフィードバックとして使用され、EICCC210の適切な動作範囲を確実にすることができる。埋め込み可能なパッケージングは、一体化された参照電極または対電極を収容し得る。
図1Jは、
図1Hに類似する電流対時間および神経ブロックステータス対時間を示すチャートである。
【0148】
図2Aは、2つのEICCC220A、220Bが神経Nまたは神経隣接組織と界面を形成する二重電極システムを示している。
図2Bに示されているように、一方の電極が活性ブロッキング段階にあるときに他方の電極は電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非活性非ブロッキング段階にあるように2つの電極220A、220Bは時間の関数として反対極性の電流により駆動される。この構成では、神経Nに沿って一定のブロックが維持され得る。ブロッキング電流が過剰抑制状態を誘発するような仕方で神経Nに印加される場合、電極220A、220Bの電流反転期間中に神経ブロックが活性状態のままであり得ることは理解されるべきである。当業者であれば、2つの電極220A、220Bに対する駆動電流は、電流が一方または両方の電極220A、220Bを駆動していない期間に間隔をあけてもよく、この期間中、神経Nが抑制状態にある場合にブロックが維持され得ることを理解するであろう。同様に、駆動電流は、電極220A、220Bそれ自体、およびブロッキング電流が印加されていない間に信号がブロックされたままである期間の神経Nの任意の回復時間に応じて異なる持続時間を有し得る。電極220A、220Bは、神経Nに沿って軸方向に直列に示されるように配向されるか、または神経組織それ自体と対向する側に配向され得る。
【0149】
図3A~
図3Bは、二重の従来の電極104A、104Bは、神経Nと界面を形成しているが、一方の電極がブロッキング段階にあるときに他方の電極が電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非ブロッキング段階にあるように反対極性の電流で電気的に絶縁されたリード112を介して電流源から駆動される一実施形態を示している。この構成では、神経に沿って一定のブロックが維持され得る。電極104A、104Bは、示されるように神経Nに沿って直列に配向されるか、または神経組織それ自体と対向する側に配向され得る。
【0150】
図3C~
図3Dは、二重のEICCC230A、230Bは、神経Nと界面を形成するが、一方の電極がブロッキング段階にあるときに他方の電極が電流極性が再び反転された後にブロッキングのために電極をリセットする非ブロッキング段階にあるように反対極性の電流で駆動される一実施形態を示している。この構成では、
図3Dに例示されているように、神経Nに沿って一定のブロックが維持され得る。電極230A、230Bは、神経Nを保護するために危険な電気化学反応から有害な副生成物を隔離するスクリーンを介して神経Nと界面を形成する。スクリーンは、たとえば、陰イオンが通過することのみを許す(陽イオンが通過することは許さない)陰イオン交換膜などのイオン選択性膜を備え得る。
【0151】
図4Aは、神経組織Nまたは神経組織の近位の領域と電気的に接触するヒドロゲル、ゲル、または他のポリマーなどのイオン伝導性材料106と流体的に接触する電解質溶液102中に電極104が浸漬されているEICCC電極240の一実施形態を示している。EICCC電極240は、従来の電極104と、電解質102と、神経または神経組織の近位の領域との電気的接触を可能にする開口(110の近く)を有するイオン伝導材料106とを収納する電気的に絶縁されたエンクロージャ108も備える。電解質ヒドロゲル界面107は、代替的に、セルの水性領域への任意の電気化学反応の生成物を隔離するためにイオン選択性スクリーンまたはイオン伝導性ポリマーによって媒介され得る。システムは、任意選択で、電流源114と電極104との間に電流送達リード112をさらに備える。電流源114は、用途の必要性に応じて身体の外部または内部に配置されてよい。EICCC240の例示的な実施形態は、電解質飽和ヒドロゲル(0.9%生理食塩水による寒天製品)と流体的に接触する0.9%生理食塩水中の銀、塩化銀(Ag/AgCl)電極を備える。他の例では、電極材料は、金属、炭素、導電性ポリマー材料を含むものとしてよく、連続気泡発泡体構成、焼結粒子構成、樹枝状構成、または同様の構成などの構成を含み得る表面積対体積比の高い構成で構成され得る。
【0152】
図4Bは、EICCCの監視を目的として、作用電極104間の電圧降下を監視するために電極(作用電極)104に近接する参照電極111を追加した
図4Aに示されているものに類似するシステム250を示す図である。たとえば、電極104が所望の条件の下で駆動されていることを確実にし、適切な電気化学反応が生じることを確実にする。
【0153】
図4Cは、EICCCの監視を目的として神経組織へのEICCC260間の電圧降下を監視するために神経組織界面に近接する参照電極111を追加した
図4Aに示されているものに類似するシステム260を示す図である。たとえば、電極104が所望の条件の下で駆動されていることを確実にし、適切な電気化学反応が生じることを確実にする。
【0154】
図4D~
図4Fは、従来のIPG(植え込み型パルス発生器)の形態をとり得る電流源(図示せず、端部213付近)に差し込み、そこから延在するように構成されている電極リード212の一実施形態を示している。
図4Fは、
図4Dの4E‐4Eの拡大図である。
図4Fは、
図4Dの4F‐4Fの拡大図である。この構成は、
図4Aに示されている神経界面ヒドロゲルが取り除かれ、神経組織界面が電解質溶液を含むが神経組織環境へのイオンの移動を許すスクリーンまたは多孔質フリット404を備えることを除き
図4Aに示されている構成と類似していてもよい。電流源へのコネクタ213は、電気化学反応を介して電子電流をイオン電流に結合するEICCC400へのコネクタ213から遠位に延在する電極リード212の導電性部分とともに示されている。コイル電極402は、EICCC400において電流をイオン電流に変換し、この電流は、次いで、標的神経組織に近接する位置に置かれ得るリードの遠位部分の方へ伝達される。神経組織環境との接触は、神経環境を操作することができるスクリーン/多孔質フリット404から出るイオン電流を介して生じる。
【0155】
図4Gは、電流源412、電池414、または電源、およびEICCC280を駆動するためのコントローラ416を収容する気密封止されたエンクロージャ410内に一体化されたEICCCの一実施形態の概略を示している。EICCC280は、例示されているように、電流源412に直接接続され、電流源412からのリード418と、ブロックされるべき神経組織Nに次いで接触するヒドロゲルなどのイオン伝導性材料422と流体的に接触する電解質溶液429中に浸漬されている電極420とを備える。この実施形態では、EICCC280の電極要素420は、電流源412の比較的近位に配置されるが、神経接触リードは、電流源412からより遠位に配置され、神経配置Nまで延在する。また例示されているのは、イオン伝導性導管(たとえば、ヒドロゲルコネクタ)430、コネクタ要素432、絶縁エンクロージャ420、およびイオン伝導性電極リード428である。
【0156】
図5A~
図5Bは、2つの電極接点が同じ電気的に絶縁されたエンクロージャ504内に収納される電極構成500の一実施形態を示している。電極502A、502Bは、神経組織Nおよび/または神経の近位の領域との界面を形成するイオン伝導性材料510/パッド512とイオン接触している。各電極502A、502Bは、電流源508によって駆動されるそれぞれの導電性リード506を介して電気的に連通する。内部電極502A、502Bは、一定の神経ブロックを施すために反対極性の電流で循環的に駆動され得る。電流源508は、任意のリード506および電極502A、502Bもまた、体内に埋め込み可能で体内に完全に収容されるように構成され得る。代替的に、電流源508は、体外に留まるように構成されてよく、この実施形態または他の実施形態において有線接続またはワイヤレス接続を介して接続することができる。
【0157】
いくつかの実施形態において、システムは、特定の神経に神経ブロックを施すように構成される。そのような神経の1つは、疼痛信号が通過する後根、および/または後根神経節(DRG)である(
図6A)。各椎骨レベルからの関連付けられている後根神経節は、体内の特定の真皮節に対応し(
図7)、DRGレベルで疼痛信号をブロックすることで、その特定のDRGに対して神経支配された真皮節における痛覚を低下させることができる。DRGへのアクセスは、最初に針先をDRGに差し込むことによって円滑にされ得る。針における探り針または栓塞子は、針開口部による組織巻き込みを原因とする開口部の閉塞または不注意な組織損傷を防止するために使用され得る。針先は、蛍光透視または他の放射線透視手段の下で可視化されるように放射線不透過性であるものとしてよい。針からの探り針の取り外しは造影剤を注入するためにも行われてよく、これにより、局部構造の可視化が可能になり、針先の配置を確認できる。ブロックされたときに標的DRG体が十分な鎮痛効果をもたらすことを確認するために、短期作用神経ブロック剤が塗布されてもよい。針が適切に位置決めされ、DRG体が神経ブロックのための適切な標的であることを確認した後、探り針は、まだ取り外されていない場合に取り外すことができ、単一または複数の電極神経界面接点を有するEICCCで終端するブロッキング電極は、針を通して導入することができる。
図6Cに示されているように、DRGには針600でアクセスすることができ、針600は図示されているように硬膜を貫通するために使用することができる。代替的に、針600は、組織を穿刺することなく硬膜のすぐ外側に位置決めされてよい。導入された電極は、蛍光透視下での可視化を可能にする放射線不透過性マーカーを有し得る。導入電極はまた、シースの遠位端が導入電極の遠位端から引き込まれて組織固定要素を露出させるまで固定要素の配備を妨げる二次シース内に封入されてもよい。封入された電極は、そのような特徴がなければ電極が外れてしまうかもしれない身体運動に対応できるように電極本体部内のコイルまたは弛みなどの応力除去機構を有していてもよい。
図6Dおよび
図6Eに示されているように、電極‐神経組織界面の接点604は、次いで、DRGに接触して、または近位に位置決めされ、導入針600は、電極リード602および神経組織界面604を所望の位置に残すように後退させることができる。電極の近位端は、神経ブロックを開始し、適切な電極の位置決めを確実にするように電流源に接続され得る。適切な位置決めおよびブロックが達成された後、任意選択の電極シースは、その所望の位置から電極が外れるのを防止するバーブまたは摩擦要素などの保持メカニズムを露出するように引っ込めることができる。任意選択で、電極接点または接点と神経界面との間に導電性ゲルを塗布し、電極接点がDRG体に関して移動する場合に伝導ブロックの損失をさらに軽減するものとしてよい。いくつかの実施形態では、保持メカニズムの配備後に留置を調整しなければならない場合、シースは前進させられ、それにより保持メカニズムを引っ込め、電極は保持メカニズムを再配備する前に位置変更され得る。電極が適切に配置された後、電極は、電流源から切り離され、挿入針は、その近位端の方へ電極の上で取り外され得る。次いで、シースも類似の仕方で取り外すことができる。次いで、電流源を再接続して、適切に留置されていることを確認し、挿入針およびシースの取り外しで外れが生じていないことを確認することができる。任意選択の評価期間の後、電流源は患者体内に埋め込まれ、電極および/またはリードは長期的埋め込みのために永久電極と交換されてよい。電流源は、電池またはエネルギー貯蔵ユニットと、電流源埋め込み部位に近い身体部位に近接しているときに埋め込まれた電流源と通信できるプログラミングユニットからユニットをプログラム可能にすることを可能にする電子回路とをさらに収容し得る。電流源エネルギー源は、任意選択で、誘導充電などの外部通信ユニットによって充電可能であり得る。
図6Bは、リード112および電流源114とともに神経ブロックを円滑にするためにDRGに沿って位置決めされたブロッキング電極100の一実施形態を示している。神経ブロックは、DRGの過剰抑制を含み得ることが理解される。
【0158】
代替的一実施形態において、電流源は、神経ブロックを可能にするために患者の身体の外側に永久的にまたは一時的に配置され得る。電極は、また、不必要とみなされたら取り外してよく、したがって一時的神経ブロックを望むとおりに施し得る。神経ブロックは、また、たとえば患者のフィードバックを必要とする手技において知覚できるようにするために必要に応じて電流源を変調することによって定期的にオン/オフされ得る。
【0159】
特定の真皮節のところのDRGのブロックは、神経痛、狭心症、虚血性疼痛、および複合性局所疼痛症候群(CRPS)による治療疼痛低減を局部に留めるために使用することができる。狭心症の場合、頸部脊髄レベルの神経根C6およびC7が関連する疼痛に頻繁に関わることが示唆されており、これらのレベルの一方または両方で限局的なDRGブロック(他のレベルの追加のDRGのブロックを伴うまたは伴わない)は、この疼痛を管理することを助けるために使用することができる(非特許文献10)。たとえば、複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、単一肢に限局的であることが多く、限局的なブロックを発生させることで、痛みの発生源に対してより特異的な疼痛ブロックを施すことができる。たとえば、レベルL2、L3、L4における腰部後根神経節は、従来のDRG刺激技術を用いて脊椎の同側の膝関節痛を軽減させることができることが示されている(非特許文献11)。虚血性疼痛は、特に四肢循環不良の患者にとってしばしば限局性疼痛であり、ブロックに対する適切なDRGレベルを標的とすることによって同様に緩和され得る。
【0160】
上で説明され、
図6A~
図6Dおよび
図7に例示されているように、EICCC電極はDRGに近接して導入されるものとしてよく、それによりDRG内の神経組織をブロックし、および/または抑制して、遠位疼痛信号が個人によって登録されるのを防ぐ。さらに、複数の後根神経節が標的にされ、片側および両側ブロックを発生するか、または体内の疼痛発現に基づき疼痛対象範囲を調整するものとしてよい。EICCC電極は、疼痛発現に関連付けられ、調整される標的レベルにされるものとしてよく、それにより、標的にされ、EICCC電極と接触する各DRGレベルにおける電流振幅をチューニングすることなどイオン電流信号を調整することによって疼痛ブロックおよび疼痛対象範囲のレベルをチューニングする。また、疼痛ブロックを身体の特定の領域に限局することは、疼痛信号がなくならないようにし困難な状況および環境条件を知らせる信号を個人に送るために使用できるように、身体の他の領域において正常な感覚機能を維持することを助ける。
【0161】
硬膜上腔内の脊髄の後部に沿って電極が留置される従来のSCSと比較して、外側脊髄視床路(LT路)(
図8A)に近接して刺激電極800を留置する場合、EICCCを利用して所望のレベル(および/または疼痛信号が上方向に移動するのでEICCCの遠位の(頭部から離れる方向の)脊髄レベル)で神経ブロックを発生し、電極800の片側(左または右)または両側配置に応じて選択的疼痛ブロックを施すことができる。電極リード802は、硬膜上腔へのアクセスを可能にするために椎弓切開術(
図8A中、右)を用いて留置されてよく、次いで、電極リード802は、所望の1つまたは複数のレベルで脊柱の1つまたは複数の外側面に沿って導入され、適所に位置決めすることができる。リード802は、また、ツーイ針または類似の針808を使用して電極リード802を硬膜上腔(
図8B)内に導入することなどによる蛍光透視法によるガイドを用いる場合または用いない場合に経皮的留置術を使用して留置され得る。リード802は、
図8C~
図8Eに例示されるように、リード802が脊髄神経出口領域の間に置かれ、組織界面が外側脊髄視床路に近接するように硬膜上腔内の脊柱に沿って向き付けられ得る。
図8C~
図8Eを見るとわかるように、電極リード802は、電極から生成されたイオン電流で神経路がブロックされ得るように側方脊髄視床路の外側に置かれるように側面に位置決めされる。リード802は、各側方脊髄視床路が身体の対側部位から疼痛情報を伝達するときに両側ブロックを円滑にするように両側に留置され得る。次いで、リード802は、適切な位置決めおよび信号ブロックであることを確実にするために組織界面804を介して神経ブロックを活性化するように電流源に接続され得る。次いで、リード802は電流源から切り離され、任意選択の延長ケーブルがリード802を埋め込み可能な電流源に接続するように留置され得る。電流源は、電池またはエネルギー貯蔵ユニットと、電流源埋め込み部位に近い身体部位に近接しているときに埋め込まれた電流源と通信できるプログラミングユニットからユニットをプログラム可能にすることを可能にする電子回路とをさらに収容し得る。電流源エネルギー源は、任意選択で、誘導充電などの外部通信ユニットによってワイヤレス充電可能であり得る。
【0162】
いくつかの実施形態において、たとえば、
図4Dに例示されているような複数の電極リードは、
図8Cに図示されているように、脊髄に沿って、脊髄視床路を標的として留置され得る。さらに、電極は、神経組織ブロックを最適化するために出力が個別に調整され得る多数の組織接触領域を有するように構成されてよい。
図10A~
図10Cには、複数の組織界面404A、404Bが電極402上に存在し、個別に取り扱い可能であるEICCC電極の一実施形態が図示されている。
図10Bは、
図10Aの10B‐10Bの拡大図である。
図10Cは、
図10Aの10C‐10Cの拡大図である。この実施形態では、EICCCの二重システム400が存在し、各神経組織界面領域に個別に関連付けられている平行な内腔を有する。
図10において、神経組織界面領域および関連するEICCCは、一致する文字ラベル、この場合にはAおよびBによって指定される。電極の遠位端において電流入力および対応する出力を調整することで、望ましくない構造物のブロックを最小限度に抑えながら所望の神経ブロックを円滑にするための電場整形を可能にすることができる。個別の電極が個別に取り扱い可能であり、所望のブロック生成を可能にするようにチューニングすることができる代替的一実施形態が
図5に取り込まれている。
【0163】
脊髄視床路をブロックするために脊柱に沿ってブロッキング電極を留置するこれらの方法、ならびに神経ブロックおよび/または抑制を生成するために電場をチューニングする能力を使って、疼痛ブロックのための特定の標的を円滑にすることができる。たとえば、胸椎骨レベルで緩和される体幹痛は、胸椎骨に沿ってリードを留置することによって緩和され、頸痛は、頸椎においてブロックおよび/または抑制を施すことによって緩和することができる。上肢痛は、頸部および胸部のレベルのブロックおよび/または抑制を組み合わせて施すことで緩和され得るが、下肢痛は、脊椎において腰部および仙骨のレベルのブロックおよび/または抑制を組み合わせて緩和され得る。
【0164】
疼痛ブロックの発生は、運動制御および非痛覚が望まれている周術期疼痛ブロックを円滑にするために使用され得る。たとえば、子供の出産において、特に硬膜外麻酔による疼痛管理の課題の1つは、下半身における感覚能力の低下である。硬膜上腔内の送達される麻酔の非特異的な性質により、感覚、痛み、および運動ニューロンが影響を受ける。硬膜外麻酔を行うと、出産過程で押す力を発生させることが困難になり、出産後数時間後にしびれが生じて歩行能力などの運動能力を損なうことがあり得る。いくつかの場合において、硬膜外麻酔は、授乳困難を含む胎児および新生児の健康にさらに関わっている。脊髄視床路および/または後根神経節を標的とするために上で説明されているブロッキング電極を使用することで、疼痛路のみが標的とされ、他の運動または知覚路が標的とされないので、現在の硬膜外麻酔技術に関連する副作用を生じることなく(または副作用を軽減する)、望ましくない疼痛が標的とされ得る。さらに、イオン電流が可逆ブロッキング方式で神経組織に送達される場合において、ブロックの停止は、望ましい場合に患者を即座に正常な痛覚に回復させることを可能にし、任意の標的を外れたブロックは反転され、即座に身体機能回復を可能にすることができる。
【0165】
中枢神経系の介入を超えて、安全な直流ブロックは、ブロックを円滑にするためにEICCC電極が末梢神経に接触または近接して留置される末梢神経系内で円滑にされ得る。特定の疼痛標的は、病巣の痛み、幻肢痛、神経腫痛、および神経痛を含む。ブロックのために疼痛部位から近位(すなわち脊髄に近い)にある末梢神経を標的とすることで、遠位部位からの痛みを抑制することができる。神経痛に特異的には、帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹後)は、特定の真皮節を追跡する発生の徴候に基づいて標的とすることができる。三叉神経痛については、顔面痛として一般的に発現する痛みを軽減するために三叉神経(および/または脳幹の三叉神経節および/または三叉神経核)がブロックに対する標的にされ得る。別の標的は、首および喉に痛みを生じる舌咽神経である。糖尿病関連の神経障害により頻繁に引き起こされるような手、腕、足、脚などの四肢の神経痛も、潜在的な標的である。
【0166】
疼痛軽減のほかに、神経ブロックおよび活動抑制は、特定の標的方法で心臓血管の健康を改善するために使用することができる。心臓血管疾患の主たる原因として暗示されている高血圧症は、交感神経系の活性化を低減させる腎神経の変調によって緩和することができることが判明している。現在の技術は、超音波および高周波エネルギーなどの多様なエネルギー源を使用してこれらの神経を除神経するか、または切除するために存在している(非特許文献12、特許文献5)。本明細書において説明されているツールを使用することで、腎神経および交感神経系の活動低下を促進し、高血圧症の軽減を円滑にするために選択的神経ブロックが使用され得る。
図11に示されているように、ブロッキング電極リード1100A、1100Bは、ブロックまたは抑制を円滑にするように腎神経に接触し、またEICCC1104が電流源(図示せず)に1106において開放接続されていることが体系的に例示されている。接点は、腎動脈を囲むようにカフ形式で構成されてもよく、腎動脈の外周に円周方向の直流を供給し、腎動脈を囲む神経組織をブロックする。送達されるブロッキング電流は、切除などの破壊的方法では現在行うことができない交感神経ブロックに対する個別の生理学的反応に適合するように調整することもできる。
【0167】
心不全は、交感神経系の上方調節との関連が知られている別の標的疾患状態である。ブロッキング電極を使用して交感神経節を緩和する、特に頸部交感神経節の活動を低下させることによって、心臓の過剰な活動が低減され、心臓の働き過ぎを緩和することができる。後根神経節アクセスと同様に、頸部神経節はブロックのためにアクセスされ得る。
図12に示されているように、頸および星状(頸胸)神経節を含む関連する交感神経節が心臓内の神経支配標的とともに図示されている。アクセスの方法は、後部からのアクセスだけでなく、胸膜腔を通してのアクセスも含む。
【0168】
頻脈または心房細動、心房粗動、多源性心房性頻拍、発作性上室性頻拍、心室性頻拍、および心室細動などの他の頻脈性不整脈も、たとえば、交感神経系の変調によって調節されてもよく、頸部交感神経節(
図13)を標的にして交感神経節のブロックを施すことによって、より正常な状態に向かう影響を受けることができる。アクセスの方法は、後部からのアクセスだけでなく、胸膜腔を通してのアクセスも含む。
【0169】
心臓の副交感神経支配の変調は、心臓機能を調節するために使用することができる。迷走神経の刺激は、徐脈、または徐脈、および心拍数の抑制を引き起こすことが知られている。逆に、迷走神経のブロックを生じさせることで、心拍数抑制神経信号が低減されるか、または停止され、それにより、迷走神経信号を低減することによる心拍数の上昇を引き起こし得る。特に、心拍数の調節を助けるために洞房結節を神経支配する右迷走神経は、ブロックされるか、または抑制され、それにより、心拍数の増大を可能にし得る。
図14を見るとわかるように、EICCC電極1400は、電極リード1402が右胸部に示されている埋め込み可能な電流源1404の方へ下降している状態で頸部および/または胸部の右側内の右(および/または左)迷走神経の周り、またはその近くに留置され得る。電極リード1402は、右鎖骨下領域または他の所望の配置に留置され、電流源に向かって皮膚の下にトンネルを掘ってもよい。
【0170】
心臓血管機能に加えて、神経系は、満腹感(空腹感の欠如)および飽満感(満足感)を含む胃腸プロセスを調節する重要な役割を果たす。迷走神経は、満腹感および飽満感の状態を報告する脳への信号の大部分により胃を神経支配する。EICCC電極1600を使用することで、迷走神経のブロックまたは神経抑制が引き起こされ、これにより、個人の満腹感および飽満感を高めることができる。胃腸神経は、また、胃腸通過時間を延長するか、または短縮するかのいずれかを行うように変調することができる。
図15~
図16を見るとわかるように、各迷走神経が電極リード1602を介してさらに電流源1604に接続されているEICCC1600から組織部位のところにイオン電流が印加されるカフ形式組織界面1606に包まれている例示的な二重EICCCシステムが図示されている。組織界面は、多孔質フリットまたは本明細書において前に説明されているような導電性ヒドロゲルなどの他のイオン伝導性媒体によって緩和され得る。
図16は、胃食道接合領域の近くの
図15の拡大図である。
【0171】
交感神経抑制またはブロックは、また、
図17に示されているように、肝臓機能、胆嚢機能、および/または膵臓機能を調節し、グルコースおよびインスリン産生に影響を及ぼすために使用することができる。肝臓神経を抑制するか、またはブロックすることで、インスリン産生を増大させ、インスリンに対する抵抗性を低減させることができ、これにより、インスリン産生が減少するか、またはインスリン機能に対する抵抗性が高まる成人発症または2型糖尿病の管理が可能になる。EICCC電極1800を使用することで、肝臓神経のブロックまたは神経抑制が生じ、インスリン産生を増大させ、インスリン抵抗性を減少させることができる。
図18を見るとわかるように、肝臓動脈および動脈の周囲の神経が電極リード1802を介してさらには電流源1804に接続されているEICCC1800から組織部位にイオン電流が印加されるカフ形式組織界面1806によって囲まれているEICCCシステムが図示されている。組織界面1806は、多孔質フリットまたは本明細書において前に説明されているような導電性ヒドロゲルなどの他のイオン伝導性媒体によって緩和され得る。他の実施形態では、脾臓神経調節は、低下した免疫機能を改善するか、または炎症もしくは過剰免疫機能(たとえば、SLE、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患における)を低減するか、または他の病状を改善することができる。
【0172】
トゥレット症候群、ジストニア、パーキンソン病(およびそれに伴う硬直)、本態性振戦、痙縮、およびてんかんを含む運動障害も、神経組織活動を緩和することによって影響を受け得る。これらの障害および疾病は、脳の特定の部位における神経活動亢進によって特徴付けられ、これは症状の発現につながり得る。以下の表1に取り込まれているものを含むブロックのために脳の特定の領域を標的とすることは、患者の症状の管理を助けるために使用できる。これらの標的のブロックは、片側性または両側性のいずれかであり得ることが認識されている。
【0173】
【0174】
同様に、治療抵抗性うつ病(TRD)、不安、強迫性障害(OCD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を含む精神疾患は、これらの疾患からの症状を軽減するための神経ブロックの標的である。以下の表2に取り込まれているものを含むブロックのために脳の特定の領域を標的とすることは、患者の症状の管理を助けるために使用できる。これらの標的のブロックは、片側性または両側性のいずれかであり得ることが認識されている。治療可能な他の疾患は、たとえば、統合失調症、統合失調性感情障害、双極性障害、躁病、アルコール依存症、薬物乱用、およびその他を含むことができる。
【0175】
【0176】
慢性疼痛は、脳内の特定の領域が慢性疼痛に影響を及ぼすことに関わっているもう別の標的である。そのような領域の1つが視床であり、これは脳への疼痛信号伝達の入り口である。視床内の特定の領域は、以下の表3に示されているように、慢性疼痛を軽減するための神経活動低下の標的として識別されている。これらの標的のブロックは、片側性または両側性のいずれかであり得ることが認識されている。
【0177】
【0178】
いくつかの実施形態において、システムは、特定の疾患に関わる脳の特定の領域における神経活動を減少させることによって対処することができる疾患および疾病に対して神経ブロックを引き起こすように構成される。神経活動の減少は、特定のニューロンの活動を直接ブロックし、低減すること、さらには過剰な神経信号伝達が生じている経路をブロックすることによって円滑にされ得る。いくつかの実施形態において、深部脳ブロック(DBB)のためのこのシステムは、ブロックに対する解剖学的標的部位を識別するステップ、脳組織の外側へのアクセス部位を作成するステップ、脳組織を通り標的部位に達する経路を作成するステップ、ブロックに対する標的部位の適合性を評価するステップ、標的部位の配置を調整または精密化するステップ、標的部位のところに神経ブロックを施すステップ、神経組織ブロックの強度または配置を調整するステップのすべてまたは一部を含む。実際には、このプロセスは、限定はしないが、機能MRI(fMRI)、コンピュータ断層撮影(CT)、PETスキャン、および/またはX線を含む核磁気共鳴画像法(MRI)などのイメージング技術の組合せを使用して標的解剖学的部位を識別する脳深部刺激(DBS)の分野において知られている技術を使用して実装され得る。次いで、この部位は定位技術を使用してアクセスされ、イメージングからの識別された領域を患者の解剖学的構造に対して位置合わせをすることができる。フレームが患者の頭部および頭蓋骨に固定され、手術中に空間的位置合わせを可能にし得る。穿頭孔または開頭術の形態での脳組織へのアクセス部位は、標的部位にアクセスするための挿入カニューレおよび前進/後退装置などの頭蓋骨に固定された追加のアクセスツールの有無にかかわらず形成することができる。脳組織を通り標的部位に至る神経組織活動測定プローブの前進は、脳領域の適合性の評価を可能にするために使用され得る。このプローブは神経活動を記録して、測定された信号がブロックを必要とする組織と一致していることを決定し得る。信号特性が、配置がブロックに最適でないか、または適切でないことを示している場合、プローブは、正しい配置が識別されるまで調整され得る。測定プローブは、ブロッキング電極と交換されてもよく、このブロッキング電極は、その後、電極の活性部分が標的部位内に位置決めされている状態で挿入することができる。次いで、ブロッキング信号の活性化は、ブロックの有効性を評価するために、さらには信号の強さを調整するために使用することができる。次いで、ブロッキング電極は頭蓋骨に固定され、活性部分(たとえば、イオン電流を送達する領域)の位置を標的部位に維持することができる。延長リードは、貼り付けられたブロッキング電極に接続され、また埋め込み可能パルス発生器(IPG)に類似する埋め込み可能電流源に接続されてもよく、その出力信号は最適な症状軽減を円滑にするように調整され得る。ブロッキング電極は、身体の対側部位が特定の解剖学的標的部位の影響を受けるように片側または両側に埋め込まれてよい。
【0179】
図9Aは、視床内の脳深部ブロック(DBB)標的と界面を形成するように構成されている電子イオン電流変換セル(EICCC)電極900を示している。神経組織界面904は、電極リード902が視床と頭蓋骨の外側との間に導管を形成している間に視床内の標的部位に接触し、ブロックを施す。頭蓋骨アンカー910内の延長ポートは、ポートおよび電流源908と電気的に接続することができる電極延長部906を介して電流源908と電極リード902との間の連通を可能にする。リード902それ自体の中で、EICCCブロッキング電極は、生理食塩水などのイオン伝導性媒体918中で電子電流をイオン電流に変換するAg/AgCl線などの内部電極916を備え、神経組織部位でブロックを生じさせるためにイオンを流せるように設計されている多孔質フリット920などのイオン伝導性材料を介して神経組織界面904のところにイオン電流を生成する。イオン伝導性媒体918および/または組織界面材料は、本明細書の別のところで説明されているようにヒドロゲルまたは他のイオン伝導性材料も備え得る。
【0180】
てんかんに特異的に、電極留置およびその配置での神経ブロックを標的とすることを目的として1つまたは複数のてんかん焦点を識別するために、皮質脳波記録法(ECoG)が実行され得る。埋め込まれたブロッキング電極は、てんかんの発作中に、またはてんかんの発作の発症を感知したときに使用者の求めに応じて神経組織活動をブロックまたは抑制するために使用され得る。さらに、ブロッキング電極を備えるシステムは、てんかんの発作が生じようとしているとき、または生じているときに反応する代わりに、てんかんの発作が防止され得るようにてんかんの発作を引き起こしやすいニューロンのクラスタの電場電位を代替的に下げるように構成され得る。別の実施形態において、ブロッキング電極は、1つまたは複数のてんかん焦点を含む1つまたは複数のニューロンクラスタの活動が監視されるように測定または感知電極と組み合わされ、てんかん症状発現の発症を示す活動が測定されたとき、システムは、閉ループ方式で標的細胞の活動を低下させるためのブロックを自動的に引き起こすことができる。
図9Bには、一体化された感知電極922を有するブロック/抑制電極950の一実施形態が示されており、感知電極922は、標的ニューロン活動の感知が生じるように神経組織界面904に近接しており、感知電極922からの信号は電流源908にフィードバックされ、電流源908は感知電極信号に基づき活性化され、神経組織界面904のところでイオン電流を発生させててんかん発作の発症を中断させるか、または防止することができる。感知電極922は、電極延長部924への絶縁された導電性経路を含むことができる。他の実施形態では、ブロッキング電極は、感知電極922としても機能し得る(たとえば、ブロッキング電流が印加されていないとき)。てんかんを治療するために組織をブロックするための電極は、皮質表面よりも深いところに埋め込まれるストレートプローブとして構成され得るか、または(たとえば、平面状または形状適合性要素を有することによって)皮質上電極として構成されてもよい。
【0181】
いくつかの実施形態において本明細書に開示されているのは、反応発生条件を修正する反応が生じていることを示す信号を監視することによって所望の電気化学反応を維持するためのシステムおよび方法である。理論に限定されるべきではないが、神経組織の従来の交流刺激は、典型的には、従来の電極(たとえば、白金電極)を通して比較的少ない量の電荷を送達する。しかしながら、いくつかの実施形態において、本明細書の別のところで説明されているものを含む高電荷密度電極は、シャノン限界以上であり、いくつかの場合においてその限界をはるかに超えて、比較的大きな量の電荷を送達する。本明細書に開示されているような制御システムおよび方法は、驚いたことに、有利には、組織へのそのような電流の安全な送達を可能にすることができる。
【0182】
いくつかの実施形態において、電気化学反応によって駆動されるイオン電流を送達するシステムは、たとえば、電気化学反応を駆動する電流を生成するのに必要な電圧を測定するように構成されているハードウェアおよび/またはソフトウェアコントローラを含む、監視および/または制御システムを備えることができる。電圧が閾値、たとえば、所定の閾値を交差した場合、コントローラは、電圧レベルを閾値電圧レベルに関して許容可能な範囲に収めるように電流出力を調整(たとえば、増加または減少)することができる。たとえば、特定の電流レベルを維持するのに必要な電圧が高すぎる場合、電流レベルは、電圧が定義された閾値を下回る点まで下げられてよい。いくつかの実施形態において、特定の電流レベルを維持するために必要な電圧が高すぎる場合、電流レベルはゼロに設定されてもよい。さらに別の代替的システムにおいて、特定の電流レベルを維持するために必要な電圧が高すぎる場合、電流レベルは反転されてもよい。
【0183】
いくつかの実施形態において、電流は、たとえば、第1の電極(たとえば、作用電極)と第2の電極(たとえば、対電極)との間で方形波または類似の波形などの波形の形態をとるものとしてよく、電流はそれら2つの電極の間を通る。電極間で電流を駆動するために必要な電圧波形は、電圧閾値上限および電圧閾値下限の範囲内であるものとしてよい。時間の経過とともに、条件が様々であるため基礎となる電気化学反応がドリフトすることが判明した場合、目標とする電流波形を維持するために必要な駆動電圧波形もまたドリフトし得る。目標の閾値からの偏位/偏差が十分に有意である場合、これは望ましくない電気化学反応が発生していることを示し得る。電圧閾値限度および関連する電圧は、代替的に、またはそれに加えて、作用電極と参照電極との間で測定され、作用電極‐電解質界面を横切る電圧降下を直接評価して、その界面を横切る電気化学反応および電位を評価するものとしてよい。望ましくないゾーンへのこれらの偏位を防止するために、送達される電流は、上で説明されているように駆動電圧を低減するように調整され得る。代替的に、電圧偏位は、電気化学反応の変化によるものであり得る。たとえば、同じ目標量の電荷が一方電極から第2の電極に移動し、そして第1の電極に戻る反応が生じるシステムでは、不完全な電荷計量および不可逆反応のせいで時間が経過するとともに正味電荷はゼロからドリフトし得る(たとえば、不平衡になる)。これにより、次いで、所望の電流を生成するのに必要な電圧が変化し、望ましくない電気化学反応が生じていることを示し得る。目標レベルからの正味電荷移動のドリフトは、いくつかの実施形態において、駆動電圧を監視し、その駆動電圧特性を介して反応物質が不足していると検出された電極上に追加の電荷を発生させる制御ループを形成することによって相殺することができる。たとえば、Ag‐AgClシステムでは、作用電極上の利用可能なAgClの枯渇は、より低い反応電位のAgCl(s)+e-⇔Ag(s)+Cl-反応がもはや利用できなくなり、他のより高い反応電位の反応が生じ、より高い駆動電圧を必要とするようになると、陰極に関して駆動したときに負の電圧ディップとして現れ得る。この場合、波形の陰極フェーズにおいてより高い電圧が検出された場合、追加の電荷は、作用電極に送達される電流の持続時間、振幅、またはその両方を増加させることによって、その後の陽極フェーズにおいて作用電極に付与され得る。このような制御システムは、また、限定はしないが、窒化チタン電極、たとえば、窒化チタンフラクタル電極を含む、高電荷密度電極にも有利であり得る。
【0184】
図19は、ある期間にわたる駆動電圧波形ならびに正および負の閾値を例示している。図示されているように、負の閾値は、時点2600の前に負の電圧ディップにより交差/破られる。時点2600の後に、負のディップはもはや存在せず、目標電流レベルを調整することによって、および/または作用電極と対電極との間の電荷移動の分布を調整することによって対処することができる。たとえば、より多くの反応物質を生成するための追加の電荷が、作用電極に対するサイクルの陽極フェーズにおいて移動され得る。
【0185】
図20は、ある期間にわたる駆動電圧波形ならびに正および負の閾値を例示している。図示されているように、負の閾値は、負の電圧ディップにより交差/破られるが、これはより単調な増加または一般的に平坦な電圧波形の上にディップまたはスパイクとして特徴的に出現し、望ましくない反応が生じていることを示し得る。
【0186】
図21は、電圧および電流対時間のグラフの概略を例示しており、これは駆動電圧が設定された閾値以下に保持されている間に電流振幅が設定された目標に向かって高くなる電極アニーリングまたは調整プロセスを例示している。駆動電圧が所与の電流振幅を超えていない場合、電流は目標電流まで上に向かって段階的に増加させることができる。所与の電流振幅に対して駆動電圧を超えた場合、電流は、電圧閾値をもはや超えなくなるまで同様に徐々に減少させることができる。所与の電流振幅における複数のサイクルは、目標電流に向けて電流をインクリメントする前に、電圧閾値内に留まることによって評価されるように、システムがその電流レベルおよび持続時間で安定しているかどうかを決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000以下、またはそれ以上もしくはそれ以下のサイクル、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲が利用され得る。目標電流での一連のサイクルに対する電圧閾値は、アニーリングまたは調整プロセスが成功したかどうかを決定するうえで安定しているとみなされるべき駆動電圧許容範囲内に収まるように設定され得る。
【0187】
また、本明細書において開示されているのは、直流で神経組織をブロックするためのシステムおよび方法である。システムは、無期限の直流送達を可能にすることができる(たとえば、電流の充電反転を必要としない)。水、または生理食塩水などの他の好適な媒体が、いくつかの場合において一次酸化還元反応剤として使用することができ、貯蔵槽は、必要に応じて水または他の媒体を補充することができる。いくつかの実施形態において、酸化還元反応によって生成されるガスの放出を可能にするために1つ、2つ、またはそれ以上の通気孔が存在し得る。いくつかの実施形態において、通気孔は、ガスの放出を可能にするが、容器内に液体を保持することを可能にするために、液体不透過性膜によってガス透過性を備え得る。DC発生器は、潜在的に大きなリード/カテーテルインピーダンスを駆動するのに十分な電圧を有し得る。システムは、所望の、たとえば、槽の中性pHを維持するためにpH中和剤を通して水などの媒体を循環させるための1つ、2つ、またはそれ以上のポンプも備えることができる。システムは、槽のpHを検出するためのpHセンサを備えることもでき、必要に応じて、改質、たとえば、緩衝剤添加を可能にする。槽は、槽のpHを公称的に一定に維持するためにpH緩衝液をさらに備え得る。
【0188】
図22は、液体を保持するように構成されているカテーテル2212に動作可能に接続されている神経組織界面2224を備えることができるシステム2200を例示している。カテーテル2212は、界面2214によって反応チャンバ2204に動作可能に接続され得る。界面2214は、特定の微粒子がカテーテル2212内に流入するのを防ぐために陰イオン交換膜などの膜を備えることができる。カテーテル2212は、カテーテル2212を通る流体流をブロックするか、許すか、または部分的に制限する異なる位置の間で作動できる弁2216を有することができる。また、図示されているのは、広い表面積を有し得る反応電極2220を含む反応チャンバ2204であり、反応電極2220は前に指摘したように酸化還元反応剤2226(たとえば、水)によって部分的にまたは全体的に囲まれ得る。反応電極2220は、導線2228を介してDC発生器2202に動作可能に接続され得る。チャンバ2204は、pHセンサ2218も備えることができる。チャンバ2204は、ガス通気孔2234を備えることができる。チャンバ2204は、配管システム2222などにより、通常はチャンバ2204から封止され得るpH中和剤のポンプ2206および貯蔵槽2208、およびpHが所定の閾値を外れたときに開かれる弁または他の可逆的な通路に動作可能に接続され得る。チャンバ2204は、電極2220から出る気泡の放出を促進するための攪拌器2210(たとえば、超音波プローブ)を備えることもできる。槽は、形成されたときに電極2220への気泡の付着を減少させる界面活性剤も備え得る。反応電極2220は、DC発生器2202に動作可能に接続され得る。DC発生器2202は、リターン電流を円滑にするために、導線2230を介して潜在的な第2ユニット2232に接続することもできる。第2のユニット2232は、上で説明されているシステム2220と同じか、または類似しているものであってよい。
【0189】
いくつかの実施形態において、DCブロッキング電極組織システムは、交換可能な電極材料を含むことができる。使用済みの反応金属(または他の材料)は、任意選択で、時間の経過とともに除去され、新鮮な反応材料が反応チャンバに供給され得る。これは、有利には、反転/充電フェーズを必要とせずに直流の一方向送達を可能にし得る。
図23Aは、反応材料2316を入れた反応チャンバ2304を備えるシステム2300を例示している。テザー(反応材料を含むか、または動作可能に反応材料に取り付けられている)、コンベアベルト、または他のメカニズムを有するスプールなどの回転可能部材2306は、新鮮な反応材料2314を図示されているような反応チャンバ2304内に(およびそこから使用済みの反応材料を外に)移動し、別のスプール2308上に移動させることができる。また、例示されているのは、DC電流を組織界面2312に伝えるように構成されているカテーテル2310である。また、例示されているのは、反応チャンバ2304および/またはスプール2306に動作可能に接続されているDC発生器2302である。
【0190】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されているのは、
図23Bに概略が示されているような反応/作用電極の電気化学的状態を検出するための一体化されたセンサを備えることができる分離された界面神経電極である。センサ2330は、たとえば、pH、質量、または電圧などの、作用電極2324の状態を示す1つ、2つ、またはそれ以上の変数を測定することができる。いくつかの実施形態において、センサ2330は、作用電極2324と参照電極2330との間の電位の測定を可能にするためのAg‐AgCl参照電極もしくは白金参照電極などの参照電極であり得るか、または作用電極2324‐電解質界面で生じる電気化学反応を探るためのセンサであってもよい。作用電極2324およびセンサ2330は、両方とも、エンクロージャ2318内に配設され得る。エンクロージャ2318は、リード/電極2320に動作可能に接続され得る。そのようなリード/電極2320は、インピーダンスを低減するために比較的短い長さを有することができる。リード2320の長さは、0から2cm、2から4cm、4から8cm、もしくは8から12cm、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲の長さであってもよい。リード2320の遠位端は、組織界面2322を有することができる。さらに、リード2320の幾何学的形状およびリード2320内のイオン伝導性媒体の組合せは、1kΩ/cm未満、または1~3kΩ/cmの間、または3kΩ/cmを超えるインピーダンス値を有するように構成され得る。センサ2330は、導線2328に動作可能に接続され得る。作用電極2324は、導線2326に動作可能に接続され得る。
【0191】
図24は、システムおよび方法が、鉛酸蓄電池、ニッケル‐カドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、亜鉛炭素電池、バイオ電池、または他のタイプの電池の化学反応などの電池型の化学反応を利用してDC電流を組織に送達することができることを例示している。システム2400は、導線2412、2414を介して、電池化学タイプの反応物2406、2408を含むことができる1つ、2つ、またはそれ以上の反応チャンバ2402、2404に動作可能に接続されているDC発生器2410を備えることができる。たとえば、反応物2406、2408は、鉛/酸化鉛であり得、酸化還元反応物質は、例示されているように硫酸および/または水であり得る。A2420で示される膜または他のユニットは、カテーテル/リード2416、2418および組織2426に接続されている組織界面2422、2424(たとえば、陽イオンまたは陰イオン選択性膜)への有害成分の通過を防ぐことができる。
【0192】
図25は、カテーテルの長さを短縮しインピーダンスを低減するために患者の部位への装着を可能にするように修正されたSINE型電極2500の概略を示している。たとえば、DC発生器2502は、反応チャンバ2504(たとえば、電極および電極槽を含む電極システム/電荷発生器)に接続されている電線2506に動作可能に接続され、次いで、開口部2513を介して標的組織配置2512にDC電流を送達するように構成されている液体カテーテル/チューブ2508に接続され得る。前述の構成要素の1つまたは複数は、患者の体外または体内にあり得るが、いくつかの実施形態において、図示されているように、液体カテーテル/チューブ2508のわずかな長さの部分が患者2510の体内の電極システム2504と標的組織配置2512との間に置かれ長さを短くしインピーダンスを減少させる。いくつかの実施形態において、液体カテーテル/チューブ2508の長さの大部分、または少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上が、患者の身体2510内に置かれ得る。いくつかの実施形態において、約5cm、4cm、3cm、2cm、1cm未満、または液体カテーテル/チューブ2508の長さ部分未満は、患者の身体2510の内部ある。
【0193】
いくつかの実施形態において、システムは、患者の移動能力を促進するために完全にウェアラブルであり得る。システムは、たとえば、頭皮、首、上肢もしくは下肢、胴体、または腹部などの所望の体表面に取り付けるためのストラップ、接着剤、バンド、または他の要素を備えることができる。リード/カテーテルは、所望の解剖学的部位に示されているように経皮的に、または他の実施形態では経皮的に横断する形で界面を形成することも可能である。
図26Aは、リード/カテーテル2606の一部が患者2602体内/体表面上の所望の解剖学的部位2608に埋め込まれた状態の、DC発生器2604、電線、および反応チャンバ2604を備えるウェアラブルシステム2600を例示している。
図26Bは、治療(たとえば、神経ブロック)の部位に対して局部的である包帯状システム2601を例示している。電極システム/電荷発生器2604は、ストラップ、バンド、接着パッチ、接着剤、または他の取り付け要素2610を用いて患者2602に固定することができる。リード/カテーテル2606は、電極システム/電荷発生器2604に動作可能に接続され、標的組織配置2608にDC電流を送達することができる。
図26Cは、リード2606がシステムの狭い側面を出て、リード2606がシステムの広い側面を出て、患者の体内に直接挿入され得る2つの異なるリード出口構成を有するそのようなウェアラブルデバイス2604の実施形態の概略を示している。リードは、ウェアラブルシステムの残りの部分に接続する前に患者身体への挿入を容易にすることを可能にするためにシステムの残りの部分から脱着可能に構成され得る。ウェアラブルデバイス2604は、電源2612、DC発生器/制御電子機器2614、槽および電極を有する反応チャンバ2616、ならびに取り付け配置2618、2620を含むことができる。
【0194】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されているのは、互いに離間する複数の配置でDCブロックを循環させることによって痛みまたは他の病状を治療する方法である。たとえば、電極は、DC発生器によって供給され、導線2702を介して動作可能に接続されている、
図27Aに概略が示されている、部位A2704、部位B2706、および部位2708に存在し得る。電極は、脊髄2710に施され得る。
図27Bに示されるような変数v(t)(電圧は時間とともに変化する)またはi(t)(電流は時間とともに変化する)は、非常に長い二相性サイクルを有し得る。
図27Cに例示されているように、二相性波t
1/2の各位相の時間は、たとえば、少なくとも約0.1秒、1秒、5秒、10秒、20秒、50秒、100秒、500秒、1000秒、5000秒、またはそれより長いか、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲であり得る。その時間の組織の一部をブロックすることは、標的組織の直下または近位の電極がそれを必要としている人において治療的に有益であることを伴い得る。DC電流ブロックは、いくつかの実施形態において、電極AまたはBの付近にあってよく、したがって、組織内の連続的またはほぼ連続的なブロックを施すことができる。いくつかの実施形態において、電荷波形が重なり合う3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の離間する電極2704、2706、および2708は、
図27Dに示されるように、有利には連続的な神経ブロックを促進するために利用できる。
【0195】
また、本明細書に開示されているのは、DCブロッキング電極システムのための電気化学的状態を示す変数を測定することに基づきDC出力電流振幅を制御するシステムおよび方法である。これは、有利には、組織の健康さらには電極にとって安全である電気化学的範囲(たとえば、反応の種類)でのみ動作することを確実にするためにDC電流の安全な使用を促進することができる。変数は、たとえば、電圧、pH、温度、または他のもののうちの1つ、2つ、またはそれ以上であってもよい。
図28Aは、電圧監視のための任意選択の参照電極2802を備えるDC電流システム2800の概略を例示している。電源2804は、導線2806、2808を介して電極2810、2812に接続することができる。
図28Bに示されている単純な例では、DC電流の送達が続くとともに電極電圧が増大する。電流は、異なる化学作用(たとえば、水の電気分解)が生じる可能性があることを示す閾値最大値に電圧が達すると、停止され得る。いくつかの実施形態において、システムは、電圧を所望の動作範囲内に維持するために出力電流を減少させるか、または他の何らかの形で変調することによって、中断を減らして送達することを可能にするために、より複雑ものであってもよい。出力は、たとえば、比例積分微分(PID)コントローラを用いて制御することができる。動作電圧を所望の範囲内に維持するために、いくつかの場合において、正味不平衡電荷送達が望ましいことがある。
【0196】
いくつかの実施形態は、DC発生器に動作可能に接続されている電極、たとえば、コーティングありまたはコーティングなしの銀‐塩化銀電極に対するアニーリング、または調整プロセスを含むこともできる。出力電流は、電圧を監視しながら、循環的に徐々に増加させることができる。電圧は
図29に示されているように上側および下側の閾値バンドを有する所望の範囲内に保持され、これは電極部位で発生する電気化学反応を(たとえば、水の電気分解とは反対に銀‐塩化銀反応に)制限する。繰り返しのサイクリングにより、電圧閾値で留まっている間、より多くの(より高い)電流を流すことができる。
【0197】
また本明細書において開示されているのは、いくつかの実施形態において、単一故障安全DCシステムおよび方法である。システムおよび方法は、
図30Aに概略が示されるように、約5000、7500、10000、12500、15000、50000、100000マイクロファラッド(μF)、または少なくとも約5000、7500、10000、12500、15000、50000、100000マイクロファラッド(μF)、またはそれ以上、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲などの非常に大きな直列キャパシタを伴うことができる。電荷計量は、送達のプログラムされた振幅および持続時間、感知抵抗器の両端にかかる電圧を使用して測定された送達、
図30Bに概略が示されているような追加の(たとえば、第3または第4の)参照電極ありで、もしくはなしで電圧出力を監視すること、
図30Cに概略が示されているような電流送達を停止するかまたは遅くするためのスイッチを制御する回路を監視すること、および/または単一の(もしくは複数の)故障状態に対する耐性を促進するために独立したマイクロコントローラもしくはロジックデバイスによる監視を実行すること、の任意の数の操作を利用することなどで、知られている値が各方向に送達されるように実行され得る。
【0198】
それに加えて開示されているのは、窒化チタンまたは他の高電荷密度電極を含む、直流を組織に安全に送達することができる電極システムおよびこれらのシステムを製作する方法である。いくつかの実施形態において、取り付けられた塩化銀(AgCl)層3104(
図31)を有する銀(Ag)基板3102を備える銀‐塩化銀電極構成3100が開示されている。AgCl層は、化学蒸着プロセスを介して表面に蒸着されてもよい。代替的に、またはそれに加えて、AgCl層は、また、銀基板を塩化物イオン(Cl
-)を含む電解質溶液中に浸漬し、基板を通して電流を送達し基板中の銀原子を酸化し塩化物イオンに結合して前に説明されているように塩化銀を生成することを可能にする化学反応を円滑にする電気化学的プロセスを通して銀基板上に成長させられてよい。
Ag(s)+Cl
-⇔AgCl(s)+e
-
【0199】
いくつかの実施形態において、電極は、限定はしないが、一般的に平坦な形状、または円筒形状などの丸みを帯びた形状を含む、任意の望ましい形状であってよい。非限定的な一実施形態において、電極は、約3.5mmの長さを有する約1.4mmの外径の寸法を含むことができる。別の実施形態では、電極は、約3.6mmの直径を有する平坦な円盤を備え得る。電極は、また、長円または丸薬の形状を有していてもよい。電極の表面積は、たとえば、約5mm2未満、約5から10mm2、約10~15mm2、約15~20mm2、20mm2より大きい、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲(たとえば、約5mm2から約20mm2の間)であってもよい。銀基板上の塩化銀の層は、たとえば、約1マイクロメートル未満、約1から3マイクロメートル、約3から5マイクロメートル、約5~10マイクロメートル、または約10マイクロメートル以上の厚さ、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲(たとえば、約1マイクロメートルから10マイクロメートルの間)で、治療上必要になったときに十分な直流および電荷の送達を可能にするように生成され得る。一実施形態では、直径約1.4mm、長さ約3.5mmの円筒状電極が、厚さ約10マイクロメートルの塩化銀層により調製され、約10秒間、約5mAの電流の特定の設定などの最大約5000mA秒までの電荷の送達を可能にする。反応が適切な対電極で逆方向に実行されるときに、電極は、体内での直流の長時間サイクリングおよび使用を可能にするように再生され得る。いくつかの実施形態は、窒化チタンおよび他の材料などの他の高電荷密度材料を含むことができ、そのうち一部は本明細書の別のところで開示されている。
【0200】
塩化銀は、電解質槽を通して直流を印加することによって純Ag上に形成され得る(
図32)。
図32を見るとわかるように、対電極3202および作用電極3204が電解質槽3206内に浸漬され、2つの電極3202、3204間の電位を駆動する電源3214に接続されているように図示されている。一構成において、電解質槽3206は、生理食塩水3210のような塩化物イオン、たとえば、0.9wt%(等張性)生理食塩水を含む。対電極3202および作用電極3204は、両方とも銀であってよく、または作用電極3204だけが銀であってもよい。駆動電圧の印加により、電流が発生し、作用電極3204上の銀は塩化銀に変換され、銀基板上に塩化銀の層を形成することができる。
【0201】
単純化されたアプローチでは、直流を印加し、電量測定を用いて、治療電流レベルでの最長の陰極パルスが電極3204を消耗させないように電極3204上に十分なAgClを形成するのに必要な総電荷を計算することも可能である。しかしながら、単純化されたアプローチは、電気分解電位閾値未満の安全な駆動電圧範囲を維持しながら、対称的な電気化学反応に容易に関与する両方の能力に影響を及ぼすAgClの特性に対処することができない。いくつかの実施形態において、電極システム3200がAgからAgClへの電気化学反応に対して隔離されたイオン電流の流れを保ち、潜在的に有害な副生成物の形成を実質的に防ぐことが重要であり得る。電極3204、3202に印加される電圧電位を制御することは、異なる反応が異なる電位で生じるときに電気化学反応を選択する主たる手段であり得る。正しい特性を有しないAgCl電極は、規定された電流の流れおよび持続時間を維持するために許容可能閾値より高い電圧電位を必要とし得る。その結果、電気化学反応は、制御不能になり、潜在的に有害な副生成物の発生を引き起こす可能性がある。
【0202】
1つの初期ステップは、銀基板上に塩化銀の層を生成することであり得る。水溶液の電気分解を引き起こさない制御された方式でこれを行うために、電極の治療動作のための目標電流または電極に対する最大治療電流であり得る最大電流が指定されてもよい。最大電流は、たとえば、約0から3mA、約3から5mA、約5から7.5mA、約7.5から10mAの範囲、もしくは約10mA以上、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲内であり得る。次いで、駆動電圧が対電極3202と作用電極3204との間に印加され、作用電極3204上に塩化銀層3212を形成することができる。作用電極3204は、電解質溶液3210中に、溶液3208の頂部が作用電極3204の全体を覆わないように部分的に沈められ、その結果、沈められた部分に塩化銀層3212が形成されるようにすることができる。電極表面3204上に目標量の塩化銀を生成するように、目標総電荷が指定され得る。電極3204の構築期間、さらにはエッチバック期間が指定され、電流が逆方向に駆動され形成された塩化銀の一部を除去し電極表面上の塩化銀のより頑丈な形成を生み出すことができる。一構成は、たとえば、10%のエッチバック期間を含む60秒の構築期間を含むことが可能であり、次いで構築されたAgCl層の10%が次の構築期間の前に除去される。構築期間およびエッチバック期間または除去期間の他の組合せが、銀基板上にAgClを生成するために使用され得る。
【0203】
トレースA(実線)について
図33に示されているように、印加される駆動電圧は、作用電極上のAgClの構築に対応して正であり得る。規定された構築期間の後、除去またはエッチバック期間が生じ、次いで次の構築サイクルが、総電荷および標的AgCl層が堆積され、構築プロセスが「X」で示されるように終了するまで続く。トレースAでは駆動電圧閾値の絶対値に達しなかったので、駆動電圧は、AgCl生成プロセスにおいて調整される必要がなかった。しかしながら、トレースB(点線)についての
図33では、駆動電圧閾値上限に達しており、コントローラに記憶されているアルゴリズムが、AgClを構築するために使用される電流を減らすことによって駆動電圧を上限閾値レベルに押さえることができる。構築期間の後に、説明されているような除去またはエッチバック期間が続くものとしてよく、このプロセスは、標的電荷が作用電極上にAgClの形態で堆積されるまで続く。他の実施形態では、駆動電圧パラメータは、作用電極参照電極電圧パラメータで置き換えられ、電気化学的界面電位をより正確に測定して駆動電圧を制御し、潜在的に有害な副生成物の生成を制限し得る。
【0204】
塩化銀が電極上に生成された後、AgClを銀に変換する、またその逆の変換をするための駆動電圧は、組織に近接して使用される場合に潜在的に危険な状態に至る電気分解電位をそれでも超える可能性がある。電気分解電位より低く維持される駆動電圧により安全な範囲内で動作できるように電極を調整するために、電極を特定の方式で循環させることができる。
【0205】
固定電流振幅および固定持続時間において銀/塩化銀反応を循環させることで、
図34に示されているように、サイクル数の増加とともにピーク駆動電圧が低下し、その結果、電気分解閾値より低い駆動電圧が得られることが実証されている。しかしながら、電流振幅および持続時間を固定するアプローチは、いくつかの場合において、駆動電圧閾値の上限および下限を超えるか、または交差するピーク電圧を見るとわかるように駆動電圧が電気分解閾値を超えた場合に、望ましくない安全でない副生成物の生成を引き起こし、潜在的に生成物による望ましくない反応の生成を引き起こす可能性がある。いくつかの実施形態において、電極は、製造槽内で調製され、次いで、電極は、標的デバイス槽内でまたは直接体内で使用する前にその槽から取り出され、そのときに駆動電圧は低減され、所望の範囲内に押さえられ得る。他の実施形態では、駆動電圧パラメータは、作用電極参照電極電圧パラメータで置き換えられ、電気化学的界面電位をより正確に測定して駆動電圧を制御し、潜在的に有害な副生成物の生成を制限し得る。
【0206】
望ましくない副生成物の生成を軽減するために、ハードウェアまたはソフトウェアプロセッサによって実行され得るサイクリングアルゴリズムが開発されており、これは、電極を構築および除去サイクルで循環させ、電気分解電位であるか、または他の何らかのものであり得る設定された駆動電圧閾値を超えることなく繰り返し循環され得る所望の電流振幅および持続時間を取得する。このプロセスは、たとえば、形成ステップおよび安定化/調整ステップを通じて行われる。
【0207】
形成ステップは、特定の期間にAgClの層を構築し、次いで、添加されたAgClを除去する電流の繰り返しサイクリングを伴う。堆積されたAgClの量は、その後最大電圧限度または駆動電圧閾値上限によって制限される電流レベルによって制限される。最小電圧限度または駆動電圧閾値下限もあり得る。AgClが繰り返し添加され、除去されると、AgClの基礎構造が変形し、固定された駆動電圧レベルでより多くの電流を維持できるようになる。特定のプロセスの下で、これらの変化は、電極の表面に見える微細構造変化として観察され得る。形成フェーズは、持続できる電流レベルが規定された値を満たすまで継続する。本明細書に指摘されているように、限定はしないが、高電荷密度電極を含む他の電極は、本明細書の別のところで開示されているようなシステムおよび方法を利用することができる。
【0208】
アルゴリズムの一実施形態は次のとおりであり、これは、たとえば、1つまたは複数の電流発生器および1つ、2つ、またはそれ以上のセンサと通信しているコントローラによって実行できる。
a.規定された期間に、陽極電流を電極に印加する。このときに、この持続時間にわたってピーク正電圧を測定する。
b.陽極フェーズにおいて印加された総電荷が除去されるまで電極に陰極電流を印加する。このときに、この持続時間にわたってピーク負電圧を測定する。
c.ピーク電圧を分析し、陽極フェーズおよび陰極フェーズの両方に印加されるべき電流を調整する。ピーク電圧の大きさが電圧限度値より小さい場合、電流の大きさは、一定の割合で、規定されている電流限度値まで増加させられる。ピーク電圧の大きさが電圧限度値を超えた場合、電流の大きさは比例する量だけ減少する。
d.陽極電流が規定された電流値に達した場合、安定化/調整フェーズに移行する。そうでない場合、サイクリングプロセスを繰り返し続ける。
【0209】
図35において、電流レベルが比較的低い値から始まり、駆動電圧の上限閾値を超えないときにサイクル毎に高くなる形成ステップにおいて作用電極および対電極形成が処理される。実線の矢印で示されているように、所定の電流レベルに対して駆動電圧閾値上限を超えたときに、開放矢印で示されているように、次のサイクルに対する印加電流レベルが減少する。作用電極に対する正の電流の持続時間は目標持続時間に設定され、最終的な振幅は目標振幅である。両方とも、アルゴリズムの他の実施形態では異なるように構成され得る。他の実施形態において、駆動電圧パラメータは、電気化学的界面電位をより正確に測定するために、作用電極参照電極電圧パラメータで置き換えられ得る。他の実施形態では、初期電流送達サイクルは、陽極の代わりに陰極であってよい。
【0210】
安定化/調整ステップは、特定の期間にAgClの層を構築し、次いで、添加されたAgClを除去する電流の繰り返しサイクリングを伴うこともできる。堆積されるAgClの量は固定され、電流および持続時間によって決定される。AgClが繰り返し添加され、除去されると、AgClの基礎構造が変形し、この持続時間に規定された電流を流すのに必要な電圧電位を低下させる。安定化/調整フェーズは、サイクル間電圧変動が事前設定値を下回るまで続く。
図35を見るとわかるように、安定化/調整フェーズは、各サイクルで実質的に一貫した電流振幅と、ピークレベルが事前定義されている変動値内で一貫している駆動電圧を含み得る。
【0211】
アルゴリズムの一実施形態は次のとおりである。
a.規定された期間に、陽極電流を電極に印加する。このときに、この持続時間にわたってピーク正電圧を測定する。
b.陽極フェーズにおいて印加された総電荷が除去されるまで電極に陰極電流を印加する。このときに、この持続時間にわたってピーク負電圧を測定する。
c.以前のN個のピーク電圧のリストを維持する(たとえば、メモリに)。サンプル数Nは、構成された安定期間である。
d.ピーク陽極電圧の変動が設定値未満である場合、電極形成プロセスは完了である。そうでなければ、電流を循環させ続ける。代替的に、ピーク陽極電圧の大きさは、電極形成プロセスが完了するまで、または電極形成プロセスが完了したときに、設定値より小さい。
【0212】
いくつかの実施形態において、電極は、たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100mm2、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100mm2未満、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、90、100mm2以下、またはそれ以上もしくはそれ以下、または前述値のうちの任意の2つを含む範囲の作用表面積を有することが可能である。
【0213】
いくつかの実施形態において、最大電流限度は、たとえば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mA、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mA未満、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mA以下、またはそれ以上もしくはそれ以下、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲であり得る。
【0214】
いくつかの実施形態において、電圧限度は、たとえば、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5V、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5V未満、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5V以下、またはそれ以上もしくはそれ以下、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲であり得る。
【0215】
いくつかの実施形態において、電圧変動限度は、たとえば、約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250mV、または約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250mV未満、または約0.1、0.5、1、5、10、15、20、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250mV以下、またはそれ以上もしくはそれ以下、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲であり得る。
【0216】
いくつかの実施形態において、時間期間限度は、たとえば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60秒、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60秒未満、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、55、60秒以下、またはそれ以上もしくはそれ以下、または前述値のうちの任意の2つを含む範囲であり得る。
【0217】
いくつかの実施形態において、安定性期間は、たとえば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000サイクル、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000サイクル、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000サイクル以下、またはそれ以上もしくはそれ以下のサイクル、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲であり得る。
【0218】
いくつかの実施形態において、構築期間は、たとえば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000秒、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000秒、または約2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、500、1,000秒以下、またはそれ以上もしくはそれ以下の秒数、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲であり得る。
【0219】
いくつかの実施形態において、構築およびエッチバック期間は、たとえば、少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、または約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、または約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%以下、またはそれ以上もしくはそれ以下、または前述の値のうちの任意の2つを組み込んだ範囲であり得る。
【0220】
代替的実施形態において、構築電荷は、最大約2500、3000、3500、4000、4500、もしくは5000mA秒まで、または5500、6000、7000、8000、9000、10000mA秒などの5000mA秒より高い、またはそれ以上、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲とすることもあり得る。
【0221】
開示されているアルゴリズムなどいくつかの実施形態において、たとえば、電極は、たとえば、電気分解電位などの設定された閾値未満の駆動電圧での所望の持続時間の目標電流振幅の送達を可能にする仕方で調整され得る。アルゴリズムは、組織を損傷する可能性のある有害な副生成物の生成を引き起こし得る駆動電圧閾値上限より高い電圧に電極が曝される時間を制限する。他の実施形態において、駆動電圧パラメータは、電気化学的界面電位をより正確に測定するために、作用電極参照電極電圧パラメータで置き換えられ得る。他の実施形態では、初期電流送達サイクルは、陽極の代わりに陰極であってよい。本明細書において指摘されているようなシステムおよび方法は、電流、電圧、およびコントローラに入力する他のパラメータを測定するためのセンサを伴うことができ、これは、限定はしないが開または閉のいずれかのループ方式の本明細書において開示されているものを含む、特定のアルゴリズムを実行することができる。
【0222】
図36は、裸銀電極上にAgCl層を形成した後、およびAgClコーティング電極を状態調整する形成および安定化/調整ステップを実行した後、起こり得る微細構造の変化を示している。これらの微細構造変化は、Ag形態とAgCl形態の間で容易に遷移し、電気化学反応に対する表面積を増加させるAg‐AgCl「アイランド(島)」の形成を含むことができる。
【0223】
駆動電圧が電気分解電位などの安全閾値または安全係数を組み込むなどにより必要に応じて設定された別の閾値であってよい設定された閾値以下になるように電極を構築して調整する方法に対する実施形態が説明されているが、システムは、それでも、駆動電圧を所望の目標範囲外に押し出す傾向のあるシナリオに遭遇する可能性がある。たとえば、作用電極と対電極との間で交換される電荷はわずかにバイアスがかかり、各サイクルで作用電極よりも対電極に多くの電荷が堆積されることがある。多くのサイクルにわたって、これは作用電極から活性状態の調整されたAgClまたは他の基板を除去し、駆動電圧の大きさを増大させ得る。
図37は、時間が経過して駆動電圧が駆動電圧閾値下限を超え始めたことを示している。さらに、体内では、システムのインピーダンスは、電極‐身体界面にかかる反応電位だけでなく、体組織それ自体のインピーダンスおよび組織を通して生じる電圧降下によっても決定される。組織インピーダンスは、電極の周りのカプセル形成(たとえば、線維症)、運動、体重の増減、または身体インピーダンスが時間の経過とともに変化(増加または減少)する他の要因により変化し得る。低周波では、駆動電圧は、以下に示すように、組織を直に囲むリード上の電圧降下(ΔV
lead)および身体上の電圧降下(ΔV
body)を含むからである。
V
driving=ΔV
lead+ΔV
body=I×(R
lead+R
body)
【0224】
いくつかの場合においてリード上の電圧降下が安全閾値を超えないことを確実にすることは有利であり得るが、それは、その電圧降下が電気化学反応を示し、駆動するからである。身体抵抗(Rbody)を計算できれば、ΔVbodyは、設定された電流値(I)に対して決定され、リード上の電圧降下(ΔVlead)が計算され、ΔVleadが安全範囲内に留まることを確実にするように駆動電圧(Vdriving)を調整することによって調整され得る。
【0225】
図38において、電極および身体は、並列に接続した抵抗(R
lead)とキャパシタ(C
lead)および電極と直列に接続した身体インピーダンス(R
body)としてモデル化され得る。
図39に示されているように、低い駆動周波数において、電極および身体は、上記の式を反映するようにモデル化され得る。
図40に示されているように、高い駆動周波数では、システムは、キャパシタが短絡のように振る舞い、インピーダンスを有しないようにモデル化され得る。このシナリオにおいて
図40を参照すると、システムは次の式で定義することができ、ただし、R
lead=0なのでΔV
lead=0である。
V
driving=ΔV
lead+ΔV
body=I×(R
lead+R
body)=I×R
body
V
drivingと電流(I)とを知ることによって、身体インピーダンス(R
body)が次のように計算できる。
R
body=V
driving/I
したがって、リードまたは電極の電圧降下は(たとえば、プロセッサを介して)次のように計算され、全体の駆動電圧を調整することによって制御され得る。
ΔV
lead=V
driving-ΔV
body
これは、次のように、システムが電圧を設定された閾値より低く維持することを可能にし得る。
ΔV
lead<V
threshold
【0226】
再び
図40を参照すると、リードまたは電極‐身体界面を横切る短絡をシミュレートする能力は、図中丸で囲んで示されている短絡電流入力を発生することによって実装され得る。いくつかの実施形態において、電流入力は、最大約10マイクロアンペアまで、約10から約20マイクロアンペアまで、約20から約50マイクロアンペアまで、約50から約100マイクロアンペアまで、約100マイクロアンペアから約200マイクロアンペアまで、約200マイクロアンペアを超える、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲のオーダーの電流振幅を含む。いくつかの実施形態において、電流入力は、最大約1マイクロ秒まで、約10から約20マイクロ秒まで、約20から約100マイクロ秒まで、約100マイクロ秒から約1ミリ秒まで、約1ミリ秒から約100ミリ秒まで、約100ミリ秒を超える、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲のオーダーの電流持続時間を含む。この電流入力は、DCサイクルの開始時、DCサイクルの間、またはDCサイクル後に発生し、これにより身体インピーダンスを決定して駆動電圧の調整を可能にし、リードまたは電極の電圧を設定された閾値より低く維持することができる。設定された閾値は、電気分解電位などの安全閾値であってもよい。電流入力は、各サイクルまたは1つおきのサイクルでまたは周期的にまたは望み通りオンデマンドで実行されてよく、これによりリードまたは電極の電圧降下の決定が可能になる。次いで、この電圧降下を知ることで、自動制御ループで、または手動で駆動電圧を調整することができる。最初の高周波電流入力の後に、DC電流波形は、前の高周波電流入力で決定されたような調整済み駆動電圧に基づき印加され得る。
【0227】
リードまたは電極の電圧が閾値を超えていると決定された場合、これは電流振幅を
図41に示されているように減少させることにより送達電流を調整することによって調整することができ、閾値に達した波形の部分では電流は減少し閾値より低いままとなる。対電極および作用電極として両方を有する銀‐塩化銀電極用途では、説明されているアルゴリズムを実装するコントローラは、有利には電荷の自己平衡を可能にすることができる。銀‐塩化銀システムは、対応する対電極上の利用可能なAgClの量が部分的に消耗し、反応しにくいAgClが結果として反応を駆動する電位を高くすることになるときに作用電極の陽極フェーズ(正電圧)の間、より高い電圧を示し得る。陽極フェーズ(開いた矢印)の間に対電極から引き出される電荷の量を減少させるが、陰極フェーズ(実線矢印)の間に全振幅の電流を有することによって、正味電荷が対電極に加えられ、電極間の電荷分布の再平衡を助ける。
【0228】
上で説明されているシステムおよびアルゴリズムは、電圧をアルゴリズム内でエンドユーザによって望まれ設定されているような特定の目標駆動電圧およびリード電圧の範囲内に維持するために使用できることに留意されたい。いくつかの実施形態において、リード電流パルスは、陽極の代わりに陰極に関して送達されるか、または、陰極の代わりに陽極に関して送達される。
【0229】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されている治療に対する直流(DC)送達振幅は、たとえば、約0から約0.5mA、約0.5から約1.5mA、および約1.5から約2.5mAの範囲、または前述の値のうちの任意の2つの値を組み込んだ範囲とすることも可能である。いくつかの実施形態において、約2.5mAから約5mA、および約5mA以上が、ブロックのための陽極電流レベルおよび陰極電流レベルの両方に利用できる。応答は、たとえば、動物実験における約0~1.5mAの範囲だけでなく、約2.5mAでの完全なブロックおよび最大約5.5mAまでの電流送達による約1.5mA(陰極および陽極)でヒト末梢神経における知覚異常の発症が観察されている。
【0230】
いくつかの実施形態において、患者への直流送達は、限定はしないが、後根神経節、後根、背柱、後角、リサウアー路、および/または前側疼痛路を含む、任意の数の解剖学的配置を標的とし得る。いくつかの実施形態において、直流送達は、末梢神経、または本明細書の別のところで説明されているような他の標的部位に向けられ得る。理論に限定されるべきではないが、いくつかの実施形態において、DC送達は、脊髄内の小径線維を強く変調し、脊髄ニューロンを脱分極させることができる。DC送達は、必ずしも線維の太さに敏感であるとは限らず、広い治療範囲を有し得る。DC送達は、限定はしないが、不整脈、てんかん、および運動障害のための心臓マッピング、さらには本明細書の別のところで開示されている他の様々な病状を含む、広範な適応症に利用することができる。
【0231】
上の図で説明されているシステムおよび方法は、DC神経ブロックを引き起こすために使用することができる。神経ブロックの特定の直流印加に応じて、神経抑制、または電流の除去または停止後に継続的なブロックが生じることがあり、過剰抑制がDC源を取り外しから1分を超える継続的な神経ブロックに対して生じ、神経伝導回復を遅延させ得る。神経ブロックおよび抑制は、所望の用途に応じて間欠的または連続的な方式で発生し得る。複雑な機械的システムを必要とせずに神経伝導を安全に変調する手段を使用可能にする複数の電極または順次電極接触活性化を利用してイオン電流を介して神経ブロックの安全な送達を行う連続的な神経ブロックの手段が説明されている。このシステムは、組織接触および移植適合性に関して生体適合性を有するすべての組織接触材料により、完全または部分的に埋め込み可能であるか、または完全に非埋め込み可能(たとえば、経皮的)であり得る。
【0232】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されているようなシステムおよび方法は、限定はしないが、たとえば、Nevro CorporationによるSENZAシステム、Boston Scientific CorporationによるPRECISION PLUSおよびPRECISION SPECTRAを含むPRECISIONシステム、およびMedtronic PLCによるINTELLISシステムなどの、慢性疼痛の治療のための脊髄刺激(SCS)システムを含む、交流刺激システムの一部として使用されるか、または使用するように修正され得る。一例として、本明細書で開示されているようなシステムおよび方法は、パルス発生器によって生成され、コントローラによって円滑にされるDCオフセット波形を利用して交流を電極および電極リードを介して患者の標的組織に送達することを含む交流送達システムの有効性を高めることができる。いくつかの実施形態において、交流電流(たとえば、HFAC)に関して本明細書で使用されているような高周波数は、約1.5kHzと約100kHzの間、約3kHzと約50kHzの間、約5kHzと約20kHzの間、約1kHz、2kHz、3kHz、5kHz、10kHz、15kHz、20kHz、25kHz、30kHz、40kHz、50kHz、75kHz、100kHz、もしくはそれ以上、または前述の値のうちの任意の2つを含む範囲、などの約1kHz以上の周波数を指すことができる。いくつかの実施形態では、信号の振幅は、約0.1mAから約20mA、約0.5mAから約10mA、約0.5mAから約4mA、約0.5mAから約2.5mA、または前述の値のうちの任意の2つを含む他の範囲、または本明細書に別のところで開示されているような他の振幅の範囲とすることができる。印加される信号の振幅は、非線形ランピング機能を含めて、いくつかの場合において、加減することができる。交流電流の周波数または振幅も変調され得る。電極および/または電極リードは、高密度電荷材料、SINE電極、および/または銀‐塩化銀材料のうちの1つまたは複数を含むことができる。そのようなシステムおよび方法は、いくつかの場合において、有利には、標的ニューロンの興奮性を高め、それによって閾値を減少させ、標的組織刺激の治療範囲を広げることができる。いくつかの実施形態において、システムおよび方法は、限定はしないが、知覚異常、多くの場合、日常の活動または他の時間期間における突然の動きに伴って現れ得る刺痛、耳鳴り、またはショックを含む、副作用を軽減するように構成される。
【0233】
前述の説明および例は、様々な実施形態に従って本開示を例示するために述べられており、過度に制限することを意図されていない。本明細書で提示されている見出しは、組織的な目的に限られており、実施形態を限定するために使用されるべきではない。本開示の開示されている態様および例の各々は、個別に、または本開示の他の態様、例、および変更形態と組み合わせて考慮され得る。それに加えて、特に断りのない限り、本開示の方法のステップはどれも、特定の実行順序に限定されるものではない。本明細書で引用されている参考文献は、全体が参照により組み込まれている。
【0234】
本明細書で説明されている方法およびデバイスは、様々な修正および代替的形態の影響を受けやすいが、特定の例は、図面内に示されており、本明細書において詳細に説明される。しかしながら、開示されている実施形態は、本明細書において説明された様々な実施形態および付属の請求項の精神および範囲内にある修正形態、等価形態、および代替的形態を対象とするべきであることは理解されるであろう。
【0235】
実施形態に応じて、本明細書で説明されているアルゴリズム、方法、もしくはプロセスのうちの1つまたは複数の活動、事象、または機能は、異なる順序で実行されてよく、追加されるか、マージされるか、または完全に省略され得る(たとえば、説明されているすべての活動または事象がアルゴリズムの実施に必要とは限らない)。いくつかの例において、活動または事象は、たとえば、逐次的ではなくマルチスレッド処理、割り込み処理、またはマルチプロセッサもしくはプロセッサコアを通じて、または他の並列アーキテクチャ上で同時実行され得る。
【0236】
「次いで」、「次に」、「の後」、「次の」、「その後」、および同様の語などの順次的な、または時間的順序に関する言い回しの使用は、特に断りのない限り、または使用されている文脈内で他の意味に理解されるべきでない限り、一般に、テキストの流れを円滑にすることを意図しており、実行される操作の順序を制限することを意図していない。
【0237】
本明細書で開示されている実施形態に関して説明されている様々な例示的な論理ブロック、モジュール、プロセス、方法、およびアルゴリズムは、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、またはその両方の組合せとして実装することができる。ハードウェアおよびソフトウェアのこの互換性を明確に説明するために、様々な例示的な構成要素、ブロック、モジュール、操作、およびステップが、それらの機能の観点から一般的に上記で説明されている。そのような機能がハードウェアまたはソフトウェアのどちらとして実施されるのかは、システム全体に課される特定の用途および設計制約に依存する。説明した機能は、具体的な用途ごとに様々な方法で実装され得るが、そのような実装の決定は、本開示の範囲からの逸脱を生じさせるものと解釈されるべきではない。
【0238】
本明細書で開示されている実施形態に関連して説明されている様々な例示的な論理ブロックおよびモジュールは、汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または他のプログラム可能論理デバイス、ディスクリートゲートもしくはトランジスタロジック、ディスクリートハードウェアコンポーネント、または本明細書で説明されている機能を実行するように設計されているこれらの任意の組合せなどのマシンによって実装されるか、または実行され得る。汎用プロセッサはマイクロプロセッサとすることができるが、代替的形態において、プロセッサはコントローラ、マイクロコントローラ、もしくは状態機械、これらの組合せ、または同様のものとすることができる。プロセッサは、複数のコンピューティングデバイスの組合せ、たとえば、DSPとマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと連動する1つまたは複数のマイクロプロセッサ、またはそのような任意の他の構成として実現されてもよい。
【0239】
本明細書で開示されている実施形態に関して説明されているブロック、操作、または方法、プロセス、もしくはアルゴリズムのステップは、直接ハードウェアで具現化されても、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールで具現化されても、またはその2つの組合せで具現化されてもよい。ソフトウェアモジュールは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、取り外し可能ディスク、光ディスク(たとえば、CD‐ROMもしくはDVD)、または当技術分野で知られている他の形態の揮発性もしくは不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に置かれてもよい。記憶媒体は、プロセッサが記憶媒体から情報を読み込み、記憶媒体に情報を書き込めるようにプロセッサに結合され得る。代替的形態において、記憶媒体はプロセッサと一体であり得る。プロセッサおよび記憶媒体は、ASIC内に存在し得る。ASICは、ユーザ端末に収めることができる。代替形態では、プロセッサおよび記憶媒体は、ユーザ端末内のディスクリートコンポーネントとして常駐することができる。
【0240】
本明細書で使用されている条件付き言い回し、ほかにもあるがとりわけ、「できる」、「することもあり得る」、「してよい」、「し得る」、「たとえば」などは、特に断りのない限り、または使用されている文脈内で他の意味に理解されるべきでない限り、一般的に、いくつかの特徴、要素、および/または状態が、いくつかの実施形態に含まれるが、他の実施形態には含まれない、ことを伝達することを意図されている。したがって、そのような条件付きの言い回しは、特徴、要素、ブロック、および/または状態がいかなる形でも1つまたは複数の例に対して必要であること、または1つもしくは複数の例が、作成者入力またはプロンプトあり、またはなしで、これらの特徴、要素、および/または状態が、特定の実施形態に含まれるか、または特定の実施形態において実行されるべきであるかを決定するための論理を必ず含むことを意味することを意図されていない。
【0241】
本明細書で開示されている方法は、当業者によって行われるいくつかの特定のアクションを含み得るが、方法は、明示的にまたは暗示的に、それらのアクションの任意の第三者指令を含むこともできる。たとえば、「電極を位置決めすること」などのアクションは、「電極の位置決めを指令すること」を含む。
【0242】
本明細書において開示されている範囲は、そのあらゆる重なり、部分範囲、および組合せをも包含する。「最大…まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」、「…の間」、「…から…」、および同様の言い回しなどの言い回しは、引用されている数を含む。「約」または「おおよそ」などの語が先頭に付く数字は、引用された数字を含み、状況に基づき解釈されるべきである(たとえば、状況下で合理的に可能な限り正確に、たとえば±5%、±10%、±15%など)。たとえば、「約1時間」は「1時間」を含む。「実質的に」などの語が前に付く語句は、その引用された語句を含み、状況に基づき解釈されるべきである(たとえば、状況下で合理的に可能な限り多く)。たとえば、「実質的に垂直」は「垂直」を含む。特に断りのない限り、すべての測定値は、温度および圧力を含む標準的条件の下での値である。「少なくとも1つの」という語句は、後続のリストから少なくとも1つの項目を要求することを意図しており、後続のリスト内の各項目から各項目の1つの種類のみを要求することを意図していない。たとえば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」は、A、B、C、AおよびB、AおよびC、BおよびC、またはA、BおよびCを含むことができる。
【符号の説明】
【0243】
100 EICCC電極
102 電解質溶液
104 電極
106 イオン伝導性材料
107 イオン伝導性材料‐電解質溶液界面
108 エンクロージャ
111 参照電極
112 電流送達リード
114 電流源
118、120 隔離スクリーン
122 フィードバックセンサ
210 EICCC
212 電極リード
213 端部、コネクタ
213 コネクタ
220A、220B EICCC
230A、230B EICCC
240 EICCC電極
250 システム
260 システム
280 EICCC
400 EICCC
402 電極
404 多孔質フリット
404A、404B 組織界面
410 エンクロージャ
412 電流源
414 電池
416 コントローラ
418 リード
420 電極
422 イオン伝導性材料
428 イオン伝導性電極リード
429 電解質溶液
430 イオン伝導性導管(たとえば、ヒドロゲルコネクタ)
432 コネクタ要素
500 電極構成
502A、502B 電極
504 エンクロージャ
508 電流源
506 導電性リード
510 イオン伝導性材料
512 異音伝導性パッド
600 針
602 電極リード
604 電極‐神経組織界面の接点
800 刺激電極
802 電極リード
804 組織界面
808 針
900 電子イオン電流変換セル(EICCC)電極
902 電極リード
904 神経組織界面
906 電極延長部
908 電流源
910 頭蓋骨アンカー
916 内部電極
918 イオン伝導性媒体
920 多孔質フリット
922 感知電極
924 電極延長部
950 ブロック/抑制電極
1100A、1100B ブロッキング電極リード
1104 EICCC
1400 EICCC電極
1402 電極リード
1404 埋め込み可能な電流源
1600 EICCC電極
1602 電極リード
1604 電流源
1606 カフ形式組織界面
1800 EICCC電極
1802 電極リード
1804 電流源
1806 カフ形式組織界面
2200 システム
2202 DC発生器
2204 反応チャンバ
2206 ポンプ
2208 貯蔵槽
2210 攪拌器
2212 カテーテル
2214 界面
2216 弁
2218 pHセンサ
2220 反応電極
2222 配管システム
2224 神経組織界面
2226 酸化還元反応剤
2228 導線
2230 導線
2232 潜在的な第2ユニット
2234 ガス通気孔
2300 システム
2302 DC発生器
2304 反応チャンバ
2306 回転可能部材
2308 スプール
2310 カテーテル
2312 組織界面
2314 新鮮な反応材料
2316 反応材料
2318 エンクロージャ
2320 リード/電極
2322 組織界面
2324 作用電極
2326 導線
2328 導線
2330 センサ、参照電極
2400 システム
2402、2404 反応チャンバ
2406、2408 電池化学タイプの反応物
2410 DC発生器
2412、2414 導線
2416、2418 カテーテル/リード
2422、2424 組織界面
2426 組織
2500 SINE型電極
2502 DC発生器
2504 反応チャンバ、電極システム
2506 電線
2508 液体カテーテル/チューブ
2510 患者の身体
2512 標的組織配置
2513 開口部
2600 時点
2600 ウェアラブルシステム
2601 包帯状システム
2602 患者
2604 DC発生器
2604 反応チャンバ、電極システム/電荷発生器、ウェアラブルデバイス
2606 リード/カテーテル
2608 解剖学的部位、標的組織配置
2610 取り付け要素
2612 電源
2614 DC発生器/制御電子機器
2616 反応チャンバ
2618、2620 取り付け配置
2702 導線
2704 部位A
2706 部位B
2708 部位
2710 脊髄
2800 DC電流システム
2802 参照電極
2804 電源
2806、2808 導線
2810、2812 電極
3100 銀‐塩化銀電極構成
3102 銀(Ag)基板
3104 取り付けられた塩化銀(AgCl)層
3202 対電極
3204 作用電極
3206 電解質槽
3210 生理食塩水
3212 塩化銀層
3214 電源
【手続補正書】
【提出日】2023-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流神経ブロックのためのシステムであって、
直流発生器と、
作用電極および対電極と、
第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を循環的に印加し、第2の持続時間にわたって前記第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加し、前記第1の持続時間にわたる前記第1の極性のピーク電圧の測定値と前記第2の持続時間にわたる前記第2の極性のピーク電圧の測定値とを受信し、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間にわたって前記ピーク電圧を分析することによって前記直流を調整し、前記第1の持続時間および前記第2の持続時間にわたって測定された前記ピーク電圧が絶対閾値限度未満である場合に電流の大きさを電流限度まで所定の量だけ増加させ、前記第1の持続時間または前記第2の持続時間にわたって測定された前記ピーク電圧が絶対閾値限度より高い場合に前記電流の大きさを或る量で減少させるように構成されているコントローラと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記直流が1Hz未満の周波数を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記絶対閾値限度が水の電気分解電位より低い、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記作用電極が塩化銀を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電流限度が所定の電流限度であり、前記電流の大きさを減少させることが所定の量だけ減少させることである、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記第1の極性のピーク電圧の変動が設定値より低くなった後、前記電流の大きさを固定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の極性が陽極性であり、前記第2の極性が陰極性である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記電流限度が5mAである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ピーク電圧の絶対閾値限度が1.5Vである、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラが少なくとも10サイクルの直流送達を行うように構成され、各サイクルが前記第1の持続時間にわたって第1の極性の直流を印加することと前記第2の持続時間にわたって前記第1の極性と反対の第2の極性の直流を印加することを含む、請求項1に記載のシステム。
【外国語明細書】