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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054207
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20230406BHJP
   H04R 3/02 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
H04R25/00 H
H04R3/02
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025567
(22)【出願日】2023-02-21
(62)【分割の表示】P 2018132590の分割
【原出願日】2018-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】518249960
【氏名又は名称】寺島 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺島 孝
(57)【要約】
【課題】簡単な構成であっても効果的にハウリングを抑制する音響装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る音響装置は、音声を電気信号に変換する音声入力部と、音声入力部で変換された電気信号を増幅する増幅部と、増幅部で増幅した増幅信号を音声に変換する音声出力部と、増幅信号のレベルが音声とハウリングとを峻別する予め設定された値を超えてハウリングのループ発振直前を検知する検知部と、検知部でハウリングのループ発振直前を検知したとき、ハウリング発生条件を崩すための信号処理を行う条件変更部と、を備えた音響装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声を電気信号に変換する音声入力部と、
前記音声入力部で変換された前記電気信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部で増幅した増幅信号を音声に変換する音声出力部と、
前記増幅信号のレベルが音声とハウリングとを峻別する予め設定された値を超えてハウリングのループ発振直前を検知する検知部と、
前記検知部でハウリングのループ発振直前を検知したとき、ハウリング発生条件を崩すための信号処理を行う条件変更部と、を備えた音響機器。
【請求項2】
前記条件変更部は、前記検知部で前記ハウリングのループ発振直前を検知した際に前記信号処理を開始する、請求項1記載の音響機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響装置に関し、より詳しくは、簡単な構成で効果的にハウリングを抑制することができる音響装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
補聴器は、音声入力部(マイク)と、音声入力部で取り込んだ音声を増幅する増幅部と、増幅した音声を出力する音声出力部(イヤホン等)とを備える音響装置である。
【0003】
このような音響装置において、増幅度(ゲイン)を高くする(ボリュームをあげる)と、ハウリングが起きることがある。一般に、あるボリューム以上でスピーカやイヤホンから出力される音がマイクに入るとハウリングが起きることが知られている。音響装置の中で、拡声器のゲインは20dB以下であるが、補聴器のゲインは比較的高い。特に、軽中重度難聴者用の補聴器のゲインは30dB~80dBであり、ボリュームコントロールだけでハウリングを抑制することは難しい。
【0004】
中重度難聴者用の補聴器では、耳に入れたイヤホンとマイクとを隔離するため、耳と補聴器との隙間をシリコンゴム等で埋めるようにして、イヤホンの音がマイクに入らないように遮蔽隔離している。しかし、僅かな音の漏れでもハウリングは発生するため、完全な対策にはなり得ていない。
【0005】
アンプゲインがある大きさ以上になると発振条件が整う。ここで、ハウリングが発生し始めた際、手動でアンプゲインを下げることでハウリングが止まる。そして、ハウリングが止まった後、アンプゲインを元に戻す。手動でハウリングを止めても直ぐにハウリングが生起し、手動では間に合わない領域になる。ゲインの高い系では処理の遅れ時間が問題となる。
【0006】
特許文献1では、ハウリングを検出した際に位相を反転させるなど位相をずらすようにしている。特許文献2では、ハウリング発振が生じたときに移相回路の移相量を変化させ、ハウリング発振が無くなったときにそのときの位相変化状態を保持するようにしている。特許文献3では、入力部と、変換部と、出力部と、制御部とを備え、同一系路内で反転、非反転を交互に行うようにしている。
【0007】
ここで、ハウリングの発生メカニズムは、音声等信号(ハウリング信号+音声信号:以下同様)が多重帰還されることで発生すると考えられる。このようなハウリングを抑制する方法として、音声等信号を反転して足し合わせることでハウリングを消滅させる、いわゆるノイズキャンセラと同等の考え方が用いられている。
【0008】
例えば、電気的なハウリング防止技術として、音声等信号に、処理の回路による遅れ時間だけ前の音声等信号を加工して、電子回路内で足し合わせる方法がある。この足し合わせでは、音声等信号のうちハウリング信号の部分の位相を180度シフトして足し合わせている。
【0009】
ハウリング信号の180度シフトはPLL(Phase Locked Loop)あるいは位相シフト器(シフト量は周波数の関数)で作成する。すなわち、逆位相にしてハウリングを消す方法である。この場合、処理の遅れ時間、ハウリングは出続けることになる。しかも現在発生しているハウリング信号と同等の波形は作成できない。また、ハウリング周波数は測定をしなければ特定できない。位相シフト器法では、最低でも半周期(180度)の遅れ時間が発生してしまう。これらにより、逆位相の足し合わせは最良状態であっても必ず消し残りが生じる。この消し残り成分はゲインの高い系では新たなハウリング生成のトリガーになる。現状の対策は、これらの状態を軽減するため種々の条件を設けている。いずれもデジタル回路による対策であり、アナログ回路での実現は難しい。
【0010】
しかし、人の声の周波数成分はフォルマント周波数F1の成分が多く、楽器、声楽等の基本の周波数からみても、振幅の大きな部分は1kHz(キロヘルツ)以下の部分である。ハウリングが音声等信号の多重帰還によるものであれば、1kHzよりも低い周波数のハウリングが多く観測されるはずである。経験的には、ハウリングの周波数は1kHz以上である。すなわち、ハウリング信号は、音声信号とは別物であると考えられる。
【0011】
ハウリングは音場空間(フィルタ特性を持つ伝達関数β)で帰還された出力信号Soと、入力信号Siと、の位相差が0で帰還されるループ発振と考えられる(図9参照)。
この場合、ループ(ハウリング)発振の一巡伝達関数は、
So/Si=1+βA+(βA)+・・・+(βA)+・・・ で表される。
この関数において、βA≧1になると振幅は理論的に無限大になる。これが発振である。実際は系にある素子の許容最大振幅になる。ちなみに、補聴器回路内に音声領域までのリミッタを入れてもハウリングは発生する。またハウリング振幅はリミッタレベルの振幅となる。
【0012】
音響装置の音声帯域内に選択特性を持つフィルタは入ってない。したがって、音場空間(音伝送路)がループフィルタとなりハウリングの周波数を決定すると考えられる。例えば、マイクとヘッドフォンとの距離を数10cmぐらいにして増幅器ゲインを上げハウリングを起こさせる。この際、人が手を動かす、人が動く等で、ハウリングの音色が変わったり、ハウリングが止まったりすることが確認できる。ヘッドフォンの音が直接マイクに入ることで、ハウリングは発生しない。ハウリング信号は相関性を持った特定の周波数の信号である。ヘッドフォンからの音が音場空間にある物体等からのマルチ反射を含めて音の定在波が構成され、ハウリング周波数のフィルタになると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2000-341787号公報
【特許文献2】特開昭61-108288号公報
【特許文献3】特開昭64-082891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載の技術では、ハウリングを検出した際に信号の位相を反転させるなどしてハウリングを抑制しているが、信号レベルを打ち消すような作用を起こさせる構成である。すなわち、引用文献1に記載のハウリング抑制技術は、ノイズキャンセラ方式そのものであり、位相反転によって音声信号も消されることになる。また、自動利得調整(AGC)によってハウリングがリミットされるため、音声信号とハウリングとの峻別を行うことが困難である。しかも、AGCの時定数による遅れ時間によってハウリングを効果的に抑制することができない。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術では、ハウリング発振が生じたときに移相量を変化させ、ハウリング発振が無くなった位相変化状態を保持している。これらの技術では、ハウリングを抑制した後、次のハウリングが発生するまでの間の遅延によって新たなハウリングが発生してしまうことがある。
【0016】
また、特許文献3に記載の技術では、ハウリングの有無にかかわらず所定のタイミングで信号の位相の反転、非反転を交互に行っている。しかし、この技術では、常に信号の位相の反転、非反転が繰り返される。このため、ハウリング発生と信号位相の反転のタイミングが合わないと、ハウリングを抑制できない場合が生じる。
【0017】
特に補聴器ではゲインが高いためハウリングが生じやすく、また、イヤホンを耳に装着して使用することから、ハウリング音がダイレクトに伝わり非常に不快となる。
【0018】
本発明は、簡単な構成であっても効果的にハウリングを抑制することができる音響装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様に係る補聴器は、音声を電気信号に変換する音声入力部と、音声入力部で変換された電気信号を増幅する増幅部と、増幅部で増幅した増幅信号を音声に変換する音声出力部と、増幅信号のレベルが音声とハウリングとを峻別する予め設定された値を超えたときにハウリング発生を検知するハウリング検知部と、ハウリング検知部でハウリング発生を検知したとき、増幅部を通過したハウリング信号の位相を変更して音声出力部に入力すること、ハウリング信号のレベルを下げること、およびハウリング信号の代わりにダミー信号を音声出力部に入力すること、の少なくともいずれかの変更処理を行う条件変更部と、を備える。この補聴器において、条件変更部は、ハウリング検知部でハウリング発生を検知して変更処理を行った後、所定のタイミングで変更処理を終了する。
【0020】
ここで、ハウリングは特定のフィルタ特性を持つ音場空間(音伝送路)が帰還路となるループ発振である。ループ発振の条件は、(C1)そのピーク周波数での帰還点の帰還信号が入力信号と同相であること、(C2)一巡開ループでのゲインが1以上であること、(C3)ループ発振の経路内に周波数選択要素があること、の3つの条件が整うことでループ発振が生じる。言い換えると、この3つの条件のうちの1つでも整わないとループ発振は生じない。
【0021】
条件変更部は、上記の3条件(C1~C3)のうちの少なくともいずれかを崩す変更処理を行う。すなわち、ハウリング信号の位相を変更して音声出力部に入力することは上記(C1)の条件を崩すことであり、ハウリング信号のレベルを下げることは上記(C2)の条件を崩すことであり、ハウリング信号の代わりにダミー信号を音声出力部に入力することは上記(C3)の条件を崩すことである。
【0022】
上記の補聴器の構成では、増幅信号のレベルが音声とハウリングとを峻別する予め設定された値を超えたときにハウリングの発生であることを検知して、ハウリングを抑制するための変更処理を即座に行うため、ハウリングの発生に気がつかないうちにハウリングを抑制することができる。
【0023】
上記補聴器において、条件変更部により、変更処理としてハウリング信号の位相を変更する場合、簡単な構成としてハウリング信号の位相が反転した逆相信号を音声出力部に入力するようにしてもよい。この補聴器において、条件変更部は、ハウリング検知部でハウリング発生を検知するたびに位相の反転および非反転の切り替えを繰り返してもよい。音声信号の反転、非反転は、人には聞き分けが難しい。したがって、ハウリング発生を検知するたびに音声信号の反転、非反転の切り替えを繰り返すことで、音声出力の違和感を与えることなくハウリングを抑制することができる。
【0024】
上記補聴器において、条件変更部により、変更処理としてハウリング信号のレベルを下げる場合、予め設定された時間、増幅信号のレベルをゼロにしてもよい。これにより、ハウリングを発生させる一巡開ループでのゲインが1未満となり、ハウリングを抑制することができる。
【0025】
上記補聴器において、条件変更部により、変更処理としてハウリング信号の代わりにダミー信号を、予め設定された時間、音声出力部に入力する場合、ダミー信号の周波数として可聴周波数以外の周波数のダミー信号を入力するとよい。これにより、人に聞こえないようなダミー信号が音声出力部から出力され、ハウリングを発生させる音場空間のフィルタ特性が変わり、ハウリングを抑制することができる。
【0026】
上記補聴器において、音声入力部、増幅部、音声出力部、ハウリング検知部および条件変更部は、アナログ回路によって構成することができる。これにより、アナログ回路によって構成されるアナログ補聴器であってもハウリング抑制機能を持たせることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡単な構成であっても効果的にハウリングを抑制することができる補聴器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る補聴器の基本構成を例示するブロック図である。
図2】(a)および(b)は、検知部に含まれるレベルコンパレータを説明する図である。
図3】(a)~(e)は、波形の例を示す模式図である。
図4】正相および逆相の切り替えを説明する模式図である。
図5】条件変更部の第2の例について示すブロック図である。
図6】(a)および(b)は、予め設定された時間を経過したタイミングで元の位相に戻すためのハウリング検知部の例を説明する図である。
図7】条件変更部の第3の例について示すブロック図である。
図8】条件変更部の第4の例について示すブロック図である。
図9】電子回路および音場空間のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0030】
(補聴器の構成)
図1は、本実施形態に係る補聴器の構成を例示するブロック図である。
本実施形態に係る補聴器1は、音声入力部10、増幅部20、音声出力部30、ハウリング検知部50および条件変更部60を備える。
【0031】
補聴器1は、定位置に置かれている拡声器系音響装置とは異なり、イヤホンやスピーカといった音声出力部30を人の耳に入れて使用するものである。また、補聴器1は、人によって持ち運ばれることが多く、使用状況、使用空間の変動が大きい。さらに、音声増幅のゲインが拡声器系音響装置よりも高くなっている。一般的に、拡声器系音響装置のゲインは20dB以下であるのに対し、補聴器1のゲインは30dB以上(軽中重度難聴者の補聴器1のゲインは30dB~80dB程度)である。補聴器1は、このような特殊性を備えているため、拡声器系音響装置に比べてハウリングが発生しやすく、ハウリングが発生した場合の不快感も強いものとなる。
本実施形態は、このような補聴器1の特殊性に鑑み、ハウリングが発生したら耳で感知できないほど短い時間内に抑制することができる構成を備えている。
【0032】
本実施形態に係る補聴器1において、音声入力部10は、音声を電気信号に変換するマイクである。なお、本実施形態において音声には、人の声のほか、周囲の音、雑音、音楽、楽器音など各種の音を含むものとする。増幅部20は、音声入力部10で変換された電気信号を増幅する。本実施形態では、増幅部20はマイクアンプやプリアンプに相当する部分である。
【0033】
音声出力部30は、増幅部20で増幅した増幅信号を音声に変換する。音声出力部30は、スピーカ、イヤホン、ヘッドフォンなどである。本実施形態では、音声出力部30の前段に出力アンプ35が設けられている。出力アンプ35にはボリューム37が設けられており、ボリューム37によって出力アンプ35のゲインを調整できるようになっている。
【0034】
ハウリング検知部50は、増幅部20によって増幅された増幅信号のレベルが音声とハウリングとを峻別する予め設定された値(閾値レベルTh)を超えたときにハウリング発生を検知する。ハウリング検知部50は、例えばレベルコンパレータ51を有する。図2(a)および(b)は、レベルコンパレータを説明する図である。図2(a)に示すように、レベルコンパレータ51は、増幅部20によって増幅された増幅信号(入力)と、予め設定された基準値(閾値レベルTh)とを比較する。レベルコンパレータ51は、増幅信号が基準値(閾値レベルTh)を超えたときに例えばHighの検知信号CSを出力する(図2(b)参照)。
【0035】
条件変更部60は、ハウリング検知部50でハウリング発生を検知したとき(検知信号CSが出力されたとき)、変更処理を行う。変更処理としては、(A1)増幅部20を通過したハウリング信号の位相を変更して音声出力部30に入力すること、(A2)ハウリング信号のレベルを下げること、および(A3)ハウリング信号の代わりにダミー信号を音声出力部30に入力すること、の少なくともいずれかである。また、条件変更部60は、ハウリング検知部50でハウリング発生を検知して変更処理を行った後、所定のタイミングで変更処理を終了する。
【0036】
このような補聴器1において、条件変更部60によって変更処理を行うことにより、ハウリングが発生する条件を崩すことができる。すなわち、増幅部20で増幅した増幅信号のレベルが予め設定された値(閾値レベルTh)を超えたときにハウリングの発生であることを検知して、ハウリングを抑制するための変更処理を即座に行うため、ハウリングの発生に気がつかないうちにハウリングを抑制することができる。また、ハウリング発生を検知して変更処理を行った後、所定のタイミングで変更処理を終了する。
【0037】
ここで、ハウリングの発生を検知するための閾値レベルThについて説明する。
音圧レベルは、人が聞こえる最低レベルの音(20マイクロパスカル:μP)を0デシベル(dB)と定義している。ささやき声は20dBで、25dB以下が聞こえれば正常範囲とされている。普通会話の音圧は約60dB位で心地よく聞こえる音圧である。
【0038】
一例として、ヘッドフォンの最大定格16Ω、50mWの場合、2.5Vppでリミットされる。マイクの仕様定格を60dB、1.57mVppとすると、ゲインは2.5Vpp/1.57mVpp=64dB(1592倍)となる。したがって、このマイクとヘッドフィンの構成は、軽~中レベル難聴者に適している。
【0039】
このような軽~中レベル難聴者に適した構成の場合、系のゲインは約60dBとなる。そこで、この系のゲインに基づいたハウリングの検知レベル(閾値レベルTh)の決定についての例を説明する。
【0040】
40dBマイクアンプの後の波形においては、0.25Vpp(設計最大レベル)は20dB出力アンプ(トータル60dB)でクリップされる。このクリップされる0.25Vppの約3倍である0.75Vppを想定し、この1/2をヘッドフォンのリミットである2.5Vppに加えた値を閾値レベルThとする。すなわち設計電源電圧VCC:5V、2.5+0.75/2=2.86Vに閾値レベルThを設定すればよい。これにより、音声とハウリングとを確実に峻別する閾値レベルThが設定される。
【0041】
なお、上記の例では系のゲインを約60dBとして閾値レベルThを算定したが、系のゲインを約40dBの場合も、60dBの場合と同様な閾値レベルThによってハウリングを検知することができる。
【0042】
本願発明者は、ハウリング抑制についての実験を行った。実験では、増幅器出力の正相出力、逆相出力にメカニカルなトグルスイッチを付けて、音声出力に正/逆相どちらの相でも選べるようにした回路を構成した。この回路において、ハウリングが生起するアンプゲインに設定する。ハウリングが発生した時にトグルスイッチを切り替えるとハウリングは停止する。暫くするとまたハウリングが発生する。またトグルスイッチを切り替えるとハウリングは停止する。アンプゲインを上げて行き、同様な動作を繰り返す。ゲインの上昇に従い、ハウリングの発生間隔が短くなることが分かる。この実験の結果から、本願発明者は、条件変更部60による簡単な構成でありながら効果的にハウリングを抑制できる構成を創出した。
【0043】
(条件変更部の第1の例)
条件変更部60の第1の例は、変更処理としてハウリング信号の位相を反転させることである(変更処理(A1)に含まれる。)。図1に示すように、増幅部20から出力される増幅信号には、正相信号Sφ1と、逆相信号Sφ2とが含まれる。正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とは、互いに位相が180度ずれた信号である。
【0044】
条件変更部60は、正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とを順に切り替えるトグルスイッチ61と、フリップフロップ65とを有している。フリップフロップ65は、レベルコンパレータ51から出力されたHighの検知信号CSの立ち上がりを受けると、トリガー信号TSのHigh/Lowを切り替えて出力する。すなわち、ハウリングの発生を検知するたびに、トリガー信号TSは反転することになる。トグルスイッチ61は、フリップフロップ65から出力されるトリガー信号TSに応じて正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とを順次切り替える。
【0045】
例えば、条件変更部60のトグルスイッチ61は、ハウリング検知部50からハウリングの発生を検知した際にフリップフロップ65から出力されるトリガー信号TSとしてHighの信号を受けると正相信号Sφ1を選択し、トリガー信号TSとしてLowの信号を受けると逆相信号Sφ2を選択する。すなわち、トリガー信号TSのHigh/Lowに応じてトグルスイッチ61が切り替わり、正相信号Sφ1および逆相信号Sφ2のいずれかを出力アンプ35へ送る。
【0046】
これにより、ハウリング検知部50でハウリング発生を検知するたびにハウリング信号の位相の反転および非反転の切り替えが繰り返される。ハウリング発生を検知するたびに音声信号における正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とが切り替わることで、ループ発振の条件の一つである(C1)「そのピーク周波数での帰還点の帰還信号が入力信号と同相であること」が崩れ、結果としてハウリングの発生を認識させずに済むようになる。なお、ハウリング信号の位相反転に伴う音声信号の反転、非反転は、人には聞き分けが難しいため、正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とが切り替わっても違和感は少ない。
【0047】
次に、変更処理(A1)での波形の変化について説明する。
図3(a)~(e)は、波形の例を示す模式図である。
図4は、正相および逆相の切り替えを説明する模式図である。
図3(a)には正相信号Sφ1の例が示され、図3(b)には逆相信号Sφ2の例が示される。説明の便宜上、図3(a)および(b)にはハウリングの正弦波が記載されている。また、音声信号の波形は、実際には高調波成分を含んでいるが、簡易化してフォルマントのF1または基本波部分だけを模式的に表している。
【0048】
図3(a)および(b)に示すように、ハウリングの波形は、音声信号の波形とは別物である。すなわち、ハウリングが発生した際には、音声信号そのものがマイクに帰還するものではなく、ハウリング波形が帰還することになる。
【0049】
図3(c)には、ハウリングを検知した際の増幅信号の波形(条件変更部60からの出力信号波形)が示される。また、図3(d)にはレベルコンパレータ51の出力(検知信号CS)が示され、図3(e)にはフリップフロップ65の出力(トリガー信号TS)が示される。
【0050】
図3に示すように、音声信号(増幅信号)を出力している状態でハウリングが発生すると、増幅信号(正相信号Sφ1および逆相信号Sφ2)のレベルが急激に増加する。レベルコンパレータ51の基準値として、音声信号の通常のレベルよりも高い値を設定しておくことで、ハウリング発生時のレベルの変化を検出することができる。
【0051】
例えば、タイミングt(図中矢印参照)で増幅信号(例えば、正相信号Sφ1)のレベルがレベルコンパレータ51の基準値を超えたとすると、レベルコンパレータ51からHighの検知信号CSが出力される(図3(d)参照)。このHighの検知信号CSをフリップフロップ65が受けると、フリップフロップ65は出力信号(トリガー信号TS)を反転させる(図3(e)に示す例ではHighからLowへ切り替わる。)。
【0052】
条件変更部60のトグルスイッチ61は、フリップフロップ65から出力されたトリガー信号TSがHighからLowに切り替わったことに応じて、正相信号Sφ1から逆相信号Sφ2へ選択を切り替える。これにより、図3(c)に示すように、条件変更部60からの出力信号波形は、タイミングt以降、逆相信号Sφ2に変化する。
【0053】
ハウリングが発生したタイミングで逆相信号Sφ2に切り替わると、その一瞬だけハウリングの逆相信号Sφ2が音声出力部30に送られる。このハウリングの逆相信号Sφ2が音声出力部30で音声として出力され、音声入力部10に戻ると、ループ発振の条件の一つである(C1)「そのピーク周波数での帰還点の帰還信号が入力信号と同相であること」が崩れ、ハウリングが瞬時に抑制される。
【0054】
図4に示すように、この変更処理(A1)が繰り返されると、例えば正相信号Sφ1に基づく音声出力の際にハウリングが発生すると、レベルコンパレータ51からHighの検知信号CSが出力され、フリップフロップ65の出力が反転して(この例では、HighからLow)、条件変更部60のトグルスイッチ61により逆相信号Sφ2が選択される。正相信号Sφ1から逆相信号Sφ2に切り替わった瞬間にハウリングが抑制される。
【0055】
逆相信号Sφ2に基づく音声出力が続くと、やがてその逆相信号Sφ2でもハウリングが発生し得る。ハウリングのレベルに達すると、その瞬間にレベルコンパレータ51からHighの検知信号CSが出力され、フリップフロップ65の出力が反転して(この例では、LowからHigh)、条件変更部60のトグルスイッチ61により正相信号Sφ1が選択される。逆相信号Sφ2から正相信号Sφ1に切り替わった瞬間にハウリングが抑制される。
【0056】
この変更処理(A1)が繰り返されることで、実際にはハウリングの発生し始めのタイミングで正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とが切り替わり、認識できるハウリングは発生しないことになる。
【0057】
ここで、本実施形態に係る補聴器1の構成(音声入力部10、増幅部20、音声出力部30、ハウリング検知部50および条件変更部60)は、アナログ回路によって構成されている。増幅部20から出力される正相信号Sφ1および逆相信号Sφ2は、アナログ回路で容易に作ることができる。レベルコンパレータ51やフリップフロップ65も簡単なアナログ回路で実現できる。回路の系においてD/A変換器やA/D変換器が介在しないため、複雑な回路構成を持たせる必要はない。本実施形態では、レベルコンパレータ51、フリップフロップ65、トグルスイッチ61といった簡単な構成で実現可能なため、アナログ式の補聴器1であってもハウリング抑制機能を持たせることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る補聴器1の回路の系には、AGC(自動利得調整部)などの遅延回路(時定数回路)が含まれていない。このような遅延回路(時定数回路)が含まれていないことで、ハウリング発生から変更処理完了までの時間を無視できるほど短くできる。したがって、ハウリングが発生し始めてから瞬時に変更処理が実行され、認識できるようなハウリングの発生を未然に防ぐことができる。
【0059】
本願発明者は、遅延回路を含まず、アナログ回路で補聴器1を構成して変更処理(A1)によるハウリング防止の実験を行った。その結果、レベルコンパレータ51からHigh信号が出力されてから、条件変更部60のトグルスイッチ61で信号切り替えが行われるまでの時間は数100ns(ナノ秒)程度であった。例えば、2kHzのハウリングを想定した場合、その周期は0.5ms(ミリ秒)である。トグルスイッチ61の切り替え時間が数100nsであるため、変更処理によってハウリングが抑制されるまでハウリングの1周期に満たないうちに完了する。実験では、このような瞬時の切り替えによって、ハウリングを認識させずに防止できることが確認できた。
【0060】
補聴器1のように、ゲインが30dB以上となる機器においては、変更処理を行っても直ぐにハウリングが再発生する可能性が高い。したがって、遅延回路を含む場合には、ハウリングの発生を検知してから抑制処理を行うまでに遅延時間がかかり、その間にハウリングを認識させてしまう可能性がある。本実施形態に係る補聴器1のように、遅延回路を含まず、レベルコンパレータ51によってハウリングを検知してから瞬時に変更処理を行うことで、簡単なアナログ回路でありながらハウリングを効果的に抑制することが可能となる。
なお、本実施形態に係る補聴器1がデジタル補聴器でも、上記と同様なアルゴリズムを適用することでハウリングを未然に防ぐことができる。
【0061】
(条件変更部の第2の例)
図5は、条件変更部の第2の例について示すブロック図である。
条件変更部60の第2の例は、変更処理として、ハウリング信号の位相を反転させること(変更処理(A1)に含まれる。)に加え、ハウリングが抑制された後にハウリング信号の反転した位相を元に戻す処理を行っている。
【0062】
図5に示すように、ハウリング検知部50は、増幅信号(ここでは正相信号Sφ1)のレベルが所定の基準値を超えた場合にハウリング発生であると判断してトリガー信号TSを出力する。ハウリング検知部50が通常のレベルコンパレータ51の場合、レベルコンパレータ51の出力である検知信号CSがトリガー信号TSとなる。条件変更部60は、トリガー信号TSのHigh/Lowに応じてトグルスイッチ61を切り替えて、正相信号Sφ1および逆相信号Sφ2のいずれかを出力アンプ35へ送る。ハウリング信号の位相が反転することで、ハウリングが抑制される。
【0063】
ハウリングが抑制され、増幅信号のレベルが所定の基準値以下となると、ハウリング検知部50から出力される検知信号CS(トリガー信号TS)がLowとなる。このトリガー信号TSが条件変更部60に送られるとトグルスイッチ61の切り替えが行われ、正相信号Sφ1および逆相信号Sφ2の切り替えが行われる。これにより、ハウリングが抑制された後は、元の位相の音声等信号に戻されることになる。ハウリングが止まり、音場空間のフィルタ特性が消滅した状態にあると、次のハウリングが生起するまで暫くの時間がある。したがって、出力を正相信号Sφ1に戻しても、ハウリングは直ちに生起しない。
【0064】
なお、上記の例では、ハウリングが抑制されたタイミング(検知信号CS)で元の位相に戻す処理を行ったが、変更処理を行った後、予め設定された時間を経過したタイミングで元の位相に戻す処理を行うようにしてもよい。
図6(a)および(b)は、予め設定された時間を経過したタイミングで元の位相に戻すためのハウリング検知部の例を説明する図である。
図6(a)に示すように、このハウリング検知部50は、レベルコンパレータ51の出力がHighからLowに立ち下がるタイミングを遅らせる回路構成(帰還抵抗511や容量512を含む回路構成)となっている。これにより、図6(b)に示すように、入力信号が所定のレベル以下となった場合でも、ヒステリシスにより所定の時間だけ遅れてレベルコンパレータ51の出力が立ち下がるようになる。
【0065】
なお、上記では検知信号CSをトリガー信号TSとしてトグルスイッチ61の切り替えを行っているが、ハウリングが抑制され、増幅信号のレベルが所定の基準値以下となったタイミングでハウリング検知部50から戻り信号BSを出力するようにしてもよい。戻り信号BSが条件変更部60に送られるとトグルスイッチ61の切り替えが行われ、逆相信号Sφ2から正相信号Sφ1への切り替えが行われる。これにより、ハウリングが抑制された後は、元の正相信号Sφ1に戻されることになる。
【0066】
(条件変更部の第3の例)
図7は、条件変更部の第3の例について示すブロック図である。
条件変更部60の第3の例は、変更処理として、ハウリング信号のレベルを下げることである(変更処理(A2)に含まれる。)。
【0067】
図7に示すように、条件変更部60のトグルスイッチ61には、正相信号Sφ1と接地電位である接地線GLとが接続される。ハウリング検知部50は、増幅信号(ここでは正相信号Sφ1)のレベルが所定の基準値を超えた場合にハウリング発生であると判断してトリガー信号TSを出力する。ハウリング検知部50が通常のレベルコンパレータ51の場合、レベルコンパレータ51の出力である検知信号CSがトリガー信号TSとなる。
【0068】
条件変更部60は、トリガー信号TSのHigh/Lowに応じてトグルスイッチ61を切り替える。本例において、通常の状態ではトグルスイッチ61は増幅信号(正相信号Sφ1)を選択しており、正相信号Sφ1が出力アンプ35へ送られている。ハウリングが発生してトリガー信号TSが条件変更部60に送られると、トグルスイッチ61が切り替わり、接地線GLを選択する。これにより、出力アンプ35に送られる信号レベルが接地電位(ゼロ)となる。
【0069】
ハウリング発生を検知して瞬時に出力アンプ35へ送られる信号レベルが接地電位となると、ループ発振の条件の一つである(C2)「一巡開ループでのゲインが1以上であること」が崩れ、ハウリングが抑制されることになる。
【0070】
ハウリングが抑制され、増幅信号のレベルが所定の基準値以下となると、ハウリング検知部50から戻り信号BSが出力される。戻り信号BSが条件変更部60に送られるとトグルスイッチ61の切り替えが行われ、接地線GLから正相信号Sφ1への切り替えが行われる。これにより、ハウリングが抑制された後は、元の正相信号Sφ1に戻されることになる。
【0071】
このように、ハウリング発生を検知して変更処理を行った後、ハウリング抑制後、すぐに元の位相の音声出力に戻ることから、一瞬だけ無音状態があっても直ぐに元の音声出力に戻り、違和感を与えずに済む。なお、上記の例では、ハウリングが抑制されたタイミングで元の位相に戻す処理を行ったが、変更処理を行った後、予め設定された時間を経過したタイミングで元の位相に戻す処理を行うようにしてもよい。
【0072】
(条件変更部の第4の例)
図8は、条件変更部の第4の例について示すブロック図である。
条件変更部60の第4の例は、変更処理として、ハウリング信号の代わりにダミー信号DSを音声出力部30に入力することである(変更処理(A3)に含まれる。)。
【0073】
図8に示すように、条件変更部60はスイッチ62を含む。スイッチ62の入力端には信号発生部63が接続され、出力端は増幅部20から出力される正相信号Sφ1のラインに接続される。信号発生部63は、ダミー信号DSを発生する。ダミー信号DSの周波数は、可聴周波数以外の周波数にするとよい。ハウリング検知部50は、増幅信号(正相信号Sφ1)のレベルが所定の基準値を超えた場合にハウリング発生であると判断してトリガー信号TSを出力する。ハウリング検知部50が通常のレベルコンパレータ51の場合、レベルコンパレータ51の出力である検知信号CSがトリガー信号TSとなる。
【0074】
条件変更部60のスイッチ62は、ハウリング検知部50から出力されるトリガー信号TSによって開閉動作する。本例において、通常の状態ではスイッチ62は開いており、出力アンプ35にダミー信号DSは送られない。すなわち、通常の状態では、正相信号Sφ1のみが出力アンプ35から音声出力部30へと送られる。
【0075】
ハウリングが発生してトリガー信号TSが条件変更部60に送られると、スイッチ62が閉じて信号発生部63のダミー信号DSが出力アンプ35へ送られる。ハウリング発生を検知してダミー信号DSが出力アンプ35へ送られると、正相信号Sφ1にダミー信号DSを重畳した音声信号に基づく音声が音声出力部30から出力される。ダミー信号DSを重畳した音声が出力されると、ループ発振の条件の一つである(C3)「ループ発振の経路内に周波数選択要素があること」が崩れ、ハウリングが抑制されることになる。
【0076】
ダミー信号DSの周波数が可聴周波数以外であれば、ダミー信号DSを重畳した音声が出力されてもダミー信号DSの音に気が付くことはない。なお、ダミー信号DSの周波数は可聴周波数であってもよいが、この場合には人が認識できない程度の短い時間であることが好ましい。このようなダミー信号DSの重畳によって、ハウリングを発生させる音場空間のフィルタ特性が変わり、ハウリングを抑制することができる。
【0077】
ハウリングが抑制され、増幅信号のレベルが所定の基準値以下となると、ハウリング検知部50から戻り信号BSが出力される。戻り信号BSが条件変更部60に送られるとスイッチ62が開となり、ダミー信号DSの重畳が解除される。これにより、ハウリングが抑制された後は、元の正相信号Sφ1に戻されることになる。
【0078】
(プログラム処理)
本実施形態に係る補聴器1は、携帯端末およびそこで実行されるプログラム処理によって実現することもできる。携帯端末に設けられるマイクは音声入力部10、携帯端末に設けられるスピーカや携帯端末に有線または無線で接続されるイヤホン、ヘッドフォンは音声出力部30として用いられる。増幅部20は携帯端末の回路として内蔵される。ハウリング検知部50、条件変更部60は、携帯端末で実行されるプログラム処理(アプリケーションプログラム)として実現可能である。
【0079】
プログラム処理では、増幅信号のレベルが音声とハウリングとを峻別する予め設定された値を超えたときにハウリング発生を検知するステップ(ハウリング検知ステップ)と、ハウリング検知ステップでハウリング発生を検知したとき、増幅部20を通過するハウリング信号の位相を変更して音声出力部30に入力すること、ハウリング信号のレベルを下げること、およびハウリング信号の代わりにダミー信号を音声出力部30に入力すること、の少なくともいずれかの変更処理を行うステップ(変更処理ステップ)とを、コンピュータ(CPU)に実行させる。
この変更処理ステップでは、ハウリング検知ステップでハウリング発生を検知して変更処理を行った後、所定のタイミングで変更処理を終了することを含む。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る補聴器1によれば、簡単な構成であっても効果的にハウリングを抑制することができる補聴器1を提供することが可能になる。
【0081】
なお、上記に本実施形態及びその他の例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記では増幅信号として正相信号Sφ1と逆相信号Sφ2とを用いた例を示したが、正相信号Sφ1に対して位相のずれた信号であれば同様に適用可能である。また、前述の各実施形態またはその他の例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の構成は、既存の拡声用音響装置において装置内を改造することなく利用可能である。すなわち、利用できるのはマイクアンプ機器と出力アンプ機器に分かれている音響装置システムであり、マイクアンプ機器と出力アンプ機器との間に本発明のハウリング検知部50および条件変更部60を挿入すればよい。
【符号の説明】
【0083】
1…補聴器
10…音声入力部
20…増幅部
30…音声出力部
35…出力アンプ
37…ボリューム
50…ハウリング検知部
51…レベルコンパレータ
60…条件変更部
61…トグルスイッチ
62…スイッチ
63…信号発生部
65…フリップフロップ
511…帰還抵抗
512…容量
BS…戻り信号
CS…検知信号
DS…ダミー信号
GL…接地線
Sφ1…マイク入力に対する正相信号
Sφ2…マイク入力に対する逆相信号
TS…トリガー信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9