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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054313
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
   B64C 27/08 20230101AFI20230406BHJP
   B64C 13/04 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
B64C27/08
B64C13/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027349
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2021550987の分割
【原出願日】2019-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】517106408
【氏名又は名称】株式会社A.L.I.Technologies
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 康弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 優
(72)【発明者】
【氏名】大庭 崇史
(72)【発明者】
【氏名】城田 たける
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 悠紀
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕士
(57)【要約】
【課題】運転における操作容易性を実現することができる飛行体を提供する。
【解決手段】本技術に係る飛行体は、前後方向に伸びる機体と、前記機体の上側に設けられる鞍部と、前記機体の、前記鞍部の前側に設けられる把持部と、前記機体に設けられ、前記機体に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部と、を備え、前記把持部には、前記機体の浮上および/または推進に係る動作を操作するための操作部が設けられる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に伸びる機体と、
前記機体の上側に設けられる鞍部と、
前記機体の、前記鞍部の前側に設けられる把持部と、
前記機体に設けられ、前記機体に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部と、
を備え、
前記把持部には、前記機体の浮上および/または推進に係る動作を操作するための操作部が設けられる、飛行体。
【請求項2】
前記把持部は、一端が前記機体に接続して固定され、前記機体から伸びるアーム部を備え、
前記操作部は、前記アーム部の他端の部分に設けられる、請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記アーム部は、前記機体に対して回動不能に設けられている、請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記操作部は、前記機体の高度を変更する操作を行うための第1入力部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項5】
前記操作部は、前記機体をヨー軸回りに回転させる操作を行うための第2入力部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記操作部は、前記機体の進行方向を示す方向指示器を操作するための第4入力部を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項7】
前記操作部は、前記機体の推進に係る操作を行うための第4入力部を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項8】
前記第4入力部は、少なくとも、前記機体の速度の調整、または前記機体の停止もしくはホバリングを行うための入力信号を送出する、請求項7に記載の飛行体。
【請求項9】
前記把持部は、前記機体の幅方向に対称となるように一対設けられ、
前記一対の把持部の少なくともいずれかは、前記機体の推進、回転または高度の少なくともいずれかに対応する操作を行うための一群の前記操作部を有する、請求項1~8に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体、特に、搭乗者が搭乗可能であって地上から浮上して移動する飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
搭乗者を乗せて浮上して移動することが可能な飛行体は、陸路を移動する自動二輪車等の移動体が、陸路を移動する際に他の移動体との関係で受けることになる移動に対する制約を受けることなく移動することが可能であることから、新たな移動手段として実現されることが期待されている。
【0003】
例えば、特許文献1において、搭乗者を乗せた状態で、プロペラの回転によって地上から50cm乃至100cm程度の高さに浮上して移動する、いわゆるホバーバイクとも称される飛行体に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-14396公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる飛行体を搭乗者が運転する際には、飛行体が備えるべき技術的な性能である、搭乗者の運転体験における操作容易性が求められる。特許文献1に開示された技術では、搭乗者が思い通りに運転するためには訓練が求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、運転における操作容易性を実現することが可能である飛行体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための、本発明に係る飛行体は、前後方向に伸びる機体と、前記機体の上側に設けられる鞍部と、前記機体の、前記鞍部の前側に設けられる把持部と、前記機体に設けられ、前記機体に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部と、を備え、前記把持部には、前記機体の浮上および/または推進に係る動作を操作するための操作部が設けられるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術によれば、運転における操作容易性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る飛行体の構成例を示す斜視図である。
図2】同実施形態に係る飛行体の構成例を示す側視図である。
図3】同実施形態に係る飛行体のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4図2の範囲IVにおける飛行体の把持部の拡大図である。
図5】同実施形態に係る左操作部の構成例を示す図である。
図6】同実施形態に係る右操作部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る飛行体1の構成例を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る飛行体1の構成例を示す側視図である。図1および図2に示すように、飛行体1は、搭乗者が搭乗可能であって地上から50cm乃至100cm程度の高さに浮上して水平方向に移動することが可能な、いわゆるホバーバイクとも称される移動手段である。なお、各図に示す各座標軸について、Lは飛行体1(機体2)の前後方向(前側が正)、Wは飛行体1(機体2)の幅方向(左方向が正)、Hは飛行体1(機体2)の上下方向(上側が正)を示す。
【0012】
飛行体1は、機体2と、鞍部3と、把持部4と、動力部5の一例であるエンジン50と、第1回転翼部6(6A、6B)と、第2回転翼部7(7A~7D)と、第3回転翼部8(8A~8D)と、排気システム9と、を備える。なお、飛行体1はその他の構成要素も備えうるものであり、該構成要素については後述する。
【0013】
機体2は、飛行体1の上部において前後方向Lに伸びて形成される。機体2は、例えば、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン合金またはマグネシウム合金等の、比較的比重が小さく、かつ強度の高い素材から形成され得る。
【0014】
機体2の前後方向Lにおける中央部の上側には、鞍部3および把持部4が設けられる。
【0015】
鞍部3は、搭乗者が飛行体1の機体2に跨って搭乗する座席に相当する。搭乗者が安定して着座できるように、鞍部3は、下方側に突出するような形状を成してもよい。なお、鞍部3は搭乗部の一例であり、鞍部3は、図示するような形状や構造に限定されない。搭乗者が搭乗可能な構造を有していれば、その態様は特に限定されない。
【0016】
把持部4は、鞍部3に跨った搭乗者が掴まるために設けられる。把持部4の形状は図示するような形状に限定されない。
【0017】
把持部4には、搭乗者が機体の浮上および/または推進に係る動作を操作するための操作部が設けられる操作するための操作部やインタフェース等が設けられる。また、把持部4は機体2に固定される。かかる把持部4には、ボタン、レバー、ステアリング等の操作部が設けられる。把持部4に設けられる操作部の構成については、図2の範囲IVの拡大図を示す図4等を参照しながら後述する。かかる操作部に入力される入力信号は、後述する制御部10に送出され得る。
【0018】
動力部5の一例であるエンジン50は、機体2の下側であって、鞍部3の下方に設けられる。エンジン50は、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等が挙げられ、エンジン50の機構は特に限定されない。
【0019】
第1回転翼部6は、機体2に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部の一例である。第1回転翼部6A、6Bは、動力部5の前後に一対設けられる。図1及び図2に示す例では、動力部5の前後において、機体2の前方及び後方を構成するテーパ形状のフレームの下方に設けられる。かかるフレーム形状により、第1回転翼部6に多くの気体をスムーズに取り込むことができる。
【0020】
第1回転翼部6は、揚力を発生させるためのプロペラと、かかるプロペラを収容し、上下端に通気口を有するダクトとを備える。プロペラは、例えば上下方向に重ね合わせられた1対のブレード群が、それぞれ反対方向に回転する、いわゆる二重反転プロペラである。かかるプロペラの回転により、上方から下方へと気流が生じる。かかる気流により機体2に揚力が発生し、機体2を浮上させることができる。なお、本実施形態に係る第1回転翼部6は、機体2の前後にそれぞれ設けられているが、前後の少なくともいずれかに第1回転翼部6が設けられていてもよい。かかる機体2をピッチ方向(幅方向Wを回転軸とする回転方向)またはロール方向(前後方向Lを回転軸とする回転方向)に傾斜させたり、第1回転翼部6を傾斜させることで、第1回転翼部6により水平方向の推力が発生する。これにより、飛行体1を推進させることができる。
【0021】
また、第1回転翼部6のダクトの上下端の通気口の少なくともいずれか(上端側が好ましい)には、ルーバーが設けられていてもよい。例えば図1に示すように、ルーバーは、短冊状であり、幅方向に配設され、前後方向Lを中心軸として外側から中心側にかけて下方に傾斜するように設けられてもよい。かかるルーバーにより、ダクト内への異物の侵入を抑制することができる。また、ルーバーが設けられることで、ダクトの内部から何かが飛散した際においても、ルーバーが飛散物の障害となり得る。また、上方から流入する気体の流れを整えることができる。また、ルーバーが設けられることにより、飛行体1に搭乗する搭乗者からプロペラが見えにくくなるので、搭乗者の恐怖感が和らぎ得る。
【0022】
また、第1回転翼部6のダクトの一部に、可変のフラップ機構が設けられていてもよい。かかるフラップ機構により流入または流出する気体の流動量および/または流動方向を制御することができる。これにより、飛行体1の飛行制御をより精緻に行うことができる。
【0023】
第2回転翼部7は、機体2に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部の一例である。特に、第2回転翼部7は、機体2に対して主に機体2の前後方向に推力を与え得る。第2回転翼部7Aは機体2の前方左側に、第2回転翼部7Bは機体2の後方左側に、第2回転翼部7Cは機体2の前方右側に、第2回転翼部7Dは機体2の後方右側に設けられる。第2回転翼部7A、7B、7C、7Dは、機体2の前後において、第1回転翼部6の幅方向外側に配設される。
【0024】
第2回転翼部7は、機体2の前後方向に気体を流通させるダクトと、該ダクトの内側において推力を発生させるプロペラと、を備える。該ダクトは、前後方向の端部にそれぞれ流通口が設けられる。該プロペラは、例えば二重反転プロペラであってもよいし、一重プロペラであってもよい。また、該プロペラは、後述する制御部10またはモータドライバ13等により、回転方向やプロペラのピッチ角を適宜変更してもよい。これにより、第2回転翼部7は、機体2の前後方向の少なくともいずれかの方向に沿った推力を発生させることができる。なお、第2回転翼部7は、通常機体2の前方への推力を発生させるが、後方への推力を発生させてもよい。かかる第2回転翼部7は、例えば、飛行体1の速度を変化させたり、飛行体1をヨー軸(上下方向Hに沿う方向の軸)まわりに回転させる制御をするために用いられる。
【0025】
第3回転翼部8は、機体2に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部の一例である。特に、第3回転翼部8は、機体2に対して主に機体2の上下方向に推力を与え得る。第3回転翼部8Aは機体2の前方左側に、第3回転翼部8Bは機体2の後方左側に、第3回転翼部8Cは機体2の前方右側に、第3回転翼部8Dは機体2の後方右側に設けられる。第3回転翼部8A、8B、8C、8Dは、機体2の前後において、第1回転翼部6の幅方向外側に配設される。
【0026】
第3回転翼部8は、機体2の上下方向に気体を流通させるケーシングと、該ケーシングの内側において推力を発生させるプロペラと、を備える。該ケーシングは、上端部および下端部にそれぞれ流通口が設けられる。該プロペラは、例えば二重反転プロペラであってもよいし、一重プロペラであってもよい。また、該プロペラは、後述する制御部10またはモータドライバ13等により、回転方向やプロペラのピッチ角を適宜変更してもよい。これにより、第3回転翼部8は、機体2の上下方向の少なくともいずれかの方向に沿った推力を発生させることができる。なお、第3回転翼部8は、通常機体2の上方への推力を発生させるが、下方への推力を発生させてもよい。かかる第3回転翼部8は、例えば、飛行体1の第1回転翼部6による浮上時の補助的な役割として用いられたり、飛行体1の姿勢を制御したり、飛行体1をピッチ軸(幅方向Wに沿う方向の軸)まわりおよび/またはロール軸(前後方向Lに沿う方向の軸)まわりに回転させる制御をするために用いられる。
【0027】
排気システム9は、エンジン50から排出される排気ガスを処理するシステムである。かかる排気システム9として、例えば公知の排気デバイス等が使用できる。排気システム9は、鞍部3の下方に設けられる。図2に示す例では、エンジン50の下部に排気システム9が設けられている。
【0028】
次に、図3を用いて、飛行体1の構成要素についてより詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る飛行体1のハードウェア構成例を示すブロック図である。なお、既に上述した構成要素については説明を省略する。また、図3に示す破線は、飛行体1(機体2)の前部、中央部、後部を区画する仮想の境界線である。すなわち、鞍部3が設けられている領域が、機体2の中央部に相当する。また、図3に示す矢印Lは、機体2の前方向を示す矢印である。
【0029】
図3に示すように、機体2の中央部には、鞍部3、把持部4、動力部5が設けられ、さらに、排気システム9、制御部10、バッテリ11が設けられ得る。
【0030】
動力部5は、エンジン50の他に、ガソリンタンク51、ジェネレータ52、PCU(Power Control Unit)53を備えてもよい。ガソリンタンク51は、エンジン50に供給するガソリンを貯蔵するものである。ジェネレータ52はエンジン50を動力源として得られる動力により電力を発電する機能を有する。かかるジェネレータ52はPCU53により制御され、発電された電力はバッテリ11に蓄電される。PCU53は、バッテリ11の電力管理を行う機能を有する。
【0031】
機体2の前部及び後部には、第1回転翼部6、第2回転翼部7および第3回転翼部8の他に、モータ12およびモータドライバ13が、第2回転翼部7および第3回転翼部8のそれぞれに対して設けられる。また、機体2の前部及び後部には、方向指示器14が設けられ得る。
【0032】
本実施形態においては、第1回転翼部6には、エンジン50により発生する動力が、不図示の動力軸等を介して伝達される。一方、第2回転翼部7及び第3回転翼部8には、各々に対して設けられたモータ12から直接動力軸等を介して動力が伝達される。
【0033】
なお、本実施形態では、モータ12は第2回転翼部7及び第3回転翼部8に付随する形でそれぞれ設けられるとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、モータ12は機体2の中央部の、鞍部3の下部に設けられてもよい。この場合、モータ12は動力部5の一例である。モータ12の数は特に限定されず、例えば、モータ12の数は第2回転翼部7及び第3回転翼部8の数に対応して設けられてもよい。
【0034】
制御部10は、プロセッサ、メモリおよびセンサ等を有する。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)等により構成され、飛行体1の各構成要素の動作を制御し、各要素間におけるデータの送受信の制御や、プログラムの実行に必要な処理等を行う。
【0035】
メモリは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性記憶装置で構成される主記憶装置、及びフラッシュメモリやHDD(Hard Disc Drive)等の不揮発性記憶装置で構成される補助記憶装置から構成される。メモリは、プロセッサの作業領域として使用される一方、制御部10が実行可能であるロジック、コード、あるいはプログラム命令といった各種の設定情報等が格納される。
【0036】
センサは、本実施の形態では、重量センサ、力センサ、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPS衛星から電波を受信するGPSセンサ、近接センサ、光学式または超音波式の測距センサ、ビジョン/イメージセンサ(カメラ)、大気圧を測定する気圧センサ、温度を測定する温度センサといった各種のセンサによって構成される。
【0037】
制御部10は、例えば、把持部4に備えられた操作部から得られた入力信号や、センサから得られた信号に基づいて、エンジン50や、モータ12の出力を制御する。これにより、各回転翼部の回転数等が制御され、飛行体1の浮上や飛行が行われる。なお、制御部10の設けられる位置は、機体2の中央部等に限定されない。また、制御部10は、上記操作部から得られた入力信号に基づいて、機体の進行方向を示す方向指示器14の点灯や消灯に係る制御を行う。なお、方向指示器14は、例えば、左右への転回のみならず、上下方向への移動(つまり高度の変更)を示す装置が含まれていてもよい。
【0038】
次に、図4図6を用いて、把持部4の構成要素について詳細に説明する。図4は、
【0039】
図4は、図2の範囲IVにおける飛行体1の把持部4の拡大図である。図4に示すように、飛行体1の機体2の鞍部3(不図示)の前側に、把持部4が設けられる。把持部4は機体2の幅方向Wに対称となるように一対設けられている。
【0040】
かかる把持部4は、一端が機体2に接続して固定され、機体から伸びるアーム部(左アーム部41、右アーム部42)を備える。このアーム部の他端の部分には、操作部(左操作部43、右操作部44)が設けられている。
【0041】
左アーム部41および右アーム部42は、それぞれ機体2に固定されている。例えば、これらのアーム部は、機体2に回動不能に設けられている。すなわち、例えば一般的な二輪車のハンドルとは異なり、本実施形態に係るアーム部はそれ自体が回動して操舵を行う機能は有さなくてもよい。搭乗者はアーム部を掴むことで、飛行時も安定して飛行体1に搭乗することができる。
【0042】
一方で、アーム部の先端部分には、飛行体1を操縦するための操作部が設けられる。かかる操作部は、例えばボタン、レバー、スロットルまたはスイッチ等の機械的または電気的な入力装置により実現されるものである。操作部から入力された信号や情報は制御部10に送出される。制御部10は、かかる信号や情報に基づいて、各回転翼部の出力の制御や、飛行体1に搭載される構成要素の動作の制御を行う。
【0043】
次に、操作部の具体的な構成例について説明する。図5及び図6は、本実施形態に係る左操作部43および右操作部44の構成例を示す図である。図5及び図6は、左アーム部41、右アーム部42、左操作部43および右操作部44の近傍を含む領域を拡大した図である。左操作部43および右操作部44が設けられている左アーム部41および右アーム部42の先端部分は、搭乗者が把持しやすいように、手で包み込むことが可能な形状となってもよい。この部分を「グリップ」と称する。
【0044】
まず図5を参照すると、左操作部43は、高度変更ボタン431a、431b、ヨー回転レバー432、およびウインカーボタン433を備える。
【0045】
高度変更ボタン431a、431bは第1入力部の一例である。高度変更ボタン431a、431bは、飛行体1の飛行中の高度を変更するためのボタンである。高度変更ボタン431a、431bは、左アーム部41のグリップの根元部分に設けられ、搭乗者の指や掌等により操作され得る。
【0046】
例えば、高度変更ボタン431aが押下されると、飛行体1は上昇する。また、高度変更ボタン431bが押下されると、飛行体1は下降する。かかる高度の変化方法とボタンとの対応関係は反対であってもよい。
【0047】
本実施形態では、高度変更ボタン431が押下されると制御部10に高度変更に係る信号が送出される。制御部10は、かかる信号に基づいて、エンジン50の出力を制御して、第1回転翼部6の回転数を調整する。また、制御部10は、かかる信号に基づいて、モータ12の出力を制御して、第3回転翼部8の回転数を調整し得る。かかる調整により、飛行体1の高度の変更が行われる。その際、例えば、高度変更ボタン431の押し込み量や押し込み時間に応じて、飛行体1の高度の変更量や上昇または下降に係る速度が制御されてもよい。
【0048】
ヨー回転レバー432は第2入力部の一例である。ヨー回転レバー432は、飛行体1のヨー軸まわりの回転を行うためのレバーである。ヨー回転レバー432は、例えば、左アーム部41のグリップの先端部分に設けられ、搭乗者の指や掌等により操作され得る。
【0049】
例えば、ヨー回転レバー432は、グリップとの接続部分を中心に、左方向(反時計回り方向)または右方向(時計回り方向)に回動可能に設けられる。より具体的には、左方向にヨー回転レバー432が回動すると、飛行体1はヨー軸回りに左方向に回転する。また、右方向にヨー回転レバー432が回動すると、飛行体1はヨー軸回りに右方向に回転する。ヨー回転レバー432の回転方向と飛行体1の回転方向との対応関係は反対であってもよい。
【0050】
本実施形態では、ヨー回転レバー432が回動すると制御部10にはヨー回転レバー432の回動方向、回動量および回動にかかる角速度等の信号が送出される。制御部10は、かかる信号に基づいて、モータ12の出力を、モータドライバ13を介して制御して、機体2の前後および左右に設けられた第2回転翼部7のプロペラの回転数等をそれぞれ調整する。かかる調整により、飛行体1はヨー軸まわりに回転する。その際、例えば、ヨー回転レバー432の回動の際の角速度に応じて、飛行体1のヨー軸まわりの回転速度が制御されてもよい。
【0051】
ウインカーボタン433は第3入力部の一例である。ウインカーボタン433は、飛行体1の方向指示器14を点灯させるためのボタンである。ウインカーボタン433は、左アーム部41のグリップの根元部分に設けられ、搭乗者の指や掌等により操作され得る。
【0052】
例えば、ウインカーボタン433は、方向指示器14により示される方向の種類に応じて、ボタンの数および配置位置が決められる。より具体的には、方向指示器14が左右の方向に対応している場合は、ウインカーボタン433は、左右の点灯のためのボタンが並設されることで実現される。
【0053】
本実施形態では、ウインカーボタン433が押下されると制御部10には押下したボタンに対応する方向指示に係る信号が送出される。制御部10は、かかる信号に基づいて、方向指示器14の対応する方向に係るランプが点灯するように制御する。
【0054】
次に図6を参照すると、右操作部44は、速度調整レバー441および停止・ホバリングレバー442を備える。
【0055】
速度調整レバー441は機体の推進に係る操作を行うための第4入力部の一例である。速度調整レバー441は、飛行体1の飛行中の推進における速度を調整するためのレバーであり、いわゆるアクセルのような機能を有する。速度調整レバー441は、例えば、右アーム部42のグリップの根元部分に設けられ、搭乗者の指や掌等により操作され得る。
【0056】
例えば、速度調整レバー441は、グリップとの接続部分を中心に、上方向(反時計回り方向)または下方向(時計回り方向)に回動可能に設けられる。より具体的には、上方向に速度調整レバー441が回動すると、飛行体1は前方に加速する。また、下方向に速度調整レバー441が回動すると、飛行体1は後方に加速する。速度調整レバー441の回転方向と飛行体1の速度の加速方向との対応関係は、上記の例とは反対であってもよい。
【0057】
本実施形態では、速度調整レバー441が回動すると制御部10には速度調整レバー441の回動方向、回動量および回動にかかる角速度等の信号が送出される。制御部10は、かかる信号に基づいて、エンジン50の出力を、および/またはモータ12の出力を制御して(モータ12の出力はモータドライバ13を介して)、第1回転翼部6、第2回転翼部7および第3回転翼部8の少なくともいずれかのプロペラの回転数等をそれぞれ調整する。かかる調整により、飛行体1は機体2の姿勢の変化および各回転翼部のプロペラの回転数の増減が生じ、飛行体1の速度が変化する。その際、例えば、速度調整レバー441の回動の際の角速度に応じて、飛行体1の加速または減速に係る加速度が制御されてもよい。
【0058】
停止・ホバリングレバー442は機体の推進に係る操作を行うための第4入力部の一例である。停止・ホバリングレバー442は、飛行体1の飛行中の推進を停止(着陸を含む)またはホバリング状態にするためのレバーであり、いわゆるブレーキのような機能を有する。停止・ホバリングレバー442は、例えば、右アーム部42のグリップの根元部分であって、速度調整レバー441とは異なる位置に設けられ、搭乗者の指や掌等により操作され得る。
【0059】
例えば、停止・ホバリングレバー442は、グリップとの接続部分を中心に回動可能に設けられる。通常はグリップから離れた位置に保持されるように付勢される。そして、停止・ホバリングレバー442をグリップに近づけるように握ることで、飛行体1を停止またはホバリングさせることができる。なお、停止・ホバリングレバー442は、飛行体1が浮上を開始するためのトリガーとなるレバーとして機能させることもできる。すなわち、接地している飛行体1に対して停止・ホバリングレバー442を操作することで、飛行体1を浮上させホバリング状態にすることが可能である。
【0060】
本実施形態では、停止・ホバリングレバー442が回動すると制御部10には停止・ホバリングレバー442の回動方向、回動量および回動にかかる角速度等の信号が送出される。制御部10は、かかる信号に基づいて、エンジン50の出力を、および/またはモータ12の出力をモータドライバ13を介して制御して、第1回転翼部6、第2回転翼部7および第3回転翼部8の少なくともいずれかのプロペラの回転数等をそれぞれ調整する。かかる調整により、飛行体1は機体2の姿勢の変化および各回転翼部のプロペラの回転数の増減が生じ、飛行体1が停止またはホバリングする状態へと移行させる。その際、例えば、停止・ホバリングレバー442の回動の際の角速度に応じて、飛行体1の停止またはホバリングの状態への制動の大きさが制御されてもよい。
【0061】
以上、把持部4の操作部の構成例について説明した。なお、図4図6に示した把持部4に設けられる操作部の構成例は限定されず、飛行体1の浮上、推進、制動、意思表示等に係る機能を操作するための入力部が適宜把持部4の操作部(例えば上述したグリップ)に設けられてもよい。
【0062】
このように、把持部4に飛行体1の浮上、推進等に係る機能を集約することによって、飛行体1の運転の際に把持部4から手を離したり持ち替えたりすることなく、容易に飛行体1の運転を行うことが可能となる。また、上述したグリップに操作部を集中させることで、運転に係る操作を手元で全て行うことが可能となる。
【0063】
また、飛行体1の浮上および/または推進に係る操作をボタンやレバー等で実現することにより、飛行体1の運転をより細やかかつ正確に行うことが可能となる。また、図6に示したように、飛行体1の浮上および/または推進に係る一群の操作部を右操作部に集約することで、人間工学的な見地から、より正確な運転を搭乗者に行わせることが可能となる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、上記実施形態においては、回転翼部は、機体2を浮上させるための揚力を発生させる第1回転翼部6と、機体2に推力を与えるための第2回転翼部7、第3回転翼部8とで構成されるとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、推力を発生させる回転翼部として上記実施形態に示すような第2回転翼部7のみが設けられてもよいし、第3回転翼部8のみが設けられてもよい。この場合であっても、操作部により入力された信号に基づいて、制御部がエンジンまたはモータ等の動力部に対して適宜制御を行うことができる。また、動力部も、エンジンまたはモータのいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0066】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0067】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
前後方向に伸びる機体と、
前記機体の上側に設けられる鞍部と、
前記機体の、前記鞍部の前側に設けられる把持部と、
前記機体に設けられ、前記機体に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部と、
を備え、
前記把持部には、前記機体の浮上および/または推進に係る動作を操作するための操作部が設けられる、飛行体。
(項目2)
前記把持部は、一端が前記機体に接続して固定され、前記機体から伸びるアーム部を備え、
前記操作部は、前記アーム部の他端の部分に設けられる、項目1に記載の飛行体。
(項目3)
前記アーム部は、前記機体に対して回動不能に設けられている、項目2に記載の飛行体。
(項目4)
前記操作部は、前記機体の高度を変更する操作を行うための第1入力部を含む、項目1~3のいずれか1項に記載の飛行体。
(項目5)
前記操作部は、前記機体をヨー軸回りに回転させる操作を行うための第2入力部を含む、項目1~4のいずれか1項に記載の飛行体。
(項目6)
前記操作部は、前記機体の進行方向を示す方向指示器を操作するための第4入力部を含む、項目1~5のいずれか1項に記載の飛行体。
(項目7)
前記操作部は、前記機体の推進に係る操作を行うための第4入力部を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の飛行体。
(項目8)
前記第4入力部は、少なくとも、前記機体の速度の調整、または前記機体の停止もしくはホバリングを行うための入力信号を送出する、項目7に記載の飛行体。
(項目9)
前記把持部は、前記機体の幅方向に対称となるように一対設けられ、
前記一対の把持部の少なくともいずれかは、前記機体の推進、回転または高度の少なくともいずれかに対応する操作を行うための一群の前記操作部を有する、項目1~8に記載の飛行体。
【符号の説明】
【0068】
1 飛行体
2 機体
3 鞍部
4 把持部
5 動力部
6 第1回転翼部
7 第2回転翼部
8 第3回転翼部
9 排気システム
10 制御部
41 左アーム部
42 右アーム部
43 左操作部
44 右操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に伸びる機体と、
前記機体の上側に設けられる鞍部と、
前記機体の、前記鞍部の前側に設けられる把持部と、
前記機体に設けられ、前記機体に対して揚力および/または推力を発生させる回転翼部と、
を備え、
前記把持部には、前記機体の浮上および/または推進に係る動作を操作するための操作部が設けられ、
前記回転翼部は、
前記機体の上下方向の気流により揚力を発生させる前後一対の揚力発生翼部と、
それぞれの前記揚力発生翼部の幅方向外側に位置し、前記機体の上下方向の気流を発生させる向きで固定された補助回転翼部と、を含む、飛行体。
【請求項2】
前記把持部は、一端が前記機体に接続して固定され、前記機体から伸びるアーム部を備え、
前記操作部は、前記アーム部の他端の部分に設けられる、請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記アーム部は、前記機体に対して回動不能に設けられている、請求項2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記操作部は、前記機体の高度を変更する操作を行うための第1入力部を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項5】
前記操作部は、前記機体をヨー軸回りに回転させる操作を行うための第2入力部を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記操作部は、前記機体の進行方向を示す方向指示器を操作するための第入力部を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項7】
前記操作部は、前記機体の推進に係る操作を行うための第4入力部を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項8】
前記第4入力部は、記機体の停止行うための入力信号を送出する、請求項7に記載の飛行体。
【請求項9】
前記第4入力部は、前記機体のホバリングを行うための入力信号を送出する、請求項7に記載の飛行体。
【請求項10】
前記第4入力部は、前記機体から伸びるアーム部のグリップに接続された部分を中心に回動可能なレバーで構成される、請求項7~9のいずれか1項に記載の飛行体。
【請求項11】
前記把持部は、前記機体の幅方向に対称となるように一対設けられ、
前記一対の把持部の少なくともいずれかは、前記機体の推進、回転または高度の少なくともいずれかに対応する操作を行うための一群の前記操作部を有する、請求項1~10に記載の飛行体。