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特開2023-54350細胞培養集合体を生成するためのマイクロウェル設計および製造
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054350
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】細胞培養集合体を生成するためのマイクロウェル設計および製造
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230406BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230406BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C12M1/00 A
C12N5/07
C12M3/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028245
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2021047002の分割
【原出願日】2015-10-29
(31)【優先権主張番号】62/072,019
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】イェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】アン ミージン フェリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァシリー ニコラエヴィッチ ゴーラル
(72)【発明者】
【氏名】アリソン ジェイ タナー
(72)【発明者】
【氏名】チー ウー
(57)【要約】
【課題】スフェロイドの形成を促進するために細胞培養に使用するウェルを有する装置を提供する。
【解決手段】細胞培養装置は、ウェルを画成する基体を備え。そのウェルは、半球形状を持つ内面、凸状形状を有する外面、上部開口および天底を画成する。その基体は、内面と外面との間の厚さを画成し、上部開口に近接したところから前記天底に近接したところまで連続的に増加する厚さを有する。前記外面は非球面外面を有し、曲率半径Rおよびコーニック係数K(=-3.09)とで規定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養装置において、
ウェルを画成する基体であって、該ウェルが、半球形状を持つ内面、凸状形状を有する外面、上部開口および天底を画成する、基体、
を備え、
前記基体は、前記内面と前記外面の間の厚さを規定し、
前記厚さが、前記上部開口に近接したところから前記天底に近接したところまで連続的に増加し、
前記外面は、以下に規定される非球面外面を有し、
【数1】
ここで、Rは曲率半径であり、Kはコーニック定数でその値は-3.09である、
細胞培養装置。
【請求項2】
前記ウェルが前記外面からの光を、該ウェルが細胞培養培地を収容するときに、前記内面により光が受光される方向に対して実質的に平行に透過させるように構成されている、請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項3】
前記ウェルが前記天底と前記上部開口の中心との間に軸を規定し、該ウェルが該軸の周りに回転対称である、請求項1または2記載の細胞培養装置。
【請求項4】
前記上部開口が該上部開口に亘る距離を規定し、該上部開口に亘る距離が100マイクロメートルから3000マイクロメートルの範囲にある、請求項1から3いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項5】
前記上部開口に近接したところから前記天底に近接したところまでのどの位置の前記基体の厚さも、10マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にある、請求項1から4いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項6】
前記内面が半球形状により画成され、該半球形状が、50マイクロメートルから1500マイクロメートルの範囲の半径を規定する、請求項1から5いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項7】
前記外面が半球形状により画成される、請求項6記載の細胞培養装置。
【請求項8】
前記基体がポリスチレンから作られている、請求項1から7いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項9】
前記内面の形状および前記外面の形状が、前記ウェルが細胞培養培地を収容するときに、それらの間を通過する光の屈折を最小にするように構成されている、請求項1から8いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項10】
前記ウェルが細胞に対して非接着性である、請求項1から9いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項11】
前記内面が、その中で培養される細胞がスフェロイドを形成するように構成されている、請求項1から10いずれか1項記載の細胞培養装置。
【請求項12】
スフェロイドを増殖させるための、請求項1から11いずれか1項記載の細胞培養装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その開示がここに全て引用される、2014年10月29日に出願された米国仮特許出願第62/072019号に優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、細胞を培養するための装置、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3D集合体またはスフェロイドの形成を促進する細胞培養技術が、用途の数の増加により、従来の単層培養技術を上回って、強く支持されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スフェロイドの形成に現在使用されているある種の従来の細胞培養装置は、撮像技術を難しくしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の様々な実施の形態によれば、スフェロイドの形成を促進するために細胞培養に使用するウェルを有する装置がここに記載されている。ここに記載された装置の実施の形態は、スフェロイドの培養に使用される従来の装置に生じ得る光の歪みを最小にし、ウェル内で増殖するスフェロイドの撮像品質を改善することのできるウェル形状を有する。
【0006】
様々な実施の形態において、本開示は、ウェルを画成する基体を備えた細胞培養装置を記載する。このウェルは、内面、外面、上部開口および天底(nadir)を画成する。この基体は、内面と外面の間の厚さを規定する。天底に近接した基体の厚さは、上部開口に近接した基体の厚さ以上である。
【0007】
様々な実施の形態において、本開示は、底部および囲い側壁を有する貯留部を備えた細胞培養装置を記載する。この底部は複数のウェルにより画成される。複数のウェルの各ウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成する。そのウェルは、内面と外面の間の厚さを規定する。天底に近接したウェルの厚さは、上部開口に近接したウェルの厚さ以上である。
【0008】
様々な実施の形態において、本開示は、ウェルを画成する基体を備えた細胞培養装置を記載する。このウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成する。この基体は、内面と外面の間の厚さを規定する。その厚さは、ウェルが水性組成物を収容するときに、内面に入り外面から出る光の屈折を補正するように構成されている。実施の形態において、この水性組成物は、細胞培養または細胞試験に使用される組成物である。例えば、水性組成物は、細胞培養培地、緩衝剤、もしくは細胞試験に使用される他の溶液または混合物を含み得る。
【0009】
様々な実施の形態において、本開示は、ウェルを画成する基体を備えた細胞培養装置を記載する。このウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成する。その外面の形状は、内面に入り外面から出る光の屈折を補正するように構成されている。
【0010】
いくつかの実施の形態において、ウェルを画成する基体を備えた細胞培養装置であって、そのウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、その基体は、内面と外面の間の厚さを規定し、天底に近接した基体の厚さは、上部開口に近接した基体の厚さ以上である、細胞培養装置がここに提供される。いくつかの実施の形態において、天底に近接した基体の厚さは、上部開口に近接した基体の厚さより大きい。いくつかの実施の形態において、基体の厚さは、上部開口に近接したところから天底に近接したところまで連続的に増加する。いくつかの実施の形態において、天底に近接した基体の厚さは、上部開口に近接した基体の厚さと等しい。いくつかの実施の形態において、基体の厚さは、上部開口に近接したところから天底に近接したところまで一定のままである。
【0011】
いくつかの実施の形態において、前記ウェルは、天底と上部開口の中心との間に軸を規定し、このウェルはその軸の周りに回転対称である。
【0012】
いくつかの実施の形態において、前記上部開口は、この上部開口に亘る距離を規定し、その上部開口に亘る距離は、100マイクロメートルから3000マイクロメートルの範囲にある。
【0013】
いくつかの実施の形態において、上部開口に近接したところから天底に近接したところまでのどの位置の基体の厚さも、10マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にある。
【0014】
いくつかの実施の形態において、前記内面は半球形状により画成され、その半球形状は、50マイクロメートルから1500マイクロメートルの範囲の半径を規定する。
【0015】
いくつかの実施の形態において、前記外面は、撮像システムの開口数よりも小さい発散角で光を透過させるように構成されている。例えば、開口数が0.1の4倍のプラン・アクロマート拡大対物レンズの場合、光は、ウェルが細胞培養培地を収容するときにその光が内面で受光される方向に対して実質的に平行に(すなわち、5.7°以下)に通過するはずである。一般に、細胞培養培地を収容するウェルを透過する光の最大発散角は、対物レンズの受光コーンを超えるべきではない。
【0016】
いくつかの実施の形態において、前記内面の形状および前記外面の形状は、ウェルが細胞培養培地を収容するときに、それらの間を通過する光の屈折を最小にするように構成されている。
【0017】
いくつかの実施の形態において、前記ウェルは細胞に対して非接着性である。
【0018】
いくつかの実施の形態において、前記内面は、その中で培養される細胞がスフェロイドを形成するように構成されている。
【0019】
底部および囲い側壁を有する貯留部を備えた細胞培養装置であって、その底部は複数のウェルにより画成され、複数のウェルの各ウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、そのウェルは、内面と外面の間の厚さを規定し、天底に近接したウェルの厚さは、上部開口に近接したウェルの厚さ以上である、細胞培養装置もここに提供される。
【0020】
ウェルを画成する基体を備えた細胞培養装置であって、このウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、この基体は、内面と外面の間の厚さを規定し、その厚さは、ウェルが水性組成物を収容するときに、内面に入り外面から出る光の屈折を補正するように構成されている、細胞培養装置がさらにここに提供される。
【0021】
ウェルを画成する基体を備えた細胞培養装置であって、このウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、その外面の形状は、内面に入り外面から出る光の屈折を補正するように構成されている、細胞培養装置がさらにここに提供される。
【0022】
細胞(例えば、スフェロイド)の増殖および/または撮像または評価のために上述したいずれかの使用が、さらにここに提供される。
【0023】
本開示の主題の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された本開示の主題を実施することにより認識されるであろう。
【0024】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、本開示の主題の実施の形態を提示しており、特許請求の範囲に記載されたような本開示の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供することが意図されているのが理解されよう。添付図面は、本開示の主題のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本開示の主題の様々な実施の形態を示しており、説明と共に、本開示の主題の原理および作動を説明する働きをする。その上、その図面および説明は、単なる例示であることを意味し、請求項の範囲をいかようにも限定することは意図されていない。
【0025】
本開示の特定の実施の形態の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照番号により示されている、以下の図面と共に読まれたときに、もっともよく理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】複数のウェルを備えた細胞培養装置の実施の形態の概略断面図
図2A】細胞培養装置の1つのウェルの実施の形態の断面図
図2B】細胞培養装置の1つのウェルの実施の形態の断面図
図3A】細胞培養装置の1つのウェルの実施の形態の断面図
図3B】細胞培養装置の1つのウェルの実施の形態の断面図
図4A図3AのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図4B図3AのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図4C図3AのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図4D図3AのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図5A図2BのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図5B図2BのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図5C図2BのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図5D図2BのウェルのX線コンピュータ断層撮影画像
図6A図3Aのウェルの明視野顕微鏡画像
図6B図2Bのウェルの明視野顕微鏡画像
図7】複数のウェルを含む貯留部の実施の形態の概略断面図
図8】薄壁ウェルを製造するための変形プロセスの概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで、そのいくつかの実施の形態が添付図面に示されている、本開示の主題の様々な実施の形態を詳しく参照する。図面に使用される同様の番号は、同様の構成要素、工程などを指す。しかしながら、所定の図面においてある構成要素を指すためのある番号の使用は、同じ番号がふられた別の図面の構成要素を制限することは意図されていないことを理解すべきである。その上、構成要素を指すための異なる番号の使用は、異なる番号がふられた構成要素が他の番号がふられた構成要素と同じまたは類似であり得ないことを示すことは意図されていない。
【0028】
本開示は、とりわけ、複数のウェルまたはマイクロウェルの形状を画成する構造化底面を有する細胞培養装置を記載する。いくつかの実施の形態において、ウェルを形成する基体は、その装置の外面を画成する外面を備え得る。その外面の形状は、ここに記載された様々な実施の形態によりウェル内の細胞の撮像を容易にするように制御することができる。
【0029】
いくつかの実施の形態において、前記ウェルは、そのウェル内で培養される細胞がスフェロイドを形成するように構成されることがある。例えば、そのウェルは、ウェル内の細胞が互いに結合し、球体を形成するように、細胞に対して非接着性であることがある。そのスフェロイドは、細胞の形状により課せられるサイズ限界まで拡大することがある。いくつかの実施の形態において、そのウェルは、ウェルを細胞に対して非接着性にするために超低結合材料で被覆されることがある。
【0030】
いくつかの実施の形態において、前記ウェルの内面は細胞に対して非接着性であることがある。そのウェルは、非接着性ウェルを形成するために、非接着性材料から形成されても、または非接着性材料で被覆されてもよい。いくつかの実施の形態において、その非接着性材料は、超低接着材料と記載されることがある。非接着性材料の例としては、過フッ素化高分子、オレフィン、または同様の高分子もしくはそれらの混合物が挙げられる。他の例には、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ハイドロゲル、または同様の材料もしくはそれらの混合物があるであろう。例えば、非接着性ウェル、ウェル形状、および重力の組合せにより、ウェル内で培養される細胞のスフェロイドへの自己集合が誘発されることがある。
【0031】
しかしながら、スフェロイドを培養するのに有用であり得るウェル形状は、各個々のウェルによるレンズ様効果により導入される光歪みのために、従来の顕微鏡技術により、手動または自動過程のいずれでも、撮像するのが難しいことがあり得る。
【0032】
ここに記載されたウェルまたはウェルアレイ設計は、インビトロの3次元スフェロイド系試験またはスフェロイド産成の画像解析を可能にするか、またはより実行可能にするであろう。個々のウェルの断面プロファイルは、撮像能力、例えば、顕微鏡撮像能力の品質に影響するであろう。詳しくは、ウェルの厚さおよびウェルの外形を制御することは、撮像品質を改善するために撮像中の光路偏移を補正するのに役立つであろうし、細胞培養システムをハイコンテント撮像スクリーニングに適合させるであろう。その結果、ウェルの厚さおよびウェルの外形は、レンズ形状のために光学的に活性なウェルをもたらすであろう。言い換えると、ウェルは、単光源または様々な光源を利用できるであろうし、それでもウェル内の細胞の均一な照明を生じるであろう。いくつかの実施の形態において、改善された照明により、より短い焦点距離が可能になり、それにより、その光学系の開口数が上昇し、より高い倍率での画像収集が可能になるであろう。
【0033】
様々なウェルの特徴が、撮像品質に重大な影響を及ぼすであろう。例えば、ウェルの内面の寸法と形状、ウェルの外面の寸法と形状、ウェルを画成する材料の光学的性質、ウェルを画成する材料の厚さプロファイルなどが全て、高品質の顕微鏡撮像に役割を果たし得る。その上、材料の屈折率が、反射型および透過型顕微鏡用途の両方における撮像品質に重大な影響を及ぼすであろう。例えば、多くの細胞培養撮像用途の場合、ウェルの内面と接触するもっとも一般的な材料は、1.33の屈折率を有する水溶液であり、ウェルを製造するためのもっとも一般的な材料は、1.59の屈折率を有するポリスチレンである。これら2つの材料の屈折率の差により、入射光線が偏向/反射することがあり、顕微鏡画像の品質に悪影響が及ぼされることがある。
【0034】
細胞培養画像の品質を改善するための方法の1つは、光歪みを補正することであろう。この光歪みは、上述したウェルの特徴、詳しくは、ウェルの内面と外面の寸法と形状、およびウェルを画成する材料の厚さプロファイルを制御し、変えることにより補正されるであろう。以前に公表された製造方法は、ウェルの内面、特に、3D細胞集合体の寸法を規定する内面の寸法と形状に焦点を当ててきた。しかしながら、互いに関連してこれらの特徴のいずれかを調節すると、撮像(例えば、顕微鏡法など)中に生じるかもしれないどのような光歪みも補正するのに役立つであろう。より詳しくは、ここに記載されるように、光歪みは、ウェルの外面の形状と寸法を制御することにより補正されるであろう。言い換えると、外面の形状と寸法を変える能力を使用することは、入射光が外面に入射する角度を制御するのに役立つであろう。
【0035】
複数のウェル115を有する細胞培養装置100が図1に示されている。複数のウェル115は、基体110、例えば、高分子材料により画成されるであろう。各ウェル115は、内面120、外面114、上部開口118、天底116、および上縁121を画成するであろう。基体110は、内面120と外面114の間に厚さ111を規定するであろう。ウェル115は、天底116から上部開口118までの高さにより規定される深さdを有するであろう。ウェル115は、上部開口118により規定される、ウェル115に亘る直径、幅などの直径寸法wも有するであろう。
【0036】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたウェル115は、例えば、100マイクロメートル以上、300マイクロメートル以上、500マイクロメートル以上、800マイクロメートル以上、1200マイクロメートル以上など、または3000マイクロメートル以下、2600マイクロメートル以下、2200マイクロメートル以下、1800マイクロメートル以下、1500マイクロメートル以下などと、先の値のいずれかの間の範囲を含む直径寸法wを規定することがある。そのような直径寸法は、スフェロイドの内部の細胞が健康状態に維持されるようにその中で増殖するスフェロイドのサイズを制御することができる。いくつかの実施の形態において、ウェル115は、例として、100マイクロメートル以上、300マイクロメートル以上、500マイクロメートル以上、800マイクロメートル以上、1200マイクロメートル以上など、または3000マイクロメートル以下、2600マイクロメートル以下、2200マイクロメートル以下、1800マイクロメートル以下、1500マイクロメートル以下などと、先の値のいずれかの間の範囲を含む深さdを規定することがある。もちろん、他の適切な寸法も使用してよい。
【0037】
前記ウェルの外面は、様々な形状であってよい。例えば、外面の形状は、ウェルの内面に入りウェルの外面から出る、またはその逆の光の屈折を補正するように構成されることがある。言い換えると、ウェルの外面から出る光は、内面に入る光に対して実質的に平行である、および/または外面の形状は、内面と外面の間を通過する光の屈折を最小にするように構成されることがある、および/または外面は、光を、ウェルの内面がその光を受光する方向に対して実質的に平行に光を透過させるように構成されることがある。いくつかの実施の形態において、ウェルは細胞培養培地を収容し、外面の形状が屈折を補正する。
【0038】
ウェルの内面とウェルの外面の間の基体の厚さは、様々であってよい。例えば、基体の厚さは、ウェルの内面に入りウェルの外面から出る、またはその逆の光の屈折を補正するように構成されることがある。言い換えると、ウェルの外面から出る光は、内面に入る光に対して実質的に平行である、または基体の厚さは、それらの間を通過する光の屈折を最小にするように構成されることがある。いくつかの実施の形態において、基体の厚さが屈折を補正する場合、ウェルは細胞培養培地を収容する。
【0039】
屈折を補正しない外面214を画成する2つのウェル200の断面が、図2Aおよび2Bに示されている。言い換えると、ウェル200の内面220に入る光201は、ウェル200の外面214を出る光202と平行ではない。
【0040】
図2Aに示されるように、天底216に近接する基体210の厚さは、ウェル200の上縁221に近接する基体210の厚さより小さい。ウェル200の上縁221に近接する基体210の厚さは、上部開口218と同じ平面にある内面220と外面214の間の厚さと定義してもよい。図2Bに示されるように、ウェル200の外面214は、ウェル200の平らな外面を形成する基体210の矩形底部を画成する。
【0041】
いくつかの実施の形態において、ウェルを画成する基体、例えば、高分子材料の厚さと形状は、ウェルの内面に入りウェルの外面を出る光の屈折を補正するように構成されることがある。屈折を補正する外面114を画成する2つのウェル115の断面が、図3Aおよび3Bに示されている。言い換えると、ウェル115の内面120に入る光201は、ウェル115の外面114を出る光202と平行である。さらに言い換えると、ウェル115の内面120の形状およびウェル115の外面114の形状は、それらの間を通過する光の屈折の効果を最小にするように構成されている。
【0042】
図3Aおよび3Bに示されるように、天底116に近接する基体110の厚さ111は、上部開口118に近接する基体110の厚さ109以上であることがある。天底116に近接する基体110の厚さは、ウェル115の最低点での内面120と外面114の間の距離として定義してもよい。上部開口118に近接する基体110の厚さは、上部開口118と同じ平面にある内面120と外面114の間の距離として定義してもよい。
【0043】
詳しくは、図3Aに示されるように、基体110の厚さは、上部開口118に近接するところから天底116に近接するところまで一定のままであり、図3Bに示されるように、天底116に近接する基体110の厚さ111は、上部開口118に近接する基体110の厚さ109より大きい。また、図3Aに示されるように、天底116に近接する基体110の厚さ111は、上部開口118に近接する基体110の厚さ109と等しくてもよい。図3Aおよび3Bに示される基体厚さにより、内面120に入る入射光201を、外面114を出る出射光202に対して実質的に平行にすることができる。
【0044】
他の実施の形態において、基体厚さは、上部開口に近接するところから天底に近接するところまで連続的に増加すると記載されることがある(例えば、図3B)。上部開口から天底のどの位置に近接する基体の厚さも、例えば、5マイクロメートル以上、10マイクロメートル以上、20マイクロメートル以上、40マイクロメートル以上、60マイクロメートル以上など、または100マイクロメートル以下、90マイクロメートル以下、80マイクロメートル以下、65マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下などと、先の値のいずれかの間の範囲を含む厚さにより規定されるであろう。いくつかの実施の形態において、その厚さは約1000マイクロメートル以下である。いくつかの実施の形態において、その厚さは10マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にある。
【0045】
いくつかの実施の形態において、前記ウェルは、天底と上部開口の中心の間に軸105を画成することがあり、そのウェルは軸105の周りで回転対称であることがある(例えば、図1参照)。例えば、半球形状がウェルを画成することがある。その半球形状は、例えば、50マイクロメートル以上、150マイクロメートル以上、250マイクロメートル以上、400マイクロメートル以上、600マイクロメートル以上など、または1500マイクロメートル以下、1300マイクロメートル以下、1100マイクロメートル以下、900マイクロメートル以下、750マイクロメートル以下などの半径により規定されることがある。
【0046】
図3Aに概して示されたようなウェルのX線コンピュータ断層撮影画像の3Dデータセットの直交図が、図4A~4Dに示されている。これらの画像は、図3Aに示されたような凸状外面114を画成するウェル115を示している。図4Aは、図4Cに示された、水平線117に沿った3つの完全なウェル115の断面図を示している。図4Cは、ウェル115のアレイを有する細胞培養装置の一部の上面図である。図4Bは、図4Cに示された垂直線119に沿ったウェル115の断面図である。図4Dは、ウェル115のアレイを有する細胞培養装置の一部の再構成3D画像である。
【0047】
図2Bに概して示されたようなウェルのX線コンピュータ断層撮影画像の3Dデータセットの直交図が、図5A~5Dに示されている。これらの画像は、図2Bに示されたような平らな外面114を画成するウェル115を示している。図5Aは、図5Cに示された、水平線117に沿ったウェル115の断面図を示している。図5Cは、ウェル115のアレイを有する細胞培養装置の一部の上面図である。図5Bは、図5Cに示された垂直線119に沿ったウェル115の断面図である。図5Dは、ウェル115のアレイを有する細胞培養装置の一部の再構成3D画像である。
【0048】
概して図3Aおよび2Bによる形状を有するウェル115の明視野顕微鏡画像が、それぞれ、図6Aおよび6Bに示されている。図6Aの顕微鏡画像は、図3Aに示されたような形状を有するウェルを通過した光を示している。図6Bの顕微鏡画像は、図2Bに示されたような形状を有するウェルを通過した光を示している。図3Aに示されたようなウェルの形状は、実質的に反射/偏向せず、それゆえ、図2Bに示されたような形状を有するウェルを横切る信号と比べて、全てのウェルに亘り比較的均一な信号を生じた。図6Bの顕微鏡画像に示されるように、図2Bに示されたような形状を有するウェルよりも、図3Aに示されたような形状を有するウェルについて、より多くの光が顕微鏡のカメラにより受光された(図6A参照)。言い換えると、図6Bのウェルの顕微鏡画像は、黒い環により示されるように、図6Aのウェルの顕微鏡画像よりも、より多くの光が散乱したことを示している。
【0049】
図7に示されるように、細胞培養装置700は貯留部725を備えることがある。この貯留部は、底部705および囲い側壁720を有することがある。底部705は複数のウェル715により画成されることがある。各ウェル715は、ここに記載されたウェルと同様の特徴を有することがある(図1、3A、および3Bを参照のこと)。
【0050】
いくつかの実施の形態において、ウェルの外面は、高解像度顕微鏡(例えば、明視野、蛍光、共焦点、または他の顕微鏡撮像方式)で見た場合、回折限界撮像性能に関するレイトレーシングにより最適化される。例えば、図2Aおよび2Bを参照すると、外面214は、レイトレーシングにより最適化される。
【0051】
この手法を説明するために、ポリスチレン製ウェルの内面は、半径が500マイクロメートルであり、中心の厚さが150マイクロメートルである半球であることがある。スフェロイドの直径は300マイクロメートルであることがあり、対物レンズの開口数が0.4である20倍の顕微鏡が使用される。スフェロイドの位置に亘り数多くの画像点、例えば、中心、中心から50マイクロメートル、中心から100マイクロメートル、および中心から150マイクロメートルがある。そのような場合、撮影されたほとんどの画像は最適以下になる。スポット図を、異なる照射野の位置から生成することができ、画像品質を評価するために、画像面で回折限界エアリーサークルと比較することができる。外面が、図2Bに示されるように平らである場合、照射野を横切るスポット直径は、回折限界よりも数倍大きく、不十分な画像品質を示す。ウェルが均一な厚さを有する場合、画像品質は、先の場合よりも著しく良好である。しかしながら、回折限界撮像性能は、中心の50マイクロメートルの半径内でほとんど達成されない。この視野の外では、非点収差により画像品質が劣化してしまう。しかしながら、外面の曲率半径を0.518mmに最適化することにより、画像品質は、全スフェロイド直径に亘り回折限界性能を達成できるが、少量の歪みおよび非点収差がまだ存在する。画像品質をさらに最適化するために、非球面外面が使用される。曲率半径がR=0.682mmであり、コーニック定数がK=-3.09である場合、関心のある全視野に亘り残留収差および歪みが除去される。コーニック表面は以下により与えられる:
【0052】
【数1】
【0053】
回折限界性能は、スフェロイドの全体積においても維持される。これにより、スフェロイド内のどの位置においても高解像度共焦点撮像が可能になる。実際の倍率は、表面の屈折効果のために、21.5倍である。
【0054】
いくつかの実施の形態において、入れ子式ウェルが使用され、それにより、第1のウェルまたはウェルの層が、第2のウェルまたはウェルの層の上に存在する。各ウェルのウェル側壁は、ウェルの2つ以上の層を通過する光が元の光に対して実質的に平行なままであるように選択される。
【0055】
ここに記載されたようなウェルを有する細胞培養装置を製造するために、どの適切なプロセスを使用しても差し支えない。例えば、基体を成形して、ウェルまたは構造化表面を形成することができたり、基体フイルムにエンボス加工して、ウェルまたは構造化表面を形成することができたりする。いくつかの実施の形態において、変形プロセスを使用して、ここに記載されたようなウェルを製造する。
【0056】
例えば、図8を参照すると、ウェルを製造するための変形プロセスの概略側面図が示されている。例えば、図8は、薄壁ウェルを製造するための高温エンボス加工およびフイルム変形プロセス800を示している。このプロセスは、薄いフイルム820を使用し、成形型830に入れるために薄いフイルム820に熱および圧力810を印加する。薄いフイルム820は、ウェルの異なる部分に帰属する所定の厚さとなる特定の厚さを有することがある。例えば、高温エンボス加工およびフイルム変形のプロセスを経た後の70マイクロメートルの薄いフイルムは、ウェルの底部とウェルの上部で25マイクロメートルの均一な厚さを有することがある。この結果は、光屈折を十分に補正できる、図3Aに示されたウェルと似ている。その結果、高温エンボス加工およびフイルム変形プロセスをウェルの製造中に能動的に制御して、図3A~3Bのものと十分に似た、光屈折を補正するウェルが形成されるであろう。このウェル製造プロセスを、平面構造で、またはロール・ツー・ロールプロセスとして実施してもよい。
【0057】
ここに記載されたようなウェルまたは構造化表面を有する細胞培養装置は、どのような適切な材料から形成しても差し支えない。細胞または培地と接触することが意図されている材料が、その細胞および培地に適合していることが好ましい。典型的に、細胞培養構成要素(例えば、壁)は、高分子材料から形成される。適切な高分子材料の例としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリスチレン共重合体、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンブタジエン共重合体、完全に水素化されたスチレン重合体、ポリカーボネートPDMS共重合体、並びにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン共重合体および環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン等が挙げられる。
【0058】
スフェロイドなどの三次元で培養された細胞は、単層などの二次元で培養されたそれらの対応物よりも、インビボ様機能性を示すことができる。二次元の細胞培養システムにおいて、細胞は、それらが培養される基体に接着し得る。しかしながら、スフェロイドなどの細胞が三次元で増殖する場合、それらの細胞は、基体に接着するよりもむしろ、互いに相互作用する。三次元で培養される細胞は、細胞間のやり取りおよび細胞外基質の開発の観点から、インビボ組織により密接に似ている。それゆえ、スフェロイドは、細胞移動、分化、生存、および増殖に関する優れたモデルを提供し、したがって、研究、診断、並びに薬効、薬理学、および毒性試験のためのより良好なシステムを提供する。
【0059】
いくつかの実施の形態において、前記装置は、その装置内で培養される細胞がスフェロイドを形成するように構成される。例えば、中で細胞が増殖するウェルは、細胞に対して非接着性であり、ウェル内の細胞を互いに結合させ、球体を形成させることができる。そのスフェロイドは、ウェルの形状により課せられるサイズ限界まで拡大する。いくつかの実施の形態において、それらのウェルは、そのウェルを細胞に対して非接着性にするために超低結合材料で被覆される。
【0060】
非接着性材料の例としては、過フッ素化高分子、オレフィン、または同様の高分子、もしくはそれらの混合物が挙げられる。他の例には、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ハイドロゲル、ポリエチレンオキシドなどのポリエーテル、およびポリビニルアルコールなどのポリオール、または同様の材料もしくはそれらの混合物がある。例えば、非接着性ウェル、ウェル形状(例えば、サイズと形)、および/または重力の組合せにより、ウェル内で培養される細胞のスフェロイドへの自己集合が誘発される。あるスフェロイドは、単層中で増殖した細胞に対して、よりインビボ様応答を示す、分化細胞機能を維持する。間葉間質細胞などの他の細胞種類は、スフェロイドとして培養された場合、それらの多能性を維持する。
【0061】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたシステム、装置、および方法は、1種類以上の細胞を含む。いくつかの実施の形態において、その細胞は凍結保存されている。いくつかの実施の形態において、その細胞は三次元培養される。そのようないくつかの実施の形態において、前記システム、装置、および方法は、1種類以上のスフェロイドを含む。いくつかの実施の形態において、その細胞の1種類以上は積極的に分割している。いくつかの実施の形態において、前記システム、装置、および方法は、培地(例えば、栄養素(例えば、タンパク質、ペプチド、アミノ酸)、エネルギー(例えば、炭水化物)、必須金属およびミネラル(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、リン酸塩、硫酸塩)、緩衝剤(例えば、リン酸塩、酢酸塩)、pH変化の指示薬(例えば、フェノールレッド、ブロモクレゾールパープル)、選択剤(例えば、化学薬品、抗菌剤)など)を含む。いくつかの実施の形態において、1種類以上の試験化合物(例えば、薬剤)が、そのシステム、装置、および方法に含まれる。
【0062】
多種多様な細胞種類が培養されるであろう。いくつかの実施の形態において、スフェロイドは、ただ1つの細胞種類を含有する。いくつかの実施の形態において、スフェロイドは、複数の細胞種類を含有する。いくつかの実施の形態において、複数の細胞種類を増殖させる場合、各スフェロイドは同じ種類のものであり、一方で、他の実施の形態において、2種類以上の異なる種類のスフェロイドを増殖させる。スフェロイド中で増殖する細胞は、天然細胞または変性細胞(例えば、1つ以上の非天然遺伝子変化を含む細胞)であってよい。いくつかの実施の形態において、細胞は体細胞である。いくつかの実施の形態において、細胞は、任意の所望の分化状態(例えば、多能性、多分化能、運命決定、不死化など)にある幹細胞または前駆細胞(例えば、胚幹細胞、誘導多能性幹細胞)である。いくつかの実施の形態において、細胞は、疾患細胞または疾患モデル細胞である。例えば、いくつかの実施の形態において、スフェロイドは、1種類以上の癌細胞または高増殖状態に誘起できる細胞(例えば、形質転換細胞)を含む。細胞は、以下に限られないが、副腎、膀胱、血管、骨、骨髄、脳、軟骨、頚部、角膜、子宮内膜、食道、胃腸、免疫系(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、白血球、マクロファージ、および樹枝状細胞)、肝臓、肺、リンパ管、筋肉(例えば、心筋)、神経、卵巣、膵臓(例えば、島細胞)、下垂体、前立腺、腎臓、唾液、皮膚、腱、精巣、および甲状腺を含む、どのような所望の組織または器官種類からのものであっても、もしくはそれに由来してもよい。いくつかの実施の形態において、細胞は哺乳類細胞(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヤギ、ウマなど)である。
【0063】
培養された細胞には、多種多様の研究、診断、薬剤スクリーニングおよび試験、治療、および工業的利用に用途が見出されている。
【0064】
いくつかの実施の形態において、前記細胞は、タンパク質またはウイルスの産生のために使用される。多数のスフェロイドを並行して培養するシステム、装置、および方法は、タンパク質産生にとって特に効果的である。三次元培養により、細胞密度を増加させ、細胞増殖表面積の平方センチメートル当たりのタンパク質収量を高めることができる。ワクチン生産のためのどの所望のタンパク質またはウイルスを、細胞中で増殖させ、要求通りの使用のために単離または精製してもよい。いくつかの実施の形態において、そのタンパク質はその細胞に対して天然タンパク質である。いくつかの実施の形態において、そのタンパク質は非天然である。いくつかの実施の形態において、そのタンパク質は組換え的に発現される。そのタンパク質が非天然プロモーターを使用して過剰発現されることが好ましい。そのタンパク質は融合タンパク質として発現されることがある。いくつかの実施の形態において、精製または検出タグが、その精製および/または検出を容易にするために、関心のあるタンパク質に対する融合パートナーとして発現される。いくつかの実施の形態において、精製後に融合パートナーの分離を可能にするために、融合は、開裂可能なリンカーと共に発現される。
【0065】
いくつかの実施の形態において、前記タンパク質は治療用タンパク質である。そのようなタンパク質としては、以下に限られないが、欠損または異常(例えば、インスリン)である、既存の経路(例えば、阻害剤または作動物質)を増強する、新規の機能または活性を提供する、分子または微生物を妨げる、もしくは他の化合物またはタンパク質(例えば、放射性核種、細胞毒性薬、エフェクター・タンパク質など)を送達するタンパク質を置き換えるタンパク質およびペプチドが挙げられる。いくつかの実施の形態において、そのタンパク質は、任意の種類(例えば、ヒト化、二重特異性、多特異的、など)の抗体(例えば、モノクローナル抗体)などのイムノグロブリンである。治療用タンパク質の部類としては、以下に限られないが、抗体に基づいた薬剤、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、抗原、血液因子、骨形態形成タンパク質、改変タンパク質の骨組み、酵素、成長因子、ホルモン、インターフェロン、インターロイキン、および血栓溶解剤が挙げられる。治療用タンパク質を使用して、癌、免疫疾患、代謝異常、継承された遺伝性疾患、感染、および他の疾病および症状を予防するまたは治療してもよい。
【0066】
いくつかの実施の形態において、前記タンパク質は診断用タンパク質である。診断用タンパク質としては、以下に限られないが、抗体、親和結合パートナー(例えば、受容体結合リガンド)、阻害剤、拮抗薬などが挙げられる。いくつかの実施の形態において、その診断用タンパク質は、検出可能な部分(例えば、蛍光部分、発光部分(例えば、ルシフェラーゼ)、発色部分など)と共に発現されるか、または検出可能な部分である。
【0067】
いくつかの実施の形態において、前記タンパク質は工業用タンパク質である。工業用タンパク質としては、以下に限られないが、食品成分、工業用酵素、農業用タンパク質、分析用酵素などが挙げられる。
【0068】
いくつかの実施の形態において、前記細胞は、創薬、特徴付け、有効性試験、および毒性試験に使用される。そのような試験としては、以下に限られないが、薬理的効果の評価、発癌性評価、医用造影剤特徴評価、半減期評価、放射線安全性評価、遺伝毒性試験、免疫毒性試験、生殖および発達試験、薬物間相互作用評価、線量評価、吸着評価、処分評価、代謝評価、排出研究などが挙げられる。特異的細胞種類を特定の試験(例えば、肝臓毒性に関する肝細胞、腎臓毒性に関する腎近位尿細管上皮細胞、血管毒性に関する血管内皮細胞、神経毒性に関する神経細胞およびグリア細胞、心臓毒性に関する心筋細胞、横紋筋融解症に関する骨格筋細胞など)に使用してよい。治療された細胞を、以下に限られないが、膜完全性、細胞内代謝物含有量、ミトコンドリア機能、リソソーム機能、アポトーシス、遺伝子変化、遺伝子発現差などを含むいくつの所望のパラメータについて評価してもよい。
【0069】
いくつかの実施の形態において、前記細胞培養装置は、より大型のシステムの構成部材である。いくつかの実施の形態において、そのシステムは、そのような細胞培養装置を複数(例えば、2、3、4、5、・・・、10、・・・、20、・・・、50、・・・、100、・・・、1000など)備えている。いくつかの実施の形態において、そのシステムは、最適培養条件(例えば、温度、気圧、湿度など)で培養装置を維持するためのインキュベータを備えている。いくつかの実施の形態において、そのシステムは、細胞を撮像するまたは他の様式で分析するための検出器を備えている。そのような検出器としては、以下に限られないが、蛍光光度計、照度計、カメラ、顕微鏡、プレート・リーダー(例えば、PERKIN ELMER ENVISIONプレート・リーダー;PERKIN ELMER VIEWLUXプレート・リーダー)、細胞分析装置(例えば、GE IN Cell Analyzer 2000および2200;THERMO/CELLOMICS CELLNSIGHT High Content Screening Platform)、および共焦点撮像システム(例えば、PERKIN ELMER OPERAPHENIXハイスループットコンテントスクリーニングシステム; GE INCELL 6000 Cell Imaging System)が挙げられる。いくつかの実施の形態において、そのシステムは、培地または他の成分を、培養される細胞に供給する、補給する、循環させるためのかん流システムまたは他の構成要素を備えている。いくつかの実施の形態において、そのシステムは、培養装置の取扱い、使用、および/または分析を自動化するためのロボット構成要素(例えば、ピペット、アーム、プレート・ムーバーなど)を備えている。
【0070】
ここに使用した全ての科学用語および技術用語は、特に明記のない限り、当該技術分野で一般に使用される意味を持つ。ここに与えられた定義は、ここに頻繁に使用される特定の用語の理解を促進するためであり、本開示の範囲を限定する意図はない。
【0071】
ここに用いたように、名詞は、特に明記のない限り、複数の対象を指す。それゆえ、例えば、「構造化底面」は、特に明記のない限り、そのような「構造化底面」を2つ以上有する例を含む。
【0072】
本明細書および付随する特許請求の範囲に使用されているように、「または」という用語は、特に明記のない限り、「および/または」を含む意味で一般に使用されている。「および/または」という用語は、列挙された要素の内の1つまたは全て、もしくは列挙された要素のいずれか2つ以上の組合せを意味する。
【0073】
ここに用いたように、「持つ」、「有する」、「含む」、「備える」などは、制約のない包括的な意味で使用され、概して、「含むが、それに限られない」ことを意味する。
【0074】
「随意的な」または「必要に応じて」は、その後に記載された事象、状況、または構成要素が、生じ得るまたは生じ得ないことを意味し、その記載が、その事象、状況、または構成要素が生じる場合と、生じない場合を含むことを意味する。
【0075】
「好ましい」および「好ましくは」という単語は、特定の状況下で特定の恩恵を提供するであろう、本開示の実施の形態を指す。しかしながら、同じまたは他の状況下で、他の実施の形態が好ましいこともある。さらに、1つ以上の好ましい実施の形態の列挙は、他の実施の形態が有用ではないことを意味せず、本発明の技術の範囲から他の実施の形態を排除する意図はない。
【0076】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値まで、とここに表現され得る。そのような範囲が表現された場合、例は、その1つの特定の値から、および/または他方の特定の値まで、を含む。同様に、値が、先行詞「約」の使用により、近似として表現される場合、特定の値は別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各端点は、他の端点に関してと、他の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0077】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に含まれる全ての数字を含む(例えば、1から5は、1,1.5、2、2.75、3、3.80、4、5など)。値の範囲が、たとえば、特定の値「より大きい」、「未満」などである場合、その値は、その範囲に含まれる。
【0078】
「天」、「底」、「左」、「右」、「上部」、「下部」、「上」、「下」並びに他の方向および向きなどのここに称されるどの方向も、図面に関する明瞭さのためにここに記載され、実際の装置またはシステム、若しくはその装置またはシステムの使用を制限するものではない。ここに記載された装置、物品またはシステムの多くは、多数の方向および向きで使用してよい。細胞培養装置に関してここに記載される方向の記述語は、しばしば、その装置が、装置内で細胞を培養する目的のために向けられたときの方向を指す。
【0079】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とすると解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程が従うべき順序を実際に列挙していない、または工程が特定の順序に限定されることが請求項または記載に他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も推測されることは決して意図されていない。いずれか1つの請求項においてどの列挙された1つまたは多数の特徴または態様も、どの他の請求項におけるどの他の列挙された特徴または態様と組み合わせても、並べ替えられても差し支えない。
【0080】
ここでの列挙は、特定の様式で機能するように「構成」または「適用」されている構成要素を指すことも留意のこと。この点に関して、そのような構成要素は、そのような列挙が、目的とする使用の列挙とは異なり、構造的列挙である場合、特定の性質を具体化する、または特定の様式で機能するように「構成」または「適用」されている。より詳しくは、構成要素が「構成」または「適用」される様式のここでの列挙は、その構成要素の既存の物理的条件を示し、それゆえ、その構成要素の構造的特徴の明白な列挙として解釈すべきである。
【0081】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、移行句「含む」を使用して開示されることがあるが、移行句「からなる」または「から実質的になる」を使用して記載されることのあるものを含む代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、構造化底面、1つ以上の側壁、上部およびポートを含む細胞培養装置に対して暗示される代わりの実施の形態は、細胞培養装置が構造化底面、1つ以上の側壁、上部およびポートからなる実施の形態、並びに細胞培養装置が構造化底面、1つ以上の側壁、上部およびポートから実質的になる実施の形態を含む。
【0082】
本開示の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の技術に対して様々な改変および変更が行えることが、当業者に明白であろう。本発明の技術の精神および実体を含む開示の実施の形態の改変、組合せ、下位の組合せ、および変更が、当業者に想起されるであろうから、本発明の技術は、付随の特許請求の範囲およびその同等物の範囲に全てを含むと解釈されるべきである。
【0083】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0084】
実施形態1
細胞培養装置において、
ウェルを画成する基体であって、該ウェルが、内面、外面、上部開口および天底を画成し、該基体は、前記内面と前記外面の間の厚さを規定し、前記天底に近接した該基体の厚さは、前記上部開口に近接した該基体の厚さ以上である、基体、
を備えた細胞培養装置。
【0085】
実施形態2
前記天底に近接した前記基体の厚さが、前記上部開口に近接した該基体の厚さより大きい、実施形態1に記載の細胞培養装置。
【0086】
実施形態3
前記基体の厚さが、前記上部開口に近接したところから前記天底に近接したところまで連続的に増加する、実施形態2に記載の細胞培養装置。
【0087】
実施形態4
前記天底に近接した前記基体の厚さが、前記上部開口に近接した該基体の厚さと等しい、実施形態1に記載の細胞培養装置。
【0088】
実施形態5
前記基体の厚さが、前記上部開口に近接したところから前記天底に近接したところまで一定のままである、実施形態4に記載の細胞培養装置。
【0089】
実施形態6
前記ウェルが前記天底と前記上部開口の中心との間に軸を規定し、該ウェルが該軸の周りに回転対称である、実施形態1から5いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0090】
実施形態7
前記上部開口が該上部開口に亘る距離を規定し、該上部開口に亘る距離が100マイクロメートルから3000マイクロメートルの範囲にある、実施形態1から6いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0091】
実施形態8
前記上部開口に近接したところから前記天底に近接したところまでのどの位置の前記基体の厚さも、10マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にある、実施形態1から7いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0092】
実施形態9
前記内面が半球形状により画成され、該半球形状が、50マイクロメートルから1500マイクロメートルの範囲の半径を規定する、実施形態1から8いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0093】
実施形態10
前記基体がポリスチレンから作られている、実施形態1から9いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0094】
実施形態11
前記外面が光を、前記ウェルが細胞培養培地を収容するときに前記内面により前記光が受光される方向に対して実質的に平行に透過させるように構成されている、実施形態1から10いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0095】
実施形態12
前記内面の形状および前記外面の形状が、前記ウェルが細胞培養培地を収容するときに、それらの間を通過する光の屈折を最小にするように構成されている、実施形態1から11いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0096】
実施形態13
前記ウェルが細胞に対して非接着性である、実施形態1から12いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0097】
実施形態14
前記内面が、その中で培養される細胞がスフェロイドを形成するように構成されている、実施形態1から13いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0098】
実施形態15
細胞培養装置において、
底部および囲い側壁を有する貯留部であって、該底部は複数のウェルにより画成され、該複数のウェルの各ウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、該ウェルは、前記内面と前記外面の間の厚さを規定し、前記天底に近接した該ウェルの厚さは、前記上部開口に近接した該ウェルの厚さ以上である、貯留部、
を備えた細胞培養装置。
【0099】
実施形態16
細胞培養装置において、
ウェルを画成する基体であって、該ウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、該基体は、前記内面と前記外面の間の厚さを規定し、該厚さは、前記ウェルが水性組成物を収容するときに、該内面に入り該外面から出る光の屈折を補正するように構成されている、基体、
を備えた細胞培養装置。
【0100】
実施形態17
細胞培養装置において、
ウェルを画成する基体であって、該ウェルは、内面、外面、上部開口および天底を画成し、前記外面の形状は、前記内面に入り該外面から出る光の屈折を補正するように構成されている、基体、
を備えた細胞培養装置。
【0101】
実施形態18
前記外面が、前記内面の半径より大きい曲率半径を有する、実施形態1から17いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0102】
実施形態19
前記外面が非球面外面を有する、実施形態1から18いずれか1つに記載の細胞培養装置。
【0103】
実施形態20
スフェロイドを増殖させるための、実施形態1から19いずれか1つに記載の細胞培養装置の使用。
【0104】
実施形態21
前記ウェル内で細胞を撮像するための、実施形態1から19いずれか1つに記載の細胞培養装置の使用。
【0105】
実施形態22
前記細胞がスフェロイド内にある、実施形態21に記載の使用。
【符号の説明】
【0106】
100、700 細胞培養装置
110、210 基体
114、214 外面
115、200、715 ウェル
116、216 天底
118、218 上部開口
120、220 内面
121、221 上縁
201 内面に入射する光
202 外面から出射する光
705 底部
720 囲い側壁
725 貯留部
800 高温エンボス加工およびフイルム変形プロセス
810 熱および圧力
820 フイルム
830 成形型
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8