(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054375
(43)【公開日】2023-04-13
(54)【発明の名称】能力と安全性が増強された組成物および抗菌合成カチオン性ポリペプチド類を局所的に適用する使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230406BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20230406BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230406BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230406BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230406BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230406BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230406BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P31/02
A61P31/04
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/10
A61P43/00 121
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028902
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2019554855の分割
【原出願日】2018-04-05
(31)【優先権主張番号】62/482,630
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514241663
【氏名又は名称】アミクローブ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベヴィラックア,マイケル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルーカー,ダグ
(57)【要約】
【課題】局所的な組織毒性のリスクが低くおよび/または全身性/遠隔器官毒性のリスクが低い抗菌医薬組成物を提供する。
【解決手段】抗菌医薬組成物は、局所組織毒性のリスクが低くおよび/または全身性/遠隔器官毒性のリスクが低いが抗菌有効性を提供する用量の、生体内への局所適用が可能なように処方される。各種実施例において抗菌医薬組成物は、水性キャリアに分散され、所望の程度のポリマー自己組織化および/または組成物の粘度を達成するよう処方される抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む。
【選択図】
図32
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌医薬組成物であって、前記抗菌医薬組成物は:
水性キャリア;および
前記抗菌医薬組成物の全重量に対して約0.01重量%~5重量%の濃度で前記水性キャリアに分散された抗菌合成カチオン性ポリペプチド
を含み;
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、複数の中性pHで正電荷を帯びたアミノ酸ユニットを含み;
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中2重量%濃度で、37℃で2センチストークス(cSt)以上の粘度を有し;
2重量%の前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含むときの前記水性キャリアは、37℃で、前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドの代わりに2重量%のアルブミンを含むときの前記水性キャリアの粘度より大きい粘度を有し;
前記抗菌医薬組成物は、複数の健康で、若齢の成体マウスの腹腔内に10mL/kgの投与量で注入された後、72時間での50%以上マウス生存率で測定すると、毒性が低い、
抗菌医薬組成物。
【請求項2】
前記複数の中性pHで正電荷を帯びたアミノ酸ユニットは、少なくとも10である、請求項1に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項3】
前記水性キャリアは、水または薬理学的に許容される塩の水溶液である、請求項1または2に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項4】
前記水性キャリアは、非イオン性添加物をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項5】
前記非イオン性添加物は、前記抗菌医薬組成物の浸透圧濃度を前記添加物がない前記抗菌医薬組成物の濃度より少なくとも10%大きい値に上昇させるのに効果的な量で存在する、請求項4に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項6】
前記非イオン性添加物は、ブドウ糖、マンニトール、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、界面活性剤類およびその組み合わせからなる群より選択される、請求項4または5に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項7】
前記水性キャリアは、前記抗菌医薬組成物の前記粘度を増加する量の添加物をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項8】
前記水性キャリアは、前記抗菌医薬組成物の前記粘度を減少する量の添加物をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項9】
前記抗菌医薬組成物は、前記滅菌技術によって滅菌されていない前記抗菌医薬組成物の前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドのものと同等である重量平均分子量を有する前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドを有する滅菌された抗菌医薬組成物を実現するよう構成された前記滅菌技術によって滅菌される、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項10】
前記抗菌医薬組成物は、前記滅菌技術によって滅菌されていない前記抗菌医薬組成物の前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドのものと同等である重量平均分子量および分散度を
有する前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドを有する滅菌された抗菌医薬組成物を実現するよう構成された前記滅菌技術によって滅菌される、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項11】
前記抗菌医薬組成物は、前記滅菌技術によって滅菌されていない前記抗菌医薬組成物のものと同等である37℃での粘度レベルを有する滅菌された抗菌医薬組成物を実現するよう構成された前記滅菌技術によって滅菌される、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物
【請求項12】
前記滅菌された抗菌医薬組成物の37℃での粘度は、他の点では同等な滅菌されていない抗菌医薬組成物の粘度の20%~200%である、請求項11に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項13】
前記抗菌医薬組成物は、前記他の点では同等な滅菌されていない抗菌医薬組成物のそれと同等な殺菌活性を有し、前記殺菌活性は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌に対する60分間タイムキルアッセイにより測定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項14】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、複数の疎水性アミノ酸ユニットをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項15】
前記複数の疎水性アミノ酸ユニットは、ロイシン(L)、イソロイシン(l)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)またはアラニン(A)から選択される少なくとも5個の疎水性アミノ酸ユニットを含む、請求項14に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項16】
前記複数の疎水性アミノ酸ユニットは、ロイシン(L)、イソロイシン(l)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)またはアラニン(A)から選択される少なくとも10個の疎水性アミノ酸ユニットを含む、請求項14に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項17】
前記複数の疎水性アミノ酸ユニットは、ロイシン(L)、イソロイシン(l)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)またはアラニン(A)から選択される少なくとも15個の疎水性アミノ酸ユニットを含む、請求項14に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項18】
前記疎水性アミノ酸ユニットは、ロイシンユニットを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項19】
前記複数の正電荷を帯びたアミノ酸ユニットは、リジンユニットを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項20】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、疎水性ロイシンユニットおよび正電荷を帯びたリジンユニットを含むブロックコポリペプチドである、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項21】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、少なくとも40個のアミノ酸ユニットを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項22】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドが多量体構造に自己組織化するのを促進するよう構成された疎水性アミノ酸ユニットと正電荷を
帯びたアミノ酸ユニットの配列配置を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項23】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中37℃で1000μg/mL未満である臨界凝集濃度で測定すると、多量体構造に自己組織化する、請求項22に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項24】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中37℃3重量%濃度で、自立式ハイドロゲルを形成する、請求項1~23のいずれか一項の抗菌医薬組成物。
【請求項25】
前記抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中37℃1重量%濃度で、脱イオン水単独と比較して少なくとも10%表面張力の減少を測定すると、界面活性力を呈する、請求項1~24のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項26】
抗炎症化合物をさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項27】
前記抗炎症化合物は、コルチコステロイド、ヒスタミン阻害剤およびサイトカイン阻害剤からなる群より選択される、請求項26に記載の抗菌医薬組成物。
【請求項28】
無傷の、健康な皮膚以外の組織が微生物汚染されるのを防止する方法であって、前記方法が:
微生物汚染されるリスクがある無傷の、健康な皮膚以外の組織部位を有する哺乳類対象を同定するステップ;および
請求項1~27のいずれか一項に記載の前記抗菌医薬組成物を前記部位に、前記組織部位が微生物で汚染されることから少なくとも部分的に保護するのに効果的な量で投与するステップ
を含む、方法。
【請求項29】
前記組織部位は、患部皮膚、手術部位、外傷性創傷、郭清組織、腹腔、肺気道、洞および尿路から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記組織部位を採取して前記微生物負荷を評価するステップをさらに含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗菌医薬組成物は、手術部位に手術中に投与される、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗菌医薬組成物は、前記組織部位に大量に投与される、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
無傷の、健康な皮膚以外の組織内または組織上の微生物負荷を低減する方法であって、前記方法が:
微生物負荷がある無傷の、健康な皮膚以外の組織部位を有する哺乳類対象を同定するステップ;および
請求項1~27のいずれか一項に記載の前記抗菌医薬組成物を前記組織部位に前記微生物負荷を少なくとも部分的に低減するのに効果的な量で投与するステップ
を含む、方法。
【請求項34】
前記組織部位は、患部皮膚、手術部位、外傷性創傷、郭清組織、膿瘍、腹腔、肺気道、洞および尿路から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記組織部位を採取して前記微生物負荷を評価するステップをさらに含む、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗菌医薬組成物は、微生物によって汚染された、感染されたまたは両者である組織部位に手術中に投与される、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗菌医薬組成物は、前記組織部位に大量に投与される、請求項33~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連する出願の情報>
本出願は、2017年4月6日出願の米国特許仮出願第62/482,630号の優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に参照によって組み入れられる。
【0002】
この開示は、カチオン性抗菌薬を含む抗菌医薬組成物およびそれらを感染を防止および/または治療するために使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
消毒薬および抗生物質を含む、局所的に適用される抗菌薬は、感染を防止および治療する有効性を実現しそこなうことがよくあり、その結果大幅な患者の罹患率および死亡率を生じる。特定の使用(特定の組織に対する適用を含む)および用量(濃度、容積、適用数)は、1つ以上の毒性リスクにより制限されうる。そのような毒性に関して懸念すると、特定の病態生理学的状況において不十分な用量で臨床適用したり、完全に使用を回避したりすることになる
【0004】
多種多様なカチオン性抗菌薬は、それらが細菌の膜に結合して破壊できることが知られており、特定の抗生物質、ビスビグアナイド、ポリマービグアナイド、第四級アンモニウム化合物、天然の抗菌ぺプチドおよび合成カチオン性ポリペプチドを含む。しかしながら、哺乳類の毒性は、一貫して問題のままである。
【0005】
米国特許第9,017,730号は、様々な比率のカチオン性アミノ酸反復ユニット(リジン(K)など)および疎水性アミノ酸ユニット(ロイシン(L)、イソロイシン(l)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)またはアラニン(A)など)を含む合成カチオン性コポリペプチドを記載する。米国特許第9,017,730号は、カチオン性アミノ酸の伸長および疎水性アミノ酸の伸長を含むセグメント化されたまたはブロック構造は、生体外細胞毒性アッセイで測定すると、哺乳類細胞との適合性を改善することができることを示す。さらに、米国特許第9,017,730号は、選択されたカチオン性ブロックコポリペプチドをエマルションへ取り込むと、細胞毒性アッセイで測定すると、生体外で哺乳類細胞との適合性を改善することができることを示す。米国特許第9,017,730号は、多くの合成カチオン性コポリペプチド製剤の局所適用を記載するけれども、これらの製品を生体内で使用することに起因しうる毒性の証拠を提供しない。
【0006】
米国特許第9,446,090号は、合成カチオン性ポリペプチドを、そのようなポリペプチおよび第2の薬理学的に許容されるポリマーを含む相互に水混和性な混合物と共に記載する。具体的な例は、合成カチオン性ポリペプチドとポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)およびポロクサマー407などの第2のポリマーの特定の混合物を使用する特定の細菌に対する抗菌活性を記載する。第2のポリマー単独では大幅な抗菌活性を有することは知られていなかったにもかかわらず、データから、混合物中に第2のポリマーを加えても生体外での合成カチオン性ポリペプチドの抗菌活性が維持され、ある場合には生体内の全体の抗菌能力を増強することが示された。しかしながら、米国特許第9,446,090号は、合成カチオン性ポリペプチドと他の薬理学的に許容されるポリマーのこれらの混合物を生体内で使用することに起因しうる毒性の証拠を提供しない。さらに、それは第2のポリマーが、合成カチオン性ポリペプチドと比較して、混合物の毒性を増加し得る可能性を残す。
【0007】
米国特許第9,017,730号および同第9,446,090号は、従来技術の著しい進歩を記載するが、多くの課題が、特に生体内で高い有効性と高い安全性の両者を有する局所適用されるカチオン性抗菌薬の薬理学的に許容される製品の開発に関しては、残っている。
【発明の概要】
【0008】
我々は、カチオン性抗菌医薬組成物および用量で生体内に局所適用を許容する使用方法を開発し、それは局所的な組織毒性のリスクが低くおよび/または全身性/遠隔器官毒性のリスクが低い抗菌有効性を提供する。
【0009】
本発明を開発する中で、我々は、カチオン性抗菌薬を生体内に局所適用した後の毒性リスクは、組織部位に大量に適用された時期、または健康で無傷な皮膚以外の、病態生理学的状況に特に関連があることが分かった。そのような部位および病態生理学的状況は、開放創、身体の腔、身体の開口部、患部皮膚および他のものを含みうる。これらの組織部位および病態生理学的状況は、より高い局所的な感受性および/またはより高い吸収および局所的に適用された抗菌薬または賦形剤の全身の分布を、健康で、無傷な皮膚と比較して証明しうる。より大きな局所的な組織毒性とより大きな全身性/遠隔器官毒性が続きうる。
【0010】
さらに、我々は、本発明の開発を導くのに役立つ一連の発見をした。第1に、我々は、合成カチオン性ポリペプチド類の物資設計を変更すると生体内の抗菌有効性と毒性に対する効果に相違を生じさせることができることを発見した;第2に、我々は、合成カチオン性ポリペプチド類の処方を変更すると生体内の抗菌有効性と毒性に対する異なる効果に相違を生じさせることができることを発見した;第3に、我々は、合成カチオン性ポリペプチド類の製品を滅菌すると分子の完全性と生物物理学的特性に有害に影響し、従って抗菌有効性、毒性または両者に影響することができることを発見した。従って、我々は、解決策が見出された問題の組み合わせを発見した。
【0011】
各種実施形態において、医薬組成物および使用方法が提供され、それにより有効量の抗菌合成カチオン性ポリペプチド類を各種組織部位へおよび/または各種病態生理学的条件で局所的および/または全身性の毒性のリスクを低くして局所適用が許容される。本発明の範囲を制限するものではないが、各種実施形態において、これは以下のような(A)、(B)および(C)の1つ以上によって実現される:
【0012】
(A)水中での粘度が増加するのを促進するための抗菌合成カチオン性ポリペプチド類の設計、特に疎水性のものの含有量と配列配置。予想外に、この設計特性は生体内での安全性を増強することが分かった。
【0013】
(B)抗菌合成カチオン性ポリペプチド類を医薬組成物にそれらが粘度増強特性を提示することができるような方法で処方すること。本発明の範囲を制限するものではないが、この手法は組織の被覆度を改善するおよび/または保持時間を増強する効果を有すると考えられ、適用される用量に大きな有効性をもたらす。さらに、処方をそのように改善すると予想外にも安全性が増強されることが分かった。本発明の範囲を制限するものではないが、賦形剤は塩化ナトリウム、塩化カリウム、ブドウ糖、マンニトール、グリセロール、キシリトールおよびソルビトールなどの糖類および糖アルコール、および界面活性剤ならびにその組み合わせを含む。
【0014】
(C)医薬組成物を、滅菌された医薬組成物が滅菌されていない医薬組成物の粘度と同等な粘度を提示することができるような方法で滅菌すること。本発明の範囲を制限するものではないが、この手法は、抗菌合成カチオン性ポリペプチド類の分子構造および機能を
保護する、ならびに製品が抗菌合成カチオン性ポリペプチド類の効果に耐性を提示する特定の微生物生命体(例えば真菌皮膚糸状菌)によって汚染されるリスクを減少する効果を有すると考えられる。
【0015】
実施形態は抗菌医薬組成物であって、その抗菌医薬組成物は、水性キャリア;およびその抗菌医薬組成物の全重量に対して約0.01~5重量%の濃度で水性キャリアに分散された抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む。実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、複数の中性pHで正電荷を帯びたアミノ酸ユニットを含む。実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中2重量%濃度で、37℃で2センチストークス(cSt)以上の粘度を有する。実施形態において、2重量%の抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む水性キャリアは、37℃で抗菌合成カチオン性ポリペプチドの代わりに2重量%のアルブミンを含む水性キャリアの粘度より大きい粘度を有する。実施形態において、2重量%の抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む水性キャリアは、37℃で抗菌合成カチオン性ポリペプチドの代わりに2重量%のアルブミンを含む水性キャリアの粘度より少なくとも約20%大きい粘度を有する。実施形態において、2重量%の抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む水性キャリアは、37℃で抗菌合成カチオン性ポリペプチドの代わりに2重量%のアルブミンを含む水性キャリアの粘度より少なくとも約50%大きい粘度を有する。実施形態において、2重量%の抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む水性キャリアは、37℃で抗菌合成カチオン性ポリペプチドの代わりに2重量%のアルブミンを含む水性キャリアの粘度より少なくとも約50%大きい粘度を有する。実施形態において、2重量%のその抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む、その水性キャリアは、37℃でその抗菌合成カチオン性ポリペプチドの代わりに2重量%のアルブミンを含むその水性キャリアの粘度より少なくとも約100%大きい粘度を有する。実施形態において、その抗菌医薬組成物は、複数の健康で、若齢の成体マウスの腹腔内に10mL/kgの投与量で注入された後、72時間での50%以上マウス生存率で測定すると、毒性が低い。
【0016】
他の実施形態は、無傷の、健康な皮膚以外の組織が微生物汚染されるのを防止する方法であって、その方法は:微生物汚染されるリスクがある無傷の、健康な皮膚以外の組織部位を有する哺乳類対象を同定するステップ;および本明細書に記載される抗菌医薬組成物をその部位に、その組織部位が微生物で汚染されることから少なくとも部分的に保護するのに効果的な量で投与するステップを含む、方法を提供する。
【0017】
他の実施形態は、無傷の、健康な皮膚以外の組織内または上の微生物負荷を低減する方法であって、その方法は:微生物負荷がある無傷の、健康な皮膚以外の組織部位を有する哺乳類対象を同定するステップ;および本明細書に記載される抗菌医薬組成物をその組織部位にその微生物負荷を少なくとも部分的に低減するのに効果的な量で投与するステップを含む、方法を提供する。
【0018】
これらおよび他の実施形態は、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】各種アミノ酸の配列配置を有する合成カチオン性ポリペプチドの略図。特定の配置は、ブロックまたはセグメントとして参照されうる。
【
図2】合成カチオン性ポリペプチドは、カチオン性セグメントの長さ(アミノ酸ユニットの数)に基づいて3個のグループに分類される。
【
図3】合成カチオン性ポリペプチドの例は、グループ(I)長いカチオン性セグメント(200ユニット以上)ポリペプチド、(II)中間のカチオン性セグメント(100~199ユニット)ポリペプチド、および(III)短いカチオン性セグメント(10~99ユニット)ポリペプチドに分類される。カチオン性セグメントは、複数のカチオン性アミノ酸ユニットを含むが、完全にカチオン性アミノ酸ユニットからなる必要はない。疎水性セグメントは、複数の疎水性アミノ酸ユニットを含むが、完全に疎水性アミノ酸ユニットからなる必要はない。
【
図4】リジンおよびエナンチオピュアなL-ロイシンアミノ酸ユニットに基づくカチオン性―疎水性ブロック配列配置を有する例の合成カチオン性ポリペプチド。ポリペプチド製剤の平均全体鎖長はおよそ160アミノ酸ユニットである。ロイシンに対するリジンの比率、またはK:L比は、3.2であることが分かった。合成カチオン性ポリペプチドは、KL-160/3.2として指定される。サイズ排除クロマトグラフィーを用いた分析は、2個の注入に基づく2個の重なった曲線を呈する。分散度(D)=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)。
【
図5】リジンーエナンチオピュアなロイシンブロック構造とK:L比が3.2である約160の全体鎖長を有し、例のグループ2の(中間のカチオン性セグメント)合成カチオン性ポリペプチドの抗菌アッセイ。合成カチオン性ポリペプチドはKL-160/3.2と指定される。60分の生体外タイムキルアッセイを使用して黄色ブドウ球菌(S.aureus)(ATCC6538)、緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC27853)およびカンジダ・アルビカンス(C.albicans)(ATCC24433)に対する1.6μg/mL~100μg/mL(ロットBAC003)の異なる試料濃度での殺菌活性(log CFU減少)を決定した。
【
図6】各種微生物に対する合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2を用いた複数の抗菌タイムキルアッセイの要約。60分間タイムキルアッセイを100μg/mL濃度の合成カチオン性ポリペプチド(ロットBAC003)を用いて実行した。用語「100%」CFU減少は、微生物が検出されなかったことを示す。MDR=多剤耐性;ESBL=広域スペクトルのβ-ラクタマーゼ;KPC=K. pneumoniaeカルバペネマーゼ。太字=疾病対策予防センター(CDC)“最大の脅威;*臨床分離株、R.M.Alden Research Laboratory。
【
図7】リジンとラセミのD,L-ロイシンアミノ酸ユニットに基づくカチオン性―疎水性ブロック配列配置を有する例の合成カチオン性ポリペプチド。ポリペプチド製剤の全体平均鎖長は、約100アミノ酸ユニットである。ロイシンに対するリジンの比率、またはK:L比は、5.7であることが分かった。合成カチオン性ポリペプチドは、KrL-100/5.7と指定される。サイズ排除クロマトグラフィーを用いた分析は、2個の注入に基づく2個の重なった曲線を呈する。分散度(D)=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)。
【
図8】リジンーラセミのロイシンブロック構造とK:(rac-L)比が5.7である約100の全体鎖長を有し、例のグループ3の(短いカチオン性セグメント)合成カチオン性ポリペプチドの抗菌アッセイ。分子は、KrL-100/5.7と指定される。60分の生体外タイムキルアッセイを使用して重要な病原体に対する1.6μg/mL~100μg/mL(ロットBAC002)の異なる試料濃度での殺菌活性(log CFU減少)を決定した。
【
図9】各種微生物に対する合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7を用いた複数の抗菌タイムキルアッセイの要約。60分間タイムキルアッセイを100μg/mL濃度の合成カチオン性ポリペプチド(ロットBAC002)を用いて実行した。用語「100%」CFU減少は、微生物が検出されなかったことを示す。MDR=多剤耐性;ESBL=広域スペクトルのβ-ラクタマーゼ;KPC=K.pneumoniaeカルバペネマーゼ。太字=疾病対策予防センター(CDC)“最大の脅威;*臨床分離株、R.M.Alden Research Laboratory。
【
図10】ブロック配列配置を有する合成カチオン性ポリペプチドを、多量体構造に自己組織化するよう設計し、処方することができる。2個の例をここに描写する:KL-160/3.2を、繊維状構造に自己組織化してバリアハイドロゲルを形成するよう設計し、KrL-100/5.7をミセル状構造に自己組織化して界面活性特性を有するよう設計した。
【
図11】ピレン蛍光法によって測定される、各種合成カチオン性ポリペプチドの臨界凝集濃度(CAC)。
【
図12】表面張力法によって測定される、合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7(ロットBAC002)の臨界凝集濃度(CAC)。灰色は濃度全体の表面張力を描写し、黒色は2組の値についての最良適合ラインを描写する。CACをこのアッセイにおいて2個の最良適合ラインの公差により決定し、ここでは~100μg/mLで示される。
【
図13】(a)37℃でガラス毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)を使用して測定された水中1重量%での各種合成カチオン性ポリペプチドの動粘度。(b)KrL-100/5.7(ロットBAC002)対ウシ血清アルブミンの動粘度;水が参照として提供される。データから、これらの濃度でのアルブミンは、水性製剤の粘度にほとんど影響しないことが示される。
【
図14】37℃でガラス毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)を使用して測定された水中0.5重量%でのリジンーL-ロイシンブロック配列配置(KL)を有する合成カチオン性ポリペプチドの動粘度。
【
図15】40℃でガラス毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)を使用して測定された水中1重量%および2重量%でのリジンーL-ロイシン(KL)およびリジン-D,L-ロイシン(KrL)ブロック配列配置を有する各種合成カチオン性ポリペプチドの動粘度。
【
図16】増加するせん断力に対して評価された、水中1.5重量%、2.0重量%および3.0重量%での合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5の粘度。室温でサイズ14のスピンドルとサイズ6Rのチャンバを有するBrookfield RVDV(EQ-AL-2014-16)回転粘度計を使用して2分間測定した。
【
図17】例の合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5は、水中で粘性溶液とハイドロゲルを形成する。KL-120/2.5は、DI水中0.5重量%、1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%および3.0重量%の濃度で調製され、傾斜管アッセイによりゲル形成を、テクスチャ解析により硬度を、そして粘度について評価された。(a)傾斜管アッセイによる視覚的ゲル化試験。(b)テクスチャ解析により測定される水中の濃度依存性硬度。硬度値は、8mmのプローブ深さで取得された。挿入画像は、人工皮膚基質(VITRO-SKIN;IMS Inc.)に適用された水中2重量%のKL-120/2.5を描写する。(c)KL-120/2.5の濃度が増加するときの物理的特性の変化を示すグラフ表示(白=流体;黒=固いゲル);0.5重量%および1.0重量%についての粘度計からのデータおよび高濃度についてのテクスチャ解析および傾斜管アッセイからのデータに基づく。(d)水中1.5重量%でのKL-120/2.5は、2個の異なるステンレス鋼球(BB)による貫通に抵抗する。
【
図18】合成カチオン性ポリペプチドおよびそれらを含む抗菌医薬組成物の調製に使用されうる薬理学的に許容される非イオン性賦形剤(添加物)の部分的なリスト。
【
図19】増加するせん断力に対して評価された、水中2.0重量%、4.5%のマンニトール水溶液、2.33%のグリセロール水溶液または2.8%のヒスチジン水溶液での合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5(BAC004)の粘度。室温でサイズ14のスピンドルとサイズ6Rのチャンバを有するBrookfield RVDV(EQ-AL-2014-16)回転粘度計を使用して2分間測定した。
【
図20】水中1重量%で水のみ、0.9%生理食塩水または4.4%キシリトール水溶液で調製されたリジン-L-ロイシン(KL)およびリジン-D,L-ロイシン(KrL)ブロック配列配置を有する2つの例の合成カチオン性ポリペプチドの動粘度。40°Cでガラス毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)を使用して測定された。
【
図21】増加するせん断力に対して評価された、4.5%マンニトールおよび水中2.0重量%での合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5(BAC004)の製剤の粘度。室温でサイズ14のスピンドルとサイズ6Rのチャンバを有するBrookfield RVDV(EQ-AL-2014-16)回転粘度計を使用して2分間測定した。
【
図22】例の合成カチオン性ポリペプチドKrL-120/5.0は、2つの他のカチオン性抗菌薬、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)およびポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)と比較して表面張力が減少していることが示される。試料を0.1mMで調製し、室温で500gのロードセル、直径5cmのDu Nouyリングおよび0.2mm/sのプローブ速度を有するTA.XT2テクスチャーアナライザーを使用して評価した。
【
図23】水中の合成カチオン性ポリペプチドの各種製剤の表面張力。試料を0.1mMで調製し、室温で500gのロードセル、直径5cmのDu Nouyリングおよび0.2mm/sのプローブ速度を有するTA.XT2テクスチャーアナライザーを使用して評価した。
【
図24】KrL-100/5.7の界面活性特性。(a)Du Nouyリングを備えた張力計により水と比較した水溶性KrL-100/5.7(ロットBAC002)10mg/mL(1重量%)の表面張力。(b)n-ヘキサンを有する水中1重量%でのKrL-100/5.7の10分間にわたる界面張力。
【
図25】表面張力:添加物としての酢酸の効果。例の合成カチオン性ポリペプチドKrL-130/3.3(ロット77)およびKL-130/3.3(ロット72)は、水中または0.25%または1.0%の酢酸を有する水中で調製されると表面張力が低下する。酢酸の添加物は、相乗効果を有する。
【
図26】界面張力:添加物としての酢酸の効果。例の合成カチオン性ポリペプチドKrL-130/3.3(ロット77)およびKL-130/3.3(ロット72)は、水中または0.25%または1.0%の酢酸を有する水中で調製されると界面張力が低下する。酢酸の添加物は、相乗効果を有する。
【
図27】乳化特性。水中の例の合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.0およびKrL-160/3.2は、大豆油と混合するとき安定なエマルジョンを形成する。(a)エマルジョン/液体界面を実証するアッセイの写真(白矢印);b)エマルジョン指数(E
24;24時間での%エマルジョン)
【
図28】水、生理食塩水およびキシリトール中での乳化特性。水、生理食塩水(0.9%)またはキシリトール(4.4%)中で調製された例の合成カチオン性ポリペプチドKrL-110/4.0(ロットD-301-37-05)およびKL-100/5.7(ロットD-301-67-03)は、大豆油と混合するとき安定なエマルジョンを形成する。
【
図29】ウサギ皮膚刺激モデル結果の評価。無傷の皮膚と擦過の皮膚に対する無視できる応答が、各種処方と濃度の合成カチオン性ポリペプチドKL-140/2.5またはKrL-120/5.0を適用した後に観察された。各ウサギ(ニュージーランドホワイト、試験物品当たりN=3)は、合計8個の部位を有し、2個の無傷の対照、2個の無傷の試験物品、2部位の擦過対照および2部位の擦過試験物品である。各部位は、約2.5×2.5cmで24時間0.5mLの試験物品を受けた。部位は、1時間、24時間、48時間および72時間で紅斑、浮腫および焼痂形成について点数化された。
【
図30】モルモット皮膚感作結果の評価。水中1重量%でKL-140/2.5(ロット73)またはKrL-120/5.0(ロット93)を適用した後に、視覚的な変化は観察されなかった。ハートレイ系アルビノモルモット(試験グループについてn=11、正の対照についてn=6、負の対照についてn=6)に週当たり連続3日間6時間/日で0.3mLの試験物品を3週間曝露した。最後の導入暴露の後14±1日で負荷暴露を実行した。投与部位は、負荷パッチを除去した後24および48時間後に点数化された。
【
図31】ラットの経口毒性結果の評価。水中のKL-140/2.5または水中のKrL-120/5.0をラットに0.625mg/kg~160mg/kgの用量で経口胃管栄養法により投与した後に、いかなる異常も認められなかった。2mLをオスの若齢スプラーグドーリーラット(1グループあたりN=5)ごとに投与した。臨床的観察を3日間実行した。
【
図32】腹腔内投与後のマウス全身性毒性の評価。CD-1マウスは、40mL/kgの水または水中2重量%に希釈した試験物品K-100、KL-140/2.5-RAN、またはKrL-120/5.0の腹腔内投与を受けた。動物当たりの最終的な用量は、800mg/kgであった。1グループあたりN=5 CD-1マウス。臨床的観察を3日間実行した。
【
図33】腹腔内投与後のマウス全身性毒性の評価。CD-1マウスは、40mL/kgの生理食塩水または各種濃度で水に希釈したKrL-130/3.3の腹腔内投与を受けた。動物当たりの最終的な用量は、12.5mg/kg~800mg/kgだった。1グループあたりN=5 CD-1マウス。臨床的観察を3日間実行した。
【
図34】腹腔内投与後のマウス全身性毒性の評価。CD-1マウスは、40mL/kgの水または各種濃度で水に希釈したKrL-120/5.0 ロット93またはロット94の腹腔内投与を受けた。動物当たりの最終的な用量は、50mg/kg~800mg/kgだった。1グループあたりN=5 CD-1マウス。臨床的観察を3日間実行した。
【
図35】腹腔内投与後のマウス全身性毒性の評価。CD-1マウスは、40mL/kgの水または各種濃度で水に希釈したKL-170/3.3またはKL-140/2.5の腹腔内投与を受けた。動物当たりの最終的な用量は、6.25mg/kg~400mg/kgだった。1グループあたりN=5 CD-1マウス。臨床的観察を3日間実行した。
【
図36】腹腔内投与後のマウス全身性毒性の評価。CD-1マウスは、40mL/kgの水または各種処方および濃度でKL-140/2.5の腹腔内投与を受けた。動物当たりの最終的な用量は、1.25mg/kg~400mg/kgだった。1グループあたりN=5 CD-1マウス。臨床的観察を3日間実行した。
【
図37】腹腔内投与後のマウス全身性毒性の評価。CD-1マウスは、40mL/kgの水または各種処方および複数の濃度でKrL-120/5.0の腹腔内投与を受けた。動物当たりの最終的な用量は、50mg/kg~800mg/kgだった。1グループあたりN=5 CD-1マウス。臨床的観察を3日間実行した。
【
図38】25~40kGyの線量でのガンマ線滅菌前とガンマ線滅菌後のKL-140/2.5(ロット73)のSECクロマトグラム。データから、ガンマ線照射後は分子構造が分解していることが示される。
【
図39】25~40kGyの線量でのガンマ線滅菌前とガンマ線滅菌後のKL-120/5.0(ロット94)のSECクロマトグラム。データから、ガンマ線照射後は分子構造が分解していることが示される。
【
図40】25kGyの線量での電子線滅菌前と電子線滅菌後のKL-160/3.2(ロットBAC003)のSECクロマトグラム。データから、電子線滅菌後は分子構造が分解していることが示される。
【
図41】25~40kGyの線量でのガンマ線滅菌前とガンマ線滅菌後の2つのKL-140/2.5ロット(73および95)のテクスチャ解析。0.5mm/sのプローブ速度を有するTA.XT2テクスチャーアナライザーを使用して測定した。データから、ガンマ線照射後はこれらの組成物の多くの硬度が減少していることが示される。
【
図42】オートクレーブ滅菌前とオートクレーブ滅菌後に水中で調製されたKL-140/2.5(ロット73)のSECクロマトグラム。データからオートクレーブ滅菌後も分子構造が維持されていることが示される。
【
図43】オートクレーブ滅菌前とオートクレーブ滅菌後に水中で調製されたKL-120/5.0(ロット94)のSECクロマトグラム。データからオートクレーブ滅菌後も分子構造が維持されていることが示される。
【
図44】オートクレーブ滅菌前とオートクレーブ滅菌後に水中で2重量%に調製されたKL-160/3.2(ロットBAC003)のSECクロマトグラム。データからオートクレーブ滅菌後も分子構造が維持されていることが示される。
【
図45】滅菌前、オートクレーブ滅菌後および濾過滅菌後に2%プロピレングリコールを有する水中で2重量%に調製されたKL-160/3.2(ロットBAC003)のSECクロマトグラム。データからオートクレーブ滅菌後および濾過滅菌後も分子構造が維持されていることが示される。
【
図46】滅菌前、オートクレーブ滅菌後および濾過滅菌後に2.33%グリセロールを有する水中で2重量%に調製されたKL-160/3.2(ロットBAC003)のSECクロマトグラム。データからオートクレーブ滅菌後および濾過滅菌後も分子構造が維持されていることが示される。
【
図47】濾過滅菌前後の2.1%プロピレングリコールを有する水中2.0重量%の合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5(ロットBAC004)の粘度。室温でサイズ21のスピンドルとサイズ13Rのチャンバを有するBrookfield RVDV(EQ-AL-2014-16)回転粘度計を使用して2分間測定した。
【
図48】オートクレーブ滅菌前後の水中2.0重量%の合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2(ロットBAC003)の粘度。Brookfield RVDV(EQ-AL-2014-16)回転粘度計を使用して2分間測定した。
【
図49】オートクレーブ滅菌前後の2.33%グリセロールを有する水中2.0重量%の合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2(ロットBAC003)の粘度。Brookfield RVDV(EQ-AL-2014-16)回転粘度計を使用して2分間測定した。
【
図50】オートクレーブ滅菌前およびオートクレーブ滅菌後の1%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)を有するおよび有さない水中1および2重量%での2ロットの合成カチオン性ポリペプチドKL-140/2.5(98および99)のテクスチャ解析。2mm/sのプローブ速度を有するTA.XT2テクスチャーアナライザーを使用して測定した。データから、オートクレーブ後に好ましい特性の硬度が維持されていることが示される。高濃度の製剤とHECを用いて処方された製剤で硬度がいくらかの全体的に減少したことが観察される。
【
図51】オートクレーブ滅菌前およびオートクレーブ滅菌後の1重量%のヒドロキシプロピルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはメチルセルロース(MC)を有する水中1重量%での合成カチオン性ポリペプチドKL-140/2.5(ロット99)のテクスチャ解析。2mm/sのプローブ速度を有するTA.XT2テクスチャーアナライザーを使用して測定した。
【
図52】オートクレーブ滅菌前後の水中での合成カチオン性ポリペプチドKrL-120/5.0(ロット94)の調製による表面張力の減少。試料を0.1mMで調製し、室温で500gのロードセル、直径5cmのDu Nouyリングおよび0.2mm/sのプローブ速度を有するTA.XT2テクスチャーアナライザーを使用して評価した。
【
図54】生体外でのブタ皮膚モデルの微生物接種処置前の結果。KL-120/2.5(ロットBAC003)およびKL-160/3.2(ロットBAC004)の製剤の抗菌バリア特性を生体外でのブタ皮膚で証明した。データは、水で30分間前処理した(対照;N=8)あるいは(a)0.5~2.0重量%のKL-120/2.5(N=8)または(b)0.5~2.0重量%のKL-160/3.2で前処理した(N=8)皮膚移植片の接種後3時間の生存している緑膿菌(P. aeruginosa)のlog CFUを示す。「傾けていない」グループでは、移植片は合成カチオン性ポリペプチド製剤を用いた前処置中を通じて水平を維持した;「傾けた」グループでは、移植片を垂直位置に90°、15分間傾けて接種前に合成カチオン性ポリペプチド製剤コーティングを流出させるのを奨励した。*微生物は検出されなかった。エラーバーはSEMを描写する。
【
図55】ブタ開放創モデルの微生物接種処置前の結果。合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2(ロットBAC003)の製剤は、ブタモデルの微生物汚染を防止した(N=5 創傷;“N.I.”に対して4)。a)表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)b)緑膿菌(P.aeruginosa)。N.I.=接種なし。表皮ブドウ球菌と緑膿菌の混合培地を接種する15分前に、全層創傷を描写された濃度のKL-160/3.2または水1.0mLで前処理した。全微生物数ならびに選択的な表皮ブドウ球菌と緑膿菌の数を4時間後に評価した。全ての場合において、対照とKL-160/3.2の間の差は、p<0.01で有意だった。*微生物は検出されなかった。
【
図56】ブタ開放創モデルの微生物接種処置前の結果。KL-160/3.2(ロットBAC003)は、ブタモデルの微生物汚染を防止した(1グループあたりN=4創傷)。a)表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)b)緑膿菌(P. aeruginosa)。表皮ブドウ球菌と緑膿菌の混合培地を接種する24時間、4時間または1時間前に、全層創傷を描写された濃度のKL-160/3.2または水1.0mLで前処理した。全微生物数ならびに選択的な表皮ブドウ球菌と緑膿菌の数を接種の4時間後に評価した。
【
図57】外科用メッシュを有するげっ歯類非開放創モデルの微生物接種処置前の結果。KL-160/3.2(ロットBAC003)(1重量%、水中)は、異なる本体を有するげっ歯類非開放創モデルにおいて(a)MRSA(ATCC33593)および(b)緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC27317)に対する活性を示す(KL-160/3.2 N=6;対照N=8;スプラーグドーリーラット)。生検試料のグラム組織あたりおよび移植されたポリプロピレンメッシュあたりの示されるLog CFU。KL-160/3.2製剤は、微生物を接種する15分前に適用された;微生物負荷を48時間後に評価した。両微生物に対する対照とKL-160/3.2グループの差は、p<0.0001で有意だった。*微生物は検出されなかった。
【
図58】抗バイオフィルム活性。合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7
(ロットBAC002)の最小バイオフィルム除菌濃度(MBEC)アッセイ。バイオフィルム中の緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCCBAA-47)に対する活性。緑膿菌(P.aeruginosa)バイオフィルムを異なる濃度の合成カチオン性ポリペプチド(水中0.001%、0.01%、0.1%および1.0%)に20分間または3時間暴露し、そして試料をコロニー形成単位(CFU)の評価のために処理した。*微生物は検出されなかった。
【
図59】抗バイオフィルム活性。合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7 (ロットBAC002)およびKL-100/5.7(ロットD-301-67-03)の製剤の最小バイオフィルム除菌濃度(MBEC)アッセイ。バイオフィルム中の緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC BAA-47)に対する活性。緑膿菌(P. aeruginosa)バイオフィルムを水中の異なる濃度の合成カチオン性ポリペプチド製剤(0.01%、0.1%および1.0%)に3時間暴露し、そして試料をコロニー形成単位(CFU)の評価のために処理した。
【
図60】外科用メッシュを有するげっ歯類非開放創モデルの微生物接種処置前の結果。合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7(ロットBAC002)の製剤は、異なる本体を有するげっ歯類非開放創モデルにおいてMRSA(ATCC33593)に対する活性を示す(KrL-100/5.7 N=6;対照N=8;スプラーグドーリーラット)。生検試料のグラム組織あたりおよび移植されたポリプロピレンメッシュあたりの示されるLog CFU。KrL-100/5.7製剤(0.01%、0.1%および1.0%)は、微生物を接種した15分後に適用された;微生物負荷を48時間後に評価した。データは平均+SEMとして表される。*微生物は検出されなかった。
【
図61】外科用メッシュを有するげっ歯類非開放創モデルの微生物接種処置前の結果。(a)MRSAを接種した組織生検およびメッシュの病理組織学。試料を組織診断のために処理してH&Eを用いて染色した。(b)炎症スコアを経験豊かな獣医学病理医による顕微鏡分析により決定した。
【
図62】外科用メッシュを有するげっ歯類非開放創モデルの微生物接種処置前の結果。合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7(ロットBAC002)の製剤は、異なる本体を有するげっ歯類非開放創モデルにおいて緑膿菌(P. aeruginosa)(ATCC 27317)に対する活性を示す(KrL-100/5.7 N=6;対照N=8; スプラーグドーリーラット)。生検試料のグラム組織あたりおよび移植されたポリプロピレンメッシュあたりの示されるLog CFU生存。KrL-100/5.7製剤(0.01%、0.1%および1.0%)は、微生物を接種した15分後に適用された;微生物負荷を48時間後に評価した。データは平均+SEMとして表される。*微生物は検出されなかった。
【
図63】外科用メッシュを有するげっ歯類非開放創モデルの微生物接種処置前の結果。(a)緑膿菌(P. aeruginosa)を接種した組織生検およびメッシュの病理組織学。試料を組織診断のために処理してH&Eを用いて染色した。(b)炎症スコアを経験豊かな獣医学病理医による顕微鏡分析により決定した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本明細書において抗菌合成カチオン性ポリペプチドを記載する文脈において使用されるように、用語「抗菌」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌に対する60分間タイムキルアッセイにより測定される、殺菌作用を提示するポリペプチドを含む。
【0021】
本明細書において抗菌合成カチオン性ポリペプチドを記載する文脈において使用されるように、用語「ポリペプチド」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従ってペプチド結合によって互いに連結された2つ以上のアミノ酸反復ユニット(アミノ酸残渣またはより単純にユニットまたは残渣とも呼ばれる)を含むポリマーを含む。コポリペプチドは、2つ以上の異なるアミノ酸反復ユニットを含むポリペプチドのタイプである。ポリマーの分子量は分子量基準を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によってまたは光散乱検出を使用して決定されるような重量平均である。
【0022】
用語「ブロック」または「ブロック状」コポリペプチドは、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、コポリペプチドは、コポリペプチドの全体の組成と比較して1つ以上のアミノ酸ユニットが比較的豊富な長さに少なくとも10個のアミノ酸ユニットであるセグメント(「ブロック」)または複数のセグメントを含むアミノ酸ユニットの配列配置を含む。概して、合成ブロックコポリペプチドは、共重合プロセスを通して意図した制御を反映する配列配置を有する。同様に、用語「ランダム」コポリペプチドは、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、重合混合物の対応するアミノ酸モノマーの濃度を反映する統計的分布であるアミノ酸ユニットの配列配置を含む。
【0023】
本明細書において抗菌合成カチオン性コポリペプチドを記載する文脈において使用されるように、用語「疎水性」ブロックは、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、ブロックまたはセグメントは複数の疎水性アミノ酸ユニットを中に含む配列配置を含む。疎水性アミノ酸ユニットの例は、当該技術分野における当業者に知られ、グリシン(G)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、プロリン(P)、トリプトファン(W)、システイン(C)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)およびアラニン(A)を含む。同様に、用語「親水性」ブロックは、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、ブロックまたはセグメントは複数の親水性アミノ酸ユニットを中に含む配列配置を含む。親水性アミノ酸ユニットの例は、当該技術分野における当業者に知られ、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)、ならびに正電荷を帯
びたアミノ酸であるリジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)およびオルニチン(O)を含む。
【0024】
本明細書において抗菌合成カチオン性ポリペプチドを記載する文脈において使用されるように、用語「正電荷を帯びた」および「カチオン性」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、中性pHで正電荷を帯びたアミノ酸ユニットまたはポリペプチドを含む。中性pHで正電荷を帯びたアミノ酸ユニットの例は、リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびオルニチンを含み、従って、ポリペプチド内に1つ以上のこれらの正電荷を帯びたアミノ酸ユニットが存在すると(他のアニオン性ユニットを超える量で)、ポリペプチドをカチオン性にすることができる。
【0025】
本明細書において滅菌された抗菌医薬組成物を記載する文脈において使用されるように、用語「滅菌された」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、滅菌処理または組成物中の既知の病原体が滅菌された組成物を身体開口部に局所投与する(鼻腔内投与等)または手術部位などの開放創に対する投与などの開口した皮膚に局所投与するために臨床的に許容されるようにする程度に確実に欠如または減少する効果を有する処理を受けた組成物を含む。そのような滅菌処理の非限定的な例は、加熱滅菌(オートクレーブ等)、濾過滅菌、放射線および/またはエチレンオキシドなどの化学薬品による処置を含む。
【0026】
本明細書において自己組織化するポリペプチドを記載する文脈において使用されるように、用語「自己組織化する」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、媒体(医薬組成物の他の成分など)中に分散されたときのポリペプチドの配置を含み、媒体中ではポリペプチドの特定のセグメントまたはブロック間の分子間引力によりそれらのセグメントまたはブロックは、互いに緩く結合する。例えば、米国特許第9,017,730号で言及されるように、水溶液中でブロックカチオン性コポリペプチドの自己組織化が観察され、疎水性ドメインの配置およびポリマー鎖間の分子間誘引相互作用に対する効果に依存する様々な階層構造を生じる。対照的に、米国特許第9,017,730号から、ランダムコポリペプチドは自己組織化を提示しないことが示される。当業者は、合成カチオン性ポリペプチドが自己組織化するかどうかを決定する様々な技術に詳しいだろう(例えば米国特許第9,017,730号を参照)。希釈溶液中でランダム配置を提示して自己組織化を提示しないその他の点は同等な合成カチオン性ポリペプチドと比較すると、自己組織化する合成カチオン性ポリペプチドは、概して高い粘度を提示する。
【0027】
本明細書においてポリペプチドの自己組織化を促進する分子特性またはパラメータを記載する文脈において使用されるように、「促進する」および「促進している」のような用語は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、そのような自己組織化を許容するまたは促進することを含む。例えば、米国特許第9,017,730号および同第9,446,090号は、水中でコポリペプチドの自己組織化を促進するよう構成された疎水性アミノ酸ユニットおよび親水性アミノ酸ユニットの各種配列配置を記載する。同様に、ポリペプチドの自己組織化を促進する滅菌状態を引き起こすよう構成された滅菌技術は、そのようなポリペプチドまたは水性キャリア内に分散されたポリペプチドの組成物に適用されるとき自己組織化を許容するまたは自己組織化を促進するものである。同じように、ポリペプチドの自己組織化を促進するよう選択された水性キャリアの組成物は、そのようなポリペプチドが水性キャリア内に分散されるとき自己組織化を許容するまたは自己組織化を促進するものである。
【0028】
本明細書において他のものは同等なランダム合成カチオン性コポリペプチドと比較して自己組織化する合成カチオン性ブロックコポリペプチドを記載する文脈において使用され
るように、用語「他のものは同等なランダム合成カチオン性コポリペプチド」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、およその分子量と疎水性および親水性アミノ酸反復ユニットの相対数は自己組織化する合成カチオン性ブロックコポリペプチドと同じだが、同等のコポリペプチドのそれらのアミノ酸反復ユニットの配列配置はブロックよりランダムである、コポリペプチドを含む。例えば、平均長が約120ユニットである親水性(正電荷を帯びた)リジンブロックおよび平均長が約30ユニットである疎水性ロイシンブロックを有する自己組織化するブロックコポリペプチドに関して、他のものは同等なランダム合成カチオン性コポリペプチドは、コポリペプチド鎖あたり平均して約120リジンユニットと約30ロイシンユニットを含むが、ランダムコポリペプチドの鎖に沿ったそれらのユニットの配列配置は重合混合物のリジンおよびロイシンモノマーの濃度を反映する統計的分布である。
【0029】
本明細書において滅菌された抗菌医薬組成物を哺乳類の体の部位に感染を少なくとも部分的に防止および/または治療するのに効果的な大量に投与することを記載する文脈において使用されるように、用語「大量の」または「大量」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、所望の防止および/または治療効果を達成するのに必要とされる用量よりも少なくとも10倍多いコポリペプチドの量を投与することを含む。典型的には、70kgの人間に1g、14.3mg/kgを表す、以上の合成カチオン性ポリペプチドを投与することを含む抗菌医薬組成物の合計治療量は、大量投与と考えられる。当業者は、生理活性物質は、一般的に所望の治療応答が大幅な有害な作用をそれらが投与される対象に生じさせずに達成される用量の範囲を含む「治療的窓」で投与される。この用量の範囲は、一般的に最小有効濃度(MEC)と最大毒性濃度(MTC)の間で、典型的には前もって各生理活性物質について決定され、対象および/または介護者に推奨投与量の形式で伝えられる。しかしながら、抗菌組成物を哺乳類対象の身体開口部および/または開放創に局所投与するような、ある状況では、MECを決定することは非実用的かもしれず、従って抗菌組成物を大量に投与する柔軟性は非常に有利である。例えば、開放創を時間が最重要でありうる緊急状況で治療するとき、介護者が抗菌組成物を開放創に大量に(例えばMECより少なくとも10倍多い量で)MTCを超える量を投与することについて懸念することなく適用する柔軟性を有することは、非常に有利である。特定の滅菌された抗菌医薬組成物のMECは、以下の例に記載されるもののような当該技術分野における当業者に知られた方法で決定されることができる(例えば、生体外タイムキルアッセイで3-ログCFU死滅を達成するのに効果的な量)。
【0030】
本明細書において水性キャリアおよびその水性キャリアに分散された抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含むまたはからなる抗菌医薬組成物を記載する文脈において使用されるように、用語「水性キャリア」は、当該技術分野における当業者によって理解されるような通常の意味を有し、従って、イオン性添加物(塩など)または非イオン性添加物(例えば、ポリマー、アルコール、糖および/または界面活性剤)のような分散された物質を任意に含むことができる各種水性キャリアシステムを含む。水性キャリアに分散される物質は、その中に溶解されおよび/または小粒子の形状で分散されてもよい。
【0031】
抗菌医薬組成物
様々な実施形態は、水性キャリアおよびその水性キャリアに分散された抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含むまたはからなる抗菌医薬組成物を提供する。水性キャリアに分散されたカチオン性ポリペプチドの量は、主に抗菌医薬組成物の所望の粘度に依存する広範囲にわたって変化することができる。例えば、様々な実施形態において、抗菌医薬組成物の合成カチオン性ポリペプチドの量は、抗菌医薬組成物の全重量に基づく重量あたり約0.001%~約10%である。いくつかの実施形態において、水性キャリアに分散された合成カチオン性ポリペプチドの量は、抗菌医薬組成物の全重量に基づく重量あたり約0.01%~約5%である。
【0032】
様々な実施形態において、水性キャリアに分散された抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、複数の正電荷を帯びたアミノ酸ユニット(中性pHで)を含む。ある実施形態において、合成カチオン性ポリペプチドは、少なくとも40個のアミノ酸ユニットを含み、その少なくともいくつかは正電荷を帯びている。ある実施形態において、合成カチオン性ポリペプチドの正電荷を帯びたアミノ酸ユニットの数は、少なくとも10、少なくとも15または少なくとも20である。リジン、アルギニン、ヒスチジンおよびその組み合わせは、中性pHで複数の正電荷を帯びた適切なアミノ酸ユニットの例である。ある実施形態において、合成カチオン性ポリペプチドの複数の正電荷を帯びたアミノ酸ユニットは、正電荷を帯びたリジンユニットを含む。
【0033】
様々な実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中2重量%濃度37℃で測定すると、2センチストークス(cSt)以上の粘度を有する。より高くより低い粘度範囲(例えば、約1.5cSt~約16,000cStまたは約2.0cSt~約16,000cSt)を有する適切な合成カチオン性ポリペプチドは、ポリペプチドの分子量、正電荷を帯びたアミノ酸ユニットのレベルおよび/またはポリペプチドが自己組織化する程度を調整することにより作製されることができる。ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中2重量%濃度37℃で測定すると、ウシ血清アルブミンのものより大きい粘度を有する。
【0034】
抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、他のモノマーユニットを正電荷を帯びたアミノ酸ユニットに加えて含むことができる。例えば、様々な実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、複数の疎水性アミノ酸ユニットをさらに含んでもよい。様々な実施形態において、カチオン性ポリペプチドの疎水性アミノ酸ユニットの数は、少なくとも5、少なくとも10または少なくとも15である。適切な疎水性アミノ酸ユニットの例は、ロイシン(L)、イソロイシン(l)、バリン(V)、フェニルアラニン(F)、アラニン(A)およびその組み合わせを含む。ある実施形態において、合成カチオン性ポリペプチドの複数の疎水性アミノ酸ユニットは、ロイシンユニットを含む。
【0035】
合成カチオン性ポリペプチドのアミノ酸ユニットの配列配置は、ランダム、ブロック状またはその組み合わせであることができる。例えば、ある実施形態において、合成カチオン性ポリペプチドの疎水性アミノ酸ユニットおよび正電荷を帯びたアミノ酸ユニットの配列配置は、ブロック状である。多くの実施形態において、そのようなブロックコポリペプチドは、各種疎水性および親水性アミノ酸ユニットを含むことができる。例えば、ある実施形態において、合成カチオン性ポリペプチドは、疎水性ロイシンユニットおよび正電荷を帯びたリジンユニットを含むブロックコポリペプチドである。
【0036】
様々な実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、多量体構造へ水および他の水性キャリア中で自己組織化する。多量体構造の例は、ミセル、シート、ベシクルおよびフィブリルを含む(米国特許第9,017,730号を参照)。ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中37℃3重量%濃度で自立式ハイドロゲルを形成する。ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、脱イオン水中37℃で、脱イオン水のみと比較すると少なくとも10%または少なくとも20%の表面張力の減少によって測定される、界面活性力を呈する。ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドが自己組織化することは、ポリペプチドについての脱イオン水中37℃で1000μg/mL以下である臨界凝集濃度によって証明される。ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドが自己組織化することは、ポリペプチドについての脱イオン水中37℃で100μg/mL以下である臨界凝集濃度によって証明される。
【0037】
抗菌合成カチオン性ポリペプチドの自己組織化は、各種方法で制御されることができる。例えば、ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、抗菌合成カチオン性ポリペプチドが多量体構造へ自己組織化するのを促進するよう構成される疎水性アミノ酸ユニットおよび正電荷を帯びたアミノ酸ユニットの配列配置を含む。例えば、ポリペプチドの自己組織化は、疎水性アミノ酸ユニットおよび正電荷を帯びたアミノ酸ユニットのブロック状配列配置によって促進される。ポリペプチドの疎水性アミノ酸ユニットの含有量が高くおよび/または疎水性アミノ酸ユニットのブロックが長いと水性キャリア中の自己組織化が増強される傾向にある。
【0038】
本明細書において記載される抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、水性キャリアに分散されて抗菌医薬組成物を形成することができる。各種実施形態において、水性キャリアは水である。他の実施形態において、水性キャリアは薬理学的に許容される塩、非イオン性添加物またはその組み合わせを含む水溶液である。塩はポリペプチドの自己組織化を阻害する傾向があり、従って、過剰な塩は回避されるべきである。通常の生理食塩水、半分の生理食塩水、四分の一の生理食塩水およびリン酸緩衝の生理食塩水は、薬理学的に許容される塩を含む適切な水性キャリアの例である。ある実施形態において、水性キャリアは塩化ナトリウムを含む。様々な実施形態において、水性キャリアは、非イオン性添加物を含む水溶液である。適切な非イオン性添加物の例は、ブドウ糖、マンニトール、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、界面活性剤類およびその組み合わせを含む水溶液である。
【0039】
水性キャリアは、薬理学的に許容される塩、非イオン性添加物類またはその組み合わせなどの、各種量の添加物を含むことができる。様々な実施形態において、水性キャリアは、9.0g/L以下;または8.0g/L以下;または7.0g/L以下;または6.0g/L以下;または5.0g/L以下;または4.5g/L以下;または4.0g/L以下;または3.0g/L以下である量の薬理学的に許容される塩を含む。ある実施形態において、水性キャリア中の添加物の量は、抗菌医薬組成物の粘度を制御するよう選択される。ある実施形態において、水性キャリアは、抗菌医薬組成物の粘度を増加する量で添加物を含む。ある実施形態において、水性キャリアは、抗菌医薬組成物の粘度を減少する量で添加物を含む。ある実施形態において、非イオン性添加物類は、抗菌医薬組成物の浸透圧濃度を前記添加物類を含まない抗菌医薬組成物のそれより少なくとも10%多い値に増加するのに有効な量で存在する。様々な実施形態において、抗菌医薬組成物の添加物の濃度は、全重量に基づいて約0.1重量%~約10重量%である。様々な実施形態において、抗菌医薬組成物の非イオン性添加物の濃度は、全重量に基づいて約0.01重量%~約2重量%、または約0.05重量%~約5重量%である。
【0040】
各種実施形態において、本明細書において記載されるような抗菌医薬組成物は、滅菌された抗菌医薬組成物を実現する構成された滅菌技術類によって滅菌される。ある実施形態において、滅菌技術類は、合成カチオン性ポリペプチドの化学構造および/または合成カチオン性ポリペプチドが自己組織化する性質に最小の影響しか与えないよう構成される。そのような滅菌技術を
図42~52に説明する。ある実施形態において、本明細書において記載されるような抗菌医薬組成物は、前記滅菌技術によって滅菌されていない抗菌医薬組成物の抗菌合成カチオン性ポリペプチドのものと同等である(たとえば、約10%以内)重量平均分子量および/または分散度を有する抗菌合成カチオン性ポリペプチドを有する滅菌された抗菌医薬組成物を実現するよう構成された滅菌技術によって滅菌される。ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、滅菌技術によって滅菌されていない前記抗菌医薬組成物のものと同等である37℃での粘度レベルを有する滅菌された抗菌医薬組成物を実現するよう構成された前記滅菌技術によって滅菌される。ある実施形態において、滅菌された抗菌医薬組成物の37℃での粘度は、他のものは同等である滅菌されていない抗菌医薬組成物の粘度の20%~200%である。
【0041】
ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、複数のマウスの腹腔内に10mL/kgの投与量で注入された後、注入後72時間での50%以上マウス生存率で測定すると、毒性が低い。ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、複数のマウスの腹腔内に20mL/kgの投与量で注入された後、注入後72時間での50%以上マウス生存率で測定すると、毒性が低い。ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、複数のマウスの腹腔内に40mL/kgの投与量で注入された後、注入後72時間での50%以上マウス生存率で測定すると、毒性が低い。ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、その他の点では同等な滅菌されていない抗菌医薬組成物のそれと同等な殺菌活性を有し、その殺菌活性は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌に対する60分間タイムキルアッセイにより測定される
【0042】
他の活性医薬成分を本明細書において記載される抗菌医薬組成物に組み入れると、抗菌能力および/または毒性リスクの減少を、局所と全身の両方で増強しうる。特に、抗生物質、消毒薬、ヨウ素化合物および/または銀化合物を含む、他の抗菌薬を組み入れると、合成カチオン性ポリペプチドと協働的に働いて感染の防止および/または治療を支援しうる。さらに、1つ以上の抗炎症薬を組み入れると、局所と全身の両方で、能力を増強および/または毒性のリスクを低減しうる。局所的な炎症は、微生物汚染または感染も含む各種疾患状況の原因に寄与しうる。例は、外耳炎、慢性副鼻腔炎、肺性症状および特定の創傷の症状を含む。そのような症状は、合成カチオン性ポリペプチドと、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬および/または抗サイトカイン薬などの、抗炎症薬の組み合わせにより治療されることができるだろう。そのように、抗炎症薬を合成カチオン性ポリペプチドを含む抗菌組成物に含めると利益を提供しうる。
【0043】
ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、抗炎症化合物を含む。例えば、ある実施形態において、抗炎症薬は、コルチコステロイド、ヒスタミン阻害剤およびサイトカイン阻害剤からなる群より選択される。コルチコステロイドの例は、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、フルオシノニドおよびハロベタゾールプロピオン酸エステルを含む。ヒスタミン阻害剤の例は、ヒスタミンH1、H2、H3およびH4受容体を阻害するものを含む。サイトカイン阻害剤の例は、グルココルチコイドおよびペントキシフィリンを含む。
【0044】
本明細書において記載される抗菌医薬組成物は、各種方法で作製されることができる。ある実施形態において、抗菌合成カチオン性ポリペプチドは、米国特許第9,017,730号および/または同第9,446,090号で教えられる方式で作製され、カチオン性ポリペプチドを作製するためのそのような方法を教えることを含むすべての目的で参照により本明細書に明白に組み込まれる。抗菌医薬組成物は、抗菌合成カチオン性ポリペプチドを水性キャリアと組み合わせてそれによりポリペプチドを水性キャリア中に分散させる(例えば、溶解させる)ことによって作製されることができる。例えば、そのような組み合わせは、成分(カチオン性ポリペプチド、水性キャリアおよび炎症化合物などの任意の成分)を約20℃~90℃の温度で、ポリペプチドを分散させる(例えば、溶解させる)のに効果的な時間長撹拌して混合することにより実現することができる。成分は、当業者は特定の順序を個別の場合に好むかもしれないけれども、任意の順序で、ともに混合されることができる。
【0045】
微生物汚染の防止方法
各種実施形態は、無傷の、健康な皮膚以外である組織に特に適した組織の微生物汚染を防止する方法を提供する。例えば、ある実施形態において、そのような方法は、微生物汚染されるリスクがある無傷の、健康な皮膚以外の組織部位を有する哺乳類対象を同定する
ステップを含む。そのような組織部位の例は、患部皮膚、手術部位、外傷性創傷、郭清組織、腹腔、肺気道、洞および尿路を含む。ある実施形態において、本方法は、本明細書に記載されるような抗菌医薬組成物を組織部位に対して組織部位が微生物で汚染されるのを少なくとも部分的に保護するのに十分な量で投与するステップを含む。例えば、いくつかの実施形態において、本方法は、組織部位が黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌に感染するのを少なくとも部分的に保護する。本方法は、組織部位を採取して、その微生物負荷を評価するステップをさらに含み、例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌の負荷である。ある実施形態において、抗菌医薬組成物は、手術部位に手術中に投与される。抗菌医薬組成物の組織部位への投与は、直接的な局所投与により実現されることができる。
【0046】
組織部位が微生物で汚染されることから少なくとも部分的に保護するのに効果的である抗菌医薬組成物の量は、当業者によって本明細書において提供されるガイダンスによって通知されるルーチン実験を使用して決定されうる。各種実施形態において、抗菌医薬組成物は広い治療的窓を有し、従って感染からの所望の保護が実現される比較的広範囲の用量が提供される。いくつかの実施形態において、この広い治療的窓により抗菌医薬組成物を組織部位に大量に投与することが促進される。
【0047】
微生物負荷の低減方法
各種実施形態は、無傷の、健康な皮膚以外である組織に特に適した組織内または上の微生物負荷を低減する方法を提供する。例えば、ある実施形態において、そのような方法は、微生物負荷がある無傷の、健康な皮膚以外の組織部位を有する哺乳類対象を同定するステップを含む。そのような組織部位の例は、患部皮膚、手術部位、外傷性創傷、郭清組織、腹腔、肺気道、洞および尿路を含む。ある実施形態において、組織部位は、微生物によって汚染された、感染されたまたは両者である。ある実施形態において、本方法は、本明細書において提供されるような抗菌医薬組成物を組織部位に微生物負荷を少なくとも部分的に低減するのに効果的な量で投与するステップを含む。例えば、いくつかの実施形態において、本方法は、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌の組織部位での微生物負荷を少なくとも部分的に低減する。本方法は、組織部位を採取して微生物負荷を評価するステップをさらに含み、例えば黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、緑膿菌(P.aeruginosa)および大腸菌(E.coli)からなる群より選択される少なくとも1つの細菌の負荷である。ある実施形態において、抗菌医薬組成物は微生物によって汚染された、感染されたまたは両者である組織部位に手術中に投与される。
【0048】
微生物負荷を少なくとも部分的に低減するのに効果的である抗菌医薬組成物の量は、当業者によって本明細書において提供されるガイダンスによって通知されるルーチン実験を使用して決定されうる。各種実施形態において、抗菌医薬組成物は、広い治療的窓を有し、従って微生物負荷の所望の低減が実現される比較的広範囲の用量が提供される。いくつかの実施形態において、この広い治療的窓により抗菌医薬組成物を組織部位に大量に投与することが促進される。抗菌医薬組成物の組織部位への投与は、直接的な局所投与により実現されることができる。
【実施例0049】
合成カチオン性ポリペプチドは、各種アミノ酸配列配置を用いて調製されることができ
、そのいくつかは
図1に図式的に説明される。特定の配置は、ブロックまたはセグメントとして参照されてもよい。典型的には、これらは複数のあるタイプのアミノ酸(例えばカチオン性、アニオン性、疎水性)を含むアミノ酸ユニットの伸長であるだろう。本明細書において記載される合成カチオン性ポリペプチドは、米国特許第9,017,730号および同第9,446,090に記載された合成方法に従って作製されており、合成カチオン性ポリペプチドとその製造方法を記載する目的を含む、参照によりその全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0050】
カチオン性ブロックは、中性pHで複数の正電荷を有し、約10個のアミノ酸ユニットから300個をはるかに上回るアミノ酸ユニットまで長さが大幅に変更することができる。正電荷を帯びたアミノ酸ユニットは、リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H)およびオルニチン(O)から選択されることができる。カチオン性ブロックは、完全にカチオン性アミノ酸からなる必要はない。複数のカチオン性アミノ酸に加えて、ブロックセグメントはセリン(S)およびスレオニン(T)などの、極性アミノ酸を含む、他のアミノ酸を含んでもよく、それは親水性を維持するのを助けるだろう。わずかな比率の負電荷を帯びたアミノ酸および/または疎水性アミノ酸も、ブロック内にアニオン性ユニットよりも多くのカチオン性ユニットがある限り、カチオン性ブロックに含まれてもよい。
【0051】
疎水性ブロックは、複数の疎水性アミノ酸を有し、長さを、典型的には約5~約60アミノ酸ユニットまで大幅に変更することができる。疎水性ブロックは、二次的構造(無秩序に対するαらせんなど)を呈することもできる。疎水性アミノ酸は、pH7.0で荷電されていない。加えて、それらは多くは炭素と水素からなる側鎖を有し、非常に小さな双極子モーメントを有し、水からはじかれる傾向がある。疎水性アミノ酸ユニットは、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)およびメチオニン(M)を含むリストから選択されることができる。疎水性ブロックは、完全に疎水性アミノ酸ユニットからなる必要はない。複数の疎水性アミノ酸に加えて、ブロックセグメントは、セリン(S)およびスレオニン(T)などの極性アミノ酸を含む、他のアミノ酸を含んでもよい。わずかな比率の電荷を帯びたアミノ酸が疎水性ブロックに含まれてもよい。
【0052】
カチオン性―疎水性ブロック構造を有する合成カチオン性ポリペプチドは、全鎖長の広範囲、典型的には低い側は約20アミノ酸ユニット以下で高い側は約400アミノ酸ユニット以上を用いて調製されることができる。
図2に描写されるように、ブロック構造とともにカチオン性ポリペプチドを記載する際、それらを3個のグループに分類することができる:(I)長いカチオン性セグメント(200アミノ酸ユニット以上);(II)中間のカチオン性セグメント(100~199アミノ酸ユニット);および(II)短いカチオン性セグメント(10~99アミノ酸ユニット)。疎水性ブロック長に対するカチオン性ブロック長の比率は、広範囲、典型的には低い側は約1.5で高い側は約15以上で変化することができる。これらの合成カチオン性ポリペプチドの平均分子量は、広範囲、典型的には低い側は約3,000Daで高い側は高い側は約70,000Da以上で変化することができる。
図3は、セグメント化された構造を有するそのような合成カチオン性ポリペプチドの詳細な組成を示す。
【0053】
以下でより詳細に記述するように、我々はブロック配列配置を有する非常に多くの異なる合成カチオン性ポリペプチドを合成して試験した。比較のために、我々は同等のアミノ酸組成を有するが、ブロックまたはセグメント化された配列配置を欠如したカチオン性ポリペプチドも合成した。これらの合成カチオン性ポリペプチドは、抗菌活性、止血特性、バリア特性および界面活性力を含む、複数の機能特性が変化することが分かった。さらに、分子設計と処方の両者がこれらの機能特性に影響することができることが証明されてきた。分子設計特性に関しては、我々は、全体の鎖長と疎水性ブロックに対するカチオン性
/親水性ブロックの比率が機能に高い影響を有する特性であることを観測した。アミノ酸の選択およびエナンチオ純度を含む、各ブロック内の特定の特性も寄与する。
【0054】
本出願において、我々は、合成カチオン性ポリペプチドの2個の主要な特徴:全体の鎖長および疎水性ブロック長に対するカチオン性ブロック長の比率、に基づいた命名法を使用する。例として、KL-140/2.5は、約140アミノ酸ユニットの平均鎖長および約2.5の疎水性セグメントに対するカチオン性セグメントの比率を有する。このポリマーにおいて、カチオン性アミノ酸ユニットはリジン(K)であり、疎水性アミノ酸ユニットはエナンチオピュアなL-ロイシン(L)である。他の例として、KrL-100/5.7は、約100アミノ酸ユニットの平均鎖長および約5.7の疎水性セグメントに対するカチオン性セグメントの比率を有する。このポリマーにおいて、カチオン性アミノ酸ユニットはリジン(K)であり、疎水性アミノ酸ユニットはラセミのD,L-ロイシン(rL)である。他の例として、RrL-75/2.8は、約75アミノ酸ユニットの平均鎖長を有する。このポリマーにおいて、カチオン性アミノ酸ユニットはアルギニン(R)であり、疎水性アミノ酸ユニットはラセミのD,L-ロイシン(rL)である。
【0055】
米国特許第9,017,730号および同第9,446,090号に記載された(異なる命名系を使用する)合成カチオン性ポリペプチドは、
K55、K55L5、K55L10、K55L15、K55L20、K55L20-RAN、K55L25、K55L30、K55(rac-L)5、K55(rac-L)5-RAN、K55(rac-L)10、K55(rac-L)10-RAN、K55(rac-L)20、RH
55(rac-L)20、K55(rac-L)20-RAN、K55(rac-L)30、K55(rac-I)20、K55(rac-L/F)20、K55(rac-V)20、K55(rac-A)20、[K65(rac-L)15-RAN](rac-L)20、K80、K80(rac-L)20、K90(rac-L)30、K90(rac-L)30-RAN、K99L36、K99(rac-L)36、K99(rac-L)36-RAN、K100、K100L20、K100L30,K100L40、K100L40-RAN、K100L50、K100L60、K100(rac-L)20、K100(rac-L)20-RAN、K100(rac-L)30、K100(rac-L)40、K100(rac-L)60、K120(rac-L)10、K120(rac-L)40,K120(rac-L)40-RAN、K120(rac-L)50、K120(rac-L)50-RAN、K130L20、K130L30、K130L40、K130L40-RAN、K130L60、K130(rac-L)20、K130(rac-L)30、K130(rac-L)40、K130(rac-L)60、K150L30、K160(rac-L)20、K180、K180L18、K180L20、K180L36、K180L54、K180(rac-L)18、K180(rac-L)20、K180(rac-L)36、K180(rac-L)54、K190L10、K200L50、PEG205(rac-L)20、K256、K324L36、K360K360L36、K360L36-RAN、K360L54、K360L72、K360(rac-L)36、K360(rac-L)54およびK360(rac-L)72を含む。
【0056】
実施例1
合成カチオン性ポリペプチドは、頑強な殺菌活性とバリア効果を有する製剤を可能にするよう
図4~6に示されるように設計されることができる。
図4は、リジンおよびエナンチオピュアなL-ロイシンアミノ酸ユニットに基づくカチオン性―疎水性ブロック配列配置を有する例の合成カチオン性ポリペプチドを記載する。ポリペプチド製剤の平均全体鎖長は、約160アミノ酸ユニットで、ロイシンに対するリジンのまたはK:Lは、3.2であることが分かった。この合成カチオン性ポリペプチドは、KL-160/3.2として指定され、ポリマーのSECクロマトグラムは、1.1の比較的低い分散度(D)を有
する単一のピークを示す。
【0057】
図5は、水中でのKL-160/3.2の濃度依存的抗菌活性を描写する。黄色ブドウ球菌(S.aureus)、緑膿菌(P.aeruginosa)およびカンジダアルビカンス(C.albicans)に対する活性を1.6μg/mLと同じくらい低い濃度で有する明確な濃度依存的効果がある。多くの実験を通じて観察されたKL-160/3.2の抗菌活性の要約は
図6に提供される。以下に言及されるように、水中高濃度で(すなわち2重量%未満)調製されるとき、KL-160/3.2は、自立式ハイドロゲルを形成する。合成カチオン性ポリペプチドのこれらの特性は、抗菌活性とバリア機能の所望の組合せをもたらす。重要なことには、これらの抗菌製剤の機能特性は、処方(例えば添加物の存在および濃度)、ならびに滅菌方法を含む、特定のプロセスおよび/または取り扱い手順の存在、欠如または程度に依存することを認識する。
【0058】
実施例2
合成カチオン性ポリペプチドは、頑強な殺菌活性と界面活性力を有する製剤を可能にするよう
図7~9に示されるように設計されることができる。
図7は、リジンおよびラセミのD,L-ロイシンアミノ酸ユニットに基づくカチオン性―疎水性ブロック配列配置を有する例の合成カチオン性ポリペプチドを記載する。ポリペプチド製品の平均全体鎖長は、約100アミノ酸ユニットで、ラセミのロイシンに対するリジンのまたはK:rLは、5.7であることが分かった。この合成カチオン性ポリペプチドは、KrL-100/5.7として指定され、ポリマーのSECクロマトグラムは、1.1の比較的低い分散度(D)を有する単一のピークを示す。
【0059】
図8は、水中でのKrL-100/5.7の濃度依存的抗菌活性を描写する。黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、大腸菌(E.coli)、緑膿菌(P.aeruginosa)およびカンジダアルビカンス(C.albicans)に対する活性を1.6μg/mLと同じくらい低い濃度で有する明確な濃度依存的効果がある。多くの実験を通じて観察されたKrL-100/5.7の抗菌活性の要約は
図9に提供される。以下に言及されるように、水中で調製されるとき、KrL-100/5.7は、界面活性力を証明する。合成カチオン性ポリペプチドのこれらの特性は、抗菌活性と界面活性機能の所望の組合せをもたらし、それによりバイオフィルムおよびまたは組織の創傷郭清に対する能力を増強することができる。重要なことには、これらの抗菌製剤の機能特性は、処方(例えば添加物の存在および濃度)、ならびに滅菌方法を含む、特定のプロセスおよび/または取り扱い手順の存在、欠如または程度に依存することを認識する。
【0060】
実施例3
カチオン性抗菌ペプチドを多量体複合体に自己組織化することは有益である可能性がある。ブロック配列配置を有する合成カチオン性ポリペプチドを、多量体構造に自己組織化するよう設計し、処方することができる。2個の例を
図10に描写する:KL-160/3.2を、繊維状構造に自己組織化してバリアハイドロゲルを形成するよう設計し、KrL-100/5.7をミセル状構造に自己組織化して界面活性特性を有するよう設計した。上記に言及されるように、これらの2個の合成カチオン性ポリペプチドは
図4~6および
図7~9にも記載されることに留意する。
【0061】
本発明の各種実施形態は、それ自体および/または組成物の1つ以上の他の成分とともに多分子複合体を形成する少なくとも1つの抗菌剤を含む抗菌組成物を含む。説明として、そのような多分子複合体が発生すると、分子間結合が増強される。そのような結合は、可逆的である。そのような結合は、全体としてまたは部分的に疎水性誘引効果を引き起こし得る。そのような結合は、共有結合性でも非共有結合性でもよい。そのような結合は、
全身性吸収を減少または遅延しうる。そのような結合は、局所的および/または全身性毒性のリスクを減少しうる。
【0062】
臨界凝集濃度(CAC)は、水性環境での分子の自己組織化の1つの基準である。CACは、ピレン蛍光法および表面張力技術を含む、いくつかの技術によって測定されることができる。
図11は、ピレン蛍光法によって測定される、各種合成カチオン性ポリペプチドのCAC値を示す。ポリリジン鎖(K-100)とブロック配列配置を欠如するリジンーロイシン合成カチオン性ポリペプチド(KL-130/3.3-RAN)は、それぞれ1,600と2,700μg/mLの、非常に高いCACを実証することは注目に値する。比較して、ブロック配列配置を持った多くのリジンーロイシン合成カチオン性ポリペプチドは、
図11の残りの項目によって示されるようにこの方法によって1μg/mL~160μg/mLのかなり低いCACを実証する。
図12は、合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7を使用する表面張力法によるCACの測定値を描写する。
【0063】
本発明の各種実施形態は、少なくとも1つの抗菌剤を含む抗菌組成物を含んでもよく、水に溶解すると500μg/mL以下の臨界凝集濃度(CAC)を有する。このCACは、ピレン蛍光法を使用するもののような、当該技術分野において知られた方法によって測定されることができる。他の抗菌剤は、より低いCACを有することができる。例えば、抗菌剤は、200μg/mL以下、100μg/mL以下、50μg/mL以下および/または20μg/mL以下のCACを有することができる。
【0064】
実施例4
粘度は、医薬組成物の特性だけでなく、分子特性の関連する測定値である。予想外に、我々は、増加した粘度は、増加した安全性のマーカだけでなく、増加した創傷内抗菌能力のマーカとなることができることを発見した。多くの分子設計特性は、合成カチオン性ポリペプチドの粘度に影響する。これらは全体の鎖長、アミノ酸組成物、疎水性ユニットに対するカチオン性ユニットの比率およびアミノ酸残基の配列配置(例えば、ランダムに対するブロック状)を含む。合成カチオン性ポリペプチド内にありうる他の成分(例えば、カウンターイオン、他の塩および残留溶媒)は、水性製剤の粘度に影響する可能性があることも留意されるべきである。さらに、粘度に影響を与えるのに有効な量の医薬組成物の調製に使用されうる各種添加物(例えば塩、非イオン性張度調整賦形剤、界面活性剤)。以下に記載されるように、滅菌方法も、粘度に大幅な影響を与えることができる。
【0065】
図13(a)は、ガラス毛細管粘度計(ウベローデ粘度計)を使用して測定された水中1重量%での各種合成カチオン性ポリペプチドの動粘度値を描写する。このデータから実証されるように、約100アミノ酸ユニット(K-100)または約200アミノ酸ユニット(K-200)のポリリジン鎖が存在してもこの濃度では粘度にささやかな影響しか与えない。同様に、ランダム/統計配列配置(すなわちブロックでない)を有するリジンーロイシン合成カチオン性ポリペプチド、KL-170/3.3-RAN、が存在してもまた、粘度にささやかな影響しか与えない(1.1cStの値)。比較して、セグメント化されたまたはブロックの配列配置を有する複数の合成カチオン性ポリペプチドは、この一組のデータで290cSt~1.4cStの高い範囲で増強された粘度を実証する。全体の鎖長は、粘度を増加することが示された;疎水性ブロックの長さが増加すると粘度が増加することが示された;そして疎水性ロイシンアミノ酸のエナンチオ純度は粘度を増加することが示された。比較のために、
図13(b)は、ウシ血清アルブミンがこれらの条件で1および2重量%の濃度での水性製剤の粘度に、たとえあったとしてもわずかな影響しか有さないことを示す。アルブミンは、豊富な血液タンパク質であり、約66.5kDaの分子量および約583アミノ酸ユニットの全体の鎖長を有する。これらのデータから、分子の大きさだけでは粘度効果を十分に説明できないことが示される。
【0066】
図14は、2個の合成カチオン性ポリペプチドの水中0.5重量%37℃での粘度データを示す。この場合、両方の合成カチオン性ポリペプチド、KL-160/3.3およびKL-120/2.5は、同様の長さと設計の疎水性セグメント(~35~40エナンチオ純度のL-ロイシンユニット)を有する。より高い粘度がKL-160/3.3に見出され、それはより長いカチオン性ブロック構造を有し、従ってより長い全体構造を有する。とはいえ、0.5重量%のKL-120/2.5(
図14)は、1.0重量%のKrL-160/3.3(
図13)よりも高い粘度を有することに留意することも重要である。後者は、より長い全体の鎖長、同様の大きさの疎水性ブロックを有するが、疎水性アミノ酸ユニットの組成が異なる(ラセミのD,L―ロイシン対エナンチオピュアなL-ロイシン)。
図15は、分子設計と濃度の両方が粘度に影響を及ぼすことをさらに実証する。このデータは、40℃でガラス毛細管粘度計を用いて取得され、上述したものとは異なる製造ロットの4個の合成カチオン性ポリペプチドが含まれる。
【0067】
合成カチオン性ポリペプチドの粘度は、せん断力の影響下で測定されることもできる(粘度)。この手法により、ずり流動化またはずり粘稠化特性を評価することができる。これらのずり流動化またはずり粘稠化特性は、生体内での全体的な能力はもちろん、組織への適用の容易さの両方に重要でありうる。特に、我々は、ずり流動化特性により、様々な医療および外科的状況で発生する可能性がある、手動操作による組織への拡散が容易になることが分かった。
図16に描写されるように、合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5の水中1.5重量%、2.0重量%および3.0重量%での粘度を増加するせん断力に対して回転粘度計を使用して評価した。せん断に依存する(主軸速度が増加する)粘度の減少が観察された(センチポアズ(cP)で測定された)。この「ずり流動化」効果は、3つの試験された濃度で見られた。粘度の濃度依存性増加も
図16に示されるように観察された。
【0068】
本発明の様々な実施形態は、少なくとも1つの抗菌合成カチオン性ポリペプチドを含む抗菌組成物を含み、それを水に溶解すると、粘度の著しい増加を引き起こす。例えば、合成カチオン性ポリペプチドがブロックコポリマーである実施例において、観察される粘度の増加は、その他の点では同等なランダムな合成カチオン性ポリペプチドに対して観察される増加よりも大きい。粘度の増加を、当該技術分野において知られた方法により1つ以上のタイプの粘度計を使用して測定することができる。
【0069】
例として、水中10mg/mLまたは1重量%の濃度の少なくとも1つの抗菌合成カチオン性ポリペプチドの製剤は、37℃で1.25センチストークス~500センチストークス(cSt;mm2/s)の粘度を有し、水のみの粘度値が0.9cStを下回るアッセイにおいてウベローデ粘度計などの、ガラス毛細管粘度計を使用して測定される。様々な実施例において、少なくとも1つの抗菌剤のこれらの製剤の粘度は、500cStより大きい。
【0070】
合成カチオン性ポリペプチドを、水に分散したときに自立式ハイドロゲルを形成するように設計して製造することができる。
図17(a)~(d)に描写されるように、例の合成コポリペプチド(KL-120/2.5)は、濃度に応じて水中で粘性溶液とハイドロゲルを形成する。KL-120/2.5は、DI水中0.5、1.0、1.5、2.0および3.0重量%の濃度で調製され、傾斜管アッセイによりゲル形成を、テクスチャ解析により硬さを、そして粘度について評価した。物理的特性に対する濃度依存性効果は明らかである。例えば、水中2重量%の濃度に増加するとき、この合成カチオン性ポリペプチド製剤は自立式ハイドロゲルを形成した。1.5重量%では、製剤はバリアとして働き、2個の異なるステンレス鋼球、またはBBによる貫通に抵抗した。テクスチャ解析を使用する硬度の定量的測定も、濃度依存性増加を明白に呈した。この後者の方法は、バリア特性および貫通に対する抵抗も実証する。
【0071】
実施例5
各種添加物は、合成カチオン性ポリペプチドの水性製剤の粘度を修飾することができる。我々は、様々な添加物が本明細書に記載された医薬組成物の、pHおよび張度を含む、特定の特性を変更するために使用されうることを見出した。評価中に、我々は、特定の添加物が粘度に対して予想外に大きな影響を有することを見出した。これらの影響は、合成カチオン性ポリペプチドの分子設計に依存することもさらに発見した。例えば、多角的な研究でブロックアミノ酸配列配置を有するグループIIの中間のリジン-L-ロイシン(KL)ポリペプチドの水性製剤にNaCl(~0.9%)を添加すると粘度が大きく減少することが証明された。同様だが、あまり大きくない効果が、リジン-D,L-ロイシン(KrL)ポリペプチドで観察された。このデータから、分子設計と添加物の性質の両者が、目的とする粘度パラメータを有する医薬組成物を調製する際に共に考慮されるべきであることが示された。これらの観察は、塩を含む、合成カチオン性ポリペプチドの製造された製剤に見出されうる特定の物質が、機能性および能力に大きく影響する可能性があるというリマインダーも提供する。
【0072】
図18は、合成カチオン性ポリペプチドを含む医薬組成物を調製するために使用されうる薬理学的に許容される非イオン性賦形剤(添加物)の部分的なリストを示す。
図19は、増加するせん断力に対して評価された、水中2.0重量%、4.5%のマンニトール水溶液、2.33%のグリセロール水溶液または2.8%のヒスチジン水溶液での合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5(BAC004)の粘度を描写する。ヒスチジン製剤は、全ての主軸速度で非常に低い粘度を示した。マンニトールとグリセロール中の製剤は、水のみの製剤で観察されたよりも幾分低いレベルではあるが、比較的高くせん断依存的な粘度プロファイルを示した
【0073】
図20は、水中1重量%で水のみ、0.9%生理食塩水または4.4%キシリトール水溶液に溶解したリジン-L-ロイシン(KL)およびリジン-D,L-ロイシン(KrL)ブロック配列配置を有する2つの例の合成カチオン性ポリペプチドの動粘度を描写する。特に、0.9%生理食塩水中でKL-100/5.7を調製すると、水中の製剤と比較して約70%粘度の減少が証明された。比較として、0.9%生理食塩水中でKrL-110/4.0を調製すると水中の製剤と比較して約40%粘度の減少が証明された。さらに、これらの研究から、キシリトール、非イオン性添加物の水溶液中の両方の合成カチオン性ポリペプチドは、水のみと比較して予想外に粘度が増強されることが証明された。従って、張度および/または浸透圧を増加させながら高い粘度を維持することが望ましい場合、キシリトールは医薬組成物の添加物として利益の可能性を与える。さらに、いくつかの実施例では、キシリトールは、抗菌組成物の予想外の好ましい薬理学的に許容される添加物であり、その粘度に対する効果に加えて、微生物の代謝と多くの微生物の増殖を支援しないからである。
【0074】
図21は、増加するせん断力に対して評価された、4.5%水溶性マンニトール中2.0重量%での合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5(BAC004)の粘度を描写する。それはさらにこの製剤は、50℃および94℃を含む、熱処理に安定であることも描写する。熱処理に対する安定性は、水性キャリア中での合成カチオン性ポリペプチドの溶解および徐冷、ならびに滅菌による全ての汚染する微生物の減少または除去などの、特定の製造ステップに有益でありうる。
【0075】
本発明の様々な実施形態は、水性キャリア中の少なくとも1つの抗菌合成カチオン性ポリペプチドおよび少なくとも1つの添加物または賦形剤を、37℃で1.25センチストークス~500センチストークス(cSt;mm2/s)の医薬組成物の粘度を生じるのに十分な組合せおよび量で含み、水のみの粘度値が0.9cStを下回るアッセイにおい
て、ウベローデ粘度計などの、ガラス毛細管粘度計を使用して測定される。各種実施形態において、これらの医薬組成物の粘度は、500cStより大きい。
【0076】
本発明の様々な実施形態は、水性キャリア中の少なくとも1つの抗菌合成カチオン性ポリペプチドおよび回転粘度計を使用して測定されると、37℃で組成物にずり流動化効果を加えるのに有効なある量の少なくとも1つの添加物または賦形剤を含む医薬組成物を含む。
【0077】
本発明の様々な実施形態は、水性キャリア中の少なくとも1つ抗菌合成カチオン性ポリペプチドおよび添加物または賦形剤がない水性キャリア中の同等の製剤のものよりも大きな組成物の粘度を加えるのに有効なある量の少なくとも1つの添加物または賦形剤を含む医薬組成物を含む。例えば、実施例において、NaClなどの様々な塩も含みうる組成物を含む、医薬組成物に有効量のキシリトールまたはグリセロールを加えると、キシリトールまたはグリセロールを含まない同等の医薬組成物と比較して製剤の粘度が増強される。
【0078】
本発明に従って、有効なレベルの抗菌活性に達するには、特定の患者(例えば大きな創傷を有するおよび/または微生物レベルが高い)にかなりの量の医薬組成物が必要とされるかもしれない。我々は、抗菌薬が、本明細書において提供される教育内容に従って設計されれば、局所的に適用される抗菌組成物の有効性と安全性の両方を増強することができることを見出した。それ自体または組成物の1つ以上の他の成分により多分子複合体を形成する抗菌薬は、抗菌薬の局所濃度および組織コーティングを増加し、それにより低用量で大きな有効性を取得しうる。さらに、この特性は、潜在的な全身性の吸収と分布を減少または遅延してもよく、そして全身性の毒性を減少しうる。それは、局所的な毒性も減少しうる。抗菌組成物の処方だけでなく、抗菌薬自体の設計は、多分子複合体の形成を可能にする分子間相互作用に影響するだろう。
【0079】
我々は、局所的に投与された抗菌薬の有効性と安全性は、粘度を含む、物理的特性によって影響されると分かった。例えば、粘度が増加すると、局所的に適用された抗菌薬の組織保持時間が増加し、それにより有効性が増強しうる。この効果は、必要とされる抗菌組成物の全量も減少し、それにより用量を制限する毒性のリストを減少しうる。それ自体または組成物の他の成分との抗菌薬の分子間相互作用は、抗菌組成物の増加した粘度に寄与する。
【0080】
実施例6
合成カチオン性ポリペプチドを、界面活性力を証明するよう設計することができる。特定の設計特性はより界面活性力を加え;他のものはあまり加えない。界面活性力を、複数のアッセイで証明することができる。例えば、界面活性剤は、液体―気体界面で表面張力を減少することが示されることができる。
図22に描写するように、合成カチオン性ポリペプチドKrL-120/5.0は、水の表面張力を合成カチオン性ポリペプチドではない合成抗菌薬と比較して大幅に減少することが示された;クロルヘキシジンとPHMBは、効果がほとんどない又はないようにみえる。
【0081】
合成カチオン性ポリペプチドの各種製剤の表面張力を減少する能力を評価した(
図23)。いくつかの観察がなされた。予想外にも、エナンチオピュアなL-ロイシンにより調製されたリジンーロイシンジブロックコポリペプチドは、疎水性ブロックが30アミノ酸ユニット以上であるとき、ほとんど界面活性力を証明しなかった。界面活性力は、より短いエナンチオピュアなL-ロイシンブロック(例えば約20ロイシンユニット以下)で観察された。加えて、ラセミのD,L-ロイシンにより調製されたリジン-ロイシンジブロックコポリペプチドは、ロイシンブロック長が約20ユニット以上のエナンチオピュアなL-ロイシンにより調製されたものと比較するとき、比較的高い界面活性力を証明した。
全体で、データから、界面活性力はアミノ酸組成(エナンチオピュア対ラセミを含む)と疎水性ブロックの長さの両者によって大いに影響されることが示される。従って、設計因子は、合成カチオン性ポリペプチドの所望の界面活性特性を取得するために使用されることができる。
【0082】
界面活性力は、他のアッセイによっても証明されることができる。1つの例は、水/油系の界面張力の減少である。
図24(a)および24(b)で描写されるように、合成カチオン性ポリペプチドKrL-100/5.7は、界面張力を減少することが示された。
【0083】
特定の添加物も、表面および界面張力に影響することができる。例えば、
図25のデータから合成カチオン性ポリペプチドKrL-130/3.3(ロット77)およびKL-130/3.3(ロット72)の製剤は、水のみあるいは0.25%または1.0%酢酸を有する水中で処方されるとき、表面張力を下げる。酢酸の存在は、添加物効果を有する。同様の効果は界面張力で観察される。(
図26)
【0084】
合成カチオン性ポリペプチドは、有効な乳化剤であることができる。
図27に示されるように、我々は、ラセミのD,L―ロイシン疎水性セグメントを有する2つの例の合成カチオン性ポリペプチド、KrL-100/5.0およびKrL-160/3.2の製剤は、大豆油を乳化するのに有効であることを証明する。この乳化効果は、エナンチオピュアなロイシン疎水性ブロックを有する合成カチオン性ポリペプチドでも観察された(
図28)。
図28のデータから、乳化活性は、水のみでなく生理食塩水または水溶性キシリトール中で処方された合成カチオン性ポリペプチドによっても証明されることができることが証明される。
【0085】
合成カチオン性ポリペプチドは、界面活性特性を証明するよう設計および処方することができる。我々は、直接的な殺菌活性と界面活性特性を組み合わせた合成カチオン性ポリペプチドの製剤は、非常に有効な抗バイオフィルム薬であることも見出した。さらに、我々は、そのような製剤はグラム‐陽性とグラム‐陰性の両方の細菌に重度に汚染されている組織に生体内で非常に有効であることを証明した。
【0086】
実施例7
局所的および全身性毒性の両者についての潜在力が重要であるという理解。局所的な組織適合性と安全性は、両者とも局所的に適用される抗菌組成物の効果的な使用に望ましい。全体で、我々は、ブロックまたはセグメント化された配列配置を有する合成カチオン性ポリペプチドの製剤は、比較的高い組織適合性と局所安全性を証明することを見出した。さらに、本明細書において記載されるような適切な処方、用量および適用方法は、組織損傷を最小化して治癒を支援するために使用されることができる。
【0087】
予想外に、我々は、全身性の安全性となると、合成カチオン性ポリペプチドの異なる製剤には、大幅な変動があることを見出した。我々は、分子設計および処方の両者は、合成カチオン性ポリペプチド製剤を腹腔内に適用するとき、全身性毒性のリスクに大きく影響することを見出した。腹腔内投与は、局所適用のタイプではあるが、大幅な全身性の取り込みおよび治療薬と賦形剤の分布を促進する。従って、腹腔内投与は、抗菌医薬組成物の大部分の局所適用をするよりも全身性毒性の高いリスクを提示する。これに関していくつかのことに留意するのは重要である。第1に、無傷の、健康な皮膚以外の様々な組織に局所適用すると、全身性の取り込みが増加する可能性がある。第2に、腹腔内感染は非常に重篤で、腹腔内に適用することができるより良く安全な抗菌薬が求められている。第3に、腹腔内に、静脈内に、または全身性の取り込みを劇的に増加する可能性がある他の部位に、医薬組成物を不注意で投与することが起こる可能性がある。我々は、効果が高く、健康で無傷の皮膚以外の部位に適用されたときであっても局所的と全身性の両方の毒性のリ
スクが低い局所的に適用される抗菌医薬組成物を今開発した。
【0088】
図29は、合成カチオン性ポリペプチドの組成物を無傷の皮膚と擦過の皮膚の両方に適用したウサギ皮膚刺激モデルの結果を描写する。合成カチオン性ポリペプチドKL-140/2.5またはKrL-120/5.0を各種濃度と各種処方で適用した後、無視できる応答が観察された。
図30は、モルモット皮膚感作試験の結果を描写する。水中1重量%でKL-140/2.5(ロット73)またはKrL-120/5.0(ロット93)を適用した後に、視覚的な変化は観察されず、当該技術分野における当業者に合成カチオン性ポリペプチドには感作の可能性がないことが示された。
図31は、ラットの経口毒性試験の結果を描写する。3日間にわたり、水中のKL-140/2.5または水中のKrL-120/5.0をラットに0.625mg/kg~160mg/kgの用量で経口胃管栄養法により投与した後に、いかなる異常も認められなかった。
【0089】
腹腔内投与後の全身性毒性の試験は、予想外の結果をもたらした。
図32に描写されるように、約100アミノ酸ユニットのポリリジン(K-100)を20mg/mLの濃度、そして800/mg/kgの全体の用量で腹腔内投与すると、5匹の動物の0匹が生存し、かなり毒性があることが分かった。同様に、合成カチオン性ポリペプチドKL-140/2.5-RANはアミノ酸ユニットのブロック配列配置が欠如しており、その製剤は、5匹の動物の0匹が生存し、毒性があることが分かった。比較して、KrL-120/5.0を水中同等の濃度と用量で投与した後に、全ての動物(5/5)が生存していた。
図33に示されるように、セグメント化されたまたはブロックの配列配置のリジンおよびD,L-ロイシンを有する他のカチオン性ポリペプチド、KrL-130/3.3、の水性製剤もまた、20mg/mL(800mg/kgの用量)までの濃度で完全に生存する(5/5)高レベルの安全性を示した。
【0090】
さらなる試験から、同じ目的構造、KrL-120/5.0、を有する2つの異なるロット(93および94)のポリマーを試験するとき、予想外の変動が明らかにされた。
図34に描写されるように、ロット93は、ロット94と比較して腹腔内投与後に大幅な毒性と全身性の死亡率を引き起こすことが見出された。これは特に驚くべきことで、なぜならロット93は
図30で上述したモルモット感作試験での局所適用に対して安全であると示されていたからである。ロット93はまた、グラムー陽性およびグラムー陰性の細菌に対して生体外で有効な抗菌薬であることも示された。さらに、微生物に汚染されたブタ開放創モデルとげっ歯類非開放創モデルの両者に生体内で使用するとき安全で有効であると分かった。
【0091】
ロット93と94のさらなる解析で、注目に値する差異が、臨界凝集濃度(CAC)によって評価される多量体構造への自己組織化で観察された。ロット93は、より毒性のあるロットであり、より高い臨界凝集濃度(CAC)を有することが分かっており(130μg/mL)、ロット94(CAC:51μg/mL)よりも多量体構造への自己組織化への駆動力が弱いことを示している。
【0092】
我々は、水中で調製されるとき低いCACと高い粘度を証明する合成カチオン性ポリペプチドは、腹腔に投与されるとき比較的安全であることも分かった。
図35のデータで描写されるように、アミノ酸ユニットのブロック配列配置を有するリジン-L-ロイシン(KL)合成カチオン性ポリペプチド、KL-170/3.3およびKL-140/2.5の2つの製剤は、腹腔内投与に対して非常に安全であると示された。これらの合成カチオン性ポリペプチドおよび密接に関係している構造を有するものは、低いCAC(典型的には一桁のμg/mL、上記
図11も参照)が測定され、自己組織化のレベルが高いことを証明する。我々は、腹腔内投与後に高い安全性プロファイルを証明する合成カチオン性ポリペプチドは、水性製剤のテクスチャ解析で比較的高い粘度および/または硬度も証明す
る(
図13から
図17を参照)。従って、我々は、当該技術分野における当業者が全身性の毒性のリスクが低い合成カチオン性ポリペプチドを設計するのを指導する本明細書において記載されるような一般原則を開発した。
【0093】
処方の添加物も、腹腔内に投与される合成カチオン性ポリペプチド組成物の安全性プロファイルに影響することが分かった。
図36に示されるように、水中または水とヒドロキシエチルセルロース(HEC)中のKL-140/2.5の製剤は、安全性においていくらかの差異を証明した。とりわけ、HEC含有量が高い製剤は、この添加物は安全であると広く認められているという事実にも関わらず、より毒性があることが分かった。
図37は、腹腔内投与時に毒性を増強する可能性がある処方の変化の追加の例を示す。
【0094】
まとめると、これらの発見から、局所的な組織適合性と全身性の安全性は同一ではなく、両方に対処することが重要であることが示される。とりわけ、ポリマー設計特性と処方パラメータの両方が全身性の毒性のリスクを増加または減少することができる。ポリマー設計特性に関しては、我々のデータから、より安全な合成カチオン性ポリペプチドをより低い臨界凝集濃度により自己組織化を促進するおよび/または高い粘度を促進する設計特性により作製することができることが示される。さらに、我々は、処方添加物は合成カチオン性ポリペプチドが多量体構造へ自己組織化するのを維持または増強するおよび/またはポリマー粘度の維持または増強するように選択されるべきであることが分かった。
【0095】
局所的な有効量に対する用量を制限する全身性の毒性の比率は、組織部位および/または病態生理学的状況に依存しうる。有効量と中毒量の両者は、特定の部位または病態生理学的状況に適用した後に決定されうる。あるいは、「より高いハードル」のタイプを、予想通りの高い全身性吸収を有する部位(腹腔など)に適用した後の全身性の毒性を決定することにより確立しうる。局所的な有効量は、さらに特定の部位または病態生理学的状況(例えば、四肢損傷、軟部組織感染、副鼻腔感染)に適用した後に決定されることができる。
【0096】
実施形態において、抗菌薬または抗菌組成物は、生体内の局所的または全身性の毒性の基準に部分的に基づいて選択されうる。
【0097】
実施形態において、抗菌薬または抗菌組成物は腹腔内投与後に生体内の毒性の基準に部分的に基づいて選択されうる。
【0098】
本発明の特定の実施形態は、マウスの腹腔内に、腹腔内以外の組織に局所適用した後に微生物負荷を減少するのに有効であると予期される用量より高い用量で安全に注入されることができる抗菌薬または抗菌組成物を含みうる。
【0099】
実施例8
滅菌方法は重要である。我々は、合成カチオン性ポリペプチドに基づく抗菌医薬組成物の安全性は、分子設計(特にカチオン性―疎水性ブロック配列配置)、ポリマーの多量体構造への自己組織化および粘度に依存することが分かった。実施形態において、抗菌医薬組成物の滅菌を分子の完全性、多量体構造および粘度を維持する方法によって実行する。
【0100】
図38~41は、伝統的な放射線滅菌技術は合成カチオン性ポリペプチドの分子構造を破壊し、テクスチャ解析により評価される、組成物の硬度を減少する原因となることができることを証明する。合成カチオン性ポリペプチドの水性製剤の電子線滅菌も粘度の大幅な減少の原因となることが示される。試料は水のように流動性があることが観察された。そのように、放射線滅菌技術は、合成カチオン性ポリペプチドを有する抗菌医薬組成物の滅菌に使用するためには慎重に調整されおよび/または改造される必要がある。
【0101】
放射線技術と比較して、滅菌濾過法と加熱滅菌法(高圧蒸気殺菌法)の両者は、合成カチオン性ポリペプチドの分子構造を維持してそれを含む水溶性組成物の所望の物理的特性を維持しながら抗菌医薬組成物の有効な滅菌を提供する。
図42~46は、濾過および高圧蒸気滅菌器により滅菌した後分子の完全性を維持することを証明するSECクロマトグラムを示す。
【0102】
濾過および高圧蒸気滅菌器により滅菌すると、合成カチオン性ポリペプチドを含む水性製剤および組成物の主要で有益な物理的特性も維持される。
図47は、4.5重量%のマンニトールを有する水中1.25重量%の合成カチオン性ポリペプチドKL-120/2.5(ロットBAC004)の水性製剤は、濾過滅菌前後にほとんど同一の粘度を示したことを証明する。
図48および
図49は、合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2(ロットBAC003)の水性製剤は、全体のレベルはオートクレーブ滅菌前の試料と比較して多少減少したけれども、オートクレーブ滅菌後にずり流動化粘度のかなりのレベルを保持することを証明する。さらに、各種水性製剤および組成物をオートクレーブ滅菌すると、硬度のいくらかの減少は気づくけれども、テクスチャ解析により評価される、硬度の有益な特性は維持される(
図50および51)。データからさらに、硬度の減少は合成カチオン性ポリペプチドが高濃度で、HECなどの、特定の添加物が存在するときに見られることが示される。例として、粘度および硬度の観察された減少は、オートクレーブ滅菌処理時に起こりうる多量体構造のさらなる溶解および再徐冷処理によって生じうる。だから、これらの製剤は、粘度と硬度の利益を維持すると考えられる。
図52は、合成カチオン性ポリペプチドKrL-120/5.0の界面活性力がオートクレーブ滅菌後に維持されることを示す。
【0103】
実施例9
微生物を阻害または死滅させることにともに有効であるために、そしてまた局所および全身性の毒性のリスクを低くするために、本明細書において記載されるような抗菌医薬組成物の例は、抗菌活性と有益な物理化学的特性の両方を提供する。後者は、アルブミンで例示されるように、合成カチオン性ポリペプチドが多量体構造へより良く自己組織化すること、多くのタンパク質の水性製剤で見られるよりも高い粘度、または両者に関連する。様々な実施形態において、局所および全身性の毒性の両者のリスクのさらなる減少は、抗菌医薬組成物の滅菌により、その滅菌処理が合成カチオン性ポリペプチドの分子完全性または抗菌医薬組成物の有益な物理化学的特性に大幅に有害な影響を与えない様式でなされない限り、達成される。最終的に、生体内環境で有効性と局所および全身性の毒性のリスクの低下を達成するために、適用方法(どのくらいの量を、どのくらいの頻度で、を含む)は、特に抗菌医薬組成物を健康で、無傷の皮膚以外の組織に適用する時期、は考慮するのに重要である。
【0104】
本発明の範囲を制限するものではないが、大きな手術的または外傷性創傷を含むもののような、いくつかの臨床状況では、本明細書において記載されるような抗菌医薬組成物を「大量に」適用することが抗菌有効性を達成するために重要となりうる。上述するように、「大量に」は、70kgの人間に1g、14.3mg/kgを表す、以上の合成カチオン性ポリペプチドを含む抗菌医薬組成物の合計治療量を指す。抗菌医薬組成物を大量に適用するとき、抗菌有効性、物理化学的特性、および使用方法は、患者(ヒトまたは動物)への局所および全身性の毒性のリスクを最小化するために組み合わせて全て考慮されるべきである。本明細書において記載される抗菌医薬組成物は、複数の多種多様な臨床状況で使用されることができる。いくつかの実施形態では、手術したおよび外傷性の露出組織に直接適用することは、中でも最も価値の高い用途である。
図53は、手術的状況で慣用の創傷分類の図式描写である。創傷は、クラスI(清潔)、クラスII(清潔/汚染)、クラスIII(汚染)、クラスIV(汚れ/感染)として分類される。使用方法を考慮する
中で、クラスIとクラスIIの両方の創傷状況では、本明細書において記載される抗菌医薬組成物は組織に対して大幅な微生物汚染の前に適用されうる。いくつかの実施形態では、直接的な殺菌活性と抗菌バリア特性の組み合わせは、そのような状況で有益である。さらに、クラスIIIとクラスIVの創傷状況では、本明細書において記載される抗菌医薬組成物は組織に対して大幅な微生物汚染、またはバイオフィルム形成、または明らかな感染の後に適用されうる。いくつかの実施形態では、直接的な殺菌活性と界面活性特性の組み合わせは、そのような状況で有益である。
【0105】
直接的な殺菌活性と抗菌バリア特性の組み合わせの利益は、各種試験状況で説明されることができる。
図54は、微生物汚染したブタ生体外皮膚モデルの結果を描写する。このモデルにおいて、皮膚移植片を水平に配置して合成カチオン性ポリペプチドの製剤で前処理することができ、または抗菌製剤の流出を奨励するためにある期間垂直に傾けることができる。この方法は、生体内での組織への適用をより良く模倣するよう設計される。データが示すように、KL-120/2.5とKL-160/3.2の両者の製剤は、水平な組織試料に対しては1重量%と2重量%の両方でとても効果的である。しかしながら、試料をある期間垂直に傾けるとき、より高い濃度の製剤はより高い粘度を有し、より効果的であることが示される。両製剤は、この大きさの微生物負荷を治療するのに必要とされるより大幅に抗菌活性が強い。
【0106】
図55は、生体内のブタ開放創モデルの結果を描写し、合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2製剤を全層創傷に微生物汚染の15分前に適用した。表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)と緑膿菌(P.aeruginosa)の高密度の混合培地で接種した4時間後に評価したとき、治療した創傷は、たとえあったとしても、対照と比較してほとんど組織の微生物汚染を示さなかった。
図56は、微生物汚染の前に組織を前処理する効果は、濃度と時間の両者に依存することを証明する。従って、臨床状況では、好ましい実施形態は、有効量の合成カチオン性ポリペプチドを投与するステップを含み、露出している組織に対して複数の長期間にわたり反復適用することを含む(例えば拡張された外科手術と創傷は遅延した閉鎖を含む)。
図57は、微生物接種前の移植した外科用メッシュを有するげっ歯類創傷モデル(異なる本体として働く)の前処理の結果を示す。このモデルでは、創傷を接種後直ちに閉鎖した。データが示すように、合成カチオン性ポリペプチドKL-160/3.2を有する抗菌医薬組成物を単回投与すると、48時間で評価すると非常に大幅に(マルチーログ)CFUが減少した。
【0107】
まとめると、これらのデータから、(1)直接的な殺菌活性と微生物バリア特性の利益;(2)大幅な微生物汚染前の早期治療の価値;(3)組織の露出期間と微生物汚染の可能性があるタイミングの両方を考慮する治療計画の重要性が証明される。
【0108】
直接的な殺菌活性と界面活性特性の組み合わせの利益は、各種試験状況でも説明されることができる。
図53に示されるように、本明細書に記載される抗菌組成物は、既に組織の大幅な微生物汚染、実存するバイオフィルムあるいは明白な感染、または2つ以上の組み合わせがある多くの多様な臨床状況で適用されることができる。そのような状況は、クラスIIIおよびクラスIVの創傷を対象とする外科手技を含む。これらは、異なる本体(例えばプロテーゼ周囲の関節感染、ヘルニアメッシュ感染、乳房インプラント感染)を含むそれらを含む、手術部位の治療を含む。これらの状況はまた、頭部の洞(特に慢性副鼻腔炎を有する患者の)などの、頻繁に汚染される領域の外科的または非外科的な治療だけでなく、多くの外傷性創傷も含む。異なる本体を有する手術部位の修復は、たとえそれらに明白な感染がなくとも、バイオフィルムが形成されるリスクが高いことも考慮すべきである。上記で言及されたようにこれらの状況では、本明細書に記載される抗菌医薬組成物は、微生物汚染が実存する部位に適用されそうである。直接的な殺菌活性と界面活性特性の組み合わせは、特別な利益となることができる。
【0109】
図58および
図59は、殺菌活性と界面活性力を共に有する合成抗菌ポリペプチドの製剤を使用するバイオフィルム内で成長した緑膿菌(P.aeruginosa)に対する強力な活性を証明する。
図60~63は、これらの同様の原則を生体内で証明する結果を描写する。直接的な殺菌活性と界面活性特性を証明する本明細書に記載される抗菌組成物は、グラム陽性(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus)など)とグラム陰性(緑膿菌(P.aeruginosa)など)の両方の微生物で高度に感染している組織部位に適用されるとき、非常に効果的であることが証明される。
【0110】
微生物の数を大幅に低下することに加えて、各種実施形態において、これらの治療は、組織保護的であるように思われ、それは組織損傷の認識された原因である、組織炎症の減少に部分的に起因しうる。各種実施形態において、炎症の減少は、本明細書に記載される抗菌組成物を抗炎症薬と組み合わせることによって得られるまたは増強されることができる。
【0111】
この例は、バリア特性を直接的な殺菌活性と組み合わせる利益および直接的な殺菌活性を界面活性力と組み合わせる利益を説明する。とりわけ、当業者は、本明細書で提供されるガイダンスを利用して全ての3個の機能性:直接的な殺菌活性、バリア特性および界面活性力を有する合成カチオン性ポリペプチドを設計することができる。これらの多機能の合成カチオン性ポリペプチドを有する医薬組成物の製造において、処方および滅菌はこれらの機能性を支援する方式で行われることが重要である。
【0112】
各種実施形態において、本明細書に記載されるような合成カチオン性ポリペプチドを含む抗菌組成物は、ポリペプチドおよび全体の組成物が局所および全身性の毒性のリスクが低いこととあいまって、高レベルの抗菌活性を提供するよう設計される場合に好ましい。多量体構造への自己組織化および/または粘度を含む物理化学的特性が望ましい。