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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054407
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】治療システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 80/00 20180101AFI20230407BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
G16H80/00
A61B5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163223
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】522174281
【氏名又は名称】ロゴスサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花輪 由美子
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
【テーマコード(参考)】
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB07
4C117XB11
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE26
4C117XE37
4C117XE38
4C117XE76
4C117XJ42
4C117XJ45
4C117XQ19
5L099AA04
(57)【要約】
【課題】治療用アプリのシステムから患者に送信された情報の内、当該患者が共に治療をしている他の患者やサポーターと共有しても良いと判断した情報のみを、前記他の患者やサポーターと共有することが出来る治療システムの提供。
【解決手段】本発明の治療システム(100)は、患者同士がお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロック、又は、患者とサポーターがお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロックを、システム(100)を構成するサーバー(10)或いは患者側の情報処理端末(3)に有し、当該患者が表示しても良いと判断した情報のみを選択して前記患者以外の者(例えば他の患者或いは当該患者のサポーター)に表示する機能を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を含む複数の人間同士がお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロックを、システムを構成するサーバー或いは患者側の情報処理端末に有し、
前記情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロックは、前記患者以外の者がアクセスした場合に、当該患者が表示しても良いと判断した情報のみを選択して前記患者以外の者に表示する機能を有していることを特徴とする治療システム。
【請求項2】
患者に関する情報における前記情報処理装置或いは機能ブロックで他の者と共有された情報の情報量及び/又は共有された情報の割合を決定する機能を有する装置或いは機能ブロックを有している請求項1のシステム。
【請求項3】
所定の条件に該当する患者の情報が前記前記情報処理装置或いは機能ブロックに共有されない様に設定する機能を有する装置或いは機能ブロックを備える請求項1、請求項2の何れかのシステム。
【請求項4】
所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入及び/又は患者以外の者に対して警報を発する機能を有するブロックを含む請求項1~3の何れか1項のシステム。
【請求項5】
前記患者に関する情報は、日常生活下データ或いはワークを含む請求項1~4の何れか1項のシステム。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項の治療システムを実行する方法において、
患者に関する情報がシステムから患者側の情報処理用端末に送信された場合に、当該情報を、患者を含む複数の人間同士がお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロックに送信するか否かを判断する工程を有することを特徴とする方法。
【請求項7】
患者に関する情報における前記情報処理装置或いは機能ブロックで患者或いは患者以外の者と共有された情報の情報量及び/又は共有された情報の割合を演算する工程を有している請求項6の方法。
【請求項8】
所定の条件に該当する患者の情報が、前記前記情報処理装置或いは機能ブロックで他の患者或いは患者以外の者に共有されない様にする工程を有する請求項6、請求項7の何れかの方法。
【請求項9】
所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入を実行し及び/又は患者以外の者に対して警報を発する工程を有する請求項6~8の何れか1項の方法。
【請求項10】
前記患者に関する情報は、日常生活下データ或いはワークを含む請求項6~9の何れか1項のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理用端末(例えばスマートフォン)及び情報処理ネットワークシステム(例えばインターネット)を介して、医者と患者が直接面会することなく診断・治療・予防・再発防止・早期発見・合併している疾病の発見を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理用端末及び情報処理ネットワークシステムを介して、医者と患者が直接面会することなく治療を行うための技術(いわゆる「治療用アプリ」)が開発されている。
係る技術によれば、医療施設へ通うのが困難な過疎地や遠隔地に居住する患者の治療が可能である。
また、プライバシーの関係で「治療を行っている」という事実を出来る限り秘匿したいという要請を有し、専門医師或いは専門家による治療を望まない患者であっても受診率を向上することが可能である。
【0003】
治療用アプリの対象となる疾病には、例えば不妊症の様に夫と妻という二人の患者が同時に治療用アプリを実行することが必要なものが存在する。また、例えば不安障害やうつ病の様に、患者のみが治療を行うより、患者の親族或いはサポーターが患者と共に治療用アプリを実行することが治療に有効となる疾病も存在する。
この様な疾病の場合には、単独の患者のみが治療用アプリから情報を受けるのではなく、二人の患者が治療用アプリからの情報やその他の情報を共有することが効果的である。そして、患者とサポーターとが共に治療用アプリを実行する場合も、情報を共有することが治療に効果的である。
しかし従来は、その様な患者同士の情報の共有或いは患者とサポーターとの情報の共有に効果的な技術が提案されていなかった。
仮に、二人の患者の内の一方の患者に関する情報を常に他の患者と共有する様にシステムを構築し、或いは、患者の情報を全てサポーターと共有する様にシステムを構築してしまうと、患者が「他人に知られたくない情報」も共有されてしまう。そして、「他人に知られたくない情報」が他の患者或いはサポーターに知られてしまうということは、患者が治療用アプリを実行することを躊躇する要因となり、治療用アプリ実行の動機付けに悪影響を与える恐れがある。
【0004】
その他の従来技術として、妊婦の装身具に胎児の月齢等の情報等を表示させて、異常事態等が発生した際に医療関係者や周囲の人々に前記情報を迅速に取得させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし係る技術(特許文献1)は、前記送信具を見た人々に胎児の情報を認識させるものであり、治療用アプリにおいて、システムから患者に送信された情報を、当該治療用アプリを共に実行する他の患者やサポーターに共有させることは企図していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6378458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、治療用アプリのシステムから患者に送信された情報の内、当該患者が共に治療をしている他の患者やサポーターと共有しても良いと判断した情報のみを、前記他の患者やサポーターと共有することが出来る治療システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の治療システム(100)は、
患者を含む複数の人間同士(例えば患者同士或いは患者とサポーター)がお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロックを、システム(100)を構成するサーバー(10)或いは患者側情報処理端末(3)に有し、
前記情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロック(シェアルームに)は、前記患者以外の者(例えばその他の患者或いはサポーター)が(前記情報処理装置或いは機能ブロックに)アクセスした場合に、当該患者が表示しても良いと判断した(当該患者の)情報のみを選択して前記患者以外の者(例えば他の患者或いは当該患者のサポーター)に表示する機能を有していることを特徴としている。
【0008】
ここで「患者」なる文言は、本発明のシステムによる治療の対象となる疾病(例えば不妊症、不安障害、うつ病、心因性ED等)に罹患している可能性が有ることを自ら認識しており、且つ、その治療を行う意思のある個人を意味している。換言すれば、「患者」なる文言は、医療機関において医師、その他の関係者の指導により当該治療を行っている者のみに限定される訳ではなく、第三者が見れば「健常」と判断されるような者も包含し得る。
また「サポーター」なる文言は、上述した「患者」の治療を行う意思を支援する人を意味しており、親族、配偶者のみならず、ソーシャルワーカーやボランティア等も包含する。
【0009】
本明細書において、患者を含む複数の人間同士(例えば患者同士或いは患者とサポーター同士)がお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロックを「シェアルーム」と記載する場合がある。そして、前記患者以外の者(例えばその他の患者或いはサポーター)がシェアルームにアクセスした際に、当該患者が表示しても良いと判断した(当該患者の)情報のみを選択して表示することを、その情報の「共有」と記載する場合がある。換言すれば、本明細書における「シェアルーム」なる文言は、本発明のシステムを利用している患者に関する情報であって、当該患者が、当該患者と本発明のシステムを一緒に利用して治療を行っている患者以外の者(例えば他の患者或いは当該患者のサポーター)に表示しても良いと判断した情報が記録され、且つ、前記患者以外の者(他の患者或いはサポーター)がアクセス可能な情報処理装置又は機能ブロックを意味している。
情報処理装置なる文言は、コンピュータ、スマートフォン、タブレット等、情報処理機能を有する機器を意味している。
ここで、シェアルームで共有される情報は、患者に関する情報に限定されるものではなく、前記患者以外の者(例えば他の患者)に関する情報も含まれる。同様に、前記サポーターに関する情報も含まれる。
【0010】
本発明は、
制御装置(1)として機能するサーバー(10)と、
患者に使用される情報処理用端末(3)を有し、
前記サーバー(10)は、
日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有するブロック(10A1:診断横断的アセスメントパート)、及び/又は、当該疾患に特徴的な症状に対して患者がどの程度適応的に行動できているのか或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有するブロック(10A2:疾患特異的アセスメントパート)と、
前記ブロック(診断横断的アセスメントパート10A1及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2)のアセスメント(診断横断的アセスメントパート10A1の評定、及び/又は、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定)を分析して患者を特定の集団(スタック或いはグループ)に分類し、分類された集団とリンク付けされた治療モジュールを選択する機能を有するブロック(10B:モジュール選択パート)、
を有するシステム(100)に対して適用することが出来る。
勿論、その他のシステムに対しても本発明を適用することは可能である。
【0011】
本発明において、患者に関する情報における前記情報処理装置或いは機能ブロック(シェアルーム10E)で他の患者或いは患者以外の者(例えば、サポーター)と共有された情報の情報量及び/又は共有された情報の割合(シェア率)(共有された情報/患者に関する情報)を決定する機能を有する装置或いは機能ブロック(例えば、シェア情報演算パート10F)を有しているのが好ましい。
また本発明において、所定の条件(例えば、患者が絶対に共有したくないデータとして予め設定していること)に該当する患者の情報が前記前記情報処理装置或いは機能ブロック(シェアルーム10E)は共有されない機能を有する装置或いは機能ブロック(例えば、禁忌データパート10G)を有しているのが好ましい。
そして本発明において、所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入及び/又は患者以外の者(例えばサポーター)に対して警報を発する機能を有するブロックを含むことが好ましい。
【0012】
上述した治療システム(100)を実行する本発明の方法は、
患者に関する情報がシステム(100)から患者側の情報処理用端末(3)に送信された場合に、当該情報を、患者を含む複数の者(例えば患者同士或いは患者とサポーター)がお互いの情報を共有する機能を有する情報処理装置或いは機能ブロック(シェアルーム10E)に送信する(共有する)か否かを判断する工程を有することを特徴としている。
本発明の方法において、(例えばシェア情報演算パート10Fにより、)患者に関する情報における前記情報処理装置或いは機能ブロック(シェアルーム10E)で患者以外の者(例えば他の患者或いはサポーター)と共有された情報の情報量及び/又は共有された情報の割合(シェア率)を演算する工程を有しているのが好ましい。
また本発明の方法において、所定の条件(例えば、患者が絶対に共有したくないデータとして予め設定していること)に該当する患者の情報が、(例えば禁忌データパート10Gにより)前記前記情報処理装置或いは機能ブロック(シェアルーム10E)で患者以外の者(例えば他の患者或いはサポーター)に共有されない様にする工程を有するのが好ましい。
そして本発明において、所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入及び/又は患者以外の者(例えばサポーター)に対して警報を発する工程を含むことが好ましい。
本発明のシステム(100)或いは方法において、前記患者に関する情報は、日常生活下データ或いはワークを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述の構成を具備する本発明によれば、患者を含む複数の者(例えば患者同士或いは患者とサポーター)同士の情報の共有が効果的に実行されるので、例えば、男女の患者が共に治療用アプリを実行した方が良い結果が出る不妊症や、患者とパートナーが一緒に取り組むことで治療効果が向上する不安障害やうつ病においては、治療の効率が向上する。
また、情報を共有するためには治療システム(100)内のシェアルーム(10E)にアクセスしなければならないため、シェアルーム(10E)にアクセスすることが許されない第三者が患者の情報を共有することは無い。そのため、患者が自らの情報をシェアルーム(10E)で共有することに対する障壁が小さくなり、患者が積極的に患者以外の者、例えば他の患者或いはサポーターと共有することが期待される。
【0014】
さらに本発明によれば、患者以外の者(例えば他の患者或いはサポーター)は、シェアルーム(10E)で情報が共有されている場合に当該情報の内容を知ることが出来るが、シェアルーム(10E)で共有されていない情報についてはアクセスすることが出来ない。すなわち、患者以外の者(例えば他の患者或いはサポーター)は、どの情報が共有されていないのかについては把握することが出来ない。そのため、情報を共有しなかったことが患者以外の者(例えば他の患者或いはサポーター)に知られることがなくなり、患者は他の患者以外の者(例えば患者或いはサポーター)に対して、情報を共有しなかったことについて、無用な配慮する必要が無い。
また、前記患者以外の者(例えばその他の患者或いはサポーター)が(前記情報処理装置或いは機能ブロックに)アクセスしても、当該患者が表示しても良いと判断した(当該患者の)情報のみが選択的に前記患者以外の者(例えば他の患者或いは当該患者のサポーター)に表示され、当該患者が表示することが不都合であると判断した情報は前記患者以外の者には表示されない。そして、前記患者以外の者(例えばその他の患者或いはサポーター)は、当該患者が情報を表示することは不都合であると判断したことを知ることは出来ない。そのため患者は、他の患者以外の者(例えば患者或いはサポーター)に対して情報を表示することが不都合であると判断したことについて、無用な配慮をする必要が無くなる。
その結果、情報を共有しなかったこと或いは情報を表示することが不都合であると判断したことについて、当該患者は前記患者以外の者(例えば他の患者或いはサポーター)に配慮する必要が無くなり、精神的な負担が軽減され、当該患者における治療の動機付けがより一層向上する。
【0015】
ここで、例えば不安障害やうつ病では、患者が自らの情報を他者と共有するということは治療に大変に効果的であり、治療の進捗の目安ともなり得る。
そのため、本発明によれば、患者が自らの情報を他者とどの程度共有することが出来たかを、シェアルーム(10E)で共有している情報量及び/又はその割合(シェア率)という客観的なパラメータで判断の一助とすることが出来る。そして、係るパラメータを用いて治療の進展の度合いを正確に把握することも可能である。
さらに本発明において、所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入及び/又は患者以外の者(例えばサポーター)に対して警報を発する様に構成すれば、例えば患者が深刻な状態に陥った場合に、その様な事態から脱するのに有効な緊急メッセージ(例えば、「先ず落ち着いて水を飲みましょう」等のメッセージ)を送信し、或いは、情報を共有している患者以外の者(例えば他の患者B及び/又はサポーターC)に対して緊急警報(アラート)情報を送信して、深刻な状態に陥った患者(A)を直ちに支援して救うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るシステムの概要を示す機能ブロック図である。
図2】複数の患者が治療用アプリを実行する場合の実施形態で用いられるサーバーの要部を示す機能ブロック図である。
図3】患者とサポーターが治療用アプリを実行する場合の実施形態で用いられるサーバーの要部を示す機能ブロック図である。
図4図2図3におけるモジュール選択パートの機能ブロック図である。
図5図2の実施形態において、2名の患者とシェアルームと医療機関との間における情報の授受を示す説明図である。
図6図3の実施形態において、患者とサポーターとシェアルームと医療機関との間における情報の授受を示す説明図である。
図7】実施形態において、患者の情報をシェアルームに送信する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では、患者が別の患者と情報を共有する場合と、患者とそのパートナーが情報を共有する場合について、主として説明する。換言すれば、図示の実施形態では、患者以外の者として、その他の患者とパートナーが例示されている。
図1において、全体を符号100で示すシステムは、サーバー10(例えばコンピュータ)、患者に使用される情報処理用端末3(患者側の情報処理用端末)、医療機関で使用される情報処理用端末4(医療機関側の情報処理用端末)を有しており、これらは例えば情報処理ネットワーク20(例えばローカルエリアネットワーク或いはインターネット)により相互に接続されている。
サーバー10の詳細は図2図3を参照して後述する。
【0018】
図1において、患者側の情報処理用端末3は「日常生活下データを取得する装置」としての機能を有しており、例えばスマートフォン或いはパーソナルコンピュータ(PC、パソコン)等の情報処理機能及び通信機能を有する電子装置により構成されている。日常生活下データを取得する装置として、ウェアラブル機器等を用いることも出来る。
ここで日常生活下データは、日常生活の中で様々な質問に答えてもらうことで収集する心理データを含む。また、例えば心拍数、血圧、血中酸素濃度、歩数、睡眠時間や睡眠の質(眠りが深い・浅い等)、活動量、行動範囲(行動履歴:例えばGPSにより計測・取得)、血糖値等の生理データ、行動データも含んでいる。
ここで患者側の情報処理用端末3はライン3L、ネットワーク20を介してサーバー10にアクセスするツールとして用いられるのみならず、診断横断的アセスメントに役立てるため、患者の「日常生活下データ」を計測しサーバー10側に送信するためのツールとしても機能する。
医療機関側の情報処理用端末4は、情報処理機能及び通信機能を有する電子装置(例えばPC)を利用することが出来るが、スマートフォンを利用することも可能である。
【0019】
サーバー10にはシェアルーム10Eが設けられている。シェアルーム10Eは、患者同士が治療に必要な情報を共有し、或いは、患者とサポーター(例えば家族、ソーシャルワーカー、友人、ボランティア等)が治療に必要な情報を共有する情報処理装置又は機能ブロックで構成される。図1では、シェアルーム10Eはサーバー10の内部に設けられた機能ブロックとして図示されているが、シェアルーム10Eはサーバー10とは別個に設けられた情報処理装置(PC、その他)であっても良いし、サーバー10とローカルエリアネットワークを構成する情報処理装置であっても良い。
図1において、サーバー10と医療機関側の情報処理用端末4は、システム100内における別個の情報処理装置として示されているが、サーバー10と医療機関側の情報処理用端末4が情報的に直接的に接続されていても良く、或いは、サーバー10が医療機関側の情報処理用端末4を内蔵しても良い。
明確には示されていないが、複数の患者側の情報処理用端末3及び複数の医療機関側の情報処理用端末4をネットワーク10に接続することも出来る。なお、患者側の情報処理用端末3として当該患者の治療を支援するサポーター(家族、ソーシャルワーカー、友人、その他)の情報処理用端末を意味する場合もある。
さらに、図示の実施形態ではシェアルーム10Eはサーバー10に設けられているが、患者側の情報処理用端末3内にシェアルームを設け、サーバー10側には患者側の情報処理用端末3に送信された患者に関する各種情報(ワーク等の情報)の種類や情報と、共有が可能となった情報(シェアされた情報)の種類の情報量だけを記録し、各種機能ブロックに送信する機能を実行するブロック(図示せず)を構成することが出来る。その様に構成した場合には、サーバー10の容量を小さくすることが可能である。
【0020】
図示の実施形態に係るシステム100におけるサーバー10について、図2の機能ブロック図を参照して説明する。
図示の実施形態では、診断用アプリ(アセスメントモジュール)と治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)が一体に表現されているが、診断用アプリ(アセスメントモジュール)と治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)を別体に構成し、診断用アプリ(アセスメントモジュール)のアセスメント結果に対して、治療・予防用アプリ(治療モジュール・評価モジュール)を処方する(医師が処方する場合も含む)様に構成することが出来る。
図2において、サーバー10(図2では一点鎖線で示す)は、アセスメントパート10A(診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2)、モジュール選択パート10B、治療モジュールパート10C、評価パート10D、シェアルーム10E、シェア情報演算パート10F及び禁忌データパート10Gを有している。
また図2において、情報伝達ラインSL1、・・・は、有線のみならず、無線で構成することが出来る。
【0021】
図2は、例えば不妊治療の様に、2名の患者(患者A、患者B)が治療用アプリを実行する場合を示している。
患者A側、患者B側のそれぞれの情報処理用端末3A、3Bからサーバー10へアクセスしてきた患者A、B(対象者)の情報は、サーバー10における図示しないパートで認証を受け、情報伝達ラインSL1、SL2を介して診断横断的アセスメントパート10A1に送信される。
【0022】
サーバー10にアクセスした患者A、B(の情報)は、アセスメントパート(診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2)に入力される前に、図示しないパート(仮に質問パート)により、主訴、現病歴、既往歴等が質問され、それと共に、既存の各種評価と、心理的機能障害(精神症状)のまとまりを分類する基準(操作的診断基準)に基づいて、アクセスしてきた患者に対して問診が行われる。具体的には、質問パートでは、例えば、疾病に係る症状チェックリストの質問や、精神疾患簡易構造化面接法によるチェックリスト形式の質問を、アクセスしてきた患者に対して実行する。
アクセスしてきた患者の質問パートにおける入力や回答に基づき、特定の疾患が顕在しているか否かの判断や、リスクファクターの有無についての判断が可能になり、アセスメントパート10A1、10A2におけるアセスメントに役立てることが出来る。
【0023】
図2において、診断横断的アセスメントパート10A1は、患者側の情報処理用端末3A、3B(日常生活下データを取得する装置)により取得された日常生活下データを活用しながら、図示しない質問パートによる質問、問診に対する患者回答に基づいて、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有しており、量的測定指標を用いて評定を行う。例えば、適応的な行動として、
不快な思考や感情を回避しないで、そのままにしておく「アクセプタンス」、
考えと現実を区別して、不快な思考や感情にのみ込まれない「脱フュージョン」、
目の前の現実への気づきを保持する「今、この瞬間との接触」、
俯瞰的な視点から、自分自身が気づいていることに気づく「視点としての自己」、
生きたい「生き方」を明確にする「価値の明確化」、
生きたい「生き方」を追求する「コミットメント」等を想定している。
心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動を評定することにより、アクセスしたユーザー(患者:対象者)の心理的柔軟性を評定する。心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、上述の適応的な行動が見られる対象者であれば、健康的であり、生活の質が高く、ストレスが低く、各種疾患に対する抵抗力が高い状態にあると判断できる。
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメント結果は、情報伝達ラインSL5を介して、モジュール選択パート10Bに送信される。
【0024】
診断横断的アセスメントパート10A1では疾患を特定するための評定はせず、疾患に特徴的な症状の評定も行わない。上述した様に、診断横断的アセスメントパート10A1では、日常生活下データを活用しながら、心理社会的問題、生活適応やストレス等に対して、患者がどの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定するからである。その様な評定を行う結果、診断横断的アセスメントパート10A1では、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することが可能であり、プロセスベースドCBTが実行可能である。
診断横断的アセスメントパート10A1で、心理社会的問題、生活適応やストレス等の様々な疾患に共通している要因に基づいて患者を理解することは、図示の実施形態における重要な特徴の一つであり、従来の各種治療用アプリケーションと明確に相違している点である。
診断横断的アセスメントパート10A1でのアセスメントが終了した対象者の情報(評定結果を含む)は、情報伝達ラインSL31を介して疾患特異的アセスメントパート10A2に送信されると共に、情報伝達ラインSL41を介して患者側の情報処理用端末3A、3Bに送信される。
【0025】
図2において、疾患特異的アセスメントパート10A2は、患者(対象者)が、当該疾患に特徴的な症状に対して、どの程度適応的に行動できているのか、或いは非適応的に行動しているのかを評定する機能を有しており、量的測定指標を用いて評定を行う。
疾患特異的アセスメントパート10A2において、患者(対象者)が、疾患に特徴的な症状に対して、上述の非適応的な行動が評定されたならば、情報伝達ラインSL4を介して、当該患者(対象者)の情報が、診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定と共に、モジュール選択パート10Bに送信される。また、当該アセスメントパート10A2の評定結果は、情報伝達ラインSL42を介して患者側の情報処理用端末3A、3Bに送信される。
ここで、図示しない質問パートにおけるインテーク情報や問診の結果、対象者には特定の疾患の兆候が無い場合(例えば健常者である場合)に、疾患特異的アセスメントが行われない場合も存在する。その様な場合は、診断横断的アセスメントパート10A1での評定が終了した対象者の情報は、診断横断的アセスメントパート10A1での評定結果と共に、情報伝達ラインSL5を介して、疾患特異的アセスメントパート10A2をバイパスして、モジュール選択パート10Bに送信される。
また、質問パートにおけるインテーク情報や問診の結果、対象者が健常者であることが判明した場合には、診断横断的アセスメントパート10A1で評定することなく、対象者を健常者に相当するクラスタに分類することが可能である。
【0026】
図4を参照して説明する様に、モジュール選択パート10Bでは、統計学的手法(例えばクラスタ分析)を用いて対象者を特定のグループに分類し(クラスタ分析の場合にはクラスタに分類し)、当該グループ或いはクラスタとリンク付けされた治療モジュールを選択する。換言すれば、モジュール選択パート10Bは、診断横断的アセスメントパート10A1の評定、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて治療モジュールを選択する機能を有している。
診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2のそれぞれについてクラスタ分析を行うことが出来るが、診断横断的アセスメントパート10A1の評定及び疾患特異的アセスメントパート10A2の評定を統合して、クラスタ分析を行っても良い。
モジュール選択パート10Bは、診断横断的アセスメントパート10A1の評定結果、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定結果から、患者が分類されたクラスタに基づいて、治療モジュールを選択する。
【0027】
システム100を診断用アプリと治療・予防用アプリとに分離して構成した場合においても、診断用アプリにおけるアセスメントパート(アセスメントモジュール)におけるクラスタ判定による各クラスタに対して、自動的に、診断横断的アセスメント10A1に基づく治療モジュール、及び/又は、疾患特異的アセスメント10A2に基づく治療モジュールが選択、指示される。ここで、診断用アプリと治療・予防用アプリとが一体に構成されたシステム100においても、別体に構成されている場合においても、治療モジュールの選択、指示については、医師がアセスメント結果に基づいて手動により治療モジュールを選択、指示することが可能である。
モジュール選択パート10Bで選択された治療モジュールは、情報伝達ラインSL6により治療モジュールパート10Cに送信される。
【0028】
図2において、治療モジュールパート10Cは、モジュール選択パート10Bで選択した治療モジュールを患者に対して実行する、或いは、モジュール選択パート10Bで選択した治療モジュールを患者に対して伝達する機能を有している。
治療モジュールパート10Cで実行する治療モジュールは、診断横断的な介入では、「心理的柔軟性」の評定結果に対して、健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。なお、本明細書において、心理療法の実行を、患者に対する介入と表現する場合がある。
【0029】
治療モジュールとしては、疾患特異的な介入では、各疾患に特有な場面、状況等に対して、各クラスタに適切な技法で、当該疾患に応じた健康で新しい行動パターンの学習/獲得を目指すための心理的介入を行う。治療モジュールパート10Cでは、「仮想現実」を用いた治療モジュールの提供が可能である。
図示の実施形態では、診断横断的な介入が疾患特異的な介入に優先する。ただし、それに限定されない場合も存在する。
【0030】
治療モジュールパート10Cには、分類されたクラスタに対応して、患者が実行するべきホームワークが用意されている。治療モジュールパート10Cがホームワークを選択するに際しては、図2では図示しない記憶装置(データベース:図示せず)に記憶されており、治療モジュール毎にリンク付けされたホームワークを参考にすることが出来る。係るホームワークは、患者が実施すると症状の改善が期待でき、且つ、患者の主体性を向上させる様な内容に、予め編集されている。
治療モジュールパート10Cで実行した治療モジュールと治療結果は、情報伝達ラインSL8により評価パート10Dに送信される。ホームワーク及びその達成状況についても、評価パート10Dに送信される場合もある。
【0031】
また、治療モジュールパート10Cは、図示しないインターフェース及び情報伝達ラインSL7を介して、実行した、或いは実行する治療モジュールと治療結果を患者側の情報処理用端末3A、3Bに伝達する機能を有している。前記送信される内容にはホームワーク、治療に有用な情報(TipS)が含まれる。
係る機能により、ネット環境が整っていない場所であっても、或いはオフラインであっても、治療プログラムを実行できる。例えば通信・ネット環境の不具合発生時や、治療が終了してシステム100にアクセスできなくなった場合(非アクティベート化された場合)でも、当該患者は治療モジュールで行われたエクササイズやホームワーク、治療に有用な情報(TipS)の一部を引き続きオフラインで実行・閲覧出来ることで、治療の中断を予防し、治療終了後も治療効果の持続と再発予防に役立てることが出来る。
ただし、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、TipSについて、介入の記録としてシステム100側で記録されないので、適切な評価が出来なくなる可能性を防止するため、図示はされていないが、オフラインで行われたエクササイズやワークアウト、ホームワーク、TipSについてシステム100側に送信する機能を有する様に構成することが可能である。
【0032】
図2において、評価パート10Dは、治療モジュールパート10Cで実行した治療モジュールによる治療の効果を評価する機能を有しており、既存の評価尺度等を用いて、所定のアルゴリズムに従って治療の効果を評価する。ツールである評価尺度或いは測定指標は治療モジュールパート10Dに記憶されている。或いは、図示しない記憶装置(データベース)に治療モジュール毎の評価尺度或いは測定指標が記憶されていても良い。
ここで、患者側の端末3A、3Bやウェアラブル機器等を用いて患者の日常生活下データを取得して、記録し、治療前後の効果測定の結果をレポート形式にすることが可能である。そして評価パート10Dは、患者(或いは医師)に対してその様なフィードバックを実行する機能を有することが可能である。
評価パート10Dによる治療効果の評価結果は、情報伝達ラインSL9により患者側の情報処理用端末3A、3Bに送信される。例えば治療モジュールとしてチャットボットを用いた場合に、チャットボットによる治療効果の評価が患者に表示される。
患者に送信される評価内容には、例えば、症状を改善するための助言等が含まれる。
【0033】
評価パート10Dにおいて、治療効果について良好な評価がされない場合には、その評価結果が情報伝達ラインSL10によりモジュール選択パート10Bに送信される。評価パート10Dからの良好ではない評価を受信した場合には、モジュール選択パート10Bは提案した治療モジュールは効果が低かったと判断して、新たに治療モジュールを選択、提案する。明確には図示しないが、治療モジュールパート10Cは当該新たな治療モジュールを患者に送信(提供)し、評価パート10Dは新たな治療モジュールによる治療効果を評価する。
【0034】
図2において、患者側の情報処理用端末3A、3Bは、情報伝達ラインSL1、SL2により、診断横断的アセスメントパート10A1に接続している。図1を参照して前述したように、患者側の情報処理用端末3A、3Bは、患者の「日常生活下データ」を計測し診断横断的アセスメントパート10A1送信する機能を有しており、係る機能を実行するため、情報伝達ラインSL1、SL2(或いは図示しない情報伝達ライン)を介して診断横断アセスメントパート10A1に患者の「日常生活下データ」を送信する。
【0035】
図2において、サーバー10は、患者Aと患者B(患者同士:不妊治療を行う夫婦)がお互いの情報を共有する機能ブロックとして、シェアルーム10Eを有している。シェアルーム10Eは、治療システム100を利用している患者に関する情報であって、当該患者が、治療システム100を一緒に利用して治療を行っている他の患者或いは当該患者のサポーター(図3の実施態様)に開示しても良いと判断した情報が記録され、且つ、前記他の患者或いはサポーターがアクセス可能な機能ブロックである。
アセスメントパート10A1、10A2の評定結果、治療モジュールの内容、治療効果の評価結果、ホームワーク、治療に有用な情報(TipS)等は、患者A、Bの各々に対して提供される。そして提供された情報は、情報伝達ラインSL43、SL44を介してシェアルーム10Eに送信可能であり、患者A、Bで共有化して治療効果を向上させることが出来る。
しかし、係る情報をシェアルーム10Eに送信するか否かは、個々の患者の判断に委ねられる。
【0036】
シェアルーム10Eにより、患者同士の情報の共有或いは患者とサポーターとの情報の共有が効果的に実行されるため、(他の患者或いはサポーターと共に治療用アプリを実行することで治療効率が向上するタイプの疾病においては特に)治療の効率が向上する。
また、シェアルーム10Eへのアクセスが許されない第三者が患者の情報を共有することは無いため、患者が自らの情報をシェアルーム10Eで共有することに対する障壁が小さくなり、患者が積極的に他の患者或いはサポーターと共有することが期待出来る。
さらに、他の患者或いはサポーターは、シェアルーム10Eで共有されていない情報についてはアクセスすることが出来ず、また、どの情報が共有されていないのかについては把握することが不可能である。そのため、情報を共有しなかったことが他の患者或いはサポーターに知られることがなく、患者は他の患者或いはサポーターに対して、情報を共有しなかったことについて配慮する必要が無く、患者の精神的な負担が軽減されるので、実施形態の治療システム100により治療を進めようとする動機付けがより一層向上する。
【0037】
ここで、特に疾病の種類によっては、患者は、自らに関連する情報を他の患者に対して開示したがらないことが良く知られている。その様な場合、患者が自らの情報をシェアルームで共有した情報の情報量と、共有された情報の割合(シェア率)(共有された情報/患者に関する情報)は非常に低い。一方、疾病から回復する傾向にある場合には、患者が自らの情報を他の患者に対して開示する(共有する)情報の情報量は増大し、及び/又は、共有された情報の割合が上昇することも知られている。
図示の実施形態では、サーバー10は、患者に関する情報に対して、シェアルーム10Eで共有可能となった情報の情報量を演算する機能と、共有された情報の割合であるシェア率を演算する機能を有するシェア情報演算パート10Fを備えている。係るシェア率は、患者の治療方針を判断する材料となる。
シェア情報演算パート10Fは、情報伝達ラインSL45によりシェアルーム10Eと情報授受することにより、患者に関する情報に対して、シェアルーム10Eで共有可能となった情報の情報量と、共有された情報の割合(シェア率)の双方或いは何れか一方を演算することが出来る。そして、情報伝達ラインSL46を介して、共有可能となった情報の情報量とシェア率を医療機関側の情報処理用端末4に送信する機能を有している。医療機関側は当該情報量とシェア率をチェックし、以て患者の疾病からの回復の度合いを判断して、患者に対してアドバイス等を送信することが出来る。例えば、共有可能となった情報の情報量が少ない場合には、それに対応した疾病教育を患者に対して配信することが出来る。
図2では、シェア情報演算パート10Fはサーバー10の内部に包含された機能ブロックとして表示されているが、サーバー10とは別途構成された情報処理装置によりシェア情報演算パートを構成しても良い。
【0038】
明確には図示されていないが、患者側の情報処理用端末3A、3B、或いは端末3A、3Bに情報的に接続された機器により患者A、Bの日常生活下データを取得し、取得された日常生活下データをサーバー10に送信し、患者の情報としてシェアルーム10Eで供用することが出来る。
例えば、図3で後述する不安障害やうつ病の場合に想定されるが、所謂「ひきこもり」の患者の情報処理用端末3がスマートフォンであれば、スマートフォンの位置が変わることにより、患者が移動したことが確認され、その事実(患者が移動したという事実)をシェアルーム10Eでサポーター(図3参照)、或いは他の患者が共有することが出来る。
そして、端末3を家電と接続することにより、家電の使用により患者が日常生活を送っていることを、シェアハウス10Eを介してサポーター(図3)、或いは他の患者が確認することが出来る。
そして、所有者の行動を自動的に送信する様なアプリケーションソフトを患者の情報処理用端末3であるスマートフォンにインストールすることにより、患者の所有するスマートフォンを介して日常生活下データを取得することが可能である。その様なアプリケーションソフトを患者のスマートフォンにインストールする際に、患者の同意を得た上で、日常生活下データを自動的にサーバー10のシェアルーム10Eで共有することも可能である。
なお、モーションセンサーによる動き、バイオマーカー、臭気は有効な日常生活下データとなり得る。
【0039】
禁忌データパート10Gをサーバー10内に構成して、禁忌データパート10Gは、患者が「絶対に他人に知られたくない」と考える情報(絶対に他人と共有したくない情報)を予め「禁忌事項」として登録し、例えば日常生活下データを自動的にシェアルームで共有する場合であっても、当該情報はシェアルーム10Eで共有されない様にする機能を有することが可能である。
図2では、禁忌データパート10Gはサーバー10内の機能ブロックとして構成され、情報伝達ラインSL47によりシェアルーム10Eと接続され、禁忌事項がシェアルーム10Eに記録されることを禁止している。ただし、禁忌データパートをサーバー10とは別個の情報処理装置により構成することも可能である。
この禁忌データパート10Gを設けることにより、患者が共有されたくない情報が他の患者(図2)或いはパートナー(図3)と共有されることが確実に防止される。そのことは、患者がシステム100で治療を受ける或いは継続する動機付けに寄与する。
図2において、シェアルーム10Eには、システム100を利用している患者(患者A、患者B)のためのチャットルーム10EDが設けられ、患者同士のコミュニケーションに寄与している。例えば、患者A、患者Bの何れかにおいて、チャットルーム10EDへのログイン情報が一定期間なかった場合には、システム100から患者に対してメッセージが発信される。チャットルーム10EDのログイン情報のみならず、患者の位置情報、コミュニケーションが一定期間以上止まっている場合にも、同様なメッセージがシステム100から発信される様に構成されている。
【0040】
図2において、予め想定された危機的状況が生じていることが、日常生活下データから推定される場合には、当該危機的状況にある患者に対して、非常警報(アラート)としての情報、信号を発生して介入する機能を有する警報パート10Hが、サーバー10に備わっている。警報パート10Hは患者の状況確認や生存確認を行う機能を有しており、患者が危機的状況に陥った際に、システム100が患者に対して緊急的な介入(例えばコンテンツの提供等)を実行する様に構成されている。
日常生活下データを取得してエコロジーモメンタルアセスメント(EMA)を実行して、例えばうつ患者が手首を自傷する行為(リストカット)の可能性が急激に高まっているという評定がされた場合には、エコロジーモメンタルインターベンション(EMI)を実行し、例えば、システム100側から患者側の情報処理用端末3に対して、「先ず落ち着いて水を飲みましょう」のようなメッセージを発信する。それと共に、サポーターに連絡する。
【0041】
図2において、緊急パート10Hは、アクセスパート9A、情報伝達ラインSL50を経由して、日常性格下データを取得して、瞬間々々におけるアセスメント(EMS)を実行する。係るアセスメントにより、患者Aが深刻な状態に陥っている旨の評定が為されたならば(例えば、うつ患者である患者Aが手首を自傷する可能性が急激に高まっている旨の評定が為された場合には)、情報伝達ラインSL51を介して医療機関4にその旨を伝達することが出来る。これにより医療機関は必要な措置を講じることが可能になる。
また、情報伝達ラインSL52を介して、当該深刻な状態に陥っている患者Aに対して、深刻な状態を脱するための緊急メッセージ(例えば、「先ず落ち着いて水を飲みましょう」等のメッセージ)を伝達することも出来る。さらに、情報伝達ラインSL53を介して情報を共有している他の患者Bに対して緊急メッセージを伝達して患者Aとコンタクトを取るべきことを伝達することも出来る。
図3で示す様に患者AをサポーターCが支援している場合には、緊急パート10Hから情報伝達ラインSL54を介してサポーターCに対して緊急警報(アラート)情報が送信され、深刻な状態に陥った患者Aに対してサポーターCが直ちに支援することが可能である。
すなわち緊急パート10Hは、「所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入及び/又はサポーターに対して警報を発する機能を有するブロック」であり、「所定の条件を満たす場合に、患者に対する介入及び/又はサポーターに対して警報を発する工程」を実行する。
【0042】
図2では緊急パート10Hはサーバー10内に設けられている。しかし、患者側の情報処理用端末3内に緊急パート10Hを設け、或いは、緊急パート10Hと同様の機能を有するプログラムをインストールすることが可能である。
また、患者側の情報処理用端末3内に深刻な状態に陥った際に親しい者に連絡する機能を有する公知のソフトウェアが既にインストールされている場合には、緊急パート10Hは当該公知のソフトとサーバー10をリンクして、データの統括を行う機能を有しているのが好ましい。
【0043】
例えば日常生活下データから長時間に亘って患者が動いていないことが推定される場合には、患者側の情報処理用端末3と情報的に接続された機器から強烈な臭気(例えば、ワサビ臭)を発生する様に構成することも可能である。
さらに、必要な救助を自発的に求めることが出来ないうつ患者の場合に、当該患者の日常生活下データからシステム100が危険な状況を判断して、ソーシャルワーカー等のサポーター(図3)に対してメール(ショートメッセージ)を送信することも可能である。
【0044】
図2では、2名の患者A、B(例えば不妊治療を行う夫婦)がシェアルーム10Eを利用する態様を示しているが、図3では、患者Aと、患者を支援するサポーターC(家族、ケースワーカー、友人、ボランティア等)がシェアルーム10Eを利用する。
図3に関する説明は、主として図2と異なる部分について行う。
【0045】
図3では患者AをサポーターCが支援する場合を示しており、患者A側の情報処理用端末3A(患者の端末、日常生活下データを取得する装置)からサーバー10へアクセスしてきた患者(対象者)の情報は、サーバー10における図示しないパートで認証を受け、情報伝達ラインSL1を介して診断横断的アセスメントパート10A1に送信される。
一方、サポーターC側の情報処理用端末3C(サポーターの端末)からサーバー10へアクセスしてきたサポーターCの情報は、サーバー10における図示しないパートで認証を受け、情報伝達ラインSL2-1を介してモジュール選択パート10Bに送信される。すなわち、サポーターCのアクセスに関連する情報は、アセスメントパート10A(診断横断的アセスメントパート10A1、疾患特異的アセスメントパート10A2)には送信されない。
【0046】
図3において、治療モジュールパート10Cでは、モジュール選択パート10Bで選択した治療モジュールを患者Aに対して実行する、或いは、モジュール選択パート10Bで選択した治療モジュールを患者Aに対して伝達する。
図3において、患者AのサポーターCがサーバー10にアクセスすると、図示しないパートで認証を受け、情報伝達ラインSL2-1を介してモジュール選択パート10Bに送信される。
モジュール選択パート10Bでは、患者Aに治療モジュールを選択した経緯を踏まえ、サポーターCに開示するべき治療モジュール、当該治療モジュールが患者Aに実施されるに際してサポーターCが学んでおくべき内容を、例えばサポーター用の疾患教育として選択する。
【0047】
モジュール選択パート10Bで選択されたサポーター用の疾患教育(資料)は、情報伝達ラインSL6を介して治療モジュールパート10Cに送信される。
治療モジュールパート10Cでは、モジュール選択パート10Bで選択されたサポーター用の疾患教育がサポーターCに対して実行される、或いはサポーター用の疾患教育資料が、情報伝達ラインSL11を介してサポーターC側の情報処理用端末3Cに送信される。
ここで、サポーターC側の情報処理用端末3Cに対して、患者Aの治療モジュールに関する情報を送信することも可能である。
【0048】
図3において、シェアルーム10E、シェア情報演算パート10F、禁忌データパート10Gの機能は、基本的に図2で説明した通りである。ただし図3では、シェアルーム10Eにより患者Aと情報を供用するのは、サポーターC(家族、ケースワーカー、友人、ボランティア等)である。
アセスメントパート10A1、10A2の評定結果、治療モジュールの内容、治療効果の評価結果、治療の一環としてのホームワーク、治療に有用な情報(TipS)等の情報は、患者のみが把握するのではなく、サポーターCと共有することが好ましい。そして、時には意見を交換することにより、治療による症状の改善度等を客観的に把握することが好ましい。それにより、治療に対する主体性を高め、治療効果の向上を図ることが出来るからである。
患者Aが当該患者Aの情報を、情報伝達ラインSL43を介してシェアルーム10Eに提供して、サポーターCと共有化するか否かは、患者Aの判断に委ねられている。
サポーターCは、患者Aの治療モジュールの内容(或いは概要)、サポーター向けの疾患教育等の情報を取得することにより、患者Aへの接し方等を改善することが期待できる。サポーターC向けの情報は、情報伝達ラインSL48を介してシェアルーム10Eに提供することが出来るが、(サポーターCへの情報を)シェアルーム10Eに提供するか否かはサポーターCの判断に委ねられる。
【0049】
図3においても、シェアルーム10Eには情報伝達ラインSL45を介してシェア情報演算パート10Fが接続されている。シェア情報演算パート10Fの構成及び作用効果については、図2を参照して前述したのと同様である。
また、図2の場合と同様、図3においても、シェアルーム10Eには禁忌データパート10Gが接続されており、禁忌事項に該当する情報がシェアルーム10Eに記録されることを禁止している。
図2では、緊急パート10Hにおいて、患者Aが深刻な状態に陥っている旨の評定が為されたならば、当該患者(A)と情報を共有している他の患者Bにも患者Aが深刻な状態に陥っている旨の情報が送信される。それに対して、サポーターCが患者Aを支援している図3の場合には、サポーターCに対して、患者Aが深刻な状態に陥っている旨の情報が送信される。当該情報を受信したサポーターCは、直ちに患者Aを救出するような行動をとることが出来る。
そして図2と同様に、図3の場合でも、患者Aが深刻な状態に陥っている旨を医療機関4に伝達し、当該患者(A)には深刻な状態から抜け出す様な措置(メッセージの伝達等)が実行される。
【0050】
図4を参照して、モジュール選択パート10Bについて説明する。
モジュール選択パート10Bでは、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づいて幾つかの治療モジュールを選択すると共に、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて幾つかの治療モジュールを選択する。換言すれば、診断横断的アセスメントパート10A1と疾患特異的アセスメントパート10A2の各々の評定に基づいて、複数の治療モジュールがモジュール選択パート10Bにおいて選択される。
【0051】
図4において、モジュール選択パート10B(図4では一点鎖線で示す)は、分析ブロック10B1、分類ブロック10B2、リンク付けブロック10B3、記憶装置10B4を含んでいる。
診断横断的アセスメントパート10A1の評定結果は情報伝達ラインSL5を介して、モジュール選択パート10Bの分析ブロック10B1に送信される。そして疾患特異的アセスメントパート10A2の評定結果は情報伝達ラインSL4を介して、分析ブロック10B1に送信される。
分析ブロック10B1では、診断横断的アセスメントパート10A1の評定結果及び疾患特異的アセスメントパート10A2の評定結果の各々についてクラスタ分析を行う機能を有している。
【0052】
診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づく分析ブロック10B1の分析結果は情報伝達ラインSL22を介して分類ブロック10B2に送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づく分析ブロック10B1の分析結果は情報伝達ラインSL24を介して分類ブロック10B2に送信される。
分類ブロック10B2では、患者の診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づいて当該患者が所定のクラスタに分類される。同様に、患者の疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて当該患者が所定のクラスタに分類される。
【0053】
図4において、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づいて分類されたクラスタの情報は情報伝達ラインSL26を介してリンク付けブロック10B3に送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて分類されたクラスタの情報は情報伝達ラインSL28を介してリンク付けブロック10B3に送信される。
クラスタと、当該クラスタに有効な治療モジュールとをリンク付ける情報が、記憶装置10B4に記憶されている。当該「リンク付ける情報」は、クラスタと、クラスタに有効な治療モジュールとを関連付ける図表であっても良いし、関数であっても良い。
リンク付けブロック10B3には、情報伝達ラインSL30を介して、前記「リンク付ける情報」が伝達され、分類ブロック10B2で分類されたクラスタに対して有効な治療モジュールが決定される。換言すれば、リンク付けブロック10B3は、「リンク付ける情報」により、患者が分類されたクラスタに対して有効な治療モジュールを決定する機能を有している。明示されないが、リンク付けブロック10B3は、医療機関からの情報(例えば医師による判断結果)に基づいて、当該クラスタに対して有効な治療モジュールを決定することも出来る。
【0054】
リンク付けブロック10B3では、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールを決定する。
診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールは情報伝達ラインSL61を介して治療モジュールパート10Cに送信され、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づいて分類されたクラスタに有効な治療モジュールは情報伝達ラインSL62を介して治療モジュールパート10Cに送信される。その結果、患者には、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づく治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づく治療モジュールの双方が提案可能である。換言すれば、診断横断的な介入と疾患特異的な介入の双方が可能である。
【0055】
図4で示す情報伝達ラインSL61、SL62は、図2図3では単一の情報伝達ラインSL6として包括的に表示されている。
ここで、クラスタ分析が統計学的手法として例示されているが、患者(対象者)を正確に分類して、適切な治療モジュールとリンク付けできるのであれば、クラスタ分析以外の統計学的手法を採用することが出来る。
【0056】
上述した様に、患者には、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づく治療モジュールと、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づく治療モジュールの双方が提案可能であるが、何れか一方を優先的に患者側の情報処理用端末3に表示するか、或いは、双方同時に患者側の情報処理用端末3に表示するかについては、適宜設定可能に構成することが出来る。
例えば図4において優先順位決定ブロック(図示せず)を設け、優先順位決定ブロックは、図示しない質問パートにおける問診、入力の結果、診断横断的アセスメントパート10A1の評定、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定等に基づき、患者に対して、診断横断的アセスメントパート10A1の評定に基づく治療モジュールを優先的に提示するべきか、疾患特異的アセスメントパート10A2の評定に基づく治療モジュールを優先的に提示するべきか、双方を同時に提示するべきかを判断する機能を有している。そして優先順位決定ブロックの判断結果に基づき、患者に対する治療モジュールの提示方法を適宜設定することも可能である。
【0057】
次に、図5図6を参照して、シェアルームを介して、患者同士或いは患者とサポーターと、医療機関が情報を共有する態様を説明する。
図5では患者A(男性)と患者B(女性)、治療に係わる医療機関4(符号4は医療機関側の情報処理用端末を示すが、医療機関を意味する場合もある)が情報を共有する場合を示している。患者Aと患者Bは夫婦であり、不妊のため治療用アプリを実行している場合を例示している。
シェアルーム10Eで患者A、B同士が情報を共有化するためには、専用アプリをインストールした患者側の情報処理用端末3(例えばスマートフォン)から治療システム100のサーバー10にログインし、以下に説明する共有化の手順を実行する。共有化された情報は、シェアルーム10Eにアクセスすることにより、見ることが出来る。
図5において、患者A、患者Bの共有化の対象となる項目(情報)が例示されている。例えば、「アプリ説明」、「アセスメント評価」、「疾患教育」に関する項目、「ワーク及びワーク評価」に関する項目、「共同ワーク」と「共同ワーク評価」に関する項目、及び患者B(女性)のみの項目として「日常生活下データ(生理日、体温)」である。図5では、患者Aと患者Bでは疾患教育やワークが異なることが示されている。
前記対象項目には、患者Aと患者Bで共有されることが前提の項目(例えば、共有しないと治療が進まない)と、当該情報の対象である患者が共有するか否か(情報をシェアルーム10E(図2図3)に送信するか否か)が決定される項目が存在する。
図5において、患者A、Bが共有することを前提としている項目は、ハッチングを付して示されている。すなわち、「アプリ説明」、「一部の疾患教育(疾患教育(基礎))」、「一部のワーク及び評価」、「共同ワーク」は、当該情報の対象である患者の意向に係わらず患者A、Bが共有するべき情報であるため、シェアルーム10Eで共有される。
【0058】
図5の枠外に、当該情報の対象である患者(患者A、Bの何れか)の判断で共有するか否かが決定される項目であって、当該患者が共有に同意した項目を示すアイコン(シェアする)と、共有に同意しない項目を示すアイコンと(シェアしない)と、患者の意思以前にシェアすることが前提である項目(シェアが前提)を示すアイコンが説明されている。
例えば、患者Aが「アセスメント評価」に関する情報を患者Bと「シェアする」と判断した場合、患者Aは、「アセスメント評価」における「シェアする」のアイコンをクリックする。図5では患者Aが既に「シェアする」のアイコンをクリックした状態を示しており、当該アイコンはハッチングを付して示されている。これにより、患者Aの「アセスメント評価に関する情報」はシェアルーム10Eに送信され、シェアルーム10Eにおいて患者Bが閲覧することが可能になる。
図示はされていないが、例えば患者Aの項目(情報)がシェアルーム10Eに送信されて共有化されると、患者Bの情報処理用端末3に対して「シェア情報が更新」のメッセージが送信される。
図5の例では、患者Aの「疾患教育1」、「疾患教育2」、「ワーク1及びワーク1評価」、「共同ワーク評価」が共有化されている。
【0059】
例えば患者Aの情報、例えば「疾患教育3に関する情報」を患者Bとシェアしないと判断した場合には、患者Aは「疾患教育3」の「シェアする」のアイコンをクリックしなければ良い。その場合、図5で示す様に、「疾患教育3」の「シェアする」アイコンはハッチングが付されておらず、患者Aの「疾患教育3に関する情報」はシェアルーム10Eに送信されず、他方の患者(例えば患者B)と共有化されない。図5の例では、患者Aの「ワーク2及びワーク2評価」も共有化されていない。
患者Bの項目についても、患者Aについて上述したのと同様である。図5の例では、患者Bの「アセスメント評価」、「疾患教育4」、「疾患教育6」、「ワーク3及びワーク3評価」、「共同ワーク評価」、「日常生活下データ」は共有化され、患者Bの「疾患教育5」は共有化されていない。
【0060】
図5では、医療機関4がチェックする項目(情報)が例示されている。アプリからの情報として、図5では患者の「疾患教育閲覧履歴」、「シェア情報」、患者の結果情報(項目)として、「アセスメント結果」、「ワーク結果」、「共同ワーク結果」、「日常生活下データ」が例示されている。
そして医療機関4は、シェアルーム10Eで共有されている情報の内容と、シェアルーム10Eにおけるシェアされた(共有可能となった)情報の情報量、シェア率、シェアしたタイミング(患者が即座にシェアしたか、或いは躊躇した上でシェアしたか)等をチェックしている。例えばシェアされた情報利用が多ければ、及び/又はシェア率が高ければ、コミュニケーション量が多いと推定出来るので、例えば「うつ病」の様な疾病からの回復の指標となる。逆に例えばシェアされた情報利用が少なければ、及び/又はシェア率が低ければ、コミュニケーション量が少ないと推定出来、当該患者のコミュニケーション量を増やすための治療モジュールの変更等を検討し、疾病教育を配信することが出来る。また、コミュニケーション量が増え、疾病からの回復が見られる患者に対しては、「いいね」等のメッセージを医療機関4から送信することが出来る。
ただし、医療機関4は、治療システム100のサーバー10にアクセスすることにより、シェアルーム10Eで共有化される情報に加えて、アプリからの治療システム100全体の情報を見ることが可能となる様に構成することが出来る。
【0061】
図6では患者AとサポーターC、治療に係わる医療機関4が情報を共有する場合を示している。患者Aは、例えば不安障害、うつ病の治療用アプリを実施している。サポーターCは、家族、ソーシャルワーカー、友人、ボランティア等を想定している。以下の図6の説明では、図5と異なる部分を主に説明する。
図6において、患者A、サポーターCの共有化の対象となる項目(情報)が例示されているが、疾病を罹患していないサポーターCについては、「アセスメント評価」、「ワーク及び評価」に関する項目は含まれない。ここで、サポーターCの「疾患教育(14~16)」は、例えば不安障害、うつ病の患者である患者Aを支援する立場において習得するべき疾患教育である。患者Aについては、「日常生活下データ」の項目が設けられている。患者Aの「日常生活下データ」がサポーターCに共有化されることにより、上述した様に患者の日常の行動を見守り、患者に危機的状況が生じていることを察知して必要な介入が期待されるからである。
【0062】
図6で示す例では、患者Aの「アセスメント評価」、「疾患教育11」、「疾患教育12」、「ワーク4及びワーク4評価」、「共同ワーク評価」が共有化され、患者Aの「疾患教育13」、「ワーク5及びワーク5評価」は共有化されない。
また、サポーターCの「疾患教育14」、「疾患教育16」、「共同ワーク評価」は共有化され、サポーターCの「疾患教育15」は共有化されない。
図6におけるその他の構成及び作用効果については、図5と同様である。
【0063】
次に、主として図7を参照して、患者の情報をシェアする手順を説明する。ここで、患者側の情報処理用端末3は、患者A側の情報処理用端末3Aと患者B側の情報処理用端末3Bを統括して表現している。
図7のステップS1では、治療システム100のサーバー10から患者側の情報処理用端末3に当該患者の情報が送信されたか否かを確認する。サーバー10から患者側の情報処理用端末3に送信される前記情報(項目)としては、例えば、診断横断的アセスメントパート10A1の評定結果及び/又は疾患特異的アセスメントパート10A2の評定結果、治療モジュールと治療結果、ホームワーク、治療に有用な情報(TipS)、治療効果の評価結果がある。
ステップS1で患者に関する前記情報がサーバー10から送信されたことを患者が確認したならば(ステップS1が「Yes」)ステップS2に進み、確認しない場合(ステップS1が「No」)、ステップS1に戻る。
【0064】
ステップS2では、サーバー10から患者側の情報処理用端末3に患者の情報が送信されたのを受け、患者は(患者側の情報処理用端末3で)当該情報を、「シェアルーム10E(図2図3)に送信すべき情報」と「シェアルーム10Eに送信しない情報」に分類する。そして、当該分類作業が終了したか否かを判断する。
上述した様に、「シェアルーム10E(図2図3)に送信すべき情報」は治療システム100を一緒に利用して治療を行っている他の患者(図2の実施形態)或いは患者のサポーター(図3の実施態様)と共有して開示しても良いと判断された情報である。ここで、ステップS2の分類作業は、当該患者の情報が送信される都度行っても良く、或いは所定の間隔(例えば1日)で実行しても良い。
ステップS2で患者の情報を「シェアルーム10Eに送信すべき情報」と「シェアルーム10Eに送信しない情報」に分類する作業が終了したならば(ステップS2が「Yes」)ステップS3に進み、当該分類作業が終了していなければ(ステップS2が「No」)ステップS2に戻る。
【0065】
ステップS3では、患者は、ステップS2で「シェアルーム10Eに送信すべき情報」と判断した患者の情報をシェアルーム10Eに送信する。そしてS4に進む。
ステップS4では、患者に関する情報に対するシェアルーム10Eで共有された情報の情報量と、共有された情報の割合(シェア率)(共有された情報/患者に関する情報)を演算する。シェア率の演算は、シェア情報演算パート10Fが実行する。シェア率は、例えば医療機関側の情報処理用端末4に送信されて、医療機関が患者の回復度合いを把握する材料の一つとして利用される。
【0066】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態は診断横断的アセスメントパート10A1、及び/又は、疾患特異的アセスメントパート10A2を有するサーバー10を含むシステム100(治療用アプリのシステム)について、本発明を適用した場合を例示している。しかし、本発明は、それ以外の治療用アプリのシステムに対しても適用可能である。
また、図示の実施形態では、シェアルーム10Eはサーバー10に設けられているが、患者側の情報処理用端末3内にシェアルームを設けることも可能である。
さらに図示の実施形態では、患者同士が情報を共有する場合と、患者とサポーターが情報を共有する場合について説明したが、患者以外の者としてはサポーターのみならず、患者の家族或いは患者が属する特定のグループの人間であっても良い。その様な者とも患者と情報を共有することが可能であり、それぞれに者に対して患者の除法の共有に関して必要な制限を課することが出来る。すなわち本発明は、患者を含むグループにおける情報の共有についても適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・制御装置
3・・・患者側の情報処理用端末
4・・・医療機関側の情報処理用端末
10・・・サーバー
10A1・・・診断横断的アセスメントパート
10A2・・・疾患特異的アセスメントパート
10B・・・モジュール選択パート
10C・・・治療モジュールパート
10D・・・評価パート
10E・・・シェアルーム
10F・・・シェア情報演算パート
10G・・・禁忌データパート
100・・・治療システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7