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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054453
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】弾性繊維用処理剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/02 20060101AFI20230407BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20230407BHJP
   D06M 13/292 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
D06M13/02
D06M15/643
D06M13/292
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163305
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安永 和史
(72)【発明者】
【氏名】中川 幹生
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA06
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA01
4L033BA39
4L033CA59
(57)【要約】      (修正有)
【課題】捲糸体の高温保管下での経時による繊維の膠着防止性と、外層部における捲き崩れ防止性の両方に優れる弾性繊維用処理剤及び該処理剤が付与された弾性繊維を提供する。
【解決手段】炭化水素油(A)を含有する弾性繊維用処理剤であって、前記炭化水素油(A)に占めるナフテン成分の重量割合が0重量%超かつ13重量%以下である弾性繊維用処理剤。前記弾性繊維用処理剤を付与してなる弾性繊維。前記炭化水素油(A)は、フィッシャー・トロプシュ合成油を含むと好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油(A)を含有する弾性繊維用処理剤であって、前記炭化水素油(A)に占めるナフテン成分の重量割合が0重量%超かつ13重量%以下である、弾性繊維用処理剤。
【請求項2】
前記炭化水素油(A)が、フィッシャー・トロプシュ合成油を含む、請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
シリコーン油(B)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
有機リン酸エステル(D)をさらに含有する、請求項1~3のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
弾性繊維本体に、請求項1~4のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤が付与されてなる、弾性繊維。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤を弾性繊維本体に対して付与する工程を含む、弾性繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性繊維用処理剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性繊維は、紡糸工程において、処理剤を付与した後、チーズ形状に巻き取られ、捲糸体(以下、チーズということもある)となる。弾性繊維は、粘弾性を有するために膠着し易い繊維である。特に経時後の捲糸体においては、巻き取り時にかかる圧力により膠着が経時的に進行する。そのため、弾性繊維捲糸体を使用する際、経時後に解舒不良となり糸切れを引き起こす。この解舒不良を改良するために、種々の弾性繊維用処理剤が開発されている。
例えば、特許文献1には、シリコーンレジン(MQレジン)を含有する弾性繊維用処理剤が記載され、特許文献2には、カルボキシアミド変性シリコーンを含有し、高級脂肪酸マグネシウム塩の凝集や沈降を抑えた弾性繊維用処理剤が記載されている。また、特許文献3には、平均粒子径0.01~5μmにあり、且つ針状である高級脂肪酸の金属塩を含有した弾性繊維用処理剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-078460号公報
【特許文献2】特開平11-12950号公報
【特許文献3】特開2005-179874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら従来技術に記載された弾性繊維用処理剤は、捲糸体の経時後の繊維の膠着防止性には優れるものの、その処理剤の有する繊維/繊維間摩擦の低下作用により、捲糸体の外層部においては捲き崩れが生じるなどの解舒性不良が生じる場合があった。つまり、上記捲糸体の経時後の膠着防止性と、外層部における捲き崩れ防止性は、一方を重視すると他方が悪化するというトレードオフの関係であった。
さらに、捲糸体の経時後の膠着防止性について、通常の保管条件では問題が無くても、夏場や船舶輸送時に長期に高温下で経時された場合には、捲糸体の膠着が進行して解舒不良となるケースがあった。つまり、従来技術においては経時後の膠着防止性と捲き崩れ防止性のバランスを取りつつ適用するというのが実情であり、両者を満足する弾性繊維用処理剤は得られていなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、弾性繊維の高温保管下における解舒性の経時変化が小さく、同時に捲糸体の捲き崩れ防止性に優れる、弾性繊維用処理剤と弾性繊維の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の炭化水素油(A)を含有する弾性繊維用処理剤であれば上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の弾性繊維用処理剤は、炭化水素油(A)を含有する弾性繊維用処理剤であって、前記炭化水素油(A)に占めるナフテン成分の重量割合が0重量%超かつ13重量%以下である、弾性繊維用処理剤である。
【0007】
上記炭化水素油(A)はフィッシャー・トロプシュ合成油を含有すると好ましい。
上記処理剤はシリコーン油(B)をさらに含有すると好ましい。
上記処理剤は有機リン酸エステル(D)をさらに含有すると好ましい。
本発明の弾性繊維は、弾性繊維本体に上記処理剤が付与されてなる。
本発明の弾性繊維の製造方法は、上記処理剤を弾性繊維本体に対して付与する工程を含む、弾性繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弾性繊維用処理剤が付与されてなる弾性繊維は、高温保管下における解舒性の経時変化が小さく、同時に捲糸体の捲き崩れ防止性に優れる。
本発明の弾性繊維の製造方法で製造した弾性繊維は、高温保管下における解舒性の経時変化が小さく、同時に捲糸体の捲き崩れ防止性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】解舒速度比評価方法の測定方法を説明する模式図。
図2】繊維間摩擦の測定方法を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の弾性繊維用処理剤について、以下に詳細に説明する。
【0011】
〔炭化水素油(A)〕
本発明の弾性繊維用処理剤は、炭化水素油(A)を必須に含む。なお、炭化水素油(A)は弾性繊維用処理剤に含まれるすべての炭化水素を総和したものを表す。
炭化水素油(A)はナフテン成分を特定の重量割合で含有するため、高温保管下における優れた解舒性および捲糸体の捲き崩れ防止性を発揮できる。
一方、本発明以外の弾性繊維用処理剤は、該処理剤に含まれるすべての炭化水素を総和した炭化水素油がナフテン成分を特定の重量割合で含有していないため、高温保管下における優れた解舒性及び捲糸体の捲き崩れ防止性の少なくともいずれか一方が解決できない。
【0012】
ナフテン成分を特定の重量割合で含有する炭化水素油(A)を使用することで、高温保管下における優れた解舒性および捲糸体の捲き崩れ防止性を発揮できる理由は定かではないが、特定範囲のナフテン成分を含有する炭化水素油(A)が弾性繊維へ付与されることで、経時により処理剤全体が捲糸体の外層・内層間を移動したり、加工時の延伸時に処理剤が繊維の内部に浸透したりすることなく、弾性繊維の最表層に強固な油膜を形成し、解舒性および捲糸体の捲き崩れ防止性に優れた効果を発揮するものと考えている。また、本願の炭化水素油(A)の「油」とは平滑性成分であることを意味しており、その状態を特に限定しているものではない。
【0013】
本発明に用いられる炭化水素油(A)に占めるナフテン成分の重量割合は0重量%超かつ13重量%以下である。該重量割合の上限は、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは9重量%以下、特に好ましくは8重量%以下、最も好ましくは7重量%以下である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは3重量%以上、特に好ましくは5重量%以上、最も好ましくは6重量%以上である。ナフテン成分が13重量%以上の場合、経時により処理剤全体が捲糸体の外層・内層間を移動したり、加工時の延伸時に処理剤が繊維の内部に浸透したりして優れた解舒性を発揮できなくなる。ナフテン成分が0重量%の場合、処理剤の安定性が悪化する傾向がある。
【0014】
本発明に用いられる炭化水素油(A)は、ナフテン成分の重量割合が0%超、13重量%以下の範囲にある炭化水素油を2種以上混合してもよく、ナフテン成分の重量割合が0%超、13重量%以下の範囲にない炭化水素油を含んでもよい。要は複数の炭化水素油を混合して使用した場合であっても、上記処理剤中に含まれる炭化水素油(A)全体のナフテン成分の重量割合が0重量%超かつ13重量%以下の範囲に調整されていればよい。
【0015】
本発明に用いられる炭化水素油(A)に占めるパラフィン成分の重量割合は特に限定はないが、好ましくは87重量%~99.9重量%である。該重量割合が前述の範囲内であると、高温時に処理剤が繊維の内部への浸透するのを抑制し、繊維表面に効率よく残存するため、高温保管時の解舒性の経時変化を抑制する効果がある。該重量割合の上限はより好ましくは99重量%、さらに好ましくは98重量%、特に好ましくは97重量%である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは90重量%、さらに好ましくは91重量%、特に好ましくは92重量%である。
【0016】
本発明に用いられる炭化水素油(A)に占めるアロマ成分の重量割合は特に限定はないが、好ましくは1重量%以下である。該重量割合が前述の範囲内であると、繊維の劣化を抑制する傾向がある。該重量割合の上限はより好ましくは0.5重量%、さらに好ましくは0.4重量%、特に好ましくは0.3重量%である。
【0017】
尚、本発明における、炭化水素油(A)に含まれるナフテン成分、パラフィン成分及びアロマ成分の重量割合は、ASTMのD3238に規定された環分析n-d-M法により測定されたC%、C%、C%の値である。
【0018】
本発明に用いられる炭化水素油(A)の40℃における動粘度は特に限定はないが、5~40mm/sが好ましい。炭化水素油(A)の40℃における動粘度の下限はより好ましくは6mm/s、さらに好ましくは7mm/s、特に好ましくは8mm/sである。一方、該重量割合の上限はより好ましくは30mm/s、さらに好ましくは25mm/s、特に好ましくは20mm/sである。炭化水素油(A)の動粘度が5.0mm/s未満であると、油膜強度が低くなりすぎて解舒性の経時変化を抑制することが出来ない場合があり、40mm/sより大きいと、処理剤の他の成分との相溶性が悪くなり解舒性の経時変化を抑制することが出来ない場合がある。炭化水素油(A)の動粘度は、JIS K 2283に準拠して測定されたものである。
【0019】
本発明に用いられる炭化水素油(A)としては、ナフテン成分の重量割合が0%超、13重量%以下であれば特に限定はないが、フィッシャー・トロプシュ合成油(以下FT合成油ということがある)及び/又は鉱物油を含むと好ましく、フィッシャー・トロプシュ合成油を含むとさらに好ましい。
【0020】
FT合成油は天然ガス、石炭、バイオマスを合成ガスに変換し、フィッシャー・トロプシュ法によりワックスに変換、更に水素化異性化及び脱ろう工程により潤滑油に変換したものであり、天然ガス由来のものはGTL(ガストゥリキッド)、石炭由来のものはCTL(コールトゥリキッド)、バイオマス由来のものはBTL(バイオマストゥリキッド)とそれぞれ呼称され、これらはナフテン成分の重量割合が0~10重量%と非常に低い特徴がある。FT合成油としては特に限定は無いが、Shell Lubricants社製のXHVI 3、Shell Lubricants社製のXHVI 4、Shell Lubricants社製のXHVI 5.2、Shell Lubricants社製のXHVI 8などが挙げられる。FT合成油は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0021】
鉱物油としては特に限定は無いが、例えば、sonneborn社製の商品名Semtol40 OIL、sonneborn社製の商品名Carnation、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアスピンD、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアスピンE、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアスピンRC、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアスピンRB、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモニュートラル100、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモニュートラル150、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモニュートラル350、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモホワイトP200、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモホワイトP260、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモホワイトP350P、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアセイフティー10、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアセイフティー22、コスモ石油ルブリカンツ株式会社製の商品名コスモピュアセイフティー32、富士興産株式会社製の商品名フッコールNT-60、富士興産株式会社製の商品名フッコールNT-100、S-OIL社製の商品名Ultra-S 2、S-OIL社製の商品名Ultra-S 3、S-OIL社製の商品名Ultra-S 4、S-OIL社製の商品名Ultra-S 6、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 3、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 4、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 4 Plus、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 6、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 6 Plus、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 6J、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 8、SK Lubricants社製の商品名YUBASE 8J、出光興産株式会社製の商品名ダイアナフレシア W8、出光興産株式会社製の商品名ダイアナフレシア W32、出光興産株式会社製の商品名ダイアナフレシア G9、出光興産株式会社製の商品名ダイアナフレシア K8、出光興産株式会社製の商品名ダイアナフレシア S32、エクソンモービル社製の商品名クリストール N72、日本サン石油社製の商品名SUN 60N、三光化学工業株式会社製の流動パラフィン40S、三光化学工業株式会社製の流動パラフィンRCM、三光化学工業株式会社製の流動パラフィン80S、三光化学工業株式会社製の流動パラフィン100S 等のマシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができる。これらの中でも、鉱物油としては、臭気の発生が低いという理由から、流動パラフィンが好ましい。鉱物油は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0022】
炭化水素油(A)がFT合成油及び/又は鉱物油を含む場合、炭化水素油(A)に占めるFT合成油及び鉱物油の合計の重量割合は特に限定はないが、好ましくは90重量%~99重量%である。該重量割合が前述の範囲内であると、高温保管時の解舒性の変化が更に抑制される傾向がある。該重量割合の上限はより好ましくは98重量%、さらに好ましくは97重量%、特に好ましくは96重量%である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは91重量%、さらに好ましくは92重量%、特に好ましくは93重量%である。
【0023】
FT合成油と鉱物油を混合して使用する場合、その混合割合は特に限定はないが、FT合成油/鉱物油の重量比率は1/10~1000/1が好ましい。該重量比率が前述の範囲内であると、繊維の内部への浸透するのを抑制し、繊維表面に効率よく残存するため、高温保管時の解舒性の経時変化を抑制する傾向がある。該重量比率の上限値はより好ましくは500/1、さらに好ましくは100/1、特に好ましくは50/1である。一方、該重量比率の下限値はより好ましくは1/9、さらに好ましくは1/8、特に好ましくは1/7である。
【0024】
炭化水素油(A)としてポリαオレフィンも好適に選ぶことが出来る。ポリαオレフィンは、文字通りαオレフィンを重合させた化合物である。ポリαオレフィンの40℃における動粘度は、10~100mm/sであり、好ましくは15~70mm/sであり更に好ましくは15~50mm/sである。ポリαオレフィン化合物の動粘度は、JIS K 2283に準拠して測定されたものである。ポリαオレフィンの動粘度が10mm/s未満であると油膜強度が低くなりすぎて解舒性の経時変化を抑制することが出来ず、100mm/sより大きいと処理剤の他の成分との相溶性が悪くなるため平滑性が低下し、更に弱い粘着性が出てくるために解舒性の経時変化を抑制することが出来ない。
【0025】
ポリαオレフィンは、αオレフィンの重合体であり、上記40℃動粘度を満たすものであって炭素数が6~18のαオレフィンの3~8量体であることが好ましい。例えば、ポリαオレフィンは、αデセン(炭素数10)の3~8量体、またはαドデセン(炭素数12)の3~8量体を中心に、それらの2量体や5量体以上のものを含有するものである。
ポリαオレフィンの好適な製造例としては、エチレンの低重合またはワックスの熱分解によって炭素数6~18のαオレフィンを合成、このαオレフィン3~8単位を重合、水添反応を行うことによって合成される。
ポリαオレフィンの1分子当りの平均炭素数としては、上記の40℃動粘度範囲である限り特に制限しないが、好ましくは18~150であり、より好ましくは24~140であり、さらに好ましくは30~100である。
【0026】
炭化水素油(A)がポリαオレフィンを含む場合、炭化水素油(A)に占めるポリαオレフィンの重量割合は特に限定はないが、好ましくは1重量%~10重量%である。該重量割合が前述の範囲外であると、処理剤の他の成分との相溶性が悪くなり解舒性の経時変化を抑制することが出来ない場合がある。該重量割合の上限はより好ましくは9重量%、さらに好ましくは8重量%、特に好ましくは7重量%である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは2重量%、さらに好ましくは3重量%、特に好ましくは4重量%である。
【0027】
ポリαオレフィンとしては特に限定は無いが、例えば、新日鉄住金化学社製の商品名PAO201、新日鉄住金化学社製の商品名PAO401、新日鉄住金化学社製の商品名PAO601、新日鉄住金化学社製の商品名PAO801、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名リポルーブ40、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名リポルーブ60、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の商品名リポルーブ80等が挙げられる。
【0028】
炭化水素油(A)は上述のFT合成油、鉱物油及びポリαオレフィン以外にノルマルパラフィン、アルキルナフタレン等を含んでもよい。
【0029】
〔シリコーン油(B)〕
本発明の弾性繊維用処理剤はさらにシリコーン油(B)を含有してもよい。シリコーン油(B)は、前述の炭化水素油(A)との併用により、高温保管下における解舒性の経時変化をさらに抑制する効果を有する。
シリコーン油(B)を含有することで、高温保管下における解舒性の経時変化抑制効果がより高くなる理由は定かではないが、シリコーン油(B)を含有することで、処理剤の弾性繊維に対する均一付着性が高まり、高温保管下における解舒性の経時変化抑制効果がより高くなるものと考えている。
【0030】
本発明に用いられるシリコーン油(B)としては、特に限定はないが、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名KF-96-10cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-96-20cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-96-50cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-96-100cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-96-1000cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-96-1万cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-50-100cs、信越化学工業株式会社製の商品名KF-4003、信越化学工業株式会社製の商品名KF-4917、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-5A、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-10、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-20、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-30、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-50、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-100、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-1000、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の商品名TSF451-1M、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名SH200-10CS、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名SH200-20CS、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名SH200-50CS、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名SH510-100CS、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の商品名WACKER SILICONE FLUID AK10、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の商品名WACKER SILICONE FLUID AK20、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製の商品名WACKER SILICONE FLUID AK50等のポリジメチルシロキサン、ポリアルキルシロキサン、ポリアルキルフェニルシロキサン、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等を挙げることができる。シリコーン油(B)は1種または2種以上を併用してもよい。また、原料由来の未反応シラノール基や未反応のハロゲン基、重合触媒、環状シロキサン等を含んでいてもよい。
【0031】
シリコーン油(B)の20℃における粘度は、5~30mm/sが好ましく、5~25mm/sがより好ましく、5~20mm/sがさらに好ましい。該粘度が5mm/s未満であるとシリコーン油(B)が揮発する場合があり、30mm/sを超えると、処理剤に配合される他成分の溶解性が悪くなることがある。
シリコーン油(B)のシロキサン結合(SiOR:R及びRは、それぞれ独立して、有機基を示す)の平均結合量は、3~900が好ましく、5~500がより好ましく、7~200がさらに好ましい。R、Rの有機基は、炭素数1~24の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができ、特に、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0032】
〔エステル油(C)〕
本発明の弾性繊維用処理剤は、上記で説明した炭化水素油(A)及びシリコーン油(B)以外のベース成分としてエステル油(C)を使用してもよい。
【0033】
エステル油(C)としては、1価アルコールと1価カルボン酸とのエステル、1価アルコールと多価カルボン酸とのエステル、又は多価アルコールと1価カルボン酸とのエステルであれば特に限定はなく、1種又は2種以上を使用してもよい。1価アルコールとしては、後述の1価の脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環式アルコール、フェノール類等を使用できる。これらの中でも、一価の脂肪族アルコール、芳香族アルコールが好ましい。
【0034】
1価の脂肪族アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、1-ヘキサデカノール、パルミトレイルアルコール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、1-エイコサノール、ベヘニルアルコール、1-テトラコサノール、エルシルアルコール、リグノセリルアルコール等が挙げられる。上記1価の脂肪族アルコールが分岐を有する場合には、分岐数、分岐鎖長、分岐の位置に特に限定はない。
芳香族アルコールとしては、フェノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
脂環式アルコールとしては、シクロオクタノール、シクロドデカノール、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロペンタノール、メントール等が挙げられる。
【0035】
多価アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0036】
1価カルボン酸としては、同じく後述の1価の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等を使用できる。これらの中でも、1価の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましい。
【0037】
上記1価カルボン酸としては、特に限定はないが、例えば、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキシル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セチロン酸、安息香酸等が挙げられる。
【0038】
多価カルボン酸としては、特に限定はないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、クエン酸、イソクエン酸等が挙げられる。
【0039】
エステル油(C)の具体例としては、特に限定はないが、例えば、吉草酸ヘプチル、カプロン酸ヘプチル、カプロン酸オクチル、カプリル酸セチル、ラウリン酸イソオクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ラウリン酸オレイル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸トリデシル、ステアリン酸イソブチル、オレイン酸メチル、オレイン酸イソブチル、オレイン酸ヘプチル、オレイン酸オレイル、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジミリスチル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリプロピレングリコール、ジミリスチン酸ポリプロピレングリコール、ジオレイン酸ポリプロピレングリコール、ジステアリン酸ポリプロピレングリコール、シュウ酸ジセチル、マロン酸ジイソオクチル、コハク酸ジラウリル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸イソノニル、アジピン酸ジオクチル、フマル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、トリメリット酸トリイソオクチル、トリメリット酸トリイソブチル、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリイソステアリル、グリセリントリイソオクチル、グリセリントリラウリル、グリセリントリミリスチル、グリセリントリオレイル、グリセリントリステアリル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリラウレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリパルミテート等が挙げられる。
【0040】
〔有機リン酸エステル(D)〕
本発明の弾性繊維用処理剤はさらに有機リン酸エステル(D)を含有してもよい。該処理剤が有機リン酸エステル(D)を含有する場合、該処理剤に占める有機リン酸エステル(D)の重量割合は特に限定はないが、好ましくは0.1重量%~10重量%である。有機リン酸エステル(D)の重量割合が前述の範囲内であると、高温保管時の解舒性の変化が更に抑制される傾向がある。該重量割合の上限はより好ましくは5重量%、更に好ましくは3重量%、特に好ましくは1重量%である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは0.2重量%、更に好ましくは0.4重量%、特に好ましくは0.5重量%である。
【0041】
有機リン酸エステル(D)としては、分子中に炭化水素基もしくはオキシアルキレン基を少なくとも一つ以上含むものであれば特に限定はされないが、例えばヘキシルリン酸エステル、オクチルリン酸エステル、デシルリン酸エステル、ドデシルリン酸エステル、テトラデシルリン酸エステル、ヘキサデシルリン酸エステル、オクタデシルリン酸エステル、ベヘニルリン酸エステル、トリオクタコサニルリン酸エステル、オクタデセニルリン酸エステル、2-エチルヘキシルリン酸エステル、イソへプチルリン酸エステル、イソオクチルリン酸エステル、イソノニルリン酸エステル、イソデシルリン酸エステル、イソウンデシルリン酸エステル、イソドデシルリン酸エステル、イソトリデシルリン酸エステル、イソテトラデシルリン酸エステル、イソヘキサデシルリン酸エステル、イソオクタデシルリン酸エステル、t-ブチルリン酸エステル、ベンジルリン酸エステル、オクチルフェニルリン酸エステル、シクロヘキシルリン酸エステル、ポリオキシエチレン5モル付加ヘキサデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン15モル付加ヘキサデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン7モル付加ポリオキシプロピレン3.5モル付加セカンダリーアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン2モルポリオキシプロピレン5モル付加ドデシルリン酸エステル、ポリオキシエチレン3モル付加セカンダリーアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン2モル付加ドデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレン4モル付加フェノールリン酸エステル等が挙げられる。有機リン酸エステルはアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩であってもよい。
【0042】
〔その他成分〕
本発明の弾性繊維用処理剤は、平滑性、解舒性及び制電性の性能向上、チーズの巻き形状の改善という観点から、上記で説明した各成分以外に、変性シリコーン、シリコーンレジン、高級アルコール、多価アルコール、有機アミン、金属石鹸、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種のその他成分をさらに含有してもよい。その他成分は、1種または2種以上を使用してもよい。
【0043】
上記変性シリコーンとは、一般には、ジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン)等のポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖及び側鎖両末端の少なくとも1ヶ所において、反応性(官能)基または非反応性(官能)基が少なくとも1つ結合した構造を有するものをいう。
【0044】
上記変性シリコーンとしては、より詳細には、長鎖アルキル基(炭素数6以上のアルキル基や2-フェニルプロピル基等)を有する変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン;エステル結合を有する変性シリコーンであるエステル変性シリコーン;ポリオキシアルキレン基(たとえば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基等)を有する変性シリコーンであるポリエーテル変性シリコーン等;アミノプロピル基やN-(2-アミノエチル)アミノプロピル基等を有する変性シリコーンである、アミノ変性シリコーン;アルコール性水酸基を有する変性シリコーンであるカルビノール変性シリコーン;グリシジル基または脂環式エポキシ基等のエポキシ基を有する変性シリコーンであるエポキシ変性シリコーン;カルボキシル基を有する変性シリコーンであるカルボキシ変性シリコーン;メルカプト基を有する変性シリコーンであるメルカプト変性シリコーン等を挙げることができる。
【0045】
上記シリコーンレジンとは、オルガノポリシロキサン樹脂のことで、3次元架橋構造を有するシリコーンを意味する。シリコーンレジンは、一般に、1官能性構成単位(M)、2官能性構成単位(D)、3官能性構成単位(T)および4官能性構成単位(Q)から選ばれた少なくとも1種の構成単位からなっている。
【0046】
上記シリコーンレジンとしては、特に限定されないが、例えば、MQシリコーンレジン、MQTシリコーンレジン、Tシリコーンレジン、DTシリコーンレジン等のシリコーンレジンを挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記MQシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2を含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0048】
上記MQTシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0049】
上記Tシリコーンレジンとしては、たとえば、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン(その末端は炭化水素基のほか、シラノール基やアルコキシ基となっていても良い。)等を挙げることができる。
【0050】
上記DTシリコーンレジンとしては、たとえば、2官能性構成単位であるRSiO2/2(但し、R、およびRはいずれも炭化水素基である。)と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)等を挙げることができる。
【0051】
R、R、RおよびRの炭化水素基としては、炭素数1~24の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等を挙げることができ、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、フェニル基が好ましい。
【0052】
シリコーンレジンを含有する場合、シリコーンレジンの処理剤全体に対する配合比率は、0.1重量%~9重量%が好ましく、0.2重量%~5重量%がより好ましく、0.3重量%~3重量%がさらに好ましい。前記配合比率が、0.1重量%未満の場合、シリコーンレジンの添加による、膠着防止性の向上効果が十分に得られない場合がある。前記配合比率が、9重量%より大きい場合は、膠着防止性には優れるものの、外層部における捲き崩れが発生しやすくなる場合がある。
【0053】
上記高級アルコールとしては、特に限定されないが、炭素数6~30の直鎖及び/又は分岐鎖のアルコールが挙げられ、具体例として、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘネイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、およびトリアコサノール等の直鎖アルコール;2-エチルヘキサノール、2-プロピルヘプタノール、2-ブチルオクタノール、1-メチルヘプタデカノール、2-ヘキシルオクタノール、1-ヘキシルヘプタノール、イソデカノール、イソトリデカノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール等の分岐アルカノール;ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール、エイセノール、ドコセノール、テトラコセノール、ペンタコセノール、ヘキサコセノール、ヘプタコセノール、オクタコセノール、ノナコセノールおよびトリアコンセノール等の直鎖アルケノール;イソヘキセノール、2-エチルヘキセノール、イソトリデセノール、1-メチルヘプタデセノール、1-ヘキシルヘプテノール、イソトリデセノール、およびイソオクタデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。
【0054】
上記多価アルコールとしては、具体例として、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパンが挙げられる。
【0055】
有機アミンとしては、分子中に炭化水素基もしくはオキシアルキレン基を少なくとも一つ以上含むものであれば特に限定はされないが、例えばラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ジエチルアミン、ジオクチルアミン、ジステアリルアミン、メチルステアリルアミン、ポリオキシプロピレン付加ラウリルアミン、ポリオキシエチレン付加ラウリルアミン、ポリオキシエチレン付加ステアリルアミン、ポリオキシエチレン付加オレイルアミン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、ラウリルエタノールアミン、トリオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルステアリルアミン等が挙げられる。
【0056】
上記金属石鹸としては、炭素数8~22の脂肪酸の1価、2価又は3価の金属塩を挙げることができる。金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ミリスチン酸バリウム、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、2-エチルヘキシル酸マグネシウム、ベヘニン酸亜鉛、トリベヘニン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、2-エチルヘキシル酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、カプリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等を挙げることができる。これらの金属石鹸は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0057】
上記ノニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数8~22のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル(オキシアルキレンが1~20モル、オキシアルキレンはオキシエチレン及び/又はオキシプロピレンであり、ランダム及び/又はブロックである。)、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのオキシアルキレン付加物(オキシアルキレンが1~20モル、オキシアルキレンはオキシエチレン及び/又はオキシプロピレンであり、ランダム及び/又はブロックである。)などの多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルフェノール、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルフェノールのオキシアルキレン付加物(オキシアルキレンが1~20モル、オキシアルキレンはオキシエチレン及び/又はオキシプロピレンであり、ランダム及び/又はブロックである。)、脂肪酸ポリオキシアルキレングリコールエステル(オキシアルキレンが1~20モル、オキシアルキレンはオキシエチレン及び/又はオキシプロピレンであり、ランダム及び/又はブロックである。)等が挙げられる。これらのノニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0058】
上記カチオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば上記有機アミン又はその塩、及び4級アンモニウム塩がある。4級アンモニウム塩として具体的には、ジデシルジメチルアンモニウム塩、デシルトリメチルアンモニウム塩、ジオクチルジメチルアンモニウム塩、オクチルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらのカチオン界面活性剤は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0059】
上記アニオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、アルカンスルホン酸及び/またはその塩、ジアルキルスルホコハク酸及び/またはその塩、アルキルベンゼンスルホン酸及び/またはその塩、アルキルナフタレンスルホン酸及び/またはその塩、アルキル硫酸及び/またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及び/またはその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/またはその塩等がある。具体的には、炭素数6~22のアルキル基を有するアルカンスルホン酸及び/またはその塩、後述するジアルキルスルホコハク酸エステル及び/またはその塩、炭素数6~22のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩、炭素数1~20のアルキル基を有するアルキル硫酸及び/またはその塩、炭素数6~22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及び/またはその塩、炭素数6~22のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸及び/またはその塩等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0060】
〔弾性繊維用処理剤〕
本発明の弾性繊維用処理剤における炭化水素油(A)の処理剤全体に占める重量割合は、好ましくは1~99重量%である。該含有量が1重量%未満であると、本成分の効果が小さく高温保管下における解舒性の経時変化を抑制出来なくなる場合があり、含有量が99重量%より大きいと、必然的に処理剤に占める他の成分の含有量が小さくなりすぎ、制電性などの効果が低くなる場合がある。該重量割合の上限はより好ましくは90重量%、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは70重量%である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%である。
【0061】
本発明の弾性繊維用処理剤のシリコーン油(B)の処理剤全体に占める重量割合は、0.01~50重量%が好ましい。該重量割合の上限はより好ましくは40重量%、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは20重量%である。一方、該重量割合の下限はより好ましくは1重量%、さらに好ましくは5重量%、特に好ましくは10重量%である。シリコーン油(B)が0.01重量%未満であると均一付着性向上効果が十分でない場合があり、50重量%より大きいと処理剤の他の成分との相溶性が悪くなり高温保管下における解舒性の経時変化を抑制することが出来なくなる場合がある。
【0062】
本発明の弾性繊維用処理剤の30℃における粘度については、特に制限は無いが好ましくは8~40mm/sであり、より好ましくは9~30mm/s、更に好ましくは9~20mm/sである。粘度が低すぎると、紡糸及び後加工工程で弾性繊維を走行させる際に処理剤が霧状に飛散し、周辺を汚したり作業者が吸入したりする場合がある。また、粘度が高すぎると、紡糸および後加工工程で弾性繊維を走行させる際、粘着性によって走行ローラーに糸が巻き付き、糸切れを生じる場合がある。
【0063】
本発明の弾性繊維用処理剤の製造方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、いくつかの成分を予め配合していて、それ以外の成分と混合する方法でもよく、全成分を一挙に混合する方法でもよい。また、本発明の弾性繊維用処理剤が高級脂肪酸金属塩を含有する場合、既に粉砕された高級脂肪酸金属塩をベース成分等と混合して製造してもよく、ベース成分等に高級脂肪酸金属塩を混合し、従来公知の湿式粉砕機を用いて、所定の平均粒子径になるように粉砕して製造してもよい。
【0064】
〔弾性繊維〕
本発明の弾性繊維は、弾性繊維本体に、本発明の弾性繊維用処理剤が付与されたものである。弾性繊維全体に占める弾性繊維用処理剤の付着割合は特に限定は無いが、0.1~15重量%が好ましく、0.5~10重量%がさらに好ましい。弾性繊維本体に本発明の弾性繊維用処理剤を付与する方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。
【0065】
本発明の弾性繊維(弾性繊維本体)は、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー等を使用した弾性を有する繊維であり、その伸度は通常300%以上である。
【0066】
本発明の弾性繊維としては、PTMGやポリエステルジオールと有機ジイソシアネートを反応させ、次いで、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタンジアミンなどで鎖延長した、ポリウレタンあるいはポリウレタンウレアから構成されるものが挙げられる。例えば、ポリウレタンウレア弾性繊維は、分子量1000~3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2~1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロパンジアミン等のジアミンで鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20~40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400~1200m/minで紡糸することにより製造できる。弾性繊維本体の適応繊度は、特に制限はない。
【0067】
本発明の弾性繊維本体は、酸化チタン、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛、二価の金属石鹸等の無機物を含有してもよい。二価の金属石鹸としては、2-エチルヘキシル酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、カプリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。無機物は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0068】
弾性繊維本体が無機物を含有する場合、均一解舒性が不良になる場合があるが、弾性繊維本体に本発明の処理剤を付与することにより、均一解舒性を良好にすることができる。従って、本発明の弾性繊維用処理剤は、弾性繊維本体が無機物を含有する場合に好適に使用できる。弾性繊維本体に占める無機物の含有量は特に限定は無いが、0.01~5重量%が好ましく、0.1~3重量%がさらに好ましい。
【0069】
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツ等のアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示される「パーセント(%)」及び「部」は、特に限定しない限り、「重量%」及び「重量部」を示す。なお、実施例及び比較例において、弾性繊維用処理剤の各特性の評価は次の方法に従って行った。
【0071】
(解舒速度比)
図1において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(1)をセットし、巻き取り側紙管(2)をセットした。巻取速度を一定速度にセットした後、ローラー(3)および(4)を同時に起動させた。この状態では糸(5)に張力はほとんどかからないため、糸はチーズ上で膠着して離れず、解舒点(6)は図1に示す状態にあった。解舒速度を変えることによって、チーズからの糸(5)の解舒点(6)が変わるので、この点がチーズとローラーとの接点(7)と一致するように解舒速度を設定した。解舒速度比は下記式(1)によって求めた。この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
解舒速度比(%)=((巻取速度-解舒速度)/解舒速度)×100 式(1)
常温経時後の解舒速度比とは、チーズを20℃65%RHの条件下で、6ヶ月経時後の解舒速度比を示す。
常温経時膠着抑制性を以下の指標で判断した。
(指標)
◎:経時後の解舒速度比が100未満、且つ経時前と経時後の差が30未満
○:経時後の解舒速度比が100未満、且つ経時前と経時後の差が30以上50未満
×:経時後の解舒速度比が100以上、又は経時前と経時後の差が50以上
高温経時後の解舒速度比とは、チーズを50℃、80%RHの雰囲気下で14日間放置後、20℃、50%RHの雰囲気下で24時間放置した後に測定したチーズ内層部の解舒速度比を示す。
高温経時膠着抑制性を以下の指標で判断した。
(指標)
◎:経時後の解舒速度比が100未満、且つ経時前と経時後の差が30未満
○:経時後の解舒速度比が100未満、且つ経時前と経時後の差が30以上50未満
×:経時後の解舒速度比が100以上、又は経時前と経時後の差が50以上
【0072】
(繊維間摩擦係数(F/FμS))
図2において、処理剤が付与されたポリウレタン弾性繊維のモノフィラメントを50~60cm程取り、一方の端に荷重T1(10)を吊り、ローラー(9)を介して、Uゲージ(8)にもう一方の端を掛けて定速(例えば、3cm/分)で引っ張り、そのときの2次張力T2をUゲージ(18)で測定し、下式(2)により、繊維間摩擦係数を求めた。
摩擦係数(F/FμS)=1/θ・ln(T2/T1) 式(2)
(式(2)において、θ=2π、ln=自然対数、T1は22dtex当り1g)
捲き崩れ防止性については、以下の指標で判断した。
(指標)
○:繊維間摩擦係数が0.22以上
×:繊維間摩擦係数が0.22未満
【0073】
[実施例1~10及び比較例1~9]
(紡糸原液の調整)
数平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’―ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1,2-ジアミノプロパンのジメチルホルムアミド溶液を用いて鎖延長し、ポリマー濃度27%のジメチルホルムアミド溶液を得た。30℃での粘度は1500mPaSであった。
【0074】
ポリウレタン紡糸原液を190℃のN気流中に吐出して乾式紡糸した。紡糸中走行糸に表2~表5に記載の成分を用いて作製した処理剤(表中の配合量は重量部)をオイリングローラーにより繊維に対して6重量%付与した後、毎分500mの速度でボビンに巻き取り、44dtexモノフィラメントチーズ(巻き量400g)を得た。得られたチーズによる油剤性能の評価結果を表2~表5に示した。なお、表2~表5中の使用した成分は次のとおりである。
【0075】
(炭化水素油)
a-1:XHVI 4(Shell Lubricants社製)
a-2:XHVI 3(Shell Lubricants社製)
a-3:ダイアナフレシアW―8(出光興産社製)
a-4:流動パラフィンRCM(三光化学工業社製)
a-5:YUBASE 3(SK Lubricants社製)
a-6:PAO401(新日鉄住金化学社製)
【0076】
(シリコーン油(B))
b-1:TSF451-10(モメンティヴ・パフォーマンス社製、ジメチルシリコーン10mm/s(25℃))
b-2:WACKER SILICONE FLUID AK20(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、ジメチルシリコーン20mm/s(25℃))
【0077】
(エステル油(C))
c-1:2-エチルヘキシルステアレート
【0078】
(有機リン酸エステル(D))
d-1:イソトリデシルリン酸エステル
【0079】
(その他成分)
X-1:シリコーンレジン(MQレジン)(500mm/s(25℃))
X-2:POE変性シリコーン
X-3:イソステアリルアルコール
X-4:ジ2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
X-5:ステアリン酸マグネシウム:平均粒子径0.5μm、針状(1:5)
【0080】
表2~表5中で使用した炭化水素油に含まれるナフテン成分、パラフィン成分及びアロマ成分の重量割合については表1の通りであった。尚、表1に記載のナフテン成分、パラフィン成分及びアロマ成分の重量割合は、ASTMのD3238に規定された環分析n-d-M法により測定されたC%、C%、C%の値である。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
表2~表5から分かるように実施例1~10は、炭化水素油(A)を含有する弾性繊維用処理剤であって、炭化水素油(A)に占めるナフテン成分の重量割合が0重量%超かつ13%以下であるために本願の課題の解決が出来ている。
一方、炭化水素油(A)を含有しない場合(比較例5)、あるいは炭化水素油中のナフテン成分の重量割合が0重量%超かつ13重量%以下の範囲に無い場合(比較例1~4、6~9)は、本願課題である高温保管下における経時膠着抑制性及び捲き崩れ防止性の少なくともいずれか一方が解決できていない。
【符号の説明】
【0087】
1 チーズ
2 巻き取り側紙管
3 ローラー
4 ローラー
5 チーズから解舒された糸
6 解舒点
7 ローラーとの接点
8 Uゲージ
9 ローラー
10 荷重
図1
図2