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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054484
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】エンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163360
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【弁理士】
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】柴田 祥平
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK03
3C022KK16
3C022KK23
3C022KK28
(57)【要約】
【課題】ステンレス鋼等の難削材に対しても、加工後における被削材の面粗さを小さくし、かつ加工面の垂直度を確保できるエンドミルを提供する。
【解決手段】複数の底刃1~4当該底刃1~4と連続して長手方向に形成される複数の外周刃11~14当該底刃1~4および外周刃11~14に隣接配置される複数のねじれ溝21~24を有して、これら複数の底刃1~4が形成する中心の角度α1、α2が互いに異なり、かつ複数の外周刃11~14のねじれ角β1、β2が互いに異なるエンドミル100において、長手方向における外周刃11~14の長さである刃長L0が外径D1の3倍以上であり、当該外周刃11~14に0.1°~3.0°の逃げ角θ1を10~100μmの幅で設けて、複数の外周刃11~14の互いに異なるねじれ角β1、β2同士の差異は1°以上3°以下の範囲とする。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の底刃と、前記底刃と連続して長手方向に形成される複数の外周刃と、前記底刃および外周刃に隣接配置される複数のねじれ溝と、を有し、前記底刃同士が隣接することで形成される角度が互いに異なり、かつ前記複数の外周刃のねじれ角が互いに異なり、前記長手方向における前記外周刃の長さである刃長が外径の3倍以上であるエンドミルにおいて、前記外周刃には0.1°~3.0°の逃げ角が10~100μmの幅で設けられており、かつ前記複数の外周刃の互いに異なるねじれ角同士の差異は1°以上3°以下の範囲であることを特徴とするエンドミル。
【請求項2】
前記刃長は前記外径の4倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
【請求項3】
前記外周刃には0.5°~1.5°の逃げ角が20~60μmの幅で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
【請求項4】
前記複数の外周刃の互いに異なるねじれ角は、36.0°以上36.5°以下の範囲である第1ねじれ角および38.5°以上39°以下の範囲である第2ねじれ角から形成されることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
【請求項5】
前記外周刃には、6°~15°のすくい角が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエンドミル。
【請求項6】
前記外周刃には、8°~10°のすくい角が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のエンドミル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃長が外径の3倍以上であるエンドミルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、切削加工時に発生するびびり振動を抑制するために、エンドミルのねじれ角を異なる形態にした、いわゆる不等リードエンドミルが利用されている。また、エンドミルの底刃が4枚である場合に隣接する底刃の中心角度を異なる形態にした、いわゆる不等分割エンドミルも合わせて利用されている(特許文献1ないし4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2019-507023号公報
【特許文献2】特開平10-118826号公報
【特許文献3】国際公開2006-046278号公報
【特許文献4】特許第6410220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、被削材がステンレス鋼である場合、炭素鋼を切削加工する場合に比べてエンドミルの長さ方向での段差が被削材の切削加工面に発生しやすい。また、エンドミルの長さ方向の切削長さが比較的に大きい場合(いわゆる深溝加工)も同様に段差が発生しやすい傾向にあり、切削加工面の面粗さ(面粗度)や垂直度合いの加工精度が低下する傾向にあった。
【0005】
そこで、本発明は、ステンレス鋼等の難削材に対しても、加工後における被削材の面粗さを小さくし、かつ加工面の垂直度を確保できるエンドミルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンドミルは、複数の底刃、当該底刃と連続して長手方向に形成される複数の外周刃、当該底刃および外周刃に隣接配置される複数のねじれ溝を有して、これら複数の底刃が形成する中心の角度が互いに異なり、かつ複数の外周刃のねじれ角が互いに異なるエンドミルにおいて、長手方向における外周刃の長さである刃長が外径の3倍以上であり、当該外周刃に0.1°~3.0°の逃げ角を10~100μmの幅で設けて、かつ複数の外周刃の互いに異なるねじれ角同士の差異が1°以上3°以下の範囲のエンドミルとする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエンドミルは、ステンレス鋼等の難削材に対しても、加工後における被削材の面粗さを小さくし、かつ加工面の垂直度を確保できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のエンドミル100の正面図である
図2】本発明のエンドミル100の左側面図である
図3図1のX-X線断面図である
図4図3のA部拡大図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態であるエンドミルについて図面を用いて説明する。本発明のエンドミル100の全体正面図を図1、エンドミル100先端部(左側面図)を図2図1に示すX-X線断面図を図3図3に示すA部拡大図を図4に示す。
【0010】
エンドミル100は、図1および図2に示す様に複数の底刃1、2、3、4と、これらの底刃1、2、3、4と連続してエンドミル100の長手方向(軸方向)に形成される複数の外周刃11、12、13、14と、これらの底刃1、2、3、4および外周刃11、12、13、14に隣接配置される複数のねじれ溝21、22、23、24を有している。これら隣接する2枚の底刃1、4と底刃3、4が形成する中心の角度α1、α2は互いに異なり(α1≠α2)、かつ複数の外周刃12、13のねじれ角(ねじれ溝12、13と中心軸Oとのなす角度)β1、β2も互いに異なる。
【0011】
また、エンドミル100の長手方向(軸方向)における外周刃11、12、13、14の長さ、すなわち底刃から外周刃の切り上がりまでの距離である刃長L0がエンドミル100の外径D1の3倍以上とする。さらに、図4に示す様にこれらの外周刃11、12、13、14に0.1°~3.0°の第1逃げ角θ1を10~100μmの幅eにおいて設ける。第1逃げ角θ1の回転方向の後方側に形成される第2逃げ角θ2は、第1逃げ角θ1よりも大きければ(θ2>θ1)任意の角度にすることができる。
【0012】
なお、複数の外周刃11、12、13、14の互いに異なるねじれ角β1、β2同士の差異は、1°以上3°以下の範囲とすることもできる。例えば、複数の外周刃11、12、13、14の互いに異なるねじれ角は、β1、β2は、36.0°以上36.5°以下の範囲である第1ねじれ角β1および38.5°以上39°以下の範囲である第2ねじれ角β2とすることもできる。
【0013】
また、エンドミル100の刃長L0はエンドミル100の外径D1の4倍以上とすることもできる。この場合に外周刃11、12、13、14には0.5°~1.5°の逃げ角θ1を20~60μmの幅eで設けて、図3に示す様にエンドミル100の心厚D0を外径D1の0.75倍以上0.80倍以下の範囲としても構わない。さらに、図4に示す様に外周刃11、12、13、14のすくい角γは6°~15°の範囲、好ましくは8°~10°の範囲にすることもできる。
【実施例0014】
(実施例1)
本発明のエンドミル(心厚を外径の80%とする:発明品)および比較材として2種類のエンドミル(心厚を外径の65%、75%の2水準とする:比較品1、2)をそれぞれ用いて、切削加工試験を行い、エンドミルの心厚が被削材の加工精度に及ぼす影響を確認した。
【0015】
本切削加工試験で使用した発明品および比較品1、2の各エンドミルの共通仕様を以下の様にした。
・底刃が形成する中心角度:106°と74°
・ねじれ角:36.5°と39°
・外周刃の逃げ角:10°
・外径:10mm
・刃長:40mm
・工具長さ:90mm
・シャンク径:10mm
【0016】
また、切削加工条件は以下の条件とした。
・被削材:S50C
・切削速度:10mm
・回転数:4200min-1
・送り速度:1200mm/min
・送り量:0.070mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)0.5mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・突き出し量:50mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC(工作機械)
【0017】
本切削加工試験の結果について以下に説明する。まず、比較品1のエンドミル(心厚が外径の65%)は、切削長さが10mの時点で倒れが極端に増大したので、比較品1による切削加工試験は切削長さが10mの時点で終了した。発明品および比較品2(心厚が外径の75%)の各エンドミルは、切削長さが100mの時点で切削加工試験を終了した。
【0018】
その結果、倒れ量は発明品(心厚が80%であるエンドミル)が比較品2(心厚が外径の75%)よりも小さい数値であった。これは、エンドミルの心厚が大きくなるほど、エンドミル自体の剛性が向上し、被削材への倒れ量が改善されたためと考えられる。
【0019】
(実施例2)
次に、本発明のエンドミル(発明品)および比較材として2種類のエンドミル(比較品1、2)をそれぞれ用いて難削材であるステンレス鋼の切削加工試験を行い、エンドミルの外周刃の逃げ角の違いによる被削材の加工精度に及ぼす影響を確認した。発明品1、2および比較品1、2の各エンドミルの仕様は以下の通りとした。
【0020】
(発明品の仕様)
・外径:10mm
・刃長:40mm
・工具長:100mm
・シャンク径:10mm
・ねじれ角:36.5°と39°
・底刃が形成する中心角度:106°と74°
・二番角:1°
・二番角の幅:0.02mm(20μm)
【0021】
(比較品1の仕様)
・外径:10mm
・刃長:40mm
・工具長:90mm
・シャンク径:10mm
・ねじれ角:36.5°と39°
・底刃が形成する中心角度:106°と74°
・二番角:無し
・二番角の幅:0mm
【0022】
(比較品2の仕様)
・外径:10mm
・刃長:40mm
・工具長:90mm
・シャンク径:10mm
・ねじれ角:42°と44°
・底刃が形成する中心角度:100°と80°
・二番角:0°30′(0度30分)
・二番角の幅:0.03mm(30μm)
【0023】
本実施例の切削加工試験では下記の加工条件1~3の計3条件で試験を行い、加工条件ごとにその試験結果を説明する。まずは、加工条件1の詳細は下記の通りとした。
(加工条件1)
・切削速度:116m/min
・回転数:3700min-1
・送り速度:960mm/min
・送り量:0.065mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)0.5mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・突き出し量:50mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0024】
上述の加工条件1で切削加工した試験結果について説明する。まず、比較品1は、切削加工中にびびり振動が発生し、被削材の加工面に斜めのカッターマークの痕跡が確認された。発明品と比較品2は切削加工中のびびり振動は確認されず、良好な加工面が得られた。また、被削材の倒れ量については、比較品1、発明品、比較品2の順に良好な結果が得られた。
【0025】
次に、加工条件2については下記の通りとした。
(加工条件2)
・切削速度:126m/min
・回転数:4000min-1
・送り速度:960mm/min
・送り量:0.060mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)1.0mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・突き出し量:50mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0026】
上述の加工条件2で切削加工した試験結果について説明する。発明品と比較品2ともに切削加工中のびびり振動は確認されず、被削材には良好な加工面が得られた。また、被削材の倒れ量は、比較品2よりも発明品の倒れ量が小さくなった。
【0027】
最後に、加工条件3については下記の通りとした。
(加工条件3)
・切削速度:75m/min
・回転数:2400min-1
・送り速度:530mm/min
・送り量:0.055mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)1.5mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・突き出し量:50mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0028】
上述の加工条件3で切削加工した試験結果について説明する。発明品と比較品2ともに切削加工中のびびり振動は確認されず、良好な加工面が得られた。被削材の倒れ量は、比較品2よりも発明品の倒れ量が小さくなった。
【0029】
以上の加工条件1~3の様に高速切削、高速回転の状態に関わらず、エンドミルの外周刃には微小な二番角を設けた方が、微少な二番角が無い場合に比べて、切削加工中のびびり振動を抑制し、かつ被削材の倒れ量が減少することわかった。同時に、外周刃の微少な二番角の大きさについては、二番角を1°未満とすることがより望ましいことがわかった。
【0030】
(実施例3)
次に、前述の実施例2で使用した発明品と比較品2の2種類のエンドミルを用いて、下記の加工条件で切削加工試験を行い、エンドミルの寿命評価を行った。試験条件は、下記の通りとした。
・被削材:炭素鋼(S50C)およびステンレス鋼(SUS304)
・切削速度:130m/min
・回転数:4200min-1
・送り速度:1200mm/min
・送り量:0.07mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)0.5mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・突き出し量:50mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0031】
本試験結果について説明する。まず、被削材がS50Cの場合、比較品2は切削長100mでコーナ摩耗量が303μmに到達したので寿命が到来したと判定し、この時点で切削加工試験を終了した。これに対して、発明品は切削長150m時点で摩耗量が322μmに到達した。次に、被削材をSUS304とした場合には、切削長200mの時点で発明品および比較品2のいずれの摩耗量共に50μmであった。
【0032】
(実施例4)
次に外径が1mmの本発明のエンドミル(発明品)および比較材として2種類のエンドミル(比較品1、2)をそれぞれ用いて切削加工試験を行い、エンドミルの二番形状が寿命に及ぼす影響を確認した。発明品および比較品1、2の各エンドミルの仕様は下記の通りとした。
【0033】
(発明品の仕様)
・外径:1mm
・刃長:4mm
・工具長:40mm
・シャンク径:4mm
・ねじれ角:37°と39°
・底刃が形成する中心角度:103°と77°
・二番角:なし
・二番角の幅:0mm
・外刃形状:刃先丸め処理あり
【0034】
(比較品1の仕様)
・外径:1mm
・刃長:4mm
・工具長:40mm
・シャンク径:4mm
・ねじれ角:38°と40°
・底刃が形成する中心角度:103°と77°
・二番角:なし
・二番角の幅:0mm
【0035】
(比較品2の仕様)
・外径:1mm
・刃長:4mm
・工具長:40mm
・シャンク径:4mm
・ねじれ角:37°と39°
・底刃が形成する中心角度:103°と77°
・二番角:1°
・二番角の幅:0.02mm
【0036】
また、切削条件は以下の条件とした。
・被削材:炭素鋼(S50C)
・切削速度:60m/min
・回転数:19000min-1
・送り速度:300mm/min
・送り量:0.004mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)4mm、径方向切り込み量(ae)0.03mm
・切削油材:水溶性切削油材
・突き出し量:12mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0037】
上述の加工条件で切削加工した試験結果について説明する。比較品1は、33m加工時点で折損し、比較品2は10m加工時点で折損することが確認された。発明品は56m加工時点で折損することが確認され、比較品1,2より寿命が長いという結果が得られた。
【0038】
(実施例5)
次に前述の実施例4で使用した発明品と比較品1の2種類のエンドミルを用いて難削材であるステンレス鋼の切削加工試験を行い、エンドミルの外周刃の逃げ角の違いによる被削材の加工精度に及ぼす影響を確認した。
【0039】
本実施例の切削加工試験では下記の加工条件1~3の計3条件で試験を行い、その試験結果を説明する。加工条件1の詳細は下記の通りとした。
(加工条件1)
・切削速度:63m/min
・回転数:19940min-1
・送り速度:530mm/min
・送り量:0.0066mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)4mm、径方向切り込み量(ae)0.05mm
・切削油材:水溶性切削油材
・突き出し量:12mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0040】
次に、加工条件2については下記の通りとした。
(加工条件2)
・切削速度:68m/min
・回転数:21500min-1
・送り速度:520mm/min
・送り量:0.006mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)4mm、径方向切り込み量(ae)0.10mm
・切削油材:水溶性切削油材
・突き出し量:12mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0041】
次に、加工条件3については下記の通りとした。
(加工条件3)
・切削速度:41m/min
・回転数:13000min-1
・送り速度:290mm/min
・送り量:0.0056mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)4mm、径方向切り込み量(ae)0.15mm
・切削油材:水溶性切削油材
・突き出し量:12mm
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0042】
上述の加工条件1~3で切削加工した試験結果について説明する。比較品1はいずれの条件においても切削加工中にびびり振動が発生し、被削材の加工面に斜めのカッターマークの痕跡が確認された。発明品1はいずれの条件においても切削加工中のびびり振動は確認されず、良好な加工面が得られた。
【0043】
以上の加工条件1~3の様に高速切削、高速回転の状態にかかわらず、エンドミルの外周刃には刃先丸め処理を施工した方が、施工しない場合に比べて、切削加工中のびびり振動を抑制することが分かった。
【0044】
(実施例6)
次に、外周刃のねじれ角による切削加工に及ぼす影響を確認するために、2種類のエンドミルを使用して切削加工試験を行ったので、その試験結果について説明する。本発明のエンドミル(発明品)および比較材のエンドミル(比較品)の仕様は以下の通りとした。
【0045】
(発明品)
切れ刃数:4
外径:20mm
刃長:80mm
工具長:140mm
シャンク径:20mm
ねじれ角:36.5°と39°
二番角:1°
二番角の幅:0.02mm
【0046】
(比較品1)
切れ刃数:5
外径:20mm
刃長:80mm
工具長:155mm
シャンク径:20mm
ねじれ角:40.5°と41.3°と42°
二番角:1°
二番角の幅:0.03mm
【0047】
次に、被削材には炭素鋼(S50C)およびオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)の2種類の異なる被削材を使用して、下記の切削加工条件で試験を行った。まず、被削材が炭素鋼の場合の切削加工条件を以下に示す。
・切削速度:140m/min、
・回転数:2230min-1
・送り速度:1060mm/min
・送り量:0.119mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)1.0mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0048】
次に、被削材にオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)を用いた場合の切削加工条件1~3を以下に示す。
(加工条件1)
・切削速度:115m/min
・回転数:1830min-1
・送り速度:690mm/min
・送り量:0.094mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)1.0mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0049】
(加工条件2)
・切削速度:125m/min
・回転数:1990min-1
・送り速度:770mm/min
・送り量:0.097mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)2.0mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0050】
(加工条件3)
・切削速度:75m/min
・回転数:1190min-1
・送り速度:390mm/min
・送り量:0.082mm/t
・切り込み量:軸方向切り込み量(ap)40mm、径方向切り込み量(ae)3.0mm
・切削油剤:水溶性切削油剤
・加工形態:側面切削ダウンカット
・使用機械:立型MC
【0051】
本加工試験の結果について説明する。まず、被削材がS50Cの場合には、発明品および比較品の間で切削長150mの時点で摩耗量の差異は見られなかった。しかし、倒れ量および加工面の面粗さについては、発明品は比較品よりも優位な結果となった。
【0052】
次に、被削材がSUS304の場合には、加工条件1~3の如何なる切削加工条件に関わらず、発明品は比較品に対して倒れ量と面粗さの点で優位となる結果であった。
【0053】
以上の試験結果より、エンドミルのねじれ角については発明品(ねじれ角:36.5°と39°)が比較品(40.5°と41.3°と42°)より切削加工性能における被削材の倒れ量および加工面の面粗さに関して良好な結果が得られたことから、ねじれ角は40°未満とすることがより効果的であることがわかった。

図1
図2
図3
図4