(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054487
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】移動式屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04B 7/16 20060101AFI20230407BHJP
E04H 3/14 20060101ALI20230407BHJP
E04H 15/44 20060101ALI20230407BHJP
E04H 15/54 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
E04B7/16 B
E04H3/14 Z
E04H15/44
E04H15/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163363
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】517064843
【氏名又は名称】河野 久米彦
(71)【出願人】
【識別番号】502410196
【氏名又は名称】株式会社 横河システム建築
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 久米彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智夫
(72)【発明者】
【氏名】朱 大立
(72)【発明者】
【氏名】村岡 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓司
(72)【発明者】
【氏名】大関 信彦
【テーマコード(参考)】
2E141
【Fターム(参考)】
2E141AA07
2E141BB01
2E141CC01
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち高スペックかつ数多くのウィンチを調達することなく、しかも好適に屋根桁を移動させることができる技術を提供することである。
【解決手段】本願発明の移動式屋根構造は、施設の屋根構造であって、略平行に配置される複数の屋根桁と屋根桁に取り付けられる伸縮装置を備えたものである。屋根桁は、後方屋根桁と前方屋根桁、中間屋根桁を含んで構成され、この中間屋根桁は、後方屋根桁と屋根桁の間に配置される。多節リンク機構は、後方アーム機構と前方アーム機構、後方アーム機構と前方アーム機構の間に配置される中間アーム機構を含んで構成される。制御線を後方に引き込むと、前方屋根桁と中間屋根桁が前方に移動していく。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設の屋根構造であって、
平行又は略平行に配置される複数の屋根桁と、
前記屋根桁に取り付けられる伸縮装置と、を備え、
前記屋根桁は、後方屋根桁、前方屋根桁、及び中間屋根桁を含み、
前記中間屋根桁は、前記後方屋根桁と前記屋根桁の間に配置され、
前記前方屋根桁と前記中間屋根桁は、前記屋根桁の桁軸方向と垂直又は略垂直であって水平又は略水平な桁軸直角方向に移動可能であり、
前記伸縮装置は、多節リンク機構、及び制御線を含み、
前記多節リンク機構は、後方アーム機構、前方アーム機構、及び該後方アーム機構と該前方アーム機構の間に配置される中間アーム機構を含み、
前記後方アーム機構は、V字状に配置された2つの後方アームが後方固定ピンによってピン結合される機構であり、
前記前方アーム機構は、V字状に配置された2つの前方アームが前方固定ピンによってピン結合される機構であり、
前記中間アーム機構は、X字状に配置された2つの中間アームが中間固定ピンによってピン結合される機構であり、
前記多節リンク機構は、隣接する前記後方アームと前記中間アームが後方可動ピンによってピン結合されるとともに、隣接する前記前方アームと前記中間アームが前方可動ピンによってピン結合される機構であり、
また前記多節リンク機構は、前記後方固定ピンの位置で前記後方屋根桁に固定されるとともに、前記前方固定ピンの位置で前記前方屋根桁に固定され、さらに前記中間固定ピンの位置で前記中間屋根桁に固定され、
前記制御線は、一端が前記前方屋根桁に固定されるとともに、前記前方固定ピンに掛けられ、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記前方可動ピンに掛け回され、前記中間固定ピンに掛けられ、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記後方可動ピンに掛け回され、前記後方固定ピンに掛けられ、
前記制御線を前記前方屋根桁から前記後方屋根桁に向かう後進方向に引き込むと、該前方屋根桁と前記中間屋根桁が該後方屋根桁から該前方屋根桁に向かう前進方向に移動していく、
ことを特徴とする移動式屋根構造。
【請求項2】
前記屋根桁は、2以上の前記中間屋根桁を含み、
前記多節リンク機構は、2以上の前記中間アーム機構を含むとともに、隣接する前記中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記制御線は、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記前方可動ピンに掛け回されて前記中間固定ピンに掛けられると、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記中間可動ピンに掛け回され、該中間可動ピンより前記後進方向にある前記中間固定ピンに掛けられ、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記後方可動ピンに掛け回される、
ことを特徴とする請求項1記載の移動式屋根構造。
【請求項3】
施設の屋根構造であって、
平行又は略平行に配置される複数の屋根桁と、
前記屋根桁に取り付けられる伸縮装置と、を備え、
前記屋根桁は、後方屋根桁、前方屋根桁、第1中間屋根桁、及び第2中間屋根桁を含み、
前記第1中間屋根桁は、前記後方屋根桁と前記屋根桁の間に配置され、
前記第2中間屋根桁は、前記桁軸方向に形成されるガイド溝を有するとともに、隣接する前記後方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間、及び隣接する前記前方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間に、それぞれ配置され、
前記前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁は、前記屋根桁の桁軸方向と垂直又は略垂直であって水平又は略水平な桁軸直角方向に移動可能であり、
前記伸縮装置は、多節リンク機構、及び制御線を含み、
前記多節リンク機構は、後方アーム機構、前方アーム機構、及び該後方アーム機構と該前方アーム機構の間に配置される中間アーム機構を含み、
前記後方アーム機構は、V字状に配置された2つの後方アームが後方固定ピンによってピン結合される機構であり、
前記前方アーム機構は、V字状に配置された2つの前方アームが前方固定ピンによってピン結合される機構であり、
前記中間アーム機構は、X字状に配置された2つの中間アームが中間固定ピンによってピン結合される機構であり、
前記多節リンク機構は、隣接する前記後方アームと前記中間アームが後方可動ピンによってピン結合されるとともに、隣接する前記前方アームと前記中間アームが前方可動ピンによってピン結合される機構であり、
また前記多節リンク機構は、前記後方固定ピンの位置で前記後方屋根桁に固定されるとともに、前記前方固定ピンの位置で前記前方屋根桁に固定され、さらに前記中間固定ピンの位置で前記第1中間屋根桁に固定され、
前記後方可動ピンと前記前方可動ピンは、前記ガイド溝内をスライド移動可能となるように前記第2中間屋根桁に取り付けられ、
前記制御線は、一端が前記前方屋根桁に固定されるとともに、前記前方固定ピンに掛けられ、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記前方可動ピンに掛け回され、前記中間固定ピンに掛けられ、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記後方可動ピンに掛け回され、前記後方固定ピンに掛けられ、
前記制御線を前記前方屋根桁から前記後方屋根桁に向かう後進方向に引き込むと、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記後方可動ピンと前記前方可動ピンが互いに接近するように前記ガイド溝内をスライド移動するとともに、該前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁が該後方屋根桁から該前方屋根桁に向かう前進方向に移動していく、
ことを特徴とする移動式屋根構造。
【請求項4】
前記屋根桁は、2以上の前記第1中間屋根桁を含み、
前記第2中間屋根桁は、隣接する2つの前記第1中間屋根桁の間にも配置され、
前記多節リンク機構は、2以上の前記中間アーム機構を含むとともに、隣接する前記中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記中間可動ピンは、前記ガイド溝内をスライド移動可能となるように前記第2中間屋根桁に取り付けられ、
前記制御線は、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記前方可動ピンに掛け回されて前記中間固定ピンに掛けられると、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記中間可動ピンに掛け回され、該中間可動ピンより前記後進方向にある前記中間固定ピンに掛けられ、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記後方可動ピンに掛け回され、
前記制御線を、前記後進方向に引き込むと、前記桁軸方向に並ぶ2つの前記中間可動ピンが互いに接近するように前記ガイド溝内をスライド移動していく、
ことを特徴とする請求項3記載の移動式屋根構造。
【請求項5】
施設の屋根の構造において、
平行又は略平行に配置される複数の屋根桁と、
前記屋根桁に取り付けられる伸縮装置と、を備え、
前記屋根桁は、後方屋根桁、前方屋根桁、第1中間屋根桁、及び第2中間屋根桁を含み、
前記第1中間屋根桁は、前記後方屋根桁と前記屋根桁の間に配置され、
前記第2中間屋根桁は、隣接する前記後方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間、及び隣接する前記前方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間に、それぞれ配置され、
前記前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁は、前記屋根桁の桁軸方向と垂直又は略垂直であって水平又は略水平な桁軸直角方向に移動可能であり、
前記伸縮装置は、多節リンク機構、及び制御線を含み、
前記多節リンク機構は、前記屋根桁の下方であって鉛直又は略鉛直面内に配置される後方アーム機構、及び前方アーム機構を含み、
前記後方アーム機構は、後方固定ピンによって前記後方屋根桁にピン結合される後方アームと、中間固定ピンによって前記第1中間屋根桁にピン結合される中間アームと、によってV字形状が形成されるとともに、該後方アームと該中間アームが後方可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記前方アーム機構は、前方固定ピンによって前記前方屋根桁にピン結合される前方アームと、前記中間固定ピンによって前記中間屋根桁にピン結合される前記中間アームと、によってV字形状が形成されるとともに、該前方アームと該中間アームが前方可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記第2中間屋根桁には、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な中間固定滑車が設けられ、
前記制御線は、一端が前記前方屋根桁に固定されるとともに、前記前方固定ピンに掛けられ、前記前方可動ピンに掛け回され、前記中間固定滑車に掛け回されて再び該前方可動ピンに掛け回され、前記中間固定ピンに掛け回され、前記後方可動ピンに掛け回され、該中間固定ピンより前記後方屋根桁側にある前記中間固定滑車に掛け回されて再び該後方可動ピンに掛け回され、前記後方固定ピンに掛けられ、
前記制御線を前記前方屋根桁から前記後方屋根桁に向かう後進方向に引き込むと、該前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁が該後方屋根桁から該前方屋根桁に向かう前進方向に移動していく、
ことを特徴とする移動式屋根構造。
【請求項6】
前記屋根桁は、2以上の前記第1中間屋根桁を含み、
前記第2中間屋根桁は、隣接する2つの前記第1中間屋根桁の間にも配置され、
前記多節リンク機構は、前記屋根桁の下方であって鉛直又は略鉛直面内に配置される1又は2以上の中間アーム機構を含み、
前記中間アーム機構は、隣接する2つの前記第1中間屋根桁にそれぞれ前記中間固定ピンによってピン結合される2つの前記中間アームによりV字形状が形成されるとともに、該中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記制御線は、前記中間固定滑車に掛け回されて再び前記前方可動ピンに掛け回され、さらに前記中間固定ピンに掛け回されると、前記中間可動ピンに掛け回され、該中間固定ピンより前記後進方向にある前記中間固定滑車に掛け回されて再び該中間可動ピンに掛け回され、該中間可動ピンより該後進方向にある前記中間固定ピンに掛け回され、前記後方可動ピンに掛け回される、
ことを特徴とする請求項5記載の移動式屋根構造。
【請求項7】
施設の屋根の構造において、
平行又は略平行に配置される複数の屋根桁と、
前記屋根桁に取り付けられる伸縮装置と、を備え、
前記屋根桁は、後方屋根桁、前方屋根桁、第1中間屋根桁、及び第2中間屋根桁を含み、
前記第1中間屋根桁は、前記後方屋根桁と前記屋根桁の間に配置され、
前記第2中間屋根桁は、隣接する前記後方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間、及び隣接する前記前方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間に、それぞれ配置され、
前記前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁は、前記屋根桁の桁軸方向と垂直又は略垂直であって水平又は略水平な桁軸直角方向に移動可能であり、
前記伸縮装置は、多節リンク機構、及び制御線を含み、
前記多節リンク機構は、前記屋根桁の下方であって鉛直又は略鉛直面内に配置される後方アーム機構、及び前方アーム機構を含み、
前記後方アーム機構は、後方固定ピンによって前記後方屋根桁にピン結合される後方アームと、中間固定ピンによって前記第1中間屋根桁にピン結合される中間アームと、によってV字形状が形成されるとともに、該後方アームと該中間アームが後方可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記前方アーム機構は、前方固定ピンによって前記前方屋根桁にピン結合される前方アームと、前記中間固定ピンによって前記中間屋根桁にピン結合される前記中間アームと、によってV字形状が形成されるとともに、該前方アームと該中間アームが前方可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記第2中間屋根桁には、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な中間固定滑車が設けられ、
前記後方アームには、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な後方アーム滑車が設けられ、
前記前方アームには、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な前方アーム滑車が設けられ、
前記中間アームには、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な中間アーム滑車が設けられ、
前記制御線は、一端が前記前方屋根桁に固定されるとともに、前記前方固定ピンに掛けられ、前記前方アーム滑車に掛け回され、前記中間固定滑車に掛け回され、前記前方アーム機構を構成する前記中間アームの前記中間アーム滑車に掛け回され、前記中間固定ピンに掛け回され、前記後方アーム機構を構成する前記中間アームの前記中間アーム滑車に掛け回され、該中間固定ピンより前記後方屋根桁側にある前記中間固定滑車に掛け回されて前記後方アーム滑車に掛け回され、前記後方固定ピンに掛けられ、
前記制御線を前記前方屋根桁から前記後方屋根桁に向かう後進方向に引き込むと、該前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁が該後方屋根桁から該前方屋根桁に向かう前進方向に移動していく、
ことを特徴とする移動式屋根構造。
【請求項8】
前記屋根桁は、2以上の前記第1中間屋根桁を含み、
前記第2中間屋根桁は、隣接する2つの前記第1中間屋根桁の間にも配置され、
前記多節リンク機構は、前記屋根桁の下方であって鉛直又は略鉛直面内に配置される1又は2以上の中間アーム機構を含み、
前記中間アーム機構は、隣接する2つの前記第1中間屋根桁にそれぞれ前記中間固定ピンによってピン結合される2つの前記中間アームによりV字形状が形成されるとともに、該中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される機構であり、
前記制御線は、前記前方アーム機構を構成する前記中間アームの前記中間アーム滑車に掛け回され、前記中間固定ピンに掛け回されると、前記中間アーム機構を構成する前記中間アームのうち前記前進方向側の該中間アームの前記中間アーム滑車に掛け回され、前記中間固定滑車に掛け回され、該中間アーム機構を構成する該中間アームのうち前記後進方向側の該中間アームの前記中間アーム滑車に掛け回され、前記中間可動ピンより該後進方向にある前記中間固定ピンに掛け回され、前記後方アーム機構を構成する前記中間アームの前記中間アーム滑車に掛け回される、
ことを特徴とする請求項7記載の移動式屋根構造。
【請求項9】
施設の屋根の構造において、
平行又は略平行に配置される複数の屋根桁と、
前記屋根桁に取り付けられる伸縮装置と、を備え、
前記屋根桁は、後方屋根桁、前方屋根桁、第1中間屋根桁、及び第2中間屋根桁を含み、
前記第1中間屋根桁は、前記後方屋根桁と前記屋根桁の間に配置され、
前記第2中間屋根桁は、隣接する前記後方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間、及び隣接する前記前方屋根桁と前記第1中間屋根桁の間に、それぞれ配置され、
前記前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁は、前記屋根桁の桁軸方向と垂直又は略垂直であって水平又は略水平な桁軸直角方向に移動可能であり、
前記伸縮装置は、多節リンク機構、及び制御線を含み、
前記多節リンク機構は、前記屋根桁の下方であって鉛直又は略鉛直面内に配置される後方アーム機構、及び前方アーム機構を含み、
前記後方アーム機構は、後方アーム、中間アーム、及びベース材を含み、該後方アームの一端が前記後方屋根桁にピン結合されるとともに、該中間アームの一端が前記第1中間屋根桁にピン結合され、さらに該後方アームの他端が該ベース材にピン結合され該中間アームの他端が該ベース材にピン結合される機構であり、
前記前方アーム機構は、前方アーム、前記中間アーム、及び前記ベース材を含み、該前方アームの一端が前記前方屋根桁にピン結合されるとともに、該中間アームの一端が前記第1中間屋根桁にピン結合され、さらに該前方アームの他端が該ベース材にピン結合され該中間アームの他端が該ベース材にピン結合される機構であり、
前記第1中間屋根桁には、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な第1中間固定滑車が設けられ、
前記第2中間屋根桁には、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な第2中間固定滑車が設けられ、
前記ベース材には、後方動滑車と、該後方動滑車よりも前記前方屋根桁側に配置される前方動滑車と、が載置され、
前記制御線は、一端が前記前方屋根桁に固定されるとともに、前記前方アーム機構の前記前方動滑車に掛け回され、前記第2中間固定滑車に掛け回され、該前方アーム機構の前記後方動滑車に掛け回され、前記第1中間固定滑車に掛け回され、前記後方アーム機構の前記前方動滑車に掛け回され、該第1中間固定滑車より前記後方屋根桁側にある前記第2中間固定滑車に掛け回され、該後方アーム機構の前記後方動滑車に掛け回され、
前記制御線を前記前方屋根桁から前記後方屋根桁に向かう後進方向に引き込むと、該前方屋根桁、前記第1中間屋根桁、及び前記第2中間屋根桁が該後方屋根桁から該前方屋根桁に向かう前進方向に移動していく、
ことを特徴とする移動式屋根構造。
【請求項10】
前記屋根桁は、2以上の前記第1中間屋根桁を含み、
前記第2中間屋根桁は、隣接する2つの前記第1中間屋根桁の間にも配置され、
前記多節リンク機構は、前記屋根桁の下方であって鉛直又は略鉛直面内に配置される1又は2以上の中間アーム機構を含み、
前記中間アーム機構は、2つの中間アーム、及び前記ベース材を含み、一方の該中間アームは一端が隣接する一方の前記第1中間屋根桁にピン結合されるとともに他端が該ベース材にピン結合され、他方の該中間アームは一端が隣接する他方の前記第1中間屋根桁にピン結合されるとともに他端が該ベース材にピン結合される機構であり、
前記制御線は、前記前方アーム機構の前記後方動滑車に掛け回され、さらに前記第1中間固定滑車に掛け回されると、前記中間アーム機構の前記前方動滑車に掛け回され、該第1中間固定滑車より前記後進方向にある前記第2中間固定滑車に掛け回され、該中間アーム機構の前記後方動滑車に掛け回され、該第2中間固定滑車より該後進方向にある前記第1中間固定滑車に掛け回され、前記後方アーム機構の前記前方動滑車に掛け回される、
ことを特徴とする請求項9記載の移動式屋根構造。
【請求項11】
前記屋根桁に取り付けられる膜屋根を、さらに備え、
前記膜屋根は、前記屋根桁の間が開いたときに展張されるとともに、前記屋根桁の間が閉じたときに折り畳まれる、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の移動式屋根構造。
【請求項12】
前記桁軸直角方向に隣接する前記屋根桁どうしを連結するロック機構を、さらに備え、
前記桁軸直角方向に隣接する2つの前記屋根桁が接近したときに前記ロック機構によって該屋根桁どうしを連結することで、該屋根桁の移動が制限される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の移動式屋根構造。
【請求項13】
前記桁軸方向に並ぶ複数列の前記伸縮装置が、前記屋根桁に取り付けられ、
前記桁軸直角方向に隣接する前記屋根桁の間に設置されるブレース材を、さらに備え、
前記ブレース材は、一端が前記後進方向にある前記屋根桁に固定されるとともに、他端が前記前進方向にある前記屋根桁に固定され、
また前記ブレース材は、前記桁軸直角方向に隣接する前記屋根桁と、前記桁軸方向に隣接する前記伸縮装置と、によって形成される領域の対角線となるように配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の移動式屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、競技場など施設の屋根の構造に関するものであり、より具体的には、多節リンク機構を含む伸縮装置によって屋根桁を移動させる移動式屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競技場やイベント会場など多くの観客を収容する施設は、雨天時でも実施できるように屋根が取り付けられることがある。さらに、好天時には自然環境で競技等が実施できるように、開閉式の屋根を採用する施設も増えている。
【0003】
一方、例えばサッカー競技場など比較的大きな領域を備える施設では、当然ながらその屋根も規模が大きなものとなり、これに伴って屋根を開閉させるための牽引装置(ウィンチなど)も高スペックのものを数多く配置することとなる。そのため莫大な予算が難点となり、開閉式屋根の採用を見送るケースも少なくなかった。
【0004】
したがって、莫大な予算を用意することなく、すなわち高スペックかつ数多くのウィンチ等を調達することなく、開閉式屋根を設置することができる技術が望まれていた。そこで特許文献1では、いわゆるマジックハンド(登録商標)のような多節リンク機構を利用することによって、大規模なウィンチ等を要することなく膜屋根の開閉を可能にする発明を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示される発明は、V字フレームと架構フレーム、膜屋根からなる屋根を開閉する屋根構造であり、V字フレームと架構フレームの連携によって屋根の開閉を実現する技術である。そのため、複数の桁(以下、「屋根桁」という。)が相互に連携することなく、つまりそれぞれ分離して配置された場合、特許文献1の発明ではこれらの屋根桁を移動させることができなかった。
【0007】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち高スペックかつ数多くのウィンチを調達することなく、しかも好適に屋根桁を移動させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、多節リンク機構を含む伸縮装置をそれぞれの屋根桁に取り付けることによって、それぞれの屋根桁を移動させるという点に着目して開発されたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
【0009】
本願発明の移動式屋根構造は、施設の屋根構造であって、略平行(平行を含む)に配置される複数の「屋根桁(屋根を構成する桁)」と、この屋根桁に取り付けられる「伸縮装置」を備えたものである。屋根桁は、後方屋根桁と前方屋根桁、中間屋根桁を含んで構成され、この中間屋根桁は、後方屋根桁と屋根桁の間に配置される。前方屋根桁と中間屋根桁は、屋根桁の桁軸方向(桁の主軸方向)と略垂直(垂直を含む)であって略水平(水平を含む)な桁軸直角方向に移動可能である。伸縮装置は、多節リンク機構と制御線を含んで構成され、この多節リンク機構は、後方アーム機構と前方アーム機構、後方アーム機構と前方アーム機構の間に配置される中間アーム機構を含んで構成される。後方アーム機構は、V字状に配置された2つの後方アームが後方固定ピンによってピン結合される機構であり、同様に前方アーム機構は、V字状に配置された2つの前方アームが前方固定ピンによってピン結合される機構である。一方の中間アーム機構は、X字状に配置された2つの中間アームが中間固定ピンによってピン結合される機構である。多節リンク機構は、隣接する後方アームと中間アームが後方可動ピンによってピン結合されるとともに、隣接する前方アームと中間アームが前方可動ピンによってピン結合される機構である。また多節リンク機構は、後方固定ピンの位置で後方屋根桁に固定されるとともに、前方固定ピンの位置で前方屋根桁に固定され、さらに中間固定ピンの位置で中間屋根桁に固定される。制御線は、一端が前方屋根桁に固定されるとともに、前方固定ピンに掛けられ、桁軸方向に並ぶ2つの前方可動ピンに掛け回され、中間固定ピンに掛けられ、桁軸方向に並ぶ2つの後方可動ピンに掛け回され、そして後方固定ピンに掛けられる。制御線を後進方向(前方屋根桁から後方屋根桁に向かう方向)に引き込むと、前方屋根桁と中間屋根桁が前進方向(後方屋根桁から前方屋根桁に向かう方向)に移動していく。
【0010】
本願発明の移動式屋根構造は、2以上の中間屋根桁を含むものとすることもできる。この場合、多節リンク機構は、2以上の中間アーム機構を含んで構成されるとともに、隣接する中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される。制御線は、桁軸方向に並ぶ2つの前方可動ピンに掛け回されて中間固定ピンに掛けられると、桁軸方向に並ぶ2つの中間可動ピンに掛け回され、中間可動ピンより後進方向にある中間固定ピンに掛けられ、そして桁軸方向に並ぶ2つの後方可動ピンに掛け回される。
【0011】
本願発明の移動式屋根構造は、第1中間屋根桁と、桁軸方向に形成されるガイド溝を有する第2中間屋根桁と、を含んで構成されるものとすることもできる。この第1中間屋根桁は、後方屋根桁と屋根桁の間に配置され、また第2中間屋根桁は、隣接する後方屋根桁と第1中間屋根桁の間、及び隣接する前方屋根桁と第1中間屋根桁の間にそれぞれ配置され、桁軸直角方向に移動可能とされる。この場合、後方可動ピンと前方可動ピンは、ガイド溝内をスライド移動可能となるように第2中間屋根桁に取り付けられる。制御線を後進方向に引き込むと、桁軸方向に並ぶ2つの後方可動ピンと前方可動ピンが互いに接近するようにガイド溝内をスライド移動するとともに、前方屋根桁と第1中間屋根桁、第2中間屋根桁が前進方向に移動していく。
【0012】
本願発明の移動式屋根構造は、第2中間屋根桁と、2以上の第1中間屋根桁を含むものとすることもできる。この場合、第2中間屋根桁は隣接する2つの第1中間屋根桁の間にも配置され、また多節リンク機構は2以上の中間アーム機構を含み、隣接する中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される。中間可動ピンは、ガイド溝内をスライド移動可能となるように第2中間屋根桁に取り付けられる。制御線は、桁軸方向に並ぶ2つの前方可動ピンに掛け回されて中間固定ピンに掛けられると、桁軸方向に並ぶ2つの中間可動ピンに掛け回され、中間可動ピンより後進方向にある中間固定ピンに掛けられ、そして桁軸方向に並ぶ2つの後方可動ピンに掛け回される。また、制御線を後進方向に引き込むと、桁軸方向に並ぶ2つの中間可動ピンが互いに接近するようにガイド溝内をスライド移動していく。
【0013】
本願発明の移動式屋根構造は、第1中間屋根桁と第2中間屋根桁を含むとともに、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に多節リンク機構が配置されるものとすることもできる。この場合、後方アーム機構は、後方固定ピンによって後方屋根桁にピン結合される後方アームと、中間固定ピンによって第1中間屋根桁にピン結合される中間アームによってV字形状が形成されるとともに、後方アームと中間アームが後方可動ピンによってピン結合される。同様に、前方アーム機構は、前方固定ピンによって前方屋根桁にピン結合される前方アームと、中間固定ピンによって第1中間屋根桁にピン結合される中間アームと、によってV字形状が形成されるとともに、前方アームと中間アームが前方可動ピンによってピン結合される。また第2中間屋根桁には、略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な中間固定滑車が設けられる。制御線は、一端が前方屋根桁に固定されるとともに、前方固定ピンに掛けられ、前方可動ピンに掛け回され、中間固定滑車に掛け回されて再び前方可動ピンに掛け回され、中間固定ピンに掛け回され、後方可動ピンに掛け回され、中間固定ピンより後進方向にある中間固定滑車に掛け回されて再び後方可動ピンに掛け回され、そして後方固定ピンに掛けられる。制御線を後進方向に引き込むと、前方屋根桁と第1中間屋根桁、第2中間屋根桁が前進方向に移動していく。
【0014】
本願発明の移動式屋根構造は、第2中間屋根桁と2以上の第1中間屋根桁を含むとともに、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に多節リンク機構が配置されるものとすることもできる。この場合、多節リンク機構は、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)内に配置される1又は2以上の中間アーム機構を含んだ構成とされる。この中間アーム機構は、隣接する2つの第1中間屋根桁にそれぞれ中間固定ピンによってピン結合される2つの中間アームによりV字形状が形成されるとともに、中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される。制御線は、中間固定滑車に掛け回されて再び前方可動ピンに掛け回され、さらに中間固定ピンに掛け回されると、中間可動ピンに掛け回され、中間固定ピンより後進方向にある中間固定滑車に掛け回されて再び中間可動ピンに掛け回され、中間可動ピンより後進方向にある中間固定ピンに掛け回され、そして後方可動ピンに掛け回される。
【0015】
本願発明の移動式屋根構造は、第1中間屋根桁と第2中間屋根桁を含むとともに、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に多節リンク機構が配置され、さらに各アームが略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な滑車を具備するものとすることもできる。この場合、後方アームには後方アーム滑車が、前方アームには前方アーム滑車が、中間アームには中間アーム滑車が、それぞれ設けられる。またこの場合の制御線は、一端が前方屋根桁に固定されるとともに、前方固定ピンに掛けられ、前方アーム滑車に掛け回され、中間固定滑車に掛け回され、中間アーム(ただし、前方アーム機構を構成するもの)の中間アーム滑車に掛け回され、中間固定ピンに掛け回され、中間アーム(ただし、後方アーム機構を構成するもの)の中間アーム滑車に掛け回され、中間固定ピンより後進方向にある中間固定滑車に掛け回されて後方アーム滑車に掛け回され、そして後方固定ピンに掛けられる。制御線を後進方向に引き込むと、前方屋根桁と第1中間屋根桁、第2中間屋根桁が前進方向に移動していく。
【0016】
本願発明の移動式屋根構造は、第2中間屋根桁と2以上の第1中間屋根桁を含むとともに、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に多節リンク機構が配置され、さらに各アームが略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な滑車を具備するものとすることもできる。この場合、多節リンク機構は、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)内に配置される1又は2以上の中間アーム機構を含んだ構成とされる。この中間アーム機構は、隣接する2つの第1中間屋根桁にそれぞれ中間固定ピンによってピン結合される2つの中間アームによりV字形状が形成されるとともに、中間アームどうしが中間可動ピンによってピン結合される。制御線は、中間アーム(ただし、前方アーム機構を構成するもの)の中間アーム滑車に掛け回され、中間固定ピンに掛け回されると、中間アーム(ただし、中間アーム機構を構成するもののうち前進方向側にあるもの)の中間アーム滑車に掛け回され、中間固定滑車に掛け回され、中間アーム(ただし、中間アーム機構を構成するもののうち後進方向側にあるもの)の中間アーム滑車に掛け回され、中間可動ピンより後進方向にある中間固定ピンに掛け回され、そして中間アーム(ただし、後方アーム機構を構成するもの)の中間アーム滑車に掛け回される。
【0017】
本願発明の移動式屋根構造は、の第1中間屋根桁と第2中間屋根桁を含むとともに、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に多節リンク機構が配置され、さらに後方アーム機構と前方アーム機構がベース材を有するものとすることもできる。この場合、後方アーム機構は、後方アームと中間アーム、ベース材を含んで構成され、後方アームの一端が後方屋根桁にピン結合されるとともに、中間アームの一端が第1中間屋根桁にピン結合され、さらに後方アームの他端と中間アームの他端がそれぞれベース材にピン結合される。同様に、前方アーム機構は、前方アームと中間アーム、ベース材を含んで構成され、前方アームの一端が前方屋根桁にピン結合されるとともに、中間アームの一端が第1中間屋根桁にピン結合され、さらに前方アームの他端と中間アームの他端がそれぞれベース材にピン結合される。また、第1中間屋根桁には略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な第1中間固定滑車が設けられ、第2中間屋根桁には略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な第2中間固定滑車が設けられ、ベース材には後方動滑車と前方動滑車(ただし、後方動滑車よりも後進方向の位置)が載置される。制御線は、一端が前方屋根桁に固定されるとともに、前方アーム機構の前方動滑車に掛け回され、第2中間固定滑車に掛け回され、前方アーム機構の後方動滑車に掛け回され、第1中間固定滑車に掛け回され、後方アーム機構の前方動滑車に掛け回され、第1中間固定滑車より後方屋根桁側にある第2中間固定滑車に掛け回され、そして後方アーム機構の後方動滑車に掛け回される。制御線を後進方向に引き込むと、前方屋根桁と第1中間屋根桁、第2中間屋根桁が前進方向に移動していく。
【0018】
本願発明の移動式屋根構造は、第2中間屋根桁と2以上の第1中間屋根桁を含むとともに、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に多節リンク機構が配置され、さらに後方アーム機構と前方アーム機構がベース材を有するものとすることもできる。この場合、多節リンク機構は、屋根桁の下方であって略鉛直(鉛直を含む)内に配置される1又は2以上の中間アーム機構を含んだ構成とされる。この中間アーム機構は、2つの中間アームとベース材を含み、一方の中間アームはその一端が隣接する一方の第1中間屋根桁にピン結合されるとともに他端がベース材にピン結合され、他方の中間アームはその一端が隣接する他方の第1中間屋根桁にピン結合されるとともに他端がベース材にピン結合される。制御線は、前方アーム機構の後方動滑車に掛け回され、さらに第1中間固定滑車に掛け回されると、中間アーム機構の前方動滑車に掛け回され、第1中間固定滑車より後進方向にある第2中間固定滑車に掛け回され、中間アーム機構の後方動滑車に掛け回され、第2中間固定滑車より後進方向にある第1中間固定滑車に掛け回され、そして後方アーム機構の前方動滑車に掛け回される。
【0019】
本願発明の移動式屋根構造は、屋根桁に取り付けられる膜屋根をさらに備えたものとすることもできる。この膜屋根は、屋根桁の間が開いたときに展張されるとともに、屋根桁の間が閉じたときに折り畳まれるものである。
【0020】
本願発明の移動式屋根構造は、桁軸直角方向に隣接する屋根桁どうしを連結するロック機構をさらに備えたものとすることもできる。軸直角方向に隣接する2つの屋根桁が接近したときに、このロック機構によって屋根桁どうしを連結することでこれら屋根桁の移動が制限される。
【0021】
本願発明の移動式屋根構造は、桁軸直角方向に隣接する屋根桁の間に設置されるブレース材をさらに備えたものとすることもできる。この場合、桁軸方向に並ぶ複数列の伸縮装置が屋根桁に取り付けられる。このブレース材は、一端が後進方向にある屋根桁に固定されるとともに、他端が前進方向にある屋根桁に固定される。またブレース材は、桁軸直角方向に隣接する屋根桁と桁軸方向に隣接する伸縮装置によって形成される領域の対角線となるように配置される。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の移動式屋根構造には、次のような効果がある。
(1)高スペックかつ数多くのウィンチを用意することなく、しかも分離して配置された屋根桁を好適に移動させることができる。
(2)その結果、従来技術に比してコストを抑えたうえで、対象施設に開閉屋根構造を設置することができる。
(3)ロック機構を用いることによって、特定の屋根桁を選定して移動させることができ、さらに安定した状態で屋根を開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は本願発明の移動式屋根構造が設けられたサッカー競技場を模式的に示す上方から見た平面図、(b)は移動式屋根構造を省略したサッカー競技場を模式的に示す上方から見た平面図。
【
図2】(a)は伸縮装置が桁軸直角方向に配置された移動式屋根構造を模式的に示す上方から見た平面図、(b)は伸縮装置が桁軸直角方向に対して斜方向に配置された移動式屋根構造を模式的に示す上方から見た平面図。
【
図3】(a)は第1移動式屋根構造を模式的に示す上方から見た平面図、(b)は第2移動式屋根構造を模式的に示す側方から見た側面図。
【
図4】(a)は第1移動式屋根構造の一部を上方から見た平面図、(b)は第1移動式屋根構造の一部を鉛直面で切断した断面図。
【
図5】(a)は後方アーム機構を模式的に示す平面図、(b)は中間アーム機構を模式的に示す平面図、(c)は前方アーム機構を模式的に示す平面図。
【
図6】第1移動式屋根構造の稼働状況を模式的に示す上方から見た平面図。
【
図7】(a)は多桁式の第1移動式屋根構造の一部を上方から見た平面図、(b)は中間可動ピンが取り付けられた第2中間屋根桁を上方から見た平面図。
【
図8】多桁式の第1移動式屋根構造の稼働状況を模式的に示す上方から見た平面図。
【
図10】第2移動式屋根構造の稼働状況を模式的に示す側方から見た側面図。
【
図11】各アームが滑車を具備する第2移動式屋根構造を模式的に示す側面図。
【
図12】ベース材式の第2移動式屋根構造の稼働状況を模式的に示す側方から見た側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明の移動式屋根構造の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。なお、本願発明の移動式屋根構造は、競技場やコンサート会場、催事場などあらゆる施設の屋根に利用することができるが、便宜上ここでは競技場(特に、サッカー競技場)の例で説明することとする。
【0025】
1.全体概要
図1(a)は、本願発明の移動式屋根構造100が設けられたサッカー競技場SCを模式的に示す平面図である。なお参考として、
図1(b)に移動式屋根構造100を省略したサッカー競技場SCを示している。
図1(a)に示すように本願発明の移動式屋根構造100は、複数の屋根桁200(屋根を構成する桁)を含み、後述する伸縮装置によってこれら屋根桁200が移動する構造である。また、屋根桁200に例えば膜屋根400を取り付けることによって、屋根桁200の移動に応じて開閉式の屋根を構築することもできる。
【0026】
屋根桁200は、断面寸法に比して軸方向寸法(長さ)が卓越したいわゆる軸部材であってサッカー競技場SCの一端から他端に架け渡され、側面視で直線状やアーチ状、角形状など種々の形状とすることができる。便宜上ここでは、
図1(a)にも示すようにサッカー競技場SC上に配置された屋根桁200の軸方向(図では上下方向)のことを「桁軸方向」、この桁軸方向に対して垂直な方向(図では左右方向)のことを「桁軸直角方向」ということとする。ただし、これら桁軸方向と桁軸直角方向は水平面(水平面を含む)上で設定される方向である。また、屋根桁200は桁軸直角方向に移動するが、閉扉する方向(図では右方向)のことを「前進方向」、開扉する方向(図では左方向)のことを「後進方向」ということとする。なお、
図1(a)では、左右に2分割した移動式屋根構造100がそれぞれ桁軸直角方向に移動する構成とされているが、これに限らずどちらか一方(例えば左側)にのみ移動式屋根構造100を配置する構成とすることもできる。
【0027】
図2は、移動式屋根構造100を模式的に示す平面図であり、(a)は伸縮装置300が桁軸直角方向に配置された例を示し、(b)は伸縮装置300が桁軸直角方向に対して斜方向に配置された例を示している。この図に示すように移動式屋根構造100は、屋根桁200と伸縮装置300を含んで構成され、複数の伸縮装置300を桁軸直角方向に配置することができ、あるいは複数の伸縮装置300を桁軸直角方向に対して傾斜するように配置することもでき、さらに1の伸縮装置300のみを桁軸直角方向(あるいは、桁軸直角方向に対して斜方向)に配置することもできる。また、
図2(a)に示すように隣接する屋根桁200の間にブレース材500を配置することもできる。例えば、桁軸直角方向に隣接する2つの屋根桁200と、桁軸方向に隣接する2つの伸縮装置300によって形成される領域(この場合は四角形)の対角線となるように、ワイヤーロープや形鋼(山形鋼や溝型鋼など)を利用したブレース材500を配置するとよい。
【0028】
図2に示すように屋根桁200は、最も後進方向側に配置される後方屋根桁210と、最も前進方向側に配置される前方屋根桁220、そして後方屋根桁210と前方屋根桁220の間に配置される中間屋根桁230を含んで構成され、これら後方屋根桁210と前方屋根桁220、中間屋根桁230は桁軸方向と略平行(平行を含む)に配置される。そして、後方屋根桁210はサッカー競技場SCの一部に固定されて移動しないが、前方屋根桁220と中間屋根桁230は伸縮装置300によって桁軸直角方向に移動することができる。なおこの図では5つの中間屋根桁230が配置されているが、施設の規模や形状に応じて任意の数(1つも含む)の中間屋根桁230を配置することができる。
【0029】
移動式屋根構造100は、
図3(a)の平面図に示す形式と、
図3(b)の側面図に示す形式に大別することができる。
図3(a)に示す移動式屋根構造100は、後述するように伸縮装置300が中間アーム機構を具備することが特徴であり、便宜上ここでは「第1移動式屋根構造100H」ということとする。一方、
図3(b)に示す移動式屋根構造100は、後述するように伸縮装置300が屋根桁200の下方に配置されることが特徴であり、便宜上ここでは「第2移動式屋根構造100V」ということとする。以下、第1移動式屋根構造100Hについて詳しく説明し、その後に第2移動式屋根構造100Vについて詳しく説明する。
【0030】
2.第1移動式屋根構造
図4は第1移動式屋根構造100Hの一部を模式的に示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は鉛直面で切断した断面図である。
図4(a)に示すように第1移動式屋根構造100Hは、後方屋根桁210と前方屋根桁220、中間屋根桁230からなる屋根桁200と、複数のアームと節点によって形成される機構(以下、「多節リンク機構」という。)と制御線340からなる伸縮装置300(以下、特に「第1伸縮装置300H」という。)を備えている。そしてこの第1伸縮装置300Hの多節リンク機構は、後方アーム機構310と前方アーム機構320、中間アーム機構330を含んで構成される機構である。以下、
図5を参照しながら第1伸縮装置300Hの多節リンク機構について説明する。
【0031】
図5は、第1伸縮装置300Hの多節リンク機構の構成部品を模式的に示す平面図であり、(a)は後方アーム機構310を上方から見た平面図、(b)は中間アーム機構330を上方から見た平面図、(c)は前方アーム機構320を上方から見た平面図である。
図5(a)に示すように後方アーム機構310は、2つの後方アーム312をV字状に配置したうえで、これら後方アーム312が重なる位置(図では左側)で後方固定ピン311によってピン結合される機構である。後方アーム312の両端にはピンを挿通するための挿通孔(図では右端のみ示している)が設けられており、2つの後方アーム312の挿通孔(図では左端の挿通孔)を重ねたうえで後方固定ピン311を挿通することによって、2つの後方アーム312を回転自由に結合するわけである。
【0032】
図5(b)に示すように中間アーム機構330は、2つの中間アーム332をX字状に配置したうえで、これら中間アーム332が重なる位置(図では概ね中央)で中間固定ピン331によってピン結合される機構である。中間アーム332の両端と中央にはピンを挿通するための挿通孔(図では左右端のみ示す)が設けられており、2つの中間アーム332の中央に設けられた挿通孔を重ねたうえで中間固定ピン331を挿通することによって、2つの中間アーム332を回転自由に結合するわけである。
【0033】
図5(c)に示すように前方アーム機構320は、後方アーム機構310と同様、2つの前方アーム322をV字状に配置したうえで、これら前方アーム322が重なる位置(図では右側)で前方固定ピン321によってピン結合される機構である。前方アーム322の両端にはピンを挿通するための挿通孔(図では左端のみ示している)が設けられており、2つの前方アーム322の挿通孔(図では右端の挿通孔)を重ねたうえで前方固定ピン321を挿通することによって、2つの前方アーム322を回転自由に結合するわけである。
【0034】
後方アーム機構310は最も後進方向側に、前方アーム機構320は最も前進方向側に、中間アーム機構330は後方アーム機構310と前方アーム機構320の間にそれぞれ配置される。そして
図4(a)に示すように、桁軸直角方向に隣接する後方アーム312と中間アーム332が後方可動ピン313によってピン結合されるとともに、桁軸直角方向に隣接する前方アーム322と中間アーム332が前方可動ピン323によってピン結合される。より詳しくは、後方アーム312の前進方向側(図では右端)に設けられた挿通孔と中間アーム332の後進方向側(図では左端)に設けられた挿通孔を重ねたうえで後方可動ピン313を挿通し、前方アーム322の後進方向側(図では左端)に設けられた挿通孔と中間アーム332の前進方向側(図では右端)に設けられた挿通孔を重ねたうえで前方可動ピン323を挿通することによって、第1伸縮装置300Hの多節リンク機構を形成する。なお第1伸縮装置300Hの多節リンク機構は、後方アーム機構310と前方アーム機構320の間に1つの中間アーム機構330が配置されたものとすることもできるし、2以上の中間アーム機構330(つまり、2以上の中間屋根桁230)が配置されたものとすることもできる。2以上の中間アーム機構330を具備する場合、桁軸直角方向に隣接する中間アーム332どうしが中間可動ピン333によってピン結合される。
【0035】
第1伸縮装置300Hの多節リンク機構は、後方固定ピン311の位置で後方屋根桁210に固定され、前方固定ピン321の位置で前方屋根桁220に固定され、さらに中間固定ピン331の位置で中間屋根桁230に固定されることによって、それぞれの屋根桁200に取り付けられる。この多節リンク機構は、屋根桁200のうち上面側か下面側のいずれか一方に取り付けることもできるし、
図4(b)に示すように上面側(上フランジ)、下面側(下フランジ)ともに取り付けることもできるし、さらに桁軸直角方向に隣接する屋根桁200に架け渡すように膜屋根400を取り付けることもできる。
【0036】
第1伸縮装置300Hの制御線340は、例えばワイヤーロープといった索状の部材を利用することができ、
図4(a)に示すように前方屋根桁220のうちの固定点FXで固定されたうえで、多節リンク機構の各節点に掛けられながら後進方向に進むように設置される。より詳しくは、制御線340の前進方向側の一端が固定点FXで前方屋根桁220に固定されたうえで、前方固定ピン321に掛けられ、桁軸方向に並ぶ2つの前方可動ピン323に掛け回され、中間固定ピン331に掛けられ、桁軸方向に並ぶ2つの後方可動ピン313に掛け回され、後方固定ピン311に掛けられたうえでさらに後進方向に伸ばされる。なお、2以上の中間アーム機構330が配置されている場合、2つの前方可動ピン323に掛け回され、中間固定ピン331に掛けられた後は、桁軸方向に並ぶ2つの中間可動ピン333に掛け回され、中間固定ピン331に掛けられる。そして、すべての中間可動ピン333と中間固定ピン331(ただし、中間可動ピン333と中間可動ピン333の間にあるもの)に繰り返し掛けられると、最も後進方向側の中間固定ピン331に掛けられて、2つの後方可動ピン313に掛け回される。
【0037】
桁軸方向に並ぶ2つの前方可動ピン323や後方可動ピン313、中間可動ピン333(以下、これらを総称して「可動ピン」という。)に制御線340を掛け回すにあたっては、一方の可動ピンに掛け回した後に他方の可動ピンに掛け回すこととし、しかもその掛け回す方向は逆方向とされる。例えば
図4(a)の場合、下方に図示する可動ピンに時計回りとなるように半周ほど制御線340を掛け回した後、上方に図示する可動ピンに反時計回りとなるように半周ほど制御線340を掛け回している。
【0038】
上記したとおり、後方固定ピン311や前方固定ピン321、中間固定ピン331(以下、これらを総称して「固定ピン」という。)、後方可動ピン313、前方可動ピン323、中間可動ピン333(以下、固定ピンと可動ピンを総称して「連結ピン」という。)には制御線340が掛けられることから、これら連結ピンは各アームの挿通孔に挿通されるピン部分と、軸(
図4(a)の場合は鉛直軸)周りに回転可能な滑車からなる構造にするとよい。後述するように制御線340は後進方向に引き込まれるが、そのときに各節点(連結ピン)に設けられる滑車に制御線340が掛けられていると、制御線340は円滑に(抵抗なく)引き込まれていくわけである。
【0039】
図6は、第1移動式屋根構造100Hの稼働状況を模式的に示す上方から見た平面図である。この図の上方(白抜き矢印より上)に示す第1移動式屋根構造100Hは、それぞれの屋根桁200(後方屋根桁210と前方屋根桁220、中間屋根桁230)が後進方向に寄っていて相互の屋根桁200は接近しており、すなわち屋根が開いた(開扉した)状態となっている。この状態から制御線340を後進方向に引き込むと、並設される2つの可動ピン(前方可動ピン323や後方可動ピン313、中間可動ピン333)が相互に接近するように桁軸方向に移動するとともに、固定ピンのうち前方固定ピン321と中間固定ピン331が前進方向に移動し、これに伴って前方屋根桁220と中間屋根桁230が前進方向に移動していく。その結果、
図6の下方(白抜き矢印より下)に示す第1移動式屋根構造100Hは、屋根が閉じた(閉扉した)状態とされる。
【0040】
また、引き込み用のワイヤーロープ(以下、「副制御線」という。)を設置することで、第1移動式屋根構造100Hを閉扉状態(
図6の下方の状態)から開扉状態(
図6の上方の状態)に戻すこともできる。具体的には副制御線の前進方向側の一端を前方屋根桁220の一部に固定したうえで後進方向に伸ばすように設置する。これにより、閉扉状態から副制御線を後進方向に引き込むと、並設される2つの可動ピンが相互に離れるように桁軸方向に移動するとともに、固定ピンのうち前方固定ピン321と中間固定ピン331が後進方向に移動し、これに伴って前方屋根桁220と中間屋根桁230が後進方向に移動して、第1移動式屋根構造100Hは開扉状態とされる。なお、制御線340や副制御線を後進方向に引き込むにあたっては、ウィンチなど従来用いられている種々の牽引装置を利用することができる。
【0041】
ところで、開扉状態(
図6の上方の状態)にある第1移動式屋根構造100Hは、前方屋根桁220と中間屋根桁230が意図せずに移動してしまうこともある。そこで、桁軸直角方向に隣接する屋根桁200の間にロック機構を設けるとよい。このロック機構は、隣接する屋根桁200を連結することによって、屋根桁200の移動を規制する機能を有する装置であり、従来用いられている種々の技術を利用することができる。またロック機構は、1の隣接箇所(例えば、前方屋根桁220と中間屋根桁230の間)に設けることもできるし、2以上の隣接箇所に設けることも、あるいはすべての隣接箇所に設けることもできる。桁軸直角方向に隣接するすべての屋根桁200の間にロック機構を設ける場合、任意のロック機構のみを解除することによって任意の屋根桁200のみを移動させることができる。例えば、前方屋根桁220と中間屋根桁230の間にあるロック機構を解除するとともに制御線340を引き込むと前方屋根桁220のみが前進方向に移動し、次いで隣接する2つの中間屋根桁230の間にあるロック機構を解除するとともに制御線340を引き込むと前進方向にある中間屋根桁230のみが移動し、これを繰り返すことでひとつずつ安定して屋根桁200を移動させることができる。
【0042】
第1移動式屋根構造100Hは、中間屋根桁230が第1中間屋根桁と第2中間屋根桁によって構成されるものとすることもできる。
図7は、第1中間屋根桁231と第2中間屋根桁232を有する第1移動式屋根構造100H(以下、「多桁式の第1移動式屋根構造100H」という。)の一部を模式的に示す図であり、(a)は上方から見た平面図、(b)は中間可動ピン333が取り付けられた第2中間屋根桁232を上方から見た平面図である。第1中間屋根桁231は、後方屋根桁210と前方屋根桁220の間に配置され、一方の第2中間屋根桁232は、後方屋根桁210と第1中間屋根桁231の間、そして前方屋根桁220と第1中間屋根桁231の間に配置される。また、
図7(a)に示すように複数(図では2つ)の第1中間屋根桁231が配置される場合は、第1中間屋根桁231と第1中間屋根桁231の間にも第2中間屋根桁232が配置される。
【0043】
多桁式の第1移動式屋根構造100Hの多節リンク機構は、後方固定ピン311の位置で後方屋根桁210に固定され、前方固定ピン321の位置で前方屋根桁220に固定され、さらに中間固定ピン331の位置で第1中間屋根桁231に固定されることによって、屋根桁200に取り付けられる。また
図7(b)に示すように、並設される2つの可動ピン(前方可動ピン323や後方可動ピン313、中間可動ピン333)が桁軸方向にスライド可能となるように、第2中間屋根桁232に取り付けられる。より詳しくは、第2中間屋根桁232には桁軸方向に伸びるようにガイド溝GSが形成されており、可動ピンの一部がこのガイド溝GS内に挿入されることによって、可動ピンが桁軸方向にスライド可能となるわけである。
【0044】
図8は、多桁式の第1移動式屋根構造100Hの稼働状況を模式的に示す上方から見た平面図である。この図の上方に示す多桁式の第1移動式屋根構造100Hは、それぞれの屋根桁200(後方屋根桁210と前方屋根桁220、中間屋根桁230)が後進方向に寄っていて相互の屋根桁200は接近しており、すなわち開扉状態となっている。この状態から制御線340を後進方向に引き込むと、並設される2つの可動ピン(前方可動ピン323や後方可動ピン313、中間可動ピン333)が相互に接近するようにガイド溝GS内をスライド移動するとともに、固定ピンのうち前方固定ピン321と中間固定ピン331が前進方向に移動し、これに伴って前方屋根桁220と中間屋根桁230(第1中間屋根桁と第2中間屋根桁)が前進方向に移動していく。その結果、
図8の下方に示す多桁式の第1移動式屋根構造100Hは、閉扉状態とされる。
【0045】
3.第2移動式屋根構造
図9は、第2移動式屋根構造100Vを模式的に示す図であって、側方から見た側面図である。この図に示すように第2移動式屋根構造100Vは、後方屋根桁210と前方屋根桁220、第1中間屋根桁231、第2中間屋根桁232からなる屋根桁200、そして多節リンク機構と制御線340からなる伸縮装置300(以下、特に「第2伸縮装置300V」という。)を備えている。この第2伸縮装置300Vの多節リンク機構は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置されるとともに、後方アーム機構310と前方アーム機構320を含んで構成され、さらに複数の第1中間屋根桁231が配置される場合は中間アーム機構330を含んで機構することもできる。また、第1移動式屋根構造100Hと同様、桁軸直角方向に隣接する屋根桁200に架け渡すように膜屋根400を取り付けることもできる。
【0046】
図9に示すように、後方屋根桁210は最も後進方向側に、前方屋根桁220は最も前進方向側に、第1中間屋根桁231は後方屋根桁210と前方屋根桁220の間に配置される。また第2中間屋根桁232は、後方屋根桁210と第1中間屋根桁231の間、そして前方屋根桁220と第1中間屋根桁231の間に配置され、複数の第1中間屋根桁231が配置される場合は、第1中間屋根桁231と第1中間屋根桁231の間にも配置される。そしてこの第2中間屋根桁232には、略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な滑車(以下、「中間固定滑車334」という。)が設けられている。
【0047】
後方アーム機構310は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置される後方アーム312と中間アーム332を備えており、後方アーム312は後方固定ピン311によって後方屋根桁210にピン結合され、一方の中間アーム332は中間固定ピン331によって第1中間屋根桁231にピン結合される。また、後方アーム312と中間アーム332は、V字形状となるように配置されたうえで、これら後方アーム312と中間アーム332が重なる位置(図では下側)で後方可動ピン313によってピン結合される。後方アーム312の下端にはピンを挿通するための挿通孔が設けられており、同様に中間アーム332の下端にもピンを挿通するための挿通孔が設けられ、後方アーム312の挿通孔と中間アーム332の挿通孔を重ねたうえで後方可動ピン313を挿通することによって、後方アーム312と中間アーム332を回転自由に結合するわけである。なお、後方可動ピン313の上方には、第2中間屋根桁232の中間固定滑車334が配置される。
【0048】
中間アーム機構330は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置される2つの中間アーム332を備えており、それぞれ中間アーム332は中間固定ピン331によって第1中間屋根桁231にピン結合される。また、2つの中間アーム332は、V字形状となるように配置されたうえで、これら中間アーム332が重なる位置(図では下側)で中間可動ピン333によってピン結合される。それぞれ中間アーム332の下端にはピンを挿通するための挿通孔が設けられ、これら中間アーム332の挿通孔を重ねたうえで中間可動ピン333を挿通することによって、中間アーム332どうしを回転自由に結合するわけである。なお、中間可動ピン333の上方には、第2中間屋根桁232の中間固定滑車334が配置される。
【0049】
前方アーム機構320は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置される前方アーム322と中間アーム332を備えており、前方アーム322は前方固定ピン321によって前方屋根桁220にピン結合され、一方の中間アーム332は中間固定ピン331によって第1中間屋根桁231にピン結合される。また、前方アーム322と中間アーム332は、V字形状となるように配置されたうえで、これら前方アーム322と中間アーム332が重なる位置(図では下側)で前方可動ピン323によってピン結合される。前方アーム322の下端にはピンを挿通するための挿通孔が設けられており、同様に中間アーム332の下端にもピンを挿通するための挿通孔が設けられ、前方アーム322の挿通孔と中間アーム332の挿通孔を重ねたうえで前方可動ピン323を挿通することによって、前方アーム322と中間アーム332を回転自由に結合するわけである。なお、前方可動ピン323の上方には、第2中間屋根桁232の中間固定滑車334が配置される。そして第2移動式屋根構造100Vの多節リンク機構は、後方アーム機構310と前方アーム機構320を含んで構成され、さらに複数の第1中間屋根桁231が配置される場合は1又は2以上の中間アーム機構330を含んで機構することもできる。
【0050】
第2伸縮装置300Vの制御線340は、例えばワイヤーロープといった索状の部材を利用することができ、
図9に示すように前方屋根桁220のうちの固定点FXで固定されたうえで、多節リンク機構の各節点に掛けられながら後進方向に進むように設置される。より詳しくは、制御線340の前進方向側の一端が固定点FXで前方屋根桁220に固定されたうえで、前方固定ピン321に掛けられ、前方可動ピン323に掛け回され、その上方にある中間固定滑車334に掛け回され、再び前方可動ピン323に掛け回された後、中間固定ピン331に掛けられ、後方可動ピン313に掛け回され、その上方にある中間固定滑車334に掛け回され、再び後方可動ピン313に掛け回された後、後方固定ピン311に掛けられたうえでさらに後進方向に伸ばされる。なお、1又は2以上の中間アーム機構330が配置されている場合、中間固定滑車334に掛け回され、再び前方可動ピン323に掛け回され、中間固定ピン331に掛けられた後は、中間可動ピン333に掛け回され、その上方にある中間固定滑車334に掛け回され、再び中間可動ピン333に掛け回され、中間固定ピン331に掛けられる。そして、すべての中間可動ピン333と中間固定ピン331(ただし、中間可動ピン333と中間可動ピン333の間にあるもの)に繰り返し掛けられると、最も後進方向側の中間固定ピン331に掛けられて、後方可動ピン313に掛け回される。
【0051】
上下に並ぶ可動ピン(前方可動ピン323や後方可動ピン313、中間可動ピン333)と中間固定滑車334に制御線340を掛け回すにあたっては、いずれもその掛け回す方向は同方向とされる。例えば
図9に示す中間可動ピン333と中間固定滑車334のケースでは、中間可動ピン333に時計回りとなるように半周ほど制御線340を掛け回した後、中間固定滑車334に時計回りとなるように半周ほど制御線340を掛け回し、再び中間可動ピン333に時計回りとなるように半周ほど制御線340を掛け回している。なお第2移動式屋根構造100Vの連結ピンも、第1移動式屋根構造100Hと同様、各アームの挿通孔に挿通されるピン部分と、軸(
図9の場合は水平軸)周りに回転可能な滑車からなる構造にするとよい。
【0052】
図10は、第2移動式屋根構造100Vの稼働状況を模式的に示す側方から見た側面図である。この図の上方(白抜き矢印より上)に示す第2移動式屋根構造100Vは、それぞれの屋根桁200(後方屋根桁210と前方屋根桁220、第1中間屋根桁231、第2中間屋根桁232)が後進方向に寄っていて相互の屋根桁200は接近しており、すなわち開扉状態となっている。この状態から制御線340を後進方向に引き込むと、可動ピン(後方可動ピン313や中間可動ピン333、前方可動ピン323)がその上方に位置する中間固定滑車334に接近するように上昇するとともに、前方固定ピン321と中間固定ピン331、前方可動ピン323、中間可動ピン333がそれぞれ前進方向に移動し、これに伴って前方屋根桁220と第1中間屋根桁231、第2中間屋根桁232が前進方向に移動していく。その結果、
図10の下方(白抜き矢印より下)に示す第2移動式屋根構造100Vは、閉扉状態とされる。
【0053】
第1移動式屋根構造100Hと同様、副制御線を設置することで、第2移動式屋根構造100Vを閉扉状態(
図10の下方の状態)から開扉状態(
図10の上方の状態)に戻すこともできる。また、やはり第1移動式屋根構造100Hと同様、桁軸直角方向に隣接する屋根桁200の間にロック機構を設けることもできる。
【0054】
第2移動式屋根構造100Vは、各アーム(後方アーム312と前方アーム322、中間アーム332)に略鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な滑車が取り付けられた構成とすることもできる。
図11は、各アームが滑車を具備する第2移動式屋根構造100Vを模式的に示す側面図である。この場合は
図11に示すように、後方アーム312に後方アーム滑車313Pが設けられ、前方アーム322に前方アーム滑車323Pが設けられ、中間アーム332に中間アーム滑車333Pが設けられる。
【0055】
またこの場合の制御線340は、
図11に示すように前方屋根桁220のうちの固定点FXで固定されたうえで、多節リンク機構の各節点や各アームが具備するアーム滑車に掛けられながら後進方向に進むように設置される。より詳しくは、制御線340の前進方向側の一端が固定点FXで前方屋根桁220に固定されたうえで、前方固定ピン321に掛けられ、前方アーム滑車323Pに掛け回され、その上方付近(やや後進方向側)にある中間固定滑車334に掛け回され、前方アーム機構320を構成する中間アーム332の中間アーム滑車333Pに掛け回された後、中間固定ピン331に掛けられ、後方アーム機構310を構成する中間アーム332の中間アーム滑車333Pに掛け回され、その上方付近(やや後進方向側)にある中間固定滑車334に掛け回され、後方アーム滑車313Pに掛け回された後、後方固定ピン311に掛けられたうえでさらに後進方向に伸ばされる。なお、1又は2以上の中間アーム機構330が配置されている場合、前方アーム機構320を構成する中間アーム332の中間アーム滑車333Pに掛け回され、中間固定ピン331に掛けられた後は、中間アーム機構330を構成する中間アーム332(ただし前進方向側)の中間アーム滑車333Pに掛け回され、その上方付近(やや後進方向側)にある中間固定滑車334に掛け回され、中間アーム機構330を構成する中間アーム332(ただし後進方向側)の中間アーム滑車333Pに掛け回され、中間固定ピン331に掛けられる。そして、すべての中間アーム滑車333P(ただし、中間アーム機構330を構成するもの)と中間固定ピン331(ただし、中間可動ピン333と中間可動ピン333の間にあるもの)に繰り返し掛けられると、最も後進方向側の中間固定ピン331に掛けられて、後方アーム機構310を構成する中間アーム332の中間アーム滑車333Pに掛け回される。
【0056】
また、第2移動式屋根構造100Vは、各アーム機構(後方アーム機構310と前方アーム機構320、中間アーム機構330)がベース材を含んで構成されるものとすることもできる。
図12は、各アーム機構がベース材を具備する第2移動式屋根構造100V(以下、「ベース材式の第2移動式屋根構造100V」という。)の稼働状況を模式的に示す側方から見た側面図である。この図に示すようにベース材式の第2移動式屋根構造100Vの場合、第1中間屋根桁231には鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な滑車(以下、「第1中間固定滑車335」という。)が設けられるとともに、第2中間屋根桁232には鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な滑車(以下、「第2中間固定滑車336」という。)が設けられる。またこの場合は、固定ピン(後方固定ピン311と前方固定ピン321、中間固定ピン331)と可動ピン(後方可動ピン313と前方可動ピン323、中間可動ピン333)を省略することができる。
【0057】
図12に示すように、ベース材式の第2移動式屋根構造100Vの中間アーム機構330は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置される2つの中間アーム332を備えており、それぞれ中間アーム332はその上端で第1中間屋根桁231にピン結合され、その下端でそれぞれベース材337にピン結合される。また、ベース材337の上面には鉛直(鉛直を含む)内で回転可能な2つの滑車が載置されている。便宜上ここでは、これら2つの滑車のうち後進方向側に配置される滑車のことを「後方動滑車338」、前進方向側に配置される滑車のことを「前方動滑車339」ということとする。なお、ベース材式の第2移動式屋根構造100Vでは、
図12に示すように中間アーム332を中央付近で折れ曲がった形状とすることができ、同様に後方アーム312や前方アーム322も中央付近で折れ曲がった形状とすることができる。
【0058】
ベース材式の第2移動式屋根構造100Vの後方アーム機構310は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置される後方アーム312と中間アーム332を備えており、後方アーム312はその上方で後方屋根桁210にピン結合されるとともにその下端でベース材337にピン結合され、一方の中間アーム332はその上方で第1中間屋根桁231にピン結合されとともにその下端でベース材337にピン結合される。同様に、ベース材式の第2移動式屋根構造100Vの前方アーム機構320は、屋根桁200の下方であって略鉛直(鉛直を含む)面内に配置される前方アーム322と中間アーム332を備えており、前方アーム322はその上方で前方屋根桁220にピン結合されるとともにその下端でベース材337にピン結合され、一方の中間アーム332はその上方で第1中間屋根桁231にピン結合されとともにその下端でベース材337にピン結合される。なお、後方アーム機構310と前方アーム機構320、中間アーム機構330のベース材337の上方には、第2中間屋根桁232の第2中間固定滑車336が配置される。そしてベース材式の第2移動式屋根構造100Vの多節リンク機構は、後方アーム機構310と前方アーム機構320を含んで構成され、さらに複数の第1中間屋根桁231が配置される場合は1又は2以上の中間アーム機構330を含んで機構することもできる。
【0059】
ベース材式の第2伸縮装置300Vの制御線340は、前方屋根桁220のうちの固定点FXで固定されたうえで、多節リンク機構の各節点に掛けられながら後進方向に進むように設置される。より詳しくは、制御線340の前進方向側の一端が固定点FXで前方屋根桁220に固定されたうえで、第1中間屋根桁231の第1中間固定滑車335に掛け回され、前方アーム機構320の前方動滑車339に掛け回され、その上方にある第2中間固定滑車336に掛け回され、前方アーム機構320の後方動滑車338に掛け回された後、その後進方向側にある第1中間固定滑車335に掛け回され、後方アーム機構310の前方動滑車339に掛け回され、その上方にある第2中間固定滑車336に掛け回され、後方アーム機構310の後方動滑車338に掛け回された後、さらに後進方向に伸ばされる。なお、1又は2以上の中間アーム機構330が配置されている場合、前方アーム機構320の後方動滑車338に掛け回され、第1中間固定滑車335に掛け回され後は、中間アーム機構330の前方動滑車339に掛け回され、その上方にある第2中間固定滑車336に掛け回され、中間アーム機構330の後方動滑車338に掛け回された後、その後進方向側にある第1中間固定滑車335に掛け回される。そして、すべての第2中間固定滑車336と第1中間固定滑車335(ただし、第2中間固定滑車336と第2中間固定滑車336の間にあるもの)に繰り返し掛けられると、最も後進方向側の第1中間固定滑車335に掛けられて、後方アーム機構310の前方動滑車339に掛け回される。
【0060】
図12の上方に示すベース材式の第2移動式屋根構造100Vは、それぞれの屋根桁200が後進方向に寄っていて相互の屋根桁200は接近しており、すなわち開扉状態となっている。この状態から制御線340を後進方向に引き込むと、ベース材337がその上方に位置する第2中間固定滑車336に接近するように上昇するとともに、各アーム機構(後方アーム機構310や前方アーム機構320、中間アーム機構330)を構成する各アーム(後方アーム321や前方アーム322、中間アーム323)が拡がっていき、これに伴って前方屋根桁220と第1中間屋根桁231、第2中間屋根桁232が前進方向に移動していく。その結果、
図12の下方に示すベース材式の第2移動式屋根構造100Vは、閉扉状態とされる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明の移動式屋根構造は、野球場、サッカー競技場、陸上競技場といった種々の競技場や、コンサートをはじめ種々のイベントを行う興行施設、あるいは大規模工場、アーケード等をもつ商業施設などで採用することができる。特に、開扉時に大きく開口する屋根に対して、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 本願発明の移動式屋根構造
100H (移動式屋根構造のうちの)第1移動式屋根構造
100V (移動式屋根構造のうちの)第2移動式屋根構造
200 (移動式屋根構造の)屋根桁
210 (屋根桁の)後方屋根桁
220 (屋根桁の)前方屋根桁
230 (屋根桁の)中間屋根桁
231 (中間屋根桁の)第1中間屋根桁
232 (中間屋根桁の)第2中間屋根桁
300 (移動式屋根構造の)伸縮装置
300H (伸縮装置のうちの)第1伸縮装置
300V (伸縮装置のうちの)第2伸縮装置
310 (伸縮装置の)後方アーム機構
311 (後方アーム機構の)後方固定ピン
312 (後方アーム機構の)後方アーム
313 (後方アーム機構の)後方可動ピン
313P (後方アーム機構の)後方アーム滑車
320 (伸縮装置の)前方アーム機構
321 (前方アーム機構の)前方固定ピン
322 (前方アーム機構の)前方アーム
323 (前方アーム機構の)前方可動ピン
323P (前方アーム機構の)前方アーム滑車
330 (伸縮装置の)中間アーム機構
331 (中間アーム機構の)中間固定ピン
332 (中間アーム機構の)中間アーム
333 (中間アーム機構の)中間可動ピン
333P (中間アーム機構の)中間アーム滑車
334 (中間アーム機構の)中間固定滑車
335 (中間アーム機構の)第1中間固定滑車
336 (中間アーム機構の)第2中間固定滑車
337 (伸縮装置の)ベース材
338 (伸縮装置の)後方動滑車
339 (伸縮装置の)前方動滑車
340 (伸縮装置の)制御線
400 (移動式屋根構造の)膜屋根
500 (移動式屋根構造の)ブレース材
FX 固定点
GS ガイド溝
SC サッカー競技場