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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005451
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】ブレースの柱への取付構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230111BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230111BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230111BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20230111BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04B1/58 G
F16F15/02 Z
F16F7/00 C
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107378
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000446
【氏名又は名称】岡部株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593029282
【氏名又は名称】森田 耕次
(74)【代理人】
【識別番号】100094042
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
(72)【発明者】
【氏名】森田 耕次
(72)【発明者】
【氏名】横山 眞一
(72)【発明者】
【氏名】田口 朝康
(72)【発明者】
【氏名】村田 学
(72)【発明者】
【氏名】丸山 喜照
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】西野 晃充
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E125AA01
2E125AA33
2E125AG03
2E125BB01
2E125BB19
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA02
2E139BD18
2E139BD22
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048DA02
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA03
3J066BB10
3J066BC01
3J066BD07
3J066BE01
3J066BF02
(57)【要約】
【課題】ブレースの軸力を負担する柱に面外変形が発生したり、座屈が生じることを防止することが可能なブレースの柱への取付構造を提供する。
【解決手段】柱2と梁とを接合して構築される柱梁架構5内に設けられるブレース15の柱側接合端15yを柱に取り付ける構造であって、柱に、柱幅方向両側の一対の柱面それぞれと接合して設けられた一対の接合プレート24と、一対の接合プレート双方と接合され、柱梁架構内に柱と向かい合う配置で設けられたベースプレート25と、ベースプレートに接合して設けられ、ブレースの柱側接合端と連結されるブレース連結プレート26とを備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とを接合して構築される架構内に設けられるブレースの柱側接合端を該柱に取り付ける構造であって、
上記柱に、柱幅方向両側の一対の柱面それぞれと接合して設けられた一対の接合プレートと、
上記一対の接合プレート双方と接合され、上記架構内に上記柱と向かい合う配置で設けられたベースプレートと、
上記ベースプレートに接合して設けられ、上記ブレースの上記柱側接合端と連結されるブレース連結プレートとを備えたことを特徴とするブレースの柱への取付構造。
【請求項2】
前記ベースプレートは、前記柱から隙間を空けて配置されることを特徴とする請求項1に記載のブレースの柱への取付構造。
【請求項3】
前記ベースプレートは、前記柱に接して配置されることを特徴とする請求項1に記載のブレースの柱への取付構造。
【請求項4】
前記ベースプレートには、表裏にそれぞれ、前記一対の接合プレートとの一対の第1接合箇所及び前記ブレース連結プレートとの第2接合箇所が設定され、該一対の第1接合箇所の間に該第2接合箇所が位置されることを特徴とする請求項1~3いずれかの項に記載のブレースの柱への取付構造。
【請求項5】
前記ベースプレート及び前記ブレース連結プレート双方に接合して補強リブ材が設けられることを特徴とする請求項1~4いずれかの項に記載のブレースの柱への取付構造。
【請求項6】
前記ブレース連結プレートと前記ブレースとは、アームプレートを有しかつ捩りモーメントで振動外力を減衰する制振ダンパを介して接続され、
上記ブレース連結プレートと上記アームプレートとは、それらを連通するピン孔に挿通されるピンを介して、回転自在に連結されることを特徴とする請求項1~5いずれかの項に記載のブレースの柱への取付構造。
【請求項7】
前記ブレース連結プレートには、前記ピンの挿通方向に前記アームプレートを挟んで該ブレース連結プレートの反対側に位置されかつ該ピンが回転自在に挿通される追加のピン孔を有する一端部と、該ブレース連結プレートに接合される他端部とを有し、該アームプレートの両側で、該ブレース連結プレートと共に該ピンを両端支持する補強金物が設けられることを特徴とする請求項6に記載のブレースの柱への取付構造。
【請求項8】
前記補強リブ材は、前記ブレース連結プレートの前記ピン孔近傍に配置されることを特徴とする請求項5~7いずれかの項に記載のブレースの柱への取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレースの軸力を負担する柱に面外変形が発生したり、座屈が生じることを防止することが可能なブレースの柱への取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
柱と梁とを接合して構築される架構内に設けられるブレースの柱側接合端を、柱に取り付ける構造として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1の「耐震補強用接合構造」は、断面角形又は円形の構造部材に耐震補強用部材を接合する接合金具において、接合金具は構造部材の一方の面と面接合する接合部を有し、接合金具と構造部材の一方の面とを接着剤または高力ボルトで接合し、接合金具は接合部の反対側に補強部を有し、補強部に少なくとも1枚の水平補強リブを固定して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-270320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術では、接合金具が柱等の構造部材に接着剤等で面接合されている。このため、接合金具と連結されるブレースの軸力によって、接合金具と一緒に、構造部材に面外変形が発生してしまうおそれがあった。構造部材は、面外変形が生じると、当該構造部材が負担する軸力によって座屈を生じやすくなってしまう。これにより、ブレースにその耐力を十分に発揮させる前に、柱梁架構が破壊に至ってしまうという課題があった。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ブレースの軸力を負担する柱に面外変形が発生したり、座屈が生じることを防止することが可能なブレースの柱への取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるブレースの柱への取付構造は、柱と梁とを接合して構築される架構内に設けられるブレースの柱側接合端を該柱に取り付ける構造であって、上記柱に、柱幅方向両側の一対の柱面それぞれと接合して設けられた一対の接合プレートと、上記一対の接合プレート双方と接合され、上記架構内に上記柱と向かい合う配置で設けられたベースプレートと、上記ベースプレートに接合して設けられ、上記ブレースの上記柱側接合端と連結されるブレース連結プレートとを備えたことを特徴とする。
【0007】
前記ベースプレートは、前記柱から隙間を空けて配置されることを特徴とする。
【0008】
前記ベースプレートは、前記柱に接して配置されることを特徴とする。
【0009】
前記ベースプレートには、表裏にそれぞれ、前記一対の接合プレートとの一対の第1接合箇所及び前記ブレース連結プレートとの第2接合箇所が設定され、該一対の第1接合箇所の間に該第2接合箇所が位置されることを特徴とする。
【0010】
前記ベースプレート及び前記ブレース連結プレート双方に接合して補強リブ材が設けられることを特徴とする。
【0011】
前記ブレース連結プレートと前記ブレースとは、アームプレートを有しかつ捩りモーメントで振動外力を減衰する制振ダンパを介して接続され、上記ブレース連結プレートと上記アームプレートとは、それらを連通するピン孔に挿通されるピンを介して、回転自在に連結されることを特徴とする。
【0012】
前記ブレース連結プレートには、前記ピンの挿通方向に前記アームプレートを挟んで該ブレース連結プレートの反対側に位置されかつ該ピンが回転自在に挿通される追加のピン孔を有する一端部と、該ブレース連結プレートに接合される他端部とを有し、該アームプレートの両側で、該ブレース連結プレートと共に該ピンを両端支持する補強金物が設けられることを特徴とする。
【0013】
前記補強リブ材は、前記ブレース連結プレートの前記ピン孔近傍に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるブレースの柱への取付構造にあっては、ブレースの軸力を負担する柱に面外変形が発生したり、座屈が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るブレースの柱への取付構造の好適な一実施形態を示す正面図である。
図2図1に示したブレースの柱への取付構造の要部拡大図である。
図3図2中、A-A線矢視図である。
図4図1に示した制振ダンパの分解斜視図である。
図5図1に示したブレースの拡大図である。
図6図5中、B-B線矢視断面図である。
図7図5中、D方向矢視図である。
図8図2に示した第2ピンを一端で支持した場合の説明図である。
図9図2に示した第2ピンを両端で支持した場合の説明図である。
図10】本発明に係るブレースの柱への取付構造の変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかるブレースの柱への取付構造の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1には、本実施形態に係るブレースの柱への取付構造が適用される架構の一例として、制振ダンパ1を備えた柱梁架構5の全体構成が示されている。制振ダンパ1は、梁3に接合されたブレース15と柱2との間に設けられている。
【0018】
まず、制振ダンパ1について説明する。制振ダンパ1は、図1に示すように、左右一対の柱2(図示例では左側の柱のみ表示)に、上下一対の梁3(図示例では上側の梁のみ表示)を柱梁接合部4で接合して構築される、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造あるいは木造の長方形状の柱梁架構5(図10参照)の内方に設けられる。
【0019】
図示例は、鉄骨造の柱梁架構5であって、梁3はI型鋼製、柱2は断面四角形の中空鋼管製(図3参照)のものが例示されている。柱2は、断面円形など、どのような断面形態であってもよい。
【0020】
制振ダンパ1は、地震時などに発生する左右横方向や上下縦方向の振動外力で柱梁架構5が変形される際、当該振動外力のエネルギを吸収して減衰する。
【0021】
制振ダンパ1は、図1図2及び図4に示すように、1つの円管部材6と、一枚の第1アームプレート7と、2枚で一対の第2アームプレート8,8とからなるユニット部品として構成される。
【0022】
円管部材6は、鋼製の中空円筒体で形成される。円管部材6の長さ方向両端は、当該円管部材6の内部の視認が可能に開口6aされる。
【0023】
第1アームプレート7は、長さ及び幅を有する鋼製の板材であって、長さ方向一端側である基端部7aの幅寸法が幅広で、長さ方向他端側である先端部7bの幅寸法が幅狭な外形輪郭で形成される。
【0024】
図示例では、第1アームプレート7の外形輪郭は、基端部7aから先端部7bに向けて幅寸法が次第に窄められる卵形に形成されている。
【0025】
第1アームプレート7の基端部7aには、円管部材6の中心と同一中心で、当該円管部材6が貫通される第1貫通穴9が形成される。第1アームプレート7の基端部7aの外形輪郭は、第1貫通穴9の中心C1と同心で、第1貫通穴9の内径よりも大きな外径の円弧部を含んで形成される。
【0026】
第1アームプレート7の先端部7bには、後述する第1ピン10が挿通される第1ピン孔11が形成される。第1アームプレート7の先端部7bの外形輪郭は、第1ピン孔11の中心C2と同心で、第1ピン孔11の内径よりも大きな外径の円弧部を含んで形成される。
【0027】
従って、第1アームプレート7は、第1貫通穴9が形成される基端部7aから第1ピン孔11が形成される先端部7bに向かう長さ方向について、第1貫通穴9周りが幅広に形成され、第1ピン孔11周りが幅狭に形成される。
【0028】
さらに、第1アームプレート7は、第1貫通穴9の中心C1と第1ピン孔11の中心C2を結ぶ当該第1アームプレート7の軸線P1に関して、線対称に形成される。
【0029】
第2アームプレート8は、第1アームプレート7と同様に、長さ及び幅を有する鋼製の板材であって、長さ方向一端側である基端部8aの幅寸法が幅広で、長さ方向他端側である先端部8bの幅寸法が幅狭な外形輪郭で形成される。
【0030】
図示例では、第2アームプレート8の外形輪郭は、基端部8aから先端部8bに向けて幅寸法が次第に窄められる卵形に形成されている。
【0031】
第2アームプレート8の基端部8aには、円管部材6の中心と同一中心で、当該円管部材6が貫通される第2貫通穴12が形成される。第2アームプレート8の基端部8aの外形輪郭は、第2貫通穴12の中心C3と同心で、第2貫通穴12の内径よりも大きな外径の円弧部を含んで形成される。
【0032】
第2アームプレート8の先端部8bには、後述する第2ピン13が挿通される第2ピン孔14が形成される。第2アームプレート8の先端部8bの外形輪郭は、第2ピン孔14の中心C4と同心で、第2ピン孔14の内径よりも大きな外径の円弧部を含んで形成される。
【0033】
従って、第2アームプレート8は、第2貫通穴12が形成される基端部8aから第2ピン孔14が形成される先端部8bに向かう長さ方向について、第2貫通穴12周りが幅広に形成され、第2ピン孔14周りが幅狭に形成される。
【0034】
さらに、第2アームプレート8は、第2貫通穴12の中心C3と第2ピン孔14の中心C4を結ぶ当該第2アームプレート8の軸線P2に関して、線対称に形成される。
【0035】
2枚で一対の第2アームプレート8,8は、同一材質同一寸法で、同一に形成される。また、板厚を除く外形形態について、第1アームプレート7と第2アームプレート8は同一に形成されることが望ましいが、必ずしも同一でなくてもよい。
【0036】
第1アームプレート7、第2アームプレート8及び円管部材6の相互関係について、第1アームプレート7の板厚は第2アームプレート8の板厚よりも厚く、第2アームプレート8の板厚は円管部材6の肉厚よりも厚く形成される。第1アームプレート7の板厚は、第2アームプレート8の板厚の2倍であることが好ましい。
【0037】
円管部材6は、その長さ方向に順次、一方の第2アームプレート8の第2貫通穴12、第1アームプレート7の第1貫通穴9、他方の第2アームプレート8の第2貫通穴12に貫通されて、これら第1アームプレート7及び第2アームプレート8,8に設けられる。
【0038】
一対の第2アームプレート8,8の間に、第1アームプレート7が位置される。第1アームプレート7は、円管部材6の長さ方向中央部分に配置される。
【0039】
一対の第2アームプレート8,8はそれぞれ、第1アームプレート7の両側で、円管部材6の長さ方向両端部分それぞれに配置される。
【0040】
第1アームプレート7と一方の第2アームプレート8及び第1アームプレート7と他方の第2アームプレート8は、円管部材6の長さ方向に等距離Lを隔てて配設される(図3参照)。
【0041】
両側の一対の第2アームプレート8,8の第2貫通穴12,12からはそれぞれ、円管部材6の長さ方向端部、すなわち管端部6bがそれぞれ突出される。
【0042】
第1アームプレート7及び一対の第2アームプレート8,8はそれぞれ、第1貫通穴9周りの全周及び第2貫通穴12周りの全周にわたり、隅肉溶接によって円管部材6に一体的に接合固定される。
【0043】
制振ダンパ1は、上述したように第1アームプレート7及び一対の第2アームプレート8,8を円管部材6に接合固定することにより、ユニット化した部品として構成される。
【0044】
制振ダンパ1はその外形形態として、第1アームプレート7と第2アームプレート8が円管部材6の周りで、これらが一直線に配列されたり、これらが同じ位置で重ね合わされたりしない、屈曲形態に形成される。
【0045】
すなわち、制振ダンパ1は、第1アームプレート7と第2アームプレート8とが、円管部材6を介して、互いに一方が他方に対して屈曲した位置を占めるように構成される。
【0046】
詳細には、第1アームプレート7における上記軸線P1と、第2アームプレート8における上記軸線P2とが互いに交差するように、円管部材6に対して第1アームプレート7と第2アームプレート8とが接合固定される。
【0047】
円管部材6に対する一対の第2アームプレート8,8の取り付けの向きは、互いに平行で、円管部材の6長さ方向に見て両者が重なり合う同一方向(捩れ位置でない)とされる。
【0048】
上記のように構成された制振ダンパ1は、上述した柱梁架構5の内方に設けられる。柱梁架構5を構成する上下の梁の一方である上梁3には、H型鋼製のブレース15が設けられる。ブレース15の形態や材料は、H型鋼製に限られない。
【0049】
ブレース15は、その長さ方向一端である梁側接合端15xが、柱梁接合部4から距離を隔てる上梁3の長さ方向(左右横方向)中途部に接合固定される。
【0050】
そして、このブレース15の柱側接合端15yとなるその長さ方向他端には、制振ダンパ1の第1アームプレート7が連結される。
【0051】
具体的には、ブレース15の柱側接合端15yは、第1アームプレート7と、第1ピン孔11に挿通される第1ピン10を介して、回転自在にピン結合される。
【0052】
柱梁架構5を構成する左右の柱の一方である左柱2には、制振ダンパ1を介してブレース15を接続するために、接合用ブラケットユニット16が設けられる。
【0053】
接合用ブラケットユニット16は、柱梁接合部4から距離を隔てる左柱2の上下高さ方向中途部に接合固定される。
【0054】
そして、この接合用ブラケットユニット16には、制振ダンパ1の第2アームプレート8,8が連結される。
【0055】
具体的には、接合用ブラケットユニット16は、第2アームプレート8,8と、それらの第2ピン孔14,14に挿通される第2ピン13,13を介して、回転自在にピン結合される。
【0056】
ブレース15は、上述したように、長さ方向の一端の梁側接合端15xが上梁3に接合固定され、長さ方向他端の柱側接合端15yが第1ピン挿通孔17を介して、第1アームプレート7に接続される。
【0057】
図5図7に示すように、ブレース15の梁側接合端15xには、上梁3の下面に沿って平坦に形成されたブレース端面に溶接接合された鋼製接合プレート18と、ブレース15のウエブ15aに揃えて当該ブレース15の両側に溶接接合され、かつ接合プレート18と溶接接合された一対の鋼製補強リブ19とが設けられる。
【0058】
ブレース15は、接合プレート18を上梁3下にボルト20で接合することで、上梁3に高剛性で取り付け固定される。
【0059】
ブレース15の柱側接合端15yには、ウエブ15aの両側に重ね合わせて一対の鋼製スペーサ21が設けられると共に、各スペーサ21に重ね合わせて、ブレース15から外方へ突出する一対の鋼製連結用プレート22が設けられ、これら一対の連結用プレート22が、スペーサ21を介して、ウエブ15aにボルト・ナット23で接合されて高剛性で設けられる。
【0060】
連結用プレート22には、第1ピン挿通孔17が形成される。ブレース15と第1アームプレート7とは、一対の連結用プレート22の間に第1アームプレート7の先端部7bを挿入し、第1ピン孔11と一対の第1ピン挿通孔17とを位置合わせし、そして、これら第1ピン孔11及び第1ピン挿通孔17にわたって第1ピン10を挿通設置することで、互いに回転自在にピン結合される。
【0061】
ブレース15の柱側接合端15yを左柱2に接合するための接合用ブラケットユニット16は主に、図1図3に示すように、左柱2に接合して設けられる一対の接合プレート24,24と、一対の接合プレート24双方と接合され、柱梁架構5内に左柱2と向かい合う配置で設けられるベースプレート25と、第2アームプレート8,8の枚数に合わせてベースプレート25に接合して設けられ、制振ダンパ1を介してブレース15の柱側接合端15yと連結するためのブレース連結プレート26,26とから構成される。
【0062】
一対の接合プレート24,24は、断面四角形の左柱2を両側から挟むように、左柱2の柱幅方向両側の一対の柱側面それぞれに接合して設けられる。接合プレート24,24は、長方形状の鋼板材で形成される。
【0063】
これら接合プレート24,24はそれぞれ、その板面が柱側面に重ね合わされ、4つの縁辺のうち、柱梁架構5に面する1つの縁辺(以下、ベースプレート側縁辺という)24bを除き、3つの縁辺24aが柱側面に対し隅肉溶接されて接合される。
【0064】
一対の接合プレート24,24には、それらのベースプレート側縁辺24bに、ベースプレート25の裏面が溶接接合される。ベースプレート25は、長方形状の鋼板材で形成される。
【0065】
ベースプレート25は、一対の接合プレート24,24双方のベースプレート側縁辺24b,24bに接合されることにより、柱梁架構5の内方で、左柱2と向かい合う配置で設けられる。すなわち、ベースプレート25は、左柱2とは接合されない。
【0066】
接合プレート24のベースプレート側縁辺24bは、左柱2から柱梁架構5内に迫り出す位置に設定される。この場合、ベースプレート25は、左柱2との間に隙間を空けて配置される。
【0067】
あるいは、ベースプレート側縁辺24bは、左柱2から迫り出すことなく、左柱2と面一となる位置に設定される。この場合、ベースプレート25は、左柱2に接して配置される。
【0068】
ベースプレート25と接合プレート24は、柱高さ方向の縦寸法がほぼ同じ寸法とされる。ベースプレート25の柱幅方向の横寸法は、左柱2の両側に一対の接合プレート24,24を接合した状態で、それらの柱幅方向への寸法よりも大きい寸法とされる。接合プレート24の柱側面に沿う横寸法Sは、当該左柱2の柱側面の幅寸法の1/2以上の寸法とされる。
【0069】
接合プレート24の横寸法Sは、ブレース15の軸力が大きくて負担する荷重が大きい場合には、溶接量を大きくするために大きく、負担する荷重が小さい場合には、溶接量は少なくて済むので、小さくすればよい。
【0070】
左柱2の柱側面と溶接接合される3つの縁辺24a及びベースプレート側縁辺24bの4つの縁辺に対する4箇所の溶接を考慮すると、接合プレート24は、横寸法Sと縦寸法がすべて等しい正方形状として、柱側面及びベースプレート25と溶接接合することが望ましい。
【0071】
接合プレート24と接合される裏面と反対側の、ベースプレート25の表面には、複数枚、図示例では2枚のブレース連結プレート26,26が、円管部材6に接合された2枚の第2アームプレート8,8の配置に合わせて、間隔を隔てて溶接接合される。
【0072】
各ブレース連結プレート26,26は、ほぼ長方形状の鋼板材で形成され、縦寸法が接合プレート24とほぼ同じ寸法とされる。ただし、各ブレース連結プレート26,26の形状及び縦寸法は、これに限定されることはない。
【0073】
ブレース連結プレート26は、4つの縁辺のうち、1つの縁辺がベースプレート25と隅肉溶接により接合され、ベースプレート25から柱梁架構5内へ、第2アームプレート8に向かって突設される。
【0074】
ベースプレート25には、表裏それぞれに、一対の接合プレート24,24との一対の第1接合箇所が設定されると共に、一対のブレース連結プレート26,26との一対の第2接合箇所が設定され、これら第2接合箇所は、左柱2の柱幅相当である一対の接合プレート24,24の間隔を超えないように、第1接合箇所の間に設定される。
【0075】
ブレース連結プレート26には、これを貫通して、第2ピン挿通孔30が形成される。一対のブレース連結プレート26,26と一対の第2アームプレート8,8とは、互いに向かい合うように重ねられ、第2ピン孔14と第2ピン挿通孔30とを位置合わせし、そして、第2ピン孔14及び第2ピン挿通孔30にわたって第2ピン13を挿通設置することで、各ブレース連結プレート26,26に対して一対の第2アームプレート8,8が互いに回転自在にピン結合される。
【0076】
すなわち、本実施形態においては、ブレース15の柱側接合端15yを左柱2に取り付ける構造について、制振ダンパ1の第2アームプレート8,8が、ブレース連結プレート26,26とブレース15とを接続する構成部材であり、第2アームプレート8,8とブレース連結プレート26,26とは、第2ピン孔14及び第2ピン挿通孔30に設けられる第2ピン13により回転自在に連結される。
【0077】
各ブレース連結プレート26,26及びベースプレート25双方に接合して、鋼製板材で形成された補強リブ材28が設けられる。
【0078】
補強リブ材28は、ブレース連結プレート26とベースプレート25との接合を補強するために、これらブレース連結プレート26とベースプレート25との隅角部に、これら両者を連結するようにして設けられる。
【0079】
また、補強リブ材28は、ブレース15からの軸力がブレース連結プレート26に入力される第2ピン挿通孔30の近傍に配置される。図示例では、補強リブ材28は、第2ピン挿通孔30を、柱高さ方向両側から挟む配置で2枚設けられている。
【0080】
さらに、ブレース連結プレート26には、図3に示すように、補強リブ材28が設けられる表面とは反対側の裏面に、当該ブレース連結プレート26と第2アームプレート8とを回転自在に連結する第2ピン13周辺を補強するために、補強金物31が設けられる。
【0081】
補強金物31は、図9にも示すように、第2ピン13の挿通方向に、第2アームプレート8を挟んでブレース連結プレート26とは反対側に位置される一端部31aと、第2ピン13を避けて離れた位置で、ブレース連結プレート26と接合される他端部31bを有する。
【0082】
補強金物31の一端部31aには、第2ピン13が回転自在に挿通される追加のピン挿通孔31cが形成される。
【0083】
図示例では、補強金物31は、柱高さ方向から見て、一端部31aから他端部31bにわたって一体的なL字状の形態で形成される。
【0084】
しかしながら、補強金物31は、一端部31aを軸受パーツとし、他端部31bを、軸受パーツとブレース連結プレート26との間を埋めるスペーサとするなど、別部品の組立体として構成してもよいことはもちろんである。
【0085】
補強金物31の他端部31bは、柱高さ方向の上下2箇所で高力ボルト29とナット32により、ブレース連結プレート26に接合固定される。
【0086】
これにより、第2ピン13は、補強金物31の追加のピン挿通孔31c及びブレース連結プレート26の第2ピン挿通孔30双方によって、補強金物31及びブレース連結プレート26に両端支持されて設けられる。
【0087】
なお、第2ピン13の両端はそれぞれ、ワッシャ33を介してボルト34により、ブレース連結プレート26及び補強金物31の一端部31aに保持される。
【0088】
次に、本実施形態に係るブレースの柱への接合構造の作用について説明する。本実施形態に用いられる制振ダンパ1を柱梁架構5に備えるときには、ブレース15を最初に上梁3の所定箇所に接合固定する。
【0089】
次に、ブレース15の連結用プレート22と制振ダンパ1の第1アームプレート7の両者を、それらの第1ピン挿通孔17及び第1ピン孔11に第1ピン10を挿通して回転自在にピン結合する。
【0090】
次に、左柱2の所定位置に、接合用ブラケットユニット16を設置する。この際、まず、左柱2に一対の接合プレート24,24を溶接接合し、次いで、これら接合プレート24,24双方に対して、ベースプレート25を溶接接合する。
【0091】
引き続き、ベースプレート25にブレース連結プレート26,26を溶接接合し、補強リブ材28,28を、ブレース連結プレート26,26及びベースプレート25の双方に溶接接合する。
【0092】
このとき、接合用ブラケットユニット16は例えば、その構成部材の一部である一対の接合プレート24,24等を工場等で予め組み立てておき、この組立品を現場で左柱2に設置するようにしてもよい。
【0093】
最後に、ブレース連結プレート26に補強金物31の他端部31bを仮固定し、これらブレース連結プレート26及び補強金物31に対して、制振ダンパ1の第2アームプレート8を、それらの第2ピン挿通孔30、追加のピン挿通孔31c、並びに第2ピン孔14に第2ピン13を挿通して、回転自在にピン結合する。その後、補強金物31を、ブレース連結プレート26に本固定する。
【0094】
地震等の振動外力が柱梁架構5に作用すると、柱梁架構5に繰り返し変形(歪み)が発生する。柱梁架構5に変形が生じると、この変形に伴う力が、柱2から接合用ブラケットユニット16を通じて、梁3に接合されたブレース15と制振ダンパ1に入力される。
【0095】
制振ダンパ1では、第1アームプレート7及び第2アームプレート8からの入力が円管部材6の周方向に作用する(第1ピン孔11と第2ピン孔14が接離するように動く)ものであれば、第1アームプレート7と第2アームプレート8との間に生じる捩りモーメントにより、円管部材6が変形しエネルギ吸収して、振動外力を減衰する。
【0096】
また、第1アームプレート7及び第2アームプレート8からの入力が、水平横方向、鉛直縦方向、そしてまた斜め方向から円管部材6の径方向に対して作用するせん断力であれば、当該せん断力により円管部材6が変形しエネルギ吸収して、振動外力を減衰する。
【0097】
このように制振ダンパ1は、捩りモーメント及びせん断力のいずれに対してもエネルギ吸収を行い、制振作用を効率的に発揮する。
【0098】
このような制振ダンパ1の作用に際し、接合用ブラケットユニット16には、ブレース15の長さ方向に沿う軸力が作用する。
【0099】
本実施形態に係るブレースの柱への取付構造では、ベースプレート25を、柱2に接合することなく、当該柱2と向かい合う配置で設けるようにしたので、接合金具が構造部材に面接合される背景技術とは異なり、ブレース15の軸力で柱2に面外変形が発生したり、また、それにより当該柱2に座屈が生じてしまうことを防止することができる。
【0100】
従って、ブレース15にその耐力を十分に発揮させ、また制振ダンパ1を有効に機能させることができる。
【0101】
ベースプレート25を、柱2から隙間を空けて配置する場合には、この隙間により、ブレース15の軸力を伝達するベースプレート25を柱2から構造的に絶縁することができ、ブレース15の引張時・圧縮時のいずれであっても、柱2の面外変形を確実に防止することができる。
【0102】
ベースプレート25を、柱2に接して配置した場合には、ブレース15の引張時においては隙間がある場合と同様であり、圧縮時には、軸力が柱2に作用する。
【0103】
しかしながら、ブレース15の圧縮時、ベースプレート25の介在により、柱2に作用する軸力を当該ベースプレート25が受け止めるので、柱2の面外変形を抑えて、制振ダンパ1により効率よくエネルギ吸収させることができる。
【0104】
ベースプレート25には、表裏にそれぞれ、一対の接合プレート24,24との一対の第1接合箇所及び一対のブレース連結プレート26,26との一対の第2接合箇所が設定され、一対の第1接合箇所の間に第2接合箇所が位置されるので、ブレース連結プレート26から伝達されるブレース15の軸力を、ベースプレート25を通じて、接合プレート24に十分に伝達して支持させることができる。
【0105】
ベースプレート25及びブレース連結プレート26双方に接合して補強リブ材28を設けるようにしたので、当該補強リブ材28により、ベースプレート25及びブレース連結プレート26双方の変形を抑制でき、ブレース15の軸力を効率的に伝達できると共に、制振ダンパ1で効率よくエネルギ吸収させることができる。
【0106】
ブレース連結プレート26とブレース15とを、捩りモーメントで振動外力を減衰する制振ダンパ1を介して接続したので、ブレース15とブレース連結プレート26との間に伝達されるブレース15の軸力エネルギを、制振ダンパ1で効果的に吸収することができ、柱2の負担を軽減して、柱梁架構5の破壊を抑えることができる。
【0107】
ブレース連結プレート26と制振ダンパ1の第2アームプレート8とを回転自在に連結する第2ピン13を、第2アームプレート8の両側で、ブレース連結プレート26と補強金物31とで両端支持するようにしたので、第2ピン13を適切に支持できると同時に、第2ピン13を良好な精度で設けることができる。
【0108】
図8には、第2アームプレート8の第2ピン13を、ブレース連結プレート26だけで支持した場合が示され、図9には、本実施形態で説明したように、第2ピン13をブレース連結プレート26と補強金物31で両端支持した場合が示されている。
【0109】
図8の場合、第2アームプレート8の動きによって第2ピン13が傾いて第2挿通孔30等に片当たりしたり、第2ピン13自体が曲がってしまったりして、安定してせん断力を受けることが難しい。
【0110】
これに対し、図9の場合、せん断力を安定して受けることができ、さらに、第2ピン13の断面積を小さくして構造をコンパクト化することができる。また、第2ピン13の取り付けに際しては、高力ボルト29を緩めている状態で第2ピン13を第2挿通孔30等に組み付け、その後、高力ボルト29を締め付けることで、高い精度で第2ピン13を設けることができる。
【0111】
補強リブ材28を、ブレース連結プレート26の第2ピン挿通孔30近傍に配置するので、第2ピン13を介して伝達されるブレース15の軸力に対し、ブレース連結プレート26及びベースプレート25の変形を抑制でき、接合用ブラケットユニット16全体でブレース15の軸力を適切に受け止めることができる。
【0112】
図10には、本発明に係るブレースの柱への取付構造の変形例が示されている。この変形例では、柱梁架構5が左右一対の柱2,2aに上下一対の梁3,3aを接合して四角形状に構築され、ブレース15の梁側接合端15xが、柱梁架構5の互いに向かい合ういずれか一対の上入隅部の柱梁接合部4と下入隅部の柱梁接合部4aのいずれか一方に設定され、ブレース15の柱側接合端15yが、上入隅部の柱梁接合部4と下入隅部の柱梁接合部4aのいずれか他方に設定される場合である。
【0113】
言い換えれば、四角形状の柱梁架構5内方に、柱梁接合部4,4a間に渡して一つの斜めブレース15が設けられる場合である。
【0114】
図示例では、上入隅部の柱梁接合部4にブレース15の梁側接合端15xが接合固定され、柱側接合端15yが下入隅部の柱梁接合部4a近傍に設けた接合用ブラケットユニット16に制振ダンパ1を介して接合固定され、ブレース15が第1アームプレート7に第1ピン10を介して回転自在にピン結合され、接合用ブラケットユニット16が第2アームプレート8,8に第2ピン13を介して回転自在にピン結合されている。
【0115】
この変形例は、上記実施形態で柱梁接合部4から離れた位置にブレース15及び接合用ブラケットユニット16を設けるのとは異なり、柱梁接合部4,4aもしくはその近傍にブレース15等を設置するものであって、このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【符号の説明】
【0116】
1 制振ダンパ
2 柱(左柱)
3 梁(上梁)
5 柱梁架構
8 第2アームプレート
13 第2ピン
14 第2ピン孔
15 ブレース
15y ブレースの柱側接合端
24 接合プレート
25 ベースプレート
26 ブレース連結プレート
28 補強リブ材
30 第2ピン挿通孔
31 補強金物
31a 一端部
31b 他端部
31c 追加のピン挿通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10