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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054584
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】レーザ装置及びビーム断面調整方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/066 20140101AFI20230407BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20230407BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20230407BHJP
   G02B 17/08 20060101ALI20230407BHJP
   H01S 3/00 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
B23K26/066
B23K26/064 N
H01S3/10 Z
G02B17/08 Z
H01S3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163522
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 友之
【テーマコード(参考)】
2H087
4E168
5F172
【Fターム(参考)】
2H087KA26
2H087LA26
2H087RA45
2H087TA03
4E168AD11
4E168EA12
4E168EA19
4E168JB01
5F172NN04
5F172NR06
5F172NR30
5F172ZZ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】所望の円形形状の加工を行うことが可能なレーザ装置を提供する。
【解決手段】レーザ発振器20から出力されたレーザビームが入射する位置に凹面鏡12が配置されている。凹面鏡12で反射されたレーザビームがレンズ系13に入射する。レンズ系13を経由したレーザビームがアパーチャ14に入射する。レンズ系13によるアパーチャ14の共役点16が、レンズ系13と凹面鏡12との間のレーザビームの経路上に位置している。共役点16におけるレーザビームのビーム断面が、共役点16の前後におけるレーザビームのビーム断面より真円に近い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを出力するレーザ発振器と、
前記レーザビームが入射する位置に配置された凹面鏡と、
前記凹面鏡で反射された前記レーザビームが入射するレンズ系と、
前記レンズ系を経由した前記レーザビームが入射する位置に配置されたアパーチャと
を備え、
前記レンズ系による前記アパーチャの共役点が、前記レンズ系と前記凹面鏡との間の前記レーザビームの経路上に位置しており、前記共役点における前記レーザビームのビーム断面が、前記共役点の前後における前記レーザビームのビーム断面より真円に近いレーザ装置。
【請求項2】
レーザ発振器から出力されたレーザビームを凹面鏡で反射させ、レンズ系を通してアパーチャに入射させる光学系のビーム調整方法であって、
前記レンズ系による前記アパーチャの共役点が、前記レンズ系と前記凹面鏡との間の前記レーザビームの経路上に位置しており、
前記共役点の位置における前記レーザビームのビーム断面の真円度が目標の範囲内に収まるように、前記凹面鏡から前記共役点までの光路長、前記レーザ発振器から前記凹面鏡までの光路長、前記凹面鏡の焦点距離、及び前記凹面鏡への入射角の少なくとも一つを調整するビーム断面調整方法。
【請求項3】
レーザ発振器から出力されたレーザビームを凹面鏡で反射させ、レンズ系を通してアパーチャに入射させる光学系のビーム調整方法であって、
前記レンズ系による前記アパーチャの共役点が、前記レンズ系と前記凹面鏡との間の前記レーザビームの経路上に位置しており、
前記共役点の位置における前記レーザビームのビーム断面の真円度が、前記共役点の前後における真円度より高くなるように、前記凹面鏡から前記共役点までの光路長、前記レーザ発振器から前記凹面鏡までの光路長、前記凹面鏡の焦点距離、及び前記凹面鏡への入射角の少なくとも一つを調整するビーム断面調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置及びビーム断面調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板等の加工対象物に穴明け加工を行う従来のレーザ加工装置について説明する。レーザ発振器から出力されたレーザビームが凹面鏡、ビームエキスパンダ等を経由してアパーチャに入射する。アパーチャによってビーム断面の外形がほぼ円形にされたレーザビームが、ガルバノスキャナ及びfθレンズを経由して加工対象物の表面に入射する。
【0003】
加工対象物に円形の穴を形成するために、加工対象物の表面におけるビーム断面の真円度を高めることが望ましい。真円度とは、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの程度をいう。下記の特許文献1に、レーザビームの光共振器内に、直交する二方向に関して異なる曲率半径を持つ形状のミラーを配置することにより、ビームモードの真円性の向上を図ったレーザ発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-34055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の装置では、アパーチャによってビーム断面の外形を円形にしたレーザビームを用いて加工を行っても、加工対象物に形成される穴の形状が円形からずれる場合があることが判明した。アパーチャが配置されている位置におけるビームプロファイルやビームの広がり角が、縦方向と横方向とで異なるためである。また、真円以外に、ビーム断面を所望の真円度の円形に近づけたい場合がある。
【0006】
本発明の目的は、所望の円形形状の加工を行うことが可能なレーザ装置を提供することである。本発明の他の目的は、ビーム断面を所望の真円度に近づけることが可能なビーム断面調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
レーザビームを出力するレーザ発振器と、
前記レーザビームが入射する位置に配置された凹面鏡と、
前記凹面鏡で反射された前記レーザビームが入射するレンズ系と、
前記レンズ系を経由した前記レーザビームが入射する位置に配置されたアパーチャと
を備え、
前記レンズ系による前記アパーチャの共役点が、前記レンズ系と前記凹面鏡との間の前記レーザビームの経路上に位置しており、前記共役点における前記レーザビームのビーム断面が、前記共役点の前後における前記レーザビームのビーム断面より真円に近いレーザ装置が提供される。
【0008】
本発明の他の観点によると、
レーザ発振器から出力されたレーザビームを凹面鏡で反射させ、レンズ系を通してアパーチャに入射させる光学系のビーム調整方法であって、
前記レンズ系による前記アパーチャの共役点が、前記レンズ系と前記凹面鏡との間の前記レーザビームの経路上に位置しており、
前記共役点の位置における前記レーザビームのビーム断面の真円度が目標の範囲内に収まるように、前記凹面鏡から前記共役点までの光路長、前記レーザ発振器から前記凹面鏡までの光路長、前記凹面鏡の焦点距離、及び前記凹面鏡への入射角の少なくとも一つを調整するビーム断面調整方法が提供される。
【0009】
本発明のさらに他の観点によると、
レーザ発振器から出力されたレーザビームを凹面鏡で反射させ、レンズ系を通してアパーチャに入射させる光学系のビーム調整方法であって、
前記レンズ系による前記アパーチャの共役点が、前記レンズ系と前記凹面鏡との間の前記レーザビームの経路上に位置しており、
前記共役点の位置における前記レーザビームのビーム断面の真円度が、前記共役点の前後における真円度より高くなるように、前記凹面鏡から前記共役点までの光路長、前記レーザ発振器から前記凹面鏡までの光路長、前記凹面鏡の焦点距離、及び前記凹面鏡への入射角の少なくとも一つを調整するビーム断面調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
レンズ系によるアパーチャの共役点におけるビーム断面を真円に近づけることにより、加工穴の形状を円形に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施例によるレーザ装置の概略図である。
図2図2は、ビーム断面、及び真円度を定義する同心二円を示す模式図である。
図3図3A図3Cは、楕円形状のビーム断面の長軸方向及び短軸方向のビーム径の計算結果を示すグラフである。
図4図4は、一実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。
図5図5は、レーザ発振器共役点に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー及び凹面鏡の配置の一例を示す模式図である。
図6図6は、他の実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。
図7図7は、レーザ発振器から共役点に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー及び凹面鏡の配置の一例を示す模式図である。
図8図8は、さらに他の実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。
図9図9は、レーザ発振器から共役点に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー及び凹面鏡の配置の一例を示す模式図である。
図10図10は、さらに他の実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。
図11図11は、レーザ発振器から共役点に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー及び凹面鏡の配置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図5を参照して、本発明の一実施例によるレーザ装置及びビーム断面調整方法について説明する。
【0013】
図1は、本実施例によるレーザ装置の概略図である。レーザ発振器20から出力されたレーザビームが、折り返しミラー11、凹面鏡12、レンズ系13を経由してアパーチャ14に入射する。レンズ系13は、例えばビームエキスパンダである。レンズ系13によるアパーチャ14の共役点16が、凹面鏡12とレンズ系13との間のレーザビームの径路上に位置する。凹面鏡12として、例えば球面鏡、放物面鏡等が用いられる。
【0014】
レーザ発振器20として、例えば赤外域の波長のパルスレーザビームを出力する炭酸ガスレーザ発振器が用いられる。なお、その他のガスレーザ発振器を用いてもよい。さらに、Nd:YAGレーザ等の固体レーザ発振器、レーザダイオード、ファイバレーザ等を用いてもよい。
【0015】
レーザ発振器20の出口から凹面鏡12までの光路長をL0と標記する。凹面鏡12の焦点距離をfと標記する。凹面鏡12へのレーザビームの入射角をθと標記する。凹面鏡12から共役点16までの光路長をL1と標記する。光路長の調性、光軸の調性等のために、複数の折り返しミラーが配置されるが、図1にはこれらの折り返しミラーの記載を省略している。
【0016】
アパーチャ14は、入射するレーザビームのビーム断面を円形に整形する。アパーチャ14を通過したレーザビームが、折り返しミラー15、ビーム走査器30、集光レンズ31を経由して加工対象物50に入射する。加工対象物50は、例えばXYステージ32に保持されている。ビーム走査器30は、レーザビームを二次元方向に走査する。ビーム走査器30として、例えばガルバノスキャナが用いられる。集光レンズ31は、例えばアパーチャ14の位置を加工対象物50の表面に結像させる。集光レンズ31として、例えばfθレンズが用いられる。加工対象物50は、例えばプリント基板であり、加工対象物50にレーザビームを入射させることにより、穴明け加工を行うことができる。
【0017】
一般に、ビーム断面内の相互に直交する2方向におけるビームの拡がり角が異なるため、レーザ発振器20の出口からの距離に応じて、ビーム断面の真円度が変化する。真円度は、円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさを表す。
【0018】
次に、図2を参照して、本明細書における真円度の定義について説明する。図2は、ビーム断面、及び真円度を定義する同心二円を示す模式図である。
【0019】
本明細書において、ビーム断面21の外周線を二つの同心の幾何学的円で挟んだとき、同心二円の間隔が最小となる場合の大きい方の円21maxの直径Dmaxに対する小さい方の円21minの直径Dminの比を、ビーム断面21の真円度と定義する。すなわち、真円度Cは、C=Dmin/Dmaxである。ビーム断面21の外周線は、ビーム断面内の光強度の最大値に対して一定の比率だけ低下した光強度の位置を連ねる線と定義することができる。「一定の比率」は、例えば90%を採用するとよい。ビーム断面21が幾何学的に正しい円形であるとき、その真円度Cは1である。ビーム断面21が幾何学的に正しい円形からずれると、真円度Cは1より小さくなる。例えば、ビーム断面21が楕円形である場合、真円度Cは、楕円の長径に対する短径の比で表される。
【0020】
図1に示すように、本実施例では、アパーチャの共役点16におけるビーム断面21が、共役点16の前後におけるビーム断面21より真円に近い。すなわち、共役点16におけるビーム断面21の真円度Cが、その前後におけるビーム断面21の真円度Cより1に近い。言い換えると、共役点16において真円度が極大値をとる。ここで、「前後」とは、レ―ザビームの進行方向の上流側及び下流側を意味する。
【0021】
次に、図3A図3Cを参照して、レ―ザビームの径路に沿うビーム断面の形状の変化の例について説明する。図3A図3Cは、楕円形状のビーム断面の長軸方向及び短軸方向のビーム径の計算結果を示すグラフである。ここで、「楕円形状」とは、幾何学的に正確な楕円を意味しているわけではなく、円形を一方向に引き延ばした形状を意味する。凹面鏡12が配置された位置におけるビーム断面の長軸方向及び短軸方向を、それぞれx方向及びy方向と定義する。
【0022】
図3A図3Cの横軸は、レーザ発振器20の出口から凹面鏡12までの光路長を基準としたときのレーザ発振器20の出口からの正規化光路長を表す。正規化光路長が1の位置に凹面鏡12が配置されている。図3A図3Cの縦軸は、ある長さを基準とした時の正規化ビーム径を表す。なお、レーザ発振器20の出口から凹面鏡12までの光路長L0、凹面鏡12の焦点距離f、凹面鏡12へのレーザビームの入射角θは一定である。
【0023】
図3A図3Cのいずれにおいても、レーザ発振器20の出口から凹面鏡12までの間では、レーザ発振器20からの光路長が長くなるにしたがってビーム径が拡がり角に応じて大きくなる。レーザビームが凹面鏡12で反射されると、x方向及びy方向の両方向に収束されるため、凹面鏡12からの光路長が長くなるにしたがってビーム径が小さくなる。ビーム径は、凹面鏡12からの光路長がある位置において極小値をとり、その後、光路長が長くなるにしたがってビーム径が大きくなる。
【0024】
図3Aに示した例では、レーザ発振器20の出口におけるx方向のビーム径がy方向のビーム径より大きい。x方向及びy方向の拡がり角はほぼ等しい。このため、凹面鏡12までのレーザビームの経路において、x方向及びy方向のビーム径の差はほぼ一定である。凹面鏡12により、y方向よりもx方向に強く収束される。この相違は、入射面と、x方向及びy方向の位置関係の相違に起因する。これにより、凹面鏡12からの光路長がある位置において、x方向のビーム径とy方向のビーム径とが等しくなる。すなわち、この位置で、ビーム断面が真円に近付き、真円度が極大値を示す。
【0025】
図3Bに示した例では、レーザ発振器20の出口におけるx方向のビーム径とy方向のビーム径とがほぼ等しく、x方向の拡がり角がy方向の拡がり角より大きい。このため、凹面鏡12の位置において、x方向のビーム径がy方向のビーム径より大きくなる。凹面鏡12で反射した後、図3Aに示した場合と同様に、凹面鏡12からの光路長がある位置において、x方向のビーム径とy方向のビーム径とが等しくなる。
【0026】
図3Cに示した例では、レーザ発振器20の出口におけるx方向のビーム径がy方向のビーム径より小さい。x方向の拡がり角がy方向の拡がり角より大きい。凹面鏡12の手前で、ビーム断面のx方向のビーム径とy方向のビーム径とが等しくなり、凹面鏡12の位置において、x方向のビーム径がy方向のビーム径より大きくなる。凹面鏡12で反射した後、x方向及びy方向のビーム径が極小値を示し、その後ビーム径が大きくなる。ビーム径が大きくなり始めた位置の近傍で、x方向のビーム径とy方向のビーム径とがほぼ等しくなる。
【0027】
図3A図3Cの何れの例においても、x方向のビーム径とy方向のビーム径とが等しくなる位置が共役点16となるように、光学系が調整される。
【0028】
次に、図4を参照して、本実施例によるビーム調整方法について説明する。なお、必要に応じて図1を参照する。
【0029】
図4は、本実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。まず、凹面鏡12とレンズ系13との間のレーザビームの経路にビームプロファイラを配置する(ステップS1)。レーザ発振器20からレーザビームを出力させ、ビームプロファイラでビームプロファイルを測定し、ビーム断面の真円度を計算する(ステップS2)。
【0030】
ビームプロファイラをレーザビームの経路に沿って移動させる(ステップS3)。移動後、レーザ発振器20からレーザビームを出力させてビームプロファイルを測定し、真円度を計算する(ステップS4)。真円度が極大値を示す位置が決定するまで、ステップS3、S4を繰り返す(ステップS5)。
【0031】
真円度が極大値を示す位置が決定されると、凹面鏡12から真円度極大となる位置までの光路長を、凹面鏡12から共役点16までの光路長L1の最適値として採用し、光路長L1が最適値になるように光学系を調整する(ステップS6)。
【0032】
次に、図5を参照して、光学系を調整する方法(ステップS6)について説明する。図5は、レーザ発振器20から共役点16に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー40及び凹面鏡12の配置の一例を示す模式図である。凹面鏡12で反射されたレーザビームが、4個の折り返しミラー40A、40B、40C、40Dを順番に経由することによってコの字状(U字状)に迂回して共役点16に達する。2番目及び3番目の折り返しミラー40B、40Cの位置を調整することにより、迂回路の光路長が変化する。その結果、凹面鏡12から共役点16までの光路長L1が変化する。
【0033】
次に、図1図5に示した実施例の優れた効果について説明する。
本願の発明者は、アパーチャ14でビーム断面が円形に整形されたレーザビームを用いて加工を行っても、加工対象物50に形成された穴の形状が真円からずれてしまう場合があることを見出した。アパーチャ14に入射する直前の位置におけるビーム断面が真円からずれている場合に、加工された穴が真円からずれてしまう傾向が高いことが判明した。
【0034】
本実施例では、アパーチャ14の共役点16におけるレーザビームのビーム断面が、共役点16の前後におけるレーザビームのビーム断面より真円に近くなるように光学系が調整されている。言い換えると、ビーム断面の真円度が、アパーチャ14の共役点16において極大値をとる。その結果、アパーチャ14が配置された位置におけるビーム断面も真円に近付く。このように、アパーチャ14に入射するレーザビームのビーム断面を真円に近付けることにより、加工された穴の形状を真円に近付けることができる。
【0035】
真円度が極大値をとる位置の近傍においては、位置の変化に対する真円度の変化量はわずかである。このため、ビーム断面が最も真円に近い位置を特定の一点に決定することは困難である。一例として、真円度の値が極大値から5%低下する2箇所を決定し、その2箇所の位置に基づいて、ビーム断面がもっとも真円に近い位置を決定するとよい。例えば、真円度の値が極大値から5%低下する2箇所の間のいずれかの位置におけるビーム断面は、その前後の位置のビーム断面より真円に近いということができる。特に、真円度の値が極大値から5%低下する2箇所の中点を、ビーム断面がもっとも真円に近い位置として採用するとよい。
【0036】
光路長L1の最適値は、レーザ発振器20の個体ごとに異なる。したがって、レーザ発振器20の個体ごとに光路長L1の最適値を求めて光学系を調整することが好ましい。また、レーザ発振器20の経時変化によっても、光路長L1の最適値が変化する。このため、定期的に、または加工品質が低下した場合に、光路長L1の最適値を求め、光学系を再調整することが好ましい。
【0037】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、共役点16においてビーム断面が最も真円に近くなるように光学系が調整されている。アパーチャ14を通過したレーザビームの用途によっては、共役点16におけるビーム断面を真円に近付けるよりも、ビーム断面の形状を真円からずらし、真円度が目標の範囲内に収まるように構成した方がよい場合もある。例えば、共役点16におけるビーム断面を楕円にしたほうがよい場合もある。このような場合には、ステップS5(図4)において、真円度が目標の範囲内に収まっているか否かを判定すればよい。さらに、ステップS6(図4)において、真円度が目標の範囲内に収まっているときの光路長L1を、光路長L1の最適値として採用すればよい。
【0038】
次に、図6及び図7を参照して他の実施例によるビーム断面調整方法について説明する。以下、図1図5を参照して説明した実施例によるビーム調整方法と共通の構成については説明を省略する。
【0039】
図6は、本実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。図4に示した実施例では、ビームプロファイラを凹面鏡12とレンズ系13との間に配置する(ステップS1)。これに対して図6に示した実施例では、ビームプロファイラをアパーチャ14の共役点16に配置する(ステップS1a)。図4に示した実施例では、ビームプロファイラを移動(ステップS3)させながらビーム断面の真円度を測定する。これに対して図6に示した実施例では、ビームプロファイラの位置は固定し、レーザ発振器20から凹面鏡12までの光路長L0を変化させる(ステップS3a)。
【0040】
ビーム断面の真円度が極大となる光路長L0の値が決定するまでステップS3a、S4を繰り返す(ステップS5a)。真円度が極大値を示す光路長L0が決定されると、真円度が極大値を示す光路長L0の値を、光路長L0の最適値として採用し、光路長L0が最適値になるように光学系を調整する(ステップS6a)。
【0041】
次に、図7を参照して、光学系を調整する方法(ステップS6a)について説明する。図7は、レーザ発振器20から共役点16に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー40及び凹面鏡12の配置の一例を示す模式図である。レーザ発振器20から出力されたレーザビームが複数の折り返しミラー40で反射されて凹面鏡12に入射する。2枚の折り返しミラー40E、40Fによって、レ―ザビームの進行方向が180°変化される。2枚の折り返しミラー40E、40Fを、レ―ザビームの折り返し前及び折返し後の進行方向に平行な方向(図7において矢印の方向)に移動させると、光路長L0が変化する。このとき、凹面鏡12に入射するレーザビームの経路、及び凹面鏡12で反射したレ―ザビームの経路は変化しない。
【0042】
次に、図6及び図7に示した実施例の優れた効果について説明する。本実施例においても図1図5に示した実施例と同様に、共役点16において、その前後よりもビーム断面が真円に近い。このため、加工穴を円形形状に近づけることができる。
【0043】
次に、図8及び図9を参照してさらに他の実施例によるビーム断面調整方法について説明する。以下、図6及び図7を参照して説明した実施例によるビーム調整方法と共通の構成については説明を省略する。
【0044】
図8は、本実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。図6に示した実施例では、光路長L0を変化(ステップS3a)させながらビーム断面の真円度を測定する。これに対して図8に示した実施例では、凹面鏡12へのレーザビームの入射角θを変化させる(ステップS3b)。
【0045】
ビーム断面の真円度が極大となる入射角θの値が決定するまでステップS3b、S4を繰り返す(ステップS5b)。真円度が極大値を示す入射角θが決定されると、真円度が極大値を示す入射角θの値を、入射角θの最適値として採用し、入射角θが最適値になるように光学系を調整する(ステップS6b)。
【0046】
次に、図9を参照して、光学系を調整する方法(ステップS6b)について説明する。図9は、レーザ発振器20から共役点16に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー40及び凹面鏡12の配置の一例を示す模式図である。レーザ発振器20から出力されたレーザビームが複数の折り返しミラー40で反射されて凹面鏡12に入射する。凹面鏡12の姿勢、凹面鏡12の直前に配置されている折り返しミラー40Gの位置及び姿勢、折り返しミラー40Gの直前に配置されている折り返しミラー40Hの姿勢を変化させると、入射角θが変化する。このとき、凹面鏡12で反射したレーザビームの経路が変化しないように、折り返しミラー40H、40G、及び凹面鏡12を調整する。
【0047】
次に、図8及び図9に示した実施例の優れた効果について説明する。本実施例においても図6図7に示した実施例と同様に、共役点16において、その前後よりもビーム断面が真円に近い。このため、加工穴を円形形状に近づけることができる。
【0048】
次に、図10及び図11を参照してさらに他の実施例によるビーム断面調整方法について説明する。以下、図6及び図7を参照して説明した実施例によるビーム調整方法と共通の構成については説明を省略する。
【0049】
図10は、本実施例によるビーム調整方法のフローチャートである。図6に示した実施例では、光路長L0を変化(ステップS3a)させながらビーム断面の真円度を測定する。これに対して図10に示した実施例では、焦点距離fの異なる凹面鏡12に交換する(ステップS3c)。
【0050】
ビーム断面の真円度が極大となる凹面鏡12の焦点距離fの値が決定するまでステップS3c、S4を繰り返す(ステップS5c)。真円度が極大値を示す焦点距離fが決定されると、真円度が極大値を示す焦点距離fを持つ凹面鏡12を用いて光学系を調整する(ステップS6c)。
【0051】
次に、図11を参照して、光学系を調整する方法(ステップS6c)について説明する。図11は、レーザ発振器20から共役点16に至るレーザビームの経路上に配置される複数の折り返しミラー40及び凹面鏡12の配置の一例を示す模式図である。焦点距離がf、f、f、・・・fn-1、fの複数の凹面鏡12が準備されている。ステップS1a(図10)の初期状態では、例えば焦点距離fの凹面鏡12がレーザビームの経路に配置されている。ステップS3c(図10)において、凹面鏡12を焦点距離fが異なる他の凹面鏡12に交換する。このとき、レーザ発振器20から凹面鏡12までの光路長L0、凹面鏡12へのレーザビームの入射角θ、凹面鏡12から共役点16までの光路長L1が不変となるように凹面鏡12の位置及び姿勢を調整する。
【0052】
次に、図10及び図11に示した実施例の優れた効果について説明する。本実施例においても図6図7に示した実施例と同様に、共役点16において、その前後よりもビーム断面が真円に近い。このため、加工穴を円形形状に近づけることができる。
【0053】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0054】
11 折り返しミラー
12 凹面鏡
13 レンズ系
14 アパーチャ
15 折り返しミラー
16 共役点
20 レーザ発振器
21 ビーム断面
21max ビーム断面の外周線を挟む2つの同心の幾何学的円周のうち大きい方
21min ビーム断面の外周線を挟む2つの同心の幾何学的円周のうち小さい方
30 ビーム走査器
31 集光レンズ
32 XYステージ
40、40A~40H 折り返しミラー
50 加工対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11