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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054594
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】土留部材及び土留構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/08 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
E02D17/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163539
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 正宏
(72)【発明者】
【氏名】若山 崇大
(72)【発明者】
【氏名】鎌崎 祐治
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044AA03
(57)【要約】
【課題】周方向の接続部の強度を確保できる土留部材及び土留構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る土留部材は、第1方向に垂直な断面形状が波形に加工された本体と、本体の第1方向の両端に設置された平板状の縦フランジ部と、を備え、縦フランジ部同士をボルトで連結して土留構造を形成する土留部材であって、本体は、第1方向に直交する本体の幅方向の両端のそれぞれに形成され、幅方向に対し垂直な面に貫通する連結孔が形成された横フランジ部を備え、第1方向に垂直な断面において、本体の断面の中立軸が幅方向に平行であるときの本体の断面係数Zと、本体の幅方向に垂直な断面において、縦フランジ部の断面の中立軸が本体の厚さ方向に平行であるときの断面係数Zとを規定し、縦フランジ部に締結されるボルトの支圧面積比に基づく係数をK、縦フランジ部に設置されるボルト設置数に応じて決まる係数をα、としたときに、断面係数Zは、2Z×K×α>Z ・・・ (1)の関係を満たす。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に複数連結して土留ユニットを形成する土留部材であって、
第1方向に垂直な断面形状が波形に加工された本体と、
前記本体の第1方向の両端に設置された平板状の縦フランジ部と、を備え、
前記縦フランジ部同士をボルトで連結して土留構造を形成する土留部材であって、
前記本体は、
第1方向に直交する前記本体の幅方向の両端のそれぞれに形成され、幅方向に対し垂直な面に貫通する連結孔が形成された横フランジ部を備え、
第1方向に垂直な断面において、前記本体の断面の中立軸が幅方向に平行であるときの前記本体の断面係数Zと、前記本体の幅方向に垂直な断面において、前記縦フランジ部の断面の中立軸が前記本体の厚さ方向に平行であるときの断面係数Zとを規定し、前記縦フランジ部に締結されるボルトの支圧面積比に基づく係数をK、前記縦フランジ部に設置されるボルト設置数に応じて決まる係数をα、としたときに、
前記断面係数Zは、
2Z×K×α>Z ・・・ (1)
の関係を満たす、土留部材。
【請求項2】
前記本体は、
2つの前記横フランジ部の間に、板を波形に加工して形成された波加工部を備え、
前記波加工部は、
前記土留ユニットの内側に向かって突出して形成されている凸部と、
前記凸部及び前記横フランジ部を接続する第1外側壁部と、を備える、請求項1に記載の土留部材。
【請求項3】
前記本体は、
2つの前記横フランジ部の間に、板を波形に加工して形成された波加工部を備え、
前記波加工部は、
前記第1方向に垂直な断面においてサインカーブ形状の波形を有する、請求項1に記載の土留部材。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の土留部材の前記縦フランジ部同士を前記ボルトにより連結して形成された前記土留ユニットを備える、土留構造。
【請求項5】
前記土留ユニットは、
複数の土留ユニットを含み、
前記複数の土留ユニットは、
前記土留部材の前記横フランジ部同士を連結して形成される、請求項4に記載の土留構造。
【請求項6】
前記複数の土留ユニットのそれぞれは
前記縦フランジ部を前記ボルトにより連結した軸方向連結部を備え、
前記複数の土留ユニットのうち隣り合って配置されている2つの土留ユニットは、
前記軸方向連結部が前記土留部材の前記本体の幅方向に並んで配置されている、請求項5に記載の土留構造。
【請求項7】
前記縦フランジ部を連結する前記ボルトは、
M16以上の六角ボルトであり、
前記係数Kは、
M16の六角ボルトの支圧面積A1を基準として、前記ボルトの支圧面積をA2としたときに、K=A2/A1で規定される、請求項4~6の何れか1項に記載の土留構造。
【請求項8】
前記係数αは、
2つの前記縦フランジ部を連結する前記ボルトの数量をJとしたときに、α=2Jで規定される、請求項4~7の何れか1項に記載の土留構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に構築される土留構造を構成する土留部材の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の基礎を構築するための立坑、地中に構築される集水井、斜面の擁壁などの土木構造物は、土留部材を接続して環状又は馬蹄形(U字形、コの字形)に壁を形成して構成される。
【0003】
このような土留構造は、土留部材がそれぞれ軽量であり、山間部等の大型の重機が使用できない現場においても、人力での施工が容易であるという利点がある。例えば、立坑を構築するにあたっては、作業者が立坑の中に入り土留部材を連結する作業を行うことができる。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されている土留構造は、複数の土留部材を組み合わせて環状体を形成し、その環状体を当該環状体の中心軸方向に複数接続して構成されている。そして、複数の土留部材がそれぞれ千鳥状に配置されることにより、土留構造全体の強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-193741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、例えばライナープレートなどの土留部材を用いた土留構造は、土留部材の取り扱い易さから、小規模の基礎、鉄道に設けられたハンドホール又はマンホールを形成する場合に用いられることがある。この場合、土留構造は、複数の土留部材を接続して形成された1段の環状体から形成される。複数の土留部材を周方向にのみ接続して形成された構造の土留構造は、土留部材同士を例えばボルトなどの連結部材により接続しただけの構造であり、土圧等により外側から荷重を受けた際に、環状体の上下には荷重を支持する部材が無いため、各土留部材の端部の縦フランジ部から変形を生じてしまうという課題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示されている土留構造は、環状体を当該環状体の中心軸方向に複数接続して構成されている。そして、環状体を構成する土留部材の周方向の端部に配置されている縦フランジ部を周方向にずらし、ライナープレートの縦フランジ部が当該環状体の中心軸方向に並ぶことが無いようにしている。しかし、土留構造が配置される立坑の大きさによっては、環状体を構成する土留部材の周方向長さ寸法の都合上、縦フランジ部が土留構造の中心軸方向に並んでしまう場合又は中心軸方向に並んでいなくとも近くに配置されてしまう場合があり、そのような部位では土留構造の強度が部分的に低下してしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するものであり、土留構造の周方向を連結する連結部の強度を確保できる土留部材及び土留構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る土留部材は、第1方向に複数連結して土留ユニットを形成する土留部材であって、第1方向に垂直な断面形状が波形に加工された本体と、前記本体の第1方向の両端に設置された平板状の縦フランジ部と、を備え、前記縦フランジ部同士をボルトで連結して土留構造を形成する土留部材であって、前記本体は、第1方向に直交する前記本体の幅方向の両端のそれぞれに形成され、幅方向に対し垂直な面に貫通する連結孔が形成された横フランジ部を備え、第1方向に垂直な断面において、前記本体の断面の中立軸が幅方向に平行であるときの前記本体の断面係数Zと、前記本体の幅方向に垂直な断面において、前記縦フランジ部の断面の中立軸が前記本体の厚さ方向に平行であるときの断面係数Zとを規定し、前記縦フランジ部に締結されるボルトの支圧面積比に基づく係数をK、前記縦フランジ部に設置されるボルト設置数に応じて決まる係数をα、としたときに、
前記断面係数Zは、
2Z×K×α>Z ・・・ (1)
の関係を満たす。
【0010】
また、本発明に係る土留構造は、上記の土留部材の前記縦フランジ部同士を前記ボルトにより連結して形成された前記土留ユニットを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、土留部材の縦フランジ部の厚さを本体の断面形状の断面係数に応じて設定することにより、ボルト接続した際に軸方向接続部の強度を本体と同程度に確保できる。よって、土留部材を用いて形成された土留構造は、土留部材の配置による部分的な強度の低下を抑えることができ、設置の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る土留構造100の斜視図である。
図2】実施の形態1に係る土留部材10の断面図である。
図3】実施の形態1に係る土留部材10の断面図である。
図4図3の土留部材10の斜視図である。
図5】実施の形態1に係る土留構造100の角部材30の斜視図である。
図6】実施の形態1に係る土留構造100の角部材30の斜視図である。
図7】実施の形態1に係る角部材30の補強部材32の溶接部36の配置図である。
図8】実施の形態1に係る土留構造100の軸方向連結部11の強度を評価する試験を説明する模式図である。
図9】実施の形態1に係る土留構造100の土留部材10の強度を評価する試験の模式図である。
図10図8及び図9に示す試験体の荷重Fと変形量の関係を示した図である。
図11】実施の形態1に係る角部材30の補強部材32及び補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。
図12】実施の形態1に係る角部材30の補強部材32及び補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。
図13】実施の形態2に係る土留構造200の斜視図である。
図14】実施の形態2に係る土留構造200の角部材230の変形例の正面図である。
図15】実施の形態2に係る土留構造200の底面図である。
図16】実施の形態1に係る角部材30の変形例の断面図である。
図17】実施の形態1に係る土留構造100の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態に係る土留構造100について図面等を参照しながら説明する。なお、図1を含む以下の図面では、各構成部材の相対的な寸法の関係及び形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。また、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば、上、下、左、右、前、後、表及び裏等)を適宜用いるが、それらの表記は、説明の便宜上の記載であり、装置、器具、あるいは部品等の配置、方向及び向きを限定するものではない。
【0014】
実施の形態1.
[土留構造100]
図1は、実施の形態1に係る土留構造100の斜視図である。土留構造100は、例えば構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物であって、地盤92を掘削して形成された縦穴の内部に構築されるものである。図1に示されている土留構造100は、一例として、比較的小規模の基礎を地盤92に形成するための構造物であって、平面視において、複数の土留部材10を角部材30により矩形に接続して形成された一段の土留ユニット50から構成される。以下の説明において、土留構造100の外側を地盤92、内側を空間部93と呼ぶ。なお、実施の形態1において、土留構造100は、地盤92に対し垂直方向、即ちz方向の視点において、矩形であるが、矩形に限定するものではない。土留構造100は、例えば、平面視において、円形、長円形、楕円形、矩形、小判形の環状に形成してもよい。また、土留構造100は、平面視において円弧形、馬蹄形又はコ字形などの半環状体に形成することもできる。土留ユニット50が半環状体である場合は、土留ユニット50の中心軸Cは、平面視したときの土留ユニット50の重心を通り、土留ユニット50が設置された地盤92に垂直方向に延びる軸である。なお、図に示すx及びy方向は、土留構造100が設置される地盤92の表面に沿った方向であり、z方向は立坑の深さ方向であり、土留構造の高さ方向である。実施の形態1において、土留構造100は、1段の土留ユニット50により形成されているが、土留ユニット50を高さ方向に積み上げて接続して形成されていても良い。
【0015】
図1に示される土留ユニット50は、例えば駅のプラットフォームを支える基礎などの比較的小規模の基礎を設置する場合に、地盤92を略矩形に掘削して形成された立坑の掘削壁面95(図3参照)に沿って設置される。この場合、小規模の基礎の場合、立坑の深さは、比較的浅く、土留部材10がz方向に1段のみ配置できる程度である。そのため、土留ユニット50は、その周方向に複数の土留部材10を、ボルト及びナットなどの連結部材40を用いて連結して形成されている。また、図1の土留構造100は、矩形の各辺が短いため、各辺に土留部材10が2つずつ配置され、それらの複数の土留部材10を角部材30で連結している。なお、土留ユニット50は、各辺に土留部材10が2つずつ配置されたものに限定されず、各辺に1つの土留部材10が配置されていても良いし、各辺に2つ以上の土留部材10を有するものや、角部材30のみで構成されるものであってもよい。
【0016】
角部材30は、両端に土留部材10が連結する様に構成されたものであり、交差する方向に向けて配置された2つの土留部材10を接続するものである。ここで、環状体である土留ユニット50において複数の土留部材10が接続されている方向を第1方向と称する。第1方向は、土留ユニット50の中心軸C周りの周方向であり、図1の土留ユニット50であれば、矩形の各辺に沿った方向である。
【0017】
土留ユニット50は、土留部材10と角部材30とが連結される軸方向連結部11を有する。また、軸方向連結部11は、土留部材10同士も連結する。
【0018】
[土留部材10]
図2及び図3は、実施の形態1に係る土留部材10の断面図である。図2及び図3は、土留ユニット50の周方向である第1方向に対し垂直な断面を示しており、図1に示されている土留構造100の土留ユニット50の中心軸に沿った断面(xz断面又はyz断面)の一例を示している。図2に示されている土留部材10の本体14は、第1方向に垂直な断面においてサインカーブ形状の波形が付されている。また、図3に示されている土留部材10の本体14は、断面において角が丸められた矩形波状になっており、土留構造100の外側及び内側に互いに平行な面が形成されている。図1に示されている土留構造100は、一例として図3に示されている本体14の断面形状を備える土留部材10及び角部材30により構成されたものであるが、本体14の断面形状は他の波形状に変更することができる。
【0019】
図2及び図3に示されている土留部材10は、それぞれ断面形状が異なり本体14の波形状が異なるが、z方向の両端部に横フランジ部13が形成されており、z方向に他の土留部材10が接続可能な構造となっている。横フランジ部13は、連結部材40を適用する連結孔13aが形成されている。連結孔13aは、横フランジ部13に複数形成されており、第1方向に等間隔に並べられている。また、2つの横フランジ部13の間には波加工部が形成されている。なお、横フランジ部13に設けられたz方向に貫通する連結孔13aを第2連結孔13aと呼ぶ場合がある。
【0020】
図2に示される土留部材10の本体14は、サインカーブ形状の波形が付されており、地盤92からの土圧による荷重に対抗することができる。本体14は、波形が付されていることにより、単純な平板状の断面形状に形成されるよりも土留部材10の厚さ方向に掛かる荷重に対する強度及び剛性が高い。
【0021】
図3に示されている土留部材10の台形波形状に形成されている本体14は、図3の断面において、土留ユニット50の内側に突出して位置する凸部16と、土留ユニット50の外側に突出して位置する外側壁部17及び18と、を備える。凸部16と横フランジ部13とを接続する外側壁部18を第1外側壁部18と称し、隣り合う2つの凸部16を接続する外側壁部17を第2外側壁部17と称する。実施の形態1に係る土留部材10の本体14の断面形状において、凸部16は複数設けられているが、1つであっても良い。例えば図3において凸部16は、2箇所設けられているが、z方向の中央部に1つだけ配置されていても良い。
【0022】
凸部16は、断面において横フランジ部13の面に直交する面を備える内側壁部16aを備える。内側壁部16aと外側壁部17及び18とは、実質的に平行に形成されている。内側壁部16aと外側壁部17及び18との間は、ウェブ部15により接続されている。ウェブ部15は、図3の断面においてy(x)方向に延びる面を有し、y(x)方向に対し若干傾斜している。ウェブ部15の傾斜方向は、本体14を土留ユニット50の中心軸Cから見た時に、波形状の谷の部分の開放端が広く、谷底が狭くなる様になっている。このように構成されることにより、本体14は波付けのための塑性加工を行う際に、離型しやすく製造が容易になる。
【0023】
また、ウェブ部15は、図3のy(x)軸に平行に近い角度で成形されることにより、内側壁部16a、外側壁部17及び18のz方向の幅が広くなる。これにより、土留部材10は、厚さ方向に曲げモーメントが負荷されたときの剛性が高くなる。例えば、図2に示される土留部材10よりも図3に示される土留部材10は、y(x)方向の寸法が大きくy(x)方向に掛かる荷重に対し剛性が高い。図1の土留構造100の土留部材10が本体14の面方向、つまりy(x)方向に荷重を受けた場合に、土留部材10はy(x)方向に曲げモーメントが負荷される。このとき、土留部材10の曲げの中立軸Nについての断面係数は、中立軸Nから遠い内側壁部16a、外側壁部17及び18の幅が広い方が大きくなる。よって、ウェブ部15がy(x)軸に平行に近い角度で構成されることにより、内側壁部16a、外側壁部17及び18のz方向の幅寸法が広くなり、土留部材10は、y(x)方向の曲げ荷重に対する強度及び剛性が高くなる。具体的には、ウェブ部15は、内側壁部16a又は外側壁部17及び18に垂直な方向に対し、0°以上20°以下に設定され、さらに望ましくは0°以上3°以下に設定される。
【0024】
なお、図3の、内側壁部16a、外側壁部17及び18は、ウェブ部15と同じ板厚で形成されているが、板厚をウェブ部15よりも厚くしても良い。このように構成されることにより、中立軸Nから遠い内側壁部16a、外側壁部17及び18の断面積が大きくなり、土留部材10は、断面係数をさらに高くすることができる。
【0025】
図2及び図3に示されている土留部材10のz方向の両端部は、横フランジ部13が形成されている。横フランジ部13は、z方向に対し垂直に形成され、平坦な部分に連結孔13aが設けられている。横フランジ部13は、x方向及びy方向に平行であり連結部材40が取り付けられる程度の面を有している。
【0026】
図4は、図3の土留部材10の斜視図である。土留部材10は、土留ユニット50の周方向である第1方向の両端に縦フランジ部19を備える。縦フランジ部19は、板状部材であり本体14の第1方向の端面に溶接により接合されている。縦フランジ部19のz方向の長さは、本体14の幅方向、即ちz方向の長さと実質的に同じである。縦フランジ部19は、板面を貫通する連結孔19aを備える。なお、縦フランジ部19に第1方向(x(y)方向)に貫通して設けられた連結孔19aを第1連結孔19aと呼ぶ場合がある。図1に示されるように、連結孔19aは土留部材10と他の土留部材10又は角部材30とを土留ユニット50の周方向に連結する際にボルト及びナットなどの連結部材40を通すための孔である。
【0027】
連結孔19aは、本体14の波形状に対応して設置されており、具体的には、本体14の外側壁部17及び18のそれぞれのy(x)方向に並べて配置されている。また、連結孔19aは、外側壁部17及び18よりも土留ユニット50の内側に配置されている。このように構成されることにより、作業者は、土留構造100が設置される立坑の内側から土留部材10の連結作業が可能となる。
【0028】
なお、縦フランジ部19の構造は、本体14の断面形状が図2に示すサインカーブ形状であっても同様である。つまり、図2に示す断面形状を有する土留部材10であれば、土留部材10を土留ユニット50の内側から見たときの谷部である外側壁部17b及び18に対応した位置に連結孔19aが配置される。図2に示す断面形状を有する土留部材10の場合は、連結孔19aは、縦フランジ部19に4つ配置される。また、図3に示す断面形状を有する土留部材10であれば連結孔19aは、縦フランジ部19に3つ配置される。
【0029】
[角部材30]
図5及び図6は、実施の形態1に係る土留構造100の角部材30の斜視図である。角部材30は、z方向から見たときにL字形のアングル部材31と、土留部材10の本体14と同じ構造の本体14と、本体14の第1方向(周方向)の端面に接合された縦フランジ部19と、を備える。2つの本体14は、アングル部材31の両端に接合され、互いに直交する方向に配置されている。角部材30は、縦フランジ部19に土留部材10が連結され、土留構造100の角部を形成するものである。実施の形態1において、角部材30は、2つの土留部材10を直交するように接続するが、直角以外の角度で接続しても良い。
【0030】
角部材30の本体14は、第1方向の長さ以外は土留部材10の本体14と同じ形状になっており、図2に示すサインカーブ形状の波形に形成されても良い。本体14の長さは、適宜変更することができる。
【0031】
アングル部材31は、z方向から見たときにL字形に形成されており、平板部33を直交して接続した形状になっている。平板部33は、板状であり、長手方向がz方向に延びている。平板部33には本体14の一方の端面が溶接等により接合されている。アングル部材31の2つの平板部33の先端部35は、補強部材32が接合されている。補強部材32は、板状部材であり、図5及び図6に示すように、長手方向がz方向に延びている。補強部材32は、アングル部材31の先端部35同士を接続するように配置されることにより、平板部33の先端部35同士が開く方向に変形するのを抑制する部材である。
【0032】
図7は、実施の形態1に係る角部材30の補強部材32の溶接部36の配置図である。補強部材32は、2つの平板部33の先端部35に溶接されている。溶接部36は、複数の溶接部36a、36b及び36cを含む。補強部材32の溶接部36は、複数に分割されて配置されていることにより、溶接による製造コストを低減するとともに、溶接による変形を抑えることができる。また、アングル部材31の平板部33は、平板部33に接合されている本体14が受ける荷重が伝達され、2つの平板部33が開くように変形する。補強部材32の溶接部36は、2つの平板部33の先端部35が引っ張られて開くように変形する箇所に設けられていれば良い。本体14が地盤92から荷重を受けたときに、本体14の外側壁部17及び18は、アングル部材31の平板部33の先端部35に接合されているため、アングル部材31の先端部35を引っ張り、2つの先端部35が開くように変形させる。そのため、溶接部36は、図7に示すように、z方向における位置を本体14の外側壁部17及び18に対応する位置に配置される。具体的には、溶接部36a及び36cは、土留ユニット50の周方向、即ち第1方向において外側壁部18に少なくとも一部が並列するように配置されている。また、溶接部36bは、環状体である土留ユニット50の周方向、即ち第1方向において外側壁部17に少なくとも一部が並列するように配置されている。
【0033】
換言すると、溶接部36aは、z方向において、図3に示す領域a1に少なくとも部分的に重なるように位置する。望ましくは、溶接部36aは、図3の領域aa1に重なるように位置すると良い。また、溶接部36bは、z方向において、図3に示す領域a2に少なくとも部分的に重なるように位置する。望ましくは、溶接部36bは、図3の領域aa2に重なるように位置すると良い。溶接部36cは、z方向において、図3に示す領域a3に少なくとも部分的に重なるように位置する。望ましくは、溶接部36cは、図3の領域aa3に重なるように位置すると良い。
【0034】
溶接部36aは、図3に示す領域a1を全て含むように配置することもできるが、少なくとも領域a1に部分的に重なるよう配置されていれば、外側壁部18からの荷重を溶接部36aを介して補強部材32に伝達することができる。溶接部36bと領域a2、溶接部36cと領域a3も、溶接部36aと領域a1の関係と同様に配置される。なお、溶接部36は、領域Bに重なっても良いが、領域Bに相当する部分は補強部材32は溶接されていなくともよい。なお、図2及び図3に示す領域a1~a4、aa1~aa4を総称して領域Aと称する場合がある。z方向における溶接部36は、z方向、即ちアングル部材31の高さ方向(z方向)において、領域Aに少なくとも一部が配置される。領域Aは、本体14の波形のうち、土留部材の波形の中立線よりもアングル部材の板状部の自由端が位置する側に突出した部分が、2つの土留部材のそれぞれの第1方向に対し垂直である高さ方向において位置する範囲である。
【0035】
[縦フランジ部19]
実施の形態1に係る土留部材10の縦フランジ部19は、本体14の第1方向(x(y)方向)に垂直な断面において、本体14の断面の中立軸Nが幅方向(z方向)に平行であるときの本体14の断面係数Zに応じて厚さhが決定されている。土留構造100は、地盤92に形成された立坑に設置され、地盤92の土圧を受けるため、土留構造100の外側から内側に向かって荷重を受ける。このとき、土留部材10は、図2及び図3に示すy(x)方向逆向きの荷重を受ける。荷重は、本体14に掛かり、本体14を第1方向(図2及び図3のx(y)方向)を長手方向として曲げモーメントを発生させるだけでなく、2つの土留部材10の縦フランジ部19を接続して形成された軸方向連結部11が開くように変形する場合がある。
【0036】
図8は、実施の形態1に係る土留構造100の軸方向連結部11の強度を評価する試験を説明する模式図である。図9は、実施の形態1に係る土留構造100の土留部材10の強度を評価する試験の模式図である。土留構造100は、周囲の地盤92から荷重を受けるため、図8及び図9に示すy(x)方向からの荷重Fを地盤92からの荷重と想定して軸方向連結部11及び土留部材10の強度を評価する。縦フランジ部19の厚さhが比較的薄い場合は、本体14の強度と比較して軸方向連結部11の強度が弱い。そのため、従来の土留構造100は、土留部材10を千鳥配置にして、軸方向連結部11が分散して配置されるように設計される。一方、実施の形態1に係る土留構造100においては、土留部材10の縦フランジ部19の厚さhを本体14の断面係数Zに応じて設定するため、軸方向連結部11の強度が本体14の強度と同等になっている。
【0037】
具体的には、図8に示すように縦フランジ部19の厚さhに垂直方向の中立軸nを規定したときの縦フランジ部19の断面係数をZとし、連結部材40であるボルトの支圧面積比をKとし、係数をαとすると
2Z×K×α>Z ・・・ (1)
の関係を満たすように縦フランジ部19の厚さhが設定される。なお、係数αは、縦フランジ部19に設置されるボルトの本数をJとしたときに、α=2Jである。また、連結部材40の支圧面積比Kは、土留構造100において標準的に使用されるM16の支圧面積を1としたときの面積比である。
【0038】
図8において縦フランジ部19のy(x)方向の寸法を幅b、x(y)方向の寸法を厚さhとしたときに、縦フランジ部19の断面係数Zは、
=bh/6 ・・・ (2)
で表される。
【0039】
図8に示す試験においては、試験体100Aは、軸方向連結部11を中央に配置し、LSの間隔で支点Sが配置されている。そして、軸方向連結部11を中央にして対称な位置に荷重Fが負荷される。2か所に負荷された荷重Fは、間隔LFをおいて分けて負荷される。このとき、荷重Fを大きくすると、試験体100Aの軸方向連結部11が矢印p方向に開くように変形し、試験体100Aは、x(y)方向に曲がる。
【0040】
図9に示す試験においては、試験体100Bは、土留部材10を第1方向(x(y)方向)の中央を、支点Sの間隔LSの中央に配置している。そして、土留部材10の中央を挟んで対称な位置に荷重Fが負荷される。2か所に負荷された荷重Fは、軸方向連結部11の評価と同様に間隔LFをおいて位置する。このとき、荷重Fを大きくすると試験体100Bの土留部材10は、y(x)方向に曲がる。
【0041】
図10は、図8及び図9に示す試験体の荷重Fと変形量の関係を示した図である。図10に示すケース1は、図9に示す試験体100Bの荷重Fと変形量の関係を示している。ケース1は、試験体100Bの本体14の断面形状が図3に示す形状になっている。図3に示す断面形状の土留部材10は、板厚t=3.2mm、z方向の幅W=500mm、y(x)方向の厚さ寸法Hが100mmに設定されている。以上のような寸法に設定された試験体100Bに荷重Fを負荷し、降伏したときの荷重を強度基準Pとしている。図10のケース1の曲線の比例部分の端の点における荷重Fが図9に示す試験体100Bの降伏点であり、すなわち強度基準Pは、図3に示す断面形状の土留部材10の本体14の強度を示している。よって、図9に示す試験において軸方向連結部11の強度が強度基準Pを超えるように設定すれば、土留構造100は、軸方向連結部11の配置にかかわらず、各部位で土留部材10の本体14の強度以上が確保できる。
【0042】
図10に示すケース2は、縦フランジ部19の厚さをh=16mm、幅をb=100mmに設定された試験体100Aにおいて、連結部材40をM20の六角ボルト(JIS B 1180 附属書 JA)を用いて2つの縦フランジ部19を連結したものである。なお、ケース2における試験体100Aは、本体14の断面形状が図3に示す矩形の波形形状であり、板厚t=3.2mmである。このとき、試験体100Aは、降伏点が強度基準Pを超えている。
【0043】
このとき、縦フランジ部19の断面係数Zは上記式(2)より4267[mm]である。また、図3に示す本体14の断面係数Zは76460[mm]である。そして、連結部材40として使用されるM20の六角ボルトのM16の六角ボルトに対する支圧面積比Kは、1.55であり、縦フランジ部19を連結する六角ボルトの本数は3本であるため、係数α=6である(後述の表1を参照)。よって、これらを上記式(1)に当てはめると2Z×K×α=2×4267×1.55×6=79366(小数点以下四捨五入)>Z=76460となり、上記式(1)を満たす。
【0044】
また、図10に示すケース2の試験体100Aの縦フランジ部19の厚さhをh=19mmに変更した場合、縦フランジ部19の断面係数Zは上記式(2)より6017[mm]となる(小数点以下四捨五入。後述する表1の試験体4に相当する)。連結部材40として使用される六角ボルトは、M18でも上記式(1)の関係を満たす。M18の六角ボルトのM16の六角ボルトに対する支圧面積比Kは、1.21である。よって、これらを上記式(1)に当てはめると2Z×K×α=2×6017×1.21×6=87367(小数点以下四捨五入)>Z=76460となり、上記式(1)を満たす。このような仕様の試験体100Aを用いて図8に示す試験を実施しても、降伏点は強度基準Pを超える。
【0045】
図10に示すケース3の試験体100Aは、比較例であり、縦フランジ部19の厚さhをh=4mmに設定したものである(後述する表1の試験体1に相当する)。なお、ケース3における試験体100Aは、本体14の断面形状が図3に示す矩形の波形形状であり、板厚t=3.2mmである。このとき、縦フランジ部19の断面係数Zは上記式(2)より267[mm]である。このケース3の試験体100AにM16の六角ボルトを適用した場合、2Z×K×α=2×267×1×6=3204<Z=76460となり、上記式(1)を満たさない。ケース3の試験体100Aは、図10のケース3の曲線に示すように強度基準Pを超えることなく降伏し変形する。なお、ケース3の試験体100Aのボルトを例えばM20に変更しても、2Z×K×α=4966(小数点以下四捨五入)<Zであるため、上記式(1)を満たさない。そのため、例えば図1に示す土留構造100において地盤92から荷重を受けた場合、土留構造100は、軸方向連結部11から変形を生じるため、軸方向連結部11を補強する必要がある。また、土留構造100が軸方向に複数の土留ユニット50を連結して形成される場合は、隣り合う土留ユニット50の軸方向連結部11が軸方向に一直線に並んで配置されないようにする必要がある。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1は、本体の断面形状、縦フランジ部の寸法及び締結するボルトの仕様の異なる試験体を図8に示す試験を実施した結果をまとめた表である。表1の一番下の欄は、各試験体で図8に示す試験を実施したときの実験結果を示すものであり、同じ断面形状を有する本体4の試験体において図9の試験を実施したときの降伏点を超えるか否かを判定したものである。その降伏点を超えた試験体を「○」で示している。
【0048】
例えば、表1に示す試験体2は、図10のケース2の試験体3に対し縦フランジ部19を締結するボルトを変更したものである。試験体2は、M16のボルトにより縦フランジ部19を締結している。このような仕様の試験体100Aを用いて図8に示す試験を実施した場合、降伏点は強度基準Pを超えない。つまり、試験体2の縦フランジ部19により構成された軸方向連結部11は、図9に示す試験における本体14よりも強度が低い。そのため、試験体2に相当する軸方向連結部11を有する土留構造100は、外部からの土圧などの荷重を受けたときに軸方向連結部11から変形し易い。よって、土留構造100は、軸方向連結部11を補強するか、土留部材10を必ず千鳥配置にすることを要する。
【0049】
一方、実施の形態1に係る土留構造100の土留部材10のように、縦フランジ部19の厚さhを上記式(1)を満たすように設定することにより、軸方向連結部11は、土留部材10の本体14と同等以上の強度を確保することができる。
【0050】
実施の形態1に係る土留構造100の土留部材10は、図2及び図3の断面形状において板厚2.7~7.0mmの一般構造用圧延鋼板が用いられ、連結部材40としてのボルトはM16~M24が用いられる。例えば、表1に示す厚さhが22mmの縦フランジ部19を有する土留部材10においては(表1の試験体5)、M16のボルトでも本体14と同等以上の軸方向連結部11の強度を確保できる。
【0051】
また、実施の形態1に係る土留構造100の土留部材10の断面形状が図2に示すものであった場合の試験体の試験結果を表1の試験体6及び試験体7に示す。表1の試験体6は、土留部材10の断面形状が図2に示すようなサインカーブ形状の波形が付されており、縦フランジ部19の厚さhが3.2mmであり、縦フランジ部19をM16のボルトで4箇所締結したものである。つまり、試験体6においては、M16のボルトがa1、a2、a3及びa4の区間にそれぞれ配置されて縦フランジ部19同士を連結している。なお、試験体6及び7は、本体14の断面において板厚t=2.7mmである。
【0052】
試験体6においては、2Z×K×α=1360<23000となり、上記式(1)の関係を満たさない。試験体6による図8に示す試験を実施した結果は、図3に示される断面形状の土留部材10により図9の試験を行ったときの降伏点を超えないため、「×」となっている。このため、試験体6の土留部材10及び軸方向連結部11により構成された土留構造100は、外部からの土圧などの荷重を受けたときに軸方向連結部11から変形し易い。一方、試験体7においては、縦フランジ部19の厚さhを12mmに設定し、ボルトをM18にすることにより、2Z×K×α=23232>23000となり、上記式(1)の関係を満たす。試験体7による図8に示す試験を実施した結果は、図3に示される断面形状の土留部材10により図9の試験を行ったときの降伏点を超える。従って、試験体7の土留部材10及び軸方向連結部11により構成された土留構造100は、外部からの土圧などの荷重を受けたときに軸方向連結部11が土留部材10の本体14と同等の強度を確保できる。
【0053】
以上の様に、上記式(1)の関係は、断面形状の異なる土留部材10においても成立するものである。なお、本体14の断面形状の板厚tは、通常2.7mm以上7.0mm以下の範囲に設定されるが、7.0mmよりも大きく設定されていても良い。また、実施の形態1に係る本体14の断面形状は、z方向の幅W=500mmであって、図2に示す様にボルトを配置できる箇所が4箇所である場合、図3に示す様にボルトを配置できる箇所が3箇所である場合が示されているが、波形形状に応じてボルトを配置できる箇所が、例えば2箇所であっても良い。また、縦フランジ部19を連結するボルトは、土留部材10の本体14の波形形状が外側に突出している部分にそれぞれ設置されていることが望ましい。また、実施の形態1においては、本体14の断面形状は、z方向の幅Wを変更し、例えばW=750mm、1000mmに設定することもできる。幅W及び板厚tを変更した場合においても、上記式(1)を満たす様に縦フランジ部19の寸法を設定することにより、軸方向連結部11が土留部材10の本体14と同等の強度を確保できる。
【0054】
また、実施の形態1に係る土留構造100は、角部材30も縦フランジ部19を備えており、その縦フランジ部19に土留部材10の縦フランジ部19を連結して形成されている。実施の形態1に係る土留構造100の角部材30と土留部材10とを接続して形成されている軸方向連結部11も、上記式(1)及び(2)の関係を満たすように縦フランジ部19の寸法を設定することにより、図10に示すケース2の試験体100Aと同様に降伏点が基準強度Pを超えるように、強度を確保できる。よって、土留構造100は、角部材30と土留部材10との軸方向連結部11においても、土留部材10の本体14と同等以上の強度を確保できる。よって、図1に示すような土留構造100の場合、土留ユニット50は、何れの位置においても必要な強度が確保できる。
【0055】
図17は、実施の形態1に係る土留構造100の一例である。図17(a)は、平面図、図17(b)は、中央断面図を示している。実施の形態1に係る土留構造100を構成する土留部材10は、縦フランジ部19の厚さが上記式(1)を満たす様に構成されているため、土留構造100の外側から土圧などの荷重が加わったときに、軸方向連結部11が本体14と同等の強度を有する。したがって、土留構造100は、軸方向に土留ユニット50を積み重ねたときに、軸方向連結部11が軸方向に連なっていても十分な強度が確保されている。図17(b)に示されている軸方向連結部11は、全て軸方向に連なるように配置されているが、これは一例であり、土留構造100は、部分的に軸方向連結部11が軸方向に連なっている箇所が形成されていても良い。
【0056】
[変形例]
図11は、実施の形態1に係る角部材30の補強部材32及び補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。変形例に係る角部材30Aは、図7に示す角部材30の補強部材32Aのz方向の両端を、アングル部材31のz方向の長さよりも短くなるようにしたものである。補強部材32Aは、両端部がアングル部材31よりも短くなっているが、溶接部36がz方向において占める範囲としては、溶接部36a~36cの少なくとも一部が領域Aに位置するように配置されているため、図7に示す角部材30とほぼ同等の強度を有する。図11の角部材30Aによれば、補強部材32Aを小さくできるため、重量を低減でき、使用する材料も削減できる。
【0057】
図12は、実施の形態1に係る角部材30の補強部材32及び補強部材32の溶接部36の配置の変形例の説明図である。図12に示される角部材30Bは、補強部材32が複数の補強部材32a~32cに分割されており、それぞれに溶接部36a~36cが配置されている。複数の補強部材32a~32cは、板面をアングル部材31の平板部33の接続部に向けている。つまり、補強部材32a~32cのそれぞれは、板面がz方向に沿うように配置されている。このように構成されることにより、補強部材32a~32cは、さらに材料の使用量を削減でき、軽量化でき、効率よく角部材30の強度を向上できる。
【0058】
角部材30Bは、z方向において3箇所に補強部材32a~32c及び溶接部36a~36cが配置されているが、配置される数量は限定されない。例えば、本体14の断面形状が図2のようにサインカーブ状で、第1方向に垂直な断面形状において中立軸Nよりもy(x)側に突出している部分が4箇所あるような場合は、補強部材32又は溶接部36は、領域a1~a4に合わせて4箇所配置されていても良い。また、例えば、本体14の断面形状において中立軸Nよりもy(x)側に突出している部分が2箇所である場合には、その突出している部分に対応して2箇所に補強部材32又は溶接部36を配置しても良い。なお、補強部材32又は溶接部36は、本体14の断面形状において中立軸Nよりもy(x)側に突出している部分の数に一致している必要はなく、領域Aに強度を確保する上で必要な数量だけ設置すれば良い。
【0059】
なお、土留構造100は、例えば、平面視において、円形、長円形、楕円形、矩形、小判形の環状に形成してもよい。また、土留構造100は、平面視において円弧形、馬蹄形又はコ字形などの半環状体に形成することもできる。実施の形態1において説明した土留構造100は、角部を備えるが、円形などの角部を備えない形状の場合には、角部材30を用いることなく土留部材10を連結して形成されるが、上記式(1)及び(2)を満たすように縦フランジ部19を設定することにより軸方向連結部11の強度を確保できる。
【0060】
図16は、実施の形態1に係る角部材30の変形例の断面図である。図16は、z方向に垂直な断面を示している。実施の形態1においては、角部材30はL字形のアングル部材31の2つの平板部33に本体14を接合して構成されているが、角部材30は、アングル部材31を断面矩形の鋼管131に置換している。そして、角部材30は断面矩形の鋼管131の隣合う2つの面に本体14をそれぞれ接合して構成されている。
【0061】
つまり、断面形状が矩形の鋼管131は、隣り合う2つの平板部33に断面形状が波形の本体14が溶接されて接合されており、2つの平板部33の先端部35にさらに平板部134が接合され、管状に形成されている。鋼管131の内部には、先端部35同士をつなぐ対角線上に補強部材32が配置されていても良い。補強部材32は、鋼管131の内部に固定されている。補強部材32は、先端部35同士をつなぐ対角線上に配置されることにより、特に先端部35が近づく方向の変形を抑えることができる。また、補強部材32は、鋼管131の内部に部分的に溶接されて固定されることにより、先端部35同士が離れる方向の変形を抑えることもできる。
【0062】
また、角部材30の変形例として、補強部材32の代わりに鋼管131の内部38にコンクリートなどの充填材を充填しても良い。鋼管131の内部38にコンクリートを充填することにより、鋼管131の変形を抑えることができるため、補強部材32が無くても鋼管131を強化できる。なお、鋼管131は、断面形状が矩形であるため、補強部材32及び充填材がなくとも比較的強度が高いため、そのまま補強せずに角部材30として用いることもできる。
【0063】
また、図11図12及び図16に示される角部材30A及び30Bも、図17に示す土留構造100に適用できる。この場合、角部材30Aと土留部材10とが連結される縦フランジ部19を上記の式(1)を満たす様にすれば、軸方向連結部11の強度を確保できる。したがって、図17の軸方向連結部11のように軸方向連結部11を土留構造100の軸方向に連続して配置しても、土留構造100は、部分的に強度が低下するようなことがない。
【0064】
実施の形態2.
実施の形態2に係る土留構造200について説明する。土留構造200は、実施の形態1に係る土留構造100を構成する角部材30の構成を変更したものである。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0065】
図13は、実施の形態2に係る土留構造200の斜視図である。土留構造200は、矩形に構成されており土留部材10を各辺に一つずつ配置し、それらを角部材230で接続したものである。土留部材10は、実施の形態1と同様に上記式(1)及び(2)の関係を満たすように縦フランジ部19の寸法が設定されている。
【0066】
[角部材230]
実施の形態2に係る角部材230は、z方向から見たときにL字形のアングル部材231を備える。アングル部材231は、2つの平板部233を接続した形状で構成され、2つの平板部233が直交する位置関係で配置されている。平板部233の長手方向は、z方向に延びている。平板部233には連結孔239が設けられており、土留部材10の縦フランジ部19を連結できるように構成されている。
【0067】
角部材230は、アングル部材231の2つの平板部233の間に配置され溶接により接合された補強部材232を備える。補強部材232は、アングル部材231の断面形状に合わせてL字の内側に形状を合わせており、面をz方向に垂直に向けた板状体である。補強部材232は、平面視で、例えば三角形状若しくは略三角形状を有している。補強部材232は、アングル部材231の2つの平板部233同士が広がる方向及び狭まる方向の荷重に対し対抗し、アングル部材231を補強する。図13においては、補強部材232は、連結孔239の間に配置され、2箇所に設けられているが、必要とされる強度に応じ設置箇所を適宜変更できる。
【0068】
図14は、実施の形態2に係る土留構造200の角部材230の変形例の正面図である。補強部材232は、本体14の外側壁部17及び18に対応する位置に設けることにより、外側壁部17及び18から伝達する力を支持することができ、アングル部材231の強度を効率よく向上できる。
【0069】
補強部材232は、図3に示す領域a1、a2及びa3の何れかの範囲内に対応して配置されていると良く、望ましくは、領域aa1、aa2及びaa3の範囲内に配置されていると良い。つまり、補強部材232は、領域Aに配置されていても良い。このとき、補強部材232と平板部233とは、共に領域Aのそれぞれに配置されていても良い。なお、補強部材232と平板部233とは、複数の領域Aの全部に配置されている必要はなく、必要な強度に応じて配置される。
【0070】
図15は、実施の形態2に係る土留構造200の底面図である。実施の形態2に係る土留構造200は、角部材230がアングル部材231により構成され、土留部材10及び角部材230が連結部材40により連結される構造であるため、角部材230を構成する各部材の製造の際に溶接及び加工を削減できる。また、角部材230と連結される土留部材10の縦フランジ部19は、実施の形態1と同様に上記式(1)及び(2)の関係を満たすものである。また、角部材230は、アングル部材231が補強部材232により補強され、強度及び剛性が確保されているため、角部材230と土留構造100とを連結して形成される軸方向連結部11も、実施の形態1に係る軸方向連結部11と同様に土留部材10の本体14と同等以上の強度が確保されている。よって、土留構造200は、角部材230を構成する各部材の加工量を削減しつつ、土留部材10との軸方向連結部11も十分な強度を確保できる。
【0071】
実施の形態2に係る土留構造200は、各辺に土留部材10を一つずつ配置したものであるが、各辺の土留部材10を2つ以上にして構成しても良い。各辺に土留部材10を複数配置した場合は、実施の形態1において説明した軸方向連結部11と同様に、上記式(1)及び(2)を満たすように縦フランジ部19の寸法を決定しており、隣り合う土留部材10の軸方向連結部11は、地盤92側からの荷重に対し土留部材10の本体14と同等以上の強度が確保されている。
【0072】
[変形例]
実施の形態2のアングル部材31に補強部材232の面を高さ方向(z方向)に向けた状態で溶接した構造は、実施の形態1の角部材30に適用しても良い。その場合、補強部材232は、それぞれ本体14の波形に合わせて配置され、例えば図2又は図3に示すa1~a4、aa1~aa4のそれぞれに配置されていると良い。すなわち、補強部材232は、領域Aに配置されていると良い。実施の形態1に係る角部材30に実施の形態2の補強部材232を適用した場合、角部材30が本体14を備えるため、実施の形態2の角部材230のようにアングル部材31に連結孔239を有さず、補強部材232の配置の自由度が高いという利点がある。
【0073】
また、図14に示すように補強部材232は、アングル部材31の平板部33の内側に溶接により接合されている。補強部材232と平板部33との溶接部36の範囲は、平板部33の先端部35側の一部分に配置されているが、補強部材232と平板部33とが接している全域にわたっても良い。また、補強部材232は、上下面に溶接部36が設けられていても良いし、一方の面のみでもよい。
【0074】
補強部材232は、例えば棒鋼であっても良い。この場合、補強部材232は、平板部33の先端部35を接続するように溶接されている。補強部材332も、領域Aに配置されることにより、角部材330のアングル部材31を効率的に強化できる。また、補強部材32が設けられていることにより、平板部33の変形を抑えることができるため、平板部33と土留部材10の縦フランジ部19とにより形成された軸方向連結部11の強度も実施の形態1で説明したのと同様に強度を確保できる。
【0075】
実施の形態2に係る土留構造200においても、土留構造200の軸方向に土留ユニット50を積み重ねて連結することができる。図13に示す土留構造200の場合、軸方向に土留ユニット50を積み重ねると、角部材230と土留部材10との軸方向連結部11が必然的に軸方向に連続して配置される。しかし、土留部材10の縦フランジ部19が上記式(1)を満たすため、実施の形態2に係る土留構造200の軸方向連結部11は、本体14と同等以上の強度を確保できる。これにより、土留構造200は、軸方向連結部11に特に補強を要することがない。
【0076】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、実施の形態及びその変形例同士を組み合わせることもできる。例えば、同じ土留構造に異なる厚さhの縦フランジ部19を備える土留部材10を含んでも良いし、異なる構造の角部材30を含んでいても良い。また、以上の実施の形態に別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ケース、2 ケース、3 ケース、10 土留部材、11 軸方向連結部、13 横フランジ部、13a (第2)連結孔、13b 先端部、14 本体、15 ウェブ部、16 凸部、16a 内側壁部、16b 頂点、17 (第2)外側壁部、17b 外側壁部、18 (第1)外側壁部、19 縦フランジ部、19a (第1)連結孔、30 角部材、30A 角部材、30B 角部材、31 アングル部材、32 補強部材、32A 補強部材、32a 補強部材、32b 補強部材、32c 補強部材、33 平板部、34 平板部、35 先端部、36 溶接部、36a 溶接部、36b 溶接部、36c 溶接部、37 上端、38 内部、40 連結部材、43 挟持部、50 土留ユニット、92 地盤、93 空間部、95 掘削壁面、100 土留構造、100A 試験体、100B 試験体、131 鋼管、134 平板部、200 土留構造、230 角部材、231 アングル部材、232 補強部材、233 平板部、235 先端部、239 連結孔、330 角部材、332 補強部材、A 領域、C 中心軸、H 厚さ寸法、K 支圧面積比、N 中立軸、P 基準強度、S 支点、Z 断面係数、Z 断面係数、h 厚さ、n 中立軸、p 矢印、t 板厚。
図1
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