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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054598
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】籾摺装置
(51)【国際特許分類】
   B02B 7/02 20060101AFI20230407BHJP
   B02B 5/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B02B7/02 106
B02B5/02 104
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163547
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】松木 覚
【テーマコード(参考)】
4D043
【Fターム(参考)】
4D043GA01
4D043GA02
4D043GB03
4D043GB12
4D043GB22
4D043GB42
4D043GB43
4D043HA02
4D043HB02
4D043LA07
4D043MA01
4D043MB02
(57)【要約】
【課題】穀粒の流量調整の制御を簡素化できる籾摺装置を提供すること。
【解決手段】上限センサ60で穀粒が検出された場合にシャッター31の開度を減少させるので、第2タンク6の穀粒の貯留量が上限を超えそうになった場合に籾摺機4での籾の処理量を減少させることができる。また、下限センサ61で穀粒が検出されない場合にシャッター31の開度を増大させるので、第2タンク6が空になりそうになった場合に籾摺機4での籾の処理量を増大させることができる。このように、シャッター31の開閉制御によって穀粒の流量調整を行うことにより、シャッター31の開閉、繰出量調整板の開度、及び、揺動選別機7の起動停止の各々を制御する従来技術に比べ、かかる流量調整の制御を簡素化できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾が貯留される第1タンクと、その第1タンクから排出される籾の流路を開閉するシャッターと、そのシャッターの開放時に前記第1タンクから供給される籾を籾摺りする籾摺機と、その籾摺機で籾摺りされた後の穀粒が貯留される第2タンクと、その第2タンクにおける穀粒の貯留量の上限および下限を検出する上限センサ及び下限センサと、それら上限センサ及び下限センサの検出結果に基づいて前記シャッターの開度を調整する調整手段と、を備える籾摺装置において、
前記調整手段は、前記上限センサで穀粒が検出された場合に前記シャッターの開度を減少させ、前記下限センサで穀粒が検出されない場合に前記シャッターの開度を増大させることを特徴とする籾摺装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記上限センサで穀粒が検出されている期間が所定の閾値を超えている場合に前記シャッターの開度を減少させ、前記下限センサで穀粒が検出されていない期間が所定の閾値を超えた場合に前記シャッターの開度を増大させることを特徴とする請求項1記載の籾摺装置。
【請求項3】
前記上限センサで穀粒が検出されておらず、且つ前記下限センサで穀粒が検出されている期間が所定の閾値を超えている場合には、前記調整手段による前記シャッターの開度の調整を行わないことを特徴とする請求項2記載の籾摺装置。
【請求項4】
前記籾摺機で籾摺りされた穀粒を玄米および籾に選別する風選機と、その風選機で玄米として選別された穀粒が供給される前記第2タンクと、その第2タンクから供給される穀粒を玄米および籾に選別する揺動選別機と、その揺動選別機で玄米として選別された穀粒の一部を前記第2タンクに返送する返送手段と、を備え、
前記返送手段は、前記下限センサで穀粒が検出されていない期間が所定の閾値を超えた場合に、前記第2タンクに穀粒を返送する一方、前記下限センサで穀粒が検出されている期間が所定の閾値を超えた場合に、前記第2タンクへの穀粒の返送を遮断することを特徴とする請求項2又は3に記載の籾摺装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記シャッターの開度を段階的に減少または増大させるものであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の籾摺装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、籾摺装置に関し、特に、穀粒の流量調整の制御を簡素化できる籾摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
籾が貯留される第1タンクと、その第1タンクから供給される籾を籾摺りする籾摺機と、その籾摺機で籾摺りされた後の穀粒(玄米および籾の混合米)を貯留する第2タンクと、その第2タンクから供給される穀粒を玄米および籾に選別する揺動選別機と、を備える籾摺装置が知られている。この種の籾摺装置において、籾摺機での籾の処理量や、揺動選別機での穀粒の処理量を、第2タンクに貯留される穀粒の量に応じて調整する技術がある。
【0003】
例えば特許文献1には、混合米タンク4(第2タンク)内の上部に極限センサS4、中間部に上限センサS5、下部に下限センサS6をそれぞれ設ける技術が記載されている。この技術では、混合米タンク4の貯留量が満杯近くになって極限センサS4がONになると、籾タンク1(第1タンク)の開閉シャッター1a(シャッター)が閉じられる。これにより、籾摺装置2(籾摺機)から混合米タンク4への穀粒の供給が停止されるので、混合米タンク4の貯留量が限度を超えることを抑制できる。
【0004】
また、混合米タンク4の貯留量が適量である状態から穀粒が減少し、上限センサS5がONからOFFに変化した場合には、繰出量調整板1cの開度を大きくして籾タンク1から籾摺装置2への籾の供給量を増加させる。一方、混合米タンク4の貯留量が増大して上限センサがOFFからONに変化した場合には、繰出量調整板1cの開度を小さくして籾摺装置2への籾の供給量を減少させる。これにより、混合米タンク4内の穀粒の貯留量が適量である状態が維持され易くなる。
【0005】
また、混合米タンク4内の穀粒の貯留量が下限近くになり、下限センサS6がOFFとなった場合には、揺動選別装置5(揺動選別機)が停止されるので、混合米タンク4が空になることを抑制できる。
【0006】
つまり、この特許文献1の技術によれば、籾摺装置2での籾の処理量や、揺動選別装置5での穀粒の処理量、即ち籾摺装置における穀粒の流量を、混合米タンク4の貯留量に応じて調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07-328459号公報(例えば、段落0027~0032、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の技術では、シャッターの開閉、繰出量調整板の開度、及び、揺動選別機の起動停止の各々を制御して穀粒の流量調整を行っているため、かかる流量調整の制御が複雑化するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、穀粒の流量調整の制御を簡素化できる籾摺装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために本発明の籾摺装置は、籾が貯留される第1タンクと、その第1タンクから排出される籾の流路を開閉するシャッターと、そのシャッターの開放時に前記第1タンクから供給される籾を籾摺りする籾摺機と、その籾摺機で籾摺りされた後の穀粒が貯留される第2タンクと、その第2タンクにおける穀粒の貯留量の上限および下限を検出する上限センサ及び下限センサと、それら上限センサ及び下限センサの検出結果に基づいて前記シャッターの開度を調整する調整手段と、を備えるものであり、前記調整手段は、前記上限センサで穀粒が検出された場合に前記シャッターの開度を減少させ、前記下限センサで穀粒が検出されない場合に前記シャッターの開度を増大させる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の籾摺装置によれば、上限センサで穀粒が検出された場合にシャッターの開度を減少させるので、第2タンクの穀粒の貯留量が上限を超えそうになった場合に籾摺機での籾の処理量を減少させることができる。また、下限センサで穀粒が検出されない場合にシャッターの開度を増大させるので、第2タンクが空になりそうになった場合に籾摺機での籾の処理量を増大させることができる。このように、シャッターの開閉制御によって穀粒の流量調整を行うことにより、シャッターの開閉、繰出量調整板の開度、及び、揺動選別機の起動停止の各々を制御する従来技術に比べ、かかる流量調整の制御を簡素化できるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の籾摺装置によれば、請求項1記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。上限センサで穀粒が検出されている期間が所定の閾値を超えた場合にシャッターの開度を減少させ、下限センサで穀粒が検出されていない期間が所定の閾値を超えた場合にシャッターの開度を増大させる。これにより、例えば上限センサで穀粒が検出された場合や、下限センサで穀粒が検出されなくなった場合に直ちにシャッターの開度を減少または増大させる構成に比べ、シャッターの開度の調整頻度を低減できる。よって、穀粒の流量調整の制御を簡素化できるという効果がある。
【0013】
請求項3記載の籾摺装置によれば、請求項2記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。上限センサで穀粒が検出されておらず、且つ下限センサで穀粒が検出されている期間が所定の閾値を超えている場合は、第2タンクの穀粒の貯留量が適量に維持され、籾および籾摺り後の穀粒の流量が適切な状態である。この状態ではシャッターの開度の調整を行わないので、穀粒の流量調整の制御を簡素化できるという効果がある。
【0014】
請求項4記載の籾摺装置によれば、請求項2又は3に記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。籾摺機で籾摺りされた穀粒を玄米および籾に選別する風選機を備え、その風選機で玄米として選別された穀粒が第2タンクに供給されるので、籾摺機での脱ぷ率(籾から得られる玄米の割合)が低い場合、風選機で玄米として選別される穀粒、即ち風選機から第2タンクに供給される穀粒が減少する。つまり、第2タンクの穀粒の貯留量が減少した場合には、脱ぷ率が低下した状態の可能性がある。このような状態で第2タンクの穀粒を揺動選別機で玄米および籾に選別しても、その揺動選別機で玄米として選別された穀粒も脱ぷ率が低いものである可能性が高い。
【0015】
これに対して請求項4では、下限センサで穀粒が検出されていない期間が所定の閾値を超え、第2タンクの穀粒の貯留量が減少している場合には、揺動選別機で玄米として選別された穀粒の一部を第2タンクに返送する。これにより、第2タンクが空になることを抑制しつつ、脱ぷ率が低い穀粒を揺動選別機で再度選別することができるという効果がある。
【0016】
一方、第2タンクの穀粒の貯留量が減少していない場合は、風選機で玄米として選別された穀粒が第2タンクに多く供給されている状態であり、籾摺機での脱ぷ率が高いと判断できる。よって、請求項4では、下限センサで穀粒が検出されている期間が所定の閾値を超え、第2タンクの穀粒の貯留量が減少していない場合には、揺動選別機で玄米として選別された穀粒の第2タンクへの返送を遮断する。これにより、脱ぷ率の高い穀粒が揺動選別機に再度供給されるという非効率的な循環を抑制できるという効果がある。
【0017】
請求項5記載の籾摺装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の籾摺装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。上限センサで穀粒が検出された場合にシャッターの開度を段階的に減少させ、下限センサで穀粒が検出されない場合にシャッターの開度を段階的に増大させることにより、籾摺機に供給される籾の量を段階的に増減させることができる。よって、穀粒の流量を微調整できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における籾摺装置の模式図である。
図2図1のII部分を拡大して断面視した籾摺装置の部分拡大断面図である。
図3】流量調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、籾摺装置1の全体構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態における籾摺装置1の模式図である。
【0020】
図1に示すように、籾摺装置1は、籾を定量ずつ送り出すバケットコンベア2aを備え、バケットコンベア2aから送り出された籾は、流路Aを通して第1タンク3に供給される。第1タンク3は、所定量の籾を貯留可能な容器であり、第1タンク3に貯留されている籾は籾摺機4に供給されて籾摺りが行われる。この籾摺機4の詳細構成については図2を参照して後述する。
【0021】
籾摺機4で籾摺りされた穀粒(玄米、籾および籾殻の混合物)は、風選機5に供給される。風選機5は、公知の構成が採用可能であるので詳細な説明を省略するが、籾摺機4で処理された穀粒から籾殻を除去しつつ(流路B参照)、籾および玄米に選別するものである(流路C,D参照)。なお、風選機5の公知の構成としては、特開2014-208321号公報の風選部が例示される。
【0022】
風選機5で籾として選別された穀粒は、流路Cを通してバケットコンベア2aに返送される一方、玄米として選別された穀粒(玄米に籾が混合した混合米)は、流路Dを通して第2タンク6に供給される。第2タンク6は、所定量の穀粒を貯留可能な容器であり、第2タンク6には、上限センサ60及び下限センサ61が設けられる。上限センサ60及び下限センサ61は、第2タンク6内の穀粒の有無を検出するためのセンサであり、例えば静電容量センサや感圧センサなどから構成されている。
【0023】
上限センサ60は、第2タンク6内の上端側(上下方向中央よりも上方側)に配置され、下限センサ61は、第2タンク6内の下端側に配置される。よって、上限センサ60で穀粒が検出された場合には、第2タンク6の穀粒の貯留量が満杯に近い状態であり、下限センサ61で穀粒が検出されなくなった場合には、第2タンク6の穀粒の貯留量が空に近い状態であると判定できる。
【0024】
第2タンク6に貯留された穀粒は揺動選別機7に定量供給され、籾、混合米および玄米に選別される(流路E~G参照)。揺動選別機7は、公知の構成が採用可能であるので詳細な説明を省略するが、公知の構成としては、特開平11-114501号公報の選別装置が例示される。
【0025】
揺動選別機7で籾として選別された穀粒は、流路Eを通してバケットコンベア2aに返送される。よって、風選機5や揺動選別機7で籾として選別された穀粒は、第1タンク3を介して再度籾摺機4に供給されて籾摺りされる。
【0026】
揺動選別機7で混合米として選別された穀粒は、流路Fを通してバケットコンベア2bに供給され、バケットコンベア2bから送り出される穀粒(混合米)は、流路Hを通して第2タンク6に返送される。よって、揺動選別機7で混合米として選別された穀粒は、揺動選別機7で再度選別される。
【0027】
揺動選別機7で玄米として選別された穀粒は、流路Gを通してバケットコンベア2cに供給され、バケットコンベア2cから送り出される穀粒(玄米)は、流路Iを通して後工程(図示せず)に供給されて製品となる。なお、バケットコンベア2cには、揺動選別機7で玄米として選別された穀粒の一部を、第2タンク6に返送するための切替ダンパ8が設けられている。この切替ダンパ8の詳細については後述する。
【0028】
このように、籾摺装置1では、籾摺機4で籾摺りされた穀粒の一部が循環するように構成されているが、この穀粒の流量調整を行うための機構が第1タンク3と籾摺機4との間に設けられる。この構成について、図2を参照して説明する。図2は、図1のII部分を拡大して断面視した籾摺装置1の部分拡大断面図である。
【0029】
図2に示すように、第1タンク3の下部には、籾摺機4の筐体40に繋がる流路30が形成され、この流路30にはシャッター31が設けられる。シャッター31は、図示しない駆動手段(ステッピングモータなど)によって駆動し、流路30の流路面積をシャッター31の開度によって変更可能に構成されている。よって、シャッター31の開度を変化させることにより、第1タンク3から籾摺機4への籾の供給量を微調整できる。
【0030】
籾摺機4の筐体40の上端(図2上側)には、流路30を通して第1タンク3から供給された籾を受け入れる受入口41が形成される。受入口41の縁部(図2の左側の端部)からは傾斜板42が下方に延びており、この傾斜板42の下端と近接する位置に送り出しローラ43が配置される。
【0031】
送り出しローラ43は、その回転軸43a回り(周方向)に並ぶ複数の羽根43bを有するロータリーバルブである。この送り出しローラ43は、公知の構成が採用可能であるので詳細構成の図示を省略するが、公知の構成としては特開2017-064660号公報のロータリーバルブが例示される。
【0032】
送り出しローラ43には、円盤状の仕切板43cが回転軸43aの軸方向(図2の紙面垂直方向)に複数並べて設けられる。この仕切板43cと羽根43bとにより、籾を定量ずつ送り出すための空間43dが仕切られる。
【0033】
送り出しローラ43の外周面のうち、傾斜板42から籾が供給される側(図2の右側)の外周面の略半周がカバー44によって覆われる。傾斜板42から送り出しローラ43とカバー44との間の流路に供給された籾は、送り出しローラ43の空間43dに収容され、その空間43dに収容された籾は、送り出しローラ43の一方向(図2の時計回りの方向)への回転により、複数の羽根43bによって定量ずつ送り出されてカバー44の先端部分から繰り出される。
【0034】
この籾の繰り出し部分の下方側には、一対の籾摺ロール45に向けて下降傾斜する板状のシュート46が設けられ、シュート46の流下面(上面)に沿って流下した籾が一対の籾摺ロール45に供給される。一対の籾摺ロール45は、互いに逆方向に異なる回転速度で回転するように構成されており、籾摺ロール45同士の間を籾が通過することにより、籾が脱ぷされて玄米となる。籾摺ロール45での脱ぷによって分離された籾殻および玄米は、筐体40の下端(図2下側)に形成された排出口47から風選機5(図1参照)に供給される。
【0035】
このように、本実施形態では、シャッター31の開度を調整することで籾摺機4での籾摺り量、即ち、籾や籾摺り後の穀粒の流量調整が行われるが、この流量調整は、第2タンク6の上限センサ60及び下限センサ61(図1参照)の検出結果に基づいて調整される。この処理について、図3を参照して説明する。図3は、流量調整処理のフローチャートである。なお、図3の流量調整処理は、籾摺装置1の制御装置(CPU)で繰り返し実行される。
【0036】
図3に示すように、流量調整処理ではまず、上限センサ60がOFF且つ下限センサ61がONである時間が所定の閾値(例えば、5秒)を超えているか否かを確認する(S1)。具体的には、上限センサ60及び下限センサ61がON又はOFFしている期間であるON時間およびOFF時間は、籾摺装置1のメモリ(記憶手段)に過去10秒間分記憶されているため、このメモリを参照し、過去10秒間において上限センサ60がOFF且つ下限センサ61がONである時間が閾値を超えているか否かを確認する。当該時間が閾値を超えている場合(S1:Yes)、第2タンク6の穀粒の貯留量が適量な状態であるため、流量調整処理を終了する。
【0037】
一方、上限センサ60がOFF且つ下限センサ61がONである時間が閾値以下である場合(S1:No)、上限センサ60がONになっているか、或いは下限センサ61がOFFになっている状態であるため、上限センサ60のON時間が所定の閾値(例えば、5秒)を超えているか否かを確認する(S2)。
【0038】
上限センサ60のON時間が閾値を超えている場合(S2:Yes)、第2タンク6の穀粒の貯留量が満杯に近い状態であるので、シャッター31の開度を1段階減少させて(S3)、一連の処理を終了する。このS3の処理により、第1タンク3から籾摺機4への籾の供給量、即ち籾摺機4から第2タンク6への穀粒(玄米および籾の混合米)の供給量を減少させることができる。
【0039】
一方、上限センサ60のON時間が閾値を超えていない場合(S2:No)、下限センサ61がOFFになっていると判断できるので、下限センサ61のOFF時間が所定の閾値(例えば、5秒)を超えているか否かを確認する(S4)。下限センサ61のOFF時間が閾値を超えている場合(S4:Yes)、第2タンク6の穀粒の貯留量が空に近い状態であるので、シャッター31の開度を1段階増大させて(S5)、一連の処理を終了する。このS5の処理により、第1タンク3から籾摺機4への籾の供給量、即ち籾摺機4から第2タンク6への穀粒(玄米および籾の混合米)の供給量を増大させることができる。
【0040】
上記の通り、この流量調整処理は籾摺装置1の制御装置で繰り返し実行されるので、S3及びS5の処理で籾摺機4への籾の供給量を調整した後、上限センサ60のON状態または下限センサ61のOFF状態が継続している場合には、再度S2~S5の処理でシャッター31の開度が1段階減少または増大する。
【0041】
つまり、第2タンク6の穀粒の貯留量が適量になるまでシャッター31の開度の調整が繰り返し行われるので、第2タンク6の穀粒の貯留量が上限を超えることや、第2タンク6が空になることを抑制できる。更に、上限センサ60で穀粒が検出された場合や、下限センサ61で穀粒が検出された場合に、シャッター31を閉鎖または開放させるのではなく、開度を段階的に増減させる構成であるため、籾摺機4より下流側における穀粒の流量を微調整できる。
【0042】
このように、本実施形態では、籾摺装置1における籾や籾摺り後の穀粒の流量(第2タンク6の貯留量)の調整を、シャッター31の開閉制御によって行っている。これにより、シャッターの開閉、繰出量調整板の開度、及び、揺動選別機の起動停止の各々を制御する従来技術に比べ、かかる流量調整の制御を簡素化できる。
【0043】
また、上限センサ60で穀粒が検出された場合や、下限センサ61で穀粒が検出されなくなった時に直ちにシャッター31の開度を増減させるのではなく、上限センサ60のON時間や下限センサ61のOFF時間が閾値を超えた時にシャッター31の開度を調整する構成である。よって、シャッター31の開度の調整頻度を低減できるので、穀粒の流量調整の制御を簡素化できる。
【0044】
また、上限センサ60がOFF且つ下限センサ61がONである時間が閾値を超えている場合には(S1:Yes)、S2~S5の処理、即ちシャッター31の開度の調整を行わない構成である。これにより、上限センサ60のON時間や下限センサ61のOFF時間が閾値を超えているかを判断することや、シャッター31の開度を変更することを不要にできるので、穀粒の流量調整の制御を簡素化できる。
【0045】
図1に戻って説明する。上述した通り、籾摺機4で籾摺りされた穀粒のうち、風選機5で玄米として選別された穀粒が第2タンク6に供給される。よって、例えば籾摺機4での脱ぷ率(籾から得られる玄米の割合)が低い場合、即ち、風選機5で玄米として選別される穀粒が少ない場合には、流路Dを介した第2タンク6への穀粒の供給量が減少するため、第2タンク6の貯留量が減少し易い。つまり、第2タンク6の穀粒の貯留量が減少した場合には、脱ぷ率が低下した状態の可能性がある。このような状態で第2タンク6の穀粒を揺動選別機7で選別しても、その揺動選別機7で玄米として選別された穀粒も脱ぷ率が低いものである可能性が高い。
【0046】
よって、本実施形態では、そのような脱ぷ率が低下している可能性が高い状態の時に、揺動選別機7で玄米として選別された穀粒の一部を切替ダンパ8によって第2タンク6に返送する構成を採用している。
【0047】
切替ダンパ8は、バケットコンベア2cから送り出される穀粒を2方向に分流可能に構成されており、切替ダンパ8の一方の出口には上述した流路Iが接続され、他方の出口には第2タンク6に繋がる流路Jが接続される。この切替ダンパ8の流路の切り替えは、下限センサ61の検出結果に基づいて行われる。
【0048】
具体的には、下限センサ61のOFF時間が所定の閾値(例えば、5秒)を超えた場合、即ち籾摺機4での脱ぷ率が低下して第2タンク6の穀粒の貯留量が減少している場合には、切替ダンパ8に接続される2つの流路I,Jの各々から穀粒を送り出す。即ち、揺動選別機7で玄米として選別された穀粒の一部を、流路Jを通して第2タンク6に返送する。これにより、脱ぷ率が低い穀粒を揺動選別機7で再度選別することができるので、流路Iを通して後工程に供給される穀粒(製品)の品質を向上させることができる。更に、第2タンク6の貯留量が減少している時に穀粒を第2タンク6に返送できるので、第2タンク6が空になることを抑制できる。
【0049】
一方、第2タンク6の穀粒の貯留量が減少していない場合は、風選機5で玄米として選別された穀粒が第2タンク6に多く供給されている状態であり、籾摺機4での脱ぷ率が高いと判断できる。よって、本実施形態では、下限センサ61のON時間が閾値を超え、第2タンク6の穀粒の貯留量が減少していない場合には、切替ダンパ8を切り替えて流路Iのみから穀粒を送り出す。即ち、揺動選別機7で玄米として選別された穀粒の第2タンク6への返送を遮断する。これにより、脱ぷ率が高い穀粒が揺動選別機7に再度供給されるという非効率的な循環を抑制しつつ、流路Iを通して後工程に供給される穀粒(製品)の品質を向上させることができる。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0051】
上記実施形態では説明を省略したが、シャッター31は、所定の軸回りに回転する変位によって流路30を開閉するものでも良いし、スライド変位によって流路30を開閉するものでも良い。また、シャッター31の開度の1段階とは、例えばシャッター31を駆動させるステッピングモータを一定の角度だけ回転させてシャッター31を所定量(閉鎖または全開しない程度に)変位させることである。
【0052】
上記実施形態では、上限センサ60のON時間が閾値を超えている場合にシャッター31の開度を減少させ、下限センサ61のOFF時間が閾値を超えている場合にシャッター31の開度を増大させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上限センサ60がONになった時や、下限センサ61がOFFになった時に直ちにシャッター31の開度を減少または増大させる構成でも良い。
【0053】
上記実施形態では、上限センサ60がOFF且つ下限センサ61がONである期間が閾値を超えている場合に(S1:Yes)、シャッター31の開度の調整を行わない場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、S1の処理を省略し、上限センサ60のON時間や下限センサ61のOFF時間が閾値を超えているかの判断(S2~S4の処理)を毎回行う構成でも良い。
【0054】
上記実施形態では、シャッター31の開度を段階的に増減させて籾および穀粒の流量調整を行う場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、上限センサ60のON時間が閾値を超えている場合にシャッター31を閉鎖させ、下限センサ61のOFF時間が閾値を超えている場合にシャッター31を開放(全開に)する構成でも良い。
【0055】
上記実施形態では、下限センサ61のOFF時間が閾値を超えている場合に、切替ダンパ8によって穀粒を第2タンク6に返送する一方、下限センサ61のON時間が閾値を超えた場合に、当該返送を遮断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、下限センサ61のOFF時間が閾値を超えている場合に、揺動選別機7で玄米として選別された穀粒の全てを第2タンク6に返送する構成でも良い。
【0056】
また、他の公知の技術(例えば、特開2021-053624号公報)を用いて籾の脱ぷ率を判定し、脱ぷ率が低い場合に切替ダンパ8によって穀粒の一部を第2タンク6に返送し、脱ぷ率が高い場合に当該返送を遮断する構成でも良い。また、切替ダンパ8を省略し、揺動選別機7で玄米として選別された穀粒の全てを後工程に供給する構成でも良い。
【符号の説明】
【0057】
1 籾摺装置
3 第1タンク
30 籾の流路
31 シャッター
4 籾摺機
5 風選機
6 第2タンク
60 上限センサ
61 下限センサ
7 揺動選別機
8 切替ダンパ(返送手段)
S3,S4 調整手段

図1
図2
図3