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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054599
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】かしめナットの取付構造及び建具
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20230407BHJP
   F16B 4/00 20060101ALI20230407BHJP
   E06B 1/30 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
F16B37/04 E
F16B4/00 N
F16B4/00 H
E06B1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163548
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110319
【弁理士】
【氏名又は名称】根本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】春山 幸浩
(57)【要約】
【課題】樹脂部材に取り付けられるかしめナットの取付強度を向上させる。
【解決手段】下枠本体20は、互いの間に隙間28をあけて対向する2つの対向面部24、25を有する。かしめナット10は、2つの対向面部24、25の間の隙間28に配置された筒部11を有し、筒部11は、2つの対向面部24、25にかしめ固定されたかしめ部14を有する。かしめ部14は、筒部11の一部に、2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも太く形成される。筒部11のかしめ部14以外の部分は、2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも細い。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かしめナットが樹脂部材にかしめ固定により取り付けられたかしめナットの取付構造であって、
前記樹脂部材は、互いの間に隙間をあけて対向する2つの対向面部を有し、
前記かしめナットは、2つの前記対向面部の間の隙間に配置された筒部を有し、
前記筒部は、2つの前記対向面部にかしめ固定されたかしめ部を有し、
前記かしめ部は、前記筒部の一部に、2つの前記対向面部の間の隙間寸法よりも太く形成され、
前記筒部の前記かしめ部以外の部分は、前記隙間寸法よりも細いかしめナットの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載されたかしめナットの取付構造において、
前記かしめ部は、2つの前記対向面部のうちの少なくとも一方に食い込むかしめナットの取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたかしめナットの取付構造において、
前記筒部の前記かしめ部以外の部分は、2つの前記対向面部のうちの一方の前記対向面部との間隔が他方の前記対向面部との間隔よりも狭いかしめナットの取付構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたかしめナットの取付構造において、
前記かしめナットに螺合するねじにより、前記樹脂部材に取り付けられた取付部材を備えたかしめナットの取付構造。
【請求項5】
請求項4に記載されたかしめナットの取付構造において、
前記取付部材は、前記対向面部における前記かしめ部がかしめ固定された部分を覆うかしめナットの取付構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載されたかしめナットの取付構造を備えた建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かしめナットが樹脂部材にかしめ固定により取り付けられたかしめナットの取付構造、及び、かしめナットの取付構造を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建具である樹脂窓は、複数の樹脂枠が枠組みされた樹脂枠体を備えている。樹脂枠は、合成樹脂製の樹脂部材であり、中空形状に形成される。樹脂枠にカバーが取り付けられるときには、例えば、裏板又はターンナットが樹脂枠の中空部に配置されて、裏板又はターンナットに螺合するねじにより、カバーが樹脂枠に取り付けられる。ところが、樹脂枠のデザインによっては、裏板又はターンナットを配置する箇所のスリム化等に伴い、裏板又はターンナットを配置可能なスペースを確保するのが難しいことがある。これに対し、従来、樹脂成形品に形成した孔部に取り付けられて、ねじが螺合するポップナットが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された従来のポップナットは、かしめナットであり、孔部の外周縁部を挟み込んで孔部に取り付けられる。ポップナットを用いることで、裏板又はターンナットを用いることなく、ねじによりカバーが樹脂成形品に取り付けられる。しかしながら、従来のポップナットでは、孔部の外周縁部の挟み込みのみにより、ポップナットが樹脂成形品に取り付けられており、樹脂成形品に対するポップナットの取付強度を向上させるのが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-196515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、樹脂部材に取り付けられるかしめナットの取付強度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かしめナットが樹脂部材にかしめ固定により取り付けられたかしめナットの取付構造であって、
前記樹脂部材は、互いの間に隙間をあけて対向する2つの対向面部を有し、
前記かしめナットは、2つの前記対向面部の間の隙間に配置された筒部を有し、
前記筒部は、2つの前記対向面部にかしめ固定されたかしめ部を有し、
前記かしめ部は、前記筒部の一部に、2つの前記対向面部の間の隙間寸法よりも太く形成され、
前記筒部の前記かしめ部以外の部分は、前記隙間寸法よりも細いかしめナットの取付構造である。
また、本発明は、本発明のかしめナットの取付構造を備えた建具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂部材に取り付けられるかしめナットの取付強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の建具を室外側からみて示す正面図である。
図2】本実施形態の建具を示す縦断面図である。
図3】本実施形態の下枠の下枠本体及びかしめナットを示す図である。
図4】本実施形態の2つの対向面部の間の隙間に筒部が挿入されたかしめナットを示す図である。
図5】本実施形態の2つの対向面部に取り付けられたかしめナットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のかしめナットの取付構造及び建具の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態のかしめナットの取付構造では、建具用の樹脂部材にかしめナットがかしめ固定されて、かしめ固定により、かしめナットが樹脂部材に取り付けられている。従って、本実施形態の建具は、かしめナットが取り付けられた樹脂部材、及び、樹脂部材に設けられたかしめナットの取付構造を備えている。かしめナットは、合成樹脂製の部材である樹脂部材に対して、かしめられて、樹脂部材に固定される。以下では、建具が固定窓である場合を例にとり、かしめナットの取付構造、及び、建具について説明する。
【0010】
図1は、本実施形態の建具1を室外側からみて示す正面図であり、建具1の概略構成を模式的に示している。図2は、本実施形態の建具1を示す縦断面図である。
図示のように、建具1は、パネル体2と枠体3を備え、建物の壁部に設置される。枠体3は、開口部3Aを形成する方形状の開口枠(窓枠)であり、パネル体2を囲む。建具1及び枠体3は、建物の開口部に設置されて、建物の室内(屋内)と室外(屋外)の間に配置される。パネル体2は、方形状のガラスパネル体(例えば、複層ガラス、合わせガラス、又は、板ガラス)であり、枠体3の開口部3Aに配置されている。
【0011】
なお、建物に設けた建具1及びかしめナットの取付構造を正面からみたときに(図1参照)、上下となる方向が上下方向であり、左右となる方向が左右方向である。図1では、上下方向は鉛直方向であり、左右方向は水平方向である。室内外方向S(図2参照)は、建物に設けた建具1及びかしめナットの取付構造における室内外方向(屋内外方向)である。また、室内外方向Sは、建物に設けた建具1及びかしめナットの取付構造を正面からみたときに、前後となる方向(建具1の奥行方向)であり、図1図2では、左右方向に交差する水平方向である。このように、建具1及びかしめナットの取付構造に関する方向は、建物に設けた状態での方向で特定する。また、建具1及びかしめナットの取付構造に関して室内側、室外側とは、建物に設けた状態での室内側、室外側である。
【0012】
枠体3は、互いに組み合わされた4つの枠4~6(上枠4、下枠5、一対の縦枠6)を有し、4つの枠4~6により、開口部3Aを形成している。上枠4と下枠5は、枠体3の上下の横枠であり、枠体3の上部と下部で左右方向(横方向)に延びる。一対の縦枠6は、枠体3の左右の側部に位置する側枠であり、枠体3の側部で上下方向(縦方向)に延びる。上枠4、下枠5、及び、左右の縦枠6の端部同士が接続されて、枠4~6が枠組みされている。ここでは、パネル体2は、複層ガラスであり、枠体3に嵌め込まれて、枠体3に固定されている。
【0013】
建具1は、樹脂建具(ここでは、樹脂窓)である。また、枠体3は、合成樹脂製の樹脂枠体であり、枠体3の4つの枠4~6は、枠体3を構成する合成樹脂製の樹脂枠である。枠4~6は、例えば、押出成形により形成された樹脂形材からなる。樹脂形材は、合成樹脂製の形材(押出形材)であり、合成樹脂を押出成形することで、一定の断面形状に連続して形成される。
【0014】
建具1は、枠体3に設けられたかしめナット10の取付構造7を備えている。かしめナット10の取付構造7は、枠体3の4つの枠4~6のうちの少なくとも1つの枠4~6に設けられており、ここでは、下枠5に設けられている。下枠5は、かしめナット10の取付構造7を構成する下枠本体20、カバー30、かしめナット10、及び、ねじ40を有するとともに、下枠本体20に取り付けられた押縁50を有している。かしめナット10の取付構造7は、下枠5の長手方向(左右方向)に離隔した2箇所に設けられている。
【0015】
下枠5の下枠本体20は、樹脂部材であり、中空形状に形成された樹脂形材からなる。また、下枠本体20は、室内外方向Sに沿って配置された見込み部21と、見込み部21の室外側に位置する保持部22と、室外側に突出する水切り部23を有している。見込み部21は、パネル体2よりも室内側に配置される室内側部であり、枠体3の内周部(開口部3Aの下縁部)に位置して、パネル体2から室内側に向かって延びる。保持部22は、パネル体2の室内側に位置し、押縁50は、パネル体2の室外側に位置している。パネル体2は、下枠本体20の保持部22と押縁50の間に配置されて、保持部22と押縁50の間に保持されている。
【0016】
押縁50は、水切り部23の室内側に位置して、下枠本体20から上側に突出している。水切り部23は、パネル体2及び押縁50よりも室外側に配置される室外側部であり、見込み部21及びパネル体2よりも下側に位置している。かしめナット10は、樹脂部材である下枠本体20の水切り部23にかしめ固定されて、かしめ固定により、水切り部23に取り付けられている。ねじ40は、かしめナット10に捩じ込まれて螺合して、かしめナット10に取り付けられている。カバー30は、下枠本体20に取り付けられる取付部材の一例であり、ねじ40により、下枠本体20の水切り部23に取り付けられている。カバー30は、水切り部23の室外側及び上側に配置されて、室外側及び上側から水切り部23を覆う。
【0017】
図3は、本実施形態の下枠5の下枠本体20及びかしめナット10を示す図である。図3では、下枠本体20への取付前のかしめナット10の側面図、及び、下枠本体20のかしめナット10が取り付けられる部分の断面図を示している。また、図3では、かしめナット10の内部構造を鎖線で示している。
図示のように、下枠本体20の水切り部23は、かしめナット10が取り付けられる取付部であり、中空形状に形成されている。下枠本体20は、水切り部23に、かしめナット10が取り付けられる2つの対向面部24、25(第1対向面部24、第2対向面部25)と、対向面部24、25の室外側に位置する壁部26と、壁部26に形成された取付孔27を有している。
【0018】
対向面部24、25は、上下方向に互いに離隔し、それぞれ室外側に突出して、室内外方向Sに沿って配置されている。第1対向面部24は、第2対向面部25の上方に位置する板状の上対向面部であり、第2対向面部25は、第1対向面部24の下方に位置する板状の下対向面部である。上下の一対の対向面部24、25は、互いの間に隙間28をあけて、上下方向において、互いに対向して配置されている。2つの対向面部24、25の間の隙間28は、中空部である水切り部23の内部空間であり、2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gは、隙間28の寸法である。また、隙間寸法Gは、隙間28における2つの対向面部24、25の間隔(2つの対向面部24、25同士の最短の距離)であり、ここでは、上下方向における2つの対向面部24、25の間隔である。
【0019】
壁部26は、対向面部24、25の間に位置して、対向面部24、25のそれぞれに接続している。また、壁部26は、下枠本体20において最も室外側の箇所に形成されており、対向面部24、25の室外側の端部の間に設けられて、隙間28の室外側に位置している。隙間28は、壁部26により、室外側において塞がれている。取付孔27は、かしめナット10が取り付けられる円形状の貫通孔であり、壁部26を室内外方向Sに貫通している。取付孔27は、室内側において隙間28に向かって開口し、室外側において隙間28の外側に向かって開口しており、隙間28及び隙間28の外側に向かって開放されている。
【0020】
取付孔27の中心線Eは、取付孔27の半径方向の中心を通る直線であり、2つの対向面部24、25の間の中央面Tは、2つの対向面部24、25の間の中央に位置する平面(隙間28の中央面)である。取付孔27の中心線Eは、上下方向において、2つの対向面部24、25の間の中央面Tに対して、2つの対向面部24、25のうちのいずれか一方の対向面部側(ここでは、第1対向面部24側)に位置している。そのため、取付孔27は、一方の対向面部である第1対向面部24との距離が他方の対向面部である第2対向面部25との距離よりも短く、隙間28に向かって、第2対向面部25よりも第1対向面部24に近い位置に開口している。また、上下方向において、取付孔27の第1対向面部24側の部分(上部27A)は、第1対向面部24の隙間28側の面(下面24A)と位置を合わせて形成され、取付孔27の第2対向面部25側の部分(下部27B)は、第2対向面部25の隙間28側の面(上面25A)から上方に離隔した位置に形成されている。
【0021】
かしめナット10は、金属製のナット部品(例えば、ポップナット)であり、円筒形状に形成されている。また、かしめナット10は、下枠本体20の2つの対向面部24、25にかしめ固定される円筒形状の筒部11と、筒部11の内周部に設けられたねじ部12と、筒部11の外周部に設けられたフランジ13を有している。かしめナット10の中心線Fは、かしめナット10及び筒部11の半径方向の中心を通る直線であり、筒部11は、かしめナット10の中心線Fに沿って延びる。ねじ部12は、雌ねじであり、ねじ40と螺合する。フランジ13は、かしめナット10の中心線Fの方向(中心線方向)における筒部11の一端部に環状に形成されて、かしめナット10の半径方向の外側に向かって筒部11の外周部から張り出す。
【0022】
下枠本体20の2つの対向面部24、25は、互いの間にかしめナット10の筒部11が挿入可能な隙間28をあけた状態で、平行に形成されている。従って、2つの対向面部24、25の間の隙間28は、かしめ固定前の筒部11の直径R1(外径)よりも広く、2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gは、筒部11が挿入可能な寸法である。取付孔27は、筒部11の直径R1よりも大きい直径に、かつ、2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも小さい直径に形成されている。かしめナット10の筒部11は、下枠本体20の室外側から取付孔27に挿入され、取付孔27を通って2つの対向面部24、25の間の隙間28に挿入される。
【0023】
図4は、本実施形態の2つの対向面部24、25の間の隙間28に筒部11が挿入されたかしめナット10を示す図である。
図示のように、かしめナット10の筒部11は、下枠本体20の取付孔27から2つの対向面部24、25の間の隙間28まで挿入されて、取付孔27に嵌る。また、かしめナット10のフランジ13は、下枠本体20の壁部26(取付孔27の周縁部)に当接して引っ掛かる。かしめナット10は、フランジ13及び取付孔27により、対向面部24、25に対して位置決めされる。その状態で、筒部11は、取付孔27から隙間28の内側に向かって室内側に突出して、取付孔27及び隙間28に配置される。
【0024】
2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gは、かしめナット10の筒部11が位置する箇所における隙間28の最小の寸法である。かしめ固定前の状態で、筒部11の直径R1は、隙間寸法Gよりも小さく、筒部11は、隙間寸法Gよりも細く形成されている。かしめナット10の中心線Fは、上下方向において、2つの対向面部24、25の間の中央面Tに対して、2つの対向面部24、25のうちのいずれか一方の対向面部側(ここでは、第1対向面部24側)に配置される。そのため、筒部11は、隙間28で、第1対向面部24との間隔が第2対向面部25との間隔よりも狭くなるように配置され、第2対向面部25よりも第1対向面部24に近い位置に配置される。筒部11と対向面部24、25の間隔は、筒部11と対向面部24、25の最短の距離であり、筒部11と対向面部24、25が接触するときには零となる。ここでは、筒部11は、第1対向面部24に接触して配置され、上下方向において、第2対向面部25から離隔して配置される。なお、筒部11は、第2対向面部25との間隔よりも狭い間隔を第1対向面部24との間にあけて配置してもよい。
【0025】
かしめナット10の筒部11のかしめ固定時には、かしめ工具(図示せず)を下枠本体20の室外側から筒部11の内側に挿入する。また、かしめ工具により、隙間28内の筒部11をかしめて、かしめ固定により、筒部11を下枠本体20の2つの対向面部24、25に固定する。これにより、かしめナット10が対向面部24、25に取り付けられる。その際、筒部11の一部が対向面部24、25にかしめ固定される。
【0026】
図5は、本実施形態の2つの対向面部24、25に取り付けられたかしめナット10を示す図であり、下枠5のねじ40及びカバー30も示している。図5では、かしめナット10のねじ部12に捩じ込まれる前のねじ40の側面図、及び、カバー30のねじ40により下枠本体20に取り付けられる部分の断面図を示している。
図示のように、かしめ固定後の状態で、かしめナット10の筒部11は、隙間28内で2つの対向面部24、25にかしめ固定されたかしめ部14と、筒部11のかしめ部14以外の部分である非かしめ部15を有している。かしめにより筒部11が変形して、かしめ部14が筒部11に形成される。
【0027】
かしめ部14は、筒部11の対向面部24、25に向かってかしめられた部分(かしめにより変形した部分)であり、かしめにより、かしめナット10の中心線方向における筒部11の一部に形成される。また、かしめ部14は、筒部11の外周部に環状に形成された凸部(環状凸部)であり、かしめナット10の半径方向の外側に向かって突出して、筒部11の周方向に環状に延びる。かしめ部14は、下枠本体20の2つの対向面部24、25に対してかしめられて、対向面部24、25に圧着されている。かしめ固定により、かしめ部14が2つの対向面部24、25の間に固定されて、筒部11が対向面部24、25及び下枠本体20に固定されて取り付けられる。
【0028】
非かしめ部15の直径R2は、筒部11のかしめ部14以外の部分における直径(外径)である。かしめ部14の直径R3は、かしめ部14の最も太い部分における直径(外径)であり、かしめ部14の最大径である。非かしめ部15の直径R2は、かしめ固定前の筒部11の直径R1(図3図4参照)と等しく、かしめ部14の直径R3及び2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも小さい。かしめ部14の直径R3は、非かしめ部15の直径R2及び2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも大きい。
【0029】
このように、非かしめ部15は、かしめ部14及び2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも細く形成されている。また、かしめ部14及び非かしめ部15の中心線は、かしめナット10の中心線Fであり、上下方向において、2つの対向面部24、25の間の中央面Tに対して、2つの対向面部24、25のうちのいずれか一方の対向面部側(ここでは、第1対向面部24側)に位置している。そのため、非かしめ部15は、隙間28で、一方の対向面部である第1対向面部24との間隔が他方の対向面部である第2対向面部25との間隔よりも狭くなるように配置され、第2対向面部25よりも第1対向面部24に近い位置に配置される。
【0030】
非かしめ部15と対向面部24、25の間隔は、非かしめ部15と対向面部24、25の最短の距離であり、非かしめ部15と対向面部24、25が接触するときには零となる。ここでは、非かしめ部15は、第1対向面部24に接触して配置され、上下方向において、第2対向面部25から離隔して配置される。なお、非かしめ部15は、第2対向面部25との間隔よりも狭い間隔を第1対向面部24との間にあけて配置してもよい。
【0031】
かしめ部14は、非かしめ部15よりも太く形成されるとともに、少なくとも最も太い部分において、2つの対向面部24、25の間の隙間寸法Gよりも太く形成されている。かしめ部14は、2つの対向面部24、25のうちの少なくとも一方(いずれか一方、又は、両方)の対向面部24、25に食い込み、少なくとも一方の対向面部24、25を変形させる。その状態で、かしめ部14及び筒部11が対向面部24、25にかしめ固定される。かしめナット10のかしめ部14とフランジ13の間の箇所では、下枠本体20は、かしめ部14とフランジ13の間に挟み込まれる。かしめナット10は、かしめ固定に加えて、下枠本体20の挟み込みにより、下枠本体20に取り付けられる。
【0032】
ここでは、かしめ部14は、2つの対向面部24、25の両方に食い込む。また、非かしめ部15と第1対向面部24の間隔は、非かしめ部15と第2対向面部25の間隔よりも狭い。これに伴い、かしめ部14の第1対向面部24に対する食い込み量は、かしめ部14の第2対向面部25に対する食い込み量よりも大きく、かしめ部14は、第2対向面部25よりも第1対向面部24に対して大きく食い込む。かしめ部14の位置で、対向面部24、25は、かしめ部14から受ける力で変形して、例えば、かしめ部14の外面形状に対応して凹状に変形する。
【0033】
対向面部24、25のかしめ部14のかしめ固定により変形した部分(変形部24B、25B)の変形量を比較すると、第1対向面部24の変形部24Bの変形量が第2対向面部25の変形部25Bの変形量よりも大きい。このように、第1対向面部24の変形部24Bは、第2対向面部25の変形部24Bよりも大きく変形する。また、第1対向面部24の変形部24Bの変形が大きくなると、隙間28の反対側に位置する第1対向面部24の変形部24Bの外表面(上面)に変形が生じることがある。この場合には、第1対向面部24の変形部24Bが外表面側で凸状に変形し、第1対向面部24の変形部24Bの外表面が盛り上がる。
【0034】
カバー30は、板状の第1覆い部31及び第2覆い部32と、第2覆い部32に形成された挿通孔33を有している。挿通孔33は、第2覆い部32を室内外方向Sに貫通する。ねじ40は、室外側から挿通孔33を挿通して、かしめナット10の筒部11の内側に挿入される。また、ねじ40は、かしめナット10のねじ部12に捩じ込まれて螺合して、かしめナット10に取り付けられる。ねじ40の頭部と壁部26の間にカバー30の第2覆い部32が挟み込まれて、ねじ40により、第2覆い部32及びカバー30が下枠本体20の水切り部23に取り付けられる。
【0035】
カバー30は、2つの対向面部24、25の間の隙間28の外側に配置されて、第1覆い部31により、2つの対向面部24、25のうちの少なくとも一方の対向面部(ここでは、第1対向面部24)を覆う。カバー30の第1覆い部31は、室内側に向かって突出して、第1対向面部24の上側で、第1対向面部24に沿って配置される。カバー30は、隙間28の外側で、第1覆い部31により、第1対向面部24におけるかしめ部14がかしめ固定された部分及び変形部24Bを覆う。カバー30の第1覆い部31により、第1対向面部24の変形部24Bが遮蔽される。カバー30の第2覆い部32は、下側に向かって突出して、壁部26の室外側で、壁部26に沿って配置されて、壁部26を覆う。
【0036】
以上説明したかしめナット10の取付構造7では、かしめナット10の筒部11を2つの対向面部24、25の間の隙間28に簡単に配置して、筒部11を対向面部24、25に容易にかしめ固定することができる。そのため、かしめ固定により、かしめナット10を下枠本体20に容易に取り付けることができる。かしめ部14により、筒部11を隙間28から引き抜く抵抗が大きくなり、対向面部24、25に対する筒部11の引き抜き抵抗が高くなる。これにより、下枠本体20に取り付けられるかしめナット10の取付強度を向上させることができる。また、かしめ部14の対向面部24、25への食い込みにより、かしめ部14の対向面部24、25に対するかしめ固定の強度を向上させることができる。
【0037】
非かしめ部15と第1対向面部24の間隔は、非かしめ部15と第2対向面部25の間隔よりも狭い。そのため、かしめ部14のかしめ固定による第2対向面部25の変形を抑制することができる。また、かしめ部14のかしめ固定に伴う2つの対向面部24、25の変形の程度を調整して、第2対向面部25側での下枠本体20の意匠性を確保することができる。かしめ部14のかしめ固定に伴い、かしめ部14から受ける力で第1対向面部24の外表面に変形が生じたときでも、第2対向面部25の変形を抑制することができる。
【0038】
かしめナット10及びねじ40により、カバー30を下枠本体20に簡単に取り付けることができる。また、下枠本体20に対するカバー30の取付強度を向上させることができる。カバー30の取り付けに要する構造を単純にして、コストを削減することもできる。第1対向面部24におけるかしめ部14がかしめ固定された部分をカバー30により覆うことで、第1対向面部24の変形部24Bをカバー30により隠して、下枠本体20の意匠性を向上させることができる。
【0039】
なお、カバー30により、第2対向面部25、又は、2つの対向面部24、25の両方を覆うようにしてもよい。また、2つの対向面部24、25は、中空部である水切り部23の互いに対向する部分に限定されず、例えば、互いに対向するリブ、壁部、突片、又は、凸部であってもよい。建具1は、固定窓以外の建具(例えば、開閉窓、引き違い窓、ドア)であってもよい。かしめナット10が取り付けられる樹脂部材は、下枠本体20以外の建具1の樹脂部材(例えば、枠体3の下枠本体20以外の樹脂部材、框体の樹脂部材)であってもよく、建具1の樹脂部材以外の樹脂部材であってもよい。樹脂部材に取り付けられる取付部材は、カバー30以外の部材であってもよく、樹脂部材に取り付けられる種々の部品(例えば、ヒンジ、ステー)を含む。本発明は、かしめナットと樹脂部材を有する種々のかしめナットの取付構造に適用することができる。
【0040】
以上のように、かしめナットの取付構造は、
かしめナットが樹脂部材にかしめ固定により取り付けられたかしめナットの取付構造であって、
前記樹脂部材は、互いの間に隙間をあけて対向する2つの対向面部を有し、
前記かしめナットは、2つの前記対向面部の間の隙間に配置された筒部を有し、
前記筒部は、2つの前記対向面部にかしめ固定されたかしめ部を有し、
前記かしめ部は、前記筒部の一部に、2つの前記対向面部の間の隙間寸法よりも太く形成され、
前記筒部の前記かしめ部以外の部分は、前記隙間寸法よりも細いかしめナットの取付構造である。
従って、樹脂部材に取り付けられるかしめナットの取付強度を向上させることができる。
【0041】
前記かしめ部は、2つの前記対向面部のうちの少なくとも一方に食い込む。
従って、かしめ部の対向面部への食い込みにより、かしめ部の対向面部に対するかしめ固定の強度を向上させることができる。
【0042】
前記筒部の前記かしめ部以外の部分は、2つの前記対向面部のうちの一方の前記対向面部との間隔が他方の前記対向面部との間隔よりも狭い。
従って、かしめ部のかしめ固定による他方の対向面部の変形を抑制することができる。また、かしめ部のかしめ固定に伴う2つの対向面部の変形の程度を調整して、他方の対向面部側での樹脂部材の意匠性を確保することができる。
【0043】
かしめナットの取付構造は、前記かしめナットに螺合するねじにより、前記樹脂部材に取り付けられた取付部材を備える。
従って、かしめナット及びねじにより、取付部材を樹脂部材に簡単に取り付けることができる。
【0044】
前記取付部材は、前記対向面部における前記かしめ部がかしめ固定された部分を覆う。
従って、対向面部のかしめ部により変形した部分を取付部材により隠して、樹脂部材の意匠性を向上させることができる。
【0045】
建具は、かしめナットの取付構造を備えた建具である。
従って、建具の樹脂部材に取り付けられるかしめナットの取付強度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・建具、2・・・パネル体、3・・・枠体、3A・・・開口部、4・・・上枠、5・・・下枠、6・・・縦枠、7・・・かしめナットの取付構造、10・・・かしめナット、11・・・筒部、12・・・ねじ部、13・・・フランジ、14・・・かしめ部、15・・・非かしめ部、20・・・下枠本体、21・・・見込み部、22・・・保持部、23・・・水切り部、24・・・第1対向面部、24A・・・下面、24B・・・変形部、25・・・第2対向面部、25A・・・上面、25B・・・変形部、26・・・壁部、27・・・取付孔、27A・・・上部、27B・・・下部、28・・・隙間、30・・・カバー、31・・・第1覆い部、32・・・第2覆い部、33・・・挿通孔、40・・・ねじ、50・・・押縁、E・・・中心線、F・・・中心線、G・・・隙間寸法、R1・・・直径、R2・・・直径、R3・・・直径、S・・・室内外方向、T・・・中央面。
図1
図2
図3
図4
図5