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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054600
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230407BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
E04H9/02 321F
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163549
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000130374
【氏名又は名称】株式会社コンステック
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公平
(72)【発明者】
【氏名】津之下 睦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅春
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 晶子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康雄
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AC19
2E139AC23
2E139BA03
2E139BA04
2E139BA08
2E139BA12
2E139BA14
2E139BD03
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】より優れた制振性能を有する制振構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の制振構造1は、上側横架材に固定される上側支持部材2と、下側横架材に固定される下側支持部材3と、上側および下側接合部材5、6を介して上側および下側支持部材2、3と接合される制振装置4とを備え、上側および下側接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61が、第2の方向X2において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに固定され、上側および下側接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63が、第1の方向X1の両側において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに直接または間接的に当接するように、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに埋設されることを特徴とする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1の方向に延び、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する木製の上側横架材および下側横架材の間に配置される制振構造であって、
前記制振構造が、
前記上側横架材に固定される木製の上側支持部材と、
前記下側横架材に固定される木製の下側支持部材と、
金属製の上側接合部材を介して前記上側支持部材と接合され、金属製の下側接合部材を介して前記下側支持部材と接合される制振装置と
を備え、
前記上側および下側接合部材のそれぞれが、
前記上側支持部材の下面および前記下側支持部材の上面のそれぞれに固定される本体部と、
前記本体部から前記制振装置に向かって延び、前記制振装置に固定される固定部と、
前記本体部から前記上側および下側支持部材のそれぞれに向かって延び、前記上側および下側支持部材のそれぞれに埋設される支圧部と
を備え、
前記上側および下側接合部材のそれぞれの前記本体部が、前記第2の方向において前記上側および下側支持部材のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、前記上側支持部材の下面および前記下側支持部材の上面のそれぞれに固定され、
前記上側および下側接合部材のそれぞれの前記支圧部が、前記第1の方向の両側において前記上側および下側支持部材のそれぞれに直接または間接的に当接するように、前記上側および下側支持部材のそれぞれに埋設される、
制振構造。
【請求項2】
前記支圧部が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向に延びるように形成される、
請求項1記載の制振構造。
【請求項3】
前記上側および下側接合部材のそれぞれの前記支圧部が、前記第1の方向の両側において前記上側および下側支持部材のそれぞれに間隙調整材を介して間接的に当接するように、前記上側および下側支持部材のそれぞれに埋設される、
請求項1または2記載の制振構造。
【請求項4】
前記上側および下側支持部材のそれぞれが、
前記第1の方向の両側において前記上側および下側横架材のそれぞれに当接するように、前記上側および下側横架材のそれぞれに嵌合され、
前記第2の方向において前記上側および下側横架材のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、前記上側および下側横架材のそれぞれに固定される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の制振構造。
【請求項5】
前記第1および第2の方向を含む面内における前記上側および下側横架材のそれぞれに対する前記上側および下側支持部材のそれぞれの回転剛性と、前記第1の方向における前記制振装置のせん断剛性との比が、(100kN・m/rad)/(1kN/mm)以上である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の制振構造。
【請求項6】
前記制振装置が、
前記上側接合部材の前記固定部に固定される上側固定プレートと、
前記下側接合部材の前記固定部に固定される下側固定プレートと、
前記上側固定プレートと前記下側固定プレートとの間に延び、低降伏点鋼材により形成されるダンパープレートと
を備え、
前記ダンパープレートが、前記第1および第2の方向を含む面内における前記ダンパープレートの中心部に向かって薄肉になるように形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の制振構造。
【請求項7】
前記制振構造が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向の外側に向かって前記制振装置が変形することを抑制する面外拘束材を備え、
前記面外拘束材が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向において前記上側および下側支持部材のそれぞれに当接するように、前記上側および下側支持部材のそれぞれに接続され、
前記面外拘束材が、前記上側および下側支持部材のそれぞれに、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向に延びる軸を中心に回転可能に接続される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造建築物の耐震性や制振性を向上することを目的に、たとえば特許文献1に開示されるような補強体(制振構造)が用いられている。特許文献1の補強体は、上側の梁に固定される第1の支持板と、下側の土台に固定される第2の支持板と、第1の支持板と第2の支持板との間に連結される制震部とを備えている。制震部は、第1の支持板に連結される第1の制震板と、第2の支持板に連結される第2の制震板と、第1の制震板と第2の制震板との間に介在する粘弾性体とを備えている。この補強体では、地震などによって上側の梁と下側の土台とが水平方向に相対変位した際に、第1の支持板および第1の制震板と第2の支持板および第2の制震板とが水平方向に相対変位することで、粘弾性体がせん断変形して震動エネルギーが減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-151967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の補強体では、上側の梁と下側の土台とが水平方向に相対変位すると、支持板と制震部との間には、鉛直方向に互いに離れるように相対移動させようとする引張力と、水平方向に互いに相対移動させようとするせん断力とが生じる。ここで、制震部の制震板は、引張力およびせん断力が生じる方向に対して垂直に延びる釘やビスなどの固定具によって支持板に連結されている。金属製である制震板には固定具を挿通するための挿通孔が設けられており、挿通孔の周囲の内壁と固定具との間にクリアランスが生じている。そのため、上側の梁と下側の土台とが水平方向に相対変位する際に、そのクリアランス分だけ支持板と制震部とが互いに相対移動してしまって、引張力およびせん断力に抵抗することができずに、震動エネルギーを減衰させることができない。金属製である制震板と木製である支持板とを連結する際に、支持板の変形を回避するためにそれほど強固に密着させて固定することもできないために、両者の間には、相対移動を抑制するのに十分な摩擦力を期待することもできない。したがって、特許文献1の補強体では、十分な制振性能を得ることができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、より優れた制振性能を有する制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制振構造は、それぞれが第1の方向に延び、前記第1の方向に略垂直な第2の方向で互いに離間する木製の上側横架材および下側横架材の間に配置される制振構造であって、前記制振構造が、前記上側横架材に固定される木製の上側支持部材と、前記下側横架材に固定される木製の下側支持部材と、金属製の上側接合部材を介して前記上側支持部材と接合され、金属製の下側接合部材を介して前記下側支持部材と接合される制振装置とを備え、前記上側および下側接合部材のそれぞれが、前記上側支持部材の下面および前記下側支持部材の上面のそれぞれに固定される本体部と、前記本体部から前記制振装置に向かって延び、前記制振装置に固定される固定部と、前記本体部から前記上側および下側支持部材のそれぞれに向かって延び、前記上側および下側支持部材のそれぞれに埋設される支圧部とを備え、前記上側および下側接合部材のそれぞれの前記本体部が、前記第2の方向において前記上側および下側支持部材のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、前記上側支持部材の下面および前記下側支持部材の上面のそれぞれに固定され、前記上側および下側接合部材のそれぞれの前記支圧部が、前記第1の方向の両側において前記上側および下側支持部材のそれぞれに直接または間接的に当接するように、前記上側および下側支持部材のそれぞれに埋設されることを特徴とする。
【0007】
また、前記支圧部が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向に延びるように形成されることが好ましい。
【0008】
また、前記上側および下側接合部材のそれぞれの前記支圧部が、前記第1の方向の両側において前記上側および下側支持部材のそれぞれに間隙調整材を介して間接的に当接するように、前記上側および下側支持部材のそれぞれに埋設されることが好ましい。
【0009】
また、前記上側および下側支持部材のそれぞれが、前記第1の方向の両側において前記上側および下側横架材のそれぞれに当接するように、前記上側および下側横架材のそれぞれに嵌合され、前記第2の方向において前記上側および下側横架材のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、前記上側および下側横架材のそれぞれに固定されることが好ましい。
【0010】
また、前記第1および第2の方向を含む面内における前記上側および下側横架材のそれぞれに対する前記上側および下側支持部材のそれぞれの回転剛性と、前記第1の方向における前記制振装置のせん断剛性との比が、(100kN・m/rad)/(1kN/mm)以上であることが好ましい。
【0011】
また、前記制振装置が、前記上側接合部材の前記固定部に固定される上側固定プレートと、前記下側接合部材の前記固定部に固定される下側固定プレートと、前記上側固定プレートと前記下側固定プレートとの間に延び、低降伏点鋼材により形成されるダンパープレートとを備え、前記ダンパープレートが、前記第1および第2の方向を含む面内における前記ダンパープレートの中心部に向かって薄肉になるように形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記制振構造が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向の外側に向かって前記制振装置が変形することを抑制する面外拘束材を備え、前記面外拘束材が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向において前記上側および下側支持部材のそれぞれに当接するように、前記上側および下側支持部材のそれぞれに接続され、前記面外拘束材が、前記上側および下側支持部材のそれぞれに、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向に延びる軸を中心に回転可能に接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より優れた制振性能を有する制振構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る制振構造の概略的な正面図である。
図2図1のII部分の拡大図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図1のV部分の拡大図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8図1のVIII部分の拡大図である。
図9図8の側面図である。
図10図8のX-X線断面図である。
図11図1の面外拘束材の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る制振構造を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の制振構造は以下の例に限定されることはない。
【0016】
本実施形態の制振構造1は、主に木造建築物の耐震性や制振性を向上することを目的に、図1に示されるように、木造建築物の架構に組み込まれて使用される。制振構造1が組み込まれる架構は、それぞれが第1の方向X1(図示された例では水平方向)に延び、第1の方向X1に略垂直な第2の方向X2(図示された例では鉛直方向)で互いに離間する木製の上側横架材UBおよび下側横架材LBを備えている。架構はさらに、それぞれが第2の方向X2に沿って延び、第1の方向X1で互いに離間する木製の第1の柱P1および第2の柱P2を備えている。第1および第2の柱P1、P2のそれぞれは、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに固定されている。
【0017】
第1および第2の柱P1、P2は、第2の方向X2(図示された例では鉛直方向)に延びるように設けられ、木造建築物の上部の荷重を支持する部材である。また、上側および下側横架材UB、LBは、第1および第2の柱P1、P2に対して横方向(図示された例では水平方向)に架け渡され、木造建築物の上部の荷重を支持するとともに、木造建築物の上部の荷重を第1および第2の柱P1、P2に伝達する部材である。本実施形態では、上側横架材UBは、第1および第2の柱P1、P2に対して鉛直方向上側で水平方向に延びるように設けられる梁であり、下側横架材LBは、第1および第2の柱P1、P2に対して鉛直方向下側で水平方向に延びるように設けられる梁または土台である。
【0018】
第1および第2の柱P1、P2のそれぞれと、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとは、本実施形態では、図1に示されるように、同じ種類の柱用固定部材Fを介して互いに固定される。ただし、第1および第2の柱P1、P2のそれぞれと、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとは、たとえば、ほぞ継などの方法により互いに対して直接固定されるなど、公知の固定方法によって互いに固定されてもよい。なお、以下の説明において、第1および第2の柱P1、P2の両方に共通する事項を説明する場合に、第1および第2の柱P1、P2のそれぞれを単に柱P1、P2と呼ぶ場合があり、上側および下側横架材UB、LBの両方に共通する事項を説明する場合に、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれを単に横架材UB、LBと呼ぶ場合がある。
【0019】
柱用固定部材Fは、図2図4に示されるように、柱P1、P2に固定される柱側固定部F1と、横架材UB、LBに固定される横架材側固定部F2と、柱側固定部F1と横架材側固定部F2とを連結する連結部F3とを備えている。柱用固定部材Fは、少なくとも柱P1、P2や横架材UB、LBよりも高い強度を有していればよく、その構成材料は特に限定されることはなく、たとえば鋼材などの硬質材料により形成することができる。
【0020】
柱側固定部F1は、柱P1、P2に当接して固定される部位である。柱側固定部F1は、図2図4に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に対して略垂直な第3の方向X3における柱P1、P2の側面に固定される一対の側面固定プレートF11、F11と、一対の側面固定プレートF11、F11の第2の方向X2の端部同士を連結する端部連結プレートF12とを備えている。一対の側面固定プレートF11、F11は、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、第3の方向X3で柱P1、P2を挟んで柱P1、P2の側面に当接するように配置される。端部連結プレートF12は、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、柱P1、P2の第2の方向X2の、対応する横架材UB、LB側の端面に当接するように配置される。柱側固定部F1は、第3の方向X3に沿って側面固定プレートF11を貫通し、柱P1、P2の内部まで延びるビスなどの固定具B1により、一対の側面固定プレートF11、F11が柱P1、P2の両側の側面に固定されることにより、柱P1、P2に固定される。柱用固定部材Fは、一対の側面固定プレートF11、F11が第3の方向X3で柱P1、P2を挟んで柱P1、P2の側面に当接して固定されることで、柱P1、P2の横架材UB、LBに対する第3の方向X3の相対移動を抑制する。また、柱用固定部材Fは、端部連結プレートF12が柱P1、P2の第2の方向X2の、対応する横架材UB、LB側の端面で当接して固定されることで、柱P1、P2の、対応する横架材UB、LB側への第2の方向X2の相対移動を抑制する。
【0021】
横架材側固定部F2は、横架材UB、LBに当接して固定される部位である。横架材側固定部F2は、図2図4に示されるように、対応する横架材UB、LBに第2の方向X2で面するように設けられ、対応する横架材UB、LBに対して押圧されるようにして固定される。横架材側固定部F2は、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、対応する横架材UB、LBの第2の方向X2の端面に当接するように配置される。横架材側固定部F2は、第2の方向X2に沿って横架材側固定部F2および横架材UB、LBを貫通して延びるボルトとナットの組み合わせなどの固定具B2によって、対応する横架材UB、LBに固定される。横架材側固定部F2は、横架材側固定部F2および横架材UB、LBを固定具B2によって強固に固定することによって、横架材UB、LBに対して押圧されるようにして固定される。
【0022】
連結部F3は、柱側固定部F1と横架材側固定部F2とを第2の方向X2で互いに連結し、柱側固定部F1と横架材側固定部F2とを互いに対して支持する。連結部F3は、第1および第2の方向X1、X2に沿って延び、一対の側面固定プレートF11、F11のそれぞれから連続して一体的に形成される一対の端側連結プレートF31、F31と、第2および第3の方向X2、X3に沿って延び、一対の端側連結プレートF31、F31の間で、一対の端側連結プレートF31、F31の第1の方向X1の略中央に形成される中央側連結プレートF32とを備えている。一対の端側連結プレートF31、F31が第1の方向X1に沿って延びるように形成されることで、一対の側面固定プレートF11、F11の第1の方向X1への変形が抑制され、一対の端側連結プレートF31、F31が第3の方向X3で離間して配置され、中央側連結プレートF32が第3の方向X3に沿って延びるように形成されることで、一対の側面固定プレートF11、F11の第3の方向X3への変形が抑制される。
【0023】
制振構造1は、図1に示されるように、上側横架材UBと下側横架材LBとの間に配置されて、地震動や風などの外乱を受けることにより木造建築物の架構に生じる振動エネルギーを減衰させる。制振構造1は、上側横架材UBに固定される木製の上側支持部材2と、下側横架材LBに固定される木製の下側支持部材3と、上側支持部材2および下側支持部材3に接合される制振装置4とを備えている。制振構造1では、上側および下側横架材UB、LBで生じた振動エネルギーを上側および下側支持部材2、3を介して制振装置4に伝達し、伝達された振動エネルギーを制振装置4により減衰させる。
【0024】
上側支持部材2は、上側横架材UBに固定されるとともに制振装置4に接合されて、上側横架材UBに対して制振装置4を支持する部材である。上側支持部材2は、地震動などにより生じる上側横架材UBの変位を制振装置4に伝達する。上側支持部材2は、上側横架材UBに対して制振装置4を支持し、上側横架材UBの変位を制振装置4に伝達することができればよく、その形状は特に限定されない。上側支持部材2は、本実施形態では、図1に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、上端側が上側横架材UBに固定され、下端側が制振装置4に接合される。上側支持部材2は、特に限定されることはなく、直交集成材(CLT)、単板積層材(LVL)、集成材、無垢材などにより形成される。
【0025】
上側支持部材2は、上側横架材UBに対して制振装置4を支持し、上側横架材UBの変位を制振装置4に伝達するように上側横架材UBに固定されていればよく、上側横架材UBに対する固定方法は特に限定されない。本実施形態では、上側支持部材2は、図1に示されるように、第1の方向X1の両側において上側横架材UBに当接するように、上側横架材UBに嵌合される。つまり、第1の方向X1において上側支持部材2と上側横架材UBとの間にクリアランスが設けられることなく、上側支持部材2と上側横架材UBとが互いに嵌合される。これにより、上側横架材UBが第1の方向X1に変位した際に、第1の方向X1における上側横架材UBと上側支持部材2との間の相対移動が抑制されるので、上側横架材UBの第1の方向X1の変位が上側支持部材2に伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。本実施形態では、図1に示されるように、上側支持部材2に設けられた凸部21が上側横架材UBに設けられた凹部UB1に嵌入されることで、上側支持部材2と上側横架材UBとが互いに嵌合されている。しかし、上側支持部材2に凹部が設けられ、上側横架材UBに凸部が設けられ、上側横架材UBの凸部が上側支持部材2の凹部に嵌入されることで、上側支持部材2と上側横架材UBとが互いに嵌合されてもよい。
【0026】
上側支持部材2はさらに、図1に示されるように、第2の方向X2において上側横架材UBに対して互いに近接する方向に押圧されて、上側横架材UBに固定される。つまり、上側支持部材2と上側横架材UBとは、第2の方向X2において互いに対して押圧されるように互いに対して固定される。これにより、上側支持部材2と上側横架材UBとの間に第2の方向X2で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで上側支持部材2の上側横架材UBに対する第2の方向X2の相対移動が抑制される。たとえば下側横架材LBに対して上側横架材UBが第1の方向X1に大きく相対変位する場合、上側支持部材2には、第1および第2の方向X1、X2を含む面(図1の紙面)内で、上側支持部材2が上側横架材UBに対して相対回転する方向に力が加わる。上側支持部材2が上側横架材UBに対して相対回転してしまうと、上側横架材UBの第1の方向X1の変位を上側支持部材2に正確に伝達することができない。それに対して、本実施形態では、上側支持部材2の上側横架材UBに対する第2の方向X2の相対移動が抑制されているので、上側支持部材2の上側横架材UBに対する相対回転が抑制されて、上側横架材UBの第1の方向X1の変位が上側支持部材2に伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。
【0027】
上側支持部材2は、上述した理由により、上側横架材UBと下側横架材LBとが第1の方向X1で相対変位した際に、第1および第2の方向X1、X2を含む面内での上側横架材UBに対する相対回転が抑制されるように、上側横架材UBに固定されることが好ましい。そのような観点から、第1および第2の方向X1、X2を含む面内における上側横架材UBに対する上側支持部材2の回転剛性が第1の方向X1における制振装置4のせん断剛性よりも大きくなるように、上側支持部材2が上側横架材UBに固定されることが好ましい。それにより、少なくとも制振装置4が第1の方向X1でせん断力を受けて変形する前に、上側支持部材2が上側横架材UBに対して相対回転するのを抑制することができ、上側横架材UBの変位を上側支持部材2に、より正確に伝達することができる。同様の観点から、第1および第2の方向X1、X2を含む面内における上側横架材UBに対する上側支持部材2の回転剛性と、第1の方向X1における制振装置4のせん断剛性との比が、(100kN・m/rad)/(1kN/mm)以上であるように、上側支持部材2が上側横架材UBに固定されることが好ましい。たとえば、本実施形態では、図1に示されるように、第1の方向X1における上側支持部材2の両端側において、上側支持部材2と上側横架材UBとが第2の方向X2で互いに押圧されて、上側支持部材2と上側横架材UBとが互いに固定される。このようにして第1の方向X1における上側支持部材2の両端側を上側横架材UBに固定することで、上側支持部材2の上側横架材UBに対する回転剛性を高め、上側支持部材2の上側横架材UBに対する相対回転を抑制することができる。その他にも、上側支持部材2の第1の方向X1の長さを長くするなどして調整することによっても、上側支持部材2の上側横架材UBに対する回転剛性を高めるなどの調整が可能である。
【0028】
上側支持部材2および上側横架材UBは、第2の方向X2で互いに対して押圧されるように互いに対して固定することができればよく、その固定方法は特に限定されない。本実施形態では、図1および図5図7に示されるように、上側支持部材2および上側横架材UBは、支持部材用固定部材7を介して互いに対して固定される。なお、支持部材用固定部材7は、上側支持部材2を上側横架材UBに固定するだけでなく、下側支持部材3を下側横架材LBに固定するためにも使用される。支持部材用固定部材7の詳細は、以下において、下側支持部材3の説明とともに説明する。
【0029】
下側支持部材3は、下側横架材LBに固定されるとともに制振装置4に接合されて、下側横架材LBに対して制振装置4を支持する部材である。下側支持部材3は、地震動などにより生じる下側横架材LBの変位を制振装置4に伝達する。下側支持部材3は、下側横架材LBに対して制振装置4を支持し、下側横架材LBの変位を制振装置4に伝達することができればよく、その形状は特に限定されない。下側支持部材3は、本実施形態では、図1に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、上端側が制振装置4に接合され、下端側が下側横架材LBに固定される。下側支持部材3は、特に限定されることはなく、直交集成材(CLT)、単板積層材(LVL)、集成材、無垢材などにより形成される。
【0030】
下側支持部材3は、下側横架材LBに対して制振装置4を支持し、下側横架材LBの変位を制振装置4に伝達するように下側横架材LBに固定されていればよく、下側横架材LBに対する固定方法は特に限定されない。本実施形態では、下側支持部材3は、第1の方向X1の両側において下側横架材LBに当接するように、下側横架材LBに嵌合される。つまり、第1の方向X1において下側支持部材3と下側横架材LBとの間にクリアランスが設けられることなく、下側支持部材3と下側横架材LBとが互いに嵌合される。これにより、下側横架材LBが第1の方向X1に変位した際に、第1の方向X1における下側横架材LBと下側支持部材3との間の相対移動が抑制されるので、下側横架材LBの第1の方向X1の変位が下側支持部材3に伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。本実施形態では、図1に示されるように、下側支持部材3に設けられた凸部31が下側横架材LBに設けられた凹部LB1に嵌入されることで、下側支持部材3と下側横架材LBとが互いに嵌合されている。しかし、下側支持部材3に凹部が設けられ、下側横架材LBに凸部が設けられ、下側横架材LBの凸部が下側支持部材3の凹部に嵌入されることで、下側支持部材3と下側横架材LBとが互いに嵌合されてもよい。
【0031】
下側支持部材3はさらに、図1に示されるように、第2の方向X2において下側横架材LBに対して互いに近接する方向に押圧されて、下側横架材LBに固定される。つまり、下側支持部材3と下側横架材LBとは、第2の方向X2において互いに対して押圧されるように互いに対して固定される。これにより、下側支持部材3と下側横架材LBとの間に第2の方向X2で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで下側支持部材3の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動が抑制される。たとえば下側横架材LBに対して上側横架材UBが第1の方向X1に大きく相対変位する場合、下側支持部材3には、第1および第2の方向X1、X2を含む面(図1の紙面)内で、下側支持部材3が下側横架材LBに対して相対回転する方向に力が加わる。下側支持部材3が下側横架材LBに対して相対回転してしまうと、下側横架材LBの第1の方向X1の変位を下側支持部材3に正確に伝達することができない。それに対して、本実施形態では、下側支持部材3の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動が抑制されているので、下側支持部材3の下側横架材LBに対する相対回転が抑制されて、下側横架材LBの第1の方向X1の変位が下側支持部材3に伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。
【0032】
下側支持部材3は、上述した理由により、上側横架材UBと下側横架材LBとが第1の方向X1で相対変位した際に、第1および第2の方向X1、X2を含む面内での下側横架材LBに対する相対回転が抑制されるように、下側横架材LBに固定されることが好ましい。そのような観点から、第1および第2の方向X1、X2を含む面内における下側横架材LBに対する下側支持部材3の回転剛性が第1の方向X1における制振装置4のせん断剛性よりも大きくなるように、下側支持部材3が下側横架材LBに固定されることが好ましい。それにより、少なくとも制振装置4が第1の方向X1でせん断力を受けて変形する前に、下側支持部材3が下側横架材LBに対して相対回転するのを抑制することができ、下側横架材LBの変位を下側支持部材3に、より正確に伝達することができる。同様の観点から、第1および第2の方向X1、X2を含む面内における下側横架材LBに対する下側支持部材3の回転剛性と、第1の方向X1における制振装置4のせん断剛性との比が、(100kN・m/rad)/(1kN/mm)以上であるように、下側支持部材3が下側横架材LBに固定されることが好ましい。たとえば、本実施形態では、図1に示されるように、第1の方向X1における下側支持部材3の両端側において、下側支持部材3と下側横架材LBとが第2の方向X2で互いに押圧されて、下側支持部材3と下側横架材LBとが互いに固定される。このようにして第1の方向X1における下側支持部材3の両端側を下側横架材LBに固定することで、下側支持部材3の下側横架材LBに対する回転剛性を高め、下側支持部材3の下側横架材LBに対する相対回転を抑制することができる。その他にも、下側支持部材3の第1の方向X1の長さを長くするなどして調整することによっても、下側支持部材3の下側横架材LBに対する回転剛性を高めるなどの調整が可能である。
【0033】
下側支持部材3および下側横架材LBは、第2の方向X2で互いに対して押圧されるように互いに対して固定することができればよく、その固定方法は特に限定されない。本実施形態では、図1および図5図7に示されるように、下側支持部材3および下側横架材LBは、支持部材用固定部材7を介して互いに対して固定される。なお、以下では、下側支持部材3と下側横架材LBとの間の固定を例に挙げて支持部材用固定部材7を説明するが、以下の説明と同様の方法で、上側支持部材2と上側横架材UBとの間の固定に支持部材用固定部材7が適用可能である。
【0034】
支持部材用固定部材7は、図5図7に示されるように、下側支持部材3に固定される支持部材側固定部71と、下側横架材LBに固定される横架材側固定部72と、支持部材側固定部71と横架材側固定部72とを連結する連結部73とを備えている。支持部材用固定部材7は、少なくとも下側横架材LB(および上側横架材UB)および下側支持部材3(および上側支持部材2)よりも高い強度を有していれば、その構成材料は特に限定されることはなく、鋼材などの硬質材料により形成される。
【0035】
支持部材側固定部71は、下側支持部材3に当接して固定される部位である。支持部材側固定部71は、図5図7に示されるように、第3の方向X3における下側支持部材3の側面に固定される一対の固定プレート71a、71aと、一対の固定プレート71a、71aの第2の方向X2の下側横架材LB側の端部同士を連結する連結プレート71bとを備えている。一対の固定プレート71a、71aはそれぞれ、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、第3の方向X3で下側支持部材3を挟んで下側支持部材3の側面に当接するように配置される。連結プレート71bは、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、下側支持部材3の第2の方向X2の下面33に当接するように配置される。支持部材側固定部71は、第3の方向X3に沿って固定プレート71aを貫通し、下側支持部材3の内部にまで延びるビスなどの固定具B3により、一対の固定プレート71a、71aが下側支持部材3の両側の側面に固定されることにより、下側支持部材3に固定される。支持部材側固定部71を下側支持部材3にビスで固定することによって、ビスと下側支持部材3との間にクリアランスが生じることがないので、下側支持部材3と支持部材側固定部71との間の相対移動を抑制することができる。支持部材用固定部材7は、一対の固定プレート71a、71aが第3の方向X3で下側支持部材3を挟んで下側支持部材3に当接して固定されることで、下側支持部材3の下側横架材LBに対する第3の方向X3の相対移動を抑制する。また、支持部材用固定部材7は、連結プレート71bが下側支持部材3の第2の方向X2の下面33で当接して固定されることで、下側支持部材3の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動を抑制する。
【0036】
横架材側固定部72は、下側横架材LBに当接して固定される部位である。横架材側固定部72は、図5図7に示されるように、下側横架材LBに第2の方向X2で面するように設けられ、下側横架材LBに対して押圧されるようにして固定される。横架材側固定部72は、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、下側横架材LBの第2の方向X2の上面に当接するように配置される。横架材側固定部72は、固定具B4によって、下側横架材LBに対して押圧されるように固定される。固定具B4は、本実施形態では、第2の方向X2に沿って横架材側固定部72および下側横架材LBを貫通する固定ボルトとナットの組み合わせである。固定具B4は、固定ボルトとナットとを互いに締め付けることにより、横架材側固定部72と下側横架材LBとを第2の方向X2で互いに近づく方向に引き寄せて固定する。支持部材用固定部材7は、横架材側固定部72が下側横架材LBに対して押圧されるように固定されることで、下側支持部材3と下側横架材LBとの間の互いに引き離そうとする引張力に抵抗して、下側支持部材3の下側横架材LBに対する第2の方向X2の相対移動を抑制する。なお、固定具B4は、横架材側固定部72と下側横架材LBとを第2の方向X2で互いに近づく方向に引き寄せて固定することができればよく、固定ボルトとナットの組み合わせ以外にも、たとえば第2の方向X2に沿って延びるビスなどであってもよい。
【0037】
連結部73は、支持部材側固定部71と横架材側固定部72とを第2の方向X2で互いに連結し、支持部材側固定部71と横架材側固定部72とを互いに対して支持する。連結部73は、それぞれが第2および第3の方向X2、X3に沿って延び、第1の方向X1で互いに離間して配置される3つの板状のプレートにより構成されている。連結部73は、それぞれのプレートが第2および第3の方向X2、X3に沿って延びることで、支持部材側固定部71の横架材側固定部72に対する第3の方向X3への回転剛性を高める。また、連結部73は、それぞれのプレートが第1の方向X1に沿って離間して配置されることで、支持部材側固定部71の横架材側固定部72に対する第1の方向X1への回転剛性を高める。
【0038】
制振装置4は、上側横架材UBおよび下側横架材LBから上側支持部材2および下側支持部材3を介して伝達される振動エネルギーを減衰させる装置である。制振装置4は、本実施形態では、図1に示されるように、金属製の上側接合部材5を介して上側支持部材2と接合され、金属製の下側接合部材6を介して下側支持部材3と接合される。したがって、制振装置4は、上側および下側接合部材5、6を介して振動エネルギーが伝達され、伝達された振動エネルギーを減衰させる。
【0039】
制振装置4は、伝達される振動エネルギーを減衰させることができれば、その構成は特に限定されることはない。制振装置4としては、たとえば公知の鋼材ダンパー、鉛ダンパー、粘弾性ダンパー、オイルダンパーなどを採用することができる。本実施形態では、制振装置4は、図8図10に示されるように、上側接合部材5の後述する固定部52に固定される上側固定プレート41と、下側接合部材6の後述する固定部62に固定される下側固定プレート42と、上側固定プレート41と下側固定プレート42との間に延び、低降伏点鋼材により形成されるダンパープレート43とを備えている。本実施形態における制振装置4では、振動エネルギーが伝達された際にダンパープレート43が塑性変形することにより、振動エネルギーが減衰される。木造建築物においては、鉄骨造建築物よりも大きな変形が生じるが、本実施形態のように低降伏点鋼材により形成されるダンパープレート43を備えることで、そのような大きな変形に対しても追従して振動エネルギーを減衰させることができる。
【0040】
上側および下側固定プレート41、42はそれぞれ、上側および下側接合部材5、6のそれぞれに固定されて、上側および下側接合部材5、6を介して伝達される振動エネルギーをダンパープレート43に伝達する。上側および下側固定プレート41、42はそれぞれ、本実施形態では、図8図10に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成される。上側および下側固定プレート41、42は、上側および下側接合部材5、6を介して振動エネルギーが伝達された際に、ダンパープレート43が塑性変形する前に塑性変形しない強度を有していればよく、特に限定されることはないが、ダンパープレート43よりも高い降伏点を有するたとえば普通鋼材により形成することができる。
【0041】
ダンパープレート43は、上側および下側固定プレート41、42を介して振動エネルギーが伝達された際に、上側および下側固定プレート41、42よりも優先的に塑性変形して、振動エネルギーを減衰させる。たとえば、図1において、上側および下側横架材UB、LBが第1の方向X1で互いに対して相対変位した場合、上側および下側支持部材2、3が第1の方向X1で互いに対して相対変位し、それに伴ってダンパープレート43は、第1の方向X1に沿ってせん断力を受ける。ダンパープレート43は、所定以上のせん断力を受けたときに塑性変形して、振動エネルギーを減衰させる。ダンパープレート43は、本実施形態では、図8および図9に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、第1および第2の方向X1、X2を含む面(図8の紙面)内におけるダンパープレート43の中心部に向かって薄肉になるように形成されている(薄肉部43a参照)。これにより、ダンパープレート43に振動エネルギーが伝達された際に、ダンパープレート43の全体に応力を分散させることができ、ダンパープレート43の上側および下側固定プレート41、42との接続部分近傍に応力が集中するのを抑制することができる。したがって、ダンパープレート43の上側および下側固定プレート41、42との接続部分近傍における局所的な破壊が抑制される。
【0042】
ダンパープレート43は、本実施形態では、図8に示されるように、正面視で、第1の方向X1に沿って短手軸を有し、第2の方向X2に沿って長手軸を有する形状(図示された例では略長方形状)を有している。このようにダンパープレート43が、上側および下側横架材UB、LBの延びる第1の方向X1に対して垂直な第2の方向X2に沿って長手軸を有するように形成されることで、第1の方向X1に沿った大きな変形に追従して振動エネルギーを減衰させることができる。そのような観点から、ダンパープレート43の第1の方向X1の長さと第2の方向X2の長さとの比が、1:1~1:2の範囲内であることが好ましく、1:1.1~1:1.5の範囲内であることがさらに好ましい。本実施形態では、ダンパープレート43が、正面視で、第1の方向X1に沿って短手軸を有し、第2の方向X2に沿って長手軸を有する形状に形成されていることに伴って、ダンパープレート43の薄肉部43aが、正面視で、第1の方向X1に沿って短手軸を有し、第2の方向X2に沿って長手軸を有する形状(図示された例では略楕円形状)に形成されている。略楕円形状の薄肉部43aは、略楕円の中心に向かって、より薄肉になるように形成されている。
【0043】
上側および下側接合部材5、6はそれぞれ、制振装置4を上側および下側支持部材2、3のそれぞれに接合し、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれから上側および下側支持部材2、3のそれぞれに伝達された振動エネルギーを制振装置4に伝達する。上側および下側接合部材5、6のそれぞれは、図8図10に示されるように、本体部51、61、固定部52、62、および支圧部53、63を備えている。上側および下側接合部材5、6のそれぞれは、本体部51、61、固定部52、62、および支圧部53、63が一体として形成されている。上側および下側接合部材5、6のそれぞれは、第2および第3の方向X2、X3に沿って延び、本体部51、61と固定部52、62との間に接続されるリブ54、64を備えていてもよい。上側および下側接合部材5、6は、リブ54、64を備えることにより、本体部51、61の第2の方向X2などへの変形や、固定部52、62の第3の方向X3などへの変形が抑制される。上側および下側接合部材5、6は、少なくとも振動エネルギーを伝達する際に制振装置4が変形する前に変形されない強度を有する金属により形成されていればよく、特に限定されることはないが、たとえば鋼材などの硬質金属材料により形成することができる。
【0044】
上側および下側接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61は、図8図10に示されるように、上側支持部材2の下面22および下側支持部材3の上面32のそれぞれに固定される部位である。上側および下側接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61は、第2の方向X2において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、上側支持部材2の下面22および下側支持部材3の上面32のそれぞれに固定される。これにより、本体部51、61を含む上側および下側接合部材5、6と上側および下側支持部材2、3との間に第2の方向X2で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで上側および下側接合部材5、6の上側および下側支持部材2、3に対する第2の方向X2の相対移動が抑制される。たとえば、上側横架材UBと下側横架材LBとが第1の方向X1で互いに相対変位した場合、上側および下側接合部材5、6には、第1および第2の方向X1、X2を含む面(図8の紙面)内で、上側および下側接合部材5、6が上側および下側支持部材2、3に対して相対回転する方向に力が加わる。上側および下側接合部材5、6が上側および下側支持部材2、3に対して相対回転してしまうと、上側および下側横架材UB、LBの変位を上側および下側支持部材2、3を介して上側および下側接合部材5、6に正確に伝達することができない。それに対して、本実施形態では、上側および下側接合部材5、6の上側および下側支持部材2、3に対する第2の方向X2の相対移動が抑制されているので、上側および下側接合部材5、6の上側および下側支持部材2、3に対する相対回転が抑制されて、上側および下側支持部材2、3から上側および下側接合部材5、6に上側および下側横架材UB、LBの変位を伝達する際に、伝達のロスを抑えることができ、変位をより正確に伝達することができる。
【0045】
上側および下側接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61は、少なくとも上側および下側支持部材2、3に対して第2の方向X2で押圧されるように、上側および下側支持部材2、3に固定されればよく、その形状や固定方法は特に限定されない。本体部51、61は、本実施形態では、図8図10に示されるように、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、上側支持部材2の下面22および下側支持部材3の上面32に当接するように配置される。本体部51、61は、固定具B5によって、上側支持部材2の下面22および下側支持部材3の上面32に固定される。固定具B5は、本実施形態では、本体部51、61ならびに上側および下側支持部材2、3の少なくとも一部を貫通する固定ボルトとナットの組み合わせである、固定具B5は、本体部51、61の上側および下側支持部材2、3とは反対側の端面から、上側支持部材2の下面22および下側支持部材3の上面32を介して、上側および下側支持部材2、3の第2の方向X2の内部に形成された空洞23、34まで、第2の方向X2に沿って延びるように設けられる。固定具B5は、固定ボルトとナットとを互いに締め付けることにより、本体部51、61と上側および下側支持部材2、3とを第2の方向X2で互いに近づく方向に引き寄せて固定する。なお、固定具B5は、本体部51、61と上側および下側支持部材2、3とを第2の方向X2で互いに近づく方向に引き寄せて固定することができればよく、固定ボルトとナットの組み合わせ以外にも、たとえば第2の方向X2に沿って延びるビスなどであってもよい。
【0046】
上側および下側接合部材5、6のそれぞれの固定部52、62は、図8図10に示されるように、本体部51、61から制振装置4に向かって延び、制振装置4に固定される部位である。固定部52、62は、制振装置4に対する相対移動が抑制されるように制振装置4に固定される。これにより、上側および下側接合部材5、6は、上側および下側接合部材5、6に伝達された変位を制振装置4に伝達する際に、伝達のロスを抑えて、変位をより正確に伝達することができる。
【0047】
固定部52、62は、制振装置4に対する相対移動が抑制されるように制振装置4に固定されればよく、その形状や固定方法は特に限定されない。本実施形態では、固定部52、62は、図8図10に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、本体部51、61の第3の方向X3の略中心から第2の方向X2に沿って立設している。固定部52、62のそれぞれは、制振装置4の上側および下側固定プレート41、42のそれぞれに、固定部52、62と上側および下側固定プレート41、42とを第3の方向X3に沿って貫通するボルトとナットの組み合わせなどの固定具B6によって固定される。ここで、固定部52、62と上側および下側固定プレート41、42とは共に金属製であり、互いに対して突き合わせて高張力ボルトなどで強固に固定することで、互いに対して摩擦接合されて、互いに対する相対移動が抑制される。
【0048】
上側および下側接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63は、図8図10に示されるように、本体部51、61から上側および下側支持部材2、3のそれぞれに向かって延び、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに埋設される部位である。上側および下側接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63は、第1の方向X1の両側において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに直接または間接的に当接するように、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに埋設される。つまり、第1の方向X1において支圧部53、63と上側および下側支持部材2、3との間にクリアランスが設けられることなく、支圧部53、63が上側および下側支持部材2、3に埋設される。これにより、上側および下側横架材UB、LBの第1の方向X1での変位に伴って上側および下側支持部材2、3が第1の方向X1で変位した際に、第1の方向X1における上側および下側接合部材5、6と上側および下側支持部材2、3との間の相対移動が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBの第1の方向X1の変位を上側および下側接合部材5、6に伝達する際のロスを抑えることができ、より正確に変位を伝達することができる。
【0049】
支圧部53、63は、少なくとも第1の方向X1の両側において上側および下側支持部材2、3と直接または間接的に当接するように、上側および下側支持部材2、3に埋設されるように構成されていればよく、その形状や埋設方法は特に限定されない。本実施形態では、支圧部53、63は、図8図10に示されるように、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)に延びるように形成される。つまり、支圧部53、63は、第2および第3の方向X2、X3を含む面内で拡張するように形成される。このように支圧部53、63が第1の方向X1に対して略垂直な第2および第3の方向X2、X3を含む面内で拡張するように形成されることで、上側および下側支持部材2、3から受ける第1の方向X1に沿ったせん断力に強固に抵抗して変形が抑制されながら拡幅部22、32とともに変位することができ、上側および下側支持部材2、3を介して伝達される上側および下側横架材UB、LBの第1の方向X1の変位をより正確に伝達することができる。また、支圧部53、63は、第3の方向X3に沿って延びるように形成することで、第1の方向X1のせん断力に対する抵抗力を上げることができるので、第2の方向X2の長さを短くすることができる。それによって、上側および下側支持部材2、3に設ける埋設凹部を浅くすることができ、支圧部53、63の強度を高く保つことができる。
【0050】
上側および下側接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63は、本実施形態では、図8に示されるように、第1の方向X1の両側において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに間隙調整材Gを介して間接的に当接するように、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに埋設される。支圧部53、63を第1の方向X1の両側で上側および下側支持部材2、3に当接させるために間隙調整材Gを用いることで、支圧部53、63と、支圧部53、63が埋設される上側および下側支持部材2、3の埋設凹部とに精密な設計精度が要求されないため、支圧部53、63ならびに上側および下側支持部材2、3を安価かつ容易に作製することができる。ただし、支圧部53、63は、間隙調整材Gを介することなく第1の方向X1の両側において上側および下側支持部材2、3と直接当接するように、上側および下側支持部材2、3に埋設されてもよい。
【0051】
間隙調整材Gは、第1の方向X1の両側における支圧部53、63と上側および下側支持部材2、3との間に生じる間隔を充填することができればよく、その構成材料は特に限定されない。間隙調整材Gは、たとえば、エポキシ樹脂などの公知の樹脂により構成することができる。間隙調整材Gは、たとえば、上側および下側支持部材2、3の埋設凹部に支圧部53、63が挿入された後、第1の方向X1の両側における支圧部53、63と上側および下側支持部材2、3との間に生じた間隙に挿入することができる。
【0052】
以上に示したように、本実施形態の制振構造1では、制振装置4が固定される上側および下側接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61が、第2の方向X2において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、上側支持部材2の下面22および下側支持部材3の上面32のそれぞれに固定される。これにより、上側および下側接合部材5、6の上側および下側支持部材2、3に対する第2の方向X2の相対移動が抑制され、それに伴って上側および下側接合部材5、6の上側および下側支持部材2、3に対する相対回転が抑制される。さらに、本実施形態の制振構造1では、上側および下側接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63が、第1の方向X1の両側において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに直接または間接的に当接するように、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに埋設される。これにより、第1の方向X1における上側および下側接合部材5、6と上側および下側支持部材2、3との間の相対移動が抑制される。したがって、本実施形態の制振構造1では、上側および下側横架材UB、LBが第1の方向X1で互いに相対変位する際に、その相対変位の初期段階から、第1および第2の方向X1、X2の両方において、上側および下側接合部材5、6の上側および下側支持部材2、3に対する相対移動が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBの第1の方向X1の変位を上側および下側接合部材5、6に伝達する際のロスを抑えることができ、より正確に変位を伝達することができる。それにより、本実施形態の制振構造1では、より優れた制振性能を発揮することができる。
【0053】
制振構造1は、図1および図11に示されるように、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)の外側に向かって制振装置4が変形することを抑制する面外拘束材8を備えていてもよい。図示された例では、面外拘束材8は、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)において上側および下側支持部材2、3のそれぞれに当接するように、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに接続されている。それにより、上側および下側支持部材2、3が、第3の方向X3で互いに対して相対移動しようとすると、面外拘束材8がその相対移動の障害となるので、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3での相対移動に伴う制振装置4の第3の方向X3での変形を抑制することができる。このように制振装置4の第3の方向X3での変形を抑制することで、制振装置4の制振性能を維持することができる。
【0054】
面外拘束材8は、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3での相対移動を抑制し、制振装置4の第3の方向X3での変形を抑制することができればよく、その形状は特に限定されることはない。面外拘束材8は、本実施形態では、図1および図11に示されるように、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3の側面に対して、第3の方向X3に略垂直な面で面接触するように形成されている。面外拘束材8は、第3の方向X3に略垂直な面で上側および下側支持部材2、3と面接触することで、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3での相対移動に対する抵抗力が大きくなり、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3での相対移動をより確実に抑制することができる。面外拘束材8は、上側および下側支持部材2、3が第3の方向X3で相対移動しようとする際に、上側および下側支持部材2、3から第3の方向X3で受ける押圧力に抵抗する強度を有していることが好ましく、たとえば鋼材などの硬質材料により形成されることが好ましい。
【0055】
面外拘束材8は、さらに、上側および下側支持部材2、3のそれぞれに、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)に延びる軸Y1、Y2を中心に回転可能に接続されている。これにより、上側および下側横架材UB、LBが第1の方向X1で互いに対して相対移動して、それに伴って上側および下側支持部材2、3が第1の方向X1で互いに対して相対移動しようとするときに、面外拘束材8が上側および下側支持部材2、3に対して第3の方向X3に延びる軸Y1、Y2を中心に相対回転することで、上側および下側支持部材2、3の第1の方向X1での互いに対する相対移動の規制が抑えられる。したがって、上側および下側支持部材2、3に伝達された、上側および下側横架材UB、LBの第1の方向X1での相対変位を、上側および下側接合部材5、6ならびに制振装置4に、より正確に伝達することができる。
【0056】
面外拘束材8は、本実施形態では、図11に示されるように、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3における両側の側面に設けられている。両側の面外拘束材8、8は、上側支持部材2において共通の軸Y1を中心に回転可能に互いに軸支され、下側支持部材3において共通の軸Y2を中心に回転可能に互いに軸支される。上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3における両側に面外拘束材8が設けられることで、上側および下側支持部材2、3の第3の方向X3での相対移動をより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 制振構造
2 上側支持部材
21 凸部
22 下面
23 空洞
3 下側支持部材
31 凸部
32 上面
33 下面
34 空洞
4 制振装置
41 上側固定プレート
42 下側固定プレート
43 ダンパープレート
43a 薄肉部
5 上側接合部材
51 本体部
52 固定部
53 支圧部
54 リブ
6 下側接合部材
61 本体部
62 固定部
63 支圧部
64 リブ
7 支持部材用固定部材
71 支持部材側固定部
71a 固定プレート
71b 連結プレート
72 横架材側固定部
73 連結部
8 面外拘束材
B1、B2、B3、B4、B5、B6 固定具
F 柱用固定部材
F1 柱側固定部
F11 側面固定プレート
F12 端部連結プレート
F2 横架材側固定部
F3 連結部
F31 端側連結プレート
F32 中央側連結プレート
G 間隙調整材
LB 下側横架材
LB1 凹部
P1 第1の柱
P2 第2の柱
UB 上側横架材
UB1 凹部
X1 第1の方向
X2 第2の方向
X3 第3の方向
Y1、Y2 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11