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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054601
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20230407BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
E04H9/02 321B
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163550
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000130374
【氏名又は名称】株式会社コンステック
(71)【出願人】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公平
(72)【発明者】
【氏名】津之下 睦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅春
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 晶子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 匠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 章博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 康雄
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AA05
2E139AC19
2E139AC23
2E139BA03
2E139BA04
2E139BA08
2E139BA12
2E139BA14
3J048AA06
3J048AC06
3J048BC09
3J048BE10
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】より優れた制振性能を有する制振構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の制振構造1は、第1の方向X1に延びる木製の第1および第2の柱2、3と、第1の方向X1に対して略垂直な第2の方向X2に延び、第1および第2の柱2、3に固定される木製の上側および下側横架材UB、LBとを備える架構において、第1の柱2と第2の柱3との間に制振装置4が配置された制振構造1であって、第1および第2の柱2、3のそれぞれが、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに固定される柱本体部21、31と、柱本体部21、31と一体に形成され、柱本体部21、31から他方の柱2、3に向かって拡幅する拡幅部22、32とを備え、拡幅部22、32と上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとの間には空間Sが設けられ、制振装置4が、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に接合されることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが第1の方向に延びる木製の第1の柱および第2の柱と、前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に延び、前記第1および第2の柱に固定される木製の上側横架材および下側横架材とを備える架構において、前記第1の柱と前記第2の柱との間に制振装置が配置された制振構造であって、
前記第1および第2の柱のそれぞれが、
前記上側および下側横架材のそれぞれに固定される柱本体部と、
前記柱本体部と一体に形成され、前記柱本体部から他方の柱に向かって拡幅する拡幅部と
を備え、
前記拡幅部と前記上側および下側横架材のそれぞれとの間には空間が設けられ、
前記制振装置が、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に接合される、
制振構造。
【請求項2】
前記制振装置が、金属製の第1の接合部材を介して前記第1の柱の前記拡幅部に接合され、金属製の第2の接合部材を介して前記第2の柱の前記拡幅部に接合され、
前記第1および第2の接合部材のそれぞれが、前記第1の方向の両側において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に直接または間接的に当接するとともに、前記第2の方向において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に対して互いに近接する方向に押圧されるように、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に固定される、
請求項1記載の制振構造。
【請求項3】
前記第1および第2の接合部材のそれぞれが、前記第2の方向に延びる固定ボルトによって、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に固定され、
前記固定ボルトが挿入される前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部の挿入孔の周壁と前記固定ボルトとの間に間隙調整材が設けられる、
請求項2記載の制振構造。
【請求項4】
前記第1および第2の接合部材のそれぞれが、
前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部の側面に固定される本体部と、
前記本体部から前記制振装置に向かって延び、前記制振装置に固定される固定部と、
前記本体部から前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に向かって延び、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に埋設される支圧部と
を備え、
前記第1および第2の接合部材のそれぞれの前記本体部が、前記第2の方向において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に対して互いに近接する方向に押圧されて、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部の側面に固定され、
前記第1および第2の接合部材のそれぞれの前記支圧部が、前記第1の方向の両側において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に直接または間接的に当接するように、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に埋設される、
請求項2記載の制振構造。
【請求項5】
前記第1および第2の柱のそれぞれの柱本体部が、
前記第1の方向において前記上側および下側横架材のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、前記上側および下側横架材のそれぞれに固定され、
前記第2の方向の両側において前記上側および下側横架材のそれぞれに当接するように、前記上側および下側横架材のそれぞれに嵌合される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の制振構造。
【請求項6】
前記制振装置が、
前記第1の柱の前記拡幅部に直接または間接的に固定される第1の固定プレートと、
前記第2の柱の前記拡幅部に直接または間接的に固定される第2の固定プレートと、
前記第1の固定プレートと前記第2の固定プレートとの間に延び、低降伏点鋼材により形成されるダンパープレートとを備え、
前記ダンパープレートが、前記第1および第2の方向を含む面内における前記ダンパープレートの中心部に向かって薄肉になるように形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の制振構造。
【請求項7】
前記制振構造が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向の外側に向かって前記制振装置が変形することを抑制する面外拘束材を備え、
前記面外拘束材が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に当接するように、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に接続され、
前記面外拘束材が、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向に延びる軸を中心に回転可能に接続される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、木造建築物の耐震性や制振性を向上することを目的に、たとえば特許文献1に開示されるような制振装置(制振構造)が用いられている。特許文献1の制振装置は、一対の柱のそれぞれに固定される伝達板と、一対の伝達板をつなぐダンパーとを備えている。ダンパーは、一対の伝達板のそれぞれに固定される金属プレートと、重ね合わされた一対の金属プレートの間に設けられた粘弾性部とを備えている。この制振装置では、地震などによって一対の柱が傾斜した際に、一対の伝達板の一方および一対の金属プレートの一方と、一対の伝達板の他方および一対の金属プレートの他方とが互いに柱の延びる方向に相対変位することで、粘弾性部がせん断変形して震動エネルギーが減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-24435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制振装置では、地震などにより柱に作用する力は、伝達板を介してダンパーに伝達される。ところが、伝達板は、補助桟を介して柱に接合されており、柱が変位した際にこの接合部分にガタ(変形)が生じるために、柱の変位量をそのままダンパーに伝達することができない。したがって、特許文献1の制振装置では、地震などにより柱に作用する力をロスすることなくダンパーに伝達することができず、十分な制振性能を得ることができない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、より優れた制振性能を有する制振構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制振構造は、それぞれが第1の方向に延びる木製の第1の柱および第2の柱と、前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に延び、前記第1および第2の柱に固定される木製の上側横架材および下側横架材とを備える架構において、前記第1の柱と前記第2の柱との間に制振装置が配置された制振構造であって、前記第1および第2の柱のそれぞれが、前記上側および下側横架材のそれぞれに固定される柱本体部と、前記柱本体部と一体に形成され、前記柱本体部から他方の柱に向かって拡幅する拡幅部とを備え、前記拡幅部と前記上側および下側横架材のそれぞれとの間には空間が設けられ、前記制振装置が、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に接合されることを特徴とする。
【0007】
また、前記制振装置が、金属製の第1の接合部材を介して前記第1の柱の前記拡幅部に接合され、金属製の第2の接合部材を介して前記第2の柱の前記拡幅部に接合され、前記第1および第2の接合部材のそれぞれが、前記第1の方向の両側において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に直接または間接的に当接するとともに、前記第2の方向において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に対して互いに近接する方向に押圧されるように、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に固定されることが好ましい。
【0008】
また、前記第1および第2の接合部材のそれぞれが、前記第2の方向に延びる固定ボルトによって、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に固定され、前記固定ボルトが挿入される前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部の挿入孔の周壁と前記固定ボルトとの間に間隙調整材が設けられることが好ましい。
【0009】
また、前記第1および第2の接合部材のそれぞれが、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部の側面に固定される本体部と、前記本体部から前記制振装置に向かって延び、前記制振装置に固定される固定部と、前記本体部から前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に向かって延び、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に埋設される支圧部とを備え、前記第1および第2の接合部材のそれぞれの前記本体部が、前記第2の方向において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に対して互いに近接する方向に押圧されて、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部の側面に固定され、前記第1および第2の接合部材のそれぞれの前記支圧部が、前記第1の方向の両側において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に直接または間接的に当接するように、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に埋設されることが好ましい。
【0010】
また、前記第1および第2の柱のそれぞれの柱本体部が、前記第1の方向において前記上側および下側横架材のそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、前記上側および下側横架材のそれぞれに固定され、前記第2の方向の両側において前記上側および下側横架材のそれぞれに当接するように、前記上側および下側横架材のそれぞれに嵌合されることが好ましい。
【0011】
また、前記制振装置が、前記第1の柱の前記拡幅部に直接または間接的に固定される第1の固定プレートと、前記第2の柱の前記拡幅部に直接または間接的に固定される第2の固定プレートと、前記第1の固定プレートと前記第2の固定プレートとの間に延び、低降伏点鋼材により形成されるダンパープレートとを備え、前記ダンパープレートが、前記第1および第2の方向を含む面内における前記ダンパープレートの中心部に向かって薄肉になるように形成されていることが好ましい。
【0012】
また、前記制振構造が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向の外側に向かって前記制振装置が変形することを抑制する面外拘束材を備え、前記面外拘束材が、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向において前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に当接するように、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に接続され、前記面外拘束材が、前記第1および第2の柱のそれぞれの前記拡幅部に、前記第1および第2の方向を含む面に対して略垂直方向に延びる軸を中心に回転可能に接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、より優れた制振性能を有する制振構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る制振構造の概略的な正面図である。
図2図1のII部分の拡大図である。
図3図2の上面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5】本発明の別の実施形態に係る制振構造の概略的な部分拡大正面図である。
図6図5の上面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8図1の面外拘束材の拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る制振構造を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまで一例にすぎず、本発明の制振構造は以下の例に限定されることはない。
【0016】
本実施形態の制振構造1は、主に木造建築物の耐震性や制振性を向上することを目的に、図1に示されるように、木造建築物の架構に組み込まれて使用される。制振構造1が組み込まれる架構は、それぞれが第1の方向X1(図示された例では鉛直方向)に延びる木製の第1の柱2および第2の柱3と、第1の方向X1に対して略垂直な第2の方向X2(図示された例では水平方向)に延び、第1および第2の柱2、3に固定される木製の上側横架材UBおよび下側横架材LBとを備えている。
【0017】
第1および第2の柱2、3は、第1の方向X1(図示された例では鉛直方向)に延びるように設けられ、木造建築物の上部の荷重を支持する部材である。また、上側および下側横架材UB、LBは、第1および第2の柱2、3に対して横方向(図示された例では水平方向)に架け渡され、木造建築物の上部の荷重を支持するとともに、木造建築物の上部の荷重を第1および第2の柱2、3に伝達する部材である。本実施形態では、上側横架材UBは、第1および第2の柱2、3に対して鉛直方向上側で水平方向に延びるように設けられる梁であり、下側横架材LBは、第1および第2の柱2、3に対して鉛直方向下側で水平方向に延びるように設けられる梁または土台である。
【0018】
制振構造1は、図1に示されるように、第1の柱2と第2の柱3との間に配置され、第1および第2の柱2、3に接合される制振装置4を備え、地震動や風などの外乱を受けることにより木造建築物の架構に生じる振動エネルギーを減衰させる。制振構造1では、架構で生じた振動エネルギーを第1および第2の柱2、3を介して制振装置4に伝達し、伝達された振動エネルギーを制振装置4により減衰させる。
【0019】
第1および第2の柱2、3のそれぞれは、図1に示されるように、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに固定される柱本体部21、31と、柱本体部21、31と一体に形成され、柱本体部21、31から他方の柱2、3に向かって拡幅する拡幅部22、32とを備えている。
【0020】
第1および第2の柱2、3のそれぞれの柱本体部21、31は、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに固定され、木造建築物の上部の荷重を支持する部位である。柱本体部21、31のそれぞれは、第1の方向X1に沿って延びるように形成され、第1の方向X1の一端(上端)側が上側横架材UBに固定され、第1の方向X1の他端(下端)側が下側横架材LBに固定される。柱本体部21、31のそれぞれは、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2で変位した際に、上側および下側横架材UB、LBの変位が柱本体部21、31のそれぞれに伝達されるように、上側および下側横架材UB、LBに固定される。なお、柱本体部21、31は、図示された例に限定されることはなく、上側および下側横架材UB、LBを通過して延びるように形成されてもよい。その場合、柱本体部21、31に上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の端部が固定されてもよいし、柱本体部21、31を貫通するようにして上側および下側横架材UB、LBが柱本体部21、31に固定されてもよい。
【0021】
第1および第2の柱2、3のそれぞれの柱本体部21、31は、本実施形態では、図1に示されるように、第1の方向X1において上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに対して互いに近接する方向に押圧されて、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに固定される。つまり、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとは、第1の方向X1において互いに対して押圧されるように互いに対して固定される。これにより、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとの間に第1の方向X1で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで柱本体部21、31のそれぞれの上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに対する第1の方向X1の相対移動が抑制される。それによって、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれが第2の方向X2で変位したとしても、柱本体部21、31のそれぞれが上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに対して第1の方向X1で相対移動するのが抑制されることで、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれの変位が柱本体部21、31のそれぞれに伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。
【0022】
柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとは、第1の方向X1で互いに対して押圧されるように互いに対して固定することができればよく、その固定方法は特に限定されない。本実施形態では、図1に示されるように、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとは、固定具B1によって固定される。固定具B1は、本実施形態では、第1の方向X1に沿って柱本体部21、31のそれぞれの少なくとも一部と上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとを貫通して延びる固定ボルトとナットの組み合わせである。固定具B1は、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれの柱本体部21、31のそれぞれとは反対側の端面から、柱本体部21、31のそれぞれの上側および下側の端面を介して、柱本体部21、31のそれぞれの第1の方向X1の内部に形成された空洞21a、31aまで、第1の方向X1に沿って延びるように設けられる。固定具B1は、固定ボルトとナットとを互いに締め付けることにより、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとを第1の方向X1で互いに近づく方向に引き寄せて固定する。ただし、固定具B1は、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとを互いに近づく方向に引き寄せて固定することができればよく、固定ボルトとナットの組み合わせ以外にも、たとえば第1の方向X1に沿って延びるビスなどであってもよい。
【0023】
第1および第2の柱2、3のそれぞれの柱本体部21、31はさらに、図1に示されるように、第2の方向X2の両側において上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに当接するように、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに嵌合される。つまり、第2の方向X2において柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとの間にクリアランスが設けられることなく、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとが互いに嵌合される。これにより、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれが第2の方向X2で変位した際に、第2の方向X2における柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとの間の相対移動が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれの第2の方向X2の変位が柱本体部21、31のそれぞれに伝達される際に、伝達のロスが抑えられて、変位がより正確に伝達される。本実施形態では、図1に示されるように、柱本体部21、31のそれぞれに設けられた凸部21b、31bが上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに設けられた凹部UB1、LB1に嵌入されることで、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとが互いに嵌合されている。しかし、柱本体部21、31のそれぞれに凹部が設けられ、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに凸部が設けられ、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれの凸部が柱本体部21、31のそれぞれの凹部に嵌入されることで、柱本体部21、31のそれぞれと上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとが互いに嵌合されてもよい。
【0024】
第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32は、第2の方向X2において第1および第2の柱2、3の他方側の柱2、3に向かって拡張し、第1および第2の柱2、3のそれぞれの柱本体部21、31と連続して一体として形成される。拡幅部22、32は、制振装置4に接合され、柱本体部21、31に対して制振装置4を支持する。拡幅部22、32は、柱本体部21、31を介して伝達された振動エネルギーを制振装置4に伝達する。柱本体部21、31と連続して一体として形成された拡幅部22、32に制振装置4が接合されることにより、従来技術のように伝達板などの別部材を介して柱と制振装置とが接合される場合と比べて、振動エネルギーの伝達のロスが抑制され、より正確に振動エネルギーを伝達することができる。
【0025】
拡幅部22、32は、柱本体部21、31に対して制振装置4を支持し、柱本体部21、31を介して伝達された振動エネルギーを制振装置4に伝達することができれば、その形状は特に限定されない。本実施形態では、それぞれの拡幅部22、32は、それぞれの柱本体部21、31とともに第1の方向X1に沿って延びるとともに、第1の方向X1においてそれぞれの拡幅部22、32と上側および下側横架材UB、LBのそれぞれとの間には空間Sが設けられるように形成されている。このように拡幅部22、32と上側および下側横架材UB、LBとの間に空間Sが設けられることで、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2で互いに相対変位して、その相対変位に伴って第1および第2の柱2、3が第1および第2の方向X1、X2を含む面内で傾斜する際に、拡幅部22、32が第1の方向X1で上側および下側横架材UB、LBに当接する、またはめり込むことが抑制される。これにより、拡幅部22、32が当接する、またはめり込むことによる上側および下側横架材UB、LBの変形を抑制することができるので、上側および下側横架材UB、LBの強度を維持することができる。さらに、拡幅部22、32の第1の方向X1での上側および下側横架材UB、LBとの当接が抑制されることで、第1の方向X1のせん断力に対する拡幅部22、32の抵抗が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBの相対変位と連動して第1および第2の柱2、3が変位するのを妨げることが抑制される。これにより、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の相対変位を、より正確に第1および第2の柱2、3に伝達することができる。
【0026】
それぞれの拡幅部22、32は、架構内の上側横架材UBと下側横架材LBとの間の第1の方向X1における間隔や、架構内の第1の柱2と第2の柱3との間の第2の方向X2における間隔、要求される制振性能に応じて設計される制振装置4の第1および第2の方向X1、X2における長さに応じて、架構内で互いに干渉しない範囲で適宜大きさを設定することができる。その中でも、それぞれの拡幅部22、32は、それぞれの柱本体部21、31から伝達される振動エネルギーを制振装置4に伝達する際に破損などが抑制されるように大きさが設定されることが好ましい。たとえば、それぞれの拡幅部22、32は、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2において互いに対して相対移動した際に拡幅部22、32が受けるモーメントに対抗するという観点から、第1の方向X1における制振装置4との接合部分で第2の方向X2の長さが最も長く、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに近づくに従って第2の方向X2の長さが連続的に短くなる形状(正面視で略台形状)よりも大きく設計されることが好ましい。たとえば、本実施形態では、それぞれの拡幅部22、32の第2の方向X2の長さは、第1の方向X1における全長に亘って略一定の長さを有している。また、それぞれの拡幅部22、32の第1の方向X1の長さは、制振装置4との接合部分の強度を確保するという観点から、少なくとも制振装置4の第1の方向X1の長さよりも長いことが好ましい。さらに、それぞれの拡幅部22、32の第1の方向X1の長さは、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2において互いに対して相対変位した際に拡幅部22、32が受けるモーメントに対抗するという観点から、上側および下側横架材UB、LBとの間に必要最低限の空間Sを確保しながら、上側横架材UBと下側横架材LBとの間の第1の方向X1の間隔の略全長に亘る長さを有していることが好ましい。なお、空間Sの第1の方向X1の長さは、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2で互いに対して相対変位する際に、それぞれの拡幅部22、32が上側および下側横架材UB、LBのそれぞれに当接しない範囲で適宜設定することができる。
【0027】
制振装置4は、図1に示されるように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に接合され、上側および下側横架材UB、LBから第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32を介して伝達される振動エネルギーを減衰させる装置である。制振装置4は、第1および第2の柱2、3の一部である拡幅部22、32に接合されることにより、従来技術のように伝達板などの別部材を介して制振装置と柱とが接合される場合と比べて、第1および第2の柱2、3から振動エネルギーが伝達される際に、振動エネルギーの伝達のロスが抑制され、より正確に振動エネルギーが伝達される。それにより、本実施形態の制振構造1では、優れた制振性能を発揮することができる。
【0028】
制振装置4は、伝達される振動エネルギーを減衰させることができれば、その構成は特に限定されることはない。制振装置4としては、たとえば公知の鋼材ダンパー、鉛ダンパー、粘弾性ダンパー、オイルダンパーなどを採用することができる。本実施形態では、制振装置4は、図2図4に示されるように、第1の柱2の拡幅部22に直接または後述する第1の接合部材5を介して間接的に固定される第1の固定プレート41と、第2の柱3の拡幅部32に直接または後述する第2の接合部材6を介して間接的に固定される第2の固定プレート42と、第1の固定プレート41と第2の固定プレート42との間に延び、低降伏点鋼材により形成されるダンパープレート43とを備えている。本実施形態における制振装置4では、振動エネルギーが伝達された際にダンパープレート43が塑性変形することにより、振動エネルギーが減衰される。木造建築物においては、鉄骨造建築物よりも大きな変形が生じるが、本実施形態のように低降伏点鋼材により形成されるダンパープレート43を備えることで、そのような大きな変形に対しても追従して振動エネルギーを減衰させることができる。
【0029】
第1および第2の固定プレート41、42はそれぞれ、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32のそれぞれに直接または間接的に固定されて、拡幅部22、32を介して伝達される振動エネルギーをダンパープレート43に伝達する。第1および第2の固定プレート41、42はそれぞれ、本実施形態では、図2図4に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成される。第1および第2の固定プレート41、42は、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32を介して振動エネルギーが伝達された際に、ダンパープレート43が塑性変形する前に塑性変形しない強度を有していればよく、特に限定されることはないが、ダンパープレート43よりも高い降伏点を有するたとえば普通鋼材により形成することができる。
【0030】
ダンパープレート43は、第1および第2の固定プレート41、42を介して振動エネルギーが伝達された際に、第1および第2の固定プレート41、42よりも優先的に塑性変形して、振動エネルギーを減衰させる。たとえば、図1において、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2で互いに対して相対変位した場合、第1および第2の柱2、3がともに第1および第2の方向X1、X2を含む面内で上側および下側横架材UB、LBに対して相対回転(傾斜)し、それに伴ってダンパープレート43は、第1および第2の柱2、3の延びる方向に沿ってせん断力を受ける。ダンパープレート43は、所定以上のせん断力を受けたときに塑性変形して、振動エネルギーを減衰させる。ダンパープレート43は、本実施形態では、図2および図3に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、第1および第2の方向X1、X2を含む面(図2の紙面)内におけるダンパープレート43の中心部に向かって薄肉になるように形成されている(薄肉部43a参照)。これにより、ダンパープレート43に振動エネルギーが伝達された際に、ダンパープレート43の全体に応力を分散させることができ、ダンパープレート43の第1および第2の固定プレート41、42との接続部分近傍に応力が集中するのを抑制することができる。したがって、ダンパープレート43の第1および第2の固定プレート41、42との接続部分近傍における局所的な破壊が抑制される。
【0031】
ダンパープレート43は、本実施形態では、図2に示されるように、正面視で、第1の方向X1の長さと第2の方向X2の長さとが略等しくなる形状(図示された例では略正方形状)を有している。このようにダンパープレート43が、第1および第2の柱2、3の延びる第1の方向X1と、上側および下側横架材UB、LBの延びる第2の方向X2とで略等しい長さを有することで、本実施形態の制振構造1のように上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の相対変位が第1および第2の柱2、3の第1の方向X1の相対変位に変換されて伝達される場合に、より有利にその変位に追従して振動エネルギーを減衰させることができる。そのような観点から、ダンパープレート43の第1の方向X1の長さと第2の方向X2の長さとの比が、0.5:1~1.5:1の範囲内であることが好ましく、0.8:1~1.2:1の範囲内であることがさらに好ましい。本実施形態では、ダンパープレート43が、第1の方向X1の長さと第2の方向X2の長さとが略等しくなる形状に形成されていることに伴って、ダンパープレート43の薄肉部43aもまた、第1の方向X1の長さと第2の方向X2の長さとが略等しくなる形状(図示された例では略真円形状)に形成されている。略真円形状の薄肉部43aは、略真円の中心に向かって、より薄肉になるように形成されている。
【0032】
制振装置4は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、金属製の第1の接合部材5を介して第1の柱2の拡幅部22に接合され、金属製の第2の接合部材6を介して第2の柱3の拡幅部32に接合される。したがって、制振装置4は、第1および第2の接合部材5、6を介して振動エネルギーが伝達され、伝達された振動エネルギーを減衰させる。
【0033】
第1および第2の接合部材5、6はそれぞれ、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32を制振装置4に接合し、上側および下側横架材UB、LBのそれぞれから第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に伝達された振動エネルギーを制振装置4に伝達する。第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、図1および図2に示されるように、第2の方向X2において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に対して互いに近接する方向に押圧されるように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に固定される。これにより、第1および第2の接合部材5、6と第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、23との間に第2の方向X2で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで第1および第2の接合部材5、6の第1および第2の柱2、3に対する第2の方向X2の相対移動が抑制される。たとえば、上側横架材UBと下側横架材LBとが第2の方向X2で互いに相対変位した場合、その相対変位に伴って第1および第2の柱2、3が第1および第2の方向X1、X2を含む面(図1および図2の紙面)内で上側および下側横架材UB、LBに対して相対回転する(第2の方向X2に傾く)。第1および第2の柱2、3のそのような変位に伴って、第1および第2の接合部材5、6には、第1および第2の方向X1、X2を含む面(図1および図2の紙面)内で、第1および第2の接合部材5、6が第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に対して相対回転する方向に力が加わる。第1および第2の接合部材5、6が第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に対して相対回転してしまうと、上側および下側横架材UB、LBの変位を第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32を介して第1および第2の接合部材5、6に正確に伝達することができない。それに対して、本実施形態では、第1および第2の接合部材5、6の第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に対する第2の方向X2の相対移動が抑制されているので、第1および第2の接合部材5、6の第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に対する相対回転が抑制されて、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32から第1および第2の接合部材5、6に上側および下側横架材UB、LBの変位を伝達する際に、伝達のロスを抑えることができ、変位をより正確に伝達することができる。
【0034】
さらに、第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に直接または間接的に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に固定される。つまり、第1の方向X1において第1および第2の接合部材5、6と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間にクリアランスが設けられることなく、第1および第2の接合部材5、6が第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に固定される。これにより、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2での相対変位に伴って第1および第2の柱2、3が第1および第2の方向X1、X2を含む面内で相対回転(傾斜)する際に、第1および第2の柱2、3の延びる方向における第1および第2の接合部材5、6と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間の相対移動が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の相対変位を第1および第2の接合部材5、6に伝達する際のロスを抑えることができ、より正確に変位を伝達することができる。
【0035】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、上述したように、第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に直接または間接的に当接するとともに、第2の方向X2において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に対して互いに近接する方向に押圧されるように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に固定されればよく、その構成や固定方法は特に限定されない。本実施形態では、図2図4に示されるように、第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の側面に固定される本体部51、61と、制振装置4に固定される固定部52、62とを備えている。第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、図5図7に示される別の実施形態のように、本体部51、61および固定部52、62に加えて、支圧部53、63を備えていてもよい。第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、本体部51、61および固定部52、62(ならびに任意で支圧部53、63)が一体として形成されている。また、第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、第2および第3の方向X2、X3に沿って延び、本体部51、61と固定部52、62との間に接続されるリブ54、64を備えていてもよい。第1および第2の接合部材5、6は、リブ54、64を備えることにより、本体部51、61の第2の方向X2などへの変形や、固定部52、62の第3の方向X3などへの変形が抑制される。第1および第2の接合部材5、6は、少なくとも振動エネルギーを伝達する際に制振装置4が変形する前に変形されない強度を有する金属により形成されていればよく、特に限定されることはないが、たとえば鋼材などの硬質金属材料により形成することができる。
【0036】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61は、図2図4および図5図7に示されるように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の側面に固定される部位である。第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61は、第2の方向X2において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に対して互いに近接する方向に押圧されて、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の側面に固定される。これにより、本体部51、61を含む第1および第2の接合部材5、6と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、23との間に第2の方向X2で互いに引き離そうとする引張力が生じたとしても、その引張力に抵抗することで第1および第2の接合部材5、6の第1および第2の柱2、3に対する第2の方向X2の相対移動が抑制される。したがって、上述したように、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の相対変位を第1および第2の接合部材5、6に伝達する際のロスを抑えることができ、より正確に変位を伝達することができる。
【0037】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの本体部51、61は、少なくとも第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、23に対して第2の方向X2で押圧されるように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、23に固定されればよく、その形状や固定方法は特に限定されない。本体部51、61は、本実施形態では、図2図4および図5図7に示されるように、第1および第3の方向X1、X3に沿って延びる板状に形成され、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の第2の方向X2における側面に当接するように配置される。本体部51、61は、固定具B2によって、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の側面に固定される。固定具B2は、本実施形態では、本体部51、61ならびに第1および第2の柱2、3を第2の方向X2に沿って貫通して延びる固定ボルトとナットの組み合わせである。固定具B2は、固定ボルトとナットとを互いに締め付けることにより、それぞれの本体部51、61とそれぞれの拡幅部22、23とを第2の方向で互いに近づく方向に引き寄せて固定する。なお、固定具B2は、それぞれの本体部51、61とそれぞれの拡幅部22、23とを第2の方向で互いに近づく方向に引き寄せて固定することができればよく、固定ボルトとナットの組み合わせ以外にも、たとえば第2の方向X2に沿って延びるビスなどであってもよい。
【0038】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、上述したように、第2の方向X2に延びる固定ボルト(固定具B2)によって、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に固定されている。たとえば、図2および図3に示されるように、固定ボルトB2が挿入される第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の挿入孔H、Hの周壁と固定ボルトB2との間に間隙調整材G1が設けられてもよい。これにより、固定ボルトB2は、少なくとも第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に間隙調整材G1を介して間接的に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に固定されることになる。ここで、金属製である固定ボルトB2が、金属製である第1および第2の接合部材5、6のそれぞれと接触して固定されると、両者の間には強固な摩擦接合が生じる。この摩擦接合によって、第1および第2の接合部材5、6は、摩擦接合による摩擦力が抵抗する方向において固定ボルトB2に対する相対移動が抑制されるように、固定ボルトB2と実質的に一体化している。そして、第1および第2の接合部材5、6と実質的に一体化している固定ボルトB2は、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に間隙調整材G1を介して間接的に当接している。つまり、固定ボルトB2と実質的に一体化している第1および第2の接合部材5、6は、少なくとも第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に対して固定ボルトB2および間隙調整材G1を介して間接的に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に固定されているということができる。したがって、上述したように、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2での相対変位に伴って第1および第2の柱2、3が第1および第2の方向X1、X2を含む面内で相対回転(傾斜)した際に、第1および第2の柱2、3の延びる方向における第1および第2の接合部材5、6と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間の相対移動が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の相対変位を第1および第2の接合部材5、6に伝達する際のロスを抑えることができ、より正確に変位を伝達することができる。
【0039】
間隙調整材G1は、第1の方向X1の両側における固定ボルトB2と第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32との間に生じる間隔を充填することができればよく、その構成材料は特に限定されない。間隙調整材G1は、たとえば、エポキシ樹脂などの公知の樹脂により構成することができる。間隙調整材G1は、たとえば、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の挿入孔Hに固定ボルトB2が挿入された後、第1の方向X1の両側における固定ボルトB2と第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32との間に生じた間隔に挿入することができる。
【0040】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの固定部52、62は、図2図4および図5図7に示されるように、本体部51、61から制振装置4に向かって延び、制振装置4に固定される部位である。固定部52、62は、制振装置4に対する相対移動が抑制されるように制振装置4に固定される。これにより、固定部52、62を含む第1および第2の接合部材5、6は、第1および第2の接合部材5、6に伝達された変位を制振装置4に伝達する際に、伝達のロスを抑えて、変位をより正確に伝達することができる。
【0041】
固定部52、62は、制振装置4に対する相対移動が抑制されるように制振装置4に固定されればよく、その形状や固定方法は特に限定されない。本実施形態では、固定部52、62は、図2図4および図5図7に示されるように、第1および第2の方向X1、X2に沿って延びる板状に形成され、本体部51、61の第3の方向X3の略中心から第2の方向X2に沿って立設している。固定部52、62のそれぞれは、制振装置4の第1および第2の固定プレート41、42のそれぞれに、固定部52、62と第1および第2の固定プレート41、42とを第3の方向X3に沿って貫通するボルトとナットの組み合わせなどの固定具B3によって固定される。ここで、固定部52、62と第1および第2の固定プレート41、42とは共に金属製であり、互いに対して突き合わせて高張力ボルトなどで強固に固定することで、互いに対して摩擦接合されて、互いに対する相対移動が抑制される。
【0042】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれは、上述したように、図5および図6に示されるような支圧部53、63を備えていてもよい。第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63は、本体部51、61から第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に向かって延び、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、23に埋設される部位である。第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63は、第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に直接または間接的に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に埋設される。つまり、第1の方向X1において支圧部53、63と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間にクリアランスが設けられることなく、支圧部53、63が第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に埋設される。これにより、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2での相対変位に伴って第1および第2の柱2、3が第1および第2の方向X1、X2を含む面内で相対回転(傾斜)した際に、第1および第2の柱2、3の延びる方向における第1および第2の接合部材5、6と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間の相対移動が抑制されるので、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の相対変位を第1および第2の接合部材5、6に伝達する際のロスを抑えることができ、より正確に変位を伝達することができる。
【0043】
支圧部53、63は、少なくとも第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32と直接または間接的に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に埋設されるように構成されていればよく、その形状や埋設方法は特に限定されない。本実施形態では、支圧部53、63は、図5および図6に示されるように、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)に延びるように形成される。つまり、支圧部53、63は、第2および第3の方向X2、X3を含む面内で拡張するように形成される。このように支圧部53、63が第1の方向X1に対して略垂直な第2および第3の方向X2、X3を含む面内で拡張するように形成されることで、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32から受ける第1の方向X1に沿ったせん断力に強固に抵抗して変形が抑制されながら拡幅部22、32とともに変位することができ、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32を介して伝達される上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2の変位をより正確に伝達することができる。また、支圧部53、63は、第3の方向X3に沿って延びるように形成することで、第1の方向X1のせん断力に対する抵抗力を上げることができるので、第2の方向X2の長さを短くすることができる。それによって、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に設ける埋設凹部を浅くすることができ、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の強度を高く保つことができる。
【0044】
第1および第2の接合部材5、6のそれぞれの支圧部53、63は、本実施形態では、図5に示されるように、第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に間隙調整材G2を介して間接的に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に埋設される。支圧部53、63を第1の方向X1の両側で第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に当接させるために間隙調整材G2を用いることで、支圧部53、63と、支圧部53、63が埋設される第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の埋設凹部とに精密な設計精度が要求されないため、支圧部53、63ならびに第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32を安価かつ容易に作製することができる。ただし、支圧部53、63は、間隙調整材G2を介することなく第1の方向X1の両側において第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32と直接当接するように、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に埋設されてもよい。
【0045】
間隙調整材G2は、第1の方向X1の両側における支圧部53、63と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間に生じる間隔を充填することができればよく、その構成材料は特に限定されない。間隙調整材G2は、たとえば、エポキシ樹脂などの公知の樹脂により構成することができる。間隙調整材G2は、たとえば、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の埋設凹部に支圧部53、63が挿入された後、第1の方向X1の両側における支圧部53、63と第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32との間に生じた間隙に挿入することができる。
【0046】
制振構造1は、図1および図8に示されるように、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)の外側に向かって制振装置4が変形することを抑制する面外拘束材7を備えていてもよい。図示された例では、面外拘束材7は、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)において第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に当接するように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に接続されている。それにより、第1および第2の柱2、3が、第3の方向X3で互いに対して相対移動しようとすると、面外拘束材7がその相対移動の障害となるので、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3での相対移動に伴う制振装置4の第3の方向X3での変形を抑制することができる。このように制振装置4の第3の方向X3での変形を抑制することで、制振装置4の制振性能を維持することができる。
【0047】
面外拘束材7は、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3での相対移動を抑制し、制振装置4の第3の方向X3での変形を抑制することができればよく、その形状は特に限定されることはない。面外拘束材7は、本実施形態では、図1および図8に示されるように、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32の第3の方向X3の表面に対して、第3の方向X3に略垂直な面で面接触するように形成されている。面外拘束材7は、第3の方向X3に略垂直な面で第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32と面接触することで、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3での相対移動に対する抵抗力が大きくなり、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3での相対移動をより確実に抑制することができる。面外拘束材7は、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32が第3の方向X3で相対移動しようとする際に、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32から第3の方向X3で受ける押圧力に抵抗する強度を有していることが好ましく、たとえば鋼材などの硬質材料により形成されることが好ましい。
【0048】
面外拘束材7は、さらに、第1および第2の柱2、3のそれぞれの拡幅部22、32に、第1および第2の方向X1、X2を含む面に対して略垂直方向(第3の方向X3)に延びる軸Y1、Y2を中心に回転可能に接続されている。これにより、上側および下側横架材UB、LBが第2の方向X2で互いに対して相対移動して、それに伴って第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32が第1および第2の方向X1、X2を含む面内で相対回転(傾斜)しようとするときに、面外拘束材7が第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に対して第3の方向X3に延びる軸Y1、Y2を中心に相対回転することで、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の相対回転の規制が抑えられる。したがって、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32に伝達された、上側および下側横架材UB、LBの第2の方向X2での相対変位を、第1および第2の接合部材5、6ならびに制振装置4に、より正確に伝達することができる。
【0049】
面外拘束材7は、本実施形態では、図8に示されるように、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3における両側の表面に設けられている。両側の面外拘束材7、7は、第1の柱2の拡幅部22において共通の軸Y1を中心に回転可能に互いに軸支され、第2の柱3の拡幅部32において共通の軸Y2を中心に回転可能に互いに軸支される。第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3における両側に面外拘束材7が設けられることで、第1および第2の柱2、3の拡幅部22、32の第3の方向X3での相対移動をより確実に抑制することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 制振構造
2 第1の柱
21 柱本体部
21a 空洞
21b 凸部
22 拡幅部
3 第2の柱
31 柱本体部
31a 空洞
31b 凸部
32 拡幅部
4 制振装置
41 第1の固定プレート
42 第2の固定プレート
43 ダンパープレート
43a 薄肉部
5 第1の接合部材
51 本体部
52 固定部
53 支圧部
54 リブ
6 第2の接合部材
61 本体部
62 固定部
63 支圧部
64 リブ
7 面外拘束材
B1、B2、B3 固定具
G1、G2 間隙調整材
H 挿入孔
LB 下側横架材
LB1 凹部
S 空間
UB 上側横架材
UB1 凹部
X1 第1の方向
X2 第2の方向
X3 第3の方向
Y1、Y2 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8