(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054618
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】処理装置
(51)【国際特許分類】
A23L 3/10 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
A23L3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163582
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】駒井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰三
(72)【発明者】
【氏名】櫛部 光央
(72)【発明者】
【氏名】田中 康
(72)【発明者】
【氏名】三堂 由健
【テーマコード(参考)】
4B021
【Fターム(参考)】
4B021LA03
4B021LA05
4B021LA07
4B021LT02
4B021LT04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】搬送ラックを処理槽内に適切に搬入することの可能な処理装置を提供する。
【解決手段】処理装置は、処理槽本体と、搬入側扉と、搬出側扉と、搬送手段と、制御手段とを備え、処理槽本体は搬送ラックを搬入する搬入口と搬送ラックを搬出する搬出口とを備え、搬出側扉は閉止状態において搬送ラックの搬出口方向への移動を規制するよう構成され、制御手段は、搬入側扉を開放し且つ搬出側扉を閉止した状態で搬送手段により搬送ラックを処理槽本体へ搬入する搬入工程S1と、搬入側扉を閉止する搬入側扉閉止工程S2と、被処理物を処理する処理工程S4と、搬出側扉を開放する搬出側扉開放工程S5と、搬送ラックを搬出する搬出工程S6とを順次実行し、制御手段は更に、搬入工程S1と搬出側扉開放工程S5の間に、搬送手段により搬送ラックを搬入口方向に移動させるラック位置調整工程S3を実行する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラックに積載された被処理物を処理する処理装置であって、
処理槽本体と、搬入側扉と、搬出側扉と、搬送手段と、制御手段とを備え、
前記処理槽本体は、前記搬送ラックを収容可能に構成されるとともに、前記搬送ラックを搬入する搬入口と前記搬送ラックを搬出する搬出口とを備え、
前記搬入側扉は、前記搬入口を開放及び閉止可能に構成され、
前記搬出側扉は、前記搬出口を開放及び閉止可能に構成されるとともに、閉止状態において前記搬送ラックの搬出口方向への移動を規制するよう構成され、
前記搬送手段は、前記搬送ラックを前記搬入口及び前記搬出口を通る搬送路に沿って搬送可能に構成され、
前記制御手段は、前記搬出側扉の開閉動作及び前記搬送手段による前記搬送ラックの搬送動作を制御可能に構成されており、
前記制御手段は、前記搬入側扉を開放し且つ前記搬出側扉を閉止した状態で前記搬送手段により前記搬送ラックを前記搬出口方向に移動させて当該搬送ラックを前記処理槽本体へ搬入する搬入工程と、前記搬入側扉を閉止する搬入側扉閉止工程と、前記被処理物を処理する処理工程と、前記搬送ラックの搬出のため前記搬出側扉を開放する搬出側扉開放工程と、前記搬出側扉を開放した状態で前記搬送ラックを前記搬出口方向に移動させて搬出する搬出工程とを順次実行し、
前記制御手段はさらに、前記搬入工程と前記搬出側扉開放工程の間に、前記搬送手段により前記搬送ラックを搬入口方向に移動させるラック位置調整工程を実行する、処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の処理装置であって、
前記処理槽本体は、複数の前記搬送ラックを前記搬送路に沿って直列状に収容可能に構成される、処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の処理装置であって、
前記搬送手段は、前記搬送路に沿って複数の搬送ユニットを備えており、
前記搬入工程及び前記搬出工程において、前記複数の搬送ラックは、前記複数の搬送ユニットにより順次搬出口方向に搬送される、処理装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の処理装置であって、
前記搬出側扉と係合する係合手段を備え、
前記係合手段と前記搬出側扉とが前記搬送路に沿った方向に係合することで、前記搬出側扉がロックされる、処理装置。
【請求項5】
搬送ラックに積載された被処理物の処理方法であって、
搬入工程と、搬入側扉閉止工程と、処理工程と、搬出側扉開放工程と、搬出工程とを備え、
前記搬入工程では、搬入側扉を開放し且つ搬出側扉を閉止して、搬送手段により前記搬送ラックを搬出口方向に移動させて当該搬送ラックを処理槽本体へ搬入するとともに、前記搬出側扉により前記搬送ラックのそれ以上の前記搬出口方向への移動を規制し、
前記搬入側扉閉止工程では、前記搬入側扉を閉止し、
前記処理工程では、前記被処理物を処理し、
前記搬出側扉開放工程では、前記搬送ラックの搬出のため前記搬出側扉を開放し、
前記搬出工程では、前記搬出側扉を開放した状態で前記搬送ラックを前記搬出口方向に移動させて搬出し、
前記搬入工程と前記搬出側扉開放工程の間に、前記搬送手段により前記搬送ラックを搬入口方向に移動させるラック位置調整工程をさらに備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物の加熱処理や冷却処理等に用いられる処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、処理槽内に被処理物を収容して加熱や冷却等の処理を行う処理装置がある。例えば、特許文献1には、被処理物を載置するトレーを積載した保持車(搬送ラック)を搬送可能な搬送装置(搬入搬出装置)を備え、被処理物をボタン一つで殺菌装置内(処理槽内)に搬入及び搬出することのできる処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示される処理装置は、扉を1つのみ備え、搬送ラックの搬入と搬出を処理槽の同じ側から行う構成であるが、効率的に次の工程に進めるため、扉を前後一対備えるとともに、搬送装置による搬送ラックの搬入と搬出を処理槽の別々の側から行うことも考えられる。そして、このような構成の場合、搬入中の搬送ラックを停止させる必要があるが、搬送ラックを停止させるストッパを別途設けると、搬送ラックの搬出時には当該ストッパを解除する必要が生じ、構成が複雑になってしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、搬送ラックを処理槽内に適切に搬入することの可能な処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、搬送ラックに積載された被処理物を処理する処理装置であって、処理槽本体と、搬入側扉と、搬出側扉と、搬送手段と、制御手段とを備え、前記処理槽本体は、前記搬送ラックを収容可能に構成されるとともに、前記搬送ラックを搬入する搬入口と前記搬送ラックを搬出する搬出口とを備え、前記搬入側扉は、前記搬入口を開放及び閉止可能に構成され、前記搬出側扉は、前記搬出口を開放及び閉止可能に構成されるとともに、閉止状態において前記搬送ラックの搬出口方向への移動を規制するよう構成され、前記搬送手段は、前記搬送ラックを前記搬入口及び前記搬出口を通る搬送路に沿って搬送可能に構成され、前記制御手段は、前記搬出側扉の開閉動作及び前記搬送手段による前記搬送ラックの搬送動作を制御可能に構成されており、前記制御手段は、前記搬入側扉を開放し且つ前記搬出側扉を閉止した状態で前記搬送手段により前記搬送ラックを前記搬出口方向に移動させて当該搬送ラックを前記処理槽本体へ搬入する搬入工程と、前記搬入側扉を閉止する搬入側扉閉止工程と、前記被処理物を処理する処理工程と、前記搬送ラックの搬出のため前記搬出側扉を開放する搬出側扉開放工程と、前記搬出側扉を開放した状態で前記搬送ラックを前記搬出口方向に移動させて搬出する搬出工程とを順次実行し、前記制御手段はさらに、前記搬入工程と前記搬出側扉開放工程の間に、前記搬送手段により前記搬送ラックを搬入口方向に移動させるラック位置調整工程を実行する、処理装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、搬送ラックを搬入する搬入工程において搬出側扉を閉じておくことで、搬送ラックを処理槽本体内に保持するストッパとして搬出側扉を用いることができ、別途ストッパを設けることなく、搬送ラックを処理槽内の適切な位置に配置することが可能となっている。また、本発明の処理装置によれば、制御手段が搬入工程から搬出側扉開放工程までの間に、搬送手段により搬送ラックを搬出口方向に移動させるラック位置調整工程を実行することで、搬送ラックが搬出側扉を押圧して当該搬出側扉が開きにくくなることを防止することが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記処理槽本体は、複数の前記搬送ラックを前記搬送路に沿って直列状に収容可能に構成される。
【0010】
好ましくは、前記搬送手段は、前記搬送路に沿って複数の搬送ユニットを備えており、前記搬入工程及び前記搬出工程において、前記複数の搬送ラックは、前記複数の搬送ユニットにより順次搬出口方向に搬送される。
【0011】
好ましくは、前記搬出側扉と係合する係合手段を備え、前記係合手段と前記搬出側扉とが前記搬送路に沿った方向に係合することで、前記搬出側扉がロックされる。
【0012】
また、本発明によれば、搬送ラックに積載された被処理物の処理方法であって、搬入工程と、搬入側扉閉止工程と、処理工程と、搬出側扉開放工程と、搬出工程とを備え、前記搬入工程では、搬入側扉を開放し且つ搬出側扉を閉止して、搬送手段により前記搬送ラックを搬出口方向に移動させて当該搬送ラックを処理槽本体へ搬入するとともに、前記搬出側扉により前記搬送ラックのそれ以上の前記搬出口方向への移動を規制し、前記搬入側扉閉止工程では、前記搬入側扉を閉止し、前記処理工程では、前記被処理物を処理し、前記搬出側扉開放工程では、前記搬送ラックの搬出のため前記搬出側扉を開放し、前記搬出工程では、前記搬出側扉を開放した状態で前記搬送ラックを前記搬出口方向に移動させて搬出し、前記搬入工程と前記搬出側扉開放工程の間に、前記搬送手段により前記搬送ラックを搬入口方向に移動させるラック位置調整工程をさらに備える、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る殺菌装置1の内部を模式的に示す側面図である。
【
図2】
図1の殺菌装置1の内部を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図1の殺菌装置1を搬出側から見たときの模式図である。
【
図4】
図3の状態から搬出側扉4を開いた様子を示す模式図である。
【
図5】
図5Aは、処理槽本体2の搬出口21と搬出側扉4を対向させた様子を示す模式図であり、
図5Bは、
図5Aの状態において、処理槽本体2及び搬出側扉4の内部を模式的に示す側面図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、処理槽本体2の本体側フランジ23及び搬出側扉4の扉側フランジ40と係合するリング部材63の動作を示す説明図である。
【
図9】
図1の殺菌装置1により被処理物を殺菌処理する動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0015】
1.殺菌装置1の構成
本発明の一実施形態に係る処理装置としての殺菌装置1は、搬送ラックRに積載された被処理物を加熱殺菌するための装置である。被処理物の種類は特に問わないが、食品、特に缶詰、レトルトパウチ食品、成形容器食品、瓶詰食品等の容器包装詰食品に好適に用いられる。
【0016】
本実施形態の殺菌装置1は、
図1及び
図2に示すように、処理槽本体2と、搬入側扉3と、搬出側扉4と、搬入側扉開閉手段5と、搬出側扉開閉手段6と、搬送手段7と、制御手段8とを備える。
【0017】
処理槽本体2は、
図3に示されるように、円筒状の容器であり、内部に被処理物が積載された複数の搬送ラックRを収納可能に構成される。処理槽本体2は、
図1及び
図2に示すように、その長手方向の一端側に搬送ラックRを搬入する搬入口20を備え、他端側に搬送ラックRを搬出する搬出口21を備える。処理槽本体2の搬入口20と搬出口21の間には、搬送路22が構成される。本実施形態の殺菌装置1は、搬送ラックRの搬入と搬出を処理槽本体2の別々の側から行う構成である。また、本実施形態の処理槽本体2は、9個の搬送ラックRを搬送路22に沿って直列状に収納可能な構成となっている。
【0018】
処理槽本体2は、搬入口20及び搬出口21それぞれの周囲に、本体側フランジ23を備える(
図5Aは、搬出口21側において搬出側扉4と対向する本体側フランジ23を示す)。本体側フランジ23の外周面には、
図6に示すように、周方向に亘って係合溝23aが形成される。また、本体側フランジ23の係合溝23aよりも搬出口側は、後述する扉側フランジ40(
図4参照)と同様、円周方向に亘って凹凸形状となっている。加えて、各本体側フランジ23の搬入側扉3及び搬出側扉4との対向面には、
図6に示すように、円環状の溝23bが形成されており、この溝23bには円環状のシール部材24が配置される。本実施形態では、搬入側扉3及び搬出側扉4の閉止時にエア供給源(図示省略)から供給されるエアによりシール部材24が膨張してこれら搬入側扉3及び搬出側扉4に密着することによって、高い密閉性を発揮できるようになっている。
【0019】
搬入側扉3及び搬出側扉4は、搬入側扉開閉手段5及び搬出側扉開閉手段6により、処理槽本体2の搬入口20及び搬出口21を開放及び閉止可能に構成される。搬入側扉3及び搬出側扉4は、それぞれ処理槽本体2とは反対側が球面状に形成されている。
【0020】
なお、搬入側扉3及び搬出側扉4、搬入側扉開閉手段5及び搬出側扉開閉手段6は、それぞれ同様の構成であるため、以下では、搬出側扉4及び搬出側扉開閉手段6の構成のみを説明する。
【0021】
図4及び
図5Aに示すように、搬出側扉4は、その球面部分を囲う位置に、扉側フランジ40を備える。扉側フランジ40の外周面は、本体側フランジ23の外周面と対応するよう、円周方向に亘って凹凸形状となっている。また、
図3及び
図4に示すように、搬出側扉4の球面状の部分には、一対のアーム部41が固定される。一対のアーム部41は、搬出側扉4の左右両側から水平方向にそれぞれ延びるよう形成される。なお、
図5Aでは、アーム部41の図示を省略している。
【0022】
また、搬出側扉4の処理槽本体2側、より具体的には、その球面部分の内面には、処理槽本体2側に向かって延びるストッパ42が形成される。ストッパ42は、搬出側扉4の閉止状態において搬送ラックRの搬出口方向への移動を規制するための部材である。ストッパ42は、搬送ラックRの搬出口方向への移動を規制できれば、どのような形状であっても良い。
【0023】
搬出側扉開閉手段6は、搬出側扉4を開閉動作させる手段である。搬出側扉開閉手段6は、
図3及び
図4に示すように、昇降ガイド60と、昇降モータ61と、駆動軸62と、係合手段としてのリング部材63と、リング部材回転手段64とを備える。
【0024】
昇降ガイド60は、上下方向に延在するよう配置され、搬出側扉4のアーム部41を保持し、昇降モータ61の駆動力により搬出側扉4を上下動する。昇降モータ61は、駆動軸62を介して左右それぞれの昇降ガイド60に搬出側扉4を昇降させるための駆動力を伝達する。
【0025】
なお、搬出側扉4が降下した際、すなわち、搬出側扉4が搬出口21を閉止する位置にあるときにおいて、昇降ガイド60は、搬出側扉4を搬送路22に沿った方向に水平移動可能となるよう、アーム部41を保持している。好ましくは、昇降ガイド60は、搬出側扉4が
図4の開放位置にある段階では、搬出側扉4を搬送路22に沿った方向において処理槽本体2からやや離れた位置に保持し、搬出側扉4が降下すると、例えばエアシリンダの駆動により、搬出側扉4が処理槽本体2の本体側フランジ23に向かって誘導される構成とされる。搬出側扉4が降下した状態におけるこのような搬送路22に沿った方向の移動は、後述するリング部材63側の凹部と扉側フランジ40側の凸部が対向する位置にあるときに行われる。ただし、搬出側扉開閉手段6は、搬出側扉4を開閉可能であればどのような構成であってもよく、従来既知の任意の構成を適用することができる。
【0026】
リング部材63は、搬出側扉4の扉側フランジ40と係合して搬出側扉4をロックするために用いられる。リング部材63は、
図6に示すように、円環部63aと、複数の扉側突出部63bと、複数の本体側突出部63cとを備える。円環部63aは、円環状に形成され、その内径は処理槽本体2の本体側フランジ23及び搬出側扉4の扉側フランジ40の外径よりもわずかに大きくなるよう構成される。複数の扉側突出部63bは、円環部63aの搬出側の端部から周方向に亘って等間隔で径方向内側に突出する。複数の扉側突出部63bにより、リング部材63の搬出側の内周面は、円周方向に亘って凹凸形状となっている(
図4、
図7A及び
図7B参照)。複数の扉側突出部63bにより形成される凹凸形状は、扉側フランジ40の外周面に形成される凹凸形状と対応している。また、複数の本体側突出部63cも、扉側突出部63bと同様、円環部63aの搬入側の端部から周方向に亘って等間隔で径方向内側に突出する。複数の本体側突出部63cにより、リング部材63の搬入側の内周面も、搬出側の内周面と同様、円周方向に亘って凹凸形状となっている。複数の本体側突出部63cにより形成される凹凸形状は、本体側フランジ23の係合溝23aよりも搬出口側に形成される凹凸形状と対応しており、これにより、リング部材63を本体側フランジ23に取付けることが可能となっている。
【0027】
搬出側扉4の閉止時において、リング部材63側の凹部と扉側フランジ40側の凸部、リング部材63側の凸部と扉側フランジ40側の凹部がそれぞれ対向する位置となることで、搬出側扉4が搬送路22に沿った方向に移動可能となる(
図7A参照)。一方、リング部材63側の凹部と扉側フランジ40側の凹部、リング部材63側の凸部と扉側フランジ40側の凸部が対向する位置となることで、凸部同士が係合して搬出側扉4の搬送路22に沿った方向の移動が規制される(
図6及び
図7B参照)。
【0028】
リング部材回転手段64は、リング部材63を処理槽本体2の本体側フランジ23及び搬出側扉4の扉側フランジ40の周りで回転させる。リング部材63を回転させることにより、搬出側扉4のロック及びロックの解除が行われる。リング部材回転手段64は、例えば、エアシリンダとされるが、リング部材63を回転可能であればどのような手段であっても良い。また、リング部材回転手段64を手動で回転させる構成とすることも可能である。なお、本実施形態の搬出側扉4は、処理槽本体2の内圧及びシール部材24の膨張により搬出口方向に押圧され、搬出側扉4の扉側フランジ40とリング部材63の複数の扉側突出部63b(
図6参照)とが係合するようになっている。
【0029】
搬送手段7は、搬送ラックRを搬入口20及び搬出口21を通る搬送路22に沿って搬送可能に構成される。本実施形態において、搬送手段7は、複数(
図1及び
図2では6つ)の搬送ユニット7Uから構成される。
【0030】
各搬送ユニット7Uは、
図8Aに示すように、チェーンコンベア70と、駆動モータ71と、回転軸72とを備える。チェーンコンベア70は、処理槽本体2内の底部に設けられる。本実施形態において、チェーンコンベア70は、搬送路22に沿って、平行に3組設けられる。これら3組のチェーンコンベア70の上面に搬送ラックRが載置され、3組のチェーンコンベア70が同期して回転することで搬送ラックRが搬送される。ただし、チェーンコンベア70は、搬送路22に沿って1組のみ設けられていてもよく、2組又は4組以上設けられていても良い。なお、
図1に示すように、本実施形態のチェーンコンベア70の搬送路22に沿った方向の長さは、搬送ラックRの搬送路22に沿った方向の長さよりも長くなっている。
【0031】
駆動モータ71は、回転軸72を介してチェーンコンベア70を駆動する。また、各搬送ユニット7Uは、駆動モータ71と回転軸72の間に、減速機構(図示せず)と、駆動モータ71からチェーンコンベア70への駆動力の伝達を遮断するクラッチ(図示せず)とを備えている。なお、本実施形態のチェーンコンベア70は、両方向に回転可能であり、搬送ラックRを搬出口方向にも搬入方向にも搬送可能である。
【0032】
制御手段8は、上述した搬入側扉開閉手段5、搬出側扉開閉手段6及び搬送手段7を制御して、搬送ラックRの搬送動作(搬入、搬出動作)を行う。制御手段8は、具体的には例えば、CPU、メモリ(例えばフラッシュメモリ)、入力部及び出力部を備えた情報処理装置により構成することができる。そして、情報処理装置により構成された制御手段8の上述した各構成要素による処理は、メモリに記憶されたプログラムをCPUが読み出して実行することで行われる。情報処理装置としては、例えば、パーソナルコンピュータ、PLC(プログラマラブルロジックコントローラ)あるいはマイコンが用いられる。ただし、制御手段8の一部の機能を、任意の通信手段により接続されたクラウド上で実行されるよう構成しても良い。
【0033】
2.殺菌装置1の動作
次に、本実施形態の殺菌装置1の動作について説明する。本実施形態の殺菌装置1は、制御手段8の制御により動作する。制御手段8は、所定の手順(プログラム)に従い、搬入側扉開閉手段5、搬出側扉開閉手段6及び搬送手段7を制御して、搬入、搬出動作を行う。具体的には、制御手段8は、
図9のフローチャートに示すように、搬入工程S1と、搬入側扉閉止工程S2と、ラック位置調整工程S3と、処理工程としての殺菌工程S4と、搬出側扉開放工程S5と、搬出工程S6とを順次実行する。以下、各工程をより詳細に説明する。搬入工程S1を開始する前には、搬入側扉3は開放され、搬出側扉4は閉止された状態であるとする。搬入側扉3が閉止されている場合には、制御手段8は、搬入側扉開閉手段5を制御して搬入側扉3を開放する。また、搬出側扉4が開放されている場合には、制御手段8は、搬出側扉開閉手段6を制御して搬出側扉4を閉止する。この際、リング部材回転手段64によりリング部材63を回転させ、搬出側扉4をロックする。
【0034】
<搬入工程S1>
搬入工程S1は、搬送ラックRを搬出口21方向に移動させて当該搬送ラックRを処理槽本体2へ搬入する工程である。搬入工程S1では、制御手段8は、搬送手段7を制御して、使用者又は他の搬送装置により搬入口20に運ばれてきた搬送ラックRを搬出口方向へと搬送する。具体的には、制御手段8は、各搬送ユニット7Uの駆動モータ71を駆動する。これにより、各搬送ユニット7Uのチェーンコンベア70が回転し、搬送ラックRは搬入側の搬送ユニット7Uから搬出側の搬送ユニット7Uへと順次搬送される。制御手段8は、各搬送ユニット7Uの駆動モータ71を所定時間駆動させると、駆動モータ71を停止させる。ここで、所定時間は、搬送ラックRを搬入口20から搬出口21に到達させるために必要な時間とされる。ただし、搬送ラックRを一度の動作で搬出口21まで搬送するのではなく、搬送ラックRを搬入するごとに、少しずつ搬送するようにしても良い。この場合は、上記所定時間は短い時間で良い。
【0035】
なお、搬出口21に到達した搬送ラックRは、搬出側扉4のストッパ42(
図5B参照)に当接することで、それ以上の移動が規制される。そして、搬送ラックRの移動が規制された状態で駆動モータ71が回転すると、クラッチ(図示せず)により駆動モータ71からチェーンコンベア70への駆動力の伝達が遮断される。これにより、搬送ラックRの底面とチェーンコンベア70の間に発生する摩擦によって搬送ラックRが摩耗することが抑制される。
【0036】
2つ目以降の搬送ラックRを搬入する場合も、制御手段8は、当該搬送ラックRがその前に搬入された搬送ラックRと当接するまでの所定時間、各搬送ユニット7Uの駆動モータ71を駆動させる。これにより、各搬送ユニット7Uのチェーンコンベア70が回転し、搬送ラックRは搬入側の搬送ユニット7Uから搬出側の搬送ユニット7Uへと順次搬送される。ここで、搬送されている搬送ラックRが前の搬送ラックRに当接すると、それ以上の移動が規制されるが、この状態で駆動モータ71が回転すると、上述したように、クラッチ(図示せず)の作用により駆動モータ71からチェーンコンベア70への駆動力の伝達が遮断され、搬送ラックRの摩耗が防止される。なお、すでに搬入された搬送ラックRの個数に応じて、全ての搬送ユニット7Uは動作させず、搬入側の搬送ユニット7Uのみを動作させることも好適である。
【0037】
そして、最後の搬送ラックR(図示の場合、9個目の搬送ラックR)が搬入されると、搬入工程S1を終了する。
【0038】
<搬入側扉閉止工程S2>
搬入側扉閉止工程S2は、搬入側扉3を閉止する工程である。搬入側扉閉止工程S2では、制御手段8は、搬入側扉開閉手段5により搬入側扉3を閉止する。これにより、処理槽本体2が密閉される。
【0039】
<ラック位置調整工程S3>
ラック位置調整工程S3は、搬送手段7により搬送ラックRを搬入口方向に移動させる工程である。ラック位置調整工程S3では、制御手段8は、搬送手段7を制御して、各搬送ラックRを搬入口20の方向へとわずかに移動させる。具体的には、制御手段8は、各搬送ユニット7Uの駆動モータ71を搬入工程S1とは反対方向に駆動することでチェーンコンベア70を逆回転させ、各搬送ラックRを移動させる。各搬送ラックRを移動させる距離は、先頭の搬送ラックRと搬出側扉4のストッパ42の当接状態が解消すれば良く、僅かな距離で良い。なお、搬送ラックRが移動するのであれば、全ての搬送ユニット7Uの駆動モータ71を駆動する必要はない。
【0040】
<殺菌工程S4>
殺菌工程S4は、被処理物を処理する工程である。殺菌工程S4では、搬送ラックRに積載された被処理物の加熱殺菌処理が行われる。本工程の具体的な動作については、従来既知の構成及び方法が用いられるため、その説明を省略する。なお、加熱殺菌の後、冷却処理を行うことも可能である。
【0041】
<搬出側扉開放工程S5>
搬出側扉開放工程S5は、搬送ラックRの搬出のため搬出側扉4を開放する工程である。搬出側扉開放工程S5では、制御手段8は、搬出側扉開閉手段6を制御することにより搬出側扉4を開放する。これにより、搬送ラックRを搬出口21から搬出することが可能となる。
<搬出工程S6>
搬出工程S6は、搬出側扉4を開放した状態で搬送ラックRを搬出口21の方向に移動させて搬出する工程である。搬出工程S6において、制御手段8は、搬送手段7を制御して、処理槽本体2に収容された各搬送ラックRを搬出口方向へと搬送する。具体的には、制御手段8は、各搬送ユニット7Uの駆動モータ71を駆動する。これにより、各搬送ユニット7Uのチェーンコンベア70が回転し、各搬送ラックRは順次搬出口21から搬出され、次工程へと搬送される。
【0042】
3.作用効果
以上のように、本実施形態の殺菌装置1は、搬出側扉4がストッパ42を備えており、搬入工程S1において搬出側扉4を閉じておくことで、搬送ラックRを処理槽本体2内に保持するストッパとして、搬出側扉4に形成されたストッパ42を用いることができる。これにより搬送ラックRの移動及び移動の規制を切り替えるためのストッパを別途設けることなく、搬送ラックRを処理槽本体2内の適切な位置に配置することが可能となっている。
【0043】
ただし、搬出側扉4のストッパ42により搬送ラックRの移動を規制する構成の場合、搬送ラックRにより搬出側扉4が搬出口方向に押圧されると、搬出側扉4の扉側フランジ40とリング部材63の扉側突出部63bとが搬送路22に沿った方向に強く係合してこれらの間の摩擦が増加することになる。すると、リング部材63を回転させるリング部材回転手段64への負荷が増大し、リング部材63がうまく回転しないおそれがある。また、回転はするとしても、リング部材63の動作が滑らかではなくなってしまう。
【0044】
しかしながら、本実施形態に係る殺菌装置1によれば、制御手段8は、搬入工程S1において搬送ラックRを処理槽本体2の内部に収容してから搬出側扉開放工程S5を実行するまでの間に、搬送ラックRを搬入口方向に移動させるラック位置調整工程S3を実行するようになっている。これにより、搬送ラックRが搬出側扉4を押圧して搬出側扉4が開きにくくなることを防止することが可能となっている。
【0045】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0046】
上記実施形態の殺菌装置1は、殺菌工程S4の前にラック位置調整工程S3を行う構成であった。しかしながら、ラック位置調整工程S3は、全ての搬送ラックRを処理槽本体2内に搬入した後であって、殺菌工程S4の後に搬出側扉4を開く前であれば、どのタイミングで実行しても良い。
【0047】
上記実施形態では、搬入工程S1、搬入側扉閉止工程S2、ラック位置調整工程S3、殺菌工程S4、搬出側扉開放工程S5、搬出工程S6の各工程を制御手段8の制御により自動で行う構成であった。しかしながら、これらの工程のうち一部の工程を、ユーザの指示により手動で行う構成としても良い。例えば、搬入側扉閉止工程S2及び搬出側扉開放工程S5を手動で行うようにしても良い。
【0048】
上記実施形態の殺菌装置1は、搬出側扉4と係合する係合手段として、リング部材63を備えていた。ここで、リング部材63は、殺菌工程S4における処理槽本体2の内圧及びエアが供給されたシール部材24による押圧により搬出側扉4が処理槽本体2から離れる方向へ移動するのを防ぐ構成である。しかしながら、搬出側扉4と係合する係合手段として、搬出側扉4が処理槽本体2に近づく方向へ押圧することで搬出側扉4をロックする部材を備えていても良い。
【0049】
上記実施形態では、搬出側扉4の処理槽本体2側にストッパ42が形成されていたが、搬出側扉4にストッパ42は必須ではない。ストッパ42がない場合であっても、搬出側扉4の処理槽本体2側の面に搬送ラックRが当接することで、搬送ラックRの搬出口方向への移動を規制することができる。
【0050】
上記実施形態では、搬送手段7がチェーンコンベア70を備えた構成であった。しかしながら、搬送ラックRを搬送する構成は、チェーンコンベア70に限定されない。例えば、ローラ式の搬送手段7を用いることも可能である。
【0051】
上記実施形態では、処理槽本体2が複数の搬送ラックRを収容可能とされていた。しかしながら、処理槽本体2を、1つの搬送ラックRのみを収容可能なものとすることも可能である。ただし、複数個の搬送ラックRを複数回に分けて搬入する場合、2つ目以降の搬送ラックRを奥まで搬入するには最初の搬送ラックRが必然的に搬出側扉4にぶつかってしまうので、本発明が特に有効である。
【0052】
上記実施形態では、搬送手段7が複数の搬送ユニット7Uから構成されていたが、搬送手段7を1組のチェーンコンベア70及び1つの駆動モータ71から構成しても良い。
【0053】
上記実施形態において、搬入側扉3及び搬出側扉4はそれぞれ、上下方向に移動することで搬入口20及び搬出口21を開閉する構成であった。しかしながら、搬入側扉3及び搬出側扉4は、例えばスイングタイプであっても良い。
【0054】
上記実施形態では、被処理物を処理する処理装置として、被処理物を殺菌処理する殺菌装置1の例を説明したが、処理装置は、殺菌装置1に限られない。例えば、処理装置は、処理槽本体2内において搬送ラックRに積載された被処理物を冷却する冷却装置であっても良い。このような構成であれば、搬送ラックRを処理槽本体2内に適切に搬入することの可能な冷却装置を提供することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 :殺菌装置(処理装置)
2 :処理槽本体
3 :搬入側扉
4 :搬出側扉
5 :搬入側扉開閉手段
6 :搬出側扉開閉手段
7 :搬送手段
7U :搬送ユニット
8 :制御手段
20 :搬入口
21 :搬出口
22 :搬送路
23 :本体側フランジ
23a :係合溝
23b :溝
24 :シール部材
40 :扉側フランジ
41 :アーム部
42 :ストッパ
60 :昇降ガイド
61 :昇降モータ
62 :駆動軸
63 :リング部材(係合手段)
63a :円環部
63b :扉側突出部
63c :本体側突出部
64 :リング部材回転手段
70 :チェーンコンベア
71 :駆動モータ
72 :回転軸
R :搬送ラック
S1 :搬入工程
S2 :搬入側扉閉止工程
S3 :ラック位置調整工程
S4 :殺菌工程(処理工程)
S5 :搬出側扉開放工程
S6 :搬出工程