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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054620
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】調理物用トング
(51)【国際特許分類】
   A47J 43/28 20060101AFI20230407BHJP
【FI】
A47J43/28
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163586
(22)【出願日】2021-10-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-07
(71)【出願人】
【識別番号】521432948
【氏名又は名称】熊野 龍太
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 龍太
【テーマコード(参考)】
4B053
【Fターム(参考)】
4B053AA03
4B053CA13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】調理工程をスムーズかつスピーディーに行うことができ、洗い物の数を減らすことのできる調理物用トングを提供すること。
【解決手段】第1アーム3及び第2アーム4と、第1アーム3及び第2アーム4の先端側にそれぞれ連設される第1挟持部5及び第2挟持部6とを有し、第1挟持部5は第1凹部7と第1凸部8とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、第2挟持部6は第2凹部9と第2凸部10とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備える調理物用トング1であって、第1挟持部5及び第2挟持部6は、第1アーム3及び第2アーム4の閉じ状態で第1凸部8が第2凹部9を塞ぐとともに第2凸部10が第1凹部7を塞ぐような位置関係で、第1凸部8、第1凹部7、第2凸部10、第2凹部9が配置される、調理物用トング1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部が互いに連結されることでそれぞれの先端側が開閉可能に構成された第1アーム及び第2アームと、
前記第1アーム及び前記第2アームの先端側にそれぞれ連設され、当該第1アーム及び当該第2アームの閉じ状態において噛み合う又は略密着するように互いに接触する第1挟持部及び第2挟持部と、
を有し、
前記第1挟持部は、
第1凹部と第1凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、
前記第2挟持部は、
第2凹部と第2凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備える、調理物用トングであって、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部は、
前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態で前記第1凸部が前記第2凹部を塞ぐとともに前記第2凸部が前記第1凹部を塞ぐような位置関係で、前記第1凸部、前記第1凹部、前記第2凸部、前記第2凹部が配置されることにより、
前記第1アーム及び前記第2アームの開き状態においては、前記第1挟持部及び前記第2挟持部の間に盛り付け対象物を挟持して盛り付け可能とし、
前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態においては、前記盛り付け対象物に掛ける流動物を掬い取り可能とした
ことを特徴とする調理物用トング。
【請求項2】
請求項1記載の調理物用トングにおいて、
前記第1挟持部において、複数の前記第1凸部のそれぞれは互いに等しい前記長手方向の第1寸法を備え、複数の前記第1凹部のそれぞれは互いに等しい前記長手方向の第2寸法を備え、
前記第2挟持部において、複数の前記第2凸部のそれぞれは前記長手方向の前記第2寸法を備え、複数の前記第2凹部のそれぞれは前記長手方向の前記第1寸法を備える
ことを特徴とする調理物用トング。
【請求項3】
請求項2記載の調理物用トングにおいて、
前記第1寸法と前記第2寸法とは、互いに等しい
ことを特徴とする調理物用トング。
【請求項4】
請求項3記載の調理物用トングにおいて、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部が互いに噛み合う前記閉じ状態で、当該第1挟持部及び当該第2挟持部それぞれの前記櫛歯状の歯先部分が交互に噛み合うことにより、当該第1挟持部の前記歯先部分と当該第2挟持部の前記歯先部分とが略一直線上に並ぶ
ことを特徴とする調理物用トング。
【請求項5】
請求項3記載の調理物用トングにおいて、
前記第1凸部は、前記第2凹部側へ膨らんだ形状に形成されるとともに、前記第1挟持部及び前記第2挟持部が互いに当接する前記閉じ状態で当該第2凹部に嵌合する第1膨らみ部を備え、
前記第2凸部は、前記第1凹部側へ膨らんだ形状に形成されるとともに、前記第1挟持部及び前記第2挟持部が互いに当接する前記閉じ状態で当該第1凹部に嵌合する第2膨らみ部を備える
ことを特徴とする調理物用トング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理物用トングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一連の調理作業(例えば、麺をつかみ取る作業と、ソースをすくい取る作業)を一つの調理器具で可能とするためのヘラ機能付きトングが知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術のヘラ機能付きトングは、トング(挟み器具)の先端部分を合成樹脂などの素材で形成し、トングの片方の辺を従来のトングの構造とし、もう片方の辺をゴムヘラの形状とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-161188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のヘラ機能付きトングでは、ゴムヘラとトングの2つを別々に使用するのに比べ、器具を持ち替える手間や、器具を洗う手間を省略することができる。しかし、特許文献1のヘラ機能付きトングでは、トングとして使用する場合と、ヘラとして使用する場合とでは、柄を上下にひっくり返して持ち替える必要があった。
【0005】
本発明の目的は、調理工程をスムーズかつスピーディーに行うことができ、洗い物の数を減らすことのできる調理物用トングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、基部が互いに連結されることでそれぞれの先端側が開閉可能に構成された第1アーム及び第2アームと、前記第1アーム及び前記第2アームの先端側にそれぞれ連設され、当該第1アーム及び当該第2アームの閉じ状態において噛み合う又は略密着するように互いに接触する第1挟持部及び第2挟持部と、を有し、前記第1挟持部は、第1凹部と第1凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、前記第2挟持部は、第2凹部と第2凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備える、調理物用トングであって、前記第1挟持部及び前記第2挟持部は、
前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態で前記第1凸部が前記第2凹部を塞ぐとともに前記第2凸部が前記第1凹部を塞ぐような位置関係で、前記第1凸部、前記第1凹部、前記第2凸部、前記第2凹部が配置されることにより、前記第1アーム及び前記第2アームの開き状態においては、前記第1挟持部及び前記第2挟持部の間に盛り付け対象物を挟持して盛り付け可能とし、
前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態においては、前記盛り付け対象物に掛ける流動物を掬い取り可能とした調理物用トングであることを特徴としている。
【0007】
第1挟持部は、第1凹部と第1凸部とが交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、第2挟持部は、第2凹部と第2凸部とが交互に繰り返される櫛歯状の形状を備えている。第1挟持部と第2挟持部とが開いた開き状態では、通常のトングの用い方と同様、互いに離間した第1挟持部と第2挟持部との間に、例えばフライパン等の片手鍋における調理が済んで容器に盛り付ける状態となった調理対象物(一例としてパスタなどの麺類等の料理物)を挟み、そのまま移動させて皿に盛ることができる。
【0008】
第1挟持部と第2挟持部が閉じた閉じ状態では、第1挟持部の第1凸部が第2挟持部の第2凹部を塞ぐとともに、第2挟持部の第2凸部が第1凹部を塞ぐ。これにより、閉じ状態で一体的となった第1挟持部及び第2挟持部は全体として略板状物を構築できるので、通常のゴムベラの用い方と同様に、例えば上記調理後に片手鍋内に残った流動物(例えばソース等)を掬い取ることができる。
【0009】
これにより、調理者は、最初に本発明の調理物用トングを手に持ち開き状態にして盛り付け対象物を片手鍋等から皿に盛り付けた後、手を持ち替えることなくそのまま調理物用トングを閉じ状態にして片手鍋等に残った流動物を掬い取り、盛り付けられた盛り付け対象物の上に掛けることができる。
【0010】
その結果、盛り付け後に流動物を掬うために上・下をひっくり返す必要がある従来構造に比べ、調理工程をスムーズかつスピーディーに行うことができる。また通常のトングと通常のゴムベラとの両方を使用する場合に比べ、洗い物の数を1つ減らすことができる効果もある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の調理物用トングによれば、調理工程をスムーズかつスピーディーに行うことができ、洗い物の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る調理物用トングの斜視図である。
図2】本実施形態に係る調理物用トングの上面図である。
図3】本実施形態に係る調理物用トングの前方から見た斜視図である。
図4】第1挟持部と第2挟持部の斜視図及び下面図である。
図5】調理物用トングの使用時の動作を説明する概念図である。
図6】第1挟持部と第2挟持部とが平行な変形例に係る調理物用トングの上面図及び上断面図である。
図7図6の変形例に係る調理物用トングの前方から見た斜視図である。
図8図6の変形例に係る第1挟持部と第2挟持部の閉じ状態における下断面図である。
図9】膨らみ部を備える変形例に係る第2挟持部の斜視図である。
図10】膨らみ部を備える変形例に係る第1挟持部と第2挟持部の閉じ状態における下断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1に本実施形態に係る調理物用トング1の斜視図を示す。図1に示した方角は、調理者が調理物用トング1を把持して使用する際の、調理者から見た前後方向、左右方向、上下方向でありこれらは互いに直交する。同様の方角が図2図10に適宜適用される。
【0015】
調理物用トング1は、基部2が互いに連結されることでそれぞれの先端側(この図の前方側)が開閉可能に構成された第1アーム3及び第2アーム4と、第1アーム3及び第2アーム4の先端側にそれぞれ連設され、第1アーム3及び第2アーム4の閉じ状態において噛み合う又は略密着するように互いに接触する第1挟持部5及び第2挟持部6を有する。
【0016】
第1アーム3及び第2アーム4は例えばステンレス等で形成されているが、プラスチック等により形成してもよい。第1挟持部5及び第2挟持部6は例えば耐熱性のシリコン素材等で形成される。
【0017】
第1挟持部5は、第1凹部7と第1凸部8とが第1挟持部5の長手方向Lに沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、第2挟持部6は、第2凹部9と第2凸部10とが第2挟持部6の長手方向L′に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備える。
【0018】
調理物用トング1の第1挟持部5及び第2挟持部6は、第1アーム3及び第2アーム4の前記閉じ状態で第1凸部8が第2凹部9を塞ぐとともに第2凸部10が第1凹部7を塞ぐような位置関係で、第1凸部8、第1凹部7、第2凸部10、第2凹部9が配置されるようになっている。
【0019】
この図では、第1挟持部5は5個の第1凹部7と4個の第1凸部8を備え、第2挟持部6は4個の第2凹部9と5個の第2凸部10を備える。すなわち、第1凹部7と第2凸部10の数は等しく、第1凸部8と第2凹部9の数は等しくなるように構成されている。また、第1凹部7及び第2凸部10の数は、第1凸部8及び第2凹部9の数よりも、1個多くなるように構成されている。ただし、第1凹部7及び第2凸部10の数は、第1凸部8及び第2凹部9の数よりも、1個少なくなるように構成されていてもかまわない。上記条件を満たす範囲であれば、第1凹部7及び第2凸部10の数は5個より多くても少なくてもよく、第1凸部8、第2凹部9の数は4個より多くても少なくてもよい。
【0020】
調理物用トング1は、第1アーム3及び第2アーム4のそれぞれの基部2をこの図の後方側において連結する連結部11を備える。また、第1アーム3及び第2アーム4は、調理物用トング1を調理台等に置いた際に、第1挟持部5及び第2挟持部6の下方側の辺(櫛歯の歯先)が調理台等の設置面に接触しないために設けられる突起部12を有する。
【0021】
図2に調理物用トング1の上面図を示す。調理物用トング1の第1挟持部5と第2挟持部6とは、下方に向かって逆ハの字状となるように構成されている。すなわち、この上面図においては第1挟持部5と第2挟持部6との左右方向の間隔(離間距離)が、下方に行くほど狭くなるようになっている。
【0022】
図2(a)は第1アーム3及び第2アーム4が開き状態にある調理物用トング1の上面図である。前記開き状態とは、調理者が第1アーム3及び第2アーム4を把持して、左右方向に少し力を加えた状態である。この時第1挟持部5と第2挟持部6とは互いに離れている。
【0023】
調理物用トング1は、第1アーム3及び第2アーム4の開き状態においては、第1挟持部5及び第2挟持部6の間に盛り付け対象物を挟持して盛り付け可能となっている。すなわち、開き状態においては、調理物用トング1は、トングとして機能する。
【0024】
トングとしての機能とは、例えば、フライパンで調理を行う際に、パスタの麺をつかんで、ソースと絡めたり、皿に盛りつける、あるいは、ハンバーグを焼くときにハンバーグをつかんで裏返しにしたり、皿に盛りつける、等の機能を指す。
【0025】
図2(b)は第1アーム3及び第2アーム4が閉じ状態にある調理物用トング1の上面図である。前記閉じ状態とは、調理者が第1アーム3及び第2アーム4を把持して、左右方向にさらに力を加え、第1挟持部5と第2挟持部6の少なくとも一部を閉じ合わせた状態である。第1挟持部5と第2挟持部6とは逆ハの字状となっているため、第1挟持部5と第2挟持部6の少なくとも下方の辺(櫛歯の歯先)及びその近傍は互いに接触し、噛みあうようになっている。
【0026】
すなわち、前記閉じ状態において、少なくとも第1挟持部5と第2挟持部6の少なくとも下方の辺及びその近傍は、第1挟持部5の第1凸部8が第2挟持部6の第2凹部9を塞ぐとともに、第2挟持部6の第2凸部10が第1挟持部5の第1凹部7を塞ぐような位置関係で、互いに接触し、噛みあうようになっている。
【0027】
調理物用トング1は、第1アーム3及び第2アーム4の閉じ状態においては、前記盛り付け対象物に掛ける流動物を掬い取り可能となっている。すなわち、閉じ状態においては、調理物用トング1はゴムベラとして機能する。
【0028】
ゴムベラとしての機能とは、例えば、フライパンで調理を行う際に、パスタやハンバーグを皿に盛りつけた後、フライパンに残ったパスタのソースやハンバーグの肉汁等の液体をフライパンの端などに寄せたり、すくいとって皿に盛りつけたパスタやハンバーグにトッピングするための機能を指す。
【0029】
図3に調理物用トング1を前方から見た斜視図を示す。
【0030】
図3(a)は調理物用トング1が調理者に把持されていない、すなわち全く力が加えられていない状態での前方斜視図である。調理物用トング1の第1挟持部5と第2挟持部6とは、前方から見た時、逆ハの字状となるように(下方になるにつれ、左右方向の幅が狭くなるように)構成されている。
【0031】
図3(b)は第1アーム3及び第2アーム4が開き状態にある調理物用トング1の前方斜視図である。この状態において、調理物用トング1はトングとして機能する。
【0032】
図3(c)は第1アーム3及び第2アーム4が閉じ状態にある調理物用トング1の前方斜視図である。この状態において、調理物用トング1はゴムベラとして機能する。第1挟持部5と第2挟持部6の少なくとも下方の辺及びその近傍は互いに閉じ合わされ噛みあうようになっている。
【0033】
図4は第1挟持部5及び第2挟持部6の斜視図及び下面図である。図4(a)は、開き状態の第1挟持部5と第2挟持部6の斜視図である。図4(b)は、閉じ状態の第1挟持部5と第2挟持部6の斜視図である。図4(c)は、閉じ状態の第1挟持部5と第2挟持部6の下面図である。
【0034】
図4(a)の矢印(長二点鎖線)で示すように、第2挟持部6の5か所の第2凸部10が第1挟持部5の5か所の第1凹部7にそれぞれ対応して、閉じ状態において塞ぐようになっている。同様に、第1挟持部5の4か所の第1凸部8が第2挟持部6の4か所の第2凹部9にそれぞれ対応して塞ぐようになっている。
【0035】
図4(a)に示すように、第1挟持部5において、複数の第1凸部8のそれぞれは互いに等しい長手方向Lの第1寸法T1を備え、複数の第1凹部7のそれぞれは互いに等しい長手方向Lの第2寸法t1を備える。
【0036】
第2挟持部6において、複数の第2凸部10のそれぞれは長手方向L′の第2寸法T2を備え、複数の第2凹部9のそれぞれは長手方向L′の第1寸法t2を備える。
【0037】
第1寸法T1及びt2は略等しく、第2寸法t1及びT2は略等しくなっている。T1=t2かつt1=T2であるならば、第1寸法と第2寸法とは異なっていても良い。すなわち、第1挟持部5及び第2挟持部6のそれぞれにおいて、T1とt1との寸法は異なってもかまわないし、T2とt2との寸法は異なってもかまわない。
【0038】
なお、複数の第1凸部8が複数の第2凹部9を塞ぐ時にそれぞれ対応する複数のT1とt2が等しく、複数の第2凸部10が複数の第1凹部7を塞ぐ時にそれぞれ対応するt1とT2が等しいようになっていれば、複数のT1のそれぞれの寸法及び複数のT2のそれぞれの寸法が、全て揃っていなくてもかまわない。
【0039】
なお、第1凸部8を第2凹部9と噛みあわせやすくし、第2凸部10を第1凹部7と噛みあわせやすくするため、例えば、第1寸法T1がt2よりごく少量短く、第2寸法T2がt1よりごく少量短くなっていてもかまわない。上記ごく少量とは、例えば、0ミリメートルより大きく1ミリメートルより短い距離を指す。
【0040】
より好ましくは、第1寸法T1及びt2と、第2寸法t1及びT2とは、互いに等しいことが好ましい。
【0041】
図4(b)に示すように、第1アーム3と第2アーム4の閉じ状態において、複数の第1凹部7を、それぞれ対応する複数の第2凸部10が塞いでおり、それぞれ対応する箇所のt1とT2は略等しくなっている。
【0042】
また、この図では、第1挟持部5及び第2挟持部6が互いに噛み合う閉じ状態において、第1挟持部5及び第2挟持部6それぞれの櫛歯状の歯先部分が交互に噛み合うことにより、第1挟持部5の歯先部分16と第2挟持部6の歯先部分17とが、この図の前後方向に平行な直線Pの延長線上に略一直線上に並ぶようになっている。
【0043】
図4(c)に示すように、第1アーム3と第2アーム4の閉じ状態において、第1挟持部5と第2挟持部6の下方見た時、第1挟持部5の第1凸部8が第2挟持部6の第2凹部9を塞ぐとともに、第2挟持部6の第2凸部10が第1挟持部5の第1凹部7を塞ぐような位置関係で、互いに噛み合うようになっている。
【0044】
この時、第1挟持部5と第2挟持部6とがハの字状を構成しているため、第1凸部8の下方端部が第2挟持部6側に入り込み、第2凸部10の下方端部が第1挟持部5側に入り込むようにして、噛み合うようになっている。
【0045】
図5は調理物用トング1の使用時の動作を説明する概念図である。図5(a)は第1アーム3と第2アーム4とが開き状態にある調理物用トング1をトングとして使用する動作を表している。調理者はこの図の後方に位置し、調理物用トング1の第1アーム3及び第2アーム4を把持して開き状態にしてから、フライパン13の中でパスタの麺14とパスタソース15と調理した後、パスタの麺14をつかみ取り、適宜皿などに盛り付ける。
【0046】
次いで、図5(b)において、調理者は第1アーム3と第2アーム4にさらに力を加えて閉じ状態にし、フライパン13に残っているパスタソース15を寄せ、適宜、皿に盛りつけたパスタの麺14の上にパスタソース15をかけるなどの動作を行う。
【0047】
<実施形態の効果>
本実施形態において、第1挟持部5は、第1凹部7と第1凸部8とが交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、第2挟持部6は、第2凹部9と第2凸部10とが交互に繰り返される櫛歯状の形状を備えている。第1挟持部5と第2挟持部6とが開いた開き状態では、通常のトングの用い方と同様、互いに離間した第1挟持部と第2挟持部との間に、例えばフライパン等の片手鍋における調理が済んで容器に盛り付ける状態となった調理対象物(一例としてパスタなどの麺類等の料理物)を挟み、そのまま移動させて皿に盛ることができる。
【0048】
第1挟持部5と第2挟持部6が閉じた閉じ状態では、第1挟持部5の第1凸部8が第2挟持部6の第2凹部9を塞ぐとともに、第2挟持部6の第2凸部10が第1凹部7を塞ぐ。これにより、閉じ状態で一体的となった第1挟持部5及び第2挟持部6は全体として略板状物を構築できるので、通常のゴムベラの用い方と同様に、例えば上記調理後に片手鍋内に残った流動物(例えばソース等)を掬い取ることができる。
【0049】
これにより、調理者は、最初に本発明の調理物用トング1を手に持ち開き状態にして盛り付け対象物を片手鍋等から皿に盛り付けた後、手を持ち替えることなくそのまま調理物用トング1を閉じ状態にして片手鍋等に残った流動物を掬い取り、盛り付けられた盛り付け対象物の上に掛けることができる。
【0050】
その結果、盛り付け後に流動物を掬うために上・下をひっくり返す必要がある従来構造に比べ、調理工程をスムーズかつスピーディーに行うことができる。また通常のトングと通常のゴムベラとの両方を使用する場合に比べ、洗い物の数を1つ減らすことができる効果もある。
【0051】
また、一般家庭での使用では、開き状態で使用することで大皿から取り皿への取り分けに活用できるとともに、閉じ状態で使用することで大皿に残った流動物(例えば液状のもの)を拭い取って燃えるゴミとして集積させれば、大皿の洗浄時に流動物が排水溝に流されるのを防止できる効果もある。
【0052】
また、本実施形態では特に、第1挟持部5及び第2挟持部6において、第1寸法T1及びt2が略等しく、第2寸法t1及びT2が略等しいことにより、第1アーム3と第2アーム4の閉じ状態において、第1挟持部5の第1凸部8が第2挟持部6の第2凹部9を塞ぎ、第2挟持部6の第2凸部10が第1凹部7を塞いだときに、隙間がなくぴったりとはまることで、ソースなどを寄せるゴムベラとして機能するようになっている。
【0053】
また、本実施形態では特に、第1挟持部5及び第2挟持部6において、凸部どうしを互いに同一大きさとしまた凹部どうしを互いに同一大きさとすることで、鋸歯状の形状の均一化を図り、長手方向のどの位置においても均等に盛り付け対象物を挟持することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では特に、第1挟持部5及び第2挟持部6において、凸部の大きさと凹部の大きさが同一となることで、凸部も凹部も互いに等しいピッチで規則正しく並ぶことになる。この結果、鋸歯状の形状のさらなる均一化を図り、盛り付け対象物のスムーズかつ確実な挟持を実現できる。
【0055】
また、本実施形態では特に、図4(b)に示したように、閉じ状態で互いに噛み合って一体的となった第1挟持部5及び第2挟持部6の歯先部分が全体として一枚の平板状形状を実現し、ゴムベラと酷似した形状となるため、上記流動物を確実かつ十分に掬い取ることができる。
【0056】
<変形例>
なお、本考案は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0057】
(1)第1挟持部5′と第2挟持部6′とが平行な場合
図6にこの変形例に係る調理物用トング1′の上面図及び上方から見た断面図を示す。図6(a)は開き状態、図6(b)は閉じ状態の調理物用トング1′を表しており、図6(a)及び図6(b)の前方側半分が上方から見た断面図、後方側半分が上面図となっている。
【0058】
図7にこの変形例の調理物用トング1′の前方から見た斜視図を示す。図7(a)は調理物用トング1′が調理者に把持されていない、すなわち全く力が加えられていない状態での前方斜視図である。図7(b)は第1アーム3及び第2アーム4が開き状態にある調理物用トング1′の前方斜視図である。この状態において、調理物用トング1′はトングとして機能する。図7(c)は第1アーム3及び第2アーム4が閉じ状態にある調理物用トング1′の前方斜視図である。この状態において、調理物用トング1′はゴムベラとして機能する。
【0059】
図8に調理物用トング1′の第1挟持部5′と第2挟持部6′の閉じ状態において下から見た断面図を示す。
【0060】
図6(a)及び図7(a)、図7(b)に示されるように、調理物用トング1′の第1挟持部5′と第2挟持部6′とは互いに平行となるように(左右方向の幅が一定に)構成されている。そのため、図6(b)及び図7(c)、図8に示されるように、第1アーム3と第2アーム4の閉じ状態において、第1挟持部5と第2挟持部6とは互いに略密着するようになっている。また、第1挟持部5′の第1凸部8が第2挟持部6′の第2凹部9を塞ぎ、第2挟持部6′の第2凸部10が第1挟持部5の第1凹部7を隙間なくぴったりと塞ぐようになっている。
【0061】
この変形例においても、実施形態と同様の効果を得る。
【0062】
(2)第1膨らみ部18及び第2膨らみ部19を備える場合
図9にこの変形例の調理物用トング1″の第2挟持部6″の斜視図を示す。また、図10に調理物用トング1″の第1挟持部5″と第2挟持部6″の閉じ状態を下から見た断面図を示す。
【0063】
図9(a)及び図9(a)のBの拡大図である図9(b)、及び図10に示されるように、第1凸部8″は、第2凹部側9へ膨らんだ形状に形成されるとともに、第1挟持部5″及び第2挟持部6″が互いに当接する閉じ状態で第2凹部9に嵌合する第1膨らみ部18を備える。第2凸部10″は、第1凹部7側へ膨らんだ形状に形成されるとともに、第1挟持部5″及び第2挟持部6″が互いに当接する閉じ状態で第1凹部7に嵌合する第2膨らみ部19を備える。
【0064】
これらの図では、第1凸部8″が第1膨らみ部18であり、第2凸部10″が第2膨らみ部19となっている。また、第1膨らみ部18及び第2膨らみ部19は、カマボコ状の立体形状を有する膨らみとなっているが、このような形状に特に限定されるものではない。
【0065】
この変形例の調理物用トング1″では、閉じ状態で第1挟持部5″及び第2挟持部6″が互いに当接して凹部が凸部によって塞がれる際、各凸部に設けた膨らみ部が対応する凹部に向かって円滑に進入して嵌合する。これにより、各凸部による各凹部の塞ぎ効果をさらに高め、流動物を確実かつ十分に掬い取ることができる。
【0066】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0067】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0068】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0069】
1、1′、1″ 調理物用トング
2 基部
3 第1アーム
4 第2アーム
5、5′、5″ 第1挟持部
6、6′、6″ 第2挟持部
7 第1凹部
8、8″ 第1凸部
9 第2凹部
10、10″ 第2凸部
11 連結部
12 突起部
13 フライパン
14 パスタの麺
15 パスタソース
16 第1挟持部の歯先部分
17 第2挟持部の歯先部分
18 第1膨らみ部
19 第2膨らみ部
T1、t2 第1寸法
T2、t1 第2寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部が互いに連結されることでそれぞれの先端側が開閉可能に構成された第1アーム及び第2アームと、
前記第1アーム及び前記第2アームの先端側にそれぞれ連設され、当該第1アーム及び当該第2アームの閉じ状態において噛み合う又は略密着するように互いに接触する第1挟持部及び第2挟持部と、
を有し、
前記第1挟持部は、
第1凹部と第1凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、
前記第2挟持部は、
第2凹部と第2凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備える、調理物用トングであって、
前記第1挟持部において、複数の前記第1凸部のそれぞれは互いに等しい前記長手方向の第1寸法を備え、複数の前記第1凹部のそれぞれは互いに等しい前記長手方向の第2寸法を備え、
前記第2挟持部において、複数の前記第2凸部のそれぞれは前記長手方向の前記第2寸法を備え、複数の前記第2凹部のそれぞれは前記長手方向の前記第1寸法を備え、
前記第1寸法と前記第2寸法とは、互いに等しく、
前記第1挟持部及び前記第2挟持部は、
前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態で前記第1凸部が前記第2凹部を塞ぐとともに前記第2凸部が前記第1凹部を塞ぐような位置関係で、前記第1凸部、前記第1凹部、前記第2凸部、前記第2凹部が配置されるとともに、当該閉じ状態で、当該第1挟持部及び当該第2挟持部それぞれの前記櫛歯状の歯先部分が交互に噛み合うことにより、当該第1挟持部の前記歯先部分の下端と当該第2挟持部の前記歯先部分の下端とが略一直線上に並ぶように構成され、
前記第1アーム及び前記第2アームの開き状態においては、前記第1挟持部及び前記第2挟持部の間に盛り付け対象物を挟持して盛り付け可能とし、
前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態においては、前記第1挟持部及び前記第2挟持部それぞれにおいて互いに交互に噛み合った前記歯先部分が全体として一枚の平板状形状を実現するとともに、当該歯先部分の略一直線上に並んだ前記下端によって、前記盛り付け対象物に掛けるソース寄せるゴムベラとして機能させるようにした
ことを特徴とする調理物用トング。
【請求項2】
請求項1記載の調理物用トングにおいて、
前記第1凸部は、前記第2凹部側へ膨らんだ形状に形成されるとともに、前記第1挟持部及び前記第2挟持部が互いに当接する前記閉じ状態で当該第2凹部に嵌合する第1膨らみ部を備え、
前記第2凸部は、前記第1凹部側へ膨らんだ形状に形成されるとともに、前記第1挟持部及び前記第2挟持部が互いに当接する前記閉じ状態で当該第1凹部に嵌合する第2膨らみ部を備える
ことを特徴とする調理物用トング。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、基部が互いに連結されることでそれぞれの先端側が開閉可能に構成された第1アーム及び第2アームと、前記第1アーム及び前記第2アームの先端側にそれぞれ連設され、当該第1アーム及び当該第2アームの閉じ状態において噛み合う又は略密着するように互いに接触する第1挟持部及び第2挟持部と、を有し、前記第1挟持部は、第1凹部と第1凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備え、前記第2挟持部は、第2凹部と第2凸部とが長手方向に沿って交互に繰り返される櫛歯状の形状を備える、調理物用トングであって、前記第1挟持部において、複数の前記第1凸部のそれぞれは互いに等しい前記長手方向の第1寸法を備え、複数の前記第1凹部のそれぞれは互いに等しい前記長手方向の第2寸法を備え、前記第2挟持部において、複数の前記第2凸部のそれぞれは前記長手方向の前記第2寸法を備え、複数の前記第2凹部のそれぞれは前記長手方向の前記第1寸法を備え、前記第1寸法と前記第2寸法とは、互いに等しく、前記第1挟持部及び前記第2挟持部は、前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態で前記第1凸部が前記第2凹部を塞ぐとともに前記第2凸部が前記第1凹部を塞ぐような位置関係で、前記第1凸部、前記第1凹部、前記第2凸部、前記第2凹部が配置されるとともに、当該閉じ状態で、当該第1挟持部及び当該第2挟持部それぞれの前記櫛歯状の歯先部分が交互に噛み合うことにより、当該第1挟持部の前記歯先部分の下端と当該第2挟持部の前記歯先部分の下端とが略一直線上に並ぶように構成され、前記第1アーム及び前記第2アームの開き状態においては、前記第1挟持部及び前記第2挟持部の間に盛り付け対象物を挟持して盛り付け可能とし、前記第1アーム及び前記第2アームの前記閉じ状態においては、前記第1挟持部及び前記第2挟持部それぞれにおいて互いに交互に噛み合った前記歯先部分が全体として一枚の平板状形状を実現するとともに、当該歯先部分の略一直線上に並んだ前記下端によって、前記盛り付け対象物に掛けるソース寄せるゴムベラとして機能させるようにしたことを特徴としている。