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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054641
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】代替魚肉成形食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20230407BHJP
【FI】
A23L17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163614
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】DM三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】塩見 和世
(72)【発明者】
【氏名】小島(大田) 和香奈
(72)【発明者】
【氏名】伊地知 文子
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AD36
4B042AK09
4B042AK10
4B042AK13
4B042AP05
4B042AP14
4B042AP21
(57)【要約】
【課題】より魚肉に近い風味及び食感を有する代替魚肉成形食品を提供すること。
【解決手段】イネ科植物由来の食物繊維を含有する、代替魚肉成形食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ科植物由来の食物繊維を含有する、代替魚肉成形食品。
【請求項2】
前記イネ科植物由来の食物繊維が竹由来食物繊維である、請求項1に記載の代替魚肉成形食品。
【請求項3】
ゲル化剤、風味増強剤、着色料、マスキング剤、日持向上剤、糖質及び結着剤からなる群より選択される少なくとも一つを含有する、請求項1又は2に記載の代替魚肉成形食品。
【請求項4】
イネ科植物由来の食物繊維を代替魚肉に混合する工程を含む、代替魚肉成形食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代替魚肉成形食品に関する。
【背景技術】
【0002】
健康や環境問題への意識の高まり、将来への畜肉供給不安の増大などを受け、近年植物由来の原料で製造した代替肉への注目が高まっている。更にその傾向は畜肉に留まらず、卵や魚などを使用したその他の動物由来食品にも広がりつつある。
【0003】
代替魚肉食品として、例えば、特許文献1には、解繊された粒状大豆蛋白質素材、パーム油の中融点画分、液油及び油脂それぞれを所定量含むツナペースト代替食品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6601144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より魚肉に近い風味及び食感を有する代替魚肉成形食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イネ科植物由来の食物繊維を含有する、代替魚肉成形食品に関する。当該代替魚肉成形食品は、イネ科植物由来の食物繊維を含有するため、より魚肉に近い風味及び食感を有している。
【0007】
本発明の代替魚肉成形食品において、イネ科植物由来の食物繊維は、竹由来食物繊維であってよい。この場合、本発明による効果がより一層顕著に奏される。
【0008】
本発明の代替魚肉成形食品は、ゲル化剤、風味増強剤、着色料、マスキング剤、日持向上剤、糖質及び結着剤からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有していてよい。
【0009】
本発明はまた、イネ科植物由来の食物繊維を代替魚肉に混合する工程を含む、代替魚肉成形食品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より魚肉に近い風味及び食感を有する代替魚肉成形食品及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】竹由来の食物繊維(BF)を含む魚風フライ原料、及びBFを含まない魚風フライ原料の外観観察結果を示す写真である。
図2】BFを含む魚風フライ、及びBFを含まない魚風フライの外観観察結果を示す写真である。
図3】BF及びカロブパウダーを含む魚風フライ、並びにBF及びカロブパウダーを含まない魚風フライの外観観察結果を示す写真である。
図4】BFを含むさつま揚げ様食品、及びBFを含まないさつま揚げ様食品の外観観察結果を示す写真である。
図5】BFを含むさつま揚げ様食品、及びBFを含まないさつま揚げ様食品の外観観察結果を示す写真である。
図6】BFを含むさつま揚げ様食品、及びBFを含まないさつま揚げ様食品の破断強度の評価結果を示すグラフである。
図7図7Aは、BF、マスキング剤、結着剤及び日持向上剤等を含むさつま揚げ様食品の観察結果を示す写真であり、図7Bは、BF、マスキング剤、結着剤及び日持向上剤等を含む枝豆入りさつま揚げ様食品の観察結果を示す写真である。
図8】BF、ゲル化剤及び着色料等を含む刺身様食品の観察結果を示す写真である。
図9】BF、ゲル化剤及び着色料等を含むネギトロ様食品の観察結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<代替魚肉成形食品>
本明細書において、「代替魚肉成形食品」とは、代替魚肉を含む食材の成形及び調理によって得られる食品である。「代替魚肉」とは、水産物及び水産加工品以外からなる魚肉様食材である。代替魚肉としては、例えば、大豆タンパク質、エンドウ豆タンパク質、そら豆タンパク質、枝豆タンパク質、トウモロコシタンパク質、小麦タンパク質、乳由来タンパク質、卵由来タンパク質、畜肉由来タンパク質、ゲル化剤(こんにゃく粉、寒天等)等が挙げられる。
【0014】
代替魚肉成形食品としては、魚風フライ、さつま揚げ様食品、刺身様食品、ネギトロ様食品、つみれ風食品、はんぺん風食品、かまぼこ風食品、魚肉ソーセージ風食品、ちくわ風食品、魚肉フレーク風食品、焼き魚風食品等が挙げられる。
【0015】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、イネ科植物由来の食物繊維を含有する。イネ科植物由来の食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含む。イネ科植物は、例えば、竹及びササ等のイネ科タケ亜科植物、イネ科カラスムギ属植物、イネ科コムギ属植物、イネ科サトウキビ属植物、イネ科オオムギ属植物、イネ科ライムギ属植物、イネ科トウモロコシ属植物であってよい。
【0016】
イネ科植物は、イネ科タケ亜科植物であってよく、竹であってよい。
【0017】
イネ科植物由来の食物繊維は、イネ科植物を原料として製造される食物繊維である。イネ科植物由来の食物繊維は、例えば、イネ科植物の原料をパルプ化し、パルプ化した原料を粉砕し、その後分級することによって得ることができる。イネ科植物由来の食物繊維は、不溶性食物繊維を含む。不溶性食物繊維としては、例えば、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが挙げられる。
【0018】
イネ科植物由来の食物繊維は、竹由来の食物繊維(バンブーファイバー)であることが好ましい。この場合、食品の風味・外観を損なうことなく、魚繊維様の食感・外観がより優れたものとなる。
【0019】
竹由来の食物繊維は、通常、セルロース及びヘミセルロースを含む。竹由来の食物繊維のセルロースの含有量は、竹由来の食物繊維全量に対して、65~85質量%であってよい。竹由来の食物繊維のヘミセルロースの含有量が15~35質量%であってよい。竹由来の食物繊維のリグニンの含有量は竹由来の食物繊維全量に対して、5質量%以下であってよい。竹由来の食物繊維は、通常、無味・無臭であり、白色であってよい。
【0020】
イネ科植物由来の食物繊維としては、Custum Fiber BF30、Custum Fiber BF75、Custum Fiber BF90、Custum Fiber BF200、及び、Custum Fiber BF500(いずれも三井製糖社製であり、Custum Fiberは登録商標である。)、UNICELL WF30、UNICELL WF75、UNICELL WF90、UNICELL WF200、UNICELL WF500、UNICELL OF75、UNICELL OF90、UNICELL OF200(いずれもインターファイバー社製である。)、ビタセルHF600/30、ビタセルHF600、ビタセルHF200、ビタセルWF200、ビタセルWF600、及びビタセルWF600/30(いずれもレッテンマイヤー社製である。)等が挙げられる。
【0021】
イネ科植物由来の食物繊維の粒度は、10μm以上、50μm以上、100μm以上、150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、400μm以上、又は450μm以上であってよい。イネ科植物由来の食物繊維の粒度は、例えば、本発明の効果に更に優れる観点から、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、又は550μm以下であってよい。イネ科植物由来の食物繊維の粒度は、吸引機能付き篩振とう機(例えば、Retsch製のエアジェットシーブAS200jet)の篩上にサンプルを一定量置き、吸引しながら篩を振とうさせ、篩上のサンプル重量より粒度を測定する方法によって測定される粒度を意味する。イネ科植物由来の食物繊維の粒度が、20μm以上600μm以下の範囲内であると、食品の風味・外観を損なうことなく、十分な魚繊維様の食感・外観を付与できる点でより望ましい。
【0022】
イネ科植物由来の食物繊維の含有量は、代替魚肉成形食品の全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上であってよく、30質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0023】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、ゲル化剤を含有していてよい。ゲル化剤を含有する場合、代替魚肉成形食品の硬さ及び保形性をより高めることができる。ゲル化剤としては、例えば、寒天、増粘多糖類、こんにゃく粉、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ペクチン、サイリウムシードガム、カードラン、メチルセルロース等が挙げられる。より具体的には、ゲル化剤としては、例えば、TS寒天・SPH、TSゲル・MC-1、TSゲル・F-FP(いずれも株式会社タイショーテクノス製である。)が挙げられる。
【0024】
ゲル化剤の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.02質量%以上、0.1質量%以上であってよく、20質量%以下、又は10質量%以下であってよい。
【0025】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、風味増強剤を含有していてよい。風味増強剤を含有する場合、香ばしさ、甘み等の風味がより増強する。風味増強剤としては、カロブパウダー(株式会社タイショーテクノス製)、ローストシロップ(例えば、三井製糖株式会社製の焙焼こくシロップ)等が挙げられる。
【0026】
カロブパウダーは、カロブビーン(イナゴマメ)の鞘(果肉)の部分を乾燥した後、粉末化することで得られる食材である。カロブパウダーは、食物繊維やカルシウムを多く含むとともに、脂質の含有量が少なく、かつ、カフェインやテオブロミン等の刺激物を含まない食品素材として知られている。さらに、カロブパウダーは、特有の甘味及び香りを有するとともに、僅かに茶色を呈する食品素材であることから、従来、ココア(カカオ)パウダーの代替品として、チョコレート風味の食品等を製造するための材料として用いられることが知られている。
【0027】
カロブパウダーとしては、カロブビーンの鞘の部分を乾燥した後、粉末化した、いわゆる生の(未焙煎の)カロブパウダーの他、生のカロブパウダーを焙煎した焙煎カロブパウダーを用いることができる。
【0028】
風味増強剤の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.01質量%以上、0.1質量%以上であってよく、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0029】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、着色料を含有していてよい。着色料を含有する場合、代替魚肉成形食品の色を魚肉により近い色に調整しやすくなる。着色料としては、市販の食用色素を用いることができる。着色料としては、例えば、モナスコ・R、TSイエロー・R、クチナシン―<72>―(1000S)、TSレッド・TKY、パプリカオレンジ・KS、クチナシ・AY、TSレッド・TMZ、ガーデニアン・レッド―N(いずれも株式会社タイショーテクノス製である。)等が挙げられる。
【0030】
着色料の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.0001質量%以上、0.001質量%以上であってよく、5質量%以下、又は3質量%以下であってよい。
【0031】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、マスキング剤を含有していてよい。マスキング剤を含むことによって、異臭を抑えることができる。マスキング剤としては、例えば、さとうきび抽出物等が挙げられる。マスキング剤としては、MASK・A(株式会社タイショーテクノス製)、MSX―1MF(三井製糖株式会社製)、MSX―100(J)(三井製糖株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
マスキング剤の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.001質量%以上、0.01質量%以上であってよく、1質量%以下、又は0.1質量%以下であってよい。
【0033】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、日持向上剤を含有していてよい。日持向上剤を含有する場合、代替魚肉成形食品の日持が向上する。日持向上剤としては、例えば、株式会社タイショーテクノス製のホズアップシリーズ(例えば、ホズアップDN55)等が挙げられる。
【0034】
日持向上剤の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上であってよく、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0035】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、糖質を含有していてよい。糖質を含有する場合、代替魚肉成形食品の風味・外観が向上する。糖質としては、例えば、単糖、二糖等、オリゴ糖(三糖から10糖)、多糖(10糖以上の糖質)及びこれらの糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種であってよい。糖質は、糖質を2種以上含む糖質混合物であってよい。糖質混合物として、例えば、水飴を用いることができる。糖アルコールとして、例えば、還元水飴を用いることができる。
【0036】
単糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、アロース、アルロース等が挙げられる。二糖としては、イソマルツロース、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等が挙げられる。オリゴ糖としては、ニゲロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース等が挙げられる。多糖としては水飴が挙げられる。イソマルツロースは、「パラチノース」として三井製糖(株)が商標登録している二糖である。
【0037】
糖アルコールとしては、還元イソマルツロース、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、α-グルコピラノシル-1,1-マンニトール、α-グルコピラノシル-1,6-ソルビトール、還元麦芽糖水飴、還元水飴等が挙げられる。還元イソマルツロースは、「還元パラチノース」として三井製糖(株)が商標登録している糖アルコールである。
【0038】
糖質の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上であってよく、10質量%以下、又は5質量%以下であってよい。
【0039】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、結着剤を含有していてよい。結着剤を含有する場合、代替魚肉成形食品に含まれる各素材の結着性(まとまり)をより高めることができる。結着剤としては、例えば、ジョイナーE400(株式会社タイショーテクノス製)等が挙げられる。
【0040】
結着剤の含有量は、例えば、代替魚肉成形食品全量を基準として、0.1質量%以上、0.2質量%以上であってよく、1質量%以下、又は0.8質量%以下であってよい。
【0041】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、ゲル化剤、風味増強剤、着色料、マスキング剤、日持向上剤、糖質及び結着剤からなる群より選択される少なくとも一つを更に含有してもよい。この場合、より好適な代替魚肉成形食品になる。
【0042】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、イネ科植物由来の食物繊維を含有するため、より魚肉に近い風味及び食感を有している。具体的には、本実施形態に係る代替魚肉成形食品では、食材(代替魚肉)に大豆タンパク質を用いた場合の大豆臭がより軽減されている。本実施形態に係る代替魚肉成形食品では、代替魚肉成形食品に違和感なく、繊維感が付与されている。本実施形態に係る代替魚肉成形食品では、より魚肉に近い硬さ及び弾力が付与されている。
【0043】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品では、イネ科植物由来の食物繊維を含有することによって、べたつきがより少なく、かつ、硬さが付与されている。そのため、本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、製造時の作業性及び成形性に優れている。
【0044】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品では、調理後(例えば、蒸した後)のボリューム感が改善されている。また、本実施形態に係る代替魚肉成形食品は、所望の形状に保持しやすい。
【0045】
<代替魚肉成形食品の製造方法>
本実施形態に係る代替魚肉成形食品の製造方法は、イネ科植物由来の食物繊維を代替魚肉に混合する工程(混合工程)を含む。
【0046】
イネ科植物由来の食物繊維及び代替魚肉については上述したものを用いることができる。
【0047】
イネ科植物由来の食物繊維の混合量は、代替魚肉成形食品の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、イネ科植物由来の食物繊維の混合量は、代替魚肉100質量部に対して、0.1質量部以上、又は0.5質量部以上であってよく、30質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0048】
イネ科植物由来の食物繊維を混合した代替魚肉は、代替魚肉成形食品の種類に応じて、適した形状に成形されてよい。
【0049】
本実施形態に係る代替魚肉成形食品の製造方法は、混合工程の後に、イネ科植物由来の食物繊維を配合した代替魚肉原料を調理する工程を更に含んでいてよい。代替魚肉成形食品の調理は、代替魚肉成形食品の種類に応じて通常の方法により行うことができる。
【0050】
<代替魚肉成形食品により魚肉らしい風味、及びより魚肉らしい食感を付与する方法>
本実施形態に係る方法は、イネ科植物由来の食物繊維を代替魚肉に混合する工程(混合工程)を含む、代替魚肉成形食品により魚肉らしい風味、及びより魚肉らしい食感を付与する方法と捉えることもできる。当該方法は、上述した態様を際限なく適用することができる。
【0051】
<代替魚肉成形食品用添加剤>
本発明の一実施形態として、イネ科植物由来の食物繊維を含む代替魚肉成形食品用添加剤が提供される。当該添加剤における具体的態様は、上述した態様を際限なく適用することができる。
【実施例0052】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0053】
竹由来の食物繊維(バンブーファイバー、以下「BF」ともいう。)と各種原料を組み合わせて、以下の代替魚肉成形食品の製造及び評価を実施した。
・Custum Fiber(登録商標) BF500(BF500、三井製糖社製、粒度500μm)
・Custum Fiber(登録商標) BF90(BF90、三井製糖社製、粒度90μm)
【0054】
<試験例1:魚風フライの製造及び評価1>
以下の配合及び手順で、BF無添加品(BLANK)の魚風フライ及びBF添加品の魚風フライを作製し、評価した。
【0055】
大豆タンパク質調整品、メチルセルロース泡、及び、BF500を表1に示す配合で混ぜ合わせ俵型30g(直径2.5cm)に成形した。俵型成形物にパン粉をつけ、180℃に熱した植物油で片面2分ずつ揚げた。揚げた後、油からフライを取り出し、室温に冷まして、BF添加品の魚風フライを得た。
【0056】
BF500を混合しなかったこと以外は、BF添加品と同様にして、BF無添加品の魚風フライを得た。
【0057】
魚風フライの試作では、大豆タンパク質調整品として、大豆タンパク質(商品名:ニューソイミーF 2010(日清オイリオグループ株式会社製))90gを測りとり、植物由来和風だし調味料9gと水270gと混ぜ合わせ、1時間静置したものを使用した。
【0058】
魚風フライの試作では、メチルセルロース泡として、メチルセルロース(商品名:メトローズMCE100TS(信越化学工業株式会社製))4gと植物油60g、冷水(1℃)136gを混合し、30分静置したものを使用した。
【0059】
BF無添加品及びBF添加品の外観及び味を評価した。味の評価は官能評価により実施した。評価結果を表2~4及び図1~2に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】
【0060】
図1及び表2のとおり、揚げる前の生地で比較すると、BF添加品は、BF無添加品よりべたつきが少なく、硬さが増しており、成形性及び作業性に優れていた。
【0061】
図2及び表3のとおり、揚げた後のフライで比較すると、BF添加品はBF無添加品より、形が崩れにくく、中具がより詰まったフライとなっていた。図2及び表4のとおり、フライ後のフライ高さ(直径)を比較したところ、BF添加品は、BF無添加品より高さが維持されていた。風味及び食感についても、BF添加品では魚様の繊維感とフワフワ感が向上し、大豆タンパク質由来の大豆臭が軽減していた。
【0062】
<試験例2:魚風フライの製造及び評価2>
以下の配合及び手順で、BF無添加品(BLANK)の魚風フライと、BF及びカロブパウダー添加品(BF+カロブパウダー)の魚風フライとを作製し、評価した。
【0063】
BF500とカロブパウダー(株式会社タイショーテクノス製)と水とを混ぜ合わせ、BF・カロブパウダー混合物を得た。BF・カロブパウダー混合物と、大豆タンパク質調整品と、メチルセルロース泡とを、表5に示す配合で混ぜ合わせ俵型30g(直径:2.5cm)に成形した。俵型成形物にパン粉をつけ、180℃に熱した植物油で片面2分ずつ揚げた。油からフライを取り出し、室温に冷まして、BF及びカロブパウダー添加品の魚風フライを得た。
【0064】
BF・カロブパウダー混合物を混合しなかったこと以外は、BF及びカロブパウダー添加品と同様にして、BF無添加品の魚風フライを得た。
【0065】
魚風フライの試作では、大豆タンパク質調整品として、大豆タンパク質(商品名:ニューソイミーF 2010(日清オイリオグループ株式会社製))90gを和風だし調味料(植物由来)9gと水270gで1時間戻したものを使用した。魚風フライ2の試作に使用したメチルセルロース泡は、メチルセルロース(商品名:メトローズMCE100TS(信越化学工業株式会社製))4gと植物油60g、冷水(1℃)136gを混合し30分以上静置したものを使用した。
【0066】
BF無添加品、並びに、BF及びカロブパウダー添加品の外観及び味を評価した。味の評価は官能評価により実施した。評価結果を表6及び図3に示す。
【表5】

【表6】
【0067】
表6及び図3のとおり、揚げた後のフライで比較すると、BFとカロブパウダーを添加した魚風フライは、無添加品より繊維感が増すとともに、カロブパウダーがフライ全体の風味(コク味等)を増強することで、より魚風フライに近い風味となった。
【0068】
<試験例3:さつま揚げ様食品の製造及び評価1>
以下の配合及び手順で、BF無添加品(BLANK)及びBF添加品のさつまあげ様食品を作製した。作製に当たって、原料となる乳化カードをまず作製した後、さつま揚げ様食品の作製を行った。
【0069】
(乳化カード試作手順)
メチルセルロース(商品名:メトローズMCE100TS(信越化学工業株式会社製))と油をさじで混ぜて(分散させて)、メチルセルロース・油混合物を得た。冷やした水をミキサーに入れ、ミキサー内に、メチルセルロース・油混合物を入れた。ミキサー内に、粉末分離大豆たんぱく(商品名:ソルピー6000H(日清オイリオグループ株式会社製))を更に入れた。ミキサーで乳化攪拌し(フチについた油や粉をこそぎ落としながら)、その後、冷蔵庫で30分間以上冷やすことによって、表7に示す配合の乳化カードを得た。
【0070】
(さつま揚げ様食品試作手順)
表7に示す配合で、乳化カード、たまねぎ、青のり、しょうゆ、食塩、みりん、ローストシロップ(商品名:焙焼こくシロップ(三井製糖株式会社製))、及び馬鈴薯澱粉を混合し、次いで、BFを混合した。得られた混合物15gをシリコンカップに入れ、上からラップで軽くおさえた。シリコンカップを天板に載せ、フタをしてヘルシオ(蒸しものモード)で20分蒸した。蒸した後の混合物を揚げ油170℃で3分30秒~4分程度揚げた。これにより、BF添加品のさつま揚げ様食品を得た。
【0071】
BFを混合しなかったこと以外は、BF添加品と同様にして、BF無添加品のさつま揚げ様食品を得た。
【0072】
BF無添加品及びBF添加品の外観及び味を評価した。味の評価は官能評価により実施した。さつま揚げ様食品の外観観察結果を示す写真を図4~5に示す。
【0073】
【表7】

【表8】
【0074】
図4及び図5のとおり、BF添加品では蒸す前の生地のべたつきが改善され、蒸した後のさつま揚げ様食品のボリューム感が向上した。
【0075】
表9~10及び図6は、BF無添加品及びBF添加品の破断強度の測定結果を示す。表8に示すさつま揚げ様食品の配合中のたまねぎ無の配合で試作品を準備し、破断強度の測定を行った。表9及び図6中の「常温」は、揚げた後、常温まで冷めてから測定した結果を示す。表9及び図6中の「60℃」は、常温に冷めた後500W 20Sレンジアップし、60℃恒温槽に30分保存し測定した結果を示す。
【0076】
さつま揚げ様食品の原料の一つであるメチルセルロースは、温めると硬く、冷めると柔らかくなる性質があるが、BFを添加することで、冷めたさつま揚げ様食品が柔らかくなる現象が改善された。実際に、表9~10及び図6のとおり、クリープメータでBF無添加品及びBF添加品の破断強度を測定したところ、BFを添加することでさつま揚げ様食品の硬さが向上しており、常温時と60℃時での硬さの比(常温/60℃)が1に近く、温冷による硬さの変化が少ないことが分かる。
【表9】

【表10】
【0077】
<試験例4:さつま揚げ様食品の製造及び評価2>
日持向上剤を添加したさつま揚げ様食品について、それぞれBF無添加品及びBF添加品を作製した。
【0078】
表11に示す配合で、試験例3で用いた上記乳化カード、たまねぎ、青のり、しょうゆ、食塩、みりん、ローストシロップ(商品名:焙焼こくシロップ(三井製糖株式会社製))、馬鈴薯澱粉、日持向上剤(商品名:ホズアップDN55(株式会社タイショーテクノス製))、寒天(商品名:TS寒天・SPH(株式会社タイショーテクノス製))、こんにゃく粉(商品名:TSゲル・F-FP(株式会社タイショーテクノス製))、及びさとうきび抽出物(商品名:MSX-100(J)(三井製糖株式会社製))を混合し、次いで、BFを混合した。得られた混合物を1cm程度の厚みに伸ばし、天板に載せ、20分間蒸した。クッキー型で抜き、揚げ油170℃で3分30秒~4分程度揚げた(型に入れるまたはラップに包んで蒸し、そのまま揚げる場合もある)。これによってBF及び日持向上剤添加品のさつま揚げ様食品を得た。
【0079】
表11に示すBFを含まない配合にしたこと以外は、BF及び日持向上剤添加品と同様にして、BF無添加品のさつま揚げ様食品を得た。
【表11】
【0080】
さとうきび抽出物を添加することで、日持向上剤の酸味、後味を改善でき、より風味に優れた日持向上剤入りさつま揚げ様食品を作製することができた。また、さらにBF、寒天などのゲル化剤を配合したことで、メチルセルロースによる冷めた時にさつま揚げ様食品が柔らかくなる現象を抑制することができた。
【0081】
<試験例5:さつま揚げ様食品の製造及び評価3>
表11に示す配合で、メチルセルロースを使用しないさつま揚げ様食品を作製した。結着剤としてジョイナーE400(株式会社タイショーテクノス製)を、マスキング剤としてMASK・A(株式会社タイショーテクノス製)を、日持向上剤としてホズアップDN55(株式会社タイショーテクノス製)を使用した。さつま揚げ様食品は枝豆無添加品、枝豆添加品の2種類を作製した。
【0082】
水にMASK・A、エスイー600(物産フードサイエンス株式会社製)、調味料Cを溶解し、粉末状大豆たんぱく、及び植物油を混合してエマルジョンカードを作った。D(油でなじませたBF)をエマルジョンカードに混合し、ハンドミキサーで空気を入れるように撹拌した。Dを混合したエマルジョンカードに、B(粉々混合)を混合し、ハンドミキサーで空気を入れるように撹拌した。得られた混合物を型に入れ、50℃、30分間蒸した。その後、蒸した混合物を170℃、2分間の条件で油調した。枝豆を入れる場合は、Bの混合後、かつ、型に入れる前に行った。枝豆はTSグリーンNo.3A(株式会社タイショーテクノス製)0.8%で着色したものを使用した。
【表12】
【0083】
図7A及び図7Bのとおり、上記の配合及び方法でさつま揚げ様食品を作製することができた。揚げた後、さつま揚げ様食品はさつま揚げ様の弾力を有していた。また、枝豆添加品(図7B)は枝豆無添加品(図7A)よりも、大豆タンパク由来の大豆臭がより低減され、よりさつま揚げに近い風味を呈していた。
【0084】
<試験例6:刺し身(マグロ)の製造及び評価>
表13に示す配合及び方法で、刺身(マグロ)様食品を作製した。ゲル化剤として主に以下の表14(単位:配合割合%)に示すTSゲル・MC-1(株式会社タイショーテクノス製)を使用し、赤色着色料として、赤色食品用色素モナスコ・R(株式会社タイショーテクノス製)を使用した。
【0085】
表13に示すAを混合し、混合物にエスイー500(物産フードサイエンス株式会社製)
をなじませた。エスイー500をなじませた混合物に溶解水を加え、加熱溶解させた。得られた溶液をモナスコ・Rで着色後、分注し、冷却後、冷凍保存した。これによって、マグロの刺身様食品を製造した。
【表13】

【表14】
【0086】
図8のとおり、上記の配合及び方法で刺し身(マグロ)様食品を作製することができた。外観を評価したところ、赤色食品用色素によってマグロ様の赤色を呈しており、かつBFや馬鈴薯デンプンによって薄く白濁した半透明であったことから、マグロに近い外観を有していた。また、硬さについて、刺身状に切り分けた食品を箸で持ち上げても切れず、マグロ様のしなりが確認できた。
【0087】
<試験例7:ネギトロ様食品の製造及び評価>
表17に示す配合で、ネギトロ様食品を作製した。作製に当たって、はじめに表15に示す配合でネギトロ用ゼリー1、及び、表16に示すネギトロ用ゼリー2を作製し、その後、カードランゲル、BF90、トロミ油(ネギトロ用油脂)とともに混合することでネギトロ様食品を作製した。
【0088】
キサンタンガム及びBF90無添加のネギトロ用ゼリー1を用いて作製したネギトロ様食品をネギトロ1、キサンタンガム及びBF添加有のネギトロ用ゼリー2を用いて作製したネギトロ様食品をネギトロ2とした。
【表15】

【表16】

【表17】
【0089】
上記の方法で、粒状の塊と、滑らかなペーストが共存するネギトロ様食品を作製することができた。ネギトロ1はネギトロ2よりも、粒状の塊が大きく食べ応えがあり、反対にネギトロ2はネギトロ1よりも、滑らかな食感を呈するネギトロ様食品となった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9