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  • 特開-車両用サイドドア 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023054649
(43)【公開日】2023-04-14
(54)【発明の名称】車両用サイドドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/17 20060101AFI20230407BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B60J1/17 Z
B60J5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021163624
(22)【出願日】2021-10-04
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】保井 猛
(72)【発明者】
【氏名】染谷 紀樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 学
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF03
3D127DF14
3D127EE15
3D127GG01
(57)【要約】
【課題】車室内の静粛性を向上させる。
【解決手段】車両用サイドドア1は、車体の側面に形成されたドア開口を開閉するものであり、開口部24を有するインナーパネル22と、開口部24を塞ぐようにインナーパネル22の車室内側に取り付けられ、ウィンドパネルを昇降させるウィンドレギュレータ6を備えたモジュールプレート4と、を有し、モジュールプレート4が、インナーパネル22に対向する周縁領域4aに形成され、断面U字状に折り曲げられた溝部41と、周縁領域4aとウィンドレギュレータが取り付けられた領域4bとの間で平坦に延び、両領域4a,4bに対して車室内側または車室外側にずれて設けられた平坦部42とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側面に形成されたドア開口を開閉する車両用サイドドアであって、
開口部を有するインナーパネルと、
前記開口部を塞ぐように前記インナーパネルの車室内側に取り付けられ、ウィンドパネルを昇降させるウィンドレギュレータを備えたモジュールプレートと、を有し、
前記モジュールプレートが、前記インナーパネルに対向する周縁領域に形成され、断面U字状に折り曲げられた溝部と、前記周縁領域と前記ウィンドレギュレータが取り付けられた領域との間で平坦に延び、該両領域に対して車室内側または車室外側にずれて設けられた平坦部とを有する、車両用サイドドア。
【請求項2】
前記平坦部は、前記両領域に対して車室内側または車室外側に段差状にずれている、請求項1に記載の車両用サイドドア。
【請求項3】
前記溝部は、前記インナーパネルに向けて開口するように形成され、前記溝部には、前記インナーパネルと前記モジュールプレートとの隙間をシールするシール材が収容されている、請求項1または2に記載の車両用サイドドア。
【請求項4】
前記溝部は、前記周縁領域のうち上端部を除いた領域に形成されている、請求項3に記載の車両用サイドドア。
【請求項5】
前記シール材が発泡体からなる、請求項3または4に記載の車両用サイドドア。
【請求項6】
前記モジュールプレートは、締結部材により前記インナーパネルに固定されている、請求項4に記載の車両用サイドドア。
【請求項7】
前記シール材が接着剤からなる、請求項3または4に記載の車両用サイドドア。
【請求項8】
前記モジュールプレートは、前記シール材および締結部材の少なくとも一方により前記インナーパネルに固定されている、請求項7に記載の車両用サイドドア。
【請求項9】
前記モジュールプレートを覆うように前記インナーパネルの車室内側に取り付けられたドアトリムを有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用サイドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用サイドドアとして、アウターパネルとインナーパネルとを有するドア本体に、ウィンドレギュレータなどの各種機能部品をモジュール化したモジュールプレートが組み込まれたものが知られている。モジュールプレートは、インナーパネルに形成された開口部を塞ぐように、ボルトやナットなどの締結部材によりインナーパネルの車室内側に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-313743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モジュールプレートには、車両走行に伴う様々な荷重や振動が作用するが、特に、ウィンドレギュレータがウィンドパネルを昇降させる際に発生する振動や、高速走行時に発生するウィンドパネルの吸い出しによる振動が伝達される。このような振動は、モジュールプレートからインナーパネルにも伝達されるが、それによりインナーパネルが振動すると、その車室内側に取り付けられた内装材であるドアトリムも振動して騒音を発生させ、車室内の静粛性を低下させてしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、車室内の静粛性を向上させる車両用サイドドアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の車両用サイドドアは、車体の側面に形成されたドア開口を開閉する車両用サイドドアであって、開口部を有するインナーパネルと、開口部を塞ぐようにインナーパネルの車室内側に取り付けられ、ウィンドパネルを昇降させるウィンドレギュレータを備えたモジュールプレートと、を有し、モジュールプレートが、インナーパネルに対向する周縁領域に形成され、断面U字状に折り曲げられた溝部と、周縁領域とウィンドレギュレータが取り付けられた領域との間で平坦に延び、両領域に対して車室内側または車室外側にずれて設けられた平坦部とを有している。
【発明の効果】
【0007】
以上、本発明によれば、車室内の静粛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用サイドドアの側面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本明細書では、本発明の車両用サイドドアとして、車体の側面に形成されたドア開口を車両前後方向にスライドして開閉するスライドドアを例に挙げて説明するが、本発明の車両用サイドドアはこれに限定されず、ヒンジを中心に回動してドア開口を開閉するヒンジドアであってもよい。
【0010】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る車両用サイドドアを車室内側から見た側面図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿った断面図である。なお、図1(a)では、図を見やすくするために、車両用サイドドアを構成するドアトリムの図示を省略し、同じく車両用サイドドアを構成するモジュールプレートの一部を切り欠いて示している。
【0011】
本実施形態の車両用サイドドア(以下、単に「サイドドア」ともいう)1は、自動車の右後方のサイドドアであり、車両前後方向にスライドしてドア開口を開閉するスライド式のサイドドアである。サイドドア1は、ドア本体2と、ドア本体2の車室内側に設けられた内装材である樹脂製のドアトリム3とを有している。
【0012】
ドア本体2は、アウターパネル21と、アウターパネル21の車室内側に接合されたインナーパネル22とを有している。アウターパネル21は、金属製であってもよいが、好ましくは樹脂製であり、特に、ポリプロピレンコンパウンド製、不飽和ポリエステル樹脂をガラス繊維または炭素繊維に含浸させたシートであるシートモールディングコンパウンド(SMC)製、または、ポリカーボネート製であることが好ましく、ポリプロピレンコンパウンド製であることがより好ましい。インナーパネル22は、金属製であってもよいが、好ましくは樹脂製であり、特に、SMC製、あるいは、ガラス繊維または炭素繊維とポリプロピレン樹脂との複合材(ポリプロピレンコンパウンド)製であることが好ましい。ドア本体2の上部には、概ね矩形状のウィンド開口部23が形成され、インナーパネル22のウィンド開口部23の下側には、サービスホール(開口部)24が形成されている。インナーパネル22の車室内側には、後述するように、サービスホール24を塞ぐようにモジュールプレート4が取り付けられているが、ドアトリム3は、そのモジュールプレート4を覆うように、樹脂製のクリップ11により、インナーパネル22の車室内側に着脱可能に取り付けられている。
【0013】
アウターパネル21とインナーパネル22との間には、ウィンド開口部23を開閉するウィンドパネル(図示せず)が設けられており、サイドドア1には、このウィンドパネルを昇降させるウィンドレギュレータが組み込まれている。すなわち、サイドドア1は、そのようなウィンドレギュレータを含む各種機能部品をモジュール化した樹脂製のモジュールプレート4を有している。モジュールプレート4は、ボルトやナットなどの締結部材12により、サービルホール24を塞ぐようにインナーパネル22の車室内側に取り付けられている。また、インナーパネル22とモジュールプレート4との間には、発泡体からなるシール材5が設けられている。シール材5は、インナーパネル22とモジュールプレート4との隙間をシールすることで、ウィンドパネルを通じてドア本体2の内部に浸入した雨水や洗車時の水が車内に漏れることを抑制する機能を有している。
【0014】
モジュールプレート4の車室外側には、ボルトやナットなどの締結部材13により、上述したウィンドレギュレータを構成するベースプレート6が取り付けられている。ベースプレート6には、ウィンドパネルを昇降させる駆動源であるモータ(図示せず)が固定され、モータには、ウィンドパネルに連結されたリフトアームが回転可能に支持されている。このため、モジュールプレート4には、ウィンドレギュレータがウィンドパネルを昇降させる際に発生する振動や、高速走行時に発生するウィンドパネルの吸い出しによる振動が伝達される。このような振動は、モジュールプレート4からインナーパネル22にも伝達されるが、それによりインナーパネル22が振動すると、その車室内側に取り付けられたドアトリム3も振動して騒音を発生させ、車室内の静粛性を低下させてしまう。また、モジュールプレート4には、上述したウィンドレギュレータの作動やウィンドパネルの吸い出しに起因して車両幅方向に荷重もかかる。それにより、シール材5にも車両幅方向の荷重がかかり、その結果、シール材5に破損や剥離が発生し、その箇所から雨水や洗車時の水が車内に漏れるおそれもある。
【0015】
そこで、本実施形態では、モジュールプレート4が、上述した振動や荷重がモジュールプレート4からインナーパネル22に伝達されるのを抑制する機能を有している。具体的には、モジュールプレート4は、インナーパネル22に対向する周縁領域4aに形成された溝部41と、その周縁領域4aとベースプレート6が取り付けられた中央領域4bとの間で設けられた平坦部42とを有している。溝部41は、モジュールプレート4が断面U字状に折り曲げられることでインナーパネル22に向けて開口するように形成され、その内部には、シール材5が収容されている。平坦部42は、上記2つの領域4a,4bの間で平坦に延び、2つの領域4a,4bに対して車室外側にずれており、具体的には、車両幅方向に延びる部分を介して車室外側に段差状にずれている。
【0016】
このような構成により、溝部41が形成されることで高剛性領域となる周縁領域4aと、ベースプレート6が取り付けられることで同じく高剛性領域となる中央領域4bとに比べて、平坦部42の剛性を相対的に低下させることができる。そのため、ベースプレート6を通じて中央領域4bに伝達される振動を低剛性領域である平坦部42で吸収することができ、その結果、モジュールプレート4の周縁領域4aからインナーパネル22、ひいてはドアトリム3への振動の伝達を抑制することができる。こうして、ドアトリム3の振動による騒音発生を抑制して車室内の静粛性を向上させることができる。同時に、ベースプレート6を通じて中央領域4bに車両幅方向の荷重が加わっても、それを平坦部42で吸収することができるため、周縁領域4aにかかる車両幅方向の荷重、すなわち、シール材5にかかる車両幅方向の荷重も低減することができる。その結果、シール材5の破損や剥離を抑制して水密性を良好に維持することができる。なお、ここでいう「平坦」とは、完全に平坦な場合だけでなく、実質的に平坦な場合も含み、平坦部42の剛性にほとんど影響を与えない程度であれば、例えば、わずかに湾曲していたり、多少の凹凸があったりしていてもよいことを意味する。
【0017】
一方で、モジュールプレート4をインナーパネル22に取り付けるための締結部材12は、シール材5にかかる車両幅方向の荷重を低減する効果もある。そのため、モジュールプレート4の周縁領域4aに作用する車両幅方向の荷重が低減されることは、その締結部材12の数を少なくすることにもつながる。また、シール材5としては、発泡体からなるものに代えて、接着剤からなるものを用いてもよいが、その場合には、シール材5だけでモジュールプレート4をインナーパネル22に固定することもできる。そのため、締結部材12を省略することもできる。加えて、シール材5にかかる車両幅方向の荷重が低減されるため、シール材5の断面積を小さくしても十分な水密性を確保することができ、シール材5の必要量を減らすこともできる。こうして、本実施形態では、車室内の静粛性を向上させることに加え、部品点数や材料費を削減して低コスト化を図ることも可能になる。さらに、平坦部42により振動が吸収されることで、モジュールプレート4の耐久性を向上させることができ、モジュールプレート4の薄肉化すなわち軽量化も可能になる。
【0018】
溝部41は、モジュールプレート4の剛性を向上させる観点からは、必ずしもモジュールプレート4の周縁領域4aに沿って連続的に形成されていなくてもよいが、シール材5を収容するためには連続的に形成されていることが好ましい。ただし、モジュールプレート4の周縁領域4aの全周にわたって形成されている必要はなく、少なくともシール材5により水密性を確保する必要がある領域に形成されていればよい。すなわち、溝部41は、図示したように、少なくともモジュールプレート4の周縁領域4aのうち上端部を除いた領域、具体的には、サービスホール24に対して車両前方側、車両下方側、および車両後方側の領域にそれぞれ設けられていればよい。
【0019】
図示した実施形態では、平坦部42は、モジュールプレート4の周縁領域4aおよび中央領域4bからそれぞれ車室外側に段差状にずれているが、車室内側に段差状にずれていても同様の効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 車両用サイドドア
2 ドア本体
21 アウターパネル
22 インナーパネル
23 ウィンド開口部
24 サービスホール(開口部)
3 ドアトリム
4 モジュールプレート
4a 周縁領域
4b 中央領域
41 溝部
42 平坦部
5 シール材
6 ベースプレート(ウィンドレギュレータ)
11 クリップ
12,13 締結部材
図1