(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005466
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】スイッチ装置及び室内通電制御装置
(51)【国際特許分類】
E05B 17/22 20060101AFI20230111BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20230111BHJP
E05C 17/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
E05B17/22 B
E05B49/00 J
E05C17/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107395
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(71)【出願人】
【識別番号】501179120
【氏名又は名称】アパホテル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】村田 泰久
(72)【発明者】
【氏名】前田 利浩
(72)【発明者】
【氏名】川中 勝男
(72)【発明者】
【氏名】小塚 智成
(72)【発明者】
【氏名】濱本 清
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA06
2E250BB02
2E250BB05
2E250BB61
2E250CC09
2E250FF24
2E250FF36
(57)【要約】
【課題】室の利用者にICカードの貸し出しを行わない場合でも入退室時の通電制御の切り替えを室内で行えるようにする。
【解決手段】内開き式の扉103が閉扉位置から開く際に通過する開扉空間に倒れたON位置と、開扉空間から外れたOFF位置との間を揺動軸3a周りに起伏動可能に配置されるレバー3と、レバー3が在室者によってOFF位置からON位置へ倒される倒伏動を第一の信号に変換し、レバー3がON位置からOFF位置へ起こされる起立動を第二の信号に変換する信号生成器4とを備えるスイッチ装置1に構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内開き式の扉が閉扉位置から開く際に通過する開扉空間に倒れたON位置と、前記開扉空間から外れたOFF位置との間を揺動軸周りに起伏動可能に配置されるレバーと、
前記レバーが在室者によって前記OFF位置から前記ON位置へ倒される倒伏動を第一の信号に変換し、前記レバーが前記ON位置から前記OFF位置へ起こされる起立動を第二の信号に変換する信号生成器と、を備えるスイッチ装置。
【請求項2】
前記レバーは、前記扉の開き角度を制限するドアガードとして設けられている請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記信号生成器は、前記レバーから前記扉の開閉方向に食み出ないように前記レバーと連結されている請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記レバーは、開く前記扉に蹴り起こされることよって前記ON位置から前記OFF位置まで変位させられるように設けられている請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記信号生成器は、所定型具を抜き差し可能なケーシングと、前記ケーシングから露出する操作部に操作が与えられることによって前記レバーの起伏動とは非連動に作動する操作機構とを有し、前記操作部に対する操作時の前記操作機構の運動を前記第一の信号に変換し、当該操作機構の運動とは逆の復帰運動を前記第二の信号に変換し、前記ケーシングに前記所定型具が差し込まれることによって前記操作機構の復帰運動が阻止されるようになっている請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記信号生成器は、前記レバーの起伏動を電力に変換し、当該電力によって前記第一の信号又は前記第二の信号を無線送信する請求項1から5のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
室内に設置された電気機器に対する通電の可否を制御する制御部と、請求項1から6のいずれか1項に記載のスイッチ装置と、を備え、
前記扉は、前記室の出入口に設置されており、
前記信号生成器から前記制御部まで前記第一の信号及び前記第二の信号をそれぞれ送信可能になっており、
前記制御部は、前記第一の信号を受信したとき、前記電気機器に通電可能な状態に切り替える制御を開始し、前記第二の信号を受信したとき、前記電気機器に通電不可な状態に切り替える制御を開始する室内通電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内開き式の扉の開放時に作動させるスイッチ装置、及びこれを備える室内通電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビジネスホテル等の宿泊施設においては、客室の出入口に備わる扉の施解錠装置として、鍵を情報化し、宿泊予約時やチェックイン時、客室の利用者に鍵情報を発行し、その鍵情報を客室外から施解錠装置に認証させて解錠を行うものが普及している(特許文献1,2、非特許文献1)。
【0003】
近年、その鍵情報の発行には、施解錠装置との近距離無線通信機能をもったICカード、スマートフォン等の携帯デバイスが利用されている。ICカードを利用する場合、チェックインカウンターで鍵情報を記憶させたICカードが利用者に貸し出される。スマートフォンを利用する場合、利用者が所持するスマートフォン等の携帯通信機器に所定の鍵管理アプリケーションがインストールされ、二次元コードの読み取り等で鍵情報が携帯通信機器に記憶させられる(特許文献2、非特許文献1)。
【0004】
特許文献2や非特許文献1に開示されたシステムは、客室内に設置された電気機器に対する通電の可否を制御する制御部を備える。制御部は、ICカードが抜き差しされるスイッチ装置を有する。利用者が入室後にICカードをスイッチ装置のカードスロットに差し込むと、制御部が、照明機器等の電気機器に通電可能な状態に切り替える制御を開始する。利用者が退室に際し、カードスロットからICカードを抜き取ると、制御部は、電気機器に通電不可な状態に切り替える制御を開始する。このため、退室後に不要な電気機器への通電を確実に遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-324434号公報
【特許文献2】特開2010-229680号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社シブタニ、デジタルカタログ“Clavis”、p.69-76、2021年5月、令和3年5月28日検索、インターネット <URL:https://service.aladdin-book.jp/clavis2021/book/#target/page_no=71>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されたシステムでは、チェックイン時、利用者にICカードを貸し出し、チェックアウト時、利用者からICカードの返却を受ける必要があり、ICカードの管理が煩わしい。
【0008】
一方、非特許文献1のようにICカード以外の鍵情報認証手段に対応したシステムでは、宿泊室を一人で利用する利用者が自己の携帯通信機器に鍵情報を記憶させる場合、ICカードの貸し出しが不要であるため、チェックインカウンターでの従業員と利用者の対面接客を減らして、業務負担の軽減、感染症の拡散防止を図ることができる。
【0009】
しかしながら、利用者にICカードの貸し出しを行わない場合、カードスロット型のスイッチ装置に依存した入退室時の通電制御の切り替えを客室内で行うことができなくなる不便性がある。
【0010】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、室の利用者にICカードの貸し出しを行わない場合でも入退室時の通電制御の切り替えを室内で行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を達成するため、この発明は、内開き式の扉が閉扉位置から開く際に通過する開扉空間に倒れたON位置と、前記開扉空間から外れたOFF位置との間を揺動軸周りに起伏動可能に配置されるレバーと、前記レバーが在室者によって前記OFF位置から前記ON位置へ倒される倒伏動を第一の信号に変換し、前記レバーが前記ON位置から前記OFF位置へ起こされる起立動を第二の信号に変換する信号生成器と、を備えるスイッチ装置に構成したものである。
【0012】
上記構成によれば、入室時には、室内の電気機器を利用するために在室者にレバーをON位置へ倒す操作を行わせて、信号生成器から第一の信号を出力させることができ、退室時には、在室者が扉を開く前に在室者にON位置のレバーをOFF位置へ起こす操作を行わせるか、ON位置のレバーを開く扉にOFF位置へ蹴り起こさせて、信号生成器から第二の信号を出力させることができる。これら第一の信号と第二の信号は、室内の電気機器に対する通電制御に利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
したがって、この発明は、上記構成の採用により、室の利用者にICカードの貸し出しを行わない場合でも入退室時の通電制御の切り替えを室内で行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)はこの発明の実施形態に係るスイッチ装置を示す斜視図、(b)は前記(a)からレバーを起立させたときの様子を示す斜視図
【
図2】
図1のスイッチ装置を備える宿泊施設を示す見取図
【
図4】
図1(a)に示すスイッチ装置のIV-IV線の断面図
【
図7】
図1の信号生成器に所定型具を差し込んだ様子を示す斜視図
【
図8】
図7に示すスイッチ装置のVIII-IVIII線の断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の一例としての実施形態に係るスイッチ装置及び室内通電制御装置を備える宿泊施設を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図2に示す宿泊施設100は、一人宿泊用の室101と、複数人宿泊用の室102とを有する。各室101,102の出入口には、それぞれ内開き式の扉103が設置されている。内開き式の扉103は、閉扉位置から室内側に開放される片開き戸からなる。扉103の吊元側は、出入口の扉枠104にドアヒンジを介して接続されている。扉103の戸先側には、施解錠装置105が取り付けられている。
【0017】
施解錠装置105は、鍵情報を認証すると、自動的に解錠し、開扉後、扉103が閉扉位置になると、自動的に施錠を行う。施解錠装置105は、鍵情報を記憶させたICカード、スマートフォン等の携帯デバイス(図示省略)と通信可能な無線通信機能をもっている。宿泊施設100に対する宿泊予約時やチェックイン時、利用者が所有する携帯デバイスに鍵情報が発行される。利用者は、割り当てられた室101,102の施解錠装置105に携帯デバイスから鍵情報を送信する。
【0018】
施解錠装置105は、ICカードとは異なる手段で鍵情報の認証を行う機能をもっており、図示例の施解錠装置105は、ICカードから鍵情報を受信して認証を行う機能と、スマートフォン等の携帯通信機器から鍵情報を受信して認証を行う機能の両方をもっている。例えば、施解錠装置105と、RFIDタグを搭載したICカードとの間での鍵情報認証時の無線通信規格としてMIFARE(登録商標)が挙げられ、施解錠装置105とスマートフォン等の携帯通信機器との間での鍵情報認証時の無線通信規格としてBluetooth(登録商標)が挙げられる。このような施解錠装置として、例えば非特許文献1に記載のものを採用することができる。
【0019】
各室101,102の室内には、照明器具、テレビ、換気扇、エアコン、冷蔵庫、コンセント等の様々な電気機器が設置されている。また、各室101,102には、室内に設置された所定の電気機器に対する通電制御の可否を制御する制御部110が設置されている。
【0020】
図3に制御部110が有する機能を示す。制御部110は、カードスロット型スイッチ装置111と、無線通信回路付きマイクロコンピュータ(マイコン)112とを有する。利用者が入室時にICカード120をカードスロット型スイッチ装置111に差し込むと、マイコン112は、ICカード120の検知を契機として所定の電気機器131,132に通電可能な状態に切り替える制御を開始する。利用者がカードスロット型スイッチ装置111からICカード120を抜き取ると、マイコン112は、ICカード120の検知の喪失を契機として所定の電気機器131,132に通電不可な状態に切り替える制御を開始する。
【0021】
制御部110は、電源から所定の電気機器131,132に電力を供給する回路(屋内電気配線)に組み込まれたリレー113,114を有し、リレー113,114の開閉を制御することにより、前述の通電制御を行うようになっている。なお、電気機器131,132が商用電源との接続と遮断を切り替える回路をもち、制御部が無線で当該電気機器に商用電源との接続又は遮断を命令するコマンドを送信することにより、通電制御を行うようにしてもよく、例えば、特許文献2に開示されたシステムを採用することができる。
【0022】
所定の電気機器131,132として、室内に設置された照明機器がリレー113,114に接続されている。例えば、
図2に示す室101,102の天井に設置された主照明や、扉103の近くで足元を照らす足元灯等が挙げられる。なお、制御部110の支配下とする電気機器の数や種類は特に限定されず、例えば、制御部110のリレーの数を増やして制御部110に換気扇、テレビ等の通電制御機能をもたせてもよい。
【0023】
各室101,102の扉103の周囲に位置する内壁面、例えば、扉枠104の室内側にスイッチ装置1が設置されている。
【0024】
スイッチ装置1は、
図1、
図4に示すように、扉枠104に固定されたレバー座2と、レバー座2に支持されたレバー3と、レバー3の倒伏動を所定の信号に変換して出力する信号生成器4とを有する。
【0025】
レバー座2は、扉枠104に固定することにより、扉103の開扉空間から外れた位置に配置される。ここで、扉103の開扉空間は、扉103が閉扉位置から開く際に通過する空間を意味する。
図1(a)、(b)において、扉103は、施錠された閉扉位置にある。
図2において、扉103を開閉する際に扉103の戸先が描く軌跡を円弧状の破線で示す。この円弧状の破線と、扉103の吊元側の小口との間の空間が、扉103の開扉空間に相当する。
【0026】
レバー3は、扉103の開扉空間に倒れたON位置と、扉103の開扉空間から外れたOFF位置との間を揺動軸3a周りに起伏動可能に配置されている。
【0027】
レバー3は、
図1(a)に示すように、閉扉位置の扉103に対して室内側の空間でON位置にあるとき、扉103の室内側表面と扉103の開閉方向Aに対向している。ここで、扉103の開閉方向Aは、扉103が吊元側の開閉軸線(ヒンジ軸)周りに移動する方向を意味する。
【0028】
また、レバー3は、
図1(b)に示すように、閉扉位置の扉103に対して室内側の空間でOFF位置にあるとき、扉103の室内側表面と扉103の開閉方向Aに対向せず、扉103と接触不可な位置にある。
【0029】
レバー3は、扉103の開き角度を制限するドアガードとして設けられている。レバー3は、
図4に示すように、U字状の金属部材からなる。揺動軸3aは、レバー3のU字状の各端部に夫々設けられ、レバー座2の軸受孔に嵌合されている。扉103の室内側パネルには、ドアガード受け103aが固定されている。
【0030】
図2に示す室101,102に入室した在室者(図示省略)は、
図1(a)、(b)に示すように扉103が閉扉位置にある状態のとき、室内でレバー3をOFF位置からON位置へ倒す操作と、ON位置からOFF位置へ起こす操作とを行うことができる。
図1(a)に示すように、レバー3がON位置にあってドアガード受け103aがレバー3のU字状の内側に位置する状態のまま扉103が閉扉位置から開けられると、閉扉位置から扉103が開閉方向Aに成した開き角度が所定に達したとき、レバー3のU字状の内側がドアガード受け103aに引っ掛かり、これ以上の扉103の開放を阻止する。
【0031】
なお、レバー3がON位置やOFF位置から勝手に倒伏動しないようにするため、ドアガード用として公知の抵抗機構(図示省略)が、レバー3とレバー座2間に設けられている。その抵抗機構は、例えば、レバー3の倒伏動に対して抵抗する摩擦部として設けたり、ON位置に近くOFF位置に遠い揺動角度まで倒れたレバー3をばね力でON位置へ付勢し、OFF位置に近くON位置に遠い揺動角度まで起きたレバー3をばね力でOFF位置へ付勢するクリック機構として設けたりすることができる。
【0032】
図4、
図5に示すように、信号生成器4は、二つの発電部5と、極性検出回路6と、整流回路7と、無線通信回路付きマイクロコンピュータ(マイコン)8とを搭載した回路基板を有する。
【0033】
発電部5は、電磁誘導型発電素子になっている。発電部5は、リーフスプリング9を押す動き、又は押されたリーフスプリング9を内蔵のばね(図示省略)が押し戻す動きを、コイル(図示省略)内での永久磁石(図示省略)の正転又は逆転に変換して、永久磁石の回転方向に応じた極性の電気エネルギを生み出す。
【0034】
極性検出回路6は、発電部5で発電された電気エネルギの極性を検出し、その検出結果をマイコン8に入力する。
【0035】
整流回路7は、発電部5で発電された電気エネルギをマイコン8の電源として使用可能な電流に整流し、マイコン8に供給する。
【0036】
マイコン8は、整流回路7から供給された電力で動作する。マイコン8の内蔵不揮発メモリには、第一の信号及び第二の信号が予めデータとして記憶させられている。第一の信号と第二の信号は、IDデータを含み、極性と対応付けて記憶されている。マイコン8は、整流回路7からの電力供給を契機として、極性検出回路6からの検出結果(極性)に対応の第一の信号又は第二の信号をマイコン8に搭載の無線通信回路から送信する。
【0037】
発電部5~マイコン8は、例えば、EnOcean(登録商標)の無線通信モジュールを用いて構成することができる。
【0038】
信号生成器4は、
図1、
図4に示すように、前述の回路基板等を収容するケーシング10と、レバー3の倒伏動をケーシング10内へ伝達するための連結体11とを有する。
【0039】
ケーシング10は、前述の回路基板等を組み込むため、二つのケース半体を結合した構造になっており、その背面において扉枠104に固定されている。ケーシング10は、扉枠104に固定することにより、扉103の開扉空間から外れた位置に配置される。
【0040】
連結体11は、ケーシング10とレバー3とで上下に挟まれている。連結体11の下部には、レバー3の上面に形成された穴部12内に位置する突部13が設けられている。連結体11は、揺動軸3aと同軸に設けられた軸部14を有し、この軸部14周りにケーシング10に対して回動可能に支持されている。このため、連結体11は、レバー3の起伏動時、突部13でレバー3からのトルクを受けてレバー3と同軸周りに一体的に揺動することができる。
【0041】
スイッチ装置1は、レバー3及び連結体11以外に扉103の開扉空間に位置し得る部位をもたない。従って、信号生成器4は、連結体11以外に扉103の開扉空間に位置し得る部位をもたない。その連結体11のうち、ケーシング10の外部に位置する部位は、常にレバー3と鉛直方向(扉103の開閉軸線に沿った方向に相当)に重なる空間に収まるように設けられている。これにより、信号生成器4は、レバー3に対して扉103の開閉方向Aに食み出ないようにレバー3と連結されている。
【0042】
レバー3がドアガードを兼ねるため、扉103が開いた状態でレバー3がON位置に倒され、その後に扉103が閉じられる場合が起こり得る。例えば、室101,102の換気や室温調整のために在室者が扉103を少し開けた状態に保ちたいとき、扉103の戸先と扉枠104の間にドアガード(レバー3)を挟み込むことが考えられる。このような場合、レバー3がON位置に倒された状態で扉103が閉じられることになり、この際、レバー3が扉103の室外側に打たれる可能性がある。このような事態が起こったとしても、連結体11を含む信号生成器4がレバー3に対して扉103の開閉方向Aに食み出ないようにレバー3と連結されているため、信号生成器4が扉103に打たれることはなく、信号生成器4の損傷を防止することができる。
【0043】
連結体11の上部には、
図1、
図4、
図6に示すように、レバー3のOFF位置からON位置への倒伏動時に軸部14の回転を第一の発電部5のリーフスプリング9を押す動作に変換するカム部15が設けられている。なお、
図6では、レバー3が
図1(a)のON位置に達したときのカム部15を実線で描き、レバー3がON位置から90度起こされて
図1(b)のOFF位置に達したときのカム部15を一点鎖線で描いている。
【0044】
レバー3の倒伏動と一体的なカム部15の正転によって対応のリーフスプリング9が押されることに伴い、対応の発電部5が第一の極性の電気エネルギを発電し、その極性に対応の第一の信号をマイコン8が制御部110へ送信する。このようにして、信号生成器4は、レバー3のOFF位置からON位置への倒伏動を第一の信号に変換し、変換した第一の信号を制御部110へ出力することができる。
【0045】
また、レバー3の起立動と一体的なカム部15の逆転に応じてリーフスプリング9が対応の発電部5の内蔵ばねに押し戻されることに伴い、対応の発電部5が第二の極性の電気エネルギを発電し、その極性に対応の第二の信号をマイコン8が無線通信回路から送信する。このようにして、信号生成部4は、レバー3のON位置からOFF位置への起立動を第二の信号に変換し、変換した第二の信号を制御部110へ出力することができる。
【0046】
前述のように信号生成器4から無線送信で出力された第一の信号又は第二の信号は、
図2、
図3に示す制御部110に備わるマイコン112の無線通信回路で受信される。マイコン112は、レバー3の倒伏動時に出力された第一の信号の受信を契機として、所定の電気機器131,132に通電可能な状態に切り替える制御を開始する。また、マイコン112は、レバー3の起立動時に出力された第二の信号の受信を契機として、所定の電気機器131,132に通電不可な状態に切り替える制御を開始する。
【0047】
なお、制御部110と信号生成器4間での無線送信は、制御部110が受信した第一の信号又は第二の信号の読み取りによって送信元を識別可能であって、その送信元が同室に設置された信号生成器4である場合に限り、制御部110が当該第一の信号又は第二の信号に基づいて前述の通電制御を行うように構成すべきことは勿論である。制御部110は、第一の信号又は第二の信号を受信したことを契機として対応の制御を開始すればよく、支配下の電気機器131,132に対する通電の可否を瞬時に切り替えるものに限定されず、ディレー制御を行ってもよい。例えば、マイコン112は、第二の信号を受信すると、マイコン112の内蔵タイマーをスタートし、タイマーで所定時間が経過すると、特定のリレー113,114の開閉を切り替えるようにしてもよい。ディレー制御は、例えば、電気機器として足元灯の通電制御を行う場合に好適であり、退室時、扉103を開く前にレバー3をOFF位置にしてから扉103付近の床面を一定時間照らし続けて、足元の安全を確保したり、荷物の運び出し等の退室準備を行い易くしたりすることができる。
【0048】
信号生成器4は、レバー3の倒伏動と非連動に電気機器131,132の通電制御を切り替えるための操作機構を有する。その操作機構をケーシング10に装備するため、
図7、
図8に示すように、ケーシング10には、スリット状の差し込み口16と、操作窓17とが形成されている。
【0049】
差し込み口16には、所定型具140が直線方向に抜き差しされる。所定型具140は、
図3に示すICカード120と同一形状のカードになっている。すなわち、所定型具140が施解錠装置105に対応のICカードであるため、清掃時等に従業員が解錠に使用するICカードを所定型具140として使用することができる。
【0050】
図7、
図8に示すように、ケーシング10の操作窓17から露出する操作部18に対する所定操作(図示例ではプッシュ操作)と、差し込み口16に対する所定型具140の抜き差しとに連動し、かつレバー3の倒伏動とは非連動に作動する操作機構がケーシング10の内側に組み込まれている。なお、
図4において発電部5とリーフスプリング9を複数図示しているが、それぞれ1つにして、操作部18とレバー3のいずれでも発電部5とリーフスプリング9を操作できるようにしてもよい。
【0051】
図示例の操作機構は、ケーシング10の内側に保持された揺動軸19と、揺動軸19を介してケーシング10の内側に支持された可動体20と、可動体20を付勢するリターンスプリング21とを有する。
【0052】
可動体20は、待機位置と作動位置との間を揺動軸19周りに揺動可能に設けられている。
図8においては、待機位置の可動体20を実線で描き、作動位置の可動体20を一点鎖線で描いた。可動体20は、連結体11(レバー3)と接触不可に配置されている。操作部18は、可動体20の一部で構成されており、揺動軸19に対して可動体20の一方の揺動端側に位置する。また、可動体20は、揺動軸19に対して可動体20の一方の揺動端側かつ操作部18の裏側にスリット部22を有すると共に、揺動軸19に対して可動体20の他方の揺動端側に第二の発電部5のリーフスプリング9を押すためのアーム部23を有する。リターンスプリング21は、アーム部23とケーシング10の内側との間に介装されている。ケーシング10には、スリット部22を差し込み口16に進退させるための連通空間24が形成されている。
【0053】
可動体20の操作部18がプッシュ操作されることにより、アーム部23が待機位置から作動位置へ揺動させられ、このとき、アーム部23によって圧縮されるリターンスプリング21が可動体20を待機位置へ復帰させるための力を蓄勢すると共に、アーム部23が対応のリーフスプリング9を押し、第二の発電部5が第一の極性の電気エネルギを発電し、その極性に対応の第一の信号をマイコン8が無線通信回路から送信する。操作部18がプッシュ操作されて可動体20が作動位置にある状態で差し込み口16に所定型具140が差し込まれることにより、可動体20のスリット部22に所定型具140が入り込み、リターンスプリング21の付勢に抗して可動体20の待機位置への復帰運動を阻止する。このため、対応のリーフスプリング9が押されたままとなり、第二の信号が送信されず、その所定型具140が差し込み口16から抜き取られることにより、可動体20が作動位置から待機位置へ復帰させられ、対応のリーフスプリング9が対応の発電部5の内蔵ばねに押し戻されることに伴い、対応の発電部5が第二の極性の電気エネルギを発電し、その極性に対応の第二の信号をマイコン8が無線通信回路から送信する。
【0054】
実施形態に係るスイッチ装置1は、上述のようなものであり(以下、適宜、添付図面を参照のこと。)、そのスイッチ装置1は、内開き式の扉103が閉扉位置から開く際に通過する開扉空間に倒れたON位置と、開扉空間から外れたOFF位置との間を揺動軸3a周りに起伏動可能に配置されるレバー3と、ドアガードとして設けられたレバー3が室101,102内の在室者によってOFF位置からON位置へ倒される倒伏動を第一の信号に変換し、レバー3がON位置からOFF位置へ起こされる起立動を第二の信号に変換する信号生成器4とを備えることにより、入室時には、室101,102内の照明機器等の電気機器131,132を利用するために在室者にレバー3をON位置へ倒す操作を行わせて、信号生成器4から第一の信号を出力させることができる一方、退室時には、在室者が扉103を開く前に、ドアガード機能を解除するために在室者にON位置のレバー3をOFF位置へ起こす操作を行わせて、信号生成器4から第二の信号を出力させることができる。これら第一の信号と第二の信号は、室内の電気機器131,132に対する通電制御に利用することができる。したがって、スイッチ装置1は、室101,102の利用者にICカードの貸し出しを行わない場合でも入退室時の通電制御の切り替えを室101,102内で行えるようにすることができる。
【0055】
特に、スイッチ装置1は、レバー3が扉103の開き角度を制限するドアガードとして設けられていることにより、レバー3とドアガードの兼用で低コスト化を図ることができ、また、入室時には、ドアガード機能を確実に使用させて室101,102への侵入を防止することができ、退室時には、ドアガード機能を解除するためにレバー3をOFF位置へ起こす操作を確実に行わせて、不要な電気機器131,132への通電を確実に遮断することができる。
【0056】
また、スイッチ装置1は、信号生成器4がレバー3から扉103の開閉方向に食み出ないようにレバー3と連結されていることにより、レバー3がON位置に倒された状態で扉103が閉じられたとしても、信号生成器4が扉103に打たれることはなく、信号生成器4の損傷を防止することができる。
【0057】
また、スイッチ装置1は、信号生成器4が所定型具140を抜き差し可能なケーシング10と、ケーシング10から露出する操作部18に操作が与えられることによってレバー3の起伏動とは非連動に作動する操作機構とを有し、操作部18に対する操作時の操作機構の運動を第一の信号に変換し、当該操作機構の運動とは逆の復帰運動を第二の信号に変換し、ケーシング10に所定型具140が差し込まれることによって操作機構の復帰運動が阻止されるようになっていることにより、室101,102の清掃、ベッドメーキング等を従業員が行う際の利便性を向上させつつ、操作部18へのいたずら操作による不正制御を防止することができる。すなわち、従業員が扉103を開けたままで作業する場合、レバー3をON位置へ倒すことをしなくても、操作部18を操作して所定型具140をケーシング10に差し込めば、室101,102内の照明機器等の電気機器131,132を使用することができる。また、従業員が扉103の開閉を頻繁に行う場合も同様に操作すれば、扉103の開閉の都度、従業員にレバー3の倒伏動操作を強いることがなくなる。また、従業員が所定型具140をケーシング10から抜き取れば、操作機構が復帰運動して信号生成器4が第二の信号を送信するので、電気機器131,132に通電不可な状態に切り替わる。所定型具140を所持しない人物が操作部18をいたずら操作したとしても、いたずら操作を止めれば、操作機構の復帰運動が自ずと起こるため、電気機器131,132に通電不可な状態に切り替わる。
【0058】
また、スイッチ装置1は、信号生成器4がレバー3の起伏動を電力に変換し、当該電力によって第一の信号又は第二の信号を無線送信することにより、信号生成器4を送信先や電源と有線で接続することが不要になり、環境に優しく、施設に設置し易いものとすることができる。
【0059】
また、実施形態に係る室内通電制御装置は、室101,102内に設置された電気機器131,132に対する通電の可否を制御する制御部110と、スイッチ装置1と、を備え、扉103が室101,102の出入口に設置されており、信号生成器4から制御部110まで第一の信号及び第二の信号をそれぞれ送信可能になっており、制御部110が第一の信号を受信したとき、電気機器131,132に通電可能な状態に切り替える制御を開始し、第二の信号を受信したとき、電気機器131,132に通電不可な状態に切り替える制御を開始することにより、ICカード120の貸し出し機会を減らして、チェックインカウンターでの対面接客による業務負担の軽減、感染症の拡散防止を図ることができながら、ICカード120を貸し出さない利用者が利用する室101,102における不要な電気機器への通電を防止することができる。
【0060】
なお、一人用の室101に設置された制御部110がカードスロット型スイッチ装置111を備えるのは、利用者が自己の携帯通信機器に鍵情報を記憶させない場合にはICカード120を貸し出すことになるためである。
【0061】
また、複数人用の室102に設置された制御部110がカードスロット型スイッチ装置111を備えるのは、利用者の一人が退室しても、他の利用者が在室している状況下で室102内の照明機器等の電気機器131,132を使用できるようにするためである。したがって、制御部110は、スイッチ装置1からの第一の信号又は第二の信号に基づく通電制御よりもカードスロット型スイッチ装置111におけるICカード120の検知の有無に基づく通電制御を優先するものとなっている。
【0062】
また、スイッチ装置1及び制御部110を備える室内通電制御装置は、宿泊施設での利用に限定されず、入室時に在室者の行動で第一の信号を得、退室時に在室者の行動で第二の信号を得る用途で適宜の施設に利用することができる。例えば、宿泊設備以外に、カラオケルーム、レンタル会議室等における室内通電制御装置への適用も可能である。
【0063】
また、信号生成器4から第一の信号、第二の信号を制御部110へ無線送信する例を示したが、第一の信号、第二の信号の伝送媒体は、無線通信に限定されず、有線通信を採用することも可能である。
【0064】
また、レバー3をドアガードとして設けたが、ドアガードと兼用にしないレバーを採用することも可能である。その一例としての変更例を
図9に示す。
【0065】
同図に示すスイッチ装置30は、信号生成器31のケーシングの内部でレバー32が揺動可能に支持されている。扉103が閉扉位置にありかつレバー32がON位置にある状態を実線で描いている。退室時、在室者がレバー32をOFF位置へ起こす操作を行うことなく、扉103を開いた場合、ON位置のレバー32は、同図に一点鎖線で描くように、開く扉103に蹴り起こされることよってOFF位置まで変位させられる。
【0066】
スイッチ装置30は、レバー32が開く扉103に蹴り起こされることよってON位置からOFF位置まで変位させられるように設けられていることにより、退室時にレバー32を起こす操作の手間を省くことが可能でありながら、信号生成器31で第二の信号を出力させることができる。
【0067】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1,30 スイッチ装置
3,32 レバー
3a 揺動軸
4,31 信号生成器
5 発電部
8 マイコン
9 リーフスプリング
10 ケーシング
11 連結体
15 カム部
16 差し込み口
18 操作部
20 可動体
21 リターンスプリング
22 スリット部
23 アーム部
100 宿泊施設
101,102 室
103 扉
110 制御部
120 ICカード
131,132 電気機器
140 所定型具